(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】ゴム繊維複合体
(51)【国際特許分類】
B32B 25/10 20060101AFI20240321BHJP
C08L 23/08 20060101ALI20240321BHJP
C08L 23/26 20060101ALI20240321BHJP
C08K 5/29 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
B32B25/10
C08L23/08
C08L23/26
C08K5/29
(21)【出願番号】P 2020120389
(22)【出願日】2020-07-14
【審査請求日】2023-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000005061
【氏名又は名称】バンドー化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中山 鉄平
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-300104(JP,A)
【文献】特開2018-104546(JP,A)
【文献】特開2006-255820(JP,A)
【文献】特開2017-82377(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 25/10
C08L 23/08
C08L 23/26
C08K 5/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維部材がRFL層を介してゴム組成物に接着したゴム繊維複合体であって、
前記ゴム組成物は、エチレン-α-オレフィンエラストマーを主体とするゴム成分と、不飽和カルボン酸変性ポリマーと、カルボジイミドとを含有するゴム繊維複合体。
【請求項2】
請求項1に記載されたゴム繊維複合体において、
前記ゴム成分の主体のエチレン-α-オレフィンエラストマーが不飽和カルボン酸変性物であり、それが前記不飽和カルボン酸変性ポリマーを兼ねているゴム繊維複合体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載されたゴム繊維複合体において、
前記不飽和カルボン酸変性ポリマーが、無水マレイン酸変性ポリマー又はマレイン酸変性ポリマーを含むゴム繊維複合体。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載されたゴム繊維複合体において、
前記カルボジイミドが、モノカルボジイミドを含むゴム繊維複合体。
【請求項5】
請求項4に記載されたゴム繊維複合体において、
前記カルボジイミドが、ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)カルボジイミドを含むゴム繊維複合体。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載されたゴム繊維複合体において、
前記RFL層の前記繊維部材への付着量が、前記繊維部材100質量部に対して1質量部以上40質量部以下であるゴム繊維複合体。
【請求項7】
請求項1に記載されたゴム繊維複合体において、
前記ゴム組成物における前記不飽和カルボン酸変性ポリマーの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して10質量部以上であるゴム繊維複合体。
【請求項8】
請求項2に記載されたゴム繊維複合体において、
前記エチレン-α-オレフィンエラストマーの前記不飽和カルボン酸変性物における不飽和カルボン酸の含有量が0.05質量%以上1.5質量%以下であるゴム繊維複合体。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載されたゴム繊維複合体において、
前記ゴム組成物における前記カルボジイミドの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して0.5質量部以上5質量部以下であるゴム繊維複合体。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載されたゴム繊維複合体において、
前記ゴム組成物の前記ゴム成分の分子間が、架橋剤として有機過酸化物が用いられて架橋しているゴム繊維複合体。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかに記載されたゴム繊維複合体で構成されたゴム製品。
【請求項12】
請求項1乃至10のいずれかに記載されたゴム繊維複合体で構成された伝動ベルト。
【請求項13】
