(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】還元剤供給制御装置
(51)【国際特許分類】
F01N 3/08 20060101AFI20240321BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20240321BHJP
B01D 53/86 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
F01N3/08 B ZAB
F01N3/28 301G
F01N3/28 301C
B01D53/86 222
(21)【出願番号】P 2020037298
(22)【出願日】2020-03-04
【審査請求日】2023-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】國島 旭
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-014387(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0274420(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/08
F01N 3/28
B01D 53/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関(5)の排気通路(11)に設けられた第1の還元触媒(17)の上流側に還元剤を供給する第1の噴射弁(31)と、前記第1の還元触媒(17)の下流側に設けられた第2の還元触媒(13)の上流側に還元剤を供給する第2の噴射弁(33)と、貯蔵タンク(50)内の還元剤を前記第1の噴射弁(31)及び前記第2の噴射弁(33)に供給するポンプ(41)と、前記第1の噴射弁(31)、前記第2の噴射弁(33)及び前記ポンプ(41)を制御する制御装置(60)と、を備えた、還元剤供給制御装置(30)において、
前記制御装置(60)は、前記内燃機関(5)の停止時に、前記第1の噴射弁(31)及び前記第2の噴射弁(33)を開弁して、還元剤を前記貯蔵タンク(50)へと回収する前記ポンプ(41)を駆動する回収制御部(61)を備え、
前記ポンプ(41)から前記第1の噴射弁(31)及び前記第2の噴射弁(33)へ還元剤を供給する還元剤供給通路(45,46,47)は、前記ポンプ(41)と分岐部(44)を接続する第1の還元剤供給通路(45)と、前記分岐部(44)と前記第1の噴射弁(31)を接続する第2の還元剤供給通路(46)と、前記分岐部(44)と前記第2の噴射弁(33)を接続する第3の還元剤供給通路(47)とを含み、
前記回収制御部(61)は、
前記第2の還元剤供給通路(46)の容量及び前記第3の還元剤供給通路(47)の容量に基づき、前記第1の噴射弁(31)を介して前記第2の還元剤供給通路(46)に導入される気体が前記分岐部(44)に到達しないように、かつ、前記第2の噴射弁(33)を介して前記第3の還元剤供給通路(47)に導入される気体が前記分岐部(44)に到達しないように前記還元剤を回収した後、前記第1の還元剤供給通路(45)に気体を導入させて前記還元剤を回収
し、
前記第1の還元剤供給通路(45)に気体を導入させて前記還元剤を回収する際に、前記第1の噴射弁(31)のみを開弁する期間及び前記第2の噴射弁(33)のみを開弁する期間をそれぞれ少なくとも一回設ける、ことを特徴とする還元剤供給制御装置。
【請求項2】
前記回収制御部(61)は、
合計の開弁時間が前記第2の還元剤供給通路(46)の容量に応じて設定された時間となるように前記第1の噴射弁(31)を開弁し、
合計の開弁時間が前記第3の還元剤供給通路(47)の容量に応じて設定された時間となるように前記第2の噴射弁(33)を開弁し、
次いで、前記第1の噴射弁(31)及び前記第2の噴射弁(33)の少なくとも一方を開弁して前記第1の還元剤供給通路(45)に気体を導入させて前記還元剤を回収する、ことを特徴とする請求項1に記載の還元剤供給制御装置。
【請求項3】
前記回収制御部(61)は、
前記第1の還元剤供給通路(45)に気体を導入させて前記還元剤を回収する際に、前記第2の噴射弁(33)を開弁して前記第1の還元剤供給通路(45)に気体を導入させて前記還元剤を回収する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の還元剤供給制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気通路への還元剤の供給を制御する還元剤供給制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等の内燃機関の排ガス中にNOX(窒素酸化物)が含まれる場合がある。排ガス中に含まれるNOXを還元反応により窒素や水に分解して排ガスを浄化する装置として、尿素SCR(Selective Catalytic Reduction)システムが実用化されている。尿素SCRシステムでは、尿素水溶液を還元剤として用いて、尿素水溶液から生成されるアンモニアが排ガス中のNOXと反応することによってNOXが分解される。
