(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】弾性体
(51)【国際特許分類】
F16J 15/10 20060101AFI20240321BHJP
【FI】
F16J15/10 V
F16J15/10 Y
(21)【出願番号】P 2020114222
(22)【出願日】2020-07-01
【審査請求日】2023-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】518318244
【氏名又は名称】ニッパツフレックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 智之
(72)【発明者】
【氏名】世良 範幸
(72)【発明者】
【氏名】許斐 和彦
(72)【発明者】
【氏名】草川 公一
(72)【発明者】
【氏名】北澤 明彦
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-181909(JP,A)
【文献】実開平05-032508(JP,U)
【文献】特開平09-241618(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡体によって形成され、圧縮荷重によって弾性的に圧縮変形が可能で、圧縮変形状態から復元される際には、内側に流体が吸い込まれる弾性体本体と、
前記弾性体本体を構成する発泡体の表面に押出被覆された軟質樹脂によって構成され、長手方向両端に開口部が形成された筒状とされ、前記弾性体本体を被覆し、内外の連通状態では連通部分を前記流体が通過可能とされると共に、前記連通部分における前記流体の通過スピードが前記連通部分によって制限される被覆部と、
を備え
、
使用前は渦巻状に纏められる弾性体。
【請求項2】
前記被覆部は、内外を連通する連通部を有する請求項1に記載の弾性体。
【請求項3】
前記被覆部に設けられて前記連通部を閉止すると共に、前記被覆部から取り外されることによって前記連通部を開放する閉止部材を備える請求項2に記載の弾性体。
【請求項4】
前記弾性体本体は、前記圧縮変形状態で前記被覆部によって密封され、前記被覆部の内外を連通する連通部が前記被覆部に形成されると共に、前記弾性体本体への圧縮荷重の付与が解消されることによって復元される請求項1に記載の弾性体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮変形状態で圧縮荷重の解消により復元される弾性体に関する。
【背景技術】
【0002】
目地等の施工箇所における溝状の部分等に施工されて、施工箇所で水等に対してシールするシール材や、耳に挿入される耳栓等には、弾性体が用いられ、その一例として下記特許文献1から特許文献4の各々に開示されている。この種の弾性体の一例としては、例えば、軟質の連続気泡構造のポリウレタンフォームにアスファルトなどの瀝青質物質や、スチレン-ブタジエンブロック共重合体の溶液を含浸した後、乾燥したフォームがある。また、他の一例としては、形状記憶性樹脂としてトランス型ポリイソプレンのような、ある温度(形状復元温度)で軟化する樹脂の発泡体がある。さらに、他の一例としては、ポリウレタンフォームにおいて所定の分子量のポリオールと低分子鎖延長剤及び架橋剤の少なくとも一方を配合したものがある。また、他の一例としては、ガラス転移点が室温よりやや高めのポリ塩化ビニル樹脂の発泡体がある。
【0003】
上記のような弾性体は、弾性変形状態で外部からの荷重が解消されると、元の形状に復元しようとする。このような弾性体におけるに弾性変形状態から元の形状への復元のスピードは、例えば、温度が高いほど速くなる。このため、このような弾性体を上記のようなシール材に適用すると、例えば、夏季等の気温が高い場合には、シール材の施工箇所への施工が終了する前にシール材が復元してしまい、施工箇所にシール材を挿入できなくなる等の問題が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭59-213786号公報
【文献】実開平3-1946号公報
【文献】特開2002-256052号公報
【文献】特開昭54-144099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、弾性変形状態からの復元のスピードの変化を抑制し、復元させるタイミングを制御することができる弾性体を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の弾性体は、発泡体によって形成され、圧縮荷重によって弾性的に圧縮変形が可能で、圧縮変形状態から復元される際には、内側に流体が吸い込まれる弾性体本体と、前記弾性体本体を構成する発泡体の表面に押出被覆された軟質樹脂によって構成され、長手方向両端に開口部が形成された筒状とされ、前記弾性体本体を被覆し、内外の連通状態では連通部分を前記流体が通過可能とされると共に、前記連通部分における前記流体の通過スピードが前記連通部分によって制限される被覆部と、を備え、使用前は渦巻状に纏められる。
