(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】自動スクリーニング装置
(51)【国際特許分類】
G01T 1/167 20060101AFI20240321BHJP
【FI】
G01T1/167 E
(21)【出願番号】P 2021137099
(22)【出願日】2021-08-25
【審査請求日】2023-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】599041606
【氏名又は名称】三菱電機プラントエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】松尾 慶一
【審査官】後藤 慎平
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-121783(JP,A)
【文献】国際公開第2016/158573(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/00-1/16
G01T 1/167-7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリーニング対象車両の荷台面における放射性物質による表面汚染を検出するために設けられた複数の汚染検出器と、
前記複数の汚染検出器のそれぞれを移動させる駆動機構部と、
前記駆動機構部を制御することで前記荷台面に対する前記複数の汚染検出器の位置決め制御を行うとともに、前記複数の汚染検出器のそれぞれの検出結果から前記荷台面の前記表面汚染が許容値以内であるか否かのスクリーニングを行うコントローラと
を備え、
前記荷台面をX軸およびY軸によって規定されるXY平面とし、前記荷台面の長さ方向をX軸方向とし、前記荷台面の幅方向をY軸方向とした場合に、前記Y軸方向における前記複数の汚染検出器のそれぞれの長さは、前記荷台面の幅方向の全幅よりも短く、前記複数の汚染検出器のそれぞれの前記長さの総計は、前記荷台面の幅方向の全幅よりも長く、
前記コントローラは、前記複数の汚染検出器により前記Y軸方向の前記全幅に対する検出領域をカバーできるように前記複数の汚染検出器のそれぞれに関する前記Y軸方向での位置決め制御を行い、前記Y軸方向での位置決め制御が完了した状態で、前記複数の汚染検出器を前記X軸方向に一括して走行させるか、または前記スクリーニング対象車両を前記X軸方向に走行させながら前記複数の汚染検出器による検出を実行することで前記荷台面のスクリーニングを行
い、
前記複数の汚染検出器は、第1の汚染検出器および第2の汚染検出器による2個で構成され、
前記スクリーニング対象車両として想定される最大荷台幅をLLとし、
前記スクリーニング対象車両として想定される最小荷台幅をLSとし、
前記第1の汚染検出器の前記Y軸方向の長さをLY1とし、前記第2の汚染検出器の前記Y軸方向の長さをLY2(ただし、LY1>LY2)とした場合に、前記第1の汚染検出器および前記第2の汚染検出器のそれぞれは、下式
LS>LY1
LY1+LY2>LL
を満たす形状を有し、
前記コントローラは、前記第1の汚染検出器および前記第2の汚染検出器が前記X軸方向において一部分が重複した状態で、前記第1の汚染検出器および前記第2の汚染検出器により前記Y軸方向の前記全幅に対する検出領域をカバーできる位置関係を有するように、前記Y軸方向での位置決め制御を行う
自動スクリーニング装置。
【請求項2】
前記第1の汚染検出器は、前記荷台面における前記幅方向に設けられた一対の側面のうちの一方の側面に対するY軸方向の距離を計測するための第1のセンサを有し、
前記第2の汚染検出器は、前記一対の側面のうちの他方の側面に対するY軸方向の距離を計測するための第2のセンサを有し、
前記コントローラは、前記第1のセンサにより計測された距離が、あらかじめ決められた適正な近接距離範囲内になるまで、前記第1の汚染検出器を前記一方の側面に接近させ、かつ、前記第2のセンサにより計測された距離が、前記適正な近接距離範囲内になるまで、前記第2の汚染検出器を前記他方の側面に接近させることで、前記Y軸方向での位置決め制御を行う
