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特許7457665コンデンサ静電容量監視方法およびコンデンサ静電容量監視装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】コンデンサ静電容量監視方法およびコンデンサ静電容量監視装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/64 20200101AFI20240321BHJP
   G01R 27/26 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
G01R31/64
G01R27/26 C
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021039790
(22)【出願日】2021-03-12
(65)【公開番号】P2022139415
(43)【公開日】2022-09-26
【審査請求日】2023-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 隆
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 深大
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 正典
(72)【発明者】
【氏名】根本 博光
(72)【発明者】
【氏名】酒井 昭人
(72)【発明者】
【氏名】小林 将人
【審査官】島田 保
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-60305(JP,A)
【文献】特開2011-119637(JP,A)
【文献】特開2011-185884(JP,A)
【文献】特開2019-184578(JP,A)
【文献】国際公開第2010/150599(WO,A1)
【文献】特開2020-102397(JP,A)
【文献】特開2015-55596(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/00-31/74
G01R 27/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンデンサと、前記コンデンサを充電するための電源とを有し、前記コンデンサの静電容量の状態を監視するコンデンサ容量監視方法であって、
前記コンデンサの放電後に再充電を行う際の充電電流波高値と、前記コンデンサが所定電圧に充電された時点の充電電流値とを計測し、前記充電電流波高値と前記充電電流値との電流差に基づいて前記コンデンサの状態を監視するコンデンサ静電容量監視方法。
【請求項2】
コンデンサと、前記コンデンサを充電するための電源とを有し、前記コンデンサの静電容量の状態を監視するコンデンサ容量監視方法であって、
前記コンデンサの放電後に再充電を行う際の充電電流波高値と、前記コンデンサが所定電圧に充電された時点の充電電流値と、前記電源の電源電圧とを計測し、前記計測された前記充電電流波高値と前記充電電流値との電流差に前記電源電圧を積算した値を求め、前記積算した値に基づいて前記コンデンサの静電容量の状態を監視するコンデンサ静電容量監視方法。
【請求項3】
請求項2に記載されたコンデンサ静電容量監視方法において、前記コンデンサの静電容量が正常であるか否かの監視は、正常か否かを判断するための基準値と前記積算した値とを比較することにより判断することを特徴とするコンデンサ静電容量監視方法。
【請求項4】
請求項2に記載されたコンデンサ静電容量監視方法において、前記コンデンサの静電容量の状態を表示装置に表示することを特徴とするコンデンサ静電容量監視方法。
【請求項5】
請求項2に記載されたコンデンサ静電容量監視方法において、前記コンデンサの状態の履歴データを時系列的に記憶しておき、前記履歴データを用いて前記コンデンサの状態を監視することを特徴とするコンデンサ静電容量監視方法。
【請求項6】
請求項2に記載されたコンデンサ静電容量監視方法において、前記コンデンサは電磁石の励磁コイルを励磁するために用いることを特徴とするコンデンサ静電容量監視方法。
【請求項7】
コンデンサと、前記コンデンサを充電するための電源と、前記コンデンサの静電容量の状態を監視する監視部とを備えたコンデンサ容量監視装置であって、
前記コンデンサの充電時の充電電流を計測する電流センサーを設け、
前記監視部は、前記電流センサーから、充電時の充電電流波高値と前記コンデンサが所定電圧に達した時点の充電電流値とを入力し、前記充電電流波高値と前記充電電流値との電流差に基づいて前記コンデンサの状態を監視するコンデンサ静電容量監視装置。
【請求項8】
請求項7に記載されたコンデンサ静電容量監視装置において、
前記監視部は、電源電圧を入力し、前記電流差に前記電源電圧を積算した値に基づいて、前記コンデンサの静電容量の状態を監視することを特徴とするコンデンサ静電容量監視装置。
【請求項9】
請求項8に記載されたコンデンサ静電容量監視装置において、
前記監視部は、前記コンデンサが正常であるか否かを判断する基準となる基準値を設定しておき、前記電流差と前記基準値とを比較した結果に基づき、前記コンデンサの静電容量の状態を監視することを特徴とするコンデンサ静電容量監視装置。
