(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】車両用制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 10/08 20060101AFI20240321BHJP
B60K 6/46 20071001ALI20240321BHJP
B60L 50/61 20190101ALI20240321BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20240321BHJP
B60W 20/15 20160101ALI20240321BHJP
F02D 45/00 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
B60W10/08 900
B60K6/46 ZHV
B60L50/61
B60W10/06 900
B60W20/15
F02D45/00 364G
(21)【出願番号】P 2021154176
(22)【出願日】2021-09-22
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中本 和男
(72)【発明者】
【氏名】竹田 正朗
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-054200(JP,A)
【文献】特開2008-195279(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/08
B60K 6/46
B60L 50/61
B60W 10/06
B60W 20/15
F02D 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動輪へ駆動力を供給し回生制動により発電する走行用モータジェネレータと、内燃機関により駆動され発電する発電用モータジェネレータと、前記走行用モータジェネレータおよび前記発電用モータジェネレータによって充放電される蓄電装置と、を備えた車両に設けられ、
前記内燃機関を制御する内燃機関制御部が前記内燃機関のエンジン回転数と目標回転数とのずれを補正するためのスロットル開度の補正量を学習する少なくとも一部の期間、前記発電用モータジェネレータのトルクを所定トルクに制御する学習制御部、
を備え
、
前記学習制御部は、
前記内燃機関制御部から学習要求信号を受付けたときに、前記発電用モータジェネレータによる前記内燃機関のエンジン回転数の制御である回転追従制御によって前記エンジン回転数が前記目標回転数に所定回転数加算した学習初期回転数に収束したときの、前記発電用モータジェネレータのトルクが予め定めた閾値トルク以上である場合、前記内燃機関制御部へ学習開始信号を出力し、
前記学習開始信号の出力後に前記発電用モータジェネレータのトルクが前記所定トルクに到達したときに、前記発電用モータジェネレータの制御を前記回転追従制御から前記所定トルクに維持するトルク維持制御に切替える、
車両用制御装置。
【請求項2】
前記学習制御部は、
前記回転追従制御によって前記エンジン回転数が前記学習初期回転数に収束したときの前記発電用モータジェネレータのトルクが前記閾値トルク未満である場合、前記目標回転数から所定回転数減算した減算回転数への前記回転追従制御によって前記エンジン回転数が前記減算回転数に収束したときに、前記内燃機関制御部へ学習開始信号を出力する、
請求項
1に記載の車両用制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機および内燃機関の2種類の動力源を備えたハイブリット車両が知られている。特に、シリーズ方式のハイブリッド車両では、内燃機関に直結された発電用モータジェネレータで発電を行い、発電した電力を蓄電装置に蓄電するとともに走行用モータジェネレータを駆動することで走行することが知られている。このようなシリーズ方式のハイブリッド車両では、発電用モータジェネレータによって内燃機関のエンジン回転数を制御することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、内燃機関の空気流入量のばらつきはスロットル開度により調整する必要がある。蓄電装置を非搭載であり内燃機関のみを走行用の動力源とする所謂コンベ車では、アイドル状態で内燃機関のエンジン回転数と目標回転数とのずれをスロットル開度の調整によって補正することが行われている。シリーズ方式のハイブリッド車両においてコンベ車と同様にスロットル開度の補正量の学習を行うと、発電用モータジェネレータと内燃機関の双方でエンジン回転数を制御することとなり、補正量を正しく学習することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示が解決しようとする課題は、シリーズ方式のハイブリッド車両であっても、内燃機関のスロットル開度の補正量を高精度に学習することができる、車両用制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示にかかる車両用制御装置は、駆動輪へ駆動力を供給し回生制動により発電する走行用モータジェネレータと、内燃機関により駆動され発電する発電用モータジェネレータと、前記走行用モータジェネレータおよび前記発電用モータジェネレータによって充放電される蓄電装置と、を備えた車両に設けられ、学習制御部を備える。学習制御部は、前記内燃機関を制御する内燃機関制御部が前記内燃機関のエンジン回転数と目標回転数とのずれを補正するためのスロットル開度の補正量を学習する少なくとも一部の期間、前記発電用モータジェネレータのトルクを所定トルクに制御する。前記学習制御部は、前記内燃機関制御部から学習要求信号を受付けたときに、前記発電用モータジェネレータによる前記内燃機関のエンジン回転数の制御である回転追従制御によって前記エンジン回転数が前記目標回転数に所定回転数加算した学習初期回転数に収束したときの、前記発電用モータジェネレータのトルクが予め定めた閾値トルク以上である場合、前記内燃機関制御部へ学習開始信号を出力し、前記学習開始信号の出力後に前記発電用モータジェネレータのトルクが前記所定トルクに到達したときに、前記発電用モータジェネレータの制御を前記回転追従制御から前記所定トルクに維持するトルク維持制御に切替える。
【発明の効果】
【0007】
本開示にかかる車両用制御装置によれば、シリーズ方式のハイブリッド車両であっても、内燃機関のスロットル開度の補正量を高精度に学習することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態の車両の概略構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、車両用制御装置の一例のハードウェア構成図である。
【
図3】
図3は、エンジン回転数とトルクとの関係の一例を示す線図である。
