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  • 特許-ポリカーボネート樹脂組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】ポリカーボネート樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 69/00 20060101AFI20240321BHJP
   C08K 5/49 20060101ALI20240321BHJP
   C08J 5/00 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
C08L69/00
C08K5/49
C08J5/00 CFD
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021548735
(86)(22)【出願日】2020-09-02
(86)【国際出願番号】 JP2020033188
(87)【国際公開番号】W WO2021059902
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2023-02-07
(31)【優先権主張番号】P 2019173919
(32)【優先日】2019-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】594137579
【氏名又は名称】三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】赤塚 渉
(72)【発明者】
【氏名】辻村 智哉
(72)【発明者】
【氏名】磯部 剛彦
(72)【発明者】
【氏名】下川 敬輔
(72)【発明者】
【氏名】原田 英文
【審査官】飛彈 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-125028(JP,A)
【文献】特開平1-252630(JP,A)
【文献】特開昭63-227627(JP,A)
【文献】特開2006-016497(JP,A)
【文献】特開2016-130298(JP,A)
【文献】特開2015-025068(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 69/00
C08K 5/49
C08J 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、(B1)ビスフェノールAと(B2)置換基を有してもよいポリ-n-プロピレングリコールのカーボネート結合によるポリカーボネート共重合体(B)0.1~10質量部、及びリン系安定剤(C)0.005~0.5質量部を含有し、ポリカーボネート共重合体(B)を構成する(B1)ビスフェノールAと(B2)ポリ-n-プロピレングリコールの質量割合は、(B1)と(B2)の合計100質量%基準で、(B1)が5質量%以上50質量%未満、(B2)が50質量%超95質量%以下であることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項2】
300mm光路長における初期YI値が25以下であり、95℃1000時間保持後の300mm光路長のYI値と初期YI値との差(ΔYI)が6以下である請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項3】
ポリカーボネート共重合体(B)を構成する(B2)ポリ-n-プロピレングリコールの重量平均分子量(Mw)が600~8000である請求項1もしくは2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項4】
ポリカーボネート共重合体(B)の重量平均分子量(Mw)が5000~40000である請求項1~3のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項5】
ISO179に基づいた3mm厚みの成形品のノッチ付きシャルピー衝撃強度が25kJ/m以上である請求項1~のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物の成形品。
【請求項7】
光学部品である請求項に記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネート樹脂組成物に関し、詳しくは、耐衝撃性に優れ、良好な色相を有し、さらに透明性に優れ、且つ成形時のガス発生と金型汚染が極めて少ないポリカーボネート樹脂組成物およびそれを成形した成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータ、携帯電話等に使用される液晶表示装置には、その薄型化、軽量化、省力化、高精細化の要求に対応するために、面状光源装置が組み込まれている。そして、この面状光源装置には、入光する光を液晶表示側に均一かつ効率的に導く役割を果たす目的で、一面が一様な傾斜面を有する楔型断面の導光板や平板形状の導光板が備えられている。また導光板の表面に凹凸パターンを形成して光散乱機能を付与するものもある。
【0003】
このような導光板は、熱可塑性樹脂の射出成形によって得られ、上記の凹凸パターンは入れ子金型の表面に形成された凹凸部の転写によって付与される。従来、導光板はポリメチルメタクリレート(PMMA)等の樹脂材料から成形されてきたが、最近では、より鮮明な画像を映し出す表示装置が求められ、光源近傍で発生する熱によって機器装置内が高温化する傾向にあるため、より耐熱性の高いポリカーボネート樹脂材料に置き換えられつつある。
【0004】
ポリカーボネート樹脂は、機械的性質、熱的性質、電気的性質、耐候性に優れるが、光線透過率は、PMMA等に比べて低いことから、ポリカーボネート樹脂製の導光板と光源とから面光源体を構成した場合、輝度が低いという問題がある。また最近では導光板の入光部と入光部から離れた場所の色度差を少なくすることが求められているが、ポリカーボネート樹脂はPMMAと比べて黄変しやすいという問題がある。
【0005】
特許文献1には、アクリル樹脂及び脂環式エポキシ化合物を添加することにより光線透過率及び輝度を向上させる方法、特許文献2には、ポリカーボネート樹脂末端を変性し導光板への凹凸部の転写性を上げることにより輝度を向上させる方法、特許文献3には、脂肪族セグメントを有するコポリエステルカーボネートを導入して上記の転写性を向上させることにより輝度を向上させる方法が提案されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1の方法は、アクリル樹脂の添加により色相は良好になるが白濁するために光線透過率及び輝度を上げることができず、脂環式エポキシ化合物を添加することにより、透過率が向上する可能性はあるが、色相の改善効果は認められない。特許文献2及び特許文献3の場合、流動性や転写性の改善効果は期待できるものの、耐熱性が低下するという欠点がある。
【0007】
一方、ポリエチレングリコール又はポリ(2-メチル)エチレングリコール等をポリカーボネート樹脂等の熱可塑性樹脂に配合することが知られており、特許文献4にはこれを含有する耐γ線照射性のポリカーボネート樹脂が、特許文献5ではPMMA等に配合した帯電防止性と表面外観に優れた熱可塑性樹脂組成物が記載されている。
また、特許文献6では、直鎖アルキル基で構成されるポリアルキレングリコールを配合することにより、透過率や色相を改良する提案がなされている。ポリテトラメチレンエーテルグリコールを配合することで透過率や黄変度(イエローインデックス:YI)に改善が見られる。
さらに、特許文献7では、ポリアルキレングリコールをジエステル化したジオールを原料(コモノマー)として用いたポリカーボネート共重合体の製造方法が記載されているが、このポリカーボネート共重合体はポリアルキレングリコールのジエステルジオールが不安定であり、耐衝撃性は不十分であり、色相や耐熱変色性も悪くなる。
【0008】
特に最近、スマートフォンやタブレット型端末等の各種携帯端末においては、導光板などの光学部品は薄肉化や大型化が著しいスピードで進行しており、導光板成形には、高温のバレル温度、且つ高速射出が求められている。これに伴い、成形時に発生するガスが増加し、金型汚染が進行しやすいという問題が生じている。そのため、これらの成形に用いられる樹脂組成物には優れた光学特性のみならず、高温での射出成形時のガス発生による金型汚染が少ないこと、耐衝撃性にも優れることが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開平11-158364号公報
【文献】特開2001-208917号公報
【文献】特開2001-215336号公報
【文献】特開平1-22959号公報
【文献】特開平9-227785号公報
【文献】特許第5699188号公報
【文献】特開2006-016497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、良好な色相を有し、さらに透明性に優れ、耐衝撃性に優れ、且つ成形時のガス発生と金型汚染が極めて少ないポリカーボネート樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を達成すべく、鋭意検討を重ねた結果、通常のポリカーボネート樹脂に、ビスフェノールAとポリ-n-プロピレングリコールのカーボネート結合による特定のポリカーボネート共重合体を、リン系安定剤と共に特定の量で配合することにより、耐衝撃性に優れ、良好な色相を有し、さらに透明性に優れ、且つ成形時のガス発生と金型汚染が極めて少ないポリカーボネート樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下のポリカーボネート樹脂組成物及び成形品に関する。
【0012】
[1]ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、(B1)ビスフェノールAと(B2)置換基を有してもよいポリ-n-プロピレングリコールのカーボネート結合によるポリカーボネート共重合体(B)0.1~10質量部、及びリン系安定剤(C)0.005~0.5質量部を含有することを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
[2]300mm光路長における初期YI値が25以下であり、95℃1000時間保持後の300mm光路長のYI値と初期YI値との差(ΔYI)が6以下である上記[1]に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[3]ポリカーボネート共重合体(B)を構成する(B2)ポリ-n-プロピレングリコールの重量平均分子量(Mw)が600~8000である上記[1]もしくは[2]に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[4]ポリカーボネート共重合体(B)の重量平均分子量(Mw)が5000~40000である上記[1]~[3]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[5]ポリカーボネート共重合体(B)を構成する(B1)ビスフェノールAと(B2)ポリ-n-プロピレングリコールの質量割合は、(B1)と(B2)の合計100質量%基準で、(B1)が5質量%以上50質量%未満、(B2)が50質量%超95質量%以下である上記[1]~[4]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[6]ISO179に基づいた3mm厚みの成形品のノッチ付きシャルピー衝撃強度が25kJ/m以上である上記[1]~[5]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[7]上記[1]~[6]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物の成形品。
[8]光学部品である上記[7]に記載の成形品。
[9]ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、安定剤を0.001~0.5質量部を含有し、300mm光路長における初期YI値が25以下であり、95℃1000時間保持後の300mm光路長のYI値と初期YI値との差(ΔYI)が6以下であることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
