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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】車両空調用送風装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/00 20060101AFI20240321BHJP
   B60H 1/32 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
B60H1/00 102F
B60H1/32 613P
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020120580
(22)【出願日】2020-07-14
(65)【公開番号】P2022017807
(43)【公開日】2022-01-26
【審査請求日】2023-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000152826
【氏名又は名称】株式会社日本クライメイトシステムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福岡 史成
(72)【発明者】
【氏名】重松 良輔
(72)【発明者】
【氏名】徳田 浩之
(72)【発明者】
【氏名】三好 將平
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-171983(JP,A)
【文献】特開2011-230589(JP,A)
【文献】特開2004-249919(JP,A)
【文献】特開2019-156050(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00-3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内の空気を導入する内気導入口と、車室外の空気を導入する外気導入口とが形成され、前記内気導入口及び前記外気導入口の両方に連通する第1空気通路及び第2空気通路が内部に形成されるとともに、前記内気導入口及び前記外気導入口を開閉する内外気切替ダンパが収容されたケーシングと、
前記ケーシングの内部に配設され、第1羽根及び第2羽根を有する遠心式送風用ファンと、
前記送風用ファンの下側に配設され、前記送風用ファンを回転駆動する上下方向に延びる回転軸を有するとともに、前記回転軸の径方向に延び、前記ケーシングの底壁部に固定されるモーターフランジ部を有するモーターと、
前記ケーシングとは別部材とされ、前記送風用ファンの下側と対向するように配置されるベルマウス開口部と、該ベルマウス開口部を所定高さに配置する支持脚部とを有するベルマウス構成部材とを備え、
前記送風用ファンの前記第1羽根によって前記第1空気通路内の空気を空調用空気として送風し、前記送風用ファンの前記第2羽根によって前記第2空気通路内の空気を空調用空気として送風するように構成された車両空調用送風装置において、
前記モーターフランジ部が前記ケーシングから取り外された状態にあるときに、前記支持脚部を前記モーターフランジ部に仮保持するための仮保持部を備え、
前記仮保持部は、前記ベルマウス構成部材の前記回転軸周りの回動操作により前記支持脚部を前記モーターフランジ部に対して固定した固定状態と、前記支持脚部を前記モーターフランジ部に対して保持した状態で非固定にする非固定状態とに切り替えられることを特徴とする車両空調用送風装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両空調用送風装置において、
前記仮保持部は、前記支持脚部の下部から前記回転軸の径方向へ突出する第1突出部と、前記支持脚部から前記回転軸の周方向へ突出する第2突出部と、前記モーターフランジ部の上面から上方へ突出し、前記支持脚部の下部が挿入されるホルダ部とを備えており、
前記ホルダ部は、前記第1突出部の上面に係合した状態で当該第1突出部の前記回転軸周りへの移動を許容する係合孔と、前記ベルマウス構成部材を固定状態となるまで一方向へ回動させた時に前記第2突出部の下面に当接する一方、非固定状態となるまで回動した時に前記第2突出部から離れる当接部とを有していることを特徴とする車両空調用送風装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両空調用送風装置において、
前記第2突出部の下面は、前記一方向へ向かって徐々に高くなっていることを特徴とする車両空調用送風装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の車両空調用送風装置において、
前記係合孔の上下方向の寸法は、前記第1突出部の上下方向の寸法よりも長く設定されていることを特徴とする車両空調用送風装置。
【請求項5】
請求項1に記載の車両空調用送風装置において、
前記仮保持部は、前記支持脚部の下部から前記回転軸の径方向へ突出する突出部と、前記モーターフランジ部の上面に設けられたホルダ部とを備えており、
前記ホルダ部は、前記モーターフランジ部の上面から上方に間隔をあけて設けられ、前記モーターフランジ部の上面との間に前記突出部の周方向からの挿入が可能な隙間を形成するホルダ側板部と、前記モーターフランジ部の上面における前記ホルダ側板部と対向する部分に形成された凸部とを有しており、
前記凸部の先端面と前記ホルダ側板部の下面との間隔は、前記突出部の上下方向の寸法と同じまたは前記突出部の上下方向の寸法よりも狭く設定され、
前記ホルダ側板部の下面における前記凸部から前記回転軸の周方向に離れた部分と、前記モーターフランジ部の上面との間隔は、前記突出部の上下方向の寸法よりも広く設定されていることを特徴とする車両空調用送風装置。
【請求項6】
請求項5に記載の車両空調用送風装置において、
前記ホルダ部は、前記モーターフランジ部の上面から上方へ突出する基部を備え、
前記基部の上部には、前記ホルダ側板部が一体成形されていることを特徴とする車両空調用送風装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1つに記載の車両空調用送風装置において、
前記ベルマウス構成部材は、前記モーターフランジ部が前記ケーシングに組み付けられた状態にあるときに、前記ケーシングと前記モーターフランジ部とによって上下方向に挟持されていることを特徴とする車両空調用送風装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1つに記載の車両空調用送風装置において、
前記ベルマウス構成部材は、前記ベルマウス開口部が形成されるとともに、前記送風用ファンの径方向に延びるベルマウス板部を有し、
前記ベルマウス板部には、前記ケーシングに形成された突条部に嵌合する嵌合部が設けられていることを特徴とする車両空調用送風装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等に搭載される車両空調用送風装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両に搭載される空調装置は、車室内の空気(内気)と車室外の空気(外気)の一方を選択して空調用空気として送風し、冷却用熱交換器及び加熱用熱交換器によって温度調節した後に、車室の各部に供給するように構成されている。
【0003】
近年では、空調用空気を送風する車両空調用送風装置として、前記内気のみを送風する内気循環モードと、前記外気のみを送風する外気導入モードの他、内気と外気の両方を送風する内外気2層流モードにも切り替えられる装置が実用化されている。
【0004】
