(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】衣類乾燥機
(51)【国際特許分類】
D06F 58/02 20060101AFI20240321BHJP
【FI】
D06F58/02 F
(21)【出願番号】P 2019222886
(22)【出願日】2019-12-10
【審査請求日】2022-07-11
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】田中 俊行
(72)【発明者】
【氏名】温 召航
(72)【発明者】
【氏名】本村 隆行
【審査官】木戸 優華
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-096885(JP,A)
【文献】特開2009-240737(JP,A)
【文献】特開2007-143611(JP,A)
【文献】特開2008-073407(JP,A)
【文献】特開2016-163634(JP,A)
【文献】特開2016-214460(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 58/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣類が収容される乾燥室と、
前記乾燥室から空気を排出する排気口と該乾燥室内に空気を吹込む給気口との間を該乾燥室の外側において連通させるように設けられた循環風路と、
前記乾燥室内の空気を前記循環風路を通して循環させる送風装置と、
圧縮機並びに前記循環風路内に風上である前方側から順に並んで配置された蒸発器及び凝縮器を含んで構成されるヒートポンプと、
前記蒸発器及び凝縮器の下方に設けられ、上面が開口した容器状をなしドレン水が溜められるドレンタンクと、
前記ドレンタンクの上面に設けられ前記蒸発器から落下するドレン水を該ドレンタンク内に流下させるための通水穴が形成されたタンクカバーとを備え、
前記ドレンタンク内には、前記蒸発器の下方部と前記凝縮器の下方部とを前後に仕切るタンクリブが設けられ、
前記タンクカバーには、前記蒸発器と前記凝縮器との間に位置して立上るカバーリブが設けられ、
前記ドレンタンクの後部上端部と前記凝縮器の後部下端部との間の隙間を塞ぐ閉塞部材が設けられ、
前記通水穴は、前記蒸発器の下方全体に対応して大きく開口している衣類乾燥機。
【請求項2】
前記循環風路のうち前記蒸発器の入口部分には、該循環風路下部における風向きを上方に向ける風向板が設けられ、前記蒸発器に対して風が進入する位置が該蒸発器の下端部よりも上方となるように構成されている請求項1記載の衣類乾燥機。
【請求項3】
前記カバーリブは、前記通水穴のうち前記凝縮器側の端部から立上っている請求項1または2に記載の衣類乾燥機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、衣類乾燥機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、衣類乾燥機として、ヒートポンプを採用したドラム式洗濯乾燥機が知られている(例えば、特許文献1参照)。ヒートポンプは、圧縮機、凝縮器、絞り装置、蒸発器を、冷媒配管により順に閉ループに接続して構成され、そのうち、蒸発器及び凝縮器が、循環風路を構成するダクトのうち、ヒートポンプダクト内に順に配置される。これにより、ドラム内から排出された湿った空気が、蒸発器を通ることにより除湿され、引続き、凝縮器を通ることにより加熱され、高温の乾燥空気となって再びドラム内に供給されるようになっている。
【0003】
このとき、上記蒸発器においては、熱交換により除湿を行うため、水蒸気の凝縮により表面で結露が生じ、ドレン水が発生し下方に落下する。そこで、従来では、蒸発器及び凝縮器の下方に、ドレン水を受けるためのドレンタンクを設けてドレン水を溜められるようにし、適宜のタイミングで、ドレンポンプを駆動してそのドレン水を機外に排出することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この種ヒートポンプを用いた洗濯乾燥機においては、循環する乾燥風量を多くして乾燥能力を高め、乾燥時間の短縮化を図ることが要望されている。ところが、このように風量を高めて乾燥時間の短縮を図ろうとすると、単位時間当りに発生するドレン水の量が多くなってドレンタンク内に溜まる量が増し、且つ風速が大きくなる事情がある。そのため、ドレンタンク内に溜まっているドレン水が、ドレンタンク内に吹込んだ風によって舞い上げられやすくなり、さらに風に乗って循環風路を流れ、ひいてはドラム内の衣類に付着してしまうといった不具合の発生が懸念される。