[10]安定剤がリン系安定剤である上記[9]に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[11]ISO179に基づいた3mm厚みの成形品のノッチ付きシャルピー衝撃強度が25kJ/m以上である上記[9]もしくは[10]に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【発明の効果】
【0013】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、耐衝撃性に優れ、良好な色相を有し、さらに透明性に優れ、且つ成形時のガス発生と金型汚染が極めて少なく、これからなる成形品は耐衝撃性に優れ、且つ色相と透明性の良好な光学部品として、特に好適である。特に、本発明における(B2)ポリ-n-プロピレングリコールを用いたポリカーボネート共重合体(B)は、同じく直鎖状であるポリテトラメチレングリコールに代えた共重合体に比べ、ポリカーボネート樹脂(A)との相溶性が高く、透明性に優れるため、実用上、ポリカーボネート共重合体(B)の混合可能な割合を高くできたり、より高分子量のポリカーボネート共重合体(B)を用いることができることから、各種用途に応じ樹脂設計の幅が広がるという効果も有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、実施例での金型汚染の評価に使用したしずく型金型の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明する。
なお、本明細書において、「~」とは、特に断りがない場合、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0016】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、(B1)ビスフェノールAと(B2)置換基を有してもよいポリ-n-プロピレングリコールのカーボネート結合によるポリカーボネート共重合体(B)0.1~10質量部、及びリン系安定剤(C)0.005~0.5質量部を含有することを特徴とする。
以下、本発明のポリカーボネート樹脂組成物を構成する各成分、光学部品等につき、詳細に説明する。
【0017】
[(B1)ビスフェノールAと(B2)ポリ-n-プロピレングリコールのカーボネート結合によるポリカーボネート共重合体(B)]
本発明において使用するポリカーボネート共重合体(B)は、(B1)ビスフェノールAと(B2)置換基を有してもよいポリ-n-プロピレングリコールのカーボネート結合によるポリカーボネート共重合体である。
【0018】
ポリカーボネート共重合体(B)を構成する(B1)ビスフェノールAと(B2)ポリ-n-プロピレングリコールの質量割合は、(B1)と(B2)の合計100質量%基準で、(B1)ビスフェノールAが5質量%以上50質量%未満、(B2)ポリn-プロピレングリコールが50質量%超95質量%以下であることが好ましく、より好ましくは(B1)5質量%以上40質量%以下、(B2)60質量%以上95質量%以下、さらに好ましくは(B1)5質量%以上35質量%以下、(B2)65質量%以上95質量%以下である。(B2)ポリ-n-プロピレングリコールが50質量%以下であると、ポリカーボネート樹脂組成物の色相が悪化し、95質量%を超えると白濁しやすい。
【0019】
ポリカーボネート共重合体(B)は、以下の一般式(1)で示され、ビスフェノールA由来のポリカーボネート単位と、ポリ-n-プロピレングリコール由来のポリカーボネート単位から構成されるポリカーボネート共重合体である。
【化1】
(式中、R~Rは各々独立に水素原子または炭素数1~3のアルキル基を示す。m、n、lは整数を示す。)
【0020】
ポリカーボネート共重合体(B)は、界面重合法や溶融重合法等の慣用の製造方法によって製造することができ、例えば、少なくとも(B1)ビスフェノールA、(B2)ポリ-n-プロピレングリコール及びホスゲンやジフェニルカーボネート等のカーボネート前駆体を反応させる方法により製造することができる。
【0021】
置換基を有してもよいポリ-n-プロピレングリコール(B2)としては、各種のポリ-n-プロピレングリコールが使用でき、例えば、下記一般式(2)で表されるメチレン基が置換基を有していてもよいポリ-n-プロピレングリコールが好ましいものとして挙げられる。
【0022】
【化2】
(式中、R~Rは各々独立に水素原子、炭素数1~3のアルキル基を示し、nは6~600の整数を示す。)
ポリ-n-プロピレングリコール(B2)としては、上記一般式(2)中、Rがメチル基であってRa,Rc,Rd,Re,Rfが水素である、ポリ-(2-メチル)-n-プロピレングリコールやエチル基であるポリ-(2-エチル)-n-プロピレングリコール、Rb、Reがメチル基であってRa,Rc,Rd,Rfが水素である、ポリ-(2,2-ジメチル)-n-プロピレングリコールが好ましく、中でもR~Rのいずれもが水素原子であるポリ-n-プロピレングリコール(即ち、ポリトリメチレングリコール)がさらに好ましい。
本明細書において、ポリ-n-プロピレングリコールは、ポリトリメチレングリコールと表記することもあるが、両者は同義であり、同じ化合物を意味する。
【0023】
上記一般式(2)で表されるポリ-n-プロピレングリコール(B2)は、一種のR~Rからなる単独重合体でも、また異なるR~Rからなる共重合体であってもよい。
【0024】
上記一般式(2)で表されるポリ-n-プロピレングリコール(B2)の市販品としては、上記一般式(2)中、R~Rのいずれもが水素原子であるポリ-n-プロピレングリコール、即ちポリトリメチレングリコールの市販品として、ALLESSA社製、商品名「VELVETOL」が挙げられる。
【0025】
上記一般式(2)で表されるポリ-n-プロピレングリコール(B2)は、例えばポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリペンタメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール等の直鎖状ポリアルキレングリコールとの共重合体であってもよいが、得られる成形品の透明性が向上することから、好ましくはポリトリメチレングリコール、即ちポリ-n-プロピレングリコールの単独重合体が好ましい。
【0026】
ポリ-n-プロピレングリコール(B2)は、下記一般式(3)で表されるn-プロピレンエーテル単位(P1)の他に、下記一般式(4-1)~(4-4)で表される単位から選ばれる分岐アルキレンエーテル単位(P2)を有するポリアルキレングリコール共重合体を含んでもよい。
【0027】
【化3】
(式中、R~Rは前記一般式(2)と同義である。)
【0028】
【化4】
(式(4-1)~(4-4)中、R~R10は各々独立に水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を示し、それぞれの式(4-1)~(4-4)において、R~R10の少なくとも1つは炭素数1~3のアルキル基である。)
一般式(4-1)~(4-4)で表される分岐アルキレンエーテル単位としては、一般式(4-1)~(4-4)のいずれかひとつの構造の分岐アルキレンエーテル単位で構成される単独重合体でも、また複数の構造の分岐アルキレンエーテル単位で構成される共重合体であってもよい。
【0029】
上記一般式(3)で示されるn-プロピレンエーテル単位としては、それをグリコールとして記載すると、n-プロピレングリコールであり、n-プロピレングリコールの他に、エチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコールを混合していてもよいが、n-プロピレングリコールのみであることが好ましく、上述のR~Rのいずれもが水素原子であるn-プロピレングリコール(即ちトリメチレングリコール)のみであることがより好ましい。
【0030】
トリメチレングリコールは、工業的にはエチレンオキシドのヒドロホルミル化により3-ヒドロキシプロピオンアルデヒドを得、これを水添する方法、又はアクロレインを水和して得た3-ヒドロキシプロピオンアルデヒドをNi触媒で水素化する方法で製造される。また、最近ではバイオ法により、グリセリン、グルコース、澱粉等を微生物に還元させてトリメチレングリコールを製造することも行われている。
【0031】
上記一般式(4-1)で示される分岐アルキレンエーテル単位として、これをグリコールとして記載すると、(2-メチル)エチレングリコール、(2-エチル)エチレングリコール、(2,2-ジメチル)エチレングリコールなどが挙げられ、これらが混合していてもよく、好ましくは(2-メチル)エチレングリコール、(2-エチル)エチレングリコールである。
【0032】
上記一般式(4-2)で示される分岐アルキレンエーテル単位として、これをグリコールとして記載すると、(2-メチル)トリメチレングリコール、(3-メチル)トリメチレングリコール、(2-エチル)トリメチレングリコール、(3-エチル)トリエチレングリコール、(2,2-ジメチル)トリメチレングリコール(即ち、ネオペンチルグリコール)、(2,2-メチルエチル)トリメチレングリコール、(2,2-ジエチル)トリメチレングリコール、(3,3-ジメチル)トリメチレングリコール、(3,3-メチルエチル)トリメチレングリコール、(3,3-ジエチル)トリメチレングリコールなどが挙げられ、これらが混合していてもよい。
【0033】
上記一般式(4-3)で示される分岐アルキレンエーテル単位として、これをグリコールとして記載すると、(3-メチル)テトラメチレングリコール、(4-メチル)テトラメチレングリコール、(3-エチル)テトラメチレングリコール、(4-エチル)テトラメチレングリコール、(3,3-ジメチル)テトラメチレングリコール、(3,3-メチルエチル)テトラメチレングリコール、(3,3-ジエチル)テトラメチレングリコール、(4,4-ジメチル)テトラメチレングリコール、(4,4-メチルエチル)テトラメチレングリコール、(4,4-ジエチル)テトラメチレングリコールなどが挙げられ、これらが混合していてもよく、(3-メチル)テトラメチレングリコールが好ましい。
【0034】
上記一般式(4-4)で示される分岐アルキレンエーテル単位として、これをグリコールとして記載すると、(3-メチル)ペンタメチレングリコール、(4-メチル)ペンタメチレングリコール、(5-メチル)ペンタメチレングリコール、(3-エチル)ペンタメチレングリコール、(4-エチル)ペンタメチレングリコール、(5-エチル)ペンタメチレングリコール、(3,3-ジメチル)ペンタメチレングリコール、(3,3-メチルエチル)ペンタメチレングリコール、(3,3-ジエチル)ペンタメチレングリコール、(4,4-ジメチル)ペンタメチレングリコール、(4,4-メチルエチル)ペンタメチレングリコール、(4,4-ジエチル)ペンタメチレングリコール、(5,5-ジメチル)ペンタメチレングリコール、(5,5-メチルエチル)ペンタメチレングリコール、(5,5-ジエチル)ペンタメチレングリコールなどが挙げられ、これらが混合していてもよい。
【0035】
以上、分岐アルキレンエーテル単位を構成する一般式(4-1)~(4-4)で表される単位を、便宜的にグリコールを例として記載したが、これらグリコールに限らず、これらのアルキレンオキシドや、これらのポリエーテル形成性誘導体であってもよい。
【0036】
ポリ-n-プロピレングリコール共重合体(B2)として好ましいものを挙げると、n-プロピレンエーテル単位と前記一般式(4-2)で表される単位からなる共重合体が好ましく、特にトリメチレンエーテル単位と3-メチルトリメチレンエーテル単位からなる共重合体がより好ましい。
【0037】
ポリ-n-プロピレングリコール共重合体(B2)は、ランダム共重合体やブロック共重合体であってもよい。
【0038】
ポリ-n-プロピレングリコール共重合体(B2)の前記一般式(3)で表されるn-プロピレンエーテル単位(P1)と前記一般式(4-1)~(4-4)で表される分岐アルキレンエーテル単位(P2)の共重合比率は、(P1)/(P2)のモル比で、好ましくは95/5~5/95であり、より好ましくは93/7~40/60であり、更に好ましくは90/10~65/35であり、n-プロピレンエーテル単位(P1)がリッチであることがより好ましい。
なお、モル分率は、H-NMR測定装置を用い、重水素化クロロホルムを溶媒として測定される。
【0039】
上記した中でも、特に好ましいポリ-n-プロピレングリコール(B2)は、置換基のないn-プロピレングリコール、即ちトリメチレングリコールの単独重合体である。
