(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】センサ素子及びガスセンサ
(51)【国際特許分類】
G01N 27/41 20060101AFI20240321BHJP
G01N 27/409 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
G01N27/41 325H
G01N27/409 100
(21)【出願番号】P 2021029660
(22)【出願日】2021-02-26
【審査請求日】2023-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113022
【氏名又は名称】赤尾 謙一郎
(74)【代理人】
【氏名又は名称】下田 昭
(72)【発明者】
【氏名】大石 雄太
(72)【発明者】
【氏名】中務 卓哉
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-510714(JP,A)
【文献】特開2008-128830(JP,A)
【文献】特開昭63-165752(JP,A)
【文献】特表2002-504235(JP,A)
【文献】特開平6-300731(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/41
G01N 27/409
G01N 27/419
G01N 27/416
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体電解質体と、
前記固体電解質体の一方の面に配置されて外部に連通する検知電極と、
前記固体電解質体に埋設されるか、又は前記固体電解質体の他方の面に接して配置される基準電極と、
ヒータと、を備え、
軸線方向に延びて、被測定ガス中の特定ガス成分の濃度を検知する板状積層型のセンサ素子であって、
積層方向に見て、前記ヒータは、前記基準電極を挟んで前記固体電解質体の反対側に配置され、
さらに、前記積層方向に見て前記検知電極と前記基準電極の間の位置で前記固体電解質体に埋設され、主面方向に前記基準電極の少なくとも一部と重なる、緻密な絶縁層を備えることを特徴とするセンサ素子。
【請求項2】
前記基準電極は、基準ガスを内部に溜めることが可能な多孔質体からなることを特徴とする請求項1に記載のセンサ素子。
【請求項3】
前記検知電極と前記ヒータとの積層方向の距離が1.5mm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のセンサ素子。
【請求項4】
軸線方向に延び、被測定ガス中の特定ガス成分の濃度を検知する板状積層型のセンサ素子と、前記センサ素子を保持する主体金具とを備えるガスセンサにおいて、
前記センサ素子は請求項1~3のいずれか一項に記載のセンサ素子を用いることを特徴とするガスセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば燃焼器や内燃機関等の燃焼ガスや排気ガス中に含まれる特定ガスのガス濃度を検知するのに好適に用いられるセンサ素子、及びガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、内燃機関の排気ガス中の特定成分(酸素等)の濃度を検出するためのガスセンサが用いられている。このガスセンサは自身の内部にセンサ素子を有し、センサ素子は、板状の固体電解質体と、該固体電解質体に配置された検知電極及び基準電極とからなる検知セルを有している。さらに、センサ素子はヒータを有しており、検知セルの温度を一定に制御することで、検知精度を保っている。
ここで、一般にヒータによる温度制御は、検知セルを構成する内部抵抗(電極・リードの抵抗、固体電解質体の抵抗、気体の拡散由来の抵抗を含む)を測定することで行われ、予め取得した内部抵抗と検知セル温度との関係に基づいて検知セルの温度を算出し、ヒータを加熱することで温度制御を行っている。
【0003】
ところが、本発明者らが検討したところ、被測定ガスの雰囲気(酸素濃度)によって拡散由来の抵抗が変化することがわかり、内部抵抗における拡散由来の抵抗の割合が大きい場合、温度制御の精度の低下が懸念される。
このようなことから、固体電解質体と基準電極との間に多孔質絶縁体を設け、基準電極の反対面にも他の固体電解質体を設けた技術が開発されている(特許文献1)。又、固体電解質体と基準電極との間に空隙を設け、基準電極の周囲を他の固体電解質で覆った技術も開発されている(特許文献2)。
【0004】
