IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東芝の特許一覧 ▶ 東芝エネルギーシステムズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-燃料電池発電装置 図1
  • 特許-燃料電池発電装置 図2
  • 特許-燃料電池発電装置 図3
  • 特許-燃料電池発電装置 図4
  • 特許-燃料電池発電装置 図5
  • 特許-燃料電池発電装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】燃料電池発電装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04044 20160101AFI20240321BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20240321BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20240321BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20240321BHJP
【FI】
H01M8/04044
H01M8/04 J
H01M8/10 101
H01M8/12 101
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020067648
(22)【出願日】2020-04-03
(65)【公開番号】P2021163726
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(72)【発明者】
【氏名】田中 正俊
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 彩香
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 広美
(72)【発明者】
【氏名】橘高 大悟
【審査官】藤森 一真
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-061485(JP,A)
【文献】特開2011-187313(JP,A)
【文献】特開2018-018683(JP,A)
【文献】特開2008-269807(JP,A)
【文献】特開2008-198400(JP,A)
【文献】特開2010-282821(JP,A)
【文献】特開2012-115784(JP,A)
【文献】国際公開第2006/064946(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04 - 8/0668
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素含有ガスが供給されるカソードと、水素含有ガスが供給されるアノードと、前記酸素含有ガスと前記水素含有ガスとの反応で発生した熱を冷却する冷却水が供給される冷却部と、を有する燃料電池本体と、
前記冷却水を貯留する水タンクと、
イオン交換樹脂が充填されたイオン交換樹脂ボトルと、
前記水タンクと前記イオン交換樹脂ボトルとの間で前記冷却水を循環させるポンプと、
前記アノードから排出されたガスを昇圧するリサイクルブロアと、
前記リサイクルブロアと、前記冷却水の循環流路とを接続する第1配管と、
を備え、
前記第1配管の一端が、前記水タンクと前記イオン交換樹脂ボトルとの間に設けられた第2配管または前記イオン交換樹脂ボトルの下面に接続されている、燃料電池発電装置。
【請求項2】
前記イオン交換樹脂ボトルが、前記水タンク内における前記冷却水の水位よりも下方に配置され、前記イオン交換樹脂ボトル内における前記冷却水の流れ方向が、前記イオン交換樹脂ボトルの下面から上面に向かう方向である、請求項に記載の燃料電池発電装置。
【請求項3】
前記第1配管の他端と前記リサイクルブロアとの間に設けられたブリード遮断弁をさらに備え、前記ブリード遮断弁は、前記ポンプの駆動時に開いている、請求項に記載の燃料電池発電装置。
【請求項4】
前記イオン交換樹脂ボトルが、前記水タンク内における前記冷却水の水位よりも下方に配置され、前記イオン交換樹脂ボトル内における前記冷却水の流れ方向が、前記イオン交換樹脂ボトルの上面から前記下面に向かう方向であり、
前記上面と前記水タンクとの間に設けられたオリフィスをさらに備え、前記オリフィスは、前記水位よりも上方に配置されている、請求項に記載の燃料電池発電装置。
【請求項5】
