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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】抗ウイルス加工繊維製品
(51)【国際特許分類】
   D06M 13/463 20060101AFI20240321BHJP
   D06M 15/564 20060101ALI20240321BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20240321BHJP
   A01N 25/34 20060101ALI20240321BHJP
   A01N 33/12 20060101ALI20240321BHJP
   C09K 3/16 20060101ALI20240321BHJP
   D06M 101/32 20060101ALN20240321BHJP
【FI】
D06M13/463
D06M15/564
A01P1/00
A01N25/34 B
A01N33/12 101
C09K3/16 104C
C09K3/16 104E
D06M101:32
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021094488
(22)【出願日】2021-06-04
(65)【公開番号】P2022186329
(43)【公開日】2022-12-15
【審査請求日】2022-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】518381846
【氏名又は名称】東洋紡せんい株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【弁理士】
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】河端 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】早川 雄己
(72)【発明者】
【氏名】宮島 光生
【審査官】大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-035178(JP,A)
【文献】特開平06-228884(JP,A)
【文献】特開昭57-029682(JP,A)
【文献】国際公開第2020/175376(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M13/00-15/715、
A01N1/00-65/48、A01P1/00-23/00、
C09K3/16-3/16、
C08G18/00-18/87、71/00-71/04、
D03D1/00-27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成繊維を60重量%以上含む繊維製品であり、下記式[I]~[III]の群から選択される少なくとも一種の第四級アンモニウム塩0.05~0.4重量%、及びウレタン系重合体0.5~20.0重量%を含有すること、及びウレタン系重合体がカチオン系自己乳化型のポリエステル系ポリウレタン及び/又はポリカーボネート系ポリウレタンからなることを特徴とする抗ウイルス加工繊維製品。
上記式中、m、n、p、qは0~20の整数、R、R′は芳香族又は脂環族を含む環状アルキル基を示す。R及びR′は2、4、6位の炭素のいずれか1つ以上にメチレン基を有する芳香族環状アルキル基を含む。Xはハロゲン化物イオンである。
【請求項2】
合成繊維がポリエチレンテレフタレート、ボリブチレンテレフタレート、及びポリトリチレンテレフタレートからなる群の少なくとも一つの繊維からなり、式[I]~[III]の群から選択される少なくとも一種の第四級アンモニウム塩が塩化ジデシルジメチルアンモニウムであることを特徴とする請求項1に記載の抗ウイルス加工繊維製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止性と抗ウイルス性の両方に対する洗濯耐久性に優れた抗ウイルス加工繊維製品に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維製品への抗ウイルス加工は、病院や介護施設の白衣、食品工場の作業服など、今後の用途拡大が期待されている。ISO18184に基づく繊維製品上の抗ウイルス性の評価方法が確立して、一般社団法人繊維評価技術協議会による抗ウイルス加工繊維製品に対するマーク認証制度ができている。
【0003】
しかし、繊維製品、とりわけ繰り返し洗濯を必要とする白衣や作業衣、及び病院のシーツやカーテンなどリネン製品については、抗ウイルス性に対する洗濯耐久性の向上が課題となっている。
【0004】