これらの技術では、多孔質絶縁体や空隙により基準電極から固体電解質体へ向かう電流経路を遮断させ、基準電極から他の固体電解質体を介して固体電解質体へ電流を迂回させることで、内部抵抗全体における、固体電解質体を介した検知電極と基準電極との間の固体電解質体の抵抗の割合を増大させ、温度制御の精度の低下を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願公開2010-0224491号明細書(段落0010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、検知セルの温度制御では、ヒータを加熱することで検知電極を目標温度に保つようにしているが、一般にヒータは基準電極を挟んで固体電解質体の反対側に配置されることから、検知電極はヒータから最も遠い側に配置される。このため、温度制御の精度を高めるためには、検知電極とヒータの積層方向の距離をなるべく近付け、ヒータからの熱伝達を良好にすることが好ましい。
しかしながら、特許文献1記載の技術の場合、固体電解質体と基準電極との間に介在する多孔質絶縁体が基準ガスを溜める機能も有するため、その厚みを比較的厚くする必要があり、検知電極とヒータの積層方向の距離も増える傾向にある。又、絶縁体が多孔質なため、空隙に溜まったガスが断熱効果を生じ、ヒータの熱が検知電極に伝わり難くなる。同様に、特許文献2記載の技術の場合も、固体電解質体と基準電極との間に設けた空隙が断熱効果を生じ、ヒータの熱が検知電極に伝わり難い。
【0007】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、ヒータによる検知電極の温度制御の精度を向上させることができるセンサ素子及びガスセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明のセンサ素子は、固体電解質体と、前記固体電解質体の一方の面に配置されて外部に連通する検知電極と、前記固体電解質体に埋設されるか、又は前記固体電解質体の他方の面に接して配置される基準電極と、ヒータと、を備え、軸線方向に延びて、被測定ガス中の特定ガス成分の濃度を検知する板状積層型のセンサ素子であって、積層方向に見て、前記ヒータは、前記基準電極を挟んで前記固体電解質体の反対側に配置され、さらに、前記積層方向に見て前記検知電極と前記基準電極の間の位置で前記固体電解質体に埋設され、主面方向に前記基準電極の少なくとも一部と重なる、緻密な絶縁層を備えることを特徴とする。
【0009】
このセンサ素子によれば、各電極間に絶縁層が介在するので、基準電極から固体電解質体の最短距離を経て検知電極へ向かう電流経路が絶縁層により遮断される。このため、各電極間の固体電解質体を経由する電流経路は、絶縁層が介在しない場合に比べて迂回して長くなる。
このため、内部抵抗全体における、固体電解質体を介した検知電極と基準電極との間の固体電解質体の抵抗の割合を増大させ、温度制御の精度の低下を抑制できる。
さらに、温度制御では、ヒータを加熱することで検知電極を目標温度に保つようにしているが、絶縁層が緻密であるので、絶縁層が多孔質の場合に比べてその厚みを薄くすることができると共に、多孔質に溜まるガスによる断熱効果も抑制できる。その結果、検知電極とヒータの積層方向の距離を短縮し、ヒータからの熱伝達にも優れるので、温度制御の精度をさらに向上させることができる。
【0010】
本発明のセンサ素子において、前記基準電極は、基準ガスを内部に溜めることが可能な多孔質体からなっていてもよい。
このセンサ素子によれば、積層方向に基準電極の上側又は下側に基準ガスを溜めるための多孔質層や空隙を設ける必要がなく、検知電極とヒータの積層方向の距離をさらに短縮できる。
【0011】
本発明のセンサ素子において、前記検知電極と前記ヒータとの積層方向の距離が1.5mm以下であってもよい。
このセンサ素子によれば、検知電極とヒータの積層方向の距離を確実に短縮でき、ヒータへの温度制御の精度が向上する。 また、素子の機械的強度の観点から検知電極とヒータとの積層方向の距離が0.6mm以上であると望ましい。
【0012】
本発明のガスセンサは、軸線方向に延び、被測定ガス中の特定ガス成分の濃度を検知する板状積層型のセンサ素子と、前記センサ素子を保持する主体金具とを備えるガスセンサにおいて、前記センサ素子は請求項1~3のいずれか一項に記載のセンサ素子を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、ヒータによる検知電極の温度制御の精度を向上させることができるセンサ素子及びガスセンサが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1の実施形態にかかるガスセンサの断面図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態にかかるセンサ素子の検知セル付近の軸線方向に垂直な面に沿う断面図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態にかかるセンサ素子の検知セル付近の平面図である。
