(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】分配弁及び分配弁の製造方法
(51)【国際特許分類】
F16N 25/02 20060101AFI20240321BHJP
F16J 15/12 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
F16N25/02
F16J15/12 F
(21)【出願番号】P 2020061005
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000145611
【氏名又は名称】株式会社コガネイ
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【氏名又は名称】小松 秀輝
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【氏名又は名称】近藤 寛
(72)【発明者】
【氏名】須藤 正信
(72)【発明者】
【氏名】田中 広和
【審査官】西藤 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-64015(JP,A)
【文献】特開昭62-501721(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16N 25/02
F16J 15/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流路断片が内部に形成された複数のブロックと、
前記ブロック同士の間に挟み込まれたガスケットと、
前記ブロック同士の前記流路断片同士が接続され形成された流体流路と、を備え、
前記流体流路には、閉鎖されるか開放されるかによって仕様が切り替わる仕様切替流路が含まれており、
前記仕様切替流路を塞
ぐ栓体が前記ガスケットに
対して着脱可能に取り付けられている、分配弁。
【請求項2】
前記仕様切替流路は、隣接する一方の前記ブロックの前記流路断片の一部と、他方の前記ブロックの前記流路断片の一部と、が前記ガスケットを貫通して設けられた貫通穴を介して接続されて形成され、
前記栓体は前記貫通穴に嵌め込まれている、請求項1に記載の分配弁。
【請求項3】
前記貫通穴の開口縁部には、弾性材料からなり前記流路断片同士の接続部をシールする弾性シール部が設けられており、
前記栓体は前記弾性シール部の弾性によって保持される、請求項2に記載の分配弁。
【請求項4】
流体の流路断片が内部に形成された複数のブロックと、
前記ブロック同士の間に挟み込まれたガスケットと、
前記ブロック同士の前記流路断片同士が接続され形成された流体流路と、を備える分配弁の製造方法であって、
前記流体流路には、閉鎖されるか開放されるかによって前記分配弁の仕様が切り替わる仕様切替流路が含まれており、
所望の前記分配弁の仕様に対応させて、前記仕様切替流路を塞ぐための栓体が前記ガスケットに取り付けられた状態にするか否かを選択的に実行する仕様設定工程を備える、分配弁の製造方法。
【請求項5】
前記仕様切替流路は、隣接する一方の前記ブロックの前記流路断片の一部と、他方の前記ブロックの前記流路断片の一部と、が前記ガスケットを貫通して設けられた貫通穴を介して接続されて形成され、
前記仕様設定工程において、前記栓体が前記ガスケットに取り付けられた状態にする場合には、前記栓体は前記貫通穴に嵌め込まれる、請求項4に記載の分配弁の製造方法。
【請求項6】
前記貫通穴の開口縁部には、弾性材料からなり前記流路断片同士の接続部をシールする弾性シール部が設けられており、
前記貫通穴に嵌め込まれた前記栓体は前記弾性シール部の弾性によって保持される、請求項5に記載の分配弁の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は分配弁及び分配弁の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、下記特許文献1には、複数のブロックが積層されてなるブロック積層構造の分配弁が開示されている。この分配弁は、1つの注入口と、複数の(例えば12個の)吐出口と、を備えており、注入口から注入される流体を分配して、各々の吐出口から規則的に吐出する。