【0003】
尿素SCRシステムは、排気通路に設けられた還元触媒と、還元触媒よりも上流側の排気通路に尿素水溶液を供給するための還元剤供給制御装置とを備える。還元触媒は、アンモニアを吸着し、流入する排ガス中のNOXとアンモニアとの還元反応を促進する機能を有する。還元剤供給制御装置は、尿素水溶液を圧送するポンプと、ポンプにより圧送される尿素水溶液を噴射する噴射弁と、ポンプ及び噴射弁の駆動制御を行う制御装置とを備える。
【0004】
還元触媒におけるアンモニアの吸着可能量や還元効率は、触媒温度や尿素水溶液の供給量によって変わり得る。尿素水溶液の供給量が不足する場合、浄化されなかったNOXが還元触媒の下流側に流出するおそれがある。一方、尿素水溶液の供給量が過剰である場合、還元触媒におけるアンモニアの吸着可能量を超えるアンモニアが還元触媒に供給されて、余剰分のアンモニアが還元触媒の下流側に流出するおそれがある。このため、還元剤供給制御装置による尿素水溶液の供給量は、少なくとも内燃機関の排ガス中のNOX量に基づいて、過不足のないように制御される。
【0005】
また、尿素水溶液の凍結温度は、例えば32.5%濃度の尿素水溶液の場合、マイナス11℃程度である。還元剤供給制御装置の停止中に尿素水溶液が凍結して体積が膨張すると、ポンプや噴射弁、さらに尿素水溶液が流通する配管等が破損するおそれがある。このため、内燃機関の停止時には、ポンプや噴射弁等に残留する尿素水溶液を貯蔵タンクに回収する制御が行われる。尿素水溶液を貯蔵タンクに回収する際には、尿素水溶液の供給通路内に空気あるいは排ガス(以下、噴射弁を介して還元剤供給通路に導入される空気あるいは排ガスをまとめて「空気」という)が導入されるように、噴射弁は開放される(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、近年、排気通路に2つ以上の還元触媒を備えた尿素SCRシステムが検討されている。例えば、内燃機関の近傍に設けられて内燃機関の始動後に速やかに昇温可能な第1の還元触媒としての機能を有するパティキュレートフィルタと、第1の還元触媒よりも下流側に設けられた第2の還元触媒とを備えた尿素SCRシステムが考えられる。このような尿素SCRシステムでは、ポンプにより圧送される還元剤の供給通路を途中で分岐させて、それぞれの還元触媒の上流側に設けられた噴射弁へと還元剤を供給することが考えられる。
【0008】
このように2つ以上の還元触媒を備えた尿素SCRシステムにおいて、複数の噴射弁を同時に開放して尿素水溶液を回収しようとすると、いずれかの噴射弁に通じる還元剤供給通路に尿素水溶液が残留するおそれがある。例えば、それぞれの噴射弁に通じる還元剤供給通路の長さや容量が異なっていたり、制御上の設計値からずれていたり、噴射弁の噴射孔の詰まり度合い等が異なっていたりすると、いずれか一つの還元剤供給通路に導入される空気が先に分岐部分に到達する。そうすると、還元剤と空気の密度や粘性抵抗の違いから、他の還元剤供給通路内の還元剤が吸い戻されにくくなって、還元剤が残留しやすくなる。
【0009】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、2つ以上の還元触媒の上流側に備えられた複数の噴射弁にそれぞれ通じる還元剤供給通路から還元剤を回収する際に、残留する還元剤を低減可能な還元剤供給制御装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のある観点によれば、内燃機関の排気通路に設けられた第1の還元触媒の上流側に還元剤を供給する第1の噴射弁と、第1の還元触媒の下流側に設けられた第2の還元触媒の上流側に還元剤を供給する第2の噴射弁と、貯蔵タンク内の還元剤を第1の噴射弁及び第2の噴射弁に供給するポンプと、第1の噴射弁、第2の噴射弁及びポンプを制御する制御装置と、を備えた、還元剤供給制御装置であって、制御装置は、内燃機関の停止時に、第1の噴射弁及び第2の噴射弁を開弁して、還元剤を貯蔵タンクへと回収するポンプを駆動する回収制御部を備え、ポンプから第1の噴射弁及び第2の噴射弁へ還元剤を供給する還元剤供給通路は、ポンプと分岐部を接続する第1の還元剤供給通路と、分岐部と第1の噴射弁を接続する第2の還元剤供給通路と、分岐部と第2の噴射弁を接続する第3の還元剤供給通路とを含み、回収制御部は、第2の還元剤供給通路の容量及び第3の還元剤供給通路の容量に基づき、第1の噴射弁を介して第2の還元剤供給通路に導入される気体が分岐部に到達しないように、かつ、第2の噴射弁を介して第3の還元剤供給通路に導入される気体が分岐部に到達しないように還元剤を回収した後、第1の還元剤供給通路に気体を導入させて還元剤を回収する還元剤供給制御装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように本発明によれば、2つ以上の還元触媒の上流側に備えられた複数の噴射弁にそれぞれ通じる還元剤供給通路から還元剤を回収する際に、残留する還元剤を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態に係る還元剤供給制御装置の構成例を示す模式図である。
