(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】デンプンの消化のための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
C08B 30/12 20060101AFI20240321BHJP
B01F 27/00 20220101ALI20240321BHJP
B01F 35/90 20220101ALI20240321BHJP
C08B 30/16 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
C08B30/12
B01F27/00
B01F35/90
C08B30/16
(21)【出願番号】P 2021519565
(86)(22)【出願日】2019-10-08
(86)【国際出願番号】 EP2019077149
(87)【国際公開番号】W WO2020074471
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-08-16
(32)【優先日】2018-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】515196953
【氏名又は名称】ピージーエイ・プツツ-グラニツツアー-アンラゲンバウ・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スティルン,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】シュタインドル,ローマン
(72)【発明者】
【氏名】バーテルムス,クラウス
【審査官】宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-530467(JP,A)
【文献】米国特許第03308037(US,A)
【文献】米国特許第03371018(US,A)
【文献】国際公開第2018/011401(WO,A1)
【文献】特公昭47-027943(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0092614(US,A1)
【文献】米国特許第05437169(US,A)
【文献】中国実用新案第205999716(CN,U)
【文献】中国実用新案第206014739(CN,U)
【文献】GUGLIELMO SANTI; ET AL,JOURNAL OF BIOTECHNOLOGY,2013年01月10日,VOL:157, NR:4,PAGE(S):590-597,http://dx.doi.org/10.1016/j.jbiotec.2011.09.005
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08B、B01F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デンプンを可溶化するための方法であって、以下の方法ステップ:
a) 粉末状デンプンの水性スラリーを生成することと、
b) 前記スラリーを蒸煮容器(4)内に導入することと、
c) 熱機械的可溶化を実施するために、蒸煮容器(4)内のスラリーを蒸気で処理することであって、
前記スラリーは、フィン付き分散ディスクを備えたロータにより作られる剪断力に機械的作用により曝露され、
蒸気は、ロータの下方に配置された中空リング(70)から供給され、ロータ(42)に向けられた開口が蒸気の排出のために設けられるか、及び/又は、蒸気は、蒸煮容器(4)内に配置された要素(60)から、ロータ(42)の領域内の蒸気用の少なくとも1つの出口開口(63)を通って出る、
ように処理することと、
d) 少なくとも部分的にペーストに変換されたデンプンを、蒸煮容器(4)から取り出すことと、
e) ペーストを任意的に希釈すること、とを特徴とし、
ここで、前記要素(60)は、
-環状で、且つ
-中空である、
方法。
【請求項2】
前記デンプン含有スラリーは、ステップc)において、蒸気を導入することによって、蒸煮容器(4)内で85℃~135℃の温度に加熱されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップc)が、1~5時間の期間中に実施されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ステップa)において、最大35~45%のデンプン粉末を有するスラリーが固体として生成されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
スラリーが、ステップb)の前に85℃~95℃の温度に加熱されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
ステップc)を実施する際に、デンプンの分解度が、スラリーが蒸煮容器内で撹拌される速度を選択することによって設定されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
ステップc)を実施する際に、デンプンの可溶化度が、スラリーのスループットを選択することによって設定されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
ステップc)を実施する際、デンプンの可溶化度が、スラリーの温度を選択することによって設定されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1に記載のステップd)により得られるペーストに酵素が添加され、ペースト中に含まれるデンプンが酵素の作用下で分解されることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
酵素が失活されることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記酵素の失活は、ペーストを120℃~135℃の温度に加熱することによって行われることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1に記載の工程c)において蒸気を導入することによって温度を上昇させることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ステップc)において、蒸煮容器(4)を通るスラリーのスループットは、蒸煮容器(4)を通るスラリーの流れを妨害することによって、及び/又は、蒸煮容器(4)内若しくは後方でのスラリーの静的混合によって調節されることを特徴とする、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