【請求項10】
請求項8に記載されたコンデンサ静電容量監視装置において、
表示装置を設け、前記監視部は、前記コンデンサの状態を前記表示装置に表示することを特徴とするコンデンサ静電容量監視装置。
【請求項11】
請求項8に記載されたコンデンサ静電容量監視装置において、
前記監視部は、前記コンデンサの状態の履歴データを時系列的に記憶する記憶部を設け、前記履歴データに基づいて前記コンデンサの状態を監視することを特徴とするコンデンサ静電容量監視装置。
【請求項12】
請求項8に記載されたコンデンサ静電容量監視装置において、前記コンデンサにより電磁石の励磁コイルを駆動することを特徴とするコンデンサ静電容量監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサ容量監視方法およびコンデンサ静電容量監視装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のコンデンサ静電容量監視方法、例えば、真空遮断器の電磁操作機構の電源コンデンサの静電容量監視方法は、電源コンデンサから充放電リード線を取り外して、静電容量を静電容量計で測定していたため、機器の停止が必要であった。
【0003】
これに対し、電力用機器を停止させることなく運用中にコンデンサ容量を診断する診断装置として、例えばWO2010/150599A1(特許文献1)に記載された技術が知られている。この特許文献1には、コンデンサに充電するための直流電源と、コンデンサのエネルギーを放電させるためのコンデンサに並列に接続される放電回路と、放電時の電圧低下を測定するための抵抗分圧回路と、分圧電圧を測定する測定回路と、放電による電圧の時間変化からコンデンサ容量の良否を判定する診断回路とを備えたコンデンサ静電容量診断装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】WO2010/150599A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の診断装置(監視装置)では、コンデンサに並列に放電回路を設けておき、その放電回路をコンデンサに接続することで、一定の時間だけ放電させ、その時のコンデンサの電圧を測定することにより、コンデンサの静電容量診断(コンデンサの容量適否診断)を行っている。
【0006】
この診断装置では、放電回路を設ける必要があること、放電回路の入切を制御しなければならないことなどの課題がある。また、放電回路を接続するときの、コンデンサの初期電圧がばらつくと、放電回路を一定の時間だけ放電させた後のコンデンサの電圧測定値がばらつくという課題もあった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、放電回路や放電回路の制御が不要であり、診断のための構成が簡単で信頼性の高いコンデンサ容量監視方法およびコンデンサ容量監視装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、本発明は、その一例を挙げると、コンデンサと、前記コンデンサを充電するための電源とを有し、前記コンデンサの静電容量の状態を監視するコンデンサ容量監視方法であって、前記コンデンサの放電後に再充電を行う際の充電電流波高値と、前記コンデンサが所定電圧に充電された時点の充電電流値とを計測し、前記充電電流波高値と前記充電電流値との電流差に基づいて前記コンデンサの状態を監視するコンデンサ静電容量監視方法である。
【0009】
また、本発明の他の例を挙げると、コンデンサと、前記コンデンサを充電するための電源と、前記コンデンサの静電容量の状態を監視する監視部とを備えたコンデンサ容量監視装置であって、前記コンデンサの充電時の充電電流を計測する電流センサーを設け、前記監視部は、前記電流センサーから、充電時の充電電流波高値と前記コンデンサが所定電圧に達した時点の充電電流値とを入力し、前記充電電流波高値と前記充電電流値との電流差に基づいて前記コンデンサの状態を監視するコンデンサ静電容量監視装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、コンデンサの静電容量の診断のための構成が簡単で信頼性の高いコンデンサ容量監視方法およびコンデンサ容量監視装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例1における開閉装置を示す図である。
図2図1における真空遮断器の縦側断面図である。
図3図1における真空遮断器の縦正断面図である。
図4】実施例1におけるコンデンサの充放電回路を示す図である。
図5】実施例1における静電容量監視方法を説明するための図である。
図6】実施例1における静電容量監視方法を説明するための図である。
図7】実施例1における診断部の構成を示す図である。
図8】実施例2における診断部の構成を示す図である。
図9】実施例3における診断部の構成を示す図である。
図10】実施例4における診断部の構成を示す図である。