例えば特許文献1及び2では、少なくとも表面に抗ウイルス性化合物が固定された樹脂成形品や繊維製品において、抗ウイルス性化合物が第四級アンモニウムハロゲン化合物からなるものが開示されている。しかし、ここに開示されている第四級アンモニウム塩は、炭素数が10以上の直鎖アルキル基が1鎖だけ含むものか、炭素数が精々9個までの直鎖アルキル基が2鎖含まれるものであり、これらの第四級アンモニウム塩は、水溶性が高くて洗濯耐久性が低いことが課題であった。更に、特許文献1及び2に開示されているジデシルジメチルアンモニウムクロリドは、劇物に指定されているため、繊維製品では使用量が制限されており、安全性を担保しながらでは良くても洗濯10回程度の洗濯耐久性しか得られていないのが現状であり、より高い洗濯耐久性が求められている。また、白衣や作業衣においては、静電気を帯びないことが求められているが、従来の第四級アンモニウム塩は水溶性が高いことから、帯電防止性の洗濯耐久性も低いのが現状であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】WO2016-009928A1
【文献】特許第5571577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述の従来技術の現状に鑑み創案されたものであり、その目的は、第四級アンモニウム塩の使用量を極力抑えながらも抗ウイルス性と帯電防止性の両方に対する洗濯耐久性に優れた繊維製品を提供することにある。更に、本発明は、高温の工業洗濯における繰り返し洗濯や着用による耐久性に優れた衣料用途等への使用に適した抗ウイルス加工繊維製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、合成繊維からなる繊維製品に特定の長鎖アルキル基を一つ以上持つ第四級アンモニウム塩と特定のウレタン系重合体を組み合わせて含有させることで、抗ウイルス性と帯電防止性の洗濯耐久性に優れた製品を提供できることを見出し、本発明の完成に至った。
【0008】
即ち、本発明は、上記の知見に基づいて完成したものであり、以下の(1)~()の構成を有するものである。
(1)合成繊維を60重量%以上含む繊維製品であり、下記式[I]~[III]の群から選択される少なくとも一種の第四級アンモニウム塩0.05~0.4重量%、及びウレタン系重合体0.5~20.0重量%を含有すること、及びウレタン系重合体がカチオン系自己乳化型のポリエステル系ポリウレタン及び/又はポリカーボネート系ポリウレタンからなることを特徴とする抗ウイルス加工繊維製品。
上記式中、m、n、p、qは0~20の整数、R、R′は芳香族又は脂環族を含む環状アルキル基を示す。R及びR′は2、4、6位の炭素のいずれか1つ以上にメチレン基を有する芳香族環状アルキル基を含む。Xはハロゲン化物イオンである。
)合成繊維がポリエチレンテレフタレート、ボリブチレンテレフタレート、及びポリトリチレンテレフタレートからなる群の少なくとも一つの繊維からなり、式[I]~[III]の群から選択される少なくとも一種の第四級アンモニウム塩が塩化ジデシルジメチルアンモニウムであることを特徴とする(1)に記載の抗ウイルス加工繊維製品。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、洗濯耐久性に優れた帯電防止性及び抗ウイルス性を持つ繊維製品を提供することができる。特に、本発明の抗ウイルス加工繊維製品は、インフルエンザウイルス、ネコカリシウイルスなどのウイルスを減少させたり不活性化させる効果があり、また、従来にない洗濯耐久性のある帯電防止性を有するため、スポーツ衣料や肌着、靴下、寝装品、衣料資材、リネン用途を含めて頻繁に洗濯する幅広い用途に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の抗ウイルス加工繊維製品は、まず合成繊維を60重量%以上、好ましくは80重量%以上、更に好ましくは90重量%以上含有するものである。含有割合が上記値未満では、抗ウイルス性の初期性能は良好であるが、繰り返し洗濯に対する耐久性が不足し、繰り返し洗濯を必要とする衣料用途としては好ましくない。合成繊維としては、例えばポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリウレタン繊維が挙げられ、これらの少なくともいずれかの合成繊維が単独又は複数混用して使用することが好ましい。合成繊維としては、特にポリエステル繊維が好ましい。ポリエステル繊維としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなど公知のものを使用することができる。勿論、これらホモポリマーからなる繊維以外に、当該繊維を複数種組み合わせて使用することも可能であるし、複合紡糸方法によって多層貼合構造や芯鞘構造繊維とすることも可能である。更に、共重合ポリエステルやポリエステルをマトリックスにして他のポリマーを混練したブレンドポリマーであっても構わない。
【0011】
本発明の繊維製品に上記の合成繊維以外に混用できる繊維としては、例えば、再生繊維ならビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨン、ポリノジックなど、半合成繊維ならセルロースアセテート(トリアセテート、ジアセテート)、プロミックスなど公知の繊維を使用することができる。また、木綿、麻(亜麻、大麻、ラミー、マニラ麻、サイザル麻など)、ウール、カシミヤ、モヘア、アルパカ、絹、カポック、ケナフ、パイナップル繊維、サトウキビ繊維、ハイビスカス繊維、バナナ繊維、竹繊維など公知の天然繊維も使用することができる。また、これら繊維の形態は、短繊維及び長繊維のいずれでもよく、断面形状も通常丸断面の他、矩形断面、多葉断面、中空断面など公知の断面を使用することができる。更に、短繊維、長繊維のみならず、長短複合紡績法による紡績糸であってもよい。
