(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】劣化推定装置、モデル生成装置、劣化推定方法、モデル生成方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01R 31/392 20190101AFI20240321BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240321BHJP
G01R 31/367 20190101ALI20240321BHJP
G01R 31/3842 20190101ALI20240321BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
G01R31/392
H01M10/48 P
H01M10/48 301
G01R31/367
G01R31/3842
H02J7/00 Y
(21)【出願番号】P 2020090373
(22)【出願日】2020-05-25
【審査請求日】2023-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】507357232
【氏名又は名称】株式会社AESCジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】陳 九廷
(72)【発明者】
【氏名】嶋脇 秀徳
(72)【発明者】
【氏名】林 逸郎
【審査官】永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-113524(JP,A)
【文献】国際公開第2017/094759(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/181728(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/181729(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/021099(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/147194(WO,A1)
【文献】特開2006-220616(JP,A)
【文献】特開2020-71070(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/36
H01M 10/48
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
充放電回数がα
iからα
j(ただしj≧i)のときの蓄電池の状態を測定した結果を示す訓練用測定データを入力値として、充放電回数がβ(ただしβ>α
j)のときの前記蓄電池の劣化状態を示すSOHを目標値とした訓練データを機械学習することにより生成された複数のモデルを記憶部に記憶させる記憶処理部と、
処理対象となる対象蓄電池の充放電回数が前記α
iからα
jのときの前記状態を測定した結果である算出用測定データを取得し、前記複数のモデルのそれぞれに前記算出用測定データを入力することにより、前記対象蓄電池のSOHの推移の推定結果を算出する算出部と、
を備え、
前記α
iおよびα
jは前記複数のモデルにおいて同一の値であり、前記βは前記複数のモデルにおいて互いに異なっている劣化推定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の劣化推定装置において、
前記訓練用測定データ及び前記算出用測定データは、いずれも電流、電圧、及び温度を含む劣化推定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の劣化推定装置において、
前記訓練用測定データ及び前記算出用測定データは、いずれも電流、電圧、及び温度からなる劣化推定装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の劣化推定装置において、
前記モデルは、複数の前記蓄電池に関する前記訓練データを用いて生成されている劣化推定装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の劣化推定装置において、
前記記憶処理部は、外部の装置から少なくとも一つの前記モデルを更新するためのデータを取得し、当該データを用いて前記記憶部に記憶されている前記モデルを更新する劣化推定装置。
【請求項6】
請求項5に記載の劣化推定装置において、
前記対象蓄電池の充放電回数が前記α
iからα
jのときの前記算出用測定データと、前記対象蓄電池の充放電回数が前記βのときのSOHを特定するためのデータとを、前記訓練データとして前記外部の装置に送信するデータ送信部をさらに備える劣化推定装置。
【請求項7】
充放電回数がα
iのときの蓄電池の状態を測定した結果を示す訓練用測定データを入力値として、充放電回数がβ(ただしβ>α
i)のときの前記蓄電池の劣化状態を示すSOHを目標値とした訓練データを機械学習することにより生成された複数のモデルを記憶部に記憶させる記憶処理部と、
処理対象となる対象蓄電池の充放電回数が前記α
iのときの前記状態を測定した結果である算出用測定データを取得し、前記複数のモデルのそれぞれに前記算出用測定データを入力することにより、前記対象蓄電池のSOHの推移の推定結果を算出する算出部と、
を備え、
前記α
iは前記複数のモデルにおいて同一の値であり、前記βは前記複数のモデルにおいて互いに異なっている劣化推定装置。
【請求項8】
充放電回数がα
iからα
j(ただしj≧i)のときの蓄電池の状態を測定した結果を示す訓練用測定データを入力値として、充放電回数がβ(ただしβ>α
j)のときの前記蓄電池の劣化状態を示すSOHを目標値とした訓練データであって、互いに異なる前記β別に準備された前記訓練データを取得する訓練データ取得部と、
前記訓練データを前記βの値別に機械学習することにより、対象蓄電池の充放電回数が前記α
iからα
jのときの前記状態を示す算出用測定データから、充放電回数が前記βのときの当該対象蓄電池のSOHの推定値を算出するためのモデルを、複数の前記β別に生成するモデル生成部と、
を備えるモデル生成装置。
【請求項9】
請求項8に記載のモデル生成装置において、
前記モデル生成部は、少なくとも一つの前記βにおいて、複数の機械学習アルゴリズムを用いて複数の前記モデルを生成するモデル生成装置。
【請求項10】
請求項8又は9に記載のモデル生成装置において、
前記モデル生成部は、少なくとも一つの前記βにおいて、他の前記βとは異なる機械学習アルゴリズムを用いる、モデル生成装置。
【請求項11】
請求項8~10のいずれか一項に記載のモデル生成装置において、
前記訓練データは前記蓄電池の種類別に準備されており、
前記モデル生成部は、前記モデルを前記蓄電池の種類別に生成するモデル生成装置。
【請求項12】
請求項8~11のいずれか一項に記載のモデル生成装置において、