前記第1配管の他端と前記リサイクルブロアとの間に設けられたブリード遮断弁をさらに備え、前記ブリード遮断弁は、前記ポンプの停止時に開き、前記ポンプの駆動時に閉じる、請求項に記載の燃料電池発電装置。
【請求項6】
酸素含有ガスが供給されるカソードと、水素含有ガスが供給されるアノードと、前記酸素含有ガスと前記水素含有ガスとの反応で発生した熱を冷却する冷却水が供給される冷却部と、を有する燃料電池本体と、
前記冷却水を貯留する水タンクと、
イオン交換樹脂が充填されたイオン交換樹脂ボトルと、
前記水タンクと前記イオン交換樹脂ボトルとの間で前記冷却水を循環させるポンプと、
前記アノードから排出されたガスを昇圧するリサイクルブロアと、
前記リサイクルブロアと、前記冷却水の循環流路とを接続する第1配管と、
を備え、
前記第1配管の一端が、前記水タンクの下面に接続されている、燃料電池発電装置。
【請求項7】
前記イオン交換樹脂ボトル内における前記冷却水の流れ方向が、前記イオン交換樹脂ボトルの下面から上面に向かう方向である、請求項に記載の燃料電池発電装置。
【請求項8】
前記イオン交換樹脂ボトルの前記上面と前記水タンクの前記下面との間に設けられたオリフィスをさらに備え、前記オリフィスは、前記水タンク内における前記冷却水の水位よりも上方に配置されている、請求項に記載の燃料電池発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、燃料電池発電装置およびその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池発電装置では、燃料電池等の冷却のためにイオン交換水を冷却水として使用している。冷却水の水質を管理するための水質管理機器として、例えば、陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂を充填したイオン交換樹脂ボトルが挙げられる。
【0003】
上記イオン交換樹脂は、高温で分解する性質を有する。上記イオン交換樹脂が分解すると、冷却水の水質管理が不十分になってしまう。そのため、定期的にイオン交換樹脂ボトルを交換する方法が考えられる。
【0004】
しかし、イオン交換樹脂ボトルは、通常、外気で冷却されるため、例えば外気温度が高い夏期には、交換時期になる前にイオン交換樹脂ボトルが高温状態となる可能性が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4891487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、イオン交換樹脂を高温で長時間使用することが可能な燃料電池発電装置およびその運転方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係る燃料電池発電装置は、酸素含有ガスが供給されるカソードと、水素含有ガスが供給されるアノードと、酸素含有ガスと水素含有ガスとの反応で発生した熱を冷却する冷却水が供給される冷却部と、を有する燃料電池本体と、冷却水を貯留する水タンクと、イオン交換樹脂が充填されたイオン交換樹脂ボトルと、水タンクとイオン交換樹脂ボトルとの間で冷却水を循環させるポンプと、アノードから排出されたガスを昇圧するリサイクルブロアと、リサイクルブロアと、冷却水の循環流路とを接続する第1配管と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本実施形態によれば、イオン交換樹脂を高温で長時間使用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る燃料電池発電装置のブロック図である。
図2】第2実施形態に係る燃料電池発電装置のブロック図である。
図3】第3実施形態に係る燃料電池発電装置の構成例を示すブロック図である。
図4】第4実施形態に係る燃料電池発電装置の構成例を示すブロック図である。
図5】第5実施形態に係る燃料電池発電装置の構成例を示すブロック図である。
