(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】遮熱コーティングおよび耐熱性部材
(51)【国際特許分類】
C23C 4/11 20160101AFI20240321BHJP
【FI】
C23C4/11
(21)【出願番号】P 2020191871
(22)【出願日】2020-11-18
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【氏名又は名称】前川 英明
(72)【発明者】
【氏名】窪谷 悟
(72)【発明者】
【氏名】酒井 義明
(72)【発明者】
【氏名】北山 和弘
(72)【発明者】
【氏名】坂本 昭博
(72)【発明者】
【氏名】日野 武久
【審査官】▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-061438(JP,A)
【文献】特開2016-108582(JP,A)
【文献】特開2011-140693(JP,A)
【文献】特開平11-209864(JP,A)
【文献】国際公開第2016/147282(WO,A1)
【文献】特開2012-172610(JP,A)
【文献】特開2010-229026(JP,A)
【文献】特表2002-538302(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 4/00-4/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面に、結合層、およびこの結合層を介して形成されたセラミックス層からなる遮熱コーティングであって、
前記セラミックス層は、その厚さが1mmを超え、かつ前記結合層側界面の近傍部の気孔率が前記結合層の反対側表面の近傍部の気孔率よりも低
く、
前記セラミックス層は、厚さ方向の中間部に、厚さ方向に隣接するセラミックス材料よりも気孔率がより高い中間セラミックス層を有し、
前記セラミックス層は、前記結合層側界面の近傍部の気孔率が12~20%であり、前記結合層の反対側表面の近傍部の気孔率が13~30%であり、
前記中間セラミックス層は、気孔率が15~30%であることを特徴とする、遮熱コーティング。
【請求項2】
前記セラミックス層は、安定化材を含有する二酸化ジルコニウムから構成される、請求項
1に記載の遮熱コーティング。
【請求項3】
請求項
1または2に記載の遮熱コーティングを有することを特徴とする、耐熱性部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、遮熱コーティングおよびこの遮熱コーティングを有する耐熱性部材に関する。特に、ガスタービン等の高温部品に好適な遮熱コーティングおよびこの遮熱コーティングを有する耐熱性部材に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービン部品のうち、特に燃焼ガスにより高温にさらされる燃焼器ライナやトランジションピース、またタービンを構成する動静翼などは、金属性の基材を強度的、化学的に保護するため、遮熱コーティング(Thermal Barrier Coating)が施されることがある。
【0003】
遮熱コーティング(以下、TBCと記すことがある)は、一般的に、基材よりも耐酸化性が高い金属により形成される結合層と、熱伝導率が低いセラミックス材料による層とから構成されており、基材をシュとして高温ガスから保護する機能を有する。機械部品の多くは、基材が金属からなることから、遮熱コーティングには金属材料基材に対する接合強度や遮熱性能ならびに耐久性が要求されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-172610号公報
【文献】特開2011-140693号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、燃焼器のライナやトランジションピース等に代表される高温度部品は、より長時間の運転寿命を求められるようになっているが、長期間運転した高温部品の外面には機械的な減耗だけではなく、高温酸化による化学的な要因による減肉が発生する事が明らかとなった。高温酸化による減肉は高温部品の最終的な寿命を決定する要因になるため、このような酸化による減肉を抑制することが望まれる。遮熱コーティングを構成するセラミックス層を厚くして、コーティングの熱抵抗を上昇させれば、基材温度を低減して高温酸化も抑制することが可能であり、ライナやトランジションピースにおいてはセラミックス層の厚さが1mmを超えるTBCが使用されることがある。
