(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】難燃性に優れた熱硬化性発泡フォームの製造方法およびこれを用いた熱硬化性発泡フォーム
(51)【国際特許分類】
C08G 18/00 20060101AFI20240321BHJP
C08G 18/16 20060101ALI20240321BHJP
C08G 18/40 20060101ALI20240321BHJP
C08G 18/76 20060101ALI20240321BHJP
C08G 101/00 20060101ALN20240321BHJP
【FI】
C08G18/00 K
C08G18/16
C08G18/40 018
C08G18/76 007
C08G101:00
(21)【出願番号】P 2021188629
(22)【出願日】2021-11-19
(62)【分割の表示】P 2021519771の分割
【原出願日】2019-10-11
【審査請求日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】10-2018-0121633
(32)【優先日】2018-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515015746
【氏名又は名称】キョン ドン ウォン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】KYUNG DONG ONE CORPORATION
【住所又は居所原語表記】22,Gukhoe-daero 76-gil,Yeongdeungpo-gu,Seoul 07238,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【氏名又は名称】山田 勇毅
(74)【代理人】
【識別番号】100114177
【氏名又は名称】小林 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】ユン,ジョン ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】イ,サン ユン
(72)【発明者】
【氏名】ナム,テ ウ
【審査官】谷合 正光
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0227748(US,A1)
【文献】特開2007-009205(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02881413(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00
C08G 18/16
C08G 18/40
C08G 18/76
C08G 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
難燃性に優れた熱硬化性発泡フォームをなす発泡溶液であって、
ポリエステルポリオールまたはポリエーテルポリオールのうちの1種以上のポリオール系化合物と、
三量化触媒またはイソシアヌレート化合物のうちの1種以上と、水、整泡剤、難燃剤、および触媒を含む混合物と、
前記ポリオール系化合物、前記混合物、およびナノクレイからなる混合
溶液であって、前記混合溶液100 重量%に対する含有量が1~10重量%であるナノクレイを含むナノクレイ-ポリオールの層間化合物に、超音波または100~300MPaの高圧処理されることにより得られた混合溶液と、
発泡剤と
を含み
前記
ポリオール系化合物と
前記混合物が
分散したナノクレイの層間に挿入されて、ウレタン構造、ウレア構造、またはイソシアヌレート
構造のうちの1種以上の構造を有するナノクレイ-ポリオールの層間化合物の分子量および体積が増加し、前記
分散したナノクレイの
層間がさらに拡張されて剥離が起こることを特徴とする、発泡溶液。
【請求項2】
前記混合溶液の粘度が5,000 cps以下であることを特徴とする請求項1に記載の難燃性に優れた熱硬化性発泡フォームをなす発泡溶液。
【請求項3】
前記ナノクレイは、真密度が1.5~3 g/cm
3および平均粒径(d50)が30 μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の難燃性に優れた熱硬化性発泡フォームをなす発泡溶液。
【請求項4】
前記三量化触媒は、3級アミン、トリアジン、および金属塩三量化触媒を含み、前記金属塩三量化触媒は、有機カルボン酸のアルカリ金属塩であることを特徴とし、前記有機カルボン酸は酢酸または2-エチルヘキサン酸、前記アルカリ金属はカリウムまたはナトリウムであることを特徴とする請求項1に記載の難燃性に優れた熱硬化性発泡フォームをなす発泡溶液。
【請求項5】
前記イソシアヌレート化合物は、トリアリルイソシアヌレート、トリス(2,3-エポキシプロピル)イソシアヌレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2-カルボキシエチル)イソシアヌレート、トリス[3-(トリメトキシ)プロピル]イソシアヌレート、およびトリス[2-(3-メルカプトプロピオニルオキシ)エチル]イソシアヌレートの中から選択された少なくともいずれか1つであることを特徴とする請求項1に記載の難燃性に優れた熱硬化性発泡フォームをなす発泡溶液。
【請求項6】
前記ナノクレイは、モンモリロナイト、ベントナイト、ヘクトライト、サポナイト、バイデライト、ノントロナイト、雲母、バーミキュライト、カネマイト、マガダイト、ケニヤアイト、カオリナイト、スメクタイト、イライト、クロライト、ムスコバイト、パイロフィライト、アンチゴライト、セピオライト、イモゴライト、ソボカイト、ナクライト、アナウキサイト、絹雲母、レディカイト、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される少なくともいずれか1つであることを特徴とする請求項1に記載の難燃性に優れた熱硬化性発泡フォームをなす発泡溶液。
【請求項7】
前記ナノクレイは、層間にNa
+イオン、Ca
++イオン、酸処理されるか、末端にヒドロキシ基(-OH)を有するアルキルアンモニウムまたはアルキルホスホニウム有機化剤イオンで置換された親水性のナノクレイ、疎水のアルキルアンモニウムまたはアルキルホスホニウム有機化剤イオンで置換された疎水性のナノクレイ、および前記親水性のナノクレイと前記疎水性のナノクレイとの組み合わせからなる群より選択される少なくともいずれか1つであることを特徴とする請求項1に記載の難燃性に優れた熱硬化性発泡フォームをなす発泡溶液。
【請求項8】
前記ナノクレイは、CNTと組み合わせて使用することを特徴とする請求項1に記載の難燃性に優れた熱硬化性発泡フォームをなす発泡溶液。
【請求項9】
前記ナノクレイの層間にシランカップリングエージェントまたはこれらの組み合わせからなる群より選択される1種を追加的に含むことを特徴とする請求項1に記載の難燃性に優れた熱硬化性発泡フォームをなす発泡溶液。
【請求項10】
