(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】ポリスチレン系樹脂積層発泡シート、およびポリスチレン系樹脂積層発泡容器
(51)【国際特許分類】
B32B 27/30 20060101AFI20240321BHJP
B32B 5/18 20060101ALI20240321BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240321BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
B32B27/30 B
B32B5/18
B32B27/00 H
B65D65/40 D
(21)【出願番号】P 2020163132
(22)【出願日】2020-09-29
【審査請求日】2023-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004314
【氏名又は名称】弁理士法人青藍国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100121636
【氏名又は名称】吉田 昌靖
(72)【発明者】
【氏名】今野 孝
(72)【発明者】
【氏名】青木 健一郎
【審査官】中西 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-091932(JP,A)
【文献】特開2015-066917(JP,A)
【文献】特開2012-224025(JP,A)
【文献】特開2001-088252(JP,A)
【文献】特開2015-189864(JP,A)
【文献】特開2020-110994(JP,A)
【文献】特開2000-272061(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B、B65D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)と耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルム(2)との積層構造を含むポリスチレン系樹脂積層発泡シートであって、
該耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)が、第1発泡層(1a)と第2発泡層(1b)との積層体であり、該第1発泡層(1a)と該耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルム(2)とが積層され、
該第1発泡層(1a)が最外層であり、
該第1発泡層(1a)が耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層であり、該第2発泡層(1b)が汎用ポリスチレン系樹脂層であり、
該第1発泡層(1a)を形成するポリスチレン系樹脂(Ia)が、スチレン-アクリル酸系共重合体およびスチレン-メタクリル酸系共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含み、
該第2発泡層(1b)を形成するポリスチレン系樹脂(Ib)が、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ジメチルスチレン、パラメチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレンの単独重合体または共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含み、
該耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルム(2)がハイインパクトポリスチレン樹脂を含み、
該第1発泡層(1a)の厚みが0.25mm~1.5mmであり、
該第2発泡層(1b)の厚みが0.25mm~1.5mmであり、
該耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルム(2)の厚みが80μm~180μmであり、
該第1発泡層(1a)のガラス転移温度Tg1が該第2発泡層(1b)のガラス転移温度Tg2よりも大きく、
該第2発泡層(1b)の表層密度D2と該第1発泡層(1a)の表層密度D1との差が0.02g/m
3以下であり、
該第1発泡層(1a)側への打抜必要エネルギーが0.2J~1.0Jであり、
該第2発泡層(1b)側への打抜必要エネルギーが0.2J~1.0Jである、
ポリスチレン系樹脂積層発泡シート。
【請求項2】
前記耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)の全体の見掛け密度が0.10g/cm
3~0.30g/cm
3である、請求項
1に記載のポリスチレン系樹脂積層発泡シート。
【請求項3】
前記耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)の坪量が150g/m
2以上である、請求項1
または2に記載のポリスチレン系樹脂積層発泡シート。
【請求項4】
請求項1から
3までのいずれかに記載のポリスチレン系樹脂積層発泡シートが、前記耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルム(2)が内側となるように容器形状に成形された、ポリスチレン系樹脂積層発泡容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリスチレン系樹脂積層発泡シート、およびポリスチレン系樹脂積層発泡容器に関する。
【背景技術】
【0002】
容器成形用の熱可塑性樹脂積層発泡シートは、押出機内に熱可塑性樹脂を発泡剤、気泡調整剤などと共に供給し、押出機内でこれらの材料を加熱溶融、混練し、所定温度に冷却した後、樹脂をダイからシート状に押出し、発泡させ、直後に冷却して作製される発泡シートの表面に、熱可塑性樹脂フィルムを積層して製造される。また、この熱可塑性樹脂積層発泡シートを用いて容器を製造するには、ロール状に巻き取られた熱可塑性樹脂積層発泡シートを成形機の加熱ゾーンで一定温度に加熱した後、成形ゾーンで所望の容器形状に成形して製造される。
【0003】
このような熱可塑性樹脂積層発泡シートは、コンビニエンスストアやスーパーなどで使用される総菜や弁当などの容器の材料として大量に使用されている。
【0004】
上記のような熱可塑性樹脂積層発泡シートとして、衝撃性を有するハイインパクトポリスチレン(HIPS)などを含む耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルムを耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シートにラミネートして、耐熱性と耐衝撃性の両立を目指したポリスチレン系樹脂積層発泡シートが報告されている(特許文献1)。
【0005】
各種容器の材料としての熱可塑性樹脂積層発泡シートには、意匠性等を確保することを目的に、熱可塑性樹脂を含む非発泡フィルムがラミネートされることがある。ところが、特許文献1に記載されているポリスチレン系樹脂積層発泡シートなどの従来のポリスチレン系樹脂積層発泡シートにおいては、熱可塑性樹脂を含む非発泡フィルムとの接着性が悪いという問題がある。
【0006】
また、特許文献1に記載されているポリスチレン系樹脂積層発泡シートなどの従来のポリスチレン系樹脂積層発泡シートにおいては、ラミネート時のパスラインでのシート割れが起こる場合や、それを成形してポリスチレン系樹脂積層発泡容器とすると、成形時の加熱による火ぶくれが起こってしまう場合があり、成形性が悪くなったりする場合や、容器の外観が悪くなったりする場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、本発明の課題は、耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シートと耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルムとの積層構造を含むポリスチレン系樹脂積層発泡シートであって、熱可塑性樹脂を含む非発泡フィルムとの接着性に優れたポリスチレン系樹脂積層発泡シートを提供すること、および、該シートが成形されたポリスチレン系樹脂積層発泡容器を提供することにある。さらに、本発明の課題は、好ましくは、上記に加えて、ラミネート時のパスラインでのシート割れが抑制されたポリスチレン系樹脂積層発泡シートや、成形によって得られるポリスチレン系樹脂積層発泡容器の火ぶくれを抑制でき、該成形における成形性と該容器の外観性に優れたポリスチレン系樹脂積層発泡シートを提供すること、および、これらのシートが成形されたポリスチレン系樹脂積層発泡容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂積層発泡シートは、
耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)と耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルム(2)との積層構造を含むポリスチレン系樹脂積層発泡シートであって、
該耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)が、第1発泡層(1a)と第2発泡層(1b)との積層体であり、該第1発泡層(1a)と該耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルム(2)とが積層され、
該第1発泡層(1a)のガラス転移温度Tg1が該第2発泡層(1b)のガラス転移温度Tg2よりも大きく、
該第2発泡層(1b)の表層密度D2と該第1発泡層(1a)の表層密度D1との差が0.02g/m3以下であり、
該第1発泡層(1a)側への打抜必要エネルギーが0.2J~1.0Jであり、
該第2発泡層(1b)側への打抜必要エネルギーが0.2J~1.0Jである。
【0010】
一つの実施形態としては、上記第1発泡層(1a)が耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層であり、上記第2発泡層(1b)が汎用ポリスチレン系樹脂層である。
【0011】
一つの実施形態としては、上記第1発泡層(1a)が、スチレン-アクリル酸系共重合体およびスチレン-メタクリル酸系共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。
【0012】
一つの実施形態としては、上記第2発泡層(1b)が、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ジメチルスチレン、パラメチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレンの単独重合体または共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。
