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特許7457660ポリヌクレオチドを単離及び精製するための溶解コイル装置及びその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】ポリヌクレオチドを単離及び精製するための溶解コイル装置及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/33 20060101AFI20240321BHJP
   C12N 1/06 20060101ALI20240321BHJP
   G01N 1/10 20060101ALI20240321BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
C12M1/33
C12N1/06
G01N1/10 V
G01N33/48 S
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2020566755
(86)(22)【出願日】2019-05-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-27
(86)【国際出願番号】 US2019034840
(87)【国際公開番号】W WO2019232324
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2021-12-24
(31)【優先権主張番号】62/678,355
(32)【優先日】2018-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515129375
【氏名又は名称】ブイジーエックスアイ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100166165
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 英直
(72)【発明者】
【氏名】ジャレド ネルソン
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン ロドリゲス
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー イー.ダーネル
【審査官】小金井 悟
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06664049(US,B1)
【文献】国際公開第97/004496(WO,A1)
【文献】特開2010-187947(JP,A)
【文献】特開2007-319488(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2001/0034435(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00- 3/10
C12N 1/00- 7/08
Google/Google Scholar
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞懸濁液の溶液及び溶解溶液を流体的に受け取り、溶液混合物として前記溶液を流体的に移送し、それによって前記細胞懸濁液中の細胞の内容物を溶解及び放出することができる溶解コイル装置であって、高さを有する円筒型溶解コイルホルダー、並びに第1の端、第2の端、及び中間の部分を有する可撓性のある溶解コイルを備え、前記可撓性のある溶解コイルが、細胞懸濁液の溶液及び溶解溶液を前記第1の端から受け取り、前記溶解コイルからの前記溶液混合物を前記第2の端から移送するように構成され、前記溶解コイルホルダーが、可撓性のある溶解コイルを前記円筒型溶解コイルホルダーの外面上に収容及び固定することができる、溶解コイル装置。
【請求項2】
前記溶解コイルホルダーが、前記溶解コイルホルダーの前記高さを横切る長さを有する均一な螺旋溝が埋め込まれた表面を有し、前記可撓性のある溶解コイルが、前記溶解コイルが前記溶解コイルホルダーの前記溝によって収容され、前記溶解コイルホルダーの前記溝の前記長さを横切ることができるサイズの内径を有する、請求項1に記載の溶解コイル装置。
【請求項3】
前記溶解コイルの前記内径が1インチ(2.54センチメートル)未満である、請求項2に記載の溶解コイル装置。
【請求項4】
前記溶解コイルが、前記溶液混合物が線流速で流れることを可能にし、4~6分の前記溶解コイルの保持時間をもたらすように構成される、請求項2に記載の溶解コイル装置。
【請求項5】
前記溶解コイルが、前記溶液混合物が8m/分~12m/分の線流速で流れることを可能にするように構成される、請求項2に記載の溶解コイル装置。
【請求項6】
前記溶解コイルの前記長さが100フィート(30.48メートル)長を超える、請求項2に記載の溶解コイル装置。
【請求項7】
前記溶解コイルが1回の使用後に使い捨て可能である請求項2に記載の溶解コイル装置。
【請求項8】
前記溶解コイルホルダーが、24インチ(60.96センチメートル)の径方向直径及び3フィート(91.44センチメートル)~6フィート(182.88センチメートル)の高さを有する、請求項2に記載の溶解コイル装置。
【請求項9】
前記溶解コイルホルダーの前記溝が、2.15度~3.43度のピッチで前記溶解コイルホルダーの周りを横切る、請求項2に記載の溶解コイル装置。
【請求項10】
前記溶解コイルホルダーが、前記溶解コイル装置を容易に運ぶことができる車輪支持体を有する、請求項9に記載の溶解コイル装置。
【請求項11】
前記溶解コイルの前記内径が3/8インチ(9.525ミリメートル)であり、前記溶解コイルが、前記溶液混合物が9.75m/分の線流速で流れるように構成される、請求項2に記載の溶解コイル装置。
【請求項12】
前記保持時間が5分であり、前記溶解コイルの前記長さが150フィート(45.72メートル)長である、請求項4に記載の溶解コイル装置。
【請求項13】
前記線流速が9.75m/分であり、前記溶解コイルの前記長さが150フィート(45.72メートル)長である、請求項5に記載の溶解コイル装置。
【請求項14】
前記長さが150フィート(45.72メートル)長であり、前記溶解コイルが、前記溶液混合物が9.75m/分の線流速で流れることを可能にするように構成される、請求項6に記載の溶解コイル装置。
【請求項15】
前記溶解コイル内径が3/8インチ(9.525ミリメートル)であり、前記溶解コイル長が150フィート(45.72メートル)長である、請求項7に記載の溶解コイル装置。
【請求項16】
前記溶解コイルの前記内径が3/4インチ(19.05ミリメートル)であり、前記溶解コイルが、前記溶液混合物が9.75m/分の線流速で流れることを可能にするように構成される、請求項2に記載の溶解コイル装置。
【請求項17】
前記溶解コイルの前記長さが160フィート(48.768メートル)長である、請求項16に記載の溶解コイル装置。
【請求項18】
細胞懸濁液の溶液及び溶解溶液を流体的に受け取り、それにより細胞を溶解し、そして次いで、溶液混合物として前記溶液を流体的に移して中和溶液と接触させ、それによって前記細胞懸濁液中の細胞の内容物を放出することができ、高さを有する円筒型溶解コイルホルダー、並びに第1の端、第2の端、及び中間の部分を有する可撓性のある使い捨て溶解コイルを備える溶解コイル装置を使用して、所望のポリヌクレオチドを含有する細胞を溶解する方法であって、前記可撓性のある溶解コイルが、細胞懸濁液の溶液及び溶解溶液を前記第1の端から受け取り、前記溶解コイルからの前記溶液混合物を前記第2の端から移送するように構成され、前記溶解コイルホルダーが、一定のピッチで前記溶解コイルホルダーの前記高さを横切る長さを有する均一な螺旋溝が埋め込まれた表面を有し、前記可撓性のある溶解コイルが、前記溶解コイルが前記溶解コイルホルダーの前記溝によって収容され、かつ前記溶解コイルホルダーの前記溝の長さを横切ることができるサイズの内径を有し、次の工程:
使い捨て溶解コイルを前記溶解コイルホルダーの前記溝に固定すること、
前記細胞懸濁液の溶液を前記溶解コイルの前記第1の端に移送すること
前記溶解溶液を前記溶解コイルの前記第1の端に移送して、前記細胞懸濁液の前記溶液が前記溶解溶液と混合することを可能にすること、及び
中和溶液と一緒に、前記溶液混合物を区画に流体的に移送して、溶解プロセスを終わらせること
を含む、方法。
【請求項19】
前記移送工程が8m/分~12m/分の線流速で行われる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記溶液混合物が、およそ4分~6分の間に前記溶解コイルの前記長さを横切る、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記移送工程が9.75m/分の線流速で行われる、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年5月31日に出願された米国特許仮出願第62/678,355号に基づく優先権を主張する。該仮出願の内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
生体分子は、一般に、さまざまな研究開発のために、多くの場合、患者治療用のバイオ医薬品の製造のためにプロセス及び精製される。特に、DNAプラスミドを含むポリヌクレオチドは、宿主細胞から精製することができる。
【0003】
遺伝病の治療及び遺伝的免疫のための治療薬剤(すなわちDNA遺伝子治療)としてのDNAの送達にますます注目が集まってきている。潜在的に感染性のあるウイルスを使用することの安全上の懸念から、研究者たちは、裸のDNA又は非ウイルス性の他のDNA送達方法を用いて、ウイルスに代わるものを研究してきた。遺伝子治療の需要が増加するにつれて、大量のプラスミド又は適切なDNAが必要となる。しかし、ヒトへの適用に必要な純度レベルでより多くのDNAを単離するための現在の方法には限界があり、この分野の進歩の妨げになる可能性がある。
【0004】
一般に、DNAプラスミドの製造方法は、宿主細胞中でプラスミドを複製し、そのような細胞を溶解し、それからプラスミドを放出し、次いでプラスミドを単離する工程を含む。これらはすべて、ヒトでの臨床試験に必要な高い純度レベルを、臨床試験に適切な投与量レベルを提供するのに必要な量、最終的には市販品に必要な量で得るのとともに行う必要がある。
【0005】