図11】実施例5における診断部の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を具体的な実施例により詳細に説明する。なお、本発明は以下に説明する実施例に限定されるものではない。本発明は、下記の実施例を含めて種々の態様に変形することができる。また、以下の説明で用いる図面において、同一の部品や構成機器には同一の符号(番号)を用いており、すでに説明した部品や構成機器に関する説明を省略する場合がある。
【0013】
≪実施例1≫
次に、実施例1について、図1から図7を用いて説明する。実施例1は、本発明を、開閉装置(スイッチギヤ)における真空遮断器の電磁操作機構の電源コンデンサの静電容量監視に適用したものである。図1は、実施例1における開閉装置全体の構成を示す図である。図2および図3は、図1の開閉装置に使用される真空遮断器の構成を示す図である。図4は、真空遮断器を駆動するためのコンデンサ充放電回路である。図5および図6は、本発明の実施例1における診断方法を説明するための図である。図7は、本発明の実施例1における診断部の構成を示す図である。
【0014】
まず、図1を用いて、開閉装置の全体構成について説明する。図1において、開閉装置100は、計測器室101、遮断器室102、母線室103、ケーブル室104を備えている。計測器室101内には、真空遮断器110を制御する遮断器制御部105が設けられている。また、計測器室101内には、コンデンサの静電容量の状態を監視(診断)する監視部200と、監視部200の診断結果を表示する表示装置210とが設けられている。遮断器室102には、真空遮断器110が備え付けられており、異常時には遮断器制御部105の制御により、電源コンデンサを放電させることにより電磁石を駆動させ、真空遮断器110が作動し、母線130の電路を遮断する。母線130は、真空遮断器110の断路部と連結される。ケーブル室104には、配電用ケーブル120が配される。
【0015】
次に、図2および図3により、この真空遮断器110の構成について説明する。図2および図3において、ケース111内には、励磁コイル141を有する電磁石14が配置される。電磁石14は、この励磁コイル141の励磁により、母線130の電路の遮断動作を実行するための駆動力を発生する。電源コンデンサは、電磁石14の励磁コイル141に対して励磁電流を付与する。そのために、図3に示すようにコンデンサ16(電源コンデンサ)が内蔵されている。ケース111の下部には、遮断ばね113が配置され、更にシャフト114が配置される。
【0016】
また、絶縁フレーム131内には、断路部132と接続する固定側導体134が真空バルブ136内の固定接点137と接続されている。また、断路部133と接続する可動側導体135が真空バルブ136内の可動接点138と接続されている。断路部132は母線の一端と接続され、断路部133は母線の他端と接続されている。116は絶縁ロッド、115はワイプばねである。通常(正常時)は、真空バルブ136内の固定接点137と可動接点138とは接触しており、母線130の電路はつながった状態になっている。母線や電力系統に異常が発生すると、真空遮断器110が作動する。すなわち、遮断器制御部105の制御により、コンデンサ16に蓄えられたエネルギーを電磁石14の励磁コイル141に供給し、永久磁石15による投入保持力をキャンセルすることにより、遮断ばね113とワイプばね115の付勢力によって、シャフト114、絶縁ロッド116を経由して可動接点138を引き離す方向に移動させ、固定接点137と可動接点138とが引き離される。これにより、母線の電路は遮断される。
【0017】
図3において、201は電流センサーであり、計測した電流は監視部200に入力される。制御リード線117は、コンデンサ16を充電するための電源と接続されている。118は制御基板を示し、112は補助接点を示している。制御基板118から、制御リード線117が補助接点112、コンデンサ16、電磁石14の励磁コイル141に接続されている。電流センサー201は、制御リード線117のうちの、コンデンサ16の充電電流が流れるリード線に対して取り付けられている。
【0018】
次に、図4により、この実施例におけるコンデンサの充放電回路について説明する。図4において、直流電源500からスイッチ501、充電抵抗502を介してコンデンサ16(電源コンデンサ)が充電される。投入時には、コンデンサ16からスイッチ503を介して励磁コイル141に電流を供給することによって、電磁石14を動作させる。電磁石が動作した後で、スイッチ503を開放し、スイッチ501を閉じることによりコンデンサ16が再充電される。この実施例では、その時の充電電流が電流センサー201によって測定される。
【0019】
ここで、図5および図6により、実施例1におけるコンデンサ静電容量監視方法の基本的な考えについて説明する。
【0020】