【0013】
一つの実施形態としては、上記耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)の全体の見掛け密度が0.10g/cm3~0.30g/cm3である。
【0014】
一つの実施形態としては、上記耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)の厚みが1.0mm~4.0mmである。
【0015】
一つの実施形態としては、上記耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)の坪量が150g/m2以上である。
【0016】
一つの実施形態としては、上記耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルム(2)がハイインパクトポリスチレン樹脂を含む。
【0017】
一つの実施形態としては、上記耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)から見て上記耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルム(2)と反対側に熱可塑性樹脂を含む非発泡フィルムを備える。
【0018】
一つの実施形態としては、上記耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルム(2)から見て上記耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)と反対側に熱可塑性樹脂を含む非発泡フィルムを備える。
【0019】
本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂積層発泡容器は、上記ポリスチレン系樹脂積層発泡シートが、上記耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルム(2)が内側となるように容器形状に成形されたものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シートと耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルムとの積層構造を含むポリスチレン系樹脂積層発泡シートであって、熱可塑性樹脂を含む非発泡フィルムとの接着性に優れたポリスチレン系樹脂積層発泡シートを提供することができ、および、該シートが成形されたポリスチレン系樹脂積層発泡容器を提供することができる。さらに、本発明によれば、好ましくは、上記に加えて、ラミネート時のパスラインでのシート割れが抑制されたポリスチレン系樹脂積層発泡シートや、成形によって得られるポリスチレン系樹脂積層発泡容器の火ぶくれを抑制でき、該成形における成形性と該容器の外観性に優れたポリスチレン系樹脂積層発泡シートを提供することができ、および、これらのシートが成形されたポリスチレン系樹脂積層発泡容器を提供することができる。
できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明のポリスチレン系樹脂積層発泡シートの好ましい実施形態による概略断面図である。
【
図2】
図2は、本発明のポリスチレン系樹脂積層発泡シートの別の好ましい実施形態による概略断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂積層発泡容器の代表的な概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0023】
本明細書において「(メタ)アクリル」とある場合は、アクリルおよび/またはメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とある場合は、アクリレートおよび/またはメタクリレートを意味する。
【0024】
本明細書において、「耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)の原反」という場合は、本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂積層発泡シートを製造する際に耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルム(2)をラミネートする対象である耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)を意味する。
【0025】
≪ポリスチレン系樹脂積層発泡シート≫
本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂積層発泡シートは、耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)と耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルム(2)との積層構造を含むポリスチレン系樹脂積層発泡シートである。本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂積層発泡シートは、耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)と耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルム(2)との積層構造を含んでいれば、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な他の層を有していてもよい。
【0026】
耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)は、第1発泡層(1a)と第2発泡層(1b)との積層体であり、第1発泡層(1a)と該耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルム(2)とが積層されてなる。
【0027】
第1発泡層(1a)は耐熱性ポリスチレン系樹脂層である。第2発泡層(1b)は汎用ポリスチレン系樹脂層である。
【0028】
本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂積層発泡シートは、耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)から見て耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルム(2)と反対側に熱可塑性樹脂を含む非発泡フィルムを備えていてもよい。
【0029】
本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂積層発泡シートは、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルム(2)から見て耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)と反対側に熱可塑性樹脂を含む非発泡フィルムを備えていてもよい。
【0030】
本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂積層発泡シートにおいて、耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)は、代表的には、厚みが1mm以上のシート状であり、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルム(2)は、代表的には、厚みが1mm未満のフィルム状である。
【0031】
図1は、本発明のポリスチレン系樹脂積層発泡シートの好ましい実施形態による概略断面図である。
図1において、本発明の好ましい実施形態によるポリスチレン系樹脂積層発泡シート100は、耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)10と耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルム(2)20とが積層されている。
図1において、耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)10は、第1発泡層(1a)11と第2発泡層(1b)12との積層体である。第1発泡層(1a)11は耐熱性ポリスチレン系樹脂層であり、第2発泡層(1b)12は汎用ポリスチレン系樹脂層である。
図1において、第1発泡層(1a)11と耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルム(2)20とが積層されている。
図1において、第2発泡層(1b)12の表面12aは、耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)10の耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルム(2)20とは反対側の面である。耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルム(2)20の側の表面20aは、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルム(2)20の耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)10とは反対側の面である。
【0032】
図2は、本発明のポリスチレン系樹脂積層発泡シートの別の好ましい実施形態による概略断面図である。
図2において、本発明の好ましい実施形態によるポリスチレン系樹脂積層発泡シート100は、耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)10と耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルム(2)20とが積層され、耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)10から見て耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルム(2)20と反対側に熱可塑性樹脂を含む非発泡フィルム30を備え、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルム(2)20から見て耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)10と反対側に熱可塑性樹脂を含む非発泡フィルム40を備える。
