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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】ロボットハンド用の防水機構
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/00 20060101AFI20240321BHJP
   B25J 15/08 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
B25J19/00 Z
B25J15/08 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022103894
(22)【出願日】2022-06-28
(65)【公開番号】P2024004299
(43)【公開日】2024-01-16
【審査請求日】2023-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000106944
【氏名又は名称】シナノケンシ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100135622
【弁理士】
【氏名又は名称】菊地 挙人
(72)【発明者】
【氏名】篠塚 幸男
【審査官】尾形 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-13161(JP,A)
【文献】特開2015-85489(JP,A)
【文献】実開平5-53836(JP,U)
【文献】特開2017-42838(JP,A)
【文献】登録実用新案第3141165(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットハンドの本体部の少なくとも一部を覆い、前記本体部に対して駆動可能に保持された駆動部を覆い、開口が形成されたカバーと、
基端部が前記駆動部に固定され、先端部に前記ロボットハンドの爪部材が固定され、前記開口から突出した延長部材と、を備え、
前記延長部材と前記駆動部とを固定する第1固定部材は、前記カバーにより覆われ、
前記延長部材と前記爪部材とを固定する第2固定部材は、取り外し可能に前記カバーから露出しており、
前記カバーは、前記駆動部の駆動に伴う前記延長部材の動きを許容する可撓性部を含み、
前記可撓性部は、前記開口の周辺を確定する筒状の可動部を含み、
前記可動部は、前記可撓性部の外側に突出した凸状であり、
前記延長部材の基端部は、前記爪部材の基端部と形状の互換性を有し、
前記延長部材の先端部は、前記駆動部の前記延長部材の固定箇所と形状の互換性を有している、ロボットハンド用の防水機構。
【請求項2】
ロボットハンドの本体部の少なくとも一部を覆い、前記本体部に対して駆動可能に保持された駆動部を覆い、開口が形成されたカバーと、
基端部が前記駆動部に固定され、先端部に前記ロボットハンドの爪部材が固定され、前記開口から突出した延長部材と、を備え、
前記延長部材と前記駆動部とを固定する第1固定部材は、前記カバーにより覆われ、
前記延長部材と前記爪部材とを固定する第2固定部材は、取り外し可能に前記カバーから露出しており、
前記カバーは、前記駆動部の駆動に伴う前記延長部材の動きを許容する可撓性部を含み、
前記可撓性部は、前記開口の周辺を確定する筒状の可動部を含み、
前記可撓性部は、筒部と、前記筒部に連続した蓋部と、を含み、
前記可動部は、前記筒部と前記蓋部との境界に形成され、
前記可撓性部は、前記開口の周囲に形成され、前記可動部の動きを許容するように伸縮する蛇腹部を含み、
前記蛇腹部は、前記筒部及び蓋部に亘って形成されており、
前記延長部材の基端部は、前記爪部材の基端部と形状の互換性を有し、
前記延長部材の先端部は、前記駆動部の前記延長部材の固定箇所と形状の互換性を有している、ロボットハンド用の防水機構。
【請求項3】
前記延長部材は、前記開口を貫通した細部と、前記細部よりも径が大きく前記開口に対して貫通不能な拡大部と、を含み、
前記可動部は、前記拡大部に嵌合している、請求項1又は2のロボットハンド用の防水機構。
【請求項4】
前記可動部の断面と前記拡大部の断面とは、相補形状である、請求項3のロボットハンド用の防水機構。
【請求項5】
前記カバーは、前記可撓性部よりも前記本体部の基端側を覆う非可撓性部を含む、請求項1又は2のロボットハンド用の防水機構。
【請求項6】
前記非可撓性部は、前記本体部を視認可能とするための光透過性を有している、請求項のロボットハンド用の防水機構。
【請求項7】
前記延長部材の前記カバーから露出した部分は、棒状に延びている、請求項1又は2のロボットハンド用の防水機構。
【請求項8】