各ブロックの内部には流体の流路の断片が存在しており、ブロックが積層されることにより流路断片同士が接続されて分配弁の内部の流体流路が形成されている。また、各ブロックには、上記流体流路に対して流体を押出し吐出口から吐出させるためのピストンが内蔵されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の分配弁には、流体を吐出する吐出口数の違いなど、多種の仕様が求められる場合がある。このような多種の仕様に合わせて、分配弁を組立てるための多種のブロックを準備する必要があるので、ブロックの品種管理等が煩雑になる。このような課題に鑑み、本発明は、分配弁の仕様に応じて準備すべきブロックの種類数を削減することができる分配弁及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の分配弁は、流体の流路断片が内部に形成された複数のブロックと、ブロック同士の間に挟み込まれたガスケットと、ブロック同士の流路断片同士が接続され形成された流体流路と、を備え、流体流路には、閉鎖されるか開放されるかによって仕様が切り替わる仕様切替流路が含まれており、仕様切替流路を塞ぐ着脱可能な栓体がガスケットに取り付けられている。
【0006】
仕様切替流路は、隣接する一方のブロックの流路断片の一部と、他方のブロックの流路断片の一部と、がガスケットを貫通して設けられた貫通穴を介して接続されて形成され、栓体は貫通穴に嵌め込まれていることとしてもよい。
【0007】
貫通穴の開口縁部には、弾性材料からなり流路断片同士の接続部をシールする弾性シール部が設けられており、栓体は弾性シール部の弾性によって保持されることとしてもよい。
【0008】
本発明の分配弁の製造方法は、流体の流路断片が内部に形成された複数のブロックと、ブロック同士の間に挟み込まれたガスケットと、ブロック同士の流路断片同士が接続され形成された流体流路と、を備える分配弁の製造方法であって、流体流路には、閉鎖されるか開放されるかによって分配弁の仕様が切り替わる仕様切替流路が含まれており、所望の分配弁の仕様に対応させて、仕様切替流路を塞ぐための栓体がガスケットに取り付けられた状態にするか否かを選択的に実行する仕様設定工程を備える。
【0009】
仕様切替流路は、隣接する一方のブロックの流路断片の一部と、他方のブロックの流路断片の一部と、がガスケットを貫通して設けられた貫通穴を介して接続されて形成され、仕様設定工程において、栓体がガスケットに取り付けられた状態にする場合には、栓体は貫通穴に嵌め込まれることとしてもよい。
【0010】
貫通穴の開口縁部には、弾性材料からなり流路断片同士の接続部をシールする弾性シール部が設けられており、貫通穴に嵌め込まれた栓体は弾性シール部の弾性によって保持されることとしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、分配弁の仕様に応じて準備すべきブロックの種類数を削減することができる分配弁及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図6】(a)は、貫通穴に栓体が取り付けられた状態において2つのブロックとガスケットとを分解して示す断面図であり、(b)は、貫通穴に栓体が取り付けられていない状態において2つのブロックとガスケットとを分解して示す断面図である。
【
図7】分配弁の製造方法を示すフローチャートである。
【
図8】(a),(b)は、それぞれ変形例の分配弁を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る分配弁の実施形態について詳細に説明する。
図1は分配弁1の斜視図であり、
図2はその分解斜視図である。
図1及び
図2に示されるように、分配弁1は、略直方体状をなす金属製の装置であり、1箇所から供給される粘性流体(本実施形態ではグリースとする)を、複数箇所の供給先に分配して供給する機能を有する。
【0014】
以下では、各図に示されるように、分配弁1の幅方向、奥行き方向、高さ方向を、それぞれX方向、Y方向、Z方向として、各部位の位置関係等の説明にX,Y,Zを用いる場合がある。また、
図1及び
