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特許7457596ブロックポリイソシアネート組成物、親水性ポリイソシアネート組成物、樹脂組成物、樹脂膜及び積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】ブロックポリイソシアネート組成物、親水性ポリイソシアネート組成物、樹脂組成物、樹脂膜及び積層体
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/80 20060101AFI20240321BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20240321BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
C08G18/80 093
B32B27/40
C08G18/80 070
C09D175/04
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2020129537
(22)【出願日】2020-07-30
(65)【公開番号】P2021101007
(43)【公開日】2021-07-08
【審査請求日】2023-04-12
(31)【優先権主張番号】P 2019142741
(32)【優先日】2019-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019218158
(32)【優先日】2019-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019236784
(32)【優先日】2019-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(72)【発明者】
【氏名】東 昌嗣
(72)【発明者】
【氏名】田中 瑛子
(72)【発明者】
【氏名】吉沼 倫春
(72)【発明者】
【氏名】東 孝一郎
【審査官】宮内 弘剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-256232(JP,A)
【文献】特開2011-256217(JP,A)
【文献】特開平09-323969(JP,A)
【文献】国際公開第2019/065890(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/056408(WO,A1)
【文献】特開平09-328654(JP,A)
【文献】特開2016-089028(JP,A)
【文献】特開2018-090766(JP,A)
【文献】特開2004-300617(JP,A)
【文献】国際公開第2018/070532(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0010272(US,A1)
【文献】特開平08-337767(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G
B32B 27/40
C09D 175/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネート及び1種類以上のブロック剤から誘導されるブロックポリイソシアネートと、
アニオン性分散剤と、
を含むブロックポリイソシアネート組成物であって、
前記ブロック剤が
(A)下記一般式(I)で示される化合物、
又は
(B)窒素を1つ以上含有する複素環を有する化合物、
を含み、
前記アニオン性分散剤は、ウィルへルミ法によって測定された、水溶液の総質量に対して0.1質量%の前記アニオン性分散剤と水とからなる水溶液の25℃における表面張力が、32mN/m以上51mN/m以下であり、
前記ブロック剤が、前記(B)窒素を1つ以上含有する複素環を有する化合物を含む時、前記ブロックポリイソシアネート組成物は更にカルボン酸塩を含む、ブロックポリイソシアネート組成物。
【化1】
(前記一般式(I)中、R11は、ヒドロキシ基;ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルキル基;ヒドロキシ基及びアルキル基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアミノ基;ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアリール基;又は、ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルコキシ基である。但し、前記アミノ基は、2つの前記置換基が互いに連結して環を形成してもよい。
12、R13及びR14は、それぞれ独立に、水素原子;ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルキル基;又はヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアリール基である。前記アミノ基は、2つの前記置換基が互いに連結して環を形成してもよい。但し、R12、R13及びR14のうち2つ以上が水素原子であることはない。)
【請求項2】
ポリイソシアネート及び1種類以上のブロック剤から誘導されるブロックポリイソシアネートと、
アニオン性分散剤と、
を含むブロックポリイソシアネート組成物であって、
前記ブロック剤が下記一般式(I)で示される化合物を含み、
前記アニオン性分散剤は、ウィルへルミ法によって測定された、水溶液の総質量に対して0.1質量%の前記アニオン性分散剤と水とからなる水溶液の25℃における表面張力が、32mN/m以上51mN/m以下である、ブロックポリイソシアネート組成物。
【化2】
(前記一般式(I)中、R11は、ヒドロキシ基;ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルキル基;ヒドロキシ基及びアルキル基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアミノ基;ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアリール基;又は、ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルコキシ基である。但し、前記アミノ基は、2つの前記置換基が互いに連結して環を形成してもよい。
12、R13及びR14は、それぞれ独立に、水素原子;ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルキル基;又はヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアリール基である。前記アミノ基は、2つの前記置換基が互いに連結して環を形成してもよい。但し、R12、R13及びR14のうち2つ以上が水素原子であることはない。)
【請求項3】
前記ブロックポリイソシアネートの一部又は全部が、親水性化合物から誘導される構造単位を有する、請求項1もしくは2に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
【請求項4】
前記親水性化合物から誘導される構造単位が、ノニオン性親水性基及びアニオン性親水性基からなる群より選ばれる少なくとも1種の親水性基を含む、請求項3に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
【請求項5】
前記ブロック剤は、前記R11がアルコキシ基であり、前記R12が水素基又はアルキル基であり、且つ、前記R13及び前記R14がアルキル基である、前記一般式(I)で示される化合物を1種類以上含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
【請求項6】
前記アニオン性分散剤の含有量が、前記ブロックポリイソシアネート100質量部に対して、0.01質量部以上5質量部以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
【請求項7】
前記ブロックポリイソシアネートが、ブロック化されたイソシアヌレート3量体を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
【請求項8】
前記ポリイソシアネートの平均イソシアネート官能基数が2.0以上である、請求項1~7のいずれか一項に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
【請求項9】
前記ポリイソシアネートが、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートからなる群から選択される1種類以上のジイソシアネートから誘導されたポリイソシアネートである、請求項1~8のいずれか一項に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
【請求項10】
前記ブロック剤が、前記(B)窒素を1つ以上含有する複素環を有する化合物を含む、請求項1に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
【請求項11】
前記カルボン酸塩のカウンターカチオンの含有量が、前記ブロックポリイソシアネートの総質量に対して、0.1質量%以上20質量%以下である、請求項10に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
【請求項12】
前記カルボン酸塩がカルボン酸金属塩又は第四級アンモニウムカチオンのカルボン酸塩である、請求項10又は11に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
【請求項13】
前記カルボン酸塩がカルボン酸金属塩である、請求項12に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
【請求項14】
前記カルボン酸金属塩の金属種が1価の金属である、請求項13に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
【請求項15】
前記窒素を1つ以上含有する複素環を有する化合物が、窒素を2つ以上含有する複素環を有する化合物である、請求項10~14のいずれか一項に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
【請求項16】
前記ブロック剤が、窒素を3つ以上含有する複素環を有する化合物である、請求項15に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載のブロックポリイソシアネート組成物と、多価ヒドロキシ化合物と、を含む、樹脂組成物。
【請求項18】
前記多価ヒドロキシ化合物のガラス転移温度Tgが0℃以上100℃以下である、請求項17に記載の樹脂組成物。
【請求項19】
前記多価ヒドロキシ化合物の重量平均分子量が5.0×10以上2.0×10以下である、請求項17又は18に記載の樹脂組成物。
【請求項20】
前記多価ヒドロキシ化合物の水酸基価が30mgKOH/g以上250mgKOH/g以下である、請求項17~19のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項21】
前記ブロックポリイソシアネートの含有量が、前記多価ヒドロキシ化合物100質量部に対して、5質量部以上200質量部以下である、請求項17~20のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項22】
請求項17~21のいずれか一項に記載の樹脂組成物を硬化させてなる、樹脂膜。
【請求項23】
前記樹脂組成物を80℃で30分間加熱して硬化させてなる膜厚40μmの樹脂膜を23℃で1週間保存後にアセトン中に23℃で24時間浸漬した際のゲル分率が80質量%以上である、請求項22に記載の樹脂膜。
【請求項24】
前記樹脂組成物を80℃で30分間加熱して硬化させてなる膜厚40μm、幅10mm及び長さ40mmの樹脂膜をチャック間距離20mmとなるようにセットし、20mm/分の速度で実施された引張試験における引張強度が5MPa以上である、請求項22又は23に記載の樹脂膜。
【請求項25】
異なる組成の、請求項22~24のいずれか一項に記載の樹脂膜を2層以上含む積層体であって、
前記積層体の1層当たりの厚さが1μm以上50μm以下である、積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロックポリイソシアネート組成物、親水性ポリイソシアネート組成物、樹脂組成物、樹脂膜及び積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリウレタン樹脂塗料は非常に優れた耐摩耗性、耐薬品性及び耐汚染性を有している。特に、脂肪族ジイソシアネート又は脂環族ジイソシアネートから得られたポリイソシアネートを用いたポリウレタン樹脂塗料はさらに耐候性が優れ、その需要は増加する傾向にある。しかしながら、一般にポリウレタン樹脂塗料は二液性であるため、その使用には極めて不便である。即ち、通常のポリウレタン樹脂塗料はポリオール及びポリイソシアネートの二成分からなり、ポリオール及びポリイソシアネートを別々に貯蔵し、塗装時に両者を混合する必要がある。また、一旦両者を混合すると塗料は短時間でゲル化し使用できなくなるという課題を有する。ポリウレタン樹脂塗料はこのような課題を有するため、自動車塗装又は弱電気塗装のようなライン塗装を行う分野において、自動塗装に用いることを極めて困難にしている。また、イソシアネートは水と容易に反応するため、電着塗料の様な水系塗料での使用は不可能である。更に、イソシアネートを含む塗料を用いた場合には、作業終了時の塗装機及び塗装槽の洗浄等を充分に行う必要があるため、作業能率は著しく低下する。
【0003】
上述の課題を改善するために、従来から、活性なイソシアネート基をすべてブロック剤で封鎖したブロックポリイソシアネートを用いることが提案されている。このブロックポリイソシアネートは、常温ではポリオールと反応しない。しかしながら、加熱することによりブロック剤が解離し、活性なイソシアネート基が再生されてポリオールと反応し架橋反応が起こるので、上述の課題を改善することができる。従って、数多くのブロック剤の検討がなされおり、例えばフェノール、メチルエチルケトオキシム等が代表的なブロック剤として挙げられる。
【0004】
しかしながら、これらのブロック剤を用いたブロックポリイソシアネートを用いた場合には、一般に140℃以上の高い焼付け温度が必要である。高温での焼付けを必要とすることは、エネルギー的に不利であるばかりでなく、基材の耐熱性を必要とし、その用途が限定される要因となる。
【0005】
一方、低温焼付け型のブロックポリイソシアネートとして、アセト酢酸エステル、マロン酸ジエステル等の活性メチレン系化合物を用いたブロックポリイソシアネートの研究がなされている。例えば、特許文献1及び2では、90℃で硬化するブロックポリイソシアネート組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2002-322238号公報
【文献】特開2006-335954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、近年、地球環境保護の観点や、耐熱性の低いプラスチックへの適応が強く求められており、90℃より低い温度で硬化するブロックポリイソシアネート組成物が切望されている。そのような状況下、水酸基を有する水系ポリオール(水分散ポリオール)に対して、混合時に良好な分散性を有し、且つ貯蔵時にゲル化や過度な増粘がなく、80℃以下で硬化性が良いものは未だ知られていない。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、樹脂組成物としたときの貯蔵安定性が良好であり、且つ、樹脂膜としたときの80℃程度の低温での硬化性が良好であるブロックポリイソシアネート組成物、並びに、前記ブロックポリイソシアネート組成物を用いた樹脂組成物、樹脂膜及び積層体を提供する。
また、水分散性が良好であり、且つ、樹脂膜としたときの硬度に優れる親水性ポリイソシアネート組成物、並びに、前記親水性ポリイソシアネート組成物を用いたブロックポリイソシアネート組成物、樹脂組成物及び樹脂膜を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の態様を含む。
(1) ポリイソシアネート及び1種類以上のブロック剤から誘導されるブロックポリイソシアネートと、
アニオン性分散剤と、
を含むブロックポリイソシアネート組成物であって、
前記ブロック剤が
(A)下記一般式(I)で示される化合物、
又は
(B)窒素を1つ以上含有する複素環を有する化合物、
を含み、
前記アニオン性分散剤は、ウィルへルミ法によって測定された、水溶液の総質量に対して0.1質量%の前記アニオン性分散剤と水とからなる水溶液の25℃における表面張力が、32mN/m以上51mN/m以下であり、
前記ブロック剤が、前記(B)窒素を1つ以上含有する複素環を有する化合物を含む時、前記ブロックポリイソシアネート組成物は更にカルボン酸塩を含む、ブロックポリイソシアネート組成物。
【0010】
【化1】
【0011】
(前記一般式(I)中、R11は、ヒドロキシ基;ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルキル基;ヒドロキシ基及びアルキル基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアミノ基;ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアリール基;又は、ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルコキシ基である。但し、前記アミノ基は、2つの前記置換基が互いに連結して環を形成してもよい。
12、R13及びR14は、それぞれ独立に、水素原子;ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルキル基;又はヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアリール基である。前記アミノ基は、2つの前記置換基が互いに連結して環を形成してもよい。但し、R12、R13及びR14のうち2つ以上が水素原子であることはない。)
(2) ポリイソシアネート及び1種類以上のブロック剤から誘導されるブロックポリイソシアネートと、
アニオン性分散剤と、
を含むブロックポリイソシアネート組成物であって、
前記ブロック剤が下記一般式(I)で示される化合物を含み、
前記アニオン性分散剤は、ウィルへルミ法によって測定された、水溶液の総質量に対して0.1質量%の前記アニオン性分散剤と水とからなる水溶液の25℃における表面張力が、32mN/m以上51mN/m以下である、ブロックポリイソシアネート組成物。
【0012】
【化2】
【0013】
(前記一般式(I)中、R11は、ヒドロキシ基;ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルキル基;ヒドロキシ基及びアルキル基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアミノ基;ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアリール基;又は、ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルコキシ基である。但し、前記アミノ基は、2つの前記置換基が互いに連結して環を形成してもよい。
12、R13及びR14は、それぞれ独立に、水素原子;ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルキル基;又はヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアリール基である。前記アミノ基は、2つの前記置換基が互いに連結して環を形成してもよい。但し、R12、R13及びR14のうち2つ以上が水素原子であることはない。)
(3) 前記ブロックポリイソシアネートの一部又は全部が、親水性化合物から誘導される構造単位を有する、前記(1)もしくは(2)に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
(4) 前記親水性化合物から誘導される構造単位が、ノニオン性親水性基及びアニオン性親水性基からなる群より選ばれる少なくとも1種の親水性基を含む、前記(3)に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
(5) 前記ブロック剤は、前記R11がアルコキシ基であり、前記R12が水素基又はアルキル基であり、且つ、前記R13及び前記R14がアルキル基である、前記一般式(I)で示される化合物を1種類以上含む、前記(1)~(4)のいずれか一項に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
(6) 前記アニオン性分散剤の含有量が、前記ブロックポリイソシアネート100質量部に対して、0.01質量部以上5質量部以下である、前記(1)~(5)のいずれか一項に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
(7) 前記ブロックポリイソシアネートが、ブロック化されたイソシアヌレート3量体を含む、前記(1)~(6)のいずれか一項に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
(8) 前記ポリイソシアネートの平均イソシアネート官能基数が2.0以上である、前記(1)~(7)のいずれか一項に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
(9) 前記ポリイソシアネートが、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートからなる群から選択される1種類以上のジイソシアネートから誘導されたポリイソシアネートである、前記(1)~(8)のいずれか一項に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
(10) 前記ブロック剤が、前記(B)窒素を1つ以上含有する複素環を有する化合物を含む、前記(1)に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
(11) 前記カルボン酸塩のカウンターカチオンの含有量が、前記ブロックポリイソシアネートの総質量に対して、0.1質量%以上20質量%以下である、前記(10)に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
(12) 前記カルボン酸塩がカルボン酸金属塩又は第四級アンモニウムカチオンのカルボン酸塩である、前記(10)又は(11)に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
(13) 前記カルボン酸塩がカルボン酸金属塩である、前記(12)に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
(14) 前記カルボン酸金属塩の金属種が1価の金属である、前記(13)に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
(15) 前記窒素を1つ以上含有する複素環を有する化合物が、窒素を2つ以上含有する複素環を有する化合物である、前記(10)~(14)のいずれか一項に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
(16) 前記ブロック剤が、窒素を3つ以上含有する複素環を有する化合物である、前記(15)に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
(17) 前記(1)~(16)のいずれか一項に記載のブロックポリイソシアネート組成物と、多価ヒドロキシ化合物と、を含む、樹脂組成物。
(18) 前記多価ヒドロキシ化合物のガラス転移温度Tgが0℃以上100℃以下である、前記(17)に記載の樹脂組成物。
(19) 前記多価ヒドロキシ化合物の重量平均分子量が5.0×10以上2.0×10以下である、前記(17)又は(18)に記載の樹脂組成物。
(20) 前記多価ヒドロキシ化合物の水酸基価が30mgKOH/g以上250mgKOH/g以下である、前記(17)~(19)のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
(21) 前記ブロックポリイソシアネートの含有量が、前記多価ヒドロキシ化合物100質量部に対して、5質量部以上200質量部以下である、前記(17)~(20)のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
(22) 前記(17)~(21)のいずれか一項に記載の樹脂組成物を硬化させてなる、樹脂膜。
(23) 前記樹脂組成物を80℃で30分間加熱して硬化させてなる膜厚40μmの樹脂膜を23℃で1週間保存後にアセトン中に23℃で24時間浸漬した際のゲル分率が80質量%以上である、前記(22)に記載の樹脂膜。
(24) 前記樹脂組成物を80℃で30分間加熱して硬化させてなる膜厚40μm、幅10mm及び長さ40mmの樹脂膜をチャック間距離20mmとなるようにセットし、20mm/分の速度で実施された引張試験における引張強度が5MPa以上である、前記(22)又は(23)に記載の樹脂膜。
(25) 異なる組成の、前記(22)~(24)のいずれか一項に記載の樹脂膜を2層以上含む積層体であって、
前記積層体の1層当たりの厚さが1μm以上50μm以下である、積層体。
(26) 親水性化合物と、イソシアヌレート基を有する脂環族ポリイソシアネートと、から誘導される、親水性ポリイソシアネート組成物であって、
前記脂環族ポリイソシアネートのイソシアネート基の総モル量に対する前記親水性化合物により変性されたイソシアネート基の割合が2mol%以上15mol%以下である、親水性ポリイソシアネート組成物。
(27) 前記脂環族ポリイソシアネートがイソホロンジイソシアネートから誘導された、イソシアヌレート基を有するポリイソシアネートを含む、前記(26)に記載の親水性ポリイソシアネート組成物。
(28) 前記脂環族ポリイソシアネートが有するイソシアネート基の平均官能基数が2.5以上6.0以下である、前記(26)又は(27)に記載の親水性ポリイソシアネート組成物。
(29) 前記親水性ポリイソシアネート組成物の重量平均分子量が900以上20000以下である、前記(26)~(28)のいずれか一項に記載の親水性ポリイソシアネート組成物。
(30) 前記親水性化合物がノニオン性化合物又はアニオン性化合物である、前記(26)~(29)のいずれか一項に記載の親水性ポリイソシアネート組成物。
(31) 前記(26)~(30)のいずれか一項に記載の親水性ポリイソシアネート組成物中のイソシアネート基の少なくとも一部が、ブロック剤で封止されてなる、ブロックポリイソシアネート組成物。
(32) 前記ブロック剤が活性メチレン系化合物、オキシム系化合物、アミン系化合物、ピラゾール系化合物、及びトリアゾール系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である、前記(31)に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
(33) 前記(26)~(30)のいずれか一項に記載の親水性ポリイソシアネート組成物と、ポリオールと、を含む、樹脂組成物。
(34) 前記(31)又は(32)に記載のブロックポリイソシアネート組成物と、ポリオールと、を含む、樹脂組成物。
(35) 前記(33)又は(34)に記載の樹脂組成物を硬化させてなる、樹脂膜。
【発明の効果】
【0014】
