(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】ダイレータ
(51)【国際特許分類】
A61M 25/06 20060101AFI20240321BHJP
A61M 25/08 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
A61M25/06
A61M25/08
(21)【出願番号】P 2020095450
(22)【出願日】2020-06-01
【審査請求日】2023-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】弁理士法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】都竹 麻里奈
(72)【発明者】
【氏名】伏屋 友希弘
【審査官】竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/174241(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/082327(WO,A1)
【文献】特表2013-523388(JP,A)
【文献】特開平02-180248(JP,A)
【文献】米国特許第5207683(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/06
A61M 25/08
A61B 17/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端の外径が基端の外径よりも小さいテーパ部を有する中空シャフトと、
基端が前記テーパ部の先端に位置し先端方向に向かって延設された先端チップと、
少なくとも前記テーパ部の外周面上に設けられた螺旋状の凸部と、を備えたダイレータであって、
前記螺旋状の凸部は、素線を巻回することで形成されていると共に、前記中空シャフトの長軸方向に沿って隣り合う部分に隙間を有しており、
前記螺旋状の凸部のうちの最も内周半径が小さい部位の内周半径が、前記先端チップのうちの最も外周半径が大きい部位の外周半径よりも小さいことを特徴とするダイレータ。
【請求項2】
前記螺旋状の凸部のうちの最も外周半径が大きい部位の外周半径が、前記先端チップのうちの最も外周半径が大きい部位の外周半径よりも大きい請求項1に記載のダイレータ。
【請求項3】
前記螺旋状の凸部のうちの前記テーパ部の外周面上に設けられた部位における、最も外周半径が大きい部位の外周半径が、前記先端チップのうちの最も外周半径が大きい部位の外周半径よりも大きい請求項2に記載のダイレータ。
【請求項4】
前記螺旋状の凸部のうちの最も内周半径が大きい部位の内周半径が、前記先端チップのうちの最も外周半径が大きい部位の外周半径よりも大きい請求項2または請求項3に記載のダイレータ。
【請求項5】
前記螺旋状の凸部のうちの最も内周半径が小さい部位における、前記中空シャフトの長軸と前記素線の中心との距離が、前記先端チップのうちの最も外周半径が大きい部位の外周半径よりも小さい請求項1に記載のダイレータ。
【請求項6】
前記螺旋状の凸部のうちの最も内周半径が小さい部位が、前記螺旋状の凸部の先端に位置している請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のダイレータ。
【請求項7】
前記螺旋状の凸部と前記テーパ部とが接合されていない請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のダイレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイレータに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、体表や臓器などに開けられた孔を拡張したり、胆管や膵管などに形成された狭窄部を拡張する器具として、ダイレータが知られている。
【0003】
このようなダイレータとしては、拡張する際に強力な推進力が必要となるため、例えば、拡張に供するシャフトのテーパ部外周面上にコイル体を設け、回転によるネジ作用を利用して推進力を補うものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
上述したようなコイル体は、例えば、素線を上記テーパ部の外周面に巻回することで構成されており、これによりコイル体を容易に形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したような従来のダイレータは、コイル体を構成する素線がシャフトの外周面上に単に巻回した構成であるため、孔を拡張する際の組織からの抗力や引き抜く際の引張力によりコイル体がシャフトから脱離する虞がある。