前記訓練用測定データ及び前記算出用測定データは、いずれも電流、電圧、及び温度を含むモデル生成装置。
【請求項13】
請求項12に記載のモデル生成装置において、
前記訓練用測定データ及び前記算出用測定データは、いずれも電流、電圧、及び温度からなるモデル生成装置。
【請求項14】
充放電回数がα
iのときの蓄電池の状態を測定した結果を示す訓練用測定データを入力値として、充放電回数がβ(ただしβ>α
i)のときの前記蓄電池の劣化状態を示すSOHを目標値とした訓練データであって、互いに異なる前記β別に準備された前記訓練データを取得する訓練データ取得部と、
前記訓練データを前記βの値別に機械学習することにより、対象蓄電池の充放電回数が前記α
iのときの前記状態を示す算出用測定データから、充放電回数が前記βのときの当該対象蓄電池のSOHの推定値を算出するためのモデルを、複数の前記β別に生成するモデル生成部と、
を備えるモデル生成装置。
【請求項15】
コンピュータが、
充放電回数がα
iからα
j(ただしj≧i)のときの蓄電池の状態を測定した結果を示す訓練用測定データを入力値として、充放電回数がβ(ただしβ>α
j)のときの前記蓄電池の劣化状態を示すSOHを目標値とした訓練データを機械学習することにより生成された複数のモデルを記憶部に記憶させる記憶処理と、
処理対象となる対象蓄電池の充放電回数が前記α
iからα
jのときの前記状態を測定した結果である算出用測定データを取得し、前記複数のモデルのそれぞれに前記算出用測定データを入力することにより、前記対象蓄電池のSOHの推移の推定結果を算出する算出処理と、
を行い、
前記α
iおよびα
jは前記複数のモデルにおいて同一の値であり、前記βは前記複数のモデルにおいて互いに異なっている劣化推定方法。
【請求項16】
コンピュータが、
充放電回数がα
iのときの蓄電池の状態を測定した結果を示す訓練用測定データを入力値として、充放電回数がβ(ただしβ>α
i)のときの前記蓄電池の劣化状態を示すSOHを目標値とした訓練データを機械学習することにより生成された複数のモデルを記憶部に記憶させる記憶処理と、
処理対象となる対象蓄電池の充放電回数が前記α
iのときの前記状態を測定した結果である算出用測定データを取得し、前記複数のモデルのそれぞれに前記算出用測定データを入力することにより、前記対象蓄電池のSOHの推移の推定結果を算出する算出処理と、
を行い、
前記α
iは前記複数のモデルにおいて同一の値であり、前記βは前記複数のモデルにおいて互いに異なっている劣化推定方法。
【請求項17】
コンピュータが、
充放電回数がα
iからα
j(ただしj≧i)のときの蓄電池の状態を測定した結果を示す訓練用測定データを入力値として、充放電回数がβ(ただしβ>α
j)のときの前記蓄電池の劣化状態を示すSOHを目標値とした訓練データであって、互いに異なる前記β別に準備された前記訓練データを取得する訓練データ取得処理と、
前記訓練データを前記βの値別に機械学習することにより、対象蓄電池の充放電回数が前記α
iからα
jのときの前記状態を示す算出用測定データから、充放電回数が前記βのときの当該対象蓄電池のSOHの推定値を算出するためのモデルを、複数の前記β別に生成するモデル生成処理と、
を行うモデル生成方法。
【請求項18】
コンピュータが、
充放電回数がα
iのときの蓄電池の状態を測定した結果を示す訓練用測定データを入力値として、充放電回数がβ(ただしβ>α
i)のときの前記蓄電池の劣化状態を示すSOHを目標値とした訓練データであって、互いに異なる前記β別に準備された前記訓練データを取得する訓練データ取得処理と、
前記訓練データを前記βの値別に機械学習することにより、対象蓄電池の充放電回数が前記α
iのときの前記状態を示す算出用測定データから、充放電回数が前記βのときの当該対象蓄電池のSOHの推定値を算出するためのモデルを、複数の前記β別に生成するモデル生成処理と、
を行うモデル生成方法。
【請求項19】
コンピュータに、
充放電回数がα
iからα
j(ただしj≧i)のときの蓄電池の状態を測定した結果を示す訓練用測定データを入力値として、充放電回数がβ(ただしβ>α
j)のときの前記蓄電池の劣化状態を示すSOHを目標値とした訓練データを機械学習することにより生成された複数のモデルを記憶部に記憶させる記憶処理機能と、
処理対象となる対象蓄電池の充放電回数が前記α
iからα
jのときの前記状態を測定した結果である算出用測定データを取得し、前記複数のモデルのそれぞれに前記算出用測定データを入力することにより、前記対象蓄電池のSOHの推移の推定結果を算出する算出処理機能と、
を持たせ、
前記α
iおよびα
jは前記複数のモデルにおいて同一の値であり、前記βは前記複数のモデルにおいて互いに異なっているプログラム。
【請求項20】
コンピュータに、
充放電回数がα
iのときの蓄電池の状態を測定した結果を示す訓練用測定データを入力値として、充放電回数がβ(ただしβ>α
i)のときの前記蓄電池の劣化状態を示すSOHを目標値とした訓練データを機械学習することにより生成された複数のモデルを記憶部に記憶させる記憶処理機能と、
処理対象となる対象蓄電池の充放電回数が前記α
iのときの前記状態を測定した結果である算出用測定データを取得し、前記複数のモデルのそれぞれに前記算出用測定データを入力することにより、前記対象蓄電池のSOHの推移の推定結果を算出する算出処理機能と、
を持たせ、
前記α
iは前記複数のモデルにおいて同一の値であり、前記βは前記複数のモデルにおいて互いに異なっているプログラム。
【請求項21】
コンピュータに、
充放電回数がα
iからα
j(ただしj≧i)のときの蓄電池の状態を測定した結果を示す訓練用測定データを入力値として、充放電回数がβ(ただしβ>α
j)のときの前記蓄電池の劣化状態を示すSOHを目標値とした訓練データであって、互いに異なる前記β別に準備された前記訓練データを取得する訓練データ取得機能と、
前記訓練データを前記βの値別に機械学習することにより、対象蓄電池の充放電回数が前記α
iからα
jのときの前記状態を示す算出用測定データから、充放電回数が前記βのときの当該対象蓄電池のSOHの推定値を算出するためのモデルを、複数の前記β別に生成するモデル生成機能と、
を持たせるプログラム。
【請求項22】
コンピュータに、
充放電回数がα
iのときの蓄電池の状態を測定した結果を示す訓練用測定データを入力値として、充放電回数がβ(ただしβ>α
i)のときの前記蓄電池の劣化状態を示すSOHを目標値とした訓練データであって、互いに異なる前記β別に準備された前記訓練データを取得する訓練データ取得機能と、
前記訓練データを前記βの値別に機械学習することにより、対象蓄電池の充放電回数が前記α
iのときの前記状態を示す算出用測定データから、充放電回数が前記βのときの当該対象蓄電池のSOHの推定値を算出するためのモデルを、複数の前記β別に生成するモデル生成機能と、
