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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】レジスタ
(51)【国際特許分類】
   F24F 13/15 20060101AFI20240321BHJP
   B60H 1/34 20060101ALN20240321BHJP
【FI】
F24F13/15 F
B60H1/34 651B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020037694
(22)【出願日】2020-03-05
(65)【公開番号】P2021139548
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】308016242
【氏名又は名称】豊和化成株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(72)【発明者】
【氏名】金田 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】長濱 真梨恵
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3215056(JP,U)
【文献】特開2019-200038(JP,A)
【文献】特開平10-068548(JP,A)
【文献】特開2000-219038(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 13/15
B60H 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を送風方向へ送風する送風路を有するリテーナと、
前記リテーナの前記送風路において回転可能に設けられ、前記リテーナから吹き出す空気の吹き出し方向を変更する複数の可動フィンと、
前記送風方向における複数の前記可動フィンの上流側に取り付けられた整流部材と、
複数の前記可動フィンの下流側に設けられ、前記リテーナの前記送風路において回転可能に設けられた下流フィンと、
を備え、
複数の前記可動フィンのうち、少なくとも一つの可動フィンは、
前記送風路を流れる空気の一部を流す副流路を設けられ前記副流路から副流を吹き出す副流部材を有し、
前記整流部材は、
複数の前記可動フィンの各々に取り付けられ、一方向に並んで配置される複数の整流フィンと、
複数の前記整流フィンを互いに連結する連結ロッドと、
を有し、
複数の前記整流フィンは、
複数の前記可動フィンが回転した場合に、前記連結ロッドで連結されることで、前記送風方向に対して一定の角度を維持したまま、上流から流れてきた空気を下流の複数の前記可動フィンの表面へ整流し、
前記下流フィンは、
前記可動フィンの回転軸の軸方向において、前記副流部材の前記副流路における下流側の開口とずれた位置に設けられる、レジスタ。
【請求項2】
複数の前記可動フィンの各々は、
板状に形成され、
前記副流部材は、
複数の前記可動フィンの各々に設けられ、複数の前記可動フィンが並ぶ方向において前記可動フィンの内側となる面に設けられる、請求項1に記載のレジスタ。
【請求項3】
前記少なくとも一つの可動フィンは、
一対の前記副流部材を有し、
一対の前記副流部材の各々は、
前記可動フィンの前記軸方向において、前記下流フィンを間に挟む位置に配置される、請求項1又は請求項2に記載のレジスタ。
【請求項4】
前記副流部材は、
前記送風方向における上流側の端部に、前記副流路を広げる拡張部が設けられる、請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載のレジスタ。
【請求項5】
前記リテーナの内部に配置され、前記送風路の流路を狭くする縮流部材を、さらに備え、
複数の前記整流フィンは、
前記縮流部材により流路が狭くなった前記送風路の内部に配置される、請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載のレジスタ。
【請求項6】
前記少なくとも一つの可動フィンは、
板状に形成され、
前記副流部材は、
前記少なくとも一つの可動フィンの平面から直交する方向へ突出した後、前記少なくとも一つの可動フィンの端部側であって、前記少なくとも一つの可動フィンの回転軸の軸方向における外側へ所定の曲率で湾曲して形成され、軸方向における外側を切り欠いた溝により前記副流路を形成する、請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載のレジスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の空調等に用いられるレジスタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、フィンによって空気の吹き出し方向を変更する装置が、種々提案されている。例えば、下記特許文献1の流体吹出装置は、空気を送風するダクト部内に、複数の調整フィンが回転可能に設けられている。そして、複数の調整フィンをダクト部内で回転させることによって、ダクト部の開口から吹き出す空気の向きを変更している。
【0003】
この種の流体吹出装置において、ダクト部の開口から空気を吹き出すと、吹き出した空気の周りには、横渦が発生する。この横渦は、例えば、主流を流れる空気と、周りの静止した空気との速度差に起因して発生する。横渦によって主流が拡散する、あるいは横渦によって周りの空気が主流に引き込まれることで、主流の到達距離が短くなり、主流の温度変化が大きくなる。その結果、所望の温度の空気(冷風や温風)を所望の位置まで到達させることが難くなる。
【0004】
特許文献1の調整フィンの両端には、筒状の副枠体が設けられている。副枠体は、調整フィンの平面に沿った方向に延びている。副枠体は、ダクト部内を流れる空気の一部を取り込み、副流として開口から吹き出す。副枠体から吹き出された副流は、主流の周りに発生した横渦を乱し、横渦の発達を抑え、主流の到達距離を長くして、主流の温度変化を抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第WO2019/216157号(段落0037、0039、図9
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したように、副流によって横渦を抑制することは可能であるが、単純に副流を発生させる部材をフィンに取り付けただけでは、望んだ効果を得られない虞がある。例えば、フィンを回転させ空気の吹き出し方向を変更した場合、上流から流れてきた空気の一部は、所定の角度で傾いたフィンの上流端に当たり、フィンから剥離する方向へ流れる。その結果、副流を発生させる部材内に空気が十分に集まらず、主流の到達距離が短くなり、主流の温度が大きく変化する。このため、副流を用いる装置の構造には、改善の余地があった。