前記シランカップリングエージェントは、アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、(3-トリメトキシシリルプロピル)ジエチレンアミン、ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、およびビス(トリメトキシシリル)エタンの中から選択された少なくともいずれか1つであることを特徴とする請求項9に記載の難燃性に優れた熱硬化性発泡フォームをなす発泡溶液。
【請求項11】
前記超音波は、20 kHZ基準200~3000 Wを加えることを特徴とする請求項1に記載の難燃性に優れた熱硬化性発泡フォームをなす発泡溶液。
【請求項12】
前記高圧処理の圧力は、高圧分散機により加える100~300MPaの圧力であることを特徴とする 請求項1に記載の難燃性に優れた熱硬化性発泡フォームをなす発泡溶液。
【請求項13】
前記発泡剤の沸点以下で前記発泡剤が添加されていることを特徴とする請求項1に記載の難燃性に優れた熱硬化性発泡フォームをなす発泡溶液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性発泡フォームの製造方法およびこれを用いた熱硬化性発泡フォームに関し、さらに詳しくは、難燃性に優れた建築用ポリウレタンフォームを提供するために、超音波を用いてポリオール系化合物にナノクレイを混合し、イソシアネート系化合物を添加し、ポリオール系化合物には三量化触媒またはイソシアヌレート化合物を混合してイソシアヌレート構造が形成されるようにする、難燃性に優れた熱硬化性発泡フォームの製造方法およびこれを用いた熱硬化性発泡フォームに関する。
【背景技術】
【0002】
大韓民国国土交通部では、「建築物の避難/防火構造等の基準に関する規則」を改正して建築物仕上げ材料の火災安定性基準を大幅に強化し、これを2016年4月から施行した。特に、最近発生した大型火災事故により多くの人命被害と財産被害が発生し、これによって火災安定性および断熱性に優れた断熱材が注目を集めているが、このような要求にも難燃性能に優れた断熱材製造技術およびこれを活用した製品の供給が円滑でないのが、昨今の現実である。建築物断熱材には、EPS(Expanded polystyrene)フォーム、ガラス繊維、フェノールフォーム、ポリウレタン(以下、「PU」)、およびポリイソシアヌレート(以下、「PIR」)フォームなどの素材が使用されている。EPSフォームは、最も普遍的な断熱材であるが、火に燃えやすくて大型火災事故の主因と指摘されている。ガラス繊維は、断熱性に劣り、人体に有害な物質と指定されて使用が限られている状態である。フェノールフォームは、断熱性および難燃性能に優れた有機素材断熱材として注目されているが、吸湿時に断熱性が非常に低下し、酸発生により周辺の建築副資材が腐食する問題がある。また、建築資材の被着面との付着性に劣り施工性が低下する。PUおよびPIRフォームは、断熱性能、耐水性、加工性、施工性など多方面で優れているが、難燃性能が比較的低くて、火災時に火の拡散を防止する機能に相対的に劣る問題点がある。
【0003】
PUおよびPIRフォーム関連業界では、これらの欠点として浮き彫りになっている難燃性能を解決しようとする努力が、最近活発に進められている。素材を難燃化させる方法は多様であるが、その一つが、燃焼時、高温によって膨張を誘導して火炎から遮断膜を形成させる膨張剤の適用である。膨張剤は、有機膨張剤と無機膨張剤とに区分することができる。有機膨張剤は比重が低く、前記PUまたはPIRのような有機素材との相溶性が高くて加工性が高い。しかし、有機質の特性上、燃焼しやすくて難燃性能に弱い。無機膨張剤は、難燃性能に優れている。しかし、比重が高く、有機素材との異質感が高くて沈殿のような相分離が発生しやすい。そして、燃焼時、膨張により火炎を遮断するものの一時的であり、持続的に火炎を加えると溶融して発泡体が崩壊するので、難燃性能は再度低下する。素材を難燃化させるもう一つの方法は、難燃剤を添加する方法である。有機系難燃剤は、燃焼時、人体に有害な気体が発生するという欠点がある。無機系難燃剤は、機械的、物理的特性が低下する問題がある。また、これら難燃剤の導入だけでは、現在要求される建築物仕上げ材料の火災安定性を満足させるにはずいぶん足りない。
【0004】
上記の問題を解決するためには、付加される難燃剤または難燃添加物によって機械的、物理的特性を維持しながら最大限に難燃性能を引き上げることが重要である。最近は、多様なナノ粒子が添加されたナノ複合材料が開発されており、特にこれら素材内へのナノクレイの適切な分散は一定水準以上の難燃性能を向上させるという研究結果が報告されている。ナノクレイによる難燃特性は、ナノクレイの挿入、剥離化により大きな縦横比を有するナノクレイ粒子がこれら樹脂との接触面積を増加させることにより、火災状況で熱を遮断し拡散を効果的に防止する作用によりその性能を発揮する。
【0005】
しかし、これらの素材内にナノクレイを効果的に分散させ、挿入、剥離化する技術を完壁に成し遂げなければ、ナノクレイは単純な無機難燃剤に過ぎなくなり、難燃性能の改善どころか、機械的、物理的性能を低下させる逆効果だけが発生しうる。また、根幹となる前記素材自体がある程度の難燃性は有していてこそその性能が極大化される。一部の海外企業および機関の研究者らの間では、PUの基本配合を根幹としてナノクレイを分散させ難燃性能を改善させようとする結果を導出しようとしたが、追加の工程費用に比べてその効果が顕著に低くて量産につながらず、研究だけで終わるような状況がたびたびあった。
【0006】
前記ナノクレイは、シリコン、アルミニウム、マグネシウム、酸素などの成分からなるシリカ四面体とアルミナ八面体の基本構造から、これらの板状結合により1:1または1:2の層状構造をなしている。各層の厚さが1~10 nm、長さが30~1000 nmであり、層間間隔は数Å(angstrom、1Å=10 nm)である構造を有している。
【0007】
前記ナノクレイの層間に樹脂を挿入および剥離する分散方法には、溶液分散法、溶融法、超音波法がある。溶液分散法は、液状でナノクレイが膨潤しながら層間拡張される時、樹脂をもって撹拌により層間挿入を誘導する方法である。この時の問題点は、ナノクレイが層間に作用するファンデルワールス(Van der Waals)引力で凝集されているため、挿入効率は非常に少ない上に、剥離はなおさら難しい。溶融法は、加工温度200 ℃以内の溶融が可能な熱可塑性樹脂を使用しなければならないという制限があるが、熱硬化性フォームは適用が難しい。超音波法は、一定水準以上の超音波を加えてナノクレイの層間を最大限に拡張させ、その間に樹脂を挿入および剥離する方法である。超音波強度の程度に応じてナノクレイの層間挿入や剥離効率が変化するので、制御は必ず必要である。
樹脂は液状でなければならず、粘度は一定水準を超えると効果が現れない。ナノクレイは有機化処理したとしても、最小限の水分を含有している。したがって、樹脂は水分と反応性があってはならず、反応性があれば不可逆的な経時変化を誘発して物性を阻害する余地がある。
【0008】