図2において、耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)10は、第1発泡層(1a)11と第2発泡層(1b)12との積層体である。第1発泡層(1a)11は耐熱性ポリスチレン系樹脂層であり、第2発泡層(1b)12は汎用ポリスチレン系樹脂層である。
図2において、第1発泡層(1a)11と耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルム(2)20とが積層されている。
図2において、非発泡フィルム30の表面が30aであり、非発泡フィルム40の表面が40aである。
【0033】
本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂積層発泡シートの厚みは、目的に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な厚みを採り得る。本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂積層発泡シートの厚みは、各種目的を鑑みると、好ましくは0.60mm~3.15mmであり、より好ましくは0.70mm~3.00mmであり、さらに好ましくは0.80mm~2.80mmであり、特に好ましくは1.10mm~2.70mmである。
【0034】
本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂積層発泡シートにおいて、第1発泡層(1a)のガラス転移温度Tg1は、第2発泡層(1b)のガラス転移温度Tg2よりも大きい。すなわち、Tg1>Tg2である。第1発泡層(1a)のガラス転移温度Tg1は、第2発泡層(1b)のガラス転移温度Tg2よりも大きいことにより、好ましくは、熱可塑性樹脂を含む非発泡フィルムとの接着性に優れたポリスチレン系樹脂積層発泡シートを提供することができる。さらに好ましくは、上記に加えて、ラミネート時のパスラインでのシート割れが抑制されたポリスチレン系樹脂積層発泡シートや、成形によって得られるポリスチレン系樹脂積層発泡容器の火ぶくれを抑制でき、該成形における成形性と該容器の外観性に優れたポリスチレン系樹脂積層発泡シートを提供することができる。
【0035】
第1発泡層(1a)のガラス転移温度Tg1は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な温度を採用し得る。本発明の効果をより発現させ得る点で、第1発泡層(1a)のガラス転移温度Tg1は、好ましくは110℃~150℃であり、より好ましくは113℃~140℃であり、さらに好ましくは115℃~130℃であり、特に好ましくは117℃~125℃である。
【0036】
第2発泡層(1b)のガラス転移温度Tg2は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な温度を採用し得る。本発明の効果をより発現させ得る点で、第2発泡層(1b)のガラス転移温度Tg2は、好ましくは80℃以上110℃未満であり、より好ましくは90℃~109℃であり、さらに好ましくは95℃~107℃であり、特に好ましくは98℃~105℃である。
【0037】
第1発泡層(1a)の表面から200μmの厚さをスライスした表層の表層密度D1と第2発泡層(1b)の表面から200μmの厚さをスライスした表層の表層密度D2との関係は、D2とD1との差が0.02g/m3以下であり、好ましくは0<(D2-D1)<0.018g/m3であり、より好ましくは0<(D2-D1)<0.015g/m3であり、さらに好ましくは0<(D2-D1)<0.012g/m3であり、特に好ましくは0<(D2-D1)<0.010g/m3である。D2とD1との差が上記範囲内にあれば、好ましくは、熱可塑性樹脂を含む非発泡フィルムとの接着性に優れたポリスチレン系樹脂積層発泡シートを提供することができる。さらに好ましくは、上記に加えて、ラミネート時のパスラインでのシート割れが抑制されたポリスチレン系樹脂積層発泡シートや、成形によって得られるポリスチレン系樹脂積層発泡容器の火ぶくれを抑制でき、該成形における成形性と該容器の外観性に優れたポリスチレン系樹脂積層発泡シートを提供することができる。D2とD1との差が上記範囲から外れて大き過ぎると、熱可塑性樹脂を含む非発泡フィルムとポリスチレン系樹脂積層発泡シートとの接着性が劣ってしまうおそれや、また、成形によって得られるポリスチレン系樹脂積層発泡容器に火ぶくれが発生しやすくなるおそれがあり、成形における成形性に劣るおそれがあり、得られる容器の外観性に劣るおそれがある。
【0038】
第1発泡層(1a)の表面から200μmの厚さをスライスした表層の表層密度D1は、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは0.10g/cm3~0.40g/cm3であり、より好ましくは0.13g/cm3~0.38g/cm3であり、さらに好ましくは0.15g/cm3~0.36g/cm3であり、特に好ましくは0.17g/cm3~0.32g/cm3である。
【0039】
第2発泡層(1b)の表面から200μmの厚さをスライスした表層の表層密度D2は、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは0.10g/cm3~0.40g/cm3であり、より好ましくは0.13g/cm3~0.38g/cm3であり、さらに好ましくは0.15g/cm3~0.38g/cm3であり、特に好ましくは0.17g/cm3~0.32g/cm3である。
【0040】
第1発泡層(1a)側への打抜必要エネルギーは0.2J~1.0Jである。第1発泡層(1a)側への打抜必要エネルギーが上記範囲内にあれば、好ましくは、熱可塑性樹脂を含む非発泡フィルムとの接着性に優れたポリスチレン系樹脂積層発泡シートを提供することができる。さらに好ましくは、上記に加えて、ラミネート時のパスラインでのシート割れが抑制されたポリスチレン系樹脂積層発泡シートや、成形によって得られるポリスチレン系樹脂積層発泡容器の火ぶくれを抑制でき、該成形における成形性と該容器の外観性に優れたポリスチレン系樹脂積層発泡シートを提供することができる。第1発泡層(1a)側への打抜必要エネルギーが上記範囲から外れて大き過ぎると、ポリスチレン系樹脂積層発泡シートが曲がり難く、パスラインを通せないおそれや、成形時に打ち抜き刃による型抜きができないおそれがある。第1発泡層(1a)側への打抜必要エネルギーが上記範囲から外れて小さ過ぎると、ラミネート時に熱ロールの曲率等に起因するパスラインでのシート割れが発生するおそれがあり、ラミネートにおける接着性が損なわれるおそれや、成形によって得られるポリスチレン系樹脂積層発泡容器の外観性が損なわれるおそれがある。
【0041】
第2発泡層(1b)側への打抜必要エネルギーは0.2J~1.0Jである。第2発泡層(1b)側への打抜必要エネルギーが上記範囲内にあれば、好ましくは、熱可塑性樹脂を含む非発泡フィルムとの接着性に優れたポリスチレン系樹脂積層発泡シートを提供することができる。さらに好ましくは、上記に加えて、ラミネート時のパスラインでのシート割れが抑制されたポリスチレン系樹脂積層発泡シートや、成形によって得られるポリスチレン系樹脂積層発泡容器の火ぶくれを抑制でき、該成形における成形性と該容器の外観性に優れたポリスチレン系樹脂積層発泡シートを提供することができる。第2発泡層(1b)側への打抜必要エネルギーが上記範囲から外れて大き過ぎると、ポリスチレン系樹脂積層発泡シートが曲がり難く、パスラインを通せないおそれや、成形時に打ち抜き刃による型抜きができないおそれがある。第2発泡層(1b)側への打抜必要エネルギーが上記範囲から外れて小さ過ぎると、ラミネート時に熱ロールの曲率等に起因するパスラインでのシート割れが発生するおそれがあり、ラミネートにおける接着性が損なわれるおそれや、成形によって得られるポリスチレン系樹脂積層発泡容器の外観性が損なわれるおそれがある。
【0042】
<耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)>
耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)は、代表的には、ポリスチレン系樹脂を発泡させて形成したものである。耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)は、より具体的には、好ましくは、ポリスチレン系樹脂を、発泡剤、必要に応じて加えられる気泡調整剤などの各種の添加剤と共に押出機内で加熱溶融、混練し、所定温度に冷却後、ダイからシート状に押し出すと共に発泡させ、直ちに冷却して形成される。
【0043】
本発明の好ましい実施形態においては、耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)は重量反であり、その全体の坪量は、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは150g/m2以上であり、より好ましくは150g/m2~500g/m2であり、さらに好ましくは180g/m2~450g/m2であり、特に好ましくは200g/m2~420g/m2である。
【0044】
耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)の厚みは、目的に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な厚みを採り得る。本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂積層発泡シートにおける耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)の厚みは、各種目的を鑑みると、好ましくは0.5mm~3.0mmであり、より好ましくは0.6mm~2.7mmであり、さらに好ましくは0.7mm~2.6mmであり、特に好ましくは1.0mm~2.5mmである。
【0045】
耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)の全体の見掛け密度は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な見掛け密度を採り得る。耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)の全体の見掛け密度は、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは0.10g/cm3~0.30g/cm3であり、より好ましくは0.12g/cm3~0.27g/cm3であり、さらに好ましくは0.14g/cm3~0.25g/cm3であり、特に好ましくは0.16g/cm3~0.23g/cm3である。