を持たせるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、劣化推定装置、モデル生成装置、劣化推定方法、モデル生成方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年は様々な場所で蓄電池が用いられている。第1の例として、蓄電池は車両などの移動体の動力源として用いられている。第2の例として、蓄電池は、余剰電力を一時的に蓄電するために用いられている。
【0003】
蓄電池を利用する際、蓄電池の劣化状態(以下、SOHと記載)を精度良く算出することは重要である。例えば特許文献1には、第1時点における蓄電池のSOC及びSOHを用いて、それより後の第2時点のSOHを推定することが記載されている。さらに特許文献2には、第1時点における蓄電池のSOH、及び第1時点からそれより後の第2時点の間の蓄電池の状態に係る時系列データを用いて、第2時点のSOHを推定することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2019/181728号
【文献】国際公開第2019/181729号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、現在のSOHを推定することはできるが、将来のSOHを高い精度で推定することは難しい。本発明の目的の一例は、蓄電池の将来のSOHを高い精度で推定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、充放電回数がαiからαj(ただしj≧i)のときの蓄電池の状態を測定した結果を示す訓練用測定データを入力値として、充放電回数がβ(ただしβ>αj)のときの前記蓄電池の劣化状態を示すSOHを目標値とした訓練データを機械学習することにより生成された複数のモデルを記憶部に記憶させる記憶処理部と、
処理対象となる対象蓄電池の充放電回数が前記αiからαjのときの前記状態を測定した結果である算出用測定データを取得し、前記複数のモデルのそれぞれに前記算出用測定データを入力することにより、前記対象蓄電池のSOHの推移の推定結果を算出する算出部と、
を備え、
前記αiからαjは前記複数のモデルにおいて同一の値であり、前記βは前記複数のモデルにおいて互いに異なっている劣化推定装置が提供される。
【0007】
本発明によれば、充放電回数がαiのときの蓄電池の状態を測定した結果を示す訓練用測定データを入力値として、充放電回数がβ(ただしβ>αi)のときの前記蓄電池の劣化状態を示すSOHを目標値とした訓練データを機械学習することにより生成された複数のモデルを記憶部に記憶させる記憶処理部と、
処理対象となる対象蓄電池の充放電回数が前記αiのときの前記状態を測定した結果である算出用測定データを取得し、前記複数のモデルに前記算出用測定データを入力することにより、前記対象蓄電池のSOHの推定結果を算出する算出部と、
を備え、
前記αiは前記複数のモデルにおいて同一の値であり、前記βは前記複数のモデルにおいて互いに異なっている劣化推定装置が提供される。
【0008】
本発明によれば、充放電回数がαiからαj(ただしj≧i)のときの蓄電池の状態を測定した結果を示す訓練用測定データを入力値として、充放電回数がβ(ただしβ>αj)のときの前記蓄電池の劣化状態を示すSOHを目標値とした訓練データであって、互いに異なる前記β別に準備された前記訓練データを取得する訓練データ取得部と、
前記訓練データを前記βの値別に機械学習することにより、対象蓄電池の充放電回数が前記αiからαjのときの前記状態を示す算出用測定データから、充放電回数が前記βのときの当該対象蓄電池のSOHの推定値を算出するためのモデルを、複数の前記β別に生成するモデル生成部と、
を備えるモデル生成装置が提供される。
【0009】
本発明によれば、充放電回数がαiのときの蓄電池の状態を測定した結果を示す訓練用測定データを入力値として、充放電回数がβ(ただしβ>αi)のときの前記蓄電池の劣化状態を示すSOHを目標値とした訓練データであって、互いに異なる前記β別に準備された前記訓練データを取得する訓練データ取得部と、
前記訓練データを前記βの値別に機械学習することにより、対象蓄電池の充放電回数が前記αiのときの前記状態を示す算出用測定データから、充放電回数が前記βのときの当該対象蓄電池のSOHの推定値を算出するためのモデルを、複数の前記β別に生成するモデル生成部と、
を備えるモデル生成装置が提供される。
【0010】
本発明によれば、コンピュータが、
充放電回数がαiからαj(ただしj≧i)のときの蓄電池の状態を測定した結果を示す訓練用測定データを入力値として、充放電回数がβ(ただしβ>αj)のときの前記蓄電池の劣化状態を示すSOHを目標値とした訓練データを機械学習することにより生成された複数のモデルを記憶部に記憶させる記憶処理と、
処理対象となる対象蓄電池の充放電回数が前記αiからαjのときの前記状態を測定した結果である算出用測定データを取得し、前記複数のモデルのそれぞれに前記算出用測定データを入力することにより、前記対象蓄電池のSOHの推移の推定結果を算出する算出処理と、
を行い、
前記αiからαjは前記複数のモデルにおいて同一の値であり、前記βは前記複数のモデルにおいて互いに異なっている劣化推定方法が提供される。
【0011】
本発明によれば、コンピュータが、
充放電回数がαiのときの蓄電池の状態を測定した結果を示す訓練用測定データを入力値として、充放電回数がβ(ただしβ>αi)のときの前記蓄電池の劣化状態を示すSOHを目標値とした訓練データを機械学習することにより生成された複数のモデルを記憶部に記憶させる記憶処理と、
処理対象となる対象蓄電池の充放電回数が前記αiのときの前記状態を測定した結果である算出用測定データを取得し、前記複数のモデルのそれぞれに前記算出用測定データを入力することにより、前記対象蓄電池のSOHの推移の推定結果を算出する算出処理と、
を行い、
前記αiは前記複数のモデルにおいて同一の値であり、前記βは前記複数のモデルにおいて互いに異なっている劣化推定方法が提供される。
【0012】
本発明によれば、コンピュータが、
充放電回数がαiからαj(ただしj≧i)のときの蓄電池の状態を測定した結果を示す訓練用測定データを入力値として、充放電回数がβ(ただしβ>αj)のときの前記蓄電池の劣化状態を示すSOHを目標値とした訓練データであって、互いに異なる前記β別に準備された前記訓練データを取得する訓練データ取得処理と、
前記訓練データを前記βの値別に機械学習することにより、対象蓄電池の充放電回数が前記αiからαjのときの前記状態を示す算出用測定データから、充放電回数が前記βのときの当該対象蓄電池のSOHの推定値を算出するためのモデルを、複数の前記β別に生成するモデル生成処理と、
を行うモデル生成方法が提供される。
【0013】
本発明によれば、コンピュータが、
充放電回数がαiのときの蓄電池の状態を測定した結果を示す訓練用測定データを入力値として、充放電回数がβ(ただしβ>αi)のときの前記蓄電池の劣化状態を示すSOHを目標値とした訓練データであって、互いに異なる前記β別に準備された前記訓練データを取得する訓練データ取得処理と、