【0006】
そこで、ヒートポンプを備えるものにあって、乾燥風量を多くしてもドレンタンク内のドレン水が舞い上げられてしまうことを抑制することができる衣類乾燥機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の衣類乾燥機は、衣類が収容される乾燥室と、前記乾燥室から空気を排出する排気口と該乾燥室内に空気を吹込む給気口との間を該乾燥室の外側において連通させるように設けられた循環風路と、前記乾燥室内の空気を前記循環風路を通して循環させる送風装置と、圧縮機並びに前記循環風路内に風上である前方側から順に並んで配置された蒸発器及び凝縮器を含んで構成されるヒートポンプと、前記蒸発器及び凝縮器の下方に設けられ、上面が開口した容器状をなしドレン水が溜められるドレンタンクと、前記ドレンタンクの上面に設けられ前記蒸発器から落下するドレン水を該ドレンタンク内に流下させるための通水穴が形成されたタンクカバーとを備え、前記ドレンタンク内には、前記蒸発器の下方部と前記凝縮器の下方部とを前後に仕切るタンクリブが設けられ、前記タンクカバーには、前記蒸発器と前記凝縮器との間に位置して立上るカバーリブが設けられ、前記ドレンタンクの後部上端部と前記凝縮器の後部下端部との間の隙間を塞ぐ閉塞部材が設けられ、前記通水穴は、前記蒸発器の下方全体に対応して大きく開口している。あるいは、前記循環風路は、先端側が前記蒸発器の入口に配置されるエバ入口ダクトを備えており、前記エバ入口ダクトは、先端部が前記蒸発器の入口に近接すると共に、該蒸発器に対し直角に風が進入するように構成され、前記通水穴は、前記蒸発器の下方全体に対応して大きく開口している。あるいは、前記ドレンタンク内には、内部を前後に仕切るタンクリブが設けられ、前記タンクリブは、前記蒸発器と凝縮器との間の位置よりも、該凝縮器側にずれた位置に配置され、前記通水穴は、前記蒸発器の下方全体に対応して大きく開口している。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施形態を示すもので、洗濯乾燥機の内部構成を概略的に示す縦断右側面図
【
図2】洗濯乾燥機の内部構成をヒートポンプを含んだ状態で概略的に示す縦断背面図
【
図4】第2の実施形態を示すもので、ヒートポンプダクト部分の概略的縦断正面図
【
図5】第3の実施形態を示すもので、ヒートポンプダクト部分の概略的縦断正面図
【
図6】第4の実施形態を示すもので、ヒートポンプダクト部分の概略的縦断正面図
【
図7】第5の実施形態を示すもので、ヒートポンプダクト部分の概略的縦断正面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、ヒートポンプを備え洗濯機能及び乾燥機能の双方を有したドラム式の洗濯乾燥機に適用したいくつかの実施形態について、図面を参照しながら説明する。尚、以下に述べる複数の実施形態においては、共通する部分には同一符号を付し、新たな図示や繰り返しの説明を省略することとする。
【0010】
(1)第1の実施形態
以下、第1の実施形態について、
図1~
図3を参照して述べる。
図1及び
図2は、本実施形態に係る衣類乾燥機としての洗濯乾燥機1の全体構成を示している。ここで、洗濯乾燥機1の本体を構成する外箱2は、ほぼ矩形箱状をなし、外箱2内には、乾燥室となる円筒状の水槽3が後下がりに傾斜した状態で、図示しない弾性支持機構を介して支持されている。前記水槽3内には、洗濯物である衣類が収容される円筒状のドラム4が回転可能に支持されている。このドラム4は、前後方向に延び且つ水平からやや後下がりに傾斜した傾斜軸を中心に回転するように構成されている。
【0011】
図1に示すように、このドラム4の周壁部及び後壁部には通水、通気用の多数の孔4aが形成され、また、ドラム4の周壁部の内面には、洗濯物撹拌用の図示しない複数個のバッフルが設けられている。詳しく図示はしないが、このドラム4の前面部には、衣類が出し入れされる円形の開口部が設けられており、前記水槽3の前面部には、前記開口部に連なる投入口3aが形成されている。外箱2の前面には、その投入口3aを開閉する扉5が設けられている。外箱2の前面部の上部には、操作パネル6が設けられている。詳しく図示はしないが、この操作パネル6には、各種設定等を行うための操作部が設けられていると共に、必要な表示を行う表示部が設けられている。