ステップa)において、スラリーを生成するためにカチオン性デンプン粉末が使用されることを特徴とする、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
ステップa)において、スラリーを生成するために天然デンプン粉末が使用されることを特徴とする、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
容器(40)と、カバー(41)と、スラリーをカバー内に排出するライン(50)と、少なくとも部分的に変換されたデンプン(ペースト)を排出するためにカバー(41)内に設けられたラインと、容器(40)の内部に設けられ、バッフルとして設計されたステータシート(61)と、ロータ(42)と、要素(60)とを備え、その外面は、容器(40)の内面からある距離にあり、その内側開口は、ロータ(42)と同軸に配置され、容器(40)内へ排出する蒸気供給ライン(62)を特徴とし、
ここで、前記要素(60)は、
-環状で、且つ
-中空である、
請求項1に記載の方法のステップc)を実施するための、蒸煮容器(4)の形態の装置。
【請求項17】
前記蒸気供給ライン(62)は、要素(60)内へ排出し、前記要素(60)は、前記ライン(62)の排出箇所とは反対側の、ロータ(42)に隣接する側に、蒸気用の少なくとも1つの出口開口(63)を有することを特徴とする、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記
出口開口(63)は、要素(60)のロータ(42)に対向する環状端面上に分散して設けられていることを特徴とする、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記蒸気供給ライン(62)は、蒸気用の少なくとも1つの出口開口を有する中空リング(70)に通じていることを特徴とする、請求項16に記載の装置。
【請求項20】
前記リング(70)は、前記要素(60)から離れるロータ(42)の側に配置されることを特徴とする、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記出口開口は、前記ロータ(42)に面する前記リング(70)の壁に設けられていることを特徴とする、請求項19又は20に記載の装置。
【請求項22】
前記リング(70)は、その延長部にわたって分散して配置された複数の出口開口を有することを特徴とする、請求項19~21のいずれか1項に記載の装置。
【請求項23】
前記ステータシート(61)は、要素(60)から突出し、容器(40)の内面に突出することを特徴とする、請求項16~22のいずれかに記載の装置。
【請求項24】
前記ロータ(42)は、その少なくとも1つの側面にフィン(45)を有することを特徴とする、請求項16~23のいずれか1項に記載の装置。
【請求項25】
ロータ(42)のシャフトと同軸である要素(60)の開口が漏斗形状であり、前記開口の広がった領域が容器(40)のカバー(41)に面していることを特徴とする、請求項16~24のいずれかに記載の装置。
【請求項26】
前記ライン(50)の軸線は、要素(60)と同軸に、かつロータ(42)と同軸に配向されることを特徴とする、請求項16~25のいずれかに記載の装置。
【請求項27】
前記分散ディスク(44)上のフィン(45)は、内側から外側に向かって高さが増加することを特徴とする、請求項16~26のいずれか1項に記載の装置。
【請求項28】
前記フィン(45)は、ロータ(42)のシャフトを通過する径方向平面に対して斜めに設定されていることを特徴とする、請求項16~27のいずれかに記載の装置。
【請求項29】
前記ロータ(42)は、前記容器の底部を通って容器(40)の内部に突出することを特徴とする、請求項16~28のいずれか1項に記載の装置。
【請求項30】
前記ライン(50)の排出箇所の領域内に、ディフューザとして機能する狭窄部(52)が設けられていることを特徴とする、請求項16~29のいずれか1項に記載の装置。
【請求項31】
前記狭窄部(52)は、環状フィ
ンによって形成されることを特徴とする、請求項
30に記載の装置。
【請求項32】
前記環状フィンは、三角形断面を有する環状フィンであることを特徴とする、請求項31に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の序文部分の特徴を有するデンプンの可溶化(以下、「消化」ということもある)方法に関する。
【0002】
本発明はまた、本発明による方法が実施されているときに蒸煮容器として使用することができ、請求項17の序文部分の特徴を有する装置に関する。
【背景技術】
【0003】
デンプンを分解することによってデンプンを加工する方法は、公知である。デンプンの酵素分解のための方法では、天然デンプン粉末は、供給バッグ(「ビッグバッグ」)又はサイロからスラリーステーションに供給され、ここで、デンプン粉末は水中に導入され、35%までの固形分を有するスラリー(懸濁液)が生成される。このようにして得られたデンプンのスラリーは、スラリーステーションから蒸煮容器に揚送され、そこで分解を引き起こす酵素(アミラーゼ)がスラリーステーションにおいて、又はスラリーをスラリーステーションから蒸煮容器に運ぶポンプの前方若しくは後方において、測定された量で添加される。通常、蒸気を注入する手段によってスラリーを蒸煮容器に入れる場合、スラリーは、85℃~95℃の温度に加熱され、すでに分解が起こっている。
【0004】
蒸煮容器への供給装置内には、スラリーが噴出するのを防止するために、及び/又は、スラリーの供給物をより均質に構成するために、静的ミキサー又は他の構成要素を設けることができる。
【0005】
蒸煮容器内において、公知の方法では、所望の分解度のための滞留時間が容積バッファリングによって設定される。デンプン(天然デンプン)の酵素分解のための公知の方法を実施する種々の装置の場合、この方法を加速するために、撹拌機構及び任意的にミキサーディスクが蒸煮容器内に提供される。
