(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】木質軸部材の接合構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/58 20060101AFI20240321BHJP
E04B 1/26 20060101ALI20240321BHJP
F16B 7/18 20060101ALI20240321BHJP
F16B 35/04 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
E04B1/58 507L
E04B1/26 E
F16B7/18 E
F16B35/04 B
(21)【出願番号】P 2020061414
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】315007581
【氏名又は名称】BXカネシン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】西塔 純人
(72)【発明者】
【氏名】中村 益久
【審査官】荒井 隆一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-053617(JP,A)
【文献】特開平07-003888(JP,A)
【文献】特開2012-177224(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/00- 1/61
F16B 7/00- 7/22
F16B 25/00-25/10
F16B 35/00-35/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取り付けボルトが貫通する第一ボルト孔を備えた第一木質軸部材と、第一接合金具の一部が嵌まり込む収容溝を備えた第二木質軸部材と、を有し、
前記第一接合金具は、前記第一木質軸部材に接続される第一接続片と、該第一接続片から立設して前記収容溝に嵌り込む嵌り込み部材とを備え、
前記第一接続片のうち、前記第一ボルト孔に対応する位置には第二ボルト孔が開設され、
前記嵌り込み部材には、金属固定軸部材が挿通される第一ピン孔が開設され、
前記第一木質軸部材に接続される第二接続片のみを備えた第二接合金具をさらに有し、該第二接続片のち、前記第一ボルト孔に対応する位置には第三ボルト孔が開設され、
前記第一接合金具と前記第二接合金具が前記第一木質軸部材の対向する側面に配設され、前記第一ボルト孔と前記第二ボルト孔と前記第三ボルト孔に前記取り付けボルトが挿通されてボルト接合されており、
前記第二木質軸部材にはさらに、前記嵌り込み部材が前記収容溝に嵌まり込んだ状態において前記第一ピン孔に対応する位置に第二ピン孔が開設され、
前記第一ピン孔と対応する前記第二ピン孔に前記金属固定軸部材が挿通されることにより、前記第一木質軸部材と前記第二木質軸部材が接合されている、木質軸部材の接合構造において、
前記第一木質軸部材のうち、前記第一接続片が配設される箇所には第四ボルト孔が開設され、前記第二接続片が配設される箇所には第五ボルト孔が開設されており、
前記第四ボルト孔と前記第五ボルト孔にそれぞれ、金属補強軸部材が埋め込まれていることを特徴とする、木質軸部材の接合構造。
【請求項2】
取り付けボルトが貫通する第一ボルト孔を備えた第一木質軸部材と、第一接合金具の一部が嵌まり込む収容溝を備えた第二木質軸部材と、を有し、
一対の前記第一ボルト孔は、前記第二木質軸部材の長手方向に見て、前記第二木質軸部材の対角に配置され、
前記第一接合金具は、前記第一木質軸部材に接続される第一接続片と、該第一接続片から立設して前記収容溝に嵌り込む嵌り込み部材とを備え、
前記第一接続片のうち、
一対の前記第一ボルト孔に対応する位置には
一対の第二ボルト孔が開設され、
前記嵌り込み部材には、金属固定軸部材が挿通される第一ピン孔が開設され、
二つの前記第一接合金具が前記第一木質軸部材の対向する側面に配設され、前記第一ボルト孔と二つの前記第二ボルト孔に前記取り付けボルトが挿通されてボルト接合されており、
該第二木質軸部材にはさらに、前記嵌り込み部材が前記収容溝に嵌まり込んだ状態において前記第一ピン孔に対応する位置に第二ピン孔が開設され、
前記第一ピン孔と対応する前記第二ピン孔に前記金属固定軸部材が挿通されることにより、前記第一木質軸部材と前記第二木質軸部材が接合されている、木質軸部材の接合構造において、
前記第一木質軸部材のうち、一方の前記第一接続片が配設される箇所には第四ボルト孔が開設され、他方の前記第一接続片が配設される箇所には第五ボルト孔が開設されており、
前記第四ボルト孔と前記第五ボルト孔にそれぞれ、金属補強軸部材が埋め込まれ
、
前記嵌り込み部材は、板状を成し、
前記二つの前記第一接合金具の前記嵌り込み部材の板厚方向は、互いに直交する方向に配置され、
前記二つの前記第一接合金具の前記嵌り込み部材の前記第一ピン孔に挿通される前記金属固定軸部材は、互いに直交する方向に配置されていることを特徴とする、木質軸部材の接合構造。