【0012】
また、前記の合成繊維は、マルチフィラメントの延伸糸及び/又は仮撚加工糸からなる繊維製品、あるいはステープルファイバーからなる不織布、紡績糸、紙などのシート状物、詰め綿、硬綿、紡績糸などの形態であることが好ましい。合成繊維がマルチフィラメントの延伸糸及び/又は仮撚加工糸である場合は、単糸繊度0.3~9.0デシテックスとすることが好ましい。より好ましくは0.5~8.0デシテックス、更に好ましくは1.0~5.0デシテックスであることが好ましい。繊維がステープルファイバーである場合の単糸繊度は0.01~15.0デシテックスであることが好ましい。上記の単糸繊度は、単一繊度である必要はなく、複数の繊度の繊維を組み合わせて使用することも何ら制限されるものでない。単糸繊度が上記範囲を下回る超極細繊維では繊維の表面積が大きくなり、初期の抗ウイルス性能は良いが、繰り返し着用や洗濯によって脱落しやすく耐久性が低下する場合もある。また、単糸繊度が上記範囲を超過する超極太繊維では、繊維断面が大であることによって縫製部位でのチクツキ感が強く、強い皮膚刺激を与えたり、繊維製品が硬くなり過ぎたりして、衣料品やそれぞれの用途とするのに好ましいものにはなり難くなる。
【0013】
本発明の抗ウイルス加工繊維製品は、下記式[I]~[III]の群から選択される少なくとも一種の第四級アンモニウム塩又はその誘導体(以下、単に第四級アンモニウム塩とも言う)0.05~0.4重量%、好ましくは0.10~0.35重量%、及びウレタン系重合体0.5~20.0重量%、好ましくは1.0~15.0重量%を含有することを特徴とする。
上記式中、m、n、p、qは0~20の整数、R、R′は芳香族又は脂環族を含む環状アルキル基を示す。R及びR′は2、4、6位の炭素のいずれか1つ以上にメチレン基を有する芳香族環状アルキル基を含む。Xはハロゲン化物イオンである。
【0014】
上記式[I]~[III]で表わされる第四級アンモニウム塩又はその誘導体は、長鎖アルキル基を含むものが好適である。例えば、塩化ベンザルコニウム、モノ(塩化トリメチルアンモニウムメチレン)アルキルトルエン、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、臭化ジデシルジメチルアンモニウム、臭化ノルマルヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化メチルベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、セトリモニウム、塩化ドファニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、臭化ドミフェン、塩化ベンジルジメチルテトラデシルアンモニウム、塩化ベンジルジメチルヘキサデシルアンモニウムなどを挙げることができる。特に、塩化ジデシルジメチルアンモニウムやその誘導体の使用が特に好適である。また、ポリマーであるポリ-オキシエチレン(ジメチルイミノ)エチレン(ジメチルイミノ)エチレンジクロライド、ポリ〔オキシエチレン(ジメチルイミニオ)トリメチレン(ジメチルイミニオ)エチレンジクロライド〕、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドも用いることができる。これらは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0015】
第四級アンモニウム塩又はその誘導体は、一般に殺菌・消毒剤、乳化剤、防錆剤、帯電防止剤等として業界を問わず広く活用されているが、過度に使用すると軽度の皮膚刺激や眼を含む粘膜への刺激があり、特に繊維製品の場合、過度に使用すると経皮吸収され、皮膚刺激を生じさせる可能性が高く、使用濃度はできるだけ少ない方が好ましい。本発明によれば洗濯耐久性が非常に優れるため、第四級アンモニウム塩又はその誘導体を過剰に使用することなく、最小限の付着量で耐久性を持続させることが可能となった。即ち、本発明における第四級アンモニウム塩の繊維重量に対する使用量は、本発明で規定される第四級アンモニウム塩の含有量となるように、好ましくは約0.05~約0.4%owf、より好ましくは約0.1~約0.37%owf、更に好ましくは約0.14~約0.36%owfである。使用量が上記範囲未満では十分な抗ウイルス性が発揮し難くなり、上記範囲を超えると、着用中の人体への刺激性が高まるおそれが生じる。
【0016】