【
図4】
図4は、エンジン回転数とトルクとの関係の一例を示す線図である。
【
図5】
図5は、エンジン回転数とトルクとの関係の一例を示す線図である。
【
図6】
図6は、車両用制御装置で実行される情報処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、本開示に係る車両用制御装置の実施形態を説明する。
【0010】
図1は、本実施形態の車両1の概略構成を示す図である。車両1は、シリーズ方式のハイブリッド車両の一例である。
【0011】
車両1は、車両用制御装置10と、内燃機関12と、発電用モータジェネレータ14と、走行用モータジェネレータ16と、蓄電装置18と、を備える。
【0012】
内燃機関12は、エンジンである。内燃機関12は、例えば、複数の気筒を包有する4ストロークエンジンなどである。
【0013】
発電用モータジェネレータ14は、内燃機関12により駆動されて発電する。内燃機関12の回転軸であるクランクシャフトは、発電用モータジェネレータ14の回転軸と歯車機構を介して機械的に接続されている。内燃機関12が出力する回転駆動力が発電用モータジェネレータ14に入力されることで、発電用モータジェネレータ14が発電する。発電用モータジェネレータ14で発電された電力は、蓄電装置18に充電され、走行用モータジェネレータ16に供給される。
【0014】
また、発電用モータジェネレータ14は、回転駆動力を発生させて内燃機関12のクランクシャフトを回転駆動する電動機としても機能する。例えば、発電用モータジェネレータ14は、停止している内燃機関12を始動するクランキングなどを実行する。
【0015】
走行用モータジェネレータ16は、駆動輪22へ駆動力を供給し回生制動により発電する。詳細には、走行用モータジェネレータ16は、発電用モータジェネレータ14および蓄電装置18から供給された電力により車両1の走行のための駆動力を発生させ、減速機61を介して駆動力を駆動輪22に出力する。また、走行用モータジェネレータ16は、駆動輪22に連れ回されて回転することで発電し、車両1の運動エネルギーを電気エネルギーとして回収する。回生制動により発電された電力は、蓄電装置18に充電される。
【0016】
蓄電装置18は、発電用モータジェネレータ14および走行用モータジェネレータ16によって充放電される。蓄電装置18は、発電用モータジェネレータ14および走行用モータジェネレータ16の各々で発電された電力を充電して蓄える。また、蓄電装置18は、発電用モータジェネレータ14および走行用モータジェネレータ16の各々を電動機として作動させるための電力を放電し、発電用モータジェネレータ14および走行用モータジェネレータ16の各々に必要な電力を供給する。蓄電装置18は、例えば、バッテリ、またはキャパシタなどである。
【0017】
インバータ24およびインバータ26は、PCU(Power Control Unit)の一部として機能する。
【0018】
インバータ24は、発電用モータジェネレータ14で発電された交流電力を直流電力に変換し、蓄電装置18およびインバータ26の少なくとも一方へ出力する。また、インバータ24は、発電用モータジェネレータ14を電動機として作動させる際、蓄電装置18およびインバータ26の少なくとも一方から供給される直流電力を交流電力に変換し、発電用モータジェネレータ14へ出力する。
【0019】
インバータ26は、蓄電装置18およびインバータ24の少なくとも一方から供給される直流電力を交流電力に変換し、走行用モータジェネレータ16へ出力する。また、インバータ26は、回生制動により走行用モータジェネレータ16で発電された交流電力を直流電力に変換し、蓄電装置18およびインバータ24の少なくとも一方へ出力する。
【0020】
車両用制御装置10は、車両1を制御するコントローラである。
【0021】
車両用制御装置10は、車両1に搭載された各種のセンサの検出結果を取得する。例えば、車両用制御装置10は、車両1の車速、蓄電装置18の環境温度、蓄電装置18に対する充放電電流、蓄電装置18の残容量、アクセル開度、シフトポジション、スイッチのON/OFF、路面の勾配、発電用モータジェネレータ14の発電電力、走行用モータジェネレータ16の発電電力、などを取得する。車両用制御装置10は、これらの検出結果に応じて、走行用モータジェネレータ16の回転駆動力、内燃機関12の回転駆動力、および発電用モータジェネレータ14が発電する電力の大きさなどを制御する。
【0022】
車両用制御装置10は、例えば、総合制御ECU(Electronic Control Unit)30、エンジンECU32、発電機ECU34、バッテリECU36、および駆動機ECU38を有する。
【0023】
総合制御ECU30、エンジンECU32、発電機ECU34、バッテリECU36、および駆動機ECU38は、CAN(Controller Area Network)などの電気通信回線を介して相互に通信可能に接続されている。
【0024】
エンジンECU32は、内燃機関制御部の一例である。エンジンECU32は、総合制御ECU30の制御指令に従って内燃機関12を制御するエンジンコントローラである。エンジンECU32は、内燃機関12のスロットル開度、点火時期、燃料噴射量、などを調整することでエンジン出力トルクなどを制御する。発電機ECU34は、発電用モータジェネレータ14およびインバータ24を制御するコントローラである。バッテリECU36は、蓄電装置18を制御するコントローラである。駆動機ECU38は、走行用モータジェネレータ16およびインバータ26を制御するコントローラである。
【0025】
図2は、車両用制御装置10のハードウェア構成図の一例である。
【0026】
車両用制御装置10に設けられた総合制御ECU30、エンジンECU32、発電機ECU34、バッテリECU36、および駆動機ECU38は、CPU(Central Processing Unit)11A、ROM(Read Only Memory)11B、RAM(Random Access Memory)11C、およびI/F11Dなどがバス11Eにより相互に接続され、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成である。
【0027】
CPU11Aは、本実施形態の車両用制御装置10を制御する演算装置である。ROM11Bは、CPU11Aによる各種処理を実現するプログラムなどを記憶する。RAM11Cは、CPU11Aによる各種処理に必要なデータを記憶する。I/F11Dは、データを送受信するためのインターフェースである。
【0028】
本実施形態の車両用制御装置10で実行される情報処理を実行するためのプログラムは、ROM11Bなどに予め組み込んで提供される。なお、本実施形態の車両用制御装置10で実行されるプログラムは、車両用制御装置10にインストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)などのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供するように構成してもよい。