プラスミドを精製するためのさまざまな既存の方法が存在する。しかし、これらの方法は大規模な調製には適していない。実験室規模の精製技術は、大規模なプラスミド調製に必要とされる量に対して単純にスケールアップすることはできない。大規模調製物は、汚染物質の除去及びプラスミドの濃度を最大にする一方で、収率及び分子完全性の最適化を必要とする。大量のプラスミドDNAの高濃度での生産では、プラスミドをスーパーコイル状で開環弛緩型として維持することに問題がある。保存条件は一般に高い塩濃度を必要とし、塩の存在下でも経時的な分子分解が問題として残る。多くの既存の精製方法は、潜在的に危険、毒性、変異原性若しくは混入物質及び/又は高価な物質若しくは装置の使用に依存しており、これはやはり大規模な調製には望ましくない。いくつかの既存の精製方法は、最終的な除去のためにタンパク質を消化する酵素を利用し、そのような酵素は、大規模な生産にはコストがかかり、生物学的汚染のリスクを引き起こしうる。
【0006】
宿主細菌細胞を溶解するにはさまざまな方法が存在する。プラスミド精製のために実験室規模で使用されるよく知られた方法としては、酵素消化(例えばリゾチームを用いる)、熱処理、圧力処理、機械的粉砕、超音波処理、カオトロープ(例えばグアニジニウムイソチオシアン酸塩)による処理、及び有機溶媒(例えばフェノール)による処理が挙げられる。これらの方法は小規模で容易に行うことができるが、プラスミドの調製で大規模な使用への適合に成功したものはほとんどない。現在、プラスミド精製のために細菌を溶解する好ましい方法は、アルカリ及び界面活性剤の使用によるものである。この技術は、Birnboim and Doly (1979, Nucleic Acids Res. 7,1513 1523)によって最初に報告された。この手順の一般的に使用される変形は、Sambrook et al.分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)、2.sup.nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press、ニューヨーク州コールド・スプリング・ハーバー)の1.38 1.39ページに記載されている。この溶解法には明確な利点があり、細胞からのプラスミド分子の効率的な放出をもたらすことにくわえて、この手順は、宿主タンパク質、脂質、及びゲノムDNAの大部分を除去することによってプラスミドの実質的な精製を可能にする。他の手段によってゲノムDNAをプラスミドDNAから分離することが困難でありうるので、ゲノムDNAの除去は特に有用である。これらの利点により、この方法は、実験室規模でのプラスミド精製中に細菌細胞を溶解するために好ましいものになる。
【0007】
以前は細胞懸濁液と溶解溶液の混合は非常に低い剪断力で行わなければならないと考えられてきた。これは、プラスミド含有細菌の懸濁液をアルカリ及び界面活性剤を含む溶解溶液と混合することに関して記載されている。米国特許第5,837,529号及び米国特許出願公開第2002/0198372号。各々は、連続的な低剪断混合を達成するためにスタティックミキサーを使用することを企図しているが、米国特許第6,395,516号は、バッチモードで制御された混合用に設計された容器を使用することを企図している。そのような方法には明らかな欠点がある。一つの点については、過剰な剪断を最小限にするように試みている間、細胞懸濁液と溶解溶液との混合が不完全である可能性がある。別の点では、スタティックミキサーを使用することは、プロセスの柔軟性を制限する。米国特許出願公開第2002/0198372に記載のように、静的混合要素の数、及び要素を通過する流体の流速を最適化することが必要である。そのような最適化は、最適化された静的混合装置で所定の時間内にプロセスできる材料の量を制限する。これは、新しい、より大容量の静的混合装置が構築及び最適化されない限り、プロセスの規模を大きくする能力を制限する。米国特許第6,395,516号に記載のバッチ混合容器の使用にも同様の欠点がある。バッチ混合容器の全ての領域において完全な混合を達成することが困難であることは当業者には周知である。さらに、バッチ混合容器は、細胞懸濁液が溶解溶液と接触する制御された曝露時間を必要とする用途にはあまり適していない。特に、プラスミド含有細胞をアルカリに長時間曝露すると、永久的に変性したプラスミドが過剰に形成され、それは一般に不活性であり、望ましくなく、生物学的に活性のあるプラスミドから、後で分離することが困難であることがよく知られている。典型的には、そのような曝露時間は約10分又はそれ未満に制限することが望ましい。このような制限された曝露時間を達成することは、大規模バッチ混合を用いて困難又は不可能である。上記の問題に対する解決策は、米国特許出願公開第2009/0004716A1号に部分的に記載されている。
【0008】
したがって、当該技術分野では、プラスミドなどの目的の生物活性分子の大規模生産のための方法に対する必要性、特に、大規模生産に向けて、ポータブルで、使い捨て(1回限りの使用)可能に、かつ/又は経済的に構成される溶解コイル装置を含む製造装置、及びそのような装置を使用する製造方法に対する必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0009】
本発明の一態様は、細胞懸濁液の溶液及び溶解溶液を流体的に受け取り、溶液混合物として前記溶液を流体的に移送し、それによって細胞懸濁液中の細胞の内容物を溶解及び放出することができ、高さを有する円筒型溶解コイルホルダー、並びに第1の端、第2の端、及び中間の部分を有する可撓性のある溶解コイルを備える溶解コイル装置を含み、前記可撓性のある溶解コイルは、細胞懸濁液の溶液及び溶解溶液を第1の端から受け取り、溶解コイルからの前記混合溶液を第2の端から移送するように構成され、前記溶解コイルホルダーは、可撓性のある溶解コイルを前記円筒型溶解コイルホルダーの外面上に収容及び固定することができる。本発明のいくつかの態様では、溶解コイルホルダーは、溶解コイルホルダーの高さを横切る長さを有する均一な螺旋溝が埋め込まれた表面を有し、前記可撓性のある溶解コイルは、溶解コイルが溶解コイルホルダーの溝によって収容され、前記溶解コイルホルダーの溝の長さを横切ることを可能にするサイズの内径を有する。
【0010】
いくつかの実施形態では、前記溶解コイルの内径は約1インチ未満であり、7/8、3/4、5/8、1/2、3/8、又は1/4インチを含み、好ましくは、いくつかの実施形態では前記溶解コイルの内径は3/4であり、いくつかの実施形態では1/2インチであり、又は他の好ましい実施形態では3/8インチである。いくつかの実施形態では、溶解コイルは、溶解コイル内の保持時間が約4~約6分、好ましくは約5分となるような線流速で溶液混合物を流すように構成される。一方、いくつかの実施形態では、溶解コイルは、溶液混合物が、8m/分~約12m/分の線流速、好ましくは約9.95、9.90、9.85、9.80、9.75、9.70、9.65、9.60、9.55、又は9.50m/分の線流速、より好ましくは、9.80、9.75、又は9.70m/分で流れることを可能にするように構成される。溶解コイルは、長さが100フィート長、好ましくは、140、145、150、155、160、165、又は170フィート長、より好ましくは、150、155又は160フィート長を超えることができる。溶解コイル装置のいくつかの実施形態では、溶解コイルは1回の使用後に使い捨て可能である。
【0011】
溶解コイルホルダーは、径方向直径(radial diameter)が、約20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30インチ、好ましくは、23、24、又は25インチであり、高さが、約3フィート~約6.25フィート、約3.5フィート~約6.25フィート、約4フィート~約6.25フィート、約4.5フィート~約6.25フィート、約5.0フィート~約6.25フィート、約3.5フィート~約6.0フィート、約4フィート~約6.0フィート、約4.5フィート~約6.0フィート、約5.0フィート~約6.0フィート、約3.5フィート~約5.75フィート、約3.75フィート~約5.75フィート、約4フィート~約5.75フィート、約4.5フィート~約5.75フィート、又は約5.0フィート~約5.75フィート、好ましくは、約5.8、5.9、6.0、6.1、又は6.2フィートであることができる。溶解コイル装置のいくつかの実施形態では、溶解コイルホルダーの溝が、約2.15度~約3.43度のピッチで溶解コイルホルダーの周りを横切る。溶解コイルホルダーは、前記溶解コイル装置を容易に運ぶことができる車輪支持体(wheel supports)を有することができる。
【0012】
溶解コイル装置のいくつかの好ましい実施形態では、溶解コイルは、内径が、約3/8インチ、1/2インチ、又は3/4インチであり、溶解コイルは、溶液混合物が約9.70、9.75、又は9.80m/分の線流速で流れることを可能にするように構成される。溶解コイル装置のいくつかの好ましい実施形態では、溶解コイルは、長さが、約150フィート、155フィート、又は160フィート長であり、保持時間が、約4.8分、4.9分、5.0分、5.1分、又は5.2分である。他の好ましい実施形態では、線流速は約9.75m/分であり、溶解コイルの長さは約150フィート長である。さらに、いくつかの好ましい実施形態では、長さは約150フィート長であり、溶解コイルは、溶液混合物が約9.75m/分の線流速で流れることを可能にするように構成される。他の好ましい実施形態では、溶解コイル内径は3/8インチであり、溶解コイル長は約150フィート長である。
【0013】
本発明の別の態様は、細胞懸濁液の溶液及び溶解溶液を流体的に受け取り、溶液混合物として前記溶液を流体的に移送して中和溶液と接触させ、それによって細胞懸濁液中の細胞の内容物を溶解及び放出することができ、高さを有する円筒型溶解コイルホルダー、並びに第1の端、第2の端、及び中間の部分を有する可撓性のある使い捨て溶解コイルを備える溶解コイル装置を使用して、所望のポリヌクレオチドを含有する細胞を溶解する方法であり、前記可撓性のある溶解コイルは、細胞懸濁液の溶液及び溶解溶液を第1の端から受け取り、溶解コイルからの前記混合溶液を第2の端から移送するように構成され、前記溶解コイルホルダーは、一定のピッチで溶解コイルホルダーの高さを横切る長さを有する均一な螺旋溝が埋め込まれた表面を有し、前記可撓性のある溶解コイルは、溶解コイルが溶解コイルホルダーの溝によって収容され、かつ前記溶解コイルホルダーの溝の長さを横切ることができるサイズの内径を有し、次の工程:使い捨て溶解コイルを溶解コイルホルダーの溝に固定すること、細胞懸濁液の溶液を溶解コイルの第1の端に移送すること、溶解溶液を溶解コイルの第1の端に移送して、細胞懸濁液の溶液が溶解溶液と混合することを可能にすること、及び中和溶液と一緒に、前記溶液混合物を区画(compartment)に流体的に移送して、溶解プロセスを終わらせることを含む。
【0014】