本発明の抗ウイルス加工繊維製品は、上記の第四級アンモニウム塩以外にウレタン系重合体を含有することを特徴とする。このウレタン系重合体は、第四級アンモニウム塩と同様に繊維製品に付着させることが好ましく、少なくとも繊維製品の表面に被膜を形成させることが好ましい。また、ウレタン系重合体は、溶剤系と水系のいずれも用いることができるが、水系のウレタン系重合体を用いて前記第四級アンモニウム塩等と同時に繊維に付着させると好都合である。ウレタン系重合体を含有させることにより、アニオン系洗剤での洗濯に対する前記第四級アンモニウム塩等が持つ各種の機能性の耐久性を高めることができる。本発明におけるウレタン系重合体の繊維重量に対する使用量は、本発明で規定するウレタン系重合体の含有量となるように、好ましくは約0.1~約10.0%owf、より好ましくは約0.2~約6.0%owf、更に好ましくは約0.25~約4.0%owfである。使用量が上記範囲未満では洗濯後の帯電防止性が十分に維持されなくなり、上記範囲を超えると、各種用途に使用しにくくなるおそれがある。
【0017】
水系のウレタン系重合体としては、分子内に水溶性官能基を有する自己乳化型ウレタン系重合体を分散させた水分散体、又は界面活性剤を併用して強力な機械剪断力の下で乳化した強制乳化型ウレタン系重合体の水分散体を用いることができる。上記水分散体におけるウレタン系重合体は、ポリオールと有機ポリイソシアネートとの反応により得られるものである。
【0018】
上記反応に用いるポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィン系ポリオールのいずれも使用することができるが、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール及びポリエーテルポリオールが洗濯耐久性の点から好ましく用いられる。特に好ましくはポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールである。即ち、ウレタン系重合体は、ポリエステル系ポリウレタン及び/又はポリカーボネート系ポリウレタンからなることが好ましい。
【0019】
ポリカーボネートポリオールとしては、ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート又はホスゲン等の炭酸誘導体と、ジオールとの反応により得ることができる。そのようなジオールの例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-及び1,3-プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-及び1,4-ブタンジオール、3-メチルペンタンジオール、ヘキサメチレングリコール、1,8-オクタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、トリメチロールプロパン、シクロヘキサンジメタノールを挙げることができる。これらのうちでも、1,6-ヘキサンジオールを用いたポリカーボネートポリオールが、抗ウイルス効果の高温洗濯での耐久性を高める点で好ましい。
【0020】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-及び1,3-プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-及び1,4-ブタンジオール、3-メチルペンタンジオール、ヘキサメチレングリコール、1,8-オクタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、トリメチロールプロパン、シクロヘキサンジメタノール等の低分子ポリオールと、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、テトラヒドロフラン酸、エンドメチンテトラヒドロフラン酸、ヘキサヒドロフタル酸などの多価カルボン酸との縮合物を挙げることができる。
【0021】
ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレンポリテトレメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールのような各種のポリエーテルポリオールを挙げることができる。
【0022】
また、上記反応に用いる有機ポリイソシアネートとしては、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネートを挙げることができる。以下に有機ポリイソシアネートを例示するが、好ましくは耐候性の面から脂肪族及び脂環族のポリイソシアネートを選択することが好ましい。
【0023】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、テトラメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、3-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート等を挙げることができるが、抗ウイルス効果の洗濯耐久性の点からヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)が好ましい。
【0024】