【0006】
デンプンの消化によって得られたペーストは、ポンプを使用して蒸煮容器から取り出され、酵素が使用された場合には、失活ゾーンを通して揚送される。通常、失活ゾーンは栓流反応器であり、最初に蒸気を導入することによってペーストを120~135℃の温度に加熱する。失活時間は、パイプ容積及び/又は揚送出力によって制御される。
【0007】
酵素の失活によりデンプンの分解が停止した後、ペーストを再び希釈し、次いで貯蔵する。
【0008】
別の公知の手法は、蒸煮容器の代わりに、蒸気注入後に設置されるラビリンスパイプを使用することであり、この場合、所望の分解度に十分な滞留時間を達成することができ、剪断縁部を介して、懸濁液中の物質の追加の剪断が達成される。
【0009】
蒸煮容器はまた、公知の方法を用いて、バッチ操作(それに応じて十分に大きく作られる場合)で使用され得る。
【0010】
公知の方法では、比較的大きなユニットが必要であるか、又は少量のスループットしか得られないことが不利である。
【0011】
カチオン性デンプンを消化するための公知の方法では、カチオン性デンプン粉末を供給バッグ(ビッグバッグ)又はサイロからスラリーステーションに供給し、粉末を水中に導入し、そこで15%までの固形分を有するスラリー(懸濁液)を生成する。このデンプンスラリーを蒸煮管内に揚送する。
【0012】
カチオン性デンプンを消化するための公知の方法では、蒸煮管は栓流反応器であり、最初に蒸気を導入することによってデンプンスラリーを115℃~135℃に加熱する。滞留時間は、栓流反応器の容積及び/又は揚送出力によって制御される。蒸煮工程の後、ほとんどの場合、それは再び希釈され、得られたペーストは、次いで貯蔵される。
【0013】
また、カチオン性デンプンの消化の場合、蒸煮管の代わりにラビリンスパイプを蒸気注入後に使用することができる。
【0014】
また、蒸煮管を蒸煮容器に置き換えることも知られており、蒸煮容器は、十分に大きく作られている場合には、バッチ操作で使用することもできる。
【0015】
デンプンを分解するための機器及び方法は、特許文献1、特許文献2、及び特許文献3から公知である。
【0016】
特許文献1から、デンプンを、熱(225~350°F)の作用下で、水中の細菌アルファ-アミラーゼ(α-アミラーゼ)を使用して製紙工業用の組成物に変換することが知られている。プロペラブレードを有するロータが回転する垂直反応器カラムを使用する。水平及び垂直バッフルが設けられている。上向きの流れを伴う撹拌作用が生成される。特許文献1は、紙のサイジングのために製紙産業で使用することができる生成物を得るための、細菌アミラーゼによるデンプンの連続変換に関する。乱流を発生させるためのバッフル及び撹拌機構を有する垂直反応器が使用される。添加されたアミラーゼを失活させるために蒸気が導入され、蒸気が導入される場所は開放されたままである。
【0017】
特許文献2は、デンプンの酵素加水分解を記載している。酵素が添加される、加水分解されるデンプンは、混合中に剪断力に供される。デンプン分解酵素が使用される、加水分解デンプンの生成方法が、特許文献2に開示されている。必要な水は、蒸気として供給することができ(直接蒸気注入)、蒸気は「適切な手段」によって供給される。温度の設定は、加水分解が実施される際に、「剪断混合」と同時に実施され得ることが述べられている。
【0018】
特許文献3によれば、酵素的に分解されたデンプンペーストの製造中に、デンプンペーストは、乱流が発生する反応容器に供給される。デンプンペーストは、酵素及び蒸気加熱の作用によってベンチュリ管状凝集モジュール内で生成される。酵素的に分解されたデンプンペーストの製造方法は、特許文献3に記載されている。この場合、反応容器内の酵素とデンプンペーストとの良好な混合は、乱流によって達成される。デンプンペーストは、反応容器内に供給され、又は反応容器内で生成される。撹拌機構を用いて、反応容器内でより激しい乱流状態を調節可能に発生させる。特許文献3の場合、凝集が撹拌機構を用いることなく凝集モジュール内で行われ、該モジュールに蒸気が供給される。蒸気ではなく澱粉ペーストが反応容器に供給される。
【0019】
特許文献4には、120℃~180℃の温度の蒸煮チャンバ内でのデンプンのコロイド溶液の生成が記載されている。段落[0021]は「分子間水素結合の切断及び巨大分子の溶解」に言及している。段落[0039]は、第2のステップにおいて、デンプンのコロイド溶液中への加圧蒸気の導入に言及している(段落[0066]も参照)。段落[0057]には、撹拌システムが使用されることが言及されている。段落[0068]及び[0069]では、蒸気分配リングが詰まるのを防止するために、「チャンバの基部で」蒸気の導入を回避すべきであることが説明されている。特許文献4の図3に示される装置を用いて、蒸気はラインを介して蒸煮器の二重壁に1回、コロイド溶液に1回供給される(段落[0101]及び[0102])。これは、特許文献4の他の図に示されている蒸煮器にも当てはまる。撹拌ツール(詳細には特定されていない)の領域に供給される蒸気については、特許文献4号には記載されていない。
【0020】
特許文献5によれば、ゲル化/酵素加水分解に使用することができるデンプンの「分解(breakdown)生成物」(分解(decomposition)生成物)が製造される。特許文献5では、ラインを介して蒸気を装置に供給することが提案されている。この装置は、図1の下方からボイラー内に、及び図2の上方からボイラー内に蒸気を導入する。撹拌機構は、特許文献5のボイラーには設けられていない。
【0021】
Guglielmo Santiの文献には、飽和蒸気が導入される、機械的撹拌を伴うバイオリアクターが提案されている。蒸気は、下方から反応器の底部に通じているラインを通って供給される。撹拌機構は、反応器の底部の上方のある距離で終焉する。
【0022】