【0006】
TBCは、主に溶融粒子を施工対象物に吹き付ける溶射法により形成されるが、一般的にセラミックス層が厚くなると、セラミックス層が結合層との界面周辺で剥離しやすくなる。特にセラミックス層の厚さが1mmを超える場合、広い面積でセラミックス層の剥離が発生してしまうことがある。そのため、セラミックス層の剥離部において高温度部品の金属部分が高温ガスに曝されることにより、高温度部品が機械的ないし化学的に劣化してしまうという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の実施形態は、高温度部品の長期使用を考慮して、厚く施工したTBCの耐剥離性を向上させ、基材の保護性を長期間良好に維持できる遮熱コーティングを提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、厚く施工したTBCの耐剥離性を向上させ、基材の保護性を維持することができ、燃焼器を初めとしたガスタービン等の高温部品の遮熱コーティングが提供されて、高温度部品がより長期間使用可能になる。
【0009】
本発明によれば、点検期間が長期化し、より長い運転寿命が求められる高温部品において、セラミックス層が厚区形成されたTBCの耐剥離性を向上させることができ、剥離が発生した場合でも、広範囲で金属部分を高温ガス中に露出させず、部品の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第一の実施形態による遮熱コーティングの概要を示す断面図。
【
図2】本発明の第二の実施形態による遮熱コーティングの概要を示す断面図。
【
図3】本発明の第三の実施形態による遮熱コーティングの概要を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態による遮熱コーティングは、基材の表面に、結合層、およびこの結合層を介して形成されたセラミックス層からなる遮熱コーティングであって、
前記セラミックス層は、その厚さが1mmを超え、かつ前記結合層側界面の近傍部の気孔率が前記結合層の反対側表面の近傍部の気孔率よりも低いこと、を特徴とするものである。
【0012】
そして、本発明の実施形態による耐熱性部材は、前記の遮熱コーティングを有すること、を特徴とするものである。
ここで、遮熱コーティングとは、燃焼ガスによって高温部材を構成する基材の温度上昇を抑制するために施すコーティングであって、耐熱性部材の少なくとも一部分を構成する基材の表面に施された結合層と、この結合層を被覆したセラミックス層とを含むものを言う。
【0013】
<実施形態>
以下、本発明の実施形態による遮熱コーティングおよび耐熱性部材について添付図面を参照して説明する。
図1~
図3は、本発明の実施形態による遮熱コーティングを示すものである。
各図に示される遮熱コーティング1は、基材2の表面に結合層3を介して、厚さが1mmを超えるセラミックス層4を有するものである。基材2の典型例は、金属材料であって、耐熱性部材を形成している金属材料が相当する。例えば、高温度部材、例えば蒸気タービン部品を構成している金属材料、好ましくはタービン運転時の高温度条件に耐えうるNi基やCo基の超合金などを例示することができる。
【0014】
結合層3は、基材2とセラミックス層4との間に介在して、基材2とセラミックス層4と基材2との密着性向上や、基材2の表面に高温腐食性や酸化性を改善する機能を有する。結合層3は、クロムまたはアルミニウムの濃度の高い金属材料からなるものが好ましく、特に好ましくは高温での耐食性および耐酸化性に優れるMCrAlY合金(ここで、Mは、NiおよびCoから選ばれる少なくとも一方の元素を示す)からなるものを用いることができる。結合層3の厚みは、特に限定されないが、基材2の温度や運転時に想定される基材温度やセラミックス層4の厚さによって適宜最適範囲を定めることができるが、好ましくは0.1~0.3mm程度の厚さであり、厚い場合でも0.5mm程度である。