【0040】
上記ポリ-n-プロピレングリコール(B2)としては、構造中に1,4-ブタンジオール、グリセロール、ソルビトール、ベンゼンジオール、ビスフェノールA、シクロヘキサンジオール、スピログリコールなどのポリオール由来の構造が含まれていても良い。ポリアルキレングリコールの重合時にこれらのポリオールを加えることで、これらの有機基を主鎖中に付与することができる。特に好ましくはグリセロール、ソルビトール、ビスフェノールAなどが挙げられる。
【0041】
構造中に有機基を含有するポリ-n-プロピレングリコールとしては、例えば、
ポリ-n-プロピレングリコールグリセリルエーテル、
ポリ(2-メチル)-n-プロピレングリコールグリセリルエーテル、
ポリ-n-プロピレングリコール-ポリ(2-メチル)-n-プロピレングリコールグリセリルエーテル、
ポリ-n-プロピレングリコール-ポリ(2-エチル)ポリ-n-プロピレングリコールグリセリルエーテル、
ポリ-n-プロピレングリコールソルビチルエーテル、
ポリ(2-メチル)-n-プロピレングリコールソルビチルエーテル、
ポリ-n-プロピレングリコール-ポリ(2-メチル)エチレングリコールソルビチルエーテル、
ビスフェノールA-ビス(ポリ-n-プロピレングリコール)エーテル、
ビスフェノールA-ビス(ポリ(2-メチル)-n-プロピレングリコール)エーテル、ビスフェノールA-ビス(ポリ-n-プロピレングリコール-ポリ(2-メチル)エチレングリコール)エーテル、
ビスフェノールA-ビス(ポリ-n-プロピレングリコール-ポリ(2-エチル)ポリ-n-プロピレングリコール)エーテル等が好ましいものとして挙げられる。
【0042】
ポリ-n-プロピレングリコール(B2)の重量平均分子量(Mw)は、600~8000が好ましく、より好ましくは800以上、さらに好ましくは1000以上、より好ましくは6000以下、さらに好ましくは5000以下、特に好ましくは4000以下である。重量平均分子量が上記上限を超えると、相溶性が低下する傾向がある。重量平均分子量が上記下限を下回ると組成物の衝撃性が低下する。
なお、重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により、展開溶媒クロロホルムで測定されるポリスチレン換算分子量である。
具体的には、GPCとして東ソー社製高速GPC装置「HLC-8320」を用い、カラム:東ソー社製、HZ-M(4.6mm×150mm)×3本直列、溶離液:クロロホルム、ポリスチレン換算分子量(重量平均分子量)として求めた値である。
【0043】
ポリカーボネート共重合体(B)の原料となるモノマーのうち、カーボネート前駆体の例を挙げると、カルボニルハライド、カーボネートエステル等が使用される。なお、カーボネート前駆体は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0044】
カルボニルハライドとしては、具体的には例えば、ホスゲン;ジヒドロキシ化合物のビスクロロホルメート体、ジヒドロキシ化合物のモノクロロホルメート体等のハロホルメート等が挙げられる。
【0045】
カーボネートエステルとしては、具体的には例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等のジアリールカーボネート類;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート類;ジヒドロキシ化合物のビスカーボネート体、ジヒドロキシ化合物のモノカーボネート体、環状カーボネート等のジヒドロキシ化合物のカーボネート体等が挙げられる。
【0046】
ポリカーボネート共重合体(B)としては、以下の式(5)で示されるビスフェノールA-ポリ-n-プロピレングリコール共重合ポリカーボネートが特に好ましい。
【化5】
[式(5)中、m、n、lは整数を示す。]
【0047】
ポリカーボネート共重合体(B)の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の任意の方法を採用できる。その例を挙げると、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法などを挙げることができる。これらの中でも溶融エステル交換法、界面重合法が好ましく、より好ましくは溶融エステル交換法である。
【0048】
ポリカーボネート共重合体(B)の重量平均分子量(Mw)は、5000~40000であることが好ましく、より好ましくは6000以上、さらに好ましくは7000以上、より好ましくは37000以下、さらに好ましくは35000以下、特に好ましくは30000以下、25000以下であることが最も好ましい。重量平均分子量(Mw)が上記上限を超えると、相溶性が低下する傾向がある。重量平均分子量が上記下限を下回ると成形時にガスが発生する傾向がある。
【0049】
ポリカーボネート共重合体(B)の重量平均分子量(Mw)の調整は、コモノマージオール原料の1つである(B2)ポリ-n-プロピレングリコールのMwを選択することや、カーボネート前駆体の比率の調整、停止剤の添加、重合時の温度や圧力を調整すること等により可能であり、例えば溶融エステル交換法においてMwを大にするには、カーボネート前駆体モノマーであるジフェニルカーボネートと、ジオールモノマーの反応比が1に近くなるようにモノマー原料比を調整し、副生フェノールが重合系中から除去しやすいように重合温度を高く保ち、且つ圧力をできる限り低くし、攪拌による界面更新を積極的に行うこと等により可能である。
【0050】
なお、ポリカーボネート共重合体(B)の重量平均分子量(Mw)は、GPCにより、展開溶媒クロロホルムで測定されるポリスチレン換算分子量である。
具体的には、GPCとして東ソー社製高速GPC装置「HLC-8320」を用い、カラム:東ソー社製、HZ-M(4.6mm×150mm)×3本直列、溶離液:クロロホルム、測定温度:25℃、ポリスチレン換算分子量(重量平均分子量)として求めた値である。
【0051】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物におけるポリカーボネート共重合体(B)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.1~10質量部であり、好ましくは0.15質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上であり、また、好ましくは7質量部以下、より好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下、特には2質量部以下、最も好ましくは1質量部以下である。ポリカーボネート共重合体(B)の含有量が前記範囲の0.1質量部未満の場合は、色相、耐熱変色性が不十分となり、10質量部を超える場合は、材料が白濁し、透明性が失われる。
【0052】
[ポリカーボネート樹脂(A)]
本発明において使用するポリカーボネート樹脂(A)は、上記ポリカーボネート共重合体(B)以外のものであれば特に限定されず、種々のものが用いられる。
ポリカーボネート樹脂は、炭酸結合に直接結合する炭素がそれぞれ芳香族炭素である芳香族ポリカーボネート樹脂、及び脂肪族炭素である脂肪族ポリカーボネート樹脂に分類できるが、いずれを用いることもできる。中でも、ポリカーボネート樹脂(A)としては、耐熱性、機械的物性、電気的特性等の観点から、芳香族ポリカーボネート樹脂が好ましい。
【0053】
芳香族ポリカーボネート樹脂の原料となるモノマーのうち、芳香族ジヒドロキシ化合物の例を挙げると、
1,2-ジヒドロキシベンゼン、1,3-ジヒドロキシベンゼン(即ち、レゾルシノール)、1,4-ジヒドロキシベンゼン等のジヒドロキシベンゼン類;
2,5-ジヒドロキシビフェニル、2,2’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジヒドロキシビフェニル等のジヒドロキシビフェニル類;
【0054】
2,2’-ジヒドロキシ-1,1’-ビナフチル、1,2-ジヒドロキシナフタレン、1,3-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン類;
【0055】
2,2’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルエーテル、1,4-ビス(3-ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン等のジヒドロキシジアリールエーテル類;
【0056】
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(即ち、ビスフェノールA)、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2-ビス(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、
2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、
1,1-ビス(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2-ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、
2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、
α,α’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,4-ジイソプロピルベンゼン、
1,3-ビス[2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキシルメタン、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)(4-プロペニルフェニル)メタン、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)ナフチルメタン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-ナフチルエタン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、
4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ノナン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)デカン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ドデカン、
等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;
【0057】
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3-ジメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,4-ジメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,5-ジメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-プロピル-5-メチルシクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-tert-ブチル-シクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-tert-ブチル-シクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルシクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-フェニルシクロヘキサン、
等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;
【0058】
9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、
9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン等のカルド構造含有ビスフェノール類;
【0059】
4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、
