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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】モータ装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 13/00 20060101AFI20240321BHJP
【FI】
H02K13/00 T
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020173746
(22)【出願日】2020-10-15
(65)【公開番号】P2022065279
(43)【公開日】2022-04-27
【審査請求日】2023-03-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 友康
(72)【発明者】
【氏名】坂田 憲児
(72)【発明者】
【氏名】磯貝 育夫
(72)【発明者】
【氏名】磯村 結珠
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-122139(JP,A)
【文献】特開2012-165586(JP,A)
【文献】国際公開第2018/146971(WO,A1)
【文献】特開2018-182909(JP,A)
【文献】特開2014-096941(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、
前記回転軸に固定されたコンミテータと、
前記コンミテータに摺接されるブラシと、
前記ブラシを保持するブラシホルダと、
前記ブラシホルダを収容するハウジングと、
を備えたモータ装置であって、
前記ブラシホルダは、
前記回転軸の軸方向と交差する方向に広がるベース部と、
前記回転軸の軸方向から前記ハウジングに突き当てられる突当部を有し、前記ベース部の外周において前記回転軸の軸方向に延在される側壁部と、
前記回転軸を回転自在に支持する軸受を有し、前記ベース部の内周において前記回転軸の軸方向に延在される軸受支持部と、
を備え、
前記ベース部の一方の面に、前記ブラシと、前記ブラシを前記コンミテータに向けて押圧する押圧部材と、前記押圧部材を支持する支柱と、が設けられ、
前記ベース部の他方の面に、前記側壁部の撓みを抑える第1補強部材が設けられ
前記支柱および前記第1補強部材が、前記回転軸の軸方向において互いに重ねられていることを特徴とする、
モータ装置。
【請求項2】
前記側壁部は、前記ベース部の一方の面から前記回転軸の軸方向一側に延在されており、
前記軸受支持部は、前記ベース部の他方の面から前記回転軸の軸方向他側に延在されていることを特徴とする、
請求項1に記載のモータ装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のモータ装置において、
前記ベース部の外周に、前記軸受支持部を中心に互いに対向配置された一対の直線部、および前記軸受支持部を中心に前記一対の直線部に対して90度ずれた位置で互いに対向配置された一対の円弧部が設けられ、
前記第1補強部材が、前記円弧部と前記軸受支持部との間に設けられていることを特徴とする、
モータ装置。
【請求項4】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載のモータ装置において、
前記ベース部の一方の面に、前記側壁部の撓みを抑える第2補強部材が設けられていることを特徴とする、
モータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸と、回転軸に固定されたコンミテータと、コンミテータに摺接されるブラシと、ブラシを保持するブラシホルダと、ブラシホルダを収容するハウジングと、を備えたモータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両に搭載されるパワーウィンドウ装置等の駆動源には、小型でありながら大きな出力が得られる減速機構付きのモータ装置が用いられる。そして、操作者が車室内等に設けられた操作スイッチを操作することで、モータ装置が正逆方向に回転駆動されて、ひいてはウィンドウガラスが開閉される。
【0003】
このようなモータ装置が、例えば、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載されたモータ装置は、アーマチュア軸を有するモータ部と、アーマチュア軸により回転されるウォームおよびウォームホイール(減速機構)を有するギヤ部と、モータケースおよびギヤケース(ハウジング)の内部に設けられるブラシホルダと、ブラシホルダに接続されるコネクタ部材と、を備えている。
【0004】
そして、ブラシやチョークコイル等の電子部品が設けられるブラシホルダは、絶縁性を高めたり小型軽量化を図ったりするために、プラスチック等の樹脂材料を射出成形することで所定形状に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2014/178329号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の特許文献1に記載のモータ装置では、ブラシホルダを射出成形した後の冷却時(硬化時)において、特にモータケースへの圧入部分、つまりブラシホルダの側壁部(位置決めの基準となる部分)が収縮して反ってしまう虞があった。このようにブラシホルダの側壁部が撓んで変形した場合には、モータ装置を組み立てた状態において、ブラシホルダに保持されるブラシや軸受の位置精度が低下することになる。よって、アーマチュア軸の回転抵抗が増加してモータ装置の出力トルク低下(作動ロスの発生)を招いたり、モータ装置の作動音の増大等を招いたりする虞があった。
