IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 青島海爾滾筒洗衣机有限公司の特許一覧 ▶ 海爾智家股▲フン▼有限公司の特許一覧

<>
  • 特許-洗濯機の制御方法 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】洗濯機の制御方法
(51)【国際特許分類】
   D06F 34/28 20200101AFI20240321BHJP
   D06F 33/43 20200101ALI20240321BHJP
   D06F 33/69 20200101ALI20240321BHJP
   D06F 105/54 20200101ALN20240321BHJP
   D06F 103/16 20200101ALN20240321BHJP
   D06F 103/38 20200101ALN20240321BHJP
   D06F 103/20 20200101ALN20240321BHJP
【FI】
D06F34/28
D06F33/43
D06F33/69
D06F105:54
D06F103:16
D06F103:38
D06F103:20
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021517671
(86)(22)【出願日】2019-09-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-28
(86)【国際出願番号】 CN2019104850
(87)【国際公開番号】W WO2020063304
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】201811152192.2
(32)【優先日】2018-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201811152186.7
(32)【優先日】2018-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】514114622
【氏名又は名称】青島海爾滾筒洗衣机有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】520148792
【氏名又は名称】海爾智家股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】HAIER SMART HOME CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.1 Haier Road, Laoshan District Qingdao, Shandong 266101 China
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】▲デン▼金柱
(72)【発明者】
【氏名】許升
(72)【発明者】
【氏名】呂佩師
(72)【発明者】
【氏名】舒海
【審査官】村山 睦
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108018674(CN,A)
【文献】特開2003-079988(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104775270(CN,A)
【文献】特開平04-240486(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0044834(US,A1)
【文献】特表2009-509623(JP,A)
【文献】特開2016-107082(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 34/28
D06F 33/43
D06F 33/69
D06F 105/54
D06F 103/16
D06F 103/38
D06F 103/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗濯機の制御方法であって、
前記洗濯機は、少なくとも選択された洗浄プログラムを影響要因として、1回の洗浄における洗浄槽の汚染指数を推計し、複数回の洗浄の累積汚染指数が臨界値以上となった場合、自動クリーニングプログラムを実行するようユーザに注意喚起し、
1回の洗浄における洗浄槽の汚染指数をsとすると、s=P×Kであり、Pは、前記1回の洗浄で選択された洗浄プログラムが洗浄槽の汚染度合に及ぼす影響を表すプログラム係数であり、Kは、前記1回の洗浄以前の各洗浄間の時間間隔の累積が洗浄槽の汚染度合に及ぼす影響を表す累積間隔係数であり、
各洗浄における洗浄槽の累積汚染指数をSとすると、
【数1】

であり、iは、前記1回の洗浄を統計周期としたときのi回目の洗浄を表し、Pは、前記i回目の洗浄で選択された洗浄プログラムが洗浄槽の汚染度合に及ぼす影響を表すプログラム係数であり、Kは、i回目の洗浄以前の各洗浄間の時間間隔の累積が洗浄槽の汚染度合に及ぼす影響を表す累積間隔係数であることを特徴とする制御方法。
【請求項2】
前記洗濯機は、更に、運転情報を影響要因として汚染指数を推計し、前記運転情報は、洗浄温度、洗浄時間、洗浄回数、洗浄間隔のうちの1又は複数を含み、前記洗濯機は、各運転情報に対応する係数に基づいて汚染指数を推計することを特徴とする請求項1に記載の制御方法。
【請求項3】
前記洗濯機は、洗浄槽の汚染度合に対する洗浄プログラム及び/又は運転情報の寄与に基づき、対応する係数を設定して汚染指数の推計に用い、前記洗濯機は、統計周期内の各回の洗浄における汚染指数を累加して累積汚染指数を算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の制御方法。
【請求項4】
前記洗浄プログラムは、1回の洗浄における各段階で選択されたプログラムを含み、前記洗濯機は、洗浄槽の汚染度合に対する各段階で選択されたプログラムの寄与に基づき、対応するプログラム係数を設定して1回の洗浄における汚染指数の算出に用いることを特徴とする請求項1又は3に記載の制御方法。
【請求項5】
前記累積間隔係数を、
【数2】

とし、kは、i回目の洗浄以前の各洗浄間の時間間隔がi回目の洗浄時に洗浄槽の汚染度合に及ぼす影響を表す間隔係数であり、統計周期における1回目の洗浄の間隔係数はk=1となることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の制御方法。
【請求項6】
前記累積間隔係数を、
【数3】

とし、kは、i回目の洗浄以前の各洗浄間の時間間隔がi回目の洗浄時に洗浄槽の汚染度合に及ぼす影響を表す間隔係数であり、統計周期において、i=1の場合には1回目の洗浄の間隔係数をk=1とし、i>1の場合には、1回目の洗浄の間隔係数をk=0とすることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は衣類処理の技術分野に属し、具体的には、洗濯機の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
研究及び統計によると、洗濯機の洗浄槽の汚れは、主に、衣類における繊維の隙間や衣類表面の微生物(例えば、緑膿菌、大腸菌、カビ等)、及び、洗濯機の洗浄槽内の湿潤環境に空気が通らないことで発生する異臭が原因となっている。これらの問題は、その後の衣類洗浄時に二次汚染をもたらし、ユーザの健康を損なうことになる。
【0003】
従来の大部分の洗濯機は、洗浄槽の自動クリーニング機能を有している。当該機能は高温殺菌・消毒が可能であり、定期的に使用し、クリーニングしていれば、二次汚染を効果的に低減することができる。しかし、ビッグデータの統計によると、ユーザが洗浄槽の自動クリーニングを使用する頻度は大変低い。このことは、大部分のユーザが洗浄槽の二次汚染をそれほど重大視しておらず、且つ、自動クリーニング機能を理解していないことを意味する。
【0004】
現在の洗濯機は、洗浄の度に水の濁度を累計するか、運転サイクルを累計することで洗浄槽の汚染度合を推計するものが多い。また、製品によっては、これをベースに洗浄時間や温度等のパラメータを導入している。しかし、この種の方法は、洗浄槽の汚染度合に対する洗浄過程の影響を重視しすぎており、その他の要因を軽視しているため、槽の汚染度合を正確に表せないとの問題がある。例えば、水の硬度や水温等に伴う水垢による洗浄槽の汚染度合を正確に反映できないとの問題がある。且つ、この種の方法では、検出装置が別途必要となり、自ずと洗濯機のコストが上昇する。
