(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、エッチング方法及び樹脂構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/027 20060101AFI20240321BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20240321BHJP
C08F 20/10 20060101ALI20240321BHJP
C08F 265/06 20060101ALI20240321BHJP
G03F 7/033 20060101ALI20240321BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20240321BHJP
G03F 7/40 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
G03F7/027 502
C08F2/44 C
C08F20/10
C08F265/06
G03F7/033
G03F7/20 501
G03F7/20 521
G03F7/40 521
(21)【出願番号】P 2020530160
(86)(22)【出願日】2019-07-08
(86)【国際出願番号】 JP2019026931
(87)【国際公開番号】W WO2020013107
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2022-06-10
(31)【優先権主張番号】P 2018133653
(32)【優先日】2018-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018155256
(32)【優先日】2018-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018184234
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018213552
(32)【優先日】2018-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019108198
(32)【優先日】2019-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002136
【氏名又は名称】弁理士法人たかはし国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】入澤 宗利
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 旭
(72)【発明者】
【氏名】田邉 昌大
(72)【発明者】
【氏名】豊田 裕二
(72)【発明者】
【氏名】梶谷 邦人
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-053352(JP,A)
【文献】特開2007-008969(JP,A)
【文献】国際公開第2017/159873(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/027
G03F 7/033
G03F 7/40
C08F 20/10
C08F 265/06
C08F 2/44
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
15~45質量%のアルカリ金属水酸化物及び5~40質量%のエタノールアミン化合物を含有するエッチング液によって、基材をエッチング処理するエッチング方法において使用される感光性樹脂組成物であって、
少なくとも(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)光重合開始剤及び(C)重合性単量体を含有し、
(C)重合性単量体として、一般式(i)で示され、m+nが2以上、7以下である化合物を、(C)重合性単量体の総量に対して5~
30質量%含有することを特徴とする感光性樹脂組成物(但し、下記P-1、M-1、M-2、M-3、M-4、M-5、I-1、I-2、D-1及びD-2の化合物からなる場合、並びに、下記式(1)で示されるスチリルピリジン化合物を含有する場合を除く)。
P-1:メタクリル酸メチル50質量%、メタクリル酸25質量%、スチレン25質量%の三元共重合体のメチルエチルケトン溶液
M-1:ビスフェノールAの両端にそれぞれ平均2モルのプロピレンオキサイドと平均6モルのエチレンオキサイドを付加したポリアルキレングリコールのジメタクリレート
M-2:ビスフェノールAの両端にそれぞれ平均2モルのエチレンオキサイドを付加したポリエチレングリコールのジメタクリレート
M-3:ヘキサメチレンジイソシアネートとオリゴプロピレングリコールモノメタクリレートとの反応物であるウレタンポリプロピレングリコールジメタクリレート
M-4:トリメチロ-ルプロパントリアクリレート
M-5:トリオキシエチルトリメチロールプロパントリアクリレート
I-1:4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン
I-2:2-(o-クロロフェニル)-4、5-ジフェニルイミダゾール二量体
D-1:ダイアモンドグリーン
D-2:ロイコクリスタルバイオレット
【化1】
【化2】
[式(1)中、R
1、R
2、及びR
3は、それぞれ独立に、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のアルキルエステル基、アミノ基、炭素数1~20のアルキルアミノ基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、アセチル基、又は(メタ)アクリロイル基を示し、a、b、及びcは、それぞれ独立に、0~5の整数を示す。]
【請求項2】
15~45質量%のアルカリ金属水酸化物及び5~40質量%のエタノールアミン化合物を含有するエッチング液によって、基材をエッチング処理するエッチング方法において使用される感光性樹脂組成物であって、
少なくとも(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)光重合開始剤及び(C)重合性単量体を含有し、
(A)アルカリ可溶性樹脂が、(I)メタクリル酸、(II)スチレン誘導体及び(III)その他のエチレン性不飽和基を有する単量体を共重合して得られる共重合体であり、(I)メタクリル酸、(II)スチレン誘導体及び(III)その他のエチレン性不飽和基を有する単量体の総量に対して、(I)メタクリル酸が20~40質量%であり、(II)スチレン誘導体が25~50質量%であり、
(C)重合性単量体として、一般式(i)で示され、m+nが2以上、20以下である化合物を含有し、
(C)重合性単量体として、一般式(i)で示され、m+nが2以上、7以下である化合物の含有量が、(C)重合性単量体の総量に対して
30質量%以下であることを特徴とする感光性樹脂組成物(但し、下記P-1、M-1、M-2、M-3、M-4、M-5、I-1、I-2、D-1及びD-2の化合物からなる場合、並びに、下記式(1)で示されるスチリルピリジン化合物を含有する場合を除く)。
P-1:メタクリル酸メチル50質量%、メタクリル酸25質量%、スチレン25質量%の三元共重合体のメチルエチルケトン溶液
M-1:ビスフェノールAの両端にそれぞれ平均2モルのプロピレンオキサイドと平均6モルのエチレンオキサイドを付加したポリアルキレングリコールのジメタクリレート
M-2:ビスフェノールAの両端にそれぞれ平均2モルのエチレンオキサイドを付加したポリエチレングリコールのジメタクリレート
M-3:ヘキサメチレンジイソシアネートとオリゴプロピレングリコールモノメタクリレートとの反応物であるウレタンポリプロピレングリコールジメタクリレート
M-4:トリメチロ-ルプロパントリアクリレート
M-5:トリオキシエチルトリメチロールプロパントリアクリレート
I-1:4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン
I-2:2-(o-クロロフェニル)-4、5-ジフェニルイミダゾール二量体
D-1:ダイアモンドグリーン
D-2:ロイコクリスタルバイオレット
【化3】
【化4】
[式(1)中、R
1、R
2、及びR
3は、それぞれ独立に、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のアルキルエステル基、アミノ基、炭素数1~20のアルキルアミノ基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、アセチル基、又は(メタ)アクリロイル基を示し、a、b、及びcは、それぞれ独立に、0~5の整数を示す。]
【請求項3】
基材の少なくとも片面に、請求項1又は請求項2に記載の感光性樹脂組成物を含有してなる感光性樹脂層を形成する工程1、該感光性樹脂層を露光・現像してレジストパターンを形成する工程2、並びに、15~45質量%のアルカリ金属水酸化物及び5~40質量%のエタノールアミン化合物を含有するエッチング液によって基材をエッチング処理する工程3、を少なくとも含むことを特徴とするエッチング方法。
【請求項4】
請求項3に記載のエッチング方法を用いることを特徴とする孔又はパターンを有する樹脂構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強アルカリ性のエッチング液への耐性及びエッチング工程後の剥離性に優れた感光性樹脂組成物、並びに、該感光性樹脂組成物を利用するエッチング方法及び樹脂構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド樹脂は、耐熱性・耐薬品性・電気特性・機械特性・寸法安定性等に優れることから、電子材料として、IC、LSI、モジュール基板等の製造において種々の用途に用いられている。これらの用途において、ポリイミド樹脂は、フィルム状、あるいはコーティング膜として用いられる(本明細書においては、以後、フィルム状のポリイミド樹脂又はポリイミド樹脂のコーティング膜を「ポリイミドフィルム」と称する)。