【請求項3】
取り付けボルトが貫通する第一ボルト孔を備えた第一木質軸部材と、第一接合金具の一部が嵌まり込む収容溝を備えた第二木質軸部材と、を有し、
前記第一接合金具は、前記第一木質軸部材に接続される第一接続片と、該第一接続片から立設して前記収容溝に嵌り込む嵌り込み部材とを備え、
前記第一接続片のうち、前記第一ボルト孔に対応する位置には第二ボルト孔が開設され、
前記嵌り込み部材には、金属固定軸部材が挿通される第一ピン孔が開設され、
前記第一木質軸部材が接続される基礎をさらに有し、
前記取り付けボルトは、前記基礎から上方に張り出すアンカーボルトであり、
前記第一接合金具と前記基礎が前記第一木質軸部材の対向する側面に配設され、前記第一ボルト孔と前記第二ボルト孔に前記アンカーボルトが挿通されてボルト接合されており、
前記第二木質軸部材にはさらに、前記嵌り込み部材が前記収容溝に嵌まり込んだ状態において前記第一ピン孔に対応する位置に第二ピン孔が開設され、
前記第一ピン孔と対応する前記第二ピン孔に前記金属固定軸部材が挿通されることにより、前記第一木質軸部材と前記第二木質軸部材が接合されている、木質軸部材の接合構造において、
前記第一木質軸部材のうち、前記第一接続片が配設される箇所には第四ボルト孔が開設され、前記基礎が配設される箇所には第五ボルト孔が開設されており、
前記第四ボルト孔と前記第五ボルト孔にそれぞれ、金属補強軸部材が埋め込まれていることを特徴とする、木質軸部材の接合構造。
【請求項4】
前記金属補強軸部材が、周面にネジ溝を備えたボルトであることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の木質軸部材の接合構造。
【請求項5】
前記第四ボルト孔と前記第五ボルト孔が連通した連通ボルト孔を形成しており、該連通ボルト孔に前記金属補強軸部材が挿通されていることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の木質軸部材の接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は木質軸部材の接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
木造軸組工法による木造建築物においては、柱や梁、土台等を形成する木質軸部材同士を接合金具を介して接合し、部材同士の緊結を図ることにより耐震性等の向上が図られている。
【0003】
上記する接合金具を用いて、木造建築物の柱と梁を接合する構造やこの接合構造に適用される接合金具の一例が提案されている。具体的には、柱の側面に重ねる側板の一面側に柱の縦孔へ挿入する柱接合プレートを設け、側板の他面側に梁の木口に形成した縦溝を挿入する梁接合プレートと、この梁接合プレートの下部の位置に梁受プレートを設けることにより、接合金具が形成される。接合金具の柱接合プレートに対して、締結具により柱を締結するための複数の結合孔を設け、梁接合プレートに対して締結具により梁を締結するための複数の結合孔を設け、それぞれの結合孔の配置と数を、各接合プレートに用いた鋼板のヘりあき条件に従い設定する。締結具にはドリフトピンが適用され、門型フレームを形成する木製の柱と梁を結合することにより、木造ラーメン構造が構成される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、木造軸組工法における梁と柱の接合構造には、例えば以下の複数の形態がある。その一つの形態は、梁の上面や下面に柱が取り付けられる、所謂梁勝ちの接合構造において、例えばほぞパイプと称される金属パイプを柱と梁に跨るようにして双方に埋設し、ほぞパイプに開設されているピン孔と、梁や柱に開設されているピン孔を位置合わせして連通孔を形成し、連通孔に対して、ドリフトピン等の金属固定軸部材を挿入することにより形成される接合構造である。
【0006】
また、他の一つの形態は、一対の金属接続片を梁の上下面に配設し、梁を貫通するボルト(取り付けボルト)にてこれらの金属接続片を接合する。柱には、梁と接続される端面からその内部に延びる収容溝が開設されている。金属接続片には、この収容溝に嵌り込む嵌り込み部材(金属プレートやほぞパイプ等)が取り付けられている。嵌り込み部材が収容溝に嵌り込み、双方の対応する位置にあるピン孔にて形成される連通孔に対して、ドリフトピン等の金属固定軸部材を挿入することにより形成される接合構造である。
【0007】
後者の接合構造によれば、より一層接合強度の高い木質軸部材の接合構造を形成することができる。しかしながら、この接合構造において、設計荷重(許容荷重)を決定する要因は、梁における柱のめり込みであり、このめり込みをもたらす荷重(めり込み荷重)以上の荷重を接合構造の設計において見込むことができない。例えば、木造の梁はその長手方向に繊維方向が配向するようにして製作されるため、この梁の側面に柱が取り付けられる接合構造においては、柱から作用する軸力(例えば圧縮力)により、梁には繊維直交方向にめり込みが生じ得る。そして、木質軸部材の側面における繊維直交方向のめり込み耐力は比較的低いことから、木質軸部材の接合構造における設計荷重がめり込み荷重により決定されることを勘案すると、木質軸部材の接合構造においては大きな設計荷重を見込むことが難しい。