請求項1乃至10のいずれかに記載されたゴム繊維複合体で構成されたコンベアベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム繊維複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維部材がRFL層を介してゴム組成物に接着したゴム繊維複合体のゴム製品として、例えば、伝動ベルト、コンベアベルト、タイヤ、ホース等が知られている。特許文献1には、ケナフ短繊維がRFL層を介してゴム組成物のベルト本体に接着した伝動ベルトが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、繊維部材のゴム組成物への高い接着力を得ることができるゴム繊維複合体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、繊維部材がRFL層を介してゴム組成物に接着したゴム繊維複合体であって、前記ゴム組成物は、エチレン-α-オレフィンエラストマーを主体とするゴム成分と、不飽和カルボン酸変性ポリマーと、カルボジイミドとを含有する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、繊維部材がRFL層を介して接着したゴム組成物が、エチレン-α-オレフィンエラストマーを主体とするゴム成分と、不飽和カルボン酸変性ポリマーと、カルボジイミドとを含有することにより、繊維部材のゴム組成物への高い接着力を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1A】実施形態に係るゴム繊維複合体の第1の構成を示す図である。
【
図1B】実施形態に係るゴム繊維複合体の第2の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態について詳細に説明する。
【0009】
実施形態に係るゴム繊維複合体は、繊維部材がRFL層を介してゴム組成物Aに接着している。実施形態に係るゴム繊維複合体は、例えば、伝動ベルト、コンベアベルト、タイヤ、ホース等のゴム製品を構成する。
【0010】
繊維部材の形態としては、例えば、短繊維、糸、布等が挙げられる。繊維部材を形成する繊維材料としては、有機繊維及び無機繊維が挙げられる。合成繊維の有機繊維としては、例えば、脂肪族ポリアミド繊維、芳香族ポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリエチレンナフタレート繊維、ポリビニルアルコール繊維、ウレタン繊維等が挙げられる。天然繊維の有機繊維としては、例えば、綿、麻等が挙げられる。無機繊維としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維等が挙げられる。繊維部材は、これらのうちの1種又は2種以上で形成されていることが好ましい。
【0011】
RFL層は、繊維部材を、レゾルシン(R)とホルマリン(F)との初期縮合物(RF)とゴムラテックス(L)とを混合したRFL水溶液に浸漬した後に加熱することにより、繊維部材の表面上に形成される被膜である。RFL層の組成は、後述するRFL水溶液の内容物に依存する。RFL層の繊維部材への付着量は、例えば、繊維部材100質量部に対して1質量部以上40質量部以下である。なお、繊維部材とRFL層との間には、エポキシ樹脂やイソシアネート樹脂のプライマー層が設けられていてもよい。
【0012】
ゴム組成物Aは、ゴム成分と、不飽和カルボン酸変性ポリマーと、カルボジイミドとを含有するとともに、ゴム成分の分子間が架橋した架橋ゴムである。
【0013】
ゴム組成物Aのゴム成分は、エチレン-α-オレフィンエラストマーを主体とする。エチレン-α-オレフィンエラストマーとしては、例えば、エチレンプロピレンジエンモノマー(以下「EPDM」という。)、エチレンプロピレンコポリマー(EPM)、エチレンブテンコポリマー(EBM)、エチレンオクテンコポリマー(EOM)等が挙げられる。ゴム成分におけるエチレン-α-オレフィンエラストマーの含有量は、好ましくは90質量%以上、より好ましくは100質量%である。ゴム成分は、エチレン-α-オレフィンエラストマー以外に、クロロプレンゴム(CR)、水素添加アクリロニトリルゴム(H-NBR)、天然ゴム(NR)等を含んでいてもよい。
【0014】
不飽和カルボン酸変性ポリマーとしては、例えば、無水マレイン酸変性ポリマー、マレイン酸変性ポリマー、フマル酸変性ポリマー、無水イタコン酸変性ポリマー、イタコン酸変性ポリマー等が挙げられる。不飽和カルボン酸変性ポリマーは、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましく、繊維部材のゴム組成物Aへの高い接着力を得る観点から、無水マレイン酸変性ポリマー又はマレイン酸変性ポリマーを含むことがより好ましい。ゴム組成物Aにおける不飽和カルボン酸変性ポリマーの含有量は、繊維部材のゴム組成物Aへの高い接着力を得る観点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上、さらに好ましくは25質量部以上である。