請求項
1に記載の自動スクリーニング装置。
【請求項3】
前記スクリーニング対象車両の前記荷台面の全幅を認識する形状認識部をさらに備え、
前記コントローラは、前記形状認識部による認識結果に基づいて前記第1の汚染検出器および前記第2の汚染検出器に関する前記Y軸方向での位置決め制御を行う
請求項
1に記載の自動スクリーニング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、放射性物質による車両汚染の有無を自動で判定する自動スクリーニング装置の荷台部分のスクリーニングに関するものである。
【背景技術】
【0002】
放射性物質を取り扱う管理区域で作業等を行う車両は、その車両表面に放射性物質が付着しているおそれがある。従って、放射性物質が管理区域外に拡散しないように、管理区域内での作業を終え、管理区域外に出ようとする車両について、放射性物質による汚染の有無をスクリーニングすることが必要である。
【0003】
このような、車両を検査対象として、高速かつ高精度に車両表面における放射性物質の汚染状態をモニタリングできる車両ゲートモニタに関する従来技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この特許文献1は、検出器群(22)が取り付けられた門型を、停止した車両に対して移動させながら、検出器群から得られた検出結果に基づいて、汚染箇所の有無を特定する制御部(21)を備えている。
【0005】
検出器群は、第1検出器、第2検出器、および第3検出器で構成されている。第1検出器は、車両との相対位置に応じて上下・左右移動が可能なように配置され、車両の両側面の放射線量を測定することができる。
【0006】
第2検出器は、車両との相対位置に応じて上下・回転・左右移動が可能なように配置され、車両の前面、後面、上面、荷台面の放射線量を測定することができる。
【0007】
さらに、第3検出器は、車両との相対位置に応じて上下・左右移動が可能なように配置され、荷台の内側側面の放射線量を測定することができる。
【0008】
このような構成を備えることで、特許文献1では、従来装置と比較して、高速かつ高精度に車両表面における放射性物質の汚染状態をモニタリングできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来技術は、以下のような課題がある。
ダンプ等の車両の箱型荷台面のスクリーニングを行う場合、荷台面全体を漏れなく汚染検出器で走査することが必要である。汚染検出器の大きさが固定である場合には、スクリーニング対象車両の中で最も荷台幅が短い車両に合わせて汚染検出器の幅を定める必要がある。
【0011】
そして、車幅が長い車両の荷台部分のスクリーニングを行うには、最も荷台幅が短い車両の幅に合わせて製作された汚染検出器を2回以上走査させることが必要であった。従って、2回以上走査させることで、スクリーニング時間が長くなってしまっていた。
【0012】
なお、特許文献1においては、種々の荷台幅に応じて、小型の検出器を個別に用意しておくことで、走査回数の増加に伴ってスクリーニング時間が長くなってしまうことを防止することは可能である。しかしながら、個別の検出器を用意しておくことにより、部品費の増大を招くこととなる。また、スクリーニング対象となる車両の荷台幅が異なるごとに、適切な検出器を付け替える部品交換作業が必要となり、作業時間の増大を招くこととなる。
【0013】