脂環族ポリイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等を挙げることができるが、抗ウイルス効果の洗濯耐久性の点からイソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンが好ましい。
【0025】
芳香族ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート(TDI)、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’-ジベンジルジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0026】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、α,α,α,α-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0027】
ウレタン系重合体の分子量は、分岐構造や内部架橋構造を導入して可能な限り大きくすることが好ましく、数平均分子量50,000~10,000,000であることが好ましい。この分子量を大きくすると耐候性、耐水性に優れた塗膜が得られやすくなる。
【0028】
ウレタン系重合体に水への分散性を付与する目的で、カチオン性官能基又はアニオン性官能基を導入するために水溶性官能基材料を添加することが好ましい。このような水溶性官能基材料としては、(a)モノ若しくはジアルカノールカルボン酸又はモノ若しくはジスルホン酸の3級アミン又はアルカリ金属による中和物、(b)ポリエチレンオキサイド若しくはメトキシポリエチレンオキサイド、(c)モノ若しくはジアルカノールアミンの有機若しくは無機酸中和物又はそのハロゲン化アルキル、ジアルキル硫酸等との反応による第4級アンモニウム塩などを例示することができる。これらのうち、乳化の容易性の観点から、(a)モノ又はジアルカノールカルボン酸又はスルホン酸の中和物、及び(c)モノ若しくはジアルカノールアミンの有機若しくは無機酸中和物又は第4級アンモニウム塩が好ましい。本発明では、ウレタン系重合体をカチオン性にすることにより、より洗濯耐久性の向上につながることから、(c)モノ若しくはジアルカノールアミンの有機若しくは無機酸中和物又は第4級アンモニウム塩が特に好ましい。
【0029】
カチオン性官能基導入のためには、まず、ジメチルアミノエタノール、メチルジエタノールアミン等のアルカノールアミンが導入される。次に、中和塩基を導入する場合は、ギ酸、酢酸などの有機カルボン酸、塩酸、硫酸などの無機酸が加えられ、第4級アンモニウム塩を導入する場合は、4級化試薬として塩化メチル、臭化メチルなどのハロゲン化アルキル、ジメチル硫酸などのジアルキル硫酸が使用される。上記のうち、乳化の容易性の観点から、メチルジエタノールアミンと有機カルボン酸との組み合わせ、又はメチルジエタノールアミンとジメチル硫酸との組み合わせが好ましい。
【0030】
尚、本発明では抗ウイルス剤である第四級アンモニウム塩を用いるが、この第四級アンモニウム塩はアニオン性界面活性剤を含む洗剤で洗濯すると、十分な濯ぎを行ったとしても、第四級アンモニウム塩の抗ウイルス性や帯電防止性の低下が早まることが判明した。本発明では、特にカチオン性のウレタン系重合体を用いると、抗ウイルス剤の第四級アンモニウム塩の性能低下を抑制することができ、抗ウイルス性の洗濯耐久性を更に引き延ばすことが可能となった。この理由は、抗ウイルス剤の周辺にカチオン性官能基が存在すると、アニオン界面活性剤が抗ウイルス剤の第四級アンモニウム塩をマスキングすることを防ぐためであると考えられる。
【0031】
ウレタン系重合体の水分散体の調製に際しては、分子内でウレタン結合を局在化させるために、エチレングリコール、1,4ブタンジオールなどの単鎖の低分子量ジオールを添加してもよい。また、分子内に分岐構造を導入するために、トリメチロールプロパン、グリセリンなどの単鎖ポリオールを添加してもよい。これらの単鎖ポリオールの添加により、ウレタン結合が局在化され又は分岐構造が導入されるため、得られるウレタン系重合体の水分散体の耐水性が向上するという効果が得られる。
【0032】
ウレタン系重合体の水分散体の調製に際しては、ウレタン系重合体の分子量を増大させて耐水性、耐候性の向上を図るために、鎖伸長剤を添加してもよい。鎖伸長剤としては、ジアミンや、内部架橋構造を導入するた機能をも果たすポリアミンが使用される。ジアミンとしては、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、ピペラジン、イソホロンジアミンなどを例示することができ、ポリアミンとしては、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミンを例示することができる。
【0033】
ウレタン系重合体の水分散体の調製に際し、ウレタン系重合体をより安定に分散させるために、界面活性剤を使用してもよい。界面活性剤としては、カチオン系界面活性剤やノニオン系界面活性剤が好適に使用される。
【0034】
