(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41J 11/14 20060101AFI20240321BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240321BHJP
B65H 7/14 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
B41J11/14
B41J2/01 305
B65H7/14
(21)【出願番号】P 2020051017
(22)【出願日】2020-03-23
【審査請求日】2023-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【氏名又は名称】古市 昭博
(72)【発明者】
【氏名】良知 洋志
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 広信
(72)【発明者】
【氏名】岡部 さちえ
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-018973(JP,A)
【文献】特開2013-001004(JP,A)
【文献】特開2005-199507(JP,A)
【文献】特開2010-083662(JP,A)
【文献】特開2011-162330(JP,A)
【文献】特開平01-133847(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 11/00-11/70
B41J 2/01
B65H 7/00- 7/20
B65H 43/00-43/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方に向かってインクを吐出する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドの下方に設けられ、上下方向に直交する第1方向および第2方向に延びる記録媒体の支持台と、
前記第1方向に延びる回動軸と、前記回動軸周りに上下方向に回動する回動体と、前記回動体の下方への移動を規制することにより前記回動体を第1回動位置に保持するストッパと、前記回動体が前記第1回動位置に位置しているか前記第1回動位置よりも上方の他の回動位置に位置しているかを検出して検出結果に対応する信号を送信する検出器と、を備えた接触検知装置と、
前記記録ヘッドおよび前記支持台のうちの少なくとも一方を移動させることにより、前記支持台を前記記録ヘッドに対して上下方向に移動させる第1移動装置と、
制御装置と、
を備え、
前記回動体は、前記支持台よりも上方に位置する検知部を備え、
前記制御装置は、
前記検出器からの信号を受信する信号受信部と、
前記第1移動装置を制御して、前記支持台を前記記録ヘッドに対して上方に移動させる第1移動制御部と、
前記回動体が他の回動位置に位置していることを示す信号を前記信号受信部が受信したときの前記記録ヘッドに対する前記支持台の上下方向の位置に基づいて前記支持台の上限位置を登録する高さ登録部と、
を備えている、印刷装置。
【請求項2】
前記記録ヘッドおよび前記支持台のうちの少なくとも一方を移動させることにより、前記支持台を前記記録ヘッドに対して前記第2方向に移動させる第2移動装置を備え、
前記第1移動制御部は、前記支持台を前記記録ヘッドに対して間欠的に上方に移動させるように設定され、
前記制御装置は、前記第1移動制御部の制御により前記支持台が前記記録ヘッドに対して上方に移動されるたびに、前記第2移動装置を制御して、前記支持台を前記記録ヘッドに対して前記第2方向の一方に移動させる第2移動制御部を備え、
前記検知部は、前記第2方向の前記一方側に向かって下降傾斜するとともに前記第1方向に延びる第1接触面を有している、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記第1接触面は、前記第1方向視において前記第2方向の他方側に向かって凸した曲面から構成されている、
請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記第1移動制御部は、前記記録ヘッドに対して前記支持台を1回につき第1距離だけ上方に移動させるように設定され、
前記第1接触面のうち下端から前記第1距離だけ上方の位置よりも下方に位置する部分を第1部分とするとき、前記第1部分の全ての法線は、前記回動軸よりも上方を通る、
請求項2または3に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記第1接触面の全ての法線は、前記回動軸よりも上方を通る、
請求項4に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記記録ヘッドおよび前記支持台のうちの少なくとも一方を移動させることにより、前記支持台を前記記録ヘッドに対して前記第2方向に移動させる第2移動装置を備え、
前記第1移動制御部は、前記支持台を前記記録ヘッドに対して間欠的に上方に移動させるように設定され、
前記制御装置は、前記第1移動制御部の制御により前記支持台が前記記録ヘッドに対して上方に移動されるたびに、前記第2移動装置を制御して、前記支持台を前記記録ヘッドに対して前記第2方向の一方または他方に交互に移動させる第2移動制御部を備え、
前記検知部は、
前記第2方向の前記一方側に向かって下降傾斜するとともに前記第1方向に延びる第1接触面と、