図6】第6実施形態に係る燃料電池発電装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態に係る燃料電池発電装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は、本発明の実施形態の一例であって、本発明はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではない。また、本実施形態で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号又は類似の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面の寸法比率は説明の都合上実際の比率とは異なる場合や、構成の一部が図面から省略される場合がある。燃料電池発電装置は水素を燃料電池本体部において直接電気エネルギーに変換するシステムである。このシステムは化学反応による発電であるために発電効率が高く、汚染物質の排出および騒音が少なく、環境性に優れた発電装置として評価されている。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る燃料電池発電装置の構成例を示すブロック図である。図1に示す燃料電池発電装置では、燃料電池本体1が、空気などの酸素含有ガス1aと、水素含有ガス1bとを用いて発電する。燃料電池本体1は、カソード1cと、アノード1dと、冷却部1eと、図示しないイオン伝導層とを有する。
【0012】
カソード1cには、酸素含有ガス1aが供給され、アノード1dには、水素含有ガス1bが供給される。冷却部1eは、イオン伝導層を介して行われる酸素含有ガス1aと水素含有ガス1bとの反応で発生した反応熱を冷媒1f、例えば冷却水で冷却する。イオン伝導層を構成する物質は、例えば陽イオン交換樹脂、酸性溶液、アルカリ性溶液、溶融炭酸塩、ジルコニア系セラミック等である。
【0013】
カソード1cの出口から排出されるガスは、燃料電池本体1の発電により酸素が消費され、酸素濃度が低下している。このガスは、水タンク2に導入され、ガスからの凝縮水を水タンク2に回収させた後排出される。よって水タンク2の気相は、運転中、空気などの酸素含有ガス1aよりも酸素濃度が低いガスでパージされる。
【0014】
冷却部1eから排出された冷却水は、熱交換器5で熱交換される。その後、冷却水は、ポンプ6によって、水タンク2に排出される。熱交換器5はポンプ6の下流、水タンク2の上流に設置してもよい。また、水タンク2に貯留された水の一部は、冷媒1fとして冷却部1eに再び供給される。これにより、冷却水の循環路が冷却部1eと水タンク2との間に構成される。
【0015】
アノード1dの出口から排出されたガスは、リサイクルブロア3で昇圧される。昇圧されたブリードガスは、リサイクルラインオリフィス3aを通過する。その後、このガスは、合流部j10で水素含有ガス1bの供給配管と合流する。合流部j10からアノード1d、リサイクルブロア3、リサイクルラインオリフィス3aを通って合流部j10に戻るラインをリサイクルライン3bと称する。
【0016】
水素含有ガス1bの供給圧力を調整することによって、合流部j10の圧力を一定に維持すれば、アノード1dで消費される水素量と、水素含有ガス1bによって供給される水素量は一致する。その結果、発電運転中における大半の期間、アノード1dから排出されたガスを外部に排出することなく運転することが可能である。しかし、燃料電池本体1で消費されない窒素等の不純物濃度が時間とともに増加し、これが燃料電池本体1の運転に影響を与える可能性がある。
【0017】
そのため、リサイクルブロア3の下流に設けた分岐j11から配管を分岐させる。さらに、その配管の下流にブリード弁3cを設ける。ブリード弁3cを定期的に一定時間開けることによって、リサイクルライン3b内の不純物をブリードガスによってパージする。
【0018】
また、本実施形態では、ブリードガスの流量が過大とならないようにするために、ブリードオリフィス3dがブリード弁3cの下流に設けられている。また、ブリード弁3cが開いた際に合流部j10から分岐j11へリサイクルラインを逆流する流量が、合流部j10からアノード1d及びリサイクルブロア3を通過し分岐j11へ至る順方向の流れの流量に対して過大にならないように調整するために、リサイクルラインオリフィス3aが設けられている。
【0019】
水タンク2には、純水が上記冷却水として貯留されている。水タンク2における純水の水位2aは、図示しない排水設備により一定以下に維持されている。水質を維持するため、水タンク2に貯留された純水の一部が、ポンプ4fにより水タンク2の下面から導出される。ポンプ4fは、導出された純水を、配管4g(第2配管)を通じてイオン交換樹脂ボトル4の下面に送出する。イオン交換樹脂ボトル4内で純水はイオン交換される。イオン交換された純水は、イオン交換樹脂ボトル4の上面から排出されて水タンク2に戻る。このようにして、水タンク2とイオン交換樹脂ボトル4との間に純水の循環流路4eが構成されている。
【0020】
イオン交換樹脂ボトル4には、直径1mm以下の球状粒子である陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂がイオン交換樹脂4dとして充填されている。イオン交換樹脂4dは、イオン交換樹脂ボトル4の全長に渡って充填されていない。イオン交換樹脂ボトル4の入口側には入口空間4aが設けられ、出口側には出口空間4bが設けられている。