すなわち、特許文献1~3に開示されているように、車両空調用送風装置のケーシングには、内気導入口と外気導入口が形成されるとともに、上層空気通路と下層空気通路が形成されている。上層空気通路と下層空気通路の内部には、それぞれ送風用ファンが設けられており、これら2つの送風用ファンは共通のモーターによって駆動される。また、ケーシングには、内気導入口及び外気導入口を開閉する内外気切替ダンパが設けられ、この内外気切替ダンパによって内気導入口のみを開く内気循環モード、外気導入口のみを開く外気導入モード、内気導入口及び外気導入口を開く内外気2層流モードの切替が可能になっている。そして、前記2つの送風用ファンを回転させて内気循環モードにすると上層空気通路と下層空気通路に内気導入口から導入された内気が流れ、また、外気導入モードにすると上層空気通路と下層空気通路に外気導入口から導入された外気が流れ、さらに、内外気2層流モードにすると上層空気通路に外気導入口から導入された外気が流れる一方、下層空気通路に内気導入口から導入された内気が流れる。
【0005】
特許文献1~3の空調装置では、下層送風用ファンの下方から空気を吸い込む構造となっているので、下層用送風ファンの下方に、ベルマウス開口部を有するベルマウス構成部材が配設されている。ベルマウス構成部材は、下層送風用ファンとモーターとの間に位置する部材であることからケーシングとの一体成形が困難であり、特許文献2、3に開示されているようにケーシングとは別体とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-230589号公報
【文献】特開2017-171020号公報
【文献】特開2019-171983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、空調装置の製造工程では、モーターに下層送風用ファンを固定して一体化した状態でケーシングに組み付ける場合がある。この場合、ベルマウス構成部材を後から組み付けることは困難なので、ベルマウス構成部材もモーターと一体化しておく必要がある。特許文献3では、モーターがケーシングから取り外されているときに、ベルマウス構成部材をモーターに対して多少のがたつきを持たせて係合させている。これにより、各部の製造上のバラつきを吸収させることができる。
【0008】
ところが、ベルマウス構成部材のがたつきを持たせる構造は、送風用ファンのバランス調整時に問題となる場合があった。すなわち、送風用ファンのバランス調整時には送風用ファンを実際に回転させるのであるが、送風用ファンを回転させたときの振動によってベルマウス構成部材ががたついてしまい、その結果、バランス調整の精度が低下するおそれがあった。また、ベルマウス構成部材のがたつきは作業者によるバランス調整作業を難しくすることもあった。
【0009】
そこで、バランス調整を行う前に治具やテープ、クリップ等を利用してベルマウス構成部材をモーターに対してがたつかないように一時的に固定しておく方法が考えられる。しかしながら、治具やテープ、クリップ等を用意するための費用が嵩むとともに、それらを用いた仮固定作業が発生することになり、工数の増大を招くという問題があった。また、テープ、クリップ等を付けたまま本組付が行われると、不具合の原因となるおそれもあった。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ベルマウス構成部材をケーシングとは別部材にする場合に、各部の製造上のバラつきを吸収可能にしながら、送風用ファンのバランス調整の精度を高めるとともに、バランス調整時の作業性を良好にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、第1の発明は、車室内の空気を導入する内気導入口と、車室外の空気を導入する外気導入口とが形成され、前記内気導入口及び前記外気導入口の両方に連通する第1空気通路及び第2空気通路が内部に形成されるとともに、前記内気導入口及び前記外気導入口を開閉する内外気切替ダンパが収容されたケーシングと、前記ケーシングの内部に配設され、第1羽根及び第2羽根を有する遠心式送風用ファンと、前記送風用ファンの下側に配設され、前記送風用ファンを回転駆動する上下方向に延びる回転軸を有するとともに、前記回転軸の径方向に延び、前記ケーシングの底壁部に固定されるモーターフランジ部を有するモーターと、前記ケーシングとは別部材とされ、前記送風用ファンの下側と対向するように配置されるベルマウス開口部と、該ベルマウス開口部を所定高さに配置する支持脚部とを有するベルマウス構成部材とを備え、前記送風用ファンの前記第1羽根によって前記第1空気通路内の空気を空調用空気として送風し、前記送風用ファンの前記第2羽根によって前記第2空気通路内の空気を空調用空気として送風するように構成された車両空調用送風装置において、前記モーターフランジ部が前記ケーシングから取り外された状態にあるときに、前記支持脚部を前記モーターフランジ部に仮保持するための仮保持部を備え、前記仮保持部は、前記ベルマウス構成部材の前記回転軸周りの回動操作により前記支持脚部を前記モーターフランジ部に対して固定した固定状態と、前記支持脚部を前記モーターフランジ部に対して保持した状態で非固定にする非固定状態とに切り替えられることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、内気導入口から内気が導入される内気循環モードでは、送風用ファンが回転することで、内気導入口から導入された内気が第1羽根及び第2羽根によって第1空気通路及び第2空気通路を流れて空調用空気として送風される。また、内外気切替ダンパの動作によって内気導入口を閉じ、かつ、外気導入口を開くと、外気導入口から外気が導入される外気導入モードになる。外気導入モードでは、送風用ファンが回転することで、外気導入口から導入された外気が第1空気通路及び第2空気通路を流れて空調用空気として送風される。さらに、内外気切替ダンパの動作によって内気導入口及び外気導入口を開くと、内外気2層流モードになり、送風用ファンが回転することで、外気導入口から導入された外気が第1空気通路及び第2空気通路の一方を流れ、内気導入口から導入された内気が他方を流れ、空調用空気として送風される。つまり、外気導入モードと、内気循環モードと、内外気2層流モードとのうち、任意のモードに切り替えて送風することができる。
【0013】
また、ベルマウス構成部材をケーシングに組み付ける時には、モーターフランジ部をケーシングに組み付ける前に、仮保持部によってベルマウス構成部材の支持脚部をモーターフランジ部に仮保持しておく。このとき、支持脚部をモーターフランジ部に対して非固定状態にして保持しておくことで、ベルマウス構成部材はモーターフランジ部に対して変位可能になる。尚、非固定状態とは、ひと所に定まらず変位可能な状態であり、モーターフランジ部に対して動くことができる状態である。ベルマウス構成部材をモーターフランジ部に対して回転軸の軸方向に変位させることや周方向に変位させることができる。
【0014】
従って、モーターフランジ部をケーシングに取り付ける際に、モーターフランジ部とベルマウス構成部材とのバラつき、ベルマウス構成部材とケーシングとのバラつき、モーターフランジ部とケーシングとのバラつきが発生していても、ベルマウス構成部材をモーターフランジ部に対して変位させることによって各部のバラつきを吸収してケーシングに対してモーターフランジ部及びベルマウス構成部材を無理なく組み付けることが可能になる。
【0015】
また、送風用ファンのバランス調整を行う際には、ベルマウス構成部材を回動操作することで、ベルマウス構成部材の支持脚部をモーターフランジ部に対して固定した固定状態にすることができる。これにより、送風用ファンを回転させて振動が発生しても、ベルマウス構成部材ががたつくことはなく、バランス調整の精度を高めることができる。さらに、ベルマウス構成部材ががたつかないので、作業者によるバランス調整作業が行い易くなる。
【0016】