【0012】
図1、
図2に示すように、前記水槽3の後部には、駆動機構を構成する例えばアウタロータ形のブラシレスモータからなるドラムモータ8が配置されている。
図1に示すように、このドラムモータ8の回転軸の先端は、水槽3の背面を貫通して水槽3内に突出し、前記ドラム4の後部中心部に連結固定されている。このような構成により、ドラム4はドラムモータ8により直接的に回転駆動される。この場合、ドラム4は、脱水行程においては、正転方向つまり正面から見て時計回り方向に連続回転されるようになっている。洗い行程やすすぎ行程、乾燥行程等においては、ドラム4は正転、反転が繰り返される。
【0013】
詳しく図示はしないが、前記外箱2内の上部には、給水源としての水道からの水を前記水槽3内等に給水するための給水機構が設けられている。この給水機構は、給水弁を含んでいる。一方、
図1に示すように、水槽3の下部には、排水管路12が接続され、この排水管路12の途中部には排水弁13設けられている。排水弁13が閉鎖された状態で給水機構により水槽3内に水が供給された場合には、その水は水槽3内に貯留される。このとき、水槽3内の水位は、図示しない水位センサにより検出される。前記排水弁13が開放されることに伴い、水槽3内に貯留されていた水は、排水管路12を通して機外へ排出される。
【0014】
図1に示すように、前記水槽3には、前部の上部右寄り部位に、ドラム4内の空気を排出する排気口17が設けられていると共に、背面部の上部左寄り部位にドラム4内に乾燥風を供給するための給気口18が設けられている。そして、
図1、
図2に示すように、外箱2内部には、ドラム4内に乾燥風つまり温風を循環供給して衣類の乾燥運転を実行するための温風供給機構19が設けられている。
【0015】
前記温風供給機構19は、水槽3の外部に位置して、循環風路20を備えている。この循環風路20の入口は、水槽3の前記排気口17に接続され、循環風路20の出口が前記給気口18に接続されている。温風供給機構19は、循環風の除湿及び加熱を行って乾燥風を生成するヒートポンプ15を備えている。これと共に、前記排気口17から排出された空気を、循環風路20内を矢印A方向に循環させながら前記給気口18から水槽3ひいてはドラム4内に供給する送風装置としての送風ファン16を備えている。
【0016】
前記循環風路20は、具体的には、
図1、
図2に示すように、上部排気ダクト21と、後部排気ダクト22と、エバ入口ダクト23と、ヒートポンプダクト24と、給気ダクト25とを備えている。
図1に示すように、そのうち上部排気ダクト21は、その基端部が前記排気口17に接続されて外箱2内の右側上部を後方に延びて設けられ、その先端部に、後部排気ダクト22の上端部が接続されている。上部排気ダクト21の途中部位には、乾燥風から糸くずを捕獲するための周知のリントフィルタ26が設けられている。
【0017】
また、
図1に示すように、上部排気ダクト21の途中部の上部には、前記リントフィルタ26よりも後方に位置して、内部の空気を本体2の上面から排出するための排気用開口部9が設けられている。これと共に、
図1に示すように、排気用開口部9を開閉する排気ダンパ10が設けられている。この排気ダンパ10は、図示しないモータ等からなる駆動機構により開閉動作する。これにて、前記排気ダンパ10を開放させることにより、循環風路20内を流れる空気の一部を、排気用開口部9から外箱2外へ排出することができる。
【0018】
前記後部排気ダクト22は、
図2に示すように、水槽3の後方を下方に延び、その先端即ち下端がエバ入口ダクト23の基端側に接続されている。エバ入口ダクト23の先端側が、ヒートポンプダクト24の基端部である右端部に接続されている。ヒートポンプダクト24は、断面が矩形状をなし、外箱2内の底部後寄り部位を右左方向に延びている。ヒートポンプダクト24の底部には、除湿によって生じたドレン水Dを受けるためのドレンタンク35が設けられている。このドレンタンク35部分の構成については後述する。
【0019】
前記ヒートポンプダクト24の出口端部側(
