IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ブリヂストンの特許一覧

<>
  • 特許-航空機用タイヤ 図1
  • 特許-航空機用タイヤ 図2
  • 特許-航空機用タイヤ 図3
  • 特許-航空機用タイヤ 図4
  • 特許-航空機用タイヤ 図5
  • 特許-航空機用タイヤ 図6
  • 特許-航空機用タイヤ 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】航空機用タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 19/00 20060101AFI20240321BHJP
   B60C 9/18 20060101ALI20240321BHJP
   B60C 9/20 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
B60C19/00 J
B60C9/18 H
B60C9/20 D
B60C19/00 B
B60C19/00 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020025386
(22)【出願日】2020-02-18
(65)【公開番号】P2021130345
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】村松 智之
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 俊彦
【審査官】岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-178388(JP,A)
【文献】特開2008-049999(JP,A)
【文献】特開2017-132291(JP,A)
【文献】特開2010-269670(JP,A)
【文献】特開2010-285023(JP,A)
【文献】特開2006-335031(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のビード部と、該ビード部の径方向外側に連なるサイドウォール部と、該サイドウォール部間に跨るトレッド部とを有する航空機用タイヤにおいて、
前記航空機用タイヤに関する情報を格納可能なタグ本体部と、該タグ本体部から延設されるアンテナとを備えたRFIDタグを備え、
前記航空機用タイヤの径サイズが15インチ以下であり、
前記アンテナは、トレッド面視において、タイヤ周方向と平行または5°以内の所定角度の範囲で交差するように配設され、
前記トレッド部内に配置されるベルト部は、非金属で構成される航空機用タイヤ。
【請求項2】
前記アンテナは、直線状または波線状を呈するモノポールアンテナまたはダイポールアンテナで構成される請求項1に記載の航空機用タイヤ。
【請求項3】
前記RFIDタグは、タイヤ内面に貼付される請求項1または請求項2に記載の航空機用タイヤ。
【請求項4】
前記RFIDタグは、タイヤ内面に設けられるバランスパッチと周方向に離間して配置される請求項3に記載の航空機用タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に旅客機などに用いられる航空機用タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
電磁波を用いて情報の書き込み、読み出しが可能な非接触型のRFID(Radio Frequency Identification)タグが広く用いられている。
【0003】
このRFIDタグを航空機用タイヤに取り付け、RFIDタグにタイヤに関連する情報の書き込み、読み出しを行って、航空機用タイヤを管理することが行われている。
【0004】
例えば、特許文献1には、航空機タイヤのクラウン領域の内部にRFIDを埋設し、ダイポールアンテナを軸方向に向けて配置した構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願公開第2011/0226401号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の航空機用タイヤでは、サイズが例えば15インチ以下の小径である場合には、タイヤ幅が狭いため、軸方向に配置し得るRFIDタグのアンテナの長さが限定されてしまう。