上記態様のブロックポリイソシアネート組成物によれば、樹脂組成物としたときの貯蔵安定性が良好であり、且つ、樹脂膜としたときの80℃程度の低温での硬化性が良好であるブロックポリイソシアネート組成物を提供することができる。上記態様の樹脂組成物は、貯蔵安定性が良好である。上記態様の樹脂膜は、80℃程度の低温での硬化性が良好である。上記態様の積層体は、異なる組成の、前記樹脂膜を2層以上含み、当該樹脂膜は、80℃程度の低温での硬化性が良好である。
上記態様の親水性ポリイソシアネート組成物によれば、水分散性が良好であり、且つ、樹脂膜としたときの硬度に優れる親水性ポリイソシアネート組成物を提供することができる。前記親水性ポリイソシアネート組成物がブロック剤で封止されてなるブロックポリイソシアネート組成物は、水分散性が良好であり、且つ、樹脂膜としたときの硬度に優れる。前記ポリイソシアネート組成物又は前記ブロックポリイソシアネート組成物を含む樹脂組成物は、樹脂膜としたときの硬度に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0016】
本明細書において、「ポリオール」とは、2つ以上のヒドロキシ基(-OH)を有する化合物を意味する。
本明細書において、「ポリイソシアネート」とは、1つ以上のイソシアネート基(-NCO)を有する単量体化合物が複数結合した反応物を意味する。
【0017】
≪ブロックポリイソシアネート組成物≫
本発明の第1の実施形態のブロックポリイソシアネート組成物は、ポリイソシアネート及び1種類以上のブロック剤から誘導されるブロックポリイソシアネートと、アニオン性分散剤と、を含む。
【0018】
ブロック剤は、(A)下記一般式(I)で示される化合物(以下、「化合物(I)」と称する場合がある)、又は、(B)窒素を1つ以上含有する複素環を有する化合物を含む。
【0019】
【化3】
【0020】
(前記一般式(I)中、
11は、ヒドロキシ基;ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルキル基;ヒドロキシ基及びアルキル基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアミノ基;ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアリール基;又は、ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルコキシ基である。但し、前記アミノ基は、2つの前記置換基が互いに連結して環を形成してもよい。
12、R13及びR14はそれぞれ独立に、水素原子;ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルキル基;又はヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアリール基である。前記アミノ基は、2つの前記置換基が互いに連結して環を形成してもよい。但し、R12、R13及びR14のうち2つ以上が水素原子であることはない。)
【0021】
また、アニオン性分散剤において、ウィルへルミ法によって測定された、水溶液の総質量に対して0.1質量%の前記アニオン性分散剤と水とからなる水溶液の25℃における表面張力が、32mN/m以上51mN/m以下であり、34mN/m以上50mN/m以下が好ましく、36mN/m以上48mN/m以下がより好ましく、37mN/m以上47mN/m以下がさらに好ましい。表面張力が上記範囲内であることで、樹脂組成物としたときの貯蔵安定性を良好に保つことができる。
【0022】
従来、ブロック剤として2級アルキル基や3級アルキル基を有するマロン酸エステル(例えば、マロン酸ジイソプロピルやマロン酸-ジ-tert-ブチル等)を用いたブロックポリイソシアネート組成物は80℃程度の低温での硬化性に優れるが、反応させるポリオール等の多価ヒドロキシ化合物の水酸基との反応性が高く、主剤と硬化剤とを含む樹脂組成物として貯蔵した際に著しい粘度上昇やゲル化が起きやすいという課題があった。特に、ブロック剤として3級アルキル基を有するマロン酸エステル(例えば、マロン酸-ジ-tert-ブチル等)を用いたブロックポリイソシアネート組成物と水系ポリオールとを混合した混合液では、上記課題が顕著に表れ、その改善が望まれていた。
【0023】
これに対して、本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物は、上記範囲の表面張力であるアニオン性分散剤を含むことで、上記課題を改善することができ、ブロックポリイソシアネート組成物と多価ヒドロキシ化合物との混合液の貯蔵時の粘度上昇やゲル化を効果的に抑制し、良好な貯蔵安定性を発揮することができる。
【0024】
上記表面張力の測定方法としては、例えば、以下の方法を用いて測定することができる。まず、アニオン性分散剤を水で希釈し、水溶液の総質量に対して0.1質量%の前記アニオン性分散剤と水とからなる水溶液を調製する。次いで、当該水溶液を用いて、ウィルへルミ法(プレート法や垂直板法とも呼ばれる)により25℃における表面張力を測定する。具体的な測定方法としては、測定子であるプレートが水溶液の表面に触れることで、水溶液がプレートに対して、ぬれあがる。このとき、プレートの周囲に沿って表面張力が働き、プレートを水溶液中に引き込もうとする力が働く。当該引き込む力F(プレートに働く力、測定力)を読み取り、以下の式により表面張力rを測定することができる。なお、式中において、Lはプレートの周囲長(m)、θはプレートと水溶液との接触角である。
【0025】
r=F/(L×cosθ)
【0026】
上記表面張力は、市販の測定装置、例えば、静的表面張力測定システム(DKSHジャパン社製、型番:TD 1C又はTD 3)等を用いて測定することもできる。
【0027】
以下、本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物に含まれる各構成成分について、詳細に説明する。
【0028】
<ブロックポリイソシアネート>
ブロックポリイソシアネートは、ポリイソシアネートとブロック剤との反応物である。すなわち、ブロックポリイソシアネートは、ポリイソシアネート中の少なくとも一部のイソシアネート基がブロック剤でブロック化されている。
【0029】
ブロックポリイソシアネートは、アロファネート基、ウレトジオン基、イミノオキサジアジンジオン基、イソシアヌレート基、ウレタン基及びビウレット基からなる群より選ばれる1種以上の官能基を有することができる。中でも、耐候性が優れることから、イソシアヌレート基を含むことが好ましい。
【0030】
ブロックポリイソシアネートは、ブロック化されたイソシアヌレート3量体を含むことが好ましい。ここでいう「イソシアヌレート3量体」とは、イソシアネートモノマー3分子から誘導され、イソシアヌレート基を有するポリイソシアネートを意味する。また、「ブロック化されたイソシアヌレート3量体」とは、イソシアヌレート3量体中のイソシアネート基の少なくとも一部(好ましくは、全部)がブロック剤でブロック化されているものを意味する。ブロック化されたイソシアヌレート3量体を含むことで、樹脂膜としたときの耐熱性がより優れる傾向にある。
【0031】
[ポリイソシアネート]
ブロックポリイソシアネートの製造に用いられるポリイソシアネートは、1つ以上のイソシアネート基(-NCO)を有する単量体化合物(以下、「イソシアネートモノマー」と称する場合がある)を複数反応させて得られる反応物である。
イソシアネートモノマーとしては、炭素数4以上30以下のものが好ましい。イソシアネートモノマーとして具体的には、例えば、以下のものが例示される。これらイソシアネートモノマーは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
(1)ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート(MDI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等の芳香族ジイソシアネート。
(2)1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、「HDI」と称する場合がある)、2,2,4-トリメチル-1,6-ジイソシアナトヘキサン、2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソイシアネート、2-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート(MPDI)、リジンジイソシアネート(以下、「LDI」と称する場合がある)等の脂肪族ジイソシアネート。
(3)イソホロンジイソシアネート(以下、「IPDI」と称する場合がある)、1,3-ビス(ジイソシアネートメチル) シクロヘキサン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ジイソシアネートノルボルナン、ジ(イソシアネートメチル)ノルボルナン等の脂環族ジイソシアネート。
(4)4-イソシアネートメチル-1,8-オクタメチレンジイソシアネート(以下、「NTI」と称する場合がある)、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート(以下、「HTI」と称する場合がある)、ビス(2-イソシアナトエチル)2-イソシアナトグルタレート(以下、「GTI」と称する場合がある)、リジントリイソシアネート(以下、「LTI」と称する場合がある)等のトリイソシアネート。
【0032】
中でも、耐候性が優れることから、イソシアネートモノマーとしては、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートからなる群から選択される1種類以上のジイソシアネートであることが好ましい。また、イソシアネートモノマーとしては、工業的入手の容易さから、HDI又はIPDIであることがより好ましい。また、イソシアネートモノマーとしては、ブロックポリイソシアネート成分を低粘度にする観点から、HDIであることがさらに好ましい。
【0033】
(ポリイソシアネートの製造方法)
ポリイソシアネートの製造方法について、以下に詳細を説明する。
ポリイソシアネートは、例えば、アロファネート基を形成するアロファネート化反応、ウレトジオン基を形成するウレトジオン化反応、イミノオキサジアジンジオン基を形成するイミノオキサジアジンジオン化反応、イソシアヌレート基を形成するイソシアヌレート化反応、ウレタン基を形成するウレタン化反応、及び、ビウレット基を形成するビウレット化反応を、過剰のイソシアネートモノマー存在下で一度に製造して、反応終了後に、未反応のイソシアネートモノマーを除去して得ることができる。すなわち、上記反応により得られるポリイソシアネートは、上述のイソシアネートモノマーが複数結合したものであり、且つ、アロファネート基、ウレトジオン基、イミノオキサジアジンジオン基、イソシアヌレート基、ウレタン基及びビウレット基からなる群より選択される1種類以上を有する反応物である。
また、上記の反応を別々に行ない、それぞれ得たポリイソシアネートを特定比率で混合してもよい。
製造の簡便さからは、上記反応を一度に行いポリイソシアネートを得ることが好ましく、各官能基のモル比を自由に調整する観点からは、別々に製造した後に混合することが好ましい。
【0034】
例えば、イソシアネートモノマーからイソシアヌレート基を含有するポリイソシアネートを誘導するための触媒としては、一般的に使用されるイソシアヌレート化反応触媒が挙げられる。
【0035】
イソシアヌレート化反応触媒としては、特に限定されないが、一般に塩基性を有するものであることが好ましい。イソシアヌレート化反応触媒として具体的には、例えば、以下に示すもの等が挙げられる。
1)テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム等のテトラアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド、及び、前記テトラアルキルアンモニウムの酢酸塩、プロピオン酸塩、オクチル酸塩、カプリン酸塩、ミリスチン酸塩、安息香酸塩等の有機弱酸塩。
2)ベンジルトリメチルアンモニウム、トリメチルフェニルアンモニウム等のアリールトリアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド、及び、前記アリールトリアルキルアンモニウムの酢酸塩、プロピオン酸塩、オクチル酸塩、カプリン酸塩、ミリスチン酸塩、安息香酸塩等の有機弱酸塩。
3)トリメチルヒドロキシエチルアンモニウム、トリメチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリエチルヒドロキシエチルアンモニウム、トリエチルヒドロキシプロピルアンモニウム等のヒドロキシアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド、及び、前記ヒドロキシアルキルアンモニウムの酢酸塩、プロピオン酸塩、オクチル酸塩、カプリン酸塩、ミリスチン酸塩、安息香酸塩等の有機弱酸塩。
4)酢酸、プロピオン酸、カプロン酸、オクチル酸、カプリン酸、ミリスチン酸等のアルキルカルボン酸の錫、亜鉛、鉛等の金属塩。
5)ナトリウム、カリウム等の金属アルコラート。
6)ヘキサメチレンジシラザン等のアミノシリル基含有化合物。
7)マンニッヒ塩基類。
8)第3級アミン類とエポキシ化合物との混合物。
9)トリブチルホスフィン等の燐系化合物。
【0036】
中でも、不要な副生成物を生じさせにくい観点からは、イソシアヌレート化反応触媒としては、4級アンモニウムのハイドロオキサイド又は4級アンモニウムの有機弱酸塩であることが好ましく、テトラアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド、テトラアルキルアンモニウムの有機弱酸塩、アリールトリアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド、又は、アリールトリアルキルアンモニウムの有機弱酸塩であることがより好ましい。
【0037】
上述したイソシアヌレート化反応触媒の使用量の上限値は、仕込んだイソシアネートモノマーの質量に対して、1000質量ppmであることが好ましく、500質量ppmであることがより好ましく、100質量ppmであることがさらに好ましい。
一方、上述したイソシアヌレート化反応触媒の使用量の下限値は、特別な限定はないが、例えば、10質量ppmであってもよい。
【0038】
イソシアヌレート化反応温度としては、50℃以上120℃以下であることが好ましく、55℃以上90℃以下であることがより好ましい。イソシアヌレート化反応温度が上記上限値以下であることによって、ポリイソシアネートの着色等をより効果的に抑制できる傾向にある。
【0039】
所望の転化率(仕込んだイソシアネートモノマーの質量に対する、イソシアヌレート化反応で生成したポリイソシアネートの質量の割合)になった時点で、イソシアヌレート化反応を、酸性化合物(例えば、リン酸、酸性リン酸エステル等)の添加によって停止する。
なお、ポリイソシアネートを得るためには、反応の進行を初期で停止する必要がある。しかしながら、イソシアヌレート化反応は、初期の反応速度が非常に速いため、反応の進行を初期で停止することに困難が伴い、反応条件、特に触媒の添加量及び添加方法は慎重に選択する必要がある。例えば、触媒の一定時間毎の分割添加方法等が好適なものとして推奨される。
したがって、ポリイソシアネートを得るためのイソシアヌレート化反応の転化率は、10%以上60%以下であることが好ましく、15%以上55%以下であることがより好ましく、20%以上50%以下であることがさらに好ましい。
イソシアヌレート化反応の転化率が上記上限値以下であることによって、ブロックポリイソシアネート成分をより低粘度とすることができる。また、イソシアヌレート化反応の転化率が上記下限値以上であることによって、反応停止操作をより容易に行うことができる。
【0040】
また、イソシアヌレート基を含有するポリイソシアネートを誘導する際に、上記イソシアネートモノマー以外に1価以上6価以下のアルコールを用いることができる。
使用することのできる1価以上6価以下のアルコールとしては、例えば、非重合性アルコール、重合性アルコールが挙げられる。ここでいう「非重合性アルコール」とは、重合性基を有さないアルコールを意味する。一方、「重合性アルコール」とは、重合性基及び水酸基を有する単量体を重合して得られるアルコールを意味する。
非重合性アルコールとしては、例えば、モノアルコール類、ジオール類、トリオール類、テトラオール類等の多価アルコールが挙げられる。
モノアルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、n-ペンタノール、n-ヘキサノール、n-オクタノール、n-ノナノール、2-エチルブタノール、2,2-ジメチルヘキサノール、2-エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、エチルシクロヘキサノール等が挙げられる。
ジオール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,3-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール、2-エチル-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール、1,2-デカンジオール、2,2,4-トリメチルペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール等が挙げられる。
トリオール類としては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
テトラオール類としては、例えば、ペンタエリトリトール等が挙げられる。
【0041】
重合性アルコールとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエステルポリオール類、ポリエーテルポリオール類、アクリルポリオール類、ポリオレフィンポリオール類等が挙げられる。
【0042】
ポリエステルポリオール類としては、特に限定されないが、例えば、二塩基酸の単独又は混合物と、多価アルコールの単独又は混合物との縮合反応によって得られる生成物が挙げられる。
二塩基酸としては、特に限定されないが、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のカルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の二塩基酸が挙げられる。
多価アルコールとしては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、及び、グリセリンからなる群より選ばれる少なくとも1種の多価アルコールが挙げられる。
また、ポリエステルポリオール類としては、例えば、上記多価アルコールを用いて、ε-カプロラクトンを開環重合して得られるようなポリカプロラクトン類等が挙げられる。
【0043】
ポリエーテルポリオール類としては、特に限定されないが、例えば、アルカリ金属の水酸化物、又は、強塩基性触媒を使用して、多価アルコールの単独又は混合物に、アルキレンオキサイドの単独又は混合物を付加して得られるポリエーテルポリオール類、ポリアミン化合物にアルキレンオキサイドを反応させて得られるポリエーテルポリオール類、上記ポリエーテル類を媒体としてアクリルアミド等を重合して得られるいわゆるポリマーポリオール類が挙げられる。
アルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。
強塩基性触媒としては、例えば、アルコラート、アルキルアミン等が挙げられる。
多価アルコールとしては、上記ポリエステルポリオール類において例示されたものと同様のものが挙げられる。
アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、スチレンオキサイド等が挙げられる。
ポリアミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン類等が挙げられる。
【0044】
アクリルポリオール類としては、特に限定されないが、例えば、水酸基を有するエチレン性不飽和結合含有単量体の単独又は混合物と、これと共重合可能な他のエチレン性不飽和結合含有単量体の単独又は混合物とを共重合したものが挙げられる。
水酸基を有するエチレン性不飽和結合含有単量体としては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシブチル等が挙げられる。
水酸基を有するエチレン性不飽和結合含有単量体と共重合可能な他のエチレン性不飽和結合含有単量体としては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、不飽和カルボン酸、不飽和アミド、ビニル系単量体、加水分解性シリル基を有するビニル系単量体が挙げられる。
アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸-n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸-n-ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェニル等が挙げられる。
メタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸-n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸-n-ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸-2-エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル等が挙げられる。
不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等が挙げられる。
不飽和アミドとしては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N-メチレンビスアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイミド等が挙げられる。
ビニル系単量体としては、例えば、メタクリル酸グリシジル、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、フマル酸ジブチル等が挙げられる。
加水分解性シリル基を有するビニル系単量体としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0045】
ポリオレフィンポリオール類としては、例えば、末端水酸基化ポリブタジエン及びその水素添加物等が挙げられる。
【0046】
アロファネート化反応、ウレトジオン化反応、イミノオキサジアジンジオン化反応、イソシアヌレート化反応、ウレタン化反応、及び、ビウレット化反応は、それぞれ逐次行ってもよく、そのいくつかを並行して行ってもよい。
反応終了後の反応液から、未反応イソシアネートモノマーを薄膜蒸留、抽出等により除去し、ポリイソシアネートを得ることができる。
【0047】
また、得られたポリイソシアネートに対して、例えば、貯蔵時の着色を抑制する目的で、酸化防止剤や紫外線吸収剤を添加してもよい。
酸化防止剤としては、例えば、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール等のヒンダードフェノール等が挙げられる。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン等が挙げられる。これら酸化防止剤や紫外線吸収剤は、1種を単独又は2種以上を併用してもよい。これらの添加量は、ポリイソシアネートの質量に対して、10質量ppm以上500質量ppm以下であることが好ましい。
【0048】
(ポリイソシアネートの平均イソシアネート官能基数)
ポリイソシアネートの平均イソシアネート官能基数は、樹脂膜としたときの低温硬化性を高める点で、2.0以上であることが好ましく、樹脂膜としたときの低温硬化性、及び、多価アルコール化合物との相溶性の両立の観点から、3.0以上がより好ましく、4.6以上20以下がさらに好ましく、5以上10以下が特に好ましい。
ポリイソシアネートの平均イソシアネート官能基数は、後述する実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
【0049】
[ブロック剤]
ブロックポリイソシアネートの製造に用いられるブロック剤は、(A)下記一般式(I)で示される化合物(化合物(I))を含む。ブロック剤は、化合物(I)を1種単独で含んでもよく、2種以上組み合わせて含んでもよい。
【0050】
【化4】
【0051】
(化合物(I))
(1)R11
一般式(I)中、R11は、ヒドロキシ基;ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルキル基;ヒドロキシ基及びアルキル基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアミノ基;ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアリール基;又は、ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルコキシ基である。但し、前記アミノ基は、2つの前記置換基が互いに連結して環を形成してもよい。
【0052】
11が置換基を有しないアルキル基である場合、該アルキル基としては、炭素数は1以上30以下であることが好ましく、1以上8以下であることがより好ましく、1以上6以下であることがさらに好ましく、1以上4以下であることが特に好ましい。置換基を有しないアルキル基として具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、1-メチルブチル基、n-ヘキシル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、n-ヘプチル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、2,2-ジメチルペンチル基、2,3-ジメチルペンチル基、2,4-ジメチルペンチル基、3,3-ジメチルペンチル基、3-エチルペンチル基、2,2,3-トリメチルブチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。
【0053】
また、R11が置換基を有するアルキル基である場合、置換基はヒドロキシ基又はアミノ基である。
置換基としてヒドロキシ基を含むアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基等が挙げられる。
置換基としてアミノ基を含むアルキル基としては、例えば、アミノメチル基、アミノエチル基、アミノプロピル基、アミノブチル基等が挙げられる。
置換基としてヒドロキシ基及びアミノ基を含むアルキル基としては、例えば、ヒドロキシアミノメチル基、ヒドロキシアミノエチル基、ヒドロキシアミノプロピル基等が挙げられる。
【0054】
11が置換基を有するアミノ基である場合、置換基はヒドロキシ基又はアルキル基である。
置換基としてヒドロキシ基を有するアミノ基としては、ヒドロキシアミノ基(-NH-OH)が挙げられる。
置換基としてアルキル基を有するアミノ基としては、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n-ブチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジ-n-ブチルアミノ基、ジ-tert-ブチルアミノ基、ジ-sec-ブチルアミノ基、ジイソブチルアミノ基、2、6-ジメチルピペリジル基等が挙げられる。
置換基としてヒドロキシ基及びアルキル基を有するアミノ基としては、例えば、ヒドロキシメチレンアミノ基、ヒドロキシエチレンアミノ基、ヒドロキシプロピレンアミノ基、ヒドロキシブチレンアミノ基等が挙げられる。
2つの置換基が互いに連結して環を形成しているアミノ基としては、例えば、エチレンイミノ基、アザシクロブチル基、ピロリジル基、ピペリジル基、2、6-ジメチルピペリジル基、ヘキサメチレンイミノ基等の環状2級アミノ基が挙げられる。
