(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】積み重ねられたストランドの触媒、触媒担体又は吸収体モノリス
(51)【国際特許分類】
B01J 35/57 20240101AFI20240321BHJP
B01J 32/00 20060101ALI20240321BHJP
B01J 37/04 20060101ALI20240321BHJP
B01J 37/00 20060101ALI20240321BHJP
B01J 37/16 20060101ALI20240321BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20240321BHJP
B01J 23/22 20060101ALI20240321BHJP
B01J 35/56 20240101ALI20240321BHJP
C07C 31/12 20060101ALI20240321BHJP
C07C 29/141 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
B01J35/57 A
B01J32/00
B01J35/57 P
B01J37/04 102
B01J37/00 D
B01J37/16
B01J37/08
B01J35/57 301Z
B01J23/22 Z
B01J35/56 301Z
C07C31/12
C07C29/141
(21)【出願番号】P 2021524210
(86)(22)【出願日】2019-11-04
(86)【国際出願番号】 EP2019080103
(87)【国際公開番号】W WO2020094570
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2022-08-22
(32)【優先日】2018-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514195481
【氏名又は名称】フェート・エンフェー (フラームス・インステリング・フーア・テクノロジシュ・オンダーゾエク・エンフェー)
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・ヴァルスドルフ
(72)【発明者】
【氏名】マルコ・オスカー・ケンネマ
(72)【発明者】
【氏名】ミゲル・アンゲル・ロメロ・ファレ
(72)【発明者】
【氏名】フロリアン・シャーフ
(72)【発明者】
【氏名】ディルク・ヘンゼル
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン・ツールケ
(72)【発明者】
【氏名】フレット・ボルニンコフ
(72)【発明者】
【氏名】バルト・ミヒルセン
(72)【発明者】
【氏名】ヤスペル・レフェヴリー
【審査官】若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第03381546(EP,A1)
【文献】国際公開第2017/055565(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/099956(WO,A1)
【文献】特表2007-503980(JP,A)
【文献】TUBIO, Carmen R. et al.,3D printing of a heterogeneous copper-based catalyst,J. Catal.,NL,Elsevier B.V.,2015年12月30日,Vol. 334,pp. 110-115,DOI: 10.1016/j.jcat.2015.11.019
【文献】TAYLOR, Shannon L. et al.,Iron and Nickel Cellular Structures by Sintering of 3D-Printed Oxide or Metallic Particle Inks,Adv. Eng. Mater.,ドイツ,WILEY-VCH Verlag GmbH & Co. KGaA,2016年09月16日,Vol. 19, No. 11,pp. 1600365-1-1600365-8,DOI: 10.1002/adem.201600365
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 10/00-12/02
14/00-19/32
21/00-38/74
B28B 1/00-1/54
C07B 31/00-63/04
C07C 1/00-409/44
Scopus
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状の間隔をあけた平行なストランドの交互層から構成される、触
媒の積み重ねられたストランドの三次元の多孔性触
媒モノリス
を含む、不規則に充填された触媒床であって、交互層内のストランドは互いに対してある角度で配向されており、モノリスの少なくとも一部の層において、内側の間隔をあけた平行なストランド間の距離は外側の間隔をあけた平行なストランド間の距離より大きい、
触媒床。
【請求項2】
ストランドが第1及び第2の交互層を含む交互層として配置されており、第1の交互層内及び第2の交互層内のストランドが各々整列されており、交互層内のストランドが互いに対して直交している、請求項1に記載の
触媒床。
【請求項3】
ストランドが第1、第2及び第3の交互層を含む交互層として配置されており、第1の交互層内、第2の交互層内及び第3の交互層内のストランドが各々整列されており、交互層内のストランドが互いに対してそれぞれ60°及び120°で配向されている、請求項1に記載の
触媒床。
【請求項4】
ストランドが第1、第2、第3及び第4の交互層を含む交互層として配置されており、第1の交互層内、第2の交互層内、第3の交互層内及び第4の交互層内のストランドが各々整列されており、交互層内のストランドが互いに対してそれぞれ45°、90°及び135°で配向されている、請求項1に記載の
触媒床。
【請求項5】
幾つか又は全ての層で、触媒モノリスの外周を画定する層のフレームを形成するストランドが配置されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の
触媒床。
【請求項6】
ストランドが、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、混合金属酸化物、ハイドロタルサイト、スピネル、ペロブスカイト、金属リン酸塩、ケイ酸塩、ゼオライト、ステアタイト、コーディエライト、炭化物、窒化物又はこれらの混合物若しくはブレンドからなる群から選択される無機酸化物触媒支持体材料を含有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の
触媒床。
【請求項7】