前記第2方向の前記他方側に向かって下降傾斜するとともに前記第1方向に延びる第2接触面と、を有している、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記第1接触面は、前記第1方向視において前記第2方向の前記他方側に向かって凸した曲面から構成され、
前記第2接触面は、前記第1方向視において前記第2方向の前記一方側に向かって凸した曲面から構成されている、
請求項6に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記検知部の前記第1方向に関する長さは、前記支持台の前記第1方向に関する長さよりも長い、
請求項1~
7のいずれか一つに記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、様々な厚さの記録媒体に対応可能な印刷装置が知られている。このような印刷装置の中には、記録媒体の支持台が上下方向に移動するように構成された印刷装置が含まれる。かかる印刷装置の一部のものは、記録媒体の高さを測定する機構を有し、記録媒体と記録ヘッドとが接触しない範囲でしか支持台を上下方向に移動できないように構成されている。例えば、特許文献1には、記録媒体を支持するテーブルと、テーブルを上下方向および前後方向に移動させる移動機構と、左右方向に延び記録媒体に接触する板状の検出部材と、検出部材を前後方向に揺動可能に支持する固定部材と、検出部材が傾いたことを検知するセンサと、を備えた印刷装置が開示されている。特許文献1に開示された印刷装置では、テーブルを前後方向に移動させているときに検出部材が記録媒体に接触すると、検出部材が回動する。検出部材の回動は、センサによって検出される。これにより、記録媒体が検出部材の下端以上の高さにあることが検出される。
【0003】
なお、本明細書の説明においては、支持台に載置された記録媒体が上下方向の所定の位置にあるときの支持台の上下方向位置を求めることを「記録媒体の高さを検知する」とも言い、その支持台の上下方向位置を登録することを「記録媒体の高さを登録する」とも言う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたような記録媒体の高さ検出機構では、例えばテーブルの移動等に起因する印刷装置の振動が問題となることがある。詳しくは、特許文献1に開示されたような記録媒体の高さ検出機構では、検出部材が揺動可能に吊られているため、印刷装置の振動により検出部材が揺動する。それによりセンサが反応し、誤検知が発生するおそれがある。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、より確実に記録媒体の高さを検知できる印刷装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示する印刷装置は、下方に向かってインクを吐出する記録ヘッドと、前記記録ヘッドの下方に設けられた記録媒体の支持台と、接触検知装置と、前記記録ヘッドおよび前記支持台のうちの少なくとも一方を移動させることにより前記支持台を前記記録ヘッドに対して上下方向に移動させる第1移動装置と、制御装置とを備えている。前記支持台は、上下方向に直交する第1方向および第2方向に延びている。前記接触検知装置は、前記第1方向に延びる回動軸と、前記回動軸周りに上下方向に回動する回動体と、前記回動体の下方への移動を規制することにより前記回動体を第1回動位置に保持するストッパと、前記回動体が前記第1回動位置に位置しているか前記第1回動位置よりも上方の他の回動位置に位置しているかを検出して検出結果に対応する信号を送信する検出器と、を備えている。前記回動体は、前記支持台よりも上方に位置する検知部を備えている。前記制御装置は、信号受信部と、第1移動制御部と、高さ登録部とを備えている。前記信号受信部は、前記検出器からの信号を受信する。前記第1移動制御部は、前記第1移動装置を制御して、前記支持台を前記記録ヘッドに対して上方に移動させる。前記高さ登録部は、前記回動体が他の回動位置に位置していることを示す信号を前記信号受信部が受信したときの前記記録ヘッドに対する前記支持台の上下方向の位置に基づいて前記支持台の上限位置を登録する。
【0008】
上記印刷装置によれば、回動体は、ストッパによって下方に回動不能かつ上方に回動可能に支持されている。そのため、回動体は、記録媒体等によって押されていないとき、少なくとも自重によって第1回動位置に安定的に位置付けられる。また、回動体は、記録媒体等により上向きの力を受けると上方に回動する。この回動体の回動は、検出器により検出される。そのため、上記印刷装置によれば、回動体に記録媒体等が接触していないにもかかわらず接触したと判断される誤検知が起こりにくく、また、回動体が記録媒体等により上向きの力を受けた場合には、それを検知できる。従って、より確実に記録媒体の高さを検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態に係るプリンタを示す斜視図である。
【
図2】フロントカバーを開けた状態のプリンタを示す正面図である。
【
図6】フラットベッドの上限位置を登録するプロセスのフローチャートである。
【
図7】記録媒体の接触によって回動体が上方に回動する原理を示すための接触検知装置の模式的な左側面図である。
【
図8】他の態様に係る回動体の模式的な左側面図である。
【
図9】さらに他の態様に係る回動体の模式的な左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0011】