【
図4】本発明の他の実施形態にかかるセンサ素子の検知セル付近の軸線方向に垂直な面に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の第1の実施形態について、
図1~
図3に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態にかかるガスセンサ1の断面図、
図2は本発明の実施形態にかかるセンサ素子21の検知セル22付近の軸線O方向に垂直な面に沿う断面図、
図3はセンサ素子21の検知セル22付近の平面図である。
【0016】
図1において、ガスセンサ(酸素センサ)1は、センサ素子21と、軸線O方向に貫通してセンサ素子21を挿通させる貫通孔32を有するホルダ(セラミックホルダ)30と、セラミックホルダ30の径方向周囲を取り囲む主体金具11と、プロテクタ51と、を備えている。
センサ素子21のうち、検知セル22が形成された先端側が、セラミックホルダ30及び主体金具11より先端に突出している。このように貫通孔32を通されたセンサ素子21は、セラミックホルダ30の後端面側(図示上側)に配置されたシール材(本例では滑石)41を、絶縁材からなるスリーブ43、リングワッシャ45を介して先後方向に圧縮することによって、主体金具11の内側において先後方向に気密を保持して固定されている。
【0017】
なお、センサ素子21の後端側29はスリーブ43及び主体金具11より後方に突出しており、その後端側29に形成された各電極端子24に、シール材85を通して外部に引き出された各リード線71の先端に設けられた端子金具75が圧接され、電気的に接続されている。また、この電極端子24を含むセンサ素子21の後端側29は、外筒81でカバーされている。以下、さらに詳細に説明する。
【0018】
センサ素子21は軸線O方向に延びると共に、測定対象に向けられる先端側(図示下側)に、検知電極122等(
図2)からなり被検知ガス中の特定ガス成分を検知する検知セル22を備えた帯板状(板状)積層型をなしている。センサ素子21の横断面は、先後において一定の大きさの長方形(矩形)をなし、セラミック(固体電解質等)を主体として細長いものとして形成されている。このセンサ素子21自体は、従来公知のものと同じものであり、固体電解質(部材)の先端側に検知セル22をなす一対の検知電極が配置され、これに連なり後端側には、検知用出力取り出し用のリード線71接続用の電極端子24が露出形成されている。
【0019】
また、本例では、センサ素子21のうち、固体電解質(部材)に積層状に形成されたセラミック材の先端側内部にヒータ125(
図2)が設けられており、後端側には、このヒータへの電圧印加用のリード線71接続用の電極端子24が露出形成されている。なお、図示はしないが、これら電極端子24は縦長矩形に形成され、例えばセンサ素子21の後端側29において、帯板の幅広面(両面)に3つ又は2つの電極端子が横に並んでいる。
なお、センサ素子21の検知セル22に、アルミナ又はスピネル等からなる多孔質の保護層23が被覆されている。
【0020】
主体金具11は、先後において同心異径の筒状をなし、先端側には小径で後述するプロテクタ51を外嵌して固定するための円筒状の円環状部(以下、円筒部ともいう)12を有し、その後方(図示上方)の外周面には、それより大径をなす、エンジンの排気管への固定用のネジ13が設けられている。そして、その後方には、このネジ13によってセンサ1をねじ込むための多角形の工具係合部14を備えている。また、この工具係合部14の後方には、ガスセンサ1の後方をカバーする保護筒(外筒)81を外嵌して溶接する円筒部15が連設され、その後方には外径がそれより小さく薄肉のカシメ用円筒部16を備えている。
【0021】
なお、このカシメ用円筒部16は、
図1では、カシメ後のために内側に曲げられている。なお、工具係合部14の下面には、ねじ込み時におけるシール用のガスケット19が取着されている。
一方、主体金具11は、軸線O方向に貫通する内孔18を有している。内孔18の内周面は後端側から先端側に向かって径方向内側に先細るテーパ状の段部17を有している。
【0022】
主体金具11の内側には、絶縁性セラミック(例えばアルミナ)からなり、概略短円筒状に形成されたセラミックホルダ30が配置されている。セラミックホルダ30は、先端に向かって先細りのテーパ状に形成された先端向き面30aを有している。そして、先端向き面30aの外周寄りの部位が段部17に係止されつつ、セラミックホルダ30が後端側からシール材41で押圧されることで主体金具11内にセラミックホルダ30が位置決めされ、かつ隙間嵌めされている。