【0007】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、螺旋状の凸部が中空シャフトから脱離するのを防止することが可能なダイレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のいくつかの態様は、
(1)先端の外径が基端の外径よりも小さいテーパ部を有する中空シャフトと、
基端が前記テーパ部の先端に位置し先端方向に向かって延設された先端チップと、
少なくとも前記テーパ部の外周面上に設けられた螺旋状の凸部と、を備えたダイレータであって、
前記螺旋状の凸部は、素線を巻回することで形成されていると共に、前記中空シャフトの長軸方向に沿って隣り合う部分に隙間を有しており、
前記螺旋状の凸部のうちの最も内周半径が小さい部位の内周半径が、前記先端チップのうちの最も外周半径が大きい部位の外周半径よりも小さいことを特徴とするダイレータ、
(2)前記螺旋状の凸部のうちの最も外周半径が大きい部位の外周半径が、前記先端チップのうちの最も外周半径が大きい部位の外周半径よりも大きい前記(1)に記載のダイレータ、
(3)前記螺旋状の凸部のうちの前記テーパ部の外周面上に設けられた部位における、最も外周半径が大きい部位の外周半径が、前記先端チップのうちの最も外周半径が大きい部位の外周半径よりも大きい前記(2)に記載のダイレータ、
(4)前記螺旋状の凸部のうちの最も内周半径が大きい部位の内周半径が、前記先端チップのうちの最も外周半径が大きい部位の外周半径よりも大きい前記(2)または(3)に記載のダイレータ、
(5)前記螺旋状の凸部のうちの最も内周半径が小さい部位における、前記中空シャフトの長軸と前記素線の中心との距離が、前記先端チップのうちの最も外周半径が大きい部位の外周半径よりも小さい前記(1)に記載のダイレータ、
(6)前記螺旋状の凸部のうちの最も内周半径が小さい部位が、前記螺旋状の凸部の先端に位置している前記(1)から(5)のいずれか一項に記載のダイレータ、および
(7)前記螺旋状の凸部と前記テーパ部とが接合されていない前記(1)から(6)のいずれか一項に記載のダイレータ、である。
【0009】
なお、本明細書において、「先端方向」とは、ダイレータの長軸方向に沿う方向であって、ダイレータが被拡径部に向って進行する方向を意味する。「基端方向」とは、ダイレータの長軸方向に沿う方向であって、先端方向と反対の方向を意味する。また、「先端」とは、任意の部材または部位における先端方向の端部、「基端」とは、任意の部材または部位における基端方向の端部をそれぞれ示す。「内周半径」とは、ダイレータの長軸と該当する部位の最内周部との距離、「外周半径」とは、ダイレータの長軸と該当する部位の最外周部との距離を意味する。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、螺旋状の凸部が中空シャフトから脱離するのを防止することが可能なダイレータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】
図1の一部を拡大して示す概略的側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示のダイレータは、先端の外径が基端の外径よりも小さいテーパ部を有する中空シャフトと、基端が上記テーパ部の先端に位置し先端方向に向かって延設された先端チップと、少なくとも上記テーパ部の外周面上に設けられた螺旋状の凸部と、を備えたダイレータであって、上記螺旋状の凸部は、素線を巻回することで形成されていると共に、上記中空シャフトの長軸方向に沿って隣り合う部分に隙間を有しており、上記螺旋状の凸部のうちの最も内周半径が小さい部位の内周半径が、上記先端チップのうちの最も外周半径が大きい部位の外周半径よりも小さいことを特徴とする。
【0013】
なお、本明細書において、「長軸方向」とは、指定がない限り、ダイレータの長手方向を意味する。
【0014】
以下、本発明の第1~第4の実施形態について図面を参照して説明するが、本発明は、当該図面に記載の実施形態にのみ限定されるものではない。また、各図面に示したダイレータの寸法は、実施内容の理解を容易にするために示した寸法であり、実際の寸法に対応するものではない。
【0015】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態を示す概略的側面図である。当該ダイレータ1は、
図1に示すように、概略的に、中空シャフト11と、先端チップ21と、螺旋状の凸部31と、基部41とにより構成されている。
【0016】
中空シャフト11は、中空形状のシャフトである。中空シャフト11は、例えば、テーパ部111と、本体部112と、内腔11hとを有している。
【0017】
テーパ部111は、先端の外径が基端の外径よりも小さい部位である。テーパ部111は、具体的には、例えば、先端から基端に向かって外径が直線的に拡径するもの(