図1は、一実施形態に係るインクジェットプリンタ(以下、プリンタと呼ぶ。)10を示す斜視図である。以下の説明では、特に断らない限り、プリンタ10を正面から見たときに、プリンタ10から遠ざかる方を前方、プリンタ10に近づく方を後方とする。左、右、上、下とは、プリンタ10を正面から見たときの左、右、上、下をそれぞれ意味するものとする。また、図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を意味するものとする。図面中の符号Yは主走査方向を示している。主走査方向Yは左右方向である。符号Xは、副走査方向を示している。副走査方向Xは前後方向である。符号Zは、上下方向を示している。主走査方向Y、副走査方向X、および上下方向Zは、互いに直交している。ただし、上記方向は説明の便宜上定めた方向に過ぎず、プリンタ10の設置態様を何ら限定するものではなく、本発明を何ら限定するものでもない。
【0012】
本実施形態では、プリンタ10は、インクジェット方式のプリンタである。本実施形態において、「インクジェット方式」とは、二値偏向方式または連続偏向方式などの各種の連続方式、および、サーマル方式または圧電素子方式などの各種のオンデマンド方式を含む従来公知の各種の手法によるインクジェット式のことをいう。
【0013】
図1に示すように、プリンタ10は、箱状に形成されている。本実施形態では、プリンタ10は、ケース11と、フロントカバー12とを備えている。
図2は、フロントカバー12を開けた状態のプリンタ10を示す正面図である。
図2に示すように、ケース11の前部には、開口が形成されている。フロントカバー12は、ケース11の開口を開閉自在に設けられている。ここでは、フロントカバー12は、後端を軸に回転可能なように、ケース11に支持されている。フロントカバー12には、窓部12aが設けられている。窓部12aは、例えば、透明のアクリル板によって形成されている。ユーザーは、窓部12aを通じてケース11の内部空間を視認することが可能である。
【0014】
図2に示すように、プリンタ10の内部空間には、フラットベッド20と、ベッド移動装置25と、キャリッジ30と、キャリッジ移動装置35と、記録ヘッド40と、光照射装置50と、接触検知装置60と、制御装置100(
図1参照)とが設けられている。
【0015】
フラットベッド20は、記録媒体5を支持する支持台である。フラットベッド20は、記録ヘッド40の下方に設けられている。実施形態に係るプリンタ10は、いわゆる、フラットベッドタイプのプリンタである。フラットベッド20は、略水平に設けられている。フラットベッド20は、主走査方向Yおよび副走査方向Xに延びている。フラットベッド20は、上下方向Zに向いている。記録媒体5の形状は特に限定されず、平板状の他、様々な立体形状を有していてもよい。また、記録媒体5の材質も特に限定されず、記録媒体5は、例えば、木、金属、ガラス、紙、布などであってもよい。フラットベッド20は、ケース11の内部空間において、主走査方向Yのほぼ中央に配置されている。
【0016】
フラットベッド20の下方には、ベッド移動装置25が配置されている。ベッド移動装置25は、フラットベッド20を副走査方向Xおよび上下方向Zに移動させる。フラットベッド20は、ベッド移動装置25によって下方から支持されている。ベッド移動装置25は、副走査方向移動装置25Xと、上下方向移動装置25Zとを備えている。上下方向移動装置25Zは、フラットベッド20を支持して上下方向Zに移動させる。上下方向移動装置25Zは、副走査方向移動装置25Xによって下方から支持されている。副走査方向移動装置25Xは、上下方向移動装置25Zを支持して副走査方向Xに移動させる。ただし、ベッド移動装置25の構成は限定されない。例えば、副走査方向移動装置25Xと上下方向移動装置25Zとは、上下の位置関係が逆でもよい。
【0017】
キャリッジ30は、記録ヘッド40および光照射装置50を搭載している。キャリッジ30は、フラットベッド20の上方に設けられている。キャリッジ30は、キャリッジ移動装置35によって主走査方向Yに移動される。キャリッジ移動装置35は、ガイドレール36と、ベルト37と、図示しない左右のプーリと、キャリッジモータ38(
図5参照)とを備えている。
【0018】
図2に示すように、ガイドレール36は、主走査方向Yに延びている。キャリッジ30は、ガイドレール36に摺動自在に係合している。キャリッジ30には無端状のベルト37が固定されている。ベルト37は、ガイドレール36の右側および左側に設けられたプーリ(図示省略)に巻き掛けられている。一方のプーリにはキャリッジモータ38が取り付けられている。キャリッジモータ38が駆動するとプーリが回転し、ベルト37が走行する。それにより、キャリッジ30がガイドレール36に沿って主走査方向Yに移動する。
【0019】
図2に示すように、記録ヘッド40は、キャリッジ30の下面に設けられている。記録ヘッド40は、フラットベッド20の上方に設けられている。記録ヘッド40は、フラットベッド20と対向している。記録ヘッド40は、下方に向かってインクを吐出するように構成されている。記録ヘッド40は、複数のインクヘッド41~43を備えている。図示は省略するが、複数のインクヘッド41~43は、いずれも副走査方向Xに延びている。複数のインクヘッド41~43は、それぞれ、フラットベッド20に向かってインクを吐出する複数のノズルを有している。インクヘッド41~43のそれぞれにおいて、複数のノズルは副走査方向Xに並んで配置されている。
【0020】
本実施形態では、記録ヘッド40のノズルから吐出されるインクは、光硬化性のインクである。光硬化性インクは、ここでは、紫外線を照射されると硬化する紫外線硬化型のインクである。光硬化性インクの成分、特性等は特に限定されない。
【0021】