図2で右端側)に、前記送風ファン16が設けられている。この送風ファン16は、例えばファンケーシング32内に遠心ファン33及びそれを駆動するファンモータ34を備えて構成されている。前記ファンケーシング32の出口部に、前記給気ダクト25の基端部である下端部が接続されている。給気ダクト25は、外箱2内の左側の水槽3の後方を上方に延び、その先端部である上端部が前記給気口18に接続されている。
図2、
図3に示すように、前記ヒートポンプダクト24内には、ヒートポンプ15を構成する蒸発器27及び凝縮器28が、右左(
図2で左右)に順に位置して配置されている。
【0020】
図2に示すように、前記ヒートポンプ15は、圧縮機29と、前記凝縮器28と、減圧手段である絞り弁30と、前記蒸発器27とを、冷媒配管31により閉ループ状に接続して構成されている。ヒートポンプ15の内部には、所要量の冷媒が封入され、冷媒配管31を循環する。このとき、凝縮器28が乾燥風を加熱する加熱手段として機能し、蒸発器27が乾燥風から湿気を除去する除湿手段として機能する。尚、本実施形態では、蒸発器27及び凝縮器28は、例えば冷媒パイプを蛇行状に配置すると共に、熱交換フィンを添設した周知のいわゆるフィンチューブ型の熱交換器から構成され、全体として、空気の流れ方向にやや薄型の矩形ブロック状に構成されている。
【0021】
このヒートポンプ15は、
図2に冷媒の流れを矢印Bで示すように、圧縮機29が駆動されることにより圧縮機29から吐出された気体冷媒が、凝縮器28に流入し、該凝縮器28における熱交換により凝縮されて液体冷媒とされる。凝縮器28から流出した液体冷媒が絞り弁30によって膨張されて霧状とされ、その霧状の冷媒が、蒸発器27に流入される。そして、蒸発器27において、外気との熱交換により冷媒が気化され、その気体冷媒が圧縮機29に戻される。更に圧縮機29にて冷媒が圧縮されて高温、高圧とされて吐出されるという循環が行われる。
【0022】
このヒートポンプ15の駆動と共に、前記送風ファン16が駆動されることにより、
図1、
図2に風の流れを矢印Aで示すように、水槽3つまりドラム4内の空気が、排気口17から上部排気ダクト21、後部排気ダクト22、エバ入口ダクト23を順に通ってヒートポンプダクト24に至る。このとき、空気が上部排気ダクト21内を通る際に、リントフィルタ26等により、空気に含まれていたリント即ち糸くずが捕獲される。
【0023】
そして、エバ入口ダクト23を通った空気は、ヒートポンプダクト24内を流れて蒸発器27及び凝縮器28を順に通った後、給気ダクト25に流れ、給気口18及び孔4aを通ってドラム4内に供給されるという循環が行われる。この空気の循環により、水槽3即ちドラム4内の衣類から湿気を奪って多量の蒸気を含んだ空気が、ヒートポンプダクト24内の蒸発器27部分を通って冷却されることにより、蒸気が凝縮或いは昇華されて除湿され、その除湿空気が凝縮器28部分を通ることにより加熱されて乾いた温風となり、再びドラム4内に供給され、衣類の乾燥に供される。尚、蒸発器27の表面において、水蒸気の凝縮により結露が生じ、発生したドレン水Dは、下方のドレンタンク35内に落下して溜められるようになっている。また、図示はしないが、ドレンタンク35内のドレン水Dを、排水管路12を通して機外に排出するためのドレンポンプも設けられている。
【0024】
図1に示すように、前記外箱2内には、例えばコンピュータを主体に構成され、洗濯乾燥機1全体の制御を行う制御装置11が設けられている。制御装置11は、前記給水弁、排水弁13、ドラムモータ8、送風ファン16のファンモータ34、ヒートポンプ15の圧縮機29及び絞り弁30、ドレンポンプ等を制御する。このとき、図示はしないが、循環風路20内の各部や、ヒートポンプ15の各部には、それら各部の温度を検出する複数個の温度センサが設けられている。これら温度センサの検出信号は、前記制御装置11に入力される。
【0025】
以上の構成により、制御装置11は、操作部にてユーザにより設定される運転コースに応じて、各センサからの入力信号や予め記憶された制御プログラムに基づいて、洗濯乾燥機1の各機構を制御し、洗い行程、すすぎ行程、脱水行程からなる洗濯運転や、乾燥運転を自動で実行する。このとき、制御装置11は、各温度センサの検出温度に基づいて、ヒートポンプ15の圧縮機29や送風ファン16等を駆動制御すると共に、前記ドラム4を回転駆動することにより、乾燥運転を実行する。
【0026】
さて、前記ヒートポンプダクト24に設けられるドレンタンク35部分の構成について、