【0007】
本開示は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、副流を流す副流部材をフィンに設けた場合に、空気の温度変化を抑制し温度を維持したまま、より遠くまで主流の空気を送風できるレジスタを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願は、空気を送風方向へ送風する送風路を有するリテーナと、前記リテーナの前記送風路において回転可能に設けられ、前記リテーナから吹き出す空気の吹き出し方向を変更する複数の可動フィンと、前記送風方向における複数の前記可動フィンの上流側に取り付けられた整流部材と、複数の前記可動フィンの下流側に設けられ、前記リテーナの前記送風路において回転可能に設けられた下流フィンと、を備え、複数の前記可動フィンのうち、少なくとも一つの可動フィンは、前記送風路を流れる空気の一部を流す副流路を設けられ前記副流路から副流を吹き出す副流部材を有し、前記整流部材は、複数の前記可動フィンの各々に取り付けられ、一方向に並んで配置される複数の整流フィンと、複数の前記整流フィンを互いに連結する連結ロッドと、を有し、複数の前記整流フィンは、複数の前記可動フィンが回転した場合に、前記連結ロッドで連結されることで、前記送風方向に対して一定の角度を維持したまま、上流から流れてきた空気を下流の複数の前記可動フィンの表面へ整流し、前記下流フィンは、前記可動フィンの回転軸の軸方向において、前記副流部材の前記副流路における下流側の開口とずれた位置に設けられる、レジスタを開示する。
【発明の効果】
【0009】
本願のレジスタによれば、副流を流す副流部材をフィンに設けた場合に、空気の温度変化を抑制し温度を維持したまま、より遠くまで主流の空気を送風できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係るレジスタの正面図である。
図2】レジスタを右前方から見た図である。
図3】レジスタを左後方から見た図である。
図4】レジスタの分解斜視図である。
図5図1に示すA-A線で切断した断面を示す断面図である。
図6図1に示すB-B線で切断した断面を示す断面図である。
図7】上流フィン及び整流部材を右側前方の上方から見た斜視である。
図8図1に示すC-C線で切断した断面を示す断面図である。
図9】左側の第2可動フィンの正面図である。
図10】左側の第2可動フィンの左側面図である。
図11】左側の第2可動フィンの右側面図である。
図12】左側の第2可動フィンの上面図である。
図13】左側の第2可動フィンの下面図である。
図14】左側の第2可動フィンを右側前方の上方から見た斜視図である。
図15】左側の第2可動フィンを右側後方の上方から見た斜視図である。
図16図8に示すD-D線で切断した断面を示す断面図である。
図17】別例の第2可動フィンの正面図である。
図18】別例の第2可動フィンの上面図である。
図19】別例の第2可動フィンの上面図である。
図20】別例の第2可動フィンの上面図である。
図21】整流部材を右側前方の上方から見た斜視図である。
図22】整流部材の正面図である。
図23】整流部材の上面図である。
図24】整流部材の右側面図である。
図25】整流部材の下面図である。
図26図8に示すE-E線で切断した断面を示す断面図である。
図27図6に示す状態から上流フィンを左側へ振った状態を示す図である。
図28図26に示す状態から上流フィンを左側へ振った状態を示す図である。
図29図28に対応する図面であり、整流部材を備えない比較例の構成を示す図である。
図30】到達温度と、指向角との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本願のレジスタを、自動車等の車室前方に配置されるインストルメントパネルに配設され、空調装置で調節された空調空気を車室内に吹き出すレジスタ10に具体化した一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。尚、以下の説明では、図1図3に示すように、本実施形態のレジスタ10における送風方向の下流側(即ち、車室側)を前方とし、送風方向の上流側(即ち、空調装置側)を後方として説明する。また、以下の説明では、レジスタ10の前方においてレジスタ10と正対した使用者の視点を用いて、上下方向及び左右方向を定義し説明する。また、図1図3は、操作ノブ20を初期位置に配置し、下流フィン15を左右方向に沿わせ、上流フィン17を上下方向に沿わせ、空調空気の吹出方向を変更しない状態(以下、ニュートラル状態という場合がある)を示している。より具体的には、下流フィン15のニュートラル状態とは、空調空気の送風方向22(図5参照)における下流フィン15の上流端と下流端を送風方向22に沿わせた状態である。同様に、上流フィン17のニュートラル状態とは、空調空気の送風方向22における上流フィン17の上流端と下流端を送風方向22に沿わせた状態である。
【0012】
(レジスタ10の構成)
本実施形態のレジスタ10は、空調装置で調節された空調空気を車室内に吹き出す装置である。図1図4に示すように、レジスタ10は、リテーナ11と、ベゼル13と、下流フィン15と、ダンパプレート16と、上流フィン17、整流部材19等を備えている。レジスタ10は、例えば、合成樹脂の射出成形により成形されている。リテーナ11は、前後方向に延びる筒状をなしている。リテーナ11の内部には、送風路21(図1参照)が形成されている。リテーナ11の後端部は、送風路21を介してダクト(図示略)が接続される。このダクトは、空調装置(図示省略)に接続され、空調装置から供給される空調空気をリテーナ11へ送風する。
【0013】
ベゼル13は、リテーナ11の前面に配設される部材である。ベゼル13は、左右方向に長い空気吹出口31を形成され、リテーナ11の前方側(下流側)の開口部である下流側開口部23(図4参照)に取り付けられている。ベゼル13は、下流側開口部23に合わせた大きさの空気吹出口31を形成され、下流側開口部23の周縁を前面から覆う枠のような部材である。リテーナ11は、ベゼル13の空気吹出口31に連通する筒状をなし、空気吹出口31に向かう方向である送風方向22(図5)へ空調空気を送風する。以下の説明では、送風方向22の上流側、及び下流側という用語を用いて説明する場合がある。送風路21(リテーナ11)は、送風方向22に直交する平面で切断した断面形状が、左右方向に長い略長方形状をなしている。また、ベゼル13は、被取付部32の穴をリテーナ11の取付部24の突起に係合させて、リテーナ11に対して固定されている。空気吹出口31は、空調装置で調節され送風路21を流れる空調空気を、レジスタ10の外部(乗員などの使用者側)に向けて吹き出す。尚、以下の説明では、送風路21を通り、空気吹出口31から吹き出す空調空気の主な流れを主流という場合がある。また、送風路21を流れる空調空気のうち、後述する副流部材73(図1参照)から吹き出される空調空気を副流という場合がある。この副流は、主流の周りに発生する横渦を乱し、横渦の発達を抑え、主流の到達距離を長くして、主流の温度変化を抑制する。