大韓民国特許出願10-2017-0085232、10-2011-0031592、10-2010-0082116、10-2007-0122780、10-2002-0083028、10-2002-0083066では、ナノクレイの層間に樹脂を挿入させるために溶液分散法を使用した。前述のように、ナノクレイは層間ファンデルワールス引力で凝集されているため、樹脂の挿入効率が低く、剥離はさらに難しいため、効果が十分ではない。大韓民国特許出願10-2007-0140846、10-2005-0012348、10-2005-0000687では、イソシアネート系樹脂にナノクレイを混合し、超音波を加えて前記樹脂の挿入を誘導した。しかし、イソシアネート系樹脂は、ナノクレイが含有する非常に少ない水分にも不可逆的反応するため、経時変化が発生する。前記ナノクレイを乾燥しても水分を完全に除去できず、完全乾燥したと仮定しても、ナノクレイの凝集により超音波だけでは挿入が困難になる。また、ナノクレイを用いて難燃性能を極大化しようとする本発明とは目的が異なる。
【0009】
特許文献1(大韓民国公開特許10-2015-0063990)では、三量化触媒を用いてイソシアヌレート構造を含む難燃性が向上した熱硬化性発泡体を提示した。前記熱硬化性発泡体の根幹となる素材としては優れているが、ナノクレイを溶液撹拌による分散方法で適用したため、効果を実現できずにむしろ低下させた。
一方、有機断熱材の難燃化技術は火災安全と規制が強化されている傾向を勘案する時、非常に重要である。ISO 5660-1による加熱試験開始後5分間の総重量減量が6.5 gを超えない単一素材で構成される断熱素材はどこにも見当たらない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】大韓民国公開特許10-2015-0063990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記の問題点を解決するためのものであって、超音波を用いてポリオール系化合物にナノクレイを混合し、イソシアネート系化合物を添加して、ナノクレイの分散した層間でポリオール系化合物とイソシアネート系化合物とが反応をし、その結果として生成された構造によってナノクレイの分散した層間がさらに拡張されて完全な剥離が起こるようにする難燃性に優れた熱硬化性発泡フォームの製造方法およびその製造方法を用いた熱硬化性発泡フォームを提供することを解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述した課題を解決するための手段として、
本発明の難燃性に優れた熱硬化性発泡フォームの製造方法は、
(1)三量化触媒またはイソシアヌレート化合物を混合したポリオール系化合物を用意するステップと、
(2)前記ポリオール系化合物、整泡剤、難燃剤、および触媒を含む混合物を製造するステップと、
(3)ナノクレイを混合して混合溶液を製造するステップと、
(4)超音波または高圧を加えてナノクレイの層間を分散させ、前記混合物がナノクレイの分散した層間に挿入されるステップと、
(5)発泡剤を添加するステップと、
(6)イソシアネート系化合物を添加するステップと、
(7)前記ナノクレイの分散した層間でポリオール系化合物およびイソシアネート系化合物がインサイチュ(In-situ)連鎖反応をするステップと、
(8)前記(7)ステップの結果として生成されたウレタン構造、ウレア構造、およびイソシアヌレート構造によって分子量および体積が急激に増加し、前記ナノクレイの分散した層間がさらに拡張されて剥離が起こるステップと、
を含むことを特徴とする。
【0013】
また、ポリオール系化合物は、ポリエーテルポリオールまたはポリエステルポリオールであることを特徴とする。
また、三量化触媒は、3級アミン、トリアジン、および金属塩三量化触媒を含み、前記金属塩三量化触媒は、有機カルボン酸のアルカリ金属塩であることを特徴とし、前記有機カルボン酸は酢酸または2-エチルヘキサン酸、前記アルカリ金属はカリウムまたはナトリウムであることを特徴とする。
【0014】
また、イソシアヌレート化合物は、トリアリルイソシアヌレート、トリス(2,3-エポキシプロピル)イソシアヌレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2-カルボキシエチル)イソシアヌレート、トリス[3-(トリメトキシ)プロピル]イソシアヌレート、およびトリス[2-(3-メルカプトプロピオニルオキシ)エチル]イソシアヌレートの中から選択された少なくともいずれか1つであることを特徴とする。
【0015】
また、ナノクレイは、含水率が0.5~10 %、真密度が1.5~3 g/cm3、および平均粒径(d50)が30μm以下であることを特徴とする。
また、ナノクレイは、前記混合溶液全100重量%対比、1~10重量%含まれていることを特徴とする。
また、ナノクレイは、モンモリロナイト、ベントナイト、ヘクトライト、サポナイト、バイデライト、ノントロナイト、雲母、バーミキュライト、カネマイト、マガダイト、ケニヤアイト、カオリナイト、スメクタイト、イライト、クロライト、ムスコバイト、パイロフィライト、アンチゴライト、セピオライト、イモゴライト、ソボカイト、ナクライト、アナウキサイト、絹雲母、レディカイト、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される少なくともいずれか1つであることを特徴とする。
【0016】
また、ナノクレイは、層間にNa+イオン、Ca++イオン、酸処理されるか、末端にヒドロキシ基(-OH)を有するアルキルアンモニウムまたはアルキルホスホニウム有機化剤イオンで置換された親水性のナノクレイであるか、疎水のアルキルアンモニウムまたはアルキルホスホニウム有機化剤イオンで置換された疎水性のナノクレイであるか、前記親水性のナノクレイと前記疎水性のナノクレイとの組み合わせからなる群より選択される少なくともいずれか1つであることを特徴とする。
【0017】
また、ナノクレイは、CNTと組み合わせて使用することを特徴とする。
また、ナノクレイの層間にシランカップリング剤またはこれらの組み合わせからなる群より選択される1種を含むことを特徴とする。
また、シランカップリング剤は、アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、(3-トリメトキシシリルプロピル)ジエチレンアミン、ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、およびビス(トリメトキシシリル)エタンの中から選択された少なくともいずれか1つであることを特徴とする。
【0018】
また、前記混合溶液の粘度が5000 cpsを超えないことを特徴とする。
また、前記(4)ステップの超音波は、20kHZ基準200~3000 Wを加えることを特徴とする。
また、前記(4)ステップの高圧は、高圧分散機により加える1000~3000 barの圧力であることを特徴とする。
【0019】
また、前記(5)ステップは、発泡剤の沸点以下で行われることを特徴とする。