【0055】
11が置換基を有しないアリール基である場合、該アリール基としては、炭素数は5以上30以下であることが好ましく、6以上20以下であることがより好ましく、6以上14以下であることがさらに好ましい。前記アリール基として具体的には、例えば、単環式芳香族炭化水素基、2環式芳香族炭化水素基、3環式芳香族炭化水素基、4環式芳香族炭化水素基、5環式芳香族炭化水素基、6環式芳香族炭化水素基、7環式芳香族炭化水素基等が挙げられる。
単環式芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ベンジル基、トリル基、o-キシリル基等が挙げられる。
2環式芳香族炭化水素基としては、例えば、インダニル基、インデニル基、ペンタレニル基、アズレニル基、ナフチル基、テトラヒドロナフチル基等が挙げられる。
3環式芳香族炭化水素基としては、例えば、アントラセニル基、フルオレニル基、フェナレニル基、フェナントレニル基等が挙げられる。
4環式芳香族炭化水素基としては、例えば、ピレニル基、ナフタセニル基、クリセニル基等が挙げられる。
5環式芳香族炭化水素基としては、例えば、ペリレニル基、ピセニル基、ペンタセニル基等が挙げられる。
6環式芳香族炭化水素基としては、例えば、ナフトピレニル基等が挙げられる。
7環式芳香族炭化水素基としては、例えば、コロネニル基等が挙げられる。
【0056】
11が置換基を有するアリール基である場合、置換基はヒドロキシ基又はアミノ基である。
置換基としてヒドロキシ基を含むアリール基としては、例えば、フェノール基等が挙げられる。
置換基としてアミノ基を含むアリール基としては、例えば、アニリン基等が挙げられる。
置換基としてヒドロキシ基及びアミノ基を含むアリール基としては、例えば、アミノフェノール基(ヒドロキシアニリン基)等が挙げられる。
【0057】
11が置換基を有しないアルコキシ基である場合、該アルコキシ基としては、炭素数は1以上30以下であることが好ましく、1以上8以下であることがより好ましく、1以上6以下であることがさらに好ましく、1以上4以下であることが特に好ましい。前記アルコキシ基として具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、イソブトキシ基、n-ペントキシ基、イソペントキシ基、ネオペントキシ基、tert-ペントキシ基、1-メチルブトキシ基、n-ヘキトキシ基、2-メチルペントキシ基、3-メチルペントキシ基、2,2-ジメチルブトキシ基、2,3-ジメチルブトキシ基、n-ヘプトキシ基、2-メチルヘキトキシ基、3-メチルヘキトキシ基、2,2-ジメチルペントキシ基、2,3-ジメチルペントキシ基、2,4-ジメチルペントキシ基、3,3-ジメチルペントキシ基、3-エチルペントキシ基、2,2,3-トリメチルブトキシ基、n-オクトキシ基、イソオクトキシ基、2-エチルヘキトキシ基、ノニノキシ基、デシロキシ基等が挙げられる。
【0058】
11が置換基を有するアルコキシ基である場合、置換基はヒドロキシ基又はアミノ基である。
置換基としてヒドロキシ基を含むアルコキシ基としては、例えば、ヒドロキシメチレンオキシ基、ヒドロキシエチレンオキシ基、ヒドロキシプロピレンオキシ基、ヒドロキシブチレンオキシ基等が挙げられる。
置換基としてアミノ基を含むアルコキシ基としては、例えば、アミノメチレンオキシ基、アミノエチレンオキシ基、アミノプロピレンオキシ基、アミノブチレンオキシ基等が挙げられる。
置換基としてヒドロキシ基及びアミノ基を含むアルコキシ基としては、例えば、ヒドロキシアミノメチリジンオキシ基、ヒドロキシアミノエチリジンオキシ基、ヒドロキシアミノプロピリジンオキシ基等が挙げられる。
【0059】
中でも、R11としては、置換基を有する又は有しないアルコキシ基が好ましく、置換基を有しないアルコキシ基がより好ましい。
【0060】
(2)R12、R13及びR14
一般式(I)中、R12、R13及びR14はそれぞれ独立に、水素原子;ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルキル基;又はヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアリール基である。前記アミノ基は、2つの前記置換基が互いに連結して環を形成してもよい。但し、R12、R13及びR14のうち2つ以上が水素原子であることはない。
上記アルキル基及び上記アリール基としては、上記「R11」において例示されたものと同様のものが挙げられる。
上記2つの置換基が互いに連結して環を形成しているアミノ基としては、例えば、エチレンイミノ基、アザシクロブチル基、ピロリジル基、ピペリジル基等の環状2級アミノ基が挙げられる。
中でも、R12が水素原子又は置換基を有する若しくは有しないアルキル基であり、且つ、R13及びR14がそれぞれ独立に、置換基を有する若しくは有しないアルキル基であることが好ましく、R12が水素原子又は置換基を有しないアルキル基であり、且つ、R13及びR14がそれぞれ独立に置換基を有しないアルキル基がより好ましい。
【0061】
化合物(I)において、工業的入手の容易さ、及び、低温での硬化性が優れることから、R11がアルコキシ基であり、R12が水素原子又はアルキル基であり、且つ、R13及びR14がアルキル基であることが好ましい。ブロック剤は、上記構成である化合物(I)を1種単独で含んでもよく、2種以上組み合わせて含んでいてもよい。
【0062】
また、化合物(I)がtert-ブチルエステル構造又はtert-ペンチルエステル構造を有することにより、樹脂膜としたときの低温硬化性に優れ、また、sec-ブチルエステル構造又はiso-プロピルエステル構造を有することにより、樹脂組成物としたときの貯蔵安定性に優れる傾向にある。
【0063】
化合物(I)として好ましいものとして具体的には、例えば、マロン酸ジ-tert-ブチル、マロン酸ジ-tert-ペンチル、マロン酸ジ-sec-ブチル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸tert-ブチルエチル、マロン酸イソプロピルエチル等が挙げられる。
中でも、樹脂膜としたときの低温硬化性の点から、マロン酸ジ-tert-ブチル、マロン酸ジ-tert-ペンチル、マロン酸ジ-sec-ブチル又はマロン酸ジイソプロピルが好ましく、水分散安定性の観点から、マロン酸ジ-tert-ブチル又はマロン酸ジイソプロピルがより好ましい。
【0064】
ブロックポリイソシアネートの製造に用いられるブロック剤として、(B)窒素を1つ以上含有する複素環を有する化合物を用いることもできる。
前記(B)窒素を1つ以上含有する複素環を有する化合物は、低温硬化性の観点から、窒素を2つ以上含有する複素環を有する化合物であることが好ましく、窒素を3つ以上含有する複素環を有する化合物であることがより好ましい。
【0065】
窒素を1つ以上含有する複素環を有する化合物としては、例えば、以下に示すもの等が挙げられる。
1)エチレンイミン等のアジリジン系ブロック剤;
2)アゼシクロブタン等のアゼチジン系ブロック剤;
3)ピロリジン等のアゾリジン系ブロック剤;
4)ピロール、2H-ピロール等のアゾール系ブロック剤;
5)2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾリン系ブロック剤;
6)2-メチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン等のピリミジン系ブロック剤;
7)ピラゾール、3-メチルピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、4-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-イソプロピルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、4-メチル-2-フェニルイミダゾール、ベンゾイミダゾール、2-メチルベンゾイミダゾール等のジアゾール系ブロック剤;
8)1,2,4-トリアゾール、1,2,3-トリアゾール、3,5-ジメチル-1,2,4-トリアゾール等のトリアゾール系ブロック剤;
9)1H-1,2,3,4-テトラゾール等のテトラゾール系ブロック剤。
これらの中でも、1,2,4-トリアゾール、1,2,3-トリアゾール等の8)トリアゾール系ブロック剤が好ましい。
【0066】
(その他ブロック剤)
ブロックポリイソシアネートの製造に用いられるブロック剤は、上述の化合物(I)または(B)窒素を1つ以上含有する複素環を有する化合物以外に、樹脂組成物としたときの貯蔵安定性及び樹脂膜としたときの低温硬化性を阻害しない範囲内で、さらに、他のブロック剤を含んでもよい。
なお、ブロックポリイソシアネートの製造に用いられる全ブロック剤のモル総量に対して、上記化合物(I)または(B)窒素を1つ以上含有する複素環を有する化合物の含有量が5モル%以上であることが好ましく、50モル%以上であることがより好ましく、70モル%以上であることがさらに好ましく、80モル%以上であることがよりさらに好ましく、90モル%以上であることが特に好ましく、100モル%であることが最も好ましい。
上記化合物(I)または(B)窒素を1つ以上含有する複素環を有する化合物の含有量が上記範囲内であることにより、樹脂膜としたときの低温硬化性をより向上させることができる。
【0067】
他のブロック剤としては、例えば、1)アルコール系化合物、2)アルキルフェノール系化合物、3)フェノール系化合物、4)化合物(I)以外の活性メチレン系化合物、5)メルカプタン系化合物、6)酸アミド系化合物、7)酸イミド系化合物、8)イミダゾール系化合物、9)尿素系化合物、10)オキシム系化合物、11)アミン系化合物、12)イミド系化合物、13)重亜硫酸塩、14)ピラゾール系化合物、15)トリアゾール系化合物等が挙げられる。ブロック剤としてより具体的には、以下に示すもの等が挙げられる。
【0068】
1)アルコール系化合物:メタノール、エタノール、2-プロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、2-ブトキシエタノール等のアルコール類。
2)アルキルフェノール系化合物:炭素原子数4以上のアルキル基を置換基として有するモノ及びジアルキルフェノール類。アルキルフェノール系化合物として具体的には、例えば、n-プロピルフェノール、iso-プロピルフェノール、n-ブチルフェノール、sec-ブチルフェノール、tert-ブチルフェノール、n-ヘキシルフェノール、2-エチルヘキシルフェノール、n-オクチルフェノール、n-ノニルフェノール等のモノアルキルフェノール類;ジ-n-プロピルフェノール、ジイソプロピルフェノール、イソプロピルクレゾール、ジ-n-ブチルフェノール、ジ-tert-ブチルフェノール、ジ-sec-ブチルフェノール、ジ-n-オクチルフェノール、ジ-2-エチルヘキシルフェノール、ジ-n-ノニルフェノール等のジアルキルフェノール類。
3)フェノール系化合物:フェノール、クレゾール、エチルフェノール、スチレン化フェノール、ヒドロキシ安息香酸エステル等。
4)活性メチレン系化合物:マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン等。
5)メルカプタン系化合物:ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン等。
6)酸アミド系化合物:アセトアニリド、酢酸アミド、ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタム等。
7)酸イミド系化合物:コハク酸イミド、マレイン酸イミド等。
8)イミダゾール系化合物:イミダゾール、2-メチルイミダゾール等。
9)尿素系化合物:尿素、チオ尿素、エチレン尿素等。
10)オキシム系化合物:ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等。
11)アミン系化合物:ジフェニルアミン、アニリン、カルバゾール、ジーn-プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、イソプロピルエチルアミン等。
12)イミン系化合物:エチレンイミン、ポリエチレンイミン等。
13)重亜硫酸塩化合物:重亜硫酸ソーダ等。
14)ピラゾール系化合物:ピラゾール、3-メチルピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール等。
15)トリアゾール系化合物:3,5-ジメチル-1,2,4-トリアゾール等。
【0069】
[親水性化合物]
本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物に含まれるブロックポリイソシアネートは、その一部又は全部が親水性化合物から誘導される構造単位を有してもよい。
すなわち、本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物に含まれるブロックポリイソシアネートは、その一部又は全部が親水性ブロックポリイソシアネートであってもよい。
【0070】
親水性化合物は、1つのイソシアネート基と反応するために、ポリイソシアネートが有するイソシアネート基と反応するための活性水素基を、親水性化合物1分子に対して、1つ以上有することが好ましい。活性水素基として、具体的には、水酸基、メルカプト基、カルボン酸基、アミノ基、チオール基が挙げられる。
【0071】
親水性基としては、ノニオン性親水性基、カチオン性親水性基、アニオン性親水性基が挙げられる。これら親水性基は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、親水性基としては、入手容易性及び配合物との電気的な相互作用を受けにくいという観点で、ノニオン性親水性基が好ましく、得られる樹脂膜の硬度の低下を抑制する観点で、アニオン性親水性基が好ましい。
【0072】
(ノニオン性親水性基を有する親水性化合物)
ノニオン性親水性基を有する親水性化合物として、具体的には、モノアルコール、アルコールの水酸基にエチレンオキサイドを付加した化合物が挙げられる。モノアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール等が挙げられる。アルコールの水酸基にエチレンオキサイドを付加した化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。これらノニオン性親水性基を有する親水性化合物は、イソシアネート基と反応する活性水素基も有する。
エチレンオキサイドを付加した化合物のエチレンオキサイドの付加数としては、4以上30以下が好ましく、4以上20以下がより好ましい。エチレンオキサイドの付加数が上記下限値以上であることで、ブロックポリイソシアネート組成物に水分散性をより効果的に付与できる傾向にあり、エチレンオキサイドの付加数が上記上限値以下であることで、低温貯蔵時にブロックポリイソシアネート組成物の析出物がより発生しにくい傾向にある。
中でも、ノニオン性親水性基を有する親水性化合物としては、少ない使用量でブロックポリイソシアネート組成物の水分散性を向上できることから、モノアルコールが好ましい。
【0073】
ブロックポリイソシアネートに付加されるノニオン性親水性基の量(以下、「ノニオン性親水性基の含有量」と称する場合がある)の下限値は、ブロックポリイソシアネート組成物の水分散安定性の観点から、ブロックポリイソシアネート組成物の固形分の質量に対して、1質量%が好ましく、2質量%がより好ましく、3質量%がさらに好ましく、4質量%が特に好ましい。
また、ノニオン性親水性基の含有量の上限値は、得られる樹脂膜の耐水性の観点から、ブロックポリイソシアネート組成物の固形分の質量に対して、30質量%が好ましく、20質量%がより好ましく、18質量%がさらに好ましく、15質量%が特に好ましい。
すなわち、ノニオン性親水性基の含有量は、ブロックポリイソシアネート組成物の不揮発分の質量に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、2質量%以上20質量%以下がより好ましく、3質量%以上18質量%以下がさらに好ましく、4質量%以上15質量%以下が特に好ましい。
ノニオン性親水性基の含有量が上記範囲内であることにより、ブロックポリイソシアネート組成物がより水に分散し、得られる樹脂膜の耐水性が向上する傾向にある。
【0074】
(カチオン性親水性基を有する親水性化合物)
カチオン性親水性基を有する親水性化合物として、具体的には、カチオン性親水性基と活性水素基とを併せて有する化合物が挙げられる。また、グリシジル基等の活性水素基を有する化合物と、スルフィド、ホスフィン等のカチオン性親水性基を有する化合物を併せて、親水性化合物としてもよい。この場合は、予め、イソシアネート基を有する化合物と活性水素基を有する化合物を反応させ、グリシジル基等の官能基を付加し、その後、スルフィド、ホスフィン等の化合物を反応させる。製造の容易性の観点からは、カチオン性親水性基と活性水素基とを併せて有する化合物が好ましい。
【0075】
カチオン性親水性基と活性水素基とを併せて有する化合物として、具体的には、例えば、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、メチルジエタノールアミン等が挙げられる。また、これらの化合物を用いて付加された三級アミノ基は、例えば、硫酸ジメチル、硫酸ジエチルで四級化することもできる。
【0076】
カチオン性親水性基を有する親水性化合物とポリイソシアネートとの反応は、溶剤の存在下で反応させることができる。この場合の溶剤は、活性水素基を含まないものが好ましく、具体的には、例えば、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。
【0077】
ブロックポリイソシアネートに付加されたカチオン性親水性基は、アニオン性基を有する化合物で中和されることが好ましい。このアニオン性基として、具体的には、例えば、カルボキシ基、スルホン酸基、燐酸基、ハロゲン基、硫酸基等が挙げられる。
カルボキシル基を有する化合物として、具体的には、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸等が挙げられる。
スルホン酸基を有する化合物として、具体的には、例えば、エタンスルホン酸等が挙げられる。
燐酸基を有する化合物として、具体的には、例えば、燐酸、酸性燐酸エステル等が挙げられる。
ハロゲン基を有する化合物として、具体的には、例えば、塩酸等が挙げられる。
硫酸基を有する化合物として、具体的には、例えば、硫酸等が挙げられる。
中でも、アニオン性基を有する化合物としては、カルボキシル基を有する化合物が好ましく、酢酸、プロピオン酸又は酪酸がより好ましい。
【0078】
(アニオン性親水性基を有する親水性化合物)
アニオン性親水性基として、具体的には、カルボキシ基、スルホン酸基、燐酸基、ハロゲン基、硫酸基が挙げられる。
アニオン性親水性基を有する親水性化合物として、具体的には、アニオン性基と活性水素基とを併せて有する化合物が挙げられ、より具体的には、例えば、モノヒドロキシカルボン酸、ポリヒドロキシカルボン酸のカルボキシ基をアニオン性基として有する化合物が挙げられる。
モノヒドロキシカルボン酸としては、例えば、1-ヒドロキシ酢酸、3-ヒドロキシプロパン酸、12-ヒドロキシ-9-オクタデカン酸、ヒドロキシピバル酸(ヒドロキシピバリン酸)、乳酸等が挙げられる。
ポリヒドロキシカルボン酸のカルボキシ基をアニオン性基として有する化合物としては、例えば、ジメチロール酢酸、2,2-ジメチロール酪酸、2,2-ジメチロールペンタン酸、ジヒドロキシコハク酸、ジメチロールプロピオン酸等が挙げられる。
また、スルホン酸基と活性水素基とを併せて有する化合物も挙げられ、より具体的には、例えば、イセチオン酸等が挙げられる。
中でも、アニオン性基と活性水素基とを併せて有する化合物としては、ヒドロキシピバル酸又はジメチロールプロピオン酸が好ましい。
【0079】
ブロックポリイソシアネートに付加されたアニオン性親水性基は、塩基性物質であるアミン系化合物で中和することが好ましい。
アミン系化合物として、具体的には、例えば、アンモニア、水溶性アミノ化合物等が挙げられる。
水溶性アミノ化合物として、具体的には、例えば、モノエタノールアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリエタノールアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、メチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリン等が挙げられる。また、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン等の第3級アミンも挙げられ、これらを用いることもできる。これらのアミン系化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0080】
<アニオン性分散剤>
本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物は、上記測定方法で測定される25℃における表面張力が32mN/m以上51mN/m以下であるアニオン性分散剤を含有することで、水系塗液と混合した際に水中で乳化性を向上させることができ、水分散安定性を向上することができる。そのため、樹脂組成物としたときの貯蔵安定性を良好なものとすることができる。当該効果を発揮できる分散剤は、上記範囲内の表面張力であるアニオン性分散剤であり、上記範囲外の表面張力であるアニオン性分散剤やノニオン性分散剤、カチオン性分散剤、両性分散剤では、当該効果を十分に奏することができないことを本発明者らは今回初めて見出した。
【0081】
使用するアニオン性分散剤としては、上記測定方法で測定される25℃における表面張力が32mN/m以上51mN/m以下であるものであれば特に限定されない。アニオン性分散剤として具体的には、例えば、脂肪酸塩型化合物、アルキル硫酸エステル化合物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩型化合物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩型化合物、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸塩型化合物、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸塩型化合物、アルキルベンゼンスルホン酸塩型化合物、スルホコハク酸塩型化合物、アルキルリン酸塩型化合物等が挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩型化合物としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム塩等が挙げられる。ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸塩型化合物としては、例えば、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸アンモニウム塩、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸ナトリウム塩等が挙げられる。ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸塩型化合物としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム塩等が挙げられる。これらのうち、25℃における表面張力が32mN/m以上51mN/m以下であるものを用いることができる。また、これらアニオン性分散剤を1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
これらのアニオン性分散剤の中では、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸アンモニウム塩、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸ナトリウム塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム塩が特に好ましい。
【0082】
アニオン性分散剤の含有量は、ブロックポリイソシアネート100質量部に対して、0.01質量部以上5質量部以下が好ましく、0.05質量部以上3質量部以下がより好ましく、0.10質量部以上2質量部以下がより好ましく、0.14質量部以上1.6質量部以下さらに好ましい。アニオン性分散剤の含有量が上記下限値以上であることで、樹脂組成物としたときの貯蔵安定性をより良好なものとすることができ、一方、上記上限値以下であることで、樹脂膜としたときの引張強度をより良好なものとすることができる。
【0083】
<カルボン酸塩>
前記ブロック剤が、(B)窒素を1つ以上含有する複素環を有する化合物を含む時、前記ブロックポリイソシアネート組成物は更にカルボン酸塩を含む。
カルボン酸塩としては、例えば、カウンターカチオンが第四級アンモニウムイオンであるカルボン酸の第四級アンモニウム塩、カウンターカチオンが金属イオンであるカルボン酸金属塩等が挙げられるが、低温硬化性の点から、カルボン酸金属塩が好ましい。
【0084】
カルボン酸の第四級アンモニウム塩(第四級アンモニウムカチオンのカルボン酸塩)としては、例えば、以下に示すもの等が挙げられる。
(1)テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム等のテトラアルキルアンモニウムの酢酸塩、プロピオン酸塩、オクチル酸塩、カプリン酸塩、ミリスチン酸塩、安息香酸塩等の有機弱酸塩。
(2)ベンジルトリメチルアンモニウム、トリメチルフェニルアンモニウム等のアリールトリアルキルアンモニウム等の酢酸塩、プロピオン酸塩、オクチル酸塩、カプリン酸塩、ミリスチン酸塩、安息香酸塩等の有機弱酸塩。
(3)トリメチルヒドロキシエチルアンモニウム、トリメチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリエチルヒドロキシエチルアンモニウム、トリエチルヒドロキシプロピルアンモニウム等の酢酸塩、プロピオン酸塩、オクチル酸塩、カプリン酸塩、ミリスチン酸塩、安息香酸塩等の有機弱酸塩。
【0085】
カルボン酸金属塩の金属種としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、セシウム、ニッケル、コバルト、カドミウム、バリウム、カルシウム、亜鉛、マンガン、銅、セリウム、ジルコニウム、鉄、鉛、ゲルマニウム、アンチモン、アルミニウム、チタン、ビスマス等が挙げられる。中でも、金属種としては、ブロックポリイソシアネート組成物の貯蔵安定性の観点から、1価の金属が好ましい。また、低温硬化性の観点から、ナトリウム、カリウム、リチウム、セシウム等の第1族元素であることがより好ましい。
【0086】
カルボン酸金属塩のカルボン酸は、モノカルボン酸及びジカルボン酸の両方を包含し、例えば、ギ酸、酢酸、アクリル酸、メタクリル酸、プロピオン酸、酪酸、ヘキサン酸、オクチル酸、オクタン酸、カプリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、エイコサン酸、ミリスチン酸、安息香酸等の脂肪族飽和酸、不飽和酸及び芳香族酸が挙げられる。中でも、カルボン酸金属塩のカルボン酸は、相溶性の観点から、炭素数が1以上12以下であるものが好ましく、耐塗膜黄変性の観点から、炭素数1以上12以下の脂肪族酸がより好ましい。
【0087】
好ましいカルボン酸金属塩として具体的には、例えば、プロピオン酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸カリウム、2-エチルヘキサン酸カリウム、酢酸セシウム、酢酸リチウム、2-エチルヘキサン酸ビスマス等が挙げられ、酢酸カリウムが好ましい。
【0088】
カルボン酸塩のカウンターカチオンの含有量は、ブロックポリイソシアネート組成物の貯蔵安定性の観点から、ブロックポリイソシアネートの総質量に対して、0.1質量%以上20質量%以下が好ましく、0.3質量%以上15質量%以下がより好ましく、0.5質量%以上10質量%以下がさらに好ましい。