【0007】
請求項1に記載の弾性体によれば、発泡体によって形成された弾性体本体に対して圧縮荷重が付与されると、弾性体本体は、弾性的に圧縮変形される。このように圧縮変形された状態の弾性体本体が被覆部によって被覆された状態で弾性体本体に対する圧縮荷重の付与が解消されて被覆部の内外が連通されると、弾性体本体は、自らの弾性によって膨張するように復元しようとする。
【0008】
このように弾性体本体が復元される際には、流体が弾性体本体の内側へ吸い込まれる。上記のように、弾性体本体が被覆部に被覆された状態で被覆部の内外が連通されると、弾性体本体が吸い込む流体は、被覆部の外部から被覆部における内外の連通部分を通って被覆部内の弾性体本体に吸い込まれる。
【0009】
ここで、このように弾性体本体に吸い込まれる流体が被覆部における内外の連通部分を通過する際のスピード(すなわち、連通部分を通過する流体の単位時間当たりの通過量)は、この連通部分によって制限される。このため、弾性体本体が流体を吸い込むスピード(すなわち、弾性体本体の復元スピード)が、被覆部における内外の連通部分を通過する際のスピードよりも早くなることを抑制できる。
【0010】
請求項2に記載の弾性体は、請求項1に記載の弾性体において、前記被覆部は、内外を連通する連通部を有している。
【0011】
請求項2に記載の弾性体によれば、被覆部は、内外を連通する連通部を有しており、圧縮変形された弾性体本体が復元される際に弾性体本体が流体を吸い込むスピードは、連通部によって制限され、弾性体本体の復元スピードが制限される。また、このような連通部が被覆部に予め形成されることによって、弾性体本体への圧縮荷重の付与が解消されることで、弾性体本体、ひいては、弾性体が復元される。
【0012】
請求項3に記載の弾性体は、請求項2に記載の弾性体において、前記被覆部に設けられて前記連通部を閉止すると共に、前記被覆部から取り外されることによって前記連通部を開放する閉止部材を備えている。
【0013】
請求項3に記載の弾性体によれば、被覆部の連通部は、閉止部材によって閉止される。閉止部材が被覆部から取り外されることによって連通部が開放され、被覆部の内外が連通部によって連通される。したがって、閉止部材が被覆部から取り外されるまでは、圧縮変形状態で弾性体本体を維持でき、閉止部材が被覆部から取り外されることによって、弾性体本体の復元が開始される。これにより、弾性体本体を復元させる場所と時間は、閉止部材を被覆部から取り外すタイミングにより制御される。
【0014】
請求項4に記載の弾性体は、請求項1に記載の弾性体において、前記弾性体本体は、前記圧縮変形状態で前記被覆部によって密封され、前記被覆部の内外を連通する連通部が前記被覆部に形成されると共に、前記弾性体本体への圧縮荷重の付与が解消されることによって復元される。
【0015】
請求項4に記載の弾性体によれば、弾性体本体が被覆部の内側で圧縮荷重による変形状態で被覆部によって密封される。この状態で、被覆部の内外が連通されると共に、弾性体本体への圧縮荷重の付与が解消されることによって弾性体本体が復元される。したがって、連通部が被覆部に形成されるまでは、弾性体本体を圧縮変形状態で維持できる。
【発明の効果】
【0016】
以上、説明したように、本発明に係る弾性体では、弾性体本体が流体を吸い込むスピードが、被覆部における内外の連通部分を通過する際のスピードよりも早くなることを抑制できるため、弾性体本体の弾性が変化して、弾性体本体、ひいては、弾性体の復元のスピードが速くなることを抑制し、復元させるタイミングを制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1の実施の形態に係るシール材の斜視図で(A)は、圧縮変形状態を示し、(B)は、復元状態を示す。
【
図2】第1の実施の形態に係るシール材が渦巻状に巻かれてシール材の長手方向両端部が保持シールによって固定された状態を示す斜視図である。
【
図3】第2の実施の形態に係るシール材の斜視図である。
【
図4】第3の実施の形態に係るシール材の斜視図である。
【
図5】第4の実施の形態に係るシール材の斜視図で(A)は、全ての孔部が閉止テープによって閉止された状態を示し、(B)は、閉止テープの一部が被覆部から外されて、一部の孔部が開放された状態を示す。
【
図6】第5の実施の形態に係るシール材をその長手方向に対して直交する方向に切った断面図で(A)は、圧縮変形状態を示し、(B)は、復元状態を示す。
【
図7】第6の実施の形態に係るシール材の斜視図である。