【0014】
(下流フィン15の構成)
下流フィン15は、リテーナ11の下流側開口部23(ベゼル13とリテーナ11の接続部分)の内側に配置されている。レジスタ10は、複数(本実施形態では3つ)の下流フィン15を備えている。3つの下流フィン15は、上下方向に並んで配置されている。3つの下流フィン15は、後述する操作ノブ20の取り付け構造などを除いて、略同一の構造をなしている。
【0015】
下流フィン15は、前後方向に所定の幅を有し、上下方向に薄く、左右方向に長い板状をなしている。図6に示すように、左右方向における下流フィン15の側面には、フィン軸41がそれぞれ設けられている。フィン軸41は、下流フィン15の前端に設けられている。また、リテーナ11は、左右方向で互いに対向する一対の側壁44を有している。下流フィン15の一対のフィン軸41は、左右方向で対向する一対の側壁44の各々に取り付けられた軸受部材43によって回転可能に保持されている。これにより、複数の下流フィン15の各々は、リテーナ11及び軸受部材43によってフィン軸41を保持され、リテーナ11に対して上下方向へ回転可能となっている。尚、図6は、図面を分かり易くするため、一部の部材(ダンパプレート16、上流フィン17、整流部材19など)を断面ではなく、端面で図示している。また、アーム63等の一部の部材を透過的に図示している。
【0016】
また、下流フィン15の右側の端面には、連結軸45が形成されている。3つの下流フィン15のうち、任意の下流フィン15の連結軸45は、他の下流フィン15の連結軸45と連結部材47により連結され、回転する力を連結部材47により伝達される。これにより、複数の下流フィン15は、互いに連動して上下方向へ回転し、空気吹出口31から吹き出す空調空気の吹き出し方向を上下方向に変更する。尚、上下方向における中央の下流フィン15には、右側の端面に規制軸49が形成されている。下流フィン15は、規制軸49を軸受部材43に挿入することで上下方向への回転範囲を一定の範囲に規制されている。尚、上記した下流フィン15の構成は、一例である。例えば、下流フィン15は、規制軸49を備えなくとも良い。
【0017】
また、上下方向における中央の下流フィン15には、操作ノブ20が取り付けられている。操作ノブ20は、下流フィン15を挿入した状態で下流フィン15に取り付けられ、左右方向にスライド可能に取り付けられている。操作ノブ20は、下流フィン15に形成された規制溝15A(図6参照)によって、左右方向のスライド範囲を一定の範囲内に規制されている。このスライド範囲は、後述する上流フィン17の左右方向への振れ幅となっている。
【0018】
(ダンパプレート16の構成)
図3及び図5に示すように、上流フィン17の後方側(上流側)であって、リテーナ11の送風路21内にはダンパプレート16が設けられている。ダンパプレート16は、左右方向に長い板状をなし、リテーナ11により上下方向へ回転可能に保持されている。ダンパプレート16は、ベゼル13に設けられた操作ダイヤル18と連結されており、操作ダイヤル18の回転に合わせて上下方向へ回転する。ダンパプレート16は、回転して送風路21を開閉し、空気吹出口31から吹き出す空調空気の量の調整や、空調空気の供給と供給の停止の切り替えを行なう。
【0019】
(上流フィン17及び整流部材19の構成)
次に、上流フィン17の詳細な構成について説明する。図4図7に示すように、リテーナ11の送風路21において、下流フィン15の上流側には、上流フィン17が配置されている。本実施形態の上流フィン17は、1つの第1可動フィン51と、6つの第2可動フィン53とを有する。第1及び第2可動フィン51,53は、左右方向に沿って所定の間隔を間に設けて並んで配置されている。第1可動フィン51は、左右方向における中央に配置されている。6つの第2可動フィン53は、中央の第1可動フィン51の右側に3つ、左側に3つそれぞれ配置されている。以下の説明では、まず、第1可動フィン51について説明し、その後、第2可動フィン53について説明する。また、第1及び第2可動フィン51,53を総称する場合は、単に「可動フィン」と記載する場合がある。
【0020】
図5及び図7に示すように、第1可動フィン51は、第1本体部55と、一対の第1フィン軸57とを有している。第1本体部55は、左右方向に所定の厚みを有し、上下方向及び前後方向に長い略板状をなしている。第1本体部55には、左右方向に貫通する貫通孔59が形成されている。貫通孔59は、例えば、長方形を上下方向に伸ばし、後方側の一辺を後方側へ突出させた形状をなしている。第1本体部55には、貫通孔59を形成された部分の前端に、リンク軸61が形成されている。リンク軸61は、上下方向に長い円柱形状をなしている。操作ノブ20には、第1可動フィン51のリンク軸61に連結される一対のアーム63(図6参照)が設けられている。一対のアーム63は、操作ノブ20の後端から後方へ二股に突出している。一対のアーム63は、左右方向の両側からリンク軸61を挟み、上下方向の中央の下流フィン15と、左右方向の中央の第1可動フィン51とを連結する。これにより、操作ノブ20の左右方向へのスライド移動が、第1可動フィン51へ伝達される。第1可動フィン51は、操作ノブ20のスライド移動において、アーム63を貫通孔59内に挿入することで、アーム63との干渉を抑制する。上下方向におけるリンク軸61の両端には、アーム63の上下方向への移動を規制するストッパ65が設けられている。
【0021】
一対の第1フィン軸57は、上下方向における第1本体部55の両端のそれぞれに設けられている。リテーナ11の上下方向で対向する一対の側壁66には、軸受け部材67がそれぞれ取り付けられている。一対の第1フィン軸57の各々は、軸受け部材67の各々によって回転可能に保持されている。これにより、第1可動フィン51は、軸受け部材67を介してリテーナ11によって第1フィン軸57を回転可能に保持され、上下方向を軸方向として回転可能となっている。尚、一対の軸受け部材67の各々には、ストッパ65を収容する凹部67A(図4参照)が形成されている。
【0022】
また、第1可動フィン51の第1本体部55の後端部には、上下方向の幅を狭めた連結板55Aが形成されている。連結板55Aの上下方向の両端であって、後方側の端部には、第1連結軸55Bがそれぞれ形成されている。第1連結軸55Bは、後述する整流部材19の整流フィン81に連結されている。
【0023】