カウンターカチオンの含有量は、試料に超純水を添加して混合して得られる水層をフィルターでろ過後、イオンクロマトグラフにより測定することができる。測定条件は、実施例に示すとおりである。
【0089】
<その他構成成分>
本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物は、上記ブロックポリイソシアネート及び上記アニオン性分散剤に加えて、溶剤等の添加剤を更に含むことができる。
【0090】
溶剤としては、例えば、1-メチルピロリドン、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エタノール、メタノール、iso-プロパノール、1-プロパノール、iso-ブタノール、1-ブタノール、2-エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、ペンタン、iso-ペンタン、ヘキサン、iso-ヘキサン、シクロヘキサン、ソルベントナフサ、ミネラルスピリット等が挙げられる。これら溶剤を、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。水への分散性の観点から、溶剤としては、水への溶解度が5質量%以上のものが好ましく、具体的には、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルが好ましい。
【0091】
<ブロックポリイソシアネート組成物の製造方法>
ブロックポリイソシアネート組成物は、特に限定されないが、例えば、上記ポリイソシアネートと上記ブロック剤とを反応させて得られる。
ポリイソシアネートとブロック剤とのブロック化反応は、溶剤の存在の有無に関わらず行うことができ、ブロックポリイソシアネートが得られる。
なお、ブロック剤は、(A)上記化合物(I)または(B)窒素を1つ以上含有する複素環を有する化合物のうち1種類を単独で用いてもよく、上記化合物(I)または(B)窒素を1つ以上含有する複素環を有する化合物から選択される2種類以上を併用してもよく、上述したその他のブロック剤をさらに併用してもよい。
ブロック剤の添加量は、通常は、イソシアネート基のモル総量に対して80モル%以上200モル%以下であってよく、90モル%以上150モル%以下であることが好ましく、93モル%以上130モル%以下であることがより好ましい。
【0092】
また、溶剤を用いる場合、イソシアネート基に対して不活性な溶剤を用いればよい。
溶剤を用いる場合、ブロックポリイソシアネート組成物100質量部に対するポリイソシアネート及びブロック剤に由来する不揮発分の含有量は、通常は、10質量部以上95質量部以下であってよく、15質量部以上80質量部以下であることが好ましく、20質量部以上75質量部以下であることがより好ましい。
【0093】
ブロック化反応に際して、錫、亜鉛、鉛等の有機金属塩、3級アミン系化合物及びナトリウム等のアルカリ金属のアルコラート等を触媒として用いてもよい。
触媒の添加量は、ブロック化反応の温度等により変動するが、通常は、ポリイソシアネート100質量部に対して0.05質量部以上1.5質量部以下であってよく、0.1質量部以上1.0質量部以下であることが好ましい。
【0094】
ブロック化反応は、一般に-20℃以上150℃以下で行うことができ、0℃以上100℃以下で行うことが好ましく、10℃以上70℃以下で行うことがより好ましい。ブロック化反応の温度が上記下限値以上であることにより、反応速度をより高めることができ、上記上限値以下であることにより、副反応をより抑制することができる。
ブロック化反応後には、酸性化合物等の添加で中和処理してもよい。
前記酸性化合物としては、無機酸を用いてもよく、有機酸を用いてもよい。無機酸としては、例えば、塩酸、亜燐酸、燐酸等が挙げられる。有機酸としては、例えば、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート等が挙げられる。
【0095】
また、親水性化合物とブロック剤とを用いてブロックポリイソシアネート組成物を製造する場合には、例えば、上記ポリイソシアネートと上記親水性化合物と上記ブロック剤とを反応させて得られる。
ポリイソシアネートのイソシアネート基と親水性化合物との反応、及び、ポリイソシアネートとブロック剤との反応を同時に行うこともでき、又は、あらかじめどちらかの反応を行った後に、2つ目の反応を行うこともできる。中でも、イソシアネート基と親水性化合物との反応を先に行い、親水性化合物により変性されたポリイソシアネート組成物(以下、「変性ポリイソシアネート組成物」と称する場合がある)を得た後、得られた変性ポリイソシアネート組成物とブロック剤との反応を行うことが好ましい。
【0096】
ポリイソシアネートと親水性化合物との反応は、有機金属塩、3級アミン系化合物、アルカリ金属のアルコラートを触媒として用いてもよい。前記有機金属塩を構成する金属としては、例えば、錫、亜鉛、鉛等が挙げられる。前記アルカリ金属としては、例えば、ナトリウム等が挙げられる。
【0097】
ポリイソシアネートと親水性化合物との反応温度は、-20℃以上150℃以下が好ましく、30℃以上130℃以下がより好ましい。反応温度が上記下限値以上であることで、反応性をより高くできる傾向にある。また、反応温度が上記上限値以下であることで、副反応をより効果的に抑制できる傾向にある。
【0098】
親水性化合物が未反応状態で残存しないよう、完全にポリイソシアネートと反応させることが好ましい。未反応状態で残存しないことにより、ブロックポリイソシアネート組成物の水分散安定性、及び、樹脂膜としたときの低温硬化性の低下をより効果的に抑制する傾向にある。
【0099】
変性ポリイソシアネート組成物とブロック剤とのブロック化反応は、上述のブロック化反応として記載された方法を用いることができる。
【0100】
≪樹脂組成物≫
本発明の第2の実施形態の樹脂組成物は、上記第1の実施形態のブロックポリイソシアネート組成物と、多価ヒドロキシ化合物とを含む。本実施形態の樹脂組成物は、硬化剤成分と、主剤成分とを含む一液型樹脂組成物ということもできる。
【0101】
本実施形態の樹脂組成物は、貯蔵安定性に優れ、低温硬化性に優れる樹脂膜が得られる。
本実施形態の樹脂組成物の構成成分について、以下に詳細を説明する。
【0102】
<多価ヒドロキシ化合物>
本明細書において、「多価ヒドロキシ化合物」とは、一分子中に少なくとも2個のヒドロキシ基(水酸基)を有する化合物を意味し、「ポリオール」とも呼ばれる。
前記多価ヒドロキシ化合物として具体的には、例えば、脂肪族炭化水素ポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類、エポキシ樹脂類、含フッ素ポリオール類、アクリルポリオール類等が挙げられる。
中でも、多価ヒドロキシ化合物としては、ポリエステルポリオール類、含フッ素ポリオール類又はアクリルポリオール類であることが好ましい。
【0103】
[脂肪族炭化水素ポリオール類]
前記脂肪族炭化水素ポリオール類としては、例えば、末端水酸基化ポリブタジエンやその水素添加物等が挙げられる。
【0104】
[ポリエーテルポリオール類]
前記ポリエーテルポリオール類としては、例えば、以下(1)~(3)のいずれかの方法等を用いて得られるものが挙げられる。
(1)多価アルコールの単独又は混合物に、アルキレンオキサイドの単独又は混合物を付加して得られるポリエーテルポリオール類又はポリテトラメチレングリコール類。
(2)アルキレンオキサイドに多官能化合物を反応させて得られるポリエーテルポリオール類。
(3)(1)又は(2)で得られたポリエーテルポリオール類を媒体としてアクリルアミド等を重合して得られる、いわゆるポリマーポリオール類。
前記多価アルコールとしては、例えば、グリセリンやプロピレングリコール等が挙げられる。
前記アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等が挙げられる。
前記多官能化合物としては、例えば、エチレンジアミン、エタノールアミン類等が挙げられる。
【0105】
[ポリエステルポリオール類]
前記ポリエステルポリオール類としては、例えば、以下の(1)又は(2)のいずれかのポリエステルポリオール類等が挙げられる。
(1)二塩基酸の単独又は2種類以上の混合物と、多価アルコールの単独又は2種類以上の混合物との縮合反応によって得られるポリエステルポリオール樹脂類。
(2)ε-カプロラクトンを多価アルコールで開環重合して得られるポリカプロラクトン類。
前記二塩基酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等のカルボン酸等が挙げられる。
前記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、トリメチルペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、2-メチロールプロパンジオール、エトキシ化トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0106】
[エポキシ樹脂類]
前記エポキシ樹脂類としては、例えば、ノボラック型エポキシ樹脂、β-メチルエピクロ型エポキシ樹脂、環状オキシラン型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリコールエーテル型エポキシ樹脂、エポキシ型脂肪族不飽和化合物、エポキシ化脂肪酸エステル、エステル型多価カルボン酸、アミノグリシジル型エポキシ樹脂、ハロゲン化型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂類、及びこれらエポキシ樹脂をアミノ化合物、ポリアミド化合物等で変性した樹脂類等が挙げられる。
【0107】
[含フッ素ポリオール類]
前記含フッ素ポリオール類としては、例えば、参考文献1(特開昭57-34107号公報)、参考文献2(特開昭61-275311号公報)等で開示されているフルオロオレフィン、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、モノカルボン酸ビニルエステル等の共重合体等が挙げられる。
【0108】
[アクリルポリオール類]
前記アクリルポリオール類は、例えば、一分子中に1個以上の活性水素を有する重合性モノマーを重合させる、又は、一分子中に1個以上の活性水素を持つ重合性モノマーと、必要に応じて、当該重合性モノマーと共重合可能な他のモノマーとを、共重合させることによって得られる。
【0109】
前記一分子中に1個以上の活性水素を有する重合性モノマーとしては、例えば、以下(i)~(iii)に示すものが挙げられる。これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(i)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、アクリル酸-2-ヒドロキシブチル等の活性水素を持つアクリル酸エステル類。
(ii)メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸-2-ヒドロキシブチル等の活性水素を持つメタクリル酸エステル類。
(iii)グリセリンのアクリル酸モノエステル又はメタクリル酸モノエステル、トリメチロールプロパンのアクリル酸モノエステル又はメタクリル酸モノエステル等の多価活性水素を有する(メタ)アクリル酸エステル類。
【0110】
前記重合性モノマーと共重合可能な他のモノマーとしては、例えば、以下の(i)~(v)に示すものが挙げられる。これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(i)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸-n-ブチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル等のアクリル酸エステル類。
(ii)メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸-n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸-n-ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸グリシジル等のメタクリル酸エステル類。
(iii)アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸。
(iv)アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等の不飽和アミド。
(v)スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリロニトリル等。
【0111】
また、参考文献3(特開平1-261409号公報)及び参考文献4(特開平3-006273号公報)等で開示されている重合性紫外線安定性単量体を共重合して得られるアクリルポリオール類等が挙げられる。
【0112】
前記重合性紫外線安定性単量体として具体的には、例えば、4-(メタ)アクリロイルオキシ-2、2、6、6-テトラメチルピペリジン、4-(メタ)アクリロイルアミノ-2、2、6、6-テトラメチルピペリジン、1-クロトノイル-4-クロトノイルオキシ-2、2、6、6-テトラメチルピペリジン、2-ヒドロキシ-4-(3-メタクリルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0113】
例えば、上記の単量体成分を、公知の過酸化物やアゾ化合物等のラジカル重合開始剤の存在下で溶液重合し、必要に応じて有機溶剤等で希釈することによって、アクリルポリオールを得ることができる。
【0114】
水系ベースアクリルポリオールを得る場合には、オレフィン性不飽和化合物を溶液重合し、水層に転換する方法や乳化重合等の公知の方法で製造することができる。その場合、アクリル酸、メタアクリル酸等のカルボン酸含有モノマーやスルホン酸含有モノマー等の酸性部分をアミンやアンモニアで中和することによって水溶性又は水分散性を付与することができる。
【0115】
[NCO/OH]
本実施形態の樹脂組成物に含まれる多価ヒドロキシ化合物の水酸基に対するブロックポリイソシアネート組成物のイソシアネート基のモル当量比(NCO/OH)は、必要とする樹脂膜の物性により決定されるが、通常、0.01以上22.5以下である。
【0116】
[ガラス転移温度]
多価ヒドロキシ化合物のガラス転移温度は、0℃以上100℃以下が好ましく、0℃以上90℃以下がより好ましく、0℃以上80℃以下がさらに好ましく、5℃以上70℃以下が特に好ましい。多価ヒドロキシ化合物のガラス転移温度が上記範囲内であることで、引張強度により優れる樹脂膜が得られる。多価ヒドロキシ化合物のガラス転移温度は、例えば、後述する実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
【0117】
[重量平均分子量]
多価ヒドロキシ化合物の重量平均分子量は、5.0×10以上2.0×10以下が好ましく、5.0×10以上1.5×10以下がより好ましく、5.0×10以上1.0×10以下がさらに好ましい。多価ヒドロキシ化合物の重量平均分子量が上記範囲内であることで、引張強度等の各種物性により優れる樹脂膜が得られる。多価ヒドロキシ化合物の重量平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)測定によるポリスチレン基準の重量平均分子量である。具体的には、後述する実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
【0118】
[水酸基価]
多価ヒドロキシ化合物の水酸基価は、30mgKOH/g以上250mgKOH/g以下が好ましく、40mgKOH/g以上200mgKOH/g以下がより好ましく、45mgKOH/g以上180mgKOH/g以下がさらに好ましい。多価ヒドロキシ化合物の水酸基価が上記範囲内であることで、引張強度等の各種物性により優れる樹脂膜が得られる。多価ヒドロキシ化合物の水酸基価は、例えば、後述する実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
【0119】
本実施形態の樹脂組成物中におけるブロックポリイソシアネートの含有量は、多価ヒドロキシ化合物100質量部に対して、5質量部以上200質量部以下が好ましく、6質量部以上180質量部以下がより好ましく、10質量部以上150質量部以下がさらに好ましい。ブロックポリイソシアネートの含有量が上記範囲内であることで、引張強度等の各種物性により優れる樹脂膜が得られる。ブロックポリイソシアネートの含有量は、例えば、配合量から算出することもでき、或いは、核磁気共鳴(NMR)法及びガスクロマトグラフィー/質量分析法(GC/MS法)を用いて、同定及び定量して算出することもできる。
【0120】
<その他添加剤>
本実施形態の樹脂組成物は、その他添加剤を更に含んでもよい。
その他添加剤としては、例えば、多価ヒドロキシ化合物中の架橋性官能基と反応しうる硬化剤、硬化触媒、溶剤、顔料類(体質顔料、着色顔料、メタリック顔料等)、紫外線吸収剤、光安定剤、ラジカル安定剤、焼付工程時の着色を抑える黄変防止剤、塗面調整剤、流動調整剤、顔料分散剤、消泡剤、増粘剤、造膜助剤等が挙げられる。
【0121】
前記硬化剤としては、例えば、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ基含有化合物又は樹脂、カルボキシル基含有化合物又は樹脂、酸無水物、アルコキシシラン基含有化合物又は樹脂、ヒドラジド化合物等が挙げられる。
【0122】
前記硬化触媒としては、塩基性化合物であってもよく、ルイス酸性化合物であってもよい。
前記塩基性化合物としては、例えば、金属ヒドロキシド、金属アルコキシド、金属カルボキシレート、金属アセチルアセチネート、オニウム塩の水酸化物、オニウムカルボキシレート、オニウム塩のハロゲン化物、活性メチレン系化合物の金属塩、活性メチレン系化合物のオニウム塩、アミノシラン類、アミン類、ホスフィン類等が挙げられる。前記オニウム塩としては、アンモニウム塩、ホスホニウム塩又はスルホニウム塩が好適である。
前記ルイス酸性化合物としては、例えば、有機スズ化合物、有機亜鉛化合物、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物等が挙げられる。
【0123】
前記溶剤としては、上記ブロックポリイソシアネート組成物において例示されたものと同様のものが挙げられる。
【0124】
また、顔料類(体質顔料、着色顔料、メタリック顔料等)、紫外線吸収剤、光安定剤、ラジカル安定剤、焼付工程時の着色を抑える黄変防止剤、塗面調整剤、流動調整剤、顔料分散剤、消泡剤、増粘剤及び造膜助剤としては、公知のものを適宜選択して用いることができる。
【0125】
<樹脂組成物の製造方法>
本実施形態の樹脂組成物は、溶剤ベース、水系ベースどちらにも使用可能であるが、水系ベースで貯蔵安定性が良好であり、樹脂膜としたときの80℃以下での低温硬化性に優れる樹脂組成物はこれまでに知られていなかったことから、水系ベースの樹脂組成物として好適に用いられる。
【0126】
水系ベースの樹脂組成物(水系樹脂組成物)を製造する場合には、まず、多価ヒドロキシ化合物又はその水分散体若しくは水溶物に、必要に応じて、多価ヒドロキシ化合物中の架橋性官能基と反応しうる硬化剤、硬化触媒、溶剤、顔料類(体質顔料、着色顔料、メタリック顔料等)、紫外線吸収剤、光安定剤、ラジカル安定剤、焼付工程時の着色を抑える黄変防止剤、塗面調整剤、流動調整剤、顔料分散剤、消泡剤、増粘剤、造膜助剤等の添加剤を加える。次いで、上記ブロックポリイソシアネート組成物又はその水分散体を硬化剤として添加し、必要に応じて、水や溶剤を更に添加して、粘度を調整する。次いで、攪拌機器により強制攪拌することによって、水系ベースの樹脂組成物(水系樹脂組成物)を得ることができる。
【0127】
溶剤ベースの樹脂組成物を製造する場合には、まず、多価ヒドロキシ化合物又はその溶剤希釈物に、必要に応じて、多価ヒドロキシ化合物中の架橋性官能基と反応しうる硬化剤、硬化触媒、溶剤、顔料類(体質顔料、着色顔料、メタリック顔料等)、紫外線吸収剤、光安定剤、ラジカル安定剤、焼付工程時の着色を抑える黄変防止剤、塗面調整剤、流動調整剤、顔料分散剤、消泡剤、増粘剤、造膜助剤等の添加剤を加える。次いで、上記ブロックポリイソシアネート組成物を硬化剤として添加し、必要に応じて、溶剤を更に添加して、粘度を調整する。次いで、手攪拌又はマゼラー等の攪拌機器を用いて攪拌することによって、溶剤ベースの樹脂組成物を得ることができる。
【0128】
≪樹脂膜≫
本発明の第3の実施形態の樹脂膜は、上記第2の実施形態の樹脂組成物を硬化させてなる。本実施形態の樹脂膜は、低温硬化性が良好である。
【0129】
本実施形態の樹脂膜は、上記樹脂組成物を、基材にロール塗装、カーテンフロー塗装、スプレー塗装、ベル塗装、静電塗装等の公知の方法を用いて塗装し、加熱して硬化させることで得られる。
【0130】
加熱温度は、省エネルギー及び基材の耐熱性の観点から、約60℃以上約120℃以下が好ましく、約65℃以上約110℃以下がより好ましく、約70℃以上約100℃以下がさらに好ましい。
加熱時間は、省エネルギー及び基材の耐熱性の観点から、約1分間以上約60分間以下が好ましく、約2分間以上約40分間以下がより好ましい。
【0131】
基材としては、特に限定されるものではなく、例えば、乗用車、トラック、オートバイ、バス等の自動車車体の外板部;バンパー等の自動車部品;携帯電話、オーディオ機器等の家庭電気製品の外板部;各種フィルム等が挙げられ、中でも、自動車車体の外板部又は自動車部品が好ましい。
【0132】
基材の材質は、特に限定されるものではなく、例えば、鉄、アルミニウム、真鍮、銅、ブリキ、ステンレス鋼、亜鉛メッキ鋼、亜鉛合金(Zn-Al、Zn-Ni、Zn-Fe等)メッキ鋼等の金属材料;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂類、各種のFRP等のプラスチック材料;ガラス、セメント、コンクリート等の無機材料;木材、紙、布等の繊維材料等が挙げられ、中でも、金属材料又はプラスチック材料が好ましい。
【0133】
基材は、上記金属材料の表面、又は、上記金属材料から成形された車体等の金属表面に、リン酸塩処理、クロメート処理、複合酸化物処理等の表面処理が施されたものであってもよく、さらに、その上に塗膜が形成されているものであってもよい。塗膜が形成された基材としては、必要に応じて表面処理を施し、その上に下塗り塗膜が形成されたもの、例えば、電着塗料によって下塗り塗膜が形成された車体であってもよい。基材は、上記プラスチック材料の表面、又は、上記プラスチック材料から成形された自動車部品等のプラスチック表面に、所望による表面処理を行ったものであってもよい。また、基材は、プラスチック材料と金属材料とが組み合わさったものであってもよい。
【0134】
本実施形態の樹脂膜は、後述する実施例に示すように、上記樹脂組成物を80℃で30分間加熱して硬化させてなる膜厚40μmの樹脂膜を、23℃で1週間保存後にアセトン中に23℃で24時間浸漬した際のゲル分率が80質量%以上であることが好ましく、84質量%以上がより好ましく、86質量%以上がさらに好ましい。ゲル分率が上記下限値以上であることで、低温硬化性がより良好なものとすることができる。一方、ゲル分率の上限値は特に限定されないが、例えば100質量%とすることができる。ゲル分率の具体的な測定方法は、例えば、後述する実施例に示す方法を用いることができる。
【0135】
本実施形態の樹脂膜は、後述する実施例に示すように、上記樹脂組成物を80℃で30分間加熱して硬化させてなる膜厚40μm、幅10mm及び長さ40mmの樹脂膜をチャック間距離20mmとなるようにセットし、20mm/分の速度で実施された引張試験における最大応力(引張強度)が5MPa以上であることが好ましく、10MPaがより好ましく、15MPa以上であることがさらに好ましい。一方、最大応力の上限値は特に限定されないが、例えば80MPaとすることができ、例えば70MPaとすることができる。最大応力の具体的な測定方法は、例えば、後述する実施例に示す方法を用いることができる。
【0136】
本実施形態の樹脂膜は低温硬化性に優れることから、省エネルギー化が求められる種々の分野の製品や、耐熱性の低い材料の塗膜として好適に用いられる。
【0137】
≪積層体≫
本発明の第4の実施形態の積層体は、異なる組成の、上記第3の実施形態の樹脂膜を2層以上含む。また、本実施形態の積層体の1層当たりの厚さは、1μm以上50μm以下である。本実施形態の積層体は、上記樹脂膜を含むことで、低温硬化性に優れる。
【0138】
本実施形態の積層体は、同じ組成の上記樹脂膜を2層以上含むこともできる。
【0139】
また、本実施形態の積層体は、被着体上に上記樹脂膜を含む各種の塗膜を積層させてなる。
被着体としては、例えば、ガラス、各種金属、多孔質部材、各種塗装が施された部材、シーリング材硬化物、ゴム類、皮革類、繊維類、不織布、樹脂類のフィルム及びプレート、紫外線硬化型アクリル樹脂層、インキ類からなる層が挙げられる。前記各種金属としては、例えば、アルミニウム、鉄、亜鉛鋼板、銅、ステンレス鋼等が挙げられる。前記多孔質部材としては、例えば、木材、紙、モルタル、石材等が挙げられる。前記各種塗装としては、例えば、フッ素塗装、ウレタン塗装、アクリルウレタン塗装等が挙げられる。前記シーリング材硬化物としては、例えば、シリコーン系、変性シリコーン系、ウレタン系等が挙げられる。前記ゴム類としては、例えば、天然ゴム、合成ゴム等が挙げられる。前記皮革類としては、例えば、天然皮革、人工皮革等が挙げられる。前記繊維類としては、例えば、植物系繊維、動物系繊維、炭素繊維、ガラス繊維等が挙げられる。前記樹脂類のフィルム及びプレートの原料となる樹脂類としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、アクリル、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、ポリオレフィン等が挙げられる。前記インキ類としては、印刷インキ、UVインキ等が挙げられる。
【0140】
本実施形態の積層体は、異なる組成の、上記樹脂組成物を、被着体にロール塗装、カーテンフロー塗装、スプレー塗装、ベル塗装、静電塗装等の公知の方法を用いてそれぞれ塗装し、それぞれ加熱して硬化させる、或いは、全ての層を塗装後にまとめて加熱して硬化させることで得られる。
【0141】
本実施形態の積層体は、上記樹脂膜に加えて、例えば、プライマー層、接着剤層、加飾層等、その他公知の成分からなる層を含むことができる。
【0142】
≪親水性ポリイソシアネート組成物≫
第5の実施形態の親水性ポリイソシアネート組成物は、親水性化合物と、イソシアヌレート基を有する脂環族ポリイソシアネートと、から誘導される。すなわち、本実施形態の親水性ポリイソシアネート組成物は、親水性化合物と脂環族ポリイソシアネートとの反応物である親水性ポリイソシアネートを含む。前記脂環族ポリイソシアネートのイソシアネート基の総モル量に対する前記親水性化合物により変性されたイソシアネート基の割合が2mol%以上15mol%以下である。
【0143】
本実施形態の親水性ポリイソシアネート組成物は、上記構成を有することで、水分散性が良好であり、且つ、樹脂膜としたときの硬度に優れる。
【0144】
親水性基は、親水性化合物と脂環族イソシアネートモノマーとを反応させる、或いは、親水性化合物と脂環族ポリイソシアネートとを反応させることで、導入される。本実施形態の親水性ポリイソシアネート組成物において、脂環族ポリイソシアネートのイソシアネート基の総モル量に対する前記親水性化合物により変性されたイソシアネート基の割合は、原料である脂環族ポリイソシアネートのイソシアネート基100モル%に対して、親水性化合物によって変性されたイソシアネート基の割合(以下、「変性率」と称する場合がある)ということもでき、親水性基が導入されたイソシアネート基及び前記親水性基が導入されていないイソシアネート基の総モル量に対する前記親水性基が導入されたイソシアネート基の割合ということもできる。