【
図8】第7の実施の形態に係る耳栓の断面図で(A)は、圧縮変形前の状態及び復元状態を示し、(B)は、圧縮変形状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の各実施の形態を
図1から
図8の各図に基づいて説明する。なお、
図1及び
図3から
図7の各図において適宜示される矢印Lは、伸直状態での弾性体としてのシール材10の長手方向一方の側を示す。また、矢印Wは、シール材10の幅方向一方を示す。さらに、矢印Tは、シール材10の厚さ方向一方の側を示す。
【0019】
また、以下の各実施の形態を説明するにあたり、説明している実施の形態と基本的に同一の部位に関しては、同一の符号を付与してその詳細な説明を省略する。
【0020】
<第1の実施の形態の構成>
図1(B)に示されるように、第1の実施の形態に係るシール材10は、弾性体本体としてのシール材本体12を備えている。シール材本体12は、例えば、連続気泡を有する発泡体によって形成されている。
【0021】
シール材本体12の構成する材質の一例としては、ポリウレタンフォーム、シリコーンフォーム、オレフィン系フォーム、メラミンフォーム等とされる。これらの例のなかで、特に、ポリウレタンフォームとシリコーンフォームは、特性的に圧縮永久ひずみが低いためシール材本体12に好ましい。また、シール材本体12は、長尺状に形成されており、シール材本体12の長手方向に対して直交する方向にシール材本体12を切った断面形状は、略矩形とされている。シール材本体12は、弾性を有しており、長手方向、幅方向、厚さ方向等に弾性変形可能とされている。
【0022】
また、上記のように、シール材本体12は、連続気泡を有しており、シール材本体12が圧縮荷重によって弾性変形されると、シール材本体12の気泡内の空気(流体の一態様)がシール材本体12の外部へ押し出される。さらに、このように圧縮によって弾性変形されたシール材本体12が自らの弾性によって復元される際には、シール材本体12の外部の空気(流体の一態様)がシール材本体12に吸い込まれる。
【0023】
また、シール材10は、被覆部14を備えている。被覆部14は、シール材本体12の復元性を邪魔しない程度に柔軟な(すなわち、シール材本体12よりも剛性が低い)材料によって長尺に形成されている。被覆部14を構成する材料としては、例えば、合成樹脂材またはゴム材のうち単独でも良く、複数の材料を積層させてもよい。更には、被覆部14を構成する材料としては、ガスバリア性能が高い材料またはガスバリア性能が高い材料と積層した多層に積層したものが望ましい。
【0024】
また、被覆部14は、例えば、被覆部14を構成する軟質樹脂の押出成形によりシール材本体12を構成する発泡体の表面に押出被覆することによって形成される。また、別の例としては、被覆部14は、シール材本体12を構成する発泡体の表面が、被覆部14を構成するコーティング剤によってよる被覆されることによって形成される。
【0025】
また、被覆部14は、中空部16を備えている。中空部16は、被覆部14の長手方向に連続して形成されており、したがって、被覆部14は、筒状とされている。被覆部14の長手方向に対して直交する方向に被覆部14を切った際の中空部16の断面形状は、シール材本体12と同形状とされている。さらに被覆部14の長手方向両端には、連通部としての開口部18が形成されており、被覆部14の内外、すなわち、中空部16と被覆部14の外部とは、開口部18を介して連通している。
【0026】
中空部16(すなわち、被覆部14)の内側にはシール材本体12が配置されている。このため、被覆部14の外部から被覆部14にシール材本体12の剛性を上回る荷重が作用すると、被覆部14及びシール材本体12が弾性変形される。また、この荷重が圧縮荷重である場合、シール材本体12が圧縮荷重の方向に弾性変形される(一例として
図1(A)、
図2を参照)。この圧縮荷重によるシール材本体12の弾性変形の際には、シール材本体12を形成する発泡体の連続気泡内の空気が押し出され、被覆部14の開口部18から被覆部14の外部へ流れ出る。また、被覆部14は、弾性を有しており、シール材本体12へ密着されている。なお、本実施の形態では、被覆部14は、シール材本体12へ密着される構成であったが、被覆部14がシール材本体12へ密着されない構成であってもよい。
【0027】
また、シール材本体12への圧縮荷重の付与が解消されると、シール材本体12は、自らの弾性によって復元され、このシール材本体12の復元の際には、シール材本体12の気泡内に空気が吸い込まれる。このように空気が吸い込まれる際には、被覆部14の外部の空気が開口部18を通って被覆部14の内側へ流れる。また、被覆部14は、弾性を有しており、シール材本体12へ密着されている。このため、シール材本体12が変形されると、被覆部14は、シール材本体12の変形に追従するように変形される。