4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類;
【0060】
4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類;
【0061】
4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、
4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類;
等が挙げられる。
【0062】
これらの中ではビス(ヒドロキシアリール)アルカン類が好ましく、中でもビス(4-ヒドロキシフェニル)アルカン類が好ましく、特に耐衝撃性、耐熱性の点から2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(即ち、ビスフェノールA)が好ましい。
なお、芳香族ジヒドロキシ化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0063】
ポリカーボネート樹脂の原料となるモノマーのうち、カーボネート前駆体の例を挙げると、カルボニルハライド、カーボネートエステル等が使用される。なお、カーボネート前駆体は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0064】
カルボニルハライドとしては、具体的には例えば、ホスゲン;ジヒドロキシ化合物のビスクロロホルメート体、ジヒドロキシ化合物のモノクロロホルメート体等のハロホルメート等が挙げられる。
【0065】
カーボネートエステルとしては、具体的には例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等のジアリールカーボネート類;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート類;ジヒドロキシ化合物のビスカーボネート体、ジヒドロキシ化合物のモノカーボネート体、環状カーボネート等のジヒドロキシ化合物のカーボネート体等が挙げられる。
【0066】
ポリカーボネート樹脂(A)の製造方法は、特に限定されるものではなく、任意の方法を採用できる。その例を挙げると、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法などを挙げることができる。これらの中では、界面重合法によるものが特に好ましい。
【0067】
ポリカーボネート樹脂(A)の分子量は、溶媒としてメチレンクロライドを用い、温度25℃で測定された溶液粘度より換算した粘度平均分子量(Mv)で、10,000~26,000であることが好ましく、より好ましくは10,500以上、さらに好ましくは11,000以上、特には11,500以上、最も好ましくは12,000以上であり、より好ましくは24,000以下であり、更に好ましくは20,000以下である。粘度平均分子量を上記範囲の下限値以上とすることにより、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の機械的強度をより向上させることができ、粘度平均分子量を上記範囲の上限値以下とすることにより、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の流動性低下を抑制して改善でき、成形加工性を高めて薄肉成形加工を容易に行えるようになる。
なお、粘度平均分子量の異なる2種類以上のポリカーボネート樹脂を混合して用いてもよく、この場合には、粘度平均分子量が上記の好適な範囲外であるポリカーボネート樹脂を混合してもよい。
【0068】
なお、粘度平均分子量[Mv]とは、溶媒としてメチレンクロライドを使用し、ウベローデ粘度計を用いて温度25℃での極限粘度[η](単位dl/g)を求め、Schnellの粘度式、すなわち、η=1.23×10-4Mv0.83から算出される値を意味する。また、極限粘度[η]とは、各溶液濃度[C](g/dl)での比粘度[ηsp]を測定し、下記式により算出した値である。
【数1】
【0069】
ポリカーボネート樹脂(A)の末端水酸基濃度は任意であり、適宜選択して決定すればよいが、通常1,000ppm以下、好ましくは800ppm以下、より好ましくは600ppm以下である。これによりポリカーボネート樹脂の滞留熱安定性及び色調をより向上させることができる。また、その下限は、特に溶融エステル交換法で製造されたポリカーボネート樹脂では、通常10ppm以上、好ましくは30ppm以上、より好ましくは40ppm以上である。これにより、分子量の低下を抑制し、樹脂組成物の機械的特性をより向上させることができる。
【0070】
なお、末端水酸基濃度の単位は、ポリカーボネート樹脂(A)の質量に対する、末端水酸基の質量をppmで表示したものである。その測定方法は、四塩化チタン/酢酸法による比色定量(Macromol.Chem.88 215(1965)に記載の方法)である。
【0071】
また、成形品の外観の向上や流動性の向上を図るため、ポリカーボネート樹脂(A)は、ポリカーボネートオリゴマーを含有していてもよい。このポリカーボネートオリゴマーの粘度平均分子量[Mv]は、通常1,500以上、好ましくは2,000以上であり、また、通常9,500以下、好ましくは9,000以下である。さらに、含有されるポリカーボネートオリゴマーは、ポリカーボネート樹脂(ポリカーボネートオリゴマーを含む)の30質量%以下とすることが好ましい。
【0072】
さらにポリカーボネート樹脂(A)は、バージン原料だけでなく、使用済みの製品から再生されたポリカーボネート樹脂(いわゆるマテリアルリサイクルされたポリカーボネート樹脂)であってもよい。
ただし、再生されたポリカーボネート樹脂は、ポリカーボネート樹脂(A)のうち、80質量%以下であることが好ましく、中でも50質量%以下であることがより好ましい。再生されたポリカーボネート樹脂は、熱劣化や経年劣化等の劣化を受けている可能性が高いため、このようなポリカーボネート樹脂を前記の範囲よりも多く用いた場合、色相や機械的物性を低下させる可能性があるためである。
【0073】
[リン系安定剤(C)]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、リン系安定剤(C)を含有する。リン系安定剤を含有することで、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の色相が良好なものとなり、さらに耐熱変色性が向上する。
リン系安定剤としては、公知の任意のものを使用できる。具体例を挙げると、リン酸、ホスホン酸、亜燐酸、ホスフィン酸、ポリリン酸などのリンのオキソ酸;酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウム、酸性ピロリン酸カルシウムなどの酸性ピロリン酸金属塩;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸セシウム、リン酸亜鉛など第1族又は第2B族金属のリン酸塩;ホスフェート化合物、ホスファイト化合物、ホスホナイト化合物などが挙げられるが、ホスファイト化合物が特に好ましい。ホスファイト化合物を選択することで、より高い耐変色性と連続生産性を有するポリカーボネート樹脂組成物が得られる。
【0074】
ここでホスファイト化合物は、一般式:P(OR)で表される3価のリン化合物であり、Rは、1価又は2価の有機基を表す。
このようなホスファイト化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノノニル/ジノニル・フェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリステアリルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレン-ジホスファイト、6-[3-(3-tert-ブチル-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ]-2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]-ジオキサホスフェピン等が挙げられる。
【0075】
このようなホスファイト化合物のなかでも、下記式(1)又は(2)で表される芳香族ホスファイト化合物が、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の耐熱変色性が効果的に高まるため、より好ましい。
【0076】
【化6】
[式(1)中、R、R及びRは、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、炭素数6以上30以下のアリール基を表す。]
【0077】
【化7】
[式(2)中、R及びRは、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、炭素数6以上30以下のアリール基を表す。]
【0078】
上記式(1)で表されるホスファイト化合物としては、中でもトリフェニルホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト等が好ましく、中でもトリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイトがより好ましい。このような、有機ホスファイト化合物としては、具体的には例えば、ADEKA社製「アデカスタブ1178」、住友化学社製「スミライザーTNP」、城北化学工業社製「JP-351」、ADEKA社製「アデカスタブ2112」、BASF社製「イルガフォス168」、城北化学工業社製「JP-650」等が挙げられる。
【0079】
上記式(2)で表されるホスファイト化合物としては、中でもビス(2,4-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトのようなペンタエリスリトールジホスファイト構造を有するものが特に好ましい。このような、有機ホスファイト化合物としては、具体的には例えば、ADEKA社製「アデカスタブPEP-24G」、「アデカスタブPEP-36」、Doverchemical社製「Doverphos S-9228」等が好ましく挙げられる。
【0080】
ホスファイト化合物の中でも、上記式(2)で表される芳香族ホスファイト化合物が、色相がより優れるため、より好ましい。
なお、リン系安定剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
【0081】
リン系安定剤(C)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、0.005~0.5質量部であり、好ましくは0.007質量部以上、より好ましくは0.008質量部以上、特に好ましくは0.01質量部以上であり、また、好ましくは0.4質量部以下、より好ましくは0.3質量部以下、さらに好ましくは0.2質量部以下、特には0.1質量部以下である。リン系安定剤(C)の含有量が前記範囲の0.005質量部未満の場合は、色相、耐熱変色性が不十分となり、リン系安定剤(C)の含有量が0.5質量部を超える場合は、耐熱変色性がかえって悪化するだけでなく、湿熱安定性も低下する。
【0082】
[エポキシ化合物及び/又はオキセタン化合物(D)]
本発明の樹脂組成物は、エポキシ化合物及び/又はオキセタン化合物(D)を含有することも好ましい。エポキシ化合物及び/又はオキセタン化合物(D)を含有することで耐熱変色性をより向上させることができる。エポキシ化合物及び/又はオキセタン化合物(D)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、0.0005~0.2質量部であることが好ましい。
【0083】