変性率は、2mol%以上15mol%以下であり、3mol%以上14mol%以下が好ましく、4mol%以上12mol%以下がより好ましく、5mol%以上10mol%以下がよりさらに好ましい。
変性率が上記範囲内であることで、水分散性が良好であり、且つ、樹脂膜としたときの硬度に優れる。また、後述する実施例に示すように、上記下限値以上であることで、本実施形態の親水性ポリイソシアネート組成物をブロックポリイソシアネート組成物とした場合に、樹脂膜としたときの80℃以下程度の低温での硬化性により優れる傾向がある。
変性率は、以下の方法を用いて、測定することができる。具体的には、液体クロマトグラフィー(LC)の220nmにおける、未変性の脂環族ポリイソシアネート、1変性の脂環族ポリイソシアネート、2変性の脂環族ポリイソシアネート、及び3変性の脂環族ポリイソシアネートのピーク面積比から求める。測定装置及び測定条件は、例えば、以下のとおりとすることができる。
【0145】
(装置及び測定条件)
LC装置:Waters社製、UPLC(商品名)
カラム:Waters社製、ACQUITY UPLC HSS T3 1.8μm
C18、内径2.1mm×長さ50mm
流速:0.3mL/min
移動相:A=10mM 酢酸アンモニウム水溶液、B=アセトニトリル
グラジェント条件:初期の移動相組成はA/B=98/2で、試料注入後Bの比率を直線的に上昇させ、10分後にA/B=0/100とする。
検出方法:フォトダイオードアレイ検出器、測定波長は220nm
【0146】
次いで、本実施形態の親水性ポリイソシアネート組成物の各構成成分について、以下に詳細を説明する。
【0147】
<脂環族ポリイソシアネート>
脂環族ポリイソシアネートは、1つ以上のイソシアネート基(-NCO)を有し、骨格が脂環族炭化水素基で構成されている単量体化合物(以下、「脂環族イソシアネートモノマー」と称する場合がある)を複数反応させて得られる反応物であり、イソシアヌレート基を有する。ここでいう「イソシアヌレート基」とは、3つのイソシアネート基を環化三量化してなる官能基である。
脂環族イソシアネートモノマーとしては、炭素数4以上30以下のものが好ましい。脂環族イソシアネートモノマーとして具体的には、例えば、イソホロンジイソシアネート(以下、「IPDI」と称する場合がある)、1,3-ビス(ジイソシアネートメチル) シクロヘキサン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ジイソシアネートノルボルナン、ジ(イソシアネートメチル)ノルボルナン等の脂環族ジイソシアネートが挙げられる。これら脂環族イソシアネートモノマーは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。中でも、脂環族ポリイソシアネートは、IPDIから誘導された、イソシアヌレート基を有するポリイソシアネートが好ましい。
【0148】
脂環族ポリイソシアネートは、イソシアヌレート基に加えて、その効果を損なわない範囲内において、イソシアヌレート基以外の官能基を有していてもよいが、イソシアヌレート基のみを有することが好ましい。イソシアヌレート基以外の官能基としては、例えば、アロファネート基、ウレトジオン基、イミノオキサジアジンジオン基、ウレタン基、ビウレット基等が挙げられる。
【0149】
<その他のポリイソシアネート>
本実施形態の親水性ポリイソシアネート組成物は、その効果を損なわない範囲内において、脂環族ポリイソシアネート以外のその他のポリイソシアネートを含んでいてもよいが、脂環族ポリイソシアネートのみを含むことが好ましい。
その他のポリイソシアネートとしては、1つ以上のイソシアネート基(-NCO)を有し、骨格が脂肪族又は芳香族炭化水素基で構成されている単量体化合物(以下、それぞれ「脂肪族イソシアネートモノマー」又は「芳香族イソシアネートモノマー」と称する場合がある)を複数反応させて得られる反応物である。その他のポリイソシアネートは、イソシアヌレート基を有していてもよく、有していなくてもよい。
脂肪族イソシアネートモノマーとしては、脂肪族ジイソシアネート、脂肪族トリイソシアネート等が挙げられる。脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、「HDI」と称する場合がある)、2,2,4-トリメチル-1,6-ジイソシアナトヘキサン、2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソイシアネート、2-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート(MPDI)、リジンジイソシアネート(以下、「LDI」と称する場合がある)等が挙げられる。脂肪族トリイソシアネートとしては、例えば、4-イソシアネートメチル-1,8-オクタメチレンジイソシアネート(以下、「NTI」と称する場合がある)、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート(以下、「HTI」と称する場合がある)、ビス(2-イソシアナトエチル)2-イソシアナトグルタレート(以下、「GTI」と称する場合がある)、リジントリイソシアネート(以下、「LTI」と称する場合がある)等が挙げられる。芳香族イソシアネートモノマーとしては、例えば、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート(MDI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等の芳香族ジイソシアネートが挙げられる。
【0150】
<親水性化合物>
親水性化合物は、親水性基を有する化合物である。親水性化合物は、親水性基に加えて、脂環族ポリイソシアネートが有するイソシアネート基の少なくとも1つと反応するための活性水素基を、親水性化合物1分子に対して、1つ以上有することが好ましい。活性水素基として、具体的には、水酸基、メルカプト基、カルボン酸基、アミノ基、チオール基が挙げられる。
【0151】
親水性化合物としては、ノニオン性化合物、カチオン性化合物、アニオン性化合物が挙げられる。これら親水性化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、親水性化合物としては、入手容易性及び配合物との電気的な相互作用を受けにくいという観点で、ノニオン性化合物が好ましく、得られる樹脂膜の硬度の低下を抑制する観点で、アニオン性化合物が好ましい。
【0152】
(ノニオン性化合物)
ノニオン性化合物として、具体的には、モノアルコール、アルコールの水酸基にエチレンオキサイドを付加した化合物が挙げられる。モノアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール等が挙げられる。アルコールの水酸基にエチレンオキサイドを付加した化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。これらノニオン性化合物は、イソシアネート基と反応する活性水素基も有する。
中でも、ノニオン性化合物としては、少ない使用量で親水性ポリイソシアネート組成物の水分散性を向上できることから、モノアルコールの水酸基にエチレンオキサイドを付加したポリエチレングリコールモノアルキルエーテルが好ましい。
【0153】
エチレンオキサイドを付加した化合物のエチレンオキサイドの付加数としては、4以上30以下が好ましく、4以上25以下がより好ましい。エチレンオキサイドの付加数が上記下限値以上であることで、親水性ポリイソシアネート組成物に水分散性をより効果的に付与できる傾向にあり、エチレンオキサイドの付加数が上記上限値以下であることで、低温貯蔵時に親水性ポリイソシアネート組成物の析出物がより発生しにくい傾向にある。
【0154】
脂環族ポリイソシアネートに付加されるノニオン性親水性基の量(以下、「ノニオン性親水性基の含有量」と称する場合がある)の下限値は、親水性ポリイソシアネート組成物の水分散安定性の観点から、親水性ポリイソシアネート組成物の固形分の質量に対して、1質量%が好ましく、2質量%がより好ましく、3質量%がさらに好ましく、4質量%が特に好ましい。
また、ノニオン性親水性基の含有量の上限値は、得られる樹脂膜の耐水性の観点から、親水性ポリイソシアネート組成物の固形分の質量に対して、55質量%が好ましく、50質量%がより好ましく、48質量%がさらに好ましく、44質量%が特に好ましい。
すなわち、ノニオン性親水性基の含有量は、親水性ポリイソシアネート組成物の固形分の質量に対して、1質量%以上55質量%以下が好ましく、2質量%以上50質量%以下がより好ましく、3質量%以上48質量%以下がさらに好ましく、4質量%以上44質量%以下が特に好ましい。
ノニオン性親水性基の含有量が上記範囲内であることにより、親水性ポリイソシアネート組成物がより水に分散し、均質な膜が得られる傾向にある。
【0155】
(カチオン性化合物)
カチオン性化合物として、具体的には、カチオン性親水性基と活性水素基とを併せて有する化合物が挙げられる。また、グリシジル基等の活性水素基を有する化合物と、スルフィド、ホスフィン等のカチオン性親水性基を有する化合物を併せて、親水性化合物としてもよい。この場合は、予め、イソシアネート基を有する化合物と活性水素基を有する化合物を反応させ、グリシジル基等の官能基を付加し、その後、スルフィド、ホスフィン等の化合物を反応させる。製造の容易性の観点からは、カチオン性親水性基と活性水素基とを併せて有する化合物が好ましい。
【0156】
カチオン性親水性基と活性水素基とを併せて有する化合物として、具体的には、例えば、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、メチルジエタノールアミン等が挙げられる。また、これらの化合物を用いて付加された三級アミノ基は、例えば、硫酸ジメチル、硫酸ジエチルで四級化することもできる。
【0157】
カチオン性化合物と脂環族ポリイソシアネートとの反応は、溶剤の存在下で反応させることができる。この場合の溶剤は、活性水素基を含まないものが好ましく、具体的には、例えば、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。
【0158】
脂環族ポリイソシアネートに付加されたカチオン性親水性基は、アニオン性基を有する化合物で中和されることが好ましい。このアニオン性基として、具体的には、例えば、カルボキシ基、スルホン酸基、燐酸基、ハロゲン基、硫酸基等が挙げられる。
カルボキシル基を有する化合物として、具体的には、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸等が挙げられる。
スルホン酸基を有する化合物として、具体的には、例えば、エタンスルホン酸等が挙げられる。
燐酸基を有する化合物として、具体的には、例えば、燐酸、酸性燐酸エステル等が挙げられる。
ハロゲン基を有する化合物として、具体的には、例えば、塩酸等が挙げられる。
硫酸基を有する化合物として、具体的には、例えば、硫酸等が挙げられる。
中でも、アニオン性基を有する化合物としては、カルボキシル基を有する化合物が好ましく、酢酸、プロピオン酸又は酪酸がより好ましい。
【0159】
(アニオン性化合物)
アニオン性親水性基として、具体的には、カルボキシ基、スルホン酸基、燐酸基、ハロゲン基、硫酸基が挙げられる。
アニオン性化合物として、具体的には、アニオン性基と活性水素基とを併せて有する化合物が挙げられ、より具体的には、例えば、モノヒドロキシカルボン酸、ポリヒドロキシカルボン酸のカルボキシ基をアニオン性基として有する化合物が挙げられる。
モノヒドロキシカルボン酸としては、例えば、1-ヒドロキシ酢酸、3-ヒドロキシプロパン酸、12-ヒドロキシ-9-オクタデカン酸、ヒドロキシピバル酸(ヒドロキシピバリン酸)、乳酸等が挙げられる。
ポリヒドロキシカルボン酸のカルボキシ基をアニオン性基として有する化合物としては、例えば、ジメチロール酢酸、2,2-ジメチロール酪酸、2,2-ジメチロールペンタン酸、ジヒドロキシコハク酸、ジメチロールプロピオン酸等が挙げられる。
また、スルホン酸基と活性水素基とを併せて有する化合物も挙げられ、より具体的には、例えば、イセチオン酸等が挙げられる。
中でも、アニオン性基と活性水素基とを併せて有する化合物としては、ヒドロキシピバル酸又はジメチロールプロピオン酸が好ましい。
【0160】
脂環族ポリイソシアネートに付加されたアニオン性親水性基は、塩基性物質であるアミン系化合物で中和することが好ましい。
アミン系化合物として、具体的には、例えば、アンモニア、水溶性アミノ化合物等が挙げられる。
水溶性アミノ化合物として、具体的には、例えば、モノエタノールアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリエタノールアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、メチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリン等が挙げられる。また、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン等の第3級アミンも挙げられ、これらを用いることもできる。これらのアミン系化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0161】
<親水性ポリイソシアネート組成物の製造方法>
本実施形態の親水性ポリイソシアネート組成物の製造方法は、特に限定されないが、(i)脂環族イソシアネートモノマーをプレポリマー化した後、得られたプレポリマーと、親水性化合物と、を反応させる方法、或いは、(ii)脂環族イソシアネートモノマーと、親水性化合物とを反応させる方法等が挙げられる。中でも、上記(i)の方法が好ましい。
【0162】
脂環族イソシアネートモノマーをプレポリマー化して、イソシアヌレート基を有するプレポリマーを得る方法としては、例えば、イソシアヌレート化反応触媒を用いて行うことができる。
【0163】
イソシアヌレート化反応触媒としては、特に限定されないが、一般に塩基性を有するものであることが好ましい。イソシアヌレート化反応触媒として具体的には、例えば、以下に示すもの等が挙げられる。
1)テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム等のテトラアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド、及び、前記テトラアルキルアンモニウムの酢酸塩、プロピオン酸塩、オクチル酸塩、カプリン酸塩、ミリスチン酸塩、安息香酸塩等の有機弱酸塩。
2)ベンジルトリメチルアンモニウム、トリメチルフェニルアンモニウム等のアリールトリアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド、及び、前記アリールトリアルキルアンモニウムの酢酸塩、プロピオン酸塩、オクチル酸塩、カプリン酸塩、ミリスチン酸塩、安息香酸塩等の有機弱酸塩。
3)トリメチルヒドロキシエチルアンモニウム、トリメチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリエチルヒドロキシエチルアンモニウム、トリエチルヒドロキシプロピルアンモニウム等のヒドロキシアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド、及び、前記ヒドロキシアルキルアンモニウムの酢酸塩、プロピオン酸塩、オクチル酸塩、カプリン酸塩、ミリスチン酸塩、安息香酸塩等の有機弱酸塩。
4)酢酸、プロピオン酸、カプロン酸、オクチル酸、カプリン酸、ミリスチン酸等のアルキルカルボン酸の錫、亜鉛、鉛等の金属塩。
5)ナトリウム、カリウム等の金属アルコラート。
6)ヘキサメチレンジシラザン等のアミノシリル基含有化合物。
7)マンニッヒ塩基類。
8)第3級アミン類とエポキシ化合物との混合物。
9)トリブチルホスフィン等の燐系化合物。
【0164】
中でも、不要な副生成物を生じさせにくい観点からは、イソシアヌレート化反応触媒としては、4級アンモニウムのハイドロオキサイド又は4級アンモニウムの有機弱酸塩であることが好ましく、テトラアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド、テトラアルキルアンモニウムの有機弱酸塩、アリールトリアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド、又は、アリールトリアルキルアンモニウムの有機弱酸塩であることがより好ましい。
【0165】
上述したイソシアヌレート化反応触媒の使用量の上限値は、仕込んだ脂環族イソシアネートモノマーの質量に対して、1000質量ppmであることが好ましく、500質量ppmであることがより好ましく、100質量ppmであることがさらに好ましい。
一方、上述したイソシアヌレート化反応触媒の使用量の下限値は、特別な限定はないが、例えば、10質量ppmであってもよい。
【0166】
イソシアヌレート化反応温度としては、50℃以上120℃以下であることが好ましく、55℃以上90℃以下であることがより好ましい。イソシアヌレート化反応温度が上記上限値以下であることによって、プレポリマーの着色等をより効果的に抑制できる傾向にある。
【0167】
所望の転化率(仕込んだ脂環族イソシアネートモノマーの質量に対する、イソシアヌレート化反応で生成したプレポリマーの質量の割合)になった時点で、イソシアヌレート化反応を、酸性化合物(例えば、リン酸、酸性リン酸エステル等)の添加によって停止する。
なお、プレポリマーを得るためには、反応の進行を初期で停止する必要がある。しかしながら、イソシアヌレート化反応は、初期の反応速度が非常に速いため、反応の進行を初期で停止することに困難が伴い、反応条件、特に触媒の添加量及び添加方法は慎重に選択する必要がある。例えば、触媒の一定時間毎の分割添加方法等が好適なものとして推奨される。
したがって、プレポリマーを得るためのイソシアヌレート化反応の転化率は、10%以上60%以下であることが好ましく、15%以上55%以下であることがより好ましく、20%以上50%以下であることがさらに好ましい。
イソシアヌレート化反応の転化率が上記上限値以下であることによって、親水性ポリイソシアネート組成物をより低粘度とすることができる。また、イソシアヌレート化反応の転化率が上記下限値以上であることによって、反応停止操作をより容易に行うことができる。
【0168】
また、イソシアヌレート基を含有するプレポリマーを誘導する際に、上記脂環族イソシアネートモノマー以外に1価以上6価以下のアルコールを用いることができる。
使用することのできる1価以上6価以下のアルコールとしては、例えば、非重合性アルコール、重合性アルコールが挙げられる。ここでいう「非重合性アルコール」とは、重合性基を有さないアルコールを意味する。一方、「重合性アルコール」とは、重合性基及び水酸基を有する単量体を重合して得られるアルコールを意味する。
非重合性アルコールとしては、例えば、モノアルコール類、ジオール類、トリオール類、テトラオール類等の多価アルコールが挙げられる。
モノアルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、n-ペンタノール、n-ヘキサノール、n-オクタノール、n-ノナノール、2-エチルブタノール、2,2-ジメチルヘキサノール、2-エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、エチルシクロヘキサノール等が挙げられる。
ジオール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,3-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール、2-エチル-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール、1,2-デカンジオール、2,2,4-トリメチルペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール等が挙げられる。
トリオール類としては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
テトラオール類としては、例えば、ペンタエリトリトール等が挙げられる。
【0169】
重合性アルコールとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエステルポリオール類、ポリエーテルポリオール類、アクリルポリオール類、ポリオレフィンポリオール類等が挙げられる。
【0170】
ポリエステルポリオール類としては、特に限定されないが、例えば、二塩基酸の単独又は混合物と、多価アルコールの単独又は混合物との縮合反応によって得られる生成物が挙げられる。
二塩基酸としては、特に限定されないが、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のカルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の二塩基酸が挙げられる。
多価アルコールとしては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、及び、グリセリンからなる群より選ばれる少なくとも1種の多価アルコールが挙げられる。
また、ポリエステルポリオール類としては、例えば、上記多価アルコールを用いて、ε-カプロラクトンを開環重合して得られるようなポリカプロラクトン類等が挙げられる。
【0171】
ポリエーテルポリオール類としては、特に限定されないが、例えば、アルカリ金属の水酸化物、又は、強塩基性触媒を使用して、多価アルコールの単独又は混合物に、アルキレンオキサイドの単独又は混合物を付加して得られるポリエーテルポリオール類、ポリアミン化合物にアルキレンオキサイドを反応させて得られるポリエーテルポリオール類、上記ポリエーテル類を媒体としてアクリルアミド等を重合して得られるいわゆるポリマーポリオール類が挙げられる。
アルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。
強塩基性触媒としては、例えば、アルコラート、アルキルアミン等が挙げられる。
多価アルコールとしては、上記ポリエステルポリオール類において例示されたものと同様のものが挙げられる。
アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、スチレンオキサイド等が挙げられる。
ポリアミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン類等が挙げられる。
【0172】
アクリルポリオール類としては、特に限定されないが、例えば、水酸基を有するエチレン性不飽和結合含有単量体の単独又は混合物と、これと共重合可能な他のエチレン性不飽和結合含有単量体の単独又は混合物とを共重合したものが挙げられる。
水酸基を有するエチレン性不飽和結合含有単量体としては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシブチル等が挙げられる。
水酸基を有するエチレン性不飽和結合含有単量体と共重合可能な他のエチレン性不飽和結合含有単量体としては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、不飽和カルボン酸、不飽和アミド、ビニル系単量体、加水分解性シリル基を有するビニル系単量体が挙げられる。
アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸-n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸-n-ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェニル等が挙げられる。
メタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸-n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸-n-ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸-2-エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル等が挙げられる。
不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等が挙げられる。
不飽和アミドとしては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N-メチレンビスアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイミド等が挙げられる。
ビニル系単量体としては、例えば、メタクリル酸グリシジル、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、フマル酸ジブチル等が挙げられる。
加水分解性シリル基を有するビニル系単量体としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0173】
ポリオレフィンポリオール類としては、例えば、末端水酸基化ポリブタジエン及びその水素添加物等が挙げられる。
【0174】
反応終了後の反応液から、未反応の脂環族イソシアネートモノマーを薄膜蒸留、抽出等により除去し、プレポリマーを得ることができる。
【0175】
プレポリマーと親水性化合物との反応は、有機金属塩、3級アミン系化合物、アルカリ金属のアルコラートを触媒として用いてもよい。前記有機金属塩を構成する金属としては、例えば、錫、亜鉛、鉛等が挙げられる。前記アルカリ金属としては、例えば、ナトリウム等が挙げられる。
【0176】
プレポリマーと親水性化合物との反応温度は、-20℃以上150℃以下が好ましく、30℃以上130℃以下がより好ましい。反応温度が上記下限値以上であることで、反応性をより高くできる傾向にある。また、反応温度が上記上限値以下であることで、副反応をより効果的に抑制できる傾向にある。
【0177】
親水性化合物が未反応状態で残存しないよう、完全にプレポリマーと反応させることが好ましい。未反応状態で残存しないことにより、親水性ポリイソシアネート組成物の水分散性をより良好にすることができる。
【0178】
<親水性ポリイソシアネート組成物の特性>
[イソシアネート基の平均官能基数]
本実施形態の親水性ポリイソシアネート組成物において、親水化前(親水性化合物による変性前)の脂環族ポリイソシアネート、すなわち原料である脂環族ポリイソシアネートが有するイソシアネート基の平均官能基数は、2.5以上6.0以下が好ましく、2.7以上5.8以下がより好ましく、2.9以上5.5以下がさらに好ましい。
平均官能基数が、上記範囲内であることで、樹脂膜としたときの硬度をより高められる傾向がある。
平均官能基数は、後述する実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
【0179】
[重量平均分子量]
親水性ポリイソシアネート組成物の重量平均分子量(Mw)は、900以上20000以下が好ましく、1200以上18000以下がより好ましく、1300以上17000以下がさらに好ましい。
重量平均分子量が、上記範囲内であることで、水分散性が良好であり、樹脂膜としたときの硬度に優れる。
重量平均分子量は、後述する実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
【0180】
≪ブロックポリイソシアネート組成物≫
第6の実施形態のブロックポリイソシアネート組成物は、上記親水性ポリイソシアネート組成物中のイソシアネート基の少なくとも一部が、ブロック剤で封止されてなるものである。
中でも、親水性ポリイソシアネート組成物中のイソシアネート基の全部がブロック剤で封止されていることが好ましい。全てのイソシアネート基がブロック剤で封止されていることは、例えば、フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)にて、イソシアネートに起因する吸収の消失により確認することができる。