細胞を溶解する方法のいくつかの実施形態では、移送工程は、約8m/分~約12m/分の線流速で行われる。細胞を溶解する方法の他の実施形態では、混合溶液は、およそ4分~6分の間に溶解コイルの長さを横切る。いくつかの実施形態では、移送工程は約9.75m/分の線流速で行われる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明の好ましい実施形態の以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて読むと、よりよく理解されるであろう。本発明を説明する目的のために、現時点で好ましい実施形態が図面に示されている。しかし、本発明は、図面に示される実施形態の正確な構成及び手段に限定されないことを理解されたい。
図1図1は例示的な溶解コイル装置の側面図を示す。
図2図2は例示的な溶解コイル装置の上面図を示す。
図3図3は例示的な溶解コイル装置の上端の拡大図を示す。
図4図4は例示的な溶解コイル装置の断面の断面図を示す。
図5図5は例示的な溶解コイル装置の技術図を示す。
図6A図6A及び図6Bは、内径が3/4インチで長さが160フィートの溶解コイル(図6A)並びに内径が3/8インチで長さが150フィートの溶解コイル(図6B)におけるコイル保持時間、流体流速、及び流体線速度の間の関係を測定した結果を示す。
図6B図6A及び図6Bは、内径が3/4インチで長さが160フィートの溶解コイル(図6A)並びに内径が3/8インチで長さが150フィートの溶解コイル(図6B)におけるコイル保持時間、流体流速、及び流体線速度の間の関係を測定した結果を示す。
図7A図7A及び図7BはプラスミドAの精製データの結果を示す。
図7B図7A及び図7BはプラスミドAの精製データの結果を示す。
図8図8は、再懸濁された細胞及びさまざまな段階の溶解物のHPLC分析の結果を示す。
図9図9は6つのプラスミドロットの精製データのまとめを示す。
図10A図10A図10Cは、3つの異なる溶解コイル装置構成を使用いたプラスミド精製試験の結果を示す。
図10B図10A図10Cは、3つの異なる溶解コイル装置構成を使用いたプラスミド精製試験の結果を示す。
図10C図10A図10Cは、3つの異なる溶解コイル装置構成を使用いたプラスミド精製試験の結果を示す。
図11A図11A及び図11Bは、5つのプラスミド精製ロットで使用された溶液の評価の結果を示す。
図11B図11A及び図11Bは、5つのプラスミド精製ロットで使用された溶液の評価の結果を示す。
図12図12は、2つの異なる溶解コイル装置構成を用いた6つのプラスミド精製ロットの結果を列挙した表を示す。
図13図13は、図12の6つのプラスミド精製ロットのプラスミド濃度のHPLC分析結果を列挙した表を示す。
図14図14は、図12の6つのプラスミド精製ロットのバルク放出試験結果を列挙した表を示す。
図15A図15A及び図15Bは、図12の6つのプラスミド精製ロットの溶解及びQプロセスのゲル分析の結果を列挙した表を示す。
図15B図15A及び図15Bは、図12の6つのプラスミド精製ロットの溶解及びQプロセスのゲル分析の結果を列挙した表を示す。
図16A図16A図16Fは溶解物試料のHPLC分析の結果を示す。
図16B図16A図16Fは溶解物試料のHPLC分析の結果を示す。
図16C図16A図16Fは溶解物試料のHPLC分析の結果を示す。
図16D図16A図16Fは溶解物試料のHPLC分析の結果を示す。
図16E図16A図16Fは溶解物試料のHPLC分析の結果を示す。
図16F図16A図16Fは溶解物試料のHPLC分析の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
定義
別段の定義がない限り、本明細書で使用される技術的及び科学的用語はすべて、本発明が関連する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されたものと類似する又は同等の任意の方法及び材料を、本発明の実施及び/又は試験に用いることができるが、好ましい材料及び方法が本明細書に記載されている。本発明を記載及びクレームする際には、以下の用語は、定義が与えられている場合、その定義方法に従って使用される。
【0017】
また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明するためだけのものであり、限定を意図するものではないことを理解されたい。
【0018】
本明細書で使用される場合、用語「a」又は「an」は、1つ又は1つより多い、を指しうる。本明細書で特許請求の範囲において使用される場合、「含む」という語と関連して使用される場合、「a」又は「an」という語は、1つ又は1つより多い、を意味しうる。本明細書で使用される場合、「別の」は、少なくとももうひとつ又はそれより多い、を意味しうる。
【0019】
本明細書で使用される場合、「アルカリ」という用語は、十分な量の物質を水に加えたときに、8より高いpHをもたらす物質を意味する。アルカリという用語には、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、又は水酸化リチウム(LiOH)が含まれるが、これらに限定されない。
【0020】
本明細書で使用される場合、「界面活性剤」という用語は、中性、アニオン性、カチオン性、又は両性イオン性のいずれであるかを問わず、任意の両親媒性部室又は界面活性剤を指す。「界面活性剤」という用語は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、トリトン(ポリエチレングリコールtert-オクチルフェニルエーテル、ダウ・ケミカル(Dow Chemical Co.)、ミシガン州ミッドランド)、プルロニッ(エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック共重合体、BASF(BASF Corp.)、ニュージャージー州マウントオリーブ)、Brij(ポリオキシエチレンエーテル、ICIアメリカズ(ICI Americas)、ニュージャージー州ブリッジウォーター)、3-[(3-コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホナート、3-[(3-コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホナート、ツインRTM(ポリエチレングリコールソルビタン、ICIアメリカズ、ニュージャージー州ブリッジウォーター)、胆汁酸塩、セチルトリメチルアンモニウム、N-ラウロイルサルコシン、Zwittergent(n-アルキル-N,N-ジメチル-3-アンモニウム-1-プロパンスルホナート、カルビオケム、カリフォルニア州サンディエゴ)などを包含するが、これらに限定されない。
【0021】
本明細書で使用される場合、「イオン交換」という用語は、目的の1つ又は複数の分子と好適なイオン交換材料の間のイオン相互作用に主に基づく分離技術を指す。イオン交換材料は、最も一般的にはクロマトグラフィー樹脂又は膜の形態をとりうるが、イオン相互作用に基づいて分離を行うのに適した任意の材料であってもよい。イオン交換という用語は、陰イオン交換、陽イオン交換、及び陰イオン交換と陽イオン交換の両方の組み合わせを包含する。
【0022】
本明細書で使用される場合、「陰イオン交換」という用語は、目的の1つ又は複数の分子の1つ又は複数の負電荷と、好適な正電荷陰イオン交換材料の間のイオン相互作用に主に基づく分離技術を指す。陰イオン交換材料は、最も一般的にはクロマトグラフィー樹脂又は膜の形態をとりうるが、記載のイオン相互作用に基づいて分離を行うのに適した任意の材料であってもよい。
【0023】
本明細書で使用される場合、「陽イオン交換」という用語は、目的の1つ又は複数の分子の1つ又は複数の正電荷と、好適な負電荷陽イオン交換材料の間のイオン相互作用に主に基づく分離技術を指す。陽イオン交換材料は、最も一般的にはクロマトグラフィー樹脂又は膜の形態をとりうるが、記載のイオン相互作用に基づいて分離を行うのに適した任意の材料であってもよい。
【0024】
本明細書で使用される場合、「疎水性相互作用」及び「HIC」という用語は、主に、目的の1つ又は複数の分子と、好適な主に疎水性又は親水性材料の間の疎水性相互作用に主に基づく分離技術を指す。主に疎水性又は親水性の材料は、最も一般的にはクロマトグラフィー樹脂又は膜の形態をとりうるが、疎水性相互作用に基づいて分離を行うのに適した任意の材料であってもよい。
【0025】
本明細書で使用される場合、「プラスミド」という用語は、宿主細胞の一次ゲノム(primary genome)の一部又は断片ではない任意の別の細胞由来核酸実体(entity)を指す。本明細書で使用される場合、「プラスミド」という用語は、RNA又はDNAのいずれかからなる環状又は直鎖の分子のいずれかを指しうる。「プラスミド」という用語は、一本鎖又は二本鎖分子のいずれかを指すことができ、ウイルス及びファージなどの核酸実体を包含する。
【0026】
本明細書で使用される場合、「ゲノムDNA」という用語は、宿主細胞のゲノムに由来するDNAを指す。本明細書で使用される場合、この用語は、直鎖又は環状、一本鎖又は二本鎖であるかを問わず、宿主細胞の一次ゲノムの全部又は任意の部分を含むDNA分子を包含する。
【0027】
本明細書で使用される場合、「内毒素」という用語は、グラム陰性細菌に由来し、動物において有害作用を引き起こすリポ多糖物質を指す。典型的には、エンドトキシンは、カブトガニ血球抽出物(「LAL」)アッセイによって検出することができる。
【0028】
本明細書で使用される場合、「クロマトグラフィー」という用語は、マトリックスと相互作用する分子又は複数の分子を含む任意の分離技術を包含する。マトリックスは、ソリッド若しくは多孔質ビーズ、樹脂、粒子、膜、又は任意の他の好適な材料の形態をとりうる。別段の定めがない限り、クロマトグラフィーにはフロースルーテ法及びバッチ法の両方が含まれる。
【0029】
本明細書で使用される場合、「沈殿」という用語は、溶液、懸濁液、エマルジョン又は類似の状態で存在する1つ又は複数の成分が固体材料を形成するプロセスを指す。
【0030】
本明細書で使用される場合、「沈殿溶液(precipitation solution)」及び「沈殿溶液(precipitating solution)」という用語は、沈殿を誘導する任意の溶液、懸濁液、又は他の流体を指す。別段の定めがない限り、沈殿溶液は中和をもたらすことができる。
【0031】
本明細書で使用される場合、「中和」という用語は、酸性又はアルカリ性材料のpHを中性に近づけるプロセスを意味する。典型的には、中和によりpHは6~8の範囲になる。
【0032】
本明細書で使用される場合、「中和溶液(neutralization solution)」及び「中和溶液(neutralizing solution)」という用語は、酸性又はアルカリ性材料と混合されたときに中和をもたらす任意の溶液、懸濁液、又は他の流体を指す。別段の定めがない限り、中和溶液も沈殿をもたらすことができる。
【0033】