第2の発明は、前記仮保持部は、前記支持脚部の下部から前記回転軸の径方向へ突出する第1突出部と、前記支持脚部から前記回転軸の周方向へ突出する第2突出部と、前記モーターフランジ部の上面から上方へ突出し、前記支持脚部の下部が挿入されるホルダ部とを備えており、前記ホルダ部は、前記第1突出部の上面に係合した状態で当該第1突出部の前記回転軸周りへの移動を許容する係合孔と、前記ベルマウス構成部材を固定状態となるまで一方向へ回動させた時に前記第2突出部の下面に当接する一方、非固定状態となるまで回動した時に前記第2突出部から離れる当接部とを有していることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、ベルマウス構成部材の支持脚部の第1突出部をモーターフランジ部のホルダ部の係合孔に係合させることで、ベルマウス構成部材がモーターフランジ部に仮保持される。係合させている時、係合孔は第1突出部の回転軸周りへの移動を許容するので、非固定状態となり得る。
【0018】
一方、ベルマウス構成部材を固定状態となるまで回動させると、支持脚部の第2突出部の下面がホルダ部の当接部に当接する。第1突出部の上面は係合孔に係合するので、支持脚部は第1突出部及び第2突出部によって上下方向への移動が規制され、ベルマウス構成部材がモーターフランジ部に固定される。
【0019】
したがって、ベルマウス構成部材を回動させるという簡単な操作で非固定状態と固定状態との切替を行うことができる。
【0020】
第3の発明は、前記第2突出部の下面は、前記一方向へ向かって徐々に高くなっていることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、ベルマウス構成部材を固定状態にするべく一方向へ回動させていくと、その初期段階では第2突出部の下面が高くなっているので当接部への接触時の面圧が低く、ベルマウス構成部材の回動に伴ってその面圧が徐々に高まっていく。これにより、ベルマウス構成部材を締め付けていくような感覚でモーターフランジ部に固定することができる。
【0022】
第4の発明は、前記係合孔の上下方向の寸法は、前記第1突出部の上下方向の寸法よりも長く設定されていることを特徴とする。
【0023】
これにより、非固定状態のときにベルマウス構成部材をモーターフランジ部に対して上下方向に変位させることができる。
【0024】
第5の発明は、前記仮保持部は、前記支持脚部の下部から前記回転軸の径方向へ突出する突出部と、前記モーターフランジ部の上面に設けられたホルダ部とを備えており、前記ホルダ部は、前記モーターフランジ部の上面から上方に間隔をあけて設けられ、前記モーターフランジ部の上面との間に前記突出部の周方向からの挿入が可能な隙間を形成するホルダ側板部と、前記モーターフランジ部の上面における前記ホルダ側板部と対向する部分に形成された凸部とを有しており、前記凸部の先端面と前記ホルダ側板部の下面との間隔は、前記突出部の上下方向の寸法と同じまたは前記突出部の上下方向の寸法よりも狭く設定され、前記ホルダ側板部の下面における前記凸部から前記回転軸の周方向に離れた部分と、前記モーターフランジ部の上面との間隔は、前記突出部の上下方向の寸法よりも広く設定されていることを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、ベルマウス構成部材の支持脚部の突出部を、モーターフランジ部のホルダ部のホルダ側板部と、当該モーターフランジ部の上面との間に挿入し、凸部の先端面とホルダ側板部の下面との間に配置すると、凸部の先端面とホルダ側板部の下面とによって挟まれて上下方向への移動が規制され、ベルマウス構成部材がモーターフランジ部に固定される。これにより、送風用ファンのバランス調整を行う際にベルマウス構成部材ががたつくことはない。
【0026】
一方、ベルマウス構成部材を回動させて、支持脚部の突出部を、ホルダ側板部の下面と、モーターフランジ部の上面との間隔の広い部分に配置すると、突出部がモーターフランジ部に対して上下方向に移動可能になる。これにより、ベルマウス構成部材を非固定状態にすることができる。
【0027】
第6の発明は、前記ホルダ部は、前記モーターフランジ部の上面から上方へ突出する基部を備え、前記基部の上部には、前記ホルダ側板部が一体成形されていることを特徴とする。
【0028】
この構成によれば、ホルダ側板部を基部と共にモーターフランジ部に一体成形することができる。また、ベルマウス構成部材を回動させていき、突出部が基部に当接すると、ベルマウス構成部材の回動が停止する。つまり、基部をストッパとして利用できる。
【0029】
第7の発明は、前記ベルマウス構成部材は、前記モーターフランジ部が前記ケーシングに組み付けられた状態にあるときに、前記ケーシングと前記モーターフランジ部とによって上下方向に挟持されていることを特徴とする。
【0030】
この構成によれば、モーターフランジ部がケーシングに組み付けられると、ベルマウス構成部材がケーシングとモーターフランジ部とによって上下方向に挟持されるので、ベルマウス構成部材のがたつきが抑制される。これにより、運転時の振動及び異音の発生を防止できる。
【0031】
第8の発明は、前記ベルマウス構成部材は、前記ベルマウス開口部が形成されるとともに、前記送風用ファンの径方向に延びるベルマウス板部を有し、前記ベルマウス板部には、前記ケーシングに形成された突条部に嵌合する嵌合部が設けられていることを特徴とする。
【0032】
この構成によれば、ベルマウス板部の嵌合部がケーシングの突条部に嵌合した状態でベルマウス構成部材の位置決めを行うことができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、ベルマウス構成部材をケーシングとは別部材にする場合に、各部のバラつきを吸収可能にして組付作業を容易にしながら、送風用ファンのバランス調整の精度を高めることができるとともに、バランス調整時の作業性を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の実施形態1に係る車両空調用送風装置を後方から見た斜視図である。
図2】上記車両空調用送風装置の背面図である。
図3】上記車両空調用送風装置の左側面図である。
図4】送風用ファン、ベルマウス構成部材及びモーターを省略した車両空調用送風装置の分解斜視図である。
図5】送風用ファン、ベルマウス構成部材及びモーターの分解斜視図である。
図6】送風用ファン、ベルマウス構成部材及びモーターを一体化した状態を示す斜視図である。
図7】ベルマウス構成部材をモーターに仮保持した状態を示す斜視図である。
図8】実施形態1のホルダ部を上方から見た斜視図である。
図9】脚部の下側部分を径方向外側から見た側面図である。
図10A】脚部をホルダ部に挿入する直前を示す側面図である。
図10B】脚部の径方向突出部をホルダ部に係合させて非固定状態にした場合を示す図10A相当図である。
図11】脚部を下端位置まで変位させて非固定状態にした場合を示す図10A相当図である。
図12】固定状態にした場合を示す図10A相当図である。
図13】固定状態した仮保持部を上方から見た斜視図である。
図14A】実施形態1に係る周方向突出部の下部の拡大図である。
図14B】実施形態1の変形例に係る図14A相当図である。
図15】本発明の実施形態2に係る図7相当図である。
図16】実施形態2に係る仮保持部による仮保持前の状態を示す斜視図である。
図17A】実施形態2に係る仮保持部が固定状態にある場合を示す斜視図である。
図17B】実施形態2に係る仮保持部が非固定状態にある場合を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0036】
(実施形態1)
図1は本発明の実施形態1に係る車両空調用送風装置1を車両後側から見た斜視図であり、また図2は車両空調用送風装置1を後側から見た図であり、また図3は車両空調用送風装置1を左から見た図である。この車両空調用送風装置1は、例えば自動車の車室内に配設されて空調用空気を送風するためのものであり、図示しない空調ユニット及び冷凍サイクル装置と共に車両用空調装置を構成している。
【0037】