図2に示される分配弁1の上下に対応させ、Z方向を上下方向として「上方/下方」、「上面/下面」等の語を用いるものとする。分配弁1の+Y方向の端面を「正面」、-Y方向の端面を「背面」と呼ぶ場合がある。
【0015】
分配弁1は、外部の供給源からのグリースを当該分配弁1内に注入するための1つの注入口3と、注入されたグリースをそれぞれ吐出するための複数の吐出口5と、を備えている。注入口3は分配弁1の正面の最上部に形成されている。
図1及び
図2には、分配弁1の正面側に設けられた6個の吐出口5のみが現われているが、分配弁1の背面側にもこれらと対称の配置で6個の吐出口5が存在している。すなわち、分配弁1は、合計12個の吐出口5を備えている。
【0016】
図2に示されるように、分配弁1は、3個の金属製(例えばアルミニウム製)のブロック11を有する積層体7を有している。積層体7では、上記3個のブロック11同士が、互いの間に1枚ずつのガスケット13を挟んでZ方向に積層されている。ブロック11としては、最下段のベースブロック11Eと、最上段のトップブロック11Aと、ベースブロック11Eとトップブロック11Aとの間に位置する中間ブロック11Mと、の3種類がそれぞれ1つずつ使用されている。各ブロック11及びガスケット13の四隅にはそれぞれボルト穴9が形成されており、4本のボルト12が各ボルト穴9を貫通してベースブロック11Eの下方の設置用プレート14に締結されることにより、分配弁1が組立てられる。
【0017】
図3は、XY平面に平行な断面を示す中間ブロック11Mの断面図である。
図3に示されるように、中間ブロック11Mには、前述の吐出口5のうち、正面側でX方向に並ぶ2個と、背面側でX方向に並ぶ2個と、の合計4個の吐出口5が形成されている。中間ブロック11Mの内部には、X方向に延びる円柱中空部をなすピストン室15が平行に2つ形成されており、2つのピストン室15はY方向に並んでいる。各ピストン室15内にはそれぞれ、ピストン室15のX方向寸法よりもやや短い略円柱形状のピストン17が設置されており、ピストン17はピストン室15内でX方向に往復動可能である。また、各ピストン17の円柱側面の所定の位置には、所定長さ及び所定形状のくびれ部17aが複数箇所ずつ形成されている。
【0018】
なお、ピストン室15は、中間ブロック11Mの1つの側面から対向する他方の側面までX方向に穴が貫通され、当該穴の両端がプラグ部材19で塞がれることにより構成されている。また、1つのピストン17の一端には、X方向に延びる指示棒20の一端が固定されており、指示棒20の他端はプラグ部材19を貫通して中間ブロック11Mの外に突出している。この指示棒20が、ピストン17の往復動に伴ってプラグ部材19から出没するように往復動するので、ピストン17の変位の情報を外部に出力することができる。
【0019】
また、中間ブロック11Mの内部には、複数の流路断片21が形成されている。詳細は後述するが、これらの流路断片21は、積層体7内に構築されるグリース流路の一部を構成する。流路断片21には、ピストン室15から吐出口5まで貫通しているもの、中間ブロック11Mの上面から下面まで貫通しているもの、中間ブロック11Mの上面からピストン室15まで貫通しているもの、中間ブロック11Mの下面からピストン室15まで貫通しているもの、一方のピストン室15の端部から他方のピストン室15の中央部まで斜めに貫通しているもの、中間ブロック11Mの上面又は下面から他の流路断片21まで貫通しているもの、などがある。流路断片21は例えば切削加工によって形成されている。
【0020】
上記では中間ブロック11Mの構成を説明したが、ベースブロック11E及びトップブロック11Aも中間ブロック11Mとほぼ同様の構成を有しているので、同一又は同等の構成要素に同一の符号を付して重複する詳細な説明は省略する。但し、ベースブロック11Eは、主に、下面に貫通する流路断片21が存在しない点で中間ブロック11Mとは相違する。また、トップブロック11Aは、主に、流路断片21に接続された前述の注入口3が形成されている点、及び、上面に貫通する流路断片21が存在しない点、で中間ブロック11Mとは相違する。
【0021】
図4及び