【0021】
陽イオン交換樹脂の耐熱温度は120℃前後であり、陰イオン交換樹脂の耐熱温度は60℃前後である。これらの耐熱温度を超えると、陽イオン交換樹脂はスルホン酸化合物を遊離する性質を有し、陰イオン交換樹脂はアミン化合物を遊離する性質を有する。しかし、実際に燃料電池発電装置を運転すると、陽イオン交換樹脂が陰イオン交換樹脂よりも低温で分解する場合がある。その理由は、陽イオン交換樹脂周囲の水中に存在する溶存酸素によって陽イオン交換樹脂の酸化反応が発生するためである。
【0022】
そこで、本実施形態では、上記ブリードガスをイオン交換樹脂ボトル4に導入するための配管3e(第1配管)が設けられている。配管3eの一端は、分岐j12で配管4gと接続される。配管3eの他端は、ブリードオリフィス3dの出口に接続される。これにより、ブリードオリフィス3dの出口と分岐j12との間を配管3eで接続することができる。イオン交換樹脂ボトル4の上面と水タンク2とを接続する配管は、水位2aよりも上方及び下方のどちらで開口してもよいが、下方で開口する場合は後述するブリードガス流通の障害とならないよう、水位2aとの距離を例えば5cm以内とすることが望ましい。
【0023】
なお、ポンプ4f及びイオン交換樹脂ボトル4は、水タンク2の水位2aよりも鉛直下方に配置されることが望ましい。このような配置の場合、発電運転が停止した状態ではポンプ4f及びイオン交換樹脂ボトル4が水タンク2からの水で充填されるからである。運転停止状態時に水タンク2からの水で充填できるようにするために、ポンプ4fは、ピストン式等閉止機能があるポンプよりも、むしろ渦巻式や渦流式等のポンプであることが望ましい。
【0024】
一方、リサイクルブロア3、リサイクルラインオリフィス3a、ブリード弁3c、およびブリードオリフィス3dは、水没しないよう水位2aより上方に配置されることが望ましい。水位2aに対する望ましい燃料電池本体1の配置高さは、燃料電池本体1の特性によるが、本実施形態では水位2aより下方に配置する。
【0025】
本実施形態では、燃料電池本体1が発電すると、ブリード弁3cが遮断している期間、リサイクルライン3b内の水素以外の不純物が増大していくので、定期的にブリード弁3cを一定時間開けて不純物が増大したガスを水素濃度が高い水素含有ガス1bでパージする。
【0026】
ブリード弁3cからブリードオリフィス3dを通じて排出された、主成分が水素と窒素であり酸素を含まないブリードガスは、分岐j12で配管4gに入り、一旦、イオン交換樹脂ボトル4の入口空間4aに貯留される。ブリードガスが入口空間4aに貯留されている間、ポンプ4fを運転し、水タンク2からの純水をイオン交換樹脂ボトル4に押し込むことで、入口空間4aに入ったブリードガスは押し上げられ、充填されたイオン交換樹脂4dを通過する。ブリードガスがイオン交換樹脂4dを通過する過程で、イオン交換樹脂4dの表面に吸着されていた溶存酸素がパージされる。これにより、イオン交換樹脂4dの分解が抑制される。
【0027】
イオン交換樹脂4dを通過したブリードガスは、イオン交換樹脂ボトル4の出口空間4bに入り、イオン交換樹脂ボトル4の上面から水タンク2内に導出される。水タンク2に導出されたガスは、カソード1cの出口から排出されたガスにより希釈されて排出される。
【0028】
以上説明した本実施形態によれば、燃料電池のリサイクルライン3bから定期的に排出され、リサイクルブロア3で加圧されたブリードガスが、イオン交換樹脂ボトル4に導入される。このブリードガスによって、イオン交換樹脂4d中において、特に陽イオン交換樹脂を酸化分解する可能性のある溶存酸素を低減させることができる。よって、イオン交換樹脂を高温で長時間使用することが可能となる。
【0029】
なお、本実施形態では、イオン交換樹脂ボトル4から排出されたブリードガスは、水タンク2内で希釈されてから外部に排気されるので、安全性を確保できる。仮に、水タンク2内で発火したとしても、イオン交換樹脂ボトル4で水封されているので燃焼がリサイクルライン3bやアノード1dに及ぶことはない。
【0030】
(第2実施形態)
図2は、第2実施形態に係る燃料電池発電装置の構成例を示すブロック図である。本実施形態では、図2に示すように、分岐j12が存在せず、ブリードオリフィス3dの出口に接続された配管3eが、イオン交換樹脂ボトル4の下面に直接接続されている。そのため、ブリードガスが入口空間4aに直接導入されるため、第1実施形態に比べて簡易な配管構成で、イオン交換樹脂ボトル4内の溶存酸素を低減できる。