一方、貫通孔32は、セラミックホルダ30の中心に設けられると共に、センサ素子21が略隙間なく通るように、センサ素子21の横断面とほぼ同一の寸法の矩形の開口とされている。
【0023】
センサ素子21は、セラミックホルダ30の貫通孔32に通され、センサ素子21の先端21aをセラミックホルダ30及び主体金具11の先端12aよりも先方に突出させている。
一方、センサ素子21の先端部は、一重の有底円筒状のプロテクタ(保護カバー)51で覆われている。プロテクタ51の後端は主体金具11の円筒部12に外嵌され、溶接されている。又、プロテクタ51の後端寄りの部位には、径方向(軸線O方向に垂直な方向)に沿う段部51dが形成され、段部51dより先端側が小径となっている。
そして、段部51dには後端側を向くガス導入孔56が複数個開口している。
【0024】
一方、プロテクタ51の先端の底部51a中央にはガス排出孔53(本例では1個)が設けられている。ガス排出孔53は、ガス導入孔56よりも先端側に配置され、ガスセンサ1が取り付けられる取付対象(排気管等)を流れる被検知ガスの流れによってプロテクタ51内のガスがガス排出孔53から外部へ吸い出され、その負圧により、ガス導入孔56から被検知ガスがプロテクタ51内へ導入される。
なお、
図1の例では、プロテクタ51の先端の底部51a中央が平行な2本の切れ目で後端側に切り起こされてカバー51fを形成し、ガス排出孔53は、プロテクタ51の底部51aとカバー51fとの間の隙間に径方向に向いて形成されている。
【0025】
又、
図1に示すように、センサ素子21の後端側29に形成された各電極端子24には、外部にシール材85を通して引き出された各リード線71の先端に設けられた各端子金具75がそのバネ性により圧接され、電気的に接続されている。そして、この圧接部を含む各端子金具75は、本例ガスセンサ1では、外筒81内に配置された絶縁性のセパレータ91内に設けられた各収容部内に、それぞれ対向配置で設けられている。なお、セパレータ91は、外筒81内にカシメ固定された保持部材82を介して径方向及び先端側への動きが規制されている。そして、この外筒81の先端部を、主体金具11の後端側の円筒部15に外嵌して溶接することで、ガスセンサ1の後方が気密状にカバーされている。
なお、リード線71は外筒81の後端部の内側に配置されたシール材(例えばゴム)85を通されて外部に引き出されており、この小径筒部83を縮径カシメしてこのシール材85を圧縮することにより、この部位の気密が保持されている。
【0026】
因みに、外筒81の軸線O方向の中央よりやや後端側には、先端側が径大の段部81dが形成され、この段部81dの内面がセパレータ91の後端を先方に押すように支持する。一方、セパレータ91はその外周に形成されたフランジ93を外筒81の内側に固定された保持部材82の上に支持させられており、段部81dと保持部材82とによってセパレータ91が軸線O方向に保持されている。
【0027】
次に、
図2、
図3を参照し、本発明の特徴部分について説明する。
図2に示すように、センサ素子21の検知セル22は、固体電解質体121と、固体電解質体121の一方の面(
図2の上面)に接して配置される検知電極122と、固体電解質体121に埋設されて配置される基準電極123とを備え、酸素濃度を検出する。又、検知セル22の基準電極123側にはヒータ125が積層されている。
なお、固体電解質体121は、
図2の上面側の第1固体電解質体121aと、下面側の第2固体電解質体121bと、第1固体電解質体121aと第2固体電解質体121bとの間に積層される第3固体電解質体121cとを一体に有している。第1固体電解質体121a~第3固体電解質体121cは一体となって電気的に接続され、固体電解質体121を構成する。
【0028】
固体電解質体121は、第1固体電解質体121a~第3固体電解質体121cとなる各未焼成シートを積層圧着し、焼成することで形成できる。固体電解質体121の断面を見ると、各シートが一体になって第1固体電解質体121a~第3固体電解質体121cの境界が見えない場合は、これら各固体電解質体を区別せずに一体の固体電解質体121とみなす。一方、境界が見える場合は、各固体電解質体を区別してもよい。
【0029】
ここで、検知電極122の表面(
図2の上面)には、検知電極122を覆うようにして多孔質層126が配置されており、保護層23及び多孔質層126を介して検知電極122が外部に連通するようになっている。多孔質層126はアルミナ等のセラミックからなり、外部から検知電極122へ流入する被測定ガスの流入量を調整する拡散抵抗層として機能する。