前記訓練データを前記βの値別に機械学習することにより、対象蓄電池の充放電回数が前記αiのときの前記状態を示す算出用測定データから、充放電回数が前記βのときの当該対象蓄電池のSOHの推定値を算出するためのモデルを、複数の前記β別に生成するモデル生成処理と、
を行うモデル生成方法が提供される。
【0014】
本発明によれば、コンピュータに、
充放電回数がαiからαj(ただしj≧i)のときの蓄電池の状態を測定した結果を示す訓練用測定データを入力値として、充放電回数がβ(ただしβ>αj)のときの前記蓄電池の劣化状態を示すSOHを目標値とした訓練データを機械学習することにより生成された複数のモデルを記憶部に記憶させる記憶処理機能と、
処理対象となる対象蓄電池の充放電回数が前記αiからαjのときの前記状態を測定した結果である算出用測定データを取得し、前記複数のモデルのそれぞれに前記算出用測定データを入力することにより、前記対象蓄電池のSOHの推移の推定結果を算出する算出処理機能と、
を持たせ、
前記αiからαjは前記複数のモデルにおいて同一の値であり、前記βは前記複数のモデルにおいて互いに異なっているプログラムが提供される。
【0015】
本発明によれば、コンピュータに、
充放電回数がαiのときの蓄電池の状態を測定した結果を示す訓練用測定データを入力値として、充放電回数がβ(ただしβ>αi)のときの前記蓄電池の劣化状態を示すSOHを目標値とした訓練データを機械学習することにより生成された複数のモデルを記憶部に記憶させる記憶処理機能と、
処理対象となる対象蓄電池の充放電回数が前記αiのときの前記状態を測定した結果である算出用測定データを取得し、前記少なくとも一つのモデルのそれぞれに前記算出用測定データを入力することにより、前記対象蓄電池のSOHの推移の推定結果を算出する算出処理機能と、
を持たせ、
前記αiは前記複数のモデルにおいて同一の値であり、前記βは前記複数のモデルにおいて互いに異なっているプログラムが提供される。
【0016】
本発明によれば、コンピュータに、
充放電回数がαiからαj(ただしj≧i)のときの蓄電池の状態を測定した結果を示す訓練用測定データを入力値として、充放電回数がβ(ただしβ>αj)のときの前記蓄電池の劣化状態を示すSOHを目標値とした訓練データであって、互いに異なる前記β別に準備された前記訓練データを取得する訓練データ取得機能と、
前記訓練データを前記βの値別に機械学習することにより、対象蓄電池の充放電回数が前記αiからαjのとき前記状態を示す算出用測定データから、充放電回数が前記βのときの当該対象蓄電池のSOHの推定値を算出するためのモデルを、複数の前記β別に生成するモデル生成機能と、
を持たせるプログラムが提供される。
【0017】
本発明によれば、コンピュータに、
充放電回数がαiのときの蓄電池の状態を測定した結果を示す訓練用測定データを入力値として、充放電回数がβ(ただしβ>αi)のときの前記蓄電池の劣化状態を示すSOHを目標値とした訓練データであって、互いに異なる前記β別に準備された前記訓練データを取得する訓練データ取得機能と、
前記訓練データを前記βの値別に機械学習することにより、対象蓄電池の充放電回数が前記αiのとき前記状態を示す算出用測定データから、充放電回数が前記βのときの当該対象蓄電池のSOHの推定値を算出するためのモデルを、複数の前記β別に生成するモデル生成機能と、
を持たせるプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、蓄電池の将来のSOHを高い精度で推定できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態に係るモデル生成装置及び劣化推定装置の使用環境を説明するための図である。
【
図2】モデル生成装置の機能構成の一例を示す図である。
【
図3】劣化推定装置の機能構成の一例を示す図である。
【
図4】モデル生成装置のハードウェア構成例を示す図である。
【
図5】モデル生成装置が行うモデルの生成処理の一例を示すフローチャートである。
【
図6】モデル生成装置の事前処理部が行う事前処理(
図5のステップS30)の第1例を説明するための図である。
【
図7】モデル生成装置の事前処理部が行う事前処理(
図5のステップS30)の第2例を説明するための図である。
【
図8】モデル生成装置の事前処理部が行う事前処理(
図5のステップS30)の第2例を説明するための図である。
【
図9】劣化推定装置が行う、蓄電池のSOHの算出処理の一例を示すフローチャートである。
【
図10】
図9に示す処理の要部を説明するための図である。
【
図11】ステップS180においてディスプレイに表示されるデータの一例を示す図である。
【
図12】変形例に係るデータ処理の一例を説明するための図である。
【
図13】変形例に係るデータ処理の一例を説明するための図である。
【
図14】変形例に係るデータ処理の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0021】
図1は、実施形態に係るモデル生成装置10及び劣化推定装置20の使用環境を説明するための図である。モデル生成装置10及び劣化推定装置20は、蓄電池30と共に使用される。劣化推定装置20は、蓄電池30のBMS(Battery Management System)であってもよいし、蓄電池30のBMSとは別の装置であってもよい。
【0022】
蓄電池30は機器40に電力を供給する。本図に示す例において、劣化推定装置20及び蓄電池30は機器40の中に設けられている。一例として、機器40は、例えば電動車両などの車両である。ただし、蓄電池30が家庭用の蓄電池の場合、機器40は家庭で用いられる電気機器となる。この場合、蓄電池30は機器40の外部に位置する。また蓄電池30は、系統電力網に接続していてもよい。この場合、蓄電池30は、供給される電力を平準化するために用いられる。具体的には、機器40は、電力が余っている時には電力を蓄え、電力が不足している時には電力を供給する。
【0023】
劣化推定装置20は、蓄電池30の劣化状態すなわちSOH(State Of Health)を、モデルを用いて推定する。モデル生成装置10は、劣化推定装置20が用いるモデルの少なくとも一つを、機械学習、例えばニューラルネットワークを用いて生成し、かつ更新する。SOHは、例えば「現在の満充電容量(Ah)/初期の満充電容量(Ah)×100(%)」である。
【0024】
モデル生成装置10は、複数の蓄電池30から蓄電池30の状態に関するデータの測定値(以下、実績データと記載)を取得する。そして複数の実績データの一部は、機械学習の訓練データとして用いられ、実績データの残りの少なくとも一部は、モデルを検証するために用いられる。
【0025】