【0007】
本発明の目的は、ブラシホルダの硬化時において位置決めの基準となる部分の撓みを抑えることができ、ひいてはブラシホルダ全体の成形精度を向上させることが可能なモータ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のモータ装置では、回転軸と、前記回転軸に固定されたコンミテータと、前記コンミテータに摺接されるブラシと、前記ブラシを保持するブラシホルダと、前記ブラシホルダを収容するハウジングと、を備えたモータ装置であって、前記ブラシホルダは、前記回転軸の軸方向と交差する方向に広がるベース部と、前記回転軸の軸方向から前記ハウジングに突き当てられる突当部を有し、前記ベース部の外周において前記回転軸の軸方向に延在される側壁部と、前記回転軸を回転自在に支持する軸受を有し、前記ベース部の内周において前記回転軸の軸方向に延在される軸受支持部と、を備え、前記ベース部の一方の面に、前記ブラシと、前記ブラシを前記コンミテータに向けて押圧する押圧部材と、前記押圧部材を支持する支柱と、が設けられ、前記ベース部の他方の面に、前記側壁部の撓みを抑える第1補強部材が設けられ、前記支柱および前記第1補強部材が、前記回転軸の軸方向において互いに重ねられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のモータ装置によれば、ブラシホルダの側壁部に、回転軸の軸方向からハウジングに突き当てられる突当部が設けられ、かつベース部の他方の面に、側壁部の撓みを抑える第1補強部材が設けられている。これにより、ブラシホルダの射出成形後の硬化時において、突当部を有する側壁部(位置決めの基準となる部分)が反ってしまうことが抑えられ、ひいてはブラシホルダ全体の成形精度を向上させることが可能となる。よって、モータ装置の出力トルク低下(作動ロスの発生)や作動音の増大等を、効果的に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】減速機構付モータの断面図である。
図2】ブラシユニットをギヤケース側から見た斜視図である。
図3】ブラシユニットをモータケース側から見た斜視図である。
図4】ブラシホルダ単体を側方から見た図である。
図5図4のA矢視図である。
図6図4のB矢視図である。
図7図5および図6のC-C線に沿う部分断面図である。
図8】可動金型を説明する図7に対応した図である。
図9】突当面に対する主要部の平行度改善を示すグラフである。
図10】突当面に対する主要部の直角度改善を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0012】
図1は減速機構付モータの断面図を、図2はブラシユニットをギヤケース側から見た斜視図を、図3はブラシユニットをモータケース側から見た斜視図を、図4はブラシホルダ単体を側方から見た図を、図5図4のA矢視図を、図6図4のB矢視図を、図7図5および図6のC-C線に沿う部分断面図を、図8は可動金型を説明する図7に対応した図を、図9は突当面に対する主要部の平行度改善を示すグラフを、図10は突当面に対する主要部の直角度改善を示すグラフをそれぞれ示している。
【0013】
図1に示されるように、減速機構付モータ(モータ装置)10は、自動車等の車両に搭載されるパワーウィンドウ装置の駆動源に用いられ、ウィンドウガラスを昇降させるウィンドウレギュレータを駆動するものである。減速機構付モータ10は、車両のドア内に形成された幅狭のスペースに設置されるため、厚み寸法が抑えられた扁平形状に形成されている。
【0014】
減速機構付モータ10は、モータ部20およびギヤ部30を備えている。これらのモータ部20およびギヤ部30は、複数の締結ねじ11(図示では2つのみ示す)により一体化されている。また、モータ部20とギヤ部30との間には、双方に挟まれるようにしてブラシユニット40が設けられている。さらに、ブラシユニット40には、図中矢印M1に示されるように、軸線ASの延在方向と直交する方向からコネクタ部材50が電気的に接続されている。そして、コネクタ部材50には、車両側の外部コネクタCNが電気的に接続されている。これにより、外部コネクタCNからの駆動電流により減速機構付モータ10が正逆方向に駆動されて、ひいてはウィンドウガラスが開閉される。
【0015】
モータ部20は、磁性体からなる鋼板を深絞り加工等することで、有底筒状に形成されたモータケース(ハウジング)21を備えている。モータケース21の軸方向(軸線AS)と直交する方向における断面形状は、略小判形状に形成されている。モータケース21の内側には合計4つの永久磁石22(図示では2つのみ示す)が固定されている。これらの永久磁石22は、軸線ASを中心に互いに90度間隔で配置され、それぞれの永久磁石22の内側には、コイル23が巻装されたアーマチュア24が、微小隙間(エアギャップ)を介して回転自在に設けられている。つまり、アーマチュア24は、モータケース21の内部に回転自在に収容されている。
【0016】
モータケース21の底部側(図中右側)は段付形状に形成されており、当該段付形状の部分には、モータケース21の本体部よりも小径となった有底筒部21aが設けられている。有底筒部21aの内側には、第1スラスト軸受TB1および第1ラジアル軸受RB1が装着されている。第1スラスト軸受TB1および第1ラジアル軸受RB1は、それぞれ軸線AS上に設けられ、アーマチュア軸25の軸方向一側(図中右側)を回転自在に支持している。このように、有底筒部21aは、第1スラスト軸受TB1および第1ラジアル軸受RB1を介して、アーマチュア軸25の軸方向一側を回転自在に支持している。
【0017】
