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特許7457651重ねヒートシール可能な収縮性フィルム、その製造方法、及びそれを用いて製造される包装袋
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  • 特許-重ねヒートシール可能な収縮性フィルム、その製造方法、及びそれを用いて製造される包装袋 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】重ねヒートシール可能な収縮性フィルム、その製造方法、及びそれを用いて製造される包装袋
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20240321BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20240321BHJP
   B32B 27/28 20060101ALI20240321BHJP
   B29C 48/10 20190101ALI20240321BHJP
   B29C 48/21 20190101ALI20240321BHJP
   B29C 49/04 20060101ALI20240321BHJP
   B29C 49/22 20060101ALI20240321BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B32B27/32 A
B32B27/18 Z
B32B27/28 101
B29C48/10
B29C48/21
B29C49/04
B29C49/22
B65D65/40 D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020536782
(86)(22)【出願日】2018-09-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-03-25
(86)【国際出願番号】 CN2018105915
(87)【国際公開番号】W WO2019128320
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-08-25
(31)【優先権主張番号】201711434628.2
(32)【優先日】2017-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520231474
【氏名又は名称】江陰升輝包装材料有限公司
【氏名又は名称原語表記】SUNRISE PACKAGING MATERIAL (JIANGYIN) CO., LTD
【住所又は居所原語表記】No.2 Tonggang Road, Changjing Town, Jiangyin, Wuxi, Jiangsu 214411, China
(74)【代理人】
【識別番号】100205936
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 海龍
(72)【発明者】
【氏名】宋 建新
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-321082(JP,A)
【文献】特表2003-523290(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B65D 65/00-65/46、67/00-79/02、
81/18-81/30、81/38、85/88
B29C 48/00-48/96、49/00-49/46、
49/58-49/68、49/72-51/28、
51/42、51/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外層とヒートシール層とを含む複数の袋の重ねヒートシールに用いる食品包装袋用フィルムであって、
外層は、線形低密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体及び低分子量化合物を含むとともに、電子線架橋処理されており、
ヒートシール層材料は、線形低密度ポリエチレン及びエチレン-酢酸ビニル共重合体のうちの1種又は2種であり、
前記低分子量化合物は、オレアミド、ステアリン酸またはステアリン酸ブチルから選択される1種又は2種以上である、
ことを特徴とする、複数の袋の重ねヒートシールに用いる食品包装袋用フィルム。
【請求項2】
