(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】パッケージ用放熱構造体
(51)【国際特許分類】
H01L 23/36 20060101AFI20240321BHJP
H01L 23/34 20060101ALI20240321BHJP
H01L 23/08 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
H01L23/36 Z
H01L23/34 A
H01L23/08 C
(21)【出願番号】P 2022065035
(22)【出願日】2022-04-11
【審査請求日】2022-04-11
(32)【優先日】2021-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】390023582
【氏名又は名称】財團法人工業技術研究院
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】No.195,Sec.4,ChungHsingRd.,Chutung,Hsinchu,Taiwan 31040
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ユ ジュンジャン
(72)【発明者】
【氏名】ル チュンアン
(72)【発明者】
【氏名】ツァイ ユァンリン
【審査官】庄司 一隆
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-211254(JP,A)
【文献】特開2006-066630(JP,A)
【文献】米国特許第05386339(US,A)
【文献】特開2015-057826(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/36
H01L 23/34
H01L 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックボディを含むフレームと、
前記フレームのセラミックボディに取り付けられた放熱キャリアであって、前記放熱キャリアはセラミック材料で構成され、前記放熱キャリアの熱伝導率は前記セラミックボディの10倍又はそれ以上である前記放熱キャリアと、
を含み、
前記放熱キャリアの底面は、前記セラミックボディの底面と同一平面上にあ
り、
前記セラミックボディは低温同時焼成セラミック(LTCC)を含み、
前記放熱キャリアは高温同時焼成セラミック(HTCC)を含む、
パッケージ用放熱構造体。
【請求項2】
前記放熱キャリアが、窒化アルミニウム又は酸化アルミニウムで構成される請求項1に記載のパッケージ用放熱構造体。
【請求項3】
前記フレームが、前記セラミックボディ上に配列した電極をさらに含み、前記電極の少なくとも一部は前記セラミックボディ内に固定される、請求項1に記載のパッケージ用放熱構造体。
【請求項4】
前記電極が、前記セラミックボディ内に固定された第一部位、及び外側に露出した第二部位を含み、前記第二部位は溶接点となる、請求項
3に記載のパッケージ用放熱構造体。
【請求項5】
前記電極が銀で構成され、前記フレームは、前記セラミックボディと前記電極とを同時焼成して構成される、請求項
3に記載のパッケージ用放熱構造体。
【請求項6】
前記放熱キャリアが、前記セラミックボディを前記放熱キャリアと同時焼成することにより前記セラミックボディに取り付けられる、請求項1に記載のパッケージ用放熱構造体。
【請求項7】
前記セラミックボディがガラス成分を含み、前記放熱キャリアが前記セラミックボディのガラス成分に接着される、請求項1に記載のパッケージ用放熱構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は電子パッケージング用放熱構造体及びその放熱構造体を含むチップに関する。
【背景技術】
【0002】
電気通信産業では、電気デバイスの高いデータ転送レート及び広い帯域幅が求められる。大電力増幅器は、携帯電話、タブレット、Wi-Fiベースステーション、ブルートゥース(登録商標)及びブロードバンドアプリケーション及び衛星通信といったブロードバンドアプリケーション用電子製品において、必須の要素である。現在では一般的に、大電力増幅器は、RF信号を発生させるダイ、ダイを支持するキャリア、RF信号を伝達し又はダイに電力供給するための金属電極を備えるモノリシックマイクロ波集積回路(MMIC)設計内にパッケージされる。
【0003】
電気製品の小型化及び多機能化の進展に伴い、大電力増幅器におけるダイの放熱はこの技術分野の問題の一つである。一般的に言えば、前述のダイを支持するキャリアは、高温同時焼成セラミック(HTCC)で構成されており、良好な熱効率を提供する。しかしHTCCは、高周波数信号伝達のアプリケーションにおいて周波数ドリフトする傾向があり、それはRF信号伝達ロスを導く。通常、HTCCは高温(1600℃以上)での同時焼成のために、電極として高融点のタングステンを含むが、タングステンは高周波数信号に対し高いインピーダンスを有する。対照的に、低温同時焼成セラミック(LTCC)はゼロに近い共鳴温度係数を有し、それゆえにRF信号伝達に影響しないが、LTCCによる放熱はHTCCによるものより効率が良くない。