【0029】
図1に戻り説明を続ける。総合制御ECU30は、車両1のハイブリッドシステム全体を制御する。本実施形態では、総合制御ECU30は、HEV_ECU40と、学習制御部42と、を含む。
【0030】
HEV_ECU40は、エンジンECU32、発電機ECU34、バッテリECU36、および駆動機ECU38などを相互に管理し制御する。HEV_ECU40は、内燃機関12の出力、発電用モータジェネレータ14および走行用モータジェネレータ16の出力などを車両負荷や走行状態などに応じて最適配分し、車両1が最も効率よく走行可能となるように車両1のハイブリッドシステム全体を制御する。
【0031】
学習制御部42は、エンジンECU32による学習モデル32Aの学習環境が最適環境となるように制御する。
【0032】
学習制御部42は、CPU11Aなどの処理装置にプログラムを実行させること、すなわち、ソフトウェアにより実現してもよい。また、学習制御部42は、IC(Integrated Circuit)などのハードウェアにより実現してもよい。また、学習制御部42は、ソフトウェアおよびハードウェアを併用して実現してもよい。
【0033】
エンジンECU32は、学習条件が整ったときに学習モデル32Aを学習する。
【0034】
学習モデル32Aは、内燃機関12のエンジン回転数と目標回転数とのずれを補正するためのスロットル開度の補正量の学習モデルである。言い換えると、学習モデル32Aは、内燃機関12のエンジン回転数と目標回転数とのずれを入力とし、入力されたずれを補正するためのスロットル開度の補正量を出力とする、学習モデルである。
【0035】
エンジンECU32は、学習条件が整ったと判断すると、学習条件が整ったことを表す学習要求信号を総合制御ECU30へ出力する。例えば、エンジンECU32は、内燃機関12がアイドル状態となったときに、学習要求信号を総合制御ECU30へ出力する。車両用制御装置10では、エンジンECU32が学習時に用いる目標回転数および目標トルクが予め定められており、エンジンECU32および学習制御部42の各々に予め記憶されている。学習条件が整ったと判断すると、エンジンECU32は、予め定めた目標回転数および目標トルクの出力を実現するための補正量を学習するように、学習モデル32Aを学習可能な状態となる。
【0036】
ここで、シリーズ方式のハイブリッド車両である車両1の走行パターンには、大別して、EV(Electric Vehicle)走行とHEV(Hybrid Electric Vehicle)がある。
【0037】
EV走行では、車両1は、内燃機関12を停止し蓄電装置18に蓄電された電力により走行する。HEV走行では、車両1は、内燃機関12を運転し内燃機関12の回転駆動力により発電用モータジェネレータ14で発電された電力により走行する。
【0038】
HEV走行時には、HEV_ECU40は、走行用モータジェネレータ16で必要とされる出力に応じてファイアリングした内燃機関12と発電用モータジェネレータ14の出力を調整する。HEV走行時の該出力に対する内燃機関12のエンジン回転数の制御には、等出力の中でハイブリッドシステムの発電効率の良い運転点をつないだ動作線が用いられる。発電用モータジェネレータ14が走行用モータジェネレータ16の要求出力に応じて動作線に沿った発電を行っている際には、発電用モータジェネレータ14の出力と内燃機関12のファイアリング出力とは釣り合った状態となる。
【0039】
シリーズ方式のハイブリッド車両では、内燃機関12を一定負荷で運転し、発電用モータジェネレータ14により内燃機関12のエンジン回転数を制御することが行われている。すなわち、HEV走行時には、発電機ECU34は、発電用モータジェネレータ14による内燃機関12のエンジン回転数の制御である回転追従制御を行う。
【0040】
一方、内燃機関12の空気流入量のばらつきはスロットル開度により調整する必要がある。蓄電装置18を非搭載であり内燃機関12のみを走行用の動力源とする所謂コンベ車では、アイドル状態で内燃機関12のエンジン回転数と目標回転数とのずれをスロットル開度の調整によって補正することが行われている。
【0041】
シリーズ方式のハイブリッド車両においてコンベ車と同様にスロットル開度の補正量の学習を行うと、発電用モータジェネレータ14と内燃機関12の双方で内燃機関12のエンジン回転数を制御することとなる。
【0042】
このため、従来のシリーズ方式のハイブリッド車両では、内燃機関12のスロットル開度の補正量を正しく学習することが困難であった。また、従来技術では、発電用モータジェネレータ14で内燃機関12のエンジン回転数の制御を行うため、スロットル開度の補正が出来ず、結果として動作線から外れた条件で走行することとなり、燃費が悪化する場合があった。また、HEV走行用にエンジン回転数のずれを補正するための新たな学習モデルを構築した場合、1つの内燃機関12に対して複数の制御方式が構築されることとなり、共通化が難しくまた適合工数の増大につながる場合があった。
【0043】
そこで、本実施形態の車両用制御装置10は、学習制御部42を備える。
【0044】
学習制御部42は、学習モデル32Aから学習要求信号を受付け、車両1がHEV走行からEV走行へ切替可能な状態となったときに、以下の処理を実行する。
【0045】
学習制御部42は、エンジンECU32が学習モデル32Aを学習する少なくとも一部の期間、発電用モータジェネレータ14のトルクを所定トルクに制御する。
【0046】
所定トルクは、予め定めればよい。本実施形態では、所定トルクが目標トルクである形態を一例として説明する。
【0047】
目標トルクとは、学習時に内燃機関12の学習目標とするトルクである。本実施形態では、学習制御部42は、エンジンECU32による学習の少なくとも一部の期間、発電用モータジェネレータ14のトルクを目標トルクで維持するように制御する。
【0048】
詳細には、学習制御部42は、内燃機関12の学習条件が整い、車両1がHEV走行からEV走行へ切替可能な状態となったか否かを判断する。学習制御部42は、内燃機関12から学習要求信号を受付け、HEV_ECU40から切替可能信号を受付けた時に、学習条件が整い且つEV走行へ切替可能な状態となったと判断する。切替可能信号は、車両1がHEV走行からEV走行へ切替可能な状態となったことを表す信号である。HEV_ECU40は、HEV走行からEV走行へ切替可能な状態となり、且つ、EV走行への切替前に、切替可能信号を学習制御部42へ出力すればよい。
【0049】
上述したように、HEV走行時には、発電用モータジェネレータ14による内燃機関12のエンジン回転数の制御である回転追従制御が行われている。学習制御部42は、内燃機関12の学習条件が整い、車両1がHEV走行からEV走行へ切替可能な状態となると、発電用モータジェネレータ14による回転追従制御によって内燃機関12のエンジン回転数を学習初期回転数に制御する。