ストランドが、Na、K、Mg、Ca、Ba、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Sn、Sb、La、Hf、W、Re、Ir、Pt、Au、Pb、及びCe並びにこれらの混合物又は合金からなる群から選択される触媒活性金属を含有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の
触媒床。
【請求項8】
触
媒の積み重ねられたストランドの三次元の多孔性触
媒モノリスを
含む、不規則に充填された触媒床を製造する方法であって、以下の工程:
a)液体希釈剤中の触媒活性金属の金属、金属合金、金属化合物粒子又は触媒支持体粒子のペーストを調製する工程であり、金属、金属合金又は金属化合物粒子は触媒支持体粒子上に担持されていても又はそれと混合されていてもよく、ペーストは場合によりバインダー材料を含んでいてもよい、工程、
b)工程a)のペーストを、500pmより大きい直径を有する1つ以上のノズルを通して押し出してストランドを形成し、押し出されたストランドを線状の間隔をあけた平行なストランドの交互層として堆積する工程であり、交互層は互いに対してある角度で配向されて三次元の多孔性モノリス前駆体を形成する、工程、
c)多孔性のモノリス前駆体を乾燥して液体希釈剤を除去する工程、
d)必要であれば、多孔性のモノリス前駆体中の金属酸化物を還元して触媒活性金属若しくは金属合金を形成する、又は追加の熱処理を行って触媒として活性な材料を製造する工程
を含み、モノリスの少なくとも一部の層において、内側の間隔をあけた平行なストランド間の距離は外側の間隔をあけた平行なストランド間の距離より大きい、方法。
【請求項9】
ストランドが、連続した層内で互いに対して直交して又は傾いて堆積される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ストランドが第1及び第2の交互層を含む交互層として堆積され、第1の交互層内及び第2の交互層内のストランドが各々整列され、交互層内のストランドが互いに対して直交する、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
触媒モノリスが正方形又は長方形の横断面を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ストランドが第1、第2及び第3の交互層を含む交互層として堆積され、第1の交互層内、第2の交互層内及び第3の交互層内のストランドが各々整列され、交互層内のストランドが互いに対してそれぞれ60°及び120°で配向される、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項13】
触媒モノリスが六角形の横断面を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ストランドが第1、第2、第3及び第4の交互層を含む交互層として堆積され、第1の交互層内、第2の交互層内、第3の交互層内及び第4の交互層内のストランドが各々に整列され、交互層内のストランドが互いに対してそれぞれ45°、90°及び135°で配向される、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項15】
触媒モノリスが八角形の横断面を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
平行なストランドが各々の層内で1つの単一の個別ストランドの部分的ストランドとして連続して堆積される、請求項8から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
触媒モノリスの1つより多くの層が1つの単一の個別ストランドとして連続して堆積される、請求項8から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
触媒モノリスの外周が、幾つか又は全ての層で触媒モノリスの外周を画定する層のフレームを形成するストランドを堆積することによって作り出される、請求項8から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
多孔性の触媒モノリス前駆体又は多孔性の触媒モノリスの1000℃を超える温度での温度処理が行なわれない、請求項8から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
無機酸化物触媒支持体が、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、混合金属酸化物、ハイドロタルサイト、スピネル、ペロブスカイト、金属リン酸塩、ケイ酸塩、ゼオライト、ステアタイト、コーディエライト、炭化物、窒化物又はこれらの混合物若しくはブレンドからなる群から選択される、請求項8から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
触媒活性金属が、Na、K、Mg、Ca、Ba、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Sn、Sb、La、Hf、W、Re、Ir、Pt、Au、Pb、及びCe並びにこれらの混合物又は合金からなる群から選択される、請求項8から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
無機バインダー、好ましくはクレイ、アルミナ、シリカ又はこれらの混合物からなる群から選択されるバインダー材料を使用する、請求項8から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
請求項
1から7のいずれか一項に記載の
触媒の積み重ねられ
たストランドの三次元の多孔性触媒モノリス
を含む不規則に充填された触媒床の、酸化、水素化及び脱水反応における使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積み重ねられたストランドの三次元の多孔性触媒、触媒支持体又は吸収体モノリス、モノリスを製造する方法及びモノリスの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
通例、無機触媒、触媒支持体又は吸収体は押し出されたストランド又は押し出されたモノリス若しくはハニカム構造として製造される。
【0003】
線状の伸びたハニカム構造と比べてより多様な形状を可能にする代替の方法は例えば高速試作プロセスにより製造することができる。例えば、米国特許第8,119,554号に記載されている方法は、バインダー材料を無機の触媒粉末に選択的に導入して三次元構造を形成する粉末に基づく高速試作プロセスによる成形体の製造を含む。
【0004】
ロボキャスティング(robocasting)といわれることが多い更なる製造方法を使用することができる。この方法では、触媒材料粒子のペーストがストランドに押し出され、積み重ねた層に堆積させられて所望の三次元構造を形成する。その後、この構造体が乾燥され焼結される。ロボキャスティング法による再生可能なディーゼルすす微粒子フィルターの製造は米国特許第7,527,671号に開示されている。
