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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】電磁波吸収体
(51)【国際特許分類】
   H05K 9/00 20060101AFI20240321BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20240321BHJP
   C08L 71/12 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
H05K9/00 M
C08L23/26
C08L71/12
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020164691
(22)【出願日】2020-09-30
(65)【公開番号】P2022056768
(43)【公開日】2022-04-11
【審査請求日】2023-07-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】松下 大雅
(72)【発明者】
【氏名】西嶋 健太
(72)【発明者】
【氏名】勝田 祐馬
【審査官】鹿野 博司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/179349(WO,A1)
【文献】特開2012-209516(JP,A)
【文献】国際公開第2018/131571(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/043129(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/096036(WO,A1)
【文献】特開2018-123230(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0086870(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
C08L 23/26
C08L 71/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波吸収層と、
前記電磁波吸収層の裏面側に配置される反射層と、
前記電磁波吸収層と前記反射層の間に配置されるスペーサ層と、
前記電磁波吸収層の表面に形成される保護層と、を備え、
前記電磁波吸収層は周波数選択表面からなり、
前記保護層は、変性ポリオレフィン樹脂および反応性基を有するポリフェニレンエーテル樹脂を含む組成物の硬化物から構成される、電磁波吸収体。
【請求項2】
前記保護層における前記変性ポリオレフィン樹脂の含有量が、前記保護層の総量中50質量%超である、請求項1に記載の電磁波吸収体。
【請求項3】
前記ポリフェニレンエーテル樹脂の反応性基が、エチレン性不飽和結合を含む、請求項1または2に記載の電磁波吸収体。
【請求項4】
前記組成物が、少なくとも1種の脂環式骨格および環状エーテル基を有する化合物を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の電磁波吸収体。
【請求項5】
前記脂環式骨格および環状エーテル基を有する化合物の少なくとも1種が25℃で液体の化合物であり、前記25℃で液体の化合物の含有量が、前記組成物の総量中10質量%以下である、請求項4に記載の電磁波吸収体。
【請求項6】
前記保護層の厚みは、1μm~500μmである、請求項1~5のいずれか1項に記載の電磁波吸収体。
【請求項7】
前記電磁波吸収層は、基材と、前記基材上に設けられた電磁波吸収パターンとを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の電磁波吸収体。
【請求項8】
前記電磁波吸収パターンは、第1の電磁波吸収パターン、第2の電磁波吸収パターンおよび第3の電磁波吸収パターンからなり、
前記第1の電磁波吸収パターンによって吸収される電磁波の吸収量が20GHz~110GHzの範囲で極大値を示す周波数が、A[GHz]であり、
前記第2の電磁波吸収パターンによって吸収される電磁波の吸収量が極大値を示す周波数が、下記式(1)を満たすB[GHz]であり、
前記第3の電磁波吸収パターンによって吸収される電磁波の吸収量が極大値を示す周波数が、下記式(2)を満たすC[GHz]である、請求項7に記載の電磁波吸収体。
1.037×A≦B≦1.30×A・・・(1)
0.60×A≦C≦0.963×A・・・(2)
【請求項9】
前記第1の電磁波吸収パターンは、形状が互いに同一の図形である複数の第1の単位が配列された第1の配列を複数有し、
前記第2の電磁波吸収パターンは、形状が互いに同一の図形である複数の第2の単位が配列された第2の配列を複数有し、
前記第3の電磁波吸収パターンは、形状が互いに同一の図形である複数の第3の単位が配列された第3の配列を複数有し、
前記第1の配列と前記第2の配列と前記第3の配列とが互いに隣り合うように前記基材上に配置されている、請求項8に記載の電磁波吸収体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波吸収体に関する。
【背景技術】
【0002】
所定の周波数の電磁波を選択的に吸収する電磁波吸収体が知られている。電磁波吸収体は、例えば、第1の周波数選択遮蔽層と第2の周波数選択遮蔽層とを備えるものである。このような電磁波吸収体においては、第1の周波数選択遮蔽層および第2の周波数選択遮蔽層に形成された周波数選択表面(Frequency Selective Surface、FSS)素子の細線パターンによって、各層が所定の周波数の電磁波を吸収し、全体として2つの異なる周波数の電磁波を選択的に遮蔽する。
【0003】
特許文献1には、同一平面状に配設された多数個のアンテナ素子を有する反射層と、2つの反射層に挟まれた誘電体からなるスペーサ層を、有し、反射層とスペーサ層とが粘着層を介して接着されている電磁波遮蔽材が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-105387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、粘着層の材質が記載されていない。しかしながら、一般に用いられているアクリル系の粘着剤の誘電率を鑑みると、粘着剤を貼り合わせに用いることで、電磁波遮蔽材の周波数特性が大きく変わる可能性が高い。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、周波数特性の変化を抑制した電磁波吸収体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の電磁波吸収体を提供する。
[1]電磁波吸収層と、前記電磁波吸収層の裏面側に配置される反射層と、前記電磁波吸収層と前記反射層の間に配置されるスペーサ層と、前記電磁波吸収層の表面に形成される保護層と、を備え、前記電磁波吸収層は周波数選択表面からなり、前記保護層は、変性ポリオレフィン樹脂および反応性基を有するポリフェニレンエーテル樹脂を含む組成物の硬化物から構成される、電磁波吸収体。
[2]前記保護層における前記変性ポリオレフィン樹脂の含有量が、前記保護層の総量中50質量%超である、[1]に記載の電磁波吸収体。
[3]前記ポリフェニレンエーテル樹脂の反応性基が、エチレン性不飽和結合を含む、[1]または[2]に記載の電磁波吸収体。
[4]前記組成物が、少なくとも1種の脂環式骨格および環状エーテル基を有する化合物を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の電磁波吸収体。
[5]前記脂環式骨格および環状エーテル基を有する化合物の少なくとも1種が25℃で液体の化合物であり、前記25℃で液体の化合物の含有量が、前記組成物の総量中10質量%以下である、[4]に記載の電磁波吸収体。
[6]前記保護層の厚みは、1μm~500μmである、[1]~[5]のいずれかに記載の電磁波吸収体。
[7]前記電磁波吸収層は、基材と、前記基材上に設けられた電磁波吸収パターンとを含む、[1]~[6]のいずれかに記載の電磁波吸収体。
[8]前記電磁波吸収パターンは、第1の電磁波吸収パターン、第2の電磁波吸収パターンおよび第3の電磁波吸収パターンからなり、前記第1の電磁波吸収パターンによって吸収される電磁波の吸収量が20GHz~110GHzの範囲で極大値を示す周波数が、A[GHz]であり、前記第2の電磁波吸収パターンによって吸収される電磁波の吸収量が極大値を示す周波数が、下記式(1)を満たすB[GHz]であり、前記第3の電磁波吸収パターンによって吸収される電磁波の吸収量が極大値を示す周波数が、下記式(2)を満たすC[GHz]である、[7]に記載の電磁波吸収体。
1.037×A≦B≦1.30×A・・・(1)
0.60×A≦C≦0.963×A・・・(2)
