IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱製紙株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ソルダーレジストパターンの形成方法 図1
  • 特許-ソルダーレジストパターンの形成方法 図2
  • 特許-ソルダーレジストパターンの形成方法 図3
  • 特許-ソルダーレジストパターンの形成方法 図4
  • 特許-ソルダーレジストパターンの形成方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】ソルダーレジストパターンの形成方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/28 20060101AFI20240321BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
H05K3/28 D
G03F7/027 515
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020156230
(22)【出願日】2020-09-17
(65)【公開番号】P2022049927
(43)【公開日】2022-03-30
【審査請求日】2022-09-27
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002136
【氏名又は名称】弁理士法人たかはし国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田邉 昌大
(72)【発明者】
【氏名】豊田 裕二
【審査官】ゆずりは 広行
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-192692(JP,A)
【文献】特開2010-266819(JP,A)
【文献】特開2018-157174(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/28
G03F 7/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続パッドを少なくとも有する回路基板上にソルダーレジスト層が形成される工程、ソルダーレジスト層の厚みが接続パッドの厚み以下になるまで、硬化していないソルダーレジスト層が薄膜化処理液を用いて薄膜化される工程を、この順に少なくとも含むソルダーレジストパターンの形成方法において、
該ソルダーレジスト層が(A)カルボキシル基を含有する、下記(3)、(5)、(7)及び(9)に示される1種以上のポリマー、(B)重合性化合物、(C)フィラー並びに(D)光重合開始剤を少なくとも含有し、
(A)カルボキシル基を含有する、下記(3)、(5)、(7)及び(9)に示される1種以上のポリマーが、固形分酸価が40~150mgKOH/gのカルボキシル基を含有するポリマーから選ばれる2種以上からなり、2種以上のポリマーの固形分酸価の差の最大値が20mgKOH/g以上であり、
薄膜化処理液が、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ金属水酸化物及びアルカリ金属ケイ酸塩からなる群から選ばれる1種以上の無機アルカリ性化合物を5~25質量%含み、pHが8~12のアルカリ水溶液であることを特徴とするソルダーレジストパターンの形成方法。
(3)エポキシ基と不飽和二重結合を有する化合物と、それ以外の不飽和二重結合を有する化合物との共重合体に、不飽和カルボン酸を反応させ、生成した二級の水酸基に多塩基酸無水物を反応させることによって得られるカルボキシル基を含有するポリマー
(5)多官能エポキシ化合物と不飽和モノカルボン酸を反応させ、生成した水酸基に飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基を含有するポリマー
(7)多官能エポキシ化合物と、不飽和モノカルボン酸と、一分子中に少なくとも1個のアルコール性水酸基と、エポキシ基と反応するアルコール性水酸基以外の1個の反応性基を有する化合物との反応生成物に、飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させることによって得られるカルボキシル基を含有するポリマー
(9)多官能エポキシ樹脂に不飽和モノカルボン酸を反応させた後、多塩基酸無水物を反応させることによって得られるカルボキシル基を含有するポリマーに、さらに、分子中に1個のオキシラン環と1個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物を反応させることによって得られるカルボキシル基を含有するポリマー
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ソルダーレジストパターンの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種電気機器内部の配線基板には、回路基板の半田付け不要な導体配線に半田が付着しないようにするために、この半田付け不要な部分がソルダーレジスト層で被覆されるようにソルダーレジストパターンが形成される。また、ソルダーレジストパターンは、導体配線の酸化防止、電気絶縁及び外部環境からの保護という役割を果たしている。
【0003】
回路基板上に半導体チップ等の電子部品を搭載した半導体パッケージにおいて、フリップチップ接続による電子部品の搭載は、高速化、高密度化を実現する上で有効な手段である。フリップチップ接続では、導体配線の一部がフリップチップ接続用の接続パッドとなし、例えば、この接続パッド上に配設した半田バンプと半導体チップの電極端子とを接合する。
【0004】
回路基板へのソルダーレジストパターンの形成方法としては、フォトリソグラフィー方式が一般に知られている。フォトリソグラフィー方式では、絶縁層1上に接続パッド6と導体配線2を有する回路基板上にソルダーレジスト層3を形成した後、露光、現像して、接続パッド6周辺のソルダーレジスト層3を除去し、開口部を設けることによって、図1に示すSolder Mask Defined(SMD)構造や図2に示すNon Solder Mask Defined(NSMD)構造を形成する。
【0005】
SMD構造において、接続パッド6はその周辺近傍がソルダーレジスト層3に被覆されているため、電子部品の電極端子と接続パッド6とを電気的に確実に接続するために、接続パッド6の露出面に形成する接合部に必要な半田量を確保する必要があり、接続パッド6が大型化してしまうという問題があった。さらに、接続パッド6の周辺近傍をソルダーレジスト層3によって確実に被覆されるようにするために、加工精度を考慮して、接続パッド6のソルダーレジスト層3によって被覆する部分の幅を広く確保しておく必要があり、接続パッド6が更に大型化するという問題があった。一方、NSMD構造の接続パッド6では、接続パッド6全体がソルダーレジスト層3から露出するために、半田との接続面積が大きく、SMD構造の場合と比較して、接続パッド6を小型化することができる。しかし、NSMD構造では、接続パッド6がソルダーレジスト層3から完全に露出しているため、互いに隣接する接続パッド6間において、半田による電気的な短絡が生じる場合があった。