【0031】
なお、本実施形態では、分岐j12が不要になるため、第1実施形態に比べて配管構成がより簡便となる。また、本実施形態でも、運転停止時にポンプ4f及びイオン交換樹脂ボトル4を水で充電するために、これらの機器は、水位2aより下方に配置することが望ましい。
【0032】
(第3実施形態)
図3は、第3実施形態に係る燃料電池発電装置の構成例を示すブロック図である。
【0033】
本実施形態では、燃料電池本体1の周辺機器及びリサイクルライン3bの機器の構成と動作は、上述した第1実施形態及び第2実施形態と同様であるため説明を省略する。なお、本実施形態でも、ポンプ4f及びイオン交換樹脂ボトル4は、水タンク2の水位2aより下方に配置することが望ましい。
【0034】
一方、本実施形態のイオン交換樹脂ボトル4では、入口空間4aが鉛直上側に配置され、出口空間4bが鉛直下側に配置されている。また、ポンプ4fによって、水タンク2の下面から導出された純水は、イオン交換樹脂ボトル4の上面から入り、下面から出て水タンク2の下面に戻る。さらに、イオン交換樹脂ボトル4の上面には、イオン交換樹脂ボトル気抜オリフィス4cが接続され、イオン交換樹脂ボトル気抜オリフィス4cと水タンク2との間に接続配管が設けられている。
【0035】
上記接続配管は、水位2aより上方及び下方のどちらで開口してもよいが、イオン交換樹脂ボトル気抜オリフィス4cと水タンク2の差圧は低く、気泡による配管閉塞が起こり易いので、接続配管の内径は例えば6mm以上であることが望ましい。
【0036】
また気泡は、イオン交換樹脂ボトル気抜オリフィス4cの前後で溜まりやすいので、イオン交換樹脂ボトル気抜オリフィス4cは、水位2aより高位置に設置することが望ましい。
【0037】
本実施形態の燃料電池発電装置では、ブリード弁3cが開くと同時にポンプ4fは運転を停止する。そのため、ブリード弁3cから導出されたブリードガスは、配管3eから配管4gに入り、配管4g内を上昇する。その後、ブリードガスは、イオン交換樹脂ボトル4の下面から出口空間4bに入り、イオン交換樹脂4dを通過する。その後、ブリードガスは、入口空間4aからイオン交換樹脂ボトル気抜オリフィス4cを通じて水タンク2に流入する。
【0038】
ブリード弁3cが開いている間、ブリードガスの流れ方向は、ポンプ4fの送液方向(図3の矢印参照)と逆になるので、ポンプ4fは停止することが望ましい。ポンプ4fは、ブリード弁3cの閉止後に運転を再開する。このとき、純水をイオン交換樹脂ボトル4の上面から押し込むことで、イオン交換樹脂ボトル4の入口空間4a内に滞留しているブリードガスを、イオン交換樹脂ボトル気抜オリフィス4cから水タンク2内へ送出する。このように動作させることで、イオン交換樹脂4d中において、特に陽イオン交換樹脂を酸化分解するリスクがある溶存酸素を低減させることができる。
【0039】
また、イオン交換樹脂ボトル4から排出されたブリードガスは、他の実施形態と同様に、水タンク2内で希釈されてから外部に排気されるので安全性を確保できる。仮に、水タンク2内で発火したとしても、イオン交換樹脂ボトル4で水封されているので燃焼がリサイクルライン3bやアノード1dに及ぶことはない。この過程でブリードガスの一部が、分岐j12からイオン交換樹脂ボトル4を通らずに配管4gを通って直接水タンク2へ流入する可能性がある。しかし、イオン交換樹脂ボトル4の上流に位置する水タンク2中の溶存酸素を低下させることは、イオン交換樹脂ボトル4中の溶存酸素低下につながるので、遮断弁等の流入停止手段を設ける必要はない。
【0040】
本実施形態によれば、イオン交換樹脂ボトル4内のイオン交換樹脂4dの流動を抑えるため、その内部の流れを上面から下面に向かう下降流とすることが要請される場合に適用することが可能となる。
【0041】
(第4実施形態)
図4は、第4実施形態に係る燃料電池発電装置の構成例を示すブロック図である。以下、第3実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0042】
本実施形態では、分岐j12が存在せず、ブリードオリフィス3d出口に接続された配管3eが、イオン交換樹脂ボトル4の下面に直接接続されている。そのため、ブリードガスが出口空間4bに直接導入される。よって、第3実施形態に比べて、簡易な配管構成で、イオン交換樹脂ボトル4内の溶存酸素を低減できる。加えて、イオン交換樹脂ボトル4を通過せず直接水タンク2に流入するブリードガスの割合を、第3実施形態より減少することも可能となる。
【0043】