図1参照)、先端から基端に向かって表面が凸状または凹状に湾曲しながら拡径するもの(不図示)等を例示することができる。
【0018】
本体部112は、先端がテーパ部111の基端に位置し、基端側に向かって延設された部位である。本体部112は、例えば、先端から基端に亘って一定の外径を有するように構成することができる。
【0019】
内腔11hは、ガイドワイヤ(不図示)等を挿通する貫通孔である。内腔11hは、例えば、長軸方向に沿って中空シャフト11の先端と基端との間を貫通する連続した空間(例えば、
図1の破線で図示した共通内接線の内側の部位)で構成することができる。
【0020】
テーパ部111と本体部112とは、一体的に形成されていてもよく、別体として形成されていてもよい。本実施形態の中空シャフト11は、テーパ部111と本体部112とが一体的に形成されており、1本の単線からなる素線11wをダイレータの長軸Z廻りに連続かつ螺旋状に巻回することで形成したコイル体11C(以下、「第1のコイル体11C」ともいう)で構成されている。このように中空シャフト11が素線11wを巻回することで形成されていることで、トルク伝達性(ダイレータ1の基端部に加えられた回転力をその先端部に伝達する際の上記伝達の確実性)を高めることができる。
【0021】
中空シャフト11を構成する材料としては、当該ダイレータ1が体腔内に挿通されることから、抗血栓性、可撓性および生体適合性を有していることが好ましい。上記材料としては、例えば、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂などの樹脂材料;ステンレス鋼、超弾性合金(ニッケル-チタン合金)などの金属材料等を採用することができる。テーパ部111および本体部112を構成する材料は、同一の材料であってもよく、異なる材料であってもよい。
【0022】
第1のコイル体11Cにおけるテーパ部111および本体部112は、一体であってもよく、別体であってもよい。また、テーパ部111および本体部112は、同一の材料で形成されていてもよく、異なる材料で形成されていてもよい。また、テーパ部111および本体部112のコイル体の素線径は、同じであってもよく、異なっていてもよい。本実施形態における第1のコイル体11Cのテーパ部111および本体部112は、素線11wとして同一の材料かつ同一の線径の単線を用い、この素線11wを螺旋状に巻回することで形成されている。
【0023】
なお、中空シャフト11は、その外周面11sの側に各種の被膜(不図示)を有していてもよい。被膜としては、例えば、中空シャフト11の表面を保護するための保護膜(めっき膜など)、中空シャフト11と螺旋状の凸部31(後述)との密着性を向上するための下地膜等が挙げられる。
【0024】
先端チップ21は、基端がテーパ部111の先端に位置し先端方向に向かって延設された部材である。先端チップ21は、具体的には、当該ダイレータ1が体腔内を進行し易いように、例えば、先端側に向かって先細るように形成することができる。
【0025】
先端チップ21は、内腔21hを有していてもよい。内腔21hは、例えば、先端チップ21の先端から基端に亘って貫通し、中空シャフト11の内腔11hに連通するように構成することができる。
【0026】
先端チップ21を構成する材料としては、当該ダイレータ1が体腔内を進行することから、柔軟性を有していることが好ましい。先端チップ21を構成する材料としては、例えば、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマーなどの樹脂材料等が挙げられる。
【0027】
螺旋状の凸部31は、少なくともテーパ部111の外周面上に設けられた部位である。螺旋状の凸部31は、素線を巻回することで形成したコイル体31C(以下、「第2のコイル体31C」ともいう)で構成されていると共に、中空シャフトの長軸方向に沿って隣り合う部分に隙間31gを有している。螺旋状の凸部31は、具体的には、例えば、連続若しくは断続した一条または多条の素線31wを用い、この素線31wを外周面11sに接するように中空シャフト11の長軸方向に沿って螺旋状に巻回することで形成することができる。本実施形態においては、螺旋状の凸部31は、テーパ部111および本体部112の外周面11s上に設けられている。
【0028】
螺旋状の凸部31を構成する素線31wとしては、単線であってもよく、撚線であってもよく、単線と撚線とを組み合わせた構成であってもよい。但し、単線とは1本の単一線を意味し、撚線とは複数本の単一線を予め互いに撚り合って形成した一束の線群を意味する。
【0029】
螺旋状の凸部31を構成する材料としては、例えば、中空シャフト11を構成する材料として例示したものと同様のもの等を採用することができる。
【0030】
ここで、当該ダイレータ1の螺旋状の凸部31および先端チップ21は、