実績データは、少なくとも、蓄電池30の充放電回数がαiからαj(ただしj≧i)のときの当該蓄電池30の充放電中の状態の推移を測定した結果(以下、測定データと記載)、並びに当該蓄電池30の充放電回数がβ(ただしβ>αj)のときのSOHを含んでいる。測定データは、例えば電流、電圧、及び温度を含んでいる。ここで実績データは、一つの測定データに対して互いに異なるβのときのSOHを含んでいてもよい。言い換えると、実績データは、ある充放電回数における電流、電圧、及び温度などの測定データと、それより後の充放電回数におけるSOHの推移を示している。一例として、一つの実績データは、充放電回数がαiからαj(例えば1≦αi≦10であり、1<αj≦100である)のときの測定データと、充放電回数がαj以降のβ1、β2、・・・、βk(例えば200,300,・・・)のそれぞれで測定したSOHを含んでいる。
【0026】
また実績データは、蓄電池30の種類(例えば品名や型番)を特定する情報を含んでいるのが好ましい。このようにすると、モデル生成装置10は、蓄電池30の種類別にモデルを生成することができる。そして劣化推定装置20は、当該劣化推定装置20が接続している蓄電池30の種類に対応するモデルをモデル生成装置10から取得し、使用することができる。したがって、劣化推定装置20による蓄電池30のSOHの推定精度は高くなる。
【0027】
実績データの少なくとも一部はデータ収集装置50から取得される。データ収集装置50は実績データを集める装置であり、複数の蓄電池30のそれぞれから実績データを取得する。データ収集装置50が管理している蓄電池30は、実績データを集めることを主目的として使用されている。なお、実績データはさらに劣化推定装置20から取得されてもよい。
【0028】
図2は、モデル生成装置10の機能構成の一例を示す図である。本図に示す例において、モデル生成装置10は、訓練データ取得部130及びモデル生成部150を備えている。訓練データ取得部130は、複数の訓練データを取得する。一例として、訓練データのそれぞれは、蓄電池のある充放電サイクルにおける電流、電圧、及び温度の推移を含む訓練用測定データを入力値として、当該蓄電池のSOHである訓練用SOHを目標値としている。モデル生成部150は、複数の訓練データを機械学習することにより、モデルを生成する。このモデルは、処理対象となる対象蓄電池の電流、電圧、及び温度を含む算出用測定データから当該対象蓄電池のSOHを算出する。
【0029】
ここで訓練データ取得部130は、上記したαiからαjとβの組み合わせ別に訓練データを取得する。言い換えると、ある訓練データを構成するデータのそれぞれは、いずれもαiからαj及びβが同一である。そしてモデル生成部150は、上記したβ別にモデルを生成する。すなわち訓練データ取得部130は複数のモデルを生成するが、これら複数のモデルは、いずれも、充放電回数がαiからαjのときの蓄電池の測定データである訓練用測定データを入力値として、充放電回数がβ(ただしβ>αj)のときの蓄電池の劣化状態を示すSOHを目標値とした訓練データを機械学習することにより生成されている。ここで、αiからαjは複数のモデルにおいて同一の値であり、βは複数のモデルにおいて互いに異なっている。そしてこれら複数のモデルは、いずれも、蓄電池30の充放電回数がαiからαjのとき蓄電池30の状態を示す算出用測定データから、充放電回数がβのときの当該蓄電池30のSOHの推定値を算出する。例えばβがk個(β1、β2、・・・、βk)ある場合、モデルはk個生成される。
【0030】
ここで、モデル生成部150は、複数の機械学習アルゴリズム(例えばLSTM(Long Short-Term Memory)、DNN(Deep Neural Network)、及びLR(Linear Regression)など)を用いて、一つのβについて複数のモデルを生成してもよい。この場合、劣化推定装置20もこれら複数のモデルを用いる。またモデル生成部150は、少なくとも一つの前記βにおいて、他のβとは異なる機械学習アルゴリズムを用いてもよい。言い換えると、モデル生成部150は、β別にそのβに最適な機械学習アルゴリズムを用いてモデルを生成してもよい。
【0031】
なお、訓練用測定データは、電流、電圧、及び温度のみであってもよい。この場合、モデルに入力される算出用測定データも、電流、電圧、及び温度のみになる。
【0032】
モデル生成装置10は、さらに事前処理部140を備えている。訓練用測定データに含まれるデータ(パラメータ)の種類をm(例えば電流、電圧、及び温度のみの場合はm=3)とした場合、事前処理部140は、n組の訓練用測定データを((αj-αi+1)×m)×nの行列に加工し、当該行列を処理することにより、z個のデータからなる一次元データを生成する。モデル生成部150は、この一次元データを入力値としてモデルを生成する。事前処理部140は、一次元モデルを生成する際、デジタルフィルタを用いる。この処理の詳細例については後述する。
【0033】
モデル生成部150が生成した複数のモデルは、モデル記憶部160に記憶される。そしてモデル記憶部160に記憶された複数のモデルは、モデル送信部170によって劣化推定装置20に送信される。本図に示す例において、モデル記憶部160及びモデル送信部170は、モデル生成装置10の一部となっている。ただし、モデル記憶部160及びモデル送信部170の少なくとも一方はモデル生成装置10の外部の装置になっていてもよい。
【0034】
本図に示す例において、モデル生成装置10は、さらに、実績取得部110、実績記憶部120、訓練データ取得部130、及び検証用データ取得部180を備えている。
【0035】
実績取得部110は、劣化推定装置20及びデータ収集装置50の少なくとも一方から、上記した実績データを取得し、実績記憶部120に記憶させる。ここで実績取得部110は、実績データを、当該実績データの取得先を特定する情報に対応付けて記憶する。また実績取得部110は、実績データを、当該実績データの測定対象となった蓄電池30の種類を示す情報に対応付けて記憶してもよい。
【0036】
上記したように、複数の実績データの一部は、上記した訓練データとして用いられ、実績データの残りの少なくとも一部は、モデルを検証するために用いられる。このため、実績記憶部120は、複数の実績データのそれぞれを、訓練データとして用いられるデータか否かを示す情報を対応付けて記憶している。この対応付けは、ユーザからの入力に従って行われてもよいし、実績取得部110が行ってもよい。
【0037】
そして訓練データ取得部130は、実績記憶部120から、実績データのうち訓練データとして用いられるデータを読み出す。モデル生成部150が蓄電池30の種類別にモデルを生成する場合、訓練データ取得部130は、モデルの種類別に訓練データを読み出す。
【0038】
また検証用データ取得部180は、実績データのうち訓練データとして用いられないデータの少なくとも一部を、モデル生成部150が生成したモデルを検証するために読み出す。このモデルの検証は、モデル生成部150が行う。
【0039】
なお、実績取得部110は定期的に動作しているため、実績記憶部120に記憶されている実績データは定期的に更新(追加)される。そしてモデル生成部150は、定期的にモデルを更新する。モデル送信部170は、モデル記憶部160に記憶されているモデルが更新されると、モデルを更新するためのデータを劣化推定装置20に送信する。