又、ヒータ125は白金を主体とする発熱体からなる配線パターンが蛇行する構成となっている。積層方向D(
図2の上下方向)に見て、ヒータ125は、基準電極123を挟んで固体電解質体121の反対側(
図2の下側)に配置されている。
【0030】
なお、多孔質層126は平面から見て矩形状であり、センサ素子21の外形(外縁)を形成する第1セラミック絶縁層131の矩形開口部に埋設されるようにして配置されている。同様に、固体電解質体121は平面から見て矩形状であり、センサ素子21の外形(外縁)を形成する第2セラミック絶縁層133及び第3セラミック絶縁層134の矩形開口部に配置されている。
又、ヒータ125は、センサ素子21の外形(外縁)を形成する第4セラミック絶縁層135と第5セラミック絶縁層137の間に挟まれるように配置されている。
【0031】
第1セラミック絶縁層131及び第5セラミック絶縁層137の外面がセンサ素子21の外側を向く主面を構成する。又、第1セラミック絶縁層131、第2セラミック絶縁層133、後述する第3セラミック絶縁層134、第4セラミック絶縁層135及び第5セラミック絶縁層137は、この順に積層されている。
なお、センサ素子21の主面に沿う方向を、主面方向Sとする。
【0032】
又、
図3に示すように、本例では、基準電極123は平面から見てU字型に二股分岐して2つの枝部123a、123bを有するフォーク形状をなし、U字の基部の後端側にリード部123Lが接続されている。
一方、検知電極122は平板状をなし、後端側にリード部122Lが接続されている。
【0033】
さらに、積層方向に見て、検知電極122と基準電極123の間の位置で、緻密な絶縁層124が固体電解質体121に埋設されている。詳細には、第1固体電解質体121aと基準電極123との間に絶縁層124が配置され、絶縁層124は第1固体電解質体121aと基準電極123とにそれぞれ接している。
より詳しくは、
図3に示すように、本例では、絶縁層124は主面方向に基準電極123と重なり、かつ基準電極123より外側にはみ出すように形成されており、絶縁層124もU字型に二股分岐したフォーク形状になっている。
ここで、「緻密」とは、倍率3000倍で絶縁層124の断面のSEM(走査電子顕微鏡)の組成像(二次電子像)を見たとき、絶縁層124を構成するセラミックの組成と異なる暗部(空隙を表す)の占める面積が4%以下の場合をいう。
【0034】
又、基準電極123の表面(
図2の下面及び側面)には、第2固体電解質体121bが接して配置されている。ここで、基準電極123と絶縁層124との接続面と、第2固体電解質体121bの表面(
図2の上面)とは面一であり、積層方向に第1固体電解質体121aと第2固体電解質体121bとの間であって絶縁層124の非形成部位には第3固体電解質体121cが配置されている。
つまり、第2固体電解質体121bは、第3固体電解質体121cを介して第1固体電解質体121aと電気的に接続する。なお、第3固体電解質体121cを第2固体電解質体121bと一体に形成させ、第2固体電解質体121bが第1固体電解質体121aと直接的に電気的に接続するようにしてもよい。
【0035】
なお、第2固体電解質体121bは平面から見て第1固体電解質体121aと同一寸法の矩形状であり、センサ素子21の外形(外縁)を形成する第3セラミック絶縁層134の矩形開口部に配置されている。第3固体電解質体121cも第3セラミック絶縁層134の矩形開口部の一部(絶縁層124の非形成部位)に配置されている。
【0036】
固体電解質体121(第1固体電解質体121a、第2固体電解質体121b及び第3固体電解質体121c)は、ジルコニア(ZrO2)に安定化剤としてイットリア(Y2O3)又はカルシア(CaO)を添加してなる部分安定化ジルコニア焼結体から構成されている。
検知電極122、基準電極123は、貴金属を主成分とすると共にセラミックを含有した組成からなる。貴金属としては白金族元素を用いることができる。これらを形成する好適な白金族元素としては、Pt、Rh、Pd等を挙げることができ、これらはその一種を単独で使用することもできるし、又二種以上を併用することもできる。セラミック成分は、固着という観点から、積層される側の主体となる材料(各固体電解質体1)と同様の成分であることが好ましい。
又、リード部122L、123Lも貴金属を主成分とすることができる。
各セラミック絶縁層131~137はアルミナ等から形成することができる。
【0037】
なお、本例では基準電極123は、多孔質体であって基準ガスを内部に溜めることが可能である。そして、検知セル22の各電極122,123間に微小電流を流して基準電極123に酸素を溜めさせ、基準酸素としている。
【0038】
次に、
図2を参照し、絶縁層124の作用について説明する。