図5は、電源コンデンサの静電容量がある値における、コンデンサ電圧Vc、コンデンサ充電電流iの時間特性を示している。真空遮断器110が遮断状態において、時刻t1で投入指令が入力されると、投入動作に引き続いて、コンデンサ16は充電を開始する。このとき、充電電流は図示のように最大値ia(波高値)を示し、その後コンデンサの充電の進行に応じて充電電流iは減少する。時刻t2で電源コンデンサ電圧Vcがある値に達すると再充電は完了する。この時の充電電流がibであり、その後、コンデンサ16の充電電流は急速に減少してゼロになる。この充電電流の波高値iaと、充電終了時点(所定電圧に充電された時点)の充電電流値ibとの差Δi(=ia-ib)は、コンデンサの静電容量の大きさにより異なる。これを一つのコンデンサで見た場合、コンデンサが新しく(劣化がなく)静電容量が所定値である(正常である)場合の電流差と、コンデンサが経時的な劣化により静電容量が小さくなった場合の電流差とは異なるということになる。本発明では、基本的にこのような知見を利用し、コンデンサの劣化の状態、言いかえるとコンデンサの静電容量の状態を診断し監視する。つまり、充電電流の波高値と、所定電圧に充電された時点)の充電電流値とを計測し、これら2つの電流の電流差Δiに基づいてコンデンサの静電容量の状態を求め、この電流差とコンデンサの異常判定(良否判定)の基準値とを比較することにより、コンデンサの静電容量の状態を診断する。
【0021】
ところで、この電流差(充電電流の波高値と、所定電圧に充電された時点の充電電流値との差)は、電源電圧により変動する。コンデンサを充電するための電源が、定電圧電源であれば、電源電圧による電流差の影響を考慮しなくても診断の精度に影響を与えない。しかし、電源電圧が大きく変動する直流電源の場合には、電源電圧による影響をなくす(補償する)ことが必要となる。電源電圧の変動による電流差の影響および、その対処方法(補償方法)を図6(a),(b)により説明する。
【0022】
図6(a)は、実測した充電時の充電電流の電流差Δiに対する電源コンデンサ静電容量の特性である。なお、図6では、電流差Δi、および静電容量を0-1.0の任意目盛(任意単位の目盛)で表している。図6(a)からわかるように、コンデンサの静電容量が大きくなるに従って、電源コンデンサ充電電流差Δiは減少する右下がりの特性になる。また、制御電圧をV1、V2、V3(V1<V2<V3)に変化させると、制御電圧が低い場合ほど電源コンデンサ充電電流差Δiが大きくなった。図より、電源コンデンサ充電電流差Δiの異常判定の基準値がΔithとした場合、対応する電源コンデンサ静電容量は制御電圧V3の場合には0.3、制御電圧V1の場合には0.75と、制御電圧の影響を受けて変動してしまう。
【0023】
そこで、図6(b)に示すように、充電電流差Δiに制御電圧を乗ずる(積算する)ことで補正すると、図6(a)の特性V3は相対的に紙面上方向にシフトし、逆に図6(a)の特性V1は相対的に紙面下方向にシフトする結果、電源コンデンサ充電電流差Δi-電源コンデンサ静電容量特性の制御電圧変化に伴うばらつきが小さくなる。その結果、電源コンデンサ充電電流差Δiの異常判定基準(基準値)がΔithの場合、対応する電源コンデンサ静電容量は0.55で、制御電圧の影響を受けず、一定になる。
【0024】
このように、本発明の実施例1では、電源電圧V0の変動に対応するため、この電流差に電源電圧値を積算した値を用いて、コンデンサの静電容量の状態の診断を行う。
【0025】
次に、図7により、実施例1における監視部200の構成及び動作を説明する。なお、図7におけるコンデンサの充放電回路を示した部分は既に図4により説明したので、ここでは説明を省略する。
【0026】
図7において、監視部200は、一般的な計算機で実現できるが、ここでは、説明を分かりやすくするために、ブロック図により説明する。この場合、監視部200は、演算部202と、比較部203とで構成される。表示装置210は、監視部200による診断の結果を表示する。具体的には、コンデンサ16の静電容量の状態が正常であるか否かについて表示する。
【0027】
この監視部200の動作は、次のとおりである。すなわち、監視部200は、コンデンサ16の再充電が開始されると、電流センサー201からその時点の充電電流波高値iaを演算部202に入力する。また、コンデンサの充電電圧が所定値に達した時点において、その時点の充電電流値ibを演算部202に入力する。更に、直流電源500の電源電圧を電圧センサー510から演算部202に入力する。これにより、演算部202は、充電の際の波高値と充電終了時の電流との差電流Δiを求め、更に、この差電流に電源電圧値V0を積算した値(コンデンサの状態を示す数値)を演算することができる。
【0028】
この演算部202の演算結果は、比較部203に入力される。比較部203は、予め、コンデンサの静電容量の状態を判断するための基準値を求めて設定しておき、演算部202で演算された結果の値とこの基準値とを比較する。その結果、比較部203は、演算された結果の値が基準値を超えている場合にはコンデンサの状態が正常であると判断し、そうでない場合には異常であると判断する。比較部203の判断結果は、表示装置210に表示される。
【0029】
このように、本発明の実施例1によれば、コンデンサの放電後において、再充電を行う度に、コンデンサの静電容量の状態を診断することができる。また、電流センサーの計測値を用いるだけで、従来の様に特別に放電回路を設ける必要がなく、また特別な制御も必要でないので、簡単な構成でコンデンサの診断を実現することができる。また、この実施例では、電源電圧の影響を補償して、静電容量の状態を診断することができるので、信頼性の高い診断を行うことができる。
【0030】
≪実施例2≫
次に、本発明の実施例2について、図8を用いて説明する。図8は、監視部200の構成を示しており、上述した実施例1における図7に対応する図である。そのため、すでに説明した内容についての説明を省略する。
【0031】