前記カバーは、前記本体部に対して着脱自在である、請求項1又は2のロボットハンド用の防水機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットハンド用の防水機構に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ロボットハンド用の防水機構としてカバーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-039726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1では、ロボットハンドの爪部材を交換するには、カバーを外す必要があり、爪部材の交換作業性が低い。また、爪部材の形状に応じたカバーを準備する必要があり、カバーの汎用性も低い。
【0005】
そこで本発明は、爪部材の交換作業性に優れ、汎用性にも優れたロボットハンド用の防水機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、ロボットハンドの本体部の少なくとも一部を覆い、前記本体部に対して駆動可能に保持された駆動部を覆い、開口が形成されたカバーと、基端部が前記駆動部に固定され、先端部に前記ロボットハンドの爪部材が固定され、前記開口から突出した延長部材と、を備え、前記延長部材と前記駆動部とを固定する第1固定部材は、前記カバーにより覆われ、前記延長部材と前記爪部材とを固定する第2固定部材は、取り外し可能に前記カバーから露出している、ロボットハンド用の防水機構によって達成できる。
【発明の効果】
【0007】
爪部材の交換作業性に優れ、汎用性にも優れたロボットハンド用の防水機構を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、ロボットハンドの外観斜視図である。
図2図2は、ロボットハンドに樹脂カバー及びゴムカバーを組み付けた状態の外観斜視図である。
図3図3は、ロボットハンドに樹脂カバー及びゴムカバーを組み付けた状態の外観側面図である。
図4図4は、爪部材を取り外した延長部材が可動部を貫通している状態でのゴムカバーの外観斜視図である。
図5図5は、ゴムカバー単体の外観斜視図である。
図6図6は、爪部材が取り付けられた状態の延長部材の外観斜視図である
図7図7は、延長部材の外観斜視図である。
図8図8は、爪部材が取り付けられた状態の延長部材とゴムカバーとの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施例の防水機構を適用するロボットハンドは、例えば特許第6858301号のような爪部材を容易に取り外しすることが可能な構造のロボットハンドであることを前提としている。図1は、ロボットハンド1の外観斜視図である。ロボットハンド1は、本体部10、及び爪部材30を含む。本体部10は、モータ部11、ブラケット部13を含む。モータ部11内には、爪部材30を開閉するための駆動源であるモータが収容されており、このモータは例えばステッピングモータである。
【0010】
本体部10の基端側にはアタッチメント40が接続されている。アタッチメント40は、ロボットアーム100の先端部に接続されている。従って、アタッチメント40は、ロボットアーム100と本体部10を接続する中継部材として機能する。アタッチメント40は、円筒状であり、例えばアルミ合金製である。アタッチメント40の外周部には、コネクタ40cが設けられている。アタッチメント40内には、コネクタ40cとモータ部11内のモータとを電気的に接続する配線が設けられている。コネクタ40cには、モータを駆動するための電力供給配線とモータの駆動を制御してロボットハンド1の動作を制御するための制御配線とが接続される。
【0011】
ブラケット部13は、モータ部11の先端側に位置している。爪部材30は、詳しくは後述するが、延長部材50を介して本体部10に揺動可能に保持されている。ブラケット部13は、蓋を有した略円筒状である。ブラケット部13の外周側面には、3つの逃げ孔15が形成されている。逃げ孔15には、駆動部17の一部が露出するように設けられている。駆動部17は、ブラケット部13に揺動可能に支持されている。モータの駆動力は、ブラケット部13の内部に配置されたギヤ等を介して駆動部17に伝達され、駆動部17は所定の範囲を揺動する。
【0012】
駆動部17には、延長部材50の基端部が2つのネジS1により固定されている。また、延長部材50の先端部には、爪部材30の基端部が2つのネジS3により固定されている。このため、駆動部17が揺動することにより、延長部材50及び爪部材30は揺動し、これにより爪部材30は開閉する。ネジS1は、第1固定部材の一例である。ネジS3は、第2固定部材の一例である。尚、爪部材30の基端部が固定される延長部材50の先端部と、延長部材50の基端部が固定される駆動部17の箇所とは、その形状に互換性を有している。本実施例の前提である先述の「爪部材を容易に取り外しすることが可能な構造のロボットハンド」は、本実施例の防水機構を適用しない場合には爪部材30を直接に駆動部17へ固定して使用するが、本実施例の防水機構を適用する場合には後述のゴムカバーを用いるうえで延長部材50が必要となる。即ち、既存の「爪部材を容易に取り外しすることが可能な構造のロボットハンド」に対して、延長部材50は後付け部品として取り付けられる。アタッチメント40の先端部には螺合部40aが形成されている。螺合部40aの外周には雄ネジ部が形成されている。