【0005】
この方法はまたウッドパイル(wood pile)多孔質構造を有するCU/AI2O3触媒系を製造するのにも使用されている。Journal of Catalysis 334 (2016), 1 10~115は不均一銅系触媒の3Dプリンティングに関する。平均粒径0.5pmのAI2O3粉末を硝酸銅(ll)の水溶液に加え、得られた懸濁液の粘度を、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを粘度改質剤として加えることにより調整した。得られたインクを蒸発による水の除去により、押出に適するようになるまで濃縮した。水性のインクを直径410pmのノズルが取り付けられた注射器に装填した。ロボット堆積システムを使用してウッドパイル(woodpile)構造を作り出した。この構造体を室温で24h乾燥させ、その後空気中1400℃で2h焼結した。
【0006】
Ni/Al203で被覆された構造化された触媒がCatalysis Today, 273 (2016), 234~243頁に開示されている。この触媒を製造するために、ステンレス鋼支持体がロボキャスティングプロセスを用いて製造された。得られた3D構造体は1300℃で4h焼結され、ニッケルが装填されたベーマイト粉末のコーティングスラリーが付けられた。こうして、唯一のステンレス鋼支持体構造がロボキャスティングによって製造された。
【0007】
上述の方法は全て1000℃よりずっと高い温度での焼結工程が必要である。
【0008】
触媒活性金属を使用する幾つかの触媒では、かかる高温での焼結は触媒特性に対して有害である。通例、触媒支持体上の触媒活性金属の分散液はこの温度処理の際に劣化する。
【0009】
固定床触媒反応器において、例えば拡散律速反応用の触媒の高い外部表面積、又は低い空隙容量で高い充填率を得るには、より小さめの触媒押出物の使用が必要である。物質移動律速反応において、小さい触媒押出物の性能は殊に物質移動律速反応の場合より大きい押出物より良好である。しかしながら、不利な点は、小さめの押出物が充填床においてより高い圧力低下を示すことである。また、これらの小さい押出物の機械的強度は通例充填床反応器を形成するのに充分でない。
【0010】
国際公開第2017/055565号はバルク触媒構造を建造する方法を開示しており、この方法は、セラミック材料を含む組成物を成形して未焼結構造体を得る工程と、ここで前記セラミック材料は触媒材料並びに第1及び第2の無機バインダーを含んでおり、未焼結構造体を焼成してバルク触媒構造を得る工程とを含み、ここで構造体は流れ方向に伸びるある長さを有する第1のチャンネル及び半径方向に伸びるある長さを有する第2のチャンネルを含み、成形する工程は三次元の繊維の堆積により懸濁液、スラリー又はペーストを繊維として押し出すことを含み、繊維は層化した網状組織を形成する。
【0011】
層化した網状組織は互いに平行な繊維の交互層を含み、連続する層内の繊維は互いに直交又は傾いて配置されている。
【0012】
好ましい実施形態において、交互層は第1の交互層及び第2の交互層を含み、第1の交互層の連続する層内の繊維は整列されており、第2の交互層の連続する層内の繊維は整列されている。
【0013】
米国特許第9,597,837号は、高速試作方法を用いて支柱及び壁を三次元形状に堆積させて三次元の多孔性流体素子を構築することを含む、三次元の多孔性流体素子を作製する方法を開示している。この三次元の多孔性流体素子は流体の入口面及び出口面を含み、壁が流体素子を取り囲み、流体素子の壁内では層状に配置された複数の支柱の格子が細孔の網状組織を形成し、第1の層内の支柱は、第3の層内の支柱から、第1の層及び第3の層内の支柱に対してある角度で配置された第2の層内の支柱により分離され、第3の層及び第1の層内の支柱は間隔が相殺されており、ある層内の支柱はその層内の隣接する支柱から、相互に連結する細孔の蛇行した通路を有するチャンネルが形成されるようにある空間だけ分離されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】米国特許第8,119,554号
【文献】米国特許第7,527,671号
【文献】国際公開第2017/055565号
【文献】米国特許第9,597,837号
【文献】米国特許第6,027,326号
【文献】米国特許第6,401,795号
【文献】米国特許第6,993,406号
【非特許文献】
【0015】
【文献】Journal of Catalysis 334 (2016), 1 10~115
【文献】Catalysis Today, 273 (2016), 234~243頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の基礎をなす目的は、高い外部表面積又は高い充填率を有する触媒活性金属を含む触媒を提供することである。触媒構造は、反応器内で充填触媒床を形成することができるように充分に機械的に安定であるべきである。
【0017】
更なる目的は、予め作成された担持触媒を使用することができる触媒成形方法を提供することである。
【0018】
ロボキャスティングによって製造される現在の触媒は大きい表面積を有する。しかしながら、それらはまた個々のモノリス体を横切って高い圧力低下も有しており、次いでこれはモノリス体が入れられる反応器を横切って高い圧力低下を起こす。或いは、ランダムに充填されたモノリスの床は反応器内で低い圧力低下を有し得るが、各々個別のモノリス体を横切る圧力低下に起因するモノリス中への入口障壁が反応器全体にわたる気体流のチャネリングを引き起こし、ロボキャスティング技術によりもたらされる幾何学的表面積の改良が十分に利用されないであろう。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この目的は、本発明に従って、触媒、触媒担体又は吸収性材料を含む積み重ねられたストランドの三次元の多孔性触媒、触媒担体又は吸収体モノリスを製造する方法であって、以下の工程:
a)液体希釈剤中の触媒活性金属の金属、金属合金、金属化合物粒子又は触媒支持体粒子のペーストを調製する工程であり、金属、金属合金又は金属化合物粒子は触媒支持体粒子上に担持されていても又はそれと混合されていてもよく、該ペーストは場合によりバインダー材料を含んでいてもよい、工程、
b)工程a)のペーストを500pmより大きい直径を有する1つ以上のノズルに通して押し出してストランドを形成し、押し出されたストランドを線状の間隔をあけた平行なストランドの交互層として堆積する工程であり、交互層は互いに対してある角度で配向されて、三次元の多孔性モノリス前駆体を形成する、工程、
c)多孔性のモノリス前駆体を乾燥して液体希釈剤を除去する工程、