また、本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物が、上記親水性基が導入されており、イソシアヌレート基を有する脂環族ポリイソシアネート(以下、「水分散性ポリイソシアネート」と称する場合がある)に加えて、親水性基が導入されていない脂環族ポリイソシアネート(以下、「未導入脂環族ポリイソシアネート」と称する場合がある)や、その他のポリイソシアネートを有する場合に、いずれのポリイソシアネートのイソシアネート基もブロック剤で封止されていることが好ましい。水分散性ポリイソシアネート、未導入脂環族ポリイソシアネート及びその他のポリイソシアネートのイソシアネート基を封止するブロック剤は、同一であってもよく異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0181】
本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物は、上記親水性ポリイソシアネート組成物から誘導されたものであることにより、水分散性が良好であり、且つ、樹脂膜としたときの硬度及び低温硬化性に優れる。
【0182】
本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物の各構成成分について、以下に詳細を説明する。なお、親水性ポリイソシアネート組成物については、上述のとおりである。
【0183】
<ブロック剤>
ブロック剤としては、特に限定されないが、具体的には、活性水素を分子内に1個有する化合物が挙げられる。このようなブロック剤としては、特に限定されないが、具体的には、アルコール系化合物、アルキルフェノール系化合物、フェノール系化合物、活性メチレン系化合物、メルカプタン系化合物、酸アミド系化合物、酸イミド系化合物、イミダゾール系化合物、尿素系化合物、オキシム系化合物、アミン系化合物、イミン系化合物、ピラゾール系化合物、トリアゾール系化合物が挙げられる。これらブロック剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。より具体的なブロック剤の例を下記に示す。
【0184】
アルコール系化合物としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、メタノール、エタノール、2-プロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、2-ブトキシエタノール等が挙げられる。
【0185】
アルキルフェノール系化合物としては、特に限定されないが、具体的には、炭素数4以上のアルキル基を置換基として有するモノ及びジアルキルフェノール類が挙げられる。モノアルキルフェノール類としては、例えば、n-プロピルフェノール、iso-プロピルフェノール、n-ブチルフェノール、sec-ブチルフェノール、tert-ブチルフェノール、n-ヘキシルフェノール、2-エチルヘキシルフェノール、n-オクチルフェノール、n-ノニルフェノール等が挙げられる。ジアルキルフェノール類としては、例えば、ジ-n-プロピルフェノール、ジイソプロピルフェノール、イソプロピルクレゾール、ジ-n-ブチルフェノール、ジ-tert-ブチルフェノール、ジ-sec-ブチルフェノール、ジ-n-オクチルフェノール、ジ-2-エチルヘキシルフェノール、ジ-n-ノニルフェノール等が挙げられる。
【0186】
フェノール系化合物としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、スチレン化フェノール、ヒドロキシ安息香酸エステル等が挙げられる。
【0187】
活性メチレン系化合物としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン、イソブタノイル酢酸エチル等が挙げられる。
【0188】
メルカプタン系化合物としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン等が挙げられる。
【0189】
酸アミド系化合物としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、アセトアニリド、酢酸アミド、ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタム等が挙げられる。
【0190】
酸イミド系化合物としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、コハク酸イミド、マレイン酸イミド等が挙げられる。
【0191】
イミダゾール系化合物としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、イミダゾール、2-メチルイミダゾール等が挙げられる。
【0192】
尿素系化合物としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、尿素、チオ尿素、エチレン尿素等が挙げられる。
【0193】
オキシム系化合物としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等が挙げられる。
【0194】
アミン系化合物としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、ジフェニルアミン、アニリン、カルバゾール、ジ-n-プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、イソプロピルエチルアミン等が挙げられる。
【0195】
イミン系化合物としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、エチレンイミン、ポリエチレンイミン等が挙げられる。
【0196】
ピラゾール系化合物としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、ピラゾール、3-メチルピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール等が挙げられる。
【0197】
トリアゾール系化合物としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、1,2,4-トリアゾール、1,2,3-トリアゾール等が挙げられる。
【0198】
中でも、入手容易性や得られるブロックポリイソシアネート組成物の粘度、硬化温度及び硬化時間の点で、活性メチレン系化合物、オキシム系化合物、アミン系化合物、ピラゾール系化合物、又はトリアゾール系化合物が好ましく、樹脂膜の80℃以下程度の低温での硬化性に特に優れることから、マロン酸ジイソプロピル又はマロン酸ジ-tert-ブチルが特に好ましい。
【0199】
<ブロックポリイソシアネート組成物の製造方法>
ブロックポリイソシアネート組成物は、特に限定されないが、例えば、上記親水性ポリイソシアネート組成物と上記ブロック剤とを反応させて得られる。
親水性ポリイソシアネート組成物とブロック剤とのブロック化反応は、溶剤の存在の有無に関わらず行うことができ、ブロックポリイソシアネート組成物が得られる。
なお、ブロック剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
ブロック剤の添加量は、通常は、イソシアネート基のモル総量に対して80モル%以上200モル%以下であってよく、90モル%以上150モル%以下であることが好ましく、93モル%以上130モル%以下であることがより好ましい。
【0200】
また、溶剤を用いる場合、イソシアネート基に対して不活性な溶剤を用いればよい。
溶剤を用いる場合、ブロックポリイソシアネート組成物100質量部に対する親水性ポリイソシアネート組成物及びブロック剤に由来する固形分の含有量は、通常は、10質量部以上95質量部以下であってよく、15質量部以上80質量部以下であることが好ましく、20質量部以上75質量部以下であることがより好ましい。
【0201】
ブロック化反応に際して、錫、亜鉛、鉛等の有機金属塩、3級アミン系化合物及びナトリウム等のアルカリ金属のアルコラート等を触媒として用いてもよい。
触媒の添加量は、ブロック化反応の温度等により変動するが、通常は、ポリイソシアネート100質量部に対して0.05質量部以上1.5質量部以下であってよく、0.05質量部以上1.0質量部以下であることが好ましい。
【0202】
ブロック化反応は、一般に-20℃以上150℃以下で行うことができ、0℃以上100℃以下で行うことが好ましく、10℃以上90℃以下で行うことがより好ましい。ブロック化反応の温度が上記下限値以上であることにより、反応速度をより高めることができ、上記上限値以下であることにより、副反応をより抑制することができる。
ブロック化反応後には、酸性化合物等の添加で中和処理してもよい。
前記酸性化合物としては、無機酸を用いてもよく、有機酸を用いてもよい。無機酸としては、例えば、塩酸、亜燐酸、燐酸等が挙げられる。有機酸としては、例えば、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート等が挙げられる。
【0203】
≪樹脂組成物≫
第7の実施形態の樹脂組成物は、上記第5の実施形態の親水性ポリイソシアネート組成物又は上記第6の実施形態のブロックポリイソシアネート組成物と、ポリオールと、を含む。
【0204】
本実施形態の樹脂組成物は、上記親水性ポリイソシアネート組成物を硬化剤成分として含むことで、樹脂膜としたときの硬度に優れる。また、本実施形態の樹脂組成物は、上記ブロックポリイソシアネート組成物を含むことで、樹脂膜としたときの硬度及び80℃以下程度の低温での硬化性に優れる。
【0205】
本実施形態の樹脂組成物の構成成分について、以下に詳細を説明する。なお、親水性ポリイソシアネート組成物及びブロックポリイソシアネート組成物については上述のとおりである。
【0206】
<ポリオール>
ポリオールとしては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、ポリオレフィンポリオール、フッ素ポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール等が挙げられる。これらポリオールを、1種を単独で含んでいてもよく、2種以上組み合わせて含んでいてもよい。
中でも、ポリオールとしては、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、又はそれらの混合物が好ましい。
【0207】
[ポリエステルポリオール]
ポリエステルポリオールは、例えば、二塩基酸の単独又は2種類以上の混合物と、多価アルコールの単独又は2種類以上の混合物とを、縮合反応させることによって得ることができる。
【0208】
前記二塩基酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等のカルボン酸等が挙げられる。
【0209】
前記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、トリメチルペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、2-メチロールプロパンジオール、エトキシ化トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0210】
又は、例えば、ε-カプロラクトン等のラクトン類を、多価アルコールを用いて開環重合して得られるようなポリカプロラクトン類等もポリエステルポリオールとして用いることができる。
【0211】
[ポリエーテルポリオール]
ポリエーテルポリオール類としては、特に限定されないが、例えば、以下(1)~(3)に示すもの等が挙げられる。
【0212】
(1)触媒を使用して、アルキレンオキシドの単独又は混合物を、多価ヒドロキシ化合物の単独又は混合物に、ランダム又はブロック付加して、得られるポリエーテルポリオール類。
前記触媒としては、例えば、水酸化物(リチウム、ナトリウム、カリウム等)、強塩基性触媒(アルコラート、アルキルアミン等)、複合金属シアン化合物錯体(金属ポルフィリン、ヘキサシアノコバルト酸亜鉛錯体等)等が挙げられる。
前記アルキレンオキシドとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド等が挙げられる。
(2)ポリアミン化合物にアルキレンオキシドを反応させて、得られるポリエーテルポリオール類。
前記ポリアミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン類等が挙げられる。
前記アルキレンオキシドとしては、(1)で例示されたものと同様のものが挙げられる。
(3)(1)又は(2)で得られたポリエーテルポリオール類を媒体として、アクリルアミド等を重合して得られる、いわゆるポリマーポリオール類。
【0213】
前記多価ヒドロキシ化合物としては、例えば、以下の(i)~(vi)に示すものが挙げられる。
(i)ジグリセリン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等。
(ii)エリトリトール、D-トレイトール、L-アラビニトール、リビトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、ガラクチトール、ラムニトール等の糖アルコール系化合物。
(iii)アラビノース、リボース、キシロース、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ソルボース、ラムノース、フコース、リボデソース等の単糖類。
(iv)トレハロース、ショ糖、マルトース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、メリビオース等の二糖類。
(v)ラフィノース、ゲンチアノース、メレチトース等の三糖類。
(vi)スタキオース等の四糖類。
【0214】
[アクリルポリオール]
アクリルポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、ヒドロキシ基を有するエチレン性不飽和結合含有単量体の単独又は混合物と、これと共重合可能な他のエチレン性不飽和結合含有単量体の単独又は混合物と、を共重合させることにより得られるものが挙げられる。
【0215】
前記ヒドロキシ基を有するエチレン性不飽和結合含有単量体としては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシブチル等が挙げられる。これらを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、アクリル酸ヒドロキシエチル又はメタクリル酸ヒドロキシエチルであることが好ましい。
【0216】
上記単量体と共重合可能な他のエチレン性不飽和結合含有単量体としては、例えば、以下の(1)~(6)に示すもの等が挙げられる。これらを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0217】
(1)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸-n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸-n-ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸エステル、アクリル酸-2-メトキシエチル、エトキシエチルアクリレート、メトキシ-ポリエチレングリコールアクリレート。
(2)メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸-n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸-n-ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸-2-エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル等のメタクリル酸エステル。
(3)アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸。
(4)アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N-メチレンビスアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイミド等の不飽和アミド。
(5)メタクリル酸グリシジル、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、フマル酸ジブチル等のビニル系単量体。
(6)ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の加水分解性シリル基を有するビニル系単量体。
【0218】
[ポリオレフィンポリオール]
ポリオレフィンポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、水酸基を2個以上有するポリブタジエン、水素添加ポリブタジエン、ポリイソプレン、水素添加ポリイソプレン等が挙げられる。
【0219】
ポリオールの統計的1分子が持つ水酸基数(以下、「水酸基平均数」と称する場合がある)は2以上であることが好ましい。ポリオールの水酸基平均数が2以上であることによって、本実施形態の一液型コーティング組成物を硬化させて得られる塗膜の架橋密度の低下をより抑制することができる傾向にある。
【0220】
[フッ素ポリオール]
本明細書において、「フッ素ポリオール」とは、分子内にフッ素を含むポリオールを意味する。フッ素ポリオールとして具体的には、例えば、特開昭57-34107号公報(参考文献1)、特開昭61-275311号公報(参考文献2)等で開示されているフルオロオレフィン、シクロビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、モノカルボン酸ビニルエステル等の共重合体等が挙げられる。
【0221】
[ポリカーボネートポリオール]
ポリカーボネートポリオール類としては、特に限定されないが、例えば、以下の(1)~(4)に示すもの等が挙げられる。
(1)ジメチルカーボネート等のジアルキルカーボネート;
(2)エチレンカーボネート等のアルキレンカーボネート;
(3)ジフェニルカーボネート等のジアリールカーボネート;
(4)上記(1)~(3)等の低分子カーボネート化合物を縮重合して得られるもの
【0222】
[ポリウレタンポリオール]
ポリウレタンポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、常法によりカルボキシ基を含有しないポリオールとイソシアネート成分とを反応させることにより得ることができる。
前記カルボキシ基を含有しないポリオールとしては、例えば低分子量のものとして、エチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。また、例えば高分子量のものとして、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられる。
【0223】
[ポリオールの水酸基価]
ポリオールの樹脂あたりの水酸基価は、特に限定されないが、10mgKOH/樹脂g以上300mgKOH/樹脂g以下であることが好ましい。
樹脂あたりの水酸基価が上記下限値以上であることによって、架橋密度が減少することを抑制し、目的とする物性をより十分に達成することができる傾向にある。樹脂あたりの水酸基価が上記上限値以下であることによって、架橋密度が過度に増大することを抑制し、本実施形態の一液型コーティング組成物を硬化させて得られる塗膜の機械的物性をより向上させることができる傾向にある。
なお、ポリオールの水酸基価は、JIS K1557に準拠して測定することができる。
【0224】
<その他添加剤>
本実施形態の樹脂組成物は、その他添加剤を更に含んでもよい。
その他添加剤としては、例えば、ポリオール中の架橋性官能基と反応しうる硬化剤、硬化触媒、溶剤、顔料類(体質顔料、着色顔料、メタリック顔料等)、紫外線吸収剤、光安定剤、ラジカル安定剤、焼付工程時の着色を抑える黄変防止剤、塗面調整剤、流動調整剤、顔料分散剤、消泡剤、増粘剤、造膜助剤等が挙げられる。
【0225】
前記硬化剤としては、例えば、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ基含有化合物又は樹脂、カルボキシル基含有化合物又は樹脂、酸無水物、アルコキシシラン基含有化合物又は樹脂、ヒドラジド化合物等が挙げられる。
【0226】
前記硬化触媒としては、塩基性化合物であってもよく、ルイス酸性化合物であってもよい。
前記塩基性化合物としては、例えば、金属ヒドロキシド、金属アルコキシド、金属カルボキシレート、金属アセチルアセチネート、オニウム塩の水酸化物、オニウムカルボキシレート、オニウム塩のハロゲン化物、活性メチレン系化合物の金属塩、活性メチレン系化合物のオニウム塩、アミノシラン類、アミン類、ホスフィン類等が挙げられる。前記オニウム塩としては、アンモニウム塩、ホスホニウム塩又はスルホニウム塩が好適である。
前記ルイス酸性化合物としては、例えば、有機スズ化合物、有機亜鉛化合物、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物等が挙げられる。
【0227】
前記溶剤としては、上記ブロックポリイソシアネート組成物において例示されたものと同様のものが挙げられる。
【0228】
また、顔料類(体質顔料、着色顔料、メタリック顔料等)、紫外線吸収剤、光安定剤、ラジカル安定剤、焼付工程時の着色を抑える黄変防止剤、塗面調整剤、流動調整剤、顔料分散剤、消泡剤、増粘剤及び造膜助剤としては、公知のものを適宜選択して用いることができる。
【0229】
<樹脂組成物の製造方法>
本実施形態の樹脂組成物は、溶剤ベース、水系ベースどちらにも使用可能である。樹脂組成物が、上記ブロックポリイソシアネート組成物を含む場合には、樹脂膜としたときの80℃以下での低温硬化性に優れる樹脂組成物はこれまでに知られていなかったことから、水系ベースの樹脂組成物として好適に用いられる。
【0230】
水系ベースの樹脂組成物(水系樹脂組成物)を製造する場合には、まず、ポリオール又はその水分散体若しくは水溶物に、必要に応じて、ポリオール中の架橋性官能基と反応しうる硬化剤、硬化触媒、溶剤、顔料類(体質顔料、着色顔料、メタリック顔料等)、紫外線吸収剤、光安定剤、ラジカル安定剤、焼付工程時の着色を抑える黄変防止剤、塗面調整剤、流動調整剤、顔料分散剤、消泡剤、増粘剤、造膜助剤等の添加剤を加える。次いで、上記親水性ポリイソシアネート組成物、上記ブロックポリイソシアネート組成物又はそれらの水分散体を硬化剤として添加し、必要に応じて、水や溶剤を更に添加して、粘度を調整する。次いで、攪拌機器により強制攪拌することによって、水系ベースの樹脂組成物(水系樹脂組成物)を得ることができる。
【0231】
溶剤ベースの樹脂組成物を製造する場合には、まず、ポリオール又はその溶剤希釈物に、必要に応じて、ポリオール中の架橋性官能基と反応しうる硬化剤、硬化触媒、溶剤、顔料類(体質顔料、着色顔料、メタリック顔料等)、紫外線吸収剤、光安定剤、ラジカル安定剤、焼付工程時の着色を抑える黄変防止剤、塗面調整剤、流動調整剤、顔料分散剤、消泡剤、増粘剤、造膜助剤等の添加剤を加える。次いで、上記親水性ポリイソシアネート組成物、又は上記ブロックポリイソシアネート組成物を硬化剤として添加し、必要に応じて、溶剤を更に添加して、粘度を調整する。次いで、手攪拌又はマゼラー等の攪拌機器を用いて攪拌することによって、溶剤ベースの樹脂組成物を得ることができる。
【0232】
≪樹脂膜≫
第8の実施形態の樹脂膜は、上記第7の実施形態の樹脂組成物を硬化させてなる。本実施形態の樹脂膜は、上記第5の実施形態の親水性ポリイソシアネート組成物を含む上記樹脂組成物を用いることで、硬度に優れる。また、上記第6の実施形態のブロックポリイソシアネート組成物を含む上記樹脂組成物を用いる場合には、更に、80℃以下程度の低温での硬化性に優れる。
【0233】
本実施形態の樹脂膜は、上記樹脂組成物を、基材にロール塗装、カーテンフロー塗装、スプレー塗装、ベル塗装、静電塗装等の公知の方法を用いて塗装し、加熱することで硬化させることで得られる。
【0234】
加熱温度は、省エネルギー及び基材の耐熱性の観点から、約60℃以上約120℃以下が好ましく、約65℃以上約110℃以下がより好ましく、約70℃以上約100℃以下がさらに好ましい。
加熱時間は、省エネルギー及び基材の耐熱性の観点から、約1分間以上約60分間以下が好ましく、約2分間以上約40分間以下がより好ましい。
【0235】
基材としては、特に限定されるものではなく、例えば、乗用車、トラック、オートバイ、バス等の自動車車体の外板部;バンパー等の自動車部品;携帯電話、オーディオ機器等の家庭電気製品の外板部;各種フィルム等が挙げられる。
【0236】
基材の材質は、特に限定されるものではなく、例えば、鉄、アルミニウム、真鍮、銅、ブリキ、ステンレス鋼、亜鉛メッキ鋼、亜鉛合金(Zn-Al、Zn-Ni、Zn-Fe等)メッキ鋼等の金属材料;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂類、各種のFRP(繊維強化プラスチック)等のプラスチック材料;ガラス、セメント、コンクリート等の無機材料;木材、紙、布等の繊維材料等が挙げられる。
【0237】
基材は、上記金属材料の表面、又は、上記金属材料から成形された車体等の金属表面に、リン酸塩処理、クロメート処理、複合酸化物処理等の表面処理が施されたものであってもよく、さらに、その上に塗膜が形成されているものであってもよい。塗膜が形成された基材としては、必要に応じて表面処理を施し、その上に下塗り塗膜が形成されたもの、例えば、電着塗料によって下塗り塗膜が形成された車体であってもよい。基材は、上記プラスチック材料の表面、又は、上記プラスチック材料から成形された自動車部品等のプラスチック表面に、所望による表面処理を行ったものであってもよい。また、基材は、プラスチック材料と金属材料とが組み合わさったものであってもよい。
【実施例
【0238】
以下、本実施形態を実施例及び比較例に基づいて更に詳しく説明するが、本実施形態は、以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0239】
≪実施例1-1~1-18及び比較例1-1~1-6≫
<試験項目>
実施例及び比較例で得られたブロックポリイソシアネート組成物について、以下に示す方法に従い、各物性の測定及び各評価を行った。
【0240】
[物性1-1]
(イソシアネート基(NCO)含有率)
ポリイソシアネートのNCO含有率を測定するために、ブロック剤によるブロック化前のポリイソシアネートを測定試料として用いた。
【0241】
まず、フラスコに測定試料2g以上3g以下を精秤した(Wg)。次いで、トルエン20mLを添加し、測定試料を溶解した。次いで、2規定のジ-n-ブチルアミンのトルエン溶液20mLを添加し、混合後、15分間室温放置した。次いで、イソプロピルアルコール70mLを加え、混合した。次いで、この液を1規定塩酸溶液(ファクターF)で、指示薬に滴定した。得られた滴定値をV2mLとした。次いで、同様の操作をポリイソシアネート試料無しで行い、得られた滴定値をV1mlとした。次いで、下記式からポリイソシアネートのイソシアネート基(NCO)含有率(イソシアネート基(NCO)含有率)(質量%)を算出した。
【0242】
イソシアネート基(NCO)含有率(質量%) = (V1-V2)×F×42/(W×1000)×100
【0243】
[物性1-2]
(数平均分子量)
数平均分子量は下記の装置を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)測定によるポリスチレン基準の数平均分子量である。ポリイソシアネートの数平均分子量を測定するために、ブロック剤によるブロック化前のポリイソシアネートを測定試料として用いた。測定条件を以下に示す。
【0244】
(測定条件)
装置:東ソー(株)製、HLC-802A
カラム:東ソー(株)製、G1000HXL×1本
G2000HXL×1本
G3000HXL×1本
キャリアー:テトラヒドロフラン
検出方法:示差屈折計
【0245】
[物性1-3]