【0028】
図2に示されるように、以上の構成のシール材10は、シール材10の使用前の状態では、渦巻状に纏められた状態で保管される。このような渦巻状に纏められたシール材10には、一対の保持テープ20が設けられる。これらの保持テープ20は、片面に接着剤が塗布された可撓性を有する薄肉シート状とされている。
【0029】
一方の保持テープ20は、渦巻状に纏められたシール材10の渦巻方向内側の端部に設けられる。一方の保持テープ20は、シール材10の渦巻方向内側の端部におけるシール材10の厚さ方向両側の面に貼り付けられている。シール材10の渦巻方向内側の端部は、一方の保持テープ20によってシール材10の厚さ方向に圧縮された状態で保持されている。
【0030】
他方の保持テープ20は、シール材10の渦巻方向外側の端部における渦巻の径方向外側の面に貼り付けられている。シール材10の渦巻方向外側の端部は、他方の保持テープ20によってシール材10の厚さ方向に圧縮されている。この状態で、他方の保持テープ20は、シール材10の渦巻方向外側の端部よりも延びており、シール材10の長手方向中間部へ貼り付けられている。このように、シール材10は、保持テープ20によって厚さ方向に圧縮変形された渦巻状態で保持される。
【0031】
なお、本実施の形態では、一方の保持テープ20は、シール材10の渦巻方向内側の端部におけるシール材10の厚さ方向両側の面に貼り付けられる構成であった。しかしながら、シール材10の渦巻方向内側の端部における渦巻の径方向内側の面へ貼り付けられた一方の保持テープ20がシール材10の渦巻方向内側の端部よりも延びてシール材10の長手方向中間部へ貼り付けられる構成にしてもよい。また、保持テープ20は、シール材10の開口部18を閉塞し、シール材本体12への空気の流入を防止するような構成としてもよい。
【0032】
<第1の実施の形態の作用、効果>
本実施の形態に係るシール材10は、目地等の溝状の部分の内側に施工(配置)される。施工箇所にシール材10が施工される際には、保持テープ20によって渦巻状で保持されたシール材10から保持テープ20が取り外される。シール材10は、シール材10の厚さ方向両端と施工箇所の壁面とが対向するように施工箇所の溝状の部分の内側に配置される。なお、シール材10は、施工前後に必要な長さに切断されてもよい。
【0033】
図1(A)に示されるように、シール材10Aは、厚さ方向に圧縮されている。このため、このような施工箇所の溝状の部分の内側に圧縮状態のシール材10Aが配置されると、シール材10Aは、シール材10Aの厚さ方向外側へ膨張するようにシール材10A自らの弾性で復元される。
図1(B)に示されるように、このようにして自らの弾性で復元されたシール材10Bの厚さ方向両端が施工箇所の溝状の部分の壁面へ当接(圧接)される。このように、シール材10Bが施工箇所の溝状の部分へ当接(圧接)されることによって、施工箇所における水等に対するシール性が向上される。
【0034】
上記のように、保持テープ20が圧縮変形された状態のシール材10Aから取り外されると、シール材10Aに対するシール材10Aの厚さ方向の圧縮荷重が解消される。これによって、シール材10Aのシール材本体12は、自らの弾性に基づく復元力で、シール材10の厚さ方向外側へ膨張するように復元しようとする。このように、シール材本体12が圧縮変形から復元される際には、シール材本体12の発泡セルの内側に空気が入る。これによって、シール材本体12の形状が復元される。
【0035】
シール材10A(シール材10)の被覆部14の長手方向両端部には、開口部18が形成されている。このため、シール材本体12の復元の際に、空気が被覆部14の外側から開口部18を通って被覆部14内のシール材本体12の内側へ流れる。このように、シール材本体12の圧縮からの復元に伴ってシール材本体12が空気をシール材本体12の内側へ吸い込むことによって、シール材本体12は、圧縮変形された状態から復元できる。
【0036】
ここで、被覆部14を備えず、シール材本体12だけでシール材10を構成した場合には、圧縮変形されたシール材本体12は、シール材本体12の長手方向両側のみならず、シール材本体12の幅方向両側や厚さ方向両側からも空気を吸い込む。これに対して、本シール材10A(シール材10)では、シール材本体12の幅方向両側や厚さ方向両側(すなわち、シール材本体12の長手方向を軸方向とする軸周り方向のシール材本体12の外周部)は、被覆部14によって被覆される。
【0037】