【0046】
耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)の平均気泡径は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な平均気泡径を採り得る。耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)の平均気泡径は、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは80μm~450であり、より好ましくは120μm~420μmであり、さらに好ましくは160μm~370μmであり、特に好ましくは200μm~350μmである。
【0047】
耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)を形成するポリスチレン系樹脂(I)としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なポリスチレン系樹脂を採用し得る。このようなポリスチレン系樹脂(I)としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、i-プロピルスチレン、t-ブチルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン、クロロスチレン等のスチレン系モノマーの単独重合体;上記スチレン系モノマーの共重合体;上記スチレン系モノマーと(メタ)アクリル酸との共重合体;上記スチレン系モノマーと(メタ)アクリル酸エステル(例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレートなど)との共重合体;上記スチレン系モノマーと二官能性モノマー(例えば、(メタ)アクリロニトリル、ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、エチルフマレート、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレートなど)との共重合体;スチレン系モノマーとブタジエン等のゴム分との共重合体や、スチレン系モノマーの単独重合体もしくはこれらの共重合体もしくはスチレン系モノマーと該スチレン系モノマーと共重合可能なビニルモノマーとの共重合体とジエン系のゴム状重合体との混合物又は重合体である、いわゆるハイインパクトポリスチレン(耐衝撃性ポリスチレン、HIPS);などが挙げられる。スチレン系モノマーは、好ましくは、少なくともスチレンを含有する。スチレン系モノマーの全量に対するスチレンの含有割合は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上であり、特に好ましくは95質量%以上である。
【0048】
上記のスチレン系モノマーと重合可能なビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル(例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレートなど)、二官能性モノマー(例えば、(メタ)アクリロニトリル、ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、エチルフマレート、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレートなど)などが挙げられる。これらは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0049】
上記のジエン系のゴム状重合体としては、例えば、ポリブタジエン、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SBS)、スチレン-ブタジエン-ブチレン-スチレン共重合体(SBBS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIPS)、エチレン-プロピレン-非共役ジエン三次元共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体などが挙げられる。これらは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0050】
1つの実施形態においては、ポリスチレン系樹脂(I)は、ポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂との複合樹脂であってもよい。複合樹脂におけるポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂との含有比(ポリスチレン系樹脂/ポリオレフィン系樹脂:質量比)は、好ましくは50/50~90/10であり、より好ましくは60/40~85/15である。ポリスチレン系樹脂の含有量が少なすぎると、発泡性および/または成形加工性が不十分になる場合がある。ポリスチレン系樹脂の含有量が多すぎると、耐衝撃性および/または柔軟性が不十分になる場合がある。
【0051】
ポリオレフィン系樹脂としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なオレフィン系樹脂を採用し得る。ポリオレフィン系樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。ポリオレフィン系樹脂としては、具体例には、例えば、分岐状低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-メチルメタクリレート共重合体、これら重合体の架橋体等のポリエチレン系樹脂;プロピレン単独重合体、プロピレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-プロピレンランダム共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、エチレン-プロピレン-ブテンランダム共重合体等のポリプロピレン系樹脂;などが挙げられる。これらのポリオレフィン系樹脂の中でも、好ましくは、エチレン-酢酸ビニル共重合体、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、およびこれらの混合物である。なお、低密度は、好ましくは0.91g/cm3~0.94g/cm3であり、より好ましくは0.91g/cm3~0.93g/cm3である。高密度は、好ましくは0.95g/cm3~0.97g/cm3であり、より好ましくは0.95g/cm3~0.96g/cm3である。中密度は、低密度と高密度との間の密度である。
【0052】
ポリスチレン系樹脂(I)は、リサイクル原料のポリスチレン系樹脂であってもよい。
【0053】
第1発泡層(1a)の厚みは、目的に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な厚みを採り得る。第1発泡層(1a)の厚みは、各種目的を鑑みると、好ましくは0.25mm~1.50mmであり、より好ましくは0.30mm~1.35mmであり、さらに好ましくは0.35mm~1.30mmであり、特に好ましくは0.50mm~1.25mmである。
【0054】
第2発泡層(1b)の厚みは、目的に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な厚みを採り得る。第2発泡層(1b)の厚みは、各種目的を鑑みると、好ましくは0.25mm~1.50mmであり、より好ましくは0.30mm~1.35mmであり、さらに好ましくは0.35mm~1.30mmであり、特に好ましくは0.50mm~1.25mmである。
【0055】
第1発泡層(1a)を形成するポリスチレン系樹脂(Ia)としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な耐熱性ポリスチレン系樹脂を採用し得る。このようなポリスチレン系樹脂(Ia)は、好ましくは、スチレン-アクリル酸系共重合体およびスチレン-メタクリル酸系共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。第1発泡層(1a)を形成するポリスチレン系樹脂(Ia)中の、スチレン-アクリル酸系共重合体およびスチレン-メタクリル酸系共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の含有割合は、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは50質量%~99質量%であり、より好ましくは60質量%~97質量%であり、さらに好ましくは70質量%~95質量%であり、特に好ましくは75質量%~93質量%である。
【0056】
第1発泡層(1a)を形成するポリスチレン系樹脂(Ia)は、より好ましくは、スチレン系モノマーとブタジエン等のゴム分との共重合体や、スチレン系モノマーの単独重合体もしくはこれらの共重合体もしくはスチレン系モノマーと該スチレン系モノマーと共重合可能なビニルモノマーとの共重合体とジエン系のゴム状重合体との混合物又は重合体である、いわゆるハイインパクトポリスチレン(耐衝撃性ポリスチレン、HIPS)を含む。このようなハイインパクトポリスチレンは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0057】
第2発泡層(1b)を形成するポリスチレン系樹脂(Ib)としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な汎用ポリスチレン系樹脂(GPPS)を採用し得る。このようなポリスチレン系樹脂(Ib)は、好ましくは、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ジメチルスチレン、パラメチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレンの単独重合体または共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。第2発泡層(1b)を形成するポリスチレン系樹脂(Ib)中の、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ジメチルスチレン、パラメチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレンの単独重合体または共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の含有割合は、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは60質量%~99質量%であり、より好ましくは70質量%~98質量%であり、さらに好ましくは80質量%~97質量%であり、特に好ましくは90質量%~97質量%である。