【0015】
また、ゴム成分の主体のエチレン-α-オレフィンエラストマーが不飽和カルボン酸変性物であり、それが不飽和カルボン酸変性ポリマーを兼ねていてもよい。この場合、エチレン-α-オレフィンエラストマーの不飽和カルボン酸変性物における不飽和カルボン酸の含有量は、繊維部材のゴム組成物Aへの高い接着力を得る観点から、好ましくは0.05質量%以上1.5質量%以下、より好ましくは0.06質量%以上0.8質量%以下である。
【0016】
カルボジイミドは、分子内に1個のカルボジイミド基を有するモノカルボジイミド、及び/又は、分子内に2個以上のカルボジイミド基を有するポリカルボジイミドを含む。
【0017】
モノカルボジイミドとしては、例えば、ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド、ジ-β-ナフチルカルボジイミド、N,N′-ジイソプロピルカルボジイミド、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド等が挙げられる。
【0018】
ポリカルボジイミドとしては、例えば、ポリ(1,6-ヘキサメチレンカルボジイミド)、ポリ(4,4′-メチレンビスシクロヘキシルカルボジイミド)、ポリ(1,3-シクロヘキシレンカルボジイミド)、ポリ(1,4-シクロヘキシレンカルボジイミド)、ポリ(4,4′-ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)等が挙げられる。
【0019】
カルボジイミドは、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましく、繊維部材のゴム組成物Aへの高い接着力を得る観点から、モノカルボジイミドを含むことが好ましく、ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)カルボジイミドを含むことが更に好ましい。
【0020】
ゴム組成物Aにおけるカルボジイミドの含有量は、繊維部材のゴム組成物Aへの高い接着力を得る観点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上5質量部以下、より好ましくは1質量部以上3質量部以下である。
【0021】
ゴム組成物Aは、ゴム成分の分子間が架橋しているが、架橋剤として有機過酸化物が用いられて架橋していてもよく、また、架橋剤として硫黄が用いられて架橋していてもよく、さらに、それらが併用されて架橋していてもよい。また、ゴム成分は、電子線等が用いられて架橋していてもよい。ゴム成分は、繊維部材のゴム組成物Aへの高い接着力を得る観点から、これらのうち架橋剤として有機過酸化物が用いられて架橋していることが好ましい。この場合、架橋前の未架橋ゴム組成物A’における有機過酸化物の配合量は、同様の観点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上3質量部以下、より好ましくは1質量部以上2質量部以下である。
【0022】
ゴム組成物Aは、ゴム配合剤として、その他に、カーボンブラックなどの補強材、加工助剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、可塑剤等を含有していてもよい。
【0023】
図1Aに示すように、実施形態に係るゴム繊維複合体10は、繊維部材11がRFL層12を介して接着したゴム組成物Aが、被着ゴム自体であるゴム製品本体13を構成していてもよい。また、
図1Bに示すように、実施形態に係るゴム繊維複合体10は、繊維部材11がRFL層12を介して接着したゴム組成物Aが、RFL層12と被着ゴムであるゴム製品本体13との間に介在する糊ゴム層14を構成してもよい。この場合、ゴム製品本体13を形成するゴム組成物Bは、エチレン-α-オレフィンエラストマーをゴム成分の主体とすることが好ましい。
【0024】
以上の構成の実施形態に係るゴム繊維複合体10によれば、繊維部材11がRFL層12を介して接着したゴム組成物Aが、エチレン-α-オレフィンエラストマーを主体とするゴム成分と、不飽和カルボン酸変性ポリマーと、カルボジイミドとを含有することにより、繊維部材11のゴム組成物Aへの高い接着力を得ることができる。
【0025】
次に、実施形態に係るゴム繊維複合体10の製造方法について説明する。
【0026】