【
図2】同実施形態に係る還元剤供給制御装置の構成例を示すブロック図である。
【
図3】同実施形態に係る還元剤供給制御装置による尿素水溶液の回収制御の一例を示すフローチャートである。
【
図4】第1回収制御中の第1の噴射弁及び第2の噴射弁それぞれの開弁期間の例を示す説明図である。
【
図5】第1回収制御中の第1の噴射弁及び第2の噴射弁それぞれの開弁期間の例を示す説明図である。
【
図6】第1回収制御中の第1の噴射弁及び第2の噴射弁それぞれの開弁期間の例を示す説明図である。
【
図7】第1回収制御中の第1の噴射弁及び第2の噴射弁それぞれの開弁期間の例を示す説明図である。
【
図8】第2回収制御中の第1の噴射弁及び第2の噴射弁それぞれの開弁期間の例を示す説明図である。
【
図9】第2回収制御中の第1の噴射弁及び第2の噴射弁それぞれの開弁期間の例を示す説明図である。
【
図10】第2回収制御中の第1の噴射弁及び第2の噴射弁それぞれの開弁期間の例を示す説明図である。
【
図11】第2回収制御中の第1の噴射弁及び第2の噴射弁それぞれの開弁期間の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0014】
<1.尿素SCRシステムの全体構成>
まず、本実施形態に係る還元剤供給制御装置を適用可能な尿素SCRシステムの全体構成の一例を説明する。
図1は、本実施形態に係る尿素SCRシステム10の構成例を示す模式図である。
【0015】
尿素SCRシステムは、ディーゼルエンジンに代表される内燃機関5の排気通路11の途中に設けられた第1の還元触媒17及び第2の還元触媒13と、第1の還元触媒17及び第2の還元触媒13それぞれの上流側で排気通路11内に尿素水溶液を供給するための還元剤供給制御装置30とを備える。尿素SCRシステム10は、車両や建設機械、農機、産業機械等の内燃機関5の排気系に設けられ、還元剤としての尿素水溶液を用いて、内燃機関5の排ガス中のNOXを還元し、排ガスを浄化する。
【0016】
尿素水溶液としては、例えば凍結温度が最も低い、約32.5%濃度の尿素水溶液が用いられる。この場合の凍結温度は、約マイナス11℃である。かかる尿素水溶液は、濃度が変化することにより凍結温度が上昇する特性を有しており、溶媒としての水分が蒸発したり、水分が混入したりすることによって結晶化しやすくなる。
【0017】
第1の還元触媒17及び第2の還元触媒13は、それぞれ内燃機関5の排ガス中に含まれるNOXを選択的に還元する。具体的に、第1の還元触媒17及び第2の還元触媒13は、還元剤供給制御装置30により供給される尿素水溶液が分解して生成されるアンモニアを吸着し、流入する排ガス中のNOXをアンモニアと反応させることにより還元する。第1の還元触媒17及び第2の還元触媒13は、触媒温度が高いほどアンモニアの最大吸着量が減少する特性を有する。また、第1の還元触媒17及び第2の還元触媒13は、最大吸着量に対する実際のアンモニアの吸着率が高いほど、NOXの還元効率が高くなる特性を有する。さらに、第1の還元触媒17及び第2の還元触媒13は、触媒温度が高すぎたり低すぎたりすると、NOXの還元効率が低下する特性を有する。
【0018】
本実施形態において、第1の還元触媒17は、排ガス中の煤等の粒子状物質(PM:Particulate Matter)を捕集するパティキュレートフィルタに触媒成分を担持させて構成され、還元触媒及びパティキュレートフィルタの機能を併せ持つ。例えば、第1の還元触媒17は、内燃機関5に近接する位置において排気通路11内に設けられる。第2の還元触媒13は、第1の還元触媒17よりも下流側の排気通路11内に設けられる。尿素SCRシステム10が乗用車に搭載されるシステムである場合、例えば、第1の還元触媒17はエンジンルーム内に位置し、第2の還元触媒13は車室のフロア下に位置する。第2の還元触媒13は、熱源となる内燃機関5から離れた位置に配置されるため、熱による劣化を抑制することができる。第2の還元触媒13の触媒容量は、第1の還元触媒17の触媒容量よりも大きくてもよい。
【0019】
第1の還元触媒17は、内燃機関5に近接する位置に設けられていることから、内燃機関5の始動時における第1の還元触媒17の温度の上昇速度が、第2の還元触媒13の温度の上昇速度よりも速くなることがある。この場合、第1の還元触媒17は、内燃機関5の始動後、第2の還元触媒13よりも早く活性化温度に到達するものの、その後の温度上昇に伴ってアンモニアの最大吸着量が減ってアンモニアがスリップしやすくなる。一方、第2の還元触媒13は、内燃機関5の始動後、活性化温度に到達するまでの時間が第1の還元触媒17が活性化温度に到達するまでの時間よりも長くなるものの、第1の還元触媒17からスリップしたアンモニアを吸着することができる。