光照射装置50は、記録ヘッド40の左方に設けられている。光照射装置50は、光硬化性インクを硬化させる光をフラットベッド20に向かって照射する。光照射装置50は、例えば複数の紫外線照射LEDからなる光源(図示せず)を有している。光照射装置50には、下方に向かって開口し、光源が生成する光を透過させる照射口(図示せず)が設けられている。
【0022】
図2に示すように、本実施形態に係るプリンタ10は、記録媒体5の高さを検知する接触検知装置60を備えている。なお、前述したように、本明細書の説明においては、支持台(ここでは、フラットベッド20)に載置された記録媒体5が上下方向の所定の位置にあるときの支持台の上下方向位置を求めることを「記録媒体5の高さを検知する」とも言う。また、その支持台の上下方向位置を登録することを「記録媒体5の高さを登録する」とも言う。フラットベッド20に載置された記録媒体5が上下方向の所定位置にあるときのフラットベッド20の上下方向位置は、記録媒体5の厚さに応じて変動する。記録媒体5と記録ヘッド40との接触を防止するためには、フラットベッド20に載置された記録媒体5が記録ヘッド40よりも少し下方にあるときのフラットベッド20の上下方向位置を検知し、登録しておくことが好ましい。
【0023】
図3は、接触検知装置60の模式的な左側面図である。
図3に示すように、接触検知装置60は、回動体61と、回動軸65と、ストッパ66と、センサ67とを備えている。
【0024】
回動軸65は、回動体61を上下方向に回動させる回動軸である。
図2に示すように、回動軸65は、主走査方向Yに延びている。ここでは、回動軸65は、フラットベッド20よりも上方に設けられている。回動軸65は、記録ヘッド40の下面よりもさらに上方に設けられている。ただし、回動軸は、例えば、フラットベッド20よりも後方かつ下方に設けられていてもよい。回動軸は、フラットベッド20の副走査方向Xおよび上下方向Zへの移動によっては記録媒体5が接触しない位置に設けられていればよい。
図2に示すように、回動軸65の主走査方向Yに関する長さは、フラットベッド20の主走査方向Yに関する長さよりも長い。ただし、主走査方向Yに関する長さがフラットベッド20よりも長いことが好ましい部材は、回動体61(さらに詳しくは、回動体61の検知部62)であり、回動軸65の主走査方向Yに関する長さは、フラットベッド20の主走査方向Yに関する長さより長くなくてもよい。
【0025】
回動体61は、回動軸65周りに上下方向に回動するように構成されている。
図3に示すように、回動体61は、回動軸65よりも前方側に位置する前方部分61Fと、回動軸65よりも後方側に位置する後方部分61Rrとを有している。前方部分61Fと後方部分61Rrとは、ここでは、一体的に構成されている。
図4は、回動体61の模式的な斜視図である。
図4に示すように、回動体61は主走査方向Yに延びている。回動体61は、検知部62を除いて略平板状に構成されている。前方部分61Fと後方部分61Rrとは、真っ直ぐに(屈折せずに)連続している。ただし、前方部分61Fと後方部分61Rrとは、屈折して接続されていてもよい。
【0026】
図3に示すように、接触検知装置60は、回動体61の下方への移動(以下、回動体61の回動方向は、検知部62の回動方向として表すものとする)を規制するストッパ66を備えている。ストッパ66は、ここでは、回動体61の後方部分61Rrの上方に設けられている。ストッパ66は、ここでは、主走査方向Yに延びるピン状の部材である。ただし、ストッパ66の形状等は限定されない。回動体61の下方への回動は、ストッパ66に後方部分61Rrが当接することにより規制される。以下では、ストッパ66が回動体61の下方への移動を規制することにより回動体61がストッパ66に保持される位置を第1回動位置P1とも呼ぶ。回動体61は、特に力を加えられない限り、自重によって第1回動位置P1に位置付けられている。ストッパ66の位置は特に限定されず、例えば、回動体61の前方部分61Fの下方でもよい。
【0027】
検知部62は、回動体61の前端部に設けられている。検知部62は、ここでは、回動体61の前端部に設けられた左右方向視において円弧状の部分である。ただし、検知部62は回動体61の先端部に設けられる必要はなく、回動体61の途中に設けられていてもよい。
図3に示すように、検知部62は、フラットベッド20よりも上方に位置している。上下方向に関して、第1回動位置P1における検知部62の下端の位置は、ここでは、記録ヘッド40の下面の位置に等しい。または他の好適な態様では、第1回動位置P1における検知部62の下端の位置は、記録ヘッド40の下面の位置よりも僅かに上方でもよい。ただし、検知部62の下端の上下方向に関する位置は、特に限定されるわけではない。例えば、第1回動位置P1における検知部62の下端の位置は、記録ヘッド40の下面の位置よりも下方でもよい。
【0028】
図3に示すように、検知部62は、第1接触面62Fと第2接触面62Rrとを有している。
図3および
図4に示すように、第1接触面62Fは、副走査方向Xの一方側である後方(以下、X1方向とも言う)に向かって下降傾斜するとともに主走査方向Yに延びている。なお、X1方向の逆方向である前方は、以下、X2方向とも言う。第1接触面62Fは、左右方向視においてX2方向に向かって凸した曲面から構成されている。さらに詳しくは、第1接触面62Fは、左右方向視においてX2方向に向かって凸した円弧状に形成されている。第1接触面62Fは、X2方向を向いている。
【0029】
第2接触面62Rrは、X2方向に向かって下降傾斜するとともに主走査方向Yに延びている。第2接触面62Rrは、左右方向視においてX1方向に向かって凸した曲面から構成されている。第2接触面62Rrも円弧状に形成されている。第2接触面62Rrは、X1方向を向いている。第1接触面62Fと第2接触面62Rrとは、円弧の下方を向いた頂点において接続されている。第1接触面62Fと第2接触面62Rrとは、ここでは一体的に形成されている。