ウレタン系重合体の水分散体の調製方法は、特に限定されないが、一般的には、ポリオール、水溶性官能基導入材料、単鎖ポリオール及び鎖伸長剤に含まれるイソシアネート基との反応性を有する官能基の合計より化学量論的に過剰のポリイソシアネートを反応させてイソシアネート末端のウレタンプレポリマーを合成した後、水溶性官能基を中和して水中に分散乳化を行う。その後、残存するイソアネート基より少ない当量の鎖伸長剤を加えて乳化ミセル中のイソシアシネート基と鎖伸長剤のポリアミンを界面重合反応させてウレア結合を生成させる。これにより乳化ミセル内の架橋密度が向上し、三次元架橋構造が形成される。このように三次元架橋構造の形成により、優れた耐水性、耐候性を示す塗膜が得られる。その後、必要に応じて使用した溶剤を除去することにより、ウレタン系重合体の水分散体を得ることができる。
【0035】
本発明に用いられるウレタン系重合体の市販品としては、例えば、カチオン性の自己乳化型ポリウレタンとして、第一工業製薬株式会社製のHDI系ポリウレタンの「スーパーフレックス620」(エステル系)及び「スーパーフレックス650」(カーボネート系)、三洋化成工業株式会社製の「パーマリンUC-20」(エーテル系)、大原パラヂウム化学株式会社製の「パラサーフUP-22」(エーテル系)などを挙げることができ、ノニオン性のポリウレタン樹脂として、スーパーフレックス500M(エステル系)、スーパーフレックスE2000(エステル系)等が挙げられるが、前述のごとくカチオン性の自己乳化型ポリウレタンを用いることがより好ましい。
【0036】
本発明の抗ウイルス加工繊維製品は、前記式[I]~[III]の群から選択される少なくとも一種の第四級アンモニウム塩及び/又はその誘導体からなる抗ウイルス加工剤とウレタン系重合体で、織物や編物、不織布といった繊維一次加工品を後加工処理することによって容易に得られる。後加工方法としては、吸尽法、パディング法、スプレー法、コーティング法、プリント法など公知の方法を採用することができる。例えば吸尽法の場合は、染色同浴処理、若しくは染色後の任意工程で別浴処理することが可能である。パディング法の場合は、染色後、マングルパッダー等で所定量の薬液を生地にピックアップさせた上、加熱処理する。加熱処理法は、パッドドライ法、パッドドライキュア法、パッドスチームキュア法、パッドドライベイク法など公知の方法で実施することが可能である。また、必要に応じて上記の方法の併用も可能である。
【0037】
後加工処理の温度条件は、用いる繊維の種類によって異なるが、例えば吸尽法の場合は、湿熱70~135℃、より好ましくは湿熱90~130℃の範囲で適宜設定することができる。また、パディング法の場合は、パッド(ドライ)キュア法では例えばドライ温度100~130℃、キュアリング温度140~190℃の範囲を例示することができる。より好ましいキュア温度は160℃~180℃で30秒~2分処理するのがよい。キュア温度が高い程、第四級アンモニウム塩の洗濯後残存率が向上するが、第四級アンモニウム塩は、高温で分解しやすく、200℃以上でのキュア処理や5分以上の長時間処理すると繊維上で徐々に分解して有効成分が減少してしまう傾向がある。また、過剰な加熱処理は、各種堅牢度など生地物性に悪影響を引き起こす他、黄変の要因となり避けることが望ましい。
【0038】
第四級アンモニウム塩は、黄変性、特にフェノール黄変しやすい傾向があり、必要により加工後の生地のpHを3~6の酸性域に留めると黄変が抑制されるため好ましい。生地pHは、りんご酸やシュウ酸等の不揮発性の有機酸を適宜用いることができる。
【0039】
本発明で使用する第四級アンモニウム塩のうち、比較的分子量が大きいものは水溶性が低下するが、そのような第四級アンモニウム塩を均一に安定的に繊維に加工するために、ノニオン系界面活性剤と混用して用いることができる。ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンエーテル類,ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類,ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル類,ポリオキシアルキレン脂肪酸ジエステル類,ポリオキシアルキレン樹脂酸エステル類,ポリオキシアルキレン(硬化)ヒマシ油類,ポリオキシアルキレンアルキルフェノール類,ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル類,ポリオキシアルキレンフェニルエーテル類,ポリオキシアルキレンアルキルエステル類,ポリオキシアルキレンアルキルエステル類,ソルビタン脂肪酸エステル,ポリオキシアルキレンソルビタンアルキルエステル類,ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル類,ポリオキシアルキレンソルビット脂肪酸エステル類,ポリオキシアルキレングリセリン脂肪酸エステル類,ポリグリセリンアルキルエーテル類,ポリグリセリン脂肪酸エステル類,ショ糖脂肪酸エステル類,脂肪酸アルカノールアミド,アルキルグルコシド類,ポリオキシアルキレン脂肪酸ビスフェニルエーテル類,ポリプロピレングリコール,ポリエーテル変性シリコーン、すなわち、ポリオキシアルキレン変性ジオルガノポリシロキサン,ポリグリセリル変性シリコーン,グリセリル変性シリコーン,糖変性シリコーン,パーフルオロポリエーテル系界面活性剤,ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー,アルキルポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマーエーテルが例示される。この中でもポリオキシアルキレンアルキルエーテル類,ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル類等のポリオキシエチレン付加型ノニオン系界面活性剤が好ましく用いられる。