外層中の前記低分子量化合物の含有量は0.5~50wt%であることを特徴とする、請求項1に記載の複数の袋の重ねヒートシールに用いる食品包装袋用フィルム。
【請求項3】
中間層をさらに含み、
中間層の材料は塩化ビニリデン共重合体、エチレンビニルアルコール共重合体、線形低密度ポリエチレン及びエチレン-酢酸ビニル共重合体のうちの1種又は2種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の複数の袋の重ねヒートシールに用いる食品包装袋用フィルム。
【請求項4】
外から内へ順に外層と、中間層と、ヒートシール層を含み、
外層は、60~95wt%の線形低密度ポリエチレン、3~10wt%のエチレン-酢酸ビニル共重合体、及び2~30wt%の低分子量化合物を含み、
中間層の材料は、塩化ビニリデン共重合体、エチレンビニルアルコール共重合体、線形低密度ポリエチレン及びエチレン-酢酸ビニル共重合体のうちの1種又は2種以上であり、
ヒートシール層は、50~100wt%のポリエチレン及び0~50wt%のエチレン-酢酸ビニル共重合体を含むことを特徴とする、請求項1に記載の複数の袋の重ねヒートシールに用いる食品包装袋用フィルム。
【請求項5】
外層と中間層の間、中間層とヒートシール層の間は、それぞれ1層又は2層の接着層により接着され、
接着層の材料は、線形低密度ポリエチレン及びエチレン-酢酸ビニル共重合体のうちの1種又は2種であることを特徴とする、請求項4に記載の複数の袋の重ねヒートシールに用いる食品包装袋用フィルム。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の複数の袋の重ねヒートシールに用いる食品包装袋用フィルムの製造方法であって、
フィルムチューブを押し出すステップS1と、
共押出フィルムチューブを加熱した後、ブロー成形してフィルムバブルを形成し、二重配向構造を得、さらに冷却硬化により多層共押出フィルムを製造するステップS2と、
前記多層共押出フィルムを電子線架橋処理し、表面層をポリマー分子鎖架橋構造に形成させるステップS3と、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項7】
ステップS3において、電子加速処理の電圧範囲は125-500kev、電子放射線量は3-20Mradであることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
請求項1から5のいずれか1項に記載の複数の袋の重ねヒートシールに用いる食品包装袋用フィルムで製造されることを特徴とする、包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装膜技術分野に属し、重ねヒートシール可能な収縮性フィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
収縮性フィルム袋は、主に生肉製品、加工肉製品、シーフード、チーズなどの食品の包装、に広く使用されており、特に、不規則な形状の物品又は商品の組み合わせ(クラスター化)包装では、食品の安全性を確保し、交差感染などの機能を防止するだけでなく、食品の保存期間を延長することができる。食品包装に使用される収縮性フィルム袋は、一般的に適切な収縮率、酸素バリア性、耐湿性、耐衝撃性(穿刺抵抗能力)、耐寒性、耐熱性、耐油性などの特性を有する。
【0003】
自動又は半自動包装装置の包装効率を向上させるために、複数の袋を同時にヒートシールする必要がある。しかし、複数の袋を同時にヒートシールする場合、ヒートシールの端部が重なると、袋同士が融着する可能性がある。袋同士の融着との問題を解決するために、溶融温度差を増大させる目的で、従来の収縮性フィルムの外層と内側のヒートシール層の2つの表層に異なる材質を使用している。従来技術において、外層がヒートシール層の溶融温度よりも65℃~150℃高く、ヒートシール層は通常ポリエチレンを使用し、外層は通常ナイロン6,66/ナイロン6などのアミド共重合体又はその混合物、ホモポリプロピレン材料、ポリエチレンテレフタレートなどの高融点材料を使用する。これによって、複数の袋を重ねてヒートシールする際に、内層は剥離不可能な界面を形成し、外層は剥離可能で融着しない界面を形成し、袋の重ねヒートシールの効果が得られる。しかしながら、外層材質とヒートシール層材質との融点温度差が大きいため、多層共押出生産における収縮性フィルムの操作が困難となり、制御性が高くない。