本開示は、前記のような課題を解決するためになされたものであり、スクリーニング対象となる車両の荷台幅が異なる場合にも、部品交換作業が不要であり、かつ、スクリーニング時間が長くなることを抑制することのできる自動スクリーニング装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本開示に係る自動スクリーニング装置は、スクリーニング対象車両の荷台面における放射性物質による表面汚染を検出するために設けられた複数の汚染検出器と、複数の汚染検出器のそれぞれを移動させる駆動機構部と、駆動機構部を制御することで荷台面に対する複数の汚染検出器の位置決め制御を行うとともに、複数の汚染検出器のそれぞれの検出結果から荷台面の表面汚染が許容値以内であるか否かのスクリーニングを行うコントローラとを備え、荷台面をX軸およびY軸によって規定されるXY平面とし、荷台面の長さ方向をX軸方向とし、荷台面の幅方向をY軸方向とした場合に、Y軸方向における複数の汚染検出器のそれぞれの長さは、荷台面の幅方向の全幅よりも短く、複数の汚染検出器のそれぞれの長さの総計は、荷台面の幅方向の全幅よりも長く、コントローラは、複数の汚染検出器によりY軸方向の全幅に対する検出領域をカバーできるように複数の汚染検出器のそれぞれに関するY軸方向での位置決め制御を行い、Y軸方向での位置決め制御が完了した状態で、複数の汚染検出器をX軸方向に一括して走行させるか、またはスクリーニング対象車両をX軸方向に走行させながら複数の汚染検出器による検出を実行することで荷台面のスクリーニングを行い、複数の汚染検出器は、第1の汚染検出器および第2の汚染検出器による2個で構成され、スクリーニング対象車両として想定される最大荷台幅をLLとし、スクリーニング対象車両として想定される最小荷台幅をLSとし、第1の汚染検出器のY軸方向の長さをLY1とし、第2の汚染検出器のY軸方向の長さをLY2(ただし、LY1>LY2)とした場合に、第1の汚染検出器および第2の汚染検出器のそれぞれは、下式
LS>LY1
LY1+LY2>LL
を満たす形状を有し、コントローラは、第1の汚染検出器および第2の汚染検出器がX軸方向において一部分が重複した状態で、第1の汚染検出器および第2の汚染検出器によりY軸方向の全幅に対する検出領域をカバーできる位置関係を有するように、Y軸方向での位置決め制御を行うものである。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、複数の汚染検出器を連動させて1回の走査を行うことで、車両の荷台面の放射線量を、高速、高精度にスクリーニングできる構成を備えている。この結果、スクリーニング対象となる車両の荷台幅が異なる場合にも、部品交換作業が不要であり、かつ、スクリーニング時間が長くなることを抑制することのできる自動スクリーニング装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本開示の実施の形態1における自動スクリーニング装置の機能ブロック図である。
【
図2】本開示の実施の形態1における2個の汚染検出器に対して実行される位置決め制御に関する説明図である。
【
図3】本開示の実施の形態1における2個の汚染検出器に対して実行される一連の位置決め制御のうち、ステップS101~ステップS103を示した説明図である。
【
図4】本開示の実施の形態1における2個の汚染検出器に対して実行される一連の位置決め制御のうち、ステップS103に続いて実行されるステップS104を示した説明図である。
【
図5】本開示の実施の形態2における自動スクリーニング装置の機能ブロック図である。
【
図6】本開示の実施の形態2における2個の汚染検出器に対して実行される一連の位置決め制御のうち、ステップS201、S202、S103を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示の自動スクリーニング装置の好適な実施の形態につき、図面を用いて具体的に説明する。
【0018】
実施の形態1.
図1は、本開示の実施の形態1における自動スクリーニング装置の機能ブロック図である。本実施の形態1における自動スクリーニング装置は、2個の汚染検出器10(1)、10(2)、駆動機構部20、およびコントローラ40を備えており、スクリーニング対象車両1の荷台面1aにおける放射性物質による表面汚染を自動スクリーニングする。
【0019】
2個の汚染検出器10(1)、10(2)のそれぞれは、スクリーニング対象車両1の荷台面1aにおける放射性物質による表面汚染を検出する検出器である。なお、汚染検出器10の個数は、2個には限定されず、3個以上とすることも可能であるが、以下では、説明を簡略化するために、2個の汚染検出器10(1)、10(2)を用いる場合を具体例としている。