【0006】
このような問題を解決するために、接続パッド6を有する回路基板上にソルダーレジスト層3が形成される工程、ソルダーレジスト層3の厚みが接続パッド6の厚み以下になるまで、硬化していないソルダーレジスト層3が薄膜化される工程をこの順に少なくとも含むソルダーレジストパターンの形成方法が開示されている(例えば、特許文献1~4参照)。この形成方法では、図3に示したように、接続パッド6表面はソルダーレジスト層3から露出しているが、接続パッド6側面の一部はソルダーレジスト層3によって被覆されている構造が得られる。図3に示す構造では、互いに隣接する接続パッド6間の半田による電気的な短絡が生じ難く、電子部品の電極端子と接続パッド6とを電気的に確実に接続するために必要な半田量を確保でき、接続パッド6を小型化することが可能で、電気的接続信頼性に優れる高密度配線の配線基板を作製することができる。
【0007】
また、ソルダーレジストには、熱硬化型、溶剤現像型及びアルカリ現像型がある。アルカリ現像型ソルダーレジストは、耐久性の点で、熱硬化型及び溶剤現像型に比べ、耐アルカリ性、耐水性、耐熱性及び耐久性が劣るという問題がある。これは、アルカリ現像性を付与するために、親水性であるカルボキシル基を有するポリマーを用いていることによる。アルカリ現像性を高めるためには、酸価の高いポリマーが用いられるが、耐久性が低下することがある。また、酸価の低いポリマーを用いることにより、耐久性は向上する一方、アルカリ現像性が低下することがある。そこで、酸価の高いポリマーと酸価の低いポリマーが混合されたソルダーレジストが開発されてきた(例えば、特許文献5参照)。しかしながら、酸価の異なるポリマーが混合されていることから、アルカリ現像性の違いにより、薄膜化処理を行う際に処理量にばらつきが生じ、均一に薄膜化処理することができない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2011-192692号公報
【文献】国際公開第2012/043201号パンフレット
【文献】特開2017-107144号公報
【文献】特開2017-103444号公報
【文献】特開2010-266819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
酸価の異なるカルボキシル基を含有するポリマーを2種以上含むソルダーレジストを用い、硬化していないソルダーレジスト層が薄膜化される工程を含むソルダーレジストパターンの形成方法において、均一に薄膜化処理する方法を提供することが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために鋭意検討した結果、下記発明を見出した。
【0011】
接続パッドを少なくとも有する回路基板上にソルダーレジスト層が形成される工程、ソルダーレジスト層の厚みが接続パッドの厚み以下になるまで、硬化していないソルダーレジスト層が薄膜化処理液を用いて薄膜化される工程を、この順に少なくとも含むソルダーレジストパターンの形成方法において、該ソルダーレジスト層が(A)カルボキシル基を含有するポリマー、(B)重合性化合物、(C)フィラー及び(D)光重合開始剤を少なくとも含有し、(A)カルボキシル基を含有するポリマーが、固形分酸価が40~150mgKOH/gのカルボキシル基を含有するポリマーから選ばれる2種以上からなり、2種以上のポリマーの固形分酸価の差の最大値が20mgKOH/g以上であり、薄膜化処理液が、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ金属水酸化物及びアルカリ金属ケイ酸塩からなる群から選ばれる1種以上の無機アルカリ性化合物を5~25質量%含み、pHが8~12のアルカリ水溶液であることを特徴とするソルダーレジストパターンの形成方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、酸価の異なるカルボキシル基を含有するポリマーを2種以上含むソルダーレジストを用い、硬化していないソルダーレジスト層が薄膜化される工程を含むソルダーレジストパターンの形成方法において、均一に薄膜化処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】ソルダーレジストパターンの断面構造(SMD構造)を示す説明図である。
図2】ソルダーレジストパターンの断面構造(NSMD構造)を示す説明図である。
図3】本発明のソルダーレジストパターンの形成方法で形成されるソルダーレジストパターンの断面構造の一例を示す説明図である。
図4】本発明のソルダーレジストパターンの形成方法における工程の一例を示す説明図である。
図5】本発明のソルダーレジストパターンの形成方法における工程の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のソルダーレジストパターンの形成方法は、接続パッドを有する回路基板上にソルダーレジスト層が形成される工程、ソルダーレジスト層の厚みが接続パッドの厚み以下になるまで、硬化していないソルダーレジスト層が薄膜化処理液を用いて薄膜化される工程を、この順に少なくとも含んでいる。
【0015】
図4を用いて、本発明のソルダーレジストパターンの形成方法を説明する。絶縁層1上に接続パッド6を有する回路基板(図4a)上に、回路基板全面を覆うように、ソルダーレジスト層3が形成される(図4b)。続いて、ソルダーレジスト層3の厚みが接続パッド6の厚み以下になるまで、硬化していないソルダーレジスト層3が薄膜化されることによって、図4dに示すように、接続パッド6表面がソルダーレジスト層3から露出したソルダーレジストパターンが形成できる。
【0016】
図5を用いて、別の本発明のソルダーレジストパターンの形成方法を説明する。絶縁層1上に導体配線2及び接続パッド6を有する回路基板(図5a)上に、回路基板全面を覆うように、ソルダーレジスト層3が形成される(図5b)。次いで、ソルダーレジスト層3の厚みが接続パッド6の厚み以下になるまで薄膜化される領域以外の部分(薄膜化されない部分)を活性光線5により露光して、ソルダーレジスト層3が硬化される(図5c)。図5cでは、フォトマスク4を介して露光されているが、直接描画方式で露光されてもかまわない。続いて、ソルダーレジスト層3の厚みが接続パッド6の厚み以下になるまで、硬化していないソルダーレジスト層3が薄膜化されることによって、図5dに示すように、接続パッド6表面がソルダーレジスト層3から露出したソルダーレジストパターンが形成できる。
【0017】