また、イソシアネート系化合物は、m-MDI(単量体-メチレンジイソシアネート)、p-MDI(高分子-メチレンジシソシアネート)、TDI(トルエンジイソシアネート)、これらの誘導体またはこれらの混合物であることを特徴とする。
また、前記(5)ステップの後、結果物を基準として、前記(6)ステップのイソシアネート系化合物の混合比率が0.65~3.0重量比率であることを特徴とする。
また、前記熱硬化性発泡フォームは、密度が40 kg/m3以下であり、硬質、軟質または半硬質のフォームであることを特徴とする。
【0020】
また、前記熱硬化性発泡フォームは、ISO 5660-1試験法による5分間の燃焼後、試験片はチャーの発泡膨張により3mm以上高さが増加し、前記高さの増加したチャーの発泡状態は現状維持しながら総重量減量は6.5 gを超えないことを特徴とする。
本発明の難燃性に優れた熱硬化性発泡フォームは、前記難燃性に優れた熱硬化性発泡フォームの製造方法のいずれか1つの製造方法により製造されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明による難燃性に優れた熱硬化性発泡フォームを試験片として、ISO 5660-1による5分間の燃焼試験を行った後、前記試験片はチャー(char)の発泡膨張により3mm以上高さが増加し、高さの増加したチャーの発泡状態は現状維持しながら総重量減量は6.5 gを超えないことにより、難燃性に優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明における三量化触媒とポリオールがナノクレイの層間に挿入および剥離されるメカニズムを示す模式図である。
【
図2】本発明の熱硬化性発泡フォームのX線回折形態を示すグラフである。
【
図3】本発明の熱硬化性発泡フォームのインサイチュ(In-situ)連鎖反応メカニズムを示す図である。
【
図4】本発明の熱硬化性発泡フォームの燃焼後の膨張による高さの増加を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明の難燃性に優れた熱硬化性発泡フォームおよびその製造方法に関してより詳しく説明する。
本発明は、(1)三量化触媒またはイソシアヌレート化合物を混合したポリオール系化合物を用意するステップと、
(2)前記ポリオール系化合物、整泡剤、難燃剤、および触媒を含む混合物を製造するステップと、
(3)ナノクレイを混合して混合溶液を製造するステップと、
(4)超音波または高圧を加えてナノクレイの層間を分散させ、前記混合物がナノクレイの分散した層間に挿入されるステップと、
(5)発泡剤を添加するステップと、
(6)イソシアネート系化合物を添加するステップと、
(7)前記ナノクレイの分散した層間でポリオール系化合物およびイソシアネート系化合物がインサイチュ(In-situ)連鎖反応をするステップと、
(8)前記(7)ステップの結果として生成されたウレタン構造、ウレア構造、およびイソシアヌレート構造によって分子量および体積が急激に増加し、前記ナノクレイの分散した層間がさらに拡張されて剥離が起こるステップと、を含むことを特徴とする難燃性に優れた熱硬化性発泡フォームの製造方法に関する。
【0024】
図1を参照して、より具体的には、本願発明の難燃性に優れた熱硬化性発泡フォームの製造方法について説明する。
まず、(1)ステップとして、三量化触媒またはイソシアヌレート化合物を混合したポリオール系化合物を用意する。
前記ポリオール系化合物は、ポリエーテルポリオールまたはポリエステルポリオールであってもよい。
【0025】
前記ポリエーテルポリオールは、エチレングリコール、1,2-プロパングリコール、1,3-プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、グリセロール、トリメチロールプロパン、1,2,3-ヘキサントリオール、1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールメタン、ペンタエリスリトール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ポリブチレングリコール、ソルビトール、スクロース、ヒドロキノン、レゾルシノール、カテコール、およびビスフェノールからなる群より選択された少なくとも1つを、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、またはこれらの混合物と反応させて重合することにより製造されたものであってもよい。
【0026】
前記ポリエステルポリオールは、無水フタル酸またはアジピン酸を、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、またはこれらの混合物と重合させて製造されたものであってもよい。
本発明のポリオール系化合物を用いてイソシアヌレート構造を形成させるためには、前記ポリオール系化合物に三量化触媒を混合するか、前記ポリオール系化合物にイソシアヌレート化合物を混合する。
【0027】
前記ポリオール系化合物に混合する三量化触媒は、金属塩が活性化剤の役割をしてイソシアネート化合物が自発的にイソシアヌレート反応をするように誘導するものであって、3級アミン、トリアジン、および金属塩三量化触媒から構成されることを特徴とする。前記金属塩三量化触媒は、有機カルボン酸のアルカリ金属塩であることを特徴とし、前記有機カルボン酸のアルカリ金属塩中の前記有機カルボン酸は、酢酸または2-エチルヘキサン酸であり、前記アルカリ金属は、カリウムまたはナトリウムであることを特徴とする。
【0028】
前記ポリオール系化合物に混合するイソシアヌレート化合物は、トリアリルイソシアヌレート、トリス(2,3-エポキシプロピル)イソシアヌレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2-カルボキシエチル)イソシアヌレート、トリス[3-(トリメトキシ)プロピル]イソシアヌレート、およびトリス[2-(3-メルカプトプロピオニルオキシ)エチル]イソシアヌレートの中から選択された少なくともいずれか1つであってもよい。
【0029】
(2)ステップとして、前記(1)ステップで用意された三量化触媒またはイソシアヌレート化合物を混合したポリオール系化合物に、整泡剤、難燃剤、触媒、および水などを混合して混合物を製造する。
前記整泡剤は、発泡セルの形成時、表面張力を調節して発泡セルの大きさが過度に大きくなることを抑制し、発泡セルの形成を安定化させる役割をする。整泡剤は、シリコーン系整泡剤と非シリコーン系整泡剤とに分けられ、前記シリコーン系整泡剤は、ケイ素をベースとする共重合体であって、これを含むか組み合わされたものをすべて使用することができ、非シリコーン系整泡剤は、ジノニルフェノール、メチルグルコシド、メチルプロパンジオール、ビニルエーテルマレイン酸、植物性オイルなどで、これを含むか組み合わされたものをすべて使用することができる。
【0030】