図2に示すよに、螺旋状の凸部31のうちの最も内周半径が小さい部位の内周半径(CIDmin)が、先端チップ21のうちの最も外周半径が大きい部位の外周半径(TODmax)よりも小さくなる(CIDmin<TODmax)ように形成されている。
【0031】
また、螺旋状の凸部31のうちの最も内周半径が小さい部位における、中空シャフト11の長軸と素線の中心との距離(CMD、以下、「中心距離」ともいう)が、先端チップ21のうちの最も外周半径が大きい部位の外周半径(TODmax)よりも小さくなるように形成されていてもよい(
図1,
図2参照)。具体的には、例えば、第2のコイル体31Cの素線径、先端チップ21の外周半径(TODmax)、およびテーパ部111の外周半径を適宜選択することで、螺旋状の凸部31の中心距離(CMD)を先端チップ21の外周半径(TODmax)よりも小さくすることができる。これにより、螺旋状の凸部31が中空シャフト11から脱離するのを確実に防止することがきる。
【0032】
螺旋状の凸部31のうちの最も内周半径が小さい部位(内周半径(CIDmin)となる螺旋状の凸部の部位)は、本発明の効果を損なわない限り、螺旋状の凸部31のうちのどの部位にあっても構わない。内周半径(CIDmin)となる螺旋状の凸部31の部位は、例えば、長軸方向における螺旋状の凸部31の先端に位置していてもよく(
図1,
図2参照)、長軸方向における螺旋状の凸部31の中途に位置していてもよい(不図示)。
【0033】
本実施形態では、内周半径(CIDmin)となる螺旋状の凸部31の部位は、螺旋状の凸部31の先端に位置するように配置されている。これにより、螺旋状の凸部31が先端チップ21よりも先端方向に突出するのを防止することができ、例えば、第2のコイル体31Cにより組織に損傷を与えるのを抑制することができる。
【0034】
螺旋状の凸部31とテーパ部111とは、これらが互いに接する部位の少なくとも一部で接合されていてもよく、接合されていなくてもよい(単に接触している状態)。
【0035】
本実施形態では、螺旋状の凸部31とテーパ部111とが接合されておらず、第2のコイル体31Cが、単に接触した状態で中空シャフト11の外周面11s上に巻回されている。これにより、テーパ部111に対応するダイレータ1の部位の柔軟性が低下するのを抑制することができる。
【0036】
基部41は、手技者がダイレータ1を操作する部位である。基部41は、例えば、中空シャフト11の内腔11hに連通しかつ先端から基端に亘って貫通した内腔41hを有している。基部41は、先端が中空シャフト11の基端に接続するように構成することができる。手技の際、例えば、内腔41hにはガイドワイヤなどが挿通される。また、基部41を回転操作することで、中空シャフト11、先端チップ21および螺旋状の凸部31が共に回転する。
【0037】
次に、当該ダイレータ1の使用態様について説明する。ここでは、当該ダイレータ1を用い、例えば血管内に形成された慢性完全閉塞(CTO)などの被拡張部を拡張する手技について説明する。
【0038】
まず、導入針(不図示)を用い、被拡張部に穿刺しながら孔を開ける。次いで、導入針の内腔にガイドワイヤ(不図示)を挿入した後、導入針を抜き取る。次いで、ガイドワイヤの基端を先端チップ21の先端側から内腔21hに差し入れ、中空シャフト11を被拡張部まで押し進める。この際、当該ダイレータ1の先端部は、湾曲した被挿入部(例えば、血管、食道、胃、胆管など)の形状に追従しながら進行する。
【0039】
次に、ダイレータ1の先端部を先端チップ21から被拡張部に開けられた孔に挿入した後、基部41を操作することで中空シャフト11を回転かつ前進させながらテーパ部111により孔を拡張する。この際、ダイレータ1は、内周半径(CIDmin)が外周半径(TODmax)よりも小さくなるように形成されているので、第2のコイル体31Cは、中空シャフト11から脱離することなく、円滑に被拡張部が拡張される。
【0040】
以上のように、当該ダイレータ1は、上記構成であるので、螺旋状の凸部31が中空シャフト11から脱離するのを防止することがき、手技を円滑に行うことができる。
【0041】
[第2の実施形態]
図3は、第2の実施形態を示す概略的側面図である。当該ダイレータ2は、
図3に示すように、概略的に、中空シャフト12と、先端チップ21と、螺旋状の凸部31と、基部42とにより構成されている。当該ダイレータ2は、中空シャフト12および基部42を備えている点で、第1の実施形態と異なっている。なお、先端チップ21および螺旋状の凸部31の構成は、第1の実施形態のものと同様であるので、同一部位には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。また、以下に示す中空シャフト12および基部42の構成以外の構成、およびダイレータ2の使用態様は、第1の実施形態のものと同様であるので、その詳細な説明は省略する。