アーマチュア24の回転中心には、アーマチュア軸(回転軸)25が固定されている。また、アーマチュア軸25の軸方向中央寄りの部分で、かつアーマチュア24の近傍には、コンミテータ26が固定されている。そして、コンミテータ26を形成する複数のセグメント26aには、アーマチュア24に巻装されたコイル23がそれぞれ電気的に接続されている。これらのアーマチュア24,アーマチュア軸25およびコンミテータ26においても、それぞれ軸線AS上に設けられている。
【0018】
コンミテータ26の外周部には、ブラシホルダ41に移動自在に保持された一対のブラシ45(図3参照)が摺接される。一対のブラシ45は、軸線ASを中心に90度間隔で配置されており、ブラシスプリング46(図3参照)のばね力により、それぞれコンミテータ26に向けて所定圧で押圧されている。これにより、一対のブラシ45に駆動電流を供給することで、アーマチュア24に電磁力が発生し、ひいてはアーマチュア軸25が所定の回転方向に所定の回転速度で回転される。
【0019】
また、アーマチュア軸25の軸方向他側(図1の左側)は、第2スラスト軸受TB2および第2ラジアル軸受RB2により回転自在に支持されている。これらの第2スラスト軸受TB2および第2ラジアル軸受RB2は、それぞれ軸線AS上に設けられ、ギヤケース31の軸受装着部31cの内側に装着されている。このように、軸受装着部31cは、第2スラスト軸受TB2および第2ラジアル軸受RB2を介して、アーマチュア軸25の軸方向他側を回転自在に支持している。
【0020】
さらに、アーマチュア軸25の軸方向中央寄りの部分は、第3ラジアル軸受RB3により回転自在に支持されている。ここで、第3ラジアル軸受RB3は、ブラシホルダ41を形成する軸受支持部43の先端部分(図中左側の部分)に固定され、当該軸受支持部43の先端部分は、ギヤケース31のウォーム収容部31aに差し込まれて固定されている。第3ラジアル軸受RB3においても、軸線AS上に設けられている。なお、ブラシホルダ41の本体部分であるベース部42は、モータケース21の開口部21bに対して、がたつかないように固定されている。
【0021】
このように、アーマチュア軸25は、軸線AS上に設けられた3つの第1ラジアル軸受RB1,第2ラジアル軸受RB2および第3ラジアル軸受RB3により回転自在に支持されている。言い換えれば、アーマチュア軸25のスムーズな回転を確保するためにも、それぞれのラジアル軸受RB1,RB2,RB3の同軸度を高めることが重要となる。
【0022】
また、アーマチュア軸25の軸方向他側で、かつ第2ラジアル軸受RB2と第3ラジアル軸受RB3との間には、ウォーム27が固定されている。具体的には、ウォーム27はアーマチュア軸25の軸方向他側に、圧入等により強固に固定されている。そして、ウォーム27には、ウォームホイール28の歯部28aが噛み合わされており、これらのウォーム27およびウォームホイール28は、減速機構(ウォーム減速機)SDを形成している。
【0023】
そして、減速機構SDは、アーマチュア軸25の高速回転を減速して高トルク化し、高トルク化された回転力を、ウォームホイール28に一体に設けられた出力部28bから、外部のウィンドウレギュレータに出力する。なお、出力部28bの外周には、複数の凹凸からなるセレーションSRが形成されており、当該セレーションSRは、ウィンドウレギュレータの被駆動部に噛み合わされる。
【0024】
さらに、アーマチュア軸25の軸方向におけるコンミテータ26と第3ラジアル軸受RB3との間には、略筒状に形成されたセンサマグネットMGが設けられている。当該センサマグネットMGは、ブラケットBRを介してアーマチュア軸25に固定されている。つまり、センサマグネットMGは、アーマチュア軸25の回転に伴って回転される。なお、センサマグネットMGは、ブラシホルダ41の軸受支持部43の内側で回転される。これにより、センサマグネットMGへの埃等の付着が効果的に抑えられる。
【0025】
ここで、センサマグネットMGの径方向外側には、軸受支持部43を介して磁気センサSEが設けられている。当該磁気センサSEは、センサマグネットMGの回転状態を検出するものであり、アーマチュア軸25の回転状態を車載コントローラ(図示せず)に送出する。これにより、車載コントローラは、ウィンドウガラスの開閉速度や開閉位置等を把握して、これに基づきアーマチュア軸25の回転状態を制御する。なお、磁気センサSEには、例えば、磁束の変化により矩形波を出力するホールIC等が用いられる。
【0026】
ギヤ部30は、プラスチック等の樹脂材料を射出成形することで所定形状に形成されたギヤケース31を備えている。ここで、図1においては、ギヤケース31を二点鎖線で示し、当該ギヤケース31の図示を簡素化している。ギヤケース31には、略筒状に形成されたウォーム収容部31aが設けられ、当該ウォーム収容部31aは軸線AS上に配置されている。そして、ウォーム収容部31aの内側には、ウォーム27、つまりアーマチュア軸25の軸方向他側が回転自在に収容されている。
【0027】
また、ウォーム収容部31aの軸方向一側(図中右側)には、モータ部20に向けて開口された装着開口部31bが設けられている。装着開口部31bには、ブラシホルダ41の軸受支持部43が差し込まれている。一方、ウォーム収容部31aの軸方向他側(図中左側)には、軸受装着部31cが一体に設けられている。軸受装着部31cは、ウォーム収容部31aに対して同軸上に設けられ、軸受装着部31cの内側には、第2スラスト軸受TB2および第2ラジアル軸受RB2が、それぞれ装着されている。
【0028】
さらに、ギヤケース31には、ウォーム収容部31aに並ぶようにして、ウォームホイール収容部31dが一体に設けられている。ウォームホイール収容部31dには、ウォームホイール28が回転自在に収容されている。また、ウォームホイール収容部31dのモータ部20寄りの部分(図中右側の部分)には、コネクタ部材50が差し込み固定されるコネクタ部材収容部31eが設けられている。これにより、コネクタ部材50をコネクタ部材収容部31eに差し込むだけで、センサマグネットMGの径方向外側の規定位置に、磁気センサSEが精度良く配置される。