【0004】
LTCCキャリアによる乏しい放熱効率の問題に取り組むために、一つの解決策は、キャリア上に数個の穴を形成させ、前記穴を金属で満たし放熱用のバイアスとすることであったが、熱分布が一様でないために効果的でなかった。したがって、高周波数通信における良好な熱効率及びRF信号伝達ロス減少の要求は、この技術分野における挑戦である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示では、チップ内のパッケージ用放熱構造体を提供する、そしてその放熱構造体は非効率的な放熱及び重大な信号伝達ロスの問題を解決する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態は、フレームと放熱キャリアを含むパッケージ用の放熱構造体を提供する。フレームはセラミックのボディを含む。放熱キャリアはフレームのセラミックボディに取り付けられる。放熱キャリアはセラミック材料で構成され、放熱キャリアの熱伝導率は、セラミックボディの熱伝導率の10倍又はそれ以上である。
【0007】
本開示の他の実施形態は、前記放熱構造体を含むチップ、及び放熱キャリア上に支持されたダイを提供する。
【0008】
本開示に関して、パッケージ用の放熱構造体は、信号特性における影響が低いセラミックボディ及び電気的に絶縁されかつ高い熱伝導率を有する放熱キャリアを有する。放熱キャリアは信号を出力するダイを携えることができ、ダイにより発生した熱は放熱キャリアにより放熱されることができる。それゆえ、放熱構造体において、高い熱伝導率を有する放熱キャリアは良好な放熱効率を有し、セラミックボディは過度の反射損失とともに挿入損失を防ぎ、それにより良好な放熱効率及び信号伝達ロス減少の要求を同時に満たす。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の一実施形態に係るパッケージの放熱構造体の斜視図である。
【
図4】
図1の放熱構造体を含むチップの概略図である。
【
図5】ヒートシンクの上に載せられた
図4のチップの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の詳細な説明において、説明の目的で、開示された実施形態の完全な理解を提供するために、多数の特定の詳細が述べられている。しかしながら、一つ以上の実施形態がこれらの特定の詳細なしで実施され得ることは明らかである。他の例において、よく知られた構造や装置は図を簡単にするために概略的に示されている。
【0011】
図1及び
図2を参照されたい。
図1は本開示の一実施形態に係るパッケージ用放熱構造体の斜視図である。
図2は
図1の放熱構造体の別の斜視図である。この実施形態において、パッケージ用放熱構造体1はフレーム10及び放熱キャリア20を含む。
【0012】
フレーム10はセラミックボディ110を含み、放熱キャリア20はセラミックボディ110に取り付けられている。放熱キャリア20はセラミック材料で構成され、放熱キャリア20の熱伝導率はセラミックボディ110の10倍又はそれ以上である。放熱キャリア20は100W/(m・K)の熱伝導率を有してよい。
【0013】
フレーム10のセラミックボディ110は低温同時焼成セラミック(LTCC)を含み、放熱キャリア20は高温同時焼成セラミック(HTCC)を含む。HTCC放熱キャリア20は、セラミックボディ110よりも高い前述の熱伝導率を満たすことができる窒化アルミニウム及び酸化アルミニウムのような熱伝導性材料で構成することができ、放熱構造体の放熱効率を増加させる。いくつかの他の実施形態においては、放熱キャリアは、窒化アルミニウムシート及び酸化アルミニウムシートのような良好な熱伝導率を有する金属シートでよい。
【0014】
図3は、
図1の放熱構造体の断面図である。この実施形態においては、フレーム10はさらにセラミックボディ110上に配列した電極120を含み、そして電極120の少なくとも一部はセラミックボディ110内に固定されている。具体的には、電極120は第一部位121、第二部位122及び第三部位123を含み、それらは互いに接続している。第一部位121はセラミックボディ110内に固定され、第二部位122及び第三部位123は外側に露出している。より具体的には、第二部位122及び第三部位123は、それぞれセラミックボディ110の反対側表面に位置する。第二部位122はセラミックボディ110の上面111に位置し、溶接点となる。第三部位123はセラミックボディ110の上面111に位置し、電気接合用のピンとなる。
図1及び
図2は並列する電極120を含むフレーム10を例示しているが、本開示が電極120の数を限定するものでないことに留意されたい。
【0015】
