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特許7457517オフセット印刷用インキ組成物、印刷物、および印刷物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】オフセット印刷用インキ組成物、印刷物、および印刷物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/037 20140101AFI20240321BHJP
【FI】
C09D11/037
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020023012
(22)【出願日】2020-02-14
(65)【公開番号】P2021127394
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000105947
【氏名又は名称】サカタインクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蔵野 実
(72)【発明者】
【氏名】飯泉 祥太
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-271594(JP,A)
【文献】特開昭57-212274(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109111790(CN,A)
【文献】特開平08-225761(JP,A)
【文献】特開2009-256659(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色顔料、体質顔料、バインダー樹脂、および油成分を含むオフセット印刷用インキ組成物であって、
さらに、アミノカルボン酸系キレート剤を含み、
前記体質顔料は、無機カルシウム塩であり、
前記無機カルシウム塩と、前記アミノカルボン酸系キレート剤の質量比(無機カルシウム塩/アミノカルボン酸系キレート剤)が、1以上50以下であり、
前記インキ組成物中、前記着色顔料、前記体質顔料、前記バインダー樹脂、前記油成分、および前記アミノカルボン酸系キレート剤の合計の割合は、80質量%以上であり、かつ
前記インキ組成物中、前記油成分の割合は、40質量%以上70質量%以下であることを特徴とするオフセット印刷用インキ組成物。
【請求項2】
前記アミノカルボン酸系キレート剤の割合は、前記印刷用インキ組成物中、0.1質量%以上3質量%以下であることを特徴とする請求項1記載のオフセット印刷用インキ組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載のオフセット印刷用インキ組成物から形成される印刷層が設けられていることを特徴とする印刷物。
【請求項4】
請求項1または2記載のオフセット印刷用インキ組成物を用いて印刷を行う工程を含むことを特徴とする印刷物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフセット印刷用インキ組成物、印刷物、および印刷物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オフセット印刷は、油性であるオフセット印刷用インキ組成物(以下、「インキ組成物」又は「インキ」と適宜省略する。)が水に反発する性質を利用した印刷方式であり、凹凸を備えた印刷版を用いる凸版印刷方式とは異なり、凹凸のない印刷版を用いることを特徴とする。この印刷版は、凹凸の代わりに親油性の画像部と親水性の非画像部とを備える。そして印刷に際しては、まず、湿し水によって印刷版の非画像部が湿潤されてその表面に水膜が形成され、次いでインキ組成物が印刷版に供給される。このとき、供給されたインキ組成物は、水膜の形成された非画像部には反発して付着せず、親油性の画像部のみに付着する。こうして、印刷版の表面にインキ組成物による画像が形成され、次いでそれがブランケット及び紙に順次転移することにより印刷が行われる。
【0003】
そして、オフセット印刷は、印刷版の作製が比較的簡単でありながら、高い美粧性を備えた印刷物を得たり、大量の印刷物を短時間で得たりする分野に適するという特性を備える。そこで、オフセット印刷は、パンフレット、ポスター、カレンダー等といった高い美粧性が要求される分野から、新聞、雑誌、電話帳等といった高速かつ大量に印刷されることが要求される分野まで広く利用されている。
【0004】
これらの分野のうち、高速かつ大量に印刷することが必要な分野では、オフセット輪転機を用いるのが一般的である。オフセット輪転機では、印刷用紙を巻き取りの状態で用紙供給部に装着し、この巻き取りを巻き解くことで印刷用紙を印刷部へ供給し印刷を行う。印刷された印刷用紙は、裁断部で裁断を受けたあと、折り加工等といった必要な加工を受けて製品となる。このような印刷方法によれば、数万部から数十万部程度の印刷を一度に行うことができるので効率的であり、その印刷速度も1時間あたり十万部以上という高速に達することもある。