【0040】
図3は、劣化推定装置20の機能構成の一例を示す図である。劣化推定装置20は、記憶処理部210及び算出部240を備えている。
【0041】
記憶処理部210は、モデル生成装置10から複数のモデルを取得し、モデル記憶部220に記憶させる。記憶処理部210は、モデル生成装置10からモデルを更新するためのデータを取得した場合、このデータを用いて、モデル記憶部220に記憶されているモデルを更新する。この更新処理は、繰り返し行われるのが好ましい。本図に示す例において、モデル記憶部220は劣化推定装置20の一部となっている。ただし、モデル記憶部220は劣化推定装置20の外部の装置であってもよい。
【0042】
算出部240は、モデル記憶部220が記憶されている複数のモデルを用いて、劣化推定装置20が管理している蓄電池30のSOHの推移の推定結果を算出する。この際、モデルに入力されるデータ(以下、算出用測定データと記載)は、蓄電池30の充放電回数がαiからαjのときの測定データであるが、この測定データは、例えば電流、電圧、及び温度を含んでいる。例えばモデルを生成するときの入力データが電流、電圧、及び温度のみである場合、算出用測定データは、電流、電圧、及び温度のみである。
【0043】
本実施形態において、劣化推定装置20は、表示処理部250を備えている。表示処理部250は、算出部240が算出した蓄電池30のSOHをディスプレイ260に表示させる。ディスプレイ260は、機器40の使用者が視認可能な位置に配置されている。例えば機器40が車両の場合、ディスプレイ260は当該車両の内部(例えば運転席の前又は斜め前)に設けられている。
【0044】
本図に示す例において、劣化推定装置20は、さらに算出用データ取得部230、データ記憶部270、及びデータ送信部280を備えている。
【0045】
算出用データ取得部230は、蓄電池30から算出用測定データを取得する。データ記憶部270は、算出用データ取得部230が取得したデータを、その時の充放電回数(すなわち上記したαiからαj)とともに記憶する。その後、算出用データ取得部230は、充放電回数が所定の値(上記したβ1、β2、・・・、βk)に達したときのSOHを特定するためのデータ(例えばSOHそのものでもよい)も記憶する。そしてデータ送信部280は、少なくとも一部の算出用測定データを、上記したSOHを特定するためのデータと共に、モデル生成装置10に送信する。このデータは、実績データとして扱われる。
【0046】
図4は、モデル生成装置10のハードウェア構成例を示す図である。モデル生成装置10は、バス1010、プロセッサ1020、メモリ1030、ストレージデバイス1040、入出力インタフェース1050、及びネットワークインタフェース1060を有する。
【0047】
バス1010は、プロセッサ1020、メモリ1030、ストレージデバイス1040、入出力インタフェース1050、及びネットワークインタフェース1060が、相互にデータを送受信するためのデータ伝送路である。ただし、プロセッサ1020などを互いに接続する方法は、バス接続に限定されない。
【0048】
プロセッサ1020は、CPU(Central Processing Unit) やGPU(Graphics Processing Unit)などで実現されるプロセッサである。
【0049】
メモリ1030は、RAM(Random Access Memory)などで実現される主記憶装置である。
【0050】
ストレージデバイス1040は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、メモリカード、又はROM(Read Only Memory)などで実現される補助記憶装置である。ストレージデバイス1040はモデル生成装置10の各機能(例えば実績取得部110、訓練データ取得部130、事前処理部140、モデル生成部150、モデル送信部170、及び検証用データ取得部180)を実現するプログラムモジュールを記憶している。プロセッサ1020がこれら各プログラムモジュールをメモリ1030上に読み込んで実行することで、そのプログラムモジュールに対応する各機能が実現される。また、ストレージデバイス1040は実績記憶部120及びモデル記憶部160としても機能する。
【0051】
入出力インタフェース1050は、モデル生成装置10と各種入出力機器とを接続するためのインタフェースである。
【0052】
ネットワークインタフェース1060は、モデル生成装置10をネットワークに接続するためのインタフェースである。このネットワークは、例えばLAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)である。ネットワークインタフェース1060がネットワークに接続する方法は、無線接続であってもよいし、有線接続であってもよい。モデル生成装置10は、ネットワークインタフェース1060を介して劣化推定装置20及びデータ収集装置50と通信してもよい。
【0053】
なお、劣化推定装置20のハードウェア構成も
図4に示した例と同様である。そして、ストレージデバイスは、劣化推定装置20の各機能(例えば記憶処理部210、算出用データ取得部230、算出部240、ディスプレイ260、及びデータ送信部280)を実現するプログラムモジュールを記憶している。またストレージデバイスは、モデル記憶部220及びデータ記憶部270としても機能する。
【0054】
図5は、モデル生成装置10が行うモデルの生成処理の一例を示すフローチャートである。本図に示す処理とは別に、実績取得部110は、繰り返し実績データを取得して、実績記憶部120を更新している。
【0055】
まず実績データは、訓練データとそれ以外のデータに分類される(ステップS10)。そしてモデル生成装置10の訓練データ取得部130は、実績記憶部120から訓練データを読み出す(ステップS20)。次いで事前処理部140は、訓練データに対して事前処理を行い、訓練データに含まれる訓練用測定データ(すなわち入力データ)を一次元データに変換する。この際、デジタルフィルタ(後述)が用いられる(ステップS30)。ステップS30の詳細例については、他の図を用いて説明する。
【0056】
そしてモデル生成部150は、ステップS30で変換された後の訓練データを用いてモデルを生成する。(ステップS40)。
【0057】
その後、モデル生成部150は、実績記憶部120から、実績データのうち訓練データとして用いられなかったデータを読み出し、このデータを用いて、ステップS40で算出したモデルの精度を検証する。具体的には、モデル生成部150は、生成したモデルに対して電流、電圧、及び温度を含むデータを入力し、SOHの推定結果を得る。そしてこの推定結果と、実績記憶部120から読み出したSOHの実績値との差を算出する(ステップS50)。この差(すなわち誤差)が基準値以下の場合(ステップS60:Yes)、モデル生成部150は、生成したモデルをモデル記憶部160に記憶させる(ステップS70)。