【0013】
図2は、ロボットハンド1に樹脂カバー60及びゴムカバー70を組み付けた状態の外観斜視図である。図3は、ロボットハンド1に樹脂カバー60及びゴムカバー70を組み付けた状態の外観側面図である。樹脂カバー60は、本体部10の基端側に位置したモータ部11を覆う。ゴムカバー70は、本体部10の先端側に位置したブラケット部13を覆い、詳細には逃げ孔15、駆動部17、及びネジS1を覆っている。このように、アタッチメント40、樹脂カバー60、及びゴムカバー70によりロボットハンド1の防水性が確保されている。
【0014】
樹脂カバー60は、非可撓性を有した合成樹脂製であり、光透過性を有している。樹脂カバー60は略円筒状である。樹脂カバー60の基端部の内周面には雌ネジ部が形成されており、樹脂カバー60の基端部は図示していないOリングを潰しこんでアタッチメント40の螺合部40aに螺合している。このように、樹脂カバー60は本体部10に対して着脱自在である。
【0015】
樹脂カバー60は光透過性を有しているため、本体部10に取り付けた状態で樹脂カバー60を介して本体部10の外観が視認可能となる。従って、例えば本体部10に爪部材30の駆動状態を示すランプなどが設けられている場合には、このランプ部分を樹脂カバー60で覆うことにより、ランプの視認性も確保しつつ防水性をも確保することができる。また、仮に樹脂カバー60の内部に水分が浸入した場合であっても、速やかに発見が可能である。樹脂カバー60は、非可撓性部の一例である。尚、樹脂カバー60の一部分のみが光透過性を有していてもよい。また、樹脂カバー60は光透過性を有していることに限定されない。また樹脂カバー60の代わりに金属製のカバーを用いてもよいが、視認性や軽量化の観点から、合成樹脂製のカバーを採用することが好ましい。
【0016】
ゴムカバー70は、ゴム製であり可撓性を有している。ゴムカバー70は、筒部72及び蓋部73を含む。筒部72は略円筒状である。蓋部73は、筒部72に連続しており、筒部72の中心軸に対して垂直な円板状である。筒部72の基端側には嵌合部71が形成されている。嵌合部71は、樹脂カバー60の先端部に外側から嵌合している。また、嵌合部71の外側には、後述するリング溝71rが形成され、リング溝71rにOリングRが嵌合している。これにより、ゴムカバー70と樹脂カバー60との密着性を確保しつつ、ゴムカバー70は本体部10に対して着脱自在となる。
【0017】
詳しくは後述するが、筒部72と蓋部73との境界から可動部75が外側に突出している。延長部材50は、可動部75を貫通するように延びている。可動部75の周辺には、蛇腹部74が形成されている。
【0018】
図4は、爪部材30を取り外した延長部材50が可動部75を貫通している状態でのゴムカバー70の外観斜視図である。図5は、ゴムカバー70単体の外観斜視図である。可動部75は略円筒状に形成されている。可動部75の先端には、延長部材50が貫通する開口76が形成されている。開口76は、略矩形状である。また、図5に示すように、嵌合部71にはリング溝71rが形成されている。
【0019】
次に、延長部材50について説明する。図6は、爪部材30が取り付けられた状態の延長部材50の外観斜視図である。図7は、延長部材50の外観斜視図である。図8は、爪部材30が取り付けられた状態の延長部材50とゴムカバー70との断面図である。
【0020】
延長部材50は、略直線状に延びた棒状であり、アルミ合金製である。延長部材50は、基端側から先端側に順に細部51、拡大部52、及び細部53を有している。細部51には、延長部材50を駆動部17へ固定するためのネジS1が貫通する貫通孔51hが2つ形成されている。細部53には、爪部材30を延長部材50へ固定するためのネジS3が螺合するネジ孔53hが2つ形成されている。細部51及び53は、板状に延びており、厚みも略同じであるがこれに限定されない。
【0021】
拡大部52の長さは、後述の相補形状による防水機能が得られる範囲内であれば細部51及び53のそれぞれの長さよりも短くてもよい。拡大部52は、細部51と細部53との間に位置している。拡大部52は、略円柱状である。より詳細には、拡大部52の外径は、細部51及び53のそれぞれの厚みよりも大きく形成されている。細部53の延びた方向に垂直な断面形状は、開口76の形状に対応しており、略矩形状である。細部53は、開口76を貫通可能な大きさである。拡大部52の外径は、細部53の外径よりも大きい。また、拡大部52の外径は開口76よりも大きく、拡大部52は開口76に対して貫通不能である。拡大部52が開口76を貫通不能であれば、拡大部52の外径はより小さいものであっても良いし、拡大部52の形状は円柱状以外であっても良い。