【0015】
結合層3は、溶射法、電子ビーム蒸着法等によって、例えば、上記のMCrAlY合金等の粒子、クラスター、または分子を一様な被膜状に被着させて形成することができる。
【0016】
この結合層3には、厚さ1mm以上のセラミックス層4が形成されている。従来のTBCでは、セラミックス層4の厚さは0.5~0.6mm程度であるのが普通であったが、本発明の実施形態におけるセラミック層4は、1.0mm以上、好ましくは1.1mm~1.5mmの膜厚のセラミックス層4である。セラミックス層の厚さが厚いことによって、本発明の実施形態ではセラミック層による遮熱特性が向上している。
【0017】
そして、セラミックス層4は、結合層側界面の近傍部4aの気孔率が、結合層の反対側表面の近傍部4bの気孔率よりも低くなっている。ここで、「結合層側界面の近傍部部4a」とは、結合層3側界面(即ち、結合層3とセラミックス層4との間の界面)から、セラミックス層4の厚さ方向へ0.3mmまでのセラミックス層4内部の領域を言う。また、「結合層の反対側表面の近傍部4b」とは、反対側表面(即ち、セラミックス層4の、結合層3とは反対側の表面)から、セラミックス層4の厚さ方向へ0.3mmまでのセラミックス層4内部の領域を言う。「結合層側界面の近傍部4a」の気孔率とは、この近傍部4a中に存在する気孔についての気孔率であり、「結合層の反対側表面の近傍部4b」の気孔率とは、この近傍部4b中に存在する気孔についての気孔率である。
【0018】
本発明の実施形態におけるセラミック層4において、「結合層側界面の近傍部4a」の気孔率は、好ましくは12~20%である。気孔率が高くなりすぎると、結合層との密着力が低下して剥離しやすくなる。一方、気孔率が低くて緻密になりすぎると、靭性が低下して、熱応力が強く働く「結合層側界面の近傍部」で亀裂が進展しやすく、セラミック層が剥離しやすくなり、剥離が広範囲におよびがちになる。
【0019】
また、セラミック層4において、「反対側表面の近傍部4b」の気孔率は、好ましくは13~30%である。気孔率が低すぎると、セラミック層4全体の弾性率を低減させることができず、一方、気孔率が高すぎるとセラミック層表面の強度が低下する場合があって、運転時に働く機械的な振動や高温ガス流に対する信頼性が不足することがある。なお、同一のセラミック層4においては、結合層側界面の近傍部4aの気孔率は、結合層の反対側表面の近傍部4bの気孔率よりも低くなっている。
【0020】
一般的に、TBCを有する耐熱性部品は、運転時に、基材およびセラミックス層が高温に曝されるため、高温での機械的物性が大きく異なるセラミックス層と結合層との界面に大きな熱応力が発生する。特に、長期間の運転では、熱物性の差に起因する熱応力によって、亀裂がセラミックス層の結合層の近傍部を進展することが剥離の要因のひとつとなっていた。
【0021】
しかしながら、本発明の実施形態による遮熱コーティング1は、上記の通り、その厚さが1mmを超えるセラミックス層4を有していて、このセラミックス層4が、結合層側界面の近傍部4aの気孔率が結合層の反対側表面の近傍部4bの気孔率よりも低いことによって、結合層2との密着力が高いことで、耐剥離性を向上させることが出来る。
【0022】
セラミックス層4の気孔率は、高温ガスと接する表面側(近傍部4b側)の気孔率が大きくなる様に形成されている。気孔率の高いセラミックス層は密着力の点で劣るが、比較的疎な組織形態を有するため、緻密な層よりも弾性率が低くなる。そのため、結合層2の近傍部以外の気孔率を下げることで、セラミックス層4の全体に働く熱応力を低減させることができ、皮膜の耐剥離性を向上させることが出来る。
【0023】
セラミックス層4の形成材料としては、好ましくはアルミナ、マグネシア、ジルコニアなどを選択できる。一般的なNi基超合金の室温での熱伝導率が10W/(m/K)以下であることから、室温での熱伝導率が5W/(m/K)以下であることが好ましく、ジルコニアのセラミックス層であれば、通常0.5~1.2W/(m/K)程度の熱伝導率の低いセラミックス層が形成できるため、より好適である。
【0024】
