(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】動作方法、ロボットシステム、制御装置、教示方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B25J 9/22 20060101AFI20240321BHJP
【FI】
B25J9/22 Z
(21)【出願番号】P 2020172616
(22)【出願日】2020-10-13
【審査請求日】2023-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】岡田 健志
【審査官】杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-093364(JP,A)
【文献】特開2017-013167(JP,A)
【文献】特開昭63-272479(JP,A)
【文献】特開2009-226561(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 ~ 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標位置までの計画経路を示す情報を取得するステップと、
前記計画経路を基準とする第1許容範囲を示す情報と、
前記計画経路を基準とする前記第1許容範囲より小さい第2許容範囲を示す情報と、を取得する取得ステップと、
ロボットアームの基準位置と前記目標位置との離間の度合を示す所定のパラメータが所定の閾値以上である場合、前記基準位置
が前記第1許容範囲内に配置されるように前記ロボットアームを移動させる第1移動ステップと、
前記所定のパラメータが前記所定の閾値未満である場合、前記基準位置
が前記第2許容範囲内に配置されるように前記ロボットアームを移動させる第2移動ステップと、を含む動作方法。
【請求項2】
前記所定のパラメータは、前記目標位置と前記基準位置との差分である、請求項1に記載の動作方法。
【請求項3】
前記差分は、角度情報、又は位置情報である、請求項2に記載の動作方法。
【請求項4】
前記所定のパラメータは、前記計画経路において前記目標位置に対応付けられた到着予定時刻と、現在時刻との差分である、請求項1に記載の動作方法。
【請求項5】
前記第1移動ステップ及び/又は前記第2移動ステップは、前記ロボットアームの基準位置の速度を減少させる、請求項1から4のいずれか一項に記載の動作方法。
【請求項6】
前記ロボットアームは、柔軟性を備えた駆動機構を備える、請求項1から5のいずれか一項に記載の動作方法。
【請求項7】
前記ロボットアームは、対象物を保持可能な保持機構を更に備える、請求項6に記載の動作方法。
【請求項8】
ロボットアームと、
前記ロボットアームを制御する制御装置と、を備えるロボットシステムであって、
前記制御装置は、
目標位置までの計画経路を示す情報を取得する手段と、
前記計画経路を基準とする第1許容範囲を示す情報と、
前記計画経路を基準とする前記第1許容範囲より小さい第2許容範囲を示す情報と、を取得する取得手段と、
ロボットアームの基準位置と前記目標位置との離間の度合を示す所定のパラメータが所定の閾値以上である場合、前記基準位置
が前記第1許容範囲内に配置されるように前記ロボットアームを移動させる第1移動手段と、
前記所定のパラメータが前記所定の閾値未満である場合、前記基準位置
が前記第2許容範囲内に配置されるように前記ロボットアームを移動させる第2移動手段と、を備える、ロボットシステム。
【請求項9】
ロボットアームを制御する制御装置であって、
目標位置までの計画経路を示す情報を取得する手段と、
前記計画経路を基準とする第1許容範囲を示す情報と、
前記計画経路を基準とする前記第1許容範囲より小さい第2許容範囲を示す情報と、を取得する取得手段と、
ロボットアームの基準位置と前記目標位置との離間の度合を示す所定のパラメータが所定の閾値以上である場合、前記基準位置
が前記第1許容範囲内に配置されるように前記ロボットアームを移動させる第1移動手段と、
前記所定のパラメータが前記所定の閾値未満である場合、前記基準位置
が前記第2許容範囲内に配置されるように前記ロボットアームを移動させる第2移動手段と、を備える、制御装置。
【請求項10】
ロボットアームと、
前記ロボットアームを制御する制御装置とを備えるロボットシステムに動作教示する教示方法であって、
目標位置までの計画経路を示す情報を取得するステップと、
前記計画経路を基準とする第1許容範囲を示す情報と、
前記計画経路を基準とする前記第1許容範囲より小さい第2許容範囲を示す情報と、を取得する取得ステップと、
ロボットアームの基準位置と前記目標位置との離間の度合を示す所定のパラメータが所定の閾値以上である場合、前記基準位置
が前記第1許容範囲内に配置されるように前記ロボットアームを移動させる第1移動ステップと、
前記所定のパラメータが前記所定の閾値未満である場合、前記基準位置
が前記第2許容範囲内に配置されるように前記ロボットアームを移動させる第2移動ステップと、
を前記ロボットシステムに実行させるための教示を行う、教示方法。
【請求項11】
コンピュータに、
目標位置までの計画経路を示す情報を取得するステップと、
前記計画経路を基準とする第1許容範囲を示す情報と、
前記計画経路を基準とする前記第1許容範囲より小さい第2許容範囲を示す情報と、を取得する取得ステップと、
ロボットアームの基準位置と前記目標位置との離間の度合を示す所定のパラメータが所定の閾値以上である場合、前記基準位置
が前記第1許容範囲内に配置されるように前記ロボットアームを移動させる第1移動ステップと、
前記所定のパラメータが前記所定の閾値未満である場合、前記基準位置