本明細書で使用される場合、「中和沈殿液」という用語は、中和及び沈殿の両方をもたらす任意の溶液、懸濁液又は他の流体を指す。
【0034】
本明細書で使用される場合、「細胞成分」という用語は、任意の分子、分子の群、又は細胞に由来する分子の一部を含む。細胞成分の例としては、DNA、RNA、タンパク質、プラスミド、脂質、炭水化物、単糖類、多糖類、リポ多糖類、エンドトキシン、アミノ酸、ヌクレオシド、ヌクレオチドなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
本明細書で使用される場合、「膜」という用語は、クロマトグラフィー又は分離方法及び材料に関して使用される場合、流体が流れることができる複数の孔又はチャネルを有する任意の実質的に連続した固体材料を指す。膜は、限定されるものではないが、平坦なシート、プリーツ層又は折り畳み層、及び鋳造又は架橋多孔質モノリスなどの幾何学的形状を含みうる。対照的に、細胞成分に関して使用される場合、「膜」という用語は、細胞を取り囲む、脂質をベースとする覆いの全部又は一部を指す。
【0036】
本明細書で使用される場合、「気泡混合器」という用語は、混合されていないか、又は不完全に混合された2つ以上の材料を混合するために気泡を使用する任意の装置を指す。
【0037】
本明細書で使用される場合、「細胞懸濁液」という用語は、細胞、細胞凝集塊、又は細胞断片を含む任意の流体を指す。
【0038】
本明細書で使用される場合、「細胞溶解物」という用語は、細胞を含む任意の材料を指し、ここで、細胞の実質的な部分は、破壊され、その内部成分を放出している。
【0039】
本明細書で使用される場合、「溶解溶液」という用語は、接触した細胞の溶解を引き起こす任意の溶液、懸濁液、エマルジョン、又は他の流体を指す。
【0040】
本明細書で使用される場合、「清澄化された溶解物」という用語は、目に見える粒状固形体を実質的に除去し尽くした溶解物を指す。
【0041】
本明細書で使用される場合、「巨大粒子(macroparticulate)」という用語は、直径が約100μm又はそれより大きい粒子を含む固形物を指す。
【0042】
本明細書で使用される場合「微粒子(microparticulate)」という用語は、直径が約100μm未満の粒子を含む固形物を指す。
【0043】
本明細書で使用される場合、「限外濾過」及び「UF」という用語は、溶液又は懸濁液が、溶媒及び小さな溶質分子を通過させる一方で、巨大分子を保持する半透過性膜に供される任意の技術を指す。限外濾過は、溶液又は懸濁液中の巨大分子の濃度を増加させるために用いることができる。別段の定めがない限り、限外濾過という用語は、連続法とバッチ法の両方を包含する。
【0044】
本明細書で使用される場合、「ダイアフィルトレーション」及び「DF」という用語は、巨大分子の溶液又は懸濁液中に存在する溶媒及び小溶質分子が限外濾過によって除去され、異なる溶媒及び溶質分子で置き換えられる任意の技術を指す。ダイアフィルトレーションは、巨大分子の溶液又は懸濁液のpH、イオン強度、塩組成、緩衝剤組成、又は他の特性を変化させるために用いることができる。別段の定めがない限り、ダイアフィルトレーションという用語は、連続法とバッチ法の両方を包含する。
【0045】
本明細書で使用される場合、「限外濾過/ダイアフィルトレーション」及び「UF/DF」という用語は、限外濾過及びダイアフィルトレーションの両方を連続的に又は同時に達成する任意の技術又は技術の組み合わせを指す。
【0046】
説明
本発明の態様は、プラスミド生産又はプラスミド製造のための、特にDNAプラスミドの大規模生産を含む全体のシステム又はプロセスに組み入れることができる溶解コイル装置を含む。本明細書に記載の溶解コイル装置は、アルカリ溶解溶液などの溶解溶液と混合されることを意図された細胞懸濁液が一緒に溶解コイル装置の一端に流れることができるように、製造プロセスに組み入れることができる。混合物は、溶解コイル装置の長さを横断し、次いで、前記溶解コイル装置の反対端からチャンバー又は他の同様の装置に出て、溶解溶液の中和を可能にすることができる。好ましくは、その長さ及び時間は、所望のポリヌクレオチド、例えばDNAプラスミドを損傷することなくほぼ全ての細胞を溶解することを可能にし、同時にゲノムポリヌクレオチドの望ましくない切断を回避する。溶解コイル装置は、溶解コイルホルダー及び溶解コイルとからなる。好ましくは、溶解コイルホルダーは、対称幾何学的形状であり、より好ましくは、円筒形である。溶解コイルホルダーは、溶解コイルを受け入れることができる外面に溝を有する。好ましくは、その溝は、溶解コイルを収容して支える深さ及びサイズであり、より好ましくは、その溝は、所望のピッチで溶解コイルホルダーの高さ全体にわたって対称的に配置される。上記のことは、溶液が、本明細書に記載の線流速で溶解コイルの長さを横断して細胞を効果的に溶解するための所望の持続時間を可能にする。
【0047】
細胞培養物は、バッチ発酵及び流加バッチ発酵を含む利用可能な多数の発酵プロセスのいずれか1つを用いて生成することができる。次いで、溶解コイルに入り、それを通って溶解溶液と混ざる細胞懸濁液を導く発酵装置及びプロセスの一実施形態は、米国特許出願公開第2009/0004716A1号に記載されているものである。特に好ましい実施形態では、細胞は、目的の高コピー数プラスミドを含有する大腸菌(E. coli)であり、プラスミド含有細胞は、バッチ又は流加バッチ技術を用いて高密度に発酵される。細胞は、細胞ペーストを形成するために、遠心分離又は濾過などの任意の手段によって集められる。そのような採集方法は当業者に周知である。そのようなプラスミド含有大腸菌細胞を調製し、そのようなバッチ又は流加バッチ発酵を行う方法は、当業者に周知である。細胞は、細胞ペーストを形成するために、遠心分離又は濾過などの慣習的な手段によって採取することができる。そのような採集方法は当業者に周知である。収穫された細胞は、溶解溶液を用いて溶解されて、目的の生物活性分子を含むその内容物を溶解物溶液中に放出することができる。さらに、収穫された細胞又は細胞ペーストが直ちにプロセスされてもよく、又は後日プロセスするために冷凍又は冷蔵状態で保存されてもよいことを当業者であれば認識するであろう。
【0048】
高成長は高いレベルの出発物質をもたらすことになるので、高収率の発酵プロセスは、高収率のDNAプラスミドを生産するために重要である。これらの高収率発酵プロセスには、>500mg/Lプラスミド収率を可能にするものが含まれ、とりわけ、メルク(Merck)によるプロセス(国際公開第2005/078115号にさらに詳細に記載、この文献はその全体が本明細書に組み込まれる)、ベーリンガーインゲルハイム(Boerhinger Ingleheim)によるプロセス(国際公開第2005/097990号にさらに詳細に記載、この文献はその全体が本明細書に組み込まれる)、及びNature Technology Corporationによるプロセス(国際公開第2006/023546号にさらに詳細に記載、この文献はその全体が本明細書に組み込まれる)が挙げられる。
【0049】
一般に、溶解コイル装置を介して細胞を溶解する前に、細胞ペーストを用いて、目的の生物学的活性分子を含有する細胞の懸濁液を調製することができる。細胞は任意の好適な溶液に懸濁することができる。懸濁液溶液中の細胞を含有する懸濁液は、タンク又は他の保存容器中に維持することができる。2つの容器を使用でき、第2の容器は、第1の容器が溶解プロセスで使用される間に、追加の量の細胞を再懸濁させるために使用されうる。いくつかの実施形態では、懸濁液溶液は、約25mMのトリス塩酸塩(「トリス-HCl」)及び約10mMのエデト酸二ナトリウム(「Na2EDTA」)を約8のpHで含みうる。いくつかの実施形態では、細胞懸濁液は、既知重量の懸濁バッファーを用いて既知重量の細胞ペーストを懸濁することによって調製することができる。例えば、1部の細胞ペーストは、約4~10部の緩衝液に、いくつかの実施形態では約6~8部の緩衝液に再懸濁することができる。いくつかの実施形態では、得られる細胞懸濁液の光学密度は、約50~80OD600単位でありうる。いくつかの実施形態では、その光学密度は約60~70OD600単位でありうる。
【0050】
発酵プロセスに続いて、細胞は溶解されて、目的の細胞成分を含むその内容物を溶液中に放出することができる。溶解溶液はタンクに充填することができ、その溶解溶液は、好ましくは、アルカリ、酸、酵素、有機溶媒、界面活性剤、カオトロープ、変性剤、又は2つ以上のそのような物資の混合物などの1つ又は複数の溶解剤を含有する。より好ましくは、溶解溶液は、アルカリ、界面活性剤、又はそれらの混合物を含む。好適なアルカリとしては、NaOH、LiOH、又はKOHが挙げられるが、これらに限定されない。界面活性剤は、非イオン性、カチオン性、アニオン性、又は双性イオン性でありうる。好適な界面活性剤としては、ドデシル硫酸ナトリウム(「SDS」)、トリトン、ツイン、プルロニック系薬剤(エチレンオキシドとプロピレンオキシドをベースとするブロック共重合体)、Brij、及びCHAPS、CHAPSO、胆汁酸塩、セチルトリメチルアンモニウム、N-ラウロイルサルコシン、及びZwittergentが挙げられるが、これらに限定されない。好適なアルカリ又は界面活性剤の選択は、十分に当該技術分野の通常の範囲内であろう。いくつかの実施形態では、溶解溶液は、NaOH及びSDSを含みうる。いくつかの実施形態では、NaOHの濃度は約0.1~約0.3Nで、いくつかの実施形態では、約0.2Nでありうる。いくつかの実施形態では、SDSの濃度は約0.1%~約5%で、いくつかの実施形態では、約1%でありうる。いくつかの実施形態では、溶解溶液は、タンク又は他の保存容器に維持することができる。この工程を行うための好ましい方法が本明細書に開示され、以下に詳細に記載される。
【0051】
細胞懸濁液及び溶解溶液を合わせて、細胞を溶解し、溶解物溶液を生成することができる。いくつかの実施形態では、それらは、細胞の高レベルの溶解及び生物学的物質の放出を容易にするのに十分な時間、混合物として合わせられ、混ぜられ、維持されて溶解物溶液を形成する。
【0052】
いくつかの実施形態では、細胞懸濁液及び溶解溶液は、別々のタンクに維持され、1つ又は複数のポンプを使用してそのようなタンクから取り出される。細胞懸濁液及び溶解溶液は、「Y」コネクター、又は溶解コイルの収容端(receiving end)若しくはその近くで溶解溶液とともに細胞懸濁液を導入する任意の他のコネクターを用いて互いに接触させることができる。次いで、コネクターは、溶解コイルの第1の端、好ましくは溶解コイルの下端を通して溶解コイル装置に接続する。いくつかの実施形態では、等量の細胞懸濁液及び溶解溶液は、デュアルヘッドポンプを使用して同一の流速でポンプ注入することができる。しかし、当業者であれば、異なる量の細胞懸濁液及び溶解溶液が、所望により、別個のポンプを使用して異なる速度で注入できることを認識するであろう。いくつかの実施形態では、細胞懸濁液及び溶解溶液は、デュアルヘッドポンプ又は2つの別個のポンプを通して、約0.3L/分~約2L/分で同時に注入され、接触した流体は、約0.6L/分~約4L/分の速度で「Y」コネクターから流出する。当業者であれば、これらの流速は容易に増加又は減少でき、チューブのサイズは任意のスループット要件を満たすように増加又は減少できることを認識するであろう。「Y」コネクターから出た後、細胞懸濁液及び溶解溶液は一緒に溶解コイルの第1の端を通って流れ、溶解コイルの第2の端から出るまで溶解コイルの全長を横切る。