このため、圧縮変形されたシール材本体12によるシール材本体12の幅方向両側や厚さ方向両側からの空気の吸い込みは、制限される。したがって、圧縮変形状態のシール材本体12が復元される際には、基本的にシール材10A(シール材10)の長手方向両端の開口部18を通った空気がシール材本体12に吸い込まれる。このように、本シール材10では、圧縮変形されたシール材本体12が復元される際のシール材本体12への空気の流量は、制限される。これによって、シール材本体12の復元スピードは、空気の被覆部14の開口部18の通過量がシール材本体12の復元スピードに追従する程度に制限される。
【0038】
このため、シール材本体12の復元スピードを遅らせることができる。これによって、特に急ぐことなく、施工箇所の溝状部分の内側へシール材10を配置できる。したがって、作業者が特に熟練した技能を有していなくても、施工箇所の溝状部分の内側へシール材10A(シール材10)を配置できる。
【0039】
さらに、例えば、気温等の温度の変化等によってシール材本体12の復元スピードが材質的に速くなることがある。しかしながら、本実施の形態では、上記のように、圧縮変形されたシール材本体12が復元される際のシール材本体12への空気の流量が制限される。このため、シール材本体12の復元スピードが材質的に速くなっても、シール材本体12への空気の流量が制限されることによって、シール材10Aの復元スピードが速くなることを抑制できる。これによっても、作業者が特に熟練した技能を有していなくても、施工箇所の溝状部分の内側へシール材10A(シール材10)を配置できる。
【0040】
また、本実施の形態では、被覆部14は、シール材本体12の復元を邪魔しない程度に柔軟である。しかしながら、被覆部14自体は、剛性を有している。圧縮荷重によってシール材本体12と共に変形された被覆部14の剛性は、圧縮状態からのシール材本体12の復元に抗するように作用する。このため、この被覆部14の剛性によってもシール材本体12の復元、ひいては、シール材10A(シール材10)の復元を遅らせることができる。
【0041】
さらに、本実施の形態では、被覆部14は、弾性変形可能で、シール材本体12の変形に追従するように被覆部14が変形する。このため、例えば、シール材本体12が圧縮変形された状態で、被覆部14にシワや弛み等が形成されることを抑制でき、このようなシワや弛みが残った状態で被覆部14が施工箇所の溝状の部分の壁面へ当接(圧接)されることを抑制できる。
【0042】
<第2の実施の形態>
次に、第2の実施の形態について説明する。
【0043】
図3に示されるように、本実施の形態では、被覆部14におけるシール材10の厚さ方向両側の部分に連通部としての孔部32が形成されている。孔部32の内周形状は、円形とされており。被覆部14の外部と被覆部14の内側(すなわち、中空部16)とは、孔部32によって連通されている。さらに、孔部32は、シール材10の長手方向に所定の間隔をおいて複数形成されている。シール材10の厚さ方向に圧縮変形されたシール材本体12が自らの弾性によって復元される際には、シール材10の開口部18のみならず、被覆部14の外側の空気が孔部32を通って中空部16内のシール材本体12に吸い込まれる。
【0044】
しかしながら、被覆部14において開口部18及び孔部32以外の部位では、空気が被覆部14の外側から内側へ通ることができない。このため、このように、本実施の形態では、圧縮変形されたシール材本体12が復元される際のシール材本体12への空気の流量が制限される。このため、シール材本体12の復元スピードを遅らせることができる。これによって、特に急ぐことなく、施工箇所の溝状部分の内側へシール材10を配置できる。したがって、作業者が特に熟練した技能を有していなくても、施工箇所の溝状部分の内側へシール材10の配置できる。
【0045】
また、本実施の形態では、孔部32の数を多く設定すれば、シール材本体12の復元スピードを速くでき、孔部32の数を少なく設定すれば、シール材本体12の復元スピードを遅くできる。したがって、例えば、施工箇所における溝状の部分の長手方向が、適宜に曲がっており、シール材10の施工に時間を要するような場合には、孔部32の数が少ないシール材10を用いればよい。これによって、シール材10の施工途中でシール材10の幅寸法が施工箇所における溝状の部分の内幅寸法以上になることを抑制でき、シール材10の施工作業が難しくなることを抑制できる。また、開口部18及び孔部32が閉塞された状態であれば、施工時に復元させることが必要となるまでは圧縮変形状態を維持できる。
【0046】
一方、例えば、施工箇所における溝状の部分の長手方向が、直線的で、シール材10の施工に要する時間が比較的短くて済む場合には、孔部32の数が多いシール材10を用いればよい。これによって、シール材10の施工作業に要する時間を更に短縮できる。
【0047】