【0022】
図8に示すように、拡大部52は可動部75に嵌合している。詳細には、拡大部52と可動部75とは相補形状であり、拡大部52の外径と可動部75の内径とが略同じである。これにより、可動部75の内側面と拡大部52の外側面とが密着する。これにより、開口76を介して液体が可動部75の内部に侵入することを抑制できる。以上のように、アタッチメント40、延長部材50、樹脂カバー60、及びゴムカバー70は、ロボットハンド1用の防水機構に相当する。
【0023】
また、上述したようにゴムカバー70は可撓性を有している。このため、駆動部17の揺動に伴って揺動する延長部材50の動きが許容される。また、上述したように可動部75の周辺には蛇腹部74が形成されている。蛇腹部74は、筒部72及び蓋部73に亘って形成されている。これにより、延長部材50の動きを吸収するように蛇腹部74が伸縮する。このため、延長部材50の動きによる応力は蛇腹部74の広い範囲に分散され、ゴムカバー70の一部に応力が繰り返し集中することを抑制でき、ゴムカバー70が部分的に劣化することを抑制できる。また、ゴムカバー70に対して延長部材50の揺動動作を妨げる力を小さくすることができる。
【0024】
また、可動部75は、筒部72と蓋部73との境界に形成されている。換言すれば、可動部75は筒部72と蓋部73との間にまたがって形成されている。仮に、可動部75が蓋部73から離れた筒部72上に形成されていた場合、可動部75が蓋部73に倒れるように変形することが困難となるおそれがある。この結果、爪部材30を閉じるのが困難となるおそれがある。逆に、可動部75が筒部72から離れた蓋部73上に形成されていた場合、可動部75が径方向外側に倒れるように変形することが困難となるおそれがある。この結果、爪部材30を開くのが困難となるおそれがある。本実施例のように可動部75は筒部72と蓋部73との境界に形成されているため、爪部材30の開閉動作が容易となる。
【0025】
また、上述したように樹脂カバー60は非可撓性を有している。例えば、樹脂カバー60の代わりに可撓性を有したゴムカバーを採用すると、本体部10へのゴムカバーの取付作業性が低下するおそれがある。また、カバー全体が全てゴム製であると、可撓性部材であることから全体の形状を保持する強度を確保するなど構造上の理由で重量が増大する可能性がある。従って樹脂カバー60を採用することにより、本体部10への取付作業性が向上し、軽量化も図られている。加えて、駆動部17の揺動による爪部材30の開閉角が0~60度の場合、開閉角が中央値の30度である状態に合わせて筒部72と蓋部73との境界における可動部75の形状を決定する。これにより、爪部材30を最も開いた時と最も閉じた時とのゴムカバー70に対する変形の度合を均整化することもできる。
【0026】
次に、延長部材50、樹脂カバー60、及びゴムカバー70の取付方法について説明する。最初に、本体部10に樹脂カバー60及びゴムカバー70が取り付けられていない状態で、爪部材30が固定されていない延長部材50を駆動部17に固定する。次に、本体部10にアタッチメント40を固定し、樹脂カバー60及びゴムカバー70を本体部10が包まれるよう順にアタッチメント40に取り付ける。この際に、延長部材50には爪部材30が取り付けられていないため、樹脂カバー60を容易に本体部10の先端側からアタッチメント40に取り付けることができる。また、ゴムカバー70の開口76に延長部材50の細部53が挿入されるようにして、ゴムカバー70を樹脂カバー60に取り付ける。
【0027】
ここで、延長部材50の細部53は略直線状であるため、ゴムカバー70を本体部10に取り付ける際に、開口76に延長部材50を挿入することが容易である。次に、ゴムカバー70から露出した細部53に、爪部材30を固定する。このように、ゴムカバー70に干渉することなく延長部材50に爪部材30を固定することができる。
【0028】
延長部材50と爪部材30とを固定するネジS3は、取り外し可能にゴムカバー70から露出している。これによりゴムカバー70を取り外すことなく、ネジS3を取り外して爪部材30を容易に交換することができ、爪部材30の交換作業性が優れている。また、爪部材30の形状を問わずにゴムカバー70により本体部10を防水することができるため、汎用性にも優れている。また、ゴムカバー70は爪部材30を覆っていないため、把持の対象物に合わせて爪部材30を自由に設計できることにより、爪部材30によって適切に把持することができる。
【0029】