(平均イソシアネート官能基数)
ポリイソシアネートの平均イソシアネート官能基数(平均NCO数)は、下記式により、平均イソシアネート官能基数を求めた。なお、式中、「Mn」は、ブロックポリイソシアネート組成物について、ブロック剤によるブロック化前のポリイソシアネートの数平均分子量であり、上記「物性1-2」において測定された値を用いた。「NCO含有率」は、ブロックポリイソシアネート組成物について、ブロック剤によるブロック化前に測定したポリイソシアネートのイソシアネート基含有率であり、上記「物性1-1」において算出された値を用いた。
【0246】
平均イソシアネート官能基数 = (Mn×NCO含有率×0.01)/42
【0247】
[物性1-4]
(ブロックポリイソシアネート組成物の固形分量)
ブロックポリイソシアネート組成物の固形分量は、次のように求めた。
まず、底直径38mmのアルミ皿を精秤した。次いで、アルミ皿上に実施例及び比較例で製造されたブロックポリイソシアネート組成物約1gを乗せた状態で精秤した(W1)。次いで、ブロックポリイソシアネート組成物を均一厚さに調整した。次いで、アルミ皿に乗せた状態のブロックポリイソシアネート組成物を105℃のオーブンで1時間保持した。次いで、アルミ皿が室温になった後、アルミ皿に残存したブロックポリイソシアネート組成物を精秤した(W2)。次いで、下記式からブロックポリイソシアネート組成物の固形分量(質量%)を算出した。
【0248】
ブロックポリイソシアネート組成物の固形分量[質量%] = W2/W1×100
【0249】
[物性1-5]
(分散剤の25℃における表面張力)
実施例及び比較例で用いた各分散剤を水で希釈して、水溶液の総質量に対して0.1質量%の前記アニオン性分散剤と水とからなる分散剤水溶液を調製した。次いで、この分散剤水溶液を用いて、ウィルへルミ法により25℃における表面張力を測定した。
【0250】
[樹脂組成物の作製]
アクリルポリオール(Nuplex社製 Setaqua(登録商標)6515(商品名)、OH(%)(on solids)=3.3、Acid value(mgKOH/g)=9.9、樹脂分45%)と、各ブロックポリイソシアネート組成物を、水酸基のモル量に対するイソシアネート基のモル量の比(イソシアネート基/水酸基)が1となるように配合し、さらにイオン交換水を配合して、固形分量40質量%になるように調製し、樹脂組成物を得た。
【0251】
[評価1-1]貯蔵安定性
得られた樹脂組成物20gについて、初期粘度、及び、20mLガラス瓶にて、40℃で10日貯蔵した時の粘度を測定(粘度計:東機産業社製 RE-85R)した。初期粘度に対する貯蔵後の粘度の比を算出した。なお、初期粘度に対する貯蔵後の粘度の比が2.5以下であり、ゲル化や沈殿がみられないものを良好であると評価し、初期粘度に対する貯蔵後の粘度の比が1超の場合には1に近い数値、及び、1以下の数値であるものを特に良好であると評価した。
【0252】
[評価1-2]低温硬化性
得られた樹脂組成物をポリプロピレン(PP)板上に乾燥膜厚40μmになるよう塗装した後、80℃で30分間加熱乾燥し、樹脂膜を得た。得られた樹脂膜を常温(23℃)で1週間保管し、ゲル分率の測定を行なった。ゲル分率は、樹脂膜をアセトン中に23℃で24時間浸漬した際の未溶解部分質量を浸漬前質量で除した値の百分率(質量%)として求めた。なお、ゲル分率が80質量%以上であるものを良好であると評価した。
【0253】
<ポリイソシアネートの合成>
[合成例1-1]
(ポリイソシアネートP-1の合成)
温度計、攪拌羽根及び還流冷却管を取り付けた四ツ口フラスコに、窒素気流下で、HDI:100質量部、及び、3価アルコールとε-カプロラクトンとから誘導されるポリエステルポリオール(ダイセル化学社製、「プラクセル303」(商品名)):5.1質量部を仕込み、撹拌下反応器内温度を90℃に1時間保持しウレタン化反応を行った。その後反応器内温度を60℃に保持し、イソシアヌレート化触媒テトラメチルアンモニウムカプリエートを加え、収率が51質量%になった時点で燐酸を添加し反応を停止した。反応液をろ過した後、薄膜蒸発缶を用いて未反応のHDIを除去して、イソシアヌレート型ポリイソシアネート(以下、「ポリイソシアネートP-1」と称する場合がある)を得た。得られたポリイソシアネートP-1のNCO含有率は18.8質量%、数平均分子量は1130、平均イソシアネート基数は5.1であった。また、得られたポリイソシアネートP-1についてGPC分析及びH-NMR分析を行い、イソシアヌレート3量体が存在することを確認した。
【0254】
[合成例1-2]
(ポリイソシアネートP-2の合成)
温度計、攪拌羽根及び還流冷却管を取り付けた四ツ口フラスコに、窒素気流下で、HDI:80質量部、IPDI:20質量部、及び、3価アルコールである、トリメチロールプロパン:3.4質量部を仕込み、撹拌下反応器内温度を90℃に1時間保持しウレタン化反応を行った。その後反応器内温度を77℃に保持し、イソシアヌレート化触媒テトラメチルアンモニウムカプリエート:0.012質量部を加え、収率が45質量%になった時点で燐酸を添加し反応を停止した。反応液をろ過した後、薄膜蒸発缶を用いて未反応のHDI及びIPDIを除去して、イソシアヌレート型ポリイソシアネート(以下、「ポリイソシアネートP-2」と称する場合がある)を得た。得られたポリイソシアネートP-2のNCO含有率は19.1質量%、数平均分子量は1210、平均イソシアネート基数は5.5であった。また、得られたポリイソシアネートP-2についてGPC分析及びH-NMR分析を行い、イソシアヌレート3量体が存在することを確認した。
【0255】
<ブロックポリイソシアネート組成物の製造>
[実施例1-1]
(ブロックポリイソシアネート組成物BL-a1の製造)
温度計、攪拌羽根及び還流冷却管を取り付けた四ツ口フラスコに、窒素気流下で、合成例1-1で得られたポリイソシアネートP-1:100質量部、メトキシポリエチレングリコール(MPG-081、エチレンオキサイド繰り返し単位:15個、日本乳化剤株式会社製):24質量部(イソシアネート基100モル%に対して8モル%)、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート(JP-508T、城北化学工業株式会社製):0.01質量部、及び、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(DPDM):67質量部を混合し、115℃で2時間反応を行った。反応液を40℃まで冷却し、ブロック剤としてマロン酸ジ-tert-ブチルを反応物中のイソシアネート基のモル量に対して1.1モル当量となるように添加し、さらにナトリウムメチラート(28質量%)含有メタノール溶液:溶液として1.0質量部添加し、撹拌した。50℃に内浴を維持して6時間以上攪拌し、赤外スペクトルでイソシアネート基の特性吸収がなくなったことを確認し、DPDMを固形分量60質量%になるように加えて攪拌し、40℃以下に冷却した。その後、さらに、反応液に分散剤としてポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸アンモニウム塩(ポリオキシエチレン(オキシエチレンの繰り返し数n=10~15)アルキル(アルキル基の炭素数C=1,8,9)(モノ~ペンタ)スチリル-フェニルエーテルの硫酸アンモニウム塩)(25℃における表面張力40.3mM/m)をブロックポリイソシアネートの固形分100質量部に対して1.5質量部となるように添加し、更に30分撹拌し、ブロックポリイソシアネート組成物BL-a1を得た。
【0256】
[実施例1-2~1-11及び比較例1-1~1-6]
(ブロックポリイソシアネート組成物BL-a2~BL-a11及びBL-b1~BL-b6の製造)
表1、2、4に記載のブロック剤の種類、親水性化合物の配合量、並びに、分散剤の種類及び配合量とした以外は、実施例1-1と同様の方法を用いて、ブロックポリイソシアネート組成物BL-a2~BL-a11及びBL-b1~BL-b6を製造した。
【0257】
[実施例1-12]
(ブロックポリイソシアネート組成物BL-a12の製造)
温度計、攪拌羽根及び還流冷却管を取り付けた四ツ口フラスコに、窒素気流下で、合成例1-1で得られたポリイソシアネートP-1に、マロン酸ジ-tert-ブチルをポリイソシアネートのイソシアネート基のモル量に対して1.1モル当量となるように添加し、DPDMを固形分量が60質量%になるように加え、さらに、ナトリウムメチラート(28質量%)含有メタノール溶液:1.0質量部を加えて、50℃に内浴を維持して6時間以上攪拌し、赤外スペクトルでイソシアネート基の特性吸収がなくなったことを確認した。次いで、反応液を40℃以下に冷却後、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム塩(下記一般式(II-1)で表される化合物;以下、「化合物(II-1)」と称する場合がある)(25℃における表面張力30.7mN/m)を室温で添加し、ブロックポリイソシアネート組成物BL-a12を得た。
【0258】
R21-O-(CH2CH2O)30-SO3NH4 (II-1)
【0259】
一般式(II-1)中、R21はトリデシル基である。
【0260】
[実施例1-13~1-14]
(ブロックポリイソシアネート組成物BL-a13~BL-a14の製造)
表3に記載のブロック剤の種類、親水性化合物の配合量、並びに、分散剤の種類及び配合量とした以外は、実施例1-12と同様の方法を用いて、ブロックポリイソシアネート組成物BL-a13~BL-a14を製造した。
【0261】
[実施例1-15~1-16]
(ブロックポリイソシアネート組成物BL-a15~BL-a16の製造)
ブロック剤B-1及びB-2の2種を、実施例1-15については、B-1とB-2の配合量がモル比でB-1:B-2=50モル%:50モル%となるように、実施例1-16については、B-1:B-2=20モル%:80モル%となるように用いて、表3に記載の親水性化合物の配合量、並びに、分散剤の種類及び配合量とした以外は、実施例1-1と同様の方法を用いて、ブロックポリイソシアネート組成物BL-a15~BL-a16を製造した。
【0262】
[実施例1-17~1-18]
(ブロックポリイソシアネート組成物BL-a17~BL-a18の製造)
ポリイソシアネートP-2を用いて、ブロック剤B-1及びB-2の2種を、実施例1-17については、B-1とB-2の配合量がモル比でB-1:B-2=50モル%:50モル%となるように、実施例1-18については、B-1:B-2=35モル%:65モル%となるように用いて、表3に記載の親水性化合物の配合量、並びに、分散剤の種類及び配合量とした以外は、実施例1-1と同様の方法を用いて、ブロックポリイソシアネート組成物BL-a17~BL-a18を製造した。
【0263】
また、実施例及び比較例で得られたブロックポリイソシアネート組成物について、上記方法を用いて、各種評価を行った。結果を以下の表1~4に示す。
【0264】
なお、表1~4において、ブロック剤及び分散剤の種類は以下に示すとおりである。
(ブロック剤)
B-1:マロン酸ジ-tert-ブチル
B-2:マロン酸ジイソプロピル
【0265】
(分散剤)
D-1:ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸アンモニウム塩(ポリオキシエチレン(オキシエチレンの繰り返し数n=10~15)アルキル(アルキル基の炭素数C=1,8,9)(モノ~ペンタ)スチリル-フェニルエーテルの硫酸アンモニウム塩)(25℃における表面張力40.3mN/m)
D-2:ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸ナトリウム塩(ポリオキシエチレン(オキシエチレンの繰り返し数n=10~15)アルキル(アルキル基の炭素数C=1,8,9)(モノ~ペンタ)スチリル-フェニルエーテルの硫酸ナトリウム塩)(25℃における表面張力41.5mN/m)
【0266】
D-3:ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム塩(下記一般式(II-2)で表される化合物;以下、「化合物(II-2)」と称する場合がある)(25℃における表面張力40.4mN/m)
【0267】
R22-O-(CH2CH2O)8-SO3NH4 (II-2)
【0268】
一般式(II-2)中、R22は炭素数12又は13のアルキル基である。化合物(II-2)は、R22が炭素数12のアルキル基であるものと、炭素数13のアルキル基であるものの混合物である。
【0269】
D-4:ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル(下記一般式(II-3)で表される化合物;以下、「化合物(II-3)」と称する場合がある)(25℃における表面張力30.7mN/m)
【0270】
R23-O-(CH2CH2O)2-OPOOHONa (II-3)
【0271】
一般式(II-3)中、R23は2-エチルへキシル基である。
【0272】
D-5:ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩(下記一般式(II-4)で表される化合物;以下、「化合物(II-4)」と称する場合がある)(25℃における表面張力52.1mN/m)
【0273】
R24-O-(CH2CH2O)60-SO3Na (II-4)
【0274】
一般式(II-4)中、R24は炭素数12又は13のアルキル基である。化合物(II-4)は、R24が炭素数12のアルキル基であるものと、炭素数13のアルキル基であるものの混合物である。
【0275】
D-6:ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム塩(上記化合物(II-1))(25℃における表面張力38.8mN/m)
【0276】
D-7:ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム塩(下記一般式(II-5)で表される化合物;以下、「化合物(II-5)」と称する場合がある)(25℃における表面張力45.9mN/m)
【0277】
R25-O-(CH2CH2O)20-SO3Na (II-5)
【0278】
一般式(II-5)中、R25は炭素数12又は13のアルキル基である。化合物(II-5)は、R25が炭素数12のアルキル基であるものと、炭素数13のアルキル基であるものの混合物である。
【0279】
また、表4において、貯蔵安定性についてはゲル化又は沈殿が生じたことから初期粘度に対する貯蔵後の粘度の比を算出することができなかった。
【0280】
【表1】
【0281】
【表2】
【0282】
【表3】
【0283】
【表4】
【0284】
表1~4から、25℃における表面張力が38.8mN/m以上45.9mN/m以下の分散剤を含むブロックポリイソシアネート組成物BL-a1~BL-a18(実施例1-1~1-18)では、樹脂組成物としたときの貯蔵安定性が良好であり、且つ、樹脂膜としたときの低温硬化性が良好であった。
また、親水性化合物の含有量が異なるブロックポリイソシアネート組成物BL-a1~BL-a9(実施例1-1~1-9)において、親水性化合物の配合量が低下するほど、樹脂組成物としたときの貯蔵安定性がより良好になる傾向がみられた。
【0285】
一方、25℃における表面張力が30.7mN/m若しくは52.1mN/mである分散剤を含む、又は、分散剤を含まないブロックポリイソシアネート組成物BL-b1~BL-b6(比較例1-1~比較例1-6)では、樹脂組成物とした際に、ゲル化又は沈殿を生じ、貯蔵安定性が不良であった。
【0286】
≪実施例2-1~2-42及び比較例2-1~2-12≫
<試験項目>
ポリオールについて、以下に示す方法に従い、各物性の測定を行った。なお、ブロックポリイソシアネート組成物の固形分量及び分散剤の25℃における表面張力については、上記「実施例1-1~1-18及び比較例1-1~1-6」と同様の方法を用いて測定を行った。実施例及び比較例で得られた樹脂組成物について、以下に示す方法に従い、評価を行なった。なお、貯蔵安定性及び低温硬化性については、上記「実施例1-1~1-18及び比較例1-1~1-6」と同様の方法を用いて評価を行なった。
【0287】
[物性2-1]
(ガラス転移温度)
ポリオールのガラス転移温度は、ポリオール溶液中の有機溶剤及び水分を減圧下で飛ばした後、真空乾燥したものを、示差走査熱量(DSC)測定装置を用いて、昇温速度5℃/分の条件で測定した値をガラス転移温度として用いた。
【0288】
[物性2-2]
(重量平均分子量)
ポリオールの重量平均分子量は、下記の装置を用いたGPC測定によるポリスチレン基準の重量平均分子量である。実施例及び比較例で用いた各ポリオールを測定試料として用いた。測定条件を以下に示す。
【0289】
(測定条件)
装置:東ソー(株)製、HLC-802A
カラム:東ソー(株)製、G1000HXL×1本
G2000HXL×1本
G3000HXL×1本
キャリアー:テトラヒドロフラン
検出方法:示差屈折計
【0290】
[物性2-3]
(水酸基価)
ポリオールの水酸基価は、電位差滴定法により測定し算出した。また、水酸基価はポリオール中の固形分に対する値である。
【0291】
[評価2-1]
(引張強度)
得られた樹脂組成物をポリプロピレン(PP)板上に乾燥膜厚40μmになるよう塗装した後、80℃で30分間加熱乾燥し、樹脂膜を得た。得られた樹脂膜を幅10mm、長さ40mmにカットし、チャック間距離が20mmになるようにセットし、20mm/分の速度で引張試験を実施した。その時の最大点応力を最大応力値として、引張強度を求めた。
【0292】
<ポリイソシアネートの合成>
[合成例2-1]ポリイソシアネートP-1の合成
上記合成例「1-1」と同様の方法を用いて、イソシアヌレート型ポリイソシアネート(以下、「ポリイソシアネートP-1」と称する場合がある)を得た。
【0293】
<ブロックポリイソシアネート組成物の製造>
[実施例2-1]
(ブロックポリイソシアネート組成物BL-a19の製造)
温度計、攪拌羽根及び還流冷却管を取り付けた四ツ口フラスコに、窒素気流下で、合成例2-1で得られたポリイソシアネートP-1:100質量部、メトキシポリエチレングリコール(MPG-081、エチレンオキサイド繰り返し単位:15個、日本乳化剤株式会社製):21質量部(イソシアネート基100モル%に対して7モル%)、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート(JP-508T、城北化学工業株式会社製):0.01質量部、及び、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(DPDM):67質量部を混合し、115℃で2時間反応を行った。反応液を40℃まで冷却し、ブロック剤としてマロン酸ジ-tert-ブチルを反応物中のイソシアネート基のモル量に対して1.1モル当量となるように添加し、さらにナトリウムメチラート(28質量%)含有メタノール溶液:溶液として1.0質量部添加し、撹拌した。50℃に内浴を維持して6時間以上攪拌し、赤外スペクトルでイソシアネート基の特性吸収がなくなったことを確認し、DPDMを固形分量60質量%になるように加えて攪拌し、40℃以下に冷却した。その後、さらに、反応液に分散剤としてポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸アンモニウム塩(ポリオキシエチレン(オキシエチレンの繰り返し数n=10~15)アルキル(アルキル基の炭素数C=1,8,9)(モノ~ペンタ)スチリル-フェニルエーテルの硫酸アンモニウム塩)(25℃における表面張力40.3mM/m)をブロックポリイソシアネートの固形分100質量部に対して1.3質量部となるように添加し、更に30分撹拌し、ブロックポリイソシアネート組成物BL-a19を得た。
【0294】
[実施例2-2~2-11、2-15~2-17及び比較例2-1~2-6]
(ブロックポリイソシアネート組成物BL-a20~BL-a29、BL-a33~BL-a35及びBL-b7~BL-b12の製造)
表5~8に記載のブロック剤の種類、親水性化合物の配合量、並びに、分散剤の種類及び配合量とした以外は、実施例2-1と同様の方法を用いて、ブロックポリイソシアネート組成物BL-a20~BL-a29、BL-a33~BL-a35及びBL-b7~BL-b12を製造した。
【0295】
[実施例2-12]
(ブロックポリイソシアネート組成物BL-a30の製造)
温度計、攪拌羽根及び還流冷却管を取り付けた四ツ口フラスコに、窒素気流下で、合成例2-1で得られたポリイソシアネートP-1に、マロン酸ジ-tert-ブチルをポリイソシアネートのイソシアネート基のモル量に対して1.1モル当量となるように添加し、DPDMを固形分量が60質量%になるように加え、さらに、ナトリウムメチラート(28質量%)含有メタノール溶液:1.0質量部を加えて、50℃に内浴を維持して6時間以上攪拌し、赤外スペクトルでイソシアネート基の特性吸収がなくなったことを確認した。次いで、反応液を40℃以下に冷却後、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム塩(化合物(II-1))(25℃における表面張力30.7mN/m)を室温で添加し、ブロックポリイソシアネート組成物BL-a30を得た。
【0296】
[実施例2-13~2-14]
(ブロックポリイソシアネート組成物BL-a31~BL-a32の製造)
表6に記載のブロック剤の種類、親水性化合物の配合量、並びに、分散剤の種類及び配合量とした以外は、実施例2-12と同様の方法を用いて、ブロックポリイソシアネート組成物BL-a31~BL-a32を製造した。
【0297】
なお、表5~8において、ブロック剤及び分散剤の種類は上記「実施例1-1~1-18及び比較例1-1~1-6」と同じである。
【0298】
【表5】
【0299】
【表6】
【0300】
【表7】
【0301】
【表8】
【0302】
<ポリオールの製造>
[製造例2-1]
(ポリオールOHP1の製造)
撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入口を備えた四ツ口フラスコにプロピレングリコールモノメチルエーテル:33質量部を仕込み、窒素ガス通気下で110℃に昇温した。110℃に達した後、窒素ガスの通気を止め、2-ヒドロキシエチルメタクリレート:25.1質量部、メチルメタクリレート:40.9質量部、ブチルアクリレート:25.7質量部、スチレン:7.0質量部、アクリル酸:1.3質量部、及び、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル):5.0質量部からなる混合物を5時間かけて滴下した。次いで、115℃で窒素ガスをフローしながら3時間攪拌した後、60℃まで冷却し、プロピレングリコールモノメチルエーテルを投入し、固形分量60質量%のアクリルポリオール系樹脂であるポリオールOHP1の溶液を得た。ポリオールOHP1は、重量平均分子量Mw1.21×10、水酸基価109mgKOH/gであった。
【0303】
[製造例2-2]
(ポリオールOHP2の製造)
撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入口を備えた四ツ口フラスコにプロピレングリコールモノメチルエーテル:29質量部を仕込み、窒素ガス通気下で110℃に昇温した。110℃に達した後、窒素ガスの通気を止め、2-ヒドロキシエチルメタクリレート:22.3質量部、メチルメタクリレート:8.0質量部、ブチルアクリレート:26.1質量部、スチレン:42.3質量部、アクリル酸:1.3質量部、及び、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル):2質量部からなる混合物を5時間かけて滴下した。ついで、115℃で窒素ガスをフローしながら3時間攪拌した後、60℃まで冷却し、プロピレングリコールモノメチルエーテルを投入し、固形分量60質量%のアクリルポリオール系樹脂であるポリオールOHP2の溶液を得た。ポリオールOHP2は、重量平均分子量Mw2.62×10、水酸基価139mgKOH/gであった。
【0304】
[製造例2-3]
(ポリオールOHP3の製造)
撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入口を備えた四ツ口フラスコにプロピレングリコールモノメチルエーテル:25質量部を仕込み、窒素ガス通気下で110℃に昇温した。110℃に達した後、窒素ガスの通気を止め、2-ヒドロキシエチルメタクリレート:15.2質量部、2-エチルへキシルアクリレート:18.0質量部、メチルメタクリレート:58.3質量部、スチレン:7.0質量部、アクリル酸:1.50質量部、及び、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル):1.5質量部からなる混合物を5時間かけて滴下した。ついで、115℃で窒素ガスをフローしながら3時間攪拌した後、60℃まで冷却し、プロピレングリコールモノメチルエーテルを投入し、固形分量60質量%のアクリルポリオール系樹脂であるポリオールOHP3の溶液を得た。ポリオールOHP3は、重量平均分子量Mw3.52×10、水酸基価66mgKOH/gであった。
【0305】
[製造例2-4]
(ポリオールOHP4の製造)
撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入口を備えた四ツ口フラスコにプロピレングリコールモノメチルエーテル:45質量部を仕込み、窒素ガス通気下で115℃に昇温した。115℃に達した後、窒素ガスの通気を止め、2-ヒドロキシエチルメタクリレート:28.2質量部、メチルメタクリレート:31.5質量部、ブチルアクリレート:32.0質量部、スチレン:7.0質量部、アクリル酸:1.3質量部、及び、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル):8質量部からなる混合物を5時間かけて滴下した。次いで、115℃で窒素ガスをフローしながら3時間攪拌した後、60℃まで冷却し、プロピレングリコールモノメチルエーテルを投入し、固形分量60質量%のアクリルポリオール系樹脂であるポリオールOHP4の溶液を得た。ポリオールOHP4は、重量平均分子量Mw7.20×10、水酸基価150mgKOH/gであった。
【0306】
<樹脂組成物の製造>
[実施例2-18~2-42及び比較例2-7~2-12]
(樹脂組成物S-a1~S-a25及びS-b1~S-b6の製造)
各ポリオールの溶液についてエバボレーターによって固形分70質量%になるまで溶媒を蒸発させた溶液と、実施例又は比較例で得られた各ブロックポリイソシアネート組成物とを、水酸基のモル量に対するイソシアネート基のモル量の比(イソシアネート基/水酸基)が1となるように配合し、さらにイオン交換水を配合して、固形分量40質量%になるように調製し、樹脂組成物を得た。なお、樹脂組成物S-a21及びS-a22(実施例2-38及び2-39)では、実施例1-9及び実施例1-10で得られたブロックポリイソシアネート組成物BL-a9及びBL-a10をそれぞれ用いた。
【0307】
なお、表9~13において、ポリオールの種類は以下に示すとおりである。
(ポリオール)
OHP1:ガラス転移温度Tg27.2℃、重量平均分子量Mw1.21×10、水酸基価109mgKOH/g(固形分として)
OHP2:ガラス転移温度Tg29.3℃、重量平均分子量Mw2.62×10、水酸基価139mgKOH/g(固形分として)
OHP3:ガラス転移温度Tg44.5℃、重量平均分子量Mw3.52×10、水酸基価66mgKOH/g(固形分として)
OHP4:ガラス転移温度Tg15.2℃、重量平均分子量Mw7.20×10、水酸基価150mgKOH/g(固形分として)
【0308】
実施例及び比較例で得られた樹脂組成物について、上記方法を用いて、各種評価を行った。結果を以下の表9~13に示す。表9~13において、ブロックポリイソシアネート組成物の配合量は、ポリオール100質量部に対する、ブロックポリイソシアネート組成物の固形分量(質量部)で示した。表13において、貯蔵安定性についてはゲル化又は沈殿が生じたことから初期粘度に対する貯蔵後の粘度の比を算出することができなかった。
【0309】
【表9】
【0310】
【表10】
【0311】
【表11】