【0050】
学習初期回転数とは、学習モデル32Aの学習時の内燃機関12の目標回転数に、所定回転数を加算した回転数である。学習初期回転数の算出に用いる所定回転数には、学習初期回転数が、内燃機関12の学習条件が整った状態を維持し、且つ、車両1がHEV走行からEV走行へ切替可能な状態を維持することの可能な回転数となる値を定めればよい。例えば、学習初期回転数の算出に用いる所定回転数は、50rpm、100rpmなどであるが、この値に限定されない。
【0051】
学習制御部42は、学習初期回転数のエンジン回転数となる回転追従制御を指示する指示信号を発電機ECU34へ出力する。学習制御部42は、HEV_ECU40を介して指示信号を発電機ECU34へ出力してもよい。該指示信号を受付けた発電機ECU34による制御によって、発電用モータジェネレータ14は回転追従制御を継続し、学習初期回転数のエンジン回転数となる回転追従制御を行う。
【0052】
学習制御部42は、発電用モータジェネレータ14による回転追従制御によって内燃機関12のエンジン回転数が学習初期回転数に収束したときの発電用モータジェネレータ14のトルクを取得する。
【0053】
学習制御部42は、エンジン回転数が学習初期回転数に収束したときの発電用モータジェネレータ14のトルクが予め定めた閾値トルク以上である場合、エンジンECU32へ学習開始信号を出力する。
【0054】
閾値トルクは、予め定めればよい。例えば、閾値トルクには、発電用モータジェネレータ14のトルクを固定にしても内燃機関12のエンジン回転数が低下しない最低トルクを予め定めればよい。言い換えると、閾値トルクには、その状態で発電用モータジェネレータ14のトルクを目標トルクで固定した場合であっても、内燃機関12が停止しない最低のトルクを定めればよい。すなわち、閾値トルクには、内燃機関12の回転を維持するために発電用モータジェネレータ14による回転追従制御の介入の必要な下限のトルクを定めればよい。
【0055】
一方、学習制御部42は、エンジン回転数が学習初期回転数に収束したときの発電用モータジェネレータ14のトルクが閾値トルク未満である場合には、減算回転数のエンジン回転数となる回転追従制御を指示する指示信号を発電機ECU34へ出力する。該指示信号を受付けた発電機ECU34による制御によって、発電用モータジェネレータ14は回転追従制御を継続し、減算回転数のエンジン回転数となる回転追従制御を行う。
【0056】
減算回転数とは、学習モデル32Aの学習時の内燃機関12の目標回転数から所定回転数減算した回転数である。減算回転数の算出に用いる所定回転数には、減算回転数が、内燃機関12の学習条件が整った状態を維持し、車両1がHEV走行からEV走行へ切替可能な状態を維持することが可能であって、且つ、内燃機関12が運転を維持する最低回転数以上となる値を定めればよい。減算回転数の算出に用いる所定回転数には、学習初期回転数の算出時に用いる所定回転数と同じ回転数を用いてもよいし、異なる回転数を用いてもよい。例えば、減算回転数の算出に用いる所定回転数は、50rpm、100rpmなどであるが、この値に限定されない。
【0057】
そして、学習制御部42は、発電用モータジェネレータ14による減算回転数への回転追従制御によってエンジン回転数が減算回転数に収束したときに、エンジンECU32へ学習開始信号を出力する。
【0058】
学習制御部42は、学習開始信号の出力後に発電用モータジェネレータ14のトルクが目標トルクに到達したときに、発電用モータジェネレータ14の制御を回転追従制御から所定トルクに維持するトルク維持制御に切替える。上述したように、本実施形態では、所定トルクとして、目標トルクを用いる形態を一例として説明する。このため、本実施形態では、トルク維持制御は、発電用モータジェネレータ14のトルクを目標トルクに維持する制御を意味する。
【0059】
学習制御部42は、発電用モータジェネレータ14のトルクが目標トルクとなったときに、回転追従制御からトルク維持制御への第1切替信号を発電機ECU34へ出力する。第1切替信号を受付けた発電機ECU34による制御によって、発電用モータジェネレータ14は、回転追従制御から目標トルクを維持するトルク維持制御に切替えられる。
【0060】
このため、エンジンECU32は、学習モデル32Aを学習する少なくとも一部の期間、発電用モータジェネレータ14のトルクが目標トルクで維持された状態で学習モデル32Aを学習することができる。
【0061】
また、学習制御部42は、内燃機関12の学習条件が整い、車両1がHEV走行からEV走行へ切替可能な状態となると、回転追従制御によって内燃機関12のエンジン回転数が学習初期回転数となるように制御する。
【0062】
上述したように、学習初期回転数は、学習モデル32Aの学習時の内燃機関12の目標回転数に、所定回転数を加算した回転数である。このため、エンジン回転数が学習初期回転数に収束したときの発電用モータジェネレータ14のトルクが閾値トルク以上である場合、エンジンECU32は、トルクを下げる方向すなわちスロットルを閉じる方向に学習モデル32Aを学習することができる。
【0063】
また、エンジン回転数が学習初期回転数に収束したときの発電用モータジェネレータ14のトルクが閾値トルク未満である場合、学習制御部42は、目標回転数から所定回転数減算した減算回転数への回転追従制御によってエンジン回転数が減算回転数に収束したときに、学習開始信号を出力する。このため、エンジン回転数が学習初期回転数に収束したときの発電用モータジェネレータ14のトルクが閾値トルク未満である場合、エンジンECU32は、トルクを上げる方向すなわちスロットルを開く方向に学習モデル32Aを学習することができる。
【0064】
学習制御部42は、学習終了または学習中断を判断した場合、トルク維持制御から回転追従制御への切替えを表す第2切替信号を、エンジンECU32および発電機ECU34へ出力する。
【0065】
学習制御部42は、例えば、HEV走行へ切替可能な状態となったことを表す信号をHEV_ECU40から受付けたときに、学習中断と判断すればよい。
【0066】
また、学習制御部42は、エンジンECU32から学習終了を表す学習終了信号を受付けた場合、学習終了と判断する。エンジンECU32は、例えば、学習モデル32Aの学習によって内燃機関12が目標回転数および目標トルクに収束したときに、学習終了を判断し、学習終了信号を総合制御ECU30へ出力する。学習終了信号を受付けた場合、HEV_ECU40はHEV走行からEV走行へと切替える制御を行えばよい。
【0067】
このため、車両用制御装置10は、車両1がHEV走行からEV走行へと移行可能な状態となったときに、EV走行への移行前に、発電用モータジェネレータ14のトルクを目標トルクに維持した状態で学習モデル32Aを学習させることができる。
【0068】