【0030】
回動体61の材料は限定されないが、ここでは、回動体61は金属板によって形成されている。回動体61の材料である金属は、表面がメッキ処理または研磨処理されているとよい。回動体61の表面は、記録媒体5等との間の摩擦係数が小さくなるように滑らかに構成されているとよい。回動体61は全て同じ材料によって形成されている必要はないが、検知部62の下面は、金属で形成され、メッキ処理または研磨処理されているとよい。ただし、検知部62の下面は、例えば、摺動性の高い樹脂などによって形成されていてもよい。
【0031】
回動体61の後方部分61Rrの後端部には、被検出部63が設けられている。被検出部63は、ここでは、略水平に延びる後方部分61Rrの主要部から上方に延びている。被検出部63の近傍には、センサ67が設けられている。センサ67は、回動体61が第1回動位置P1に位置しているか第1回動位置P1よりも上方の他の回動位置に位置しているかを検出している。センサ67は、ここでは、フォトインタラプタである。センサ67は、投光器67aと受光器67bとを備えている。投光器67aと受光器67bとは、ここでは、前後方向に向かい合っている。回動体61が第1回動位置P1に位置しているとき、被検出部63は、投光器67aと受光器67bとの間に位置し、投光器67aが照射する光を遮っている。このとき、受光器67bは、投光器67aが照射する光を受光しない。回動体61が第1回動位置P1よりも上方の他の回動位置に移動すると、被検出部63は下方に移動し、投光器67aと受光器67bとの間から離脱する。それにより、投光器67aが照射する光が受光器67bに到達する。センサ67は、受光器67bの受光の有無により回動体61が第1回動位置P1に位置しているかどうかを判別する。センサ67は、検出結果に対応する信号を制御装置100に送信している。
【0032】
なお、被検出部63は、回動体61の前方部分61Fに設けられていてもよい。その場合、回動体61は、後方部分61Rrを有さなくてもよい。また、回動体61が第1回動位置P1に位置しているかどうかを検出する検出器は限定されない。回動体61が第1回動位置P1に位置しているかどうかを検出する検出器は、例えば接触式のリミットスイッチ等であってもよい。
【0033】
図5は、プリンタ10のブロック図である。
図5に示すように、制御装置100は、副走査方向移動装置25Xと、上下方向移動装置25Zと、キャリッジモータ38と、複数のインクヘッド41~43と、光照射装置50とに電気的に接続され、それらの動作を制御している。また、制御装置100は、センサ67に電気的に接続され、センサ67が送信する信号を受信している。制御装置100は、例えば、プリンタ10に接続されたコンピュータであり、中央演算処理装置(以下、CPUという。)と、CPUが実行するプログラムなどが格納されたROMと、RAMなどを備えていてもよい。制御装置100の各部は、ソフトウェアによって構成されていてもよいし、ハードウェアによって構成されていてもよい。また、各部は、プロセッサであってもよいし、回路であってもよい。制御装置100の構成は特に限定されない。
【0034】
図5に示すように、制御装置100は、信号受信部110と、媒体高さ登録部120とを備えている。なお、制御装置100は、例えば、印刷動作を制御する制御部などの他の制御部を備えていてもよいが、ここでは説明および図示を省略する。
【0035】
信号受信部110は、センサ67からの信号を受信するように構成されている。信号受信部110がセンサ67からの信号を受信することにより、回動体61が第1回動位置P1に位置しているかどうかが判別される。
【0036】
媒体高さ登録部120では、記録媒体5が記録ヘッド40に接触しないように、記録媒体5の高さが登録される。
図5に示すように、媒体高さ登録部120は、第1移動制御部121と、第2移動制御部122と、高さ登録部123とを備えている。
【0037】
第1移動制御部121は、上下方向移動装置25Zを制御して、記録媒体5を支持したフラットベッド20を上方に移動させるように設定されている。より詳しくは、第1移動制御部121は、上下方向移動装置25Zを制御して、記録媒体5を支持したフラットベッド20を、最も低い位置から間欠的に上方に移動させる。フラットベッド20の1回の上昇距離D1(
図7参照)は、好適には、5mm~10mmである。ただし、フラットベッド20の1回の上昇距離は特に限定されるわけではない。
【0038】
第2移動制御部122は、第1移動制御部121の制御によりフラットベッド20が上方に移動されるたびに、副走査方向移動装置25Xを制御して、フラットベッド20をX1方向またはX2方向に交互に移動させる。第1移動制御部121および第2移動制御部122の制御により、フラットベッド20は、「上昇」、「X1方向またはX2方向への移動」、「上昇」、および「X2方向またはX1方向への移動」のセットを反復する。このフラットベッド20の動作については後述する。
【0039】
高さ登録部123は、回動体61が第1回動位置P1以外の回動位置に位置していることを示す信号を信号受信部110が受信したときのフラットベッド20の上下方向の位置に基づいて、フラットベッド20の上限位置を登録する。本実施形態では、プリンタ10は、印刷中、フラットベッド20を上限位置以上に上昇させることを制御上禁止する。ただし、制御上のフラットベッド20の上昇禁止位置は、必ずしも上限位置に一致させる必要はない。制御上のフラットベッド20の上昇禁止位置は、例えば、上限位置よりも下方に設定されてもよい。上限位置および上限位置の登録方法の詳細については後述する。