【0005】
上記に鑑みて、本発明を提案する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする技術的課題は、洗濯機の運転パラメータとデータに基づいて洗浄槽の汚染度合を推計し、自動クリーニングプログラムを実行するようユーザに注意喚起可能な制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の技術的課題を解決するために、本発明で採用する技術方案の基本思想は以下の通りである。
【0008】
本発明は、洗濯機の制御方法を提供する。洗濯機は、少なくとも選択された洗浄プログラムを影響要因として、1回の洗浄における洗浄槽の汚染指数を推計し、複数回の洗浄の累積汚染指数が臨界値以上となった場合、自動クリーニングプログラムを実行するようユーザに注意喚起する。
【0009】
上記の方法によれば、洗濯機は、更に、運転情報を影響要因として汚染指数を推計する。前記運転情報は、洗浄温度、洗浄時間、洗浄回数、洗浄間隔のうちの1又は複数を含む。洗濯機は、各運転情報に対応する係数に基づいて汚染指数を推計する。好ましくは、前記運転情報は洗浄間隔と洗浄温度を含む。より好ましくは、前記運転情報は洗浄間隔である。
【0010】
上記の方法によれば、洗濯機は、洗浄槽の汚染度合に対する洗浄プログラム及び/又は運転情報の寄与に基づき、対応する係数を設定して汚染指数の推計に用いる。洗濯機は、統計周期内の各回の洗浄における汚染指数を累加して累積汚染指数を算出する。
【0011】
上記の方法によれば、前記洗浄間隔は各洗浄間の時間間隔を含む。洗濯機は、洗浄槽の汚染度合に対する時間間隔の長さの寄与の違いに応じ、対応する間隔係数を設定して1回の洗浄における汚染指数の算出に用いる。好ましくは、複数回の洗浄間隔が存在する場合に、初回以外の洗浄の汚染指数を算出する際には、その回の洗浄以前の全ての間隔係数を組み入れて計算する必要がある。より好ましくは、前記間隔係数の大きさは洗浄の時間間隔の長さと正の相関を有している。
【0012】
上記の方法によれば、前記洗浄プログラムは、1回の洗浄における各段階で選択されたプログラムを含む。洗濯機は、洗浄槽の汚染度合に対する各段階で選択されたプログラムの寄与に基づき、対応するプログラム係数を設定して1回の洗浄における汚染指数の算出に用いる。好ましくは、前記プログラム係数は、1回の洗浄における各段階のプログラムに対応する係数を累積して得られる。
【0013】
上記の方法によれば、前記洗浄温度は1回の洗浄で選択された洗浄温度を含む。洗濯機は、洗浄槽の汚染度合に対する洗浄温度の寄与に基づき、対応する温度係数を設定して1回の洗浄における汚染指数の算出に用いる。好ましくは、前記温度係数は、温度が低温から高温に徐々に上昇するにつれて小さくなる。
【0014】
上記の方法では、洗濯機の使用時に、1回の洗浄サイクルにおけるプログラムの違いによって洗浄槽は異なる度合で汚染される。例えば、乾燥過程では、高温となることから洗浄槽内の微生物の生存確率が低下し、汚染度合が低減する。反対に、すすぎ時には、窒素やホスフィン元素を含有する洗浄水に衣類の汚れや細菌が進入するため、洗浄槽の汚染度合が上昇する。また、洗浄サイクルの終了後、洗浄槽には自然乾燥の過程が存在するが、洗浄サイクル間の時間間隔の長さによって汚れの蓄積度合に違いが生じるため、洗浄槽の汚染度合も異なってくる。本発明が提供する制御方法では、1つ1つの洗浄サイクルにおけるプログラム選択と洗浄情報の違いが洗浄槽の汚染度合に及ぼす影響を総合的に考慮して、累積汚染度合が臨界に達した場合に自動クリーニングプログラムを実行するようユーザに注意喚起する。
【0015】
上記の方法によれば、1回の洗浄における洗浄槽の汚染指数をsとすると、s=P×Kである。Pは、前記1回の洗浄で選択された洗浄プログラムが洗浄槽の汚染度合に及ぼす影響を表すプログラム係数である。Kは、前記1回の洗浄以前の各洗浄間の時間間隔の累積が洗浄槽の汚染度合に及ぼす影響を表す累積間隔係数である。
【0016】
上記の方法において、異なる衣類ケアプログラムは異なる処理過程に対応するため、洗浄槽の汚染に対する影響度合も異なってくる。そこで、プログラム係数Pを設定する。つまり、プログラム別に分類して数値の異なる係数を設定することで、汚染度合に対する影響を反映する。また、ユーザが洗濯機を用いて連続して洗浄を行う場合には、洗浄槽に自然乾燥及び汚れの蓄積過程が存在しないか、当該過程が短く、完全には汚れが蓄積しないため、槽の汚染度合の累積はやや遅くなる。そこで、累積間隔係数Kを設定する。つまり、隣り合う各洗浄間の時間間隔の長さによって異なる係数を設定し、累積及び推計する。これにより、汚染度合に対する時間間隔の影響を反映する。
【0017】
上記の方法によれば、各洗浄における洗浄槽の累積汚染指数をSとすると、数式1である。iは、前記1回の洗浄を統計周期としたときのi回目の洗浄を表す。Pは、前記i回目の洗浄で選択された洗浄プログラムが洗浄槽の汚染度合に及ぼす影響を表すプログラム係数である。Kは、i回目の洗浄以前の各洗浄間の時間間隔の累積が洗浄槽の汚染度合に及ぼす影響を表す累積間隔係数である。
【0018】
【数1】
【0019】
上記の方法において、本方法では、洗濯機における各フル洗浄サイクルで増加した汚染度合を推計して汚染指数を取得し、各洗浄サイクルの汚染指数を累加することで当該洗濯機の累計汚染指数とする。
【0020】
上記の方法によれば、前記累積間隔係数を、数式2とする。kは、i回目の洗浄以前の各洗浄間の時間間隔がi回目の洗浄時に洗浄槽の汚染度合に及ぼす影響を表す間隔係数である。また、統計周期における1回目の洗浄の間隔係数はk=1となる。
【0021】
【数2】
【0022】
上記の方法において、洗濯機は、統計周期内で各洗浄サイクル間の時間間隔をそれぞれ記録する。いずれかの回の洗浄サイクルの累積間隔係数を決定する際には、その回の洗浄以前に統計された各洗浄サイクルの間隔係数を乗算する必要がある。本発明についてよりしっかりと説明するために、以下の通り例示する。
【0023】
1回目の洗浄時には、その回の洗浄は間隔を有していないため、間隔係数を1と設定する。
【0024】
2回目の洗浄時には、2回目の洗浄と1回目の洗浄の間に間隔が存在するため、累積間隔係数=1×2回目の洗浄の間隔係数となる。
【0025】
3回目の洗浄時には、3回目、2回目及び1回目の洗浄の間にいずれも間隔が存在するため、累積間隔係数=1×2回目の洗浄の間隔係数×3回目の洗浄の間隔係数となる。
【0026】
4回目の洗浄時には、4回目、3回目、2回目及び1回目の洗浄の間にいずれも間隔が存在するため、累積間隔係数=1×2回目の洗浄の間隔係数×3回目の洗浄の間隔係数×4回目の洗浄の間隔係数となる。
【0027】
同様にして、1回の洗浄の間隔係数を乗算することで累積間隔係数を取得可能である。
【0028】
上記の方法によれば、前記累積間隔係数を数式3とする。kは、i回目の洗浄以前の各洗浄間の時間間隔がi回目の洗浄時に洗浄槽の汚染度合に及ぼす影響を表す間隔係数である。統計周期において、i=1の場合には1回目の洗浄の間隔係数をk=1とし、i>1の場合には、1回目の洗浄の間隔係数をk=0とする。
【0029】
【数3】
【0030】
上記の方法において、洗濯機は、統計周期内で各洗浄サイクル間の時間間隔をそれぞれ記録する。いずれかの回の洗浄サイクルの累積間隔係数を決定する際には、その回の洗浄以前に統計された各洗浄サイクルの間隔係数を累加する必要がある。本発明についてよりしっかりと説明するために、以下の通り例示する。
【0031】
1回目の洗浄時には、その回の洗浄は間隔を有していないが、プログラム係数Pが0でないことを考慮して、間隔係数を1と設定する。
【0032】
2回目の洗浄時には、2回目の洗浄と1回目の洗浄の間に間隔が存在するため、累積間隔係数=1回目の洗浄の間隔係数+2回目の洗浄の間隔係数となる。しかし、1回目の洗浄以前には間隔が存在しないため、累積間隔係数が0でない場合には、1回目の洗浄の間隔係数を0と設定する。
【0033】