空調ユニットは、例えば冷凍サイクルの蒸発器からなる冷却用熱交換器と、ヒータコアからなる加熱用熱交換器と、エアミックスダンパと、吹出方向切替ダンパと、これらを収容する空調ケーシングとを備えている。車両空調用送風装置1から送風された空調用空気は、空調ケーシングの内部に導入されて冷却用熱交換器及び加熱用熱交換器を通過して所望温度の空調風とされた後、吹出方向切替ダンパによって設定された吹出モードに応じて車室の各部に供給される。空調風の温度調整は、エアミックスダンパによって設定される加熱用熱交換器の空気通過量よって行われる。
【0038】
尚、この実施形態では、車両前側を単に「前」といい、車両後側を単に「後」といい、車両左側を単に「左」といい、車両右側を単に「右」というものとするが、これは説明の便宜を図るために定義するだけであり、実際の使用状態や設置状態、組付時の姿勢等を限定するものではない。
【0039】
車両空調用送風装置1は、図示しないが車室内の前端部に設けられているインストルメントパネルの内部に空調ユニットと共に収容されている。空調ユニットは、インストルメントパネルの内部において左右方向の略中央部に配置される一方、車両空調用送風装置1は、インストルメントパネルの内部において空調ユニットの助手席側(右ハンドル車の場合は左側、左ハンドル車の場合は右側)に配置される。この実施形態では、車両空調用送風装置1が車両の右側に配置される場合について説明するが、車両の左側に配置される場合には、この実施形態の構造と左右対称にすればよいので、詳細な説明は省略する。
【0040】
(車両の構成)
この車両空調用送風装置1が配設される車両は、図示しないが、エンジンルームと、車室とを区画するためのダッシュパネル(区画部材)を備えている。エンジンルームは車両の前部に設けられていて、エンジンや変速機等が配設されるようになっている。ダッシュパネルは略上下方向に延びている。ダッシュパネルの上部には、左右方向に延びるカウルが配設されている。カウルには、車室外に連通する連通口が形成されている。カウルは車室外に配設されているものなので、カウルには、雨水や洗車時の水、雪等が入ることがある。
【0041】
(車両空調用送風装置の構成)
図4図5にも示すように、車両空調用送風装置1は、送風ケーシング2と、送風用ファン3と、送風用ファン3を回転駆動するためのモーター5と、第1内外気切替ダンパ6と、第2内外気切替ダンパ7と、エアフィルタ8(図2に破線で示す)と、内外気切替用アクチュエータ9(図1図2及び図4に示す)とを備えている。送風用ファン3と、第1内外気切替ダンパ6及び第2内外気切替ダンパ7と、エアフィルタ8とは、送風ケーシング2に収容されている。
【0042】
送風ケーシング2の上側には、図2等に示す左側内気導入口2a及び右側内気導入口2bと、図3に示す外気導入口2cとが形成されている。図2に示すように、左側内気導入口2aは、送風ケーシング2の上側における左右方向中央部よりも右寄りの部位から左端部近傍に亘って広い範囲に形成されており、車室内に開口している。また、右側内気導入口2bは、送風ケーシング2の上側における左右方向中央部よりも右寄りの部位から右端部近傍に亘って形成されており、車室内に開口している。左側内気導入口2aの左右方向の寸法は右側内気導入口2bの左右方向の寸法よりも長く設定されている。左側内気導入口2a及び右側内気導入口2から車室内の空気(内気)を送風ケーシング2の内部に導入することが可能になっている。左側内気導入口2aの開口面積が右側内気導入口2bの開口面積よりも広く設定されている。
【0043】
図3に示すように、送風ケーシング2の上側には、外気導入ダクト部2dが前方へ延びるように該送風ケーシング2に一体成形されている。この外気導入ダクト部2dの前端部に左右方向に長い外気導入口2cが開口している。外気導入ダクト部2dは上記カウルと接続されており、外気導入口2cはカウルを介して車室外と連通している。外気導入口2cから車室外の空気(外気)を送風ケーシング2の内部に導入することが可能になっている。
【0044】
図2に示すように、送風ケーシング2の内部における左側内気導入口2a、右側内気導入口2b及び外気導入口2cよりも下側には、上記フィルタ8が収容されている。図4ではフィルタ8を省略している。フィルタ8は、板状に形成されており、水平方向に延びるように配置されている。フィルタ8の周縁部が送風ケーシング2の内部に設けられたフィルタ支持部(図示せず)によって支持されている。尚、フィルタ8は、例えば一般的な不織布等で構成することができる。
【0045】
図4に示すように、送風ケーシング2の内部におけるフィルタ8よりも上側には、区画壁部2gが設けられている。区画壁部2gは、上下方向に延びている。図1に示すように、送風ケーシング2の内部には、区画壁部2gよりも左側に第1空気通路R1が形成され、区画壁部2gよりも右側に第2空気通路R2が形成されている。第1空気通路R1の左右方向の幅は、第2空気通路R2の左右方向の幅よりも広く設定されており、第1空気通路R1の断面積が第2空気通路R2の断面積よりも広くなっている。
【0046】
第1空気通路R1の上流端部(上端部)は、左側内気導入口2aと外気導入口2cとに連通している。また、第2空気通路R2の上流端部(上端部)は、右側内気導入口2bと外気導入口2cとに連通している。第1空気通路R1及び第2空気通路R2は、共通の外気導入口2cに連通しているが、内気導入口については互いに別の内気導入口2a、2bに連通している。これにより、第1空気通路R1及び第2空気通路R2の両方に、内気と外気との導入が可能な構造になる。
【0047】
図4に示すように、第1内外気切替ダンパ6は、送風ケーシング2の内部において区画壁部2gよりも左側に配設されており、閉塞板部6aと軸部6bと端板部6cとを備えている。閉塞板部6aは、左右方向に延びている。軸部6bも左右方向に延びており、軸部6bは送風ケーシング2の側壁部に対して回動可能に支持されている。端板部6cは、軸部6bの左右方向の両端近傍に設けられている。端板部6cは、軸部6bから径方向に延び、閉塞板部6aの左右両端部に連なっている。閉塞板部6aと軸部6bと端板部6cは一体成形されている。第1内外気切替ダンパ6は、軸部6bの中心線周りに回動することにより、前に向けて回動した状態と、後に向けて回動した状態とに切り替えられる。第1内外気切替ダンパ6が後に向けて回動した状態になると、左側内気導入口2aを閉塞して外気導入口2cを開放するので、内気の流入が遮断されて外気が第1空気通路R1の上流部に導入される。一方、第1内外気切替ダンパ6が前に向けて回動した状態になると、左側内気導入口2aを開放して外気導入口2cを閉塞するので、外気の流入が遮断されて内気が第1空気通路R1の上流部に導入される。
【0048】
第2内外気切替ダンパ7は、送風ケーシング2の内部において区画壁部2gよりも右側に配設されており、第1内外気切替ダンパ6と同様に、閉塞板部7aと軸部7bと端板部7cとを備えている。第2内外気切替ダンパ7は、軸部7bの中心線周りに回動することにより、後に向けて回動した状態と、前に向けて回動した状態とに切り替えられる。第2内外気切替ダンパ7が後に向けて回動した状態になると、右側内気導入口2bを閉塞して外気導入口2cを開放するので、内気の流入が遮断されて外気が第2空気通路R2の上流部に導入される。一方、第2内外気切替ダンパ7が前に向けて回動した状態になると、右側内気導入口2bを開放して外気導入口2cを閉塞するので、外気の流入が遮断されて内気が第2空気通路R2の上流部に導入される。
【0049】
第1内外気切替ダンパ6及び第2内外気切替ダンパ7は、図1及び図2等に示す内外気切替用アクチュエータ9によって駆動される。内外気切替用アクチュエータ9は、図示しないが、空調制御装置によって制御される。第1内外気切替ダンパ6の軸部6b及び第2内外気切替ダンパ7の軸部7bには、リンク部材9a(図1図3に示す)が係合しており、このリンク部材9aを内外気切替用アクチュエータ9によって回動させることにより、第1内外気切替ダンパ6及び第2内外気切替ダンパ7を連動させることができるようになっている。リンク部材9aを用いた第1内外気切替ダンパ6及び第2内外気切替ダンパ7の連動構造については従来から周知の手法を利用することができるので、詳細な説明は省略する。また、リンク部材9aを用いることなく、第1内外気切替ダンパ6及び第2内外気切替ダンパ7を別々に内外気切替用アクチュエータ9で駆動するようにしてもよい。