【0029】
ここで、コネクタ部材50は、コネクタ部材収容部31eに差し込まれる差し込み本体部51と、当該差し込み本体部51に一体に設けられたコネクタ接続部52と、を備えている。具体的には、差し込み本体部51は、軸線ASの延在方向と直交する方向に延在されており、コネクタ接続部52は、軸線ASの延在方向に延在されている。つまり、差し込み本体部51およびコネクタ接続部52は、互いに直角となるように接続され、コネクタ部材50全体としては、略L字形状に形成されている。
【0030】
差し込み本体部51の先端側(図中下側)には、センサ基板53が固定されており、当該センサ基板53には、センサマグネットMGと対向する磁気センサSEが実装されている。一方、差し込み本体部51の基端側(図中上側)には、コネクタ部材収容部31eの内壁に密着されるゴム製の環状シールSLが装着されている。これにより、コネクタ部材収容部31eからギヤケース31内への埃等の進入が阻止される。
【0031】
差し込み本体部51の基端側には、コネクタ接続部52の基端側が一体に設けられている。そして、コネクタ接続部52の先端側に、車両側の外部コネクタCNが接続される。また、差し込み本体部51およびコネクタ接続部52の内部には、黄銅等の導電性に優れた材料よりなる複数の導電部材54(図示では2つの示す)が、インサート成形等により埋設されている。ここで、複数の導電部材54のうちの2つは、ブラシユニット40に駆動電流を供給するための電源用となっており、その他の導電部材54は、磁気センサSEにより検出された検出信号(微弱電流)を車載コントローラに送出するための信号用となっている。
【0032】
また、ギヤケース31の周囲には、合計3つの取付脚部31fが一体に設けられている。これらの取付脚部31fには、減速機構付モータ10を車両のドア内に設けられた取付ステー(図示せず)に固定するための固定ボルト(図示せず)が挿通される。これにより、ギヤケース31(減速機構付モータ10)は、車両のドア内にがたつくことなく強固に固定される。なお、3つの取付脚部31fは、ギヤケース31の周囲に分散して配置され、これにより、ウォームホイール28の出力部28bが、振れることなく安定して回転可能となっている。
【0033】
図2ないし図6に示されるように、ブラシユニット40は、プラスチック等の樹脂材料を射出成形することで所定形状に形成されたブラシホルダ41を備えている。ブラシホルダ41は、モータケース21およびギヤケース31の内部に収容されている。ブラシホルダ41には、アーマチュア軸25の軸方向(軸線AS)と交差する方向に広がり、略平板状となったベース部42が設けられ、アーマチュア軸25の軸方向と交差する方向に沿うベース部42の形状は、略小判形状となっている。これにより、減速機構付モータ10の扁平形状化を実現している。
【0034】
具体的には、ベース部42の外周には、軸線AS(軸受支持部43)を中心に互いに対向配置された一対の直線部42aと、軸線ASを中心に一対の直線部42aに対して90度ずれた位置で互いに対向配置された一対の円弧部42bと、を備えている。そして、ベース部42のギヤ部30側には、表側の面となる第1面SF1が設けられ、ベース部42のモータ部20側には、裏側の面となる第2面SF2が設けられている。また、ベース部42の中心部分には、アーマチュア軸25が非接触の状態で貫通される貫通孔42cが設けられている。
【0035】
ここで、ベース部42の第2面SF2が、本発明における一方の面を構成しており、ベース部42の第1面SF1が、本発明における他方の面を構成している。
【0036】
図2図4および図5に示されるように、ベース部42の第1面SF1には、略直方体形状に形成された軸受支持部43の基端側が固定されている。当該軸受支持部43は中空となっており、軸受支持部43の内側は貫通孔42cに連通されている。つまり、軸受支持部43は、ベース部42の内周において、ベース部42の第1面SF1からアーマチュア軸25の軸方向他側に延在されている。
【0037】
軸受支持部43の先端側でかつその内側には、環状の軸受圧入部43aが設けられ、当該軸受圧入部43aには、アーマチュア軸25の軸方向中央寄りの部分を回転自在に支持する第3ラジアル軸受(軸受)RB3(図1参照)が圧入されている。そして、軸受支持部43の内側には、アーマチュア軸25に固定されたセンサマグネットMG(図1参照)が回転自在に収容される。
【0038】
軸受支持部43の外側には、合計4つのケース圧入部43bが設けられている。これらのケース圧入部43bは、アーマチュア軸25の軸方向(軸線ASの延在方向)に延在され、かつ軸受支持部43の周囲に等間隔(90度間隔)で配置されている。そして、これらのケース圧入部43bの軸受圧入部43a寄りの部分が、ギヤケース31の装着開口部31b(図1参照)に圧入される。これにより、ブラシホルダ41がギヤケース31にがたつくことなく装着され、軸受支持部43が軸線AS上に配置される。ここで、軸受支持部43の先端面TSは、軸線ASと直交する方向に広がっており、先端面TSとベース部42とは互いに平行となっている。
【0039】
図5に示されるように、ベース部42の第1面SF1には、一対の第1装着部42dが設けられている。これらの第1装着部42dは、軸受支持部43を中心に、ベース部42の直線部42aと軸受支持部43との間にそれぞれ配置されている。そして、一対の第1装着部42dには、それぞれチョークコイルCC(図2参照)が装着されている。つまり、一対のチョークコイルCCは、それぞれ直線部42aと軸受支持部43との間に配置されている。ここで、チョークコイルCCは、減速機構付モータ10の外部に放散される電気ノイズを低減する機能を有している。