【0020】
駆動機構部20は、コントローラ40からの制御指令に基づいて、2個の汚染検出器10(1)、10(2)のそれぞれを所望の位置に移動させる位置決め制御を実行する。具体的には、コントローラ40は、駆動機構部20を制御することで荷台面1aに対する2個の汚染検出器10(1)、10(2)のそれぞれの位置決め制御を行う。
【0021】
さらに、コントローラ40は、2個の汚染検出器10(1)、10(2)のそれぞれの検出結果から、荷台面1aの表面汚染が許容値以内であるか否かのスクリーニングを行う。
【0022】
本実施の形態1に係る自動スクリーニング装置は、複数の汚染検出器10を連動させてスクリーニング対象車両1の前後方向に1回の走査を行うことで、荷台面1aの放射線量を、高速、高精度にスクリーニングできることを技術的特徴としている。そこで、このような技術的特徴について、次に詳細に説明する。
【0023】
図2は、本開示の実施の形態1における2個の汚染検出器10(1)、10(2)に対して実行される位置決め制御に関する説明図である。
図2(a)は、荷台面1aと2個の汚染検出器10(1)、10(2)との位置関係を3次元空間として示した図である。一方、
図2(b)は、荷台面1aと2個の汚染検出器10(1)、10(2)との位置関係を、荷台面1aの上部から見た2次元平面として示した図である。
【0024】
図2においては、荷台面1aをX軸およびY軸によって規定されるXY平面とし、スクリーニング対象車両1の前後方向に相当する荷台面1aの長さ方向をX軸方向とし、荷台面1aの幅方向をY軸方向として示している。
【0025】
2個の汚染検出器10(1)、10(2)のそれぞれの長さLYは、荷台面1aの幅方向の全幅TWよりも短く、かつ、2個の汚染検出器10(1)、10(2)のそれぞれの長さLYの総計、すなわち2×LYは、荷台面1aの全幅TWよりも長くなるように設計されている。
【0026】
より具体的には、スクリーニング対象車両1として想定される荷台面1aの最大荷台幅をLLとし、スクリーニング対象車両1として想定される荷台面1aの最小荷台幅をLSとした場合には、2個の汚染検出器10(1)、10(2)のそれぞれの長さLYは、下式(1)を満たすように設計されている。
LL/2<LY<LS (1)
【0027】
なお、複数の汚染検出器10のそれぞれの長さLYは、すべてが共通の長さである必要はない。例えば、2個の汚染検出器10(1)、10(2)のそれぞれの長さをLY1、LY2とし、LY1≧LY2とした場合には、下式(2)、(3)を満たすように設計されることとなる。
LS>LY1 (2)
LY1+LY2>LL (3)
【0028】
なお、汚染検出器10として3つ以上の複数の汚染検出器を用いる場合には、Y軸方向における複数の汚染検出器10のそれぞれの長さが、荷台面の幅方向の全幅TWよりも短く、複数の汚染検出器10のそれぞれの長さの総計が、荷台面の幅方向の全幅TWよりも長くなるように、複数の汚染検出器が設計されていることとなる。
【0029】
コントローラ40は、2個の汚染検出器10(1)、10(2)により、Y軸方向の全幅TWに対する検出領域をカバーできるように、2個の汚染検出器10(1)、10(2)のそれぞれに関するY軸方向での位置決め制御を行う。
【0030】
具体的には、
図2(a)および
図2(b)に示したように、第1の汚染検出器に相当する汚染検出器10(1)は、荷台面1aにおける幅方向に設けられた一対の側面1L、1Rのうちの一方の側面1Lに対して、適正な近接距離範囲内になるまでY軸方向での位置決め制御が行われる。
【0031】
同様に、第2の汚染検出器に相当する汚染検出器10(2)は、荷台面1aにおける幅方向に設けられた一対の側面1L、1Rのうちの他方の側面1Rに対して、適正な近接距離範囲内になるまでY軸方向での位置決め制御が行われる。このようなY軸方向での位置決め制御の結果、2個の汚染検出器10(1)、10(2)により、Y軸方向の全幅TWに対する検出領域がカバーできることとなる。