なお、本実施の形態における孔部32は、予め被覆部14に形成される構成(本シール材10の製造工程で形成される構成)であってもよいし、本シール材10の施工作業の際に孔部32を形成する構成であってもよい。本シール材10の施工作業の際に孔部32を形成する構成では、施工作業時に作業者によって孔部32が決められる。このため、作業者の熟練度や施工箇所の状態等に基づいてシール材本体12の復元スピードを設定できる。
【0048】
<第3の実施の形態>
次に、第3の実施の形態について説明する。
【0049】
図4に示されるように、本実施の形態では、被覆部14の長手方向両端部(
図4では長手方向他方の端部のみを図示)に開口部18が形成されておらず、被覆部14の長手方向両端部は、閉止されている。このような構成の本実施の形態では、被覆部14の厚さ方向両側の部分に複数の孔部32が形成されている。このため、基本的には、前記第2の実施の形態と同様の作用を奏し、前記第2の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0050】
<第4の実施の形態>
次に、第4の実施の形態について説明する。
【0051】
図5(A)に示されるように、本実施の形態では、孔部32は、被覆部14に予め形成されている(すなわち、孔部32は、本シール材10の製造工程で被覆部14に形成される)。また、本実施の形態では、被覆部14に閉止部材としての閉止シール42が設けられている。閉止シール42は、薄肉で長尺の帯状とされており、閉止シール42の厚さ方向一方の面には、接着剤が塗布されている。閉止シール42は、被覆部14におけるシール材10の厚さ方向側の面へ貼り付けられており、被覆部14に形成された孔部32は、閉止シール42によって閉止される。このため、被覆部14への閉止シール42の貼着状態では、空気は、孔部32を通過できない。
【0052】
なお、本実施の形態では、閉止部材を帯状の閉止シール42とした。しかしながら、閉止部材は、例えば、孔部32に相似形で孔部32より大きいシート状であってもよい。また、シート状ではなく、例えば、ボタンやキャップのような構成であってもよい。すなわち、閉止部材は、孔部を閉止できる構成であれば、その具体的な態様に限定されるものではない。
【0053】
以上の構成の本実施の形態では、
図5(A)に示される厚さ方向に圧縮されたシール材10A(シール材10)が施工される際に、
図5(B)に示されるように閉止シール42の少なくとも一部が被覆部14から剥がされる。これによって、孔部32は、開放され、被覆部14の外部の空気は、孔部32を通過して被覆部14の内側へ流れることができる。これによって、自らの弾性によって復元されたシール材10B(シール材10)になる。このため、本実施の形態は、閉止シール42が被覆部14から剥がされた状態では、基本的に、前記第2の実施の形態と同様の作用を奏し、前記第2の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0054】
ここで、被覆部14から剥がされる閉止シール42の長さが短ければ、開放される孔部32が少ない。したがって、この場合には、単位時間当たりに孔部32を通って被覆部14の内側へ流れる空気の量が少なくなる。このため、この状態では、シール材本体12の復元スピードを遅くできる。これに対して、被覆部14から剥がされる閉止シール42の長さが長ければ、開放される孔部32が多い。したがって、この場合には、単位時間当たりに孔部32を通って被覆部14の内側へ流れる空気の量が多くなる。このため、この状態では、シール材本体12の復元スピードを速くできる。このように、本実施の形態では、シール材本体12の復元スピードをシール材10A(シール材10)の施工作業時に調整できる。
【0055】
<第5の実施の形態>
次に、第5の実施の形態について説明する。
【0056】
図6(B)に示されるように、本実施の形態では、シール材本体12と被覆部14とが別体で構成されており、被覆部14は、シール材本体12に対して相対移動できる。また、被覆部14におけるシール材10の長手方向を軸方向とする軸周り方向の内周長は、シール材本体12がシール材10の幅方向や厚さ方向に圧縮変形されていない状態、すなわち、
図6(B)に示される状態でのシール材10B(シール材10)の長手方向を軸方向とする軸周り方向の外周長と同じ程度とされている。
【0057】
以上の構成の本実施の形態では、シール材10A(シール材10)が、シール材10の厚さ方向両側から中央側へ圧縮された状態(
図6(A)参照)で施工箇所の溝状の部分に施工される。このように、シール材10A(シール材10)が圧縮されると、シール材本体12がシール材10の厚さ方向に圧縮変形される。しかしながら、被覆部14の内周長は、シール材本体12がシール材10の幅方向や厚さ方向に圧縮変形されていない状態でのシール材10の外周長と同じ程度とされている。このため、シール材本体12がシール材10の厚さ方向に圧縮変形され、これによって、シール材本体12の外周長が短くなると、被覆部14の内周長がシール材本体12の外周長よりも長くなる。これによって、被覆部14には、弛み52が生じる。