特許文献6によれば、デンプンミルクが酵素切断に供され、ここでデンプンミルクを140~150℃に加熱することによって凝集させる。得られた「ペースト」を冷却し、酵素と混合し、分解してマルトースシロップを形成する。ロータ及びバッフルを備えた「高速ミキサー」の形態の反応容器が使用される。従って、特許文献6は、デンプンを120~160℃で凝集させ、酵素で切断してマルトースシロップを生成する方法を開示している。「デンプンミルク」の加熱は、直接又は間接的な蒸気加熱で行われる。撹拌と直接及び間接的加熱を有する方法を実施するためのユニットが示されている。撹拌機構は、ブレードを備えている。蒸気は、ディフューザの領域において下方からユニット内に供給される。ディフューザの上方にバッフルが配置されており、バッフルの上方に撹拌機構が設けられている。特許文献3に示される撹拌機構は、「剪断力」を生成するのに適しておらず、それが剪断力にも言及されていない理由である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【文献】米国特許第3,371,018 A号明細書
【文献】国際公開第2018/011401 A1号明細書
【文献】独国特許第10 2007 011 409 A1号明細書
【文献】米国特許出願公開第2010/159104 A1号明細書
【文献】米国特許第3,308,037 A号明細書
【文献】スイス特許第513 980 A号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明の目的は、デンプンを消化するために、改善され、より経済的に操作される方法、及びこの方法を実施する際に使用することができる蒸煮容器を利用可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
この目的は、本発明によれば、請求項1の特徴を有する方法と、請求項17の特徴を有する装置とによって達成される。
【0026】
本発明による方法によれば、デンプンのスラリー(懸濁液)の加熱は、蒸煮容器内に蒸気を導入することによって蒸煮容器内で直接行われ、剪断力がスラリーに作用し、その結果、より有利な工程制御が可能であることが有利である。
【0027】
特に、この場合、スラリーは、85℃~135℃の凝集温度まで蒸煮容器内で加熱されることが好ましい。
【0028】
本発明による手順及び本発明による装置の好ましい有利な構成は、従属請求項の主題である。
【0029】
本発明による方法及び本発明による装置を用いて、公知の分解方法、即ち酵素的デンプン分解、酸化的デンプン分解は、熱/機械的消化方法によって改善される。
【0030】
本発明による熱/機械的デンプン消化の利点は、デンプンをペーストに消化するための酸化的及び酵素的方法とは対照的に、化学添加剤を必要とせず、それによりモル質量のわずかな変化しか生じないことである。これは、熱的/機械的に処理された天然デンプンがより高い凝集性を有し、その結果、より高い紙強度を達成することができるという利点を有する。加えて、モル質量のわずかな変化のために、デンプンのより高い収率が達成される。
【0031】
本発明の別の利点は、本発明による熱/機械的デンプン消化では、失活が必要とされないという事実に起因する。用語「熱/機械的デンプン消化」は、ペーストを得るための、熱の投入及び剪断力の適用によるデンプンの処理を指す。
【0032】
本発明による方法を実施するために本発明により提案される装置の利点は、コンパクトな設計を有し、その結果、少ない再循環量及び短い滞留時間が達成されることである。別の利点は、速度、温度、ステータ/ロータ設計の方法パラメータが良好な制御性を保証するという事実に起因する。
【0033】
最後に、本発明による装置では、デンプンスラリーを高濃度で加工することができる。本発明による装置の別の利点は、装置内の蒸気の直接計量が提供され、酵素が使用される場合、酵素は、装置(蒸煮器)に従って測定された量で添加することができるという事実に起因する。本発明による装置では、追加的に導入される機械的エネルギー(剪断力)のため、従来のデンプン蒸煮器(パイプ蒸煮器、コンバータなど)と比較して、大きな利点が達成される。
【0034】
本発明による装置では、ステータと組み合わされたロータが使用され、同時に蒸気が導入されるので、デンプンスラリーに作用する剪断力のために、デンプンの迅速かつ容易に調整可能な凝集が保証される。これは、加工時間を短縮できることを意味する。別の利点は、多くの種類のデンプン(例えば、トウモロコシ、小麦、ジャガイモ)を加工できることである。
【0035】
本発明による装置において、増大した反応温度(蒸煮温度)が適用される場合、生成されるデンプンペーストの粘度の低下及びより安定な操作が達成される。
【0036】
機械的剪断投入のために、生成されるデンプンペーストの粘度の低下の原因である粗いコロイドデンプン粒子の減少が達成される。
【0037】
本発明による装置のロータの形態(ロータの高さ及び直径並びにその速度)を選択することによって、生成されるデンプンペーストの粘度を設定することができる。
【0038】
本発明によるデンプンの消化方法の利点は、酵素分解と、それによるペーストの所望の低粘度の設計された設定により、例えば製紙産業において使用可能な生成物を生成するために、消化によって得られるペーストに少なくとも1種の酵素が添加され得ることである。
【0039】
本発明による方法に酵素が使用される場合、酵素は、方法又は方法の完了のいずれかにおける失活によって不活性となる。
【0040】
可能な実施形態において、本発明による方法は、蒸煮容器内に配置された中空変位要素から、蒸気がロータの領域内の蒸気用の少なくとも1つの出口開口を通って出るという点で区別することができる。
【0041】
可能な実施形態において、本発明による方法は、ステップc)において、蒸気を導入することによって、デンプン含有スラリーを蒸煮容器内で85℃~135℃の温度に加熱するという点で区別することができる。
【0042】
可能な実施形態において、本発明による方法は、ステップc)が1~5時間の期間中に実施されるという点で区別することができる。
【0043】
可能な実施形態において、本発明による方法は、ステップa)において、最大35~45%のデンプン粉末を有するスラリーが固体として生成されるという点で区別することができる。
【0044】
可能な実施形態において、本発明による方法は、ステップb)の前のスラリーが85℃~95℃の温度に加熱されるという点で区別することができる。
【0045】
可能な実施形態において、本発明による方法は、ステップc)を実施する際、デンプンの消化度が、スラリーが蒸煮容器内で撹拌される速度を選択することによって設定されるという点で区別することができる。
【0046】