図4及び5に示したソルダーレジストパターンの形成方法以外にも、本発明においては、回路基板上にソルダーレジスト層3が形成される工程、ソルダーレジスト層3が薄膜化される工程、活性光線によりソルダーレジスト層3が露光される工程及び硬化していないソルダーレジスト層3を完全に除去する現像工程等を、各工程の順番、各工程の回数、各工程における条件(例えば、露光する部分、薄膜化量、ソルダーレジスト層形成時の厚み等)等を変えて組み合わせることができ、種々の構造を有するソルダーレジストパターンを形成することができる。
【0018】
本発明において、回路基板は、絶縁層1と、絶縁層1の表面に形成された接続パッド6とを有する。絶縁層1の表面には、導体配線2が形成されていて、接続パッド6は導体配線2の一部である。本発明において、配線基板は、回路基板の表面にソルダーレジスト層3からなるソルダーレジストパターンを有し、ソルダーレジスト層3から接続パッド6の一部が露出している。電子部品を搭載する配線基板の場合、片表面の接続パッド6は電子部品接続用であり、別の表面の接続パッド6は外部接続用である。電子部品接続用の接続パッド6は電子部品と接合され、外部接続用の接続パッド6は外部電気基板の導体配線と接合される。
【0019】
本発明のソルダーレジストパターンの形成方法における工程の一例を示す説明図である図4及び図5、本発明のソルダーレジストパターンの形成方法で形成されるソルダーレジストパターンの断面構造の一例を示す説明図である図3には、絶縁層1を一層有し、絶縁層1の片表面に接続パッド6を有する回路基板が記載されているが、本発明に係わる回路基板としては、導体配線が配設された絶縁基板にビルドアップ用の絶縁層や導体配線を交互に積層して作製され、絶縁層1、絶縁層1の表面に形成された接続パッド6とを表面に有する回路基板が含まれる。
【0020】
絶縁基板としては、例えば、ガラスクロスにビスマレイミドトリアジン樹脂やエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸させた電気絶縁材料等からなる樹脂製基板が挙げられる。ビルドアップ用の絶縁層としては、例えば、絶縁基板と同様にガラスクロスに熱硬化性樹脂を含浸させた電気絶縁材料、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂に酸化ケイ素等の無機フィラーを分散させた電気絶縁材料等が挙げられる。
【0021】
導体配線2と接続パッド6は、例えば、サブトラクティブ法、セミアディティブ法、アディティブ法等によって形成される。サブトラクティブ法では、例えば、絶縁層1上に設けられた銅層上にエッチングレジストパターンを形成し、露光、現像、エッチング、レジスト剥離を実施して、導体配線2と接続パッド6を形成する。セミアディティブ法では、絶縁層1の表面に無電解銅めっきにより電解銅めっき用の下地金属層を設ける。次に、下地金属層上にめっきレジストパターンを形成し、露出した下地金属層の表面に電解銅めっき層を形成する。その後、レジスト剥離、下地金属層のフラッシュエッチングを実施して、導体配線2と接続パッド6が形成される。
【0022】
本発明において、ソルダーレジスト層3は、(A)カルボキシル基を含有するポリマー、(B)重合性化合物、(C)フィラー及び(D)光重合開始剤を少なくとも含有し、成分(A)が、固形分酸価が40~150mgKOH/gのカルボキシル基を含有するポリマーから選ばれる2種以上からなり、2種以上のポリマーの固形分酸価の差の最大値が20mgKOH/g以上である。
【0023】
本明細書において、下記のように略記する場合がある。
成分(A):(A)カルボキシル基を含有するポリマー
成分(B):(B)重合性化合物
成分(C):(C)フィラー
成分(D):(D)光重合開始剤
【0024】
ソルダーレジストとしては、アルカリ現像型ソルダーレジストが使用できる。また、液状レジストであってもよく、ドライフィルム状レジストであってもよい。液状レジストの場合、1液性であってもよく、2液性であってもよい。
【0025】
成分(A)としては、分子中にカルボキシル基を含有している重合体が使用できる。分子中に更にエチレン性不飽和二重結合を有するカルボキシル基を含有するポリマーは、(B)重合性化合物と共に架橋可能であり、硬化性、硬化後のソルダーレジスト層3における耐アルカリ性の面からより好ましい。具体的には、下記に列挙するようなポリマーが挙げられる。
【0026】
(1)(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸と、それ以外の不飽和二重結合を有する化合物の1種類以上とを共重合することによって得られるカルボキシル基を含有するポリマー。
【0027】
(2)(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸と、それ以外の不飽和二重結合を有する化合物の1種類以上との共重合体に、エポキシ基と不飽和二重結合を有する化合物や(メタ)アクリル酸クロライドなどによって、エチレン性不飽和基をペンダントとして付加させることによって得られるカルボキシル基を含有するポリマー。
【0028】
(3)エポキシ基と不飽和二重結合を有する化合物と、それ以外の不飽和二重結合を有する化合物との共重合体に、(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸を反応させ、生成した二級の水酸基に多塩基酸無水物を反応させることによって得られるカルボキシル基を含有するポリマー。
【0029】
(4)無水マレイン酸などの不飽和二重結合を有する酸無水物と、それ以外の不飽和二重結合を有する化合物との共重合体に、水酸基と不飽和二重結合を有する化合物を反応させることによって得られるカルボキシル基を含有するポリマー。
【0030】
(5)多官能エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸などの不飽和モノカルボン酸を反応させ、生成した水酸基に飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基を含有するポリマー。
【0031】
(6)ポリビニルアルコール誘導体などの水酸基含有ポリマーに、飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させた後、生成したカルボン酸に一分子中にエポキシ基と不飽和二重結合を有する化合物を反応させることによって得られる水酸基含有のカルボキシル基を含有するポリマー。
【0032】
(7)多官能エポキシ化合物と、(メタ)アクリル酸などの不飽和モノカルボン酸と、一分子中に少なくとも1個のアルコール性水酸基と、エポキシ基と反応するアルコール性水酸基以外の1個の反応性基を有する化合物(例えば、ジメチロールプロピオン酸など)との反応生成物に、飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させることによって得られるカルボキシル基を含有するポリマー。