[9]前記第1の電磁波吸収パターンは、形状が互いに同一の図形である複数の第1の単位が配列された第1の配列を複数有し、前記第2の電磁波吸収パターンは、形状が互いに同一の図形である複数の第2の単位が配列された第2の配列を複数有し、前記第3の電磁波吸収パターンは、形状が互いに同一の図形である複数の第3の単位が配列された第3の配列を複数有し、前記第1の配列と前記第2の配列と前記第3の配列とが互いに隣り合うように前記基材上に配置されている、[8]に記載の電磁波吸収体。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、周波数特性の変化を抑制した電磁波吸収体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る電磁波吸収体を模式的に示し、電磁波吸収体における厚みに沿う面の断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る電磁波吸収体を模式的に示し、電磁波吸収体における厚みに沿う面の断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る電磁波吸収体を構成する電磁波吸収層の一例を示す上面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る電磁波吸収体を構成する第1の電磁波吸収パターンの一例を示す上面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る電磁波吸収体を構成する第1の電磁波吸収パターンの第1の単位の一例を示す上面図である。
図6】本発明の一実施形態に係る電磁波吸収体を構成する第2の電磁波吸収パターンの一例を示す上面図である。
図7】本発明の一実施形態に係る電磁波吸収体を構成する第2の電磁波吸収パターンの第2の単位の一例を示す上面図である。
図8】本発明の一実施形態に係る電磁波吸収体を構成する第3の電磁波吸収パターンの一例を示す上面図である。
図9】本発明の一実施形態に係る電磁波吸収体を構成する第3の電磁波吸収パターンの第3の単位の一例を示す上面図である。
図10図3のVIII-VIII断面図である。
図11】参考例の電磁波吸収体の反射減衰量を測定した結果を示す図である。
図12】実施例の電磁波吸収体の反射減衰量を測定した結果を示す図である。
図13】比較例の電磁波吸収体の反射減衰量を測定した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において「電磁波吸収パターン」とは、幾何学的な図形である単位の集合体であり、ある周波数の電磁波を選択的に吸収する物体を意味する。「電磁波吸収パターン」はいわゆるアンテナと同様の機能を有するともいえる。
本明細書において「ミリ波領域の電磁波」とは、波長が1mm~15mmの電磁波を意味する。「ミリ波領域の電磁波」とは、周波数が20GHz~300GHzである電磁波ともいえる。
本明細書において数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値および上限値として含むことを意味する。
【0011】
[電磁波吸収体]
以下、本発明を適用した一実施形態例について説明する。以下の説明で用いる図は、本発明の特徴を分かりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じ値であるとは限らない。
本発明の電磁波吸収体は、電磁波吸収層と、電磁波吸収層の裏面側に配置される反射層と、電磁波吸収層と反射層の間に配置されるスペーサ層と、電磁波吸収層の表面に形成される保護層と、を備える。
【0012】
図1および図2は、本発明の一実施形態に係る電磁波吸収体を模式的に示し、電磁波吸収体における厚みに沿う面の断面図である。
図1に示すように、本実施形態に係る電磁波吸収体10は、電磁波吸収層20と、反射層30と、スペーサ層40と、保護層50と、を備える。
【0013】
反射層30は、電磁波吸収層20の他方の面(裏面)20b側に配置される。スペーサ層40は、電磁波吸収層20と反射層30の間に配置される。すなわち、電磁波吸収層20と反射層30は、スペーサ層40を介して積層されている。保護層50は、電磁波吸収層20の一方の面(表面)20aに形成される。
【0014】
「電磁波吸収層」
電磁波吸収層20は周波数選択表面からなる。周波数選択表面とは、導線などで波長以下の形状の連続構造を形成することにより、特定の周波数の電磁波のみを遮断することができる面のことである。
電磁波吸収層20は、図1に示すように単層であってもよく、図2に示すように基材21と、基材21上に形成された電磁波吸収パターン22とを含んでもよい。
電磁波吸収層20が単層である場合、後述する電磁波吸収パターン22と同様の材料から構成される。
【0015】
図3は、本実施形態における電磁波吸収層の一例を示す上面図である。図3に示すように、電磁波吸収層20は、平板状である基材21と、基材21の一方の面21aに形成された電磁波吸収パターン22とを有する電磁波吸収フィルムである。電磁波吸収パターン22は、第1の電磁波吸収パターン61、第2の電磁波吸収パターン62および第3の電磁波吸収パターン63からなる。
【0016】
(第1の電磁波吸収パターン)
図4は、第1の電磁波吸収パターン61を示す上面図である。
図4に示すように第1の電磁波吸収パターン61は、複数の第1の単位u1で構成されている。第1の単位u1のそれぞれは、幾何学的な図形である。
すなわち、第1の電磁波吸収パターン61は、幾何学的な図形である第1の単位u1の集合体であるともいえる。
第1の単位u1は、それぞれが一つのアンテナとして機能する。第1の電磁波吸収パターン61は、例えば、FSS素子の細線パターンでもよい。
【0017】
第1の電磁波吸収パターン61においては、複数の第1の単位u1が図4中の両矢印Pで示す方向に沿って配列された第1の配列R1が複数形成されている。第1の電磁波吸収パターン61は複数の第1の配列R1を有するともいえる。第1の電磁波吸収パターン61は、複数の第1の配列R1を両矢印Pで示す方向に沿って、所定の間隔で基材20上に形成することで構成できる。
複数の第1の配列R1同士の間隔は特に制限されない。第1の配列R1同士の間隔は、規則的でも不規則的でもよい。
【0018】
図5は、第1の単位u1を示す上面図である。
図5は第1の電磁波吸収パターン61を構成する第1の単位u1を示す上面図である。
図5に示すように、第1の単位u1の形状は上下左右対称の十字状である。具体的に第1の単位u1は、1つの十字部分S1と、4つの端部T1とを有する。十字部分S1は、図5中のx軸方向に平行な直線部分とy軸方向に平行な直線部分とで構成される。x軸方向に平行な直線部分の両端とy軸方向に平行な直線部分の両端のそれぞれに、各直線部分と直交するように直線状の各端部T1が接している。
【0019】
第1の単位u1のx軸方向の長さL1、4つの端部T1のそれぞれのx軸方向の長さW1をそれぞれ調整することで、1つのアンテナとして機能する第1の単位u1による電磁波の吸収特性を調節できる。y軸方向も同様にして、電磁波の吸収特性を調節できる。
【0020】
ただし、第1の単位の形状は十字状に限定されない。第1の単位の形状は、第1の電磁波吸収パターン61によって吸収される電磁波の吸収量が極大値を示す周波数の値が、A[GHz]となる態様であれば、特に限定されない。
例えば、第1の単位である図形の形状としては、円形状、環状、直線状、方形状、多角形状、H字状、Y字状、V字状等が挙げられる。
【0021】
電磁波吸収層20においては、複数の第1の単位u1の形状は互いに同一である。ただし、複数の第1の単位u1の形状は互いに同一の図形でなくてもよい。本発明の他の例においては、複数の第1の単位の形状は、目的とする周波数に吸収特性を調整できれば、互いに同一でもよく、異なってもよい。
【0022】
第1の電磁波吸収パターン61は、周波数がA[GHz]である電磁波を選択的に吸収する。周波数の値A[GHz]は、第1の電磁波吸収パターン61によって吸収される電磁波の吸収量が20GHz~110GHzの範囲で極大値を示すときの周波数の値である。
第1の電磁波吸収パターン61によって吸収される電磁波の吸収量が極大値を示す周波数の値A[GHz]は、例えば、下記の方法X、方法Yによって特定できる。
【0023】
方法X:周波数を20GHz~110GHzの範囲内で変化させながら電磁波を後述の標準フィルムに照射し、標準フィルムによって吸収される電磁波の吸収量が最大値をとるときの電磁波の周波数をA[GHz]とする。
方法Y:基材と前記基材上に形成された複数の電磁波吸収パターンを有する電磁波吸収フィルムから、単一の電磁波吸収パターンのみが残るように、基材から電磁波吸収パターンを除去する。次いで、単一の電磁波吸収パターンのみを有するフィルムに、周波数を20GHz~110GHzの範囲内で変化させながら電磁波を照射し、当該フィルムの電磁波の吸収量が最大値をとるときの電磁波の周波数をA[GHz]とする。
【0024】
標準フィルムは、平板状である標準基材と標準基材に形成された標準パターンとを有する。
標準基材の詳細は、基材21と同内容とすることができる。そのため、標準基材の詳細は、後述の基材21の説明において詳細に説明する。
【0025】
標準パターンは、形状が互いに同一の図形である複数の標準単位のみからなる。標準フィルムにおいては、形状が同一である1種類の図形のみからなる標準パターンが標準基材に形成されているともいえる。標準パターンは通常のFSS素子の細線パターンによって形成できる。通常、標準パターンは、第1の電磁波吸収パターン61と同一の電磁波吸収パターンである。
標準パターンにおいては、複数の標準単位の形状は、互いに同一の図形であれば特に限定されない。標準単位である図形の形状としては、円形状、環状、直線状、方形状、多角形状、十字状、H字状、Y字状、V字状等が挙げられる。通常、標準単位の形状は第1の単位u1と同一である。
【0026】
標準フィルムにおいて複数の標準単位は、図形の端部同士の間隔が1mmとなるように標準基材上に配置されている。例えば、標準単位の図形が十字形状である場合、十字の交差部分が図形の中心であり、図形の端部は十字を構成する2つの直線部分の方向のそれぞれに沿って中心から最も距離が離れている部分である。
【0027】
標準パターンを構成する標準単位の材質は、20GHz~110GHzの範囲内で変化させながら電磁波を標準フィルムに照射したときに、標準フィルムによって吸収される電磁波の吸収量が最大値をとり得る態様であれば、特に限定されない。