図3も参照しながら述べる。尚、以下の説明で、ヒートポンプダクト24に関しての方向を言う場合には、便宜上、矢印A方向に流れる乾燥風の、風上側(
図3で右側)を前方、風下側(
図3で左側)を後方と称する。
図3に示すように、ヒートポンプダクト24内には、前側に蒸発器27が配置され、その後側に僅かな隙間をもって凝縮器28が並んで配置されている。凝縮器28の後方に送風ファン16が設けられている。
【0027】
図3に示すように、前記ドレンタンク35は、前記蒸発器27及び凝縮器28の下方に設けられ、それら蒸発器27及び凝縮器28全体を受ける大きさの、上面が開口した浅底矩形容器状に構成されている。従って、ドレンタンク35の前壁部は、蒸発器27前端部に対応してそのほぼ真下に位置し、ドレンタンク35の後壁部は、凝縮器28の後端部に対応してそのほぼ真下に位置している。
【0028】
このドレンタンク35の内部の中間部には、蒸発器27の下方部と凝縮器28の下方部とを前後に仕切る位置つまり蒸発器27と凝縮器28との境界部分に位置して、薄板状のタンクリブ36が一体的に設けられている。このタンクリブ36は、ドレンタンク35の底面から上端部まで上方に立上るように設けられているが、ドレンタンク35の両側の壁から壁まで全体を仕切るものではなく、一部で開口している。従って、ドレンタンク35内においては、タンクリブ36の両側でドレン水Dの流通が可能に構成されている。尚、詳しく図示はしないが、ドレンタンク35の底壁部は、後ろ側ほど深くなるように後方(図で左方)に向けて下降傾斜しており、その最深部に位置して前記ドレンポンプの吸込管が配置されるようになっている。
【0029】
前記ドレンタンク35の上面部には、タンクカバー37が設けられている。このタンクカバー37は、全体として、ドレンタンク35の上面開口部を塞ぐ大きさの四角形の板状をなすと共に、前記蒸発器27から落下するドレン水Dを該ドレンタンク35内に流下させるための通水穴37aが形成されている。この場合、通水穴37aは、蒸発器27の下方全体に対応して四角形に大きく開口するように設けられている。そして、タンクカバー37の上面には、前記蒸発器と前記凝縮器との間に位置して立上るカバーリブ38が一体的に設けられている。このカバーリブ38は、循環風路20としての風の流通を極力妨げない程度の高さ、例えば1~2cm程度の高さで設けられている。
【0030】
更に、タンクカバー37の後辺部上面には、前記ドレンタンク35の後部上端部と前記凝縮器28の後部下端部との間の隙間S1を塞ぐ閉塞部材39が設けられている。この閉塞部材39は、断面が四角い角柱状をなし、ドレンタンク35の後辺部の上端部全体を塞ぐと共に、その上端が前記凝縮器28の後部下端部に接するように設けられている。この閉塞部材39は、例えばシリコンゴムから構成され、ドレン水Dが滞留する場所であっても水の付着による腐食に強く、また接着や溶着などの方法により容易に取付けることができる。尚、詳しく図示はしないが、このタンクカバー37には、凝縮器28の下方部側、つまりカバーリブ38の後方側にも、タンクカバー37の上面に滴下したドレン水Dをドレンタンク35内に落下させるための複数個の小孔が形成されている。
【0031】
また本実施形態では、
図3に示すように、前記循環風路20のうち前記蒸発器27の入口部分には、循環風路20下部における風向きを上方に向ける風向板40が設けられている。このとき、前記エバ入口ダクト23は、断面が四角形のダクト状をなし、先端部である図で左端部が、図で右方から斜め下方に延びるようにして、ヒートポンプダクト24の基端部である図で右端部に接続される。これにて、エバ入口ダクト23の先端部が、蒸発器27の入口部に直接的に臨むように配置されている。
【0032】
本実施形態では、エバ入口ダクト23の先端部のうち底部を構成する部分が、蒸発器27の下端部よりも上方に若干量(例えば1~2cm)だけ持ち上げられた形態とされることで、風向板40が一体に設けられている。風向板40は、エバ入口ダクト23の幅方向全体に渡って設けられている。これにより、蒸発器27に対して風が進入する位置が該蒸発器27の下端部よりも所定高さだけ上方となるように構成されている。尚このとき、エバ入口ダクト23の先端部と、蒸発器27との間には、寸法精度上、例えば1~3mm程度の隙間S2が設けられる。
【0033】