【0033】
(8)一分子中に少なくとも2個のオキセタン環を有する多官能オキセタン化合物に(メタ)アクリル酸などの不飽和モノカルボン酸を反応させることによって得られた変性オキセタン樹脂中の第一級水酸基に対して、飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させることによって得られるカルボキシル基を含有するポリマー。
【0034】
(9)多官能エポキシ樹脂(例えば、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂など)に不飽和モノカルボン酸(例えば、(メタ)アクリル酸など)を反応させた後、多塩基酸無水物(例えば、テトラヒドロフタル酸無水物など)を反応させることによって得られるカルボキシル基を含有するポリマーに、さらに、分子中に1個のオキシラン環と1個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物(例えば、グリシジル(メタ)アクリレートなど)を反応させることによって得られるカルボキシル基を含有するポリマー。
【0035】
成分(A)は、上記列挙したポリマーに限定されるものではない。また、これらは、2種以上を組み合わせて用いられる。
【0036】
上記列挙したポリマーの中で好ましいものとしては、上記(2)、(5)、(7)、(9)のカルボキシル基を含有するポリマーであり、特に上記(9)のカルボキシル基を含有するポリマーが、硬化性、硬化後のソルダーレジスト層の特性の面からより好ましい。
【0037】
なお、本発明において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸、メタクリル酸及びそれらの混合物を総称する用語である。(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレート及びそれらの混合物を総称する用語である。エポキシ基と不飽和二重結合を有する化合物としては、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。水酸基と不飽和二重結合を有する化合物としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0038】
上記のような成分(A)は、バックボーン・ポリマー(主鎖)の側鎖に、多数の遊離のカルボキシル基を有するため、希アルカリ水溶液による現像が可能になる。
【0039】
本発明において、成分(A)の酸価は40~150mgKOH/gの範囲であり、40~130mgKOH/gであることがより好ましい。成分(A)の酸価が40mgKOH/g未満であると、薄膜化処理液でのミセル化が困難になる場合があり、150mgKOH/gを超えると、耐アルカリ性が低下し、薄膜化処理液による膨潤が速くなり、薄膜化処理が不均一になる場合がある。
【0040】
成分(A)がある酸価の1種のポリマーからなる場合、現像性の低下、又は耐アルカリ性、耐水性、耐熱性の低下が起こる。また、成分(A)が、固形分酸価が40~150mgKOH/gのカルボキシル基を含有するポリマーから選ばれる2種以上からなるが、2種以上のポリマーの固形分酸価の差の最大値が20mgKOH/g未満である場合、現像性の低下、又は耐アルカリ性、耐水性、耐熱性の低下が起こる。
【0041】
成分(A)の含有率は、ソルダーレジスト層3に対して40~65質量%であることが好ましく、45~55質量%であることがより好ましい。(A)カルボキシル基を含有するポリマーの含有率が40質量%未満である場合、硬化後のソルダーレジスト層3の化学的強度、機械的強度が低くなる傾向がある。また、被膜性が悪くなる傾向がある。(A)カルボキシル基を含有するポリマーの配合量が65質量%を超えると、重合性が低下する場合がある。
【0042】
成分(B)は、活性光線照射によって光硬化して、ソルダーレジスト層3をアルカリ水溶液に対して不溶化させるもの、又は不溶化させることを助けるものである。このような化合物としては、エチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコールのジ(メタ)アクリレート類;ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス-ヒドロキシエチルイソシアヌレートなどの多価アルコール又はこれらのエチレンオキサイド付加物若しくはプロピレンオキサイド付加物などの多価(メタ)アクリレート類;フェノキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、及びこれらのフェノール類のエチレンオキサイド付加物若しくはプロピレンオキサイド付加物などの多価(メタ)アクリレート類;グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレートなどのグリシジルエーテルの多価(メタ)アクリレート類;メラミン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0043】
成分(B)の配合量は、成分(A)100質量部に対して、好ましくは1~100質量部であり、より好ましくは、5~70質量部である。成分(B)の配合量が1質量部未満である場合、硬化性が低下し、活性光線照射と薄膜化によってソルダーレジストパターンを形成することが困難になる場合やソルダーレジストパターンによる外部環境からの保護という役割が果たせなくなる場合がある。一方、該配合量が100質量部を超えた場合、薄膜化に要する時間が長くなる場合や、ソルダーレジスト層3が脆くなる場合がある。
【0044】
成分(C)としては、無機又は有機フィラーが使用できる。特に硫酸バリウム、球状シリカ及びタルクが好ましく用いられ、これらを単独で又は2種以上配合することができる。フィラーの平均粒子径は、0.1~20μmの範囲内であることが好ましい。上記平均粒子径は、より好ましくは0.2μm以上、より好ましくは4μm以下、更に好ましくは2μm以下である。また、接続パッド6は、ソルダーレジスト層3との密着性を向上させることを目的として、その表面を粗面化処理する場合がある。このように粗面化処理された接続パッド6上にソルダーレジスト層3を形成する際には、粗面化によって形成された接続パッド6表面の凹凸にフィラーがはまり込むことがある。凹凸にはまり込んだフィラー周囲のソルダーレジスト層3は、薄膜化処理速度が通常より遅くなる場合が多い。その結果、接続パッド6表面上にソルダーレジストの残渣が発生する場合がある。よって、上記理由による残渣発生を回避するためにも、フィラーの平均粒子径は、0.1~20μmの範囲内であることが好ましい。さらに、接続パッド6の粗面化度とフィラーの平均粒子径との組み合わせに注意することが好ましい。本発明における平均粒子径とは、レーザ回折散乱法で測定されたD50(体積基準50%粒子径)である。
【0045】