【0058】
第2発泡層(1b)を形成するポリスチレン系樹脂(Ib)は、より好ましくは、スチレン系モノマーとブタジエン等のゴム分との共重合体や、スチレン系モノマーの単独重合体もしくはこれらの共重合体もしくはスチレン系モノマーと該スチレン系モノマーと共重合可能なビニルモノマーとの共重合体とジエン系のゴム状重合体との混合物又は重合体である、いわゆるハイインパクトポリスチレン(耐衝撃性ポリスチレン、HIPS)を含む。このようなハイインパクトポリスチレンは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0059】
第1発泡層(1a)の見掛け密度は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な見掛け密度を採り得る。第1発泡層(1a)の見掛け密度は、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは0.08g/cm3~0.30g/cm3であり、より好ましくは0.12g/cm3~0.27g/cm3であり、さらに好ましくは0.14g/cm3~0.25g/cm3であり、特に好ましくは0.16g/cm3~0.23g/cm3である。
【0060】
第2発泡層(1b)の見掛け密度は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な見掛け密度を採り得る。第1発泡層(1b)の見掛け密度は、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは0.08g/cm3~0.30g/cm3であり、より好ましくは0.12g/cm3~0.27g/cm3であり、さらに好ましくは0.14g/cm3~0.25g/cm3であり、特に好ましくは0.16g/cm3~0.23g/cm3である。
【0061】
第1発泡層(1a)の表面粗さRaは、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な表面粗さRaを採用し得る。本発明の効果をより発現させ得る点で、第1発泡層(1a)の表面粗さRaは、MD方向として、好ましくは1.3μm~4.5μmであり、より好ましくは1.5μm~4.0μmであり、さらに好ましくは1.7μm~3.5μmであり、特に好ましくは2.0μm~3.0μmであり、TD方向として、好ましくは3.0μm~6.5μmであり、より好ましくは3.5μm~6.0μmであり、さらに好ましくは3.7μm~5.8μmであり、特に好ましくは4.0μm~5.7μmである。
【0062】
第2発泡層(1b)の表面粗さRaは、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な表面粗さRaを採用し得る。本発明の効果をより発現させ得る点で、第2発泡層(1b)の表面粗さRaは、MD方向として、好ましくは1.5μm~4.5μmであり、より好ましくは1.7μm~4.0μmであり、さらに好ましくは2.0μm~3.5μmであり、TD方向として、好ましくは1.2μm~5.2μmであり、より好ましくは1.4μm~4.5μmであり、さらに好ましくは1.6μm~3.0μmであり、特に好ましくは1.7μm~2.4μmである。
【0063】
発泡剤としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な発泡剤を採用し得る。このような発泡剤としては、例えば、プロパン、i-ブタン、n-ブタン、i-ペンタン、n-ペンタン、N2、CO2、N2/CO2、水、水と-OH、-COOH、-CN、-NH3、-OSO3H、-NH、CO、NH2、-CONH2、-COOR、-CHSO3H、-SO3H、-COONH4などの基を持つ化合物との混合物、これらの混合物、から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。本発明の効果をより発現させ得る点で、発泡剤としては、好ましくは、i-ブタンおよびn-ブタンから選ばれる少なくとも1種である。発泡剤としては、有機系発泡剤を用いてもよい。有機系発泡剤としては、例えば、アゾジカルボン酸アミド、ジニトロペンタメチレンテトラミン、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)などが挙げられる。
【0064】
耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)の発泡倍率としては、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは1.5倍~20倍である。
【0065】
ポリスチレン系樹脂(I)(好ましくは、第1発泡層(1a)を形成するポリスチレン系樹脂(Ia)および第2発泡層(1b)を形成するポリスチレン系樹脂(Ib)のそれぞれ)には、気泡調整剤、安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤(顔料も含み)、消臭剤、発泡核剤、造核剤、滑剤、難燃剤、帯電防止剤などの添加剤を添加してもよい。添加剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0066】
気泡調整剤としては、例えば、タルク、シリカ等の無機粉末;多価カルボン酸の酸性塩;多価カルボン酸と炭酸ナトリウム又は重炭酸ナトリウムとの反応混合物;などが挙げられる。
【0067】
安定剤としては、例えば、カルシウム亜鉛系熱安定剤、スズ系熱安定剤、鉛系熱安定剤などが挙げられる。
【0068】
紫外線吸収剤としては、例えば、酸化セシウム系紫外線吸収剤、酸化チタン系紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0069】
酸化防止剤としては、例えば、酸化セリウム、酸化セリウム/ジルコニア固溶体、水酸化セリウム、カーボン、カーボンナノチューブ、酸化チタン、フラーレンなどが挙げられる。
【0070】
着色剤としては、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、チタンイエロー、酸化鉄、群青、コバルトブルー、焼成顔料、メタリック顔料、マイカ、パール顔料、亜鉛華、沈降性シリカ、カドミウム赤などが挙げられる。
【0071】
消臭剤としては、例えば、シリカ、ゼオライト、リン酸ジルコニウム、ハイドロタルサイト焼成物などが挙げられる。
【0072】
<耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルム(2)>
耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルム(2)の厚みは、目的に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な厚みを採り得る。本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂積層発泡シートにおける耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルム(2)の厚みは、各種目的を鑑みると、好ましくは80μm~180μmであり、より好ましくは90μm~170μmであり、さらに好ましくは100μm~160μmであり、特に好ましくは120μm~150μmである。耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルム(2)の厚みは、好ましくは、耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)の厚みよりも小さい。
【0073】
耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルム(2)は、代表的には、非発泡耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルムである。
【0074】
耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルム(2)は、代表的には、ポリスチレン系樹脂から形成したものである。より具体的には、好ましくは、ポリスチレン系樹脂を、必要に応じて加えられる各種の添加剤と共に押出機内で加熱溶融、混練し、所定温度に冷却後、ダイからフィルム状に押し出して形成される。より具体的には、本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂積層発泡シートを製造するにあたっては、好ましくは、後述するように、ポリスチレン系樹脂を、必要に応じて加えられる各種の添加剤と共に押出機内で加熱溶融、混練し、所定温度に冷却後、ダイからフィルム状に押し出したものを、耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)の表面に積層する。
【0075】
耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルム(2)を形成するポリスチレン系樹脂(II)としては、前述の耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)を形成するポリスチレン系樹脂(I)を援用することができる。また、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルム(2)を形成するポリスチレン系樹脂(II)としては、ポリスチレン系樹脂(I)(ハイインパクトポリスチレン以外)とハイインパクトポリスチレンとの混合物が挙げられる。ハイインパクトポリスチレンとしては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なハイインパクトポリスチレンを採用し得る。このようなハイインパクトポリスチレンとしては、例えば、スチレン-ブタジエン共重合体がサラミ構造状に分散し、その粒径が0.3μm~10μmのものを含むものが挙げられる。さらに、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルム(2)を形成するポリスチレン系樹脂(II)としては、線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、プロピレンホモポリマー、エチレン・プロピレンランダムポリマー、エチレン・プロピレンブロックポリマー、エチレン・プロピレン-ブテン-ターポリマー、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-不飽和カルボン酸エステル共重合体(例えば、エチレン-メチルメタクリレート共重合体)、エチレン-不飽和カルボン酸金属塩共重合体(例えば、エチレン-アクリル酸マグネシウム(又は亜鉛)共重合体)、プロピレン-塩化ビニルコポリマー、プロピレン-ブテンコポリマー、プロピレン-無水マレイン酸コポリマー、プロピレン-オレフィン共重合体(プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-ブテン-1共重合体)ポリエチレン又はポリプロピレンの不飽和カルボン酸(例えば、無水マレイン酸)変性物、エチレン-プロピレンゴム、アタクチックポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、これらの混合物などが挙げられる。