可能な実施形態において、本発明による方法は、ステップc)を実施する際、デンプンの消化度が、スラリーのスループットを選択することによって設定されるという点で区別することができる。
【0047】
可能な実施形態において、本発明による方法は、ステップc)を実施する際、デンプンの消化度が、スラリーの温度を選択することによって設定されるという点で区別することができる。
【0048】
可能な実施形態において、本発明による方法は、ステップd)の後、酵素を失活させるという点で区別することができる。
【0049】
可能な実施形態において、本発明による方法は、酵素の失活がペーストを120℃~135℃の温度に加熱することによって行われるという点で区別することができる。
【0050】
可能な実施形態において、本発明による方法は、蒸気を導入することによって温度を上昇させるという点で区別することができる。
【0051】
可能な実施形態において、本発明による方法は、ステップc)において、蒸煮容器を通るスラリーのスループットが、蒸煮容器を通るスラリーの流れを妨害することによって、及び/又は、蒸煮容器内若しくは後方でのスラリーの静的混合によって調節されるという点で区別することができる。
【0052】
可能な実施形態において、本発明による方法は、ステップa)において、スラリーを生成するためにカチオン性デンプン粉末が使用されるという点で区別することができる。
【0053】
可能な実施形態において、本発明による方法は、ステップa)において、スラリーを生成するために天然デンプン粉末が使用されるという点で区別することができる。
【0054】
可能な実施形態において、本発明による装置は、蒸気供給ラインが中空変位要素内へ排出するという点と、変位要素が、ラインの排出箇所とは反対側の、ロータに隣接する側に、蒸気用の少なくとも1つの出口開口を有するという点で区別することができる。
【0055】
可能な実施形態において、本発明による装置は、出口開口が、変位要素のロータに対向する環状端面上に分散して設けられているという点で区別することができる。
【0056】
可能な実施形態において、本発明による装置は、蒸気供給ラインが蒸気用の少なくとも1つの出口開口を有する中空リングへ排出するという点で区別することができる。
【0057】
可能な実施形態において、本発明による装置は、リングが変位要素から離れるロータの側に配置されているという点で区別することができる。
【0058】
可能な実施形態において、本発明による装置は、出口開口がロータに面するリングの壁に設けられているという点で区別することができる。
【0059】
可能な実施形態において、本発明による装置は、リングがその延長部にわたって分散して配置された複数の出口開口を有するという点で区別することができる。
【0060】
可能な実施形態において、本発明による装置は、ステータシートが変位要素から突出し、容器の内面に突出するという点で区別することができる。
【0061】
可能な実施形態において、本発明による装置は、ロータがその少なくとも1つの側面にフィンを有するという点で区別することができる。
【0062】
可能な実施形態において、本発明による装置は、ロータのシャフトと同軸である変位要素の開口が漏斗形状であり、開口の広がった領域が容器のカバーに面しているという点で区別することができる。
【0063】
可能な実施形態において、本発明による装置は、ラインの軸線が環状変位要素と同軸に、かつロータと同軸に配向されている点で区別することができる。
【0064】
可能な実施形態において、本発明による装置は、分散ディスク上のフィンの高さが内側から外側に向かって増加するという点で区別することができる。
【0065】
可能な実施形態において、本発明による装置は、フィンがロータのシャフトを通過する径方向平面に対して斜めに設定されている点で区別することができる。
【0066】
可能な実施形態において、本発明による装置は、ロータが容器の底部を通って容器の内部に突出するという点で区別することができる。
【0067】
可能な実施形態において、本発明による装置は、ラインの排出箇所の領域内に、ディフューザとして機能する狭窄部が設けられているという点で区別することができる。
【0068】
可能な実施形態において、本発明による装置は、狭窄部が環状フィン、特に三角形断面を有する環状フィンによって形成されるという点で区別することができる。
【0069】
本発明の更なる詳細及び特徴は、図面を参照して以下の説明で与えられ、図面では、公知のユニット及び手順、本発明による手順、並びに本発明により使用され得る蒸煮容器が例として示されている。ここで:
【図面の簡単な説明】
【0070】
【
図1】
図1は、天然デンプンの酵素分解のための(公知の)ユニットを図式的に示す。
【
図2】
図2は、カチオン性デンプンの
消化のための(公知の)ユニットを図式的に示す。
【
図3】
図3は、天然デンプンの酵素分解のため
の(連続)方法を実施するためのユニットを示す。
【
図4】
図4は、カチオン性デンプンの
消化のための本発明による方法を実施するためのユニットを示す。
【
図5】
図5は、デンプンの酵素分解のための公知の方法をブロック図で示す。
【
図6】
図6は、
カチオン性デンプンの
消化のための
公知の方法をブロック図で示す。
【
図7】
図7は、カチオン性デンプンの消化のための
本発明による方法をブロック図で示す。
【
図8】
図8は、
本発明による方法を実施する際に使用することができる蒸煮容器の2つの実施形態を部分的にかつ断面で示す。
【
図9】
図9は、
本発明による方法の実施に適したユニットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0071】
酵素的に分解されるデンプンの公知の方法は、
図1及び
図5のブロック図によるユニットにおいて連続的に実施することができ、以下のように記載することができる:
生の成分として使用されるのは:
天然デンプン粉末、
水、
蒸気、及び
酵素(アミラーゼ)
である。
【0072】
デンプン粉末をビッグバッグ1又はサイロ2に貯蔵する。この供給装置から、デンプン粉末は、スラリーステーション1に供給される。このステーション3では、デンプン粉末が水中に導入され、35%までの固形分を有するスラリー(懸濁液)が生成される。そこから、ポンプ5を使用してスラリー(デンプン懸濁液)を蒸煮容器4に揚送する。酵素は、ポンプ5の前方又は後方で、供給容器6からスラリーステーション3内に計量された量で添加することができる。ほとんどのユニットでは、スラリーは、蒸煮容器4に入る前に、蒸気注入9によって凝集温度(85℃~95℃)にされる。