【0005】
ところで、オフセット印刷に用いるインキ組成物は、少なくとも、インキ組成物に着色力を付与するための着色顔料、その着色顔料を分散させるとともに印刷後には用紙の表面に着色顔料を固定させるためのバインダー樹脂、バインダー樹脂を溶解させインキ組成物に流動性を付与するための油成分、インキ組成物における粘度等の特性を調節するための体質顔料を含むのが一般的である(例えば、特許文献1-5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-59066号公報
【文献】特開2017-88714号公報
【文献】特開2017-31357号公報
【文献】特開2016-222785号公報
【文献】特開2016-11407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記の体質顔料としては、オフセット印刷用インキ組成物のコストの観点から、無機カルシウム塩が広く使用されている。しかしながら、無機カルシウム塩を含むインキ組成物は、オフセット印刷時における網点印刷面積の経時低下に対する改善の余地があった。
【0008】
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、網点印刷面積の経時低下抑制に優れるオフセット印刷用インキ組成物を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、上記のインキ組成物から形成される印刷層が設けられている印刷物、およびその印刷物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明は、着色顔料、体質顔料、バインダー樹脂、および油成分を含むオフセット印刷用インキ組成物であって、さらに、アミノカルボン酸系キレート剤を含み、前記体質顔料は、無機カルシウム塩であり、前記無機カルシウム塩と、前記アミノカルボン酸系キレート剤の質量比(無機カルシウム塩/アミノカルボン酸系キレート剤)が、1以上50以下であるオフセット印刷用インキ組成物に関する。
【0011】
また、本発明は、前記オフセット印刷用インキ組成物から形成される印刷層が設けられている印刷物に関する。
【0012】
また、本発明は、前記オフセット印刷用インキ組成物を用いて印刷を行う工程を含む印刷物の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のオフセット印刷用インキ組成物における効果の作用メカニズムの詳細は不明な部分があるが、以下のように推定される。ただし、本発明は、この作用メカニズムに限定して解釈されなくてもよい。
【0014】
本発明のオフセット印刷用インキ組成物は、着色顔料、体質顔料、バインダー樹脂、および油成分を含むオフセット印刷用インキ組成物であって、さらに、アミノカルボン酸系キレート剤を含み、前記体質顔料は、無機カルシウム塩であり、前記無機カルシウム塩と、前記アミノカルボン酸系キレート剤の質量比(無機カルシウム塩/アミノカルボン酸系キレート剤)が、1以上50以下である。本発明者らが検討したところ、無機カルシウム塩を含むインキ組成物における印刷時における網点印刷面積の経時低下は、無機カルシウム塩が版へのインキ付着を阻害しているためであることを見出した。本発明のオフセット印刷用インキ組成物は、無機カルシウム塩(カルシウムイオン)を捕捉できる成分として、特定量のアミノカルボン酸系キレート剤を使用することで、オフセット印刷時における網点印刷面積の経時低下を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のオフセット印刷用インキ組成物は、着色顔料、体質顔料、バインダー樹脂、および油成分を含み、さらに、アミノカルボン酸系キレート剤を含み、前記体質顔料は、無機カルシウム塩である。
【0016】
<着色顔料>
本発明の着色顔料は、インキ組成物に着色力を付与するための成分である。前記着色顔料としては、従来からインキ組成物に使用される有機及び/又は無機顔料を挙げることができ、例えば、ジスアゾイエロー(ピグメントイエロー12、ピグメントイエロー13、ピグメントイエロー17、ピグメントイエロー18)、ハンザイエロー等のイエロー顔料、ブリリアントカーミン6B、レーキレッドC、ウオッチングレッド等のマゼンタ顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アルカリブルー等のシアン顔料、カーボンブラック等の黒色顔料等が挙げられる。
【0017】