前記難燃剤は、リン系難燃剤、金属水和物系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤、難燃助剤、およびこれらの混合物からなる群より選択された少なくともいずれか1つであってもよい。前記リン系難燃剤は、トリフェニルホスフェート、クレシルジフェニルホスフェート、イソプロピルフェニルジフェニルホスフェート、およびこれらの混合物からなる群より選択された少なくとも1つを含む。また、前記ハロゲン系難燃剤はデカブロモジフェニルオキシドまたはオクタブロモジフェニルオキシドを、前記難燃助剤はアンチモニートリオキシドを含む。
【0031】
前記触媒は、反応時間を調節するためのもので、ジメチルエタノールアミン(dimethylenol amine、DMEA)、ジメチルシクロヘキシルアミン(dimethylcyclohexyl amine、DMCHA)、ペンタメチレンジエチレントリアミン(pentamehyleneediethylene triamine、PMETA)、テトラメチレンヘキシルジアミン(tetramethylene hexyl diamine、TMHDA)、およびこれらの混合物からなる群より選択された少なくともいずれか1つであってもよい。
【0032】
(3)ステップとして、前記(2)ステップの混合物とナノクレイとを混合して混合溶液を製造する(
図1のa))。
前記ナノクレイは、イソシアネート系化合物に混合して使用することもできるが、イソシアネート系化合物はごく少ない水分にも不可逆的な反応をするため、親水性を有するナノクレイとの混合は、溶液の変質や経時変化を生じ、最終目的とする製品に物性の低下を生じるため、好ましくない。また、前記ナノクレイを完全乾燥したと仮定しても、乾燥過程で水分によって粒子間凝集されるため、後の超音波印加または高圧印加の過程でも分散効率が低下する。事実上、親水のナノクレイを有機化処理したとしても、本来の親水成分を完全に除去できない。したがって、(2)ステップのポリオール系化合物を含む混合物にナノクレイを混合することが好ましい。
【0033】
前記ナノクレイは、含水率0.5~10 %を維持することが好ましい。水分に対して膨潤特性を有するナノクレイは、含水率が0.5 %未満であれば、粒子間凝集されて分散が困難になる。しかし、前記含水率が10 %を超えると、前記混合されるポリオール系化合物の含水量が増加し、前記イソシアネート系化合物と反応後に物性が変化する。
前記ナノクレイは、真密度1.5~3 g/cm3を維持することが好ましい。前記真密度が1.5 g/cm3未満であれば、比表面積が高くなって吸湿が容易になり、3 g/cm3を超えると、荷重が高くなり、前記ポリオール系化合物と分散後にも沈殿が発生して物性の変化をもたらす。
【0034】
前記ナノクレイの平均粒径(d50)は、30μm以下のものを使用することが好ましく、前記平均粒径が30μmを超えると、密度が高くなって荷重による沈殿の危険がある。
前記ナノクレイは、前記混合物および前記ナノクレイが混合された前記混合溶液全100重量%対比、1~10重量%含まれる。1 %未満を使用する時、物性改善効果が得られず、10 %を超える時には、分散効率が低下して物性が低下する。
【0035】
前記ナノクレイは、モンモリロナイト、ベントナイト、ヘクトライト、サポナイト、バイデライト、ノントロナイト、雲母、バーミキュライト、カネマイト、マガダイト、ケニヤアイト、カオリナイト、スメクタイト、イライト、クロライト、ムスコバイト、パイロフィライト、アンチゴライト、セピオライト、イモゴライト、ソボカイト、ナクライト、アナウキサイト、絹雲母、レディカイト、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される少なくともいずれか1つである。
【0036】
前記ナノクレイは、有機化処理して使用することができる。これは、ナノクレイの層間の陽イオンをアルキルアンモニウムやアルキルホスホニウムイオンでイオン交換したものであるが、イオンの特性によって前記ナノクレイを疎水性や親水性で特性付与することができる。本発明で使用するナノクレイは、層状間にNa+イオン、Ca++イオン、酸処理されるか、末端にヒドロキシ基(-OH)を有するアルキルアンモニウムまたはアルキルホスホニウム有機化剤イオンで置換された親水性のナノクレイであるか、疎水のアルキルアンモニウムまたはアルキルホスホニウム有機化剤イオンで置換された疎水性のナノクレイであるか、または前記親水性のナノクレイと前記疎水性のナノクレイとの組み合わせからなる群より選択される少なくともいずれか1つのナノクレイを適用することができる。
【0037】
前記ナノクレイは、CNT(カーボンナノチューブ)と組み合わせて使用することができる。前記ナノクレイに前記CNTを組み合わせると、ポリオール樹脂中におけるこれらの分散性を増加させ、フォーム発泡時、セルを均一化して断熱性能を高める効果がある。ただし、前記CNTの種類と含有量については特に限定はない。
前記ナノクレイと前記混合物との混合は限定しないが、20~40℃、30 分~3時間、50~700 rpmの速度の条件下で行うことが好ましい。
前記(3)ステップの混合溶液は、その粘度が5000cps以下であることが好ましい。5000 cpsを超えると、次の工程である超音波または高圧を用いた分散工程で分散効率が低下する問題がある。
【0038】
(4)ステップとして、超音波または高圧を加えてナノクレイの層間を分散させ、前記混合物がナノクレイの分散した層間に挿入されるようにする(
図1のb))。
この時、シランカップリング剤またはこれらの組み合わせからなる群より選択される1種を添加することができる。前記シランカップリング剤は、有機-無機中間体であって、有機特性を有する前記混合物と無機特性を有する前記ナノクレイの異質感を解消させて、前記混合物の、ナノクレイの分散した層間への挿入がより容易となるように作用する。また、前記シランカップリング剤は、(3)ステップに予め混合しても構わない。ただし、本発明では、含有量を限定しない。
【0039】
前記シランカップリング剤は、アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、(3-トリメトキシシリルプロピル)ジエチレンアミン、ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、およびビス(トリメトキシシリル)エタンの中から選択された少なくともいずれか1つを使用することができる。
前記混合溶液の用意が完了すると、超音波印加または高圧印加を進行させる。
【0040】
ナノクレイの層間に混合物を分散させるための超音波の強度は、20 kHZ基準200~3000 Wを加えることが好ましい。200 W未満を用いる時、分散効率が低下し、3000 Wを超える時、ナノクレイの損傷で物性が低下する問題がある。超音波を印加可能な容量は限定しないが、1 分あたり100 ml~20 Lであってもよいし、前記超音波の分散強度に応じて調節可能である。超音波を印加すると、振動と摩擦によって前記ナノクレイと前記ポリオール系化合物の温度が上昇しうる。したがって、温度は15~80 ℃の水準で制御する方が良いし、15 ℃未満では、分散効率が低下する問題があり、80 ℃を超えると、前記構成物中の一部が気化する問題があるので、好ましくない。