図8において、監視部200は、新たに記憶部204を備えている点が、図7の場合と異なる。記憶部204には、演算部202により、診断のための演算が行われると、それを時系列的な履歴データとして記憶する。その履歴データに基づいて、コンデンサ16の静電容量の状態監視を行う。
【0032】
この実施例では、上述した効果を有するとともに、記憶部204に記憶された履歴データを参照することにより、コンデンサの静電容量の劣化がどの程度進んでいるのかを時系列的に認識することができる。つまり、コンデンサ静電容量の時間的な変化の傾向をとらえることができ、コンデンサの交換時期を推定することも可能となる。
【0033】
≪実施例3≫
次に、本発明の実施例3について図9を用いて説明する。図9に示す実施例は、図7に示す実施例と実質的に同じであるが、演算部202の演算過程を具体的に示している点が図7と異なる。そのため、ここでは、図7との違いを中心に説明する。
【0034】
図9において、電流センサー201で測定された電流値信号と、直流電源500の電圧センサー510の電圧値信号が、演算部202の積演算部221に入力される。積演算部221では、充電電流値と電源電圧との積が演算される。積演算部221の出力は、保持部A222と保持部B223に入力される。保持部A222には、充電電流の最大値(波高値)と電源電圧との積の値が保持される。そして、保持部B223には、コンデンサ16が所定電圧に充電された時点の充電電流と電源電圧との積の値が保持される。続いて、保持部A222と保持部B223の出力は、差演算部224に入力されて、保持部A222の出力値と保持部B223の出力値との差が演算される。そして、差演算部224の出力は、比較部203に入力され、基準値と比較されて、コンデンサの状態が診断(判断)される。この診断結果は、表示装置210に表示される。
この実施例3によれば、上述した実施例1と同様の上述した実施例1と同様の監視機能を実現することができる。
【0035】
≪実施例4≫
次に、本発明の実施例4について図10を用いて説明する。図10に示す実施例は、実質的に図7に示す実施例と同じであるが、演算部202の演算過程を具体的に示している点が図7と異なる。また、図10に示す実施例は、図9に示す実施例とは演算部202内の演算順序が異なる。
【0036】
図10において、電流センサー201で測定された充電時の電流値信号は、保持部A222と保持部B223に入力される。保持部A222には、充電電流の最大値が保持され、保持部B223にはコンデンサが諸低電圧に充電したときの充電電流値が保持される。次に、保持部A222と保持部B223の出力は、差演算部224に入力されて、これらの差が演算される。差演算部224の出力と直流電源500の電圧信号は、積演算部221に入力され、積が演算される。続いて、積演算部221の出力は、比較部203に入力される。比較部203において、積演算部221の出力値と基準値とが比較されて、コンデンサの状態が診断(判断)される。この診断結果は、表示装置210に表示される。
この実施例によれば、上述した実施例1と同様の監視機能を実現し、同様の効果を有する。
【0037】
≪実施例5≫
次に、本発明の実施例5について図11を用いて説明する。実施例5は、電流センサー201や監視部200などを真空遮断器110の設置場所以外の開閉装置側に収納している点が上述した実施例と異なる。その他の点は、上記の図10と同様であるため説明は省略する。
この実施例5によれば、上述した実施例と同様の効果を有するとともに、既存の真空遮断器110に変更を加えることなく、コンデンサの静電容量の状態を監視することができる。
【0038】
≪その他の実施例≫
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限られるものではなく、本発明には様々な変形例が含まれる。例えば、本発明は開閉装置の電源コンデンサの診断に用いるだけでなく、その他のコンデンサの監視に広く用いることができる。また、上記した実施例は、本発明をわかりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。
【符号の説明】
【0039】
14…電磁石、15…永久磁石、16…コンデンサ、100…開閉装置、101…計測器室、102…遮断器室、103…母線室、104…ケーブル室、110…真空遮断器、111…ケース、112…補助接点、113…遮断ばね、114…シャフト、115…ワイプばね、116…絶縁ロッド、117…制御リード線、118…制御基板、120…配電用ケーブル、130…母線、131…絶縁フレーム、132…断路部、133…断路部、134…固定側導体、135…可動側導体、136…真空バルブ、137…固定接点、138…可動接点、141…励磁コイル、200…監視部、201…電流センサー、202…演算部、203…比較部、204…記憶部、210…表示装置、221…積演算部、222…保持部A、223…保持部B、224…差演算部、500…直流電源、501…スイッチ、502…充電抵抗、503…スイッチ
図1
図2
図3
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図5
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図11