【0042】
中空シャフト12は、中空形状のシャフトである。中空シャフト12は、例えば、テーパ部121と、本体部122と、内腔12hとを有している。
【0043】
テーパ部121は、先端の外径が基端の外径よりも小さい部位である。本体部122は、先端がテーパ部121の基端に位置し、基端側に向かって延設された部位である。内腔12hは、ガイドワイヤ(不図示)等を挿通する貫通孔である。
【0044】
テーパ部121および本体部122は、一体であってもよく、別体であってもよい。また、テーパ部121および本体部122は、同一の材料で形成されていてもよく、異なる材料で形成されていてもよい。また、テーパ部121および本体部122の肉厚は、同じであってもよく、異なっていてもよい。本実施形態のテーパ部121および本体部122は、同一の材料を用い、鋳造等で一体的かつ異なる肉厚(中空シャフト12の先端から基端に亘って同一内径の内腔12h)を有するように形成されている。
【0045】
基部42は、手技者がダイレータ2を操作する部位である。本実施形態の基部42は、中空シャフト12の内腔12hに連通し、かつ先端から基端に亘って貫通した、内腔12hと同一内径を有する内腔42hを有している(
図3参照)。
【0046】
以上のように、当該ダイレータ2は、上記構成であるので、螺旋状の凸部31が中空シャフト12から脱離するのを防止することがき、手技を円滑に行うことができる。
【0047】
[第3の実施形態]
図4は、第3の実施形態を示す概略的側面図である。当該ダイレータ3は、
図4に示すように、概略的に、中空シャフト13と、先端チップ21と、螺旋状の凸部33と、基部41(不図示)とにより構成されている。当該ダイレータ3は、中空シャフト13および螺旋状の凸部33を備えている点で、第1に実施形態と異なっている。なお、先端チップ21および基部41の構成は、第1の実施形態のものと同様であるので、同一部位には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。また、以下に示す中空シャフト13および螺旋状の凸部33の構成以外の構成、およびダイレータ3の使用態様は、第1の実施形態のものと同様であるので、その詳細な説明は省略する。
【0048】
中空シャフト13は、中空形状のシャフトである。中空シャフト13は、例えば、テーパ部131と、本体部132と、内腔13hとを有している。
【0049】
テーパ部131は、先端の外径が基端の外径よりも小さい部位である。本体部132は、先端がテーパ部131の基端に位置し、基端側に向かって延設された部位である。本体部132の外径は、テーパ部131の基端の外径と同一の外径を有している。内腔13hは、ガイドワイヤ(不図示)等を挿通する貫通孔である。
【0050】
螺旋状の凸部33は、少なくともテーパ部の外周面上に設けられた部位である。螺旋状の凸部33は、素線33wを巻回することで形成したコイル体33C(第2のコイル体33C)で構成されていると共に、中空シャフト13の長軸方向に沿って隣り合う部分に隙間33gを有している。
【0051】
また、本実施形態では、螺旋状の凸部33のうちの最も外周半径が大きい部位の外周半径(CODmax)が、先端チップ21のうちの最も外周半径が大きい部位の外周半径(TODmax)よりも大きくなるように形成されている。具体的には、例えば、上述した中空シャフト13のテーパ部131における基端の外径が第1の実施形態のテーパ部111よりも大きくなるように形成したり(
図4参照)、第2のコイル体33Cの素線径を適宜調整することで、第2のコイル体33Cの外周半径(CODmax)が、先端チップ21の外周半径(TODmax)よりも大きくなる(不図示)ようにしてもよい。外周半径(CODmax)となる螺旋状の凸部33の部位は、テーパ部131上の部位であってもよく(不図示)、本体部132上の部位であってもよい(
図4参照)。
【0052】
また、螺旋状の凸部33のうちのテーパ部131の外周面13s上に設けられた部位における、最も外周半径が大きい部位の外周半径(CODmax)は、先端チップ21のうちの最も外周半径が大きい部位の外周半径(TODmax)よりも大きくなるように構成されていてもよい。これにより、組織を拡張している最中(テーパ部131が被拡張部を通過している最中)のネジ作用によるダイレータ3の推進力をより高めることができる。
【0053】
以上のように、当該ダイレータ3は、上記構成であるので、前面視(長軸方向の先端側から先端チップ21に向かってダイレータ3を見たときの見え方)で螺旋状の凸部33の外周が先端チップ21から突出している分、ネジ作用によるダイレータ3の推進力を高めることができる。
【0054】
[第4の実施形態]
図5は、第4の実施形態を示す概略的側面図である。当該ダイレータ4は、