【0040】
また、図5に示されるように、ベース部42の第1面SF1における一方の円弧部42b(図中上側)と軸受支持部43との間には、1つの第2装着部42eおよび2つの第3装着部42fが設けられている。そして、第2装着部42eにはバリスタVS(図2参照)が装着され、第3装着部42fにはキャパシタCP(図2参照)が装着されている。つまり、バリスタVSおよびキャパシタCPは、それぞれ一方の円弧部42bと軸受支持部43との間に配置されている。ここで、バリスタVSは、高電圧(サージ)から減速機構付モータ10を保護する機能を有しており、キャパシタCPは、減速機構付モータ10の外部に放散される電気ノイズを低減する機能を有している。
【0041】
さらに、図5に示されるように、ベース部42の第1面SF1における他方の円弧部42b(図中下側)と軸受支持部43との間には、2つの第4装着部42gが設けられている。そして、一対の第4装着部42gには、それぞれ駆動用導電部材CM(図2参照)が装着されている。つまり、一対の駆動用導電部材CMは、それぞれ他方の円弧部42bと軸受支持部43との間に配置されている。これらの駆動用導電部材CMは、黄銅等の導電性に優れた材料からなり、一対のブラシ45(図3参照)に駆動電流を供給する機能を有している。すなわち、それぞれの駆動用導電部材CMには、複数の導電部材54(図1参照)のうちの電源用の導電部材54が電気的に接続される。
【0042】
ここで、図2および図3においては、ブラシホルダ41に対する電子部品(電気を通す部品)の配置関係を分かり易くするために、これらの電子部品にそれぞれ網掛けを施している。
【0043】
図3図4および図6に示されるように、ベース部42の第2面SF2には、ベース部42の周囲を囲うようにして側壁部44が一体に設けられている。当該側壁部44は、ベース部42の第2面SF2からモータ部20に向けて所定の高さで突出されている(図1参照)。つまり、側壁部44は、ベース部42の外周において、ベース部42の第2面SF2からアーマチュア軸25の軸方向一側に延在されている。
【0044】
そして、側壁部44は、軸受支持部43(軸線AS)を中心に互いに対向配置された一対の平板状壁部44aと、軸受支持部43を中心に一対の平板状壁部44aに対して90度ずれた位置で互いに対向配置された一対の円弧状壁部44bと、を備えている。
【0045】
図6に示されるように、ベース部42の第2面SF2における一方の平板状壁部44a(図中左側)と貫通孔42c(軸受支持部43)との間には、第5装着部42hが設けられている。そして、当該第5装着部42hには、第1中継導電部材RM1(図3参照)が装着されている。つまり、第1中継導電部材RM1は、一方の平板状壁部44aと貫通孔42cとの間に配置され、当該第1中継導電部材RM1においても、黄銅等の導電性に優れた材料からなる。なお、第1中継導電部材RM1は、一方のブラシ45と、一方のチョークコイルCC,一方のキャパシタCP,バリスタVSと、の間に配置されている。
【0046】
また、ベース部42の第2面SF2における他方の平板状壁部44a(図中右側)と貫通孔42c(軸受支持部43)との間には、第6装着部42kが設けられている。そして、当該第6装着部42kには、サーキットブレーカCB(図3参照)が装着されている。つまり、サーキットブレーカCBは、他方の平板状壁部44aと貫通孔42cとの間に配置されている。なお、サーキットブレーカCBは、他方のブラシ45と、黄銅等の導電性に優れた材料からなる第2中継導電部材RM2と、の間に配置されている。ここで、第2中継導電部材RM2は、他方のチョークコイルCC,他方のキャパシタCP,バリスタVSに接続されている。また、サーキットブレーカCBは、減速機構付モータ10を過熱から保護する機能を有している。
【0047】
さらに、図6に示されるように、ベース部42の第2面SF2における一方の円弧状壁部44b(図中上側)と貫通孔42c(軸受支持部43)との間には、合計4つのスルーホールTHが設けられている。これらのスルーホールTHは、ベース部42の第1面SF1側(図5参照)と第2面SF2側とを連通しており、一対のキャパシタCP(図2参照)のリード線(合計4本)がそれぞれ挿通される。
【0048】
また、図6に示されるように、ベース部42の第2面SF2における他方の円弧状壁部44b(図中下側)と貫通孔42c(軸受支持部43)との間には、2つのブラシボックス42mと、2つの支柱42nと、2つの引っ掛け爪42pとが設けられている。
【0049】
一対のブラシボックス42mは、それぞれ平板状壁部44a寄りの部分に設けられ、アーマチュア軸25(軸線AS)を中心に、互いに90度間隔で配置されている。そして、これらのブラシボックス42mの内側には、それぞれ略直方体形状に形成されたカーボン製のブラシ45(図3参照)が移動自在に設けられている。なお、それぞれのブラシ45は、減速機構付モータ10を組み立てた状態において、コンミテータ26に向けて移動可能となっている。具体的には、ブラシ45は、ブラシボックス42mの内側に設けられたブラシ摺接面BS上を摺動するようになっている。
【0050】
また、一対の支柱42nは、互いに90度間隔で配置された一対のブラシボックス42mの間に配置されており、これらの支柱42nは、ブラシ45をコンミテータ26に向けて押圧するブラシスプリング(押圧部材)46(図3参照)をそれぞれ支持している。一対のブラシスプリング46は、金属線を螺旋状に巻いて略筒状に形成されており、一対の端部46aを有する捩じりコイルばね(トーションスプリング)となっている。そして、一方の端部46aが引っ掛け爪42pに引っ掛けられ、他方の端部46aがブラシ45の背面を押圧している。
【0051】