エポキシ化合物としては、1分子中にエポキシ基を1個以上有する化合物が用いられる。具体的には、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、t-ブチルフェニルグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシ-6’-メチルシクロヘキシルカルボキシレート、2,3-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、4-(3,4-エポキシ-5-メチルシクロヘキシル)ブチル-3’,4’-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、3,4-エポキシシクロヘキシルエチレンオキシド、シクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル-6’-メチルシロヘキシルカルボキシレート、ビスフェノール-Aジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノール-Aグリシジルエーテル、フタル酸のジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸のジグリシジルエステル、ビス-エポキシジシクロペンタジエニルエーテル、ビス-エポキシエチレングリコール、ビス-エポキシシクロヘキシルアジペート、ブタジエンジエポキシド、テトラフェニルエチレンエポキシド、オクチルエポキシタレート、エポキシ化ポリブタジエン、3,4-ジメチル-1,2-エポキシシクロヘキサン、3,5-ジメチル-1,2-エポキシシクロヘキサン、3-メチル-5-t-ブチル-1,2-エポキシシクロヘキサン、オクタデシル-2,2-ジメチル-3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、N-ブチル-2,2-ジメチル-3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、シクロヘキシル-2-メチル-3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、N-ブチル-2-イソプロピル-3,4-エポキシ-5-メチルシクロヘキシルカルボキシレート、オクタデシル-3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、2-エチルヘキシル-3’,4’-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、4,6-ジメチル-2,3-エポキシシクロヘキシル-3’,4’-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、4,5-エポキシ無水テトラヒドロフタル酸、3-t-ブチル-4,5-エポキシ無水テトラヒドロフタル酸、ジエチル4,5-エポキシ-シス-1,2-シクロヘキシルジカルボキシレート、ジ-n-ブチル-3-t-ブチル-4,5-エポキシ-シス-1,2-シクロヘキシルジカルボキシレート、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油などを好ましく例示することができる。
【0084】
これらのうち、脂環族エポキシ化合物が好ましく用いられ、特に、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキシルカルボキシレートが好ましい。
【0085】
また、片末端もしくは両末端にエポキシ基を有するポリアルキレングリコール誘導体も好ましく使用することができる。特に、両末端にエポキシ基を有するポリアルキレングリコールが好ましい。
【0086】
構造中にエポキシ基を含有するポリアルキレングリコール誘導体としては、例えば、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリ(2-メチル)エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリ(2-エチル)エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコール-ポリ(2-メチル)エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコール-ポリ(2-メチル)エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコール-ポリ(2-エチル)エチレングリコールジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコール誘導体が好ましいものとして挙げられる。
【0087】
エポキシ化合物は、単独で用いても2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0088】
エポキシ化合物の好ましい含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、0.0005~0.2質量部であり、より好ましくは0.001質量部以上、さらに好ましくは0.003質量部以上、特に好ましくは0.005質量部以上であり、また、より好ましくは0.15質量部以下、さらに好ましくは0.1質量部以下、特に好ましくは0.05質量部以下である。エポキシ化合物の含有量が、0.0005質量部未満の場合は、色相、耐熱変色性が不十分となりやすく、0.2質量部を超える場合は、耐熱変色性がかえって悪化しやすく、色相や湿熱安定性も低下しやすい。
【0089】
オキセタン化合物としては、分子内に1以上のオキセタン基を有する化合物であればいずれも使用することができ、分子中にオキセタン基を1個有するモノオキセタン化合物および分子中にオキセタン基を2個以上有する2官能以上のポリオキセタン化合物のいずれもが使用できる。
オキセタン化合物を含有することによって、良好な色相と高度の耐熱変色性を一層向上させることができる。
【0090】
モノオキセタン化合物としては、下記の一般式(3)、(4)または(5)で表される化合物などを好ましく例示することができる。
【0091】
【化8】
【化9】
[式(3)~(5)中、Rはアルキル基、Rはアルキル基またはフェニル基を示し、Rは芳香環を有していてもよい2価の有機基、nは0または1を示す。]
【0092】
上記一般式(3)、(4)及び(5)において、Rはアルキル基であるが、好ましくは炭素数1~6のアルキル基であり、メチル基またはエチル基が好ましく、特に好ましくはエチル基である。
また、Rはアルキル基またはフェニル基であるが、好ましくは炭素数2~10のアルキル基であり、鎖状のアルキル基、分岐したアルキル基または脂環式アルキル基のいずれであってもよく、或いはアルキル鎖の途中にエーテル結合(エーテル系酸素原子)を有する鎖状または分岐状のアルキル基であってもよい。Rの具体例としては、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、3-オキシペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基などを挙げることができる。そのうちでも、Rは2-エチルヘキシル基、フェニル基、シクロヘキシル基が好ましい。
【0093】
一般式(3)の化合物の具体例としては、3-ヒドロキシメチル-3-メチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-エチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-プロピルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-ノルマルブチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-プロピルオキセタンなどを好ましく挙げることができる。そのうちでも、3-ヒドロキシメチル-3-メチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-エチルオキセタン等が特に好ましい。
一般式(4)の化合物の具体例としては、3-エチル-3-(2-エチルヘキシロキシメチル)オキセタン等が特に好ましい。
【0094】
一般式(5)において、Rは芳香環を有していてもよい2価の有機基であるが、その例としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ネオペンチレン基、n-ペンタメチレン基、n-ヘキサメチレン基等の炭素数1~12の直鎖状または分岐状のアルキレン基、フェニレン基、式:-CH-Ph-CH-または-CH-Ph-Ph-CH-(ここで、Phはフェニル基を示す)で表される2価の基、水素添加ビスフェノールA残基、水素添加ビスフェノールF残基、水素添加ビスフェノールZ残基、シクロヘキサンジメタノール残基、トリシクロデカンジメタノール残基などを挙げることができる。
【0095】
一般式(5)の化合物の具体例としては、ビス(3-メチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ビス(3-プロピル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ビス(3-ブチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、3-エチル-3{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタン、4,4’-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ベンゼン等を特に好ましく挙げることができる。
【0096】
オキセタン化合物は、単独で用いても2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0097】
オキセタン化合物を含有する場合の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.0005~0.2質量部であり、より好ましくは0.001質量部以上、さらに好ましくは0.003質量部以上、特に好ましくは0.005質量部以上であり、また、より好ましくは0.15質量以下、さらに好ましくは0.1質量部以下、特に好ましくは0.05質量部以下である。オキセタン化合物の含有量が、0.0005質量部未満の場合は、色相、耐熱変色性が不十分となりやすく、0.2質量部を超える場合は、耐熱変色性が却って悪化しやすく、成形時のガスが発生しやすい。
【0098】
エポキシ化合物とオキセタン化合物は、両者を併せて含有することも好ましく、両者を含有する場合の合計の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、0.0005~0.2質量部であることが好ましい。
【0099】
[ポリアルキレングリコール]
本発明の樹脂組成物はポリアルキレングリコールを含有することも好ましい。
【0100】
ポリアルキレングリコール化合物としては、下記一般式(2)で表される直鎖アルキレンエーテル単位(P1)と下記一般式(2A)~(2D)で表される単位から選ばれる分岐アルキレンエーテル単位(P2)を有するポリアルキレングリコール共重合体(CP)が好ましいものとして挙げられる。
【0101】
【化10】
一般式(2)中、tは3~6の整数を示す。
【0102】
【化11】
【0103】
一般式(2A)~(2D)中、R31~R40は各々独立に水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を示す。一般式(2A)~(2D)においてR31~R40の少なくとも1つは炭素数1~3のアルキル基である。
【0104】
一般式(2)で示される直鎖アルキレンエーテル単位(P1)としては、それをグリコールとして記載すると、tが3のトリメチレングリコール、tが4のテトラメチレングリコール、tが5のペンタメチレングリコール、tが6のヘキサメチレングリコールが挙げられる。好ましくはトリメチレングリコール、テトラメチレングリコールであり、テトラメチレングリコールが特に好ましい。
【0105】
トリメチレングリコール(即ち、n-プロピレングリコール)は、工業的にはエチレンオキシドのヒドロホルミル化により3-ヒドロキシプロピオンアルデヒドを得、これを水添する方法、又はアクロレインを水和して得た3-ヒドロキシプロピオンアルデヒドをNi触媒で水素化する方法で製造される。バイオ法により、グリセリン、グルコース、澱粉等を微生物に還元させてトリメチレングリコールを製造してもよい。
【0106】
一般式(2A)で示される分岐アルキレンエーテル単位として、これをグリコールとして記載すると、(2-メチル)エチレングリコール(即ち、プロピレングリコール)、(2-エチル)エチレングリコール(即ち、ブチレングリコール)、(2,2-ジメチル)エチレングリコール(即ち、ネオペンチルグリコール)などが挙げられる。
【0107】