【0053】
本発明の一態様は、対象の細胞成分を抽出するように制御された方法で細胞を溶解するための方法に関する。細胞は、目的の細胞成分を含有する任意の細胞であることができる。好ましくは、それらは微生物細胞である。より好ましくは、それらは大腸菌細胞である。本発明を用いて、細胞から目的の任意の細胞成分を抽出することができる。好ましくは、これらは、プラスミド又はタンパク質などの巨大分子であることになる。より好ましくは、それらはプラスミドである。したがって、1つの好ましい実施形態では、本発明は、プラスミドを抽出し、最終的に単離するように、プラスミドを含有する大腸菌細胞を溶解するための有利な方法に関する。
【0054】
本発明の別の態様は、細胞溶解物から目的の細胞成分を精製するための方法に関する。細胞溶解物は、目的の細胞成分を含有する任意の種類の細胞の溶解物であることができる。さらに、細胞溶解物は、当業者に公知の任意の手段によって作製することができる。好ましくは、溶解物は、溶解されたプラスミド含有細胞を含む。より好ましくは、溶解物は、アルカリ、界面活性剤、又はそれらの組み合せで溶解されたプラスミド含有細胞を含む。好ましくは、目的の細胞成分はプラスミドである。
【0055】
いくつかの実施形態では、溶解コイル装置は、単回使用の生成物接触流路を採用する一方で、本明細書に提供されるように、所望の溶解コイルパラメーターを維持することによってプロセスの一貫性を担保するように設計される。溶解コイル装置は、必要な内径及び必要な長さの単回使用溶解コイルを必要な角度に保ち、所望のピッチを得て、1つ(又は複数)の溶液をプロセス流速で必要な時間保持するように設計される。
【0056】
一実施形態では、再懸濁された大腸菌と溶解溶液の混合組み合わせ(mixed combination)は溶解コイルの下端に流され、2.8L/分のプロセス流速で5±1分間保持された。乱流も、異なった密度の流体の保持や分離もないと判断された。コイルを通る線流が存在し、流体は大腸菌細胞成分を完全に変性させてコイルの上端から出る。溶解コイル装置は、本明細書に提供されるように、臨界パラメーターを維持する使い捨て可能な流体流路の簡単でかつ迅速な設置及び除去を可能にする設計要素を組み込んでいる。本発明の溶解コイル装置の実施形態の図面を図1~4に示す。
【0057】
図1図2、及び図5は、例示的な溶解コイル装置10の側面図、上面図、及び技術図をそれぞれ示す。装置10は、上端11及び下端12を有する実質的に円筒形のカラム14を含む。カラム14は、任意の好適な寸法を有する直径26及び高さ28を有する。例えば、直径26は、約20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30インチ、好ましくは23、24、又は25インチであることでき、高さ28は、少なくとも1フィート又は12フィートよりも長く、例えば約6フィートなどであることができる。いくつかの実施形態では、2つ以上のカラム14が、所望に応じて装置10の高さを増加又は減少させるために組み合わせることができるように、カラム14は積み重ね可能である。カラム14は基部19に安定して取り付けることができる。基部19は、1つ又は複数の車輪付き車輪支持体20をさらに含み、装置10の移動及び輸送を容易にすることができる。各車輪付き支持体(wheeled support)20は、装置10を適所に置くためにロック可能であることができる。
【0058】
装置10は、溶解コイル15と、開放された第1の端16と開放された第2の端18を接続する内腔を有する細長いチューブとをさらに含む。溶解コイル15は、カラム14の外面の周りに螺旋状に巻くことができ、その結果、溶解コイル15の第1の端16は、カラム14の上端11の近くに配置され、溶解コイル15の第2の端18は、カラム14の下端12の近くに配置される。第1の端16及び第2の端18は各々、所望の溶解プロセスを実施するために、ポンプ、弁、管、リザーバ、容器、タンク、アダプター、コネクターなどに流体的に接続可能である。図3に示されるように、第1の端16及び第2の端18の両方は、装置10から自由に延びることができる。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の保持クリップ17を使用して、第1の端16及び第2の端18をカラム14に固定することができる。
【0059】
図4及び図5に示されるように、カラム14は、溶解コイル15の外径に適合するようなサイズに作られた、外面内に埋め込まれた溝22を含むことができる。溝22は、カラム14の外面の周りに螺旋パターンで形成されて、溶解コイル15のコイル巻きを誘導することができる。いくつかの実施形態では、溝22は、溝22の直径よりも小さい溝開口24を有し、溶解コイル15を確実に保持することができる。溝22は、高さ30を有するカラム14の部分(section)にまたがることができる。高さ30の寸法は、装置10の全体の高さ28、溶解コイル15の長さ、及び溝ピッチ32のサイズ(すなわち、各溝22間の距離)に応じて変わりうる。例えば、高さ30は、少なくとも6インチ、又は11フィートより大きく、例えば約5フィートなどでありうる。
【0060】
溶解コイル装置は、単回使用の溶解保持コイルの使用を採用し、バッチ間の生成物のキャリーオーバーを排除することになる。溶解溶液と混ぜ合わされた、プラスミドをもつ大腸菌細胞を、本明細書に記載の原理の使用を通して可能になり、この装置の使用によって確保される特定の時間、一貫して保持することは、制御されていない角度でより大きな内径のチューブを使用する場合と比較して、溶解プロセスからのプラスミド収率を300%増加させ、全体の精製プロセス収率を300%増加させることが示されている。
【0061】
溶解コイル装置の好ましい実施形態には以下の特性が含まれる。
【0062】
好ましい実施形態の流体保持時間
溶解コイル中の細胞懸濁液と溶解溶液の混合物の保持時間は、1分~10分、2分~10分、2分~9分、2分~8分、2分~7分、2分~6分、2分~5分、3分~10分、3分~9分、3分~8分、3分~7分、3分~6分、3分~5分、4分~10分、4分~9分、4分~8分、4分~7分、4分~6分、4分~5分、5分~10分、5分~9分、5分~8分、5分~7分、又は5分~6分である。好ましくは、保持時間は4~6分であり、好ましくは、保持時間は、約4.8分、4.9分、5.0分、5.1分、又は5.2分である。
【0063】
好ましい実施形態の流体流速
溶解コイルを通って横断する細胞懸濁液及び溶解溶液の混合物の流体流速(体積/時間)は、均一な溶液をもたらす線流速(長さ/時間)を達成する速度である。達成すべき線流速は、約5m/分~約25m/分、5m/分~約20m/分、5m/分~約19m/分、5m/分~約18m/分、5m/分~約17m/分、5m/分~約16m/分、5m/分~約15m/分、5m/分~約14m/分、5m/分~約13m/分、5m/分~約12m/分、5m/分~約11m/分、5m/分~約10m/分、6m/分~約25m/分、6m/分~約20m/分、6m/分~約19m/分、6m/分~約18m/分、6m/分~約17m/分、6m/分~約16m/分、6m/分~約15m/分、6m/分~約14m/分、6m/分~約13m/分、7m/分~約12m/分、6m/分~約11m/分、6m/分~約10m/分、7m/分~約25m/分、7m/分~約20m/分、7m/分~約19m/分、7m/分~約18m/分、7m/分~約17m/分、7m/分~約16m/分、7m/分~約15m/分、7m/分~約14m/分、7m/分~約13m/分、7m/分~約12m/分、7m/分~約11m/分、7m/分~約10m/分、8m/分~約25m/分、8m/分~約20m/分、8m/分~約19m/分、8m/分~約18m/分、8m/分~約17m/分、8m/分~約16m/分、8m/分~約15m/分、8m/分~約14m/分、8m/分~約13m/分、8m/分~約12m/分、8m/分~約11m/分、8m/分~約10m/分、9m/分~約25m/分、9m/分~約20m/分、9m/分~約19m/分、9m/分~約18m/分、9m/分~約17m/分、9m/分~約16m/分、9m/分~約15m/分、9m/分~約14m/分、9m/分~約13m/分、9m/分~約12m/分、9m/分~約11m/分、又は9m/分~約10m/分、より好ましくは、8m/分~10m/分の範囲に及び、約8m/分、8.25m/分、8.50m/分、8.75m/分、9m/分、9.25m/分、9.50m/分、9.55m/分、9.60m/分、9.65m/分、9.70m/分、9.75m/分、9.80m/分、9.85m/分、9.90m/分、9.95m/分、及び10m/分の実施形態を含み、好ましくは、9.50m/分、9.70m/分、9.75m/分、9.80m/分、又は10m/分である。
【0064】
本明細書に記載の内径をもつ溶解コイルの実施形態に組み込まれるそのような線流速は、5000mL/分、4000mL/分、3000mL/分、2900mL/分、2800mL/分、2700mL/分、2600mL/分、2500mL/分、2400mL/分、2300mL/分、2200mL/分、2100mL/分、2000mL/分、1900mL/分、1800mL/分、1700mL/分、1600mL/分、1500mL/分、1400mL/分、1300mL/分、1200mL/分、1100mL/分、1000mL/分、900mL/分、800mL/分、700mL/分、600mL/分、又は500mL/分の流速を達成することができる。流速は、溶解コイルの内径によって影響され、溶解コイル装置で使用される流速は、本明細書に記載の内径をもつ溶解コイルで使用されるものである。例えば、3/4インチの内径を有する溶解コイルは、約2317mL/分~3475mL/分、好ましくは約2780mL/分の全体の流体流速を有することができる。別の例では、3/8インチの内径を有する溶解コイルは、約543mL/分~814mL/分、好ましくは約651.5mL/分の全体の流体流速を有することができる。
【0065】
好ましい実施形態で使用される溶解コイルの長さ
いくつかの実施形態では、溶解コイルは、長さが、100フィート超、105フィート超、110フィート超、115フィート超、120フィート超、125フィート超、130フィート超、135フィート超、140フィート超、145フィート超、150フィート超、155フィート超、160フィート超、165フィート超、170フィート超、175フィート超、180フィート超、185フィート超、190フィート超、195フィート超、又は200フィート超である。好ましくは、長さが、150フィート、155フィート、又は160フィート長である。