このように、一対のブラシボックス42mにそれぞれ保持される一対のブラシ45、および一対の支柱42nにそれぞれ支持される一対のブラシスプリング46は、ベース部42の第2面SF2において、他方の円弧状壁部44bと貫通孔42cとの間に配置されている。
【0052】
さらに、一対の引っ掛け爪42pは、互いに90度間隔で配置された一対のブラシボックス42mの間に配置され、かつ一対の支柱42nよりも貫通孔42c寄りの部分に配置されている。そして、一対の引っ掛け爪42pは互いに向き合っており、それぞれの引っ掛け爪42pの先端部Tpは、ベース部42を貫通する角穴42sの内側に突出されている。これにより、ブラシスプリング46の端部46aを、引っ掛け爪42pに対して外れないように引っ掛けることができる。
【0053】
ここで、図8に示されるように、角穴42sは、ブラシホルダ41を射出成形する際に用いる可動金型MM(図中網掛け部分)の長尺凸部LTによって形成される部分である。これにより、アーマチュア軸25の軸方向から角穴42sを見たときに、当該角穴42sの内側に、一対の引っ掛け爪42pの先端部Tpを、それぞれ露出させることが可能となる。言い換えれば、角穴42sは、引っ掛け爪42pの先端部Tpを成形するときにできる可動金型MMの長尺凸部LTの「型抜きの穴」となっている。
【0054】
なお、ブラシホルダ41は、固定金型(図示せず)と可動金型MMとを突き合わせて形成されたキャビティ(図示せず)に、溶融された樹脂材料を所定圧で充填することで形成される。そして、図8の矢印M2に示されるように、可動金型MMを上昇させることで、完成したブラシホルダ41を離型することができる。
【0055】
図2ないし図6に示されるように、側壁部44(平板状壁部44aおよび円弧状壁部44b)は、モータケース21の開口部21b(図1参照)に対して圧入固定される部分となっている。すなわち、ブラシホルダ41の長手方向に沿うベース部42側は、側壁部44を介して開口部21bに圧入されている。したがって、側壁部44の成形精度を高めることが、ラジアル軸受RB1,RB2,RB3(図1参照)の同軸度を高めることになる。
【0056】
図5および図6に示されるように、側壁部44の外側には、合計6つのヨーク圧入部44cが設けられている。これらのヨーク圧入部44cは、側壁部44の外側に微小高さで突出され、かつ軸線ASの延在方向に棒状に延在されている。これにより、圧入荷重をそれほど大きくすることなく、ブラシホルダ41(ブラシユニット40)をモータケース21に容易に圧入可能となっている。具体的には、ヨーク圧入部44cは、一対の平板状壁部44aに2つずつ、一対の円弧状壁部44bに1つずつ設けられている。
【0057】
このように、ヨーク圧入部44cは開口部21bに圧入される部分であり、ブラシホルダ41のモータケース21に対するアーマチュア軸25の軸方向(軸線ASの延在方向)と交差する方向への位置決めをする機能を有している。
【0058】
また、側壁部44を形成する一対の円弧状壁部44bの外側には、それぞれ2つずつの位置決め突起44dが設けられている。これらの位置決め突起44dは、円弧状壁部44bの外側にヨーク圧入部44cよりも大きく突出され、かつベース部42の周方向に延在されている。これらの位置決め突起44dは、ブラシホルダ41のモータケース21に対する圧入深さを決定する機能を有している。具体的には、位置決め突起44dのモータケース21側には、平坦面となった突当面44e(図6参照)が設けられている。
【0059】
これらの突当面44eは、本発明における突当部を構成しており、モータケース21の開口部21b側に設けられた被突当面21c(平坦面)に対して、アーマチュア軸25の軸方向から突き当てられる(図1参照)。これにより、ブラシホルダ41は、モータケース21に対して精度良く位置決めされる。すなわち、それぞれの突当面44eは、ブラシホルダ41のモータケース21に対するアーマチュア軸25の軸方向(軸線ASの延在方向)への位置決めをする機能を有している。
【0060】
なお、一方の円弧状壁部44b(図5および図6の上側)に設けられる2つの位置決め突起44dは、互いに離れた位置、つまり平板状壁部44a寄りの部分に配置されている。これに対し、他方の円弧状壁部44b(図5および図6の下側)に設けられる2つの位置決め突起44dは、互いに近接配置されている。また、位置決め突起44dの突当面44e側とは反対側には、ギヤケース31(図1参照)が突き当てられる。
【0061】
図3図4図6および図7に示されるように、他方の円弧状壁部44bの近傍には、一対のブラシボックス42mと、一対の支柱42nと、一対の引っ掛け爪42pとが設けられ、かつ一対のブラシ45および一対のブラシスプリング46(図3参照)が配置されている。したがって、スペース上、他方の円弧状壁部44bの肉厚をあまり厚くすることができない。よって、図3および図6に示されるように、他方の円弧状壁部44bの肉厚の方が、一方の円弧状壁部44bの肉厚よりも薄くなっている。
【0062】
そこで、ブラシホルダ41の射出成形後の冷却時(硬化時)に発生する所謂「ヒケ」に起因した他方の円弧状壁部44bの変形(熱収縮)を確実に防止して、ブラシホルダ41の成形精度を向上させる必要がある。本実施の形態では、他方の円弧状壁部44bの近傍のデッドスペースDSに、第1補強リブRb1(図5参照)および第2補強リブRb2(図6参照)を設けている。なお、図5および図6では、第1補強リブRb1および第2補強リブRb2の形状を分かり易くするために、それぞれに網掛けを施している。
【0063】
図2図4図5および図7に示されるように、第1補強リブRb1は、ベース部42の第1面SF1(他方の面)上において、他方の円弧部42b(図5の下側)と軸受支持部43との間に設けられている。具体的には、第1補強リブRb1は、略円弧形状に形成された主要リブRb1aと、主要リブRb1aの内側(軸受支持部43側)に一体に設けられた略直線形状の一対の補助リブRb1bと、を備えている。当該第1補強リブRb1は、他方の円弧状壁部44bの撓み(変形)を抑える機能を有している。