次に、6つの第2可動フィン53について説明する。本実施形態の6つの第2可動フィン53は、同様の構成となっている。左側の3つの第2可動フィン53と、右側の3つの第2可動フィン53は、左右対称な構造となっている。以下の説明では、左側の第2可動フィン53について主に説明し、右側の第2可動フィン53についての説明を適宜省略する。また、上記した第1可動フィン51と同様の内容については、その説明を適宜省略する。
【0024】
図7図15に示すように、第2可動フィン53は、第2本体部69と、一対の第2フィン軸71とを有している。第2本体部69は、左右方向に所定の厚みを有し、上下方向及び前後方向に長い略板状をなしている。一対の第2フィン軸71は、上下方向における第2本体部69の両端のそれぞれに設けられている。一対の第2フィン軸71の各々は、リテーナ11に設けられた一対の軸受け部材67によって回転可能に保持されている。これにより、複数の第2可動フィン53は、上下方向を軸方向として回転可能となっている。上流フィン17は、第1可動フィン51の第1フィン軸57と、第2可動フィン53の第2フィン軸71を一対の軸受け部材67に保持されることで、リテーナ11の送風路21において回転し、リテーナ11から吹き出す空調空気の吹き出し方向を左右方向へ変更する。尚、第1可動フィン51及び第2可動フィン53は、ニュートラル状態において、第1本体部55及び第2本体部69の平面を左右方向で対向させ、互いに平行な状態で配設されている。
【0025】
また、第2可動フィン53の第2本体部69の後端部には、上下方向の幅を狭めた連結板69Aが形成されている。連結板69Aの上下方向の両端であって、後方側の端部には、第2連結軸69Bがそれぞれ形成されている。一対の第2連結軸69Bは、後述する整流部材19の整流フィン81に連結されている。
【0026】
また、第2本体部69には、一対の副流部材73が形成されている。一対の副流部材73は、第2本体部69と一体的に形成されている。一対の副流部材73は、左右方向で対向する第2本体部69の2つの面のうち、一方の面に形成されている。一対の副流部材73は、左右方向における第2本体部69の内側の面、即ち、中央の第1可動フィン51側の面に設けられている。より具体的には、6つの第1可動フィン51のうち、第1可動フィン51に対して左側に配置される3つの第2可動フィン53は、第2本体部69の右側面69Cに一対の副流部材73が設けられている。また、第1可動フィン51に対して右側に配置される3つの第2可動フィン53は、第2本体部69の左側面69Dに副流部材73が設けられている。また、一対の副流部材73は、上下方向、即ち、第2可動フィン53の軸方向における第2本体部69の両端のそれぞれに設けられている。
【0027】
また、図9図15に示すように、左側の第2可動フィン53の場合、副流部材73は、第2本体部69の右側面69Cから直交する方向(この場合、右方向)へ突出した後、第2可動フィン53の端部側であって、第2可動フィン53の回転軸の軸方向(この場合、上下方向)における外側へ所定の曲率で湾曲して形成されている。例えば、上側の副流部材73は、右側面69Cから右側へ突出し、上方へと湾曲している。この副流部材73は、第2可動フィン53の軸方向(実施形態では上下方向)において、第2フィン軸71を除く第2本体部69の上端と同じ高さまで形成されている。図16に示すように、第2フィン軸71の位置において、上側の副流部材73の上端の位置は、軸受け部材67から少しだけ下がった位置となっている。換言すれば、副流部材73は、軸受け部材67との間に若干だけ隙間を形成する位置まで延びている。
【0028】
また、図1に示すように、1つの第2可動フィン53に設けられた一対の副流部材73の各々は、第2可動フィン53の軸方向(本実施形態では上下方向)において、下流フィン15を上下方向の両側で挟む位置に設けられている。換言すれば、一対の副流部材73の各々は、軸方向において、下流フィン15とずれた位置に設けられている。これにより、副流部材73から吹き出す副流と、下流フィン15との衝突を避け、副流の流れが下流フィン15により乱されることを抑制でき、縦渦の形を保ったまま副流を吹き出すことができる。図1では、ニュートラル状態の下流フィン15を図示しているが、本実施形態の下流フィン15は、上下方向に振った場合、副流部材73から送風方向22に沿って下流側へ延長した直線と接触しない振り幅となっている。尚、下流フィン15と、副流部材73とは、軸方向で同一位置でも良い。また、下流フィン15を上下方向に振った場合に、副流部材73から送風方向22に沿って下流側へ延長した直線と重なる位置まで振られる振り幅で、リテーナ11に下流フィン15を保持しても良い。
【0029】
また、図9図15に示すように、上下方向及び左右方向に平行な平面で副流部材73を切断した断面は、1/4の略円弧形状をなしている。副流部材73は、第2本体部69の右側面69Cと、前後方向に沿った溝を形成している。この溝は、右側面69Cと副流部材73とで囲む部分を、第2可動フィン53の軸方向における外側だけ切り欠いた形状をなしており、副流路75を形成している。副流部材73の下流側の開口である下流開口73Aは、第2可動フィン53の第2本体部69の前端と面一となる位置に設けられている。より具体的には、下流開口73Aは、送風方向22において第2本体部69の前端と同一の位置で、左右方向でずれた位置に設けられている。
【0030】
また、副流部材73の上流側の開口である上流開口73Bは、第2可動フィン53の第2フィン軸71の位置に設けられている。より具体的には、上流開口73Bは、送風方向22において、第2フィン軸71と同一の位置で、左右方向でずれた位置に設けられている。第2本体部69は、前方に行くに従って左右方向の幅を狭くした先細り形状となっている。このため、副流路75は、前方に行くに従って流路を若干だけ広げた形状となっている。
【0031】
図7に示すように、副流路75は、リテーナ11の中を送風路21へ流れる空調空気の一部を流し、副流79として空気吹出口31から吹き出す。副流79は、例えば、副流路75に沿った方向を中心として回転する縦渦として流れる。一方、空気吹出口31から吹き出される主流の周りに発生する横渦は、送風方向22や副流路75に沿った方向と直交する方向を中心として回転する。このため、副流路75から吹き出された副流79は、例えば、主流の周りに発生した横渦を乱し、横渦の発達を抑えることで、主流の到達距離を長くして、主流の温度変化を抑制することが可能となる。
【0032】