成分(C)の配合量は、成分(A)100質量部に対して、好ましくは300質量部以下である。成分(C)の配合量が300質量部を超えた場合、液状レジストやドライフィルム状レジストを製造するための塗液の粘度が高くなり、塗工性が低下する場合や、硬化後のソルダーレジスト層3が脆くなる場合がある。
【0046】
成分(D)としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾインとそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、4′-(1-t-ブチルジオキシ-1-メチルエチル)アセトフェノン等のアセトフェノン類;2-メチルアントラキノン、2-アミルアントラキノン、2-t-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン等のアントラキノン類;2,4-ジメエルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン、4-(1-t-ブチルジオキシ-1-メチルエチル)ベンゾフェノン、3,3′,4,4′-テトラキス(t-ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類等が挙げられる。
【0047】
また、好ましい成分(D)として、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]ブタン-1-オン、N,N-ジメチルアミノアセトフェノン(市販品としては、IGM Resins B.V.社製のOMNIRAD(登録商標、旧イルガキュア(登録商標))907、OMNIRAD(旧イルガキュア)369、OMNIRAD(旧イルガキュア)379等)等のα-アミノアセトフェノン類;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキサイド(市販品としては、IGM Resins B.V.社製のOMNIRAD(旧イルガキュア)TPO、OMNIRAD(旧イルガキュア)819等)等のアシルホスフィンオキサイド類が挙げられる。
【0048】
成分(D)の配合量は、成分(A)100質量部に対して、好ましくは0.01~30質量部であり、より好ましくは0.5~15質量部である。成分(D)の配合量が、(A)カルボキシル基を含有するポリマー100質量部に対し0.01質量部未満であると、ソルダーレジスト層3の光硬化性が不足する場合や、ソルダーレジスト層3が剥離する場合や、耐薬品性等のソルダーレジスト層3の特性が低下する場合がある。一方、光重合開始剤の配合量が、成分(A)100質量部に対して30質量部を超えると、光重合開始剤の光吸収により、深部硬化性が低下する場合がある。
【0049】
本発明に係わるソルダーレジスト層3には、ソルダーレジスト層3の物理的強度等を上げるために、必要に応じて、熱硬化性成分を配合することができる。このような熱硬化性成分としては、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂などのアミノ樹脂、ブロックイソシアネート化合物、シクロカーボネート化合物、多官能エポキシ化合物、多官能オキセタン化合物、エピスルフィド樹脂等の熱硬化性樹脂が使用できる。
【0050】
熱硬化性成分の配合量は通常用いられる割合であればよく、例えば成分(A)と成分(B)との総量100質量部に対して、好ましくは0.01~20質量部である。熱硬化性成分は、単独で用いることもできるし、2種類以上を組み合わせて用いることもできる。
【0051】
さらに、本発明に係わるソルダーレジストには、成分(A)の合成のため、液状レジストの調製のため、ドライフィルム状レジストを製造するための塗液の調製のため、又は液状レジストや該塗液の粘度調整のため等の目的で、有機溶剤を使用することができる。
【0052】
有機溶剤としては、ケトン類、芳香族炭化水素類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルアセテート類、エステル類、アルコール類、脂肪族炭化水素、石油系溶剤等を挙げることができる。
【0053】
より具体的には、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールブチルエーテルアセテートなどのエステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤等が挙げられる。有機溶剤は、単独で用いることもできるし、2種以上の混合物として用いることもできる。
【0054】
回路基板上にソルダーレジスト層3が形成される方法は、いかなる方法でもよい。例えば、液状レジストの場合、スクリーン印刷法、ロールコート法、スプレー法、浸漬法、カーテンコート法、バーコート法、エアナイフ法、ホットメルト法、グラビアコート法、刷毛塗り法、オフセット印刷法等が挙げられる。ドライフィルム状レジストの場合、ラミネート法、真空ラミネート法等が挙げられる。
【0055】
本発明に係わる、薄膜化処理液によってソルダーレジスト層3を薄膜化する工程とは、薄膜化処理液によって、硬化していないソルダーレジスト層成分をミセル化させるミセル化処理(薄膜化処理)、次にミセル除去液によってミセルを除去するミセル除去処理を含む工程である。さらに、除去しきれなかったソルダーレジスト層3表面や残存付着した薄膜化処理液及びミセル除去液を水洗によって洗い流す水洗処理、水洗水を除去する乾燥処理を含んでもよい。
【0056】
薄膜化処理(ミセル化処理)とは、薄膜化処理液によって、ソルダーレジスト層成分をミセル化し、このミセルを薄膜化処理液に対して一旦不溶化する処理である。薄膜化処理液は高濃度のアルカリ水溶液である。本発明では、薄膜化処理液が、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ金属水酸化物及びアルカリ金属ケイ酸塩からなる群から選ばれる1種以上の無機アルカリ性化合物を5~25質量%含み、より好ましくは、5~20質量%含み、さらに好ましくは6~17質量%含む。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。これらの無機アルカリ性化合物の含有率が5質量%未満である場合、薄膜化量が不均一になる。また、該含有率が25質量%を超えた場合、無機アルカリ性化合物の析出が起こりやすくなることから、薄膜化処理液の経時安定性が問題となる。
【0057】
上記無機アルカリ性化合物以外に、薄膜化処理液は、例えば、アンモニウムリン酸塩、アンモニウム炭酸塩等の無機アルカリ性化合物;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、シクロヘキシルアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチル-2-ヒドロキシエチルアンモニウムヒドロキサイド(コリン)等の有機アルカリ性化合物を含むこともできる。
【0058】