【0050】
この実施形態では、第1内外気切替ダンパ6及び第2内外気切替ダンパ7を以下のように駆動する。すなわち、第1内外気切替ダンパ6を後に向けて回動させるとともに第2内外気切替ダンパ7を後に向けて回動させる外気導入モードと、第1内外気切替ダンパ6を前に向けて回動させるとともに第2内外気切替ダンパ7を前に向けて回動させる内気循環モードと、第1内外気切替ダンパ6を後に向けて回動させるとともに第2内外気切替ダンパ7を前に向けて回動させる内外気2層流モードとの3つのモードのうち、任意のモードに切り替えることができるようになっている。
【0051】
外気導入モードでは、第1内外気切替ダンパ6が後に向けて回動するとともに第2内外気切替ダンパ7が後に向けて回動するので、第1空気通路R1及び第2空気通路R2には外気のみが導入される。内気循環モードでは、第1内外気切替ダンパ6が前に向けて回動するとともに第2内外気切替ダンパ7が前に向けて回動するので、第1空気通路R1及び第2空気通路R2には内気のみが導入される。内外気2層流モードでは、第1内外気切替ダンパ6が後に向けて回動するとともに第2内外気切替ダンパ7が前に向けて回動するので、第1空気通路R1には外気が導入され、第2空気通路R2には内気が導入される。内外気2層流モードは、暖房時に使用されるモードである。
【0052】
内気循環モード、外気導入モード及び内外気2層流モードの切替は、従来から周知のオートエアコン制御によって行われる。内外気2層流モードにすることで、冬季には比較的乾燥した外気をデフロスト吹出口に供給してフロントウインドガラスの曇りを良好に晴らしながら、比較的暖かい内気をヒート吹出口に供給して暖房効率を向上させることができる。
【0053】
送風ケーシング2の内気導入口2a、2b及び外気導入口2cよりも下側には、送風用ファン3が収容されるスクロールケーシング20が設けられている。図3に示すように、スクロールケーシング20は、送風用ファン3における上側羽根(第1羽根)30が設けられた部分が収容される上側スクロールケーシング21と、送風用ファン3における下側羽根(第2羽根)31が設けられた部分が収容される下側スクロールケーシング22とに分割されている。上側スクロールケーシング21の下部と下側スクロールケーシング22の上部とが嵌合することによって上側スクロールケーシング21と下側スクロールケーシング22とが一体化するようになっている。尚、送風用ファン3の上側羽根30及び下側羽根31はブレードと呼ぶこともできる。
【0054】
また、図4に示すように、スクロールケーシング20の下部には、底壁部材23が設けられている。底壁部材23は、スクロールケーシング20を構成する部材である。上側スクロールケーシング21、下側スクロールケーシング22及び底壁部材23によってスクロールケーシング20が構成されている。さらに、スクロールケーシング20の内部には、該スクロールケーシング20の内部を上下方向に仕切る仕切板24が配設されており、この仕切板24もスクロールケーシング20を構成する部材である。
【0055】
図4に示すように、上側スクロールケーシング21の上壁部には、送風ケーシング2の内部で開口するように、略円形の第1ベルマウス開口部(上側ベルマウス開口部)21aが形成されている。第1ベルマウス開口部21aは、フィルタ8の下面と対向するように配置されており、第1空気通路R1と連通している。第1ベルマウス開口部21aの直下方には、送風用ファン3の上側が位置しており、従って、第1ベルマウス開口部21aは送風用ファン3の上側とも対向している。送風用ファン3の上側は空気の吸込側であり、この送風用ファン3の上側には、当該送風用ファン3の上方から下方へ向けて空気が吸い込まれるようになっている。
【0056】
第1空気通路R1は、第1ベルマウス開口部21aを介して上側スクロールケーシング21の内部と連通しており、この上側スクロールケーシング21の内部は第1空気通路R1の一部となっている。仕切板24よりも上方が第1空気通路R1とされている。送風用ファン3における上側羽根30が設けられた部分は、上側スクロールケーシング21の内部において第1空気通路R1に配置されている。第1送風用ファン3が上側スクロールケーシング21の内部で回転すると、送風用ファン3における上側羽根30が設けられた部分によって第1空気通路R1内の空気が空調用空気として送風される。つまり、送風用ファン3における上側羽根30が設けられた部分は、上層において空気の流れを形成する部分である。
【0057】
図4に示すように、仕切板24には、送風用ファン3を第2空気通路R2から第1空気通路R1へ向けて挿入する貫通孔24aが形成されている。貫通孔24aの径は、送風用ファン3の上側羽根30が設けられた部分の外径よりも大きくなっている。これにより、送風用ファン3の上側部分を貫通孔24aの下から上に向けて当該貫通孔24aに挿入することが可能になる。
【0058】
図3に示すように、上側スクロールケーシング21の左側壁部の前側には、上記空調ユニットに接続される上側空気吹出口21cが形成されている。上側空気吹出口21cには、第1空気通路R1の下流端が連通しており、第1空気通路R1内の空気は上側空気吹出口21cから上側スクロールケーシング21の外部に吹き出すようになっている。
【0059】
図4に示すように、第2空気通路R2は、上側スクロールケーシング21の内部の右側を下方へ向けて延びており、第2空気通路R2の下端部は底壁部材23に達している。下側スクロールケーシング22の下壁部は底壁部材23から上方に離れており、下側スクロールケーシング22の下壁部と底壁部材23との間に、第2空気通路R2の下端部が位置している。
【0060】
スクロールケーシング20の内部には、図5図7に示すベルマウス構成部材60が設けられている。このベルマウス構成部材60は、車両空調用送風装置1を構成する部材であり、スクロールケーシング20とは別部材で構成されている。スクロールケーシング20と別体のベルマウス構成部材60とすることで、ベルマウス構成部材60の成形自由度が向上するという利点がある。尚、スクロールケーシング20やベルマウス構成部材60は樹脂製の部材である。
【0061】
ベルマウス構成部材60は、送風用ファン3の下側と対向するように配置される第2ベルマウス開口部(下側ベルマウス開口部)61aが形成されるとともに送風用ファン34の径方向に延びるベルマウス板部61と、複数の脚部(支持脚部)62とを有している。ベルマウス板部61及び脚部62は、例えば射出成形法等により一体成形されている。
【0062】
図4に示すように、下側スクロールケーシング22の下壁部には、ベルマウス構成部材60が取り付けられる略円形の取付孔22dが形成されている。取付孔22dは、第1ベルマウス開口部21aと同心上に位置しており、第2ベルマウス開口部61aよりも大きく開口している。下側スクロールケーシング22の取付孔22dの周縁部には、下方へ突出する突条部22eが形成されている。突条部22eは、取付孔22dと同心上に、該取付孔22dの周方向に連続して延びている。
【0063】
図5等に示すように、第2ベルマウス開口部61aは略円形であり、平面視で第1ベルマウス開口部21aと同心上に位置するように配置される。第2ベルマウス開口部61aの径は、第1ベルマウス開口部21aの径よりも大きくすることができる。ベルマウス板部61は、第2ベルマウス開口部61aを有しているので、該ベルマウス板部61の内縁部が略円形をなすように形成されることになる。ベルマウス板部61の外縁部も略円形をなすように形成されている。ベルマウス板部61は全体として円環状に形成され、ベルマウス板部61の幅は、当該ベルマウス板部61の周方向全体で略同じに設定されている。
【0064】