標準単位の材質の詳細は、第1の単位と同内容とすることができる。
【0028】
標準フィルムによって吸収される電磁波の吸収量は、下記式(3)で算出できる。
吸収量=入力信号-反射特性(S11)-透過特性(S21)・・・(3)
入力信号は、標準フィルムに電磁波を照射した際の照射源における電磁波の強度の指標である。
反射特性(S11)は、照射源から標準フィルムに電磁波を照射した際に標準フィルムによって反射される電磁波の強度の指標である。反射特性(S11)は、例えば、ベクトルネットワークアナライザを用いてフリースペース法によって測定できる。
透過特性(S21)は、照射源から標準フィルムに電磁波を照射した際に標準フィルムを透過する電磁波の強度の指標である。透過特性(S21)は、例えば、ベクトルネットワークアナライザを用いてフリースペース法によって測定できる。
【0029】
周波数A[GHz]は例えば、下記の方法で特定できる。
まず、周波数を20GHz~110GHzの範囲内で変化させながら電磁波を標準フィルムに照射し、標準フィルムによって吸収される電磁波の吸収量を上記式(3)で算出する。
次いで、横軸に変化させた周波数をプロットし、縦軸に上記式(3)で算出される吸収量をプロットした吸収スペクトル図を作成する。通常、この吸収スペクトル図において、吸収量が最大値となる周波数の値が横軸に1つ存在する。そのためプロット図には、電磁波の吸収量が極大値となる単一のピークが形成される。このように、電磁波の吸収量が最大値をとるときの電磁波の周波数をA[GHz]とすることができる。
【0030】
方法Xにおいて、あらかじめ周波数Aの数値を予測できる場合には、標準フィルムに照射する電磁波の周波数を、20GHz~110GHzよりも狭い範囲内で変化させてもよい。例えば、標準フィルムに照射する電磁波の周波数を、50GHz~110GHzの範囲内で変化させてもよい。
【0031】
第1の電磁波吸収パターン61は、上述の方法Xによって特定される周波数がA[GHz]である電磁波を吸収する。
本実施形態における電磁波吸収層20においては、周波数の値Aは、50GHz~110GHzが好ましく、60GHz~100GHzがより好ましく、65GHz~95GHzがさらに好ましく、70GHz~90GHzが特に好ましい。周波数の値Aが前記数値範囲内であると、電磁波吸収層20がミリ波領域の電磁波を吸収でき、自動車用部品、道路周辺部材、建築外壁関連材、窓、通信機器、電波望遠鏡等に適用しやすく易くなる。
【0032】
方法Yにおいては、方法Xと同様に、フィルムの電磁波の吸収量を測定できる。すなわち、周波数を20~110[GHz]の範囲内で変化させながら電磁波をフィルムに照射し、フィルムによって吸収される電磁波の吸収量を上記式(3)で算出する。
次いで、横軸に周波数をプロットし、縦軸に上記式(3)で算出される吸収量をプロットした吸収スペクトル図を作成する。通常、この吸収スペクトル図において、吸収量が最大値となる周波数の値が横軸に1つ存在する。そのためプロット図には、電磁波の吸収量が極大値となる単一のピークが形成される。このように、電磁波の吸収量が最大値をとるときの電磁波の周波数をA[GHz]とすることができる。
【0033】
第1の単位u1の材質は、目的とする周波数に吸収特性を調整できれば、特に限定されない。
第1の単位の材質としては、例えば、金属の細線、導電性薄膜、導電性ペーストの定着物等が挙げられる。
金属の材質としては、銅、アルミニウム、タングステン、鉄、モリブデン、ニッケル、チタン、銀、金またはこれらの金属を2種以上含む合金(例えば、ステンレス鋼、炭素鋼等の鋼鉄、真鍮、りん青銅、ジルコニウム銅合金、ベリリウム銅、鉄ニッケル、ニクロム、ニッケルチタン、カンタル、ハステロイ、レニウムタングステン等)が挙げられる。
導電性薄膜の材質としては、金属粒子、カーボンナノ粒子、カーボンファイバー等が挙げられる。
【0034】
第1の単位u1である図形の端部同士の間隔は、目的とする周波数に吸収特性を調整できれば、特に限定されない。
例えば、第1の単位u1である図形の端部同士の間隔は、全て同一でもよく、互いに異なっていてもよい。ただし、周囲環境の影響を受けにくい電磁波吸収フィルムを設計しやすくなり、吸収される電磁波の周波数帯の精度が製造時に向上することから、第1の単位u1である図形の端部同士の間隔は、互いに同一であることが好ましい。
【0035】
(第2の電磁波吸収パターン)
図6は、第2の電磁波吸収パターン62を示す上面図である。
図6に示すように、第2の電磁波吸収パターン62は、複数の第2の単位u2で構成される。第2の単位u2のそれぞれは、幾何学的な図形である。すなわち、第2の電磁波吸収パターン62は、幾何学的な図形である第2の単位u2の集合体であるともいえる。
第2の単位u2は、それぞれが1つのアンテナとして機能する。第2の電磁波吸収パターン62は、例えば、FSS素子の細線パターンでもよい。
【0036】
第2の電磁波吸収パターン62においては、複数の第2の単位u2が図6中の両矢印Pで示す方向に沿って配列された第2の配列R2が形成されている。第2の電磁波吸収パターン62は複数の第2の配列R2を有するともいえる。第2の電磁波吸収パターン62は、第2の配列R2を両矢印Pで示す方向に沿って、所定の間隔で基材21上に形成することで構成できる。
複数の第2の配列R2同士の間隔は特に制限されない。第2の配列R2同士の間隔は、規則的でも不規則的でもよい。
【0037】
図7は、第2の単位u2を示す上面図である。
図7に示すように、第2の単位u2の形状は上下左右対称の十字状である。具体的に第2の単位u2は、1つの十字部分S2と、4つの端部T2とを有する。十字部分S2は、図7中のx軸方向に平行な直線部分とy軸方向に平行な直線部分とで構成される。x軸方向に平行な直線部分の両端とy軸方向に平行な直線部分の両端のそれぞれに、各直線部分と直交するように直線状の各端部T2が接している。
【0038】
電磁波吸収層20においては、第2の単位u2のx軸方向の長さL2は、第1の単位u1のx軸方向の長さL1より短い。加えて、4つの端部T2のそれぞれのx軸方向またはy軸方向の長さW2は、第1の単位u1の4つの端部T1のそれぞれの長さW1より短い。
第2の単位u2のx軸方向の長さL2、4つの端部T2のそれぞれのx軸方向の長さW2をそれぞれ調整することで、1つのアンテナとして機能する第2の単位u2による電磁波の吸収特性を調節できる。y軸方向も同様にして、電磁波の吸収特性を調節できる。
【0039】
電磁波吸収層20においては、複数の第2の単位u2の形状は互いに同一である。ただし、複数の第2の単位u2の形状は互いに同一の図形でなくてもよい。本発明の他の例においては、複数の第2の単位の形状は、目的とする周波数に吸収特性を調整できれば、互いに同一でもよく、異なってもよい。
【0040】
第2の電磁波吸収パターン62は、周波数が下記式(1)を満たすB[GHz]である電磁波を選択的に吸収する。周波数の値B[GHz]は、第2の電磁波吸収パターン62によって吸収される電磁波の吸収量が極大値を示すときの周波数の値である。周波数の値B[GHz]は、下記式(1)を満たす。
1.037×A≦B≦1.30×A・・・式(1)
【0041】
上記式(1)に示すように、第2の電磁波吸収パターン62は、周波数が1.037×A[GHz]~1.30×A[GHz]である電磁波を吸収する。第2の電磁波吸収パターン62は、周波数が1.17×A[GHz]~1.30×A[GHz]である電磁波を吸収することが好ましい。
第2の電磁波吸収パターン62が1.037×A[GHz]以上の周波数の電磁波を吸収するため、A[GHz]より高周波数の周波数帯で第2の電磁波吸収パターン62による電磁波の吸収量のピークと第1の電磁波吸収パターン61による電磁波の吸収量のピークとが充分に重なりあう。その結果、第1の電磁波吸収パターン61を単独で有するフィルムと比較して、電磁波吸収フィルム全体で吸収可能な電磁波の周波数帯がA[GHz]より高周波数側の周波数帯に拡張される。
第2の電磁波吸収パターン62が1.30×A[GHz]以下の周波数の電磁波を吸収するため、A[GHz]より高周波数の周波数帯で第2の電磁波吸収パターン62による電磁波の吸収量のピークと第1の電磁波吸収パターン61による電磁波の吸収量のピークとの周波数の差が少なくなる。その結果、電磁波吸収フィルム全体で吸収される電磁波の吸収量が極大値となる単一のピークが形成される。
以上より、第2の電磁波吸収パターン62は周波数が1.037×A[GHz]~1.30×A[GHz]である電磁波を吸収するため、電磁波吸収フィルム全体で吸収される電磁波の吸収量が高周波数側の周波数帯に拡張される。
【0042】
ただし、第2の単位の形状は十字状に限定されない。第2の単位の形状は、目的とする周波数に吸収特性を調整できれば、特に限定されない。例えば、第2の単位である図形の形状としては、円形状、環状、直線状、方形状、多角形状、H字状、Y字状、V字状等が挙げられる。
【0043】
第2の電磁波吸収パターン62を構成する第2の単位の材質は、B[GHz]の電磁波を吸収できる態様であれば、特に限定されず、目的とする周波数に吸収特性を調整できれば、特に限定されない。
第2の単位の材質としては、第1の単位u1の材質について説明した内容と同内容である。
【0044】
第2の単位u2である図形の端部同士の間隔は、目的とする周波数に吸収特性を調整できれば、特に限定されない。
例えば、第2の単位u2である図形の端部同士の間隔は、全て同一でもよく、互いに異なっていてもよい。ただし、周囲環境の影響を受け難い電磁波吸収フィルムを設計し易くなり、吸収される電磁波の周波数帯の精度が製造時に向上することから、第2の単位u2である図形の端部同士の間隔は、互いに同一であることが好ましい。
【0045】