上記用途において、ポリイミドフィルムには、金属層間の導通を確保するためのスルーホールやデバイス実装用のデバイスホール等の孔を多数形成する必要がある。孔を形成するためには、ドリルやレーザで機械的に加工する方法以外に、ポリイミドを溶解せしめる強アルカリ性の溶液をエッチング液として用いて化学的に加工するエッチング方法が知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。また、該エッチング方法によれば、円形の孔あけ加工だけでなく、様々な形状の加工を施すことも可能である。
【0003】
ポリイミドを溶解せしめる強アルカリ性のエッチング液として、ヒドラジンを含有するエッチング液が知られている。しかし、ヒドラジンを含有するエッチング液には、エッチング特性上の問題点があるだけでなく、ヒドラジンの毒性が強く、蒸気の吸入によって粘膜に炎症等を起こす問題がある。
そのため、代替のエッチング液として、15~45質量%のアルカリ金属水酸化物及び5~40質量%のエタノールアミン化合物を含有する強アルカリ性のエッチング液が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。該エッチング液によれば、エッチング孔の形崩れが生じにくく、例えば、米国デュポン社製「カプトン(登録商標)」に代表されるピロメリット酸系ポリイミドだけでなく、他のエッチング液ではエッチングが困難であった、例えば、宇部興産株式会社製「ユーピレックス(登録商標)」に代表されるビフェニルテトラカルボン酸系ポリイミドでも、良好にエッチングされ、好適に使用できる。
【0004】
該エッチング液を使用したエッチング方法では、ポリイミドフィルム表面上にパターン形成された金属層又は樹脂層をレジストとして、ポリイミドフィルムがエッチング加工される。
金属層をレジストとする場合、金属層はエッチング液に対して安定で、液を浸透させず、かつ金属層とポリイミドフィルムとの剥離が起こりにくいため、微細な形状の加工や厚いフィルムの加工等に適している。しかし、金属層のレジストは、製造コストが高く、かつ工程上金属層を使えないケースも多くあり、樹脂層をレジストとしてエッチングする技術が求められている。
【0005】
樹脂層をレジストとしてエッチングする技術は、特許文献2~5等に開示されている。エッチング液が強アルカリ性であるため、例えば、特許文献4では、ゴムとビスアジド系樹脂の併用で代表される有機溶剤現像型の感光性樹脂層(例えば、東京応化工業株式会社のネガ型フォトレジストOMR(登録商標)シリーズ)が使用されるが、作業環境や現像処理の簡便性、さらに製造コストの面からは、アルカリ現像型の感光性樹脂層が最も好ましい。
【0006】
特許文献2、3及び5では、アルカリ現像型の感光性樹脂層をレジストとし、強アルカリ性エッチング液でポリイミドフィルムをパターン状にエッチングする技術が開示されている。しかしながら、エッチング処理が進行するとともに、該感光性樹脂層がエッチング液によって、溶解、膨潤又は剥離する場合があり、また、感光性樹脂層がエッチング液を浸透させるため、レジストとしての可使時間が短く、微細な形状の加工、厚いポリイミドフィルムの加工、溶解速度の遅いポリイミドフィルムの加工には適さない。
可使時間を長くするために、エッチングする前に感光性樹脂層を加熱(ポストキュア)する技術や、エッチングする前に感光性樹脂層に紫外線を照射する技術が知られているが、微細な形状の加工、厚いポリイミドフィルムの加工、溶解速度の遅いポリイミドフィルムの加工における対策は未だ不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平10-097081号公報
【文献】特開2007-008969号公報
【文献】特許第3401281号公報
【文献】特開平6-234870号公報
【文献】特開2001-305750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、15~45質量%のアルカリ金属水酸化物及び5~40質量%のエタノールアミン化合物を含有する強アルカリ性のエッチング液への耐性が優れている感光性樹脂組成物、該感光性樹脂組成物を利用するエッチング方法、及び、該エッチング方法を用いる樹脂構造体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、以下の手段(1)ないし(4)の何れの手段によっても解決できる。
【0010】
(1)
15~45質量%のアルカリ金属水酸化物及び5~40質量%のエタノールアミン化合物を含有するエッチング液によって、基材をエッチング処理するエッチング方法において使用される感光性樹脂組成物であって、
少なくとも(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)光重合開始剤及び(C)重合性単量体を含有し、
(C)重合性単量体として、一般式(i)で示され、m+nが2以上、7以下である化合物を、(C)重合性単量体の総量に対して5~80質量%含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
【0011】
【0012】
以下、上記(1)に記載した感光性樹脂組成物を、「感光性樹脂組成物(1)」と略記する場合がある。
【0013】
(2)
15~45質量%のアルカリ金属水酸化物及び5~40質量%のエタノールアミン化合物を含有するエッチング液によって、基材をエッチング処理するエッチング方法において使用される感光性樹脂組成物であって、
少なくとも(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)光重合開始剤及び(C)重合性単量体を含有し、
(A)アルカリ可溶性樹脂が、(I)メタクリル酸、(II)スチレン誘導体及び(III)その他のエチレン性不飽和基を有する単量体を共重合して得られる共重合体であり、(I)メタクリル酸、(II)スチレン誘導体及び(III)その他のエチレン性不飽和基を有する単量体の総量に対して、(I)メタクリル酸が20~40質量%であり、(II)スチレン誘導体が25~50質量%であり、
(C)重合性単量体として、一般式(i)で示され、m+nが2以上、20以下である化合物を含有し、
(C)重合性単量体として、一般式(i)で示され、m+nが2以上、7以下である化合物の含有量が、(C)重合性単量体の総量に対して80質量%以下であることを特徴とする感光性樹脂組成物。
【0014】
【0015】
以下、上記(2)に記載した感光性樹脂組成物を、「感光性樹脂組成物(2)」と略記する場合がある。
【0016】
(3)
基材の少なくとも片面に、上記(1)又は(2)に記載の感光性樹脂組成物を含有してなる感光性樹脂層を形成する工程1、該感光性樹脂層を露光・現像してレジストパターンを形成する工程2、並びに、15~45質量%のアルカリ金属水酸化物及び5~40質量%のエタノールアミン化合物を含有するエッチング液によって基材をエッチング処理する工程3、を少なくとも含むことを特徴とするエッチング方法。
【0017】
(4)
上記のエッチング方法を用いることを特徴とする孔又はパターンを有する樹脂構造体の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明の感光性樹脂組成物(1)は、前記した一般式(i)で示され、m+nが2以上、7以下である化合物を、(C)重合性単量体の総量に対して5~80質量%含有している。
以下、「一般式(i)で示され、m+nが2以上、7以下である化合物」を「化合物(i)-S」と記載する場合がある。
【0019】
化合物(i)-Sは、耐アルカリ性が非常に高い化合物であり、また、架橋することによって、さらに耐アルカリ性が高くなる。そして、(C)重合性単量体の総量に対して、化合物(i)-Sを5~80質量%含有していることによって、(A)アルカリ可溶性樹脂を構成する単量体によらず、「15~45質量%のアルカリ金属水酸化物及び5~40質量%のエタノールアミン化合物を含有する強アルカリ性のエッチング液」に対して、感光性樹脂組成物(1)が膨潤又は剥離しにくいという効果を達成できる。
以下、「15~45質量%のアルカリ金属水酸化物及び5~40質量%のエタノールアミン化合物を含有するエッチング液」を「エッチング液α」と記載する場合がある。
また、エッチング液αを、例えば、80℃という高温で使用した場合であっても、感光性樹脂組成物(1)が膨潤又は剥離しにくいという効果を達成できる。
【0020】
本発明の感光性樹脂組成物(2)は、(I)メタクリル酸と(II)スチレン誘導体と(III)その他のエチレン性不飽和基を有する単量体を共重合成分とする(A)アルカリ可溶性樹脂、及び、一般式(i)で示され、m+nが2以上、20以下である化合物を含み、化合物(i)-Sの含有量が、(C)重合性単量体の総量に対して80質量%以下であるため、耐アルカリ性が高くなり、強アルカリ性のエッチング液αによっても、本発明の感光性樹脂組成物(2)が膨潤又は剥離しにくい、という効果を達成できる。
また、エッチング液αを、例えば80℃という高温で使用した場合であっても、感光性樹脂組成物(2)が膨潤又は剥離しにくいという効果を達成できる。
以下、「一般式(i)で示され、m+nが2以上、20以下である化合物」を「化合物(i)-P」と記載する場合がある。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0022】
<エッチング液>
本発明におけるエッチング液αは、15~45質量%のアルカリ金属水酸化物及び5~40質量%のエタノールアミン化合物を含有するエッチング液であり、水溶液であることが好ましい。
上記アルカリ金属水酸化物としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム及び水酸化リチウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が好適に用いられる。アルカリ金属水酸化物は、これらの中の1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。なかでも水酸化カリウムが好適に使用できる。アルカリ金属水酸化物の含有率は、エッチング液全体に対して、20~45質量%がより好ましく、25~40質量%がさらに好ましい。