が前記第2許容範囲内に配置されるように前記ロボットアームを移動させる第2移動ステップと、を実行させるためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動作方法、ロボットシステム、制御装置、教示方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、産業ロボットの分野では、作業者が所望する動作を精度高く実現することのできるロボットの技術が発展してきている。当該分野では、例えば、ロボットに対して動作範囲を教示し、当該動作範囲内でロボットを移動させることなどが行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ロボットの教示プログラムに含まれる複数の教示点のそれぞれについて、ロボットの位置姿勢を示す複数のパラメータのうちの1個又は複数個を変化させて、ロボットの各関節の動作範囲内で教示点から連続して動作可能な領域を示す動作余裕量を計算し、これを数値で定量的に表示することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ロボットアームの動作に関して、ロボットアームの基準位置を所定の許容範囲内に収まるようにロボットアームを移動させることが考えられる。この点、ロボットアームが目標位置から比較的遠い位置にある場合には、ロボットアームの移動に対してそこまで高い精度は求められないため、当該許容範囲は大きくてもよい場合が多い。その一方、ロボットアームが目標位置から比較的近い位置にある場合には、ロボットアームの移動に対して高い精度が求められるため、当該許容範囲は小さくしたい場合が多い。
【0006】
そこで本発明は、ロボットアームの移動における許容範囲を適切に設定することを容易にする動作方法、ロボットシステム、制御装置、教示方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、ロボットアームの動作方法を提供する。この動作方法は、目標位置までの計画経路を示す情報を取得するステップと、第1許容範囲を示す情報と、第1許容範囲より小さい第2許容範囲を示す情報と、を取得する取得ステップと、ロボットアームの基準位置と目標位置との離間の度合を示す所定のパラメータが所定の閾値以上である場合、基準位置が計画経路に対して第1許容範囲内に配置されるようにロボットアームを移動させる第1移動ステップと、所定のパラメータが所定の閾値未満である場合、基準位置が計画経路に対して第2許容範囲内に配置されるようにロボットアームを移動させる第2移動ステップと、を含む。
【0008】
これによれば、ロボットアームの基準位置と目標位置との離間の度合を示す所定のパラメータが所定の閾値以上である場合に、基準位置が計画経路に対して第1許容範囲内に配置されるようにロボットアームを移動させることが可能となり、当該所定のパラメータが所定の閾値未満である場合、基準位置が計画経路に対して第2許容範囲内に配置されるようにロボットアームを移動させることが可能となる。そのため、ロボットアームの移動における許容範囲を適切に設定することが可能となる。
【0009】
本開示は、ロボットシステムを提供する。このロボットシステムは、ロボットアームと、ロボットアームを制御する制御装置と、を備えるロボットシステムであって、制御装置は、目標位置までの計画経路を示す情報を取得する手段と、第1許容範囲を示す情報と、第1許容範囲より小さい第2許容範囲を示す情報と、を取得する取得手段と、ロボットアームの基準位置と目標位置との離間の度合を示す所定のパラメータが所定の閾値以上である場合、基準位置が計画経路に対して第1許容範囲内に配置されるようにロボットアームを移動させる第1移動手段と、所定のパラメータが所定の閾値未満である場合、基準位置が計画経路に対して第2許容範囲内に配置されるようにロボットアームを移動させる第2移動手段と、を備える。
【0010】
本開示は、制御装置を提供する。この制御装置は、ロボットアームを制御する制御装置であって、目標位置までの計画経路を示す情報を取得する手段と、第1許容範囲を示す情報と、第1許容範囲より小さい第2許容範囲を示す情報と、を取得する取得手段と、ロボットアームの基準位置と目標位置との離間の度合を示す所定のパラメータが所定の閾値以上である場合、基準位置が計画経路に対して第1許容範囲内に配置されるようにロボットアームを移動させる第1移動手段と、所定のパラメータが所定の閾値未満である場合、基準位置が計画経路に対して第2許容範囲内に配置されるようにロボットアームを移動させる第2移動手段と、を備える。
【0011】
本開示は、教示方法を提供する。この教示方法は、ロボットアームと、ロボットアームを制御する制御装置とを備えるロボットシステムに動作教示する教示方法であって、目標位置までの計画経路を示す情報を取得するステップと、第1許容範囲を示す情報と、第1許容範囲より小さい第2許容範囲を示す情報と、を取得する取得ステップと、ロボットアームの基準位置と目標位置との離間の度合を示す所定のパラメータが所定の閾値以上である場合、基準位置が計画経路に対して第1許容範囲内に配置されるようにロボットアームを移動させる第1移動ステップと、所定のパラメータが所定の閾値未満である場合、基準位置が計画経路に対して第2許容範囲内に配置されるようにロボットアームを移動させる第2移動ステップと、をロボットシステムに実行させるための教示を行う。
【0012】
本開示は、コンピュータプログラムを提供する。このコンピュータプログラムは、コンピュータに、目標位置までの計画経路を示す情報を取得するステップと、第1許容範囲を示す情報と、第1許容範囲より小さい第2許容範囲を示す情報と、を取得する取得ステップと、ロボットアームの基準位置と目標位置との離間の度合を示す所定のパラメータ が所定の閾値 以上である場合、基準位置が計画経路に対して第1許容範囲内に配置されるようにロボットアームを移動させる第1移動 ステップと、所定のパラメータが所定の閾値未満である場合、基準位置が計画経路に対して第2許容範囲内に配置されるようにロボットアームを移動させる第2移動ステップと、を実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】ロボットシステム100の機能ブロック図である。
【
図2A】嵌合物を保持するロボットアーム20を側面から見た模式図である。
【
図2B】嵌合物を保持するロボットアーム20を上面から見た模式図である。
【
図3A】ロボットアーム20の並進移動を説明するための模式図である。
【
図3B】ロボットアーム20の回転移動を説明するための模式図である。
【
図5】ロボットシステム100に動作教示を行うためのプロセスを示すフローチャートである。
【
図6】ロボットシステム100の動作方法を示すフローチャートである。
【
図7】ロボットシステム100の移動処理の動作方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をその実施形態のみに限定する趣旨ではない。
【0015】
図1は、ロボットシステム100の機能ブロック図である。
図2A及び