(第3の電磁波吸収パターン)
図8は、第3の電磁波吸収パターン63を示す上面図である。
図8に示すように第3の電磁波吸収パターン63は、複数の第3の単位u3で構成される。第3の単位u3のそれぞれは、幾何学的な図形である。すなわち、第3の電磁波吸収パターン63は、幾何学的な図形である第3の単位u3の集合体であるともいえる。
第3の単位u3は、それぞれが1つのアンテナとして機能する。第3の電磁波吸収パターン63は、例えば、FSS素子の細線パターンでもよい。
【0046】
第3の電磁波吸収パターン63においては、複数の第3の単位u3が図8中の両矢印Pで示す方向に沿って配列された第3の配列R3が形成されている。第3の電磁波吸収パターン63は複数の第3の配列R3を有するともいえる。第3の電磁波吸収パターン63は、第3の配列R3を両矢印Pで示す方向に沿って、所定の間隔で基材21上に形成することで構成できる。
複数の第3の配列R3同士の間隔は特に制限されない。第3の配列R3同士の間隔は、規則的でも不規則的でもよい。
【0047】
図9は、第3の単位u3を示す上面図である。
図9に示すように、第3の単位u3の形状は上下左右対称の十字状である。具体的に第3の単位u3は、1つの十字部分S3と、4つの端部T3とを有する。十字部分S3は、図9中のx軸方向に平行な直線部分とy軸方向に平行な直線部分とで構成される。x軸方向に平行な直線部分の両端とy軸方向に平行な直線部分の両端のそれぞれに、各直線部分と直交するように直線状の各端部T3が接している。
【0048】
電磁波吸収層20においては、第3の単位u3のx軸方向の長さL3は、第1の単位u1のx軸方向の長さL1より長い。加えて、4つの端部T3のそれぞれのx軸方向またはy軸方向の長さW3は、第1の単位u1の4つの端部T1のそれぞれの長さW1より長い。
第3の単位u3のx軸方向の長さL3、4つの端部T3のそれぞれのx軸方向の長さW3をそれぞれ調整することで、1つのアンテナとして機能する第3の単位u3による電磁波の吸収特性を調節できる。y軸方向も同様にして、電磁波の吸収特性を調節できる。
【0049】
電磁波吸収層20においては、複数の第3の単位u3の形状は互いに同一である。ただし、複数の第3の単位u3の形状は互いに同一の図形でなくてもよい。本発明の他の例においては、複数の第3の単位の形状は、目的とする周波数に吸収特性を調整できれば、互いに同一でもよく、異なってもよい。
【0050】
第3の電磁波吸収パターン63は、周波数が下記式(2)を満たすC[GHz]である電磁波を選択的に吸収する。周波数の値C[GHz]は、第3の電磁波吸収パターン63によって吸収される電磁波の吸収量が極大値を示すときの周波数の値である。周波数の値C[GHz]は、下記式(2)を満たす。
0.60×A≦C≦0.963×A・・・式(2)
【0051】
上記式(2)に示すように、第3の電磁波吸収パターン63は、周波数が0.60×A[GHz]~0.963×A[GHz]である電磁波を吸収する。第3の電磁波吸収パターン63は、周波数が0.60×A[GHz]~0.83×A[GHz]である電磁波を吸収することが好ましい。
第3の電磁波吸収パターン63が0.60×A[GHz]以上の周波数の電磁波を吸収するため、A[GHz]より低周波数の周波数帯で第3の電磁波吸収パターン63による電磁波の吸収量のピークと第1の電磁波吸収パターン61による電磁波の吸収量のピークとの周波数の差が少なくなる。その結果、電磁波吸収層20全体で吸収される電磁波の吸収量が極大値となる単一のピークが形成される。
第3の電磁波吸収パターン63が0.963×A[GHz]以下の周波数の電磁波を吸収するため、A[GHz]より低周波数の周波数帯で第3の電磁波吸収パターン63による電磁波の吸収量のピークと第1の電磁波吸収パターン61による電磁波の吸収量のピークとが充分に重なりあう。その結果、電磁波吸収フィルム全体で吸収可能な電磁波の周波数帯が第1の電磁波吸収パターン61を単独で有するフィルムと比較して、A[GHz]より低周波数側の周波数帯に拡張される。
以上より、第3の電磁波吸収パターン3は周波数が0.60×A[GHz]~0.963×A[GHz]である電磁波を吸収するため、電磁波吸収層20全体で吸収される電磁波の吸収量が低周波数側の周波数帯に拡張される。
【0052】
ただし、第3の単位u3の形状は十字状に限定されない。第3の単位u3の形状は、目的とする周波数に吸収特性を調整できれば、特に限定されない。例えば、第3の単位である図形の形状としては、円形状、環状、直線状、方形状、多角形状、H字状、Y字状、V字状等が挙げられる。
【0053】
第3の電磁波吸収パターン63を構成する第3の単位u3の材質は、C[GHz]の電磁波を吸収できる態様であれば、特に限定されず、目的とする周波数に吸収特性を調整できれば、特に限定されない。
第3の単位u3の材質としては、第1の単位u1の材質について説明した内容と同内容である。
【0054】
第3の単位u3である図形の端部同士の間隔は、目的とする周波数に吸収特性を調整できれば、特に限定されない。
例えば、第3の単位u3である図形の端部同士の間隔は、全て同一でもよく、互いに異なっていてもよい。ただし、周囲環境の影響を受け難い電磁波吸収フィルムを設計し易くなり、吸収される電磁波の周波数帯の精度が製造時に向上することから、第3の単位u3である図形の端部同士の間隔は、互いに同一であることが好ましい。
【0055】
図3に示す電磁波吸収層20においては、第1の配列R1と第2の配列R2と第3の配列R3とが互いに隣り合うように両矢印Pで示す方向に沿って配列されている。このように、第1の配列R1と第2の配列R2と第3の配列R3とが互いに隣り合うように基材21に配置されているため、第1の電磁波吸収パターン61が選択的に吸収する電磁波のピーク位置の周波数の値A[GHz]を基準として、第2の電磁波吸収パターン62が選択的に吸収する電磁波の周波数帯と、第3の電磁波吸収パターン63が選択的に吸収する電磁波の周波数帯の両方が重なりあう。その結果、電磁波吸収層20全体で吸収される電磁波の吸収域が、ピーク位置の周波数の値A[GHz]を基準として、高周波数側と低周波数側との両方に拡張され易くなる。
【0056】
図3にそれぞれ示す、第1の単位u1と第2の単位u2との間隔d1、第2の単位u2と第3の単位u3との間隔d2、第3の単位u3と第1の単位u1との間隔d3は、互いに同一でもよく、異なってもよい。
間隔d1は、例えば、0.2mm~4mmでもよく、0.3mm~2mmでもよく、0.5mm~1mmでもよい。
間隔d2は、例えば、0.2mm~4mmでもよく、0.3mm~2mmでもよく、0.5mm~1mmでもよい。
間隔d3は、例えば、0.2mm~4mmでもよく、0.3mm~2mmでもよく、0.5mm~1mmでもよい。
間隔d1、間隔d2、間隔d3がそれぞれ前記数値範囲内であると、電磁波吸収層20全体で吸収される電磁波の吸収域が、ピーク位置の周波数の値A[GHz]を基準としてさらに拡張されやすくなる。
【0057】
電磁波吸収層20においては、第1の単位u1、第2の単位u2、第3の単位u3の形状は互いに同一である。ただし、第1の単位u1、第2の単位u2、第3の単位u3の形状は互いに同一の図形でなくてもよい。すなわち、本発明の他の例においては、第1の単位u1、第2の単位u2、第3の単位u3の形状は、互いに同一でもよく、異なってもよい。
【0058】
電磁波吸収層20は、複数の第2の電磁波吸収パターン62を有してもよい。例えば、電磁波吸収層20は、第2の電磁波吸収パターン2に加えて、下記の電磁波吸収パターン62a、電磁波吸収パターン62bをさらに有してもよい。
電磁波吸収パターン62a:吸収される電磁波の吸収量が極大値を示す周波数の値が下記式(4)を満たすD[GHz]である電磁波吸収パターン。
電磁波吸収パターン62b:吸収される電磁波の吸収量が極大値を示す周波数の値が下記式(5)を満たすE[GHz]である電磁波吸収パターン。
1.037×A≦D<1.09×A・・・式(4)
1.09×A≦E<1.17×A・・・式(5)
上記式(4)、上記式(5)中、Aは上述の方法Xまたは方法Yで特定される周波数[GHz]である。
【0059】
電磁波吸収層20が、第2の電磁波吸収パターン62に加えて、電磁波吸収パターン62aと電磁波吸収パターン62bとをさらに有する場合、第2の電磁波吸収パターン62によって吸収される電磁波の吸収量が極大値を示す周波数の値は、1.17×A[GHz]~1.30×A[GHz]が好ましい。この場合、電磁波吸収層20全体で吸収可能な電磁波の周波数帯の高周波数側への拡張効果がさらに顕著であり、本発明の効果がさらに顕著に得られる。
【0060】
電磁波吸収層20は、複数の第3の電磁波吸収パターンを有してもよい。例えば、電磁波吸収層20は、第3の電磁波吸収パターン63に加えて、下記の電磁波吸収パターン63aと電磁波吸収パターン63bとをさらに有してもよい。
電磁波吸収パターン63a:吸収される電磁波の吸収量が極大値を示す周波数の値が下記式(6)を満たすF[GHz]である電磁波吸収パターン。
電磁波吸収パターン63b:吸収される電磁波の吸収量が極大値を示す周波数の値が下記式(7)を満たすG[GHz]である電磁波吸収パターン。
0.91×A<F≦0.963×A・・・式(6)
0.83×A<G≦0.91×A・・・式(7)
下記式(6)、下記式(7)中、Aは上述の方法Xまたは方法Yで特定される周波数[GHz]である。
【0061】
電磁波吸収層20が、第3の電磁波吸収パターン63に加えて、電磁波吸収パターン63a、電磁波吸収パターン63bをさらに有する場合、第3の電磁波吸収パターン63によって吸収される電磁波の吸収量が極大値を示す周波数の値は、0.60×A[GHz]~0.83×A[GHz]が好ましい。この場合、電磁波吸収層20全体で吸収可能な電磁波の周波数帯の低周波数側への拡張効果がさらに顕著であり、本発明の効果がさらに顕著に得られる。