次に、上記構成の作用、効果について述べる。洗濯乾燥機1において例えばドラム4内の衣類を洗濯する洗濯運転が終了すると、引続き乾燥運転が開始される。この乾燥運転では、ドラムモータ8の駆動によりドラム4が低速で正逆両方向に回転され、圧縮機29が駆動されてヒートポンプ15が運転される。これと共に、送風ファン16が駆動される。これにより、
図1~
図3に矢印Aで示すように、ドラム4内の空気が、排気口17から循環風路20を通り、給気口18を通ってドラム4内に戻される循環が行われる。
【0034】
この乾燥風の循環において、ドラム4内から排出された湿った空気は、上部排気ダクト21、後部排気ダクト22、エバ入口ダクト23を順に通ってヒートポンプダクト24に至り、蒸発器27を通ることにより除湿される。除湿された空気は、引続き凝縮器28を通ることにより加熱されて高温の乾燥空気となり、給気ダクト25を通って給気口18からドラム4内に供給される。このとき、主として蒸発器27の表面で、水蒸気の凝縮が発生して結露が生じ、ドレン水Dが下方に落下する。
図3に示すように、そのドレン水Dは、タンクカバー37の通水穴37aを通ってドレンタンク35内に溜められる。
【0035】
ここで、送風ファン16の回転速度を高めて循環する乾燥風路20における乾燥風量を多くし、乾燥能力を高めることが要望される。ところが、このように風量を高めて乾燥時間の短縮を図ろうとすると、単位時間当りに蒸発器27で発生するドレン水Dの量が多くなってドレンタンク35内に溜まる量が増し、且つ循環風の風速が大きくなる事情がある。そのため、ドレンタンク35内に溜まっているドレン水Dが、ドレンタンク35内に吹込んだ風によって舞い上げられてしまい、さらに風に乗って循環風路20を流れ、ひいてはドラム4内の衣類に付着してしまうといった虞が考えられる。
【0036】
ところが、本実施形態においては、まず、
図3に示すように、エバ入口ダクト23に風向板40が設けられ、前記蒸発器27に対して風が進入する位置が該蒸発器27の下端部よりも上方となるように構成されている。これにより、蒸発器27の下端部側に風が進入しにくくなり、ドレンタンク35内に対し、ドレン水Dを舞い上げようとする風が吹き込むこと自体が抑制されるようになる。
【0037】
そして、ドレンタンク35内に対し、ドレン水Dを舞い上げようとする風が吹き込んだ場合でも、本実施形態においては、
図3に示すように、ドレンタンク35内は、タンクリブ36によって、風上側即ち蒸発器27の下方部と、風下側即ち凝縮器28の下方部とが仕切られている。しかも、タンクカバー37にも、蒸発器27と凝縮器28との間に立上るカバーリブ38が設けられている。そのため、ドレンタンク35内の前側に吹込んだ風によって、ドレン水Dが舞い上げられたとしても、ドレンタンク35内では、タンクリブ36に当たって凝縮器28側にそれ以上流れることが防止される。
【0038】
更に、ドレン水Dがタンクカバー37の通水穴37aを通って蒸発器27の下方部に向けて舞い上げられた場合でも、カバーリブ38に邪魔されて風下側即ち凝縮器28側にそれ以上流れることが防止され、ドレン水Dは蒸発器27の下方部に止まる。また、ドレン水Dが、風に乗って蒸発器27下部から凝縮器28側へ直接的に移動しようとしても、やはり、タンクカバー37カバーリブ38によってそれ以上の凝縮器28側への移動が阻止される。
【0039】
一方、送風に伴いドレンタンク35内のタンクリブ36よりも後部側に風が吹き込んで、ドレンタンク35内のドレン水Dが循環風路20内つまり凝縮器28部分やその風下側に舞い上げられることも考えられる。ところが、ドレンタンク35の後部上端部と凝縮器28の後部下端部との間には閉塞部材39が設けられ、それらの間の隙間S1が塞がれている。従って、ドレン水Dがその隙間を通って流れることが防止される。このようにドレンタンク35の前側及び後側のいずれの位置からも、ドレン水Dの循環風路20内への舞い上げが抑制されてドレンタンク35内に止まるようになる。
【0040】
このように本実施形態によれば、ドレンタンク35内にタンクリブ36を設け、タンクカバー37にカバーリブ38を設け、更にドレンタンク35の後部上端部と凝縮器28の後部下端部との間に閉塞部材39を設ける構成とした。これにより、ヒートポンプ15を備えるものにあって、乾燥風量を多くしてもドレンタンク35内のドレン水Dが循環風路20に舞い上げられてしまうことを抑制することができるという優れた効果を得ることができる。また、特に本実施形態では、蒸発器27の入口部分に風向板40を設けたことにより、ドレンタンク35内のドレン水Dが舞い上げられてしまうことを抑制する効果をより高めることができる。