図2Bは、ロボットアーム20によってインサート部品Wである対象物を金型Mである目的物に嵌合する様子を側面視及び上面視で示す模式図である。インサート部品Wは、例えば、円板状に形成されている。金型Mに形成される円筒状の凹部は、例えば、インサート部品Wの直径よりも僅かに大きく(例えば、50μm大きく)形成されている。
【0016】
ロボットシステム100は、ロボットアーム20と、ロボットアーム20を制御する制御装置10とを備えている。本実施形態に係るロボットシステム100は、嵌合物(「対象物」の一例)であるインサート部品Wを保持し、この嵌合物を嵌合対象物(「目的物」の一例)である金型Mの組付け部位に組み付ける嵌合動作を実行する。但し、本発明は、ロボットアーム20を移動させる動作を含む動作一般に適用することが可能である。
【0017】
ロボットアーム20は、例えば、対象物を保持し、これを目的物(組付け部位等)に接触させる動作を含む動作を行う。ロボットアーム20は、特に、対象物を目的物に対して倣わせることが可能である。ここで、「対象物を目的物に対して倣わせる」とは、対象物を目的物に接触させながら、対象物を目的物に対して相対的に移動させることをいう。相対的に移動させることは、目的物に対して対象物を相対的に並進移動させることに限られず、目的物に対して対象物を相対的に回転移動させることを含む。
【0018】
図3Aは、ロボットアーム20が目的物に対して対象物を相対的に並進移動させる態様を示した模式図である。同図において、ロボットアーム20の基準位置が目標位置に一致している場合におけるエンドエフェクタ20E及びこれに保持される対象物が、破線で示されている。一方で、ロボットアーム20の基準位置が目標位置から離間している場合におけるエンドエフェクタ20E及びこれに保持される対象物が、実線で示されている。破線で示されるように、ロボットアーム20の基準位置が目標位置に一致している場合において、エンドエフェクタ20Eに保持される対象物(インサート部品W)は、目的物(金型M)と干渉する。しかしながら、実際は、目的物が存在するために、対象物の端部が目的物の表面と接触する。変位量D1は、直列弾性アクチュエータ20Dの弾性体20DEが弾性変形した量に相当する。このとき、変位量及びばね定数に基づいた力が、対象物から目的物に作用する。
【0019】
図3Bは、ロボットアーム20が目的物に対して対象物を相対的に回転移動させる態様を示した模式図である。同図において、ロボットアーム20の基準位置が目標位置に一致している場合におけるエンドエフェクタ20E及びこれに保持される対象物が、破線で示されている。一方で、ロボットアーム20の基準位置が目標位置から離間している場合におけるエンドエフェクタ20E及びこれに保持される対象物が、実線で示されている。破線で示されるように、ロボットアーム20の基準位置が目標位置に一致している場合において、エンドエフェクタ20Eに保持される対象物(インサート部品W)は、目的物(金型M)と干渉する。しかしながら、実際は、目的物が存在するために、対象物の側面が目的物の表面と接触する。変位量D2は、直列弾性アクチュエータ20Dの弾性体20DEが弾性変形した量に相当する。このとき、変位量及びばね定数に基づいた力が、対象物から目的物に作用する。
【0020】
図1、
図2A、及び
図2Bに戻る。ロボットアーム20は、例えば、垂直多関節ロボットであり、ベースと、複数のリンク20Lと、各リンク20Lを接続するジョイント20Jと、対象物を可動プレート20E1及び20E2で挟むことにより保持可能なエンドエフェクタ20Eと、一又は複数の駆動部20Aと、一又は複数の直列弾性アクチュエータ20Dとを備える。複数のリンク20Lは、例えば、胴部に対して回動可能に取り付けられた下腕部に相当するリンク20Lと、下腕部に対して回動可能に取り付けられた上腕部に相当するリンク20Lと、上腕部に対して回動可能に取り付けられた手首部に相当するリンク20Lとを含む。例えば、上腕部に相当するリンク20Lと下腕部に相当するリンク20Lの間のジョイント20Jには、下腕部に相当するリンク20Lを駆動する直列弾性アクチュエータ20Dが搭載されている。なお、ロボットアーム20は、垂直多関節ロボットに限られることはなく、例えば、水平多関節型ロボット装置、パラレルリンク型ロボット装置であってもよい。
【0021】
リンク20Lは、剛性を有する部材から構成されており、例えば、ベースに対して回動可能に取り付けられた胴部に相当するリンク20Lと、胴部に対して回動可能に取り付けられた下腕部に相当するリンク20Lと、下腕部に対して回動可能に取り付けられた上腕部に相当するリンク20Lと、上腕部に対して回動可能に取り付けられた手首部に相当するリンク20Lとを備える。
【0022】
エンドエフェクタ20E(「保持機構」の一例)は、対象物を保持する機能を有する。エンドエフェクタ20Eは、手首部に相当するリンク20Lの先端に取り付けられており、例えば、アクチュエータによって開閉する可動プレート20E1及び20E2によって対象物を挟んで保持可能に構成されている。但し、エンドエフェクタ20Eは、これに限られるものではなく、例えば、対象物の表面を保持するための複数の吸着パッドと制御装置10から送信される制御信号に基づいて吸着パッドに負圧を発生させるアクチュエータを備えるものや、或いは、電磁力で対象物を保持するものであってもよい。
【0023】
本実施形態に係るロボットアーム20は、リンク20L同士を接続する少なくとも一つのジョイント20Jに設けられた直列弾性アクチュエータ20Dを備えている。直列弾性アクチュエータ20Dは、柔軟性を備えた駆動機構の一例である。「柔軟性を備えた」とは、弾性、粘性又は弾性及び粘性を備えていることをいう。弾性とは、応力を加えると変形し、応力を除去すると元に戻る性質をいい、弾性変形のしやすさを示す可撓性という言葉で表現される場合もある。粘性とは、流体の流動速度を一様化する応力を生じさせる性質をいう。柔軟性を備えた駆動機構は、柔軟性を付与するための、例えば、磁性流体、機械ばね、空気ばね、磁力ばね及びベーンモータの何れか一つを少なくとも備えてもよい。
【0024】
直列弾性アクチュエータ20Dは、例えば、駆動部20DAと、駆動部20DAに接続される弾性体20DEと、センサ20DSとから構成される。駆動部20DAは、例えば、サーボモータから構成される。弾性体20DEは、例えば、機械ばねから構成される。直列弾性アクチュエータ20Dにおいて駆動部20DAから出力される動力は、弾性体20DEを介して、出力側のリンク20Lに伝達し、これを回動させる。