【0008】
本発明は上記する課題に鑑みてなされたものであり、木質軸部材の接合構造の設計に際して、設計荷重を増加させることのできる木質軸部材の接合構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成すべく、本発明による木質軸部材の接合構造の一態様は、
取り付けボルトが貫通する第一ボルト孔を備えた第一木質軸部材と、第一接合金具の一部が嵌まり込む収容溝を備えた第二木質軸部材と、を有し、
前記第一接合金具は、前記第一木質軸部材に接続される第一接続片と、該第一接続片から立設して前記収容溝に嵌り込む嵌り込み部材とを備え、
前記第一接続片のうち、前記第一ボルト孔に対応する位置には第二ボルト孔が開設され、
前記嵌り込み部材には、金属固定軸部材が挿通される第一ピン孔が開設され、
前記第一木質軸部材に接続される第二接続片のみを備えた第二接合金具をさらに有し、該第二接続片のうち、前記第一ボルト孔に対応する位置には第三ボルト孔が開設され、
前記第一接合金具と前記第二接合金具が前記第一木質軸部材の対向する側面に配設され、前記第一ボルト孔と前記第二ボルト孔と前記第三ボルト孔に前記取り付けボルトが挿通されてボルト接合されており、
前記第二木質軸部材にはさらに、前記嵌り込み部材が前記収容溝に嵌まり込んだ状態において前記第一ピン孔に対応する位置に第二ピン孔が開設され、
前記第一ピン孔と対応する前記第二ピン孔に前記金属固定軸部材が挿通されることにより、前記第一木質軸部材と前記第二木質軸部材が接合されている、木質軸部材の接合構造において、
前記第一木質軸部材のうち、前記第一接続片が配設される箇所には第四ボルト孔が開設され、前記第二接続片が配設される箇所には第五ボルト孔が開設されており、
前記第四ボルト孔と前記第五ボルト孔にそれぞれ、金属補強軸部材が埋め込まれていることを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、第一木質軸部材を貫通する取り付けボルトにて第一接合金具と第二接合金具が接合され、第一接合金具を形成する嵌り込み部材が第二木質軸部材の収容溝に嵌り込み、金属固定軸部材にて第一接合金具と第二木質軸部材が固定される接合構造において、第一木質軸部材のうち、第一接合金具を形成する第一接続片が配設される箇所に設けられている第四ボルト孔と、第二接合金具を形成する第二接続片が配設される箇所に設けられている第五ボルト孔にそれぞれ金属補強軸部材が挿通されている。この構成により、第一木質軸部材に埋め込まれている金属補強軸部材の端面が第一接続片や第二接続片に当接してこれらを支持することにより、第一木質軸部材と金属補強軸部材の双方が第二木質軸部材から作用する軸力(圧縮力や引張力)に対抗することができる。
【0011】
本態様の接合構造は、例えば、第一木質軸部材が天井の梁であり、第二木質軸部材が天井の梁を支持する柱であり、これら天井の梁と柱の接合構造である。
【0012】
従来の接合構造では、第二木質軸部材から作用する圧縮力等の軸力に対して第二木質軸部材のめり込み耐力のみで対抗していたため、この第二木質軸部材のめり込み耐力に相当する荷重(めり込み荷重)にて接合構造を設計する際の許容荷重が設定されていた。これに対して、本態様の接合構造では、例えば第一木質軸部材における第一接続片が当接する箇所に、第一接続片を下方から支持するようにして単数もしくは複数の金属補強軸部材が配設されている。そのため、第二木質軸部材から作用する圧縮力等の軸力は、第一接続片を介して第二木質軸部材と金属補強軸部材の双方に伝達される。
【0013】
第一木質軸部材と金属補強軸部材に伝達される(それぞれが負担する)分担荷重は、例えば双方の剛性の割合に応じて決定され、第一木質軸部材は、そのめり込み耐力にて分担荷重に対抗し、金属補強軸部材は、第一木質軸部材との間の周面摩擦力等にて分担荷重に対抗する。第一木質軸部材に比べて金属補強軸部材の剛性が大きい場合は、金属補強軸部材が相対的に大きな分担荷重を負担することとなり、第一木質軸部材は、そのめり込み耐力に相当する荷重を受けるまでに余裕が生じることになり、接合構造における許容荷重を増加させることができる。
【0014】
ここで、第二木質軸部材から軸力として圧縮力を受ける場合は、第一木質軸部材と第二木質軸部材に挟まれる位置にある第一接合金具の第一接続片を支持する金属補強軸部材が、作用する圧縮力の一部を負担する。一方、第二木質軸部材から軸力として引張力を受ける場合は、この引張力が第一接続片に接続される取り付けボルトを介して第二接合金具の第二接続片に伝達され、第二接続片を支持する金属補強軸部材が、作用する引張力の一部を負担する。このように、第二木質軸部材から軸力として圧縮力と引張力が作用する場合には、圧縮力と引張力のそれぞれに対応する金属補強軸部材が、第二木質軸部材から作用する軸力の一部を負担することができる。