ベルマウス板部61の内周側は、第2ベルマウス開口部61aへ近づくほど上に位置するように湾曲形成されている。ベルマウス板部61における上記湾曲形成された部分よりも外周側は、平坦に形成されており、この平坦に形成された部分には、複数の排水孔61bが互いに周方向に間隔をあけて形成されている。すなわち、ベルマウス板部61における第2ベルマウス開口部61aよりも外周側には、該ベルマウス板部61の上面の水を該ベルマウス板部61の下方へ排水するための排水孔61bが形成されており、この排水孔61bの形成によってベルマウス板部61の上面に水が溜まったままにならないようにしている。
【0065】
排水孔61bは、ベルマウス板部61の周方向、即ち、送風用ファン3の周方向に等間隔に形成することができるが、不等間隔であってもよい。また排水孔61bの数は、この実施形態では3つとしているが、1つまたは2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。排水孔61bは円形、楕円形の他、スリット形状、矩形状等であってもよい。
【0066】
ベルマウス板部61のベルマウス板部61には、下側スクロールケーシング22の突条部22eに嵌合する嵌合部61cが設けられている。嵌合部61cは、上方に開放する凹条部で構成されており、第2ベルマウス開口部61aを囲むように、該第2ベルマウス開口部61aの周方向に連続している。嵌合部61cの外周壁部61dは、上方へ突出するとともに、第2ベルマウス開口部61aの周方向に連続して延びている。下側スクロールケーシング22の突条部22eが嵌合部61cに差し込まれることにより、嵌合部61cが突条部22eに嵌合した状態になる。
【0067】
脚部62は、ベルマウス板部61の下面における排水孔61bの開口の周囲から下方へ延びており、ベルマウス板部61を下方から支持する。脚部62は、ベルマウス開口部61aを所定高さに配置する部分でもある。脚部62は、各排水孔61bの開口の周囲から下方へ延びているので、この実施形態では3つ設けられることになる。脚部62の数と排水孔61bの数とは一致させなくてもよく、一方が他方より多くてもよい。脚部62の数は3つ以上とするのが好ましい。
【0068】
脚部62は、送風用ファン3の径方向内方に開放する凹状断面を有している。これにより、送風用ファン3の回転時に該送風用ファン3の径方向外方から内方へ向けて流れる空気が脚部62の内方へ流れにくくなるので、該脚部62は、排水孔61bの開口の周囲に風が達するのを抑制する遮風部として作用する。
【0069】
脚部62の下端部は、スクロールケーシング20の底面に接触している。この実施形態では、詳細は後述するが、モーター5が有するモーターフランジ部5fがカバー部5dの外周部で構成されているので、脚部62の下端部は、スクロールケーシング20の底面となるモーターフランジ部5fの上面に対して上方から接触して当該脚部62がモーターフランジ部5fに支持されることになる。よって、ベルマウス構成部材60はカバー部5dに対して支持される。
【0070】
第2空気通路R2の下端部は、第2ベルマウス開口部61aを介して下側スクロールケーシング22の内部と連通しており、この下側スクロールケーシング22の内部は第2空気通路R2の一部となっている。仕切板24よりも下方が第2空気通路R2とされている。送風用ファン3における下側羽根31が設けられた部分は、下側スクロールケーシング22の内部において第2空気通路R2に配置されている。送風用ファン3が回転すると、送風用ファン3における下側羽根31が設けられた部分によって第2空気通路R2内の空気が空調用空気として送風される。つまり、送風用ファン3における下側羽根31が設けられた部分は、下層において空気の流れを形成する部分である。
【0071】
図1及び図3に示すように、下側スクロールケーシング22の左側壁部の前側には、上記空調ユニットに接続される下側空気吹出口22cが形成されている。下側空気吹出口22cは、上側空気吹出口21cの真下に位置している。下側空気吹出口22cには、第2空気通路R2の下流端が連通しており、第2空気通路R2内の空気は下側空気吹出口22cから下側スクロールケーシング22の外部に吹き出すようになっている。
【0072】
図4に示すように、底壁部材23は、下側スクロールケーシング22の下端部を覆うように形成された板状の部分を有するカバー状の部材である。底壁部材23の周縁部は、下側スクロールケーシング22の下端部の周縁部に嵌合するように形成されており、底壁部材23の周縁部と、下側スクロールケーシング22の下端部の周縁部との間から空気が漏れないようになっている。
【0073】
底壁部材23には、排水通路(図示せず)が形成されている。下層側に溜まった水は、底壁部材23の排水通路から外部に排水される。
【0074】
図2及び図3に示すように、底壁部材23には、モーター5が取り付けられている。図5に示すように、モーター5の周縁部には、モーター取付部材5aが設けられている。このモーター取付部材5aにネジ等の締結部材Sを挿通させて底壁部材23のネジ孔(図示せず)に螺合させることができる。モーター5の取付構造は、締結部材Sを用いた構造でなくてもよく、いわゆるツイストロック構造であってもよい。
【0075】
図5等に示すように、モーター5の上側に送風用ファン3が配置されている。モーター5は、ローター等を内蔵した本体部5bと、上下方向に延びる回転軸5cと、本体部5bを上方から覆う樹脂製のカバー部5dとを備えている。回転軸5cは、本体部5bの上端部から上方へ突出してカバー部5dを貫通し、更に該カバー部5dから上方へ突出するように設けられており、第1ベルマウス開口部21a及び第2ベルマウス開口部61aと同心上に配置されている。回転軸5cの上端部は、第2ベルマウス開口部61aよりも上方に位置している。
【0076】
カバー部5dには、回転軸5cの周囲を囲む円弧状部5eが設けられている。円弧状部5eは、回転軸5cと同心状に配置される。回転軸5cは、円弧状部5eの上端部よりも上方へ突出している。円弧状部5eは1つ設けてもよいし、2つ以上設けてもよい。
【0077】
回転軸5cには、送風用ファン3の中心部が固定されており、送風用ファン3と回転軸5cとは一体に回転するようになっている。したがって、モーター5の本体部5bに電圧が印加されると、回転軸5cの回転力が送風用ファン3に伝達され、送風用ファン3における上側羽根30が設けられた部分が第1空気通路R1内で回転し、送風用ファン3における下側羽根31が設けられた部分が第2空気通路R2内で回転する。モーター5の本体部5bには、図示しない空調制御装置が接続されており、空調制御装置によって所望の回転数となるように電圧が印加される。
【0078】
モーター5の下部には、回転軸5cの径方向に延びるモーターフランジ部5fが設けられている。モーターフランジ部5fは、スクロールケーシング20の底壁部材23に対して、モーター取付部材5aと底壁部材23とで上下方向にパッキン(図示せず)を介して挟持されるようにして固定される。モーターフランジ部5fは、カバー部5dの外周部で構成されており、図9等に示すように、スクロールケーシング20の底壁部となっている。
【0079】
(仮保持部の構成)
図6及び図7に示すように、車両空調用送風装置1は、モーター5のモーターフランジ部5fがスクロールケーシング20から取り外された状態にあるときに、ベルマウス構成部材60の脚部62をモーターフランジ部5fに仮保持するための仮保持部70を備えている。仮保持部70は、脚部62ごとに設けられており、従って、本実施形態では3つの仮保持部70が設けられている。
【0080】
仮保持とは、ベルマウス構成部材60をモーターフランジ部5fに対して容易に変位可能にしておきながら、ベルマウス構成部材60がモーターフランジ部5fから離脱するのを抑制してベルマウス構成部材60とモーターフランジ部5fとを一体化しておくことである。仮保持しておく理由は、ベルマウス構成部材60をスクロールケーシング20に組み付ける前に、モーターフランジ部5fとを一体化してアッセンブリ化して組付ライン上での工数を削減するためである。したがって、ベルマウス構成部材60とモーターフランジ部5fをスクロールケーシング20に組み付ける前にベルマウス構成部材60がモーターフランジ部5fから離脱しない程度に両者が一体化していればよく、故意にベルマウス構成部材60をモーターフランジ部5fから外そうとすれば破損等を招くことなく、外すことが可能であり、このときドライバー等の工具は不要である。