【0023】
また、上記エタノールアミン化合物としては、エタノールアミン等の第一級アミン;N-(β-アミノエチル)エタノールアミン等の第一級アミンと第二級アミンの両方であるアミン;N-メチルエタノールアミン、N-エチルエタノールアミン等の第二級アミン;及び;N-エチルジエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン等の第三級アミン;よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられ、これらが好適に用いられる。
該エタノールアミン化合物は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。エタノールアミン化合物の含有率は、エッチング液全体に対して、20~40質量%がより好ましく、25~35質量%がさらに好ましい。
【0024】
<エッチング方法>
次に、本発明のエッチング方法を説明する。本発明のエッチング方法は、基材の少なくとも片面に、本発明の感光性樹脂組成物を含有してなる感光性樹脂層を形成する工程1、感光性樹脂層を露光・現像してレジストパターンを形成する工程2、エッチング液αによって基材をエッチング処理する工程3を少なくとも含む。
【0025】
(工程1)
基材の少なくとも片面に感光性樹脂層を形成する工程1を説明する。
基材としては、エッチング液αによってエッチングできる基材であれば何れであってもよい。例えば、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、無機充填材含有樹脂、液晶ポリマー、フッ素化合物含有樹脂、ガラス等が挙げられる。
【0026】
上記ポリイミド樹脂としては、ピロメリット酸系ポリイミド、ビフェニルテトラカルボン酸系ポリイミド等が挙げられる。
該ピロメリット酸系ポリイミドとしては、例えば、米国デュポン社製「カプトン(登録商標)」等が挙げられる。また、ビフェニルテトラカルボン酸系ポリイミドとしては、例えば、宇部興産株式会社「ユーピレックス(登録商標)」等が挙げられる。
該ビフェニルテトラカルボン酸系ポリイミドは、ポリイミド樹脂の中でもアルカリ性のエッチング液への溶解速度が遅いことが知られている。このような溶解速度の遅いポリイミドのフィルムでも、本発明の感光性樹脂組成物を用いることによって、パターン状に加工することができる。
【0027】
上記ポリエステル樹脂としては、限定はなく公知の樹脂が挙げられる。
【0028】
また、上記無機充填材含有樹脂の無機充填材としては、シリカ、ガラス、クレー、雲母等のケイ酸塩;アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、シリカ等の酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等の炭酸塩;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化物;硫酸バリウム、硫酸カルシウム等の硫酸塩;ホウ酸アルミニウム等のホウ酸塩;窒化アルミニウム、窒化ホウ素等の窒化物;チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等のチタン酸塩;等が挙げられる。
該無機充填材含有樹脂の樹脂成分としては、具体的にはアルカリ不溶性樹脂が挙げられる。アルカリ不溶性樹脂とは、アルカリ可溶性を発現するカルボキシル基等の酸基の含有量が非常に少ない樹脂を言う。
【0029】
上記無機充填材含有樹脂の樹脂成分に含まれる遊離カルボキシル基等の量の指標となる酸価(JIS K2501:2003)は、40mgKOH/g未満であることが好ましい。より具体的には、エポキシ樹脂とエポキシ樹脂を硬化させる熱硬化剤とを含む樹脂が挙げられる。
【0030】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;等が挙げられる。また、エポキシ樹脂としては、さらにビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、フェノキシ型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
熱硬化剤としては、例えば、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、活性エステル系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、シアネートエステル樹脂等が挙げられる。
【0031】
上記液晶ポリマー、フッ素化合物含有樹脂、ガラス等は、限定はなく公知の樹脂又はガラスが挙げられる。
【0032】
本発明のエッチング方法において、感光性樹脂層を形成する方法としては、基材に感光性樹脂組成物を含む塗工液を塗工し、乾燥して、感光性樹脂層を形成する方法が挙げられる。
また、本発明の感光性樹脂組成物を含む塗工液を、キャリアーフィルムに塗工して、感光性樹脂組成物を含む感光性樹脂層を形成して、ドライフィルムレジスト(以下、単に「DFR」と略記することがある)を作製し、基材に感光性樹脂層を転写する方法が挙げられる。
【0033】
(工程2)
感光性樹脂層を露光・現像してレジストパターンを形成する工程2を説明する。
工程2では、まず、感光性樹脂層に対してパターン状の露光を実施し、露光部を硬化させる。露光としては、具体的には、フォトマスクを用いた密着露光が挙げられる。また、キセノンランプ、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、UV蛍光灯等を光源とした、反射画像露光、プロキシミティ方式、プロジェクション方式、走査露光等が挙げられる。
走査露光としては、UVレーザ、He-Neレーザ、He-Cdレーザ、アルゴンイオンレーザ、クリプトンイオンレーザ、ルビーレーザ、YAGレーザ、窒素レーザ、色素レーザ、エキシマレーザ等のレーザ光源を、発光波長に応じてSHG波長変換した走査露光、あるいは、液晶シャッター、マイクロミラーアレイシャッターを利用した走査露光等が挙げられる。
【0034】
パターン状の露光後に、現像を実施し、レジストパターンとして不要な部分である非露光部の感光性樹脂層を除去し、硬化した感光性樹脂層を含むレジストパターンを形成する。
現像に使用するアルカリ現像液としては、例えば、無機アルカリ性化合物の水溶液を用いることができる。無機アルカリ性化合物としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等の炭酸塩や水酸化物が挙げられる。アルカリ現像液としては、0.1~3質量%の炭酸ナトリウム水溶液が好ましく使用できる。現像液には、界面活性剤、消泡剤、溶剤等を適宜少量混入することもできる。
現像処理方法としては、ディップ方式、バトル方式、スプレー方式、ブラッシング、スクレーピング等があり、スプレー方式が除去速度のためには最も適している。処理温度は15~35℃が好ましく、また、スプレー圧は、0.02~0.3MPaが好ましい。
【0035】
(工程3)
エッチング液αによって基材をエッチング処理する工程3を説明する。エッチング方法としては、浸漬処理、パドル処理、スプレー処理、ブラッシング、スクレーピング等の方法を用いることができる。この中でも、浸漬処理が好ましい。
浸漬処理以外の方法では、エッチング液α中に気泡が発生しやすく、その気泡が基材の表面に付着してエッチング不良が発生する場合がある。また、浸漬処理以外の方法では、エッチング液αの温度変化が大きくなりやすく、基材のエッチング速度にばらつきが発生する場合がある。
【0036】
エッチング液αの処理温度は、特に限定はないが、60~90℃であることが好ましく、基材の種類、厚み、また、感光性樹脂組成物の種類、厚み、パターン形状によって最適な処理温度は異なる。処理温度は、60~85℃がより好ましく、70~85℃がさらに好ましい。
【0037】
(工程4)
レジストパターンに追加露光する工程4を説明する。
本発明の感光性樹脂組成物を使用したエッチング方法において、工程2と工程3の間で、レジストパターンに追加露光をする工程4を実施してもよい。
該追加露光は、具体的には、キセノンランプ、高圧水銀灯、低圧水銀灯、超高圧水銀灯、UV蛍光灯等を光源として、紫外線を硬化した感光性樹脂層を含むレジストパターン全面に照射し、さらに架橋させる。追加露光の露光量は、特に限定はないが、100~2000mJ/cm2が好ましい。
【0038】
本発明のエッチング方法では、工程4において、このレジストパターンに追加露光することによって、工程2で架橋した感光性樹脂組成物層の耐アルカリ性はさらに高くなる。
本発明の感光性樹脂組成物は、工程4の追加露光をすることによって、その後の工程3のエッチング処理において、レジストパターンが膨潤又は剥離しにくいという効果が特に奏されるようになる。
工程4を行う場合には、工程4終了から工程3開始までの時間は、30分以下であることが好ましく、20分以下であることがより好ましい。これによって、感光性樹脂層で形成されたレジストパターンの内部まで充分に硬化された状態で、エッチング処理が可能であり、強アルカリ性のエッチング液αによって、基材をエッチング処理した場合に、レジストパターンが膨潤又は剥離することをより抑制することができる。
【0039】
(レジスト剥離工程)
次いで、工程3後にレジストパターンを剥離するレジスト剥離工程を説明する。工程3後に、レジストパターンを残しておいてもよいが、不要であれば、レジストパターンを剥離する。
レジスト剥離工程において、レジスト剥離液としては、アルカリ水溶液が有用に使用される。レジスト剥離液に使用される塩基性化合物としては、例えば、ケイ酸アルカリ金属塩、アルカリ金属水酸化物、リン酸アルカリ金属塩、炭酸アルカリ金属塩、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム塩等の無機塩基性化合物;エタノールアミン、エチレンジアミン、プロパンジアミン、トリエチレンテトラミン、モルホリン、水酸化テトラメチルアンモニウム等の有機塩基性化合物を挙げることができる。