【0015】
本態様において、金属固定軸部材としては、ドリフトピンやボルト等が適用できる。また、金属補強軸部材としては、鋼棒(異形棒鋼、丸鋼)をはじめ、様々な金属製の軸部材が適用できる。さらに、第一接合金具を形成する嵌り込み部材としては、鋼板やほぞパイプ等が適用でき、第二木質軸部材の収容溝は、これら鋼板やほぞパイプに対応する形状及び寸法のものが適用される。
【0016】
また、本発明による木質軸部材の接合構造の他の態様は、
取り付けボルトが貫通する第一ボルト孔を備えた第一木質軸部材と、第一接合金具の一部が嵌まり込む収容溝を備えた第二木質軸部材と、を有し、
一対の前記第一ボルト孔は、前記第二木質軸部材の長手方向に見て、前記第二木質軸部材の対角に配置され、
前記第一接合金具は、前記第一木質軸部材に接続される第一接続片と、該第一接続片から立設して前記収容溝に嵌り込む嵌り込み部材とを備え、
前記第一接続片のうち、一対の前記第一ボルト孔に対応する位置には一対の第二ボルト孔が開設され、
前記嵌り込み部材には、金属固定軸部材が挿通される第一ピン孔が開設され、
二つの前記第一接合金具が前記第一木質軸部材の対向する側面に配設され、前記第一ボルト孔と二つの前記第二ボルト孔に前記取り付けボルトが挿通されてボルト接合されており、
該第二木質軸部材にはさらに、前記嵌り込み部材が前記収容溝に嵌まり込んだ状態において前記第一ピン孔に対応する位置に第二ピン孔が開設され、
前記第一ピン孔と対応する前記第二ピン孔に前記金属固定軸部材が挿通されることにより、前記第一木質軸部材と前記第二木質軸部材が接合されている、木質軸部材の接合構造において、
前記第一木質軸部材のうち、一方の前記第一接続片が配設される箇所には第四ボルト孔が開設され、他方の前記第一接続片が配設される箇所には第五ボルト孔が開設されており、
前記第四ボルト孔と前記第五ボルト孔にそれぞれ、金属補強軸部材が埋め込まれ、
前記嵌り込み部材は、板状を成し、
前記二つの前記第一接合金具の前記嵌り込み部材の板厚方向は、互いに直交する方向に配置され、
前記二つの前記第一接合金具の前記嵌り込み部材の前記第一ピン孔に挿通される前記金属固定軸部材は、互いに直交する方向に配置されていることを特徴とする。
【0017】
本態様によっても、第一木質軸部材と金属補強軸部材の双方が、第二木質軸部材から作用する軸力(圧縮力や引張力)に対抗することができる。本態様においては、第一接続片と嵌り込み部材を有する二つの第一接合金具が第一木質軸部材の上下面に配設され、第一木質軸部材を貫通する取り付けボルトが一対の第一接続片を接合する。そして、上下の嵌り込み部材が、第一木質軸部材の上下にある第二木質軸部材の収容溝に嵌り込み、金属固定軸部材にて固定される。このような構成を有する本態様の接合構造は、例えば、第一木質軸部材が二階や三階といった上階の梁(床梁や階間梁等)であり、第二木質軸部材が上階の柱と下階の柱である、梁と柱の接合構造となる。
【0018】
また、本発明による木質軸部材の接合構造の他の態様は、
取り付けボルトが貫通する第一ボルト孔を備えた第一木質軸部材と、第一接合金具の一部が嵌まり込む収容溝を備えた第二木質軸部材と、を有し、
前記第一接合金具は、前記第一木質軸部材に接続される第一接続片と、該第一接続片から立設して前記収容溝に嵌り込む嵌り込み部材とを備え、
前記第一接続片のうち、前記第一ボルト孔に対応する位置には第二ボルト孔が開設され、
前記嵌り込み部材には、金属固定軸部材が挿通される第一ピン孔が開設され、
前記第一木質軸部材が接続される基礎をさらに有し、
前記取り付けボルトは、前記基礎から上方に張り出すアンカーボルトであり、
前記第一接合金具と前記基礎が前記第一木質軸部材の対向する側面に配設され、前記第一ボルト孔と前記第二ボルト孔に前記アンカーボルトが挿通されてボルト接合されており、
前記第二木質軸部材にはさらに、前記嵌り込み部材が前記収容溝に嵌まり込んだ状態において前記第一ピン孔に対応する位置に第二ピン孔が開設され、
前記第一ピン孔と対応する前記第二ピン孔に前記金属固定軸部材が挿通されることにより、前記第一木質軸部材と前記第二木質軸部材が接合されている、木質軸部材の接合構造において、
前記第一木質軸部材のうち、前記第一接続片が配設される箇所には第四ボルト孔が開設され、前記基礎が配設される箇所には第五ボルト孔が開設されており、
前記第四ボルト孔と前記第五ボルト孔にそれぞれ、金属補強軸部材が埋め込まれていることを特徴とする。
【0019】
本態様によっても、第一木質軸部材と金属補強軸部材の双方が、第二木質軸部材から作用する軸力(圧縮力や引張力)に対抗することができる。本態様においては、基礎から上方に張り出すアンカーボルトが取り付けボルトであり、この取り付けボルトが第一木質軸部材を貫通して、第一木質軸部材の上面に配設されている第一接合金具の第一接続片に接続され、第一木質軸部材と例えば鉄筋コンクリート製の基礎とを繋ぐ。従って、本態様の接合構造は、例えば、第一木質軸部材が布基礎等の上に配設される土台の梁であり、第二木質軸部材が一階の柱である、梁と柱の接合構造となる。