【0076】
耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルム(2)を形成するポリスチレン系樹脂(II)としては、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは、ハイインパクトポリスチレンである。
【0077】
耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルム(2)を形成するポリスチレン系樹脂(II)のビカット軟化温度は、好ましくは90℃以上である。耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルム(2)を形成するポリスチレン系樹脂(II)のビカット軟化温度が90℃以上であることにより、耐衝撃性だけでなく、十分な耐熱性を有する。耐衝撃性ポリスチレンのビカット軟化温度の上限は、好ましくは97℃である。ビカット軟化温度は、JIS K7206:1999に基づきA50法により測定される値である。
【0078】
ポリスチレン系樹脂(II)には、安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤(顔料も含み)、消臭剤、滑剤、難燃剤、帯電防止剤などの添加剤を添加してもよい。添加剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0079】
≪熱可塑性樹脂を含む非発泡フィルム≫
本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂積層発泡シートは、耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)から見て耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルム(2)と反対側に熱可塑性樹脂を含む非発泡フィルムを備えていてもよい。また、本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂積層発泡シートは、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルム(2)から見て耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)と反対側に熱可塑性樹脂を含む非発泡フィルムを備えていてもよい。
【0080】
熱可塑性樹脂を含む非発泡フィルムを積層することで、本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂積層発泡シートの表面がより美麗になり、また剛性がより高くなり、また耐熱、耐油性がより向上する。
【0081】
熱可塑性樹脂を含む非発泡フィルムを形成する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリスチレン系樹脂、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂等が挙げられる。これらは1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0082】
熱可塑性樹脂を含む非発泡フィルムは、1層であっても2層以上であってもよい。2層以上の場合、例えば、各層をドライラミネート等で積層したものであってもよい。
【0083】
熱可塑性樹脂を含む非発泡フィルムは、着色料(顔料、染料など)が添加されていてもよい。着色料(顔料、染料など)が添加されることで、様々な色調に着色しでき、表面に印刷を施すなどを行うことで様々な模様やデザインを表示できる。
【0084】
熱可塑性樹脂を含む非発泡フィルムの厚みは、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な厚みを採用し得る。このような厚みとしては、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは10μm~150μmであり、より好ましくは10μm~100μmである。熱可塑性樹脂を含む非発泡フィルムの厚みが上記範囲を外れて薄すぎると、加熱成形時にフィルムが伸びにくくなるおそれがあり、欠損が生じやすくなるおそれがある。熱可塑性樹脂を含む非発泡フィルムの厚みが上記範囲を外れて厚すぎると、コストアップとなるおそれがあり、フィルム積層時に低温で積層できずに光沢性が失われるおそれがある。
【0085】
熱可塑性樹脂を含む非発泡フィルムを、本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂積層発泡シートにおける耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)から見て耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルム(2)と反対側や、本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂積層発泡シートにおける耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルム(2)から見て耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)と反対側に積層する方法としては、熱可塑性樹脂を含む非発泡フィルムを共押出して積層する方法や、加熱ロール、バインダー、接着剤等を用いて熱可塑性樹脂を含む非発泡フィルムを積層する方法などが挙げられる。
【0086】
≪ポリスチレン系樹脂積層発泡シートの製造方法≫
本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂積層発泡シートを製造する方法は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な方法を採用し得る。本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂積層発泡シートを製造する方法は、本発明の効果をより発現し得る点で、代表的には、耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)製造工程と耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルム(2)製造・ラミネート工程と、を含む。本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂積層発泡シートを製造する方法は、好ましくは、耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)製造工程と耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルム(2)製造・ラミネート工程と、をこの順に含む。
【0087】
耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)製造工程においては、代表的には、ポリスチレン系樹脂(I)を、発泡剤、必要に応じて加えられる気泡調整剤などの各種の添加剤と共に押出機内で加熱溶融、混練し、所定温度に冷却後、ダイからシート状に押し出すと共に発泡させ、直ちに冷却する。これにより、シート状の耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)が製造される。発泡剤として発泡ガスを使用した場合は、製造後の耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)をしばらく放置し、この耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)中に残存する発泡ガスを空気置換する。
【0088】
耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)が、第1発泡層(1a)と第2発泡層(1b)との積層体である場合は、耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)製造工程においては、代表的には、第1発泡層(1a)を形成するポリスチレン系樹脂(Ia)を、発泡剤、必要に応じて加えられる気泡調整剤などの各種の添加剤と共に第一押出機内で加熱溶融、混練し、第2発泡層(1b)を形成するポリスチレン系樹脂(Ib)を、発泡剤、必要に応じて加えられる気泡調整剤などの各種の添加剤と共に第二押出機内で加熱溶融、混練し、合流金型へ供給するなどして積層し、発泡させ、必要に応じて所定温度に冷却後、ダイから共押出すると共に直ちに冷却する。これにより、第1発泡層(1a)と第2発泡層(1b)との積層体であるシート状の耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)が製造される。発泡剤として発泡ガスを使用した場合は、製造後の耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)をしばらく放置し、この耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)中に残存する発泡ガスを空気置換する。
【0089】
耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)が、第1発泡層(1a)と第2発泡層(1b)との積層体である場合は、耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)製造工程の、より具体的な好ましい形態としては、第1発泡層(1a)を形成するポリスチレン系樹脂(Ia)を、発泡剤、必要に応じて加えられる気泡調整剤などの各種の添加剤と共に第一押出機に供給し、第2発泡層(1b)を形成するポリスチレン系樹脂(Ib)を、発泡剤、必要に応じて加えられる気泡調整剤などの各種の添加剤と共に第二押出機に供給し、第一押出機から押出される溶融樹脂と第二押出機から押出される溶融樹脂とを合流ダイで合流させ、合流ダイで合流された溶融樹脂を外周側と内周側とに分けて筒状に押出発泡させ、サーキュラーダイなどを用いて2層構造の筒状発泡体を形成させる。サーキュラーダイの円環状の吐出口から押出発泡させた円筒状の発泡体をサーキュラーダイの下流側(押出方向前方)に配した直径が吐出口よりも径大な冷却用マンドレルに供し、発泡体の内面を冷却用マンドレルの外周面に摺接させつつ発泡体に引取りをかけ、冷却用マンドレルで発泡体を拡径するとともに発泡体を内側から冷却し、冷却用マンドレルの下流側に設けたカッターで発泡体を押出方向に向けて連続的に切断して平坦なシートとなるように展開し、長尺帯状となるようにして作製する。