【0040】
強アルカリ性のエッチング液αへの耐性を高めるために、工程4において、感光性樹脂層を強固に架橋させた場合、レジスト剥離工程において、レジストパターンが剥離し難くなる。レジスト剥離液として、水酸化ナトリウム等の無機塩基性化合物を含有するレジスト剥離液は、好ましく使用されるが、レジストパターンが剥離しにくい場合、より浸透性の高い有機塩基性化合物が使われる。具体的には、有機アミン系剥離剤R-100やR-100S(商品名、三菱ガス化学株式会社製)が好適に使用される。
【0041】
レジスト剥離工程において、硬化した感光性樹脂層に対する剥離性を制御するため、レジスト剥離液の濃度、温度、スプレー圧、超音波条件等を調整する必要がある。レジスト剥離液の温度が高いほど、硬化した感光性樹脂層が剥離する速度が速くなり、40℃以上の温度が好ましい。装置としては、ディップ処理装置、超音波装置、シャワースプレー装置等を利用することができる。
【0042】
本発明の感光性樹脂組成物を使用して、本発明のエッチング方法を用いることによって、ポリイミドフィルム、無機充填材含有樹脂等の構造体に、スルーホール、デバイスホール等の孔を開けたり、パターンを好適に形成したりすることができる。
本発明は、上記エッチング方法を用いることを特徴とする孔又はパターンを有する樹脂構造体の製造方法でもある。
【0043】
以下、本発明の感光性樹脂組成物について説明する。
【0044】
<感光性樹脂組成物(1)>
本発明の感光性樹脂組成物(1)は、少なくとも(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)光重合開始剤及び(C)重合性単量体を含有し、(C)重合性単量体として、一般式(i)で示され、m+nが2以上、7以下である化合物(化合物(i)-S)を、(C)重合性単量体の総量に対して5~80質量%含有することを特徴とする。
【0045】
【0046】
一般式(i)におけるnとmは、何れも一般式(i)における繰り返し単位数であり、何れも自然数である。
【0047】
(A)アルカリ可溶性樹脂において、「アルカリ可溶性」とは、対象となる樹脂を皮膜にし、1質量%の炭酸ナトリウム水溶液に、25℃で10分間浸漬したとき、膜厚が0.01μm以上溶解する性質をいう。
アルカリ可溶性樹脂とは、具体的には、酸性基を含む樹脂であり、酸価が40mgKOH/g以上である樹脂が挙げられる。該酸性基としては、具体的にはカルボキシル基、フェノール性水酸基、スルホン酸基、リン酸基等が挙げられる。
【0048】
(A)アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、アミド系樹脂、アミドエポキシ系樹脂、アルキド系樹脂、フェノール系樹脂等の有機高分子が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
その中でも、(メタ)アクリル系樹脂を用いることが好ましい。該(メタ)アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリレートを主成分とし、これにエチレン性不飽和カルボン酸を共重合させてなる(メタ)アクリル系重合体が好ましい。また、これには、その他の共重合可能なエチレン性不飽和基を有する単量体を共重合させたものでもよい。
【0049】
上記(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2-(ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0050】
上記エチレン性不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸が好適に用いられ、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のジカルボン酸や、それらの無水物やハーフエステルを用いることもできる。これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸が特に好ましい。
【0051】
上記その他の共重合可能なエチレン性不飽和基を有する単量体としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-エチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-エトキシスチレン、p-クロロスチレン、p-ブロモスチレン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、ビニルトルエン、酢酸ビニル、ビニル-n-ブチルエーテル等が挙げられる。
【0052】
(A)アルカリ可溶性樹脂の酸価は、アルカリ現像速度、レジスト剥離速度、露光感度、感光性樹脂層の柔らかさ、感光性樹脂層と基材の密着性、エッチング液αへの耐性等に影響する。(A)アルカリ可溶性樹脂の酸価は、40~500mgKOH/gであることが好ましく、100~300mgKOH/gであることがより好ましい。
酸価が40mgKOH/g未満では、アルカリ現像時間が長くなる場合があり、一方、500mgKOH/gを超えると、感光性樹脂層と基材との密着性が悪くなる場合や、エッチング液αへの耐性が悪くなる場合がある。上記酸価は、JIS K2501:2003に準拠して測定した値である。
【0053】
また、(A)アルカリ可溶性樹脂の質量平均分子量は、5,000~150,000であることが好ましく、10,000~100,000であることが特に好ましい。
(A)アルカリ可溶性樹脂の質量平均分子量が5,000未満では、硬化前の感光性樹脂組成物をフィルム状態に形成することが困難になる場合がある。一方、(A)アルカリ可溶性樹脂の質量平均分子量が150,000を超えると、アルカリ現像液に対する溶解性が悪化する場合や、レジスト剥離液に溶解する速度が遅くなる場合がある。
【0054】
(B)光重合開始剤としては、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-プロパン-1-オン等の芳香族ケトン;2-エチルアントラキノン、フェナントレンキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン、2,3-ベンズアントラキノン、2-フェニルアントラキノン、2,3-ジフェニルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-メチルアントラキノン、1,4-ナフトキノン、9,10-フェナントラキノン、2-メチル-1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチルアントラキノン等のキノン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル化合物;ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン化合物;ベンジルジメチルケタール、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン等のアルキルフェノン類;2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド類;1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(o-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(o-アセチルオキシム)等のオキシムエステル類;2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(p-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体;9-フェニルアクリジン、1,7-ビス(9,9’-アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体;N-フェニルグリシン、N-フェニルグリシン誘導体;クマリン系化合物;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物等が挙げられる。
【0055】
上記2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体における2つの2,4,5-トリアリールイミダゾールのアリール基の置換基は、同一であって対称な化合物を与えてもよいし、相違して非対称な化合物を与えてもよい。また、ジエチルチオキサントンとジメチルアミノ安息香酸の組み合わせのように、チオキサントン系化合物と3級アミン化合物とを組み合わせてもよい。
これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。なかでも、イミダゾール二量体が、高感度であり好適に使用でき、さらに、2-(2’-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体が特に好適に使用できる。
【0056】
本発明の感光性樹脂組成物(1)は、(C)重合性単量体として、化合物(i)-Sを(C)重合性単量体の総量に対して、5~80質量%含有している。「化合物(i)-Sにおけるm+nが2以上、7以下であること」によって、(A)アルカリ可溶性樹脂を構成する単量体に依存せず、エッチング液αへの耐性に優れるようになる。化合物(i)-Sにおけるm+nは、3以上、5以下がより好ましい。
【0057】
また、工程4において、感光性樹脂層を強固に架橋させた場合、レジスト剥離工程において、レジストパターンが剥離し難くなる。そのため、有機塩基性化合物を含有するレジスト剥離液が好ましく使用される。しかし、感光性樹脂層が厚くなると、レジストパターンの剥離性がさらに悪化し、有機塩基性化合物を含有するレジスト剥離液でも、レジストパターンが剥離できないという問題が指摘されている。そのため、強アルカリ性のエッチング液αへの耐性と共に、レジスト剥離工程におけるレジストパターンの剥離性をも兼ね備えた感光性樹脂組成物が求められている。
【0058】