【0312】
【表12】
【0313】
【表13】
【0314】
表9~13から、樹脂組成物S-a1~S-a25(実施例2-18~2-42)では、貯蔵安定性が良好であり、且つ、樹脂膜としたときの低温硬化性及び引張強度が良好であった。
また、ポリオールの種類が異なる、樹脂組成物S-a4~S-a6及びS-a15~S-a17(実施例2-21~2-23及び2-32~2-34)の比較、並びに、樹脂組成物S-a8~S-a9及びS-a23~S-a24(実施例2-25~2-27及び2-40~2-42)の比較において、ポリオールのガラス転移温度Tgが低下し、且つ、重量平均分子量が減少するほど、貯蔵安定性がより良好になる傾向がみられ、一方で、ポリオールのガラス転移温度Tgが上昇し、且つ、重量平均分子量が増加するほど、樹脂膜としたときの低温硬化性及び引張強度がより良好になる傾向がみられた。
【0315】
一方、樹脂組成物S-b1~S-b6(比較例2-7~比較例2-12)では、樹脂組成物とした際に、ゲル化又は沈殿を生じ、貯蔵安定性が不良であった。
【0316】
(ブロック剤)
B-3:1,2,3-トリアゾール
B-4:1,2,4-トリアゾール
【0317】
(溶剤)
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
【0318】
(カルボン酸塩)
C:酢酸カリウム
【0319】
(ウレタン化触媒)
LH-10:エマルジョンの総質量に対して10質量%のジラウリン酸ジブチルスズ(DBTDL)を含有する水性エマルジョン(Borchers製、「LH-10」(商品名))
【0320】
[物性3-1]
有効NCO含有率[質量%]
=[(ブロックポリイソシアネート組成物の固形分[質量%])×{(ブロック化反応に使用したポリイソシアネートの質量)×NCO%}]/(ブロック化反応後のブロックポリイソシアネート組成物の質量)
【0321】
[物性3-2]
(カルボン酸塩のカウンターカチオンの含有量)
ブロックポリイソシアネート組成物に含まれるカルボン酸塩のカウンターカチオンの含有量は、次の方法で測定した。
まず、試料に超純水を添加して混合し、数時間静置した。その後、水層をフィルターでろ過した後、イオンクロマトグラフで測定し、カルボン酸塩のカウンターカチオンの含有量を得た。測定条件は、以下に示すとおりである。
【0322】
(測定条件)
装置:SHIMADZU社製、イオンクロマトグラフ
カラム:Shim-pack-IC-C4
4.6mm I.D.×150mmL、7μm(SHIMADZU社製)
移動相:A)3.5mmol/L Oxalic Acid
B)1mmol/L 18-crown-6
流速:1.0mL/分
試料濃度:1.0質量%
注入量:50μL
温度:45℃
検出:CDD
【0323】
[製造例3-1]
<ブロックポリイソシアネート組成物の製造>
(ブロックポリイソシアネート組成物BL-a36の製造)
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管を取り付けた四ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、前記[合成例1-1]で得られたポリイソシアネートP-1:100質量部に、及び、メトキシポリエチレングリコール(MPG-081、エチレンオキサイド繰り返し単位:15個、日本乳化剤株式会社製):15.0質量部(ポリイソシアネートP-1のNCO%に対して5mol%)を仕込み、120℃に加熱撹拌しながら2時間保持した。次いで、反応液を80℃以上110℃以下程度まで冷却し、1,2,3-トリアゾール:30.8質量部を徐々に添加し、80℃以上120℃未満の温度条件下で、1時間以上4時間以下程度撹拌して反応を行った。その後、FT-IRスペクトルを測定し、イソシアネート基がブロックされていることを確認した。さらに、反応液にN,N-ジメチルホルムアミドを固形分が60%になるように添加し、60℃で均一になるまで攪拌した。続いて、30℃まで冷却し、反応液に分散剤として前記D-1(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸アンモニウム塩(ポリオキシエチレン(オキシエチレンの繰り返し数n=10~15)アルキル(アルキル基の炭素数C=1,8,9)(モノ~ペンタ)スチリル-フェニルエーテルの硫酸アンモニウム塩)(25℃における表面張力40.3mM/m))をブロックポリイソシアネートの固形分100質量部に対して1.5質量部となるように添加し、更に30分撹拌し、ブロックポリイソシアネート組成物BL-a36を得た。
【0324】
[製造例3-2]
<ブロックポリイソシアネート組成物の製造>
(ブロックポリイソシアネート組成物BL-a37の製造)
分散剤として、前記D-2(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸ナトリウム塩(ポリオキシエチレン(オキシエチレンの繰り返し数n=10~15)アルキル(アルキル基の炭素数C=1,8,9)(モノ~ペンタ)スチリル-フェニルエーテルの硫酸ナトリウム塩)(25℃における表面張力41.5mN/m))を用いた以外は製造例3-1と同様にして、ブロックポリイソシアネート組成物BL-a37を得た。
【0325】
[製造例3-3]
<ブロックポリイソシアネート組成物の製造>
(ブロックポリイソシアネート組成物BL-a38の製造)
分散剤として、前記D-3(ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム塩(化合物(II-2))(25℃における表面張力40.4mN/m))を用いた以外は製造例3-1と同様にして、ブロックポリイソシアネート組成物BL-a38を得た。
【0326】
[製造例3-4]
(ブロックポリイソシアネート組成物BL-a39の製造)
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管を取り付けた四ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、前記[合成例1-1]で得られたポリイソシアネートP-1:100質量部、及び、メトキシポリエチレングリコール(MPG-081、エチレンオキサイド繰り返し単位:15個、日本乳化剤株式会社製):15.0質量部を仕込み、120℃に加熱撹拌しながら2時間保持した。次いで、反応液を80℃以上110℃以下程度まで冷却し、1,2,4-トリアゾール:30.8質量部を徐々に添加し、80℃以上120℃未満の温度条件下で、1時間以上4時間以下程度撹拌して反応を行った。その後、FT-IRスペクトルを測定し、イソシアネート基がブロックされていることを確認した。さらに、反応液にN,N-ジメチルホルムアミドを固形分が60質量%になるように添加し、60℃で均一になるまで攪拌し、さらにその後、30℃まで冷却し、反応液に分散剤として前記D-1(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸アンモニウム塩(ポリオキシエチレン(オキシエチレンの繰り返し数n=10~15)アルキル(アルキル基の炭素数C=1,8,9)(モノ~ペンタ)スチリル-フェニルエーテルの硫酸アンモニウム塩)(25℃における表面張力40.3mM/m))をブロックポリイソシアネートの固形分100質量部に対して1.5質量部となるように添加し、更に30分撹拌し、ブロックポリイソシアネート組成物BL-a39を得た。
【0327】
[製造例3-5]
<ブロックポリイソシアネート組成物の製造>
(ブロックポリイソシアネート組成物BL-a40の製造)
分散剤として、前記D-2(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸ナトリウム塩(ポリオキシエチレン(オキシエチレンの繰り返し数n=10~15)アルキル(アルキル基の炭素数C=1,8,9)(モノ~ペンタ)スチリル-フェニルエーテルの硫酸ナトリウム塩)(25℃における表面張力41.5mN/m))を用いた以外は製造例3-4と同様にして、ブロックポリイソシアネート組成物BL-a40を得た。
【0328】
[製造例3-6]
<ブロックポリイソシアネート組成物の製造>
(ブロックポリイソシアネート組成物BL-a41の製造)
分散剤として、前記D-3(ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム塩(化合物(II-2))(25℃における表面張力40.4mN/m))を用いた以外は製造例3-4と同様にして、ブロックポリイソシアネート組成物BL-a41を得た。
【0329】
[製造例3-7]
<ブロックポリイソシアネート組成物の製造>
(ブロックポリイソシアネート組成物BL-a42の製造)
分散剤D-3を、ブロックポリイソシアネートの固形分100質量部に対して0.5質量部となるように添加した以外は製造例3-6と同様にして、ブロックポリイソシアネート組成物BL-a42を得た。
【0330】
<樹脂組成物の調製>
[実施例3-1]
水系アクリルポリオール(Nuplex社製 Setaqua(登録商標)6515(商品名)、OH(%)(on solids)=3.3、Acid value(mgKOH/g)=9.9、樹脂分45%):10.0質量部(溶液重量)と、ブロックポリイソシアネートBL-a36:4.08質量部(溶液重量)(水酸基のモル量に対するイソシアネート基のモル量の比(イソシアネート基/水酸基)が0.80となるように)配合した。次いで、酢酸カリウム:0.14質量部(全樹脂固形分重量に対して0.80質量%)と、10質量%のジラウリン酸ジブチルスズ(DBTDL、(Borchers製、「LH-10」(商品名))):0.14質量部(溶液重量、全樹脂固形分重量に対して0.80質量%)を添加し、さらにイオン交換水を配合し固形分量40質量%になるように調製した後、ジメチルアミノエタノールを微量添加しpHを8.0-8.5に調整し、ホモディスパーを用いて1000rpmで15分撹拌し、樹脂組成物を得た。
【0331】
[実施例3-2~3-7]
各ブロックポリイソシアネートBL-a37~42を水酸基のモル量に対するイソシアネート基のモル量の比(イソシアネート基/水酸基)が0.80となるように配合し、酢酸カリウムを全樹脂固形分重量に対して0.80質量%となるように配合し、10質量%のジラウリン酸ジブチルスズを全樹脂固形分重量に対して0.80質量%となるように添加した以外は、実施例3-1と同様にして、樹脂組成物を得た。
【0332】
[評価3-1]貯蔵安定性
得られた樹脂組成物20gについて、初期粘度、及び、20mLガラス瓶にて、40℃で10日貯蔵した時の粘度を測定(粘度計:東機産業社製 RE-85R)した。初期粘度に対する貯蔵後の粘度の比を算出した。なお、初期粘度に対する貯蔵後の粘度の比が2.5以下であり、ゲル化や沈殿がみられないものを良好であると評価し、初期粘度に対する貯蔵後の粘度の比が1超の場合には1に近い数値、及び、1以下の数値であるものを特に良好であると評価した。
【0333】
[評価3-2]低温硬化性
得られた樹脂組成物をポリプロピレン(PP)板上に乾燥膜厚40μmになるよう塗装した後、90℃で30分間加熱乾燥し、樹脂膜を得た。得られた樹脂膜を常温(23℃)で1週間保管し、ゲル分率の測定を行なった。ゲル分率は、樹脂膜をアセトン中に23℃で24時間浸漬した際の未溶解部分質量を浸漬前質量で除した値の百分率(質量%)として求めた。なお、ゲル分率が80質量%以上であるものを良好であると評価した。
【0334】
【表14】
【0335】
<物性の測定方法>
[物性4-1]
(変性率)
親水性ポリイソシアネート組成物を試料として、脂環族ポリイソシアネートのイソシアネート基の総モル量に対する前記親水性化合物により変性されたイソシアネート基の割合を以下の方法を用いて、測定した。当該割合は、原料のポリイソシアネートのイソシアネート基100モル%に対して、親水性化合物によって変性されたイソシアネート基の割合(変性率)ということもできる。具体的には、液体クロマトグラフィー(LC)の220nmにおける、未変性のIPDIベースイソシアヌレート型ポリイソシアネート、1変性のIPDIベースイソシアヌレート型ポリイソシアネート、2変性のIPDIベースイソシアヌレート型ポリイソシアネート、及び3変性のIPDIベースイソシアヌレート型ポリイソシアネートのピーク面積比から求めた。用いた装置及び測定条件は以下のとおりである。
【0336】
(装置及び測定条件)
LC装置:Waters社製、UPLC(商品名)
カラム:Waters社製、ACQUITY UPLC HSS T3 1.8μm
C18、内径2.1mm×長さ50mm
流速:0.3mL/min
移動相:A=10mM 酢酸アンモニウム水溶液、B=アセトニトリル
グラジェント条件:初期の移動相組成はA/B=98/2で、試料注入後Bの比率を直線的に上昇させ、10分後にA/B=0/100とした。
検出方法:フォトダイオードアレイ検出器、測定波長は220nm
【0337】
[物性4-2]
(固形分量)
試料として、親水性ポリイソシアネート組成物又はブロックポリイソシアネート組成物を用いた。
まず、底直径38mmのアルミ皿を精秤した。次いで、アルミ皿上に試料約1gを乗せた状態で精秤した(W1)。次いで、試料を均一厚さに調整した。次いで、アルミ皿に乗せた状態の試料を105℃のオーブンで1時間保持した。次いで、アルミ皿が室温になった後、アルミ皿に残存した試料を精秤した(W2)。次いで、下記式から試料の固形分量(質量%)を算出した。
【0338】
固形分量(質量%) = W2/W1×100
【0339】
[物性4-3]
(イソシアネート基含有率(NCO%))
原料であるポリイソシアネート及び親水性ポリイソシアネート組成物を試料として、イソシアネート基含有率の測定は、JIS K7301-1995(熱硬化性ウレタンエラストマー用トリレンジイソシアネート型プレポリマー試験方法)に記載の方法に従って実施した。以下に、より具体的なイソシアネート基含有率の測定方法を示す。
【0340】
(1)試料1g(Wg)を200mL三角フラスコに採取し、該フラスコにトルエン20mLを添加し、試料を溶解させた。
(2)その後、上記フラスコに2.0Nのジ-n-ブチルアミン・トルエン溶液20mLを添加し、15分間静置した。
(3)上記フラスコに2-プロパノール70mLを添加し、溶解させて溶液を得た。
(4)上記(3)で得られた溶液について、1mol/L塩酸を用いて滴定を行い、試料滴定量(V1mL)を求めた。
(5)試料を添加しない場合にも、上記(1)~(3)と同様の方法で測定を実施し、ブランク滴定量(V0mL)を求めた。
上記で求めた試料滴定量及びブランク滴定量から、イソシアネート基含有率(NCO%)を以下に示す式を用いて、算出した。
【0341】
[イソシアネート基含有率](質量%) = (V0-V1)×42/[W(1g)×1000]×100
【0342】
[物性4-4]
(数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw))
原料であるポリイソシアネートの数平均分子量(Mn)及び親水性ポリイソシアネート組成物の重量平均分子量(Mw)は下記に示す測定条件のGPC測定により、ポリスチレン基準の数平均分子量及び重量平均分子量を測定することで得た。
【0343】
(測定条件)
装置:東ソー(株)HLC-8120GPC(商品名)
カラム:東ソー(株)TSKgel SuperH1000(商品名)×1本
TSKgel SuperH2000(商品名)×1本
TSKgel SuperH3000(商品名)×1本
キャリアー:テトラハイドロフラン
検出方法:示差屈折計
【0344】
[物性4-5]
(イソシアネート基の平均官能基数(平均NCO数))
親水化前の(親水性化合物による変性前の)ポリイソシアネート、すなわち原料であるポリイソシアネートのイソシアネート基の平均官能基数(平均NCO数)は、下記式により求めた。なお、式中、「Mn」は、原料であるポリイソシアネートの数平均分子量であり、上記「物性4-4」において測定された値を用いた。「NCO%」は、原料であるポリイソシアネートのイソシアネート基含有率であり、上記「物性4-3」において算出された値を用いた。
【0345】
[平均NCO数] = (Mn×[NCO%]×0.01)/42
【0346】
<評価方法>
[評価4-1]
(水分散性)
親水性ポリイソシアネート組成物又はブロックポリイソシアネート組成物にイオン交換水を、水分散体の総質量に対して固形分量が40質量%になるように添加し、ディスパー撹拌機で1000rpmの回転数で5分間攪拌した後に脱泡して水分散体を得た。得られた水分散体について、以下の評価基準に従い、水分散性を評価した。
【0347】
(評価基準)
A:沈殿物や目視で確認できるダマがない液体状態である。
B:沈殿物はなく目視で確認できるダマが部分的に確認される液体状態である。
C:沈殿物が薄く沈殿し、目視で確認できるダマが一部確認される液体状態である。
D:沈殿物が顕著に確認でき沈殿する、又は目視で確認できるダマが大量に確認される液体状態である。
【0348】
[樹脂組成物の製造]
アクリルディスパージョン(Allnex社製、「SETAQUA6515」(商品名)、水酸基濃度3.3モル%(樹脂基準)、アクリルディスパージョンの総質量に対する固形分量45質量%)と、親水性ポリイソシアネート組成物又はブロックポリイソシアネート組成物を、水酸基のモル量に対するイソシアネート基のモル量の比(イソシアネート基/水酸基)が1となるように配合した。さらにイオン交換水を配合して、固形分量が樹脂組成物の総質量に対して40質量%になるように調製し、ディスパー撹拌機で1000rpmの回転数で10分間攪拌し、樹脂組成物を得た。
【0349】
[評価4-2]
(ケーニッヒ硬度)
得られた樹脂組成物をガラス板上に乾燥膜厚40μmになるよう塗装した後、80℃で30分間加熱乾燥し、樹脂膜を得た。得られた樹脂膜について、ケーニッヒ硬度計でケーニッヒ硬度(回)を測定した。
【0350】
[評価4-3]
(低温硬化性)
上記「評価4-2」と同様の方法を用いて、ポリプロピレン(PP)板上に乾燥膜厚40μmになるよう塗装した後、80℃で30分間加熱乾燥し、樹脂膜を得た。得られた樹脂膜を常温(23℃)で1週間保管した後、ゲル分率の測定を行なった。ゲル分率は、樹脂膜をアセトン中に23℃で24時間浸漬した際の未溶解部分質量を浸漬前質量で除した値の百分率(質量%)として求めた。なお、ゲル分率が75質量%以上であるものを良好であると評価した。
【0351】
<親水性ポリイソシアネート組成物の製造>
[実施例4-1]
(親水性ポリイソシアネート組成物P-a1の製造)
温度計、攪拌羽根及び還流冷却管を取り付けた四ツ口フラスコに、窒素気流下で、固形分量が100質量%であり、イソシアネート基含有率が17.4質量%のイソシアヌレート基を有するイソホロンジイソシアネートベースのポリイソシアネート(以下、「IPDIベースイソシアヌレート型PI」と略記する場合がある):100質量部、メトキシポリエチレングリコール(「MPG-081」(商品名)、エチレンオキサイド繰り返し単位:15個、日本乳化剤株式会社製):8.3質量部(イソシアネート基100モル%に対してエチレンオキサイドが3モル%となる量)、及び、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(DPDM)を混合し、115℃で2時間反応を行った。その後、反応液を40℃まで冷却し、固形分量が60.1質量%の親水性ポリイソシアネート組成物P-a1を得た。
【0352】
[実施例4-2~4-6及び比較例4-1~4-4]
(親水性ポリイソシアネート組成物P-a2~P-a6及びP-b1~P-b4の製造)
イソシアネート基100モル%に対するエチレンオキサイドのモル量(変性率)が表1及び2に記載の値となるように親水性化合物であるメトキシポリエチレングリコールMPG-081を配合した以外は、実施例4-1と同様の方法を用いて、各親水性ポリイソシアネート組成物を得た。
【0353】
実施例及び比較例で得られた各親水性ポリイソシアネート組成物について、上記方法を用いて物性を測定し、各種評価を行なった。結果を表15及び16に示す。
【0354】
【表15】
【0355】
【表16】
【0356】
表15~16から、変性率が3mol%以上15mol%以下である親水性ポリイソシアネート組成物P-a1~P-a6(実施例4-1~4-6)では、水分散性が良好であり、樹脂膜としたときのケーニッヒ硬度が優れていた。
また、変性率が5mol%以上12mol%以下である組成物P-a2~P-a5(実施例4-2~4-5)では、水分散性が特に良好であった。
【0357】
一方、変性率が2mol%未満又は15mol%超である親水性ポリイソシアネート組成物P-b1~P-b4(比較例4-1~4-4)では、水分散性及び樹脂膜としたときのケーニッヒ硬度がいずれも不良であった。
【0358】
<ブロックポリイソシアネート組成物の製造>
[実施例4-7]
(ブロックポリイソシアネート組成物BP-a1の製造)
実施例4-1で得られた親水性ポリイソシアネート組成物P-a1に対して、ブロック剤としてマロン酸ジイソプロピル(B-2)をイソシアネート基のモル量に対して1.1モル当量となるように添加し、さらに、ナトリウムメチラートを溶液の総質量に対して28質量%含有するメタノール溶液:1.0質量部(溶液としての量)を添加し、DPDMを固形分量が60質量%になるように加えて撹拌した。55℃に内浴を維持して6時間以上攪拌し、赤外スペクトルでイソシアネート基の特性吸収がなくなったことを確認した。その後、固形分量60.1質量%のブロックポリイソシアネート組成物BP-a1を得た。
【0359】
[実施例4-8~4-12及び比較例4-5~4-8]
(ブロックポリイソシアネート組成物BP-a2~BP-a6及びBP-b1~BP-b8の製造)
親水性ポリイソシアネート組成物P-a1の代わりに、表17及び18に示す親水性ポリイソシアネート組成物およびブロック剤を用いた以外は、実施例4-7と同様の方法を用いて、各ブロックポリイソシアネート組成物を得た。
【0360】
[実施例4-13]
(ブロックポリイソシアネート組成物BP-a7の製造)
実施例4-2で得られた親水性ポリイソシアネート組成物P-a2に対して、ブロック剤としてマロン酸ジ-tert-ブチル(B-1)をイソシアネート基のモル量に対して1.1モル当量となるように添加し、さらに、ナトリウムメチラートを溶液の総質量に対して28質量%含有するメタノール溶液:1.0質量部(溶液としての量)を添加し、DPDMを固形分量が60質量%になるように加えて撹拌した。55℃に内浴を維持して6時間以上攪拌し、赤外スペクトルでイソシアネート基の特性吸収がなくなったことを確認した。その後、固形分量60.1質量%のブロックポリイソシアネート組成物BP-a7を得た。
【0361】
[実施例4-14]
(ブロックポリイソシアネート組成物BP-a8の製造)
実施例4-2で得られた親水性ポリイソシアネート組成物P-a2の代わりに、実施例4-3で得られた親水性ポリイソシアネート組成物P-a3を用いた以外は、実施例4-13と同様の方法を用いて、ブロックポリイソシアネート組成物BP-a8を得た。
【0362】
実施例及び比較例で得られた各ブロックポリイソシアネート組成物について、上記方法を用いて物性を測定し、各種評価を行なった。結果を表17及び18に示す。
【0363】
【表17】
【0364】
【表18】
【0365】
表17及び18から、変性率が3mol%以上15mol%以下である親水性ポリイソシアネート組成物を用いたブロックポリイソシアネート組成物BP-a1~BP-a8(実施例4-7~4-14)では、水分散性が良好であり、樹脂膜としたときのケーニッヒ硬度及び低温硬化性が優れていた。
また、用いた親水性ポリイソシアネート組成物での変性率の増加に伴い、水分散性及び樹脂膜としたときの低温硬化性がより良好になる傾向がみられた。一方、用いた親水性ポリイソシアネート組成物での変性率の減少に伴い、樹脂膜としたときのケーニッヒ硬度がより良好になる傾向がみられた。
また、ブロック剤としてマロン酸ジ-tert-ブチルを用いたブロックポリイソシアネート組成物BP-a7及びBP-a8(実施例4-13及び4-14)は、ブロック剤としてマロン酸ジイソプロピルを用いたブロックポリイソシアネート組成物BP-a2及びBP-a3(実施例4-8及び4-9)と比較して、樹脂膜としたときのケーニッヒ硬度及び低温硬化性がより優れていた。
【0366】
一方、変性率が2mol%未満又は15mol%超である親水性ポリイソシアネート組成物を用いたブロックポリイソシアネート組成物BP-b1~BP-b4(比較例4-5~4-8)では、水分散性、並びに、樹脂膜としたときの硬度及び低温硬化性の全てが不良であった。
【0367】
[実施例4-15]
(ポリイソシアネートP-c1の合成)
温度計、攪拌羽根及び還流冷却管を取り付けた四ツ口フラスコに、窒素気流下で、HDI:100質量部、及び、3価アルコールとε-カプロラクトンとから誘導されるポリエステルポリオール(ダイセル化学社製、「プラクセル303」(商品名)):5.2質量部を仕込み、撹拌下反応器内温度を90℃に1時間保持しウレタン化反応を行った。その後反応器内温度を60℃に保持し、イソシアヌレート化触媒テトラメチルアンモニウムカプリエートを加え、収率が51質量%になった時点で燐酸を添加し反応を停止した。反応液をろ過した後、薄膜蒸発缶を用いて未反応のHDIを除去して、イソシアヌレート型ポリイソシアネート(以下、「ポリイソシアネートP-c1」と称する場合がある)を得た。
得られたポリイソシアネートP-c1のNCO含有率は18.7質量%、数平均分子量は1140、平均イソシアネート基数は5.1であった。また、得られたポリイソシアネートP-c1についてGPC分析及びH-NMR分析を行い、イソシアヌレート3量体が存在することを確認した。
【0368】
[実施例4-16]
(ブロックポリイソシアネート組成物BP-c1の製造)
温度計、攪拌羽根及び還流冷却管を取り付けた四ツ口フラスコに、窒素気流下で、実施例4-15で得られたで得られたポリイソシアネートP-c1:100質量部、メトキシポリエチレングリコール(MPG-081、エチレンオキサイド繰り返し単位:15個、日本乳化剤株式会社製):1.5質量部(イソシアネート基100モル%に対して0.5モル%)、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート(JP-508T、城北化学工業株式会社製):0.01質量部、及び、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(DPDM)を固形分濃度が65質量%になる様に調製し、115℃で2時間反応を行った。反応液を40℃まで冷却し、ブロック剤としてマロン酸ジ-tert-ブチルを反応物中のイソシアネート基のモル量に対して1.1モル当量となるように添加し、さらにナトリウムメチラート(28質量%)含有メタノール溶液:溶液として1.0質量部添加し、撹拌した。48℃に内浴を維持して6時間以上攪拌し、赤外スペクトルでイソシアネート基の特性吸収がなくなったことを確認し、DPDMを固形分量60質量%になるように加えて攪拌し、40℃以下に冷却しブロックポリイソシアネート組成物BP-c1を得た。
【0369】
[実施例4-17]
(ブロックポリイソシアネート組成物BP-d1の製造)
温度計、攪拌羽根及び還流冷却管を取り付けた四ツ口フラスコに、窒素気流下で、ブロックポリイソシアネート組成物BP-c1とBP-a7をNCOのモル比で95:5の比率でブレンドし、30分間撹拌し、固形分60.1質量%のブロックポリイソシアネート組成物BP-d1を得た。
【0370】
[実施例4-18~4-20]
実施例4-18-4-20は表19に従い、実施例4-17と同様の方法でブロックポリイソシアネート組成物を作製した。
得られた各ブロックポリイソシアネート組成物について、上記方法を用いて物性を測定し、各種評価を行なった。結果を表19に示す。
【0371】
【表19】
【産業上の利用可能性】
【0372】
本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物によれば、貯蔵安定性が良好である樹脂組成物を提供することができる。更に、80℃程度の低温での硬化性が良好である樹脂膜を形成することができるため、耐熱性の低い材料の塗装に好適に用いられる。
また、本実施形態の親水性ポリイソシアネート組成物によれば、水分散性が良好であり、硬度に優れた樹脂膜を提供することができる。