【0040】
ノニオン系界面活性剤は、HLB7~18のものが好ましい。より好ましくはHLB8~16,更に好ましくはHLB10~14である。具体的には、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル(HLB12.5)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(HLB11)、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル等が好適に用いられる。
【0041】
有機溶剤としては、水と混和可能であれば特に制限はないが、例えば、メタノールやエタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、酢酸エチルなどのエステル類、アセトンやメチルエチルケトンなどのケトン類、ジエチルエーテルなどのエーテル類等、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコール類が挙げられる。なお、水と有機溶剤の比率は特に限定されるものではない。
【0042】
本発明の抗ウイルス加工繊維製品は、洗濯20回後のインフルエンザウイルスに対する抗ウイルス活性値Mvが3.0以上、さらには洗濯30回後でも抗ウイルス活性値3.0以上であることができる。本発明に使用する第四級アンモニウム塩は、疎水性繊維、特にポリエスエル繊維やポリウレタン繊維への親和性が高いため、洗濯耐久性を向上することができる。
【0043】
ウイルスには、エンベロープを持つウイルスと、エンベロープを持たないウイルスに大別される。エンベロープとは、単純ヘルペスウイルスやインフルエンザウイルスなど一部のウイルス粒子(ビリオン)に見られる膜状構造物で、ウイルスの基本構造を形成するウイルスゲノムやカプシド蛋白質などを覆う、ウイルス粒子(ビリオン)の最外殻を構成するものである。エンベロープは、大部分が脂質からなり、アルコールや有機溶媒などで処理すると容易に破壊できる為、エンベロープを持つウイルスよりもエンベロープを持たないウイルスの方が一般的には不活化し難いという特徴を有する。
【0044】
エンベロープを持つウイルスとしては、インフルエンザウイルス、はしかウイルス、風疹ウイルス、エイズウイルス、ヘルペスウイルスなどが例示される。また、エンベロープを持たないウイルスとしては、ノロウイルス、ロタウイルス、ポリオウイルス、アデノウイルス、エンテロウイルスなどが代表例として例示される。本発明に使用する第四級アンモニウム塩は、エンベロープを持たないウイルスへの効果は低い傾向にあるが、本発明の炭素数が18以上の同じ直鎖アルキル基を二つ持つ第四級アンモニウム塩はエンベロープを持たないウイルスへの抗ウイルス効果が優れている。
【0045】
本発明のウイルス加工繊維製品は、洗濯5回後の摩擦帯電圧を1500V以下、さらには洗濯10回後の摩擦帯電圧を2000V以下に維持することが可能である。帯電防止性をさらに高めたい場合は、第四級アンモニウム塩に加えて、ステアルトリモニウムクロリドやベヘントリモニウムクロリドを併用してもよい。
【0046】
本発明のウイルス加工繊維製品は、洗濯耐久性に優れた帯電防止性及び抗ウイルス性を示し、さらに風合変化や変色、生地物性変化が少ないので、病院白衣などに好適に用いることができる。また、食品白衣などのレンタルユニフォーム類、シーツ、カーテン、インナーウェア、シャツ、スクールユニフォーム、体操服など広範囲の分野にも好適に用いることができる。
【実施例
【0047】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の物性測定方法は下記に基づくものである。
【0048】
(洗濯方法)
一般財団法人繊維評価技術協議会製品認証部発行の「SEKマーク繊維製品の洗濯方法」(2020年10月30日改定版・文書番号JEC326)に従い、下記の条件で洗濯処理を実施した。
・標準洗濯法(1995年度版JIS L0217:1995 103法記載の方法)を用いて洗濯処理を実施し、乾燥は吊り干しで行い、洗濯10回および20回行った評価試料を作成した。更にJEC326の高温加速洗濯法に準じて、ワッシャー洗濯機で80℃洗濯、家庭洗濯機で濯ぎを行い、洗濯10回規定の製品の洗濯方法を3回繰り返して高温洗濯30回とした。
【0049】
(抗ウイルス性試験)
2014年度版ISO18184記載の方法に準じて評価した。試験対象ウイルスは下記の2種である。
・A型インフルエンザウイルス(H3N2)(ATCC VR-1679)