【0041】
ナノクレイの層間に混合物を分散させるための高圧は、高圧分散機により印加する。高圧分散機は、一定の大きさのチャンバ内に流体を入れ、高圧を印加して流体の分散を誘導する装置である。本発明では、高圧分散機により1000~3000 barの高圧を加える。1000 bar未満では、分散が低下して物性が低下し、3000 bar超過では、ナノクレイの毀損により物性が低下する。前記ナノクレイの層間への前記混合物の構成要素の円滑な挿入は、物性の測定により確認することができる。
【0042】
自然状態または有機化処理されたナノクレイの層間距離をdとすれば、超音波または高圧が加えられている間、振動と衝撃または圧力によって前記ナノクレイの層間拡張が起こるようになり、この時、拡張された層間に前記混合物の構成要素が挿入される。前記化合物が前記ナノクレイの層間に挿入が完了すると、それ以上超音波を印加しなくても、ナノクレイの層間に凝集が起こらない。このような超音波または高圧印加後のナノクレイの層間距離をd’とすれば、d<d’であり、ナノクレイの層間が拡張されたことを確認することができる。
【0043】
(5)ステップとして、発泡剤を添加する。前記発泡剤は、超音波または高圧分散前に混合すれば、振動および摩擦または圧力による熱で気化する問題がある。前記発泡剤を添加するステップは、発泡剤の沸点温度の下の温度で行われることが好ましく、発泡剤の沸点温度を超えると、これも発泡剤が気化する問題が発生しうる。前記発泡剤は、熱伝導率が低く安定性が高い物質が使用されることが好ましく、前記発泡剤は、シクロペンタン、クロロフルオロカーボン、イソペンタン、ノルマルペンタン、ヒドロクロロフルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、および水からなる群より選択された少なくともいずれか1つであってもよい。
【0044】
(6)ステップとして、イソシアネート系化合物を添加する。イソシアネート系化合物を混合し、高圧発泡機または低圧発泡機を用いて一定の大きさのモールドに注入するか、ミキシングガンにより適用しようとする被着面にスプレーして使用することができる。発泡装置は、Graco、Gusmer、Gras-craftなどの様々な装置を用いることができ、吐出圧力は50~200 bar、温度は30~70 ℃を維持しながら、前記ポリオール系化合物と前記イソシアネート系化合物との衝突と混合によるメカニズムで化学的活性化が起きて噴射することができる。
【0045】
前記イソシアネート化合物は特に限定せず、m-MDI(単量体-メチレンジイソシアネート)、p-MDI(高分子-メチレンジシソシアネート)、TDI(トルエンジイソシアネート)、これらの誘導体またはこれらの混合物などを使用することができる。
前記イソシアネート系化合物は、前記ナノクレイの層間に挿入されたポリオール系化合物側に流入すると、
図3のように、ウレタン反応、ウレア反応、および三量化触媒によるイソシアヌレート反応が同時的に発生するインサイチュ(In-Situ)連鎖反応をする(
図1のc))。これは、本発明の(7)ステップである。
前記(5)ステップの後、結果物を基準として、前記(6)ステップのイソシアネート系化合物の混合比率が0.65~3.0重量比率で混合される。前記混合比率が0.65 未満であるか、3.0を超えると、強度や難燃性などの物性が急激に低下する問題がある。
【0046】
(8)ステップとして、前記生成されたウレタン構造、ウレア構造、およびイソシアヌレート構造は、分子量および体積を急激に増加させて、前記ナノクレイの分散した層間距離をさらに拡張させて完全な剥離をなすように寄与する(
図1のd))。
このように製造された熱硬化性発泡フォームは、難燃性に優れかつ、密度40 kg/m
3以下を含む熱硬化性発泡フォームに対して、ISO 5660-1試験法による5分間の燃焼後、試験片はチャーの発泡膨張により3 mm以上高さが増加し、前記高さの増加したチャーの発泡状態は現状維持しながら総重量減量は6.5 gを超えなくなる。一般的な発泡フォームは燃焼後に体積が減少することが一般的であるが、本発明の熱硬化性発泡フォームは燃焼時に体積が膨張することにより、気密性が維持可能になってより優れた難燃性能を発揮し、さらにポリウレタン発泡フォームの外面に鉄板や銀箔などの難燃性を向上させる物質を追加的に付着しないことそのものだけでも難燃性と準不燃性能に非常に優れた効果がある。
【0047】
しかし、本発明とは異なり、前記ナノクレイが前記混合物中にて完全分散しなければ、前記密度は40 kg/m3を超えることがある。また、ISO 5660-1試験法による5分間の燃焼後、試験片は3 mm以上高さが増加しなくなり、総重量減量は6.5 gを超えるようになる。
前記本発明により製造された熱硬化性発泡フォームは、密度40kg/m3以下の範囲内で硬質、軟質または半硬質のフォームであってもよい。
【0048】
前記製造された熱硬化性発泡フォームに対して前記ナノクレイの層間距離を拡張させて剥離された状態をX線回折分析器を用いて確認することができ、これを
図2に示した。ナノクレイの層間距離はBragg’s law算式により求められ、層間拡張されないナノクレイをReferenceとして基準を取り、溶液分散法により製造されたフォームを図にて1)、超音波分散法により製造されたフォームを図にて2)と表記した。
2dsinθ=nλ(Bragg’s law)、
d:結晶面(ナノクレイ)間の距離、θ:入射したX線と結晶面との間の角度、λ:X線の波長
【0049】
一般的に、X線回折ピークの2θ値がナノクレイの層間距離を示すが、2θ値が減少するほど層間距離は増加し、完全剥離が起こるとピークが消えるようになる。したがって、本発明による熱硬化性発泡フォームは、超音波分散法でナノクレイの層間の間に混合物の構成物が1次的に挿入され、三量化触媒およびイソシアネート系化合物によるインサイチュ(In-Situ)連鎖反応時に完全な剥離をなしたことが、
図2を通して分かる。
【0050】
燃焼に対するメカニズムは
図4に示した。ナノクレイは板状の形態で分散しており、燃焼時に火炎と熱を遮断するバリアの役割をする。燃焼が始まると、表面にチャーが形成される。この時、発生するガスと水はナノクレイによって閉じ込められ、時間の経過とともにガスと水はさらに発生するが、結局は耐えられずにチャーが発泡する現象が現れる。炎は消火し、発泡したチャーはチャーの熱効果を極大化しながら3 mm以上高さが増加する。最終的に、難燃性はさらに増加して、前記試験法により最終重量減量は6.5 g以下になる。
【実施例】
【0051】
以下、具体的な実施例および比較例を通じて本発明を詳しく説明し、このような実施例は単に本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲を制限すると解釈されてはならない。
下記表1は実施例の配合比と分散方法を、下記表2および表3は比較例の配合比と分散方法を示す。
実施例1.