【0040】
以下では、フラットベッド20の上限位置の登録プロセスについて説明する。
図6は、フラットベッド20の上限位置を登録するプロセスのフローチャートである。ただし、
図6に示すプロセスは一例に過ぎず、フラットベッド20の上限位置の登録プロセスはこれに限定されるわけではない。
図6に示すように、一例に係るフラットベッド20の上限位置の登録プロセスのステップS01では、フラットベッド20が最も低い位置まで下降され、さらに、最も前方まで移動される。ただし、フラットベッド20は、最も後方まで移動されてもよい。なお、プリンタ10の動作ではないため図示は省略するが、ステップS01の前には、記録媒体5がフラットベッド20に載置される。このとき、キャリッジ30は、フラットベッド20の左右いずれかに設定された待機位置に退避している。
【0041】
ステップS02では、副走査方向移動装置25Xを駆動して、フラットベッド20を後方(X1方向)に移動させる。ステップS03では、フラットベッド20が最も後方位置に到達するまでに回動体61が第1回動位置P1から移動したことが検知されるどうかが判定される。フラットベッド20上の記録媒体5が検知部62に接触し得る高さに位置している場合には、記録媒体5は、フラットベッド20の後方への移動により検知部62に接触する。そうすると、回動体61は、第1回動位置P1よりも上方の回動位置に持ち上げられる。それにより、センサ67が反応し、回動体61が第1回動位置P1から移動したことが検知される。
【0042】
図7は、記録媒体5の接触によって回動体61が上方に回動する原理を示すための接触検知装置60の模式的な左側面図である。以下では、
図7を使って回動体61が上方に回動する動きを説明するとともに、従来の揺動式の接触検知装置に対して有利な点を説明する。
【0043】
まず、従来の接触検知装置の課題について説明する。前述したように、一例に係る従来の接触検知装置は、主走査方向に延びて記録媒体に接触する板状の検出部材と、検出部材を副走査方向に揺動可能に支持する揺動軸と、検出部材が傾いたことを検知するセンサと、を備えている。上記した接触検知装置では、検出部材は、揺動軸によって揺動可能に吊られている。
【0044】
かかる従来の接触検知装置では、例えばフラットベッドの移動等に起因するプリンタの振動が問題となる。かかる従来の接触検知装置では、検出部材が揺動可能に吊られているため、プリンタの振動により検出部材が揺動する。それによりセンサが反応し、誤検知が発生するおそれがある。
【0045】
また、かかる従来の接触検知装置では、記録媒体その他の物体が検出部材の下方から接近してくる場合が問題になる。記録媒体その他の物体が検出部材を下方から上方に向かって押圧すると、吊り下げられた検出部材が破損するおそれがある。当然、記録媒体その他の物体も破損するおそれがある。
【0046】
さらに、記録媒体の上面と検出部材との間の摩擦が大きかったり、記録媒体の表面に凹凸が存在していたりすると、従来の構成では、検出部材が副走査方向に移動中の記録媒体に引っ掛かるおそれがある。そのような場合には、やはり検出部材および記録媒体が破損するおそれがある。
【0047】
本実施形態に係る接触検知装置60は、上記した従来の問題を防止するように構成されている。まず、プリンタの振動による誤検知の問題について説明する。
図3に示すように、本実施形態に係る接触検知装置60では、検出部材に相当する回動体61は、特に力を加えられていないときには、ストッパ66によって支持されている。回動体61は、自重によって第1回動位置P1に安定的に位置付けられている。そのため、プリンタ10の振動によって回動するおそれはほとんどない。その結果、プリンタ10の振動による誤検知を抑制できる。
【0048】
記録媒体5その他の物体が回動体61の下方から接近してくる場合の問題も、本実施形態では回避できる。例えば、記録媒体5の前後方向の長さが長かったり、記録媒体5がフラットベッド20上で移動したりすることにより記録媒体5が回動体61の真下に位置し、その結果、記録媒体5が回動体61を下方から上方に向かって押圧する可能性がある。そのような場合でも、本実施形態に係る接触検知装置60では、回動体61が正常に上方に回動する。よって、接触検知装置60が破損することが防止される。また、このような場合であっても、本実施形態に係る接触検知装置60は、記録媒体5の高さを検知できる。ユーザーは、敢えてそのような方法で接触検知装置60を使用することもできる。
【0049】
さらに、本実施形態に係る接触検知装置60は、副走査方向Xに移動中の記録媒体5(他の物体でもよい)に回動体61が引っ掛かるおそれを低減するように構成されている。
図7に示すように、記録媒体5が前方から第1接触面62Fに接触すると、第1接触面62Fは垂直抗力F1を受ける。垂直抗力F1は、第1接触面62Fの法線N1方向に作用する。垂直抗力F1が回動軸65よりも上方を通る線上に作用すれば、回動体61は、垂直抗力F1を受けて上方に向かって回動する。よって、回動体61は記録媒体5に引っ掛からない。言い換えれば、法線が回動軸65よりも上方を通るような検知部62上の点に記録媒体5が接触する限りは、回動体61は記録媒体5に引っ掛からない。
【0050】
このような知見に基づき、本実施形態に係る検知部62は、第1接触面62Fの全ての法線が回動軸65よりも上方を通るように構成されている。
図7の法線N2は第1接触面62Fの下端の法線を表し、法線N3は第1接触面62Fの上端の法線を表している。