【0081】
一方、ベルマウス構成部材60とモーターフランジ部5fをスクロールケーシング20に組み付けた後は、ベルマウス構成部材60はスクロールケーシング20とモーターフランジ部5fとによって上下方向に挟持されるので、仮保持部70による保持は必要なくなる。
【0082】
また、ベルマウス構成部材60をスクロールケーシング20とは別部材にすると、部品点数が増加するので、狙いとする位置に組み付けることが困難となるおそれがある。すなわち、ベルマウス構成部材60をスクロールケーシング20とは別部材にしてモーター5のモーターフランジ部5fに組み付けるようにした場合、少なくともベルマウス構成部材60、スクロールケーシング20及びモーターフランジ部5fの3つの部材の組付が必要になり、しかも、各部材には製造上の公差範囲内で形状の誤差が許容されているため、モーターフランジ部5fとベルマウス構成部材60とのバラつき、ベルマウス構成部材60とスクロールケーシング20とのバラつき、モーターフランジ部5fとスクロールケーシング20とのバラつきが発生してしまう。このような3つの部分にそれぞれ発生するバラつきを吸収させようとすると、組付作業自体が困難になるとともに、ベルマウス構成部材60、スクロールケーシング20及びモーターフランジ部5fの少なくとも1つの部品に対して無理な力を作用させてしまい、当該部品の変形や破損を招くことも考えられる。このことに対して、本実施形態の仮保持部70では、スクロールケーシング20への組付前に、ベルマウス構成部材60をモーターフランジ部5fに対して変位可能にしている。
【0083】
以下、仮保持部70について詳細に説明する。スクロールケーシング20への組付前、ベルマウス構成部材60は、モーターフランジ部5fに対して回転軸5c周りに回動可能になっており、作業者はベルマウス構成部材60を回転軸5c周りに回動操作することができる。仮保持部70は、ベルマウス構成部材60の回転軸5c周りの回動操作により、脚部62をモーターフランジ部5fに対して固定した固定状態と、脚部62をモーターフランジ部5fに対して非固定にして保持しておく非固定状態とに切り替えられるように構成されている。
【0084】
すなわち、図7等に示すように、仮保持部70は、脚部62から突出する径方向突出部(第1突出部)71及び周方向突出部(第2突出部)72と、モーターフランジ部5fの上面から上方へ突出するホルダ部73とを備えている。径方向突出部71は、脚部62の下部における回転軸5cの径方向外面から径方向外方へ突出する凸部で構成されている。周方向突出部72は、脚部62から回転軸5cの周方向へ突出して上下方向に延びる突条部で構成されている。図14Aに拡大して示すように、周方向突出部72の下面は、回転軸5cの周方向一方向へ向かって徐々に高くなる傾斜面72aを有している。この傾斜面72aは、角度の異なる2以上の傾斜面を連続させて構成されていてもよい。
【0085】
図14Bに示す変形例のように、傾斜面72aの代わりに、湾曲面72cを設けてもよい。また、傾斜面と湾曲面とを組み合わせてもよい。
【0086】
また、周方向突出部72の下面における傾斜面72aよりも周方向他方には、略水平方向に延びる基端面72bが形成されている。尚、回転軸5cの周方向は、図7に矢印Aで示しており、右回りとなる方向を周方向一方と定義し、左回りとなる方向を周方向他方と定義する。図8図9においても同様に示している。本明細書では、回転軸5cの周方向を単に周方向と呼ぶことがあり、また、回転軸5cの径方向を単に径方向と呼ぶことがある。
【0087】
図8に示すように、ホルダ部73は、モーターフランジ部5fと一体成形されており、ベルマウス構成部材60の脚部62の下部が挿入される筒状に形成されている。ホルダ部73は、径方向外側に位置する外壁部74と、外壁部74の周方向一方の端部から径方向内方へ延びる一側壁部75と、外壁部74の周方向他方の端部から径方向内方へ延びる他側壁部76とを備えている。ベルマウス構成部材60の脚部62の下部は、一側壁部75と他側壁部76との間に挿入され、この状態で外壁部74は脚部62の径方向外側に配置される。
【0088】
外壁部74の下部には、係合孔74aが形成されている。係合孔74aは、外壁部74を厚み方向に貫通するように形成されている。図10Bに示すように、脚部62の下部をホルダ部73に挿入すると、係合孔74aの内方に脚部62の径方向突出部71が配置されて径方向突出部71の上面が係合孔74aの上縁部に対して下方から当接して係合する。径方向突出部71の高さは、アッセンブリ化した状態でスクロールケーシング20に組み付ける時にベルマウス構成部材60がモーターフランジ部5fから離脱しない程度の高さにしておけばよい。
【0089】
係合孔74aの上下方向の寸法は、径方向突出部71の上下方向の寸法よりも長く設定されている。これにより、径方向突出部71は係合孔74a内で上下方向に移動可能になる(図11参照)。また、係合孔74aの周方向の寸法は、径方向突出部71の周方向の寸法よりも長く設定されている。これにより、係合孔74aは、その上縁部が径方向突出部71の上面に当接して係合した状態で、当該径方向突出部71の周方向への移動を許容することができるので、径方向突出部71は係合孔74a内で周方向に移動可能になる。つまり、径方向突出部71を係合孔74a内に配置した状態で、ベルマウス構成部材60をモーターフランジ部5fに対して径方向及び周方向の両方向に変位させることができるので、ベルマウス構成部材60がモーターフランジ部5fに対して非固定状態で一体化される。尚、非固定状態とは、ひと所に定まらず変位可能な状態であり、上述したようにベルマウス構成部材60がモーターフランジ部5fに対して動くことができる状態である。
【0090】
図8に示すように、一側壁部75の径方向内側部分は外側部分に比べて低くなっており、この径方向内側部分の上面75aは、周方向突出部72の下面に当接可能な当接部とされている。ベルマウス構成部材60を周方向一方へ回動操作すると、脚部62の周方向突出部72が同方向へ移動していき、周方向突出部72の傾斜面72aが一側壁部75の上面75aに当接する。周方向突出部72が同方向へ更に移動すると、傾斜面72aが一側壁部75の上面75aに当接していることによってベルマウス構成部材60が上方へ変位していき、径方向突出部71の上面が係合孔74aの上縁部に接近していく。そして、周方向突出部72が同方向へ更に移動して周方向突出部72の基端面72bが一側壁部75の上面75aに当接すると、径方向突出部71の上面が係合孔74aの上縁部に係合する(図12及び図13参照)。すなわち、ベルマウス構成部材60を固定状態となるまで一方向へ回動させた時に、径方向突出部71の上面が係合孔74aの上縁部に係合するとともに、周方向突出部72の基端面72bが一側壁部75の上面75aに当接するので、ベルマウス構成部材60の上下方向に変位が阻止される。加えて、径方向突出部71の上面が係合孔74aの上縁部に係合し、かつ、周方向突出部72の基端面72bが一側壁部75の上面75aに当接していることで、それらの間の摩擦力が大きくなり、ベルマウス構成部材60が回動方向にも変位し難くなる。したがって、ベルマウス構成部材60が固定状態になる。
【0091】
一方、固定状態にあるベルマウス構成部材60を周方向他方へ向けて回動させることで非固定状態にすることができる。ベルマウス構成部材60を非固定状態となるまで回動した時に、周方向突出部72が一側壁部75の上面75aから離れるので、ベルマウス構成部材60の周方向及び上下方向の変位が可能になる。この時の各方向への変位量は、例えば1mm以上3mm以下の範囲で設定することができる。