そのため、RFIDリーダ・ライタとの通信性が低下するという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、サイズが15インチ以下であってもRFIDタグの通信性を向上できる航空機用タイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る航空機用タイヤ(T)は、一対のビード部(100)と、該ビード部の径方向外側に連なるサイドウォール部(104)と、該サイドウォール部間に跨るトレッド部(106)とを有する航空機用タイヤにおいて、前記航空機用タイヤに関する情報を格納可能なタグ本体部(11)と、該タグ本体部から延設されるアンテナ(A1、A2)とを備えたRFIDタグ(10)を備え、前記航空機用タイヤの径サイズが15インチ以下である場合において、前記アンテナは、トレッド面視において、タイヤ周方向と平行または所定角度の範囲で交差するように配設され、前記トレッド部内に配置されるベルト部は、非金属で構成されることを要旨とする。
【0009】
このような構成によれば、サイズが15インチ以下である場合においても、タイヤ幅の制限を受けることなく、十分な長さのアンテナを備えたRFIDタグを設けることができ、通信性を向上することができる。
【0010】
また、トレッド部内に配置されるベルト部は、非金属で構成されているので、RFIDタグとRFIDリーダ・ライタとの間における電磁波の減衰等を低減して、通信性を向上できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、サイズが15インチ以下であってもRFIDタグの通信性を向上できる航空機用タイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係る航空機用タイヤの概略構成を示すトレッド幅方向断面図である。
図2】本実施形態に係る航空機用タイヤの概略構成を示す斜視図である。
図3】本実施形態に係る航空機用タイヤに適用されるRFIDタグの構成例を示す概略構成図である。
図4】本実施形態に係る航空機用タイヤに適用されるRFIDタグの内部構成を示すブロック図である。
図5】本実施形態に係る航空機用タイヤに適用されるRFIDタグの他の構成例を示す概略構成図(a)、(b)である。
図6】本実施形態に係る航空機用タイヤ(15インチ)について、実験用RFIDタグ(イ)~(ハ)等の通信距離を示すグラフである。
図7】比較例に係る航空機用タイヤ(21インチ)について、実験用RFIDタグ(イ)~(ハ)等の通信距離を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1図7を参照して、本発明の実施の形態に係る航空機用タイヤTについて説明する。
【0014】
なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。
【0015】
したがって、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0016】
(航空機用タイヤTの構成例)
図1および図2を参照して航空機用タイヤTの構成例について説明する。
【0017】
ここで、図1は、本実施形態に係る航空機用タイヤTの概略構成を示すトレッド幅方向断面図、図2は、航空機用タイヤTの概略構成を示す斜視図である。
【0018】
航空機用タイヤTは、ホイール150に接するビード部100と、航空機用タイヤTの骨格を形成するカーカス部101と、カーカス部101のタイヤ径方向外側に配設される複数のベルト部103と、ベルト部103のタイヤ径方向外側に配設され、路面と接するトレッド部106とを備える。また、一対のビード部100の径方向外側に連なるサイドウォール部104を備える。
【0019】
そして、図1に示すように、本実施の形態に係る航空機用タイヤTは、タイヤ内面102には、航空機用タイヤTに関する情報(製造番号、サイズ、適正内圧等の情報)を格納したタグ本体部としてのICチップ11と、ICチップ11から延設されるアンテナA1、A2とを備えたRFIDタグ10を備えている。
【0020】
より具体的には、RFIDタグ10は、ICチップ11およびアンテナA1、A2をゴム製のパッチ12内に封入して構成され、接着剤によりタイヤ内面102に貼付されている。
【0021】
そして、航空機用タイヤTの径サイズが15インチ以下である場合において、アンテナA1、A2は、図2に示すように、トレッド面視において、タイヤ周方向と平行または所定角度(例えば、5°以内)の範囲で交差するように配設されている。
【0022】