【0073】
加えて、スラリーが噴出するのを防止し、供給物を均質に構成するために、静的ミキサー又は他の構成要素を蒸煮容器4の供給装置内に設置することができる。実際の蒸煮容器4においては、所望の分解度のための所要滞留時間(8~20分)が容積バッファリングによって設定される。蒸煮容器4内には、蒸煮容器4内のスラリー中に剪断力をもたらすことによって分解工程を加速するために、撹拌機構及び/又はミキサーディスクが設置される。
【0074】
ポンプ7によって、ペーストは蒸煮容器4から連続的に取り出され、失活領域8を通って揚送される。失活ゾーン8は栓流反応器であり、そこでは、蒸気注入9によって、ペーストが最初に120℃~135℃に加熱され、失活時間は、パイプ容積及び/又は揚送出力によって制御することができる。分解工程が停止された後、得られたペーストは、任意的にライン15からの水で希釈され、次いで貯蔵される。
【0075】
蒸気注入後に蒸煮容器4の代わりにラビリンスパイプを設けることが知られており、このパイプでは、第1に、所要滞留時間を達成することができ、第2に、剪断縁部を介してスラリーの追加の剪断が達成される。
【0076】
蒸煮容器は、バッチ操作にも使用することができる(それに応じて十分に大きく作られた場合)。その場合、蒸煮容器4内の懸濁液の製造から出発して、全ての方法ステップを実施する。欠点は、比較的大きなユニットが必要であるか、又はそれに応じて少ないスループット量が実施され得ることである。
【0077】
カチオン性デンプンの蒸煮方法の公知の方法(
図2によるユニットにおいて実施することができ、
図7のブロック図に示されるように流れることができる)では、以下のように進行することが可能である:
生の成分として使用されるのは:
カチオン性デンプン粉末、
水、及び
蒸気
である。
【0078】
デンプン粉末をビッグバッグ1又はサイロ2に貯蔵する。スラリーステーション3は、この供給装置から供給される。このステーション3では、粉末が水中に導入され、15%までの固形分を有するスラリー(懸濁液)が生成される。そこから、デンプン懸濁液を蒸煮管10に揚送する。
【0079】
蒸煮管10は栓流反応器であり、そこでは、蒸気注入9によってデンプン懸濁液が最初に115℃~135℃に加熱され、滞留時間は、パイプ容積及び/又は揚送出力によって制御することができる。蒸煮工程の後、得られたペースト(消化デンプン)を任意的に再び希釈し(ライン15からの水)、次いで貯蔵する。
【0080】
蒸気注入9の後に蒸煮管10の代わりにラビリンスパイプを設けることが知られており、このパイプでは、第1に、所要滞留時間を達成することができ、第2に、剪断縁部を介してスラリーの追加剪断が達成される。
【0081】
蒸煮管は、蒸煮容器10に置き換えることができる。それに応じて十分に大きく作られると、蒸煮容器10は、バッチ操作にも使用することができる。その場合、蒸煮容器10内の懸濁液の製造から出発して、全ての方法ステップを実施する。欠点は、比較的大きなユニットが必要であるか、又はそれに応じて少ないスループット量が実施され得ることである。
【0082】
本発明によるカチオン性デンプンを消化するための方法は、
図4に示され、図
8による蒸煮容器を使用するユニット内で実施することができ、この方法は、図
7によるブロック図に示されるように流れることができる。詳細には、この場合、以下のように進行することが可能である:
生の成分として使用されるのは:
カチオン性デンプン粉末、
水、及び
蒸気
である。
【0083】
デンプン粉末をビッグバッグ1又はサイロ2に貯蔵する。スラリーステーション3は、この供給装置から供給される。このステーション3では、粉末がライン11からの水中に導入され、35%までの固形分を有するスラリー(懸濁液)が生成される。そこから、デンプン懸濁液をポンプ5で蒸煮器4内に揚送する。
【0084】
蒸気注入は、ライン13を介して蒸煮器4内に直接行われ、そこでスラリーは凝集温度(85℃~135℃)にされる。
【0085】
加えて、スラリーが蒸煮器4を通して噴出するのを防止するため、及び/又は蒸煮工程がより均質となるように構成するために、静的ミキサー又は他の構成要素を、事実の後に設置することができる。蒸煮器4では、速度の変更、スループットの変更、及び/又は蒸煮温度によって所望のデンプン特性を設定することができる。
【0086】
得られたペーストは、任意的に、ライン15からの水で希釈され、次いで貯蔵される。
【0087】
本発明による方法を実施する場合、カチオン性デンプンの消化に使用することができる装置(蒸煮器4)は、図8に示す設計を有することができる。
【0088】
蒸煮容器4として使用される本発明による装置は、容器40を備え、この容器は、カバー41によってその上部が閉鎖されている。容器40内では、容器40の下方に配置されたベアリング本体(図示せず)に取り付けられたロータ42が下方から突出している。
【0089】
ロータ42の容器40へのフィードスルーは、摺動リングシール43によって密封されている。
【0090】
ロータ42は、ローラベアリング(図示せず)によってベアリング本体内に取り付けられている。
【0091】
容器40の下部領域に配置されたその部分において、ロータ42は分散ディスク44を有し、分散ディスク44の頂部には、径方向に対して傾斜したフィン45がある。この場合、一実施形態において、ロータ42の回転方向に対するフィン45の配向は、回転方向に対してフィン45の径方向内端部がフィンの径方向外端部よりも更に前方に位置するように選択される。
【0092】
変形実施形態では、フィン45は、回転方向に対してそれらの径方向外端部がそれらの径方向内端部よりも更に後方に位置するように配向される。
【0093】
また、フィン45は、内側から外側に向かって高さを増大させることができる。
【0094】
フィン45は、例えば、分散ディスク44の頂部で湾曲している。湾曲フィン45は、フィン45の凸側が分散ディスク44の回転方向に対して前方を向くように、又は凸側が分散ディスク44の回転方向に対して後方を向くように、いずれかに配向される。
【0095】
従って、分散ディスク44の頂部のフィン45は、フィン45の凹側が、分散ディスク44の回転方向に対して前方又は後方を向くようにも湾曲させることができる。