例えば、蒸気タービンのような高温下で運転する機器では、ジルコニアにマグネシア、カルシア、イットリアなどの安定化材を含有させることで、純粋なジルコニウムが有する、高温での結晶相変態に伴う膨張を抑制して皮膜の信頼性を向上させる事ができる。セラミックス層4を形成するジルコニアは、ハフニア、セリア、ジスプロシア、ガドリニアなどの希土類元素から成る酸化物を含有していてもよく、これらの酸化物を含有したジルコニアは、より熱伝導率が低下するため、望ましい特性を発揮する。
【0025】
上記のセラミックス層の形成材料から、上記の所定の厚さおよび所定の気孔率を有するセラミックス層4を形成する方法としては、例えば、溶射法、電子ビーム蒸着法等によって、セラミックス材料の粒子、クラスター、または分子等を投入して一様な被膜状に被着させることで形成することができる。セラミックス層4の気孔率は、溶射法、電子ビーム蒸着法等の形成方法の種類を適宜選択することで調整することができる。例えば溶射法では、溶射温度、溶射速度、溶射に使用する粉末の粒径等を適宜選択することにより調整できる。また、厚さは、溶射法、電子ビーム蒸着法等による形成時間によって適宜調整することができる。
【0026】
セラミックス層4の表面側(近傍部4b側)の材料は、高温ガスにさらされるため、燃焼ガスが高温化する近年、多孔質組織の焼結による熱伝導率の低下や剥離の影響が大きくなる。そのため、セラミックス層4の主要な成分に対して低融点のシリカやアルミナなどの不純物を低減した高純度な材料を用いことで、信頼性を向上させることができる。このような材料は、高温加熱下の焼結による皮膜組織の劣化を抑制することができる。
【0027】
上述した本発明の遮熱コーティングは、下記の<<第一の実施形態>>~<<第三の実施形態>>を、好ましい実施形態として包含する。
【0028】
<<第一の実施形態>>
図1は、本発明の第一の実施形態を示している。
図1に示される本発明の第一の実施形態による遮熱コーティングは、
基材2の表面に、結合層3、およびこの結合層3を介して形成されたセラミックス層4からなる遮熱コーティングであって、
前記セラミックス層4は、その厚さが1mmを超え、かつ前記結合層3側界面の近傍部4aの気孔率が前記結合層の反対側表面の近傍部4bの気孔率よりも低いものであって、前記セラミックス層4は、厚さ方向に向けて、気孔率が順次連続的に変化するセラミックス層4からなるものである。
【0029】
結合層3にセラミックス層4を溶射法によって形成する場合、結合層3にセラミックス層の形成材料を溶射によって付着させ累積させる際に、例えば溶射温度、溶射速度、溶射に使用する粉末の粒径等の条件の一つあるいは二以上を連続的に変化させることによって、上記の気孔率が順次連続的に変化する所定のセラミックス層を形成することができる。
【0030】
<<第二の実施形態>>
図2は、本発明の第二の実施形態を示している。
図2に示される本発明の第二の実施形態による遮熱コーティングは、
基材2の表面に、結合層3、およびこの結合層3を介して形成されたセラミックス層4からなる遮熱コーティングであって、
前記セラミックス層4は、その厚さが1mmを超え、かつ前記結合層3側界面の近傍部4aの気孔率が前記結合層の反対側表面の近傍部4bの気孔率よりも低いものであって、前記セラミックス層4が、厚さ方向に向けて、気孔率が段階的に異なる複数のセラミックス層からなるものである。
【0031】
図2に示される遮熱コーティングのセラミックス層4は、結合層側が気孔率12~20%のセラミックス層41からなり、反対側が気孔率13~30%のセラミックス層42からなるものである。
【0032】
なお、
図2に具体的に記載されたセラミックス層4は、セラミックス層41およびセラミックス層42の二層のセラミックス層からなるものであるが、これらのセラミックス層41とセラミックス層42と間には、気孔率がセラミックス層41よりも高くかつセラミックス層42よりも低い他のセラミックス層(図示せず)を設けることができる。
【0033】
結合層3にセラミックス層4を溶射法によって形成する場合、結合層3にセラミックス層の形成材料を溶射によって付着させ累積させる際に、所定の溶射条件を維持しながらセラミックス層41を先ず形成し、その後、溶射温度、溶射速度、溶射に使用する粉末の粒径等の条件の一つあるいは二以上を段階的に変化させることによって、上記の気孔率が段階的に異なる複数のセラミックス層を形成することができる。