本発明の感光性樹脂組成物(1)において、化合物(i)-Sは、エトキシ基(-CH2CH2O-)を含有するため、酸価を持つ(A)アルカリ可溶性樹脂と混ざりやすく(相溶しやすく)、また、化合物(i)-Sを(C)重合性単量体に対して5~80質量%含有していることによって、レジストパターンの剥離性にも優れるという効果も得られる。
【0059】
化合物(i)-Sの含有率は、(C)重合性単量体の総量に対して5~80質量%であり、より好ましくは6質量%以上であり、さらに好ましくは8質量%以上であり、特に好ましくは10質量%以上である。また、より好ましくは60質量%以下であり、さらに好ましくは40質量%以下であり、特に好ましくは30質量%以下である。
化合物(i)-Sの含有率が、5~80質量%であること(又は上記範囲であること)によって、エッチング液αへの耐性に優れ、レジストパターンの剥離性にも優れ、アルカリ現像性にも優れている。
化合物(i)-Sの含有率が少なすぎると、エッチング液αへの耐性が不十分になる場合があり、一方、化合物(i)-Sの含有率が多すぎると、アルカリ現像性が悪くなり、アルカリ現像に多くの時間を有する場合がある。また、レジストパターンの剥離性が悪くなる場合がある。
【0060】
本発明の感光性樹脂組成物(1)は、(C)重合性単量体として、化合物(i)-S以外の重合性単量体を含有してもよい。化合物(i)-S以外の重合性単量体として、1つの(メタ)アクリロイル基を有した化合物、2つの(メタ)アクリロイル基を有した化合物、3つ以上の(メタ)アクリロイル基を有した化合物等が挙げられる。
【0061】
1つの(メタ)アクリロイル基を有した化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(エトキシ基が1以上)、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2-(ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(エトキシ基数が2~30)、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(エトキシ基数が2~30)、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート(プロポキシ基数が2~30)、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート(プロポキシ基数が2~30)、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシ化o-フェニルフェノール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0062】
また、(C)重合性単量体で、2つの(メタ)アクリロイル基を有した化合物としては、例えば、多価のアルコールに2つの(メタ)アクリル酸を反応させて得られる化合物が挙げられる。また、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(エトキシ基数が2~30)、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート(プロポキシ基数が2~30)、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物のジアクリレート(エトキシ基数が2~30)、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート(プロポキシ基数が2~40)、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物のジメタアクリレート(エトキシ基数が7超、30以下)、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート(プロポキシ基数が2~40)、ビスフェノールAのエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート(エトキシ基及びプロポキシ基の和が2~40)、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、9,9-ビス[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン等が挙げられる。
【0063】
また、(C)重合性単量体で、3つ以上の(メタ)アクリロイル基を有した化合物としては、例えば、多価のアルコールに(メタ)アクリル酸を反応させて得られる化合物が挙げられる。また、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0064】
<感光性樹脂組成物(2)>
【0065】
本発明の感光性樹脂組成物(2)は、少なくとも、(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)光重合開始剤、及び、(C)重合性単量体を含有し、
(A)アルカリ可溶性樹脂が、(I)メタクリル酸、(II)スチレン誘導体及び(III)その他のエチレン性不飽和基を有する単量体を共重合して得られる共重合体であり、(I)メタクリル酸、(II)スチレン誘導体及び(III)その他のエチレン性不飽和基を有する単量体の総量に対して、(I)メタクリル酸が20~40質量%であり、(II)スチレン誘導体が25~50質量%であり、
(C)重合性単量体として、一般式(i)で示され、m+nが2以上、20以下である化合物(化合物(i)-P)を含有し、
(C)重合性単量体として、一般式(i)で示され、m+nが2以上、7以下である化合物(化合物(i)-S)の含有量が、(C)重合性単量体の総量に対して80質量%以下であることを特徴とする。
【0066】
【0067】
一般式(i)におけるnとmは、何れも一般式(i)における繰り返し単位数であり、何れも自然数である。
【0068】
(A)アルカリ可溶性樹脂において、「アルカリ可溶性」とは、対象となる樹脂を皮膜にし、1質量%の炭酸ナトリウム水溶液に、25℃で10分間浸漬したとき、膜厚が0.01μm以上溶解する性質をいう。
アルカリ可溶性樹脂とは、具体的には、酸性基を含む樹脂であり、酸価が40mgKOH/g以上である樹脂が挙げられる。該酸性基としては、具体的にはカルボキシル基、フェノール性水酸基、スルホン酸基、リン酸基等が挙げられる。
本発明の感光性樹脂組成物(2)では、カルボキシル基を有する(I)メタクリル酸を(A)アルカリ可溶性樹脂の共重合成分として使用する。
【0069】
(A)アルカリ可溶性樹脂において、(I)メタクリル酸、(II)スチレン誘導体及び(III)その他のエチレン性不飽和基を有する単量体の総量に対して、(I)メタクリル酸は20~40質量%であるが、より好ましくは25~35質量%であり、(II)スチレン誘導体は25~50質量%であるが、より好ましくは35~45質量%である。
【0070】
本発明において、(II)スチレン誘導体としては、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-エチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-エトキシスチレン、p-クロロスチレン、p-ブロモスチレン等が挙げられる。
【0071】
(A)アルカリ可溶性樹脂の共重合成分として(II)スチレン誘導体を含むことによって、特に上記下限以上の質量%で含むことによって、架橋した本発明の感光性樹脂組成物(2)における耐アルカリ性がさらに高くなり、強アルカリ性のエッチング液αによって、架橋した本発明の感光性樹脂組成物(2)が膨潤又は剥離し難くなる。また、エッチング液αを、例えば80℃という高温で使用した場合であっても、架橋した本発明の感光性樹脂組成物(2)が膨潤又は剥離し難くなる。
一方、(II)スチレン誘導体を、上記上限を超えて含むと、アルカリ現像性が悪くなり、アルカリ現像に多くの時間を有する場合やアルカリ現像ができなくなる場合がある。また、レジストパターンの剥離性が悪くなる場合がある。
【0072】
工程4において、追加露光をすることによって感光性樹脂層を強固に架橋させた場合、レジスト剥離工程において、レジストパターンが剥離し難くなる。そのため、有機塩基性化合物を含有するレジスト剥離液が好ましく使用される。しかし、感光性樹脂層が厚くなると、レジストパターンの剥離性がさらに悪化し、有機塩基性化合物を含有するレジスト剥離液でも、レジストパターンが剥離できないという問題が指摘されている。そのため、強アルカリ性のエッチング液αへの耐性と共に、レジスト剥離工程におけるレジストパターンの剥離性をも兼ね備えた感光性樹脂組成物が求められている。
【0073】
(A)アルカリ可溶性樹脂には、アルカリ可溶性を付与するために酸性基が必要であり、本発明では、酸性基を有する共重合成分として、(A)アルカリ可溶性樹脂が(I)メタクリル酸を含む。(I)メタクリル酸を含むことによって、アルカリ現像性に優れるようになるが、特に(A)アルカリ可溶性樹脂中に前記質量%の範囲で含むことによって、さらに強アルカリ性のエッチング液αへの耐性を損なうことなく、レジストパターンの剥離性に優れるようになる。
【0074】
アクリル酸の共重合を排除する訳ではないが、上記(I)メタクリル酸に代えてアクリル酸を使用したときには、エッチング液αへの耐性と、レジスト剥離工程における剥離性とを兼ね備えた感光性樹脂組成物が得られない場合がある。具体的には、例えば、エッチング液αへの耐性が低下し、レジストパターンが剥離又は膨潤する場合がある。
【0075】
(III)その他のエチレン性不飽和基を有する単量体としては、(メタ)アクリレートや、(メタ)アクリレート以外の共重合可能なエチレン性不飽和基を有する単量体が挙げられ、それら1種を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0076】
上記(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2-(ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、メチルメタクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0077】