図7から理解されるように、第1接触面62Fの全ての法線は、回動軸65よりも上方を通っている。そのため、回動体61は、記録媒体5が第1接触面62Fのいずれの場所に接触しても記録媒体5に引っ掛からない。第1接触面62Fの全ての法線が回動軸65よりも上方を通るためには、第1接触面62Fは、対面する方向(ここでは前方)の逆側(ここでは後方)に向かって下降傾斜している必要がある。第2接触面62Rrについても同様である。
【0051】
なお、本実施形態では、第1接触面62Fの全ての法線が回動軸65よりも上方を通るが、そうでなくてもよい。例えば、第1接触面62Fのうち、フラットベッド20の1回の上昇距離D1を考慮して記録媒体5と接触し得る部分に関して、法線が回動軸65よりも上方を通るのでもよい。この記録媒体5と接触し得る部分は、
図7に示すように、第1接触面62Fのうち下端62aよりもフラットベッド20の1回の上昇距離D1だけ上方の位置62bよりも下方に位置する部分62cである。少なくとも、この部分62cの全ての法線は、回動軸65よりも上方を通ることが好ましい。第1接触面62Fをそのように構成すれば、記録媒体5と接触し得る部分62cの法線は全て回動軸65よりも上方を通るため、回動体61は記録媒体5に引っ掛からない。第1接触面62Fの他の部分に関しては、法線が回動軸65よりも上方を通ってもよく、回動軸65上または回動軸65より下方を通ってもよい。第2接触面62Rrについても同様である。
【0052】
ただし、本実施形態のように、第1接触面62Fの全ての法線が回動軸65よりも上方を通るように構成しておけば、フラットベッド20の1回の上昇距離D1が変更されても影響を受けないという利点がある。第2接触面62Rrについても同様である。
【0053】
記録媒体5が第1接触面62Fに接触すると、回動体61は、第1接触面62Fが記録媒体5と接触したまま滑るように回動する。このとき、第1接触面62Fと記録媒体5との間に発生する摩擦力は、副走査方向移動装置25Xのエネルギーロスを生む。しかし、本実施形態では、第1接触面62Fをメッキまたは研磨することにより記録媒体5との間の摩擦係数が低減されているため、かかるエネルギーロスが低減されている。
【0054】
フラットベッド20の上限位置の登録プロセスの続きを説明する。ステップS03において、フラットベッド20が最も後方位置に到達するまでに回動体61の回動が検出された場合(ステップS03の結果がYESの場合)、第1接触面62Fに記録媒体5が接触したものと判断され、ステップS04においてフラットベッド20が停止される。ステップS05では、センサ67が回動体61の回動を検出しなくなるまでフラットベッド20が下降される。このとき、フラットベッド20は、例えば0.1mm程度ずつ間欠的に下降されもよい。または、フラットベッド20は、低速で連続的に下降されてもよい。この後、図示は省略するが、フラットベッド20は再び後方に向かって移動される。そして上記と同様の検出が繰り返されて記録媒体5の最高点の高さが求められる。
【0055】
ステップS06では、フラットベッド20が、最も後方位置まで移動し終わった時点における上下方向の位置からさらに所定の距離(例えば、1mm)だけ下降される。これにより、記録媒体5は、検知部62の下端よりも上記所定の距離だけ下方に位置付けられる。本実施形態では、検知部62の下端の上下方向の位置と記録ヘッド40の下面の上下方向の位置とは等しい。よって、これにより、記録媒体5は、記録ヘッド40の下面よりも上記所定の距離だけ下方に位置付けられる。なお、検知部62の下端の上下方向の位置と記録ヘッド40の下面の上下方向の位置とが等しくない場合には、ステップS06における下降距離は適宜設定されるとよい。ステップS07では、ステップS06が終了した時点におけるフラットベッド20の上下方向の位置が上限位置として登録される。
【0056】
ステップS03において、フラットベッド20が最も後方位置に到達するまでに回動体61の回動が検出されなかった場合(ステップS03の結果がNOの場合)、記録媒体5は検知部62に接触しなかったものと判断される。その場合には、ステップS08において、フラットベッド20を予め定められた距離D1だけ上昇させる。
【0057】
ステップS09では、副走査方向移動装置25Xを駆動して、フラットベッド20を前方(X2方向)に移動させる。ステップS10では、フラットベッド20が最も前方位置に到達するまでに回動体61の回動が検出されるどうかが判定される。フラットベッド20が最も前方位置に到達するまでに回動体61の回動が検出された場合(ステップS10の結果がYESの場合)、第2接触面62Rrに記録媒体5が接触したものと判断され、プロセスはステップS04に進む。前方に移動中の記録媒体5の高さ検出におけるステップS04~ステップS07は、フラットベッド20の進行方向を除いて、後方に移動中の記録媒体5の高さ検出と同様である。
【0058】
回動体61の第2接触面62Rrは第1接触面62Fと同様に構成されているため、ステップS09において回動体61が記録媒体5に引っ掛かることが抑制される。また、第2接触面62Rrと記録媒体5の摩擦によるエネルギーロスも低減されている。
【0059】
フラットベッド20が最も前方位置に到達するまでに回動体61の回動が検出されなかった場合(ステップS10の結果がNOの場合)、記録媒体5は第2接触面62Rrに接触しなかったものと判断される。その場合には、ステップS11において、フラットベッド20を予め定められた距離D1だけ再度上昇させる。その後、プロセスは、ステップS02に戻る。回動体61の回動が検出されるまで、このようなループを繰り返すことにより、フラットベッド20の上限位置が登録される。かかる上限位置が登録されることにより、プリンタ10は、様々な厚さの記録媒体5に対して記録ヘッド40を接触させることなく印刷を行うことができる。