さらに、トレッド部106内に配置されるベルト部103は、合成繊維等の非金属で構成されている。これにより、RFIDタグ10とRFIDリーダ・ライタ200との間における電磁波の減衰等を低減して、通信性を向上できる。
【0023】
なお、RFIDタグ10に対する情報の送受信は、図1に示すようなRFIDリーダ・ライタ200によって行うことができる。
【0024】
RFIDリーダ・ライタ200は、通信用アンテナ201、液晶ディスプレイ等で構成される情報表示部202を備え、RFIDタグ10から読み出した航空機用タイヤTに関する情報(製造番号、サイズ、適正内圧等の情報)を表示して確認できるようになっている。
【0025】
そして、航空機用タイヤTは、このような構成により、航空機用タイヤTの径サイズが15インチ以下である場合において、電磁波の減衰等を低減して、RFIDタグの通信性を向上することができる。なお、航空機用タイヤTの通信性を確認する測定例等については後述する。
【0026】
なお、RFIDタグ10は、タイヤ内面102にバランスパッチが設けられる場合には、そのバランスパッチと周方向に離間して配置される。これにより、航空機用タイヤTのバランスを保った状態で、RFIDタグ10を設けることができる。
【0027】
また、RFIDタグ10をタイヤ内面102に貼付することにより、ビード部100をアンテナとして機能させることができ、通信性がより向上する。また、ビード部100で電磁波が反響することによりRFIDタグ10の感度を高めることができる。
【0028】
(RFIDタグの構成例)
図3および図4を参照して、本実施の形態に係る航空機用タイヤTに適用可能なRFIDタグ10の構成例について説明する。
【0029】
図3は、本実施形態に係る航空機用タイヤTに適用されるRFIDタグ10の構成例を示す概略構成図、図4は、RFIDタグ10の内部構成を示すブロック図である。
【0030】
図3に示すように、RFIDタグ10は、ICチップ11およびアンテナA1、A2をゴム製のパッチ12内に封入して構成されている。また、パッチ12の裏面には接着層が設けられ、タイヤ内面102に貼付できるように構成されている。
【0031】
図4に示すように、RFIDタグ10は、アンテナA1、A2と、RF回路および給電回路等を備える送受信ユニット301と、制御部としてのCPU302と、不揮発性メモリROMを備えるメモリ303および揮発性メモリ(RAM)を備えるメモリ304とから構成される。
【0032】
アンテナA1、A2は、前述のRFIDリーダ・ライタ200等との通信を行う。なお、アンテナA1、A2は、RFIDリーダ・ライタ200等からの無線信号に応じて送受信ユニット301等に電力を供給する受電デバイスとしての役割も果たす。
【0033】
送受信ユニット301は、RF回路で送受信するデータの変復調を行うと共に、給電回路でCPU302等に電力を供給する。
【0034】
CPU302は、アンテナA1、A2から受信したコマンドに従って、メモリ303内に記録された固有IDや航空機用タイヤTに関するデータ(製造番号、サイズ、適正内圧等)の応答等の処理を行う。
【0035】
なお、メモリ304は、CPU302のワークエリア等として使用される。
【0036】
(アンテナの構成例)
図3および図5を参照して、RFIDタグ10のアンテナの構成例について説明する。
【0037】
図3に示すアンテナA1、A2は、図上、ICチップ11の左右端部から直線状の同じ長さ(L1、L2)のアンテナ線が延設された所謂ダイポールアンテナで構成されている。なお、アンテナ線は、コイル状の巻線で構成してもよい。
【0038】
図5(a)に示すRFIDタグ10aのアンテナA3は、図上、ICチップ11の右端部から直線状の長さL3のアンテナ線が延設された所謂モノポールアンテナで構成されている。なお、アンテナ線は、コイル状の巻線で構成してもよい。
【0039】
図5(b)に示すアンテナA4a、A4bは、図上、ICチップ11の左右端部から波線状のアンテナ線が延設された所謂ダイポールアンテナで構成されている。
【0040】
ICチップ11の端部からアンテナA4a、A4bの端部までの距離L4、L5は同じにされる。
【0041】
(通信距離の測定例)
図6および図7を参照して、RFIDタグ10の通信距離の測定例について説明する。
【0042】
ここで、図6は、本実施形態に係る航空機用タイヤT(15インチ)について、実験用RFIDタグ(イ)~(ハ)等の通信距離を示すグラフ、図7は、比較例に係る航空機用タイヤ(21インチ)について、実験用RFIDタグ(イ)~(ハ)等の通信距離を示すグラフである。
【0043】