【0020】
また、内燃機関5の運転状態によっては、第1の還元触媒17の温度が高くなりすぎて、第1の還元触媒17におけるアンモニアの吸着量が減少し、アンモニアがスリップしやすくなる。さらに、第1の還元触媒17に、その時点でのアンモニアの吸着可能量を超えるアンモニアが供給された場合には、アンモニアがスリップする。このような場合においても、第2の還元触媒13は、第1の還元触媒17からスリップしたアンモニアを吸着することができる。
【0021】
第1の還元触媒17の上流側の排気通路11に、酸化触媒19が設けられている。酸化触媒19は、排ガス中の未燃燃料(HC)を酸化してその酸化熱により排気温度を上昇させ、パティキュレートフィルタとしての機能を有する第1の還元触媒17に捕集されたPMを燃焼させる機能を有する。また、酸化触媒19は、排ガス中の一酸化窒素(NO)の一部を酸化して二酸化窒素(NO2)へ変化させる機能を有する。
【0022】
なお、第1の還元触媒17は、パティキュレートフィルタに触媒成分を担持させたものに限定されない。また、酸化触媒19は、尿素SCRシステム10に必須の構成要素ではない。酸化触媒19の代わりに、NOX吸蔵触媒が設けられていてもよい。
【0023】
還元剤供給制御装置30は、第1の還元触媒17及び第2の還元触媒13それぞれの上流側の排気通路11内に尿素水溶液を供給する。第1の還元触媒17に対する尿素水溶液の供給量は、第1の還元触媒17に流入する排ガス中のNOX濃度や第1の還元触媒17の温度(第1の触媒温度)、第1の還元触媒17におけるアンモニアの吸着量等に基づいて、第1の還元触媒17の下流側にNOXあるいはアンモニアが流出しないように設定される。また、第2の還元触媒13に対する尿素水溶液の供給量は、第2の還元触媒13に流入する排ガス中のNOX濃度や第2の還元触媒13の温度(第2の触媒温度)、第2の還元触媒13におけるアンモニアの吸着量等に基づいて、第2の還元触媒13の下流側にNOXあるいはアンモニアが流出しないように設定される。
【0024】
還元剤供給制御装置30は、第1の還元触媒17の上流側の排気通路11に取り付けられた第1の噴射弁31と、第2の還元触媒13の上流側の排気通路11に取り付けられた第2の噴射弁33と、尿素水溶液を圧送するポンプ41とを備える。これらの第1の噴射弁31、第2の噴射弁33及びポンプ41の駆動は、制御装置60によって制御される。ポンプ41から第1の噴射弁31及び第2の噴射弁33に供給される尿素水溶液の圧力は、圧力センサ43により検出される。圧力センサ43を用いる代わりに、ポンプ41の駆動電流波形に基づいて尿素水溶液の圧力を推定するようにしてもよい。
【0025】
ポンプ41は、例えば、電動式のダイヤフラムポンプや電動式のギヤポンプであってもよい。ポンプ41の出力は、制御装置60により制御される。本実施形態に係る尿素SCRシステム10において、制御装置60は、第1の噴射弁31及び第2の噴射弁33への尿素水溶液の供給圧が所定の目標圧となるように、圧力センサ43により検出される圧力と目標圧との差分に基づいてポンプ41の出力をフィードバック制御する。ただし、尿素水溶液の噴射量分を補充するようにポンプ41の出力が制御されてもよい。
【0026】
第1の噴射弁31及び第2の噴射弁33は、例えば、通電制御により開弁及び閉弁が切り替えられる電磁式開閉弁であってもよい。かかる噴射弁は電磁コイルを備え、電磁コイルへの通電により発生する磁力によって弁体が移動して開弁する構造を有している。第1の噴射弁31は、第1の供給通路45及び第2の供給通路46を介してポンプ41に接続されている。また、第2の噴射弁33は、第1の供給通路45及び第3の供給通路47を介してポンプ41に接続されている。つまり、ポンプ41の吐出側に接続された第1の供給通路45は、分岐部44において第2の供給通路46及び第3の供給通路47に分岐しており、第2の供給通路46又は第3の供給通路47はそれぞれ第1の噴射弁31及び第2の噴射弁33に接続されている。
【0027】
上記のとおり、本実施形態においては、第1の噴射弁31及び第2の噴射弁33への尿素水溶液の供給圧は所定の目標圧で維持されており、制御装置60は、尿素水溶液の目標噴射量に応じて第1の噴射弁31及び第2の噴射弁33それぞれの開弁時間を調節する。例えば、第1の噴射弁31及び第2の噴射弁33は、噴孔が排気通路11内に臨むようにして排気管に取り付けられ、尿素水溶液を排気通路11内に直接噴射する。
【0028】