アルカリ性化合物は単独で用いてもよいし、又は2種以上を併用してもよい。また、無機アルカリ性化合物と有機アルカリ性化合物を併用することもできる。
【0059】
また、成分(A)、成分(B)、成分(C)及び成分(D)を少なくとも含有し、成分(A)が2種以上のカルボキシル基を含有するポリマーからなり、該ポリマーの固形分の酸価の差の最大値が20mgKOH/g以上であるソルダーレジスト層3を薄膜化した場合、それぞれのポリマーのミセル化速度が異なり、薄膜化の進行に伴い、ソルダーレジスト層3表面の凹凸が大きくなるという問題が発生する。ソルダーレジスト層3の表面形状を均一に薄膜化するためには、薄膜化処理液はpHが8~12のアルカリ水溶液であり、より好ましいpHは8~11.8であり、さらに好ましいpHは8~11.5であり、特に好ましい範囲は8以上10未満である。pHが8未満であると、ミセル化が困難となる。pHが12を超えると、成分(A)の固形分酸価が異なることによるミセル形成速度の差が大きくなり、薄膜化処理が不均一になる。
【0060】
硫酸塩又は亜硫酸塩以外に、薄膜化処理液は、例えば、クエン酸一ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸一カリウム、クエン酸二カリウム、クエン酸三カリウム等のクエン酸塩;酒石酸水素カリウム、酒石酸カリウム、酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウムナトリウム、酒石酸アンモニウム等の酒石酸塩;酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等の酢酸塩を含むこともできる。
【0061】
さらに、薄膜化処理液にはpH調整剤として硫酸、塩酸、硝酸等の酸を含むこともできる。
【0062】
また、薄膜化処理液には、界面活性剤、消泡剤、溶剤を適宜添加することもできる。
【0063】
薄膜化処理は、浸漬処理、パドル処理、スプレー処理、ブラッシング、スクレーピング等の方法を用いることができるが、浸漬処理が好ましい。浸漬処理以外の処理方法は、薄膜化処理液中に気泡が発生しやすく、その発生した気泡が薄膜化処理中にソルダーレジスト層3表面に付着して、薄膜化量が不均一となる場合がある。薄膜化処理液の温度は10~50℃であることが好ましく、15~35℃であることがより好ましい。
【0064】
薄膜化処理液に対して不溶化されたソルダーレジスト層成分のミセルを除去するミセル除去処理においては、ミセル除去液をスプレーすることによって、一挙にミセルを溶解除去する。
【0065】
ミセル除去液としては、水道水、工業用水、純水等を用いることができる。また、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ金属ケイ酸塩から選ばれる無機アルカリ性化合物、及び、TMAH、コリンから選ばれる有機アルカリ性化合物の群から選ばれる少なくとも1種を含むpH5~10の水溶液をミセル除去液として用いることによって、薄膜化処理液で不溶化されたソルダーレジスト層成分が再分散しやすくなる。ミセル除去液のpHが5未満の場合、ソルダーレジスト層成分が凝集し、不溶性のスラッジとなって、薄膜化したソルダーレジスト層3表面に付着するおそれがある。一方、ミセル除去液のpHが10を超えた場合、ソルダーレジスト層3が過度に溶解拡散し、面内で薄膜化量にムラが発生しやすくなる場合がある。また、ミセル除去液は、硫酸、リン酸、塩酸等を用いて、pHを調整することができる。
【0066】
ミセル除去処理におけるスプレーの条件について説明する。スプレーの条件(温度、時間、スプレー圧)は、薄膜化処理されるソルダーレジスト層3の溶解速度に合わせて適宜調整される。具体的には、処理温度は10~50℃が好ましく、より好ましくは15~35℃である。また、スプレー圧は0.01~0.5MPaとするのが好ましく、より好ましくは0.1~0.3MPaである。ミセル除去液の供給流量は、1cm当たりのソルダーレジスト層3に対して0.030~1.0L/minが好ましく、0.050~1.0L/minがより好ましく、0.10~1.0L/minが更に好ましい。供給流量がこの範囲であると、薄膜化後のソルダーレジスト層3表面に不溶性のスラッジを残すことなく、面内略均一にミセルを除去することができる。1cm当たりの供給流量が0.030L/min未満では、不溶化したソルダーレジスト層成分の溶解不良が起こる場合がある。一方、供給流量が1.0L/minを超えると、供給のために必要なポンプなどの部品が巨大になり、大掛かりな装置が必要となる場合がある。さらに、1.0L/minを超えた供給量では、ソルダーレジスト層成分の溶解拡散に与える効果が変わらなくなることがある。
【0067】
ミセル除去処理後、さらに、除去しきれなかったソルダーレジスト層3やソルダーレジスト層3表面に残存付着した薄膜化処理液及びミセル除去液を水洗処理によって洗い流すことができる。水洗処理の方法としては、拡散速度と液供給の均一性の点からスプレー方式が好ましい。水洗水としては、水道水、工業用水、純水等を用いることができる。このうち純水を使用することが好ましい。純水は、一般的に工業用に用いられるものを使用することができる。
【0068】
乾燥処理では、熱風乾燥、室温送風乾燥のいずれも用いることができるが、好ましくは高圧空気をエアガンからあるいはブロアから大量の空気を送気してエアナイフでソルダーレジスト層3表面に残存している水を吹き飛ばす乾燥方法がよい。
【0069】
本発明のソルダーレジストパターンの形成方法では、ソルダーレジスト層3形成後の厚みと硬化していないソルダーレジスト層3が薄膜化された量で、接続パッド6周囲のソルダーレジスト層3の厚みが決定される。また、本発明のソルダーレジストパターンの形成方法では、0.01~500μmの範囲で薄膜化量を自由に調整することができる。薄膜化後のソルダーレジスト層3から接続パッド6のトップ面までの高さは、必要な半田量に応じて適宜調整する。具体的には、接続パッド6のトップ面から1μm以上50μm以下の膜厚を残すところまで薄膜化することが好ましい。
【0070】
ソルダーレジスト層3が露光される工程における露光では、ソルダーレジスト層3に対して活性光線を照射する。キセノンランプ、高圧水銀灯、低圧水銀灯、超高圧水銀灯、UV蛍光灯を光源とした反射画像露光、フォトマスクを用いた片面、両面密着露光や、プロキシミティ方式、プロジェクション方式やレーザ走査露光等を使用することができる。走査露光を行う場合には、UVレーザ、He-Neレーザ、He-Cdレーザ、アルゴンレーザ、クリプトンイオンレーザ、ルビーレーザ、YAGレーザ、窒素レーザ、色素レーザ、エキシマレーザ等のレーザ光源を発光波長に応じてSHG波長変換した走査露光、あるいは、液晶シャッター、マイクロミラーアレイシャッターを利用した走査露光によって露光することができる。露光によって、ソルダーレジスト層3は重合して、硬化する。
【0071】