図5に示されるように、ガスケット13は板状の金属部材であり、ガスケット13には、Z方向に貫通する多数の貫通穴23,25が形成されている。貫通穴23,25は、Z方向から見て、ブロック11の上面又は下面に現われる流路断片21を包囲するように配置されている。このうち、貫通穴23は、複数の流路断片21を一緒に包囲するように長穴形状をなしている。貫通穴25は、1つの流路断片21を包囲するように円形状をなしている。また、長穴形状の貫通穴23には、X方向に延びるものと、Y方向に延びるものと、がある。
【0022】
ガスケット13は、貫通穴23,25が形成された平板状の金属板部13aと、貫通穴23,25の開口縁部にコーティングされた弾性シール部27と、金属板部13aの外周縁部に全周に亘ってコーティングされた弾性リブ部13bと、を有している。弾性リブ部13bは、ゴム等の弾性材料からなり、金属板部13aの上下両面の外周縁部でZ方向両側に僅かに盛り上がっている。このような弾性リブ部13bの存在により、ボルト12の締結力に起因するブロック11の変形が抑制される。
【0023】
上記の通り、各貫通穴23,25の開口縁部にはゴム材等の弾性材料からなる弾性シール部27が全周に亘って形成されている。弾性シール部27は、ガスケット13の厚み方向(Z方向)に両側に高く盛り上がっている。この構成によれば、ガスケット13がブロック11同士の間に挟み込まれたときに、弾性シール部27は、全周に亘ってZ方向に弾性的に押し潰され、一方のブロック11の下面と他方のブロック11の上面とに全周に亘って密着する。そうすると、一方のブロック11の下面、他方のブロック11の上面、及び弾性シール部27で囲まれた空間は、グリースを漏洩させない空間となる。従って、一方のブロック11の流路断片21と他方のブロック11の流路断片21との接続部が弾性シール部27によってシールされ、流路断片21同士が貫通穴23,25を介して、グリースを漏洩することなく接続される。
【0024】
このとき、長穴形状をなす貫通穴23の弾性シール部27においては、一方のブロック11の流路断片21と他方のブロック11の流路断片21とを水平方向(X方向又はY方向)に接続することができる。また、貫通穴23の弾性シール部27においては、一方のブロック11の流路断片21の複数と他方のブロック11の流路断片21の複数とを一緒に接続することができる。これに対し、円形状をなす貫通穴25の弾性シール部27においては、一方のブロック11の流路断片21と他方のブロック11の流路断片21とを単純に上下に接続する。
【0025】
分配弁1においては、上記のような3個のブロック11及び2枚のガスケット13が積層されて積層体7が構成されることにより、各ブロック11の流路断片21同士がガスケット13の貫通穴23,25を介して互いに接続され、積層体7の内部には、流路断片21同士が接続されてなるグリース流路29が多数形成される。
【0026】
積層体7内部においては、合計6個の各ピストン17が規則的にピストン室15でX方向に往復動することにより、各グリース流路29にグリースが送り出され、各吐出口5から順次グリースが吐出される。このとき、ピストン17のくびれ部17aと、ピストン室15の内壁面と、の隙間は、可動連結流路31として機能する。可動連結流路31は、ピストン17の往復動に伴ってX方向に変位する。可動連結流路31は、そのX位置に応じて、ピストン室15の内壁面に接続されたグリース流路29と、同じピストン室15の内壁面の異なる位置に接続された他のグリース流路29と、を連通したり遮断したりする。すなわち、ピストン17の規則的なX方向への往復動に伴って、所定のグリース流路29同士が、可動連結流路31により規則的に連通されたり遮断されたりする。
【0027】
以上のような構成の分配弁1では、注入口3に対して所定の圧力でグリースが注入されると、所定のグリース流路29を通じて所定のピストン17にグリースの圧力が伝達され、当該ピストン17はX方向に移動する。これにより、当該ピストン17で送り出されるグリースが所定のグリース流路29を通じて所定の吐出口5から吐出される。また、上記ピストン17の移動により可動連結流路31が所定のグリース流路29同士を接続させると、当該グリース流路29を通じて他のピストン17にグリースの圧力が伝達され、当該他のピストン17がX方向に移動する。これにより、当該他のピストン17で送り出されるグリースが所定のグリース流路29を通じて所定の吐出口5から吐出される。以上のような動作が繰り返されることで、6個のピストンが連鎖的に往復動し、12個の吐出口5から順次グリースが吐出される。このように、注入口3からグリースを注入することで各ピストン17が自動的に連鎖的に動作するような方式の分配弁1は、一般に「進行作動方式」の分配弁と呼ばれる場合がある。