また、ポンプ41と第1の供給通路45との接続部分には流路切換弁42が設けられている。流路切換弁42は、ポンプ41により圧送される尿素水溶液が流れる方向を、貯蔵タンク50側から第1の供給通路45側へ向かう第1の方向と、第1の供給通路45側から貯蔵タンク50側へ向かう第2の方向とに切り替える。流路切換弁42の駆動は、制御装置60によって制御される。例えば、排気通路11への尿素水溶液の噴射制御を実行する場合、流路切換弁42は非通電状態とされて、尿素水溶液が第1の供給通路45側に流れるようにする。一方、内燃機関5の停止時等においては、流路切換弁42は通電状態とされて、尿素水溶液が貯蔵タンク50側に流れるようにして、尿素水溶液の回収を可能とする。
【0029】
なお、尿素水溶液を貯蔵タンク50に回収する手段は、流路切換弁42を用いる構成に限られない。例えば、ポンプ41とは別に、尿素水溶液回収用のポンプを用いて尿素水溶液を回収してもよく、ポンプ41として逆回転可能なポンプを用いて、尿素水溶液を回収してもよい。
【0030】
第1の還元触媒17の下流側、かつ、第2の還元触媒13の上流側の排気通路11には、排気温度を検出する排気温度センサ21が設けられている。排気温度センサ21のセンサ信号は制御装置60に送信される。排気温度センサ21により検出される排気温度は、第2の還元触媒13の温度の推定にも用いられる。また、第2の還元触媒13よりも下流側の排気通路11には、NOX濃度を検出するNOXセンサ23が設けられている。NOXセンサ23のセンサ信号は制御装置60に送信される。NOXセンサ23は、アンモニアにも反応し、NOXセンサ23によって第2の還元触媒13の下流側に流出したNOX及びアンモニアが検知される。なお、各種センサの配置位置は、上記の例に限られない。
【0031】
<2.制御装置の構成例>
次に、本実施形態に係る還元剤供給制御装置30の制御装置60の構成例を説明する。
図2は、制御装置60の構成例を示すブロック図である。なお、制御装置60は、一つの制御装置で構成されてもよく、互いに通信可能な複数の制御装置で構成されていてもよい。
【0032】
制御装置60は、例えば、CPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)等のプロセッサや電気回路、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等の記憶素子を備えて構成される。制御装置60の一部又は全部は、ファームウェア等の更新可能なもので構成されてもよく、また、CPU等からの指令によって実行されるプログラムモジュール等であってもよい。
【0033】
制御装置60は、ポンプ制御部65、第1の噴射弁制御部67、第2の噴射弁制御部69、回収制御部61及びエア抜き制御部63を備える。これらの各部の一部又は全部は、プロセッサによるコンピュータプログラムの実行により実現される機能であってもよい。制御装置60は、イグニッションスイッチ3の制御信号、並びに、圧力センサ43、排気温度センサ21及びNOXセンサ23のセンサ信号を取得可能に構成されている。
【0034】
ポンプ制御部65は、ポンプ41の駆動を制御する。本実施形態において、ポンプ制御部65は、排気通路11への尿素水溶液の噴射制御の実行中、圧力センサ43により検出される尿素水溶液の供給圧があらかじめ設定された目標圧となるようにポンプ41の出力をフィードバック制御する。また、内燃機関5の停止時において、ポンプ制御部65は、回収制御部61の指令にしたがってポンプ41を駆動し、第1の供給通路45、第2の供給通路46及び第3の供給通路47内の尿素水溶液を貯蔵タンク50へと戻す。また、内燃機関5の始動時において、ポンプ制御部65は、エア抜き制御部63の指令にしたがってポンプ41を駆動し、第1の供給通路45、第2の供給通路46及び第3の供給通路47内へ尿素水溶液を充填する。
【0035】
第1の噴射弁制御部67は、第1の噴射弁31の駆動を制御する。排気通路11への尿素水溶液の噴射制御の実行中において、第1の噴射弁制御部67は、内燃機関5から排出される排ガス中のNOX濃度、第1の還元触媒17の温度(以下、「第1の触媒温度」ともいう)及び第1の還元触媒17におけるアンモニア吸着可能量の情報に基づいて、第1の噴射弁31による尿素水溶液の目標噴射量を算出する。内燃機関5から排出される排ガス中のNOX濃度は、内燃機関5の運転条件から推定されてもよく、図示しないNOXセンサを用いて検出されてもよい。第1の触媒温度の推定方法は、特に限定されない。例えば、第1の触媒温度は、内燃機関5の運転条件から推定される排気温度に基づいて推定されてもよい。また、第1の触媒温度は、さらに排気流量、外気温度又は排気温度センサ21により検出される排気温度のうちの少なくとも一つを用いて推定されてもよい。
【0036】
第1の還元触媒17におけるアンモニア吸着可能量は、第1の触媒温度に応じた最大吸着量と、第1の還元触媒17におけるアンモニアの消費量及び第1の還元触媒17へのアンモニアの供給量の積算量との差として求めることができる。また、第1の噴射弁制御部67は、算出した目標噴射量にしたがって第1の噴射弁31への電力供給を制御する。例えば、第1の噴射弁制御部67は、目標噴射量にしたがって、一サイクル中の第1の噴射弁31への通電時間である駆動デューティ比を制御する。