また、上記外層材質の融点が高いため、加工時にエネルギー消費量が多いだけでなく、設備に対する要求が高く、加工設備のスクリュー及び金型の清掃が困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そのため、従来技術における収縮性フィルム袋の外層とヒートシール層との融点温度差が大きいので加工設備に対する要求が高く、生産制御が困難であるなどの技術的問題を解決するために、本発明の第1目的は、重ねヒートシール可能な収縮性フィルムを提供することである。上記重ねヒートシール可能な収縮性フィルムの外層とヒートシール層は、材料の融点差が小さいが、複数の袋を重ねてヒートシールする際に、袋の内層は剥離不可能な界面を形成し、かつ隣接する2つの袋の外層は剥離可能で融着しない界面を形成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の重ねヒートシール可能な収縮性フィルムは、外層及びヒートシール層を含み、外層は低分子量化合物を含み、電子線架橋処理されており、上記低分子量化合物がパラフィン、オレアミド、ステアリン酸及びそれらの誘導体からなる群より選択される1種又は2種以上(2種を含む。以下同じ)であることを特徴とする。
【0006】
本発明では、外層にパラフィン、オレアミド、ステアリン酸及びそれらの誘導体などの低分子量化合物が添加される。これらの低分子量化合物は、重ねヒートシールのときに熱により運動速度がポリマー分子鎖の速度よりも速いため、ポリマー中を移動し、ポリマー分子鎖の移動に影響を与える一方、同じ圧力下で、パラフィン、オレアミド又はステアリン酸などの低分子量化合物は、ほとんど2つの溶融の界面に移動し、ポリマー分子鎖の相互透過を阻止することができる。また、本発明では、外層を電子線架橋処理することで外層をポリマー分子鎖架橋構造に形成させることにより、ポリマー分子鎖の移動がさらに低下する。上記複数の要因の共同作用により、複数層の収縮性フィルムを重ねて加熱押出する際に、両層の収縮性フィルムの隣接する面が外層である場合、ポリマー分子鎖の相互透過が阻止され、融着しにくいため、剥離可能な界面が形成される。このような場合、外層材料の融点がヒートシール層材料の融点よりも遥かに高くなくても(0~64℃又はそれ以下高ければ)、複数の袋の重ねヒートシールに適用することができる。
【0007】
オレアミドの誘導体は、ヒドロキシル基、ハロゲン、C~Cアルキル基などで置換されたオレアミド系化合物を含む。
【0008】
パラフィンの誘導体は、ヒドロキシル基、ハロゲン、C~Cアルキル基などで置換されたパラフィン系化合物を含む。
【0009】
ステアリン酸の誘導体は、ステアリン酸エステル、ステアリン酸塩、置換されたステアリン酸、置換されたステアリン酸エステル、置換されたステアリン酸塩を含む。ステアリン酸エステルは、ステアリン酸メチル、ステアリン酸エチル、ステアリン酸プロピル、ステアリン酸ブチルなどを含み、ステアリン酸塩は、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などを含み、置換されたステアリン酸、置換されたステアリン酸エステル、置換されたステアリン酸塩における置換基は、ヒドロキシル基、ハロゲン、C~Cアルキル基などを含む。
【0010】
好ましくは、外層における上記低分子量化合物の含有量は0.5~50wt%、好ましくは0.5~30wt%である。
【0011】
好ましくは、外層の材料(上記低分子量化合物を除く)は、ポリオレフィン及びエチレン共重合体のうちの1種又は2種以上である。
【0012】
パラフィン、オレアミド、ステアリン酸及びそれらの誘導体を添加した後、ポリオレフィン材料の表面(外面)にこの化合物の多くの分布点が形成され、これらの分布点において、このような低分子化合物はポリオレフィン材料分子鎖の間の有効な融着を阻止することができ、これらの化合物の量の増加につれて、ポリオレフィン分子鎖の間の不融着点が増加する。ポリオレフィン材料が加速電子線により衝撃されると、分子鎖は架橋構造を形成し、電子線線量が多いほど、架橋密度が高くなり、高分子の架橋点は溶融せず溶解しない。上記2つの要素が共同に作用する時、即ち、弱めた融着点(化合物作用)が増加し(この種類の化合物を添加した後、外面における元に融着可能な作用点が弱められる)、架橋点も増加する時に(電子線量の作用)、融着可能で剥離不可能な界面が破壊され、融着せず、剥離可能な新しいポリオレフィンヒートシール界面(外面)が形成される。
【0013】
好ましくは、ヒートシール層の材料は、ポリオレフィン、エチレン共重合体及びサーリン(登録商標)樹脂のうちの1種又は2種以上である。
【0014】