3回目の洗浄時には、3回目、2回目及び1回目の洗浄の間にいずれも間隔が存在するため、累積間隔係数=1回目の洗浄の間隔係数+2回目の洗浄の間隔係数+3回目の洗浄の間隔係数となる。しかし、1回目の洗浄以前には間隔が存在しないため、累積間隔係数が0でない場合には、1回目の洗浄の間隔係数を0と設定する。
【0034】
同様にして、1回の洗浄の間隔係数を累加することで累積間隔係数を取得可能である。
【0035】
上記の方法によれば、前記累積間隔係数Kは予め定められた最小値を有しており、推計により取得したKが予め定められた最小値よりも小さい場合には、予め定められた最小値に基づき推計する。
【0036】
上記の方法では、間隔係数の数値として0~1を含む範囲を採用する。そのため、時間間隔が短い場合には、小さな数値の間隔係数を乗算することで累積間隔係数がより小さな数値となり、汚染度合の反映に支障をきたす。よって、間隔係数Kの最小値を設定しておくことで、上記の状況が発生した場合の反映の精度を保証する。
【0037】
上記の方法によれば、洗濯機の洗浄温度を調節可能なことから、1回の洗浄における洗浄槽の汚染指数をs=P×K×Tとする。Tは、前記1回の洗浄で選択された洗浄温度が洗浄槽の汚染度合に及ぼす影響を表す温度係数である。また、各洗浄における洗浄槽の累積汚染指数を数式4とする。Tは、前記i回目の洗浄で選択された洗浄温度が洗浄槽の汚染度合に及ぼす影響を表す温度係数である。
【0038】
【数4】
【0039】
上記の方法では、洗浄温度が分子活性や細菌繁殖の度合に影響を及ぼし得るため、プログラム係数Pと累積間隔係数Kをベースに温度係数Tを設定する。また、理論分析と実験検証に基づき、洗浄温度別に異なる係数を設定することで、汚染度合に対する影響を反映する。
【0040】
上記の方法によれば、前記プログラム係数Pは、洗浄過程における各プログラムに対応する係数を累積して取得する。前記間隔係数kの大きさは、洗浄の時間間隔の長さと正の相関を有している。前記温度係数Tは、温度が低温から高温に徐々に上昇するにつれて小さくなる。
【0041】
上記の方法において、洗浄プログラムは、洗浄、脱水、すすぎ、乾燥等の過程を含む。汚染度合に対する各過程の寄与は異なっているため、それぞれに異なる係数を設定し、これらを累加又は乗算することで1回の洗浄におけるプログラム係数Pを取得する。また、洗浄サイクル間の時間間隔が短い場合には、汚れの自然乾燥による洗浄槽内への蓄積は生じにくいが、時間間隔が長い場合には汚れの蓄積過程に有利となる。そこで、間隔係数kの数値は、時間間隔が長いほど大きくなるようにする。また、温度も細菌の生存率に影響を及ぼす重要な要因であり、温度が低い場合には細菌が繁殖しにくいため、温度係数Tは低くなる。しかし、温度が上昇して細菌の成長に適した温度範囲になると、これに応じて、温度係数Tは最も高い値まで徐々に大きくなる。そして、温度が更に上昇するにつれて、高温環境が細菌の不活化作用を発揮するようになると、これに応じて、温度係数Tは最も低い値まで低下する。
【0042】
本発明は、更に、別の洗濯機の制御方法を提供する。洗濯機は、少なくとも給水水質を影響要因として、1回の洗浄における洗浄槽の汚染指数を推計し、複数回の洗浄の累積汚染指数が臨界値以上となった場合、自動クリーニングプログラムを実行するようユーザに注意喚起する。
【0043】
上記の方法によれば、洗濯機は、更に、選択された洗浄プログラム及び/又は運転情報を影響要因として汚染指数を推計する。前記運転情報は、洗浄温度、洗浄時間、洗浄回数、洗浄間隔のうちの1又は複数を含む。洗濯機は、各運転情報に対応する係数に基づいて汚染指数を推計する。好ましくは、前記運転情報は洗浄間隔と洗浄温度を含む。より好ましくは、前記運転情報は洗浄間隔である。
【0044】
上記の方法によれば、洗濯機は、洗浄槽の汚染度合に対する給水水質及び/又は洗浄プログラム及び/又は運転情報の寄与に基づき対応する係数を設定して、汚染指数の推計に用いる。洗濯機は、統計周期内の各回の洗浄における汚染指数を累加して累積汚染指数を算出する。
【0045】
上記の方法によれば、前記汚染指数は水質係数を含む。前記水質係数は、1回の洗浄における洗浄槽の汚染度合に対する給水水質の寄与を推計することで得られる。累積汚染指数は更に累積水質係数を含む。前記累積水質係数は、複数回の洗浄における洗浄槽の汚染度合に対する給水水質の寄与を推計することで得られる。
【0046】
上記の方法によれば、前記給水水質は、水質硬度、洗浄槽内の水温及び洗浄槽内の水の保持時間を含む。洗濯機は、洗浄槽の汚染度合に対する各給水水質の寄与を水質係数に変換する。好ましくは、前記水質係数は洗浄槽内の水温の積分を含む。より好ましくは、前記水質係数は、洗浄槽内の水温及び/又は洗浄槽内の水の保持時間の積分を含む。
【0047】
上記の方法によれば、前記洗浄間隔は各洗浄間の時間間隔を含む。洗濯機は、洗浄槽の汚染度合に対する時間間隔の長さの寄与の違いに応じ、対応する間隔係数を設定して1回の洗浄における汚染指数の算出に用いる。好ましくは、複数回の洗浄間隔が存在する場合に、初回以外の洗浄の汚染指数を算出する際には、その回の洗浄以前の全ての間隔係数を組み入れて計算する必要がある。より好ましくは、前記間隔係数の大きさは洗浄の時間間隔の長さと正の相関を有している。
【0048】
上記の方法によれば、前記洗浄プログラムは、1回の洗浄における各段階で選択されたプログラムを含む。洗濯機は、洗浄槽の汚染度合に対する各段階で選択されたプログラムの寄与に基づき、対応するプログラム係数を設定して1回の洗浄における汚染指数の算出に用いる。好ましくは、前記プログラム係数は、1回の洗浄における各段階のプログラムに対応する係数を累積して得られる。
【0049】
上記の方法によれば、前記洗浄温度は1回の洗浄で選択された洗浄温度を含む。洗濯機は、洗浄槽の汚染度合に対する洗浄温度の寄与に基づき、対応する温度係数を設定して1回の洗浄における汚染指数の算出に用いる。好ましくは、前記温度係数は、温度が低温から高温に徐々に上昇するにつれて小さくなる。
【0050】
上記の方法では、洗濯機の使用時に、1回の洗浄サイクルにおけるプログラムの違いによって洗浄槽は異なる度合で汚染される。例えば、乾燥過程では、高温となることから洗浄槽内の微生物の生存確率が低下し、汚染度合が低減する。反対に、すすぎ時には、窒素やホスフィン元素を含有する洗浄水に衣類の汚れや細菌が進入するため、洗浄槽の汚染度合が上昇する。また、洗浄サイクルの終了後、洗浄槽には自然乾燥の過程が存在するが、洗浄サイクル間の時間間隔の長さによって汚れの蓄積度合に違いが生じるため、洗浄槽の汚染度合も異なってくる。このほか、通常、家庭での洗濯用水には行政が供給する水道水が使用され、水の硬度が高いことから水垢が発生しやすいとの問題がある。乾燥により凝固した水垢が長期的に蓄積されることでも、洗浄槽の汚染度合が悪化してクリーニングの難度は上昇する。そこで、本発明が提供する方法では、汚染度合に対する水質要因の寄与と、1つ1つの洗浄サイクルにおけるプログラム選択及び時間間隔が洗浄槽の汚染度合に及ぼす影響を総合的に考慮して、累積汚染度合が臨界に達した場合に自動クリーニングプログラムを実行するようユーザに注意喚起する。
【0051】
上記の方法によれば、各洗浄における洗浄槽の累積汚染指数をSとすると、数式5である。iは、前記1回の洗浄を統計周期としたときのi回目の洗浄を表す。Pは、前記i回目の洗浄で選択された洗浄プログラムが洗浄槽の汚染度合に及ぼす影響を表すプログラム係数である。Kは、i回目の洗浄以前の各洗浄間の時間間隔の累積が洗浄槽の汚染度合に及ぼす影響を表す累積間隔係数である。Aは、i回目の洗浄時の給水水質が汚染度合に及ぼす影響を表す水質係数である。
【0052】
【数5】
【0053】
上記の方法において、異なる衣類ケアプログラムは異なる処理過程に対応するため、洗浄槽の汚染に対する影響度合も異なってくる。そこで、プログラム係数Pを設定する。つまり、プログラム別に分類して数値の異なる係数を設定することで、汚染度合に対する影響を反映する。また、ユーザが洗濯機を用いて連続して洗浄を行う場合には、洗浄槽に自然乾燥及び汚れの蓄積過程が存在しないか、当該過程が短く、完全には汚れが蓄積しないため、槽の汚染度合の累積はやや遅くなる。そこで、累積間隔係数Kを設定する。つまり、隣り合う各洗浄間の時間間隔の長さによって異なる係数を設定し、累積及び推計する。これにより、汚染度合に対する時間間隔の影響を反映する。このほか、水質係数Aを設定して、洗浄槽の汚染度合に対する水質の影響を反映する。本方法では、洗濯機における各フル洗浄サイクルで増加した汚染度合を推計して汚染指数を取得し、各洗浄サイクルの汚染指数を累加することで当該洗濯機の累計汚染指数とする。