【0037】
また、内燃機関5の停止時において、第1の噴射弁制御部67は、回収制御部61の指令にしたがって第1の噴射弁31を開弁し、尿素水溶液の回収に合わせて第2の供給通路46内に空気が導入されるようにする。また、内燃機関5の始動時において、第1の噴射弁制御部67は、エア抜き制御部63の指令にしたがって第1の噴射弁31を開弁し、尿素水溶液の充填時に第1の供給通路45内から空気が排出されるようにする。
【0038】
第2の噴射弁制御部69は、第2の噴射弁33の駆動を制御する。本実施形態において、第2の噴射弁制御部69は、排気通路11への尿素水溶液の噴射制御の実行中、第1の還元触媒17の下流側の排ガス中のNOX濃度、第2の還元触媒13の温度(以下、「第2の触媒温度」ともいう)及び第2の還元触媒13におけるアンモニア吸着可能量の情報に基づいて、第2の噴射弁33による尿素水溶液の目標噴射量を算出する。第1の還元触媒17の下流側の排ガス中のNOX濃度は、内燃機関5の運転条件及び第1の還元触媒17によるNOXの浄化率から推定されてもよく、図示しないNOXセンサを用いて検出されてもよい。第2の触媒温度の推定方法は、特に限定されない。例えば、第2の触媒温度は、排気温度センサ21により検出される排気温度に基づいて推定されてもよい。また、第2の触媒温度は、さらに排気流量又は外気温度を用いて推定されてもよい。
【0039】
第2の還元触媒13におけるアンモニア吸着可能量は、第2の触媒温度に応じた最大吸着量と、第2の還元触媒13におけるアンモニアの消費量及び第2の還元触媒13へのアンモニアの供給量の積算量との差として求めることができる。また、第2の噴射弁制御部69は、算出した目標噴射量にしたがって第2の噴射弁33への電力供給を制御する。例えば、第2の噴射弁制御部69は、目標噴射量にしたがって、一サイクル中の第2の噴射弁33への通電時間である駆動デューティ比を制御する。
【0040】
また、内燃機関5の停止時において、第2の噴射弁制御部69は、回収制御部61の指令にしたがって第2の噴射弁33を開弁し、尿素水溶液の回収に合わせて第3の供給通路47内に空気が導入されるようにする。また、内燃機関5の始動時において、第2の噴射弁制御部69は、エア抜き制御部63の指令にしたがって第2の噴射弁33を開弁し、尿素水溶液の充填時に第3の供給通路47内から空気が排出されるようにする。
【0041】
エア抜き制御部63は、内燃機関5の始動時において、第1の供給通路45、第2の供給通路46及び第3の供給通路47内の空気を排気通路11へ排出しながら、第1の供給通路45、第2の供給通路46及び第3の供給通路47内に尿素水溶液を充填するエア抜き制御を行う。エア抜き制御部63は、第1の供給通路45及び第2の供給通路46内に尿素水溶液を充填する際、第1の噴射弁31を開弁して第2の供給通路46から排気通路11へ空気を排出する。また、エア抜き制御部63は、第1の供給通路45及び第3の供給通路47内に尿素水溶液を充填する際、第2の噴射弁33を開弁して第3の供給通路47から排気通路11へ空気を排出する。
【0042】
回収制御部61は、内燃機関5の停止時において、第1の供給通路45、第2の供給通路46及び第3の供給通路47内の全部又は一部の尿素水溶液を貯蔵タンク50内に回収する制御を行う。例えば、回収制御部61は、イグニッションスイッチ3の制御信号に基づいて内燃機関5の停止を検知した場合、流路切換弁42に電力を供給し、ポンプ41により圧送される尿素水溶液が第1の供給通路45側から貯蔵タンク50側へと流れる状態として、ポンプ41を駆動させる。これにより、第1の供給通路45及び第3の供給通路47内の尿素水溶液が貯蔵タンク50側に吸い戻される。その際に、回収制御部61は、第1の供給通路45及び第3の供給通路47内の圧力が負圧になった後に第1の噴射弁31及び第2の噴射弁33を開弁させ、第1の供給通路45及び第3の供給通路47内に空気が導入されるようにする。これにより、排気通路11内への尿素水溶液の漏洩が抑制される。
【0043】
本実施形態において、回収制御部61は、第2の供給通路46の容量及び第3の供給通路47の容量に基づき、第1の噴射弁31を介して第2の供給通路46に導入される空気が分岐部44に到達しないように、かつ、第2の噴射弁33を介して第3の供給通路47に導入される空気が分岐部44に到達しないように尿素水溶液を回収した後、第1の供給通路45に空気を導入させて尿素水溶液を回収する。第2の供給通路46及び第3の供給通路47の容量は、それぞれ配管の内径及び長さに基づいてあらかじめ求められる。以下、第2の供給通路46及び第3の供給通路47内の尿素水溶液を吸い戻す制御を第1回収制御といい、その後第1の供給通路45内の尿素水溶液を吸い戻す制御を第2回収制御という。
【0044】