学習制御部42による制御について、具体例を挙げて説明する。以下の具体例では、学習時の内燃機関12の目標回転数が1250rpmであり目標トルクが7Nmである場面を想定して説明する。
【0069】
図3は、エンジン回転数とトルクとの関係の一例を示す線図である。横軸は、内燃機関12のエンジン回転数を表す。縦軸は、内燃機関12および発電用モータジェネレータ14のトルクを表す。
【0070】
図3には、内燃機関12のエンジン回転数が学習初期回転数に収束したときの発電用モータジェネレータ14のトルクが、閾値トルク以上であった場合の一例を示す。
図3中、領域Pは、発電用モータジェネレータ14による回転追従制御が継続される領域を意味する。線
図50は、発電用モータジェネレータ14のトルクの推移を表す。線
図52は、内燃機関12のエンジントルクの推移を表す。
【0071】
線
図60Aは、目標回転数1250rpmおよび目標トルク7Nmの内燃機関12のエンジン出力の等出力線である。線
図60Bは、発電用モータジェネレータ14のトルクを固定にしても内燃機関12のエンジン回転数が吹き上がらない上限のラインを表す。線
図60Cは、発電用モータジェネレータ14のトルクを固定にしても内燃機関12のエンジン回転数が低下しない下限のラインを表す。
【0072】
内燃機関12の学習条件が整い、車両1がHEV走行からEV走行へ切替可能な状態となった場面を想定する。発電機ECU34は、学習制御部42から学習初期回転数のエンジン回転数となる回転追従制御を指示する指示信号を受付ける。具体的には、例えば、学習初期回転数が、目標回転数1250rpmに所定回転数として100rpm加算した1350rpmであった場合を想定して説明を続ける。発電機ECU34は、学習初期回転数1350rpmとなるように発電用モータジェネレータ14の回転を制御することで、内燃機関12のエンジン回転数を制御する。
【0073】
発電用モータジェネレータ14による回転追従制御によって、エンジン回転数およびトルクは、例えば、動作線に沿った走行であるエンジン回転数1400rpm,エンジントルク50Nmの状態から、エンジン回転数1350rpm,発電用モータジェネレータ14のトルク8Nmの状態に収束する(プロットA1参照)。
【0074】
学習制御部42は、エンジン回転数が学習初期回転数1350rpmに収束したときの発電用モータジェネレータ14のトルク8Nmと閾値トルクとを比較する。
【0075】
閾値トルクは、上述したように、発電用モータジェネレータ14のトルクを固定にしても内燃機関12のエンジン回転数が低下しない最低トルクである。すなわち、具体的には、閾値トルクは、線
図60Cに沿ったトルクである。
【0076】
図3に示す例の場合、内燃機関12のエンジン回転数が学習初期回転数1350rpmに収束したときの発電用モータジェネレータ14のトルク8Nmは、線
図60Cにおけるエンジン回転数1350rpmに対応するトルク5.9Nm以上である。また、
図3に示す例の場合、学習初期回転数1350rpmに収束したときの発電用モータジェネレータ14のトルク8Nmは、線
図60Bにおけるエンジン回転数1350rpmに対応するトルク7Nm以上である。
【0077】
発電用モータジェネレータ14による回転追従制御によって内燃機関12のエンジン回転数が学習初期回転数1350rpmに収束したときの発電用モータジェネレータ14のトルク8Nmが閾値トルクである5.9Nm以上であることから、学習制御部42は、エンジンECU32へ学習開始信号を出力する(プロットA1参照)。
【0078】
また、
図3に示す例では、学習初期回転数1350rpmに収束したときの発電用モータジェネレータ14のトルク8Nm(プロットA1参照)は、線
図60Bにおけるエンジン回転数1350rpmに対応するトルク7Nm以上である。このため、学習制御部42は、発電用モータジェネレータ14のトルクが目標トルク7Nmとなるまで回転追従制御を継続するように、発電機ECU34を制御する。このため、発電用モータジェネレータ14は、発電用モータジェネレータ14のトルクが目標トルク7Nmとなるまで回転追従制御を継続する。
【0079】
このため、エンジンECU32は、目標回転数より回転数の高い学習初期回転数から目標回転数および目標トルクのエンジン出力に向かって、エンジントルクを下げる方向、すなわちスロットルを閉じる方向に学習を進めることとなる。
【0080】
スロットルを閉じる方向への学習が進行することで、線
図50および線
図52の各々のプロットA1からプロットA2への推移に示されるように、エンジントルクが低下し、エンジントルクの低下に伴って発電用モータジェネレータ14のトルクも低下する。
【0081】
発電用モータジェネレータ14のトルクが目標トルク7Nmに到達すると(プロットA2参照)、学習制御部42は、発電用モータジェネレータ14の制御を回転追従制御から目標トルク7Nmに維持するトルク維持制御に切替える。詳細には、学習制御部42は、発電用モータジェネレータ14のトルクが目標トルクとなったときに、回転追従制御からトルク維持制御への第1切替信号を発電機ECU34へ出力する。第1切替信号を受付けた発電機ECU34は、回転追従制御からトルク維持制御へ切替え、目標トルク7Nmを維持するように発電用モータジェネレータ14を制御する。このため、発電用モータジェネレータ14のトルクは、目標トルク7Nmで維持される。
【0082】
なお、回転追従制御からトルク維持制御への切替えによってエンジン回転数が所定回転数以上吹き上がる場合がある。この場合、エンジンECU32は、学習を終了すればよい。
【0083】
発電用モータジェネレータ14のトルクが目標トルク7Nmに維持された状態で、エンジンECU32は、目標回転数に収束するようにスロットル開度を調整して学習モデル32Aを学習する。この学習により、エンジン回転数が目標回転数1250rpmに収束する(プロットA3参照)。エンジン回転数が目標回転数1250rpmに収束すると、学習制御部42は、エンジンECU32から学習終了信号を受付ける。
【0084】
学習終了信号を受付けると、学習制御部42は、トルク維持制御から回転追従制御への切替えを表す第2切替信号を、エンジンECU32および発電機ECU34へ出力する。エンジンECU32が学習終了信号を学習制御部42へ出力したタイミングでエンジントルクが発電用モータジェネレータ14による回転追従制御に従う状態に自動的に切替わると、発散する可能性があるためである。このため、学習制御部42は、発電用モータジェネレータ14によって回転追従制御される状態に戻ってよいことを表すフラグとして、第2切替信号をエンジンECU32へ出力することが好ましい。
【0085】
このように、エンジン回転数が学習初期回転数に収束したときの発電用モータジェネレータ14のトルクが閾値トルク以上である場合、エンジンECU32は、トルクを下げる方向すなわちスロットルを閉じる方向に学習モデル32Aを学習することができる。また、エンジンECU32は、学習する少なくとも一部の期間、発電用モータジェネレータ14のトルクが目標トルクで維持された状態で学習モデル32Aを学習することができる。