前記インキ組成物中、前記着色顔料の割合は、特に限定されず、必要とされる着色力の程度を考慮して適宜調節すればよいが、例えば、8~30質量%程度が挙げられる。なお、イエロー顔料を使用してイエローインキ組成物を、マゼンタ顔料を使用してマゼンタインキ組成物を、シアン顔料を使用してシアンインキ組成物を、黒色顔料を使用して墨インキ組成物をそれぞれ調製する場合には、補色として、他の色の顔料を併用したり、他の色のインキ組成物を添加したりすることも可能である。
【0018】
<体質顔料>
本発明の体質顔料は無機カルシウム塩である。前記無機カルシウム塩は、公知のものが制限なく使用でき、例えば、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、フッ化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、炭化カルシウム、リン化カルシウム、炭酸水素カルシウム、亜硫酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、次亜塩素酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト等が挙げられる。なお、前記体質顔料は、無色顔料とも呼ばれ、インキ組成物における流動性等といった特性を調節するために好ましく使用されるため、必要に応じ、クレー、タルク、カオリナイト(カオリン)、硫酸バリウム、酸化ケイ素、ベントナイト、酸化チタン等の従来からインキ組成物に使用される体質顔料をインキ組成物に添加することもできる。
【0019】
前記インキ組成物中、無機カルシウム塩の割合は、インキ組成物の粘度や着色力の観点から、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、1.5質量%以上であることがさらに好ましく、そして、10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましく、6質量%以下であることがさらに好ましい。
【0020】
<バインダー樹脂>
本発明のバインダー樹脂は、印刷用紙の表面で上記顔料を固定するバインダーとして機能する成分であり、また、上記顔料をインキ組成物中に分散させるために用いられる成分でもある。前記バインダー樹脂としては、インキ組成物の分野で通常使用されるものを特に制限なく挙げることができ、例えば、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性アルキド樹脂、ロジン変性石油樹脂、ロジンエステル樹脂、石油樹脂変性フェノール樹脂、アクリル変性フェノール樹脂、アルキド樹脂、植物油変性アルキド樹脂、石油樹脂等が挙げられる。前記バインダー樹脂は、通常、重量平均分子量が1,000~30万程度である。前記バインダー樹脂は、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
これらの中でも、良好な顔料分散性及び印刷品質、並びに長時間にわたる安定な印刷適性といった観点からは、バインダー樹脂として、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂及びアルキド樹脂よりなる群から選択される少なくとも1つを含むことが好ましく、ロジン変性フェノール樹脂を含むことがより好ましい。
【0022】
前記バインダー樹脂は、後述する油成分とともに加熱されることにより溶解又は分散され、ワニスとされた状態で使用されてもよい。また、ワニスを調製する際、バインダー樹脂を溶解させて得られた溶解ワニス中に2価以上の金属アルコキシ化合物をゲル化剤として投入し、ゲル化ワニスとしてもよい。バインダー樹脂からゲル化ワニスを調製し、これをインキ組成物の調製に用いることにより、インキ組成物に適度な粘弾性を付与することができるので好ましい。
【0023】
前記インキ組成物中、前記バインダー樹脂の割合は、10~45質量%程度であることが好ましく、10~30質量%程度であることがより好ましい。
【0024】
<油成分>
本発明の油成分は、バインダー樹脂を溶解させてワニスとしたり、インキ組成物の粘度を調節したりするために使用される。前記油成分としては、植物油及び/又は鉱物油を挙げることができ、従来のインキ組成物の調製に用いられてきたものを特に制限なく使用できる。前記油成分は、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
前記植物油としては、例えば、大豆油、綿実油、アマニ油、サフラワー油、桐油、トール油、脱水ヒマシ油、カノーラ油等の乾性油や半乾性油等が挙げられる。また、前記植物油には、植物油由来の脂肪酸エステル化合物が含まれていてもよい。前記植物油由来の脂肪酸エステル化合物としては、上記の植物油に由来する脂肪酸モノアルキルエステル化合物等が例示される。前記脂肪酸モノアルキルエステル化合物を構成する脂肪酸としては、例えば、ステアリン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸等の炭素数16~20の飽和又は不飽和脂肪酸が好ましく挙げられる。前記脂肪酸モノアルキルエステル化合物を構成するアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、2-エチルヘキシル基等の炭素数1~10のアルキル基が好ましく挙げられる。