さらに本実施例では、爪部材30と把持の対象物の間にゴムカバーのような力学的に不安定な防水部材は介在しない。このため、防水部材の存在が原因となる把持不良を防止できる。即ち、ロボットハンドの爪部材の先端まで全体を覆う手袋状の防水部材では、装着のために防水部材の寸法を大きめに設定する必要がある。これにより爪部材と把持の対象物の間に挟まれる状態となる防水部材が不安定な挙動を示すおそれがある。このため、防水部材が滑ることによって把持の失敗や把持中の対象物の失落のおそれがある。加えてこのような防水部材は、局所的に応力が加わることにより破損して、防水性能を失う可能性もある。更に防水部材が粘着性を持つ場合には、対象物の把持終了後に爪部材と対象物が粘着して対象物を解放できないおそれもある。また、破損時に生じた防水部材の破片が本体部10へ侵入して、動作不良を引き起こすおそれもある。このように様々な問題があったが、本実施例の防水機構ではこのような問題を回避することができる。
【0030】
上記実施例では筒部72は、略円筒状のブラケット部13に対応するように略円筒状であるが、これに限定されない。例えばブラケット部13が略角柱状である場合には、筒部72もこれに対応するように略角筒状であってもよい。上記実施例では、爪部材30が3つの場合のロボットハンド1を例に説明したが、これに限定されない。即ち、2つ以上の爪部を備えたロボットハンドに対しても、本実施例のロボットハンド用の防水機構は適用できる。
【0031】
細部51及び53のそれぞれの断面形状は矩形状であるが必ずしもこのような形状に限定されない。例えば、断面形状が円形であってもよいし、三角形や五角形等の多角形であってもよい。この場合においても、細部53の断面形状と開口76との形状は、防水性の観点から相補形状であることが好ましい。例えば細部53の断面形状が三角形ならば開口76の形状も三角形であることが好ましく、細部53の断面形状が五角形ならば開口76の形状も五角形であることが好ましい。
【0032】
また、先述の通り、爪部材30の基端部が固定される延長部材50の先端部と、延長部材50の基端部が固定される駆動部17の箇所とは、その形状に互換性を有している。よって、この互換性を損ねず且つ開口76から細部51を貫通させることに困難が生じない範囲内において、細部51及び53の少なくとも一方は、一定の曲率で湾曲していてもよいし、途中で折れ曲がった形状であってもよい。
【0033】
細部51及び53の形状は、同一に限定されない。細部51は、延長部材50の駆動部17への固定の容易性を考慮して薄板状であるが、これに限定されない。先述の通り、爪部材30の基端部が固定される延長部材50の先端部と、延長部材50の基端部が固定される駆動部17の箇所とは、その形状に互換性を有している。この互換性を損ねない範囲内において、例えば、細部51の断面形状は、拡大部52と同じであってもよい。即ち、延長部材50の基端側から途中までにかけて略円柱状の拡大部52が形成されており、拡大部52にネジ孔が形成されていてもよい。
【0034】
可動部75は、筒状でありゴムカバー70の外側に突出した凸状であるが、これに限定されない。可動部75は、筒状であってゴムカバーの外側から見て窪んだ凹状であってもよい。この場合、凹状の底部に開口が形成される。またこの場合、延長部材の拡大部はこの開口を貫通不能の大きさであり、ゴムカバー70の外側から延長部材の細部を挿入することができる。
【0035】
樹脂カバー60とゴムカバー70とは別体に成形されているが、開口76に延長部材50を貫通させる作業を阻害しない場合には一体成形されていてもよい。
【0036】
ここで、本実施例の副次的な効果を説明する。既存の「爪部材を容易に取り外しすることが可能な構造のロボットハンド」に対して防水機能部品である延長部材50、アタッチメント40、樹脂カバー60、ゴムカバー70を追加することにより、爪部材30による対象物の把持の性能を損なうこと無くロボットハンドの防水性能を確保することができる。ロボットハンドは、ロボットハンド自体に防水構造を設けると、ロボットハンド自体の寸法や重量やコストが増大する。このため、防水の要求が無い限り、防水性能のあるロボットハンドを採用することは少ない。しかしながら、把持の対象物の都合に応じて防水構造を有したロボットハンドと、非防水のロボットハンドとを予め用意したうえで使い分けるのは、煩雑である。その点、本実施例のような防水性能を後付けできる防水機構によれば、一のロボットハンドに対する防水性能の要求に応じて防水機能部品を追加して、容易に防水ロボットハンドを実現できる。ゴムカバー70のような可撓性部は劣化する消耗品として容易に交換可能である。このため、防水構造を備えたロボットハンドより安価に防水性能を維持することもできる。このような汎用性の高さを、低コストの部品で追加的に実現できる。
【0037】
以上本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 ロボットハンド
10 本体部
17 駆動部
30 爪部材
50 延長部材
51、53 細部
52 拡大部
60 樹脂カバー(非可撓性部)
70 ゴムカバー(可撓性部)
72 筒部
73 蓋部
74 蛇腹部
75 可動部
76 開口
S1 ネジ(第1固定部材)
S3 ネジ(第2固定部材)

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8