【0041】
(2)第2の実施形態
図4は、第2の実施形態を示すものであり、上記第1の実施形態と異なる点は、循環風路20の一部を構成するエバ入口ダクト41に設けられる風向板42の構成にある。即ち、エバ入口ダクト41は、断面が四角形のダクト状をなし、先端部である図で左端部が、図で右方から斜め下方に延びるようにして、ヒートポンプダクト24の基端部である図で右端部に接続される。このとき、エバ入口ダクト41の下辺部は、ヒートポンプダクト24の下辺部に突き合わされて接続される。
【0042】
そして、この第2の実施形態では、エバ入口ダクト41の先端部の底壁部に、風向きを上方に向ける別体の風向板42が取付けられている。風向板42は、断面V字状に構成され、エバ入口ダクト41の幅方向全体に渡って設けられている。これにて、風向板42によって、蒸発器27に対して風が進入する位置が該蒸発器27の下端部よりも上方となるように構成されている。
【0043】
この構成によっても、蒸発器27の下端部側に風が進入しにくくなり、ドレンタンク35内に対し、ドレン水Dを舞い上げようとする風が吹き込むこと自体を抑制することができる。従って、この第2の実施形態によれば、上記第1の実施形態と同様に、ヒートポンプ15を備えるものにあって、乾燥風量を多くしてもドレンタンク35内のドレン水Dが舞い上げられてしまうことを抑制することができ、しかも、ドレンタンク35内のドレン水Dが舞い上げられてしまうことを抑制する効果をより高めることができる効果を得ることができる。
【0044】
(3)第3の実施形態
図5は、第3の実施形態を示すものであり、上記第1の実施形態と異なるところは、循環風路20の一部を構成するエバ入口ダクト51の構成にある。即ち、エバ入口ダクト51の先端部(図で左端部)は、断面が四角形のダクト状をなし、水平方向に延びてヒートポンプダクト24につながる構成となっている。これにより、エバ入口ダクト51の先端部が蒸発器27の入口に近接すると共に、該蒸発器27に対し直角に風が進入するように構成されている。また、ドレンタンク35、タンクカバー37、閉塞部材39等については、上記第1の実施形態と同等の構成を備えている。
【0045】
この構成によれば、エバ入口ダクト51の先端部が蒸発器27の入口に近接していることにより、エバ入口ダクト51の底壁部先端と蒸発器27の下端部との間の隙間S3が小さく、この隙間S3から風が進入しにくくなる。そして、エバ入口ダクト51の先端部が水平に延びていることにより、蒸発器27に対して直角に風が進入する。これにより、蒸発器27の下方に風が進入しにくくなり、ドレンタンク35内に対し、ドレン水Dを舞い上げようとする風が吹き込むことを抑制することができる。従って、この第3の実施形態によれば、ヒートポンプ15を備えるものにあって、乾燥風量を多くしても、ドレンタンク35内のドレン水Dが舞い上げられてしまうことを抑制する効果を得ることができる。
【0046】
(4)第4の実施形態
図6は、第4の実施形態を示すものであり、上記第1の実施形態と異なるところは、ドレンタンク61の構成にある。即ち、ドレンタンク61は、蒸発器27及び凝縮器28の下方全体を受ける大きさの、上面が開口した浅底矩形容器状に構成され、その内部を前後に仕切るようにタンクリブ62が一体的に設けられている。このとき、前記タンクリブ62は、蒸発器27と凝縮器28との間の位置よりも、該凝縮器28側にずれた位置に配置されている。タンクリブ62は、ドレンタンク61内の前後でドレン水Dの流通が可能なように一部で開口している。
【0047】
尚、ドレンタンク61の上面を塞ぐように設けられるタンクカバー37については、上記第1の実施形態と同様に、蒸発器27と凝縮器28との間に位置してカバーリブ38が設けられると共に、閉塞部材39が設けられている。また、この実施形態では、エバ入口ダクト41の先端部に風向板を設けず、第2の実施形態のエバ入口ダクト41と同様に、エバ入口ダクト41の下辺部は、ヒートポンプダクト24の下辺部に突き合わされて接続されている。
【0048】