d)必要であれば、多孔性のモノリス前駆体中の金属酸化物を還元して触媒活性金属若しくは金属合金を形成する、又は追加の熱処理を行って触媒として活性な材料を製造する工程
を含み、モノリスの少なくとも一部の層において、内側の間隔をあけた平行なストランド間の距離は外側の間隔をあけた平行なストランド間の距離より大きい、方法により達成される。
【0020】
本発明のモノリス構造体の層パターン及び層構成は各々個別のモノリス体を横切る圧力低下のかなりの減少を引き起こす。この結果、本発明のモノリスで満たされた反応器を横切る圧力低下がより低くなり、個々のモノリスでランダムに充填され満たされた反応器床を通る流れがより均質になる。
【0021】
この点、三次元モノリスはストランドの少なくとも2つの積み重ねられた層で作成されたワンピース構造である。
【0022】
一般に、ストランドは交互層内で互いに対して直交して又は傾いて堆積される。各々の連続した層内のストランドの配向は先行する層に対してある角度、例えば90°、60°、45°又は36°、時計回り又は反時計回りに回転させることができる。異なる配向を有する平行なストランドの個々の層の重ね合わせによりモノリス内にチャンネルが形成される。本発明のモノリスはストランドの異なる間隔の結果としてより小さい外側のチャンネル及びより大きい内側のチャンネルを有する。
【0023】
1つの実施形態において、ストランドは第1及び第2の交互層を含む交互層として堆積され、ここで第1の交互層内のストランドは各々整列され、第2の交互層内で各々整列され、また第1及び第2の交互層内のストランドは互いに直交している。この場合モノリスは正方形又は長方形の横断面を有することができる。しかしながら、正方形又は長方形のモノリスは好ましさがやや劣る。
【0024】
更なる実施形態において、ストランドは第1、第2及び第3の交互層を含む交互層として堆積され、ここで第1の交互層内、第2の交互層内及び第3の交互層内のストランドは各々整列され、第1、第2及び第3の交互層内のストランドは互いに対してそれぞれ60°及び120°で配向される。この場合好ましくは触媒モノリスは六角形の横断面を有する。
【0025】
更なる実施形態において、ストランドは第1、第2、第3及び第4の交互層を含む交互層として堆積され、ここで第1の交互層内、第2の交互層内、第3の交互層内及び第4の交互層内のストランドは各々整列され、第1、第2、第3及び第4の交互層内のストランドは互いに対してそれぞれ45°、90°及び135°で配向されている。この場合好ましくは触媒モノリスは八角形の横断面を有する。
【0026】
モノリスは他のあらゆる適切な横断面、例えば三角形、五角形又は円形の横断面を有することができる。三角形の触媒モノリスは互いに対してそれぞれ60°及び120°で配向された3つの異なる交互層の並びを有することができる。五角形のモノリスは互いに対してそれぞれ36°、72°、108°及び144°で配向された5つの異なる交互層の並びを有し得る。
【0027】
間隔をあけた平行なストランド間の距離は、モノリスの少なくとも一部の層内で周辺から中心に向かって増大する。周辺により近い平行なストランド対はモノリス体の中心により近い平行なストランドの残りの対の幾らか又は全てより少なく間隔があいている。好ましくは、ある層内の間隔をあけた平行なストランド間の距離はモノリス体の全ての層内で周辺から中心に向かって増大する。
【0028】
好ましい実施形態において、ある層内の平行なストランドは第一及び第二の距離を有し、ここで内側の(より中心に近い)平行なストランド間の第二の距離は外側の(より周辺に近い)平行なストランド間の第一の距離より大きい。より大きい第二のストランド間の距離のより小さい第一のストランド間の距離に対する比は好ましくは1.2:1~5:1の範囲、例えば1-7、3.5:1である。
【0029】
また、ある層内で平行なストランド対間の3以上の異なるストランド間の距離を有することも可能である。
【0030】
各々個別の層内の平行なストランドの数は一般に次式で与えられる。
n=a/(b*c)
式中、「n」は、ストランドの直径「b」と係数「c」の積で割ったモノリスの最大の外径「a」により決定される所与の層内の平行なストランドの数である。
【0031】
係数cは一般に1.5~3.5、好ましくは1.8~3、最も好ましくは2~3である。
【0032】
好ましくは、各々の層内の平行なストランドは1つの単一の個別ストランドの一部として連続的に堆積された部分的なストランドであり、この1つの単一の個別ストランドは角を有し、層の平面内でその方向を変化させる。
【0033】
好ましい実施形態において、触媒モノリスの外周は幾つか又は全ての層、好ましくは全ての層を堆積することによって作り出され、層のフレームを形成するストランドはモノリスの外周を画定する。したがって最も外側のストランドはフレームの一部である。各々の層の積み重ねられたフレームは触媒モノリスの中実の側壁となる。
【0034】
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】
図1は、触媒モノリスの所望の正方形形状のベースの外周を示す。
【
図2】
図2は、ロボキャスティングを用いて調製される正方形の触媒モノリスに対する本発明ではない層設計を示し、平行なストランドは等距離である。
【
図3】
図3は、ロボキャスティングを用いて調製される正方形の触媒モノリスに対する更なる本発明ではない層設計を示し、平行な(部分的な)ストランドは等距離であり、1つの単一のストランドとして連続して堆積される。
【
図4】
図4は、層に対して垂直なチャンネルを有する本発明ではない正方形の触媒モノリス設計を上面図で示す。
図2又は
図3の最低2つの層は互いに対して垂直に堆積される。
【
図5】
図5は、本発明による正方形の触媒モノリスに対する改良された層パターンを示す。5aはストランドの直径を示し、5bは第一のストランド間の距離を示し、5cは第二のストランド間の距離を示す。
【
図6】
図6は、本発明による別の改良された層パターンを示し、平行な(部分的な)ストランドは1つの単一のストランドとして連続して堆積される。6aはストランドの直径を示し、6bは第一のストランド間の距離を示し、6cは第二のストランド間の距離を示す。
【
図7】
図7は、層に対して垂直なチャンネル7a、7b及び7cを有する改良された触媒モノリス設計を上面図で示す。
図6又は
図7の最低2つの層は互いに対して垂直に堆積される。
【
図8】
図8は、触媒モノリスの望ましい八角形形状のベースの外周を示す。
【
図9】
図9は、ロボキャスティングを用いて調製される八角形の触媒モノリスに対する本発明ではない層設計を示し、平行なストランドは等距離である。
【
図10】
図10は、ロボキャスティングを用いて調製される八角形の触媒モノリスに対する更なる本発明ではない層設計を示し、平行な(部分的な)ストランドは等距離であり、1つの単一のストランドとして連続して堆積される。
【
図11】
図11は、層に対して垂直なチャンネルを有する本発明ではない八角形の触媒モノリス設計を上面図で示す。