【0054】
上記の方法によれば、前記水質係数を数式6とする。Dは、i回目の洗浄時の給水硬度が水質係数Aに及ぼす影響を表す硬度係数である。また、数式7は、i回目の洗浄における洗浄槽内の水温Tの積分である。前記積分結果は水質係数Aに影響を及ぼす。
【0055】
【数6】
【0056】
【数7】
【0057】
上記の方法において、水質がもたらす汚染は水温とも関係するため、Aの値を水温と関連付けている。具体的に、Aの大きさは水質の硬度Dに正比例し、硬度Dが高いほどAの値は大きくなる。また、Aの大きさは水温Tに正比例し、水温Tが高いほどAの値は大きくなる。洗浄プログラムにおいて変温制御を行う場合には、前記水温Tが変数となる。そのため、水温Tを積分計算し、得られた積分結果に硬度Dを乗算することで水質係数Aを取得する。
【0058】
上記の方法によれば、前記i回目の洗浄における洗浄槽内の水温を数式8とし、i回目の洗浄における洗浄槽内の水の保持時間tを積分する。前記積分結果は、時間t内の水温Tの変化を表す。
【0059】
【数8】
【0060】
上記の方法において、水質がもたらす汚染は水温と関係するだけでなく、洗浄槽内の水の保持時間とも関係するため、Aの値を水温及び水の保持時間と関連付ける。具体的に、Aの大きさは水質の硬度Dに正比例し、硬度Dが高いほどAの値は大きくなる。また、Aの大きさは水温Tに正比例し、水温Tが高いほどAの値は大きくなる。また、Aの大きさは時間tに正比例し、時間tが長いほどAの値は大きくなる。洗浄プログラムで変温制御を行う場合には、水温Tが時間tに伴って変化する変数となるため、ここでは時間tを積分することで時間t内の水温Tの変化を反映する。これにより、温度Tと時間tとの相互関係が更に説明されるとともに、前記温度Tの積分の公式に代入することで、より正確な水質係数Aが得られる。
【0061】
前記水質係数は、数式9と表してもよい。数式10は、i回目の洗浄における洗浄槽内の水温Tと、洗浄槽内の水の保持時間tを二重積分することを表している。前記積分結果は水質係数Aに影響を及ぼす。
【0062】
【数9】
【0063】
【数10】
【0064】
上記の方法では、異なるモデリングの結果より、水質係数Aに影響を及ぼす要因は、それぞれ水質の硬度D、水温T及び洗浄槽内の水の保持時間tとなる。そのため、水温Tと保持時間tとの関数関係は考慮せず、水温Tと洗浄槽内における水の保持時間tを二重積分してから水質の硬度Dを乗算することで、水質係数Aの算出の複雑さを低下させる。
【0065】
上記の方法によれば、水質係数Aは給水される水の性質により決定されるため、給水のないプログラムでは水質係数Aは0となる。また、累積汚染指数の公式に適合させ、且つ、洗浄槽の汚染度合に対する水質係数Aの寄与をより合理的に反映するために、理論分析及び実験検証を通じて定数係数Rを取得し、数式11又は数式12とする。
【0066】
【数11】
【0067】
【数12】
【0068】
上記の方法によれば、前記制御方法は、更に、水質係数を単独で統計する。累積水質係数をWとすると、数式13となり、Wが一定のレベルに達した場合に、水垢対応の洗浄剤を添加するようユーザに注意喚起する。
【0069】
【数13】
【0070】
上記の方法によれば、前記制御方法は、更に、累積汚染指数に対する累積水質係数の割合を統計する。前記割合はW/Sとし、これが一定の割合に達した場合に、水垢対応の洗浄剤を添加するようユーザに注意喚起する。
【0071】
上記の方法では、水質係数Aを累積汚染指数Sに取り入れるだけでなく、水質係数Aを単独で累積計算する。これにより、ユーザが洗浄槽内の水垢の蓄積度合を把握して、自動クリーニングプログラムの実行時に水垢対応の洗浄剤を添加するよう補助する。また、この過程は、累積水質係数Wが累積汚染指数Sに占める割合で実現することも可能である。
【0072】
上記の方法によれば、洗濯機に累積水質係数W又は割合W/Sの第1基準値及び第2基準値を予め設定しておく。そして、W或いはW/Sが第1基準値を超えた場合には、自動クリーニングプログラムの実行時に水垢対応の洗浄剤を添加するようユーザに注意喚起する。また、W或いはW/Sが第2基準値を超えた場合には、水垢対応の洗浄剤を添加して洗浄槽を浸け置きしたあとに自動クリーニングプログラムを実行するようユーザに注意喚起する。好ましくは、W或いはW/Sが第2基準値を超えた場合には、槽を解体してクリーニングするととともに、ヒートパイプをクリーニングするようユーザに注意喚起する。
【0073】
上記の方法によれば、前記累積間隔係数を数式14とする。kは、i回目の洗浄以前の各洗浄間の時間間隔がi回目の洗浄時に洗浄槽の汚染度合に及ぼす影響を表す間隔係数である。また、統計周期における1回目の洗浄の間隔係数はk=1となる。
【0074】
【数14】
【0075】
上記の方法において、洗濯機は、統計周期内で各洗浄サイクル間の時間間隔をそれぞれ記録する。いずれかの回の洗浄サイクルの累積間隔係数を決定する際には、その回の洗浄以前に統計された各洗浄サイクルの間隔係数を乗算する必要がある。本発明についてよりしっかりと説明するために、以下の通り例示する。
【0076】
1回目の洗浄時には、その回の洗浄は間隔を有していないため、間隔係数を1と設定する。
【0077】
2回目の洗浄時には、2回目の洗浄と1回目の洗浄の間に間隔が存在するため、累積間隔係数=1×2回目の洗浄の間隔係数となる。
【0078】
3回目の洗浄時には、3回目、2回目及び1回目の洗浄の間にいずれも間隔が存在するため、累積間隔係数=1×2回目の洗浄の間隔係数×3回目の洗浄の間隔係数となる。
【0079】
4回目の洗浄時には、4回目、3回目、2回目及び1回目の洗浄の間にいずれも間隔が存在するため、累積間隔係数=1×2回目の洗浄の間隔係数×3回目の洗浄の間隔係数×4回目の洗浄の間隔係数となる。
【0080】
同様にして、1回の洗浄の間隔係数を乗算することで累積間隔係数を取得可能である。
【0081】
上記の方法によれば、前記累積間隔係数を数式15とする。kは、i回目の洗浄以前の各洗浄間の時間間隔がi回目の洗浄時に洗浄槽の汚染度合に及ぼす影響を表す間隔係数である。統計周期において、i=1の場合には1回目の洗浄の間隔係数をk=1とし、i>1の場合には、1回目の洗浄の間隔係数をk=0とする。
【0082】
【数15】
【0083】
上記の方法において、洗濯機は、統計周期内で各洗浄サイクル間の時間間隔をそれぞれ記録する。いずれかの回の洗浄サイクルの累積間隔係数を決定する際には、その回の洗浄以前に統計された各洗浄サイクルの間隔係数を累加する必要がある。本発明についてよりしっかりと説明するために、以下の通り例示する。
【0084】
1回目の洗浄時には、その回の洗浄は間隔を有していないが、プログラム係数Pが0でないことを考慮して、間隔係数を1と設定する。
【0085】
2回目の洗浄時には、2回目の洗浄と1回目の洗浄の間に間隔が存在するため、累積間隔係数=1回目の洗浄の間隔係数+2回目の洗浄の間隔係数となる。しかし、1回目の洗浄以前には間隔が存在しないため、累積間隔係数が0でない場合には、1回目の洗浄の間隔係数を0と設定する。
【0086】
3回目の洗浄時には、3回目、2回目及び1回目の洗浄の間にいずれも間隔が存在するため、累積間隔係数=1回目の洗浄の間隔係数+2回目の洗浄の間隔係数+3回目の洗浄の間隔係数となる。しかし、1回目の洗浄以前には間隔が存在しないため、累積間隔係数が0でない場合には、1回目の洗浄の間隔係数を0と設定する。
【0087】
同様にして、1回の洗浄の間隔係数を累加することで累積間隔係数を取得可能である。
【0088】
上記の方法によれば、前記累積間隔係数Kは予め定められた最小値を有しており、推計により取得したKが予め定められた最小値よりも小さい場合には、予め定められた最小値に基づき推計する。
【0089】
上記の方法では、間隔係数の数値として0~1を含む範囲を採用する。そのため、時間間隔が短い場合には、小さな数値の間隔係数を乗算することで累積間隔係数がより小さな数値となり、汚染度合の反映に支障をきたす。よって、間隔係数Kの最小値を設定しておくことで、上記の状況が発生した場合の反映の精度を保証する。
【0090】
上記の方法によれば、洗濯機の洗浄温度を調節可能なことから、各洗浄における洗浄槽の累積汚染指数を数式16とする。T’は、前記i回目の洗浄で選択された洗浄温度が洗浄槽の汚染度合に及ぼす影響を表す温度係数である。