図3は、回収制御部61による尿素水溶液の回収制御処理の一例を示すフローチャートである。回収制御部61は、内燃機関5のイグニッションスイッチがオフになったことを検知すると(ステップS11)、ポンプ41の出力をあらかじめ設定された所定値で固定してポンプ41を駆動させる(ステップS13)。次いで、回収制御部61は、第1回収制御を実行する(ステップS15)。
【0045】
例えば、第1回収制御において、回収制御部61は、合計の開弁時間が、第2の供給通路46の容量に応じて設定された時間となるように第1の噴射弁31を開弁させ、第1の噴射弁31を介して第2の供給通路46に導入される空気が分岐部44に到達しないように、第2の供給通路46から尿素水溶液を回収する。また、第1回収制御において、回収制御部61は、合計の開弁時間が、第3の供給通路47の容量に応じて設定された時間となるように第2の噴射弁33を開弁させ、第2の噴射弁33を介して第3の供給通路47に導入される空気が分岐部44に到達しないように、第3の供給通路47から尿素水溶液を回収する。
【0046】
具体的には、回収制御部61は、尿素水溶液を回収する制御を実行する間、ポンプ41の出力(回転数)を所定値に固定させることで、あらかじめ決められた第2の供給通路46あるいは第3の供給通路47の容量分の尿素水溶液が吸い戻される時間を求めることができる。あるいは、尿素水溶液を回収する制御を実行する間、ポンプ41の出力を所定値に固定させ、第2の供給通路46及び第3の供給通路47のそれぞれから尿素水溶液が吸い戻される時間を、実機を用いて、あるいは、シミュレーションによりあらかじめ求めてもよい。
【0047】
第1回収制御中、第1の噴射弁31及び第2の噴射弁33をそれぞれ開弁状態で維持する期間は、重複してもよく、あるいは、重複しないようにずらされてもよい。ただし、いずれかの噴射弁を開弁状態で維持するすべての期間を、他方の噴射弁を開弁状態で維持する期間と重複させることにより、第2の供給通路46及び第3の供給通路47内の尿素水溶液の回収時間を短くすることができる。
【0048】
図4~
図7は、
図1に示した尿素SCRシステム10において、第1回収制御中の第1の噴射弁31及び第2の噴射弁33それぞれの開弁期間の例を示している。
図1に示すように、本実施形態に係る尿素SCRシステム10では、第2の供給通路46の長さが第3の供給通路47の長さよりも長く、第2の供給通路46の容量が第3の供給通路47の容量よりも大きくなっている。
【0049】
図4は、第1の噴射弁31及び第2の噴射弁33を時刻t0で同時に開弁し、第2の噴射弁33を第1の噴射弁31を閉弁する時刻t2よりも先の時刻t1に閉弁する例を示す。
図5は、第2の噴射弁33を第1の噴射弁31を開弁する時刻t0よりも後の時刻t11に開弁し、第1の噴射弁31及び第2の噴射弁33を時刻t12で同時に閉弁する例を示す。
図6は、第2の噴射弁33を第1の噴射弁31を開弁する時刻t0よりも後の時刻t21に開弁し、第2の噴射弁33を第1の噴射弁31を閉弁する時刻t23よりも先の時刻t22に閉弁する例を示す。
図7は、第2の噴射弁33を第1の噴射弁31を開弁する時刻t31よりも先の時刻t0に開弁し、第2の噴射弁33を第1の噴射弁31を閉弁する時刻t33よりも先の時刻t32に閉弁する例を示す。
【0050】
それぞれの図において、期間Xには、第1の噴射弁31及び第2の噴射弁33がともに開弁状態で維持され、期間Yには、第1の噴射弁31のみが開弁状態で維持され、期間Zには、第2の噴射弁33のみが開弁状態で維持される。このため、期間Xと期間Yとでは、第2の供給通路46から吸い戻される尿素水溶液の流量(ml/秒)が異なる。また、期間Xと期間Zとでは、第3の供給通路47から吸い戻される尿素水溶液の流量(ml/秒)が異なる。例えば、第1の噴射弁31と第2の噴射弁33が同一の噴射弁であり、噴孔面積が同一であり、第2の供給通路46と第3の供給通路47の配管径及び摩擦抵抗が同一である場合、期間Xに第2の供給通路46及び第3の供給通路47からそれぞれ吸い戻される流量(ml/秒)は、期間Yに第2の供給通路46から吸い戻される流量あるいは期間Zに第3の供給通路47から吸い戻される流量(ml/秒)の2分の1となる。
【0051】
期間X~Zそれぞれにおいて第2の供給通路46及び第3の供給通路47から吸い戻される尿素水溶液の流量(ml/秒)を求めることにより、第1の噴射弁31を介して導入される空気及び第2の噴射弁33を介して導入される空気が分岐部44に到達するまでの時間をあらかじめ算出することができる。したがって、
図4~
図7のそれぞれに示す例において、第1の噴射弁31及び第2の噴射弁33を開弁する時期及び閉弁する時刻をあらかじめ設定することができる。
【0052】
図4~
図6に示す例では、相対的に容量の小さい第3の供給通路47を開弁状態で維持するすべての期間が、第2の供給通路46を開弁状態で維持する期間と重複している。一方、