一般式(2B)で示される分岐アルキレンエーテル単位として、これをグリコールとして記載すると、(2-メチル)トリメチレングリコール、(3-メチル)トリメチレングリコール、(2-エチル)トリメチレングリコール、(3-エチル)トリエチレングリコール、(2,2-ジメチル)トリメチレングリコール、(2,2-メチルエチル)トリメチレングリコール、(2,2-ジエチル)トリメチレングリコール(即ち、ネオペンチルグリコール)、(3,3-ジメチル)トリメチレングリコール、(3,3-メチルエチル)トリメチレングリコール、(3,3-ジエチル)トリメチレングリコールなどが挙げられる。
【0108】
一般式(2C)で示される分岐アルキレンエーテル単位として、これをグリコールとして記載すると、(3-メチル)テトラメチレングリコール、(4-メチル)テトラメチレングリコール、(3-エチル)テトラメチレングリコール、(4-エチル)テトラメチレングリコール、(3,3-ジメチル)テトラメチレングリコール、(3,3-メチルエチル)テトラメチレングリコール、(3,3-ジエチル)テトラメチレングリコール、(4,4-ジメチル)テトラメチレングリコール、(4,4-メチルエチル)テトラメチレングリコール、(4,4-ジエチル)テトラメチレングリコールなどが挙げられ、(3-メチル)テトラメチレングリコールが好ましい。
【0109】
一般式(2D)で示される分岐アルキレンエーテル単位として、これをグリコールとして記載すると、(3-メチル)ペンタメチレングリコール、(4-メチル)ペンタメチレングリコール、(5-メチル)ペンタメチレングリコール、(3-エチル)ペンタメチレングリコール、(4-エチル)ペンタメチレングリコール、(5-エチル)ペンタメチレングリコール、(3,3-ジメチル)ペンタメチレングリコール、(3,3-メチルエチル)ペンタメチレングリコール、(3,3-ジエチル)ペンタメチレングリコール、(4,4-ジメチル)ペンタメチレングリコール、(4,4-メチルエチル)ペンタメチレングリコール、(4,4-ジエチル)ペンタメチレングリコール、(5,5-ジメチル)ペンタメチレングリコール、(5,5-メチルエチル)ペンタメチレングリコール、(5,5-ジエチル)ペンタメチレングリコールなどが挙げられる。
【0110】
以上、分岐アルキレンエーテル単位(P2)を構成する一般式(2A)~(2D)で表される単位を便宜的にグリコールを例として記載したが、これらグリコールに限らず、これらのアルキレンオキシドや、これらのポリエーテル形成性誘導体であってもよい。
【0111】
ポリアルキレングリコール共重合体(CP)として好ましいものを挙げると、テトラメチレンエーテル(即ち、テトラメチレングリコール)単位と一般式(2A)で表される単位からなる共重合体が好ましく、特にテトラメチレンエーテル(即ち、テトラメチレングリコール)単位と2-メチルエチレンエーテル(即ち、プロピレングリコール)単位及び/又は(2-エチル)エチレングリコール(即ち、ブチレングリコール)単位からなる共重合体が好ましい。テトラメチレンエーテル単位と2,2-ジメチルトリメチレンエーテル単位、即ちネオペンチルグリコールエーテル単位からなる共重合体も好ましい。
【0112】
直鎖アルキレンエーテル単位(P1)と分岐アルキレンエーテル単位(P2)を有するポリアルキレングリコール共重合体(CP)を製造する方法は公知であり、上記したようなグリコール、アルキレンオキシドあるいはそのポリエーテル形成性誘導体を、通常、酸触媒を用いて重縮合させることによって製造することができる。
【0113】
ポリアルキレングリコール共重合体(CP)は、ランダム共重合体やブロック共重合体であってもよい。
【0114】
ポリアルキレングリコール共重合体(CP)の末端基はヒドロキシル基であることが好ましい。ポリアルキレングリコール共重合体(CP)は、その片末端あるいは両末端がアルキルエーテル、アリールエーテル、アラルキルエーテル、脂肪酸エステル、アリールエステルなどで封鎖されていてもその性能発現に影響はなく、エーテル化物又はエステル化物が同様に使用できる。
【0115】
アルキルエーテルを構成するアルキル基としては、直鎖状又は分岐状のいずれでもよく、炭素数1~22のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基、ラウリル基、ステアリル基等が挙げられる。アルキルエーテルとしては、ポリアルキレングリコールのメチルエーテル、エチルエーテル、ブチルエーテル、ラウリルエーテル、ステアリルエーテル等が好ましく例示できる。
【0116】
アリールエーテルを構成するアリール基としては、好ましくは炭素数6~22、より好ましくは炭素数6~12、さらに好ましくは炭素数6~10のアリール基が好ましく、例えばフェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられ、フェニル基、トリル基等が好ましい。アラルキル基としては、好ましくは炭素数7~23、より好ましくは炭素数7~13、さらに好ましくは炭素数7~11のアラルキル基が好ましく、例えばベンジル基、フェネチル基等が挙げられ、ベンジル基が特に好ましい。
【0117】
脂肪酸エステルを構成する脂肪酸は、直鎖状又は分岐状のいずれでもよく、飽和脂肪酸であってもよく不飽和脂肪酸であってもよい。
【0118】
脂肪酸エステルを構成する脂肪酸としては、炭素数1~22の1価又は2価の脂肪酸が挙げられる。1価の飽和脂肪酸として、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸、ベヘン酸が挙げられる。1価の不飽和脂肪酸として、例えば、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸などの不飽和脂肪酸が挙げられる。炭素数10以上の二価の脂肪酸として、例えば、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、タプシア酸およびデセン二酸、ウンデセン二酸、ドデセン二酸が挙げられる。
【0119】
アリールエステルを構成するアリール基としては、好ましくは炭素数6~22、より好ましくは炭素数6~12、さらに好ましくは炭素数6~10のアリール基が好ましく、例えばフェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられ、フェニル基、トリル基等が好ましい。末端封止する基は、アラルキル基であってもポリカーボネート樹脂(A)と良好な相溶性を示すことから、アリール基と同様の作用を発現できる。アラルキル基としては、好ましくは炭素数7~23、より好ましくは炭素数7~13、さらに好ましくは炭素数7~11のアラルキル基が好ましく、例えばベンジル基、フェネチル基等が挙げられ、ベンジル基が特に好ましい。
【0120】
ポリアルキレングリコール共重合体(CP)としては、なかでもテトラメチレンエーテル単位と2-メチルエチレンエーテル単位からなる共重合体、テトラメチレンエーテル単位と3-メチルテトラメチレンエーテル単位からなる共重合体、テトラメチレンエーテル単位と2,2-ジメチルトリメチレンエーテル単位からなる共重合体が特に好ましい。このようなポリアルキレングリコール共重合体の市販品としては、日油社製商品名「ポリセリンDCB」、保土谷化学社製商品名「PTG-L」、旭化成せんい社製商品名「PTXG」などが挙げられる。
【0121】
テトラメチレンエーテル単位と2,2-ジメチルトリメチレンエーテル単位からなる共重合体は日本特開2016-125038号公報に記載の方法で製造することも可能である。
【0122】
ポリアルキレングリコール化合物としては、下記一般式(3A)で表される分岐型ポリアルキレングリコール化合物又は下記一般式(3B)で表される直鎖型ポリアルキレングリコール化合物も好ましいものとして挙げられる。下記一般式(3A)で表される分岐型ポリアルキレングリコール化合物又は下記一般式(3B)で表される直鎖型ポリアルキレングリコール化合物は、他の共重合成分との共重合体であってもよいが、単独重合体が好ましい。
【0123】
【化12】
【0124】
一般式(3A)中、Rは炭素数1~3のアルキル基を示す。QおよびQは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~23の脂肪族アシル基、又は炭素数1~23のアルキル基を示す。rは5~400の整数を示す。
【0125】
【化13】
【0126】
一般式(3B)中、Q及びQは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数2~23の脂肪族アシル基又は炭素数1~23のアルキル基を示す。pは2~6の整数、qは6~100の整数を示す。
【0127】
一般式(3A)において、整数(重合度)rは、5~400であるが、好ましくは10~200、更に好ましくは15~100、特に好ましくは20~50である。重合度rが5未満の場合、成形時のガス発生量が多くなり、ガスによる成形不良、例えば、未充填、ガスやけ、転写不良を発生する可能性がある。重合度rが400を超える場合、本発明のペレットの色相を向上させる効果が十分に得られないおそれがある。
【0128】
分岐型ポリアルキレングリコール化合物としては、一般式(3A)中、Q,Qが水素原子で、Rがメチル基であるポリプロピレングリコール(即ち、ポリ(2-メチル)エチレングリコール)やエチル基であるポリブチレングリコール(即ち、ポリ(2-エチル)エチレングリコール)が好ましく、特に好ましくはポリブチレングリコール(即ち、ポリ(2-エチル)エチレングリコール)である。
【0129】
一般式(3B)において、q(重合度)は、6~100の整数であるが、好ましくは8~90、より好ましくは10~80である。重合度qが6未満の場合、成形時にガスが発生するので好ましくない。重合度qが100を超える場合、相溶性が低下するので好ましくない。
【0130】
直鎖型ポリアルキレングリコール化合物としては、一般式(3B)中のQ及びQが水素原子で、pが2のポリエチレングリコール、pが3のポリトリメチレングリコール、pが4のポリテトラメチレングリコール、pが5のポリペンタメチレングリコール、pが6のポリヘキサメチレングリコールが好ましく挙げられ、より好ましくはポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールあるいはそのエステル化物又はエーテル化物である。
【0131】
ポリアルキレングリコール化合物として、その片末端あるいは両末端が脂肪酸またはアルコールで封鎖されていてもその性能発現に影響はなく、脂肪酸エステル化物またはエーテル化物を同様に使用することができる。従って、一般式(3A),(3B)中のQ~Qは炭素数1~23の脂肪族アシル基又はアルキル基であってもよい。
【0132】
脂肪酸エステル化物としては、直鎖状又は分岐状脂肪酸エステルのいずれも使用できる。脂肪酸エステルを構成する脂肪酸は、飽和脂肪酸であってもよく不飽和脂肪酸であってもよい。一部の水素原子がヒドロキシル基などの置換基で置換されたものも使用できる。
【0133】
脂肪酸エステルを構成する脂肪酸としては、炭素数1~23の1価又は2価の脂肪酸が挙げられる。1価の飽和脂肪酸として、具体的には、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸、ベヘン酸が挙げられる。1価の不飽和脂肪酸として、具体的には、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸などの不飽和脂肪酸が挙げられる。炭素数10以上の二価の脂肪酸として、具体的には、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、タプシア酸及びデセン二酸、ウンデセン二酸、ドデセン二酸が挙げられる。
【0134】
脂肪酸は1種又は2種以上組み合せて使用できる。脂肪酸には、1つ又は複数のヒドロキシル基を分子内に有する脂肪酸も含まれる。
【0135】
分岐型ポリアルキレングリコールの脂肪酸エステルの好ましい具体例としては、一般式(3A)において、Rがメチル基、QおよびQが炭素数18の脂肪族アシル基であるポリプロピレングリコールステアレート、Rがメチル基、QおよびQが炭素数22の脂肪族アシル基であるポリプロピレングリコールベヘネートが挙げられる。直鎖型ポリアルキレングリコールの脂肪酸エステルの好ましい具体例としては、ポリアルキレングリコールモノパルミチン酸エステル、ポリアルキレングリコールジパルミチン酸エステル、ポリアルキレングリコールモノステアリン酸エステル、ポリアルキレングリコールジステアリン酸エステル、ポリアルキレングリコール(モノパルミチン酸・モノステアリン酸)エステル、ポリアルキレングリコールベヘネート等が挙げられる。
【0136】