【0064】
主要リブRb1aは、ベース部42の第1面SF1上において、他方の円弧部42bに倣って設けられている。また、主要リブRb1aは、ベース部42の第1面SF1からアーマチュア軸25(軸線AS)の軸方向他側(図4の上側)に向けて、高さ寸法H1で延在されている。そして、主要リブRb1aは、アーマチュア軸25の軸方向において他方の円弧状壁部44b(図4の右側)と重ねられている。
【0065】
ここで、図4および図7に示されるように、第1面SF1からの主要リブRb1aの高さ寸法H1は、第2面SF2からの他方の円弧状壁部44bの高さ寸法H2の略半分の大きさとなっている(H1≒H2/2)。また、第1面SF1からの主要リブRb1aの高さ寸法H1は、ベース部42の肉厚寸法Tの略3倍の大きさとなっている(H1≒3×T)。
【0066】
また、図5に示されるように、一対の補助リブRb1bは、主要リブRb1aの内側から軸受支持部43に向けて延在され、かつ角穴42sの両側(図中左右側)に配置されている。なお、第1面SF1からの一対の補助リブRb1bの高さ寸法もH1となっている(図7参照)。さらに、一対の補助リブRb1bは、アーマチュア軸25の軸方向(軸線ASの延在方向)において、破線で示される一対の支柱42nに対して、互いにそれぞれ重ねられている。
【0067】
このように、第1補強リブRb1を形成する主要リブRb1aを、アーマチュア軸25の軸方向において他方の円弧状壁部44bと重なるように設け(図7参照)、第1補強リブRb1を形成する補助リブRb1bを、アーマチュア軸25の軸方向において支柱42nと重なるように設けている(図5参照)。さらには、角穴42sの両側、つまり引っ掛け爪42pの近傍に、一対の補助リブRb1bが配置されるようにしている。
【0068】
これにより、第1補強リブRb1が補強部材となって、一方の円弧状壁部44bよりも薄肉の他方の円弧状壁部44bの変形(熱収縮)が抑えられて、ひいてはブラシホルダ41の成形精度を向上させることが可能となる。特に、他方の円弧状壁部44bには、ヨーク圧入部44cが設けられ、かつモータケース21の被突当面21c(図1参照)に突き当てられる突当面44eが設けられている。よって、ブラシホルダ41をモータケース21に対して精度良く位置決め可能となる。ここで、1つの主要リブRb1aおよび2つの補助リブRb1bからなる第1補強リブRb1は、本発明における第1補強部材を構成している。
【0069】
さらに、一対の支柱42nおよび一対の引っ掛け爪42pの近傍に、それぞれ補助リブRb1bが配置されている。したがって、支柱42nや引っ掛け爪42pの変形(熱収縮)も効果的に抑えられる。よって、ブラシスプリング46の位置精度の低下も十分に抑えられ、ひいてはブラシ45をスムーズに移動(作動)させることが可能となる。
【0070】
より具体的には、他方の円弧状壁部44bに対応させて第1補強リブRb1を設けることで、図9および図10に示されるような改善が見られた。ここで、図9および図10において、白抜きのグラフは、第1補強リブRb1を備えないブラシホルダ(比較例)の主要部の歪み(撓み)の大きさを示し、網掛けのグラフは、第1補強リブRb1を備えたブラシホルダ41(本発明)の主要部の歪み(撓み)の大きさを示している。
【0071】
図9に示されるように、モータケース21の被突当面21c(図1参照)に突き当てられる突当面44eを基準面としたときに、ブラシ摺接面BS(図4および図6参照)の突当面44eに対する平行度が「約3割」改善され、先端面TS(図2および図4参照)の突当面44eに対する平行度が「約5割」改善された。
【0072】
また、図10に示されるように、モータケース21の被突当面21c(図1参照)に突き当てられる突当面44eを基準面としたときに、軸受圧入部43a(図2および図5参照)の突当面44eに対する直角度が「約8割」改善され、ヨーク圧入部44c(図4および図6参照)の突当面44eに対する直角度が「約8割」改善され、4つのケース圧入部43b(図4および図5参照)の突当面44eに対する直角度が「約7割5分」改善された。
【0073】
このように、ブラシホルダ41全体の歪み(変形)が小さくなり、当該ブラシホルダ41全体の成形精度が大幅に向上したことが判った。これは、ブラシホルダ41の硬化時において、位置決めの基準となる部分、すなわち突当面44eを有する位置決め突起44dが設けられた他方の円弧状壁部44bの変形が、十分に抑えられたことを意味している。
【0074】
図4図6および図7に示されるように、第2補強リブRb2は、第1補強リブRb1を補助するために設けたものであり、ベース部42の第2面SF2(一方の面)上において、他方の円弧状壁部44b(図6の下側)と一対の支柱42nとの間に設けられている。具体的には、他方の円弧状壁部44bの内側で、かつ他方の円弧状壁部44bのベース部42寄りの部分(基端側)に、合計4つの第2補強リブRb2が設けられている(図7参照)。
【0075】
そして、これらの第2補強リブRb2は、他方の円弧状壁部44bから軸受支持部43(貫通孔42c)に向けて、支柱42nに装着されたブラシスプリング46(図3参照)に接触しない程度に少しだけ延在して設けられ、当該第2補強リブRb2においても、他方の円弧状壁部44bの撓み(変形)を抑える機能を有している。
【0076】
このように、第1補強リブRb1を補助する第2補強リブRb2を設けることで、他方の円弧状壁部44bの撓み(変形)がさらに抑えられている。つまり、ブラシホルダ41の成形精度がさらに向上し、ブラシホルダ41のモータケース21に対する位置決め精度がさらに向上する。ここで、4つの第2補強リブRb2は、本発明における第2補強部材を構成している。