ナノクレイが含まれたポリオール系化合物の製造のために、ポリエステルポリオール80、ポリエーテルポリオール20重量%を基準として、水1.5、整泡剤0.7、リン系難燃剤20、触媒0.15、三量化触媒2.3、ナノクレイ3 重量%を入れて、25℃、150 RPMの条件下で30 min間撹拌した。そして、前記撹拌が完了した溶液を連続式超音波機器で1 分あたり6 Lの流量で20 kHz基準1500 Wを印加して分散させ、排出した。前記ナノクレイの分散が完了したポリオール系化合物に発泡剤(HCFC-141B)15 重量%を混合して100 RPMで10 分間撹拌し、発泡機B容器に入れた。発泡機A容器にはイソシアネート系化合物を投入した。前記溶液は120:100(A:B)の比率で発泡機を用いて金型に吐出して熱硬化性フォームを製造した。この時の溶液A、B容器の溶液温度は50 ℃であり、吐出圧力は100 barである。
【0052】
実施例2.
前記実施例1の方法で熱硬化性フォームを製造し、ナノクレイの量を5 重量%適用した。
実施例3.
前記実施例2の方法で熱硬化性フォームを製造し、前記実施例2の配合において三量化触媒を除いてイソシアヌレート化合物を3重量%添加した。そして、前記発泡機容器内のA溶液とB溶液の比率を100:100で適用した。
実施例4.
前記実施例2の方法で熱硬化性フォームを製造し、前記実施例2の配合においてイソシアヌレート化合物を3 重量%添加した。
実施例5.
前記実施例1の方法で熱硬化性フォームを製造し、ナノクレイが含まれたポリオール系化合物を、超音波方法ではない、高圧分散機の1500barの高圧条件で分散させた。
実施例6.
前記実施例2の方法で熱硬化性フォームを製造し、ナノクレイが含まれたポリオール系化合物を、超音波方法ではない、高圧分散機の1500barの高圧条件で分散させた。
【0053】
実施例7.
ナノクレイが含まれたポリオール系化合物の製造のために、ポリエステルポリオール80、ポリエーテルポリオール20重量%を基準として、水1、整泡剤1.2、リン系難燃剤20、触媒0.7、三量化触媒3.8、ナノクレイ3 重量%を入れて、25℃、150 RPMの条件下で30 min間撹拌した。そして、前記撹拌が完了した溶液を連続式超音波機器で1 分あたり6 L/minの流量で20 kHz基準1500 Wを印加して分散させ、排出した。前記ナノクレイの分散が完了したポリオール系化合物に発泡剤(HCFC-141B)23 重量%を混合して100 RPMで10 分間撹拌し、発泡機B容器に入れた。発泡機A容器にはイソシアネート系化合物を投入した。前記溶液は200:100(A:B)の比率で発泡機を用いて金型に吐出して熱硬化性フォームを製造した。この時の溶液A、Bの温度は50 ℃であり、吐出圧力は100 barである。
実施例8.
前記実施例7の方法で熱硬化性フォームを製造し、ナノクレイの量を5重量%適用した。
【0054】
比較例1
ナノクレイが含まれたポリオール系化合物の製造のために、ポリエステルポリオール80、ポリエーテルポリオール20重量%を基準として、水1.5、整泡剤0.7、リン系難燃剤20、触媒0.15、三量化触媒2.3、ナノクレイ3 重量%を入れて、25℃、150 RPMの条件下で30 min間撹拌した。そして、前記撹拌が完了した溶液を高速撹拌機で500 RPMで10 分間撹拌し、排出した。前記ナノクレイの分散が完了したポリオール系化合物に発泡剤(HCFC-141B)15 重量%を混合して100 RPMで10 分間撹拌し、発泡機B容器に入れた。発泡機A容器にはイソシアネート系化合物を投入した。前記溶液は120:100(A:B)の比率で発泡機を用いて金型に吐出して熱硬化性フォームを製造した。この時の溶液A、Bの温度は50 ℃であり、吐出圧力は100 barである。
【0055】
比較例2
前記比較例1の方法で熱硬化性フォームを製造し、ナノクレイが含まれたポリオール系化合物の分散を高速撹拌機5000 RPMの条件で10分間行った。
比較例3
前記比較例1の方法で熱硬化性フォームを製造し、ナノクレイが含まれたポリオール系化合物の分散を高速撹拌機5000 RPMの条件で30分間行った。
比較例4
前記比較例1の方法で熱硬化性フォームを製造し、ナノクレイが含まれたポリオール系化合物の分散を高速撹拌機8000 RPMの条件で30分間行った。
比較例5
前記比較例1の方法で熱硬化性フォームを製造し、比較例1のポリオール系化合物の配合においてナノクレイを除いて溶液を製造しており、前記ナノクレイが含まれていないので、別途の分散は行わなかった。
【0056】
比較例6
ポリオール系化合物の製造のために、ポリエステルポリオール80、ポリエーテルポリオール20 重量%を基準として、水1、整泡剤1.2、リン系難燃剤20、触媒0.7、三量化触媒3.8 重量%を入れて、25℃、150 RPMの条件下で30 min間撹拌した。しかる後、前記ポリオール系化合物に発泡剤(HCFC-141B)23 重量%を混合して100 RPMで10 分間撹拌し、発泡機B容器に入れた。発泡機A容器にはイソシアネート系化合物を投入した。前記溶液は200:100(A:B)の比率で発泡機を用いて金型に吐出して熱硬化性フォームを製造した。この時の溶液A、Bの温度は50 ℃であり、吐出圧力は100 barである。
【0057】
比較例7