【0096】
分散ディスク44の頂部のフィン45は、真っ直ぐなフィンであってもよい。
【0097】
蒸煮容器40(蒸煮器)内に設けられた、分散ディスク44を有する回転ロータ42のために、剪断力が容器40内に導入されたデンプンのスラリー中にもたらされ、それによってデンプンの消化を有利に支持する。
【0098】
ロータ42は、例えば、100~150mm、好ましくは130mmの直径を有し、分散ディスク44上のフィン45を含めて、例えば、3~10mm、特に5~7mmの高さを有する。ロータ42は、例えば3,000~5,000rpmの速度で回転する。ロータ42の速度は、必要な円周速度に達するために、その直径に基づいて選択される。
【0099】
ロータ42上では、ブレード47を備えたプロペラ46が分散ディスク44の上方に設けられており;調製される懸濁液中で、プロペラは分散ディスク44上へと下方に向けられる流れを作り出す。プロペラ46は、必ずしも設けられていなくてもよい。
【0100】
カバー41では、ライン50(そこを通して懸濁液が容器40に流入する)は、ロータ42に対して同軸に排出する。
【0101】
カバー41の内側には、内側に向いた円錐状の突起51が設けられており、懸濁液供給ライン50はこの突起の中心部へと排出する。
【0102】
ライン50のこの配置は、容器40内の回路内に位置する懸濁液と、容器40内に新たに供給される懸濁液との最適な混合を保証する。
【0103】
ライン50の端部(容器40内の排出箇所)には、ディフューザとして機能する狭窄部52(断面が三角形の環状フィンによって形成される)が存在するため、供給された懸濁液と、容器40内に既に存在し、調製されている懸濁液との上述の混合は、有利に支持される。
【0104】
調製された懸濁液(消化デンプン)を排出するために、供給ライン50を取り囲む排出ラインが設けられている。
【0105】
カバー41は、容器40に螺合される。
【0106】
容器40の内側空間には、環状の変位要素60が設けられており、その内側開口は、ほぼ漏斗形状に設計することができる。変位要素60の外面と容器40の壁の内側との間には、環状チャネルが位置し、このチャネル内では、懸濁液が分散ディスク44を離れた後に上方に流れる。ロータ42上のプロペラ45によって任意的に支持される懸濁液は、変位要素60の内側開口を通って分散ディスク44に向かう方向に下方に流れる。
【0107】
図示されている実施形態では、ロータ42の上端がソケットネジを用いてロータ42内に固定された空気力学的に効率的な被覆によって覆われている。
【0108】
変位要素60の外側には、変位要素60の外側と容器40の壁の内側(特にその下部)との間の環状チャネル(ギャップ)にまたがる、即ちその自由縁が容器40の壁の内側に隣接するステータシート61が、バッフルとして設けられている。
【0109】
変位要素60を容器の内部に保持するために、締結ネジを設けることができる。
【0110】
図8の左側に示される蒸煮容器4の実施形態では、変位要素60は中空であり、ライン62を介して蒸気が供給され、ライン62は、蒸煮容器4のハウジング40のカバー41を通して案内される。ライン62は、中空変位要素60の上端面内へ排出する。その底部において、変位要素60は、複数の出口開口63を有し(変位要素60の内側開口の周囲に分散している)、その結果、ライン62を介して変位要素60の内側空間に導入される蒸気は、ロータ42の領域、特にその分散ディスク44の領域内において容器40の内側空間に出ることができる。
【0111】
図
8の右側に示される実施形態では、中空リング70(ディフューザリング)が設けられており、この中空リングには、蒸気の排出のためのリング開口が設けられている。
図9の右側に示すように、リング70は、変位要素60から離れるロータ40の分散ディスク44の側に配置されており、リング70の出口開口は、上方に向かう、即ち変位要素40に向かう方向に配向されている。明確にするために、蒸気がリング70に供給されるラインは、
図9には示されていない。
【0112】
特定の用途では、蒸煮容器4の容器40の内部空間内への蒸気の供給は、中空変位要素60及びリング70の両方を介して行われることが有利であり得る。
【0113】
図9に示すデンプン調製(デンプン消化)用ユニットの場合、デンプン分散蒸煮器(例えば、蒸煮容器4)に酵素を添加せずに、デンプンを凝集させる。凝集後、酵素を、デンプン蒸煮器の産出量に従って測定量でペーストに添加し、静的ミキサーを使用して均質に加工する。可変滞留時間の後、対応する配管によって、酵素を昇温により失活させる。この場合、利点は
a) デンプンが、デンプン分散蒸煮器(例えば、蒸煮容器4)内でほとんど分子量の低下なしに凝集される
b) その後の酵素処理によって、粘度及び消化度などのデンプン特性を、顧客のニーズに合わせて個別に設定することができる
ことである。
【0114】
また、デンプン分散蒸煮器(例えば、蒸煮容器4)における剪断エネルギー入力によっても、その後の使用が影響され得る。
【0115】
図9は、本発明による方法の前述の実施形態を実施することができるユニットを示す。
【0116】
図9に示すユニットは、図8に示す蒸煮容器4のように設計され得る蒸煮容器4(「デンプン分散蒸煮器」)を含む。ライン20(そこを通して酵素がポンプ22を使用して酵素供給容器21から供給される)は、蒸煮容器4へ排出する(本発明によらない)。
【0117】
ポンプ24を使用して、デンプンは別のライン23を介して蒸煮容器4内に運ばれる。
【0118】
蒸気は、ライン25を通して蒸煮容器4内に導入される。
【0119】
ペーストを形成するために消化されたデンプンは、ライン26を介して蒸煮容器4から取り出される。酵素は、静的ミキサー27の前方で(ポンプ29を用いて)供給容器28から混合される。
【0120】
摺動リングシール43のためのシール水としての水は、ポンプ31によって支持されるライン30を介して蒸煮容器4の下部領域に供給することができる。
【0121】
以下に、本発明による方法の実施例を再現する:
【実施例】
【0122】
実施例1:
水分13%の小麦デンプン(Collamyl 7411)を水と混合して、30重量%の含有量の小麦デンプンのスラリーを生成する。このようにして得られたスラリーを、
図9による装置において、115℃の蒸煮温度で750l/hのスループットで凝集させた。