【0025】
センサ20DSは、例えば機械ばねの変位量を取得することにより、ロボットアーム20の基準となる位置(以下、「基準位置」という。)を検知し、当該基準位置を示す情報を制御装置10に供給する。ロボットアーム20の基準位置は、ロボットアーム20の任意の部位の位置であってもよい。基準位置の単位は、当該基準位置に対応するロボットアーム20の部位の態様に応じた任意の形式であってもよい。例えば、基準位置はロボットアーム20を構成するリンク20Lであってもよく、この場合、基準位置は角度情報として表現されることができる。或いは、基準位置はロボットアーム20の手先位置(例えば、エンドエフェクタ20Eのセンターポイント)であってよく、この場合、基準位置は三次元位置情報として表現されることができる。
【0026】
以上のような構成の下、柔軟性を備えた駆動機構に相当する直列弾性アクチュエータ20Dによって駆動される部分の慣性、質量及び長さ、外力並びに弾性体20DEである機械ばねのばね定数をパラメータとする運動方程式が成立する。このため、制御装置10は、機械ばねのばね定数及び変位量に基づいて、インピーダンスを制御するメカニカル・コンプライアンス制御を行うように構成される。
【0027】
なお、直列弾性アクチュエータ20Dは、駆動部20DAであるサーボモータの駆動軸に接続され、動力を機械ばねに伝達するギヤを備えていてもよい。更に、直列弾性アクチュエータ20Dは、粘性に基づいて衝撃を緩和させるダンパ機構及び動力の伝達をスイッチするためのクラッチ機構を備えてもよい。粘性を有するダンパ機構等の粘性体を付与する場合、運動方程式には、粘性定数がパラメータとして加えられる。例えば、粘性定数にリンク角度の時間変化を乗じた値をトルクとして考慮された運動方程式が成立する。
【0028】
直列弾性アクチュエータ20Dによって駆動されるリンク20L以外のリンク20Lは、例えば、サーボモータから構成される駆動部20Aによって駆動される。駆動部20Aは、出力側のリンク20Lを駆動軸回りに回動させる。駆動部20Aは、リンク20Lに内蔵されていてもよい。以上のような構成により、複数のリンク20Lを回動させることが可能になるため、リンク20Lの先端に相当するエンドエフェクタ20Eの位置を変化させることが可能となる。なお、本開示における位置を示す情報は、合理的に必要と考えられる場合、姿勢を示す情報を含む場合がある。
【0029】
図1に示すとおり、制御装置10は、例えば、開始位置取得部10Aと、目標位置取得部10Bと、計画経路取得部10Cと、許容範囲取得部10Dと、制御命令取得部10Eと離間パラメータ算出部10Fと、離間判定部10Gと、許容範囲判定部10Hと、を備える。
【0030】
開始位置取得部10Aは、例えば、制御装置10に接続される教示装置50から入力された開始位置を取得する。ここで、「開始位置」は、ロボットアーム20の移動における、ロボットアーム20の基準位置の開始位置であってもよい。開始位置取得部10Aは、例えば、制御装置10に接続される教示装置50から入力された開始位置を取得する。教示装置50は、現場で実際にロボットアーム20を動かしてその時の基準位置を開始位置として教示するオンラインティーチングに従う教示装置50でもよいし、コンピュータプログラムによって基準位置を開始位置として教示する、テキスト型、シミュレータ型、エミュレータ型、又は、自動ティーチング型等のオフラインティーチングに従う教示装置50でもよい。
【0031】
目標位置取得部10Bは、例えば、教示装置50から入力された目標位置を取得する。ここで、「目標位置」は、ロボットアーム20の移動における、ロボットアーム20の基準位置の最終的な目標の位置であってもよい。目標位置の単位は、基準位置に応じた任意の形式であってもよい。例えば、ロボットアーム20の基準位置がロボットアーム20を構成するリンク20Lの場合、目標位置は角度情報として表現されることができる。例えば、ロボットアーム20の基準位置が手先位置(例えば、エンドエフェクタ20Eのセンターポイント)の場合、目標位置は三次元位置情報として表現されることができる。
【0032】
計画経路取得部10Cは、例えば、教示装置50から入力された計画経路を取得する。ここで、「計画経路」は、ロボットアーム20の移動における、ロボットアーム20の基準位置の開始位置から目標位置までの目標の経路であってもよい。なお、「計画経路」に含まれる少なくとも1点は、ロボットアーム20の基準位置が当該少なくとも1点に到着する予定の時刻である到着予定時刻に対応付けられていてもよい。特に、計画経路は、上述した目標位置(ロボットアーム20の基準位置の最終的な目標の位置)に対応付けられた到着予定時刻を含んでもよい。
【0033】
許容範囲取得部10Dは、例えば、教示装置50から入力された許容範囲を取得する。ここで、「許容範囲」は、計画経路を基準とする所定の範囲であって、ロボットアーム20の移動においてロボットアーム20の基準位置が計画経路から離間することが許容される範囲であってもよい。ロボットアームの基準位置が許容範囲に含まれる場合及び許容範囲に含まれない場合のそれぞれにおけるロボットアームの動作制御の方法は、任意に設定することができる。例えば、許容範囲に含まれない場合、許容範囲に含まれるように(例えば、計画経路等の所定の経路に近づけるように)ロボットアームを制御してもよい。
【0034】
ここで、ロボットアーム20の基準位置が目標位置から遠い場合は、ロボットアーム20の移動に対して求められる精度は比較的低くても許容される場合が多い。一方、ロボットアーム20の基準位置が目標位置に近い場合は、ロボットアーム20の移動に対して比較的高い精度が求められると言える。そこで、本実施形態に係るロボットシステム100では、ロボットアーム20の基準位置と目標位置との離間の度合を示す所定のパラメータ(以下、「離間パラメータ」という場合がある。)に基づいて、「許容範囲」が規定されてもよい。
【0035】