【0028】
この種の分配弁1では、グリースが吐出される吐出口5の数が異なる、吐出口5ごとに分配されるグリース分配量が異なる、といったような仕様のバリエーションが要求される場合がある。このような多種の仕様に対応可能とするために、
図6に示されるように、グリース流路29の中には、閉鎖されるか開放されるかによって分配弁1の仕様が切り替わる仕様切替流路29Tが含まれている。仕様切替流路29Tは、隣接する一方のブロック11の流路断片21の一部と、他方のブロック11の流路断片21の一部と、がガスケット13の貫通穴25を介して接続されることで形成されている。
【0029】
なお、進行作動方式の分配弁1では、例えば、仕様変更のために吐出口5を単純に塞ぐといった措置を取れば分配弁1が動作しなくなる。従って、塞がれた吐出口5の吐出分のグリースを隣接する他のブロック11側に送出する必要があり、このために、上記のような仕様切替流路29Tを設ける必要がある。仕様切替流路29Tを構成する流路断片21は、吐出口5に向かうグリース流路29から当該吐出口5の直ぐ上流側で分岐して貫通穴25に繋がるものであってもよい。
【0030】
具体例として、
図6(a),(b)では、ベースブロック11Eの流路断片21と中間ブロック11Mの流路断片21とが貫通穴25を介して接続されてなる仕様切替流路29Tが示されている。なお、
図6ではピストン室15や貫通穴23等の図示は省略されている。
図6(a)に示されるように、この仕様切替流路29Tは、貫通穴25に着脱可能な栓体35が嵌め込まれることによって閉鎖される(
図5参照)。すなわち、貫通穴25に栓体35が嵌め込まれた状態では、仕様切替流路29Tにはグリースが流動不可能な状態になる。この状態では、ベースブロック11E内から吐出口5に向かって流動するグリースは、仕様切替流路29Tには流動せずに吐出口5からそのまま吐出される。
【0031】
一方、
図6(b)に示されるように、貫通穴25に栓体35が嵌め込まれていない状態では、この仕様切替流路29Tは開放され、仕様切替流路29Tにグリースが流動可能な状態になる。またこのとき、例えば、仕様切替流路29Tの近傍のベースブロック11Eの吐出口5がプラグ部材37によって閉鎖される。この状態では、ベースブロック11E内から吐出口5に向かって流動するグリースは、吐出口5から吐出されずに、仕様切替流路29Tを通じて中間ブロック11Mに送出される。そして、上記のように中間ブロック11Mに送出されたグリースは、所定の経路で他の何れかの吐出口5から吐出される。このように、仕様によりグリースが分配されない吐出口5は、プラグ部材37が装着されて閉鎖される。
【0032】
上記のように、仕様切替流路29Tを閉鎖した場合と開放した場合とで、分配弁1の仕様が相異する。そして、仕様切替流路29Tの閉鎖/開放は、貫通穴25への栓体35着脱により設定することができる。このような貫通穴25は、
図2及び
図4等に示されるように、ベースブロック11Eと中間ブロック11Mとに挟まれるガスケット13上に、4個存在する。また、中間ブロック11Mとトップブロック11Aとに挟まれるガスケット13上にも同様に、上記のような貫通穴25が4個存在する。
【0033】
すなわち、分配弁1は、合計8個の貫通穴25と、これらの貫通穴25に対応して存在する合計8個の仕様切替流路29Tと、を備えている。そして、上記8個の貫通穴25について栓体35の着脱状態をそれぞれ設定することにより、理論的には、28パターン(256パターン)の分配弁1の仕様を選択的に設定することができる。例えば一例として、12個のうち2個の吐出口5にはグリースを分配せずに、残りの10個のうちの2個の吐出口5には他の2倍量のグリースを分配する、といったような仕様が実現可能である。なお、8個すべての貫通穴25に栓体35が取り付けられた状態の分配弁1は、12個すべての吐出口5に対して等量ずつのグリースを分配する。
【0034】