ポリオール系化合物の製造のために、ポリエステルポリオール80、ポリエーテルポリオール20 重量%を基準として、水1、整泡剤1.2、リン系難燃剤20、触媒0.7、三量化触媒3.8を入れて、25 ℃、150RPMの条件下で30min間撹拌した。しかる後、前記ポリオール系化合物に発泡剤(HCFC-141B)23 重量%を混合して100 RPMで10 分間撹拌し、発泡機B容器に入れた。発泡機A容器にはイソシアネート系化合物を投入した。ただし、前記イソシアネート系化合物はナノクレイが5 重量%含まれたもので、これらの混合液は高速撹拌機5000 RPMで10 min間撹拌して使用した。前記溶液は200:100(A:B)の比率で発泡機を用いて金型に吐出して熱硬化性フォームを製造した。この時の溶液A、Bの温度は50 ℃であり、吐出圧力は100 barである。
【0058】
比較例8
前記比較例7の方法で熱硬化性フォームを製造し、前記比較例7のイソシアネート系化合物はナノクレイが5重量%含まれたもので、これらの混合液は高速撹拌機5000RPMで30 min間撹拌して使用した。
比較例9
前記比較例7の方法で熱硬化性フォームを製造し、前記比較例7のイソシアネート系化合物はナノクレイが5重量%含まれたもので、これらの混合液は高速撹拌機10000RPMで30 min間撹拌して使用した。
【0059】
比較例10
前記比較例7の方法で熱硬化性フォームを製造し、前記比較例7のイソシアネート系化合物はナノクレイが5重量%含まれたもので、これらの混合液は連続式超音波機器で1分あたり6 Lの流量で20kHz基準1500 Wを印加して分散させて使用した。
比較例11
前記比較例7の方法で熱硬化性フォームを製造し、前記比較例7のポリオール系化合物およびイソシアネート系化合物はそれぞれナノクレイが2.5 重量%含まれたもので、これらの混合液は連続式超音波機器で1分あたり6 Lの流量で20kHz基準1500 Wを印加して分散させて使用した。
【0060】
比較例12
前記比較例1の方法で熱硬化性フォームを製造し、比較例1のポリオール系化合物の配合において三量化触媒を除いた。
比較例13
前記比較例1の方法で熱硬化性フォームを製造し、比較例1のポリオール系化合物の配合においてナノクレイの代わりに無機膨張剤3重量%を添加した。
【0061】
比較例14
前記比較例5の方法で熱硬化性フォームを製造し、比較例5のポリオール系化合物の配合においてナノクレイの代わりに無機膨張剤3重量%を添加した。
比較例15
前記比較例5の方法で熱硬化性フォームを製造し、比較例5のポリオール系化合物の配合においてナノクレイの代わりに有機膨張剤3重量%を添加した。
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
試験1.
本発明により製造された実施例と対照される比較例の熱硬化性発泡フォームの密度はISO 845に基づいて測定した。
試験2.
本発明により製造された実施例と対照される比較例の熱硬化性発泡フォームの自己消火時間と重量減少はISO 5660-1燃焼試験に基づいて試験を行い、前記重量減少は5 分間燃焼後に試験前に比べた燃焼後の試験片の重量減量を測定した。試験片のサイズは100*100*50Tであり、綿材を含まない単一素材でのみ構成するようにした。
【0066】
試験3.
本発明により製造された実施例と対照される比較例の熱硬化性発泡フォームの熱伝導率はASTM C 518に基づいて測定した。
試験4.
本発明により製造された実施例と対照される比較例の熱硬化性発泡フォームの燃焼後の高さ増加は、下記のように測定した。また、その形状は
図4と表4~9から確認することができる。
燃焼後の高さ増加(mm)=燃焼後の試験片の高さ(mm)-燃焼前の試験片の高さ(mm)
下記表4および表5は、前記実施例1~8の熱硬化性発泡フォームの燃焼前と燃焼後の膨張による高さの変化を示した写真であり、下記表6~表9は、比較例1~15の熱硬化性発泡フォームの燃焼前と燃焼後の高さの変化を示した写真である。
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
下記表10は、実施例1~8による試験結果であり、表11および表12は、比較例1~15による試験結果である。
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
本発明の実施例の場合、ナノクレイが添加されたとしても、対比されるナノクレイが除かれた比較例の密度と比較してもその数値は上昇しなかった。しかし、燃焼後の重量減少が6.5 g水準を超えることなく難燃性能には顕著な改善を示しており、これは、ナノクレイの完全な分散およびナノクレイ内の熱硬化性発泡フォームを構成する構成物の完全な挿入および剥離の例を代弁する。また、その証拠として燃焼後の高さ増加が挙げられる。よく分散したナノクレイは、熱硬化性フォームを構成する素材の間で幾重にも積層されてバリアの役割をする。前記素材は燃焼が始まると表面にチャーが形成されるが、発生するガスと水はナノクレイの層状によって閉じ込められ、時間の経過とともにガスと水はさらに発生するが、結局は耐えられずにチャーが発泡する現象が現れる。炎は消火し、発泡したチャーは遮熱効果を極大化しながら3 mm以上高さが増加し、その現象はそのまま維持される。最終的に難燃性能は顕著に増加する。しかし、熱硬化性フォームを構成する構造中に三量化触媒またはイソシアヌレート化合物によって実現されるイソシアヌレート構造が形成されなければ、ナノクレイの分散だけでは上記の難燃性能を実現できない問題がある。最後に、前記ナノクレイを膨張剤に代替して熱硬化性発泡フォームを製造して試験を行った場合、燃焼試験時、初期には一時的に膨張するが、持続的な火炎に耐えられずに収縮または溶融して、難燃性能が結果的に低下する問題を発生させた。