第1の例として、離間パラメータは、例えば、目標位置(ロボットアーム20の移動における、ロボットアーム20の基準位置の最終的な目標の位置)とロボットアーム20の基準位置との差分であってもよい。この場合、離間パラメータの単位は、目標位置及び基準位置に応じた任意の形式であってもよい。例えば、ロボットアーム20の基準位置がロボットアーム20を構成するリンク20Lの場合、目標位置及び基準位置がそれぞれ角度情報として表されることに応じて離間パラメータも角度情報として表されてもよい。また、例えば、ロボットアーム20の基準位置が手先位置(例えば、エンドエフェクタ20Eのセンターポイント)の場合、目標位置及び基準位置がそれぞれ三次元位置情報として表されることに応じて離間パラメータも角度情報として表されてもよい。第2の例として、離間パラメータは、例えば、計画経路において目標位置に対応付けられた到着予定時刻と、現在時刻との差分であってもよい。この場合、離間パラメータの単位は時間として表されてもよい。
【0036】
上述したとおり、本実施形態に係るロボットシステム100では、離間パラメータに基づいて「許容範囲」が設定されてもよい。例えば、離間パラメータが所定閾値以上である場合、ロボットアーム20の移動について「第1許容範囲」が設定されてもよい。また、離間パラメータが所定閾値未満である場合、ロボットアーム20の移動について「第2許容範囲」が設定されてもよい。ここで、「第1許容範囲>第2許容範囲」であってもよい。
【0037】
ここで、
図4を参照して、許容範囲について説明する。同図には、横軸を時間とし、縦軸をロボットアーム20の基準位置とするグラフが示されている。同図では、一例として、ロボットアーム20の基準位置が、直列弾性アクチュエータ20Dによって駆動されるリンク20Lの角度に設定されているものとする。符号Pが付された曲線は、ロボットアーム20の基準位置についての計画経路である。計画経路Pは、目標時刻t1における角度α1の開始位置Sから、到着予定時刻t3における角度α3の目標位置Gまで、時間と共に徐々に角度が増加するように規定されている。更に、計画経路Pは、時刻t3から時刻t4までの静定期間を含んでもよい。符号Aが付された曲線は、ロボットアーム20の基準位置(直列弾性アクチュエータ20Dによって駆動されるリンク20Lの角度)の実際の軌跡の一例を示している。
【0038】
例えば、離間パラメータが、上述した第1の例のように目標位置G(角度α3)とロボットアーム20の基準位置との差分として設定される場合、離間パラメータに対する閾値Caは目標位置Gと所定の位置との差分として規定されてもよい。この場合、例えば当該所定の位置を、
図4において角度α2及び時刻t2に対応付けられた位置Tとすると、閾値Caは「Ca=α3-α2」として規定される。なお、位置Tは特に限定されず、任意に設定可能である。
【0039】
例えば、離間パラメータが、上述した第2の例のように計画経路において目標位置Gに対応付けられた到着予定時刻t3と、現在時刻との差分として設定される場合、離間パラメータに対する閾値Ctは目標位置Gに対応付けられた到着予定時刻t3と所定の位置に対応付けられた到着予定時刻との差分として規定されてもよい。この場合、例えば当該所定の位置を、
図4において角度α2及び時刻t2に対応付けられた位置Tとすると、閾値Ctは「Ct=t3-t2」として規定される。なお、位置Tは特に限定されず、任意に設定可能である。
【0040】
図4では、ロボットアーム20の基準位置が開始位置Sの角度α1以上、且つ所定の角度α2以下の範囲(時刻t1以後、且つ所定の時刻t2以前の範囲)において、計画経路Pを中心とする±β1の範囲に第1許容範囲が設定されている。また、ロボットアーム20の基準位置が角度α2より大きく、且つ目標位置Gの角度α3以下の範囲(時刻t2より後、且つ時刻t3以前の範囲)において、計画経路Pを中心とする±β2の範囲に第2許容範囲が設定されている。ここで、β1>β2であるものとする。
【0041】
図4に示すグラフAでは、時刻t11において、ロボットアーム20の基準位置が第1許容範囲を超えた角度となっている。この場合、制御装置10は、ロボットアーム20の基準位置が計画経路Pに対して第1許容範囲内に配置されるように、ロボットアーム20を移動させる。例えば、制御装置10は、リンク20Lの回転速度及び対象物の移動速度を減少させて、リンク20Lの角度が第1許容範囲内に収まるように制御する。なお、ロボットアーム20の基準位置が第2許容範囲を超えた角度となっている場合についても同様に、制御装置10は、ロボットアーム20の基準位置が計画経路Pに対して第2許容範囲内に配置されるように、ロボットアーム20を移動させてもよい。
【0042】
上述したβ1及びβ2はそれぞれ、直列弾性アクチュエータ20Dの弾性体20DEのばね定数等に基づいて、弾性変形可能な範囲として予め設定可能な角度単位の情報である。複数方向に対して柔軟性を有するために、ロボットアーム20が複数の直列弾性アクチュエータ20Dを備える場合、直列弾性アクチュエータ20Dに駆動される複数のリンク20Lごとに許容範囲(第1許容範囲と第2許容範囲との組)を設定してもよい。
【0043】
なお、
図4では、第1許容範囲及び第2許容範囲についてはいずれも、計画経路Pを基準とする上限幅(+β1、及び+β2)と下限幅(-β1、及び-β2)とが同一であるものとして説明した。しかしながら、上限幅(上限値)と下限幅(下限値)とは異なっていてもよい。この場合、「第1許容範囲が第2許容範囲より大きい」は、「第1許容範囲の上限幅と下限幅との和(上限値と下限値との差分)が、第2許容範囲の上限幅と下限幅との和(上限値と下限値との差分)より大きい」と読み替えることができる。
【0044】
なお、
図4では、ロボットアーム20の1つの基準位置に対して許容範囲が2つ(第1許容範囲及び第2許容範囲)のみ設定される場合を例に説明した。しかしながら、許容範囲の数は、2つに限らず、3つ以上であってもよい。その場合、上述した離間パラメータの大きさに応じて、各許容範囲の大きさを異なるものとしてもよい。例えば、離間パラメータが大きくなる程(ロボットアーム20の基準位置が目標位置から離間する程)、許容範囲が大きくなるように各許容範囲を設定してもよい。
【0045】
許容範囲(第1許容範囲及び第2許容範囲等)を示す情報は、後述する不揮発性記憶素子に格納されるコンピュータプログラム内において、予め、駆動機構が備える弾性又は粘性に基づく定数として定められることができる。従って、制御装置10の演算素子がコンピュータプログラムを読み出すことにより、許容範囲を示す情報は、取得されるように構成されてもよい。或いは、制御装置10は、教示装置50から、許容範囲を示す情報を取得してもよい。
【0046】
図1、
図2A、及び