ソルダーレジスト層3の厚みが接続パッド6の厚み以下になるまで薄膜化される領域は、接続パッド6以上の大きさであればよく、隣接する導体配線2の絶縁抵抗性に影響しない限り、どれだけ大きくしてもかまわない。
【0072】
本発明では、ソルダーレジスト層3が薄膜化される工程よりも後に、ソルダーレジスト層3に硬化処理を行う工程(ポストキュア工程)が行われることが好ましい。薄膜化される工程とポストキュア工程の間に別の工程が含まれていてもよい。ポストキュア工程によって、ソルダーレジストパターンは、導体配線の酸化防止、電気絶縁及び外部環境からの保護という役割を効率良く果たすことができる。硬化処理としては、例えば、加熱処理、活性光線をソルダーレジスト層の全面又は一部に照射する露光処理、加熱と露光処理の併用等が挙げられる。加熱処理を行う場合は、窒素雰囲気中で、室温から450℃の温度を選び、段階的に昇温するか、ある温度範囲を選び、連続的に昇温しながら、5分~5時間実施する。加熱処理の最高温度は、好ましくは120~450℃であり、より好ましくは130~450℃である。例えば、130℃、200℃、400℃で、各々30分間加熱処理する。また、室温から400℃まで2時間かけて直線的に昇温して加熱処理してもよい。
【実施例
【0073】
以下、実施例によって本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0074】
合成例1
攪拌機、温度計、環流冷却管、滴下ロート及び窒素導入管を備えたセパラブルフラスコに、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬社製、商品名:EOCN-104S)1900質量部、カルビトールアセテート1091質量部、及びソルベントナフサ489.3質量部を仕込み、90℃に加熱して攪拌し、溶解した。次に、一旦60℃まで冷却した後、アクリル酸89質量部、トリフェニルホスフィン9.1質量部、メチルハイドロキノン1.3質量部を加えて、100℃で12時間反応させた。その後、これにテトラヒドロ無水フタル酸320.0質量部を仕込み、90℃に加熱して6時間反応させた。これにより、不揮発分65質量%、固形分酸価44mgKOH/gの(A)カルボキシル基を含有するポリマーの溶液を得た。固形分酸価の測定にはJIS K0070:1992の指示薬滴定法を用いた。
【0075】
合成例2
攪拌機、温度計、環流冷却管、滴下ロート及び窒素導入管を備えたセパラブルフラスコに、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬社製、商品名:EOCN-104S)1819質量部、カルビトールアセテート1048質量部、及びソルベントナフサ499.4質量部を仕込み、90℃に加熱して攪拌し、溶解した。次に、一旦60℃まで冷却した後、アクリル酸117質量部、トリフェニルホスフィン9.2質量部、メチルハイドロキノン1.3質量部を加えて、100℃で12時間反応させた。その後、これにテトラヒドロ無水フタル酸326.0質量部を仕込み、90℃に加熱して6時間反応させた。これにより、不揮発分65質量%、固形分酸価70mgKOH/gの(A)カルボキシル基を含有するポリマーの溶液を得た。
【0076】
合成例3
攪拌機、温度計、環流冷却管、滴下ロート及び窒素導入管を備えたセパラブルフラスコに、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬社製、商品名:EOCN-104S)1923質量部、カルビトールアセテート1097質量部、及びソルベントナフサ487.5質量部を仕込み、90℃に加熱して攪拌し、溶解した。次に、一旦60℃まで冷却した後、アクリル酸129質量部、トリフェニルホスフィン9.1質量部、メチルハイドロキノン1.3質量部を加えて、100℃で12時間反応させた。その後、これにテトラヒドロ無水フタル酸321.2質量部を仕込み、90℃に加熱して6時間反応させた。これにより、不揮発分66質量%、固形分酸価85mgKOH/gの(A)カルボキシル基を含有するポリマーの溶液を得た。
【0077】
合成例4
攪拌機、温度計、環流冷却管、滴下ロート及び窒素導入管を備えたセパラブルフラスコに、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬社製、商品名:EOCN-104S)1897質量部、カルビトールアセテート1038質量部、及びソルベントナフサ497.4質量部を仕込み、90℃に加熱して攪拌し、溶解した。次に、一旦60℃まで冷却した後、アクリル酸141質量部、トリフェニルホスフィン9.1質量部、メチルハイドロキノン1.3質量部を加えて、100℃で12時間反応させた。その後、これにテトラヒドロ無水フタル酸326.8質量部を仕込み、90℃に加熱して6時間反応させた。これにより、不揮発分65質量%、固形分酸価97mgKOH/gの(A)カルボキシル基を含有するポリマーの溶液を得た。
【0078】
合成例5
攪拌機、温度計、環流冷却管、滴下ロート及び窒素導入管を備えたセパラブルフラスコに、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬社製、商品名:EOCN-104S)1909質量部、カルビトールアセテート1052質量部、及びソルベントナフサ498.8質量部を仕込み、90℃に加熱して攪拌し、溶解した。次に、一旦60℃まで冷却した後、アクリル酸138質量部、トリフェニルホスフィン9.1質量部、メチルハイドロキノン1.4質量部を加えて、100℃で12時間反応させた。その後、これにテトラヒドロ無水フタル酸328.9質量部を仕込み、90℃に加熱して6時間反応させた。これにより、不揮発分64質量%、固形分酸価147mgKOH/gの(A)カルボキシル基を含有するポリマーの溶液を得た。
【0079】
合成例6
攪拌機、温度計、環流冷却管、滴下ロート及び窒素導入管を備えたセパラブルフラスコに、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬社製、商品名:EOCN-104S)1903質量部、カルビトールアセテート1047質量部、及びソルベントナフサ498.6質量部を仕込み、90℃に加熱して攪拌し、溶解した。次に、一旦60℃まで冷却した後、アクリル酸157質量部、トリフェニルホスフィン9.2質量部、メチルハイドロキノン1.3質量部を加えて、100℃で12時間反応させた。その後、これにテトラヒドロ無水フタル酸326.3質量部を仕込み、90℃に加熱して6時間反応させた。これにより、不揮発分66質量%、固形分酸価156mgKOH/gの(A)カルボキシル基を含有するポリマーの溶液を得た。
【0080】
合成例7