ポリアルキレングリコールのアルキルエーテルを構成するアルキル基としては、直鎖状又は分岐状のいずれでもよく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基、ラウリル基、ステアリル基等の炭素数1~23のアルキル基が挙げられる。ポリアルキレングリコール化合物としては、ポリアルキレングリコールのアルキルメチルエーテル、エチルエーテル、ブチルエーテル、ラウリルエーテル、ステアリルエーテル等が好ましく例示できる。
【0137】
一般式(3A)で表される分岐型ポリアルキレングリコール化合物の市販品としては、日油社製商品名「ユニオールD-1000」、「ユニオールPB-1000」などが挙げられる。
【0138】
ポリアルキレングリコール共重合体(CP)、一般式(3A)で表される分岐型ポリアルキレングリコール化合物、一般式(3B)で表される直鎖型ポリアルキレングリコール化合物等のポリアルキレングリコール化合物の数平均分子量は、200~5000が好ましく、より好ましくは300以上、さらに好ましくは500以上、より好ましくは4000以下、さらに好ましくは3000以下、特に好ましくは2000以下、とりわけ好ましくは1000未満であり、800以下であることが最も好ましい。数平均分子量が上記上限を超えると、相溶性が低下する傾向がある。数平均分子量が上記下限を下回ると成形時にガスが発生する傾向がある。ポリアルキレングリコール化合物の数平均分子量はJIS K1577に準拠して測定した水酸基価に基づいて算出した数平均分子量である。
【0139】
これらのポリアルキレングリコール化合物は、1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0140】
本発明の樹脂組成物がポリアルキレングリコール化合物を含む場合、その含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して好ましくは0.001~1.0質量部、より好ましくは0.01~0.8質量部、特に好ましくは0.1~0.5質量部である。ポリアルキレングリコール化合物の含有量が上記下限未満であっても、上記上限を超えても、得られる成形品の色相が劣る傾向がある。
【0141】
[離型剤]
本発明の樹脂組成物は離型剤を含有することも好ましい。
離型剤としては、例えば、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200~15000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイルなどが挙げられる。
【0142】
脂肪族カルボン酸としては、例えば、飽和または不飽和の脂肪族一価、二価または三価カルボン酸を挙げることができる。ここで脂肪族カルボン酸とは、脂環式のカルボン酸も包含する。これらの中で好ましい脂肪族カルボン酸は、炭素数6~36の一価または二価カルボン酸であり、炭素数6~36の脂肪族飽和一価カルボン酸がさらに好ましい。かかる脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、アジピン酸、アゼライン酸などが挙げられる。
【0143】
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルにおける脂肪族カルボン酸としては、例えば、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、アルコールとしては、例えば、飽和または不飽和の一価または多価アルコールが挙げられる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基などの置換基を有していてもよい。これらの中では、炭素数30以下の一価または多価の飽和アルコールが好ましく、炭素数30以下の脂肪族飽和一価アルコールまたは脂肪族飽和多価アルコールがさらに好ましい。なお、ここで脂肪族とは、脂環式化合物も包含する用語として使用される。
【0144】
かかるアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2-ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0145】
なお、上記のエステルは、不純物として脂肪族カルボン酸及び/又はアルコールを含有していてもよい。また、上記のエステルは、純物質であってもよいが、複数の化合物の混合物であってもよい。さらに、結合して一つのエステルを構成する脂肪族カルボン酸及びアルコールは、それぞれ、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0146】
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等が挙げられる。
【0147】
数平均分子量200~15000の脂肪族炭化水素としては、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャ-トロプシュワックス、炭素数3~12のα-オレフィンオリゴマー等が挙げられる。なお、ここで脂肪族炭化水素としては、脂環式炭化水素も含まれる。また、これらの炭化水素は部分酸化されていてもよい。
これらの中では、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスまたはポリエチレンワックスの部分酸化物が好ましく、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスがさらに好ましい。
また、前記の脂肪族炭化水素の数平均分子量は、好ましくは5000以下である。
なお、脂肪族炭化水素は、単一物質であってもよいが、構成成分や分子量が様々なものの混合物であっても、主成分が上記の範囲内であれば使用できる。
【0148】
ポリシロキサン系シリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、ジフェニルシリコーンオイル、フッ素化アルキルシリコーン等が挙げられる。
【0149】
なお、上述した離型剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
【0150】
離型剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常2質量部以下、好ましくは1質量部以下である。離型剤の含有量が前記範囲の下限値未満の場合は、離型性の効果が十分でない場合があり、離型剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、耐加水分解性の低下、射出成形時の金型汚染などが生じる可能性がある。
【0151】
[添加剤等]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、上記した以外のその他の添加剤、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、顔料、染料、ポリカーボネート樹脂以外の他のポリマー、難燃剤、耐衝撃改良剤、帯電防止剤、可塑剤、相溶化剤などの添加剤を含有することができる。これらの添加剤は一種又は二種以上を配合してもよい。
ただし、ポリカーボネート樹脂(A)及びポリカーボネート共重合体(B)以外の他のポリマーを含有する場合の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)及びポリカーボネート共重合体(B)の合計100質量部に対し、20質量部以下とすることが好ましく、10質量部以下がより好ましく、さらには5質量部以下、特には3質量部以下とすることが好ましい。
【0152】
[ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法に制限はなく、公知のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法を広く採用でき、ポリカーボネート樹脂(A)、ポリカーボネート共重合体(B)及びリン系安定剤(C)、並びに、必要に応じて配合されるその他の成分を、例えばタンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどの混合機で溶融混練する方法が挙げられる。なお、溶融混練の温度は特に制限されないが、通常240~320℃の範囲である。
【0153】
[ポリカーボネート樹脂組成物]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、色相に優れるのでYI(黄変度)に優れ、300mm光路長における初期YI値が好ましくは25以下であり、また耐熱変色性に優れるので、95℃1000時間保持後の300mm光路長のYI値と初期YI値との差(ΔYI)が好ましくは6以下である。
初期YI値はより好ましくは24以下、さらに好ましくは22以下、さらに好ましくは20以下である。ΔYIはより好ましくは5以下、さらに好ましくは4以下である。
なお、初期YI値とΔYIの測定は、樹脂温度340℃、金型温度80℃で長光路成形品(300mm×7mm×4mm)を成形し、300mmの光路長で、C光源、2°視野におけるYI値(初期YI値)を測定し、そして、95℃で1000時間保持した後のYI値を測定し、初期YI値との差ΔYIを求める。
【0154】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、耐衝撃性に優れるので、ISO179に基づいた3mm厚みの成形品のノッチ付きシャルピー衝撃強度が好ましくは25kJ/m以上であり、より好ましくは30kJ/m以上であり、さらに好ましくは35kJ/m以上である。
【0155】
また、本発明では、さらに、以下のポリカーボネート樹脂組成物を提供することができる。
即ち、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、安定剤を0.001~0.5質量部を含有し、300mm光路長における初期YI値が25以下であり、95℃1000時間保持後の300mm光路長のYI値と初期YI値との差(ΔYI)が6以下であることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
初期YI値は、好ましくは24以下、より好ましくは22以下、さらに好ましくは20以下である。ΔYIは好ましくは5以下、より好ましくは4以下である。
この際の安定剤はリン系安定剤であることが好ましい。リン系安定剤は前記した通りである。
また、上記ポリカーボネート樹脂組成物は、ISO179に基づいた3mm厚みの成形品のノッチ付きシャルピー衝撃強度が25kJ/m以上であることが好ましく、より好ましくは30kJ/m以上であり、さらに好ましくは35kJ/m以上である。
【0156】
[光学部品]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、上記したポリカーボネート樹脂組成物をペレタイズしたペレットを各種の成形法で成形して光学部品を製造することができる。またペレットを経由せずに、押出機で溶融混練された樹脂を直接、成形して光学部品にすることもできる。
【0157】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、流動性や色相に優れ、成形時のガス発生と金型汚染が極めて少ないことから、射出成形法により、光学部品、特に金型汚染が起こりやすい薄肉の光学部品を成形するのに特に好適に用いられる。射出成形の際の樹脂温度は、特に薄肉の成形品の場合には、一般にポリカーボネート樹脂の射出成形に適用される温度である260~300℃よりも高い樹脂温度にて成形することが好ましく、305~400℃の樹脂温度が好ましい。樹脂温度は310℃以上であるのがより好ましく、315℃以上がさらに好ましく、320℃以上が特に好ましく、390℃以下がより好ましい。従来のポリカーボネート樹脂組成物を用いた場合には、薄肉成形品を成形するために成形時の樹脂温度を高めると、成形品の黄変が生じやすくなるという問題もあったが、本発明の樹脂組成物を使用することで、上記の温度範囲であっても、良好な色相と高い透明性を有する成形品、特に薄肉の光学部品を製造することが可能となる。
なお、樹脂温度とは、直接測定することが困難な場合はバレル設定温度として把握される。
【0158】
ここで、薄肉成形品とは、通常肉厚が1mm以下、好ましくは0.8mm以下、より好ましくは0.6mm以下の板状部を有する成形品をいう。ここで、板状部は、平板であっても曲板状になっていてもよく、平坦な表面であっても、表面に凹凸等を有してもよく、また断面は傾斜面を有していたり、楔型断面等であってもよい。