【0058】
この状態で、シール材10A(シール材10)が施工箇所の溝状の部分に施工されて、シール材10A(シール材10)に対するシール材10の厚さ方向の圧縮荷重の付与が解消されると、シール材本体12は、シール材10の厚さ方向外側へ膨張するように復元される。このように、シール材本体12が復元されるに際してシール材本体12がシール材10の厚さ方向外側へ膨張すると、被覆部14においてシール材本体12に対してシール材10の厚さ方向に対向する部分がシール材本体12によって押圧される。
【0059】
ここで、被覆部14は、シール材本体12とは別体で構成され、被覆部14は、シール材本体12に対して相対移動できる。このため、シール材10の厚さ方向へ膨張(復元)するシール材本体12によって押圧された被覆部14は、上記の被覆部14の弛み52を解消するように被覆部14の内周方向へシール材本体12に対して滑る(相対移動する)。このように、シール材本体12が膨張されて被覆部14が施工箇所の溝状の部分の壁面へ圧接されることによって施工箇所が
図6(A)に示されるシール材10B(シール材10)によってシールされる。
【0060】
ここで、本実施の形態では、被覆部14の内周長は、シール材本体12がシール材10の厚さ方向に圧縮変形された状態でのシール材本体12の外周長よりも長く、シール材10の厚さ方向に膨張するシール材本体12に押圧された被覆部14は、弛み52を解消するようにシール材本体12に対して滑る(相対移動する)。このため、膨張するシール材本体12からの押圧力によって被覆部14の内周方向へ伸びるような変形が抑制される。このため、被覆部14の内周方向へ伸びるような変形によって被覆部14が薄くなることを抑制できる。
【0061】
また、上記のように、膨張するシール材本体12からの押圧力による被覆部14の内周方向へ伸びるような変形が抑制される。このため、被覆部14の弾性がシール材本体12の膨張を妨げることを抑制できる。したがって、シール材本体12の復元スピードを被覆部14における孔部32の大きさや数によって容易に設定できる。
【0062】
なお、上記の各実施の形態では、シール材10は、施工箇所における水等に対するシール性を得るために用いられた。しかしながら、シール材10は、断熱性を得るためや、防音性を得るため等の水等に対するシール性以外の効果を得るために用いられてもよい。
【0063】
また、上記の第2の実施の形態から第5の実施の形態では、被覆部14におけるシール材10の厚さ方向側の部分に、シール材10の長手方向に複数の孔部32が並んで形成された構成であった。ここで、上記の第2の実施の形態から第5の実施の形態では、孔部32の大きさについて特に言及していないが、孔部32の大きさに関して特に限定されるものではない。
【0064】
すなわち、例えば、孔部32の内径寸法を十分に小さくして(すなわち、微小にして)もよく、更に、このような微小な孔部32を被覆部14におけるシール材10の厚さ方向側の部分に行列状や千鳥格子形状に並べて形成してもよい。さらに、このような微小な孔部32を被覆部14に形成するにあたっては、例えば、シール材10の施工時に針や錐、千枚通し等のような先端が尖った穿孔治具を用いて孔部32を形成してもよい。
【0065】
また、上記の第2の実施の形態から第5の実施の形態では、孔部32は、被覆部14におけるシール材10の厚さ方向両側に形成された構成であった。しかしながら、例えば、孔部32が被覆部14におけるシール材10の厚さ方向何れか一方の側に形成されてもよいし、被覆部14におけるシール材10の厚さ方向の少なくとも一方の側に形成されてもよい。すなわち、被覆部14における孔部32の形成箇所に関しては、特に限定されるものではない。
【0066】
さらに、上記の第2の実施の形態から第5の実施の形態では、孔部32形状は、円形とされていたが、孔部32形状は、楕円形状や矩形状等、円形以外の形状であってもよい。
【0067】
さらに、上記の各実施の形態では、圧縮変形されたシール材本体12が膨張されて復元される際にシール材本体12に吸い込まれる流体は、空気であった。しかしながら、シール材本体12に吸い込まれる流体は、例えば、空気以外の気体や、水や油等の液体等であってもよい。すなわち、シール材10を施工する際の施工箇所におけるシール材10の周囲の流体がシール材本体12に吸い込まれるのであれば、流体は、空気に限定されるものではない。
【0068】
<第6の実施の形態>
次に、第6の実施の形態について説明する。
【0069】