上記の栓体35は、貫通穴25に嵌り込む大きさの円柱形状をなす金属部材(例えば真鍮製部材)であり、貫通穴25に着脱可能に嵌め込み可能である。具体的には、栓体35は、弾性シール部27の中空部に隙間無く嵌り込み、弾性シール部27の弾性によって保持された状態になる。また、貫通穴25に嵌め込まれた栓体35を所定の器具等でZ方向に突くことにより、栓体35は弾性シール部27の保持力に抗って貫通穴25から抜け落ちる。栓体35の厚さ(Z方向寸法)は、ガスケット13の金属板部13aの厚さよりも小さい。これにより、栓体35がブロック11の上面と下面とで直接挟み込まれることが回避される。また、栓体35の直径は、仕様切替流路29Tを構成する流路断片21の直径よりも大きい。これにより、栓体35が仕様切替流路29T中に押し流されることが回避される。
【0035】
このような種々の仕様の分配弁1を製造するための製造方法について
図7を参照し説明する。まず、分配弁1の各部品を準備する(S101)。そして、製造しようとする分配弁1の仕様に適合するように、2枚のガスケット13の合計8個の各貫通穴25について、適宜貫通穴25に栓体35が取り付けられた状態又は取り外された状態とする(S103:仕様設定工程)。ここでは、8個すべての貫通穴25に栓体35が嵌め込まれた状態が初期状態であり、必要な貫通穴25の栓体35を抜き取る処理を行ってもよい。あるいは、8個すべての貫通穴25に栓体35が嵌め込まれていない状態が初期状態であり、必要な貫通穴25に栓体35を嵌め込んでいく処理を行ってもよい。
【0036】
また、貫通穴25に栓体35を着脱する作業においては、ガスケット13や栓体35を保持するための所定の保持具や、栓体35を貫通穴25に着脱するための道具等が適宜使用されてもよい。その後、設置用プレート14、ベースブロック11E、ガスケット13、中間ブロック11M、ガスケット13、及びトップブロック11Aを下からこの順に積層しボルト12で締結する(S105)ことで、分配弁1が完成する。
【0037】
続いて、上記分配弁1及びその製造方法による作用効果について説明する。この分配弁1の製造方法においては、ブロック11として、ベースブロック11E、中間ブロック11M、及びトップブロック11Aの3種類のみを準備しておけば、8個の貫通穴25の着脱パターンによって仕様を設定することにより、種々の仕様の分配弁1を製造することができる。従って、分配弁の種々の仕様に対応するために準備すべきブロック11の種類数が削減される。すなわち、仕様ごとに多種類のブロック11を予め準備する必要がなく、その結果、部品管理の省力化を図ることができる。
【0038】
また、貫通穴25への栓体35の着脱によって分配弁1の仕様が設定可能であるので、例えば、ブロック11に切削加工を施す等の手法に比べて手間が小さい。また、栓体35は貫通穴25に対して着脱可能に取り付けられるので、製造後の分配弁1の仕様変更も、栓体35の着脱によって比較的容易に実行可能である。
【0039】
本発明は、上述した実施形態を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した様々な形態で実施することができる。また、上述した実施形態に記載されている技術的事項を利用して変形例を構成することも可能である。各実施形態の構成を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0040】
例えば、実施形態の分配弁1では、ベースブロック11E、中間ブロック11M、及びトップブロック11Aといった3個のブロック11が積層されているが、
図8(a)に示されるように、ベースブロック11Eとトップブロック11Aとの間に2個以上(図の例では2個)の中間ブロック11Mが設置されるようにしてもよい。また、
図8(b)に示されるように、中間ブロック11Mが省略され、ベースブロック11Eとトップブロック11Aとの2個のブロック11のみが積層されたものであってもよい。
図8(a),(b)のような分配弁1においても、各貫通穴25の各栓体35の着脱状態によって種々の仕様を設定可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 分配弁
11 ブロック
13 ガスケット
11E ベースブロック
11A トップブロック
11M 中間ブロック
21 流路断片
25 貫通穴
29 グリース流路
29T 仕様切替流路
35 栓体