尚、図9図15に示す本実施形態の第2可動フィン53の形状は、一例である。例えば、図17の副流部材101に示すように、副流部材を筒形状にしても良い。副流部材101は、例えば、送風方向22に長い半円形の筒形状で形成されている。上記した図9図15に示す溝形状の副流部材73は、副流部材101のような筒形状の副流部材に比べて、空調空気を副流路75に流す際の副流79の圧力損失を低減することができる。一方で、図17に示す副流部材101のように副流路75を筒形状にすることで、上流開口73B(図12参照)から取り込んだ空調空気を漏らすことなく副流79として前方へ吹き出すことができる。また、副流部材101は、半円形の筒形状に限らず、円形、楕円形、多角形(正方形や長方形など)の筒形状でも良い。また、図17の副流部材102で示すように、副流部材を軸方向の内側に曲げても良い。また、図17に示すように、1つの第2可動フィン53が備える2つの副流部材101,102は、互いに異なる形状でも良い。また、1つの第2可動フィン53は、副流部材を1つだけ備えても良く、3つ以上備えても良い。また、1つの第2可動フィン53は、形状や長さの異なる複数種類の副流部材73を備えても良い。
【0033】
また、図18の副流部材103で示すように、副流部材は、送風方向22における上流側の端部に、副流路75を広げる拡張部103Aを備えても良い。拡張部103Aは、下流側から上流側に行くに従って副流部材103の内壁を外側へと傾斜させ、副流路75の流路(副流部材103の内径)を大きくする形状をなしている。副流路75(上流開口73B)を広げることでより多くの空調空気を副流路75内に取り込むことができる。
【0034】
また、拡張部103Aの形状は、図18に示すような内壁に傾斜面を形成した形状に限らない。例えば、図19に示すように、副流部材103の上流端を右側(第2本体部69から離間する方向)へ曲げ、さらに下流側へと伸ばして拡張部103Aを形成しても良い。これにより、上流開口73Bをさらに広げることができ、より多くの空調空気を副流路75内に取り込むことができる。
【0035】
また、図20の拡張部103Aで示すように、副流部材103の上流端を湾曲させながら右後方へ曲げて拡張部103Aを形成しても良い。この場合、内壁を湾曲した形状にして滑らかな副流路75を形成できる。図19に示すような屈曲した形状に比べて、上流開口73Bから流入する空調空気により発生する渦の大きさや内壁との衝突による流速の低下を抑制できる。即ち、空調空気をよりスムーズに副流路75内へ流すことが可能となる。
【0036】
また、図20に示すように、副流部材103は、送風方向22において第2可動フィン53と同等以上の長さを有しても良い。図20に示す副流部材103は、例えば、送風方向22において第2可動フィン53の上流端から下流端まで形成されている。また、副流部材73の下流開口73Aの位置は、第2可動フィン53の下流端よりも上流側の位置でも良い。従って、本開示の副流部材の形状、長さ、数等は、適宜変更可能である。
【0037】
次に、整流部材19の構成について説明する。図5図7、及び図8に示すように、整流部材19は、送風方向22における上流フィン17の上流側に取り付けられている。図21図25に示すように、整流部材19は、複数の整流フィン81と、連結ロッド83とを有している。複数の整流フィン81の各々は、第1可動フィン51と複数の第2可動フィン53の各々に取り付けられ、左右方向に並んで配置されている。
【0038】
複数の整流フィン81は、同一形状をなし、第1可動フィン51と6個の第2可動フィン53の各々に対応して7個設けられている。整流フィン81は、本体部85、挿入部87、切り欠き部89を有している。本体部85は、左右方向に所定の厚みを有し、左右方向の一方から見た場合に上下方向に長い略長方形状をなしている。本体部85は、上流側から下流側に向かうに従って上下方向の幅を徐々に短くする形状をなしている(図24参照)。
【0039】
また、本体部85の上流端には、上下方向に沿って凸面85Aが形成されている。凸面85Aは、所定の曲率で後方へ突出した曲面で形成されている。これにより、上流から流れきた空調空気を曲面の凸面85Aに当てることで、流速の減少や渦の発生などを抑制できる。また、本体部85の前端(下流端)には、上下方向に沿った凹面85Bが形成されている。凹面85Bは、所定の曲率で後方へと凹んだ曲面で形成されている。
【0040】
図26に示すように、第2可動フィン53の第2本体部69の厚みは、送風方向22において、第2フィン軸71の位置で最も厚くなっている。第2本体部69の厚みは、第2フィン軸71の位置から前方側又は後方側へ行くに従って若干だけ薄くなっている。第2本体部69の前端と後端は、送風方向22の外側に突出した曲面で形成されている。整流フィン81の本体部85の凹面85Bは、第2本体部69の後端の突出形状に合わせて後方側へと凹んでいる。
【0041】
また、図21図25に示すように、挿入部87は、本体部85の前端(凹面85B)の上端部に形成されている。挿入部87は、上下方向に所定の厚みを有する円筒形状をなし、上下方向に貫通する貫通孔87Aを形成されている。各整流フィン81の貫通孔87Aには、第1可動フィン51の上側の第1連結軸55B(図7参照)、又は第2可動フィン53の上側の第2連結軸69Bが挿入される(図7参照)。各整流フィン81は、挿入部87の挿入部87を、第1連結軸55B又は第2連結軸69Bに挿入することで、第1連結軸55B及び第2連結軸69Bにより回転可能に保持される。
【0042】
また、切り欠き部89は、上下方向に所定の厚みを有する円筒形状の板に対し、前部分を切り欠いた形状をなしている。切り欠き部89の円筒部分は、例えば、挿入部87と同一径で形成さている(図25参照)。切り欠き部89は、前部分を扇型形状に切り欠かれている。各整流フィン81の切り欠き部89は、第1可動フィン51の下側の第1連結軸55B、又は第2可動フィン53の下側の第2連結軸69Bに対して後方から嵌め込まれている。各整流フィン81は、切り欠き部89を、第1連結軸55B又は第2連結軸69Bに嵌め込むことで、第1連結軸55B又は第2連結軸69Bにより回転可能に保持される。
【0043】
連結ロッド83は、隣り合う2つの整流フィン81の間に2つ設けられている。隣り合う2つの整流フィン81の間に設けられた一対の連結ロッド83は、上下方向で離れた位置に設けられ、2つの整流フィン81を互いに連結する。各連結ロッド83は、前後方向で所定の幅を有し左右方向に延びる板状に形成されている。複数の整流フィン81は、連結ロッド83によって互いに連結されている。一対の連結ロッド83の各々は、左右方向における長さを同一長さで形成されている。
【0044】
また、複数の整流フィン81は、左右方向において所定の間隔(連結ロッド83の長さ)を間に設けて配置されている。図6に示すニュートラル状態において、複数の整流フィン81は、左右方向において、第1及び第2可動フィン51,53と同一の間隔で配置されている。任意の整流フィン81と、その整流フィン81に連結された可動フィンとは、送風方向22に沿って配置されている。従って、略板形状の整流フィン81と可動フィンとは、一直線上に配置されている。