上記(メタ)アクリレート以外の共重合可能なエチレン性不飽和基を有する単量体としては、例えば、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、ビニルトルエン、酢酸ビニル、ビニル-n-ブチルエーテル等が挙げられる。
【0078】
(A)アルカリ可溶性樹脂の酸価は、アルカリ現像速度、レジスト剥離速度、露光感度、感光性樹脂層の柔らかさ、感光性樹脂層と基材の密着性、エッチング液αへの耐性等に影響する。(A)アルカリ可溶性樹脂の酸価は、40~500mgKOH/gであることが好ましく、100~300mgKOH/gであることがより好ましい。
酸価が40mgKOH/g未満では、アルカリ現像時間が長くなる場合があり、一方、500mgKOH/gを超えると、感光性樹脂層と基材との密着性が悪くなる場合や、エッチング液αへの耐性が悪くなる場合がある。上記酸価は、JIS K2501:2003に準拠して測定した値である。
【0079】
また、(A)アルカリ可溶性樹脂の質量平均分子量は、5,000~150,000であることが好ましく、10,000~100,000であることがより好ましい。
(A)アルカリ可溶性樹脂の質量平均分子量が5,000未満では、硬化前の感光性樹脂組成物をフィルム状態に形成することが困難になる場合がある。一方、(A)アルカリ可溶性樹脂の質量平均分子量が150,000を超えると、アルカリ現像液に対する溶解性が悪化する場合や、レジスト剥離液への溶解する速度が遅くなる場合がある。
【0080】
(B)光重合開始剤としては、感光性樹脂組成物(1)の説明に記載したもの同様のものが挙げられ、また、感光性樹脂組成物(1)で好適なものが、感光性樹脂組成物(2)でも好適に使用できる。
【0081】
本発明の感光性樹脂組成物(2)は、(C)重合性単量体として、化合物(i)-Pを含有する。化合物(i)-Pを含有することによって、強アルカリ性のエッチング液αへの耐性及びエッチング工程後の剥離性に優れるという効果を達成できる。
【0082】
ただし、化合物(i)-Pを含有することを必須とした上で、(A)アルカリ可溶性樹脂が、(I)メタクリル酸、(II)スチレン誘導体及び(III)その他のエチレン性不飽和基を有する単量体を共重合して得られる共重合体であり、(I)メタクリル酸、(II)スチレン誘導体及び(III)その他のエチレン性不飽和基を有する単量体の総量に対して、(I)メタクリル酸が20~40質量%であり、(II)スチレン誘導体が25~50質量%である場合、レジストパターンの剥離性を考慮すると、化合物(i)-Sの含有率は80質量%以下であり、より好ましくは60質量%以下であり、さらに好ましくは40質量%以下であり、特に好ましくは30質量%以下である。
化合物(i)-Sの含有率が多すぎると、アルカリ現像性が悪くなり、アルカリ現像に多くの時間を有する場合がある。また、レジストパターンの剥離性が悪くなる場合がある。
【0083】
「化合物(i)-P」としては、「化合物(i)-S」の他に、「m+n」が7より大きく、13以下である化合物、及び、「m+n」が13より大きく、20以下である化合物が挙げられる。
以下、「一般式(i)で示され、m+nが7より大きく、13以下である化合物」を「化合物(i)-M」と略記する場合がある。また、「一般式(i)で示され、m+nが13より大きく、20以下である化合物」を「化合物(i)-L」と略記する場合がある。
【0084】
エッチング液αへの耐性、及び、レジストパターンの剥離性が良好である点から、本発明の感光性樹脂組成物(2)において、(C)重合性単量体の総量に対し、化合物(i)-Pの含有率は、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上である。化合物(i)-Pの含有率は100質量%であってもよい。
【0085】
本発明の感光性樹脂組成物(2)においては、化合物(i)-Sにおける「m+n」は、3~5がより好ましい。化合物(i)-Mにおける「m+n」は、9~11がより好ましい。化合物(i)-Lにおける「m+n」は、16~18がより好ましい。
【0086】
本発明の感光性樹脂組成物(2)は、(C)重合性単量体として、化合物(i)-P以外の重合性単量体を含有してもよい。化合物(i)-P以外の重合性単量体として、1つの(メタ)アクリロイル基を有した化合物、2つの(メタ)アクリロイル基を有した化合物、3つ以上の(メタ)アクリロイル基を有した化合物等が挙げられる。
【0087】
1つの(メタ)アクリロイル基を有した化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(エトキシ基が1以上)、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2-(ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(エトキシ基数が2~30)、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(エトキシ基数が2~30)、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート(プロポキシ基数が2~30)、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート(プロポキシ基数が2~30)、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシ化o-フェニルフェノール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0088】
また、(C)重合性単量体で、2つの(メタ)アクリロイル基を有した化合物としては、例えば、多価のアルコールに2つの(メタ)アクリル酸を反応させて得られる化合物が挙げられる。また、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(エトキシ基数が2~30)、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート(プロポキシ基数が2~30)、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物のジアクリレート(エトキシ基数が2~30)、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート(プロポキシ基数が2~40)、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物のジメタアクリレート(エトキシ基数が20超、30以下)、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート(プロポキシ基数が2~40)、ビスフェノールAのエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート(エトキシ基及びプロポキシ基の和が2~40)、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、9,9-ビス[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン等が挙げられる。
【0089】
また、(C)重合性単量体で、3つ以上の(メタ)アクリロイル基を有した化合物としては、例えば、多価のアルコールに(メタ)アクリル酸を反応させて得られる化合物が挙げられる。また、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0090】
<感光性樹脂組成物(1)及び(2)に共通>
本発明の感光性樹脂組成物(1)及び(2)において、(A)アルカリ可溶性樹脂の含有率は、(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)光重合開始剤及び(C)重合性単量体の総量に対して、35~75質量%であることが好ましく、40~65質量%であることがより好ましい。
(A)アルカリ可溶性樹脂の含有率が35質量%未満では、感光性樹脂層のタック性が高く、キャリアーフィルムに感光性樹脂層を形成したDFRとしたとき、エッジフュージョンが発生しやすくなる場合や、フィルムにしわが入りやすくなる場合がある。一方、(A)アルカリ可溶性樹脂の含有率が75質量%を超えると、光重合性が低下する場合がある。
【0091】
(B)光重合開始剤の含有率は、(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)光重合開始剤及び(C)重合性単量体の総量に対して、0.5~5.0質量%であることが好ましく、1.0~5.0質量%であることがより好ましい。(B)光重合開始剤の含有率が0.5質量%未満では、光重合性が不十分となる場合があり、一方、5.0質量%を超えると、解像性が悪化する場合がある。
【0092】
(C)重合性単量体の含有率は、(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)光重合開始剤及び(C)重合性単量体の総量に対して、20~60質量%であることが好ましく、30~55質量%であることがより好ましい。20質量%未満では、光重合性が不十分となる場合があり、一方、60質量%を超えると、感光性樹脂層表面のタック性が顕著になるだけでなく、硬化後の感光性樹脂層が脆くなる場合がある。
【0093】
本発明の感光性樹脂組成物には、必要に応じて、上記成分(A)~(C)以外の成分を含有させてもよい。
このような成分としては、増感剤、溶剤、熱重合禁止剤、可塑剤、着色剤(染料、顔料)、光発色剤、光減色材、熱発色防止剤、充填剤、消泡剤、難燃剤、密着性付与剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、香料、熱硬化剤、撥水剤、撥油剤等が挙げられ、それぞれ、0.01~20質量%程度含有することができる。これらの成分は1種を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いることもできる。