【0026】
前記鉱物油は、溶剤とも呼ばれる軽質の鉱物油や、潤滑油状である重質の鉱物油等が挙げられる。
【0027】
前記軽質の鉱物油としては、例えば、沸点160℃以上、好ましくは沸点200℃以上の非芳香族系石油溶剤が挙げられる。前記非芳香族系石油溶剤としては、例えば、JX日鉱日石エネルギー株式会社製の「0号ソルベント」、「AFソルベント5号」、「AFソルベント6号」、「AFソルベント7号」等が挙げられる。
【0028】
前記重質の鉱物油としては、例えば、スピンドル油、マシン油、ダイナモ油、シリンダー油等として分類されてきた各種の潤滑油を挙げられる。これらの中でも、米国におけるOSHA基準やEU基準に適応させるとの観点からは、縮合多環芳香族成分の含有量が抑制されたものであることが好ましい。前記重質の鉱物油としては、JX日鉱日石エネルギー株式会社製の「インクオイルH8」、「インクオイルH35」、三共油化工業株式会社製の「SNH8」、「SNH46」、「SNH220」、「SNH540」等が挙げられる。
【0029】
前記インキ組成物中、前記油成分の割合は、30~70質量%程度であることが好ましく、40~70質量%程度であることがより好ましい。
【0030】
<アミノカルボン酸系キレート剤>
本発明のアミノカルボン酸系キレート剤は、インキ組成物に含まれる無機カルシウム塩(カルシウムイオン)を捕捉できる成分である。前記アミノカルボン酸系キレート剤は、分子内にアミノ基(-NR、-NHR、-NH、式中、RおよびRは、それぞれ独立して1価または2価の有機基であり、互いに結合して環を形成していてもよい)、およびカルボキシル基を有していればよく、低分子型のキレート剤および高分子型のキレート剤(キレート樹脂)のいずれでもよいが、低分子型のキレート剤(例えば、分子量が500以下程度)が好ましい。前記アミノカルボン酸系キレート剤は、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
前記低分子型のアミノカルボン酸系キレート剤は、例えば、エチレンビスニトリロ四酢酸(EDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、トリエチレンテトラアミン六酢酸(TTHA)、トリメチレンジニトリロ四酢酸(PDTA)、2-ヒドロキシプロパン-1,3-ジアミン四酢酸(DPTA-OH)、2-ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(HEIDA)、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン(DHEG)、エチレンビス(オキシエチレンニトリロ)四酢酸(GEDTA)、N,N-ビス(カルボキシメチル)、N,N’-エチレンジアミンジコハク酸(EDDS)等;これらの塩等が挙げられる。
【0032】
前記インキ組成物中、アミノカルボン酸系キレート剤の割合は、網点印刷面積の経時低下を抑制する観点から、0.1質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましく、0.4質量%以上であることがさらに好ましく、そして、網点印刷面積の経時低下を抑制し、ローラーストリップの発生を防止する観点から、3質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましく、1.5質量%以下であることがさらに好ましい。
【0033】
また、本発明のオフセット印刷用インキ組成物において、前記無機カルシウム塩と、前記アミノカルボン酸系キレート剤の質量比(無機カルシウム塩/アミノカルボン酸系キレート剤)は、1以上50以下である。前記無機カルシウム塩と、前記アミノカルボン酸系キレート剤の質量比(無機カルシウム塩/アミノカルボン酸系キレート剤)は、網点印刷面積の経時低下を抑制し、ローラーストリップの発生を防止する観点から、2以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましく、そして、網点印刷面積の経時低下を抑制する観点から、30以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましい。
【0034】
本発明のオフセット印刷用インキ組成物は、印刷性能を向上させる等の観点から、必要に応じて上記の各成分の他に各種成分を添加することができる。このような各種成分としては、ポリエチレン系ワックス、オレフィン系ワックス、フィッシャートロプシュワックス等のワックス類、リン酸塩等の塩類、アルコール類、酸化防止剤等が挙げられる。
【0035】