【0066】
好ましい実施形態で使用される溶解コイルの高さ
いくつかの実施形態では、溶解コイルは、高さが、約3フィート~約6.25フィート、約3.5フィート~約6.25フィート、約4フィート~約6.25フィート、約4.5フィート~約6.25フィート、約5.0フィート~約6.25フィート、約3.5フィート~約6.0フィート、約4フィート~約6.0フィート、約4.5フィート~約6.0フィート、約5.0フィート~約6.0フィート、約3.5フィート~約5.75フィート、約3.75フィート~約5.75フィート、約4フィート~約5.75フィート、約4.5フィート~約5.75フィート、又は約5.0フィート~約5.75フィートである。好ましくは、高さが、約5.8、5.9、6.0、6.1、又は6.2フィートである。
【0067】
好ましい実施形態で使用される溶解コイルのピッチ
いくつかの実施形態では、溶解コイルは、2.0度~4.0度の角度、2.0度~3.8度の角度、2.0度~3.6度の角度、2.0度~3.43度の角度、2.0度~3.4度の角度、2.0度~3.2度の角度、2.0度~3.2度の角度、2.0度~3.0度の角度、2.0度~2.8度の角度、2.0度~2.6度の角度、2.0度~2.5度の角度、2.1度~3.4度の角度、2.1度~3.2度の角度、2.1度~3.2度の角度、2.1度~3.0度の角度、2.1度~2.8度の角度、2.1度~2.6度の角度、2.1度~2.5度の角度、2.1~2.25度の角度、2.15~2.2度の角度、又は2.1~2.15度の角度、好ましくは、2.1、2.15、又は2.2度の角度のピッチを溶解コイルに維持させる溶解コイルホルダーの溝に並べられる。
【0068】
好ましい実施形態で使用される溶解コイルの内径
いくつかの実施形態では、溶解コイルの内径は、7/8、3/4、5/8、1/2、3/8、又は1/4インチを含む約1インチ未満である。好ましくは、前記溶解コイルの内径は、いくつかの実施形態では3/4インチ、いくつかの実施形態では1/2インチ、他の好ましい実施形態では3/8インチである。
【0069】
溶解コイル装置の構成部品は、任意の好適な材料を用いて作製することができる。柱14及び基部19などのある特定の構成部品は、プラスチック、金属、又は木材などの剛性材料から作製することができる。実質的に金属を含む構成部品は、より大きな金属ブロックから圧延されてもよく、又は溶融金属から鋳造されてもよい。同様に、プラスチック又はポリマーを実質的に含む構成部品は、より大きなブロックから圧延されても、鋳造されても、又は射出成形されてもよい。いくつかの実施形態では、構成部品は、3Dプリンティング又は当該技術分野で一般的に使用される他の付加製造技術を使用して製造することができる。例えば、溶融蒸着、光造形法、焼結、デジタル光処理、選択的レーザー溶融、電子ビーム溶融、及び薄板積層法(laminated object manufacturing)が挙げられるが、これらに限定されない。構成部品は、個々に印刷されてもよく、又は組み立てを最小限にするために少なくとも部分的に一緒に印刷されてもよい。シリコーン及びABSを含むさまざまなポリマー、アルミニウム、ステンレス鋼、及びチタンを含む金属、セラミック及び複合材料を含む他の材料などの付加製造に適合する材料をいくつでも使用することができる。
【0070】
溶解コイル15などのある特定の構成部品は、軟質又は可撓性ポリマーなどの実質的に可撓性の材料から作ることができる。好ましくは、この材料は、0.1~1Nアルカリ溶液、好ましくはUSPクラスVI材料と適合する。いくつかの実施態様では、材料は0.5N NaOH溶液と相溶性がある。さまざまな実施形態では、ポリマーは生体不活性であり、溶解溶液の存在下で腐食及び分解に耐えることができる。好適なポリマーとしては、ポリ(ウレタン)、ポリ(シロキサン)又はシリコーン、ポリエチレン、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(メタクリル酸2-ヒドロキシエチル)、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(アクリル酸)、ポリアクリルアミド、ポリ(エチレン-co-酢酸ビニル)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)、ナイロン、ポリアミド、ポリ無水物、ポリ(エチレン-co-ビニルアルコール)(EVOH)、ポリカプロラクトン、ポリ(酢酸ビニル)(PVA)、ポリ水酸化ビニル、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリオルトエステル、ポリ塩化ビニル(PVC)などが挙げられるが、これらに限定されない。溶解コイル15の可撓性は、その構造に基づいて変えることができる。例えば、溶解コイル15の壁厚を厚くすると、その可撓性を減少させることができ、一方、溶解コイル15の壁厚を薄くすると、その可撓性を増加させることができる。別の例では、溶解コイル15の壁は、可撓性を高めるために波形を含むことができ、波形は、内部の流体の流れを妨げないように、溶解コイル15の外部に特徴として備えることができる。
【0071】
ある特定の実施形態では、溶解コイル15は、1つ又は複数のコーティング又は表面処理で修飾することができる。コーティング又は表面処理は、溶解コイル15の内面の疎水性又は親水性を変えることによって、流体の流れ又は材料の溶解及び分離を向上させることができる。コーティング又は表面処理は、スピンコーティング、ディップコーティング、化学気相蒸着、化学溶液堆積、物理気相蒸着、液浴浸漬などを含む任意の適切な手段を用いて堆積又は塗布することができる。コーティング又は表面処理は、任意の適切な厚さで堆積又は塗布することができる。
【0072】
いくつかの実施形態では、溶解コイル15は装置10から取り外し可能である。例えば、溶解コイル15は、使用のたびに廃棄及び交換できる使い捨て可能な構成部品であることができる。溶解コイル15はまた、さまざまな内部寸法及び材料構造を有するいくつかの異なる構成で提供でき、さまざまな溶解コイル15構成は、所望の溶解プロセスに基づいて入れ替えることができる。
【0073】
溶解コイル装置10は、その機能を増大させるための任意の好適な改変に応じることができることを理解されたい。例えば、ある特定の実施形態では、カラム14は、その内部に1つ又は複数の装置を収容することができる。好適な装置としては、加熱器、冷却器、流量センサー、温度センサー、発振器などが挙げられるが、これらに限定されない。別の例では、カラム14は、基部19の周りで回転可能であり、溶解コイル15の装置10上への巻き取り及び巻き戻しを容易にする。カラム14は、上端11に取り付けられたハンドルによってなど、手動で回転させることができ、又はカラム14は、機械化された回転用のモーターを備えることができる。カラム14は、溶解コイル15が完全に巻き取り及び巻き戻しされると、回転を止めるロック機構をさらに備えることができる。
【0074】
次いで、この溶解コイル装置から得られた溶解液を中和溶液(中和沈殿溶液とも呼ばれる)と合わせることによって中和し、中和された溶解溶液と破片とからなる分散体を得生成する。次いで、得られた分散体を維持して、破片から中和溶解物溶液の分離を促進することができる。
【0075】
いくつかの実施形態では、溶解された細胞を含む溶解物溶液は、中和チャンバー内で中和溶液と混合することによって中和することができる。この溶解物溶液の中和は、中和チャンバー内で混合することによって促進することができる。いくつかの実施形態では、この中和に続いて、気泡塔混合器での気泡混合を行うことができる。好ましくは、中和は、気泡塔混合器での気泡混合とともに行われる。いくつかの実施形態では、保持コイルから流出する溶解物溶液は、気泡塔混合器に入ることができ、同時に、ポンプは、中和/沈殿溶液を別のタンクから気泡塔混合器に送達することができる。いくつかの例では、さらに同時に、別のタンクからの圧縮ガスは気泡塔混合器の底に注入することができる。いくつかの実施形態では、溶解物溶液は、一方の側から底においてカラムに入ることができ、中和/沈殿溶液は、反対側からから底において入ることができる。圧縮ガスは、ガス気泡をカラム断面にわたって実質的に均一に送達するように設計された焼結スパージャー(sintered sparger)を通して注入することができる。溶解された細胞を含む溶解溶液及び中和溶液はカラムを垂直に上へ流れ、上端付近の出口ポートを通って流出する。ガス気泡が液体の垂直柱を通過することは、溶解物溶液と中和/沈殿溶液を混合する働きをする。上昇する気泡によってもたらされる混合は、完全であるが、穏やかで、低剪断である。中和/沈殿溶液が溶解物溶液の溶解細胞と混ざると、細胞成分が溶液から沈殿する。過剰なガスを排出するために、シュノーケル(snorkel)を気泡塔混合器の上端に設けてもよい。例が米国特許出願公開第20090004716A1号に詳細に与えられ、該公報はその全体が本明細書に組み込まれる。
【0076】
いくつかの実施形態では、溶解物溶液は、アルカリ、界面活性剤、又はそれらの混合物で溶解されたプラスミド含有細胞を含み、中和/沈殿溶液は、アルカリを中和し、タンパク質、膜、内毒素、及びゲノムDNAなどの宿主細胞成分を沈殿させる。いくつかの実施形態では、アルカリはNaOHであることができ、界面活性剤はSDSであることができ、中和/沈殿溶液は酢酸カリウム、酢酸アンモニウム、又はそれらの混合物を含みことができる。いくつかの実施形態では、中和/沈殿溶液は、約1Mの酢酸カリウム及び約3M~約7Mの酢酸アンモニウムを含有する非緩衝(unbuffered)溶液を含むことができる。そのような中和/沈殿溶液を使用すると、約7~約8のpHを有する懸濁液が生成され、酸性条件はDNAの脱プリン化をもたらすことができるので、酸性pHよりも好ましい。いくつかの実施形態では、中和/沈殿溶液は、約2℃~約8℃の冷却形態で提供されうる。
【0077】
気泡塔混合器は、低剪断様式で混合を可能にし、したがって、中和された溶解物溶液中へのゲノムDNA及び内毒素の過剰な放出を回避する。当業者であれば、気泡塔混合器を通してガスを流すための好適な速度を決定することができるであろう。ガス流速は、約2標準リットル毎分~約20標準リットル毎分(「slpm」)で使用することができる。任意の好適なガスを使用することができ、空気、窒素、アルゴン、及び二酸化炭素が挙げられるが、これらに限定されない。ガスは、濾過された圧縮空気であってもよい。
【0078】