【0062】
図10は、図3の電磁波吸収層20のVIII-VIII断面図である。
基材21は、互いに対向する2つの面21a,21bを有する。そして、基材21の一方の面21aに、第1の電磁波吸収パターン61、第2の電磁波吸収パターン62、第3の電磁波吸収パターン63が形成されている。図10に示すように、基材21の一方の面21aに、複数の第1の単位u1、複数の第2の単位u2、複数の第3の単位u3がそれぞれ設けられている。
【0063】
基材21は、平板状であり、かつ、一方の面21aに第1の電磁波吸収パターン61、第2の電磁波吸収パターン62および第3の電磁波吸収パターン63を形成できる形態であれば、特に限定されない。基材21は単層構造でも多層構造でもよい。
【0064】
基材21の厚みKは、例えば、5μm~500μmでもよく、15μm~200μmでもよく、25μm~100μmでもよい。
第1の電磁波吸収パターン61の厚みH1、第2の電磁波吸収パターン62の厚みH2、第3の電磁波吸収パターン63の厚みH3は特に限定されない。厚みH1、厚みH2、厚みH3は所望する特性に応じて任意に変更可能である。また、厚みH1、厚みH2、厚みH3は互いに同一でもよく、異なっていてもよい。
厚みH1、厚みH2、厚みH3は、例えば、1μm~100μmでもよく、5μm~50μmでもよく、10μm~30μmでもよい。厚みH1、厚みH2、厚みH3のそれぞれが厚いほど、電磁波吸収性がよくなる一方、製造コストが高くなる。この点を考慮して、厚みH1、厚みH2、厚みH3のそれぞれを設定してもよい。
【0065】
基材21の材料は、電磁波吸収体10の用途に応じて適宜選択できる。
例えば、電磁波吸収体10の透明性の具備を目的として、基材21を透明な材料で構成してもよい。他にも、電磁波吸収体10の曲面に対する追従性の具備を目的として、基材21を柔軟性のある材料で構成してもよい。電磁波吸収体10の透明性、三次元成形性の向上を目的として、基材21の表面を平滑にしてもよい。
【0066】
例えば、基材21は樹脂で構成できる。樹脂は、熱可塑性樹脂でも熱硬化性樹脂でもよい。ただし、電磁波吸収体10の三次元成形性を考慮する場合、基材21は熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリイミドアミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂が挙げられる。
ポリオレフィン樹脂の具体例としては、ポリプロピレン、ポリエチレン等が挙げられる。ポリエステル樹脂の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等が挙げられる。
【0067】
熱硬化性樹脂として、例えば、エポキシ樹脂組成物、ウレタン反応により硬化する樹脂組成物、ラジカル重合反応により硬化する樹脂組成物を用いることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
エポキシ樹脂組成物はエポキシ樹脂と硬化剤とを含む組成物である。エポキシ樹脂の具体例としては、多官能系エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
硬化剤の具体例としては、アミン化合物、フェノール系硬化剤等が挙げられる。
ウレタン反応により硬化する樹脂組成物としては、例えば、(メタ)アクリルポリオールとポリイソシアネート化合物とを含む樹脂組成物が挙げられる。
【0068】
ラジカル重合反応により硬化する樹脂組成物としては、例えば、側鎖にラジカル重合性基を有する(メタ)アクリル樹脂、不飽和ポリエステル等が挙げられる。
(メタ)アクリル樹脂としては、反応性基を有するビニル単量体の重合体と、ビニル単量体由来の反応性基と反応し得る基を有し、かつ、ラジカル重合性基を有する単量体とを反応させて得られる樹脂;エポキシ樹脂の末端に(メタ)アクリル酸等を反応させた(メタ)アクリル基を有するエポキシアクリレートが挙げられる。
反応性基を有するビニル単量体の具体例としては、例えば、ヒドロキシ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等のアクリル系単量体が挙げられる。
ビニル単量体由来の反応性基と反応し得る基を有し、かつ、ラジカル重合性基を有する単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸、イソシアナート基含有(メタ)アクリレート等が挙げられる。
不飽和ポリエステルとしては、不飽和基を有するカルボン酸(フマル酸等)をジオールと縮合した不飽和ポリエステルが挙げられる。
基材21は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意成分を含んでもよい。任意成分の例としては、例えば、無機充填材、着色剤、硬化剤、老化防止剤、光安定剤、難燃剤、導電剤、帯電防止剤、可塑剤等が挙げられる。
【0069】
無機充填材としては、金属粒子、金属酸化物粒子、金属水酸化物粒子、金属窒化物系粒子等が挙げられる。より具体的には、銀粒子、銅粒子、アルミニウム粒子、ニッケル粒子、酸化亜鉛粒子、酸化アルミニウム粒子、窒化アルミニウム粒子、酸化ケイ素粒子、酸化マグネシウム粒子、窒化アルミニウム粒子、チタン粒子、窒化ホウ素粒子、窒化ケイ素粒子、炭化ケイ素粒子、ダイヤモンド粒子、グラファイト粒子、カーボンナノチューブ粒子、金属ケイ素粒子、カーボンファイバー粒子、フラーレン粒子、ガラス粒子等が挙げられる。
着色剤の具体例としては、無機顔料、有機顔料、染料等が挙げられる。これらは1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0070】
電磁波吸収体10の電磁波の吸収性能のさらなる改良を考慮して、基材21の厚み、誘電率、電気伝導率、透磁率は適宜設定可能である。
吸収対象となる電磁波の電気的特性を考慮する場合、基材21は高誘電率の層であってもよい。基材21が高誘電率の層であると、電磁波吸収体10の厚みを相対的に薄くできる。
【0071】
電磁波吸収層20は、例えば、下記の方法によって作製できる。
まず、基材21を準備する。次いで、基材21の一方の面21aに第1の電磁波吸収パターン61、第2の電磁波吸収パターン62および第3の電磁波吸収63を形成する。
ここで、第1の電磁波吸収パターン61を形成する際には、第1の電磁波吸収パターン61によって吸収される電磁波の吸収量が極大値を示す周波数の値がA[GHz]となるように形成する。
第2の電磁波吸収パターン62を形成する際には、第2の電磁波吸収パターン62によって吸収される電磁波の吸収量が極大値を示す周波数の値がB[GHz]となるように形成する。
第3の電磁波吸収パターン63を形成する際には、第3の電磁波吸収パターン63によって吸収される電磁波の吸収量が極大値を示す周波数の値がC[GHz]となるように形成する。
第1の電磁波吸収パターン61、第2の電磁波吸収パターン62および第3の電磁波吸収パターン63を形成する順序は特に限定されない。第1の電磁波吸収パターン61、第2の電磁波吸収パターン62および第3の電磁波吸収パターン63は、同一の工程内で形成してもよく、それぞれ別々の工程で形成してもよい。
【0072】
各電磁波吸収パターンの形成方法は、所定の周波数を形成できる態様であれば特に限定されない。各電磁波吸収パターンの形成方法の例としては、例えば、下記の方法がある。
導電性ペーストを用いて基材21の一方の面21aに各電磁波吸収パターンを印刷する印刷方法。
基材21の一方の面21aに各電磁波吸収パターンを現像する現像方法。
スパッタ法、真空蒸着または金属箔の積層によって基材21の一方の面21aに金属薄膜を設け、フォトリソグラフィによって金属薄膜のパターンを基材21の一方の面21aに形成する方法。
金属ワイヤーを基材21の一方の面21aに配置する方法。
【0073】
印刷方法では、基材21の一方の面21aに各電磁波吸収パターンを印刷して図形である各単位u1,u2,u3を形成する。印刷方法は特に限定されない。例えば、スクリーン印刷、グラビア印刷、インクジェット方式等の方法が挙げられる。
印刷に使用する導電性ペーストとしては、例えば、金属粒子、カーボンナノ粒子およびカーボンファイバーからなる群より選ばれる少なくとも1種以上とバインダー樹脂成分とを含むペースト状の組成物が挙げられる。金属粒子としては、銅、銀、ニッケル、アルミニウム等の金属の粒子が挙げられる。
バインダー樹脂成分としては、例えば、ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂;エポキシ樹脂、アミノ樹脂、ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。ただし、金属粒子およびバインダー樹脂成分はこれらの例示に限定されない。
導電性ペーストは、さらにカーボンブラック等の黒色顔料を含んでもよい。導電性ペーストが黒色顔料をさらに含むと、印刷された電磁波吸収パターンを構成する金属粉末の金属光沢を抑え、外光の反射を抑制できる。
【0074】
現像方法では、基材21の一方の面21aに電磁波吸収パターンを現像して図形である各単位u1,u2,u3を形成する。
現像方法としては、露光マスクに覆われず、露光された部分に現像物が発現するネガ型の現像方法と露光マスクに覆われ、未露光の部分には現像物が発現するポジ型の現像方法がある。すなわち、ネガ型の現像方法では、露光マスクと反対の形に現像物として各単位u1,u2,u3が形成される。一方、ポジ型の現像方法では、露光マスクと同じ形に現像物として各単位u1,u2,u3が形成される。現像物に用いる金属としては通常、銀が使用される。
【0075】