【0090】
耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルム(2)製造・ラミネート工程においては、代表的には、ポリスチレン系樹脂(II)を、必要に応じて加えられる各種の添加剤と共に押出機内で加熱溶融、混練し、所定温度に冷却後、ダイからフィルム状に押し出し、冷却しきらないうちに、耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)の表面に積層する。これにより、耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)と耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルム(2)の積層体が得られる。
【0091】
耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルム(2)製造・ラミネート工程において耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルム(2)を積層する前の、耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)の表面(耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)が、第1発泡層(1a)と第2発泡層(1b)との積層体である場合は、第2発泡層(1b)側の表面)の表面温度は、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは60℃以下であり、より好ましくは58℃以下であり、さらに好ましくは56℃以下である。
【0092】
前述したように、熱可塑性樹脂を含む非発泡フィルムを、本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂積層発泡シートにおける耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)から見て耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルム(2)と反対側や、本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂積層発泡シートにおける耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルム(2)から見て耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)と反対側に積層する場合は、熱可塑性樹脂を含む非発泡フィルムを共押出して積層する方法や、加熱ロール、バインダー、接着剤等を用いて熱可塑性樹脂を含む非発泡フィルムを積層する方法などにより行えばよい。
【0093】
耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)と耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルム(2)の積層体(必要に応じて、さらに上記の熱可塑性樹脂を含む非発泡フィルムの積層がなされたもの)が得られた後、求められる物性に応じて、任意の適切なタイミングにおいて、任意の適切な処理を行ってもよい。
【0094】
最終的に、ロール等の巻取り機器によって巻取り工程を行ってもよい。これにより、ロール状のポリスチレン系樹脂積層発泡シートが得られ得る。
【0095】
≪ポリスチレン系樹脂積層発泡容器≫
本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂積層発泡容器は、
図3に示すように、本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂積層発泡シートが、耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)が外側、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルム(2)が内側となるように容器形状に成形されたものである。。
図3において、ポリスチレン系樹脂積層発泡容器1000の容器内側が200、容器外側が300である。
【0096】
本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂積層発泡シートを用いて本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂積層発泡容器を製造するには、ロール状に巻き取られた該ポリスチレン系樹脂積層発泡シートを成形機の加熱ゾーンで一定温度に加熱した後、成形ゾーンで所望の容器形状に成形して製造される。この容器形状としては、例えば、丼形、コップ形、箱形、トレー形などの種々の形状とすることができる。
【実施例】
【0097】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各特性の測定方法および評価方法は以下の通りである。
【0098】
<平均気泡径>
ポリスチレン系樹脂積層発泡シートにおける、耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)の原反の平均気泡径は、以下のようにして求めた。
耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)の原反の幅方向中央部からMD方向(押出方向)およびTD方向(ポ耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)の原反の表面において押出方向と直交する方向)に沿って、耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)の原反の表面に垂直に切リ出した。
断面を走査型電子顕微鏡(SU1510、日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて、50倍に拡大して撮影した。このとき、顕微鏡画像は、横向きのA4用紙1枚に縦横2画像(合計4画像)並んだ状態で印刷した際に所定の倍率となるように撮影した。
具体的には、画像上に、MD、TDの各方向に平行する60mmの任意の直線及び各方向に直交する方向(VD方向)に60mmの直線を描き、MD方向に沿って切断した断面(MD断面)およびTD方向に沿って切断した断面(TD断面)のそれぞれに対し、2視野ずつ合計4視野の顕微鏡画像を撮影し、A4用紙に印刷した。MD断面の2つの画像のそれぞれにMD方向に平行な3本の任意の直線(長さ60mm)を描くと共に、TD断面の2つの画像のそれぞれにTD方向に平行な3本の任意の直線(長さ60mm)を描いた。また、MD断面の1つの画像とTD断面の1つの画像とにVD方向に平行な3本の直線(60mm)を描き、MD方向、TD方向、及び、VD方向に平行な60mmの任意の直線を各方向6本ずつ描いた。なお、任意の直線はできる限り気泡が接点でのみ接しないようにし、接してしまう場合には、この気泡も数に加えた。MD方向、TD方向、VD方向の各方向の6本の任意の直線について数えた気泡数Dを算術平均し、各方向の気泡数とした。気泡数を数えた画像倍率とこの気泡数から気泡の平均弦長tを次式より算出した。
・平均弦長t(mm)=60/(気泡数×画像倍率)
画像倍率は画像上のスケールバーをデジマチックキャリパ(ミツトヨ社製)にて1/100mmまで計測し、次式により求めた。
・画像倍率=スケールバー実測値(mm)/スケールバーの表示値(mm)
次式により各方向における気泡径を算出した。
・気泡径D(mm)=t/0.616
さらに、それらの積の3乗根を平均気泡径とした。
・平均気泡径(mm)=(DMD×DTD×DVD)1/3
DMD:MD方向の気泡径(mm)。
DTD:TD方向の気泡径(mm)。
DVD:VD方向の気泡径(mm)。
【0099】
<第1発泡層(1a)および第2発泡層(1b)の表層密度>
第1発泡層(1a)および第2発泡層(1b)それぞれの表面から200μmの厚さをスライスし、その表層の密度を測定した。
【0100】
<第1発泡層(1a)および第2発泡層(1b)のガラス転移温度>
第1発泡層(1a)および第2発泡層(1b)のガラス転移温度を下記のようにして測定した。
(前処理)
ガラス転移温度の測定に先立ち、第1発泡層(1a)と第2発泡層(1b)とをそれぞれ5g~6g天秤で量り取り、2枚のポリテトラフロロエチレンシートの間に挟みこんで下記の要領でプレスして脱泡する前処理を実施した。
・プレス装置:東洋精機社製、小型プレス装置「ラボプレス10T」
・温度:上ヒータ180℃、下ヒータ180℃
・プレス工程:「0.54MPa×3分間」のプレスを実施し、その後、「0.54MPa×2秒」および「圧力開放2秒」を1サイクルとして5サイクルのプレスを実施し、その後、「15.5MPa×2分間」のプレスを実施した。
(ガラス転移温度(Tg)の測定)
上記のようにして脱泡を行った試料に対するガラス転移温度(中間点ガラス転移温度)の測定は、JIS K7121:1987「プラスチックの転移温度測定方法」に記載されている方法で測定した。
ただし、サンプリング方法・温度条件に関しては以下のように行った。
示差走査熱量計装置「DSC6220型」(エスアイアイナノテクノロジー社製)を用い、アルミニウム製測定容器の底にすきまのないように試料を約6mg充てんして、窒素ガス流量20mL/minのもと20℃/minの昇温速度で30℃から220℃まで昇温し、10分間保持後速やかに取出し、25±10℃の環境下にて放冷させた後、20℃/minの昇温速度で30℃から220℃まで昇温した時に得られたDSC曲線より中間点ガラス転移温度を算出した。
この時に基準物質としてアルミナを用いた。
中間点ガラス転移温度は該規格(9.3「ガラス転移温度の求め方」)より求めた。
【0101】
<打抜必要エネルギー>
フィルムインパクトテスター(安田精機製作所社製、商品名「No.181フィルムインパクトテスター」)により、打抜必要エネルギーを測定した。