溶解物溶液と中和溶液の組み合わせは、中和された溶解物溶液及び破片を含有する分散液の生成をもたらす。中和された溶解物溶液は、タンク又は他の保存容器に集められうる。いくつかの実施形態では、容器は5~10℃に冷却される。中和された溶解物を容器に保持するための時間は必須ではなく、1時間未満、約1時間~約12時間、約12時間~約15時間、又は15時間超とさまざまでありうる。いくつかの実施形態では、使用される時間は約12時間であるが、いくつかの例では約15時間の時間を含み、他の例ではその時間は一晩(約15時間を超えると定義される)である。一実施形態では、中和された溶解物溶液から細胞片の実質的に完全な分離を達成するために十分な保持期間が用いられ、得られた粗溶解物は固形粒子が限られ、その後の清澄化プロセスに有利である。ただし、プロセスの規模は粗溶解物保持タンクに制限され、この保持期間だけプロセスの時間が延びる。
【0079】
低収率プラスミド生成物の大規模精製を達成するために、中和された溶解物を保持する時間を1時間未満に短縮することができる。いくつかの実施形態では、中和された溶解物溶液は、それが生成される時点で同時にプロセスでき、したがって、容器内の保持時間は無視できる。いくつかの実施形態では、溶解物溶液は、容器に溶解物を集めた約5分~約60分の時間の後に、後続のプロセスによって同時にプロセスされる。また、溶解物保持時間を減らす又はなくすことは溶解物がその生成時に直ちに処理されるので、容器による処理能力の限界を取り除く。
【0080】
中和後、中和された溶解物溶液は、固体/液体分離の任意の方法、例えば、バッグ濾過、カートリッジ濾過、バッチ遠心分離、連続遠心分離を用いて清澄化することができる。溶液中の粒子の完全な除去は、後に続く精製プロセスにおける膜又はカラムの詰まりを回避するのに望ましい。同時に、溶解物は、ゲノムDNAを断片化し、ゲノムDNA、断片化されたゲノムDNA、エンドトキシン及び他の汚染物質をプラスミド含有溶液中に放出させることになる過度の剪断にさらされない。バッチ濾過は少量の溶解物をプロセスするために用いられるが、大規模では実用的ではない。沈殿物は高い剪断応力を受け、高レベルの汚染物質を溶液に放出する可能性があるので、連続遠心分離もまた好適ではない。いくつかの実施形態では、異なる等級のフィルター媒体を使用する一連の濾過を利用することができる。1次濾過はミクロンサイズの大きい細胞のフロックの大部分を除去するために使用することができ、一方、連続2次濾過は残りの微粒子を保持する。任意選択の第3の濾過は、後続のプロセスのために厳格な清澄さ(clarity)が望まれ、2次濾過が不十分な場合には行われてもよい。
【0081】
清澄化された溶解物の分離に続いて、いくつかの実施形態では、目的の細胞成分を含有する溶液をイオン交換クロマトグラフィーにかけることができる。好ましくは、これは、膜に基づいた方法を用いて行われる。好ましくは、これは陰イオン交換膜クロマトグラフィーである。この工程を行うための特定の方法は、本明細書の他の箇所でさらに詳細に開示される。
【0082】
イオン交換クロマトグラフィーの後、イオン交換クロマトグラフィーから得られた部分的に精製された材料を疎水性相互作用クロマトグラフィーにかける。好ましくは、これは、膜に基づいた方法を用いて行われる。この工程を行うための特定の方法は、以下にさらに詳細に開示される。ある特定の実施形態では、この工程は省略されてもよい。
【0083】
その後、(もし行われた場合)疎水性相互作用クロマトグラフィー又は(HICが省略された場合)イオン交換クロマトグラフィーから得られた材料を限外濾過及びダイアフィルトレーションに供し、目的の細胞成分を濃縮し、溶液から過剰の塩を除去する。限外濾過/ダイアフィルトレーションの使用、特にタンパク質又はプラスミドなどの生物学的巨大分子に対する使用は、当業者に周知である。
【0084】
濾過工程に続いて、いくつかの実施形態では、濃縮及び脱塩された生成物は、例えばそれを医薬用途に適するようにするために、任意選択で無菌濾過に供される。やはり、この工程を行うための方法は、十分に当業者の知識の範囲内である。
【0085】
濃縮され、脱塩された生成物は、所望により、さらに無菌濾過に供することができる。そのような操作を行うためのさまざまな方法は周知であり、当業者の能力の範囲内であろう。生成物がプラスミドである場合には、好ましくは、0.22umのカットオフ値をもつPall AcroPak200フィルターを使用して無菌濾過を行うことができる。得られた精製され、濃縮され、脱塩され、滅菌濾過されたプラスミドは、タンパク質、ゲノムDNA、RNA、及び内毒素などの不純物を実質的に含まない。残留タンパク質は、ビシンコニン酸アッセイ(ピアス・バイオテクノロジー、イリノイ州ロックフォード)で測定して、好ましくは(重量で)約1%未満であり、より好ましくは約0.1%以下であることになる。残留内毒素は、カブトガニ血球抽出物(「LAL」)アッセイで測定して、好ましくはプラスミド1ミリグラム当たり約100エンドトキシン単位(EU/mg)未満であることになる。より好ましくは、エンドトキシンは約50EU/mg未満、最も好ましくは約20EU/mg未満であることになる。残留RNAは、好ましくは重量で約5%又は5%未満(less than or about 5%)、より好ましくは約1%又は1%未満(less than or about 1%)である(アガロースゲル電気泳動又は疎水性相互作用HPLCによる)。残存ゲノムDNAは、好ましくは約5%重量未満、より好ましくは約1%未満である(アガロースゲル電気泳動又はスロットブロットによる)。
【0086】
当業者であれば、本発明が、当該技術分野で公知又は利用可能であるが本明細書には明示的に記載されていないものを含めて、溶解コイル装置に関する選択された工程又は方法を追加、減算、又は置換することによって変更されうることを認識するであろう。このような変更はすべて、本発明の一部であると企図される。したがって、一実施形態では、本発明は、気泡混合器を使用して、細胞溶解物、又は目的の細胞成分を含有する流体を1つ又は複数のさらなる流体と混合する方法を提供する。さらなる実施形態では、本発明は、気泡混合器を使用して細胞溶解物を沈殿溶液と混合し、同時に、沈殿した細胞成分に気泡を捕捉することを提供する。さらに別の実施形態では、本発明は、上記の方法を実行するために使用できる気泡混合器を備える装置を提供する。さらに、本発明は細胞を溶解するための方法を提供し、その方法は、提供された溶解コイル装置を使用して細胞懸濁液を溶解溶液と混合すること、続いて、気泡混合器を使用して溶解された細胞を沈殿溶液と混合することの組合せを含む。別の実施形態では、本発明は、沈殿した細胞成分を流体溶解物から分離するための方法を提供し、その方法は、気泡混合器を用いて沈殿した細胞成分中に気泡を捕捉すること、タンクに材料を集めること、沈殿した細胞成分が浮遊層を形成できるようにすること、任意選択的で、真空を適用して沈殿した成分を圧縮し、溶解物を脱ガスすること、沈殿した成分の下から排出又はポンプで汲み出すことによって流体溶解物を回収することを含む。さらに別の実施形態では、本発明は、細胞溶解物から目的の細胞成分を精製するための方法を提供し、この方法は、溶解物をイオン交換膜、任意選択で疎水性相互作用膜、限外濾過/ダイアフィルトレーション手順、及び任意選択で無菌濾過手順に供することを含む。本実施形態の各々、及び1つ又は複数の実施形態の任意の組み合わせは、本発明によってさらに包含される。
【0087】
本発明の革新的な(innovative)教示は、プラスミドの生産に関して本明細書に開示の工程を特に参照して記載されている。しかし、プラスミドの生産に関するこれらの工程及びプロセスの使用は、本明細書での多くの有利な使用及び革新的な教示の1つの例のみを提供することが、当業者に理解及び把握されるべきである。本発明の趣旨及び範囲から何ら逸脱することなく、さまざまな実質的でない変更、修正及び置換が開示のプロセスに対して行うことができる。以下の実施例は、本明細書に開示の方法及び装置を例示するために提供され、決して本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例
【0088】
実施例1:溶解コイル内径(ID)と設置角度は全体のプロセス収率に影響ように決定された。
個別の試験で、3/4インチIDコイルが、同等のプロセス流量速で1インチIDコイルと比較して、より速い線速度でより均一な線流をもたらすことが示された。
【0089】
別の試験セットでは、1インチIDコイルと同じ線速度に設定された流速で、3/4インチIDコイルはより均一な線流を示した。これは、溶解コイルの最適な最大IDが3/4インチであり、より速い流速にはコイルの長さを増加又は減少させることによって保持時間を5+/-1分の調整すべきであることを示す。線速度を維持して、直径が小さく、長さが等しい溶解コイルを用いて、低減された流速でのプロセスを達成することができる。
【0090】
コイルの最適な角度を決定するために、1インチID及び3/4インチIDコイルを、直径24インチのホルダー上で3フィートの高さ及び6フィートの高さで試験した。1インチ及び3/4インチIDコイルはいずれも、6フィートの全高において、それぞれ3.43度及び2.15度の角度でより良好に動作した。3/4インチIDコイルは、コイルを通る粗溶解物のより均一な線流を示した。これらの試験セットは、3/4インチIDコイルが2.15~3.43度の角度で溶解コイルの最適な性能をもたらすと思われることを示した。
【0091】
単回使用溶解コイルが所望であるので、3/4インチID単回使用溶解コイルの迅速、簡単、かつ一貫した設置のために、4~6分間の保持時間を得るのに必要な長さ及び均一な線流を促進するのに必要な角度をもつ試作品のホルダーを設計した。試作品はさまざまな生産規模で複数の生産ロットでの使用に成功した。
【0092】
試作品をさらに現在のデザインに発展させた。160フィート長の3/4インチIDのチューブを2.15度の角度で保持するように設計されたポリプロピレン溝付き円筒。この設計は、所望の線速度及びコイルを通る粗溶解物の均一な流れを維持しながら、試作品よりも速く、より一貫した溶解コイルの設置を容易にする。
【0093】
さらなる一連の試験では、2つの溶解コイルにおけるコイル保持時間、流体流速、及び流体線速度の間の関係を調べ、第1のコイルは、160フィート長の内径3/4インチのチューブをもつものであり、第2のコイルは、150フィート長の内径3/8インチのチューブをもつものであった。結果を図6A及び図6Bにそれぞれ示す。
【0094】
実施例2:DNAプラスミド製造プロセス
400Lの発酵バッチからのDNAプラスミドの製造プロセスは、i)細胞溶解及び濾過、ii)ムスタングQ陰イオン交換膜クロマトグラフィー、iii)ブチル疎水性相互作用クロマトグラフィー、及びiv)限外濾過/ダイアフィルトレーション(UF/DF)を含んだ。プラスミドAの精製データを図7A及び図7Bにまとめる。
【0095】