【0020】
また、本発明による木質軸部材の接合構造の他の態様は、前記金属補強軸部材が、周面にネジ溝を備えたボルトであることを特徴とする。
【0021】
本態様によれば、金属補強軸部材がその周面にネジ溝を備えたボルトであることにより、第一木質軸部材と金属補強軸部材の間の周面摩擦力が大きくなり、第一木質軸部材と金属補強軸部材の接合強度を高めることができる。このことにより、相互に高い接合強度にて接合されている第一木質軸部材と金属補強軸部材が、一体となって第二木質軸部材から作用する軸力に対抗することができる。ここで、金属補強軸部材を形成するボルトは、取り付けボルトに比べて相対的に大径のボルトが適用されるのがよく、例えば、市販のラグスクリューボルトを適用できる。例えば、ラグスクリューボルトを第四ボルト孔や第五ボルト孔に捻じ込むことにより、第一木質軸部材の内部にラグスクリューボルトを埋設することができる。この際、ラグスクリューボルトの頭部は、六角頭を有していてもよし、雌螺子が設けられていてもよいし、雄螺子が設けられていてもよく、これら様々な態様の頭部に回転工具を嵌め込み、ラグスクリューボルトの捩じ込みを実行することができる。
【0022】
また、本発明による木質軸部材の接合構造の他の態様は、前記第四ボルト孔と前記第五ボルト孔が連通した連通ボルト孔を形成しており、該連通ボルト孔に前記金属補強軸部材が挿通されていることを特徴とする。
【0023】
本態様によれば、第四ボルト孔と第五ボルト孔が連通した連通ボルト孔を形成し、この連通ボルト孔に第一木質軸部材の対向する側面間に跨る長さを有する金属補強軸部材が挿通されていることにより、金属補強軸部材(の端面)は、第一木質軸部材の対向する上下面に配設されている第一接合金具の第一接続片に当接し、あるいは、第一木質軸部材の対向する上下面に配設されている第一接合金具の第一接続片と第二接合金具の第二接続片に当接し、第二木質軸部材から作用する圧縮力と引張力の双方に対して、共通の金属補強軸部材が対抗することが可能になる。
【発明の効果】
【0024】
以上の説明から理解できるように、本発明の木質軸部材の接合構造によれば、接合構造における設計荷重を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】第1実施形態に係る木質軸部材の接合構造を形成する、第一木質軸部材、第一接合金具、第二接合金具、取り付けボルト、及び金属補強軸部材が相互に組み付けられる前の分解斜視図である。
【
図2】第一接合金具、第二接合金具、取り付けボルト、及び金属補強軸部材が組み付けられた第一木質軸部材と、第二木質軸部材の分解斜視図である。
【
図3】第1実施形態に係る木質軸部材の接合構造の一例を示す斜視図である。
【
図4】(a)は、第二木質軸部材から軸力として圧縮力が第一木質軸部材に作用した際の対抗力を説明する模式図であり、(b)は、第二木質軸部材から軸力として引張力が第一木質軸部材に作用した際の対抗力を説明する模式図である。
【
図5】第2実施形態に係る木質軸部材の接合構造の一例を示す斜視図である。
【
図6】第3実施形態に係る木質軸部材の接合構造の一例を示す斜視図である。
【
図7】第4実施形態に係る木質軸部材の接合構造の一例を示す斜視図である。
【
図8】第5実施形態に係る木質軸部材の接合構造の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、各実施形態に係る木質軸部材の接合構造について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0027】
[第1実施形態に係る木質軸部材の接合構造]
はじめに、
図1乃至
図4を参照して、第1実施形態に係る木質軸部材の接合構造について説明する。ここで、
図1は、第1実施形態に係る木質軸部材の接合構造を形成する、第一木質軸部材、第一接合金具、第二接合金具、取り付けボルト、及び金属補強軸部材が相互に組み付けられる前の分解斜視図であり、
図2は、第一接合金具、第二接合金具、取り付けボルト、及び金属補強軸部材が組み付けられた第一木質軸部材と、第二木質軸部材の分解斜視図である。また、
図3は、第1実施形態に係る木質軸部材の接合構造の一例を示す斜視図である。さらに、
図4(a)は、第二木質軸部材から軸力として圧縮力が第一木質軸部材に作用した際の対抗力を説明する模式図であり、
図4(b)は、第二木質軸部材から軸力として引張力が第一木質軸部材に作用した際の対抗力を説明する模式図である。
【0028】
木質軸部材の接合構造100は、木製の天井梁(木製梁の一例)である第一木質軸部材10と、木製柱である第二木質軸部材20との接合構造である。
図2に示すように、第一木質軸部材10と第二木質軸部材20はいずれも、複数のラミナ11,21が積層してなる集成材により形成されており、繊維方向がそれぞれの部材の長手方向となっている。尚、第一木質軸部材10と第二木質軸部材20はその他、無垢材により形成されてもよい。