【0045】
第1及び第2可動フィン51,53は、上記したように上下方向に沿った回転軸を中心に回転する。複数の整流フィン81の前端部は、第1及び第2可動フィン51,53の各々の後端部と連結されている。図27に示すように、整流部材19は、第1可動フィン51の第1連結軸55B、第2可動フィン53の第2連結軸69B(図7参照)の位置に応じて左右方向及び前後方向へ移動する。整流部材19の複数の整流フィン81は、連結ロッド83によって互いに連結されているため、送風方向22に平面を沿わせた状態を維持したまま、上流フィン17の向きに合せて移動する。即ち、複数の整流フィン81は、可動フィンを左右方向に振った場合でも、左右方向の両側の平面を送風方向22に沿ったニュートラル状態(図6参照)を維持する。換言すれば、整流部材19は、複数の連結ロッド83によって複数の整流フィン81を連結することで、ニュートラル状態における送風方向22に対する向きを維持したまま左右方向及び前後方向へ移動する。
【0046】
複数の整流フィン81は、送風方向22に対して一定の角度を維持したまま、上流から流れてきた空気を下流の第1及び第2可動フィン51,53の表面へ整流する。図26の矢印で示すように、複数の整流フィン81は、上流側の凸面85Aを曲面で形成されているため、上流からきた空調空気を凸面85Aに沿って流すことができる。整流フィン81によって下流側へと整流された空調空気は、整流フィン81や整流フィン81と一直線上に並ぶ第2可動フィン53の表面(右側面69Cや左側面69D)から離れる方向へ(剥離する方向へ)流れることを抑制される。空調空気は、第2本体部69の右側面69Cや左側面69Dに沿って流れ、副流部材73の中へ流入する。これにより、副流路75内へ空調空気を安定的に供給し、縦渦による横渦の抑制などの副流79(図7参照)の効果をより高めることができる。
【0047】
また、図28に示すように、第2可動フィン53を左右方向へ振った場合にも、整流フィン81は、送風方向22に対する向きを維持する。図29に示すように、例えば、整流部材19(整流フィン81)を備えない構成において、第2可動フィン53を左方向へ振った場合、第2可動フィン53が送風方向22に対して所定の角度をもって傾くため、上流からきた空調空気は、第2可動フィン53の下流側(右側面69C)から剥離する方向へと流れる。流速が低下し、剥離による渦95が発生し、風切り音が増大する可能性がある。これに対し、図28に示すように、本実施形態のレジスタ10では、第2可動フィン53を振った場合でも、整流フィン81の向きを維持し、整流フィン81によって空調空気の第2可動フィン53からの剥離を抑制することができる。上流から流れてきた空調空気は、凸面85Aに沿って流れ、第2本体部69の右側面69Cや左側面69Dを沿って流れるように整流される。従って、第2可動フィン53を左右方向へ振った場合にも副流79の効果をより高めることができる。
【0048】
また、上流フィン17は、整流部材19によって第1及び第2可動フィン51,53を互いに連結されている。このため、第1及び第2可動フィン51,53の何れかが回転すると、その回転する力が整流部材19によって他の可動フィンへ伝達される。従って、第1及び第2可動フィン51,53は、上下方向に沿った回転軸を中心に、互いに連動して左右方向へ回転する。操作ノブ20を左右方向へスライド移動させると、操作ノブ20の移動に合わせて中央の第1可動フィン51が左右方向へ回転する。複数の第2可動フィン53は、第1可動フィン51に連動して左右方向へ回転する。これにより、操作ノブ20を操作することで、リテーナ11から吹き出す空調空気の吹き出し方向を左右方向へ変更することができる。
【0049】
また、図5及び図8に示すように、本実施形態のリテーナ11の上下方向で対向する一対の側壁66には、軸受け部材67がそれぞれ取り付けられている。一対の軸受け部材67は、薄い板状に形成され、送風路21の一部を構成している。一対の軸受け部材67は、上流側から下流側に向かうに従って、上下方向において互いに近づく方向へ傾斜している。上下方向における送風路21の流路幅91は、一対の軸受け部材67を取り付けた位置において、上流から下流に向かうに従って徐々に短くなっている。即ち、送風路21の流路が狭くなっている。これにより、空調空気の流れに縮流を発生させ(流れを絞り)、空調空気の流速を速くすることができる。また、一対の軸受け部材67の間を流れる空調空気において、送風路21の中心側の速度と、軸受け部材67(側壁66)側の速度の速度差が小さくすることが可能となる。
【0050】
さらに、本実施形態の整流フィン81は、上下方向において一対の軸受け部材67に挟まれた位置で、且つ一対の軸受け部材67により流路幅91を絞った部分の下流側の位置に配置されている。換言すれば、一対の軸受け部材67によって流速を速くした位置に整流フィン81を配置している。これにより、より速い流速の空調空気を整流フィン81によって整流し、第2可動フィン53の副流部材73内へ案内することができる。縦渦による横渦の抑制などの副流79の効果をより高めることができる。
【0051】
また、図1に示すように、1つの第2可動フィン53に設けられた一対の副流部材73の各々は、第2可動フィン53の軸方向において、一対の連結ロッド83の各々ずれた位置に設けられている。一対の副流部材73の各々は、軸方向において、一対の連結ロッド83の各々の外側に配置されている。これにより、副流部材73へ流し込む風の流れが、上流側の連結ロッド83によって乱されることを抑制でき、縦渦の形を保ったまま副流79を吹き出すことができる。
【0052】
尚、上記した本実施形態の上流フィン17や整流部材19の構成は、一例である。例えば、整流フィン81の数は、第1可動フィン51や第2可動フィン53の数に比べて多くとも良く、あるいは少なくとも良い。即ち、全ての第1及び第2可動フィン51,53に対応して整流フィン81を設けなくとも良い。また、連結ロッド83は、2つの整流フィン81の間に1つ設けても良く、3つ以上設けても良い。また、連結ロッド83は、隣り合う整流フィン81ではなく、1つの以上の整流フィン81を間に挟んだ整流フィン81を連結しても良い。また、連結ロッド83は、板状ではなく、例えば、円柱形状でも良い。
【0053】
次に、本実施形態のレジスタ10によって空調空気を吹き出した場合の測定結果について説明する。図30は、到達温度Tと、指向角θとの関係をグラフで示している。図30のグラフの縦軸は、到達温度T(℃)を示している。測定では、例えば、レジスタ10から冷風を吹き出し、吹き出す冷風の温度、レジスタ10を配置した室内の温度を一定とし測定した。測定位置P1は、レジスタ10から一定の距離Lとなる位置を設定した。到達温度Tは、測定位置P1に到達した空調空気(冷風)の温度を測定した値である。
【0054】