測定に際しては、ポリスチレン系樹脂積層発泡シートにおける、耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)の原反から100mm×90mmの評価試料を採取し、温度22℃、相対湿度40%となるように調整された環境下で、衝撃球サイズ12.7mmR、振子角度90度での試料の打抜必要エネルギー(単位:J)を求めた。
具体的には、打抜必要エネルギーを求める試料を試料板と試料押さえとの間にセットし、指針を3.0Jの線上に置き、振り子止めハンドルを倒して振り子を落下させた。そして、これにより試料が破れて振り子が指針を押して示した目盛りを読み取った。以上の操作を発泡シートの表裏5回ずつ行い、その平均値を求めた。耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)の原反の表裏が第1発泡層(1a)および第2発泡層(1b)となっているので、第1発泡層(1a)の側からの打抜必要エネルギーおよび第2発泡層(1b)の側からの打抜必要エネルギーとして測定した。
【0102】
<表面粗さRa>
ミツトヨ製サーフテストSJ201を用いて、第1発泡層(1a)および第2発泡層(1b)のMD方向、TD方向について、それぞれ幅方向N=5で表面粗さRaを測定し、平均値を求めた。
【0103】
<第2発泡層と非発泡フィルムとの接着性評価>
第2発泡層と非発泡フィルムとの接着性を以下のようにして評価した。ポリスチレン系樹脂積層発泡シートから、幅方向に亘って等間隔に5箇所から押出方向に沿って長さ300mm×幅25mmの試験片を切り出し、各試験片に対してJIS Z0237に準拠した方法により、それぞれの剥離強度を測定し、それらの測定値(n=5)を算術平均することにより剥離強度を求めた。なお、第2発泡層と非発泡フィルムとをラミネートする際に熱ロールの曲率に起因してシート割れが発生して第2発泡層と非発泡フィルムとを接着できない場合は、「フィルム接着できず」とした。
【0104】
<ラミネート時のパスラインでのシート割れの評価>
ポリスチレン系樹脂積層発泡シートの第2発泡層(1b)側に非発泡フィルムをラミネートする際に、熱ロール部の曲率によってシートが割れないか観察を行った。
〇:シートの割れがなく、良好にフィルムが接着できている。
×:シートの割れが発生し、フィルムを発泡層に接着できない。
【0105】
<発泡容器の成形、および、発泡容器成形の際の加熱による火ぶくれ発生の評価>
実施例、比較例で得られたポリスチレン系樹脂積層発泡シートを用いて、
図3のような発泡容器を作製した。
なお、容器は、第1発泡層が発泡容器内側、第2発泡層が発泡容器外側となるように作製した。
発泡容器としては、開口部の内径:140mm、底部の内径:100mm、深さ:80mm、絞り比:0.57の碗形のものを作製した。
発泡容器の作製について、より詳しく説明する。
発泡容器の外形に対応する凹部を6×6=36個備えたキャビティ(凹型)と、容器の内形に対応する凸部を同数備えたプラグ(凸型)とを有するプレス成形装置に、ポリスチレン系樹脂積層発泡シートを連続的に供給しながら発泡容器の作製を行った。
成形条件としては、1ショット(=36個)の成形サイクルを10.0秒、キャビティ側のヒータの設定温度を370℃、プラグ側のヒータの設定温度を300℃とした。
また、成形のタイミングは、キャビティとプラグとがほぼ同時にポリスチレン系樹脂積層発泡シートと接触して成形を開始するように設定した。
ヒータで加熱した際に、第2発泡層にあたる面に外観上問題がないものを「〇」、火ぶくれが発生したものを「×」として評価した。
【0106】
<発泡容器の外観評価>
プレス成形装置の運転を開始した直後である1ショット目の25個の発泡容器と、成形を繰り返して型が十分に温まったと思われる30ショット目の25個の発泡容器について、外観を観察した。そして、発泡容器にシワやナキ(内部割れ)などが見られないか、外観の異常を観察した。
異常が見られなかったものを「○」、異常があったものを「×」として評価した。
【0107】
<第1発泡層のベースポリマーの材料の一覧>
商品名「T080」:東洋スチレン社製、スチレン-メタクリル酸共重合体樹脂、スチレン単量体含有量=92質量%、メタクリル酸単量体含有量=8質量%
商品名「G9001」:PSJ社製、スチレン-メタクリル酸共重合体樹脂、スチレン単量体含有量=92質量%、メタクリル酸単量体含有量=8質量%
商品名「タフプレン125」:旭化成ケミカルズ社製、スチレン-ブタジエンブロック共重合体樹脂(SBS)
商品名「AMM11」:PSJ社製、スチレン-メタクリル酸共重合体とMBS樹脂(トランス型ブタジエンブロック含有品)とのブレンド品
商品名「H8117」:PSJ社製、シス型スチレン-ブタジエンブロック共重合体樹脂
【0108】
<第2発泡層のベースポリマーの材料の一覧>
商品名「HRM12」:東洋スチレン社製、汎用ポリスチレン系樹脂(GPPS)
商品名「E641N」:東洋スチレン社製、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)
【0109】
[実施例1]
第1発泡層のベースポリマーとしてスチレン-メタクリル酸共重合体樹脂(スチレン単量体含有量=92質量%、メタクリル酸単量体含有量=8質量%)(商品名「T080」、東洋スチレン社製)と、スチレン-ブタジエンブロック共重合体樹脂(SBS:スチレンブロック共重合体)(商品名「タフプレン125」、旭化成ケミカルズ社製)とを、92:8(T080:タフプレン125)の質量割合で混合した混合樹脂を用意するとともに、そのベースポリマーとは別に、タルク(気泡調整剤)練り込みマスターバッチ(商品名「DSM1401M」)を用意した。
上記混合樹脂100質量部に対し上記マスターバッチを0.8質量部の割合でブレンドしてバッチ式連続混合装置に投入し、十分に混合した後に、スクリュー径90mmとスクリュー径115mmとのタンデム押出機の内の上流側押出機(スクリュー径90mm)のホッパーに供給した。
上流側の押出機では、シリンダー温度の最高設定温度を280℃とし、発泡剤として混合ブタン約2.3質量部(対混合樹脂100質量部)を途中で加え、混合樹脂などとともに溶融混練し、下流側の押出機に供給するようにした。
下流側の押出機では、上流側の押出機から供給された溶融混練物を120kg/hの割合で合流金型へと供給させるようにした。
その一方で、別の、スクリュー径90mmとスクリュー径115mmとのタンデム押出機において、第2発泡層の形成材料を溶融混練し、上記の合流金型へと供給させた。
第2発泡層の形成材料としては、ベースポリマーとしてGPPS(商品名「HRM12」、東洋スチレン社製)を用意するとともに、そのベースポリマーとは別に、タルク(気泡調整剤)練り込みマスターバッチ(商品名「DSM1401M」)を用意した。
表1に記載した平均気泡径になるようにマスターバッチの量を設定し、ブレンドしてバッチ式連続混合装置に投入し、十分に混合した後に、スクリュー径90mmとスクリュー径115mmとのタンデム押出機の内の上流側押出機(スクリュー径90mm)のホッパーに供給した。
上流側の押出機では、シリンダー温度の最高設定温度を260℃とし、発泡剤として混合ブタン約2.1質量部(対GPPS100質量部)を途中で加え、上記GPPSとともに溶融混練し、下流側の押出機に供給するようにした。
下流側の押出機では、上流側の押出機から供給された溶融混練物を120kg/hの割合で合流金型へと供給させるようにした。
合流金型に供給された上記2種類の溶融混練物を当該合流金型内で合流、積層した後に発泡後の混合物を直径200mm、スリットクリアランス0.6mmの環状ダイに供給し、ダイのスリットを通して円筒状の発泡体を形成した。その直後に、円筒状の発泡体にエアーをかけて調整して冷却するとともに、直径675mmの冷却装置(マンドレル)の外面に沿って引取り、さらに押出方向に沿って2枚に切り開き、幅1050mm、シート坪量が350g/m2、厚み2.00mmの、耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)の原反を得た。
エアー温度は31℃とし、吹き付け量は、内側の第2発泡層側では0.094m3/m2、外側の第1発泡層側では0.067m3/m2とした。
発泡ガスの置換のため、上記の耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)の原反は製造後14日間保管した。この耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)の原反の第2発泡層に、CPS20μm(大石産業SPH)をラミネートし、その後、積層する耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルム(2)として、ハイインパクトポリスチレン樹脂(商品名「E-641」、東洋スチレン社製)100重量部を、最高温度240℃に設定された直径120mm押出機で溶融し、Tダイよりフィルム状に押出し、冷却しきらないうちに、上記耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)の原反の第1発泡層側に厚み100μmで積層し、直後に、CPP25μm(サントックスKT)とCPS20μm(大石産業SPH)がドライラミネートによって積層されたフィルム「CPP/PS45μm無地」をラミネートし、ポリスチレン系樹脂積層発泡シート(1)を作製した。
結果を表1に示した。
【0110】
[実施例2~8、比較例1~3]
材料、条件を表1に示すように変更した以外は実施例1と同横に行い、ポリスチレン系樹脂積層発泡シート(2)~(8)、(C1)~(C3)を作製した。
結果を表1に示した。
【0111】
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂積層発泡シートは、カップ入り即席麺などの容器の材料として好適に利用し得る。本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂積層発泡容器は、カップ入り即席麺などの容器として好適に利用し得る。
【符号の説明】
【0113】
100 ポリスチレン系樹脂積層発泡シート
10 耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)
10a 耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡シート(1)10の側の表面
11 第1発泡層(1a)
12 第2発泡層(1b)
12a 第2発泡層(1b)12の表面
20 耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルム(2)
20a 耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルム(2)20の側の表面
30 非発泡フィルム
30a 非発泡フィルム30の表面
40 非発泡フィルム
40a 非発泡フィルム40の表面
1000 ポリスチレン系樹脂積層発泡容器
200 容器内側
300 容器外側