ヒータ125による検知セル22の温度制御をする際には、検知セル22の各電極122,123間にパルス電流を流し、固体電解質体121の内部抵抗(インピーダンス)を測定する。
このとき、仮に絶縁層124が介在しない場合は各電極122,123間の電流経路は、固体電解質体121(第1固体電解質体121a)の最短距離となる。
一方、
図2に示すように、各電極122,123間に絶縁層124が介在すると、基準電極123から第1固体電解質体121aへ直接向かう電流経路が絶縁層124により遮断される。このため、各電極122,123間の電流経路Cは、基準電極123に接する第2固体電解質体121b及び第3固体電解質体121cを通って第1固体電解質体121a、検知電極122へ流れる経路となり、絶縁層124が介在しない場合に比べて迂回して長くなる。
【0039】
このため、内部抵抗全体における、固体電解質体121を介した検知電極122と基準電極123との間の固体電解質体121の抵抗の割合を増大させ、温度制御の精度の低下を抑制できる。
さらに、検知セル22の温度制御では、ヒータ125を加熱することで検知電極122を目標温度に保つようにしているが、絶縁層124が緻密であるので、絶縁層124が多孔質の場合に比べてその厚みを薄くすることができると共に、多孔質に溜まるガスによる断熱効果も抑制できる。その結果、検知電極122とヒータ125の積層方向の距離を短縮し、ヒータ125からの熱伝達にも優れるので、温度制御の精度をさらに向上させることができる。
【0040】
又、本例では、基準電極123は、基準ガスを内部に溜めることが可能な多孔質体からなるので、積層方向に基準電極123の上側又は下側に基準ガスを溜めるための多孔質層や空隙を設ける必要がなく、検知電極122とヒータ125の積層方向の距離をさらに短縮できる。
なお、このような観点からは、検知電極123とヒータ125との積層方向の距離が1.5mm以下であることが好ましい。
【0041】
本発明は上記実施形態に限定されない。
例えば、
図4に示すように、基準電極127が固体電解質体129に埋設されず、固体電解質体129の他方の面(基準電極123が配置される面と反対の面;
図4の下面)に接して配置されてもよい。
なお、
図4の例では、基準電極127は検知電極122Bと同様な矩形状をなしている。そして、第1の実施形態と同様、緻密な絶縁層124Bは、積層方向に見て検知電極122Bと基準電極127の間の位置で固体電解質体129に埋設され、主面方向に基準電極127及び検知電極122Bと重なり、かつ基準電極127及び検知電極122Bより主面方向の外側にはみ出すように形成されている。なお、検知電極122Bが絶縁層124Bより主面方向の外側にはみ出してもよい。
【0042】
ここで、
図4において、検知セル22Bのうち、検知セル22と同一構成部分は同一符号を付して説明を省略する。又、
図4の例では、固体電解質体129は、固体電解質体129用の2枚の未焼成のシートの間に未焼成の絶縁層124Bシートを挟んで積層し、焼成することで一体に形成されている。固体電解質体129の断面を見ると、各シートが一体になって境界Bが見えない場合が多いが、境界Bが見えていてもよい。後者の場合は、固体電解質体129は上層と下層からなることになる。
なお、固体電解質体129(又はその上層と下層)は平面から見て矩形状であり、センサ素子21の外形(外縁)を形成する第2セラミック絶縁層133Bの矩形開口部に配置されている。
図4の例でも、基準電極127から固体電解質体129の最短距離を経て検知電極122Bへ向かう電流経路が絶縁層124により遮断される。このため、電流経路は、絶縁層124Bが介在しない場合に比べて固体電解質体129内を迂回して長くなる。
【0043】
本発明はセンサ素子のうち酸素を検知する検知セルであれば適用でき、センサ素子としては、酸素の濃度を測定するものに限定されず、窒素酸化物(NOx)又は炭化水素(HC)等の濃度を測定するものを用いてもよい。
基準電極の形状も限定されず、上述のフォーク状でなく、矩形平板状であってもよいし、3又以上に分岐するフォーク状でもよい。
又、本例では、検知電極122及び基準電極123が配置される部位が固体電解質体で、その周囲が枠状のセラミック絶縁層からなる埋め込みタイプの複合体であったが、固体電解質体は、層全体がセンサ素子21の外形(外縁)を形成する板状であってもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 ガスセンサ
11 主体金具
21 センサ素子
121、129 固体電解質体
122、122B 検知電極
123、127 基準電極
124、124B 絶縁層
125 ヒータ
O 軸線
D 積層方向
S 主面方向