図9又は
図10の最低4つの層が互いに対してそれぞれ45°、90°及び135°で堆積される。
【
図12】
図12は、本発明による八角形の触媒モノリスに対する改良された層パターンを示し、平行な(部分的な)ストランドは1つの単一のストランドとして連続して堆積され、第一及び第二のストランド間の距離を有する。
【
図13】
図13は、第一及び第二のストランド間の距離を有する本発明による八角形の触媒モノリスに対する別の改良された層パターンを示す。
【
図14】
図14は、層に対して垂直なチャンネルを有する改良された触媒モノリス設計を上面図で示す。
図12又は
図13の最低4つの層が互いに対してそれぞれ45°、90°及び135°で堆積される。
【
図15】
図15は、触媒モノリスの望ましい六角形形状のベースの外周を示す。
【
図16】
図16は、ロボキャスティングを用いて調製される六角形の触媒モノリスに対する本発明ではない層設計を示し、平行なストランドは等距離である。
【
図17】
図17は、ロボキャスティングを用いて調製される六角形の触媒モノリスに対する更なる本発明ではない層設計を示し、平行な(部分的な)ストランドは等距離であり、1つの単一のストランドとして連続して堆積される。
【
図18】
図18は、層に対して垂直なチャンネルを有する本発明ではない六角形の触媒モノリス設計を上面図で示す。
図16又は
図17の最低3つの層が互いに対してそれぞれ60°及び120°で堆積される。
【
図19】
図19は、第一及び第二のストランド間の距離を有する本発明による六角形の触媒モノリスに対する改良された層パターンを示す。
【
図20】
図20は、本発明による六角形の触媒モノリスに対する別の改良された層パターンを示し、平行な(部分的な)ストランドは1つの単一のストランドとして連続して堆積され、第一及び第二のストランド間の距離を有する。
【
図21】
図21は、層に対して垂直なチャンネルを有する改良された触媒モノリス設計を上面図で示す。
図19又は
図20の最低3つの層が互いに対してそれぞれ60°及び120°で堆積される。平行なストランドは六角形の面に対して垂直に配向されている。
【
図22】
図22は、第一及び第二のストランド間の距離を有する本発明による六角形の触媒モノリスに対する別の改良された層パターンを示す。
【
図23】
図23は、本発明による六角形の触媒モノリスに対するもう1つ別の改良された層パターンを示し、平行な(部分的な)ストランドは1つの単一のストランドとして連続して堆積され、第一及び第二のストランド間の距離を有する。
【
図24】
図24は、層に対して垂直なチャンネルを有する改良された触媒モノリス設計を上面図で示す。
図19又は
図20の最低3つの層が互いに対してそれぞれ60°及び120°で堆積される。平行なストランドは六角形の面に対して平行に配向されている。
【
図25】
図25は、反応器の内部の本発明ではない触媒モノリスの充填床を横切る気体流の潜在的な流れパターンを示す。図は、ロボキャストされた(robocasted)モノリス構造(25b及び25c)の中心を迂回する気体流(25a)を示す。この場合触媒モノリスの増大した表面積はモノリス構造の回りの気体流のチャネリングのために十分に利用されない。
【
図26】
図26は、反応器の内部の本発明の触媒モノリスの充填触媒床を横切る気体流の優先的な流れパターンを示す。図はプリントされた構造(26b及び26c)の中心に入る気体流(26a)を示す。26dは六角形のモノリス構造の1つの中心を通過する流れを示す。この場合増大した表面積は各個別のモノリス構造を横切る低い圧力低下のために気体流に到達できる。
【
図27】
図27は、現在の技術水準の層設計を有するロボキャストされた六角形の触媒モノリスの一例を透視図で示し、平行な(部分的な)ストランドは等距離であり、各々の層内で1つの単一のストランドとして連続して堆積されている。層は互いに対してそれぞれ60°及び120°で堆積されている。平行なストランドは六角形の面に対して平行に配向されている。
【
図28】
図28は、本発明による改良された層パターンを有するロボキャストされた六角形の触媒モノリスの一例を透視図で示し、平行な(部分的な)ストランドは1つの単一のストランドとして連続して堆積されており、第一及び第二のストランド間の距離を有する。層は互いに対してそれぞれ60°及び120°で堆積されている。平行なストランドは六角形の面に対して平行に配向されている。
【
図30】
図30は、本発明によるロボキャストされた正方形の触媒モノリスの一例を上面図で示し、平行な(部分的な)ストランドは1つの単一のストランドとして連続して堆積されており、第一及び第二のストランド間の距離を有する。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明はまた、本方法によって得ることができる触媒モノリスにも関する。
【0037】
より一般的には、本発明は、線状の間隔をあけた平行なストランドの交互層から構成される、触媒、触媒担体又は吸収性材料の積み重ねられたストランドの三次元の多孔性触媒、触媒担体又は吸収体モノリスにも関し、交互層内のストランドは互いに対してある角度で配向され、内側の間隔をあけた平行なストランド間の距離はモノリスの少なくとも一部の層内の外側の間隔をあけた平行なストランド間の距離より大きい。
【0038】
好ましい実施形態において、ストランドは第1及び第2の交互層を含む交互層として配置され、第1の交互層内及び第2の交互層内のストランドは各々整列されており、連続する層内のストランドは互いに対して直交している。モノリスは好ましくは正方形又は長方形の横断面を有する。
【0039】
更なる好ましい実施形態において、ストランドは第1、第2及び第3の交互層を含む交互層として配置され、第1の交互層内、第2の交互層内及び第3の交互層内のストランドは各々整列しており、交互層内のストランドは互いに対してそれぞれ60°及び120°で配向している。モノリスは好ましくは六角形の横断面を有する。
【0040】
更なる好ましい実施形態において、ストランドは第1、第2、第3及び第4の交互層を含む交互層として配置され、第1の交互層内、第2の交互層内、第3の交互層内及び第4の交互層内のストランドは各々整列され、交互層内のストランドは互いに対してそれぞれ45°、90°及び135°で配向されている。モノリスは好ましくは八角形の横断面を有する。
【0041】
更なる好ましい実施形態において、幾つか又は全ての層で、層のフレームを形成するストランドが配置されて、触媒モノリスの外周を画定する。
【0042】
好ましくは、幾つか又は全ての層において、平行なストランドは円形又は多角形の形状を有する押し出されたストランドのフレームにより包囲される。特定の好ましい実施形態において、全ての層で平行なストランドはフレームにより包囲され、千鳥状のフレームは触媒モノリスの中実の側壁を生じる。
【0043】