【0060】
なお、本実施形態では、検知部62の主走査方向Yに関する長さは、フラットベッド20の主走査方向Yに関する長さよりも長い。そのため、記録媒体5の全体にわたって高さを検知することができる。
【0061】
以上、好適な一実施形態について説明した。しかし、本発明のインクジェットプリンタは、上記した実施形態に限定されない。
【0062】
例えば、上記した実施形態では、検知部62は、X2方向を向いた第1接触面62FとX1方向を向いた第2接触面62Rrとを備えていた。そのため、フラットベッド20がX1方向に移動されるとき、および、X2方向に移動されるときの双方向で記録媒体5の高さを検出することができた。それにより、記録媒体5の高さ登録が効率的にできた。しかし、記録媒体の高さの検出は、片方向でのみ行われてもよい。その場合、第2移動制御部は、第1移動制御部の制御によりフラットベッドが上方に移動されるたびに、副走査方向移動装置を制御して、フラットベッドを副走査方向の一方に移動させてもよい。第2移動制御部は、フラットベッドが副走査方向の一方に移動された後であって上方に移動される前に、フラットベッドを副走査方向の他方に移動させる。後者の移動は、記録媒体の高さ検出を伴わない空移動である。
【0063】
上記のような片方向検出を行う場合には、回動体は、
図8に示すような検知部162を備えていてもよい。
図8に示すように、この態様に係る回動体161は、副走査方向Xの一方側(ここでは、X1方向)に向かって下降傾斜するとともに主走査方向Yに延びる第1接触面162Fを有し、副走査方向Xの他方側(ここでは、X2方向)に向かって下降傾斜する面を備えていない。片方向検出の場合には、回動体161は、例えばかかる形状でもよい。
【0064】
また、上記した実施形態では、第1接触面62Fは、左右方向視においてX2方向に向かって凸した円弧状に形成された曲面から構成されていた。しかし、第1接触面は、左右方向視において円弧状に形成される必要はなく、曲面に形成される必要もない。第2接触面も同様である。回動体は、例えば
図9に示すような検知部262を備えていてもよい。
図9に示すように、この態様に係る回動体261は、副走査方向Xの一方側(ここでは、X1方向)に向かって下降傾斜する平面の第1接触面262Fと、副走査方向Xの他方側(ここでは、X2方向)に向かって下降傾斜する平面の第2接触面262Rrとを有している。このように、第1接触面および第2接触面の両方または一方は、平面であってもよい。
【0065】
ただし、第1接触面または第2接触面が平面から構成されていると、面取りされた記録媒体と第1接触面または第2接触面とが面接触し、摩擦力が大きくなる可能性がある。第1接触面または第2接触面が外方に向かって凸した曲面から構成されていると、記録媒体と第1接触面または第2接触面とは、主走査方向視において点接触する(すなわち、主走査方向に延びる線で接触する)。そのため、記録媒体と第1接触面または第2接触面との間に発生する摩擦力が大きくならない。
【0066】
上記した実施形態では、回動体61は薄い板状に形成されていたが、回動体の形状は限定されない。
【0067】
上記した実施形態では、フラットベッド20が副走査方向Xおよび上下方向Zに移動したが、それには限定されない。記録媒体の支持台と記録ヘッドとの位置関係は相対的なものであり、位置関係を変化させる際に支持台と記録ヘッドとのうちのいずれを移動させるかは限定されない。支持台と記録ヘッドとの位置関係を変化させる移動装置は、支持台および記録ヘッドのうちの少なくとも一方を移動させることにより支持台を記録ヘッドに対して移動させるように構成されていればよく、それ以上限定されない。例えば、移動装置は、記録ヘッドを上下方向、および、回動体の回動軸の伸長方向と直交する方向に移動させるように構成されていてもよい。また、記録ヘッドと記録媒体の支持台との相対移動は、上下方向に関してだけ行われてもよい。記録ヘッドと記録媒体の支持台とは、水平方向に関して相対移動しなくてもよい。
【0068】
上記した実施形態では、上限位置は、記録媒体5の中で最も高さが高い部分が回動体61に接触するかしないかの境界の位置から所定の距離だけ下方に設定されていたが、これには限定されない。例えば、記録ヘッドが回動体よりも上方に配置されている場合において、支持台の1回の上昇距離が記録ヘッドと回動体との高さの差よりも小さく設定されていれば、最初に回動体の回動が検出されたときの支持台の位置では、記録媒体は記録ヘッドに接触しない。よって、上限位置は、最初に回動体の回動が検出されたときの支持台の位置に設定されてもよい。その他、上限位置は、回動体が第1回動位置以外の回動位置に位置していることを示す信号を受信したときの記録ヘッドに対する支持台の上下方向の位置に基づいて設定され、記録媒体が記録ヘッドに接触しないような支持台の位置である限りにおいて限定されない。
【0069】
その他、特に言及がない限り、上記した実施形態は本発明を限定しない。
【符号の説明】
【0070】
5 記録媒体
10 インクジェットプリンタ(印刷装置)
20 フラットベッド(支持台)
25X 副走査方向移動装置(第2移動装置)
25Z 上下方向移動装置(第1移動装置)
40 記録ヘッド
60 接触検知装置
61 回動体
62 検知部
62F 第1接触面
62Rr 第2接触面
65 回動軸
66 ストッパ
67 センサ(検出器)
100 制御装置
110 信号受信部
120 媒体高さ登録部
121 第1移動制御部
122 第2移動制御部
123 高さ登録部
P1 第1回動位置