【0086】
図4は、エンジン回転数とトルクとの関係の一例を示す線図である。横軸は、内燃機関12のエンジン回転数を表す。縦軸は、内燃機関12および発電用モータジェネレータ14のトルクを表す。
【0087】
図4には、内燃機関12のエンジン回転数が学習初期回転数に収束したときの発電用モータジェネレータ14のトルクが、閾値トルク以上であり、且つ、線
図60Bに示されるトルク未満であった場合の一例を示す。
【0088】
【0089】
内燃機関12の学習条件が整い、車両1がHEV走行からEV走行へ切替可能な状態となった場面を想定する。発電機ECU34は、学習制御部42から学習初期回転数のエンジン回転数となる回転追従制御を指示する指示信号を受付ける。具体的には、例えば、学習初期回転数が、目標回転数1250rpmに所定回転数として100rpm加算した1350rpmであった場合を想定して説明を続ける。発電機ECU34は、学習初期回転数1350rpmとなるように発電用モータジェネレータ14の回転を制御することで、内燃機関12のエンジン回転数を制御する。
【0090】
発電用モータジェネレータ14による回転追従制御によって、エンジン回転数およびトルクは、例えば、動作線に沿った走行であるエンジン回転数1400rpm,エンジントルク50Nmの状態から、エンジン回転数1350rpm,発電用モータジェネレータ14のトルク6.5Nmの状態に収束する(プロットB1参照)。
【0091】
学習制御部42は、エンジン回転数が学習初期回転数1350rpmに収束したときの発電用モータジェネレータ14のトルク6.5Nmと閾値トルクとを比較する。
【0092】
閾値トルクは、上述したように、発電用モータジェネレータ14のトルクを固定にしても内燃機関12のエンジン回転数が低下しない最低トルクである。すなわち、具体的には、閾値トルクは、線
図60Cに沿ったトルクである。
【0093】
図4に示す例の場合、内燃機関12のエンジン回転数が学習初期回転数1350rpmに収束したときの発電用モータジェネレータ14のトルク6.5Nmは、線
図60Cにおけるエンジン回転数1350rpmに対応するトルク5.9Nm以上である。また、
図4に示す例の場合、学習初期回転数1350rpmに収束したときの発電用モータジェネレータ14のトルク6.5Nmは、線
図60Bにおけるエンジン回転数1350rpmに対応するトルク7Nm未満である。
【0094】
内燃機関12のエンジン回転数が学習初期回転数1350rpmに収束したときの発電用モータジェネレータ14のトルク6.5Nmが閾値トルクである5.9Nm以上であることから、学習制御部42は、エンジンECU32へ学習開始信号を出力する(プロットB1参照)。
【0095】
また、
図4に示す例では、学習初期回転数1350rpmに収束したときの発電用モータジェネレータ14のトルク6.5Nm(プロットB1参照)は、線
図60Bにおけるエンジン回転数1350rpmに対応するトルク7Nm未満である。このため、学習制御部42は、発電用モータジェネレータ14の制御を回転追従制御から目標トルク7Nmに維持するトルク維持制御に切替える。トルク維持制御に切替えられることで、発電用モータジェネレータ14のトルクは目標トルク7Nmに制御される(プロットB2参照)。
【0096】
発電用モータジェネレータ14のトルクが目標トルク7Nmに維持されることで、エンジントルクは低下する(プロットB4参照)。このため、エンジンECU32は、トルクを下げる方向すなわちスロットルを閉じる方向に学習モデル32Aを学習することができる。エンジントルクは発電用モータジェネレータ14のトルクより低いため、エンジン回転数は低下し、エンジン出力の釣り合う回転数に収束する。例えば、エンジン回転数は、1150rpmに収束する(プロットB5参照)。
【0097】
発電用モータジェネレータ14のトルクが目標トルク7Nmに維持された状態で、エンジンECU32は、目標回転数に収束するようにスロットル開度を調整して学習モデル32Aを学習する。この学習により、エンジン回転数が目標回転数1250rpmに収束する(プロットB6参照)。エンジン回転数が目標回転数1250rpmに収束すると、学習制御部42は、エンジンECU32から学習終了信号を受付ける。
【0098】
学習終了信号を受付けると、学習制御部42は、トルク維持制御から回転追従制御への切替えを表す第2切替信号を、エンジンECU32および発電機ECU34へ出力する。
【0099】
このように、エンジン回転数が学習初期回転数に収束したときの発電用モータジェネレータ14のトルクが閾値トルク以上である場合、エンジンECU32は、トルクを下げる方向すなわちスロットルを閉じる方向に学習モデル32Aを学習することができる。また、エンジンECU32は、学習する少なくとも一部の期間、発電用モータジェネレータ14のトルクが目標トルクで維持された状態で学習モデル32Aを学習することができる。
【0100】
図5は、エンジン回転数とトルクとの関係の一例を示す線図である。横軸は、内燃機関12のエンジン回転数を表す。縦軸は、内燃機関12および発電用モータジェネレータ14のトルクを表す。
【0101】
図5には、内燃機関12のエンジン回転数が学習初期回転数に収束したときの発電用モータジェネレータ14のトルクが、閾値トルク未満である場合の一例を示す。
【0102】
【0103】
内燃機関12の学習条件が整い、車両1がHEV走行からEV走行へ切替可能な状態となった場面を想定する。発電機ECU34は、学習制御部42から学習初期回転数のエンジン回転数となる回転追従制御を指示する指示信号を受付ける。具体的には、例えば、学習初期回転数が、目標回転数1250rpmに所定回転数として100rpm加算した1350rpmであった場合を想定して説明を続ける。発電機ECU34は、学習初期回転数1350rpmとなるように発電用モータジェネレータ14の回転を制御することで、内燃機関12のエンジン回転数を制御する。
【0104】
発電用モータジェネレータ14による回転追従制御によって、エンジン回転数およびトルクは、例えば、動作線に沿った走行であるエンジン回転数1400rpm,エンジントルク50Nmの状態から、エンジン回転数1350rpm,発電用モータジェネレータ14のトルク5.5Nmの状態に収束する(プロットC1参照)。
【0105】
学習制御部42は、エンジン回転数が学習初期回転数1350rpmに収束したときの発電用モータジェネレータ14のトルク5.5Nmと閾値トルクとを比較する。
【0106】
図5に示す例の場合、内燃機関12のエンジン回転数が学習初期回転数1350rpmに収束したときの発電用モータジェネレータ14のトルク5.5Nmは、線
図60Cにおけるエンジン回転数1350rpmに対応するトルク5.9Nm未満である。
【0107】