【0058】
一方、ステップS50で算出した差が基準値超の場合(ステップS60:No)、ステップS30以降の処理を繰り返す。この際、事前処理部140は、必要に応じて事前処理で用いるデジタルフィルタの値を変更する。また、モデルがニューラルネットワークの場合、モデル生成部150は、必要に応じてニューラルネットワークのニューロン間の係数を最適化する。これら2つの処理は、毎回行われてもよいし、いずれか一方のみ行われてもよい。
【0059】
ここで、事前処理で用いるデジタルフィルタの値が変更された場合、モデル生成部150は、変更後のデジタルフィルタの値もモデル記憶部160に記憶させる。そしてモデル送信部170は、このデジタルフィルタの値を劣化推定装置20に送信する。そして劣化推定装置20の記憶処理部210は、モデル記憶部220に、モデルと共に、デジタルフィルタの値も記憶させる。これにより、劣化推定装置20の算出部240は、ステップS30と同じ変換処理を行うことができる。なお、デジタルフィルタの値を送信するタイミングの一例は、モデルを劣化推定装置20に送信するときである。
【0060】
図2を用いて説明したように、モデル生成部150は、複数の機械学習アルゴリズムを用いて、一つのβについて複数のモデルを生成してもよい。この場合、モデル生成部150は、複数の機械学習アルゴリズム毎に、ステップS30~ステップS60に示した処理を行う。そしてモデル生成部150は、ステップS70において、これら複数のモデルをモデル記憶部160に記憶させる。
【0061】
また
図2を用いて説明したように、モデル生成部150は、β別にそのβに最適な機械学習アルゴリズムを用いてモデルを生成してもよい。この場合も、複数の機械学習アルゴリズム毎に、ステップS30~ステップS60に示した処理を行う。そしてモデル生成部150は、ステップS70において、ステップS60で算出した誤差が最も小さかったモデル、すなわち最も精度が高かったモデルを、モデル記憶部160に記憶させる。
【0062】
なお、モデル生成装置10は、上記したβ毎に、
図5に示した処理を行う。さらにモデル生成装置10は、蓄電池30の種類別にモデルを生成する場合、これら種類毎にかつ上記したβ毎に、
図5に示した処理を行う。
【0063】
またモデル生成装置10は、複数のαiとαjの組み合わせに対して、上記した処理を行ってもよい。この場合、モデル生成装置10は、互いに異なる複数のαiとαjの組み合わせ別に上記したモデルを生成する。
【0064】
図6は、モデル生成装置10の事前処理部140が行う事前処理(
図5のステップS30)の第1例を説明するための図である。
図2を用いて説明したように、事前処理部140は、α
iからα
jの各々で得られるn組の訓練用測定データを((α
j-α
i+1)×m)×nの行列に加工し、当該行列を処理することにより、z個のデータからなる一次元データを生成する。ここで、mは、訓練用測定データに含まれるデータ(パラメータ)の種類の数である。
【0065】
本図に示す例において、事前処理部140は、当該行列にデジタルフィルタを処理することにより、少ない次元数に縮小する変換処理を、少なくとも一回行う。これにより、入力データとなる一次元データが生成される。
【0066】
より詳細には、デジタルフィルタは行列である。そして事前処理部140は、変換処理として、以下の(1)及び(2)を少なくとも一回行う。
(1)処理対象となる行列から、デジタルフィルタと同じ行数および列数からなる部分行列を切り出す。
(2)部分行列にデジタルフィルタを演算し、当該演算結果の各成分を足し合わせた値を、処理後の行列の成分とする。ここで行われる演算は、例えば乗算であるが、加算、減算、又は割算であってもよいし、四則演算を適宜組み合わせたものであってもよい。なお、処理後の行列の成分の位置は、部分行列を切り出した位置に対応している。例えば、最も左上の部分行列を用いて算出された値は、処理後の行列の一行目かつ一列目の成分になる。また、最も右下の部分行列を用いて算出された値は、処理後の行列の最も右下の成分になる。
【0067】
なお、本図に示す例において、事前処理部140は、(1)の前に、処理対象となる行列の外周にダミー値を加えることにより当該処理対象となる行列の行および列の少なくとも一方を拡張する処理を行ってもよい。例えば、1行目の上にダミー値の行を追加し、対象行目の最も下の行のさらに下にダミー値の行を追加し、さらに、充放電回数と次の充放電回数の境界にダミー値の行を追加してもよい。ここで加えられるダミー値は、いずれも同一の値(例えば0)である。ただし、この処理は行われなくてもよい。
【0068】
なお、上記した変換処理が繰り返される場合、各変換処理で用いられるデジタルフィルタを同一にする必要はない。これらデジタルフィルタのそれぞれは最適化されるため、これらデジタルフィルタは互いに異なる場合がほとんどである。
【0069】
図7及び
図8は、モデル生成装置10の事前処理部140が行う事前処理(
図5のステップS30)の第2例を説明するための図である。この例において、事前処理部140は、
図8に示すように、一回の変換処理について複数のデジタルフィルタを準備し、複数のデジタルフィルタ毎に変換後の行列を生成している。例えばある変換処理において3つのデジタルフィルタを用いる場合、変換後の行列の数は、変換前の行列の数の3倍になる。
【0070】
そして、
図7に示すように、事前処理部140がこの処理を繰り返すと、いずれかの段階で、変換後の複数の行列は、いずれも一行一列になる。そして事前処理部140は、この一行一列のデータを並べることにより、入力データとなる一次元データを生成する。
【0071】
図9は、劣化推定装置20が行う、蓄電池30のSOHの算出処理の一例を示すフローチャートである。
図10は、
図9に示す処理の要部を説明するための図である。蓄電池30は、少なくとも蓄電池30が充放電を繰り返すたびに、算出用測定データを生成する。そして劣化推定装置20は、充放電回数が上記したα
jに達したときに、本図に示す処理を行う。なお、モデル生成装置10が互いに異なる複数のα
iとα
jの組み合わせ別に上記したモデルを生成していたとき、モデル生成装置10は、充放電回数がα
jに達するたびに、本図に示す処理を行う。
【0072】
まず劣化推定装置20の算出用データ取得部230は、蓄電池30から算出用測定データを取得する(
図9のステップS110)。また算出部240は、モデル記憶部220から複数のモデルを読み出す。そして算出部240は、複数のモデルを用いて、充放電回数がβ
1、β
2、・・・、β
kのそれぞれに達したときのSOHの推定値を算出する。
【0073】
詳細には、算出部240は、まだ処理していないモデルを選択する(
図9のステップS120)。次いで算出部240は、算出用測定データに対して、モデル生成装置10の事前処理部140が行った事前処理と同様の変換処理を行うことにより、変換後データを生成する(
図9のステップS130)。