ミニプレップ法によって、細胞ペースト中の初期DNAプラスミドは3.17g/kg WCW(湿細胞重量)と推定され、精製前の初期プラスミドは71.3gであった。最終UF生成物は5.3gであり、結果として全体の精製収率は7.4%であった。この結果は400Lの発酵バッチとして非典型的な収率であることが決定された。
【0096】
各工程について収量分析を行った(図7A及び図7Bを参照)。UF(iv)は工程収量が>100%であったので、低収率の原因として工程ivを除外した。ブチル工程(iii)は全DNAに対する回収率が34.8%であり、典型的な60%回収率より低いと思われた。しかし、ゲル14Jul11-4(図7A及び図7B)は、開環状(OC)及びgDNAの割合が、3M硫酸アンモニウムによる1:4(体積/体積)ロード希釈(load dilution)に起因して、フロースルーにおいて除去されることを示した。ブチル工程でのスーパーコイルプラスミド産物の減少を示唆する証拠はなかった。ブチルロード(butyl load)で~60%のRNAを考慮して、プラスミドの回収率は87.0%であった。したがって、工程iiiは収率低下の原因ではなかった。Q工程(ii)では14.3gの全DNAが得られたが、プラスミドA粗溶解物のHPLC分析に基づいて、Q前の初期材料は10.4gの全DNAと推定された(図8)。Q産物中の推定5.7gのプラスミドは、プラスミドの~58.1%のQ工程回収率に寄与し(5kbプラスミドの~50%のQ回収率に匹敵)、工程iiの性能が典型的であることを示した。工程ii、iii、及びivが除外されるので、工程Iが精製収率の低下に主に関与する段階であると結論付けられた。
【0097】
図8のように、再懸濁した細胞及び異なる段階の溶解物のHPLC分析は、細胞と粗溶解物試料の間の明らかな濃度低下を示した。再懸濁した細胞は、2.8g/kg WCWの収率を示し、初期推定値3.17g/kgに匹敵した。しかし、粗溶解物の収率は0.9g/kg WCWで、濃度は68%低かった。濾過による体積減少の推定で35%は、工程iでのプラスミドの減少の86%に達した。溶解/濾過の複合回収率はわずか13.8%であった。物質収支から、(濾過ではなく)初期溶解段階がプラスミドAの低収率の根本的な原因であると結論付けられた。
【0098】
a)空気流、b)気泡塔内径、c)エアスパージャー(air sparger)、d)溶解コイル、e)混合器、f)溶液、g)操作者、及びh)室温を含む、細胞溶解のプロセスに寄与する可能性のある因子を調べた。6つの別々のプラスミド生産ロット(プラスミドB、C、D、A、E、及びF)のデータを精査した(図9を参照)。因子a、b、c、及びeは、仕様の範囲内であれば、影響が最小であると結論付けられた。因子fは最小因子とみなされ、周囲温度が摂氏25度以下の場合には、完全に除外された。因子gは人間の操作者と比較していかなる傾向も示唆せず、したがって低収率の原因ではなかった。因子hの室温は溶液保存のばらつきに寄与する可能性があるが、他の精製ロットと比較して1つのプラスミド精製で明確な差異は認められなかった。
【0099】
低い溶解収率をもたらす可能性が最もある原因は、因子dの溶解コイルであると考えられた。プラスミドE及びプラスミドFの生産試験(production run)の前に、溶解コイルを洗浄し、消毒して、再使用した。これらのプラスミドに対して新しいコイルの再構築を実行した。コイル角度及び高さのばらつきは、異なる操作者によってさまざまであった。これは、異なる運転中の粗溶解物の均一な流れに影響しうる。粗溶解物の保持時間(hold up time)5+/-1分は、その後の細胞組み込みとプラスミド再生(renaturing)にとって重要である。異なる長さと角度で異なるコイルを用いて3つの生産設計試験を行った。データ及び結論を図10A図10Cに示す。内径3/4インチ、長さ160フィートのより小さい内径コイルを使用した試験#3では、内径1インチ、長さ100フィートの試験#2と比較して、粗溶解物のより均一な線流が観察された。5+/1分の保持時間が試験#3の運転を通して確認されたが、内径1インチの溶解コイルについては粗溶解物濃度の>30%のばらつきから一貫性がないと推察された。内径3/4インチの溶解コイルでの収率増加が示され、このコイルを用いてプラスミドF用いた生産試験を計画した。
【0100】
実施例3:プラスミドの精製
内径(ID)が3/4インチでポリ塩化ビニル(PVC)製の溶解コイルを用いてプラスミドFの精製を行った(熱可塑性プロセス)。PVCチューブはUSPクラスVIに適合し、21 CFR 178.3740に従って製造された。さらに、製造プロセスで使用するコネクターにはHDPEを選択した。HDPEコネクターはCole Parmerから販売され、USPクラスVIの材料であり、21 CFR 177.1520に従って製造されている。溶解コイルは、5+/-1分の溶解保持時間を生み出すのに十分な長さであり、各端にステンレス鋼の1/2インチのとげのある取り付け具(barbed fittings)を備えていた。これにより、長さが160フィートの溶解コイルが得られた。
【0101】
内径3/4インチの溶解コイルの使用は、内径1インチの使用と比較して、収率が向上し、溶解プロセスのばらつきを減少した。より具体的には、この新しいコイルを使用して、プラスミドF、プラスミドG、プラスミドH、及びプラスミドIの生産試験を行った。6つの連続したロット、2つの内径1インチのコイル及び4つの内径3/4インチのコイルの精製データを図12にまとめる。溶解物試料中のプラスミド濃度のHPLC分析を図13にまとめる。6つのロットのバルク放出試験結果のまとめを図14に示す。6つのロットの溶解及びQプロセスのゲル分析を図15A及び図15Bに示す。6つのロットの溶解物試料のHPLC分析を図16A図16Fに示す。
【0102】
プラスミドAは、全体のプロセスに関して7.4%の低い収率を有した(図12、24行目)。Q精製工程での生成物収率は初期推定値よりもはるかに低かった(図12、8及び9行目)。溶解において根本原因が特定された。濾過した溶解物中のプラスミド収率は、ミニプレップによる初期収率推定値(図13、4行目)と比較して、わずか20.8%であった(図13、10行目)。このようなプラスミドの減少は普通ではなく、大部分は内径1インチの溶解コイルからの一定しない保持時間によって引き起こされた。ゲル分析から、Q溶出液(図15A及び図15B)におけるプラスミド濃度の減少と高いゲノムバックグラウンドが認められた。高いgDNA不純物は1:4(体積/体積)3M硫酸アンモニウムのブチルロード条件で減らすことができたが、溶解工程でのプラスミドの減少は、後に回復することができなかった。
【0103】
プラスミドEの全体の精製収率は15%より低く(図12、24行目)、Q収率は初期推定値より低かった(図12、8及び9行目)。プラスミドEと関連したさらなるOOSは、バルク生成物中の高gDNAであった(図14、14行目)。内径1インチの溶解コイルの使用は、濾過した溶解物におけるプラスミド生産の減少(48.9%)及びgDNAの不十分な変性に寄与した。溶解物及びQ溶出液中の高gDNA(図15A及び図15B)は、1:5(体積/体積)3M硫酸アンモニウムのブチルロード条件で排除することができなかった。したがって、最終生成物は6%のgDNAを有し、これは典型的なプロセスが達成しうるよりも10~100倍高い。
【0104】
プラスミドFは、内径3/4インチの溶解コイルを実装した最初のcGMPロットであった。Q工程での実際の収率は61.7%(図12、9行目)であり、推定値(図12、8行目)と差がなかった。典型的な全体の精製収率は~30%である。全体の収率は21.5%であったが、大部分はブチル工程での生成物減少に影響された。濾過した溶解物中のプラスミド収率は、ミニプレップによる初期収率推定値(図13、4行目)と比較して104%(図13、10行目)であった。ゲル分析の結果から、すべての溶解物試料でプラスミド濃度に一貫性があり、Q溶出液ではゲノムバックグラウンドが低いことが認められた(図15A及び図15B)。最終のバルク放出試験の結果は低い不純物プロファイル、特にgDNA:0.03%(図14、14行目)を示した。3/4インチ溶解コイルの使用は、プラスミドFに関する低い溶解収率及び高いgDNAという潜在的な問題を防いだ。高収率(Q工程まで)と高品質の生成物を得た。
【0105】
プラスミドG運転も3/4インチ溶解コイルを実装した。Q工程での実際の収率は58.5%(図12、9行目)であり、これは推定値(図12、8行目)より高かった。全体の精製収率は44.0%で、以前の3つの精製試験(purification runs)より高かった。濾過した溶解物中のプラスミド収率は90.9%(図13、10行目)であり、これは初期収率推定値(図13、4行目)と一致した。まら、ゲル分析は、すべての溶解物試料で一貫したプラスミド濃度を示し、Q溶出液で低いゲノムバックグラウンドを示した(図15A及び図15B)。1:5(体積/体積)3M硫酸アンモニウムのブチル負荷条件を用いたが、gDNAの低減にはほとんど影響しなかった。しかし、最終バルクgDNAは0.2%であった(図14、14行目)。この場合もやはり、内径3/4インチの溶解コイルの使用により、プラスミドGの高収率(Q工程及び全体)並びに高品質の生成物が得られた。
【0106】
プラスミドGと比較して、同様の結果がプラスミドHについても得られた。内径3/4インチの溶解コイルを使用することによって、高収率(Q工程及び全体)並びに高品質の生成物が実証された。
【0107】
プラスミドIは、Q工程での収率がわずかに低かった(図12、9行目)が、それは特定のQカプセルに関連すると推測された。Q工程及び全体及び高品質(Q step and overall and high quality)。濾過した溶解物中のプラスミド収率は、初期収率推定値(図13、4行目)と比較して、88.2%(図13、10行目)であった。ミニプレップのばらつき及び濾過による濃度低下が予想された。80%以上の収率が正常である。1:5(体積/体積)3M硫酸アンモニウムのブチルロード条件をここでも使用した。最終バルクgDNAは0.2%であった(図14)。したがって、3/4インチID溶解コイルの使用は、プラスミドIについても良好な収率及び高品質の生成物を達成した。
【0108】
本明細書で引用されるひとつひとつの特許、特許出願、及び刊行物の開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本発明は特定の実施形態を参照して開示されてきたが、本発明の真の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本発明の他の実施形態及び変形形態が当業者によって考案されうることは明らかである。添付の特許請求の範囲は、すべてのそのような実施形態及び同等の変形を含むように解釈されることが意図される。
図1.3】
図2
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15A
図15B
図16A
図16B
図16C
図16D
図16E
図16F