【0034】
<<第三の実施形態>>
図3は、本発明の第三の実施形態を示している。
図3に示される本発明の第三の実施形態による遮熱コーティングは、
基材2の表面に、結合層3、およびこの結合層3を介して形成されたセラミックス層4からなる遮熱コーティングであって、
前記セラミックス層4は、その厚さが1mmを超え、かつ前記結合層3側界面の近傍部4aの気孔率が前記結合層の反対側表面の近傍部4bの気孔率よりも低いものであって、前記セラミックス層4が、厚さ方向の中間部に、厚さ方向に隣接するセラミックス材料43、45よりも気孔率がより高い中間セラミックス層44を有するものである。
【0035】
従来のTBCでは、運転時に基材とセラミックス層との間に働く熱応力によって、セラミックス層の結合層近傍部で生じた亀裂がセラミック層の表面まで進展し、その結果、セラミック層が剥落して基材が露出する場合があった。しかし、本発明の第三の実施形態による遮熱コーティングは、セラミックス層4の厚さ方向の中間部に、厚さ方向に隣接するセラミックス材料43、45よりも気孔率がより高い中間セラミックス層44を有するものであって、この中間セラミックス層44が亀裂の進展抑止層として機能する。したがって、本発明の第三の実施形態による遮熱コーティングでは、セラミックス材料43の結合層3近傍部で亀裂が生じて、その亀裂が進展したとしても、その亀裂は中間セラミック層44中に進展することがあったとしても、セラミックス材料45の内部やその表面まで進展することが遮断ないし抑止されている。
【0036】
中間セラミックス層44は、第一の実施例におけるセラミックス層4を構成する皮膜と同様の材料を使用可能であるが、セラミックス層43と同様の材料を用いることが望ましい。中間セラミックス層44の気孔率は、15~30%程度が好ましい。低すぎる場合、亀裂が中間セラミックス層44中を進展し難くなり、亀裂がセラミック材料45側にも亀裂が進展が進展し、セラミックス層4全体が剥離するような損傷形態となることがある。中間セラミックス層44の気孔率が高すぎる場合、機械的強度が低くなりすぎるため、剥離が発生しやすくなる。
【0037】
中間セラミックス層44を形成する位置は、運転時にTBCに働く熱応力により適宜調整可能であるが、結合層3から0.05~0.5mm程度、より好ましくは、0.1から0.4mm程度である。中間セラミックス層44が結合層3に近すぎると、セラミックス層4全体が剥離しやすくなり、結合層3から遠すぎると、亀裂が中間セラミックス層44中を進展しなくなり、所望の効果が得られなくなる。
【0038】
中間セラミックス層44の気孔率は、形成時の条件により調整することができ、溶射法であれば、当該層の部分で、溶射温度、溶射速度、溶射に使用する粉末の粒径等を適宜選択することで調整できる。
【0039】
中間セラミックス層44の気孔率は、
図3のように、膜厚方向に連続的に変化してもよく、
図2のように気孔率がそれぞれ異なる3層のセラミックス層で形成するように、段階的に変化させることができる。
【0040】
<<耐熱性部材>>
本発明の実施形態による耐熱性部材は、前述した遮熱コーティングを有すること、を特徴とする。
本発明の実施形態による耐熱性部材は、例えば、ガスタービンなどの高温部品、具体的には、好ましくは、燃焼器ライナやトランジションピース、動静翼やシュラウドセグメントなど、運転中高温ガスに曝される部品の表面に施工される。
【0041】
これらの部品は、運転寿命を延伸させる目的でより、近年より長期間使用される傾向にあり、基材温度をより低減可能な、熱抵抗の高い遮熱コーティングが求められている。本発明における1mmを超えるセラミックス層を有する遮熱コーティングは、従来よりも熱抵抗が高く信頼性が高いため、より部品寿命を延伸することが可能となる。また、万一剥離が発生した場合でも、セラミックス層全体を剥離させず、一定の熱抵抗を維持した遮熱コーティングにより、部品の劣化を抑制することができる。
【符号の説明】
【0042】
1:遮熱コーティング、2:基材、3:結合層、4:セラミックス層、41、43:セラミックス層(気孔率小)、42、45:セラミックス層(気孔率大)、44:中間セラミックス層、4a:結合層側近傍部(気孔率小)、4b:表面側近傍部(気孔率大)