これによれば、蒸発器27側からドレンタンク61内にドレン水Dを舞い上げさせるような風が吹き込むことがあると、そのドレン水Dは、タンクリブ62の壁面に当たって跳ね上がろうとする。ところが、タンクリブ62は、凝縮器28側にずれた位置に設けられており、タンクリブ62の壁面に当たって跳ね上がったドレン水Dは、凝縮器28の下方部のタンクカバー37の下面に当たって流下する。従って、ドレン水Dが凝縮器28の方向即ち循環風路20側に流れることはない。この結果、第4の実施形態によれば、ヒートポンプ15を備えるものにあって、乾燥風量を多くしても、ドレンタンク61内のドレン水Dが舞い上げられてしまうことを抑制する効果を得ることができる。
【0049】
(5)第5の実施形態、その他の実施形態
図7は、第5の実施形態を示すものであり、上記第1の実施形態とは以下の点で異なっている。即ち、この実施形態では、ヒートポンプ15の一部を構成する蒸発器71は、やはりフィンチューブ型のものからなり、そのフィンが下方に延長されて上下にやや大型に構成されている。この蒸発器71は、その下端部が、タンクカバー37の通水穴37aを通してドレンタンク72内上部まで侵入するように配置されている。
【0050】
前記ドレンタンク72は、上記第1の実施形態のドレンタンク35等に比べて、蒸発器71が下方に延長された分だけ、やや深く構成されており、内部には、蒸発器71と凝縮器28との境界部分に位置して、薄板状のタンクリブ73が上端部まで延びて一体的に設けられている。尚、タンクカバー37については、上記第1の実施形態と同様に、カバーリブ38や閉塞部材39を有して構成されている。また、第2の実施形態のエバ入口ダクト41と同様に、エバ入口ダクト41の下辺部は、ヒートポンプダクト24の下辺部に突き合わされて接続されている。
【0051】
この第5の実施形態においても、上記第1の実施形態と同様に、ヒートポンプ15を備えるものにあって、乾燥風量を多くしてもドレンタンク72内のドレン水Dが舞い上げられてしまうことを抑制することができる。そして、特に本実施形態では、蒸発器71のうち、熱交換を行う部分の大きさが下方に大きくなるので、蒸発器71における乾燥風との間の熱交換面積を小さくせずに済み、大きな除湿面積で高能力の除湿を行うことができる。タンクリブ73を深くしたことにより、ドレン水Dの貯留量を大きくして、舞い上げられにくくすることもできる。
【0052】
尚、上記した第1、第2の実施形態では、風向板40、42を設けるようにしたが、この風向板は、必要に応じて設ければ良い。また、上記した第3、第4の実施形態では、ドレンタンクにタンクリブを設け、タンクカバーにカバーリブや閉塞部材を設ける構成としたが、それらタンクリブ、カバーリブ、閉塞部材の一部或いは全部を省略する構成としても良い。第4の実施形態において、エバ入口ダクト41に風向板を設ける構成としたり、第3の実施形態で第5の実施形態のような蒸発器71の構成を採用したりするなど、上記した複数の実施形態の特徴とする構成部分を、組合せて実施することも可能である。
【0053】
また、上記各実施形態では、タンクカバー37に閉塞部材39を一体的に設けるようにしたが、閉塞部材を別体に設けて、ドレンタンクの後部上端部と凝縮器の後部下端部との間に取付けるようにしても良い。上記実施形態では、いわゆるフィンチューブ型の蒸発器及び凝縮器を採用したが、いわゆるマルチフロー型の熱交換器を採用しても良い。エバ入口ダクトの形状としても、様々な変形が可能である。その他、洗濯機能のない乾燥専用の衣類乾燥機にも適用できる。ヒートポンプの全体的な構成例えば循環風路の構成についても、外箱内の上部にヒートポンプを配置するような構成としても良い。
【0054】
上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。本実施形態およびその変形は、発明の範囲および要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0055】
図面中、1は洗濯乾燥機(衣類乾燥機)、2は外箱、3は水槽(乾燥室)、4はドラム、15はヒートポンプ、16は送風ファン(送風装置)、17は排気口、18は給気口、20は循環風路、21は上部排気ダクト、22は後部排気ダクト、23、41、51はエバ入口ダクト、24はヒートポンプダクト、25は給気ダクト、27、71は蒸発器、28は凝縮器、35、61、72はドレンタンク、36、62、73はタンクリブ、37はタンクカバー、37aは通水穴、38はカバーリブ、39は閉塞部材、40、42は風向板、Dはドレン水を示す。