また、グラフの横軸は、指向角θ(度)を示している。指向角θとは、例えば、レジスタ10から実際に吹き出された空調空気の角度である。例えば、ニュートラル状態を「0度」とし、上流フィン17を左方向へ所定の角度ずつ振った場合、指向角θは、上流フィン17の角度(以下、設定角という)とずれが生じる。測定では、下流フィン15の設定角を調整し、同じ指向角θとなるようにして各グラフGR1~GR4(各構成)の測定を行なった。測定では、例えば、上流フィン17を左方向へ振り、設定角を左方向へ変更した(左指向角を変更した)。例えば、左指向角として指向角θを、0度、10度、16度、23度のそれぞれに設定して測定を行なった。測定位置P1は、グラフの右に図示するように、指向角θの変更に合わせて、例えば、レジスタ10の左右方向における中心位置P2から指向角θに沿って一定の距離Lだけ離れた位置である。
【0055】
まず、グラフGR1は、縮流、副流、整流の機構をすべて備えない構成で測定した場合である。具体的には、グラフGR1を測定したレジスタ10の構成は、上記実施形態における一対の軸受け部材67を傾斜させない形状とし送風路21の流路を絞らない構成で、全ての第2可動フィン53に副流部材73を設けない構成で、且つ整流部材19を設けない構成である。即ち、縮流、副流、整流の全ての効果を得ない構成である。グラフGR1に示すように、何も備えない構成では、到達温度Tは、上流フィン17を左に振って指向角θを増加させると、一度下がった後、23度(=指向角θ)で上昇している。
【0056】
また、グラフGR2は、縮流の機構を備えた構成で測定した場合である。具体的には、上記実施形態と同様に一対の軸受け部材67を傾斜させて縮流が発生する構成とし、副流部材73と整流部材19を設けない構成である。グラフGR2に示すように、縮流の機構のみを備える構成では、指向角θが0度の場合、到達温度Tは、グラフGR1を若干上回っている。一方、指向角θを増加させると、到達温度Tは、グラフGR1よりも下回っている。これは、縮流の作用によって流速を高めることで、冷風の到達温度Tの上昇を抑制できたと考えられる。
【0057】
また、グラフGR3は、縮流、副流の機構を備えた構成で測定した場合である。具体的には、上記実施形態と同様に一対の軸受け部材67を傾斜させ、且つ全ての第2可動フィン53に副流部材73を設ける構成とし、整流部材19を設けない構成である。グラフGR3に示すように、縮流と副流の作用によって、指向角θが0度の場合の到達温度Tを、グラフGR1,GR2に比べて大幅に下げることができる。一方、指向角θを増加させると、到達温度Tは、10度、16度の時点で、グラフGR1,GR2を超えている。
【0058】
そして、グラフGR4は、本実施形態のレジスタ10で測定をした場合である。グラフGR4に示すように、本実施形態のレジスタ10では、指向角θが0度の場合の到達温度Tを、グラフGR3よりもさらに下げることができる。グラフGR4の指向角θが0度の場合、到達温度Tは、グラフGR1(何もない構成)に比べて、約2度下がることを確認できた。さらに、本実施形態のレジスタ10(グラフGR4)では、指向角θを増加させた場合でも、他の構成に比べて到達温度Tの上昇を抑えることができる。換言すれば、レジスタ10から吹き出した冷風の温度上昇を抑制し、より遠くまで冷風を送風することができる。本実施形態のレジスタ10では、図30に示すように、指向角θを0度から16までの範囲で、特に顕著な空調性能の向上効果を得ることができた。
【0059】
因みに、上記実施形態において、第2可動フィン53は、可動フィンの一例である。軸受け部材67は、縮流部材の一例である。右側面69C、左側面69Dは、面の一例である。第2フィン軸71は、フィン軸の一例である。下流開口73Aは、開口の一例である。
【0060】
以上、上記した実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)本実施形態のレジスタ10は、空調空気を送風方向22へ送風する送風路21を有するリテーナ11と、リテーナ11の送風路21において回転可能に設けられ、リテーナ11から吹き出す空調空気の吹き出し方向を変更する複数の第2可動フィン53と、送風方向22における複数の第2可動フィン53の上流側に取り付けられた整流部材19と、を備える。複数の第2可動フィン53のうち、少なくとも一つの第2可動フィン53は、送風路21を流れる空調空気の一部を流す副流路75を設けられ副流路75から副流を吹き出す副流部材73を有する。整流部材19は、複数の第2可動フィン53の各々に取り付けられ、一方向に並んで配置される複数の整流フィン81と、複数の整流フィン81を互いに連結する連結ロッド83と、を有する。複数の整流フィン81は、複数の第2可動フィン53が回転した場合に、連結ロッド83で連結されることで、送風方向22に対して一定の角度を維持したまま、上流から流れてきた空調空気を下流の複数の第2可動フィン53の表面(右側面69C、左側面69D)へ整流する。
【0061】
これによれば、副流部材73を有する第2可動フィン53の上流側に、整流フィン81を設け、上流から流れてきた空調空気を、第2可動フィン53の表面へ整流する。整流フィン81で空調空気を整流することで、上流から流れてきた空調空気が、第2可動フィン53の上流端に当たり、第2可動フィン53から剥離する方向へ流れることを抑制できる(図28図29)。特に、第2可動フィン53を回転させた場合、連結ロッド83で連結して整流フィン81を一定の角度で維持することで、送風方向22に対して第2可動フィン53が傾いたとしても、上流から流れてきた空調空気を第2可動フィン53に沿うように流すことができる。これにより、第2可動フィン53に設けられた副流部材73の副流路75内へ空調空気を安定的に集めることができる。その結果、副流部材73から吹き出した副流79(図7参照)の効果により、主流の空調空気の温度変化を抑制し温度を維持したまま、より遠くまで主流の空調空気を送風することができる。
【0062】
(2)また、複数の第2可動フィン53の各々は、板状に形成されている。副流部材73は、複数の第2可動フィン53の各々に設けられ、複数の第2可動フィン53が並ぶ方向(実施形態では左右方向)において第2可動フィン53の内側となる面(右側面69C又は左側面69D)に設けられる。これによれば、隣り合う第2可動フィン53で流路を縮径して流速を高めた空調空気を副流79の空気と合わせて吹き出すことができる。また、副流部材73を内側に設けることで、複数の第2可動フィン53を回転させた場合に、最も外側の第2可動フィン53に設けた副流部材73と、左右方向におけるリテーナ11の側壁44との干渉を抑制することができる。第2可動フィン53の左右方向の回転範囲(振り幅)をより大きくすることができる。
【0063】