同様に標準的な押出法で使用される配合物は原則としてペースト状の懸濁液として適している。触媒前駆体材料の粒径が微細押出(microextrusion)ノズルに対して充分に小さいことは必要条件である。最も大きい粒子(d99値)は好ましくはノズル直径より少なくとも5倍小さく、特に少なくとも10倍小さくなければならない。
【0044】
適切な配合物は微細押出に必要な流動学的特性を示す。
【0045】
上記の文献は、いかにして適切な流動学的特性を確立することができるか詳細に記載している。必要であれば、バインダー及び粘度改変添加剤、例えばデンプン又はカルボキシメチルセルロースを配合物に加えてもよい。
【0046】
微細押出可能なペースト状懸濁液は好ましくは液体希釈剤として水を含有するが有機溶媒も使用できる。懸濁液は、触媒として活性な組成物又は触媒として活性な組成物の前駆体化合物ばかりでなく、無機支持体材料又は不活性材料も含有し得る。ある種の反応においては触媒として活性でもあり得る一般に使用される支持体又は不活性材料の例は、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、珪藻土、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、ハイドロタルサイト、スピネル、ペロブスカイト、金属リン酸塩、金属ケイ酸塩、ゼオライト、ステアタイト、コーディエライト、炭化物、窒化ホウ素、金属有機構造体及びこれらの混合物である。
【0047】
本発明による方法はまた、本質的に成形体を製造するのに使用してもよい。本発明による方法により製造されるかかる成形体は次いで更なるプロセス工程で、例えば含侵又はコーティング及び場合により更なる熱処理工程により触媒成形体に変換され得る。
【0048】
触媒活性金属又は金属合金の金属、金属合金又は金属酸化物粒子は、機械的に安定な触媒として活性な構造を得るために1000℃を超える温度での処理又は焼結工程を必要としないロボキャスティングプロセスで使用することができる。
【0049】
無機酸化物触媒支持体粒子に担持されているか又はそれと混合された金属、金属合金又は金属酸化物を使用するとき、1000℃を超える温度での温度処理が必要ないので、触媒活性金属又は金属合金の高分散を達成することができる。多くの場合、かかる温度処理は触媒活性金属又は合金の分散の低下を引き起こす。
【0050】
触媒活性金属が酸化物形態である予め作成された担持触媒の粉末は、適切な場合、ロボキャスティングプロセスで、その特性、例えば触媒支持体上の活性金属分散を顕著に変えることなく形成することができる。上述の公知の方法によると、担持触媒はロボキャスティング及び焼結の終了時にのみ得られた。
【0051】
ロボキャスティングプロセスにより、通常の押出物と比べて増大した外部表面積を有する積み重ねられた触媒繊維の三次元多孔性触媒モノリス構造の製造が可能になる。
【0052】
これにより、増大した外部表面積のため、水素化反応、酸化反応、又は脱水反応のような拡散律速反応において、より高い活性及び選択性が得られる。
【0053】
水素化反応の例はブタナールのブタノール又はブチンジオールへの水素化である。
【0054】
また、酸化反応、例えばエチレンオキサイド反応のような熱輸送律速反応を考えることができる。
【0055】
低い圧力低下が可能であり、したがって単一の押出物と比較してより小さい繊維直径で機能することが可能である。
【0056】
本発明はまた、本発明の積み重ねられた触媒ストランドの多孔性触媒モノリスを含む不規則充填触媒床にも関する。
【0057】
予め作成された触媒の粉末から出発するとき、触媒支持体上の元の活性金属(酸化物)分散体を維持することができる。
【0058】
本発明に従って使用される3Dロボキャスティング技術は十分に確立されており、米国特許第7,527,671号、同第6,027,326号、同第6,401,795号、Catalysis Today 273 (2016), 234~243頁、又はJournal of Catalysis 334 (2016), 1 10~1 15頁、又は米国特許第6,993,406号に記載されているように実行することができる。
【0059】
3Dロボキャスティング技術は、押出ノズルを通過できるように粒径が十分に小さいことを条件として、標準的な押出技術で現在使用されているペーストをベースにすることができる触媒配合物と共に使用することができる。押出配合物又はペーストは予め形成された触媒材料、例えばニッケル酸化物粒子が既に存在しているニッケル沈降物を含有する。必要であれば、バインダーを押出混合物に添加することができる。
【0060】
ロボキャスティング技術は、0.2mmを超える、好ましくは0.5mmを超える直径を有する1つ以上のノズルを通して押し出すことを暗示する。特に好ましくは、ノズルの直径は0.75mm~2.5mm、最も好ましくは0.75mm~1.75mmの範囲であるべきである。ノズルはあらゆる所望の横断面、例えば円形、楕円形、正方形、星形、浅裂の形状を有することができる。最大の直径は非円形の横断面の最も大きい直径である。微細押出のための主たる基準の1つは、微細押出技術のための正確な流動学的特性を有する押出可能なペーストの使用である。上述の文献は所要の流動学的特性を得るやり方の詳細な助言を与えている。
【0061】
必要であれば、本発明による方法において、粘度調整剤を使用することができる。典型的な粘度調整剤はカルボキシメチルセルロースのようなセルロースである。好ましくは、粘度調整剤又はポリマーを使用しない。
【0062】
全ての商業的に使用されている無機酸化物触媒支持体粒子を本発明に従って使用できる。好ましくは、無機酸化物触媒支持体は珪藻土、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、混合金属酸化物、ハイドロタルサイト、スピネル、ペロブスカイト、金属リン酸塩、ケイ酸塩、ゼオライト、ステアタイト、コーディエライト、炭化物、窒化物又はこれらの混合物若しくはブレンドからなる群から選択される。
【0063】
上述の商業的に使用されている無機酸化物触媒支持体粒子(又はその混合物)に加えて、触媒として活性な材料を無機酸化物支持体(又はその混合物)の一部として、又は支持体構造上の追加のコーティングとして、又は幾つかの連続したコーティングとして添加することができる。この触媒として活性な材料は、全ての成分が触媒として活性ではないとしても、次の元素:Na、K、Mg、Ca、Ba、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Sn、Sb、La、Hf、W、Re、Ir、Pt、Au、Pb、及びCeの幾つかから構成され得る。
【0064】
触媒活性金属又は金属合金の量は、支持体の量を基準にして、好ましくは0.1~95wt%、より好ましくは3~75wt%、最も好ましくは8~65wt%の範囲である。
【0065】
本発明による方法の工程a)で製造される懸濁液ペーストは好ましくは1~95wt%、より好ましくは10~65wt%の固形分を有する。