このため、学習制御部42は、目標回転数から所定回転数減算した減算回転数のエンジン回転数となる回転追従制御を指示する指示信号を発電機ECU34へ出力する。
図5に示す例では、減算回転数が、目標回転数1250rpmから所定回転数として50rpm減算した1250rpmであった場合を想定して説明を続ける。発電機ECU34は、学習初期回転数1250rpmとなるように発電用モータジェネレータ14の回転を制御することで、内燃機関12のエンジン回転数を制御する。
【0108】
発電用モータジェネレータ14による回転追従制御によってエンジン回転数が減算回転数1200rpmに収束すると(プロットC2参照)、学習制御部42は、エンジンECU32へ学習開始信号を出力する(プロットC2参照)。
【0109】
なお、
図5に示す例では、学習初期回転数1350rpmに収束したときの発電用モータジェネレータ14のトルク5.5Nm(プロットC1参照)は、線
図60Cにおけるエンジン回転数1350rpmに対応するトルク5.9Nm未満である。そこで、学習制御部42は、発電用モータジェネレータ14のトルクが目標トルク7Nmとなるまで回転追従制御を継続するように、発電機ECU34を制御する。発電機ECU34は、発電用モータジェネレータ14のトルクが目標トルク7Nmとなるまで回転追従制御を継続する。
【0110】
このため、エンジンECU32は、目標回転数より回転数の低い減算回転数から目標回転数および目標トルクのエンジン出力を実現する方向に向かって、エンジントルクを上げる方向、すなわちスロットルを開く方向に学習を進めることとなる。
【0111】
スロットルを開く方向への学習が進行することで、線
図50および線
図52の各々のプロットC2からプロットC3への推移に示されるように、エンジントルクが上昇し、エンジントルクの上昇に伴って発電用モータジェネレータ14のトルクも上昇する。
【0112】
発電用モータジェネレータ14のトルクが目標トルク7Nmに到達すると(プロットC3参照)、学習制御部42は、発電用モータジェネレータ14の制御を回転追従制御から目標トルク7Nmに維持するトルク維持制御に切替える。詳細には、学習制御部42は、発電用モータジェネレータ14のトルクが目標トルクとなったときに、回転追従制御からトルク維持制御への第1切替信号を発電機ECU34へ出力する。第1切替信号を受付けた発電機ECU34は、回転追従制御からトルク維持制御へ切替え、目標トルク7Nmを維持するように発電用モータジェネレータ14を制御する。このため、発電用モータジェネレータ14のトルクは、目標トルク7Nmに維持される。
【0113】
なお、回転追従制御からトルク維持制御への切替えによってエンジン回転数が所定回転数以下にまで下がる場合には、エンジンECU32は、学習を終了すればよい。
【0114】
発電用モータジェネレータ14のトルクが目標トルク7Nmに維持された状態で、エンジンECU32は、目標回転数に収束するようにスロットル開度を調整して学習モデル32Aを学習する。この学習により、エンジン回転数が目標回転数1250rpmに収束する(プロットC4参照)。エンジン回転数が目標回転数1250rpmに収束すると、学習制御部42は、エンジンECU32から学習終了信号を受付ける。
【0115】
学習終了信号を受付けると、学習制御部42は、トルク維持制御から回転追従制御への切替えを表す第2切替信号を、エンジンECU32および発電機ECU34へ出力する。
【0116】
このように、エンジン回転数が学習初期回転数に収束したときの発電用モータジェネレータ14のトルクが閾値トルク未満である場合、エンジンECU32は、トルクを上げる方向すなわちスロットルを開く方向に学習モデル32Aを学習することができる。また、エンジンECU32は、学習する少なくとも一部の期間、発電用モータジェネレータ14のトルクが目標トルクで維持された状態で学習モデル32Aを学習することができる。
【0117】
次に、本実施形態の車両用制御装置10で実行する情報処理の流れの一例を説明する。
【0118】
図6は、本実施形態の車両用制御装置10で実行される情報処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0119】
学習制御部42は、エンジンECU32から学習要求信号を受付ける(ステップS100)。エンジンECU32は、学習条件が整ったときに学習要求信号を学習制御部42へ出力する。学習制御部42は、エンジンECU32から学習要求信号を受付ける。
【0120】
学習制御部42は、HEV走行からEV走行へ切替可能な状態となったことを表す切替可能信号をHEV_ECU40から受付ける(ステップS102)。
【0121】
ステップS100およびステップS102の処理によって、学習制御部42は、内燃機関12の学習条件が整い、車両1がHEV走行からEV走行へ切替可能な状態となったと判断する。
【0122】
次に、学習制御部42は、回転追従制御を継続し、学習初期回転数のエンジン回転数となる回転追従制御を指示する指示信号を発電機ECU34へ出力する(ステップS104)。ステップS104の処理によって、発電機ECU34は、目標回転数に所定回転数を加算した回転数である学習初期回転数のエンジン回転数となるように、発電用モータジェネレータ14を制御する。
【0123】
学習制御部42は、内燃機関12のエンジン回転数が学習初期回転数に収束したと判断するまで(ステップS106:Yes)、否定判断(ステップS106:No)を繰り返す。学習制御部42は、ステップS106で肯定判断すると(ステップS106:Yes)、ステップS108へ進む。
【0124】
ステップS108では、学習制御部42は、エンジン回転数が学習初期回転数に収束したときの発電用モータジェネレータ14のトルクが閾値トルク以上であるか否かを判断する(ステップS108)。ステップS108で肯定判断した場合(ステップS108:Yes)、後述するステップS112へ進む。
【0125】
ステップS108で否定判断した場合(ステップS108:No)、ステップS110へ進む。ステップS110では、学習制御部42は、目標回転数から所定回転数減算した減算回転数のエンジン回転数となる回転追従制御を指示する指示信号を発電機ECU34へ出力する。そして、学習制御部42は、発電用モータジェネレータ14による減算回転数への回転追従制御によってエンジン回転数が減算回転数に収束したと判断(ステップS110:Yes)するまで、否定判断(ステップS110:No)を繰り返す。ステップS110で肯定判断すると(ステップS110:Yes)、ステップS112へ進む。
【0126】
ステップS112では、学習制御部42は、エンジンECU32へ学習開始信号を出力する(ステップS112)。
【0127】
次に、学習制御部42は、発電用モータジェネレータ14のトルクが目標トルクに到達したと判断(ステップS114:Yes)するまで、否定判断(ステップS114:No)を繰り返す。発電用モータジェネレータ14のトルクが目標トルクに収束すると(ステップS114:Yes)、ステップS116へ進む。