図2Bに戻る。制御命令取得部10Eは、ロボットアーム20の基準位置を計画経路取得部10Cによって取得された計画経路に従って移動させるための制御命令を演算処理等により取得する。例えば、制御命令取得部10Eは、逆運動学演算(インバースキネマティクス)により、基準位置が計画経路上に位置するための各サーボモータの回転角度を算出し、これに基づいて制御命令を生成して、不揮発性記憶素子に格納することが可能である。制御命令の内容は、ロボットアーム20の基準位置が、計画経路に対して許容範囲(第1許容範囲及び第2許容範囲等)内にあるか否かに応じて異なっていてもよい。例えば、計画経路に対して許容範囲(第1許容範囲及び第2許容範囲等)外にあると判定された場合、制御命令は、ロボットアーム20の基準位置が当該許容範囲(第1許容範囲及び第2許容範囲等)内に配置されるようにロボットアーム20を移動させるものであってもよい。
【0047】
離間パラメータ算出部10Fは、上述した離間パラメータ(ロボットアーム20の基準位置と目標位置との離間の度合を示す所定のパラメータ)を算出する。例えば、離間パラメータが目標位置とロボットアーム20の基準位置との差分として規定される場合、離間パラメータ算出部10Fは、目標位置取得部10Bが取得した目標位置と、ロボットアーム20のセンサ20DSにより供給される基準位置との差分を、離間パラメータとして算出する。また、例えば、離間パラメータが計画経路において目標位置に対応付けられた到着予定時刻と現在時刻との差分として規定される場合、離間パラメータ算出部10Fは、計画経路取得部10Cが取得した計画経路に含まれる目標位置に対応付けられた到着予定時刻(ロボットアーム20の基準位置が目標位置に到着する予定の時刻)と、例えば不図示の内部クロックから供給される現在時刻との差分を、離間パラメータとして算出する。
【0048】
離間判定部10Gは、例えば、離間パラメータに基づいて、ロボットアーム20の基準位置と目標位置との離間の度合に関する判定を行う。具体的には、離間判定部10Gは、離間パラメータ算出部10Fが算出した離間パラメータを、所定の閾値と比較する。ここで、所定の閾値は、例えば
図4を参照して説明した閾値Cのように、ロボットアーム20の移動についての許容範囲を区画するための閾値であってよく、不揮発性記憶素子に格納されていてもよい。所定の閾値は、複数設定されてもよく、これに応じて許容範囲の大きさが各閾値の前後で異なるように設定されてもよい。特に、離間パラメータが大きい程(すなわち、ロボットアーム20の基準位置が目標位置から離間する程)、許容範囲を大きく設定してもよい。すなわち、離間パラメータが小さい程(すなわち、ロボットアーム20の基準位置が目標位置に近接する程)、許容範囲を小さく設定してもよい。
【0049】
許容範囲判定部10Hは、例えば、ロボットアーム20の基準位置が、計画経路に対して許容範囲(第1許容範囲及び第2許容範囲等)内にあるか否かを判定する。具体的には、許容範囲判定部10Hは、ロボットアーム20のセンサ20DSにより供給される基準位置と計画経路との差分を算出した上で、当該差分が許容範囲(第1許容範囲及び第2許容範囲等)内であるか否かを判定する。
【0050】
ハードウェア構成に関し、制御装置10は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphical Processing Unit)等のプロセッサである演算素子と、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性記憶素子と、NORフラッシュメモリ、NANDフラッシュメモリ、HDD(Hard Disc Drive)等の不揮発性記憶素子と、これらを接続するバス等の通信手段を備えるコンピュータから構成することが可能である。不揮発性記憶素子には、例えば、本実施形態に示される各処理を実行するためのコンピュータプログラム(許容範囲を示す情報等のデータを含む)が格納されている。揮発性記憶素子は、これらコンピュータプログラムの少なくとも一部及び演算処理結果等を一時的に記憶する。但し、これら演算素子、不揮発性記憶素子等の少なくとも一部は、インターネット等の通信ネットワークに接続された遠隔地に設置されていてもよい。例えば、演算素子は、通信ネットワークを介して、コンピュータプログラム又は必要なデータを取得するように構成されてもよい。
【0051】
制御装置10とロボットアーム20は、無線又は有線による通信手段によって情報の送受信が可能に構成されている。
【0052】
制御装置10には、ロボットシステム100に動作教示するための教示装置50が接続されてもよい。教示装置50は、例えば、オンラインティーチングを行うための携帯型の教示ペンダントを備える。教示装置50は、制御装置10と同様に、演算素子、揮発性記憶素子、不揮発性記憶素子を備え、更に、ディスプレイを有する表示手段及び複数の操作キー並びにレバーを有する入力手段を備えている。入力手段は、ディスプレイを押圧して入力を行うタッチパネル式の入力手段から構成されてもよい。
【0053】
図5は、ロボットシステム100に動作教示を行うためのプロセスを示すフローチャートである。
【0054】
同図に示されるように、作業者は、手動、又は、教示装置50の入力手段を用いてエンドエフェクタ20Eを移動させることにより、ロボットシステム100に開始位置を教示する(ステップS41)。例えば、エンドエフェクタ20Eが対象物の保持を開始する位置を、開始位置としてもよい。制御装置10は、開始位置に存在するときのエンドエフェクタ20Eの位置、各リンク20Lの角度等を取得し、開始位置に関連付けて不揮発性記憶素子に格納する(ステップS42)。
【0055】
更に、作業者は、エンドエフェクタ20Eに対象物を保持させるための動作を教示し(ステップS43)、制御装置10は、対象物を保持するための動作を不揮発性記憶素子に格納する(ステップS44)。
【0056】
次いで作業者は、手動、又は、教示装置50の入力手段を用いてエンドエフェクタ20Eを複数回にわたって移動させ、そのときのエンドエフェクタ20Eの位置等を制御装置10に取得させることにより、ロボットシステム100に目標位置を教示する(ステップS45)。ここで、対象物が目的物に接触する場面については、例えば
図3A及び
図3Bに示すような対象物が目的物に干渉するようなエンドエフェクタ20Eの位置が、目標位置として教示される。
【0057】
制御装置10は、目標位置に存在するときのエンドエフェクタ20Eの位置、各リンク20Lの角度を取得し、各目標位置に関連付けて記憶素子に格納する(ステップS46)。