本発明のいつかの好ましい実施例において、上記重ねヒートシール可能な収縮性フィルムのバリア性を向上させるために、中間層をさらに含む。中間層の材料は、塩化ビニリデン共重合体(PVdC)、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリオレフィン、エチレン共重合体及びサーリン(登録商標)樹脂(Surlyn(登録商標))のうちの1種又は2種以上の混合物である。バリア性が良好な塩化ビニリデン共重合体が好ましい。
【0015】
本発明において、好ましくは、ポリオレフィンは、ポリプロピレン(PP)、低密度ポリエチレン(LDPE)及び線形低密度ポリエチレン(LLDPE)からなる群より選択される。ポリオレフィンは、融点が80~170℃であることが好ましく、例えば、80~130℃の線形低密度ポリエチレンであり、さらに例えば、融点が158~165℃のブロック共重合ポリプロピレンである。
【0016】
好ましくは、エチレン共重合体は、エチレン-酢酸エチレン共重合体、エチレン-メチルアクリレート共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体及びエチレン-無水マレイン酸共重合体からなる群より選択される。エチレン共重合体におけるエチレンの含有量は72~96wt%であることが好ましい。エチレン共重合は、融点が60~110℃であることが好ましい。例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニルの含有量が9~28%である場合、融点は70~110℃であり、酢酸ビニルの含有量が9~20%である場合、融点は85~100℃である。
【0017】
本発明の別の好ましい実施例において、上記重ねヒートシール可能な収縮性フィルムは、外から内へ順に外層と、中間層と、ヒートシール層を含み、
外層は、60~95wt%のポリオレフィン、3~10wt%のエチレン共重合体、及び2~30wt%の低分子量化合物を含み、
中間層の材料は、塩化ビニリデン共重合体、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリオレフィン、エチレン共重合体、サーリン(登録商標)樹脂のうちの1種又は2種以上であり、
ヒートシール層は、50~100wt%のポリエチレン及び0~50wt%エチレン-酢酸ビニル共重合体を含む。
【0018】
好ましくは、外層と中間層の間、中間層とヒートシール層の間は、それぞれ1層又は2層の接着層により接着されてもよい。接着層の材料は、ポリオレフィン、エチレン共重合体及びサーリン(登録商標)樹脂のうちの1種又は2種以上である。
【0019】
接着層は、主に過渡的な接着及び補助バリアの作用を奏し、多層共押出生産プロセスの操作を容易にする。
【0020】
好ましくは、外層と中間層の間の接着層は2層を含む。外層に隣接する層の材料は、ポリエチレンとエチレン-酢酸ビニル共重合体との混合物、又はポリエチレンと、エチレン-酢酸ビニル共重合体と、サーリン(登録商標)樹脂との混合物である。中間層に隣接するもう1層の材料は、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エチルポリマー又はエチレン-無水マレイン酸共重合体である。
【0021】
好ましくは、中間層とヒートシール層との間の接着層は2層を含む。ヒートシール層に隣接する層の材料は、エチレン-酢酸ビニル共重合体とサーリン(登録商標)樹脂の混合物、又はポリエチレンとエチレン-酢酸ビニル共重合体との混合物である。中間層に隣接するもう1層の材料は、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エチルポリマー又はエチレン-無水マレイン酸共重合体である。
【0022】
本発明の別のいつかの好ましい実施例において、上記重ねヒートシール可能な収縮性フィルムは、外から内へ順に外層と、外表接着層と、接着層と、中間層と、接着層と、ヒートシール接着層とを含む。
外層は、60~95wt%のポリエチレン、3~10wt%のエチレン-酢酸ビニル共重合体、及び2~30wt%の低分子量化合物を含み、
外表接着層は、15~25wt%のポリエチレン、及び75~85wt%のエチレン-酢酸ビニル共重合体を含み、
接着層の材料は、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エチルポリマー、又はエチレン-無水マレイン酸共重合体であり、
中間層の材料は、塩化ビニリデン共重合体であり、