フォトリソグラフィによる電磁波吸収パターンの形成方法の一例としては、例えば、下記の方法がある。
まず、基材21の表面にレジストを塗布し、熱処理した後、レジストから溶媒を除去する。次に、レジストに所望のパターンを露光し、レジストパターンを現像してレジストパターンからなる層を形成する。次に、基材とレジストパターンからなる層の上に、全面にわたって蒸着膜を形成し、レジスト剥離剤を用いてレジストパターンからなる層とその上に乗っている蒸着膜とを同時に除去する。これにより、基材の表面に電磁波吸収パターンを形成できる。
その他の一例として、基材21上に金属薄膜を設け、金属薄膜の表面の一部にレジストを塗布し、熱処理する。次に、エッチング処理によりレジストが塗布されていない部分の金属薄膜を除去する。その後、必要に応じレジストを除去し、電磁波吸収パターンを形成する。各電磁波吸収パターンを構成する各単位u1,u2,u3の表面には、図示略の金属メッキ層をさらに設けてもよい。
【0076】
金属ワイヤーを構成する金属の具体例としては、各単位u1,u2,u3の材質として上述した金属と同様の金属が挙げられる。加えて、金属ワイヤーは錫、亜鉛、銀、ニッケル、クロム、ニッケルクロム合金、はんだ等でめっきされてもよく、炭素材料、ポリマー等により表面が被覆されていてもよい。金属ワイヤーの表面を被覆する炭素材料としては、カーボンブラック、活性炭、ハードカーボン、ソフトカーボン、メソポーラスカーボン、カーボンファイバー等の非晶質炭素;グラファイト;フラーレン;グラフェン;カーボンナノチューブ等が挙げられる。
【0077】
「反射層」
反射層30は2つの面30a,30bを有する。反射層30の一方の面30aは、スペーサ層40の他方の面40bと接している。
反射層30は、電磁波吸収体10の表面に飛来し、電磁波吸収体10を透過した電磁波を反射できる形態であれば、特に限定されない。電磁波吸収体10に飛来する電磁波のうち、一部は電磁波吸収層20で反射されるか、電磁波吸収層20に吸収される。一方で、電磁波吸収層20で反射も吸収もされなかった電磁波は、電磁波吸収層20を透過する。電磁波吸収層20を透過した電磁波は、反射層30で電磁波吸収層20に向けて反射される。
例えば、2つの面30a,30bの面方向において反射層30が導電性を具備する形態であれば、電磁波吸収層20を透過した電磁波を反射できる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂フィルムに銅箔等の金属箔を貼り合わせたものを反射層30として使用してもよい。金属箔の代わりに、ITO等の当面導電膜、金属ワイヤー等で形成されたメッシュシートを使用してもよい。
【0078】
反射層30の反射特性を考慮して反射層30の他方の面30bに金属ワイヤー、導電性糸、金属ワイヤーおよび導電性糸を含む撚糸、導電性薄膜を設けてもよい。導電性薄膜は、例えば、スクリーン印刷、グラビア印刷、インクジェット方式等の印刷方法;スパッタ法または真空蒸着;フォトリソグラフィによって面30bに設けることができる。
【0079】
スペーサ層40を金属等の導電性を具備する物体に形成する場合には、金属等の導電性を具備する物体が反射層30の役割を果たすため、反射層30は省略できる。
【0080】
電磁波吸収体10を種々の物品の表面に適用することを目的として、反射層30の他方の面30bを接着性としてもよい。反射層30の他方の面30bを接着性とする場合には、面30bを覆う剥離フィルムを設けてもよい。剥離フィルムは電磁波吸収体10の使用時には除去される。剥離フィルムが接着面を覆うことで、流通時の取扱性がよくなる。
例えば、反射層30の他方の面30bが接着剤を含む接着層である多層構造を採用することで、反射層30の他方の面30bを接着性とすることができる。
【0081】
接着剤としては、熱により接着するヒートシールタイプの接着剤;湿潤させて貼付性を発現させる接着剤;圧力により接着する感圧性接着剤(粘着剤)等が挙げられる。これらの中でも、簡便さの観点から、粘着剤(感圧性接着剤)が好ましい。
粘着剤の具体例としては、例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤等が挙げられる。これらの中でも、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤およびゴム系粘着剤からなる群から選ばれる少なくともいずれかが好ましく、アクリル系粘着剤がより好ましい。
【0082】
アクリル系粘着剤としては、例えば、下記のアクリル系重合体が挙げられる。
直鎖のアルキル基または分岐鎖のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含むアクリル系重合体(1)(すなわち、少なくともアルキル(メタ)アクリレートを単量体として重合することで得られる重合体)。
環状構造を有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含むアクリル系重合体(2)(すなわち、環状構造を有する(メタ)アクリレートを少なくとも重合することで得られる重合体)。
アクリル系重合体は単独重合体でも共重合体でもよい。アクリル系重合体が共重合体である場合、共重合の形態は特に限定されない。アクリル系共重合体は、ブロック共重合体でもランダム共重合体でもグラフト共重合体でもよい。
【0083】
アクリル系粘着剤としては、下記のアクリル系共重合体(Q)が好ましい。
アクリル系共重合体(Q):炭素数1~20の鎖状アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(以下、「単量体成分(q1’)」と記載する。)に由来する構成単位(q1)と官能基含有モノマー(以下、「単量体成分(q2’)」と記載する。)に由来する構成単位(q2)とを含む共重合体。
アクリル系共重合体(Q)は、構成単位(q1)および構成単位(q2)以外のその他の構成単位(q3)をさらに含んでもよい。構成単位(q3)は、単量体成分(q1’)および単量体成分(q2’)以外の他の単量体成分(q3’)に由来する構成単位である。
【0084】
単量体成分(q1’)が有する鎖状アルキル基の炭素数としては、粘着特性の向上の観点から、1~12が好ましく、4~8がより好ましく、4~6がさらに好ましい。単量体成分(q1’)の具体例としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、ブチル(メタ)アクリレートおよび2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましく、ブチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0085】
単量体成分(q2’)としては、例えば、ヒドロキシ基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、シアノ基含有モノマー、ケト基含有モノマー、アルコキシシリル基含有モノマー等が挙げられる。これらの中でも、ヒドロキシ基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマーが好ましい。
ヒドロキシ基含有モノマーの具体例としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
カルボキシ基含有モノマーの具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等が挙げられ、(メタ)アクリル酸が好ましい。
エポキシ基含有モノマーの具体例としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
アミノ基含有モノマーの具体例としては、例えば、ジアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
シアノ基含有モノマーの具体例としては、例えば、アクリロニトリル等が挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0086】
単量体成分(q3’)としては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン等の環状構造を有する(メタ)アクリレート;酢酸ビニル;スチレン等が挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0087】
構成単位(q1)の含有量は、アクリル系共重合体(Q)の全構成単位100質量%に対して、50質量%~99.5質量%が好ましく、55質量%~99質量%がより好ましく、60質量%~97質量%がさらに好ましく、65質量%~95質量%が特に好ましい。
構成単位(q2)の含有量は、アクリル系共重合体(Q)の全構成単位100質量%に対して、0.質量%1~50質量%が好ましく、0.5質量%~40質量%がより好ましく、1.0質量%~30質量%がさらに好ましく、1.5質量%~20質量%が特に好ましい。
構成単位(q3)の含有量は、アクリル系共重合体(Q)の全構成単位100質量%に対して、0~40質量%が好ましく、0~30質量%がより好ましく、0~25質量%がさらに好ましく、0~20質量%が特に好ましい。
【0088】
アクリル系共重合体は架橋剤により架橋されていてもよい。架橋剤としては、例えば、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤等が挙げられる。アクリル系共重合体を架橋する場合には、単量体成分(q2’)に由来する官能基を、架橋剤と反応する架橋点として利用できる。
【0089】