この実施形態において、セラミックボディ110は電極120と同時焼成され、フレーム10を形成する。具体的には、フレーム10の製作工程において、LTCCを含む未焼成のセラミックボディ110は低い融点、低い電気抵抗及び低いインピーダンスを有する金属とともに同時焼成される。例えば、セラミックボディ110は銀と同時焼成され、電極120は銀電極であることができる。
【0016】
この実施形態において、フレーム10のセラミックボディ110は、放熱キャリア20と結合する。具体的には、放熱キャリア20は、セラミックボディ110と放熱キャリア20を同時焼成することにより、セラミックボディ110へ取り付けられる。セラミックボディ110はLTCCを含む場合にはガラス成分を含んでよい。放熱構造体1の製作において、同時焼成工程の前に、放熱キャリア20はLTCCを含む半仕上げのセラミックボディ110の開口部に配置される。セラミックボディ110の同時焼成工程においてセラミックボディ110は熱収縮し、放熱キャリア20と締まり嵌めが達成され、そして溶融又は軟化ガラス成分が放熱キャリア20に対し接着される。それゆえ、セラミックボディ110と放熱キャリア20との間の接合には、放熱グリス又はエポキシ樹脂のような接着剤は必要なく、放熱構造体1の製作を簡略化する助けとなる。
【0017】
図4は、
図1の放熱構造体を含むチップの概略図である。チップ2はRF ICチップであってよく、ダイ3はRF信号を発生させるためのダイであってよく、ダイ3は放熱キャリア20上に支持されてよい。ダイ3はワイヤ接合により電極120の第二部位122と電気的に接合されてよい。この実施形態において、電極120の部分は高周波信号伝達用に構成され、ダイ3より発生するRF信号を第三部位123と電気的に結合している外部回路に伝達する。電極120の他の部分は、第三部位123と電気的に結合した外部電源からダイ3に電力を供給するように構成される。さらにフレーム10のセラミックボディ110はキャップ113を含んでよく、ダイ3を封止するように構成される、しかし本開示ではそれらに限定されない。キャップ113はLTCCを含んでもよく、かつセラミックボディ110と一体でよく、又はその代わりにセラミックボディ110と接着した非金属シートであってよい。
図4において、放熱キャリア20の底面は、セラミックボディ110の底面と同一平面上にある。
【0018】
図5は、ヒートシンクの上に載せられた
図4のチップの概略図である。放熱構造体1は、銅板のようなヒートシンク4上に載せられてよく、放熱キャリア20がヒートシンク4と熱的に接触する。ダイ3により発生する熱は、放熱キャリア20を通りヒートシンク4へ移される。
【0019】
図6は、
図4のチップの挿入損失を示す。20GHzを超える周波数における信号伝達のアプリケーションにおいて、放熱構造体1を含むチップ2の挿入損失は0dBから-0.4dBである。ほかにも40GHzをも超える周波数における信号伝達のアプリケーションにおいて、チップ2の挿入損失は約-0.3dBにすぎないことが示される。
図7は、
図4におけるチップの反射損失を示す。20GHzを超える周波数における信号伝達のアプリケーションにおいて、放熱構造体1を含むチップ2の反射損失は-20dBから-40dBである。ほかにも40GHzをも超える周波数における信号伝達のアプリケーションにおいて、チップ2の反射損失は約-23dBにすぎないことが示される。
【0020】
本開示によれば、パッケージ用の放熱構造体は、信号伝達特性に影響が低いセラミックボディ、及び電気的に絶縁され高い熱伝導率を有する放熱キャリアを有する。放熱キャリアは信号を出力するダイを携えることができ、ダイにより発生した熱は放熱キャリアにより放熱されることができる。それゆえ、放熱構造体において高い熱伝導率を有する放熱キャリアは良好な放熱効率を有し、前記セラミックボディは過度の反射損失とともに挿入損失を防ぎ、それにより良好な放熱効率及び信号伝達ロス減少の要求を同時に満たす。
【0021】
さらに、セラミックボディはLTCCを含んでよく、低融点、低い電気抵抗及び低いインピーダンスを有する金属とともに同時焼成され、フレーム10を形成できる。またLTCCを含むセラミックボディは、放熱キャリアと同時焼成されることができる。セラミックボディの同時焼成の工程において、セラミックボディは熱収縮し、放熱キャリアと締まり嵌めが達成される。さらにLTCC中のガラス成分が加熱され、溶融又は軟化され、放熱キャリア対し接着されることができる。それゆえ、セラミックボディと放熱キャリア間の接合には追加の接着剤は必要なく、放熱構造体の製作を簡略化する助けとなる。
【0022】
本開示に対して様々な修正及び変更を行うことができることは、当業者には明らかである。明細書及び例示は、例示的な実施形態としてのみ考慮され、本開示の範囲は、以下の特許請求の範囲及びそれらの均等物によって示される。
【符号の説明】
【0023】
1 パッケージ用放熱構造体
2 チップ
3 ダイ
4 ヒートシンク
10 フレーム
110 セラミックボディ
111 上面
112 底面
113 キャップ
120 電極
121 第一部位
122 第二部位
123 第三部位
20 放熱キャリア