【0032】
次に、コントローラ40は、Y軸方向での位置決め制御が完了した状態で、2個の汚染検出器10(1)、10(2)をX軸方向に一括して走行させることで、全幅TWを有する荷台面1aを1回の走査でスクリーニングすることができることとなる。
【0033】
次に、一連の位置決め制御の詳細について説明する。
図3は、本開示の実施の形態1における2個の汚染検出器10(1)、10(2)に対して実行される一連の位置決め制御のうち、ステップS101~ステップS103を示した説明図である。また、
図4は、本開示の実施の形態1における2個の汚染検出器10(1)、10(2)に対して実行される一連の位置決め制御のうち、ステップS103に続いて実行されるステップS104を示した説明図である。
【0034】
コントローラ40は、2個の汚染検出器10(1)、10(2)に対する一連の位置決め制御として、ステップS101からステップS104までを順次実行することで、荷台面1aのスクリーニングを行う。そこで、それぞれのステップごとに、個別に説明する。
【0035】
<ステップS101>
荷台面1aのスクリーニングを開始する場合に、コントローラ40は、ステップ1において、2台の汚染検出器10(1)、10(2)が、側面1Lおよび側面1Rに接触しないように、荷台面1aの最小荷台幅LSに対しても挿入可能なように、Y軸方向の位置決め制御を行い、2台の汚染検出器10(1)、10(2)のY軸方向における初期位置設定を行う。
【0036】
その後、コントローラ40は、ステップS101において、2台の汚染検出器10(1)、10(2)が、荷台面1aにおける表面汚染を検出するのに適した所定位置となるように、Z軸方向の位置決め制御を行う。
【0037】
<ステップS102>
図3および
図4に示したように、本実施の形態1では、側面1Lと汚染検出器10(1)とのY軸方向の距離を検出するための第1のセンサ11(1)が、側面1Lと対向する汚染検出器10(1)の側面に設けられている。同様に、側面1Rと汚染検出器10(2)とのY軸方向の距離を検出するための第2のセンサ11(2)が、側面1Rと対向する汚染検出器10(2)の側面に設けられている。
【0038】
そこで、ステップS102において、コントローラ40は、第1のセンサ11(1)により計測された距離が、あらかじめ決められた適正な近接距離範囲内になるまで、汚染検出器10(1)を一方の側面1Lに接近させることで、汚染検出器10(1)のY軸方向での位置決め制御を行う。
【0039】
同様に、ステップS102において、コントローラ40は、第2のセンサ11(2)により計測された距離が、あらかじめ決められた適正な近接距離範囲内になるまで、汚染検出器10(2)を他方の側面1Rに接近させることで、汚染検出器10(2)のY軸方向での位置決め制御を行う。
【0040】
換言すると、コントローラ40は、汚染検出器10(1)および汚染検出器10(2)がX軸方向において一部分が重複した状態で、汚染検出器10(1)および汚染検出器10(2)によりY軸方向の全幅TWに対する検出領域をカバーできる位置関係を有するように、Y軸方向での位置決め制御を行うこととなる。
【0041】
<ステップS103>
ステップS102が完了した状態では、汚染検出器10(1)と側面1Rとの間には、汚染検出器10(2)を移動させることができないデッドゾーンDZが発生する。そこで、ステップS103において、コントローラ40は、Y軸方向において、汚染検出器10(1)を側面1R方向に走査することで、このデッドゾーンDZのスクリーニングを実行することができる。
【0042】
デッドゾーンDZのスクリーニングが完了した後は、コントローラ40は、Y軸方向において、汚染検出器10(1)を側面1Rから離れる方向に移動させ、ステップS102が完了したときの位置に復帰させることとなる。
【0043】
なお、汚染検出器10(1)のX方向の厚さが無視できる程度であれば、汚染検出器10(2)の後ろ側のデッドゾーンDZのスクリーニングを省略し、ステップS103自体を省略することができる。