耐衝撃性の向上等を目的として、接着層は紫外線、可視エネルギー線、赤外線、電子線等のエネルギー線で硬化する材質で構成してもよい。この場合、接着層はエネルギー線硬化性の成分を含む。
エネルギー線硬化性の成分としては、例えばエネルギー線が紫外線である場合には、1分子中に紫外線重合性の官能基を2つ以上有する化合物等が挙げられる。1分子中に紫外線重合性の官能基を2つ以上有する化合物の具体例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエンジメトキシジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、オリゴエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ変性(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0090】
接着層がエネルギー線硬化性である場合、光重合開始剤の併用が好ましい。光重合開始剤により、硬化速度が高くなる。
光重合開始剤の具体例としては、例えば、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール、2,4-ジエチルチオキサントン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンジル、ジベンジル、ジアセチル、2-クロロアンスラキノン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2-ベンゾチアゾール-N,N-ジエチルジチオカルバメート、オリゴ{2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-プロペニル)フェニル]プロパノン}等が挙げられる。
【0091】
「スペーサ層」
スペーサ層40は、電磁波吸収層20が有する基材21の他方の面21bに設けられている。
スペーサ層40は2つの面40a,40bを有する。スペーサ層40の一方の面40aは、基材21の他方の面21bと接している。スペーサ層40の他方の面40bには、反射層30が設けられている。
スペーサ層40は、単層構造でも多層構造でもよい。
【0092】
スペーサ層40の材料は、電磁波吸収フィルムの用途に応じて適宜選択できる。例えば、電磁波吸収フィルムの透明性の具備を目的として、スペーサ層40を透明な材料で構成してもよい。他にも、電磁波吸収フィルムの曲面に対する追従性の具備を目的として、スペーサ層40を柔軟性のある材料で構成してもよい。
柔軟性のある材料としては、プラスチックフィルム、ゴム、紙、布、不織布、発泡シート、ゴムシート等が挙げられる。これらの中でも、電磁波吸収体10の曲面に対する追従性の点から、発泡シートが好ましい。
プラスチックフィルムを構成する樹脂の具体例としては、例えば、上述の基材21について説明した熱可塑性樹脂と同様のものを用いることができる。
発泡シートとしては、例えば、前記プラスチックフィルムを構成する樹脂を発泡させ、シート状に形成した発泡シートを用いることができる。発泡シートの具体例としては、ポリエチレンフォーム、ポリプロピレンフォーム、ポリウレタンフォーム等が挙げられる。
【0093】
スペーサ層40による波長短縮効果を考慮する場合、スペーサ層40の厚みは、吸収対象となる電磁波の波長およびスペーサ層40の比誘電率に合わせて適宜変更される。
スペーサ層40による波長短縮効果を考慮する場合、スペーサ層40のz軸方向の厚みは、下記式(8)を満たすことが好ましい。
(スペーサ層40のz軸方向の厚み)=(λ)×(1/4)/(ε)1/2・・・式(8)
上記式(8)中、λは飛来する電磁波の波長であり、εはスペーサ層40の比誘電率である。スペーサ層40のz軸方向の厚みは、吸収特性のために適宜調整してもよい。例えば、式(8)で得られるスペーサ層40のz軸方向の厚みの、0.1倍から3.0倍の範囲で変更することができる。
【0094】
スペーサ層40のz軸方向の厚みと波長λとの関係が上記式(8)を満たす場合、電磁波吸収体10はいわゆるλ/4構造となる。これにより、電磁波吸収体10による電磁波の吸収量の極大値がさらに高くなる。
スペーサ層40の厚みは、吸収対象となる電磁波の波長λに応じて適宜設定できる。スペーサ層40の厚みは、例えば、25μm~5000μmでもよく、50μm~4500μmでもよく、100μm~4000μmでもよい。
スペーサ層40は高誘電率の材質で構成してもよい。スペーサ層40が高誘電率の層であると、スペーサ層40の厚みを相対的に薄くできる。
スペーサ層40の誘電率を考慮する場合、スペーサ層40はチタン酸バリウム、酸化チタン、チタン酸ストロンチウムからなる群から選ばれる少なくとも1種以上を含むことが好ましい。
【0095】
スペーサ層40は、プラスチックフィルム、発泡シート、ゴムシートからなる群から選ばれる少なくとも1種以上を含むことが好ましく、これらの中でも発泡シートを含むことがより好ましい。スペーサ層40は、プラスチックフィルム、発泡シート、ゴムシートからなる群から選ばれる少なくとも1種以上であると、電磁波吸収体10の曲面に対する追従性が向上する。
スペーサ層40は、単一のシートからなる単層構造でも、複数のシートの積層物である多層構造でもよい。スペーサ層40を構成するシートの材質および構造は、電磁波吸収シートの用途に応じて適宜選択できる。
【0096】
スペーサ層40の2つの面40a、40bは、接着性であることが好ましい。これにより、2つの面40a、40bのそれぞれに、電磁波吸収層10と反射層30を貼り合わせることができる。例えば、2つの面40a、40bが接着剤を含む接着層である多層構造を採用することで、2つの面40a、40bを接着性とすることができる。
接着層の詳細および好ましい態様については、基材21における接着層について説明した内容と同内容とすることができる。
【0097】
「保護層」
保護層50は、電磁波吸収層20の一方の面20aに設けられている。電磁波吸収層20が、基材21と電磁波吸収パターン22とを有する場合、保護層50は、電磁波吸収層20を覆うように、基材21の一方の面21aに設けられる。
保護層50は、電磁波吸収層20を保護できる形態であれば、特に限定されない。
【0098】
保護層50の厚みは、1μm~500μmが好ましく、3μm~100μmがより好ましく、5μm~50μmがさらに好ましい。保護層50の厚みが上記下限値以上であると、電磁波吸収層の凹凸に十分追従し保護することができる。保護層50の厚みが上記上限値以下であると、保護層を構成する組成物の側面からの染み出しが抑制され、電磁波吸収体の柔軟性に柔軟性を付与できる。
【0099】
保護層50は、変性ポリオレフィン樹脂および反応性基を有するポリフェニレンエーテル樹脂を含む組成物の硬化物から構成される。この組成物の硬化物とすることで、低誘電特性の保護層を得ることができ、周波数特性の変化を抑制することができる。
【0100】
変性ポリオレフィン樹脂としては、特に限定されないが、例えば、酸変性ポリオレフィン樹脂、シラン変性ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。接着強度に優れる点から、酸変性ポリオレフィン樹脂が好ましい。
【0101】
保護層50における変性ポリオレフィン樹脂の含有量が、保護層50の総量中50質量%超であることが好ましく、55質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましい。保護層50における変性ポリオレフィン樹脂の含有量の上限は、保護層50の総量中90質量%以下でもよく、80質量%以下でもよい。変性ポリオレフィン樹脂の含有量が上記下限値を下回ると、保護層50が高い誘電特性となり、電磁波吸収体の反射減衰量が高くなってしまう。
【0102】
反応性基を有するポリフェニレンエーテル樹脂は、特に限定されないが、反応性基がエチレン性不飽和結合を含むポリフェニレンエーテル樹脂が好ましい。エチレン性不飽和結合を含む基を含む反応性基を有するポリフェニレンエーテル樹脂の反応性基の具体例としては、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、シクロペンテニル基、ビニルベンジル基、ビニルナフチル基等が挙げられる。より低誘電特性を有する組成物が得られ易いことから、反応性基は、ビニルベンジル基がより好ましい。
【0103】
保護層50における反応性基を有するポリフェニレンエーテル樹脂の含有量が、保護層50の総量中1質量%~50質量%であることが好ましく、10質量%~50質量%であることがより好ましい。反応性基を有するポリフェニレンエーテル樹脂の含有量が上記下限値以上であると、硬化後のガラス転移温度が高くなり、高温高湿耐性が高くなる。反応性基を有するポリフェニレンエーテル樹脂の含有量が上記上限値以下であると、接着強度が低くなり、保護層50が電磁波吸収層20からはがれてしまう可能性がある。
【0104】
上記組成物は、さらに、脂環式骨格および環状エーテル基を有する化合物を少なくとも1種含むことが好ましい。脂環式骨格および環状エーテル基を有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、少なくとも1個以上の脂環式構造を有する多価アルコールのポリグリシジルエーテル化物や、シクロヘキセンやシクロペンテン環含有化合物を酸化剤でエポキシ化することによって得られるシクロヘキセンオキサイドやシクロペンテンオキサイド含有化合物等のシクロアルケンオキサイド化合物が挙げられる。これらの中でも、高い接着強度が付与できる観点から、脂環式骨格および環状エーテル基を有する化合物は、25℃で液体の化合物であることが好ましい。
【0105】