測定を行うにあたり、図3に示すようなダイポールアンテナを備えたRFIDタグ10について、アンテナA1、A2の長さ(アンテナ幅)を変えた3種類の実験用RFIDタグ(イ)~(ハ)を用意した。
【0044】
ここで、実験用RFIDタグ(イ)のアンテナの長さ(アンテナ幅)は60mm、実験用RFIDタグ(ロ)のアンテナの長さ(アンテナ幅)は70mm、実験用RFIDタグ(ハ)のアンテナの長さ(アンテナ幅)は50mmとした。
【0045】
そして、航空機用タイヤ(15インチ)と、比較例用の航空機用タイヤ(21インチ)を用意し、実験用RFIDタグ(イ)~(ハ)を図2に示した場合と同様に、タイヤ内面102に、アンテナA1、A2をタイヤ周方向D1と平行または所定角度(例えば、5°以内)の範囲で交差するように貼付し、RFIDリーダ・ライタ200で読み取りが可能な通信距離を測定した。
【0046】
その結果、航空機用タイヤ(15インチ)において、実験用RFIDタグ(イ)の通信距離は約51cm、実験用RFIDタグ(ロ)の通信距離は約35cm、実験用RFIDタグ(ハ)の通信距離は約69cmであった。
【0047】
これに対して、航空機用タイヤ(21インチ)では、実験用RFIDタグ(イ)の通信距離は約17cm、実験用RFIDタグ(ロ)の通信距離は約10cm、実験用RFIDタグ(ハ)の通信距離は約55cmであった。
【0048】
なお、図6および図7における(a)~(c)は、実験用RFIDタグ(イ)~(ハ)を航空機用タイヤの幅方向に設けた場合の通信距離を参考として示している。
【0049】
これらのグラフによれば、航空機用タイヤ(15インチ)では、実験用RFIDタグ(イ)~(ハ)を周方向に設けた場合の方が、幅方向に設けた場合よりも通信距離が長くなる傾向にあることが分かる。
【0050】
また、航空機用タイヤ(21インチ)では、実験用RFIDタグ(イ)~(ハ)を幅方向に設けた場合の方が、周方向に設けた場合よりも通信距離が長くなる傾向にあることが分かる。
【0051】
このように、実験用RFIDタグ(イ)~(ハ)をタイヤ内面102に、アンテナA1、A2が、タイヤ周方向D1と平行または所定角度(例えば、5°以内)の範囲で交差するように貼付された場合に、比較的小径の航空機用タイヤ(15インチ)の方が、比較的大径の航空機用タイヤ(21インチ)よりも通信可能な距離で優れていることが分かる。
【0052】
(作用・効果)
上述した実施形態によれば、以下の作用効果が得られる。
【0053】
即ち、本実施形態に係る航空機用タイヤTは、航空機用タイヤに関する情報を格納したICチップ11と、ICチップ11から延設されるアンテナA1、A2とを備えたRFIDタグ10を備え、アンテナA1、A2は、タイヤ周方向D1と平行または所定角度の範囲で交差するように配設されているので、航空機用タイヤTの径サイズが15インチ以下である場合において、タイヤ幅の制限を受けることなく、十分な長さのアンテナを備えたRFIDタグ10を設けることができ、通信性を向上することができる。
【0054】
また、トレッド部106内に配置されるベルト部103は、非金属で構成されているので、RFIDタグ10とRFIDリーダ・ライタ200との間における電磁波の減衰等を低減して、通信性を向上できる。
【0055】
また、アンテナは、直線状または波線状を呈するモノポールアンテナまたはダイポールアンテナで構成できるので、種々の形式のRFIDタグを採用することができる。
【0056】
また、RFIDタグ10は、タイヤ内面102に貼付できるので、ビード部100に近接させることができ、ビード部100をアンテナとして機能させることで通信性がより向上する。また、ビード部100で電磁波が反響することによりRFIDタグ10の感度を高めることができる。
【0057】
また、RFIDタグ10は、タイヤ内面に設けられるバランスパッチと周方向に離間して配置することにより、航空機用タイヤTのバランスを保った状態で、RFIDタグ10を設けることができる。
【0058】
以上、本発明の航空機用タイヤTを図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えることができる。
【符号の説明】
【0059】
T 航空機用タイヤ
A1、A2、A3、A4a、A4b アンテナ
D1 タイヤ周方向
10 RFIDタグ
11 タグ本体部(ICチップ)
100 ビード部
102 タイヤ内面
104 サイドウォール部
106 トレッド部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7