なお、本実施形態でも、第3実施形態と同様に、ポンプ4f及びイオン交換樹脂ボトル4は、水位2aより下方に配置することが望ましく、また、イオン交換樹脂ボトル気抜オリフィス4cは、水位2aより高い位置に配置することが望ましい。
【0044】
(第5実施形態)
図5は、第5実施形態に係る燃料電池発電装置の構成例を示すブロック図である。
【0045】
本実施形態では、燃料電池本体1の周辺機器、リサイクルライン3bの機器、及びポンプ4fとイオン交換樹脂ボトル4の構成は、第1実施形態と同様であるため説明を省略する。また、イオン交換樹脂ボトル4内における純水の流れも、第1実施形態と同様に、鉛直下方から鉛直上方である。
【0046】
本実施形態では、分岐j12が存在せず、ブリードオリフィス3dの出口に接続される配管3eが、水タンク2の下面に接続されている。この構成では、ブリードオリフィス3dの出口から排出されたブリードガスは、直接イオン交換樹脂ボトル4に流通せず、その上流に配置された水タンク2の中で発泡する。その後、ブリードガスは、水タンク2内を流れるカソード1cから排出されて水タンク2内に導入されたガスによって、希釈されて外部に排出される。
【0047】
上記ブリードガスの流れによって、水タンク2内の溶存酸素が低減されるので、その下流にあたるイオン交換樹脂ボトル4内の溶存酸素も低減される。
【0048】
なお、イオン交換樹脂ボトル4から水タンク2へ接続する配管の、水タンク2での開口位置は、第1実施形態及び第2実施形態では水位2aより上が望ましかった。一方、本実施形態では開口位置は制限されず、水タンク2の下面で開口してもよい。その理由は、ブリードガスがイオン交換樹脂ボトル4内を流通しないので、開口部にかかる水頭圧力でブリードガスの流通が阻害されるリスクがないためである。
【0049】
また、ポンプ4fとイオン交換樹脂ボトル4の入口とを接続する配管4gは、図5に示すように、一度水タンク2の水位2aより高い位置まで上げてから再び水位2aより低い位置まで下げるように屈曲した構成とすることもできる。このような構成では、配管4gにおける水位2aより高い部分を取り外し可能とすることによって、水タンク2が貯留する純水を漏洩させることなく、イオン交換樹脂ボトル4を交換することができる。
【0050】
さらに、この構成では、ポンプ4停止後のイオン交換樹脂ボトル4内にブリードガスが残留せず、水タンク2からの入口および出口が水位2aより低位置である限り水が抜けることがない。そのため、イオン交換樹脂ボトル4全体を水位2aより下方に配置する必要がなく、図5に示すように水位2aより高い位置に配置することもできる。
【0051】
(第6実施形態)
図6は、第6実施形態に係る燃料電池発電装置の構成例を示すブロック図である。
【0052】
本実施形態では、燃料電池本体1の周辺機器、リサイクルライン3bの機器、及びポンプ4fとイオン交換樹脂ボトル4の構成は、第3実施形態と同一である。また、イオン交換樹脂ボトル4内における純水の流れも、第3実施形態と同様に鉛直上方から鉛直下方である。
【0053】
また、本実施形態では、第5実施形態と同様に、ブリードオリフィス3dの出口に接続された配管3eは、水タンク2の下面に接続されている。そのため、水タンク2内の純水の溶存酸素が、配管3eを通じて供給されるブリードガスによって低減される。また、溶存酸素が減少した純水が、ポンプ4fによって、イオン交換樹脂ボトル4内を流れるため、イオン交換樹脂ボトル4内の溶存酸素も低減される。
【0054】
また、イオン交換樹脂ボトル気抜オリフィス4cの出口と水タンクとを接続する配管の開口位置は、第5実施形態と同様に制限がなく、水タンク2下面で開口してもよい。さらに、配管4gについても、第5実施形態と同様に、水位2aより高い位置で屈曲した後に水位2aより低い位置で屈曲する構成とすることで、配管4gの水位2aより高い部分を取り外し可能とすることによって、水タンク2が貯留する純水を漏洩させることなく、イオン交換樹脂ボトル4を交換することが可能である。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0056】
1:燃料電池本体、1a:酸素含有ガス、1b:水素含有ガス、1c:カソード、1d:アノード、1e:冷却部、1f:冷媒(冷却水)、2:水タンク、2a:水位、3:リサイクルブロア、3a:リサイクルラインオリフィス、3b:リサイクルライン、3c:ブリード弁、3d:ブリードオリフィス、4:イオン交換樹脂ボトル、4a:入口空間、4b:出口空間、4c:イオン交換樹脂ボトル気抜オリフィス、4d:イオン交換樹脂、4e:循環流路、4f:ポンプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6