【0128】
ステップS116では、学習制御部42は、回転追従制御からトルク維持制御への第1切替信号を発電機ECU34へ出力する(ステップS116)。第1切替信号を受付けた発電機ECU34は、回転追従制御からトルク維持制御へ切替え、目標トルクを維持するように発電用モータジェネレータ14を制御する。ステップS116の処理によって、発電用モータジェネレータ14の制御が回転追従制御から目標トルクに維持するトルク維持制御に切替えられる。
【0129】
このため、エンジンECU32は、学習モデル32Aを学習する少なくとも一部の期間、発電用モータジェネレータ14のトルクが目標トルクで維持された状態で学習モデル32Aを学習することができる。
【0130】
次に、学習制御部42は、学習終了または学習中断か否かを判断する(ステップS118)。学習制御部42は、ステップS118で肯定判断(ステップS118:Yes)するまで、否定判断(ステップS118:No)を繰り返す。このため、学習モデル32Aの学習は、ステップS118で肯定判断(ステップS118:Yes)するまで継続される。ステップS118で肯定判断すると(ステップS118:Yes)、ステップS120へ進む。
【0131】
ステップS120では、学習制御部42は、トルク維持制御から回転追従制御への切替えを表す第2切替信号を、エンジンECU32および発電機ECU34へ出力する(ステップS120)。そして、本ルーチンを終了する。
【0132】
以上説明したように、本実施形態の車両用制御装置10は、車両1に設けられている。車両1は、駆動輪22へ駆動力を供給し回生制動により発電する走行用モータジェネレータ16と、内燃機関12により駆動され発電する発電用モータジェネレータ14と、走行用モータジェネレータ16および前記発電用モータジェネレータ14によって充放電される蓄電装置18と、を備える。すなわち、車両用制御装置10は、シリーズ方式のハイブリッド車両に設けられている。車両用制御装置10は、学習制御部42を備える。学習制御部42は、内燃機関12を制御するエンジンECU32が内燃機関12のエンジン回転数と目標回転数とのずれを補正するためのスロットル開度の補正量を学習する少なくとも一部の期間、発電用モータジェネレータ14のトルクを所定トルクに制御する。
【0133】
ここで、従来のシリーズ方式のハイブリッド車両でコンベ車と同様のスロットル開度の補正量の学習を行うと、発電用モータジェネレータ14と内燃機関12の双方でエンジン回転数を制御することとなる。このため、従来技術では、内燃機関12のスロットル開度の補正量を正しく学習することは困難であった。
【0134】
一方、本実施形態の車両用制御装置10では、学習制御部42は、エンジンECU32が内燃機関12のエンジン回転数と目標回転数とのずれを補正するためのスロットル開度の補正量を学習する少なくとも一部の期間、発電用モータジェネレータ14のトルクを所定トルクに制御する。
【0135】
このため、エンジンECU32による学習の少なくとも一部の期間、発電用モータジェネレータ14のトルクを一定とすることができ、学習の少なくとも一部の期間、発電用モータジェネレータ14と内燃機関12の双方でエンジン回転数を制御することが抑制される。このため、エンジンECU32は、発電用モータジェネレータ14によるエンジン回転数の制御が抑制された状態で学習を行うことができる。このように、本実施形態の車両用制御装置10では、学習中に内燃機関12と発電用モータジェネレータ14の双方でエンジン回転数が制御されることが抑制されることから、スロットル開度の補正量の学習精度の低下を抑制することができる。
【0136】
従って、本実施形態の車両用制御装置10は、シリーズ方式のハイブリッド車両であっても、内燃機関12のスロットル開度の補正量を高精度に学習することができる。
【0137】
また、本実施形態の車両用制御装置10では、内燃機関12のスロットル開度の補正量を高精度に学習することができるため、結果として動作線から外れた条件で車両1が走行することが抑制される。このため、本実施形態の車両用制御装置10は、上記効果に加えて、燃費悪化を抑制することができる。
【0138】
また、本実施形態の車両用制御装置10は、新たな学習モデルを構築することなく、既存の学習モデル32Aを用いて内燃機関12のスロットル開度の補正量を高精度に学習することができる。このため、本実施形態の車両用制御装置10は、コンベ車にも適用可能であり、適合工数の短縮を図ることができる。
【0139】
なお、本実施形態では、学習初期回転数として、目標回転数に所定回数を加算した回転数を用いる形態を一例として説明した。しかし、学習初期回転数として、目標回転数から所定回数を減算した回転数を用いてもよい。
【0140】
また、本実施形態では、所定トルクが目標トルクである形態を一例として説明した。しかし、学習制御部42は、エンジンECU32による学習の少なくとも一部の期間、発電用モータジェネレータ14のトルクを所定トルクで維持するように制御すればよく、所定トルクは目標トルクに限定されない。
【0141】
本実施形態の車両用制御装置10で実行される上記各処理を実行するためのプログラムは、HDDに記憶されていてもよい。また、本実施形態の車両用制御装置10で実行される上記各処理を実行するためのプログラムは、ROM11Bに予め組み込まれて提供されていてもよい。
【0142】
また、上記実施形態の車両用制御装置10で実行される上記処理を実行するためのプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM、CD-R、メモリカード、DVD(Digital Versatile Disc)、フレキシブルディスク(FD)などのコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶されてコンピュータプログラムプロダクトとして提供されるようにしてもよい。また、本実施形態の車両用制御装置10で実行される上記処理を実行するためのプログラムを、インターネットなどのネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するようにしてもよい。また、本実施形態の車両用制御装置10で実行される上記処理を実行するためのプログラムを、インターネットなどのネットワーク経由で提供または配布するようにしてもよい。
【0143】
なお、上記には、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態およびその変形は、発明の範囲および要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0144】
1 車両
10 車両用制御装置
12 内燃機関
14 発電用モータジェネレータ
16 走行用モータジェネレータ
18 蓄電装置
32 エンジンECU
32A 学習モデル
42 学習制御部