脂環式骨格および環状エーテル基を有する化合物の含有量が、上記組成物の総量中保護層50の総量中1質量%以上であることが好ましく、2質量%~15質量%であることがより好ましい。脂環式骨格および環状エーテル基を有する化合物の含有量が上記上限値以下であると、接着強度が低くなり、保護層50が電磁波吸収層20からはがれてしまう可能性がある。
【0106】
上記組成物は、さらに、硬化剤を含有してもよい。硬化剤を含有させることで上記組成物は、より効率よく硬化反応が進行するため好ましい。
硬化剤としては、硬化反応を開始させるものであれば特に限定されない。経時安定性や生産性に優れることから、硬化剤としては、加熱により硬化反応を開始させるものが好ましく用いられる。
加熱により硬化反応を開始させる硬化剤としては、熱カチオン重合開始剤や、それ以外の熱反応性硬化剤が挙げられる。
【0107】
[電磁波吸収体の製造方法]
電磁波吸収体10は、例えば、下記の方法によって製造できる。
変性ポリオレフィン樹脂および反応性基を有するポリフェニレンエーテル樹脂を含む組成物を調製する。
組成物は、溶媒に、変性ポリオレフィン樹脂および反応性基を有するポリフェニレンエーテル樹脂を加えて、これらを撹拌、混合し、溶媒に前記の樹脂を溶解することによって得られる。
組成物は、必要に応じて、変性ポリオレフィン樹脂および反応性基を有するポリフェニレンエーテル樹脂以外に、種々の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、シランカップリング剤、硬化剤等が挙げられる。
硬化剤としては、硬化反応を開始させるものであれば特に限定されない。経時安定性や生産性に優れることから、硬化剤としては、加熱により硬化反応を開始させるものが好ましく用いられる。硬化剤を含有させることで上記組成物は、より効率よく硬化反応が進行するため好ましい。加熱により硬化反応を開始させる硬化剤としては、熱カチオン重合開始剤や、それ以外の熱反応性硬化剤が挙げられる。
シランカップリング剤としては、公知のシランカップリング剤を用いることができる。なかでも、分子内にアルコキシシリル基を少なくとも1個有する有機ケイ素化合物が好ましい。
溶媒としては、変性ポリオレフィン樹脂および反応性基を有するポリフェニレンエーテル樹脂を溶解できるものであれば特に限定されないが、例えば、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンnの等ケトン系溶媒;n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素系溶媒;等が挙げられる。
【0108】
上述のようにして作製した電磁波吸収層20の一方の面20aに、上記組成物を塗布し、得られた塗膜を加熱して、硬化させ、電磁波吸収層20上に保護層50を形成する。
組成物の塗布方法は特に限定されない。塗布方法としては、例えば、スクリーン印刷、グラビア印刷、インクジェット方式等の印刷法を用いた方法が挙げられる。
【0109】
剥離フィルムの剥離処理面上に、上記組成物を塗布し、得られた塗膜を乾燥して、接着剤層を形成する。この接着剤層上に、もう1枚の剥離フィルムの剥離処理面を貼り合わせて接着シートを得る。
次に、接着シートの剥離フィルムの一方を剥離して、電磁波吸収層20の他方の面20bに、露出した接着シートの一方の面を貼付する。
【0110】
次に、接着シートの剥離フィルムのもう一方を剥離して、露出した接着シートの他方の面に、スペーサ層40となる材料を貼付する。
次に、スペーサ層40の他方の面40bに、スペーサ層40の場合と同様に、上記接着シートを介して、反射層30となる材料を貼付する。
以上の方法により、電磁波吸収10を得る。
【0111】
以上説明したように、本実施形態の電磁波吸収体10にあっては、電磁波吸収層20と、電磁波吸収層20の裏面20b側に配置される反射層30と、電磁波吸収層20と反射層30の間に配置されるスペーサ層40と、電磁波吸収層20の表面20aに形成される保護層50と、を備え、電磁波吸収層20は周波数選択表面からなり、保護層50は、変性ポリオレフィン樹脂および反応性基を有するポリフェニレンエーテル樹脂を含む組成物の硬化物から構成される。そのため、本実施形態の電磁波吸収体10は、電磁波吸収層20の保護のために設けた保護層50によって、周波数特性の変化が少ない。
本実施形態の電磁波吸収体10は、電磁波吸収層20が、基材21と、基材21上に設けられた電磁波吸収パターン22とを含み、電磁波吸収パターン22が、第1の電磁波吸収パターン61、第2の電磁波吸収パターン62および第3の電磁波吸収パターン63からなる場合、幅広い周波数帯域に対応することができる。
【実施例
【0112】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0113】
[実施例]
厚みが50μmであるPETフィルム上に、図3に示すような第1の電磁波吸収パターン、第2の電磁波吸収パターンおよび第3の電磁波吸収パターンを形成し、図2に示すような実施例の電磁波吸収フィルムを作製した。
第1の電磁波吸収パターン、第2の電磁波吸収パターンおよび第3の電磁波吸収パターンの形状は、図5,7,9にそれぞれ示す十字状とした。第1の電磁波吸収パターン、第2の電磁波吸収パターンおよび第3の電磁波吸収パターンの厚みは、いずれも18μmとした。また、第1の電磁波吸収パターン、第2の電磁波吸収パターンおよび第3の電磁波吸収パターンの材質として、いずれも銅を用いた。
変性ポリオレフィン樹脂(商品名:ユニストールH-200、三井化学社製)100質量部、ポリフェニレンエーテル樹脂(商品名:OPE-2St 1,200、三菱ガス化学社製)50質量部、環状エーテル基含有化合物(商品名:YX8000、三菱ケミカル社製)3質量部、硬化剤(商品名:サンエイドSI-B3、三新化学社製)0.15質量部、およびシランカップリング剤(商品名:KBM-4803、信越化学社製)0.2質量部をトルエンに溶解し、接着剤組成物を調製した。
電磁波吸収フィルムの一方の面に、電磁波吸収パターンを覆うように、上記接着剤組成物を塗布し、得られた塗膜を160℃で1時間加熱して、硬化させ、電磁波吸収フィルム上に、電磁波吸収パターンを覆う保護層を形成した。
剥離フィルム(第1剥離フィルム、商品名:SP-PET752150、リンテック社製)の剥離処理面上に、上記接着剤組成物を塗布し、得られた塗膜を100℃で2分間乾燥し、厚みが15μmの接着剤層を形成した。この接着剤層上に、もう1枚の剥離フィルム(第2剥離フィルム、商品名:SP-PET381130、リンテック社製)の剥離処理面を貼り合わせて接着シートを得た。
接着シートの第1剥離フィルムを剥離して、電磁波吸収フィルムの他方の面に、露出した接着シートの一方の面を貼付した。
接着シートの第2剥離フィルムを剥離して、露出した接着シートの他方の面に、スペーサ層として発泡ウレタン材(商品名:ポロンHH-48、厚み2mm、ロジャース・イノアックコーポレーション社製)を貼付した。
次に、スペーサ層の他方の面(電磁波吸収フィルムとは反対側の面)に、上記接着シートを介して、反射層として電解銅箔(商品名:CF-V9S-SV、厚み18μm、福田金属粉工業社製)を貼付した。
以上の工程により、実施例の電磁波吸収体を得た。
【0114】
[比較例]
上記接着剤組成物を用いて保護層を形成する代わりに、粘着剤付きフィルム(商品名:PET25PLシン、厚み43μm、基材:PETフィルム、基材厚さ:25μm、粘着剤:アクリル系粘着剤、リンテック社製)を保護層として用いた。粘着剤付きフィルムを電磁波吸収フィルムの一方の面に、電磁波吸収パターンを覆うように貼り付けて、保護層50を形成した。
こと以外は、実施例と同様にして、比較例の電磁波吸収体を得た。
【0115】
[評価]
「電磁波吸収性の評価」
実施例および比較例で得られた電磁波吸収体について、75GHz~85GHzの帯域でベクトルネットワークアナライザを用いたフリースペース法にて、電磁波の反射特性(S11)を取得し、これを反射減衰(吸収)量として評価した。例えば、全反射の場合、減衰なしで0dBとし、一部反射の場合、90%減衰で-10dB、99%減衰で-20dBとした。
なお、保護層を設けていないこと以外は実施例と同様にして作製した電磁波吸収体を参考例とした。
結果を表1および図11図13に示す。図11は、参考例の電磁波吸収体の反射減衰量を測定した結果を示す図である。図12は、実施例の電磁波吸収体の反射減衰量を測定した結果を示す図である。図13は、比較例の電磁波吸収体の反射減衰量を測定した結果を示す図である。
【0116】
【表1】
【0117】
表1および図11図13に示す結果から、実施例の電磁波吸収体は、参考例の電磁波吸収体に対して、周波数のピークのずれがわずかであり、反射減衰量がほぼ同等であった。すなわち、実施例の電磁波吸収体は、保護層を有するものの、参考例の電磁波吸収体に対して、周波数特性の変化が少ないことが確認された。
一方、比較例の電磁波吸収体は、参考例の電磁波吸収体に対して、周波数のピークのずれが大きく、反射減衰量が少なくなった。すなわち、比較例の電磁波吸収体は、PETフィルムを保護層として設けたことにより、参考例の電磁波吸収体に対して、周波数特性の変化が大きくなったことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明の電磁波吸収体は、自動車用部品、道路周辺部材、建築外壁関連材、窓、通信機器、電波望遠鏡等に用いることができる。
【符号の説明】
【0119】
10 電磁波吸収体
20 電磁波吸収層
21 基材
22 電磁波吸収パターン
30 反射層
40 スペーサ層
50 保護層
61 第1の電磁波吸収パターン
62 第2の電磁波吸収パターン
63 第3の電磁波吸収パターン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13