【0044】
また、以下のような手順を採用することで、デッドゾーンDZのスクリーニングを汚染検出器10(2)で実施することも可能である。すなわち、汚染検出器10(1)と汚染検出器10(2)を同時に下降させず、まずは汚染検出器10(2)のみを下降させて、デッドゾーンDZのスクリーニングを優先して完了させ、その後、汚染検出器10(1)のX方向の厚さ分だけ汚染検出器10(2)をX方向に前進させてから、汚染検出器10(1)を下降させる手順も考えられる。
【0045】
<ステップS104>
図4に示したステップS104において、コントローラ40は、汚染検出器10(1)と汚染検出器10(2)をX軸方向に一括して走査することで、荷台面1aのスクリーニングを行う。コントローラ40は、荷台面1aの長さに関するデータを取得しておくことで、X軸方向の走査を完了させることができる。
【0046】
なお、図示していないが、ステップS104によるX軸方向の走査を完了した後は、汚染検出器10(2)と側面1Lとの間には、汚染検出器10(1)を移動させることができないデッドゾーンDZが発生する。そこで、先のステップS103と同様に、コントローラ40は、Y軸方向において、汚染検出器10(2)を側面1L方向に走査することで、このデッドゾーンDZのスクリーニングを実行することが可能となる。
【0047】
なお、汚染検出器10(2)のX方向の厚さが無視できる程度であれば、汚染検出器10(1)の前側のデッドゾーンDZのスクリーニングを省略することができる。
【0048】
また、汚染検出器10(2)を上昇させた後に、汚染検出器10(1)をX軸方向にさらに前進させることでも、デッドゾーンDZのスクリーニングを完了させることができる。
【0049】
以上のように、実施の形態1によれば、複数の汚染検出器を連動させてX軸方向に1回の走査を行うことで、車両の荷台面の放射線量を、高速、高精度にスクリーニングできる構成を備えている。この結果、スクリーニング対象となる車両の荷台幅が異なる場合にも、部品交換作業が不要であり、かつ、スクリーニング時間が長くなることを抑制することのできる自動スクリーニング装置を実現することができる。
【0050】
実施の形態2.
先の実施の形態1では、汚染検出器10(1)、10(2)のY軸方向での位置決め制御を行うために、第1のセンサ11(1)および第2のセンサ11(2)を距離センサとして用いる場合について説明した。これに対して、本実施の形態2では、汚染検出器10(1)、10(2)のY軸方向での位置決め制御を行うために、距離センサによる検出処理を用いる代わりに、荷台面1aの形状認識処理を用いる場合について説明する。
【0051】
図5は、本開示の実施の形態2における自動スクリーニング装置の機能ブロック図である。本実施の形態2における自動スクリーニング装置は、2個の汚染検出器10(1)、10(2)、駆動機構部20、形状認識部30、およびコントローラ40を備えており、スクリーニング対象車両1の荷台面1aにおける放射性物質による表面汚染を自動スクリーニングする。
【0052】
本実施の形態2で新たに追加されている形状認識部30は、汚染検出器10(1)、10(2)のY軸方向での位置決め制御を行うために、荷台面1aの全幅TWの形状認識を実行する。
【0053】
図6は、本開示の実施の形態2における2個の汚染検出器10(1)、10(2)に対して実行される一連の位置決め制御のうち、ステップS201、S202、S103を示した説明図である。
【0054】
本実施の形態2におけるステップS201は、先の実施の形態1におけるステップS101の代わりに実行される位置決め制御に相当し、本実施の形態2におけるステップS202は、先の実施の形態1におけるステップS102の代わりに実行される位置決め制御に相当する。
【0055】
一方、本実施の形態2では、ステップS201およびステップS202を実行後に、先の実施の形態1と同様のステップS103およびステップS104が実行されることとなる。そこで、先の実施の形態1との相違点であるステップS201およびステップS202における位置決め制御を中心に、