前記インキ組成物中、前記着色顔料、前記体質顔料、前記バインダー樹脂、前記油成分、および前記アミノカルボン酸系キレート剤の合計の割合は、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。
【0036】
本発明のオフセット印刷用インキ組成物を調製するには、従来公知の方法を適用できる。上記の各成分を混合した後にビーズミルや三本ロールミル等で練肉することで着色顔料を分散させた後、及び必要に応じて油成分や添加剤(酸化防止剤、アルコール類、ワックス類等)等を加えてよく撹拌し、さらに粘度を調整することが挙げられる。また、前記バインダー樹脂は、植物油や鉱物油などの油成分に溶解させてワニスやゲルワニスとしてもよい。インキ組成物における粘度としては、ラレー粘度計による25℃での値が5~30Pa・sであることが例示できるが、特に限定されない。
【0037】
<印刷物、およびその製造方法>
本発明の印刷物は、前記オフセット印刷用インキ組成物から形成される印刷層が設けられている。また、本発明の印刷物の製造方法は、前記オフセット印刷用インキ組成物を用いて印刷を行う工程を含む。印刷は、通常のオフセット平版印刷技術を用いて実施され、オフセット平版印刷は、湿し水を用いた水ありの印刷方式であってもよいし、専用の平版印刷版を用いることにより湿し水を用いずに印刷を行う水なしの印刷方式であってもよい。
【実施例
【0038】
以下に本発明を実施例などによって説明するが、本発明はこれらのみに限定されない。
【0039】
<実施例1>
<ゲルワニスの調製>
コンデンサー、温度計及び撹拌機を装着した4つ口フラスコに、バインダー樹脂として、ロジン変性フェノール樹脂(商品名「ハリフェノール T-3120」、ハリマ化成社製)35質量部、油成分として、大豆油20質量部及び鉱物油(商品名「AFソルベント7号」、JX日鉱日石エネルギー社製)44.5質量部を仕込んだ後、200℃に昇温し、同温度を1時間維持することにより樹脂を溶解させた後、ゲル化剤として、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート(商品名「ALCH」、川研ファインケミカル社製)を0.5質量部仕込み、その後170℃で60分間加熱保持して、ゲルワニスを調製した。
【0040】
<オフセット印刷用インキ組成物の調製>
上記で得られたゲルワニス55質量部、着色顔料(商品名「カーミン6B」、住化カラー社製)15質量部、無機カルシウム塩として、炭酸カルシウム(商品名「白艶華T-DD」、白石カルシウム社製)4質量部、アミノカルボン酸系キレート剤として、EDTA三アンモニウム塩(商品名「キレスト3N-50」、固形分50質量%、キレスト社製)0.4質量部、及び、油成分として、鉱物油(商品名「AFソルベント7号」、JX日鉱日石エネルギー社製)25.6質量部を加え、三本ロールミルにて練肉することで実施例1のオフセット印刷用インキ組成物を得た。
【0041】
<実施例2-8、比較例1-3>
各実施例および各比較例において、使用する各成分を、表1に記載の原料および配合量に変更したこと以外は、実施例1の同様の操作を行い、各実施例および各比較例のオフセット印刷用インキ組成物を調製した。
【0042】
上記で得られたオフセット印刷用インキ組成物について、以下の評価方法にしたがって、各項目を評価した。結果を表1に示す。
【0043】
[網点印刷面積の経時低下の評価]
網点印刷面積の経時低下の評価は、オフセット枚葉印刷機LITHRONE L426(小森コーポレーション)にて印刷を10,000枚/時間の速度で行い、GretagMacbeth社製SpectroEyeを用いて、印刷スタート時及び5,000枚印刷終了時の印刷物の25%網点における濃度を測定し、以下の網点面積保持率にて評価した。
網点面積保持率(%)=(5,000枚印刷終了時の網点面積)÷(印刷スタート時の網点面積)×100
【0044】
[ローラーストリップの評価]
ローラーストリップの評価は、上記印刷条件におけるローラーストリップ(ローラーにインキが付着しなくなる現象)の有無を目視で確認し、当該現象発生時の印刷部数で評価した。その結果を表1に示す。なお、表1において「未発生」とは、10,000部印刷してもローラーストリップが発生しなかったことを意味する。
【0045】
【表1】
【0046】
表1中、キレスト3N-50は、EDTA三アンモニウム塩(商品名「キレスト3N-50」、固形分50質量%、キレスト社製);
キレストCは、EDTA三ナトリウム塩(商品名「キレストC」、固形分100質量%(組成水を含む)、キレスト社製);
キレスト110は、EDTA(商品名「キレスト110」、固形分100質量%、キレスト社製);
キレスト70は、NTA三ナトリウム塩(商品名「キレスト70」、固形分70質量%、キレスト社製);
キレストPC-45は、DPTA三ナトリウム塩(商品名「キレストPC-45」、固形分45質量%、キレスト社製);を示す。