攪拌機、温度計、環流冷却管、滴下ロート及び窒素導入管を備えたセパラブルフラスコに、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬社製、商品名:EOCN-104S)1793質量部、カルビトールアセテート988質量部、及びソルベントナフサ479.1質量部を仕込み、90℃に加熱して攪拌し、溶解した。次に、一旦60℃まで冷却した後、アクリル酸72質量部、トリフェニルホスフィン9.0質量部、メチルハイドロキノン1.1質量部を加えて、100℃で12時間反応させた。その後、これにテトラヒドロ無水フタル酸326.9質量部を仕込み、90℃に加熱して6時間反応させた。これにより、不揮発分65質量%、固形分酸価35mgKOH/gの(A)カルボキシル基を含有するポリマーの溶液を得た。
【0081】
表1に示す割合(質量部)にて各材料を配合し、攪拌機にて予備混合した後、3本ロールミルで混練し、ソルダーレジストを調製した。表1中に示す割合は特段の記載がない限り、不揮発分の質量部を示す。
【0082】
【表1】
【0083】
銅張積層板(面積170mm×200mm、銅箔厚18μm、基材厚み0.4mm)からエッチングレジストを使用したサブトラクティブ法によって、絶縁層1に導体配線幅80μm、導体配線間距離80μmの導体配線2を有する回路基板を作製した。次に、各配合例及び各比較配合例のソルダーレジストを、上記回路基板上にアプリケーターを用いてそれぞれ塗工し、70℃、30分間の乾燥を実施した。これにより絶縁層1表面からソルダーレジスト層3表面までの乾燥膜厚が35μmのソルダーレジスト層3が回路基板上に形成された。
【0084】
次に、導体配線2の始点と終点にあたる部分を接続パッド6とみなし、始点と終点にあたる部分の端から80μm外の領域に活性光線5が照射されるようなパターンを有するフォトマスク4を用いて、密着露光機にて、200mJ/cmのエネルギーにて、ソルダーレジスト層3に露光を実施した。
【0085】
次いで、表2に示すアルカリ水溶液(薄膜化処理液、温度20℃)を用いて浸漬処理を行い、続いて、水道水を用いてミセル除去処理及び水洗を実施し、次に、乾燥処理を行って非露光部のソルダーレジスト層3の厚みが平均12μmになるまで、硬化していないソルダーレジスト層3を薄膜化した。
【0086】
【表2】
【0087】
続いて、160℃、60分の条件でポストキュアを実施し、ソルダーレジストパターンを形成した。各実施例及び各比較例のソルダーレジストパターンを顕微鏡で観察した結果、図3に示したように、高さ18μmの導体配線2が厚み35μmのソルダーレジスト層3によって被覆され、高さ18μmの接続パッド6の周囲が厚み12μmのソルダーレジスト層3によって被覆されたソルダーレジストパターンが形成されていた。
【0088】
また、各実施例及び各比較例のソルダーレジストパターンにおける接続パッド6及び接続パッド6周囲のソルダーレジスト層3を顕微鏡で観察し、「残渣」を評価した。評価の基準を下記に記す。
【0089】
(残渣)
○(Good): 接続パッド上に残渣がない。
△(Average): 接続パッド上に残渣があるが問題とならないレベル。
×(Poor): 接続パッド上に残渣があり実用上問題となるレベル。
【0090】
銅張積層板(面積170mm×200mm、銅箔厚18μm、基材厚み0.4mm)に、各配合例及び各比較配合例のソルダーレジストを、アプリケーターを用いてそれぞれ塗工し、70℃、30分間の乾燥を実施した。これにより絶縁層1表面からソルダーレジスト層3表面までの乾燥膜厚が35μmのソルダーレジスト層3が回路基板上に形成された。
【0091】
次いで、開口径が50μmの円型パターンが面全体に点在するマスクを用いて、密着露光機にて、200mJ/cmのエネルギーにて、ソルダーレジスト層3に露光を実施した。
【0092】
表2に示すアルカリ水溶液(薄膜化処理液、温度20℃)を用いて浸漬処理を行い、続いて、水道水を用いてミセル除去処理及び水洗を実施し、次に、乾燥処理を行って非露光部のソルダーレジスト層3の厚みが平均12μmになるまで、硬化していないソルダーレジスト層3を薄膜化した。
【0093】
各実施例及び各比較例のソルダーレジストパターンにおけるソルダーレジスト層3の開口部を顕微鏡で観察し、「解像性」を評価した。評価の基準を下記に記す。
【0094】
(解像性)
○(Good):開口径50μmのパターンに歪みがなく開口している。
△(Average):開口径50μmのパターンに歪みがあるが実用上問題とならないレベル。
×(Poor):開口径50μmのパターンが開口していない。
【0095】
銅張積層板(面積170mm×200mm、銅箔厚18μm、基材厚み0.4mm)に、各配合例及び各比較配合例のソルダーレジストを、アプリケーターを用いてそれぞれ塗工し、70℃、30分間の乾燥を実施した。これにより絶縁層1表面からソルダーレジスト層3表面までの乾燥膜厚が35μmのソルダーレジスト層3が回路基板上に形成された。
【0096】
表2に示すアルカリ水溶液(薄膜化処理液、温度20℃)を用いて浸漬処理を行い、続いて、水道水を用いてミセル除去処理及び水洗を実施し、硬化していないソルダーレジスト層3を薄膜化した。
【0097】
各実施例及び各比較例のソルダーレジストパターンにおいて、ソルダーレジスト層3の開口部の薄膜化量が5、10、15及び20μmのソルダーレジスト層3をそれぞれ作製し、各ソルダーレジスト層3の表面粗さRaを測定し、「均一性」を評価した。評価の基準を下記に記す。表面粗さRaの測定には株式会社キーエンス製の形状解析レーザ顕微鏡VK-X1000を用い、倍率2000倍で形状解析を行った。各薄膜化量において、表面粗さRaを測定し、全測定結果の表面粗さRaの最大値及び最小値を求めた。
【0098】
(均一性)
○(Good):Raの最大値と最小値の差が0.2μm未満。
△(Average):Raの最大値と最小値の差が0.2μm以上0.3μm未満。
×(Poor):Raの最大値と最小値の差が0.3μm以上。
【0099】
表2からわかるように、ソルダーレジスト層が成分(A)、成分(B)、成分(C)及び成分(D)を少なくとも含有し、成分(A)が、固形分酸価が40~150mgKOH/gのカルボキシル基を含有するポリマーから選ばれる2種以上からなり、2種以上のポリマーの固形分酸価の差の最大値が20mgKOH/g以上であり、薄膜化処理液が、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ金属水酸化物及びアルカリ金属ケイ酸塩からなる群から選ばれる1種以上の無機アルカリ性化合物を5~25質量%含み、pHが8~12のアルカリ水溶液である、実施例では、比較例と比べて、酸価の異なるカルボキシル基を含有するポリマーを混合したソルダーレジストを用いながらも、均一な薄膜化処理が可能であった。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明のソルダーレジストパターンの形成方法は、例えば、配線の一部にフリップチップ接続用の接続パッドを備えた回路基板のソルダーレジストパターンの形成を行う用途に適用できる。
【符号の説明】
【0101】
1 絶縁層
2 導体配線
3 ソルダーレジスト層
4 フォトマスク
5 活性光線
6 接続パッド
図1
図2
図3
図4
図5