【0094】
本発明の感光性樹脂組成物は、キャリアーフィルムに塗工して、感光性樹脂層を形成してドライフィルムレジスト(DFR)を作製し、基材に感光性樹脂層を転写してもよいが、その際のキャリアーフィルムとしては、紫外線を透過させる透明フィルムが好ましい。
該透明フィルムの材質としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリビニルアルコール等が使用できる。その中でも特に、ポリエステルの一種であるポリエチレンテレフタレートフィルムを使用すると、ラミネート適性、剥離適性、光透過性、屈折率に対して有利であり、また、安価で、脆化せず、耐溶剤性に優れ、高い引っ張り強度を持つ等の利点から、非常に利用しやすい。
キャリアーフィルムの厚みは、1~100μmであることが好ましい。
【0095】
基材又はキャリアーフィルムに感光性樹脂層を形成する方法は、ロールコータ、コンマコータ、グラビアコータ、エアーナイフ、ダイコータ、バーコータ等の装置を用いた塗工方法で行うことができる。
感光性樹脂層の厚みは、3~120μmであることが好ましく、5~100μmであることがより好ましい。この感光性樹脂層の厚みが大きすぎると、解像性の低下、コスト高、等の問題が発生する場合があり、逆に薄すぎると、密着性が低下する場合がある。
【0096】
必要に応じて、キャリアーフィルム上に形成した感光性樹脂層を保護フィルムで被覆してもよい。保護フィルムとは、感光性樹脂層の酸素阻害、ブロッキング等を防止するために設けられ、キャリアーフィルムとは反対側の感光性樹脂層上に設けられる。感光性樹脂層とキャリアーフィルムとの接着力よりも、感光性樹脂層と保護フィルムとの接着力の方が小さいことが好ましい。また、フィッシュアイの小さい保護フィルムが好ましい。保護フィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等が挙げられる。
【実施例】
【0097】
以下、実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
なお、実施例3、5、25~27、35~37、47~48を、参考例3、5、25~27、35~37、47~48と読み替える。
【0098】
各成分は以下の通りである。
【0099】
(A)アルカリ可溶性樹脂
表1に示す各成分を共重合させて(A-1)~(A~10)の(A)アルカリ可溶性樹脂を得た。なお、表1における各成分の含有量の単位は[質量部]である。また、表1には、(A)アルカリ可溶性樹脂の酸価及び質量平均分子量も記載した。
【0100】
【0101】
(B)光重合開始剤
(B-1):2-(2’-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体
(B-2):4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン
【0102】
(C)重合性単量体
(C-1):NKエステルBPE-100(商品名、新中村化学工業社製、化合物(i)-S、m+n=2.6)
(C-2):NKエステルBPE-200(商品名、新中村化学工業社製、化合物(i)-S、m+n=4)
(C-3):NKエステルBPE-500(商品名、新中村化学工業社製、化合物(i)-M、m+n=10)
(C-4):NKエステルBPE-900(商品名、新中村化学工業社製、化合物(i)-L、m+n=17)
(C-5):NKエステルBPE-1300N(商品名、新中村化学工業社製、一般式(i)で示され、m+nが30である化合物)
(C-6):ポリエチレングリコール♯200ジメタクリレート(エトキシ基数が4)
(C-7):ポリエチレングリコール♯400ジメタクリレート(エトキシ基数が9)
(C-8):ライトアクリレート4EG-A(商品名、共栄社化学株式会社製、ポリエチレングリコールジアクリレート(エトキシ基数が4))
【0103】
表2の構成のエッチング液を調製した。残部を水とした。液1ないし4は、何れも本発明におけるエッチング液、すなわち前記した「エッチング液α」である。
【0104】
【0105】
<感光性樹脂組成物(1)>
【0106】
実施例1~6、比較例1~5
表3に示す各成分を混合し、感光性樹脂組成物の塗工液を得た。
アプリケーターを用いて、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(キャリアーフィルム、商品名:R310、16μm厚、三菱ケミカル社製)上に、得られた塗工液を塗工し、80℃で5分間乾燥して溶剤成分を除去し、PETフィルムの片面上に、感光性樹脂組成物を含む感光性樹脂層(30μm厚)を得た。
ポリエチレンフィルム(保護フィルム、商品名:GF1、30μm厚、タマポリ社製)を感光性樹脂層面に貼り付け、DFRを作製した。
【0107】
【0108】
次に、厚さ25μmのビフェニルテトラカルボン酸系ポリイミドフィルムの両面に、上記実施例1~6、比較例1~5のDFRを、ポリエチレンフィルムを剥がした後貼り付けた。
続いて、5kWの超高圧水銀灯光源を搭載した両面露光機を用い、ライン/スペース=300μm/300μmのテスト用パターンを有するフォトマスクを通して上記のポリイミドフィルムの両面に形成されたDFRに対して密着露光を行い、コンベアー式現像機を用いて、液温30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液で、スプレー圧力0.2MPaの条件で、90秒間現像処理し、テスト用パターン部に、ボトム部でスペース/ライン=300μm/300μmのレジストパターンを得た。
次に、上記両面露光機を使用し、露光量1000mJ/cm2にて紫外線を全面に追加露光した。一連の工程後、レジストパターンを確認したが、比較例5のDFRに関しては、現像が進まず、現像できなかった。
【0109】
上記のレジストパターンを形成したポリイミドフィルムを、80℃に保温した液1~4のそれぞれに、撹拌しながら12分間浸漬し、その後、純水で水洗した。
その際、比較例1~4のDFRに関しては、液1~4の何れのエッチング液においても、スペース/ライン=300μm/300μmのレジストパターンが膨潤剥離してしまい、良好にエッチングができなかった。一方、実施例1~6のDFRについては、液1~4の全てのエッチング液に対しても、脱離することなく、液温度80℃、12分間の浸漬に耐えた。
【0110】
エッチングの後、レジスト剥離を実施した。レジスト剥離液(3質量%の水酸化ナトリウム水溶液、50℃)に浸漬した。
実施例1、2及び4では、1分以内と短時間にレジスト剥離が完了した。実施例3では、5分でレジスト剥離が完了し、少し時間を要した。実施例5では、15分でレジスト剥離が完了し、さらに時間を要したが、完全にレジストパターンを剥離することができた。
レジスト剥離後に、水洗後乾燥し、エッチングが完了したポリイミドフィルムを500倍の顕微鏡で観察したところ、レジストパターンのスペース部分は貫通しており、また、レジストパターンのライン部分においては、エッチング液の入り込みがなく、侵食されていないことが確認できた。
よって、実施例1~5においては、良好なエッチングが達成できた。
【0111】
<感光性樹脂組成物(2)>
【0112】
実施例11~14、比較例11~15
表4に示す各成分を混合し、感光性樹脂組成物の塗工液を得た。アプリケーターを用いて、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(キャリアーフィルム、商品名:R310、16μm厚、三菱ケミカル社製)上に得られた塗工液を塗工し、80℃で5分間乾燥し、溶剤成分を除去し、PETフィルムの片面上に、感光性樹脂組成物を含む感光性樹脂層(30μm厚)を得た。
ポリエチレンフィルム(保護フィルム、商品名:GF1、30μm厚、タマポリ社製)を感光性樹脂層面に貼り付け、DFRを作製した。
【0113】
【0114】
次に、厚さ25μmのビフェニルテトラカルボン酸系ポリイミドフィルムの両面に、上記実施例11~14、比較例11~15のDFRを、ポリエチレンフィルムを剥がした後貼り付けた。
続いて、5kWの超高圧水銀灯光源を搭載した両面露光機を用い、ライン/スペース=300μm/300μmのテスト用パターンを有するフォトマスクを通して上記のポリイミドフィルムの両面に形成されたDFRに対して密着露光を行い、コンベアー式現像機を用いて、液温30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液で、スプレー圧力0.2MPaの条件で、90秒間現像処理し、テスト用パターン部に、ボトム部でスペース/ライン=300μm/300μmのレジストパターンを得た。次に、上記両面露光機を使用し、露光量1000mJ/cm2にて紫外線を全面追加露光して、レジストパターンをさらに架橋させた。一連の工程後、レジストパターンを確認したが、比較例12及び比較例13のDFRに関しては、現像が進まず、現像できなかった。
【0115】
上記のレジストパターンを形成したポリイミドフィルムを、80℃で保温した液1~4のそれぞれに撹拌しながら12分間浸漬し、純水で水洗した。その際、比較例11、14及び15のDFRに関しては、液1~4の何れのエッチング液においても、スペース/ライン=300μm/300μmのレジストパターンが膨潤剥離してしまい、良好にエッチングができなかった。
一方、実施例11~14のDFRについては、液1~4の全てのエッチング液に対しても、膨潤剥離することなく、液温度80℃、12分間の浸漬に耐えた。
【0116】
エッチングの後、レジスト剥離を実施した。レジスト剥離では、剥離液R-100S(商品名、三菱ガス化学株式会社製)及び剥離促進剤R-101(商品名、三菱ガス化学株式会社製)をそれぞれ15体積%及び8体積%ずつ含む水溶液50℃に浸漬した。
レジスト剥離後に、水洗後乾燥し、エッチングが完了したポリイミドフィルムを500倍の顕微鏡で観察したところ、レジストパターンのスペース部分は貫通しており、またレジストパターンのライン部分においては、エッチング液の入り込みがなく、侵食されていないことが確認できた。