【0074】
一例として、
図10に示すように、算出用測定データは((α
j-α
i+1)×m)×n(
図10の例ではm=3)の行列になっている。そして算出部240は、訓練用目標データの事前処理と同様の処理を行うことにより、z個のデータからなる一次元データを生成する。この際、算出部240は、モデル記憶部220からデジタルフィルタの値を読み出して使用する(ステップS130)。
【0075】
次いで算出部240は、この一次元データを、モデル記憶部220が記憶しているモデルに入力することにより、出力データを得る。この出力データは、
図10に示すように、モデルを生成するときの訓練データの目標値と同じデータ構造(本図に示す例では1×1の行列)を有している(ステップS140)。算出部240は、この出力データを、充放電回数がβになった時のSOHの推定値とする(ステップS150)。
【0076】
算出部240は、複数のモデル毎(複数のβ毎)にステップS130~ステップS160に示した処理を行う(ステップS160)。その後、表示処理部250は、算出したSOHの推移の推定結果をディスプレイ260に表示する(ステップS170)。
【0077】
なお、モデル記憶部220が、一つのαiからαj及びβの組み合わせ毎に、複数の機械学習アルゴリズムを用いて生成された複数のモデルを記憶していることがある。この場合、算出部240は、これら複数のモデルごとにステップS130~ステップS160に示した処理を行う。このため、算出部240は、モデル別にSOHの推定値を算出することになる。そして算出部240は、これら複数の推定値の平均値又は加重平均値を、そのαiからαj及びβの組み合わせにおけるSOHの推定値とする。
【0078】
図11は、ステップS180においてディスプレイ260に表示されるデータの一例を示す図である。上記したように、算出部240が用いるモデルは、充放電回数がβになったときの蓄電池30のSOHの推定値を算出するものである。本図に示す例においてモデルは4個であり、これら4個のモデルは、βが互いに異なる(β
1、β
2、β
3、及びβ
4)。言い換えると、これら4個のモデルは、それぞれが割り当てられた充放電回数(β)においてSOHを精度良く算出できるように、最適化されている。したがって、β
1、β
2、β
3、及びβ
4のそれぞれにおけるSOHの推定値は高い精度を有している。
【0079】
なお、算出部240は、
図11に示すように、複数のモデルそれぞれの算出値を用いて、充放電回数からSOHの推定値を算出するための関数を定めてもよい。
【0080】
以上、本実施形態によれば、劣化推定装置20は、モデル生成装置10が生成したモデルを用いて、蓄電池30のSOHを算出する。算出部240が用いるモデルは、充放電回数がβになったときの蓄電池30のSOHの推定値を算出するものである。ここで、複数のモデルは、βが互いに異なる。すなわち、複数のモデルは、それぞれが割り当てられた充放電回数(β)においてSOHを精度良く算出できるように、最適化されている。従って、複数の充放電回数におけるSOHの推定値を精度よく算出することができる。
【0081】
また、モデル生成装置10は、訓練データの入力値として、蓄電池30の電流、電圧、及び温度があれば、モデルを生成することができる。このため、劣化推定装置20が蓄電池30のSOHを算出する際に必要な蓄電池30のパラメータの数も、最小で3つ(電流、電圧、及び温度)にすることができる。したがって、機械学習を用いて蓄電池30のSOHを推定する場合において、劣化推定装置20に要求される計算量は少なくなる。
【0082】
なお、モデル生成装置10は、劣化推定装置20が有する機能を備えていてもよい。この場合、例えばクラウドサービスによってSOHの推定値を顧客に提供することができる。
【0083】
(変形例)
上記した実施形態において、訓練用測定データ及び算出用測定データは、充放電回数がαiからαjの各々で得られるデータであった。これに対して本変形例では、訓練用測定データ及び算出用測定データは、いずれも充放電回数がαiの時のデータである。このため、本変形例によると、劣化推定装置は、充放電回数が1増えるたびに、劣化の推定結果を更新することができる。
【0084】
図12~
図14は、本変形例に係るデータ処理の一例を説明するための図である。
図12,13,14は、それぞれ実施形態の
図6,8,10に対応している。
【0085】
図12及び
図13に示すように、本変形例において、モデル生成装置10の事前処理部140は、
図6を用いて説明した(1)の前に、訓練用測定データからなる行列の外周にダミーデータを加えることにより当該行列の行および列の少なくとも一方を拡張する処理を行っている。本図に示す例では、1行目の上に、ダミーデータの行を追加し、対象行目の最も下の行のさらに下にダミーデータの行を追加し、さらに、最も左側の列のさらに左側にダミー値の列を追加している。ここで加えられるダミーデータは、いずれも同一の値(例えば0)である。
【0086】
そして、
図14に示すように、劣化推定装置20の算出部240も、算出用測定データからなる行列の外周にダミーデータを加えた後に、SOHの推定値を算出するための処理を行う。
【0087】
これらの図に示すようなダミーデータを用いると、訓練データの数が一つ(すなわち単一の充放電サイクルから得られる一組のデータ)であっても、精度の高い劣化推定を行うことができる。
【0088】
なお、本変形例において、劣化推定装置20が、ある特定のβにおけるSOHの推定値を算出すれば良い場合も考えられる。この場合、モデル生成装置10は、βは互いに同一であり、αiが互いに異なる複数のモデルを生成すればよい。劣化推定装置20がこれら複数のモデルを用いると、劣化推定装置20は、蓄電池30の充放電回数が増加するたび(すなわちαiが増加するたび)に、充放電回数がβに達したときの当該蓄電池30のSOHの推定値を更新することができる。
【0089】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0090】
また、上述の説明で用いた複数のフローチャートでは、複数の工程(処理)が順番に記載されているが、各実施形態で実行される工程の実行順序は、その記載の順番に制限されない。各実施形態では、図示される工程の順番を内容的に支障のない範囲で変更することができる。また、上述の各実施形態は、内容が相反しない範囲で組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0091】
10 モデル生成装置
20 劣化推定装置
30 蓄電池
40 機器
50 データ収集装置
110 実績取得部
120 実績記憶部
130 訓練データ取得部
140 事前処理部
150 モデル生成部
160 モデル記憶部
170 モデル送信部
180 検証用データ取得部
210 記憶処理部
220 モデル記憶部
230 算出用データ取得部
240 算出部
250 表示処理部
260 ディスプレイ
270 データ記憶部
280 データ送信部