【0091】
【数16】
【0092】
上記の方法では、洗浄温度が分子活性や細菌繁殖の度合に影響を及ぼし得るため、プログラム係数Pと累積間隔係数Kをベースに温度係数T’を設定する。また、理論分析と実験検証に基づき、洗浄温度別に異なる係数を設定することで、汚染度合に対する影響を反映する。
【0093】
上記の方法によれば、前記プログラム係数Pは、洗浄過程における各プログラムに対応する係数を累積して取得する。前記間隔係数kの大きさは、洗浄の時間間隔の長さと正の相関を有している。前記温度係数T’は、温度が低温から高温に徐々に上昇するにつれて小さくなる。
【0094】
上記の方法において、洗浄プログラムは、洗浄、脱水、すすぎ、乾燥等の過程を含む。汚染度合に対する各過程の寄与は異なっているため、それぞれに異なる係数を設定し、これらを累加又は乗算することで1回の洗浄におけるプログラム係数Pを取得する。洗浄サイクル間の時間間隔が短い場合には、汚れの自然乾燥による洗浄槽内への蓄積は生じにくいが、時間間隔が長い場合には汚れの蓄積過程に有利となる。そこで、間隔係数kの数値は、時間間隔が長いほど大きくなるようにする。また、温度も細菌の生存率に影響を及ぼす重要な要因であり、温度が低い場合には細菌が繁殖しにくいため、温度係数T’は低くなる。しかし、温度が上昇して細菌の成長に適した温度範囲になると、これに応じて、温度係数T’は最も高い値まで徐々に大きくなる。そして、温度が更に上昇するにつれて、高温環境が細菌の不活化作用を発揮するようになると、これに応じて、温度係数T’は最も低い値まで低下する。
【0095】
上記2種類の制御方法によれば、累積汚染指数が臨界値以上となった場合に、洗濯機は、自動クリーニングプログラムを実行するようユーザに注意喚起する。好ましくは、累積汚染指数が臨界値を超えて上昇を続けている場合には、これに伴って、洗濯機がユーザに注意喚起する頻度が増加する。
【0096】
上記2種類の制御方法では、累積汚染指数が臨界値を超えた場合に自動クリーニングプログラムが実行されなければ、当該指数が引き続き増加する。そのため、累積汚染指数の増加に応じて注意喚起の頻度を設定することで、ユーザによるタイムリーな自動クリーニングプログラムの実行を保証できる。
【0097】
上記2種類の制御方法によれば、ユーザが自動クリーニングプログラムを実行したあと、累積汚染指数が自動的にリセットされて、累積が再開される。好ましくは、ユーザは、使用状況に応じて累積汚染指数を手動でリセット可能である。
【0098】
上記2種類の制御方法において、ユーザは洗浄槽をクリーニングするその他の方法を有し得るため、自動クリーニングプログラムが自動的に累積汚染指数をリセット可能なだけでなく、ユーザによる手動リセットも可能とする。
【発明の効果】
【0099】
上記の技術方案を用いることで、本発明は従来技術と比較して以下の有益な効果を有する。
【0100】
1.本発明が提供する制御方法では、汚染度合に対する洗浄サイクルの時間間隔とプログラム選択の影響を総合的に考慮するとともに、洗浄中及び洗浄後の環境要因にも配慮している。よって、従来技術における洗浄過程にのみ注目した方法よりも正確に汚染度合を表すことができる。
【0101】
2.本発明が提供する制御方法では、洗濯機自体の運転パラメータとデータを洗浄槽の汚染度合に影響を及ぼす係数に変換することで、洗濯機の汚染度合を推計してユーザに注意喚起することが可能であり、余分なセンサや装置を必要としない。
【0102】
3.本発明が提供する制御方法では、洗濯機自体の運転パラメータとデータを洗浄槽の汚染度合に影響を及ぼす係数に変換するとともに、硬度、温度及び保持時間に起因する水質の変化が汚染度合に及ぼす影響を取り入れているため、より正確に洗浄槽の汚染度合を反映可能である。
【0103】
4.本発明が提供する制御方法では、累積汚染指数が臨界値を超えた場合に注意喚起の頻度を調整することで、ユーザによる自動クリーニングプログラムの実行を保証する。
【0104】
以下に、図面を組み合わせて、本発明の具体的実施形態につき更に詳細に述べる。
【0105】
図面は本発明の一部として本発明の更なる理解のために用いられる。また、本発明の概略的実施例及びその説明は本発明の解釈のために用いられるが、本発明を不当に限定するものではない。なお、言うまでもなく、以下で記載する図面は実施例の一部にすぎず、当業者であれば、創造的労働を要することなくこれらの図面から更にその他の図面を得ることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0106】
図1図1は、本発明の制御方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0107】
説明すべき点として、これらの図面及び文字記載は何らかの方式で本発明の構想の範囲を制限するとの意図ではなく、特定の実施例を参照して当業者に本発明の概念を説明するためのものである。
【0108】
本発明における実施例の目的、技術方案及び利点をより明確とすべく、以下では、本発明の実施例にかかる図面を組み合わせて、実施例の技術方案につき明瞭簡潔に述べる。なお、以下の実施例は本発明を説明するためのものであって、本発明の範囲を制限するものではない。
【実施例1】
【0109】
本実施例では、洗濯機の制御方法を提供する。洗濯機は、隣り合う各洗浄間の時間間隔と、各洗浄で選択された洗浄プログラムを影響要因として、1回の洗浄における洗浄槽の汚染指数を推計する。そして、複数回の洗浄の累積汚染指数が臨界値以上となった場合、自動クリーニングプログラムを実行するようユーザに注意喚起する。
【0110】
本実施例では、洗濯機の使用時に、1回の洗浄サイクルにおけるプログラムの違いによって洗浄槽は異なる度合で汚染される。例えば、乾燥過程では、高温となることから洗浄槽内の微生物の生存確率が低下し、汚染度合が低減する。反対に、すすぎ時には、窒素やホスフィン元素を含有する洗浄水に衣類の汚れや細菌が進入するため、洗浄槽の汚染度合が上昇する。また、洗浄サイクルの終了後、洗浄槽には自然乾燥の過程が存在するが、洗浄サイクル間の時間間隔の長さによって汚れの蓄積度合に違いが生じるため、洗浄槽の汚染度合も異なってくる。本発明が提供する制御方法では、1つ1つの洗浄サイクルにおけるプログラム選択と時間間隔が洗浄槽の汚染度合に及ぼす影響を総合的に考慮して、累積汚染度合が臨界に達した場合に自動クリーニングプログラムを実行するようユーザに注意喚起する。
【0111】
本実施例では、1回の洗浄における洗浄槽の汚染指数をsとすると、s=P×Kである。Pは、前記1回の洗浄で選択された洗浄プログラムが洗浄槽の汚染度合に及ぼす影響を表すプログラム係数である。Kは、前記1回の洗浄以前の各洗浄間の時間間隔の累積が洗浄槽の汚染度合に及ぼす影響を表す累積間隔係数である。
【0112】
本実施例において、異なる衣類ケアプログラムは異なる処理過程に対応するため、洗浄槽の汚染に対する影響度合も異なってくる。そこで、プログラム係数Pを設定する。つまり、プログラム別に分類して数値の異なる係数を設定することで、汚染度合に対する影響を反映する。また、ユーザが洗濯機を用いて連続して洗浄を行う場合には、洗浄槽に自然乾燥及び汚れの蓄積過程が存在しないか、当該過程が短く、完全には汚れが蓄積しないため、槽の汚染度合の累積はやや遅くなる。そこで、累積間隔係数Kを設定する。つまり、隣り合う各洗浄間の時間間隔の長さによって異なる係数を設定し、累積及び推計する。これにより、汚染度合に対する時間間隔の影響を反映する。
【0113】
本実施例では、各洗浄における洗浄槽の累積汚染指数をSとすると、数式17である。iは、前記1回の洗浄を統計周期としたときのi回目の洗浄を表す。Pは、前記i回目の洗浄で選択された洗浄プログラムが洗浄槽の汚染度合に及ぼす影響を表すプログラム係数である。Kは、i回目の洗浄以前の各洗浄間の時間間隔の累積が洗浄槽の汚染度合に及ぼす影響を表す累積間隔係数である。
【0114】
【数17】
【0115】
本実施例において、当該方法では、洗濯機における各フル洗浄サイクルで増加した汚染度合を推計して汚染指数を取得し、各洗浄サイクルの汚染指数を累加することで当該洗濯機の累計汚染指数とする。
【0116】
本実施例では、前記累積間隔係数を
とする。kは、i回目の洗浄以前の各洗浄間の時間間隔がi回目の洗浄時に洗浄槽の汚染度合に及ぼす影響を表す間隔係数である。また、統計周期における1回目の洗浄の間隔係数はk=1となる。