【0092】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、実施形態1によれば、左側内気導入口2a及び右側内気導入口2bから内気が導入される内気循環モードでは、送風用ファン3が回転することで、両内気導入口2a、2bから導入された内気が上側羽根30及び下側羽根31によって第1空気通路R1及び第2空気通路R2を流れて空調用空気として熱交換器へ送風される。また、第1内外気切替ダンパ6及び第2内外気切替ダンパ7の動作によって両内気導入口2a、2bを閉じ、かつ、外気導入口2cを開くと、外気導入口2cから外気が導入される外気導入モードになる。外気導入モードでは、送風用ファン3が回転することで、外気導入口2cから導入された外気が第1空気通路R1及び第2空気通路R2を流れて空調用空気として熱交換器へ送風される。さらに、内外気切替ダンパ6、7の動作によって両内気導入口2a、2b及び外気導入口2cを開くと、内外気2層流モードになる。つまり、外気導入モードと、内気循環モードと、内外気2層流モードとのうち、任意のモードに切り替えて送風することができる。
【0093】
また、ベルマウス構成部材60をスクロールケーシング20に組み付ける時には、モーターフランジ部5fをスクロールケーシング20に組み付ける前に、仮保持部70によってベルマウス構成部材60の脚部62をモーターフランジ部5fに仮保持しておくことができる。このとき、脚部62をモーターフランジ部5fに対して非固定状態で一体化しておくことで、ベルマウス構成部材60はモーターフランジ部5fに対して変位可能になる。従って、モーターフランジ部5fをスクロールケーシング20に取り付ける際に、モーターフランジ部5fとベルマウス構成部材60とのバラつき、ベルマウス構成部材60とスクロールケーシング20とのバラつき、モーターフランジ部5fとスクロールケーシング20とのバラつきが発生していても、ベルマウス構成部材60をモーターフランジ部5fに対して変位させることによって各部のバラつきを吸収してスクロールケーシング20に対してモーターフランジ部5f及びベルマウス構成部材60を無理なく組み付けることが可能になる。
【0094】
また、送風用ファン3のバランス調整を行う際には、ベルマウス構成部材60を回動操作することで、ベルマウス構成部材60の脚部62をモーターフランジ部5fに対して固定した固定状態にすることができる。これにより、送風用ファン3を所定の回転数で回転させたときに振動が発生しても、ベルマウス構成部材60ががたつくことはなく、バランス調整の精度を高めることができる。さらに、ベルマウス構成部材60ががたつかないので、作業者によるバランス調整作業が行い易くなる。
【0095】
また、送風時には、第2ベルマウス開口部61aが送風用ファン3の下側と対向するように配置されるので、送風効率が向上する。そして、例えば、雨水や洗車時の水が外気導入口2cからスクロールケーシング20の内部に浸入すると、ベルマウス板部61の上面に溜まる場合がある。ベルマウス板部61の上面の水は、ベルマウス板部61の排水孔61bから該ベルマウス板部61の下方へ流れる。
【0096】
このとき、ベルマウス板部61の下面における排水孔61bの開口の周囲には、下方へ延びる脚部62が設けられているので、排水孔61bの開口の周囲に風が達するのが抑制される。よって、ベルマウス板部61の下方へ流れた水が、送風用ファン3に吸い込まれる空気によって巻き上げられにくくなるので、排水性を向上させることができる。
【0097】
(実施形態2)
図15は、本発明の実施形態2に係るモーター5及びベルマウス構成部材60を示すものである。この実施形態2では、仮保持部70の構成が実施形態1のものとは異なっており、他の部分は実施形態1と同じであるため、以下、実施形態1と異なる部分について詳細に説明する。
【0098】
図16に示すように、実施形態2の仮保持部70は、ベルマウス構成部材60の脚部62の下部から回転軸5cの径方向へ突出する突出部81と、モーターフランジ部5fの上面に設けられたホルダ部85とを備えている。突出部81は、脚部62の下部における回転軸5cの径方向外面から径方向外方へ突出するとともに、周方向に所定の幅を有する板状をなしている。
【0099】
ホルダ部85は、モーターフランジ部5fの上面から上方へ突出する基部83aと、基部83aの上部に一体成形されたホルダ側板部83bと、凸部84とを備えている。ホルダ側板部83bは、モーターフランジ部5fの上面から上方に間隔をあけて設けられており、モーターフランジ部5fの上面との間に突出部81の周方向からの挿入が可能な隙間を形成する部分である。ホルダ側板部83bは基部83aの上部から周方向他方へ向けて延びており、上記隙間は周方向他方に向けて開放されている。したがって、突出部81を周方向一方へ向けて移動させることによって上記隙間に挿入できる。
【0100】
凸部84は、モーターフランジ部5fの上面におけるホルダ側板部83bと対向する部分に形成されており、ホルダ側板部83bへ向けて上方へ突出している。ホルダ側板部83bの下面と、凸部84の上面(突出方向先端面)との間隔は、突出部81の上下方向の寸法と略同じか、若干狭く設定されている。
【0101】
一方、ホルダ側板部83bの下面における凸部84から周方向一方に離れた部分と、モーターフランジ部5fの上面との間隔は、突出部81の上下方向の寸法よりも広く設定されている。具体的には、ホルダ側板部83bの下面における凸部84から周方向一方に離れた部分には、上方へ向けて窪むように形成された窪み部83cが形成されている。この窪み部83cは、突出部81を入れることが可能な大きさ及び形状である。
【0102】
図16に示すように、ベルマウス構成部材60の突出部81を、モーターフランジ部5fのホルダ部85よりも周方向他方に配置した状態で、ベルマウス構成部材60を周方向一方へ回動操作すると、図17Aに示すようにベルマウス構成部材60の突出部81がホルダ部85の開放部分から当該ホルダ部85内に入る。突出部81がホルダ側板部83bの下面と、凸部84の上面との間に達すると、ホルダ側板部83bの下面と、凸部84の上面とによって上下方向に挟持される。これにより、ベルマウス構成部材60の上下方向の変位が阻止される。加えて、ホルダ側板部83bの下面と突出部81の上面との間の摩擦力、凸部84の上面と突出部81の下面との間の摩擦力により、ベルマウス構成部材60が回動方向にも変位し難くなる。したがって、ベルマウス構成部材60が固定状態になる。
【0103】
この固定状態あるベルマウス構成部材60を周方向一方へ向けて更に回動操作すると、図17Bに示すように、ベルマウス構成部材60の突出部81がホルダ部85の奥側、即ち周方向一方側へ移動する。これにより、ベルマウス構成部材60の突出部81が凸部84から離れるので、ベルマウス構成部材60の周方向及び上下方向の変位が可能になる。
特に、窪み部83cにベルマウス構成部材60の突出部81が入ることで、ベルマウス構成部材60の上下方向の変位量を多くすることができる。
【0104】
この実施形態2によれば、実施形態1と同様に、ベルマウス構成部材60をケーシング2とは別部材にする場合に、各部のバラつきを吸収可能にしながら、送風用ファン3のバランス調整の精度を高めるとともに、バランス調整時の作業性を良好にすることができる。
【0105】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0106】
以上説明したように、本発明に係る車両空調用送風装置は、例えば、車両用空調装置の送風ユニットとして使用することができる。
【符号の説明】
【0107】
1 車両空調用送風装置
2 送風ケーシング
2a、2b 内気導入口
2c 外気導入口
3 送風用ファン
5 モーター
5f モーターフランジ部
60 ベルマウス構成部材
61a ベルマウス開口部
62 脚部
70 仮保持部
71 径方向突出部(第1突出部)
72 周方向突出部(第2突出部)
72a 傾斜面
72b 基端面
73 ホルダ部
74a 係合孔
75a 上面
81 突出部
83a 基部
83b ホルダ側板部
84 凸部
R1 第1空気通路
R2 第2空気通路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14A
図14B
図15
図16
図17A
図17B