実施形態に係るゴム繊維複合体10の製造方法では、まず、RFL水溶液を調製し、そのRFL水溶液に繊維部材11を浸漬した後に加熱するRFL処理を行うことにより、繊維部材11の表面上にRFL層12の被膜を形成する。なお、繊維部材11とRFL層12との間にプライマー層を設ける場合には、RFL処理前に、繊維部材11をエポキシ又はイソシアネートのプライマー溶液に浸漬した後に加熱するプライマー処理を行う。
【0027】
RFL水溶液におけるレゾルシン(R)のホルマリン(F)に対するモル比(R/F)は、例えば1/2以上1/1以下である。RFL水溶液におけるレゾルシン(R)とホルマリン(F)との初期縮合物(RF)のラテックス(L)に対する固形分質量比(RF/L)は、例えば1/20以上1/5以下である。RFL水溶液の固形分濃度は、例えば3質量%以上30質量%以下である。
【0028】
ラテックス(L)としては、例えば、ビニルピリジン・スチレンブタジエン共重合体ゴム(VP-SBR)ラテックス、クロロプレンゴム(CR)ラテックス、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)ラテックス、2,3-ジクロロブタジエン重合体ゴム(2,3-DCB)ラテックス、ニトリルブタジエンゴム(NBR)ラテックス等が挙げられる。ラテックス(L)は、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましく、繊維部材11のゴム組成物Aへの高い接着力を得る観点から、ビニルピリジン・スチレンブタジエン共重合体ゴム(VP-SBR)ラテックスを含むことがより好ましい。
【0029】
繊維部材11のRFL水溶液への浸漬時間は、例えば0.5秒以上10秒である。RFL水溶液への浸漬後の加熱温度(加熱炉設定温度)は、例えば200℃以上280℃以下であり、加熱時間は、例えば30秒以上600秒以下である。RFL処理は、1回行っても、複数回行っても、どちらでもよい。
【0030】
また、ゴム組成物Aを形成する未架橋ゴム組成物A’を調製する。具体的には、ニーダー、バンバリーミキサー、オープンロール等のゴム混練機に、ゴム成分を投入して素練りし、そこに不飽和カルボン酸変性ポリマー及びポリカルボジイミドを含むゴム配合剤を投入して混練する。
【0031】
そして、繊維部材11がRFL層12を介して接着したゴム組成物Aが、被着ゴム自体であるゴム製品本体13を構成する場合には、RFL処理を施した繊維部材11を、未架橋ゴム組成物A’に接触させて未架橋成形体を形成し、それを所定温度及び所定圧力の条件下に所定時間保持し、未架橋ゴム組成物A’のゴム成分を架橋させてゴム組成物Aを形成するとともに、ゴム組成物Aを繊維部材11と接着一体化させることにより、実施形態に係るゴム繊維複合体10を得る。
【0032】
また、ゴム組成物AがRFL層12と被着ゴムであるゴム製品本体13との間に介在する糊ゴム層14を構成する場合には、未架橋ゴム組成物A’をトルエンやメチルエチルケトン等の有機溶剤に溶解させたゴム糊を調製し、そのゴム糊に、RFL処理を施した繊維部材11を浸漬した後に乾燥させるゴム糊処理を行うことにより、RFL層12上に未架橋ゴム組成物A’の被膜を形成する。このゴム糊処理は、1回行っても、複数回行っても、どちらでもよい。その後、このゴム糊処理を施した繊維部材11を、別途混練して調製したゴム製品本体13のゴム組成物Bを形成する未架橋ゴム組成物B’に接触させて未架橋成形体を形成し、それを所定温度及び所定圧力の条件下に所定時間保持し、未架橋ゴム組成物A’のゴム成分を架橋させてゴム組成物Aの糊ゴム層14を形成するとともに、未架橋ゴム組成物B’のゴム成分も架橋させてゴム組成物Bのゴム製品本体13を形成し、且つゴム組成物Aの糊ゴム層14を介してゴム組成物Bのゴム製品本体13を繊維部材11と接着一体化させることにより、実施形態に係るゴム繊維複合体10を得る。
【実施例】
【0033】
(ゴム繊維複合体)
以下の実施例1乃至4並びに比較例1及び2のゴム繊維複合体を作製した。それぞれの構成は表1にも示す。
【0034】
<実施例1>
繊維部材として、1100dtexのポリエステル繊維のヤーンを2本引き揃えて下撚りし、それを3本集めて下撚りとは反対方向に上撚りした諸撚り糸のPETコードを準備した。
【0035】
ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(住化バイエルウレタン社製 商品名:スミジュール44V20)をトルエンに溶解させたプライマー溶液を調製した。固形分濃度を16質量%とした。
【0036】
ビニルピリジン・スチレンブタジエン共重合体ゴム(VP-SBR)ラテックスを用いたRFL水溶液を調製した。レゾルシン(R)のホルマリン(F)に対するモル比(R/F)を1/1.4とした。レゾルシン(R)とホルマリン(F)との初期縮合物(RF)のラテックス(L)に対する固形分質量比(RF/L)を1/6.1とした。固形分濃度を16.1質量%とした。