図7に示す例では、第3の供給通路47を開弁状態で維持する期間の一部が、第2の供給通路46を開弁状態で維持する期間と重複していない。このため、第1の噴射弁31を介して第2の供給通路46に導入される空気が分岐部44に到達しないように、かつ、第2の噴射弁33を介して第3の供給通路47に導入される空気が分岐部44に到達しないように尿素水溶液を回収するまでの時間が、
図4~
図6に示す例に比べて長くなっている。
【0053】
回収制御部61は、第1回収制御に続いて、第2回収制御を実行し、第1の供給通路45に空気を導入して尿素水溶液を回収する(ステップS17)。この場合、回収制御部61は、第1の噴射弁31又は第2の噴射弁33の少なくとも一方を開弁状態で維持させる。
【0054】
本実施形態に係る尿素SCRシステム10において、第1の還元触媒17は、パティキュレートフィルタに触媒成分を担持させた触媒であることから、第1の還元触媒17の上流側の排気通路11には、粒子状物質が存在しているおそれがある。このため、
図8に示すように、回収制御部61は、第2回収制御中、第1の噴射弁31を閉じた状態にして、第2の噴射弁33を開弁状態で維持させてもよい。これにより、パティキュレートが第1の噴射弁31内に侵入したり、パティキュレートによって第1の噴射弁31の噴孔が詰まったりすることを防ぐことができる。
【0055】
また、内燃機関5の停止時にパティキュレートフィルタとしての機能を有する第1の還元触媒17に捕集されたパティキュレートを燃焼させる場合等、第1の還元触媒17の下流側が高温になり得る場合がある。このような場合、
図9に示すように、回収制御部61は、第2回収制御中、第2の噴射弁33を閉じた状態にして、第1の噴射弁31を開弁状態で維持させてもよい。これにより、第2の噴射弁33が高温に晒されて損傷することを防ぐことができる。
【0056】
あるいは、第1の供給通路45からの尿素水溶液の回収を開始する時点で、第2の供給通路46又は第3の供給通路47の少なくとも一方に尿素水溶液が残留している場合がある。このため、回収制御部61は、第1の供給通路45から尿素水溶液を回収する期間に、第1の噴射弁31のみを開弁する期間及び第2の噴射弁33のみを開弁する期間をそれぞれ少なくとも一回設けてもよい。例えば、
図10に示すように、回収制御部61は、第2回収制御中、第1の噴射弁31及び第2の噴射弁33を交互に開弁させてもよい。これにより、第2の供給通路46及び第3の供給通路47に残留していた尿素水溶液を回収することができる。
【0057】
さらに、
図11に示すように、回収制御部61は、第2回収制御中、第1の噴射弁31及び第2の噴射弁33をともに開弁状態で維持させてもよい。これにより、第2の供給通路46又は第3の供給通路47の少なくとも一方に尿素水溶液が残留していたとしても、いずれかの噴射弁から導入される空気が分岐部44に到達することで、第1の供給通路45から尿素水溶液を回収することができる。また、第2の供給通路46及び第3の供給通路47に尿素水溶液が残留していない状態から第1の供給通路45内の尿素水溶液を回収する仮定の下では、第1の噴射弁31及び第2の噴射弁33をともに開弁状態で維持させた場合の回収時間(
図11の時刻t50~時刻t52)は、第1の噴射弁31又は第2の噴射弁33のいずれか一方のみを開弁状態で維持させた場合の回収時間(
図8~
図10の時刻t50~時刻t51)よりも短くなる。
【0058】
なお、上記の説明において、第1回収制御の終了時に第1の噴射弁31及び第2の噴射弁33をともに閉弁させ、第2回収制御の開始時に第1の噴射弁31及び第2の噴射弁33のうちの少なくとも一方を開弁させるように説明したが、第1回収制御から第2回収制御に亘って、第1の噴射弁31及び第2の噴射弁33のうちの少なくとも一方が継続して開弁状態で維持されていてもよい。
【0059】
第2回収制御が終了すると、回収制御部61は、ポンプ41を停止させる(ステップS19)。これにより、尿素水溶液の回収制御が終了する。
【0060】
以上説明したように、本実施形態に係る還元剤供給制御装置30によれば、第1の噴射弁31を介して第2の供給通路46に導入される空気が分岐部44に到達しないように、かつ、第2の噴射弁33を介して第3の供給通路47に導入される空気が分岐部44に到達しないように尿素水溶液を回収した後、第1の供給通路45に気体を導入させて尿素水溶液を回収する。このため、第2の供給通路46及び第3の供給通路47内に尿素水溶液が残留するおそれを低減することができる。
【0061】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0062】
5 内燃機関、11 排気通路、13 第2の還元触媒、17 第1の還元触媒、31 第1の噴射弁、33 第2の噴射弁、41 ポンプ、45 第1の供給通路、46 第2の供給通路、50 貯蔵タンク、60 制御装置、61 回収制御部、63 エア抜き制御部、67 第1の噴射弁制御部、69 第2の噴射弁制御部