よって、実施例11~14においては、良好なエッチングが達成できた。
【0117】
実施例21~27、比較例21~22
表5に示す各成分を混合し、感光性樹脂組成物の塗工液を得た。アプリケーターを用いて、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(キャリアーフィルム、商品名:R310、16μm厚、三菱ケミカル社製)上に得られた塗工液を塗工し、80℃で5分間乾燥し、溶剤成分を除去し、PETフィルムの片面上に、感光性樹脂組成物を含む感光性樹脂層(60μm厚)を得た。ポリエチレンフィルム(保護フィルム、商品名:GF1、30μm厚、タマポリ社製)を感光性樹脂層面に貼り付け、DFRを作製した。
【0118】
【0119】
次に、厚さ25μmのビフェニルテトラカルボン酸系ポリイミドフィルムの両面に、上記実施例21~27、比較例21~22のDFRを、ポリエチレンフィルムを剥がした後貼り付けた。
続いて、5kWの超高圧水銀灯光源を搭載した両面露光機を用い、ライン/スペース=300μm/300μmのテスト用パターンを有するフォトマスクを通して上記のポリイミドフィルムの両面に形成されたDFRに対して密着露光を行い、コンベアー式現像機を用いて、液温30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液で、スプレー圧力0.2MPaの条件で、90秒間現像処理し、テスト用パターン部に、ボトム部でスペース/ライン=300μm/300μmのレジストパターンを得た。
次に、上記両面露光機を使用し、露光量1000mJ/cm2にて紫外線を全面に追加露光した。一連の工程後、レジストパターンを確認したが、比較例22のDFRに関しては、現像が進まず、現像できなかった。
【0120】
上記のレジストパターンを形成したポリイミドフィルムを、80℃で保温した液1~4のそれぞれに撹拌しながら12分間浸漬し、純水で水洗した。
その際、比較例21のDFRに関しては、液1~4の何れのエッチング液においても、スペース/ライン=300μm/300μmのレジストパターンが膨潤剥離してしまい、良好にエッチングができなかった。
一方、実施例21~27のDFRについては、液1~4の全てのエッチング液に対しても、脱離することなく、液温度80℃、12分間の浸漬に耐えた。
【0121】
エッチングの後、レジスト剥離を実施した。レジスト剥離では、剥離液R-100S(商品名、三菱ガス化学株式会社製)及び剥離促進剤R-101(商品名、三菱ガス化学株式会社製)をそれぞれ15体積%及び8体積%ずつ含む水溶液50℃に浸漬した。
実施例21、22及び24に関しては1分以内と短時間にレジスト剥離が完了した。実施例23は15分でレジスト剥離が完了し、少しレジスト剥離に時間を要した。実施例25~27は、60分以上剥離液に浸漬したが、剥離できなかった。
レジスト剥離後に、水洗後乾燥し、エッチングが完了したポリイミドフィルムを500倍の顕微鏡で観察したところ、レジストパターンのスペース部分は貫通しており、またレジストパターンのライン部分においては、エッチング液の入り込みがなく、侵食されていないことが確認できた。
よって、実施例21~27では、エッチングができ、実施例21~24では、レジスト剥離もできた。
【0122】
実施例31~37、比較例31~32
表6に示す各成分を混合し、感光性樹脂組成物の塗工液を得た。アプリケーターを用いて、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(キャリアーフィルム、商品名:R310、16μm厚、三菱ケミカル社製)上に得られた塗工液を塗工し、80℃で5分間乾燥し、溶剤成分を除去し、PETフィルムの片面上に、感光性樹脂組成物を含む感光性樹脂層(60μm厚)を得た。
ポリエチレンフィルム(保護フィルム、商品名:GF1、30μm厚、タマポリ社製)を感光性樹脂層面に貼り付け、DFRを作製した。
【0123】
【0124】
次に、厚さ25μmのビフェニルテトラカルボン酸系ポリイミドフィルムの両面に、上記実施例31~37、比較例31~32のDFRを、ポリエチレンフィルムを剥がした後貼り付けた。
続いて、5kWの超高圧水銀灯光源を搭載した両面露光機を用い、ライン/スペース=300μm/300μmのテスト用パターンを有するフォトマスクを通して上記のポリイミドフィルムの両面に形成されたDFRに対して密着露光を行い、コンベアー式現像機を用いて、液温30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液で、スプレー圧力0.2MPaの条件で、90秒間現像処理し、テスト用パターン部に、ボトム部でスペース/ライン=300μm/300μmのレジストパターンを得た。
次に、上記両面露光機を使用し、露光量1000mJ/cm2にて紫外線を全面追加露光した。一連の工程後、レジストパターンを確認したが、比較例32のDFRに関しては、現像が進まず、現像できなかった。
【0125】
上記のレジストパターンを形成したポリイミドフィルムを、80℃で保温した液1~4のそれぞれに撹拌しながら12分間浸漬し、純水で水洗した。その際、比較例31のDFRに関しては、液1~4の何れのエッチング液においても、スペース/ライン=300μm/300μmのレジストパターンが膨潤剥離してしまい、良好にエッチングができなかった。
一方、実施例31~37のDFRについては、液1~4の全てのエッチング液に対しても、脱離することなく、液温度80℃、12分間の浸漬に耐えた。
【0126】
エッチングの後、レジスト剥離を実施した。レジスト剥離では、剥離液R-100S(商品名、三菱ガス化学株式会社製)及び剥離促進剤R-101(商品名、三菱ガス化学株式会社製)をそれぞれ15体積%及び8体積%ずつ含む水溶液50℃に浸漬した。
実施例31、32、34に関しては、1分以内と短時間にレジスト剥離が完了した。実施例33は、15分でレジスト剥離が完了し、少しレジスト剥離に時間を要した。実施例35~37は、60分以上剥離液に浸漬したところ剥離できなかったが、剥離しないで使用することはできた。
【0127】
実施例31~34において、レジスト剥離後に、水洗後乾燥し、エッチングが完了したポリイミドフィルムを500倍の顕微鏡で観察したところ、レジストパターンのスペース部分は貫通しており、またレジストパターンのライン部分においては、エッチング液の入り込みがなく、侵食されていないことが確認できた。
よって、実施例31~37では、エッチングができ、実施例31~34では、レジスト剥離もできた。
【0128】
実施例41~48、比較例41~42
表7に示す各成分を混合し、感光性樹脂組成物の塗工液を得た。アプリケーターを用いて、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(キャリアーフィルム、商品名:R310、16μm厚、三菱ケミカル社製)上に得られた塗工液を塗工し、80℃で5分間乾燥し、溶剤成分を除去し、PETフィルムの片面上に、感光性樹脂組成物を含む感光性樹脂層(60μm厚)を得た。
ポリエチレンフィルム(保護フィルム、商品名:GF1、30μm厚、タマポリ社製)を感光性樹脂層面に貼り付け、DFRを作製した。
【0129】
【0130】
次に、厚さ25μmのビフェニルテトラカルボン酸系ポリイミドフィルムの両面に、上記実施例41~48、比較例41~42のDFRを、ポリエチレンフィルムを剥がした後貼り付けた。
続いて、5kWの超高圧水銀灯光源を搭載した両面露光機を用い、ライン/スペース=300μm/300μmのテスト用パターンを有するフォトマスクを通して上記のポリイミドフィルムの両面に形成されたDFRに対して密着露光を行い、コンベアー式現像機を用いて、液温30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液で、スプレー圧力0.2MPaの条件で、90秒間現像処理し、テスト用パターン部に、ボトム部でスペース/ライン=300μm/300μmのレジストパターンを得た。
次に、上記両面露光機を使用し、露光量1000mJ/cm2にて紫外線を全面に追加露光した。一連の工程後、レジストパターンを確認したが、比較例42のDFRに関しては、現像が進まず、現像できなかった。
【0131】
上記のレジストパターンを形成したポリイミドフィルムを、80℃で保温した液1~4のそれぞれに撹拌しながら12分間浸漬し、純水で水洗した。その際、比較例41のDFRに関しては、液1~4の何れのエッチング液においても、スペース/ライン=300μm/300μmのレジストパターンが膨潤又は剥離してしまい、良好にエッチングができなかった。
一方、実施例41~48のDFRについては、液1~4の全てのエッチング液に対しても、膨潤又は剥離することなく、液温度80℃、12分間の浸漬に耐えた。
【0132】
エッチングの後、レジスト剥離を実施した。レジスト剥離では、剥離液R-100S(商品名、三菱ガス化学株式会社製)及び剥離促進剤R-101(商品名、三菱ガス化学株式会社製)を、それぞれ15体積%及び8体積%ずつ含む水溶液50℃に浸漬した。
実施例41~43、45及び46に関しては1分以内と短時間にレジスト剥離が完了した。実施例44は15分でレジスト剥離が完了し、少しレジスト剥離に時間を要した。実施例47及び48は、60分以上剥離液に浸漬したところ剥離できなかったが、剥離しないで使用することはできた。
【0133】
レジスト剥離後に、水洗後乾燥し、エッチングが完了したポリイミドフィルムを500倍の顕微鏡で観察したところ、レジストパターンのスペース部分は貫通しており、また、レジストパターンのライン部分においては、エッチング液の入り込みがなく、侵食されていないことが確認できた。よって、実施例41~48では、エッチングができ、実施例41~46では、レジスト剥離もできた。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明の感光性樹脂組成物、エッチング方法及び樹脂構造体の製造方法は、15~45質量%のアルカリ金属水酸化物及び5~40質量%のエタノールアミン化合物を含有するエッチング液によってエッチング処理する際に膨潤や剥離がないので、レジストの製造・使用分野、基板等の電子材料製造分野等の何れにおいても広く利用されるものである。