図6に基づいて説明する。
【0056】
<ステップS201>
形状認識部30は、スクリーニング対象車両1の荷台面1aの全幅TWを見通せる部分に設置されている。形状認識部30は、レーザスキャナ、ステレオカメラ等の荷台形状を認識できる形状認識装置として構成され、荷台面1aの全幅TWを認識結果として出力する。
【0057】
荷台面1aのスクリーニングを開始する場合に、ステップS201において、コントローラ40は、2台の汚染検出器10(1)、10(2)が、側面1Lおよび側面1Rに接触しないように、荷台面1aの最小荷台幅LSに対しても挿入可能なように、Y軸方向の位置決め制御を行い、2台の汚染検出器10(1)、10(2)のY軸方向における初期位置設定を行う。
【0058】
その後、コントローラ40は、ステップS101において、2台の汚染検出器10(1)、10(2)が、荷台面1aにおける表面汚染を検出するのに適した所定位置となるように、Z軸方向の位置決め制御を行う。
【0059】
さらに、コントローラ40は、形状認識部30から荷台面1aの全幅TWの認識結果を取得する。
【0060】
<ステップS202>
ステップS202において、コントローラ40は、初期位置設定後の2台の汚染検出器10(1)、10(2)のY軸方向における位置と、形状認識部30から取得した荷台面1aの全幅TWの認識結果とに基づいて、一対の側面1L、1Rと2台の汚染検出器10(1)、10(2)との相対的な位置関係を特定する。
【0061】
さらに、ステップS202において、コントローラ40は、特定した位置関係に基づいて、あらかじめ決められた適正な近接距離範囲内になるまで、汚染検出器10(1)を一方の側面1Lに接近させることで、汚染検出器10(1)のY軸方向での位置決め制御を行う。
【0062】
同様に、ステップS202において、コントローラ40は、特定した位置関係に基づいて、あらかじめ決められた適正な近接距離範囲内になるまで、汚染検出器10(2)を他方の側面1Rに接近させることで、汚染検出器10(2)のY軸方向での位置決め制御を行う。
【0063】
<ステップS103およびステップS104>
コントローラ40は、ステップS202を実施した後は、先の実施の形態1で説明したステップS103およびステップS104を実行する。
【0064】
以上のように、実施の形態2によれば、距離センサによる検出結果を用いる代わりに、荷台面の形状認識結果を用いる構成を採用した場合にも、先の実施の形態1と同様の効果を実現できる。
【0065】
なお、上述した実施の形態1、2では、荷台面をX軸およびY軸によって規定されるXY平面とした場合に、スクリーニング対象車両を停止させた状態で、複数の汚染検出器をX軸、Y軸、Z軸による3次元空間内で移動させる場合の具体的な手法を説明した。しかしながら、複数の汚染検出器の移動方向は、Y軸およびZ軸の2軸に限定し、X軸方向に関しては、複数の汚染検出器を所望位置に位置決めした後に、スクリーニング対象車両を移動させるような構成を採用することも可能である。
【0066】
具体的には、YZ平面で移動可能な複数の汚染検出器を備えて固定配置された門型ユニットを用い、スクリーニング対象車両の荷台面の形状に応じて複数の汚染検出器のYZ平面上での位置決め制御を行った上で、台座上で停止したスクリーニング対象車両の相対位置を補正し、台座をX軸方向に移動させて門型ユニット内を通過するようにスクリーニング対象車両を移動させる構成を採用することができる。
【0067】
換言すると、X軸方向に関しては、複数の汚染検出器と、荷台面との相対的な位置関係が変化すればよく、スクリーニング対象車両を停止させた状態で複数の汚染検出器を移動させてもよく、複数の汚染検出器を停止させた状態でスクリーニング対象車両を移動させてもよく、同様の効果を実現できる。
【符号の説明】
【0068】
1 スクリーニング対象車両、1a 荷台面、1L、1R 側面、10、10(1)、10(2) 汚染検出器、11(1) 第1のセンサ、11(2) 第2のセンサ、20 駆動機構部、30 形状認識部、40 コントローラ。