【0159】
光学部品としては、LED、有機EL、白熱電球、蛍光ランプ、陰極管等の光源を直接又は間接に利用する機器・器具の部品が挙げられ、導光板や面発光体用部材等が代表的なものとして例示される。
導光板は、液晶バックライトユニットや各種の表示装置、照明装置の中で、LED等の光源の光を導光するためのものであり、側面又は裏面等から入れた光を、通常表面に設けられた凹凸により拡散させ、均一の光を出す。その形状は、通常平板状であり、表面には凹凸を有していても有していなくてもよい。
導光板の成形は、通常、好ましくは射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、溶融押出成形法(例えばTダイ成形法)などにより行われる。
本発明の樹脂組成物を用いて成形した導光板は、白濁や透過率の低下がなく、良好な色相と高い透明性を有し且つ金型汚染による成形不良が少ない。
【0160】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物を用いた導光板は、液晶バックライトユニットや各種の表示装置、照明装置の分野で好適に使用できる。このような装置の例としては、携帯電話、モバイルノート、ネットブック、スレートPC、タブレットPC、スマートフォン、タブレット型端末等の各種携帯端末、カメラ、時計、ノートパソコン、各種ディスプレイ、照明機器等が挙げられる。
【0161】
また、光学部品としての形状はフィルムあるいはシートであってもよく、その具体例としては、例えば導光フィルム等が挙げられる。
【0162】
また、光学部品としては、自動車あるいはオートバイ等の車両用前照灯(ヘッドランプ)あるいはリアランプ、フォグランプ等において、LED等の光源からの光を導光するライトガイドやレンズ等も好適であり、これらにも好適に使用することができる。
【0163】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物を用いた導光板は、液晶バックライトユニットや各種の表示装置、照明装置の分野で好適に使用できる。このような装置の例としては、携帯電話、モバイルノート、ネットブック、スレートPC、タブレットPC、スマートフォン、タブレット型端末等の各種携帯端末、カメラ、時計、ノートパソコン、各種ディスプレイ、照明機器等が挙げられる。
【実施例
【0164】
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定して解釈されるものではない。
以下の実施例及び比較例で使用した原料は、表1の通りである。
【0165】
【表1】
【0166】
なお、上記表1中、ポリカーボネート共重合体(B1)~(B4)、その他のポリカーボネート共重合体(Y1)は、以下の製造例1~5により、製造した。
[ポリカーボネート共重合体(B1)の製造例1]
1L三つ口フラスコを装備した重合装置に、ポリ-n-プロピレングリコール(即ち、ポリトリメチレングリコール)としてALLESSA社製の商品名「VELVETOL H500」(Mw:1700)を85質量%相当量、ビスフェノールAを15質量%相当量、ジフェニルカーボネートをジオールに対するモル比で1.16で加えた。触媒としてCsCO水溶液をジオールの1mol当たり11μmol(Csとして)添加した。系内を1時間乾燥させた後、窒素で重合装置内を復圧した。復圧した重合装置をオイルバスに浸した時点より重合開始とし、以下の表2に示した昇温・減圧プログラムに従って進行し、最終温度217℃、真空ポンプフルバキューム(F.V.)で0.13kPaA以下の減圧条件下にて保持し、重合開始から140分で重合終了とした。
得られたビスフェノールA-ポリ-n-プロピレングリコール-ポリカーボネート共重合体(B1)の重量平均分子量(Mw)は15,400であった。
【0167】
【表2】
【0168】
[ポリカーボネート共重合体(B2)の製造例2]
1L三つ口フラスコを装備した重合装置に、ポリ-n-プロピレングリコールとしてALLESSA社製の商品名「VELVETOL H500」(Mw:1700)を85質量%相当量、ビスフェノールAを15質量%相当量、ジフェニルカーボネートをジオールに対するモル比で1.11で加えた。触媒としてCsCO水溶液をジオールの1mol当たり5.0μmol(Csとして)添加した。系内を1時間乾燥させた後、窒素で重合装置内を復圧した。復圧した重合装置をオイルバスに浸した時点より重合開始とし、以下の表3に示した昇温・減圧プログラムに従って進行し、最終温度217℃、真空ポンプフルバキューム(F.V.)で0.13kPaA以下の減圧条件下にて保持し、重合開始から320分で重合終了とした。
得られたビスフェノールA-ポリ-n-プロピレングリコール-ポリカーボネート共重合体(B1)の重量平均分子量(Mw)は18,800であった。
【0169】
【表3】
【0170】
[ポリカーボネート共重合体(B3)の製造例3]
1L三つ口フラスコを装備した重合装置に、ポリトリメチレングリコールとしてALLESSA社製の商品名「VELVETOL H500」(Mw:1700)を85質量%相当量、ビスフェノールAを15質量%相当量、ジフェニルカーボネートをジオールに対するモル比で1.10で加えた。触媒としてCsCO水溶液をジオールの1mol当たり4.9μmol(Csとして)添加した。系内を1時間乾燥させた後、窒素で重合装置内を復圧した。復圧した重合装置をオイルバスに浸した時点より重合開始とし、以下の表4に示した昇温・減圧プログラムに従って進行し、最終温度217℃、真空ポンプフルバキューム(F.V.)で0.13kPaA以下の減圧条件下にて保持し、重合開始から350分で重合終了とした。
得られたビスフェノールA-ポリ-n-プロピレングリコール-ポリカーボネート共重合体(B3)の重量平均分子量(Mw)は22,800であった。
【0171】
【表4】
【0172】
[ポリカーボネート共重合体(B4)の製造例4]
1L三つ口フラスコを装備した重合装置に、ポリトリメチレングリコールとしてALLESSA社製の商品名「VELVETOL H500」(Mw:1700)を85質量%相当量、ビスフェノールAを15質量%相当量、ジフェニルカーボネートをジオールに対するモル比で1.07で加えた。触媒としてCsCO水溶液をジオールの1mol当たり4.9μmol(Csとして)添加した。系内を1時間乾燥させた後、窒素で重合装置内を復圧した。復圧した重合装置をオイルバスに浸した時点より重合開始とし、以下の表5に示した昇温・減圧プログラムに従って進行し、最終温度217℃、真空ポンプフルバキューム(F.V.)で0.13kPaA以下の減圧条件下にて保持し、重合開始から310分で重合終了とした。
得られたビスフェノールA-ポリ-n-プロピレングリコール-ポリカーボネート共重合体(B4)の重量平均分子量(Mw)は34,100であった。
【0173】
【表5】
【0174】
[ポリカーボネート共重合体(Y1)の製造例5]
1L三つ口フラスコを装備した重合装置に、ポリテトラメチレングリコールとして三菱ケミカル社製の商品名「PTMG650」(Mw:1950)を85質量%相当量、ビスフェノールAを15質量%相当量、ジフェニルカーボネートをジオールに対するモル比で1.15で加えた。触媒としてCsCO水溶液をジオールの1mol当たり9.9μmol(Csとして)添加した。系内を1時間乾燥させた後、窒素で重合装置内を復圧した。復圧した重合装置をオイルバスに浸した時点より重合開始とし、以下の表6に示した昇温・減圧プログラムに従って進行し、最終温度217℃、真空ポンプフルバキューム(F.V.)で0.13kPaA以下の減圧条件下にて保持し、重合開始から140分で重合終了とした。
得られたビスフェノールA-ポリテトラメチレングリコール-ポリカーボネート共重合体(Y1)の重量平均分子量(Mw)は22,800であった。
【0175】
【表6】
【0176】
(実施例1~19、比較例1~5)
[樹脂組成物ペレットの製造]
上記した各成分を、以下の表7-9に記した割合(質量部)で配合し、タンブラーにて20分混合した後、スクリュー径40mmのベント付単軸押出機(田辺プラスチック機械社製「VS-40」)により、シリンダー温度を240℃で溶融混練し、ストランドカットによりペレットを得た。
【0177】
[樹脂組成物ペレット製造時のストランド透明性]
上述の樹脂組成物ペレットの製造工程において、押出機により、溶融混練され押出されたストランドの透明性を、以下の基準で、目視にて判定した。
A:押出されたストランドは、極めて透明性が高く、ポリカーボネート樹脂とポリカーボネート共重合体(B)やポリテトラメチレングリコール、その他ポリカーボネート共重合体との相溶性は極めて良好である。
B:押出されたストランドは、透明性が高く、ポリカーボネート樹脂とポリカーボネート共重合体(B)やポリテトラメチレングリコール、その他ポリカーボネート共重合体との相溶性は良好である。
C:押出されたストランドは、やや白濁がしており、ポリカーボネート樹脂とポリカーボネート共重合体(B)やポリテトラメチレングリコール、その他ポリカーボネート共重合体との相溶性は不良である。
D:押出されたストランドは、強く白濁がしており、ポリカーボネート樹脂とポリカーボネート共重合体(B)やポリテトラメチレングリコール、その他ポリカーボネート共重合体との相溶性は極めて不良である。
【0178】
[流動性評価(Q値)]
得られたペレットを120℃で5時間以上乾燥した後、JIS K7210 付属書Cに記載の方法にて、高化式フローテスターを用いて、280℃、荷重160kgfの条件下で組成物の単位時間あたりの流出量Q値(単位:×10-2cm/sec)を測定し、流動性を評価した。なお、オリフィスは直径1mm×長さ10mmのものを使用した。
Q値が高いほど、流動性に優れていることを示す。
【0179】
[耐衝撃性評価(シャルピー衝撃強度)]
得られたペレットを、120℃で5時間乾燥させた後、射出成形機(日精樹脂工業社製「NEX80III」)にて、シリンダー温度250℃、金型温度80℃、成形サイクル45秒の条件で、ISO179-1、2に基づく3mm厚の耐衝撃性試験片を作製した。得られた試験片をR0.25mm/深さ2mmのノッチ切削加工を行い、測定は23℃の温度環境下においてノッチ付シャルピー衝撃強度(kJ/m)を測定した。
【0180】
[金型汚染性評価(金型付着物)]
射出成形における汚染性評価(金型汚れ)
上記で得られたペレットを、120℃で5時間乾燥させた後、射出成形機(住友重機械工業社製「SE7M」)を用い、図1に示すようなしずく型金型を用いて、シリンダー温度を340℃、成形サイクル10秒、金型温度40℃の条件にて、200ショット射出成形し、終了後の金型固定側の金属鏡面に発生する白い付着物による汚れの状態を、以下の基準で、目視にて評価判定した。
A:金型付着物は極めて少なく、耐金型汚染性は極めて良好である。
B:金型付着物は少ないが、耐金型汚染性は若干見られる。
C:金型付着物はやや多く金型汚染が見られる。
D:金型付着物が多く、金型汚染が著しく見られる。
【0181】
なお、図1のしずく型金型は、ゲートGから樹脂組成物を導入し、尖端P部分に発生ガスが溜まり易くなるように設計した金型である。ゲートGの幅は1mm、厚みは1mmであり、図1において、幅h1は14.5mm、長さh2は7mm、長さh3は27mmであり、成形部の厚みは3mmである。
【0182】
[色相(YI)及びΔYI(耐熱変色性の評価)]
得られたペレットを120℃で5~7時間、熱風循環式乾燥機により乾燥した後、射出成形機(Sodick製「HSP100A」)により、樹脂温度340℃、金型温度80℃で長光路成形品(300mm×7mm×4mm)を成形した。
この長光路成形品について、300mmの光路長でYI(黄変度)の測定を行った。測定には長光路分光透過色計(日本電色工業社製「ASA 1」、C光源、2°視野)を使用した。
次に、上記長光路成形品を95℃で1000時間保持した後、300mmの光路長でYI値を測定し、初期YI値との差ΔYIを求め、耐熱変色性の評価を行った。
【0183】
以上の評価結果を、以下の表7-9に示す。
【0184】
【表7】
【0185】
【表8】
【0186】
【表9】
【産業上の利用可能性】
【0187】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、耐衝撃性に優れ、良好な色相を有し、さらに透明性に優れ、且つ成形時のガス発生と金型汚染が極めて少ないので、各種の成形品、特に光学部品に極めて好適に利用できる。
図1