図9による装置のすぐ後方で、酵素V Warozym A152を、4.28l/hの一定量で静的ミキサーの前方にて測定量で添加した。
図9による装置に使用されるロータ42は、7mmの高さを有していた。
直径130mmのロータ42を用いてロータ速度4,200rpmで、粘度12,500mPasのペーストを生成し、モータは、35アンペアの電力消費を有するロータ42を駆動した。
【0123】
実施例2:
手順は実施例1に示したように実施され、ロータ速度を4,400rpmに増加し、モータの電力消費は41アンペアであった。9,700mPasの粘度を有するペーストを生成した。
【0124】
実施例3:
手順は実施例1と同様に実施され、ロータ速度を4,400rpmに増加し、酵素を2.14l/hの量で添加した。9,500mPasの粘度を有するペーストを生成した。
【0125】
実施例4:
手順は実施例3に示したように実施され、添加した酵素の量を4.28l/hに増加させた。7,800mPasの粘度を有するペーストを生成した。
【0126】
実施例5:
手順は実施例3に示したように実施され、添加した酵素の量を8.56l/hに増加させた。7,400mPasの粘度を有するペーストを生成した。
【0127】
実施例6:
手順は実施例1に示したように実施され、手順は、4,400rpmのロータ速度及び130mmの直径を有するロータ42で実施された。反応温度は、100℃に設定され、モータは、38アンペアの電力消費を有するロータ42を駆動した。得られたペーストは、13,950mPasの粘度を有していた。
【0128】
実施例7:
手順は実施例6に示したように実施され、反応温度を115℃に設定した。モータの電力消費は、35アンペアであった。ペーストは、9,700mPasの粘度を有していた。
【0129】
実施例8:
手順は実施例1に示したように実施され、反応温度は115℃であり、ロータ42は4,400rpmの速度で操作された。ロータ42は、直径130mm、高さ5mmであった。モータの電力消費は、37アンペアであった。10,700mPasのペーストの粘度が達成された。
【0130】
実施例9:
手順は実施例8に示したように実施され、高さ7mmのロータ42が使用され、モータの電力消費は41アンペアであった。その結果、9,700mPasの粘度を有するペーストが生成された。
【0131】
実施例10:
ジャガイモデンプン20重量%のスラリーを得るために、水分13%のジャガイモデンプン(Collamyl 9100)を水に入れた。このようにして得られたスラリーを、
図9による装置において115℃で750l/hのスループットで凝集させた。実施例1の酵素を、
図9による装置の後方で加えたが、静的ミキサーの前方でも加えた。
図9による装置から出るスラリーを、7,500mmの反応長さを有する栓流反応器に通した。その結果、1,660mPasの粘度を有するペーストが生成し、生成したデンプンペーストは、透明で最適に溶解した。
【0132】
実施例11:
手順は実施例10と同様に実施され、但し、栓流反応器の反応長さは10,000mmであった。生成したデンプンペーストの粘度は、1,540mPasであった。デンプンペーストは透明であり、デンプンは最適に溶解した。
【0133】
実施例12:
手順は実施例10と同様に実施され、25重量%のジャガイモデンプンのスラリーを使用した。生成したデンプンペーストは透明であり、デンプンは最適に溶解した。
【0134】
実施例13:
水分13%の小麦デンプンを水と混合して30%スラリーを形成し、
図9による装置内で98℃で蒸煮した。
図9による装置のロータの高さは、7mmであった。酵素(Warozym A152)を、
図9による装置の直後にて測定量で添加し、スラリーが
図9による装置から出た後、95℃の温度を維持した。次いで、60℃の水及び240l/hのスループットで後希釈を行った。4,200rpmの一定のロータ速度及び1,400ml/hの酵素の添加で、440mPasのペーストの粘度を達成することができた。
【0135】
実施例14:
手順は実施例13と同様に実施され、酵素の添加を1,800ml/hの量で適用した。得られたデンプンペーストの粘度は、240mPasであった。
【0136】
実施例15:
手順は実施例13と同様に実施され、酵素の添加量を2,200ml/hに増加させた。得られたデンプンペーストの粘度は、140mPasであった。
【0137】
実施例16:
手順は実施例13と同様に実施され、ロータ速度3,800rpm及び直径130mmのロータを使用した。580mPasのペーストの粘度が達成された。
【0138】
実施例17:
手順は実施例17と同様に実施され、4,200rpmのロータ速度を適用した。270mPasの粘度を有するデンプンペーストを生成した。
【0139】
実施例18:
手順は実施例16と同様に実施され、ロータ速度を4,800rpmに増加させた。250mPasのデンプンペーストの粘度が達成された。
【0140】
実施例19:
手順は実施例16と同様に実施され、5,000rpmのロータ速度を適用した。生成したデンプンペーストは、180mPasの粘度を有していた。
【0141】
実施例20:
カチオン化ジャガイモデンプン(Cationamyl 9853K)を水と混合して、7.5%ジャガイモデンプンを含むスラリーを形成した。このようにして得られたスラリーを、
図9による装置内で500l/hのスループットで98℃で蒸煮し、次いで4%含有量に後希釈した。この実施例では、内部摩擦のために、より高い稠度でより良好な消化が達成された。これは、顕微鏡による検査によって視覚的に確認することができた。
【0142】
実施例21:
15%含有量のジャガイモデンプンを含むスラリーを実施例20と同様に処理し、
図9による装置内で110℃で蒸煮した。より高い紙強度では、デンプンペーストはより低い多孔度を達成し、これは実験室用紙によって確認された。
【0143】
要約すると、本発明の実施形態は、以下のように説明することができる:
デンプン(天然デンプン又はカチオン性デンプンのような加工デンプン)を消化する方法を用いて、デンプンの水性スラリーを蒸煮容器4内で蒸気で処理し、この場合、剪断力に曝露し、デンプン含有スラリーを、蒸気を導入することによって蒸煮容器4内で85℃~110℃の温度に加熱し、所望の消化度に達するまで消化ステップを実施する。