接着層の材料は、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エチルポリマー又はエチレン-無水マレイン酸共重合体であり、
ヒートシール接着層は、15~25wt%のポリエチレン、及び75~85wt%エチレン-酢酸ビニル共重合体を含み、
ヒートシール層は、50~60wt%のポリエチレン、及び40~50wt%エチレン-酢酸ビニル共重合体を含む。
【0023】
本発明の第2目的は、上記重ねヒートシール可能な収縮性フィルムの製造方法を提供することである。この方法は、以下のステップを含む。
S1:フィルムチューブを押し出す。
S2:共押出フィルムチューブを加熱した後、ブロー成形によりフィルムバブルを形成し、二重配向構造を得、さらに冷却硬化により多層共押出収縮性フィルムを製造する。
S3:上記収縮性フィルムを電子線架橋処理することにより、表面層をポリマー分子鎖架橋構造に形成させる。
【0024】
好ましくは、ステップS3において、電子加速処理の電圧範囲は125-500kev、電子放射線量は3-20Mradである。
【0025】
いくつかの実施例において、ステップS1におけるフィルムチューブを押し出すとは、重ねヒートシール可能な収縮性フィルムの各層に対応する原料を多層共押出ダイを備えた押出機に投入し、共押出してフィルムチューブを製造することをいう。
【0026】
本発明の第3目的は、上記重ねヒートシール可能な収縮性フィルムで製造される包装袋を提供することである。上記包装袋は、新鮮肉製品、食肉加工品、シーフード、チーズなどの製品のヒートシール保存に適用できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、以下の有益な効果を有する。
1、本発明では、外層にパラフィン、オレアミド、ステアリン酸及びそれらの誘導体などの低分子量化合物が添加される。これらの低分子量化合物は、ヒートシールのときに熱により運動速度がポリマー分子鎖の速度よりも速いため、ポリマー中を移動し、ポリマー分子鎖の移動に影響を与える一方、同じ圧力下で、添加される低分子量化合物は、ほとんど2つの溶融の界面に移動し、ポリマー分子鎖の相互透過を阻止することができる。また、本発明では、外層を電子線架橋処理することで外層をポリマー分子鎖架橋構造に形成させることにより、ポリマー分子鎖の移動がさらに低下する。上記複数の要因の共同作用により、複数層の収縮性フィルムを重ねて加熱押出する際に、両層の収縮性フィルムの隣接する面が外層である場合、ポリマー分子鎖の相互透過が阻止され、融着しにくいため、剥離可能な界面が形成される。このような場合、外層材料の融点がヒートシール層材料の融点よりも遥かに高くなくても(0~64℃又はそれ以下高ければ)、複数の袋の重ねヒートシールに適用することができる。
【0028】
2、本発明のいつかの好ましい実施例において、外層は融点が比較的低い樹脂、例えばポリプロピレン、ポリエチレン又はポリエチレンとエチレン-酢酸ビニル共重合体の混合物などを使用するとともに、パラフィン、オレアミド、ステアリン酸及びそれらの誘導体を添加し、ヒートシール層は、ポリエチレン又はポリエチレンとエチレン-酢酸ビニル共重合体の混合物を使用し、融着性能が高い。外層材料の融点がヒートシール層よりも僅かな0~64℃高いが、複数の袋の重ねヒートシールを実現することができ、隣接する袋の外層が互いに剥離可能であり、融着しない効果が得られる。これによって、フィルムの外層に融点がより低く、加工がより容易な樹脂を使用することにより、設備に対する要求が低くなり、エネルギー消費が合理的に削減されるとともに、低融点の樹脂がフィルム加工生産においてより高い制御性を有し、さらに、スクリュー及び金型などの加工設備において低融点の樹脂材料は取り除かれやすい。
【0029】
3、実験より明らかなように、本発明の重ねヒートシール可能な収縮性フィルムの好ましい実施例において、ヒートシール層は50~60wt%のポリエチレンと40~50wt%のエチレン-酢酸ビニル共重合体の混合物を使用することで、高い溶融接着性能を有し、袋のヒートシール性を効果的に向上できる。また、対応する外層の材質は、60~95wt%のポリエチレン、3~10%のエチレン-酢酸ビニル共重合体及び2~30%のパラフィン、オレアミド又はステアリン酸を使用する。ことによって、ポリエチレンがエチレン-酢酸ビニル共重合体と相乗的に作用することができ、添加した化合物は、外層の溶融接着を効果的に減少でき、3種類の材質の混合により、外層材料は融点が高くないが、接着しにくいため、複数の袋の重ねヒートシールを実現でき、隣接する袋の外層が互いに剥離可能であり、融着しない効果が得られるとともに、外層材料の融点がヒートシール層よりも僅かな0~39℃高いことが保証され、エネルギー消耗が効果的に減少され、加工がより容易になる。