【0037】
PETコードをプライマー溶液に浸漬した後に加熱するプライマー処理を行うことにより、PETコードの表面上にイソシアネート樹脂のプライマー層の被膜を形成した。繊維部材のプライマー溶液への浸漬時間は0.5秒とした。プライマー溶液への浸漬後の加熱温度(加熱炉設定温度)は245±11℃に制御した。加熱時間は60秒とした。
【0038】
プライマー処理に続いて、PETコードをRFL水溶液に浸漬した後に加熱するRFL処理を2回繰り返して行うことにより、PETコードの表面上にプライマー層を介してRFL層の被膜を形成した。繊維部材のRFL水溶液への浸漬時間は1.0秒とした。RFL水溶液への浸漬後の加熱温度(加熱炉設定温度)は230±10℃に制御した。加熱時間は60秒とした。
【0039】
ゴム混練機に、ゴム成分の無水マレイン酸変性EPDM(KEPA1150 錦湖ポリケム社製、無水マレイン酸含有量:0.61質量%)を投入して素練りし、そこにゴム成分100質量部に対し、ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド(スタバクゾール ラインケミー社製)2質量部、エチレングリコールジメタクリレート(ライトエステルEG 共栄社化学社製)2質量部、メタクリル酸亜鉛(アクターZMA 川口化学工業社製)20質量部、FEFカーボンブラック50質量部、酸化亜鉛5質量部、ステアリン酸0.1質量部、パラフィンオイル5質量部、及び架橋剤の有機過酸化物(ペロキシモンF40 日本油脂社製、純度40質量%)4質量部(有効成分1.6質量部)を投入して更に混練することにより未架橋ゴム組成物を調製した。
【0040】
上記のRFL処理を施したPETコード及び未架橋ゴム組成物を用いて、
図2に示すような7本のRFL処理を施したPETコード21が、未架橋ゴム組成物で形成された板状ゴム22の表層に間隔をおいて平行に延びるように埋設された接着試験用試験片20をプレス成型した。なお、プレス成型条件は、温度160℃、圧力4MPa、及び時間40分とした。この接着試験用試験片20を実施例1とした。
【0041】
<実施例2>
未架橋ゴム組成物のゴム成分として、無水マレイン酸変性EPDMと、変性されていないEPDMとを、75:25の質量比で混合したブレンドゴムを用いたことを除いて実施例1と同様の接着試験用試験片20を作製し、これを実施例2とした。
【0042】
<実施例3>
未架橋ゴム組成物のゴム成分として、無水マレイン酸変性EPDMと、変性されていないEPDMとを、50:50の質量比で混合したブレンドゴムを用いたことを除いて実施例1と同様の接着試験用試験片20を作製し、これを実施例3とした。
【0043】
<実施例4>
未架橋ゴム組成物のゴム成分として、無水マレイン酸変性EPDMと、変性されていないEPDMとを、25:75の質量比で混合したブレンドゴムを用いたことを除いて実施例1と同様の接着試験用試験片20を作製し、これを実施例4とした。
【0044】
<比較例1>
未架橋ゴム組成物にビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)カルボジイミドを含有させていないことを除いて実施例1と同様の接着試験用試験片20を作製し、これを比較例1とした。
【0045】
<比較例2>
未架橋ゴム組成物のゴム成分として、変性されていないEPDMを用いたことを除いて比較例1と同様の接着試験用試験片20を作製し、これを比較例2とした。
【0046】
【0047】
(試験方法及び結果)
実施例1乃至4並びに比較例1及び2のそれぞれの接着試験用試験片20について、23℃の温度雰囲気下において、引張試験機の一方のチャックに板状ゴム22を固定するとともに、他方のチャックに板状ゴム22に埋設された7本のPETコード21のうち1本置きに配置された3本を折り返して板状ゴム22に対して180°の角度をなす方向に引き出して固定し、剥離スピードを100mm/minとして板状ゴム22から3本のPETコード21を100mm剥離した。そして、剥離長さ10~100mmの間のピーク値の平均を剥離接着力とした。この測定を2回行った。
【0048】
表1に試験結果を示す。これによれば、実施例1乃至4は、比較例1及び2よりも、剥離接着力が著しく高いことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、ゴム繊維複合体の技術分野について有用である。
【符号の説明】
【0050】
10 ゴム繊維複合体
11 繊維部材
12 RFL層
13 ゴム製品本体
14 糊ゴム層
20 接着試験用試験片
21 PETコード
22 板状ゴム