図7に示されるように、本実施の形態では、連通部としての開口部18や孔部32が被覆部14に形成されておらず、シール材本体12は、シール材10の厚さ方向に圧縮された状態で被覆部14の内側に配置され、被覆部14によって密封されている。以上の構成の本実施の形態では、シール材10が、施工箇所の溝状の部分に施工される際に開口部18及び孔部32の少なくとも一方が被覆部14に形成される(
図1、
図3、
図4参照)。
【0070】
これによって、被覆部14の内外が開口部18及び孔部32のうち被覆部14に形成された方によって連通され、シール材本体12がシール材10の厚さ方向側へ膨張するような復元が開始される。このような構成の本実施の形態では、シール材本体12は、被覆部14によって密封されているため、シール材本体12、ひいては、シール材10をシール材10の厚さ方向に圧縮された状態で維持できる。
【0071】
<第7の実施の形態>
次に、第7の実施の形態について説明する。この第7の実施の形態は、参考例とする。
【0072】
本実施の形態は、本発明に係る弾性体を耳栓60として適用した例である。具体的には、
図8(A)に示されるように、耳栓60は、弾性体本体としての耳栓本体62を備えている。耳栓本体62は、略円錐形状に形成されている。また、耳栓本体62は、例えば、前記第1の実施の形態におけるシール材本体12と同様の連続気泡を有する発泡体によって形成されている(具体的な材質の一例については、シール材本体12と同様であるため、その説明は省略する)。
【0073】
また、耳栓60は、被覆部64を備えている。なお、本実施の形態における被覆部64の材質等の詳細に関しては、前記第1の実施の形態から第5の実施の形態の何れかで説明した被覆部14と同様であるため、本実施の形態での被覆部64の材質等の詳細な説明については省略する。被覆部64は、耳栓本体62全体を外側から被覆しており、被覆部64の外側面の形状は、耳栓本体62に対して略相似形状の円錐状とされている。
【0074】
被覆部64には、孔部32が形成されている。孔部32は、耳栓60の中心軸線C周りの被覆部64の周面部66において周方向及び中心軸線方向に複数形成されている、被覆部64の内外は、孔部32によって連通されている。
【0075】
以上の構成の本実施の形態では、耳栓60が耳に装着される際には、例えば、
図8(A)に示される耳栓60A(耳栓60)が中心軸線C周り方向に捩じられる。これによって、
図8(B)に示されるように、耳栓本体62が概ね中心軸線C側へ圧縮変形される。このように圧縮変形されることによって中心軸線C方向に対して直交する耳栓60の径方向寸法が短くなり、耳栓60B(耳栓60)を耳に挿入し易くなる。
【0076】
耳栓60A(耳栓60)が耳に挿入された状態で、耳栓本体62を概ね中心軸線C側へ圧縮変形させる外力が解消されると、耳栓本体62は、その弾性で復元される。この耳栓本体62の復元によって被覆部64の周面部66が、耳の内側で漸次耳に当接される。これによって、耳栓60が耳の内側で耳にフィットする。これにより、耳が耳栓60によって塞がれ、例えば、騒音等が聞こえることを軽減でき、また、外部から水等の遺物が耳に入ることを抑制できる。
【0077】
ところで、本実施の形態では、圧縮変形された耳栓本体62が復元される際には、耳栓本体62を形成する発泡体の内側に空気が吸い込まれる。このようにして耳栓本体62に吸い込まれる空気は、耳栓60B(耳栓60)の外側から被覆部64に形成された孔部32を通って被覆部64の内側へ流れる。このため、仮に、耳栓本体62の復元スピードに空気の孔部32の通過量が追従しない場合、耳栓本体62の復元スピードが遅くなる。これによって、耳栓60B(耳栓60)を耳の内側へ配置する際に、耳栓60を十分に圧縮変形させておくことができ、耳栓60B(耳栓60)の装着が容易である。
【0078】
また、気温等の温度変化や、耳栓60の装着回数の増加に伴う耳栓本体62の劣化等によって耳栓本体62の復元スピードが変化しても、耳栓本体62の復元に伴う耳栓本体62の単位時間当たりの空気の吸い込み量は、空気が孔部32を通る単位時間当たりの通過量に制限される。これによって、上記のような温度の変化や耳栓本体62の劣化等が耳栓本体62に生じても、耳栓本体62の復元スピードが速くなることを抑制できる。これによっても、耳栓60を耳の内側へ配置する際に、耳栓60を十分に圧縮変形させておくことができ、耳栓60の装着が容易である。
【符号の説明】
【0079】
10 シール材(弾性体)
10A 圧縮変形状態でのシール材(弾性体)
10B 復元状態でのシール材(弾性体)
12 シール材本体(弾性体本体)
14 被覆部
16 中空部
18 開口部(連通部)
20 保持テープ
32 孔部(連通部)
42 閉止シール(閉止部材)
52 弛み
60 耳栓(弾性体)
60A 復元状態での耳栓(弾性体)
60B 圧縮変形状態での耳栓(弾性体)
62 耳栓本体(弾性体本体)
64 被覆部
66 周面部