外表接着層は15~25wt%のポリエチレンと75~85wt%のエチレン-酢酸ビニル共重合体の混合物を使用し、接着層はエチレン-酢酸ビニル共重合体を使用することにより、外層と中間層は、外表接着層及び接着層を介して効果的に接着される。中間層とヒートシール層は、同様に2層を介して接着される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の実施例2~7の重ねヒートシール可能な収縮性フィルムの構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下の具体的な実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されない。当業者が本発明にわずかな変更を加えるだけで同様の結果を達成することができる。これらの変更も本発明の範囲内に含まれる。
【0032】
実施例1~7及び比較例1~8
【0033】
表1 原料
【表1】
【0034】
表2 実施例1~7及び比較例1~8の各層の原料及び質量%含有量
【表2】
【0035】
実施例1~7及び比較例1~7では、それぞれ以下のステップS1~S3に従って収縮性フィルムを製造する。
S1:表2に示される各層に対応する原料を多層共押出ダイを備えた押出機に投入し、押し出してフィルムチューブを製造し、フィルムチューブを冷却処理する。
S2:共押出フィルムチューブを加熱した後、ブロー成形してフィルムバブルを形成し、二重配向構造を得、さらに冷却硬化することにより多層共押出収縮性フィルムを製造する。
S3:この収縮性フィルムを電圧範囲125-500kev、電子放射線量3-20Mradの条件で電子線架橋処理し、表面層にポリマー分子鎖架橋構造を形成する。
【0036】
実施例1は、2層構造であり、実施例2~6及び比較例1~7は、いずれも7層構造であり、比較例1~7の外層にステアリン酸などの低分子量化合物が添加されなかった。
【0037】
比較例8の原料は実施例3と同様であるが、比較例8では、ステップS1~S2に従って収縮性フィルムを製造し、ステップS3の電子線架橋処理を行わなかった。
【0038】
実施例1~7及び比較例1~8で製造された収縮性フィルムに対して性能試験及び重ねヒートシール性試験を行う。
<重ねヒートシール性試験>
2つ又は3つの袋を重ね、真空引きしてヒートシールし、試験を10回繰り返した。接着とは、2つの袋を重ねてヒートシールした後、2つの袋の間に接触した外面が融着して分離しにくい回数をいい、回数が多いほど、重ねヒートシール効果は悪くなる。密着とは、2つの袋を重ねてヒートシールした後、2つの袋の間に接触した外面が貼り付けられルが、熱収縮した後分離できる回数をいい、回数が少ないほど、重ねヒートシール効果は良くなる。
【0039】
性能試験及び重ねヒートシール性試験の結果を表3に示す。
【0040】
表3 実施例1~6及び比較例1~8の性能試験の結果
【表3】
【0041】
表3から分かるように、重ねヒートシール性について、比較例1、2、4及び8は、内外層材料の融点差が大きくないが、低分子量化合物が添加されていない比較例1、2及び外層に電子線架橋処理を行わなかった比較例8では、重ねヒートシール効果は比較的悪く、袋の間に深刻なブロッキングが発生した。比較例3及び5は、内外層の溶融温度差が比較的大きく、良好な接着防止性能を有するが、密着性能が低かった。比較例6及び7においても、重ねて密封するときに密着性能が低い問題があった。よって、比較例1~8はいずれも高い密着性及び接着防止性能の要求を同時に満足することができず、複数の袋の重ね密封に適用できない。実施例1~7では、外層に低分子量化合物を添加するとともに、電子線架橋処理することにより、加熱するときに接着しにくく、内外層材料の融点差が0~64℃であったが、高い密着性能を有し、2つの袋の接着が効果的に防止され、外面が互いに貼り付けられた袋が熱収縮すると容易に分離することができ、複数の袋の重ね密封に適用できる。
【0042】
また、収縮性能(縦方向(MD)及び横方向(TD)を含む)、ヘーズ(透明度)及び引張強さにおいては、実施例1~7と比較例1~8の間に大きな違いはない。
【0043】
以上、本発明の好ましい実施例を詳しく説明したが、本発明は以上の実施例に制限されない。本発明の趣旨から逸脱しない限り、当業者は様々な同等の変形又は変更を行うことができ、これらの同等の変形又は置換は、いずれも本願の特許請求の範囲内に含まれる。
図1