【0029】
図1に示すように、第一木質軸部材10には、頭付きの取り付けボルト38が貫通する第一ボルト孔12が開設されており、図示例では、二本の取り付けボルト38が貫通する二つの第一ボルト孔12が、平面視において正方形の一方の対角位置に設けられている。
【0030】
第一木質軸部材10と第二木質軸部材20を直接接続する第一接合金具33は、第一木質軸部材10の側面(図示例は下面)に当接される第一接続片31と、第一接続片31から立設(図示例は垂下しているが、これも立設に含まれるものとする)して第二木質軸部材20の収容溝22に嵌り込む嵌り込み部材32とを有する。第一接続片31と嵌り込み部材32は、いずれも平鋼により形成されている。尚、嵌り込み部材32はその他、鋼製のほぞパイプ等であってもよい。
【0031】
第一接続片31のうち、第一木質軸部材10の備える第一ボルト孔12に対応する位置には、複数(図示例は二つ)の第二ボルト孔31aが開設され、嵌り込み部材32には、金属固定軸部材40(
図2参照)が挿通される複数(図示例は四つ)の第一ピン孔32aが開設されている。
【0032】
第一木質軸部材10において、第一接合金具33が当接される下面に対向する上面には、第二接続片のみを備えている第二接合金具34が配設される。第二接続片34のち、第一ボルト孔12に対応する位置には、複数(図示例は二つ)の第三ボルト孔34aが開設されている。
【0033】
第一木質軸部材10にはさらに、第一接続片31が配設される箇所に二つの第四ボルト孔13が開設され、第二接続片34が配設される箇所に二つの第五ボルト孔14が開設されている。第四ボルト孔13と第五ボルト孔14は同軸上にあり、双方は連通していない。また、平面視において、正方形の対角位置にある二つの第一ボルト孔12とは異なる他方の対角位置に、二つの第四ボルト孔13と二つの第五ボルト孔14が設けられている。
【0034】
第四ボルト孔13と第五ボルト孔14にはそれぞれ、金属補強軸部材50がX1方向及びX2方向に捻じ込まれる。第四ボルト孔13と第五ボルト孔14に金属補強軸部材50が捻じ込まれた状態において、金属補強軸部材50の上端もしくは下端は、第一木質軸部材10の上面もしくは下面に面一となっており、従って、上方にある金属補強軸部材50の上端は第二接続片34に当接し、下方にある金属補強軸部材50の下端は第一接続片31に当接している。
【0035】
ここで、金属補強軸部材50は、その周面にネジ溝を備えたボルトであり、金属補強軸部材50には、取り付けボルト38に比べて相対的に大径のボルトが適用され、例えば市販のラグスクリューボルトが適用できる。図示例の金属補強軸部材50は、その一端に雌螺子51を備えており、雌螺子51に回転工具(図示せず)の先端が嵌合され、第四ボルト孔13や第五ボルト孔14に捻じ込まれるようになっている。尚、金属補強軸部材50が、その一端に雄螺子や六角頭を有していてもよく、いずれも回転工具の先端が嵌合される。
【0036】
金属補強軸部材50として、その周面にネジ溝を備えたボルトが適用されることにより、第一木質軸部材10と金属補強軸部材50の間の周面摩擦力が大きくなり、第一木質軸部材10と金属補強軸部材50の接合強度を高めることができる。第四ボルト孔13と第五ボルト孔14にそれぞれ、金属補強軸部材50が捻じ込まれた後、第一木質軸部材10の上面に第二接続片34を配設し、第一木質軸部材10の下面に第一接続片31(第一接合金具33)を配設し、対応する第三ボルト孔34aと第一ボルト孔12と第二ボルト孔31aに対して取り付けボルト38をX3方向に挿通する。取り付けボルト38は、その一端において第二接続片34に係合する六角頭等の頭部38bを備え、その他端に雄螺子38aを備えている。第一接続片31の第二ボルト孔31aから突出した雄螺子38aに締め付けナット39をX4方向に螺合して締め付けることにより、内部に複数の金属補強軸部材50が埋設された第一木質軸部材10に対して、取り付けボルト38を介して相互に接続される第一接合金具33と第二接合金具34が組み付けられる(
図2の上図参照)。尚、取り付けボルト38が、頭部38bを具備せず、六角ナット等に締め付けられる形態であってもよい。
【0037】
図2に示すように、第一木質軸部材10の下面に取り付けられている第一接合金具33を形成する嵌り込み部材32は、下方にある第二木質軸部材20側に延設している。第二木質軸部材20のうち、その上面の中央位置からその内部に亘り、嵌り込み部材32と同形状及び同寸法の収容溝22が開設されている。また、第二木質軸部材20には、嵌り込み部材32が収容溝22に嵌まり込んだ状態において、第一ピン孔32aに対応する位置に第二ピン孔23が開設されている。さらに、第二木質軸部材20の上端面には、第一木質軸部材10と相互に接合された際に、下方に突出する締め付けナット39や取り付けボルト38の端部を収容するボルトナット収容溝24が開設されている。
【0038】