【0117】
本実施例において、洗濯機は、統計周期内で各洗浄サイクル間の時間間隔をそれぞれ記録する。いずれかの回の洗浄サイクルの累積間隔係数を決定する際には、その回の洗浄以前に統計された各洗浄サイクルの間隔係数を乗算する必要がある。本発明についてよりしっかりと説明するために、以下の通り例示する。
【0118】
1回目の洗浄時には、その回の洗浄は間隔を有していないため、間隔係数を1と設定する。
【0119】
2回目の洗浄時には、2回目の洗浄と1回目の洗浄の間に間隔が存在するため、累積間隔係数=1×2回目の洗浄の間隔係数となる。
【0120】
3回目の洗浄時には、3回目、2回目及び1回目の洗浄の間にいずれも間隔が存在するため、累積間隔係数=1×2回目の洗浄の間隔係数×3回目の洗浄の間隔係数となる。
【0121】
4回目の洗浄時には、4回目、3回目、2回目及び1回目の洗浄の間にいずれも間隔が存在するため、累積間隔係数=1×2回目の洗浄の間隔係数×3回目の洗浄の間隔係数×4回目の洗浄の間隔係数となる。
【0122】
同様にして、1回の洗浄の間隔係数を乗算することで累積間隔係数を取得可能である。
【0123】
本実施例において、前記累積間隔係数Kは予め定められた最小値を有しており、推計により取得したKが予め定められた最小値よりも小さい場合には、予め定められた最小値に基づき推計する。
【0124】
本実施例では、間隔係数の数値として0~1を含む範囲を採用する。そのため、時間間隔が短い場合には、小さな数値の間隔係数を乗算することで累積間隔係数がより小さな数値となり、汚染度合の反映に支障をきたす。よって、間隔係数Kの最小値を設定しておくことで、上記の状況が発生した場合の反映の精度を保証する。
【0125】
本実施例において、前記プログラム係数Pは、洗浄過程における各プログラムに対応する係数を累積して取得する。前記間隔係数kの大きさは、洗浄の時間間隔の長さと正の相関を有している。
【0126】
本実施例において、洗浄プログラムは、洗浄、脱水、すすぎ、乾燥等の過程を含む。汚染度合に対する各過程の寄与は異なっているため、それぞれに異なる係数を設定し、これらを累加又は乗算することで1回の洗浄におけるプログラム係数Pを取得する。また、洗浄サイクル間の時間間隔が短い場合には、汚れの自然乾燥による洗浄槽内への蓄積は生じにくいが、時間間隔が長い場合には汚れの蓄積過程に有利となる。そこで、間隔係数kの数値は、時間間隔が長いほど大きくなるようにする。
【0127】
本実施例では、累積汚染指数が臨界値以上となった場合、洗濯機は、自動クリーニングプログラムを実行するようユーザに注意喚起する。好ましくは、累積汚染指数が臨界値を超えて上昇を続けている場合には、これに伴って、洗濯機がユーザに注意喚起する頻度が増加する。
【0128】
本実施例では、累積汚染指数が臨界値を超えた場合に自動クリーニングプログラムが実行されなければ、当該指数が引き続き増加する。そのため、累積汚染指数の増加に応じて注意喚起の頻度を設定することで、ユーザによるタイムリーな自動クリーニングプログラムの実行を保証できる。
【0129】
本実施例では、ユーザが自動クリーニングプログラムを実行したあと、累積汚染指数が自動的にリセットされて、累積が再開される。好ましくは、ユーザは、使用状況に応じて累積汚染指数を手動でリセット可能である。
【0130】
本実施例において、ユーザは洗浄槽をクリーニングするその他の方法を有し得るため、自動クリーニングプログラムが自動的に累積汚染指数をリセット可能なだけでなく、ユーザによる手動リセットも可能とする。
【実施例2】
【0131】
本実施例は、実施例1と以下の点において異なっている。
【0132】
本実施例では、前記累積間隔係数を数式18とする。kは、i回目の洗浄以前の各洗浄間の時間間隔がi回目の洗浄時に洗浄槽の汚染度合に及ぼす影響を表す間隔係数である。統計周期において、i=1の場合には1回目の洗浄の間隔係数をk=1とし、i>1の場合には、1回目の洗浄の間隔係数をk=0とする。
【0133】
【数18】
【0134】
本実施例において、洗濯機は、統計周期内で各洗浄サイクル間の時間間隔をそれぞれ記録する。いずれかの回の洗浄サイクルの累積間隔係数を決定する際には、その回の洗浄以前に統計された各洗浄サイクルの間隔係数を累加する必要がある。本発明についてよりしっかりと説明するために、以下の通り例示する。
【0135】
1回目の洗浄時には、その回の洗浄は間隔を有していないが、プログラム係数Pが0でないことを考慮して、間隔係数を1と設定する。
【0136】
2回目の洗浄時には、2回目の洗浄と1回目の洗浄の間に間隔が存在するため、累積間隔係数=1回目の洗浄の間隔係数+2回目の洗浄の間隔係数となる。しかし、1回目の洗浄以前には間隔が存在しないため、累積間隔係数が0でない場合には、1回目の洗浄の間隔係数を0と設定する。
【0137】
3回目の洗浄時には、3回目、2回目及び1回目の洗浄の間にいずれも間隔が存在するため、累積間隔係数=1回目の洗浄の間隔係数+2回目の洗浄の間隔係数+3回目の洗浄の間隔係数となる。しかし、1回目の洗浄以前には間隔が存在しないため、累積間隔係数が0でない場合には、1回目の洗浄の間隔係数を0と設定する。
【0138】
同様にして、1回の洗浄の間隔係数を累加することで累積間隔係数を取得可能である。
【0139】
また、本実施例における累積間隔係数は累加方式で算出するため、乗算法を用いる場合のように乗算結果が小さくなり過ぎるとの問題は存在しない。よって、累積間隔係数Kに予め定めた最小値は設定しない。
【0140】
本実施例のその他の実施形態は実施例1と同様である。
【実施例3】
【0141】
本実施例は、実施例1又は2と以下の点において異なっている。
【0142】
本実施例では、洗濯機の洗浄温度を調節可能なことから、1回の洗浄における洗浄槽の汚染指数をs=P×K×Tとする。Tは、前記1回の洗浄で選択された洗浄温度が洗浄槽の汚染度合に及ぼす影響を表す温度係数である。また、各洗浄における洗浄槽の累積汚染指数を数式19とする。Tは、前記i回目の洗浄で選択された洗浄温度が洗浄槽の汚染度合に及ぼす影響を表す温度係数である。
【0143】
【数19】
【0144】
本実施例では、洗浄温度が分子活性や細菌繁殖の度合に影響を及ぼし得るため、プログラム係数Pと累積間隔係数Kをベースに温度係数Tを設定する。また、理論分析と実験検証に基づき、洗浄温度別に異なる係数を設定することで、汚染度合に対する影響を反映する。
【0145】
本実施例において、前記プログラム係数Pは、洗浄過程における各プログラムに対応する係数を累積して取得する。前記間隔係数kの大きさは、洗浄の時間間隔の長さと正の相関を有している。前記温度係数Tは、温度が低温から高温に徐々に上昇するにつれて小さくなる。
【0146】
本実施例において、洗浄プログラムは、洗浄、脱水、すすぎ、乾燥等の過程を含む。汚染度合に対する各過程の寄与は異なっているため、それぞれに異なる係数を設定し、これらを累加又は乗算することで1回の洗浄におけるプログラム係数Pを取得する。また、洗浄サイクル間の時間間隔が短い場合には、汚れの自然乾燥による洗浄槽内への蓄積は生じにくいが、時間間隔が長い場合には汚れの蓄積過程に有利となる。そこで、間隔係数kの数値は、時間間隔が長いほど大きくなるようにする。また、温度も細菌の生存率に影響を及ぼす重要な要因であり、温度が低い場合には細菌が繁殖しにくいため、温度係数Tは低くなる。しかし、温度が上昇して細菌の成長に適した温度範囲になると、これに応じて、温度係数Tは最も高い値まで徐々に大きくなる。そして、温度が更に上昇するにつれて、高温環境が細菌の不活化作用を発揮するようになると、これに応じて、温度係数Tは最も低い値まで低下する。
【0147】
本実施例のその他の実施形態は実施例1又は2と同様である。
【実施例4】
【0148】
本実施例では、洗濯機の制御方法を提供する。洗濯機は、隣り合う各洗浄間の時間間隔と、各洗浄で選択された洗浄プログラム及び給水水質を影響要因として、1回の洗浄における洗浄槽の汚染指数を推計する。そして、複数回の洗浄の累積汚染指数が臨界値以上となった場合、自動クリーニングプログラムを実行するようユーザに注意喚起する。
【0149】