図5に示すように、概略的に、中空シャフト14と、先端チップ21と、螺旋状の凸部34と、基部41(不図示)とにより構成されている。当該ダイレータ4は、中空シャフト14および螺旋状の凸部34を備えている点で、第1に実施形態と異なっている。なお、先端チップ21および基部41の構成は、第1の実施形態のものと同様であるので、同一部位には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。また、以下に示す中空シャフト14および螺旋状の凸部34の構成以外の構成、およびダイレータ4の使用態様は、第1の実施形態のものと同様であるので、その詳細な説明は省略する。
【0055】
中空シャフト14は、中空形状のシャフトである。中空シャフト14は、例えば、テーパ部141と、本体部142と、内腔14hとを有している。
【0056】
テーパ部141は、先端の外径が基端の外径よりも小さい部位である。本体部142は、先端がテーパ部141の基端に位置し、基端側に向かって延設された部位である。本体部142の外径は、テーパ部141の基端の外径と同一の外径を有している。内腔14hは、ガイドワイヤ(不図示)等を挿通する貫通孔である。
【0057】
螺旋状の凸部34は、少なくともテーパ部141の外周面上に設けられた部位である。螺旋状の凸部34は、素線34wを巻回することで形成したコイル体34C(第2のコイル体34C)で構成されていると共に、中空シャフト14の長軸方向に沿って隣り合う部分に隙間34gを有している。
【0058】
また、本実施形態では、螺旋状の凸部34のうちの最も内周半径が大きい部位の内周半径(CIDmax)が、先端チップ21のうちの最も外周半径が大きい部位の外周半径(TODmax)よりも大きくなるように形成されている。具体的には、例えば、上述した中空シャフト14のテーパ部141における基端の外径が第3の実施形態のテーパ部131よりも更に大きくなるように形成
(図5参照)することで、第2のコイル体34Cの
内周半径(CIDmax)が、先端チップ21の外周半径(TODmax)よりも大きくなるようにしてもよい。
内周半径(CIDmax)となる螺旋状の凸部34の部位は、テーパ部141上の部位であってもよく(不図示)、本体部142上の部位であってもよい(
図5参照)。
【0059】
以上のように、当該ダイレータ4は、上記構成であるので、前面視で螺旋状の凸部34の外周が先端チップ21からより突出している分、ネジ作用によるダイレータ4の推進力を更に高めることができる。
【0060】
なお、本発明は、上述した実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0061】
例えば、上述した第1の実施形態では、内周半径(CIDmin)が位置する部位が螺旋状の凸部31の先端であるダイレータ1について説明した。しかしながら、内周半径(CIDmin)が位置する部位は、長軸方向における螺旋状の凸部のいずれの部位(例えば、長軸方向における螺旋状の凸部の中途または基端)であってもよい。
【0062】
また、第2の実施形態にて上述したような鋳造等で形成された中空シャフト12は、本明細書で開示された他のいずれのダイレータにも適用することができる。
【0063】
また、上述した第3の実施形態では、中空シャフト13の外径を調整することで、螺旋状の凸部33の外周半径(CODmax)が先端チップ21の外周半径(TODmax)よりも大きくなるようなダイレータ3について説明した。しかしながら、当該ダイレータは、第2のコイル体の素線径を調整したり、中空シャフトの外径および第2のコイル体の素線径の両者を調整することで、螺旋状の凸部の外周半径(CODmax)が先端チップの外周半径(TODmax)よりも大きくなるようにしてもよい。
【0065】
また、上述した実施形態では、内周半径(CIDmin)を有する部位が、螺旋状の凸部31~34の1箇所にのみ存在するダイレータ1~4について説明した。しかしながら、内周半径(CIDmin)を有する部位は、螺旋状の凸部の互いに離間した二箇所以上の部位に設けられていてもよい。
【0066】
また、上述した実施形態では、螺旋状の凸部31~34の内周半径(CIDmin)、外周半径(CODmax)、および中心半径(CMD)となる部位が、螺旋状の凸部31~34のうちの特定の部位にのみ設けられたダイレータ1~4について説明した。しかしながら、上記部位それぞれは、長軸方向における螺旋状の凸部のいずれの部位(中空シャフトのテーパ部および/または本体部上のいずれの部位)に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1,2,3,4 ダイレータ
11,12,13,14 中空シャフト
21 先端チップ
31,33,34 螺旋状の凸部
31C,33C,34C コイル体(第2のコイル体)
31g,33g,34g 隙間
111,121,131,141 テーパ部