【0077】
以上詳述したように、本実施の形態に係る減速機構付モータ10によれば、ブラシホルダ41の側壁部44に、アーマチュア軸25の軸方向からモータケース21に突き当てられる突当面44eが設けられ、かつベース部42の第1面SF1に、側壁部44の撓みを抑える第1補強リブRb1が設けられている。
【0078】
これにより、ブラシホルダ41の射出成形後の硬化時において、突当面44eを有する側壁部44(位置決めの基準となる部分)が反ってしまうことが抑えられ、ひいてはブラシホルダ41全体の成形精度を向上させることが可能となる。よって、減速機構付モータ10の出力トルク低下(作動ロスの発生)や作動音の増大等を、効果的に抑えることができる。
【0079】
また、本実施の形態に係る減速機構付モータ10によれば、側壁部44は、ベース部42の第2面SF2からアーマチュア軸25の軸方向一側に延在されており、軸受支持部43は、ベース部42の第1面SF1からアーマチュア軸25の軸方向他側に延在されている。
【0080】
これにより、ブラシホルダ41の大径化を抑えることができ、ひいては減速機構付モータ10の扁平形状化を実現することが可能となる。
【0081】
さらに、本実施の形態に係る減速機構付モータ10によれば、ベース部42の第2面SF2に、ブラシスプリング46を支持する支柱42nが設けられ、支柱42nおよび第1補強リブRb1が、アーマチュア軸25の軸方向において互いに重ねられている。
【0082】
これにより、他方の円弧状壁部44bの変形(熱収縮)を抑えつつも、ブラシスプリング46のばね力の負荷による支柱42nの変形も抑えることが可能となる。
【0083】
また、本実施の形態に係る減速機構付モータ10によれば、ベース部42の外周に、軸受支持部43を中心に互いに対向配置された一対の直線部42a、および軸受支持部43を中心に一対の直線部42aに対して90度ずれた位置で互いに対向配置された一対の円弧部42bが設けられ、第1補強リブRb1が、円弧部42bと軸受支持部43との間に設けられている。
【0084】
これにより、直線部42aと軸受支持部43との間のベース部42および円弧部42bと軸受支持部43との間のベース部42うちの、幅広の方である円弧部42bと軸受支持部43との間のベース部42の撓み(変形)を、効果的に抑えることができる。
【0085】
さらに、本実施の形態に係る減速機構付モータ10によれば、ベース部42の第2面SF2に、側壁部44の撓みを抑える第2補強リブRb2が設けられている。
【0086】
これにより、他方の円弧状壁部44bの撓み(変形)がさらに抑えられて、ブラシホルダ41の成形精度をさらに向上させることができる。よって、ブラシホルダ41のモータケース21に対する位置決め精度をさらに向上させることが可能となる。
【0087】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記実施の形態では、減速機構付モータ10を、車両に搭載されるパワーウィンドウ装置の駆動源に用いたものを示したが、本発明はこれに限らず、サンルーフ装置やワイパ装置、さらにはパワースライドドア装置等の他の駆動源にも用いることができる。
【0088】
その他、上記実施の形態における各構成要素の材質,形状,寸法,数,設置箇所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、上記実施の形態に限定されない。
【符号の説明】
【0089】
10:減速機構付モータ(モータ装置),11:締結ねじ,20:モータ部,21:モータケース(ハウジング),21a:有底筒部,21b:開口部,21c:被突当面,22:永久磁石,23:コイル,24:アーマチュア,25:アーマチュア軸(回転軸),26:コンミテータ,26a:セグメント,27:ウォーム,28:ウォームホイール,28a:歯部,28b:出力部,30:ギヤ部,31:ギヤケース,31a:ウォーム収容部,31b:装着開口部,31c:軸受装着部,31d:ウォームホイール収容部,31e:コネクタ部材収容部,31f:取付脚部,40:ブラシユニット,41:ブラシホルダ,42:ベース部,42a:直線部,42b:円弧部,42c:貫通孔,42d:第1装着部,42e:第2装着部,42f:第3装着部,42g:第4装着部,42h:第5装着部,42k:第6装着部,42m:ブラシボックス,42n:支柱,42p:引っ掛け爪,42s:角穴,43:軸受支持部,43a:軸受圧入部,43b:ケース圧入部,44:側壁部,44a:平板状壁部,44b:円弧状壁部,44c:ヨーク圧入部,44d:位置決め突起,44e:突当面(突当部),45:ブラシ,46:ブラシスプリング(押圧部材),46a:端部,50:コネクタ部材,51:差し込み本体部,52:コネクタ接続部,53:センサ基板,54:導電部材,BR:ブラケット,BS:ブラシ摺接面,CB:サーキットブレーカ,CC:チョークコイル,CM:駆動用導電部材,CN:外部コネクタ,CP:キャパシタ,DS:デッドスペース,LT:長尺凸部,MG:センサマグネット,MM:可動金型,RB1:第1ラジアル軸受,RB2:第2ラジアル軸受,RB3:第3ラジアル軸受(軸受),RM1:第1中継導電部材,RM2:第2中継導電部材,Rb1:第1補強リブ(第1補強部材),Rb1a:主要リブ,Rb1b:補助リブ,Rb2:第2補強リブ(第2補強部材),SD:減速機構,SE:磁気センサ,SF1:第1面(ベース部の他方の面),SF2:第2面(ベース部の一方の面),SL:環状シール,SR:セレーション,TB1:第1スラスト軸受,TB2:第2スラスト軸受,TH:スルーホール,TS:先端面,Tp:先端部,VS:バリスタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10