本実施例では、洗濯機の使用時に、1回の洗浄サイクルにおけるプログラムの違いによって洗浄槽は異なる度合で汚染される。例えば、乾燥過程では、高温となることから洗浄槽内の微生物の生存確率が低下し、汚染度合が低減する。反対に、すすぎ時には、窒素やホスフィン元素を含有する洗浄水に衣類の汚れや細菌が進入するため、洗浄槽の汚染度合が上昇する。また、洗浄サイクルの終了後、洗浄槽には自然乾燥の過程が存在するが、洗浄サイクル間の時間間隔の長さによって汚れの蓄積度合に違いが生じるため、洗浄槽の汚染度合も異なってくる。このほか、通常、家庭での洗濯用水には行政が供給する水道水が使用され、水の硬度が高いことから水垢が発生しやすいとの問題がある。乾燥により凝固した水垢が長期的に蓄積されることでも、洗浄槽の汚染度合が悪化してクリーニングの難度は上昇する。そこで、本発明が提供する方法では、汚染度合に対する水質要因の寄与と、1つ1つの洗浄サイクルにおけるプログラム選択及び時間間隔が洗浄槽の汚染度合に及ぼす影響を総合的に考慮して、累積汚染度合が臨界に達した場合に自動クリーニングプログラムを実行するようユーザに注意喚起する。
【0150】
本実施例では、各洗浄における洗浄槽の累積汚染指数をSとすると、数式20である。iは、前記1回の洗浄を統計周期としたときのi回目の洗浄を表す。Pは、前記i回目の洗浄で選択された洗浄プログラムが洗浄槽の汚染度合に及ぼす影響を表すプログラム係数である。Kは、i回目の洗浄以前の各洗浄間の時間間隔の累積が洗浄槽の汚染度合に及ぼす影響を表す累積間隔係数である。Aは、i回目の洗浄時の給水水質が汚染度合に及ぼす影響を表す水質係数である。
【0151】
【数20】
【0152】
本実施例において、異なる衣類ケアプログラムは異なる処理過程に対応するため、洗浄槽の汚染に対する影響度合も異なってくる。そこで、プログラム係数Pを設定する。つまり、プログラム別に分類して数値の異なる係数を設定することで、汚染度合に対する影響を反映する。また、ユーザが洗濯機を用いて連続して洗浄を行う場合には、洗浄槽に自然乾燥及び汚れの蓄積過程が存在しないか、当該過程が短く、完全には汚れが蓄積しないため、槽の汚染度合の累積はやや遅くなる。そこで、累積間隔係数Kを設定する。つまり、隣り合う各洗浄間の時間間隔の長さによって異なる係数を設定し、累積及び推計する。これにより、汚染度合に対する時間間隔の影響を反映する。このほか、水質係数Aを設定して、洗浄槽の汚染度合に対する水質の影響を反映する。本方法では、洗濯機における各フル洗浄サイクルで増加した汚染度合を推計して汚染指数を取得し、各洗浄サイクルの汚染指数を累加することで当該洗濯機の累計汚染指数とする。
【0153】
本実施例では、前記水質係数を数式21とする。Dは、i回目の洗浄時の給水硬度が水質係数Aに及ぼす影響を表す硬度係数である。また、数式22は、i回目の洗浄における洗浄槽内の水温Tの積分である。前記積分結果は水質係数Aに影響を及ぼす。
【0154】
【数21】
【0155】
【数22】
【0156】
本実施例において、水質がもたらす汚染は水温とも関係するため、Aの値を水温と関連付けている。具体的に、Aの大きさは水質の硬度Dに正比例し、硬度Dが高いほどAの値は大きくなる。また、Aの大きさは水温Tに正比例し、水温Tが高いほどAの値は大きくなる。洗浄プログラムにおいて変温制御を行う場合には、前記水温Tが変数となる。そのため、水温Tを積分計算し、得られた積分結果に硬度Dを乗算することで水質係数Aを取得する。
【0157】
本実施例では、前記i回目の洗浄における洗浄槽内の水温を数式23とし、i回目の洗浄における洗浄槽内の水の保持時間tを積分する。前記積分結果は、時間t内の水温Tの変化を表す。
【0158】
【数23】
【0159】
本実施例において、水質がもたらす汚染は水温と関係するだけでなく、洗浄槽内の水の保持時間とも関係するため、Aの値を水温及び水の保持時間と関連付ける。具体的に、Aの大きさは水質の硬度Dに正比例し、硬度Dが高いほどAの値は大きくなる。また、Aの大きさは水温Tに正比例し、水温Tが高いほどAの値は大きくなる。また、Aの大きさは時間tに正比例し、時間tが長いほどAの値は大きくなる。洗浄プログラムで変温制御を行う場合には、水温Tが時間tに伴って変化する変数となるため、ここでは時間tを積分することで時間t内の水温Tの変化を反映する。これにより、温度Tと時間tとの相互関係が更に説明されるとともに、前記温度Tの積分の公式に代入することで、より正確な水質係数Aが得られる。
【0160】
本実施例において、水質係数Aは給水される水の性質により決定されるため、給水のないプログラムでは水質係数Aは0となる。また、累積汚染指数の公式に適合させ、且つ、洗浄槽の汚染度合に対する水質係数Aの寄与をより合理的に反映するために、理論分析及び実験検証を通じて定数係数Rを取得し、数式24又は数式25とする。
【0161】
【数24】
【0162】
【数25】
【0163】
本実施例において、前記制御方法は、更に、水質係数を単独で統計する。累積水質係数をWとすると、数式26となり、Wが一定のレベルに達した場合に、水垢対応の洗浄剤を添加するようユーザに注意喚起する。
【0164】
【数26】
【0165】
本実施例では、水質係数Aを累積汚染指数Sに取り入れるだけでなく、水質係数Aを単独で累積計算する。これにより、ユーザが洗浄槽内の水垢の蓄積度合を把握して、自動クリーニングプログラムの実行時に水垢対応の洗浄剤を添加するよう補助する。
【0166】
本実施例では、洗濯機に累積水質係数Wの第1基準値及び第2基準値を予め設定しておく。そして、Wが第1基準値を超えた場合には、自動クリーニングプログラムの実行時に水垢対応の洗浄剤を添加するようユーザに注意喚起する。また、W或いはW/Sが第2基準値を超えた場合には、水垢対応の洗浄剤を添加して洗浄槽を浸け置きしたあとに自動クリーニングプログラムを実行するようユーザに注意喚起する。好ましくは、Wが第2基準値を超えた場合には、槽を解体してクリーニングするととともに、ヒートパイプをクリーニングするようユーザに注意喚起する。
【0167】
本実施例では、前記累積間隔係数を数式27とする。kは、i回目の洗浄以前の各洗浄間の時間間隔がi回目の洗浄時に洗浄槽の汚染度合に及ぼす影響を表す間隔係数である。また、統計周期における1回目の洗浄の間隔係数はk=1となる。
【0168】
【数27】
【0169】
本実施例において、洗濯機は、統計周期内で各洗浄サイクル間の時間間隔をそれぞれ記録する。いずれかの回の洗浄サイクルの累積間隔係数を決定する際には、その回の洗浄以前に統計された各洗浄サイクルの間隔係数を乗算する必要がある。本発明についてよりしっかりと説明するために、以下の通り例示する。
【0170】
1回目の洗浄時には、その回の洗浄は間隔を有していないため、間隔係数を1と設定する。
【0171】
2回目の洗浄時には、2回目の洗浄と1回目の洗浄の間に間隔が存在するため、累積間隔係数=1×2回目の洗浄の間隔係数となる。
【0172】
3回目の洗浄時には、3回目、2回目及び1回目の洗浄の間にいずれも間隔が存在するため、累積間隔係数=1×2回目の洗浄の間隔係数×3回目の洗浄の間隔係数となる。
【0173】
4回目の洗浄時には、4回目、3回目、2回目及び1回目の洗浄の間にいずれも間隔が存在するため、累積間隔係数=1×2回目の洗浄の間隔係数×3回目の洗浄の間隔係数×4回目の洗浄の間隔係数となる。
【0174】
同様にして、1回の洗浄の間隔係数を乗算することで累積間隔係数を取得可能である。
【0175】
本実施例において、前記累積間隔係数Kは予め定められた最小値を有しており、推計により取得したKが予め定められた最小値よりも小さい場合には、予め定められた最小値に基づき推計する。
【0176】
本実施例では、間隔係数の数値として0~1を含む範囲を採用する。そのため、時間間隔が短い場合には、小さな数値の間隔係数を乗算することで累積間隔係数がより小さな数値となり、汚染度合の反映に支障をきたす。よって、間隔係数Kの最小値を設定しておくことで、上記の状況が発生した場合の反映の精度を保証する。
【0177】
本実施例において、前記プログラム係数Pは、洗浄過程における各プログラムに対応する係数を累積して取得する。前記間隔係数kの大きさは、洗浄の時間間隔の長さと正の相関を有している。
【0178】
本実施例において、洗浄プログラムは、洗浄、脱水、すすぎ、乾燥等の過程を含む。汚染度合に対する各過程の寄与は異なっているため、それぞれに異なる係数を設定し、これらを累加又は乗算することで1回の洗浄におけるプログラム係数Pを取得する。また、洗浄サイクル間の時間間隔が短い場合には、汚れの自然乾燥による洗浄槽内への蓄積は生じにくいが、時間間隔が長い場合には汚れの蓄積過程に有利となる。そこで、間隔係数kの数値は、時間間隔が長いほど大きくなるようにする。