【0058】
次いで制御装置10は、第1許容範囲及び第2許容範囲を示す情報を取得する(ステップS47)。ここで、第1許容範囲は、ロボットアーム20の基準位置と目標位置との離間の度合を示す所定のパラメータである離間パラメータが所定閾値以上である場合に、ロボットアーム20の移動について設定される許容範囲であってもよい。すなわち、第1許容範囲は、例えば
図4に示した角度α1以上且つ角度α2以下の範囲(時刻t1以後且つ時刻t2以前の範囲)における、計画経路Pを中心とする±β1の範囲であってよい。また、第2許容範囲は、第1許容範囲より小さい許容範囲であって、離間パラメータが所定閾値未満である場合に、ロボットアーム20の移動について設定される許容範囲であってもよい。離間パラメータが所定閾値未満である場合、ロボットアーム20の移動について「第2許容範囲」が設定されてもよい。すなわち、第2許容範囲は、例えば
図4に示した角度α2より大きく且つ角度α3以下の範囲(時刻t2より後且つ時刻t3以前の範囲)における、計画経路Pを中心とする±β2の範囲であってよい。
【0059】
制御装置10は、開始位置及び目標位置を接続する計画経路を経路生成アルゴリズムに従った演算により取得する。制御装置10は、対象物を目的物に対して倣わせる領域、例えば、
図3Aの場面における目標位置から、
図3Bの場面における目標位置に到達する経路については、対象物が目的物に干渉するような経路を演算により取得する。このように計画経路を取得することにより、対象物を目的物に対して倣わせることが可能になる。
【0060】
但し、変位量が大きすぎると、弾性変形の範囲を超える可能性がある。又、弾性変形の範囲内であっても、変位量が大きすぎると、対象物が目的物を押し付ける力が大きくなりすぎるため、円滑な移動が困難になったり、目的物又は対象物を傷つけたりする可能性がある。このため、制御装置10は、経路と目的物表面との距離が、許容範囲内となるように計画経路を演算する(ステップS48)。
【0061】
その後、制御装置10は、取得した計画経路を不揮発性記憶素子に格納してもよい。具体的には、制御装置10の制御命令取得部10Eは、取得した目標位置及び計画経路に基づいて、ロボットアーム20の各駆動部及び直列弾性アクチュエータ20Dの駆動部を制御するための制御命令を演算により取得し不揮発性記憶素子に格納してもよい。
【0062】
続いて、ロボットシステム100の動作方法を説明する。
図6は、ロボットシステム100の動作方法を示すフローチャートである。
【0063】
まず制御装置10の開始位置取得部10A及び目標位置取得部10Bは、それぞれ、開始位置を示す情報、目標位置を示す情報を取得する(ステップS71)。制御装置10は、これら情報を不揮発性記憶素子から読み出すことにより取得してもよい。制御装置10は、教示装置50からこれら情報を取得してもよい。
【0064】
又、制御装置10の許容範囲取得部10Dは、第1許容範囲及び第2許容範囲を示す情報等を取得する(ステップS72)。制御装置10は、これら情報を不揮発性記憶素子から読み出すことにより取得してもよい。或いは、制御装置10は、開始位置を示す情報及び目標位置を示す情報に基づいて計画経路を演算により取得する際に、目的物表面と基準位置との距離が許容範囲(第1許容範囲及び第2許容範囲)内となるような経路生成アルゴリズムを読み出し、これに基づいて計画経路を取得することにより、許容範囲(第1許容範囲及び第2許容範囲)を示す情報を取得してもよい。
【0065】
制御装置10の計画経路取得部10Cは、目的物表面と基準位置との距離が許容範囲内となるような経路生成アルゴリズムを不揮発性記憶素子から読み出し、これに基づいて開始位置及び目標位置を接続する計画経路を演算により取得する(ステップS73)。制御命令取得部10Eは、取得した目標位置及び計画経路等に基づいて、ロボットアーム20の各駆動部及び直列弾性アクチュエータ20Dの駆動部を制御するための制御命令を演算により取得する(ステップS74)。
【0066】
なお、一連の動作を実現するための駆動部及びエンドエフェクタ20Eのアクチュエータ等を制御する制御命令が不揮発性記憶素子に格納されている場合、制御装置10は、開始位置情報等が反映された制御命令を読み出すことにより、これら情報を取得してもよい。
【0067】
次いでロボットアーム20は、制御装置10から受け取った制御命令に基づいて各リンク20Lを駆動させる。まず、開始位置において、ロボットアーム20のエンドエフェクタ20Eは、対象物を保持する(ステップS75)。
【0068】
その後、ロボットアーム20は、対象物を移動させて、目的物に近づける(ステップS76)。そして、ロボットアーム20は、対象物の端部を目的物の表面に接触させる(ステップS77)。
【0069】
ロボットアーム20は、対象物の端部が目的物の表面に接触した状態を維持したまま、対象物を目的物に対して相対的に移動させることにより、対象物を目的物に対して倣わせる(ステップS78)。例えば、
図3Aに示したように、ロボットアーム20は目的物に対して対象物を相対的に並進移動させてもよいし、
図3Bに示したように、ロボットアーム20は目的物に対して対象物を相対的に回転移動させてもよい。このとき、制御装置10は、離間パラメータの大きさに応じて、ロボットアーム20の基準位置が計画経路に対して第1許容範囲内または第2許容範囲内に配置されるように、ロボットアーム20を移動させる。当該移動処理により、ロボットアーム20の基準位置が目標位置に到達し、例えば対象物が目的物に対して嵌合されると、動作処理は終了する。
【0070】
次に、
図7を参照して、上述したステップS78における移動処理の動作方法について説明する。
【0071】
まず、離間パラメータ算出部10Fは、ロボットアーム20の基準位置と目標位置との離間の度合を示す所定のパラメータである離間パラメータを算出する(S81)。例えば、離間パラメータがロボットアーム20の基準位置と目標位置との差分として規定される場合、離間パラメータ算出部10Fは、ロボットアーム20のセンサ20DSにより供給される基準位置と目標位置取得部10Bが取得した目標位置との差分を、離間パラメータとして算出する。また、例えば、離間パラメータが現在時刻と目標位置に対応付けられた目標時刻との差分として規定される場合、離間パラメータ算出部10Fは、計画経路取得部10Cが取得した計画経路に含まれる目標時刻(目標位置に対応付けられた時刻)と例えば不図示の内部クロックから供給される現在時刻との差分を、離間パラメータとして算出する。