図2に示すように、第二木質軸部材20の収容溝22に対して、第一木質軸部材10の下面から突出する嵌り込み部材32をX5方向に嵌め込む。この嵌め込みにより、
図3に示すように、対応する第一ピン孔32aと第二ピン孔23により連通ピン孔25が形成される。複数(図示例は四つ)の連通ピン孔25にそれぞれ、
図2に示すように金属固定軸部材40をX6方向へ挿通することにより、
図3に示す接合構造100が形成される。ここで、金属固定軸部材40としては、ドリフトピンやボルト等が適用できる。
【0039】
図4(a)と
図4(b)に示すように、天井梁である第一木質軸部材10には、地震時や強風時等において木造軸組架構に水平力が作用して転倒モーメントが生じた際に、第二木質軸部材20から軸力として圧縮力N1や引張力N2が作用する。
【0040】
まず、
図4(a)に示すように、第二木質軸部材20から軸力として圧縮力N1が作用する場合について、この圧縮力N1に対抗する第一木質軸部材10における対抗力について説明する。
【0041】
第一木質軸部材10の下方にある第二木質軸部材20より、上向きの圧縮力N1が軸力として作用する場合、圧縮力N1は、第二木質軸部材20に接続される第一接合金具33の第一接続片31を介して、第一木質軸部材10における第一接続片31に当接する箇所に作用する。従来の木質軸部材の接合構造、すなわち、金属補強軸部材50を備えていない接合構造においては、作用する圧縮力N1を、第一木質軸部材10における第一接続片31に当接する箇所のめり込み耐力のみにより対抗していた。木質軸部材の側面における繊維直交方向のめり込み耐力は比較的低いことから、従来の接合構造における設計荷重は、このめり込み耐力に相当する荷重(めり込み荷重)により決定されることが往々にしてあり、従って木質軸部材の接合構造においては大きな設計荷重を見込むことが難しかった。
【0042】
これに対して、図示する接合構造100においては、第一木質軸部材10における第一接続片31が当接する箇所に、第一接続片31を上方から支持するようにして複数(図示例は二つ)の金属補強軸部材50が配設されている。そのため、第二木質軸部材20から作用する圧縮力N1は、第一接続片31を介して第二木質軸部材20と金属補強軸部材50の双方に伝達されることになる。第一木質軸部材10と金属補強軸部材50に伝達されるそれぞれの分担荷重は、双方の剛性の割合に応じて決定される。そして、第一木質軸部材10は、そのめり込み耐力Pにて分担荷重に対抗し、金属補強軸部材50は、第一木質軸部材10との間の周面摩擦力Qにて分担荷重に対抗する。
【0043】
例えば、第一木質軸部材10に比べて金属補強軸部材50の剛性が大きい場合は、金属補強軸部材50が相対的に大きな分担荷重を負担することとなり、第一木質軸部材10は、そのめり込み耐力に相当する荷重を受けるまでに余裕が生じることになる。例えば、第一木質軸部材10のめり込み耐力が1000である場合において、従来の構造では作用する軸力(設定荷重)はめり込み耐力の1000までしか設定できない。これに対して、図示する接合構造100では、第一木質軸部材10のめり込み耐力が1000であり、金属補強軸部材50と第一木質軸部材10との間の周面摩擦力が2000である場合に、最大で3000の荷重(圧縮力N1)まで接合構造100における許容荷重を増加させることができる。また、金属補強軸部材50と第一木質軸部材10の剛性比率が例えば3:1の場合には、実際に第二木質軸部材20から作用する圧縮力N1が1000である場合(許容荷重は上記するように3000である)、第一木質軸部材10の負担荷重は250(圧縮力1000の1/4)でよく、第一木質軸部材10の許容荷重(めり込み耐力に相当する荷重)の1000までにさらに負担可能な荷重に余裕(750の余裕)が生じることになる。
【0044】
一方、
図4(b)に示すように、第二木質軸部材20から軸力として引張力N2が作用する場合、この引張力N2は、第一接続片31に接続される取り付けボルト38を介して第二接続片34に伝達され、第二接続片34を支持する上方の金属補強軸部材50が、作用する引張力N2の一部を負担する。すなわち、この場合においても、第一木質軸部材10は、そのめり込み耐力Pにて分担荷重に対抗し、上方の二つの金属補強軸部材50は、第一木質軸部材10との間の周面摩擦力Qにて分担荷重に対抗する。
【0045】
図4(a)及び
図4(b)にて示すように、第二木質軸部材20から軸力として圧縮力N1と引張力N2のいずれが作用する場合においても、圧縮力N1と引張力N2のそれぞれに対応する金属補強軸部材50(圧縮力N1には下方の金属補強軸部材50、引張力N2には上方の金属補強軸部材50)が、第二木質軸部材20から作用する軸力の一部を負担することができ、木質軸部材の接合構造100において見込むことのできる設計荷重を増加させることが可能になる。
【0046】
[第2実施形態に係る木質軸部材の接合構造]
次に、
図5を参照して、第2実施形態に係る木質軸部材の接合構造の一例について説明する。ここで、
図5は、第2実施形態に係る木質軸部材の接合構造の一例を示す斜視図である。