(3)また、レジスタ10は、複数の第2可動フィン53の下流側に設けられ、リテーナ11の送風路21において回転可能に設けられた下流フィン15を備える。下流フィン15は、第2可動フィン53の第2フィン軸71の軸方向(上下方向)において、副流部材73の副流路75における下流側の下流開口73Aとずれた位置に設けられる。これによれば、第2可動フィン53に加え、下流フィン15によって空調空気の吹き出し方向を変更できる。また、その下流フィン15を、第2可動フィン53の軸方向において副流路75の下流開口73Aとずれた位置に配置する。下流開口73Aから吹き出した縦渦の副流79の流れが、下流フィン15に当たって乱されることを抑制できる。換言すれば、下流フィン15を配置した場合でも、副流79による効果を維持し、温度を維持したまま、より遠くまで主流を送風することができる。
【0064】
(4)また、第2可動フィン53は、一対の副流部材73を有する。一対の副流部材73の各々は、第2可動フィン53の軸方向(上下方向)において、下流フィン15を間に挟む位置に配置される。これによれば、1つの第2可動フィン53に2つの副流部材73を設けることで、2つの副流79で主流を挟んで横渦の発生や発達を抑制することができる。さらに、2つの副流部材73を下流フィン15からずれた位置に設けることで、2つの副流部材73によって、横渦をより効果的に抑制できる。
【0065】
(5)また、副流部材103は、送風方向22における上流側の端部に、副流路75を広げる拡張部103Aを備えても良い(図18図20)。これによれば、整流フィン81で整流し第2可動フィン53に沿わせた空調空気を、副流路75を広げることでより多く副流路75内に取り込むことができる。
【0066】
(6)また、レジスタ10は、リテーナ11の内部に配置され、送風路21の流路を狭くする軸受け部材67を備える。複数の整流フィン81は、軸受け部材67により流路が狭くなった送風路21の内部に配置される(図5図8)。これによれば、軸受け部材67によって送風路21内を流れる空調空気の流速を上げつつ、整流フィン81によって空調空気を整流して副流路75内へ空気を取り込むことができる。軸受け部材67による流速の加速と整流フィン81の整流作用の相乗効果によって、温度を維持したまま、より遠くまで主流の空調空気を送風することができる。
【0067】
(7)また、副流部材73は、第2可動フィン53の平面から直交する方向へ突出した後、第2可動フィン53の上下方向の端部側であって、第2可動フィン53の第2フィン軸71の軸方向における外側へ所定の曲率で湾曲して形成され、軸方向における外側を切り欠いた溝により副流路75を形成する。これによれば、副流部材73の角を丸め、副流部材73を湾曲した形状にすることで、副流79を縦渦の方向へ(副流部材73の周方向へ)回転し易くできる。また、副流路75を流れる副流79の圧力損失を低減することができる。また、副流部材73を溝形状にすることで、副流路75を流れる副流79の圧力損失をさらに低減することができる。これにより、副流79による横渦の抑制効果をより高めることができる。
【0068】
尚、本願の内容は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本願の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
例えば、本願のレジスタが吹き出す空気は、空調装置で調整された空調空気に限らず、外気等でも良い。
また、本願に係るレジスタとしては、車両に搭載されるレジスタ10に限らず、建物の空調などの様々な空調設備で用いるレジスタを採用できる。即ち、本願のレジスタは、吹き出す空気の方向を変更するものであれば、自動車に限らず広く適用可能である。
上記実施形態では、6個の第2可動フィン53が、全て副流部材73を備えていたが、これに限らない。副流部材73を備える第2可動フィン53は、1個でも良く、6個以外の複数個でも良い。
【0069】
また、上記実施形態のレジスタ10が備える部材の形状や数は、一例である。
例えば、レジスタ10は、下流フィン15を備えず、上流フィン17だけを備える構成でも良い。また、第2可動フィン53を上下方向に回転する構成にしても良い。即ち、第2可動フィン53により、空調空気の吹き出し方向を上下方向に変更しても良い。また、レジスタ10は、下流フィン15を1枚だけ備える構成でも良い。
また、第2可動フィン53や整流フィン81などの各フィンの数を、適宜変更しても良い。例えば、整流フィン81の数は、第2可動フィン53の数に比べ少なくとも良い。
また、副流部材73を、第2可動フィン53の外側に設けても良い。また、左右方向における第2可動フィン53の両側に副流部材73を設けても良い。
また、下流開口73Aの下流側の位置に、下流フィン15を配置しても良い。
また、軸受け部材67は、送風路21の流路を狭く(縮流)しない構成でも良い。また、一対の軸受け部材67の一方だけが縮流する構成でも良い。また、軸受け部材67を左右方向の両側に設けても良い。
【0070】
次に、上記実施形態の内容から導き出される技術的思想について記載する。
(付記1)
前記副流部材は、
前記送風方向における前記少なくとも一つの可動フィンの長さよりも短い流路の前記副流路を設けられる。
これによれば、副流路を、可動フィンの長さよりも短くすることで、上流から流れてきた空気を副流路内へ流しやすくすることができる。副流の効果を高めることができる。
【0071】
(付記2)
前記副流部材は、
前記送風方向における下流側の前記副流路の開口を、前記少なくとも一つの可動フィンの下流側の端部の位置に設けられ、前記送風方向における上流側の前記副流路の開口を、前記少なくとも一つの可動フィンの回転軸と前記送風方向において同一の位置に設けられる。
これによれば、副流部材を、可動フィンの下流端から回転軸の位置までの長さとする。副流部材の長さを可動フィンの略半分にすることができ、副流路内へ空気を流しやすくすることができる。
【0072】
(付記3)
前記連結ロッドは、
前記可動フィンの回転軸の軸方向において、前記副流部材の前記副流路における上流側の開口とずれた位置に設けられる。
これによれば、副流路の上流側の開口と、連結ロッドの位置とをずらすことで、副流路内へ流れる空気の流れが、連結ロッドによって阻害されることを抑制できる。副流路内へ空気を流れやすくできる。
【符号の説明】
【0073】
10 レジスタ、11 リテーナ、15 下流フィン、19 整流部材、21 送風路、22 送風方向、53 第2可動フィン(可動フィン)67 軸受け部材(縮流部材)、69C 右側面(面)、69D 左側面(面)、71 第2フィン軸(フィン軸)、73、101、102、103 副流部材、73A 下流開口(開口)、75 副流路、79 副流、81 整流フィン、83 連結ロッド、103A 拡張部。
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