【0072】
次に、離間判定部10Gは、「離間パラメータ<閾値」が満たされるか否かを判定する(S82)。ここで、閾値は、不揮発性記憶素子に格納された、ロボットアーム20の移動についての許容範囲を区画するための閾値であってもよい。具体的には、当該閾値は、例えば
図4に示した閾値Cであってもよい。
【0073】
ステップS82において「離間パラメータ<閾値」が満たされないと判定された場合(S82;No)、許容範囲判定部10Hは、「ロボットアーム20の基準位置≦第1許容範囲」が満たされるか否かを判定する(S83)。そして、「ロボットアーム20の基準位置≦第1許容範囲」が満たされると判定された場合(S83;Yes)、例えば、計画経路にしたがってロボットアーム20の基準位置を目標位置に向けて移動させる(S84)。一方、「ロボットアーム20の基準位置≦第1許容範囲」が満たされないと判定された場合(S83;No)、所定の移動処理を実行する(S85)。当該移動処理は、ロボットアーム20の基準位置が第1許容範囲内に配置されるようにロボットアーム20の基準位置を移動させる制御(「第1移動ステップ)の一例)であってもよい。このとき、同時に、計画経路にしたがってロボットアーム20の基準位置を目標位置に向けて移動させてもよい。
【0074】
ステップS82において「離間パラメータ<閾値」が満たされると判定された場合(S82;Yes)、許容範囲判定部10Hは、「ロボットアームの基準位置≦第2許容範囲」が満たされるか否かを判定する(S86)。そして、「ロボットアーム20の基準位置≦第2許容範囲」が満たされると判定された場合(S86;Yes)、例えば、計画経路にしたがってロボットアーム20の基準位置を目標位置に向けて移動させる(S87)。一方、「ロボットアーム20の基準位置≦第2許容範囲」が満たされないと判定された場合(S86;No)、所定の移動処理を実行する(S88)。当該移動処理は、ロボットアーム20の基準位置が第2許容範囲内に配置されるようにロボットアーム20の基準位置を移動させる制御(「第2移動ステップ)の一例)であってもよい。このとき、同時に、計画経路にしたがってロボットアーム20の基準位置を目標位置に向けて移動させてもよい。
【0075】
次に、離間判定部10Gは、ロボットアーム20の基準位置が目標位置に到達したか否かを判定する(S89)。ロボットアーム20の基準位置が目標位置に到達したと判定された場合(S89;Yes)、動作処理は終了する。このとき、ロボットアーム20は、対象物の保持を解除してもよい。一方、ロボットアーム20の基準位置が目標位置に到達していないと判定された場合(S89;No)、動作処理はステップS81に戻る。
【0076】
以上のとおり、本実施形態に係る動作方法によれば、ロボットアームの基準位置と目標位置との離間の度合を示す所定のパラメータが所定の閾値以上である場合に、基準位置が計画経路に対して第1許容範囲内に配置されるようにロボットアームを移動させることが可能となり、当該所定のパラメータが所定の閾値未満である場合、基準位置が計画経路に対して第2許容範囲内に配置されるようにロボットアームを移動させることが可能となる。そのため、ロボットアームの移動における許容範囲を適切に設定することが可能となる。
【0077】
なお、嵌合動作の他、本発明は、貫通孔が形成されるフランジ(「対象物」の一例)を保持し、貫通孔をシャフトが貫通するように、貫通孔の壁面をシャフト(「目的物」及び「組付け部位」の一例)の表面に倣わせて、フランジをシャフトに組み付ける作業や、検査対象となるプリント配線基板(「対象物」の一例)を保持し、プリント配線基板に形成された貫通孔を棒状の検査器具(「目的物」及び「組付け部位」の一例)が貫通するように、貫通孔の壁面を検査器具の表面に倣わせて、貫通孔の内径を検査する作業や、レンズモジュール等の光学部品(「対象物」の一例)を精密機器(「目的物」及び「組付け部位」の一例)に組み付ける作業等、様々な用途に適用することが可能である。「組付け部位」は、対象物が取り付けられ、固定される部材だけに限られず、対象物と一時的に係合関係を有する部材を含む。例えば、上述した例のように、ロボットアームは、対象物であるプリント配線基板を組付け部位である検査器具の表面に倣わせて検査を実行した後、プリント配線基板を保持したまま検査器具との係合を解除し、別の位置に移動させてもよい。柔軟性を備えた駆動機構として、直列弾性アクチュエータの他、様々な駆動機構を利用することが可能である。粘性、弾性を付与するために、磁性流体、機械ばね(板ばね、ねじりコイルばね)、空気ばね、磁力ばね、ベーンモータ、印加電圧に応じて粘性を調整可能な電機粘性流体を用いた可変ダンパ、等を用いてもよい。
【0078】
なお、上述した実施形態においては、離間パラメータが所定の閾値未満である場合の第2許容範囲は、離間パラメータが所定の閾値以上である場合の第1許容範囲より小さいものとした。しかしながら、これに限らず、離間パラメータが所定の閾値未満である場合の第2許容範囲は、離間パラメータが所定の閾値以上である場合の第1許容範囲より大きくてもよい。例えば、目標地点までに障害物等があるなどの理由から、ロボットアームが目標位置から比較的遠い位置における移動がより大きく制限される場合等には、当該構成により、ロボットアームの移動における許容範囲を適切に設定することが可能となる。
【0079】
又、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな変形が可能である。たとえば、当業者の通常の創作能力の範囲内で、ある実施形態における一部の構成要素を、他の実施形態に追加することができる。又、ある実施形態における一部の構成要素を、他の実施形態の対応する構成要素と置換することができる。
【符号の説明】
【0080】
10 制御装置
10A 開始位置取得部
10B 目標位置取得部
10C 計画経路取得部
10D 許容範囲取得部
10E 制御命令取得部
10F 離間パラメータ算出部
10G 離間判定部
10H 許容範囲判定部
20 ロボットアーム
20A 駆動部
20E エンドエフェクタ
20E1 可動プレート、20E2 可動プレート
20D 直列弾性アクチュエータ
20DA 駆動部
20DE 弾性体
20DS センサ
20J ジョイント
20L リンク
50 教示装置
100 ロボットシステム