【0179】
本実施例では、累積汚染指数が臨界値以上となった場合、洗濯機は、自動クリーニングプログラムを実行するようユーザに注意喚起する。好ましくは、累積汚染指数が臨界値を超えて上昇を続けている場合には、これに伴って、洗濯機がユーザに注意喚起する頻度が増加する。
【0180】
本実施例では、累積汚染指数が臨界値を超えた場合に自動クリーニングプログラムが実行されなければ、当該指数が引き続き増加する。そのため、累積汚染指数の増加に応じて注意喚起の頻度を設定することで、ユーザによるタイムリーな自動クリーニングプログラムの実行を保証できる。
【0181】
本実施例では、ユーザが自動クリーニングプログラムを実行したあと、累積汚染指数が自動的にリセットされて、累積が再開される。好ましくは、ユーザは、使用状況に応じて累積汚染指数を手動でリセット可能である。
【0182】
本実施例において、ユーザは洗浄槽をクリーニングするその他の方法を有し得るため、自動クリーニングプログラムが自動的に累積汚染指数をリセット可能なだけでなく、ユーザによる手動リセットも可能とする。
【実施例5】
【0183】
本実施例は、実施例4と以下の点において異なっている。
【0184】
本実施例では、前記水質係数を数式28とする。数式29は、i回目の洗浄における洗浄槽内の水温Tと、洗浄槽内の水の保持時間tを二重積分することを表している。前記積分結果は水質係数Aに影響を及ぼす。
【0185】
【数28】
【0186】
【数29】
【0187】
本実施例では、異なるモデリングの結果より、水質係数Aに影響を及ぼす要因は、それぞれ水質の硬度D、水温T及び洗浄槽内の水の保持時間tとなる。そのため、水温Tと保持時間tとの関数関係は考慮せず、水温Tと洗浄槽内における水の保持時間tを二重積分してから水質の硬度Dを乗算することで、水質係数Aの算出の複雑さを低下させる。
【0188】
本実施例において、水質係数Aは給水される水の性質により決定されるため、給水のないプログラムでは水質係数Aは0となる。また、累積汚染指数の公式に適合させ、且つ、洗浄槽の汚染度合に対する水質係数Aの寄与をより合理的に反映するために、理論分析及び実験検証を通じて定数係数Rを取得し、数式30とする。
【0189】
【数30】
【0190】
本実施例において、前記制御方法は、更に、水質係数を単独で統計する。累積水質係数をWとすると、数式31となり、Wが一定のレベルに達した場合に、水垢対応の洗浄剤を添加するようユーザに注意喚起する。
【0191】
【数31】
【0192】
本実施例において、前記制御方法は、更に、累積汚染指数に対する累積水質係数の割合を統計する。前記割合はW/Sとし、これが一定の割合に達した場合に、水垢対応の洗浄剤を添加するようユーザに注意喚起する。
【0193】
本実施例では、水質係数Aを累積汚染指数Sに取り入れるだけでなく、水質係数Aを単独で累積計算するとともに、累積水質係数Wが累積汚染指数Sに占める割合を更に算出する。これにより、ユーザが洗浄槽内の水垢の蓄積度合を把握して、自動クリーニングプログラムの実行時に水垢対応の洗浄剤を添加するよう補助する。
【0194】
本実施例では、洗濯機にW/Sの第1基準値及び第2基準値を予め設定しておく。そして、W/Sが第1基準値を超えた場合には、自動クリーニングプログラムの実行時に水垢対応の洗浄剤を添加するようユーザに注意喚起する。また、W/Sが第2基準値を超えた場合には、水垢対応の洗浄剤を添加して洗浄槽を浸け置きしたあとに自動クリーニングプログラムを実行するようユーザに注意喚起する。好ましくは、W/Sが第2基準値を超えた場合には、槽を解体してクリーニングするととともに、ヒートパイプをクリーニングするようユーザに注意喚起する。
【0195】
本実施例では、前記累積間隔係数を数式32とする。kは、i回目の洗浄以前の各洗浄間の時間間隔がi回目の洗浄時に洗浄槽の汚染度合に及ぼす影響を表す間隔係数である。統計周期において、i=1の場合には1回目の洗浄の間隔係数をk=1とし、i>1の場合には、1回目の洗浄の間隔係数をk=0とする。
【0196】
【数32】
【0197】
本実施例において、洗濯機は、統計周期内で各洗浄サイクル間の時間間隔をそれぞれ記録する。いずれかの回の洗浄サイクルの累積間隔係数を決定する際には、その回の洗浄以前に統計された各洗浄サイクルの間隔係数を累加する必要がある。本発明についてよりしっかりと説明するために、以下の通り例示する。
【0198】
1回目の洗浄時には、その回の洗浄は間隔を有していないが、プログラム係数Pが0でないことを考慮して、間隔係数を1と設定する。
【0199】
2回目の洗浄時には、2回目の洗浄と1回目の洗浄の間に間隔が存在するため、累積間隔係数=1回目の洗浄の間隔係数+2回目の洗浄の間隔係数となる。しかし、1回目の洗浄以前には間隔が存在しないため、累積間隔係数が0でない場合には、1回目の洗浄の間隔係数を0と設定する。
【0200】
3回目の洗浄時には、3回目、2回目及び1回目の洗浄の間にいずれも間隔が存在するため、累積間隔係数=1回目の洗浄の間隔係数+2回目の洗浄の間隔係数+3回目の洗浄の間隔係数となる。しかし、1回目の洗浄以前には間隔が存在しないため、累積間隔係数が0でない場合には、1回目の洗浄の間隔係数を0と設定する。
【0201】
同様にして、1回の洗浄の間隔係数を累加することで累積間隔係数を取得可能である。
【0202】
また、本実施例における累積間隔係数は累加方式で算出するため、乗算法を用いる場合のように乗算結果が小さくなり過ぎるとの問題は存在しない。よって、累積間隔係数Kに予め定めた最小値は設定しない。
【0203】
本実施例のその他の実施形態は実施例4と同様である。
【実施例6】
【0204】
本実施例は、実施例4又は5と以下の点において異なっている。
【0205】
本実施例では、洗濯機の洗浄温度を調節可能なことから、各洗浄における洗浄槽の累積汚染指数を数式33とする。T’は、前記i回目の洗浄で選択された洗浄温度が洗浄槽の汚染度合に及ぼす影響を表す温度係数である。
【0206】
【数33】
【0207】
本実施例では、洗浄温度が分子活性や細菌繁殖の度合に影響を及ぼし得るため、プログラム係数Pと累積間隔係数Kをベースに温度係数T’を設定する。また、理論分析と実験検証に基づき、洗浄温度別に異なる係数を設定することで、汚染度合に対する影響を反映する。
【0208】
本実施例において、前記プログラム係数Pは、洗浄過程における各プログラムに対応する係数を累積して取得する。前記間隔係数kの大きさは、洗浄の時間間隔の長さと正の相関を有している。前記温度係数T’は、温度が低温から高温に徐々に上昇するにつれて小さくなる。
【0209】
本実施例において、洗浄プログラムは、洗浄、脱水、すすぎ、乾燥等の過程を含む。汚染度合に対する各過程の寄与は異なっているため、それぞれに異なる係数を設定し、これらを累加又は乗算することで1回の洗浄におけるプログラム係数Pを取得する。洗浄サイクル間の時間間隔が短い場合には、汚れの自然乾燥による洗浄槽内への蓄積は生じにくいが、時間間隔が長い場合には汚れの蓄積過程に有利となる。そこで、間隔係数kの数値は、時間間隔が長いほど大きくなるようにする。また、温度も細菌の生存率に影響を及ぼす重要な要因であり、温度が低い場合には細菌が繁殖しにくいため、温度係数T’は低くなる。しかし、温度が上昇して細菌の成長に適した温度範囲になると、これに応じて、温度係数T’は最も高い値まで徐々に大きくなる。そして、温度が更に上昇するにつれて、高温環境が細菌の不活化作用を発揮するようになると、これに応じて、温度係数T’は最も低い値まで低下する。
【0210】
本実施例のその他の実施形態は実施例4又は5と同様である。
【0211】
以上は本発明の好ましい実施例にすぎず、本発明を何らかの形式に制限するものではない。本発明については好ましい実施例によって上記のように開示したが、本発明を限定するとの主旨ではない。本発明の技術方案を逸脱しない範囲において、当業者が上記で提示した技術内容を用いて実施可能なわずかな変形或いは補足は、同等に変形された等価の実施例とみなされ、いずれも本発明の技術方案の内容を逸脱するものではない。また、本発明の技術的本質に基づいて上記の実施例に加えられる任意の簡単な修正、同等の変形及び補足は、いずれも本発明の方案の範囲に属する。
図1