【0066】
必要であれば、金属(酸化物)及び/又は支持体粒子を共に結合するためのバインダー材料を懸濁液ペースト中に使用することができる。好ましいバインダー材料はクレイ、アルミナ、シリカ又はこれらの混合物のような無機バインダーの群から選択される。
【0067】
懸濁液ペースト中のバインダー材料の量は懸濁液ペーストに対して好ましくは0.1~80wt%、より好ましくは1~15wt%の範囲である。
【0068】
多くの場合、懸濁液中に有機バインダー材料を更に使用することは必要ではないが、その使用は本発明に従って可能である。したがって、好ましくは有機バインダー材料は懸濁液中に存在しない。
【0069】
本明細書で使用する用語「多孔性」は、モノリスが中実の材料ではなく、チャンネル又は細孔を含有することを規定する。
【0070】
多孔性は好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%であり、好ましくは20~90%の範囲であることができ、Hg-PV及びHe-密度により決定することができる。それは次の式により決定することができる。多孔性(%)=100-[(微細押出された構造全体の密度/-繊維材料の密度)×100]。微細押出された構造全体の密度はその全質量をその全容積で割ることによって決定される。繊維材料の密度はHg-PV及びHe-密度を測定することによって決定することができる。
【0071】
繊維から形成される格子又は足場は自立性であるので、繊維間に開放空間が残り、これが多孔性を生ずる。それぞれの構造は上述の文献に見ることができる。
【0072】
本発明に従って使用されるロボキャスティングプロセスは3D繊維堆積と記載することもできる。
【0073】
3DFDの一般的説明
3D繊維堆積(3DFD)を使用して、触媒、触媒担体又は吸収性材料の粉末を成形する。3DFD法は、高度に充填されたペーストを移動ノズルにより押し出すアダプティブマニュファクチュアリング方法である。押出ヘッドのx、y及びz-方向の動きをコンピューターで制御することにより、多孔性の材料を押し出された繊維又はストランドから層毎に製造することができる。乾燥後、多孔性の材料を熱的に乾燥することができる。
【0074】
この技術の主要な利益は多孔性パラメーター(繊維の太さ、ストランド間距離及び積み重ね設計)に関する自由度である。
【0075】
3DFD技術に対する典型的なフローチャートは以下の後続の工程からなる:
非常に粘稠なペーストを調製する
細いノズルに通して押し出す
繊維のコンピューターに制御された堆積で多孔性の周期的な構造を形成する
乾燥し、必要であれば還元する
【0076】
粉末を溶媒/希釈剤(例えば水)、必要であればバインダー及び添加剤と一緒に混合して粘稠なペーストを得る。均質なペースト(凝集塊又は気泡の混入を最小にする)を達成するための良好な混合は円滑で再生可能なプロセスに対する前提条件である。機能性材料の粉末装填は比表面積、粒径分布及び粉末形態に依存する。一般に、粉末の粒径が低下すると、ペーストの粘度は増大する。したがってこれらの粉末では固体の装填を低下させる必要がある。有機又は好ましくは無機バインダーは別としてレオロジー改質剤を添加してペーストの流動学的挙動を制御することができる。場合によってペースト内の気泡を回避するために消泡剤も添加する。
【0077】
室内条件(又は制御された雰囲気及び温度下)で乾燥した後、必要であれば3DFD構造を還元する。1000℃を超える温度での仮焼又は焼結は必要ない。
【0078】
積み重ねられた繊維のモノリスは熱処理のために縮むことがある。この収縮は「未焼結の」触媒体のプリンティングサイズの5-50%の範囲になり得る。
【0079】
積み重ねられた触媒繊維のモノリスは、押し出された繊維を規則的な繰返し積み重ねパターン(周期的に構造化された触媒)で堆積することにより三次元的に構造化されて、三次元的に構造化されたち多孔性の触媒モノリス前駆体を形成する。
【0080】
好ましくは、規則的な繰返し積み重ねパターンは押し出されたストランドの積み重ねられた層から構成され、各々の層で押し出されたストランドの少なくとも60wt%が互いに平行に堆積され、互いに空間的に分離されている。平行な堆積は直線又は曲線であることができる。
【0081】
より好ましくは、押し出された繊維の少なくとも50wt%が互いに平行で互いに空間的に分離された線状のストランドとして堆積され、各々の層内のストランドの方向は隣接する層内の方向と異なっていて、結果として隣接する積み重ねのストランドの接触点を有する多孔質構造が生じる。
【0082】
モノリス構造の面はプリンティングの結果として穴が開いていることがある。
【0083】
押出物の方向が変化する点又は押出物が堆積される層は所望のストランド直径より大きい直径を有し得る。望ましくはないが、個々のストランドの直径もまたプリンティングスピードの変化のために成形体の平行断面において変化し得る。
【0084】
繊維又はストランドは好ましくは0.2mm~2.5mm、より好ましくは0.5mm~2mm、最も好ましくは0.75mm~1.75mmの太さを有する。
【0085】
それらは好ましくはより小さい第1の(第一の)及び少なくとも1つのより大きい第2の(第二の)距離により互いに空間的に分離されており、ここで第1の距離は式:mi=b*dにより決定される。ここで、繊維間の第一の距離(m-i)はストランド直径bかける係数dにより決定され、dは0.3~2、より好ましくは0.5~1.5、最も好ましくは0.5~1である。実施例2、4、6、及び7で、d=0.6667である。
【0086】
より大きい第二の距離は式:rri2=mi*eにより計算され、ここでm2は第二のストランド間の距離の少なくとも1つであり、eは1.2~5、好ましくは1.5~4、より好ましくは2~4である。実施例2、4、6、及び7で、e=2.333である。
【0087】
以下の実施例により本発明を更に説明する。
【0088】
圧力低下シミュレーション
【実施例】
【0089】
(実施例1~7)
圧力低下と触媒モノリス形状との相関関係を、固体の触媒構造間の空隙空間内の流れを完全に解明する数値流動シミュレーション(計算流体力学-CFD)によって計算した。CFDシミュレーションは複雑な3D形状内の圧力低下を計算する標準的な手段である。最初に、3D微細押出された(ロボキャストされた)触媒モノリスの形状を作り出す。このために、CADプログラムを用いて単一の触媒体のCAD(コンピューター支援設計)モデルを創出する。内部の圧力低下の計算のために多孔性のモノリスを実際に全く同一の横断面のチューブに入れてモノリスの回りの迂回流を排除した。室温及びいろいろなガス空間速度(GHSV、ガス毎時空間速度)で空気の流れをシミュレートすることによって圧力低下計算を行なった。1バールの一定の作動圧力及び20℃の温度における空気の熱力学及び輸送特性の値は科学文献から得た。
【0090】
(実施例1)
比較の正方形触媒モノリス;触媒モノリスの層構造を
図4に示す。