【0047】
図示する木質軸部材の接合構造100Aは、金属補強軸部材50Aがその端部に雄螺子52を備え、第一接続片31に開設されている螺子孔(図示せず)を雄螺子52が貫通し、ナット53にて締め付けられることにより、金属補強軸部材50Aが第一接続片31に接続している点において、接合構造100と相違している。尚、上方の金属補強軸部材50Aも、その上端にある雄螺子がナット(いずれも図示せず)にて締め付けられ、第二接続片34に接続している。
【0048】
このように、金属補強軸部材50Aが、ナット53を介して第一接続片31や第二接続片34に接続されていることにより、上方の金属補強軸部材50Aと下方の金属補強軸部材50Aはいずれも、第二木質軸部材20から作用する圧縮力と引張力の双方に対抗することができる。そのため、上下にある全て(図示例は四つ)の金属補強軸部材50Aを、第二木質軸部材20から作用する圧縮力と引張力の双方に対抗させることができ、接合構造における設計荷重をより一層増加させることが可能になる。
【0049】
[第3実施形態に係る木質軸部材の接合構造]
次に、
図6を参照して、第3実施形態に係る木質軸部材の接合構造の一例について説明する。ここで、
図6は、第3実施形態に係る木質軸部材の接合構造の一例を示す斜視図である。
【0050】
図示する木質軸部材の接合構造100Bは、第一木質軸部材10において、その上面から下面に亘る連通ボルト孔15が開設され、連通ボルト孔15に長尺な金属補強軸部材50Bが捻じ込まれ、金属補強軸部材50Bの上端面と下端面が第二接続片34と第一接続片31に当接している点において、接合構造100,100Aと相違している。すなわち、連通ボルト孔15は、
図1乃至
図5に示す第四ボルト孔13と第五ボルト孔14が連通したボルト孔と言える。
【0051】
このように、連通ボルト孔15に第一木質軸部材10の対向する側面間に跨る長さを有する金属補強軸部材50Bが挿通され、金属補強軸部材50Bの上端面と下端面が第二接続片34と第一接続片31に当接していることにより、第二木質軸部材20から作用する圧縮力と引張力の双方に対して、共通の金属補強軸部材50Bが対抗することが可能になる。
【0052】
[第4実施形態に係る木質軸部材の接合構造]
次に、
図7を参照して、第4実施形態に係る木質軸部材の接合構造の一例について説明する。ここで、
図7は、第4実施形態に係る木質軸部材の接合構造の一例を示す斜視図である。
【0053】
図示する木質軸部材の接合構造100Cは、二つの第一接合金具33が第一木質軸部材10の対向する上面及び下面に配設され、第一木質軸部材10の第一ボルト孔12と上下二つの第一接続片31の第二ボルト孔31aに取り付けボルト38が挿通され、上下でボルト接合されている。そして、上下の第一接合金具33を介して、上方の第二木質軸部材20Aと下方の第二木質軸部材20Bが第一木質軸部材10に接合されている。この接合構造100Cは、第一木質軸部材10が二階や三階といった上階の梁(床梁や階間梁等)であり、上方の第二木質軸部材20Aが上階柱であり、下方の第二木質軸部材20Bが下階柱である、接合構造となる。
【0054】
[第5実施形態に係る木質軸部材の接合構造]
次に、
図8を参照して、第5実施形態に係る木質軸部材の接合構造の一例について説明する。ここで、
図8は、第5実施形態に係る木質軸部材の接合構造の一例を示す斜視図である。
【0055】
図示する木質軸部材の接合構造100Dは、鉄筋コンクリート製の布基礎等の基礎60の上に第一木質軸部材10が配設され、基礎60から上方に突出するアンカーボルト38Aが、第一木質軸部材10の第一ボルト孔12と第一接続片31の第二ボルト孔31aに挿通され、ボルト接合されている。すなわち、この接合構造100Dは、第一木質軸部材10が布基礎等の基礎60上に配設される土台の梁であり、第二木質軸部材20が一階の柱である、梁と柱の接合構造となる。基礎60のアンカーボルト38Aを有効に利用しながら、基礎60と、土台の木製梁10と、一階の木製柱20とが強固に接合される。
【0056】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0057】
10:第一木質軸部材(木製梁)
11:ラミナ
12:第一ボルト孔
13:第四ボルト孔
14:第五ボルト孔
15:連通ボルト孔
20:第二木質軸部材(木製柱)
20A:第二木質軸部材(上階柱)
20B:第二木質軸部材(下階柱)
21:ラミナ
22:収容溝
23:第二ピン孔
24:ボルトナット収容溝
25:連通ピン孔
31:第一接続片
31a:第二ボルト孔
32:嵌り込み部材
33:第一接合金具
34:第二接合金具(第二接続片)
34a:第三ボルト孔
38:取り付けボルト
38A:アンカーボルト
38a:雄螺子
38b:頭部
39:締め付けナット
40:金属固定軸部材
50,50A,50B:金属補強軸部材
51:雌螺子
52:雄螺子
53:ナット
60:基礎
100,100A,100B,100C,100D:接合構造(木質軸部材の接合構造)