・ネコカリシウイルス(F-9)(ATCC VR-782)
【0050】
(帯電防止性)
JIS-L1094:2004 7.2 B法(摩擦帯電圧測定法)にて測定した。
【0051】
(実施例1)
(ポリエステル100%織物)
ポリエチレンテレフタレートのフルダル仮撚加工糸167デシテックス48フィラメント(商標名:東洋紡エステル)を経糸及び緯糸に用いて、経糸密度90本/inch、緯糸密度70本/inchにて平織組織で製織した(ポリエステル混率100%)。
【0052】
該生機を定法にて連続精練、液流リラックス、乾熱予備セットを施した上、日阪製作所社製高圧液流染色機を用い、高松油脂社製ポリエステル系吸水SR剤(商標名:SR-1000、)2%owfの共存下、湿熱130℃条件で分散染料による染色を施した。染色後はハイドロサルファイトナトリウム及びソーダ灰を用いた定法の還元洗浄処理し、次いで湯洗、水洗を実施し、脱水後に拡布状態でショートループドライヤーによる乾燥処理を施した。
【0053】
次いで上記の方法で得られた生地を下記処方1の溶液を用いて、パッドドライキュア法によって処理した。因みに生地の樹脂パディングはドライオンウェット処方(乾燥した生地に薬液を浸漬後、搾液し所定の薬剤量を生地に処理する方法)にて実施した。
【0054】
マングル圧を前記ポリエステル100%織物のW.P.U%(ウエットピックアップ率 繊維重量当たりの液付着率)が50%となるように調整した。パッダーで処方1の水溶液を付与してマングルで絞った。乾燥温度120℃、キュアリング温度170℃で1分間、最終セットを兼ねて熱処理を行った。得られた織物の目付は130g/mであった。
【0055】
処方1:
塩化ジデシルジメチルアンモニウム 0.7%solution
スーパーフレックス650(固形分26重量%) 10.0%solution
(カチオン性ポリカーボネート系ポリウレタン)
りんご酸 1.0%solution
【0056】
織物へのジデシルジメチルアンモニウムクロリドの付着量は0.35%owf、スーパーフレックス650の付着量は5.0%owf(on the weight of fiber:繊維重量比)であり、有効成分として1.3%owfであった。得られた加工布の評価結果を表1に示す。
【0057】
(実施例2)
実施例1のスーパーフレックス650をスーパーフレックス620(カチオン性ポリエステル系ポリウレタン)(固形分30重量%)10%solution(付着量は5%owf、有効成分として1.5%owf)に変更した以外は、実施例1と同じ加工を行った。得られた加工布の評価結果を表1に示す。
【0058】
(実施例3)
実施例1のスーパーフレックス650の濃度を10.0%solutionから2.0%solution(付着量は1.0%owf、有効成分として0.26%owf)に変更した以外は、実施例1と同じ加工を行った。得られた加工布の評価結果を表1に示す。
【0059】
(実施例4)
実施例1の塩化ジデシルジメチルアンモニウムの濃度を0.7%solutionから0.3%solution(付着量は0.15%owf)に変更した以外は、実施例1と同じ加工を行った。得られた加工布の評価結果を表1に示す。
【0060】
(実施例5)
実施例1のスーパーフレックス650をスーパーフレックス500M(ノニオン性ポリエステル系ポリウレタン)(固形分45重量%)6%solution(付着量3%owf、有効成分として1.35%owf)に変更した以外は、実施例1と同じ加工を行った。得られた加工布の評価結果を表1に示す。
【0061】
(比較例1)
実施例1のスーパーフレックス650を新中村化学社製のアクリルバインダーNKバインダーA-12HN(固形分45重量%)6%solution(付着量3%owf、有効成分として1.35%owf)に変更した以外は、実施例1と同じ加工を行った。得られた加工布の評価結果を表1に示す。
【0062】
(比較例2)
実施例1の処方1のうちスーパーフレックス650のみを除いた処方にて、実施例1と同様に加工を行った。得られた加工布の評価結果を表1に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
表1から明らかなように、本発明の要件を満たす実施例1~5はいずれも、洗濯前と繰り返し洗濯後の抗ウイルス性及び帯電防止性に優れるのに対して、ウレタン系重合体を用いない処方の比較例1は、繰り返し洗濯後の抗ウイルス性及び帯電防止性に劣り、ウレタン系重合体と第四級アンモニウム塩の双方を用いない処方の比較例2は、洗濯前と繰り返し洗濯後の抗ウイルス性及び繰り返し洗濯後の帯電防止性に劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の抗ウイルス加工繊維製品は、帯電防止性と抗ウイルス特性の双方の洗濯耐久性に優れており、各種衣料、寝装寝具、生活資材等々に広く活用することができる。とりわけ病院や介護・養護施設など各種医療機関などで着用する白衣、予防衣、カーテン、各種作業衣、及び食品工場や厨房など食べ物を取扱う現場や製薬工場や飲料工場など衛生面を特に重要視すべき現場で着用する作業服、作業衣などへの適用が可能である。