ストランド直径:1.293mm
ストランド間の距離:0.862mm
最小横断面直径:25mm
チャンネルの方向で形状幾何学を横切る多孔度:e=0.425
表面積/容積:1488m
2/m
3
プリントされた連続した層:24
単一のモノリスの圧力低下(モノリスの回りの迂回なし)、同一の横断面のチューブ内部のモノリス
ガス:空気(一定の材料特性)
密度:p=1,205kg/m
3
粘度:h=1,82E-05Pa*s
空のパイプ速度:vO[m/s]={0.12,0.25,0.5,1,2,4}
【0091】
(実施例2)
本発明の正方形触媒モノリス;触媒モノリスの層構造を
図7に示す。
ストランド直径:1.293mm
第一のストランド間の距離:0.862mm
第二のストランド間の距離:3.017mm
最小横断面直径:25mm
チャンネルの方向で形状幾何学を横切る多孔度:e=0.536
表面積/容積:1278m
2/m
3
プリントされた連続した層:24
第一のストランド間の距離の第二のストランド間の距離に対する比:1:3.5
係数c:2.9
係数d:0.6667
係数e:2.333
単一のモノリスの圧力低下(モノリスの回りの迂回なし)、同一の横断面のチューブ内部のモノリス
ガス:空気(一定の材料特性)
密度:p=1,205kg/m
3
粘度:h=1,82E-05Pa*s
空のパイプ速度:vO[m/s]={0.12,0.25,0.5,1,2,4}
【0092】
(実施例3)
比較の八角形触媒モノリス;触媒モノリスの層構造を
図11に示す。
ストランド直径:1.293mm
ストランド間の距離:0.862mm
最小横断面直径:25mm
チャンネルの方向で形状幾何学を横切る多孔度:e=0.453
表面積/容積:1489m
2/m
3
プリントされた連続した層:24
単一のモノリスの圧力低下(モノリスの回りの迂回なし)、同一の横断面のチューブ内部のモノリス
ガス:空気(一定の材料特性)
密度:p=1.205kg/m
3
粘度:h=1.82E-05Pa*s
空のパイプ速度:vO[m/s]={0.12,0.25,0.5,1,2,4}
【0093】
(実施例4)
本発明の八角形触媒モノリス;触媒モノリスの層構造を
図14に示す。
ストランド直径:1.293mm
第一のストランド間の距離:0.862mm
第二のストランド間の距離:3.017mm
最小横断面直径:25mm
チャンネルの方向で形状幾何学を横切る多孔度e=0.553
表面積/容積:1248m
2/m
3
プリントされた連続した層:24
係数c:2.9
係数d:0.6667
係数e:2.333
単一のモノリスの圧力低下(モノリスの回りの迂回なし)、同一の横断面のチューブ内部のモノリス
ガス:空気(一定の材料特性)
密度:p=1.205kg/m
3
粘度:h=1.82E-05Pa*s
空のパイプ速度:vO[m/s]={0.12,0.25,0.5,1,2,4}
【0094】
(実施例5)
比較の六角形触媒モノリス;触媒モノリスの層構造を
図18に示す。
ストランド直径:1.293mm
ストランド間の距離:0.862mm
最小横断面直径:25mm
チャンネルの方向で形状幾何学を横切る多孔度e=0.464
表面積/容積:1478m
2/m
3
プリントされた連続した層:24
単一のモノリスの圧力低下(モノリスの回りの迂回なし)、同一の横断面のチューブ内部のモノリス
材料:空気(一定の材料特性)
密度:p=1.205kg/m
3
粘度:h=1.82E-05Pa*s
空のパイプ速度:vO[m/s]={0.12,0.25,0.5,1,2,4}
【0095】
(実施例6)
本発明の六角形触媒モノリス;触媒モノリスの層構造を
図21に示す。
繊維直径:1.293mm
第一の繊維間距離:0.862mm
第二の繊維間距離:3.017mm
最小横断面直径:25mm
チャンネルの方向で形状幾何学を横切る多孔度:e=0.56
表面積/容積:1235m
2/m
3
プリントされた連続した層:24
係数c:2.9
係数d:0.6667
係数e:2.333
単一のモノリスの圧力低下(ペレットの回りの迂回なし)、同一の横断面のチューブ内部のモノリス
ガス:空気(一定の材料特性)
密度:p=1.205kg/m
3
粘度:h=1.82E-05Pa*s
空のパイプ速度:vO[m/s]={0.12,0.25,0.5,1,2,4}
【0096】
(実施例7)
本発明の六角形触媒モノリス;触媒モノリスの層構造を
図24に示す。
ストランド直径:1.293mm
第一の繊維間距離:0.862mm
第二の繊維間距離:3.017mm
最小横断面直径:25mm
チャンネルの方向で形状幾何学を横切る多孔度e=0.6
表面積/容積:1114m
2/m
3
プリントされた連続した層:24
係数c:2.9
係数d:0.6667
係数e):2.333
単一のモノリスの圧力低下(モノリスの回りの迂回なし)、同一の横断面のチューブ内部のモノリス
ガス:空気(一定の材料特性)
密度:p=1.205kg/m
3
粘度:h=1.82E-05Pa*s
空のパイプ速度:vO[m/s]={0.12,0.25,0.5,1,2,4}
【0097】
実施例1~7の結果をTable 1(表1)にまとめて示す。
【0098】
【0099】
押し出されたモノリス
【0100】
(実施例8)
図27に示されている比較の六角形触媒モノリス
材料:促進剤化合物としてナトリウム及びカリウムを有するバナジウム活性相を含有する珪藻土
熱処理前の繊維直径:1.5mm
熱処理前の繊維間距離:1.5mm
最小横断面直径:25mm
プリントされた連続した層:22
熱処理の際の収縮:20%
押出中の圧力:50-70N
【0101】
(実施例9)
図28及び
図29に示されている本発明の六角形触媒モノリス
材料:促進剤化合物としてナトリウム及びカリウムを有するバナジウム活性相を含有する珪藻土
熱処理前の繊維直径:1.5mm
熱処理前の第一の繊維間距離:1.5mm
熱処理前の第二の繊維間距離:4.5mm
最小横断面直径:25mm
プリントされた連続した層:22
熱処理の際の収縮:20%
押出中圧力:50-70N
【0102】
(実施例10)
図30に示されている本発明の正方形触媒モノリス
材料:促進剤化合物としてナトリウム及びカリウムを有するバナジウム活性相を含有する珪藻土
熱処理前の繊維直径:1.5mm
熱処理前の第一の繊維間距離:1.5mm
熱処理前の第二の繊維間距離:4.5mm
最小横断面直径:25mm
プリントされた連続した層:22
熱処理の際の収縮:20%
押出中の圧力:50-70N
【符号の説明】
【0103】
5a ストランドの直径
5b 第一のストランド間の距離
5c 第二のストランド間の距離
6a ストランドの直径
6b 第一のストランド間の距離
6c 第二のストランド間の距離
7a チャンネル
7b チャンネル
7c チャンネル
25a 気体流
25b モノリス構造
25c モノリス構造
26a 気体流
26b プリントされた構造
26c プリントされた構造
26d 六角形のモノリス構造の1つの中心を通過する流れ