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▶ ブリヂストン ヨーロッパ エヌブイ/エスエイの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】シーラント層アセンブリ
(51)【国際特許分類】
   B29C 73/16 20060101AFI20240321BHJP
   B60C 19/12 20060101ALI20240321BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
B29C73/16
B60C19/12 A
C09K3/10 J
【請求項の数】 7
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022152288
(22)【出願日】2022-09-26
(62)【分割の表示】P 2021546458の分割
【原出願日】2019-10-14
(65)【公開番号】P2023011553
(43)【公開日】2023-01-24
【審査請求日】2022-10-24
(31)【優先権主張番号】102018000009657
(32)【優先日】2018-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】518333177
【氏名又は名称】ブリヂストン ヨーロッパ エヌブイ/エスエイ
【氏名又は名称原語表記】BRIDGESTONE EUROPE NV/SA
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(72)【発明者】
【氏名】ジュゼッペ ペッズーロ
(72)【発明者】
【氏名】フランチェスコ ボッティ
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/112179(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/019947(WO,A1)
【文献】実公昭55-042967(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 73/16
B60C 19/12
C09K 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シーラント層をタイヤ製造工場外のタイヤの内部空洞上に適用することを可能にするシーラント層アセンブリを製造する方法であって、
前記アセンブリは、
(i)タイヤの内部空洞に面するインナーライナー層の表面上に、その第1表面で貼り付けられるシーラント層であって、トレッドを貫通した物体の周囲に又は該物体が残した穴を塞ぐ、瞬間的な「シール」を創り出すような粘度を有するゴム層でできた、該シーラント層と、
(ii)前記シーラント層の前記第1表面上に配置され、使用中、前記シーラント層とタイヤの前記内部空洞に面する前記インナーライナー層の表面との間に挿入される、ネット層と、
(iii)前記ネット層上に配置された1つの非粘着性保護層と、を備え、
前記ネット層が、そのそれぞれが0.25mmから25mmの範囲の面積のメッシュを有し、
前記方法は、
ネット層と非粘着性保護層とを互いに結合する第1結合ステップと、
続いて、シーラント層を、前記非粘着性保護層に既に結合された前記ネット層に貼り付ける第2結合ステップと、
前記第2結合ステップの後、前記シーラント層の温度を10℃未満に下げる第3ステップとを備え;
記第2結合ステップを、60~110℃の範囲の温度で行う、方法。
【請求項2】
前記第2結合ステップの後、前記シーラント層の温度を0℃未満に下げる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ネット層が、合成又は天然のポリマー材料でできた、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ネット層が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、パラアラミド、及びレーヨンからなる群に含まれる材料でできた、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記シーラント層が、2~5mmの範囲の厚みを有する、請求項1~のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記非粘着性保護層が、表面処理がなされた紙、金属フィルム及びプラスチックフィルムからなる群で選択される材料でできており;該表面処理は、シリコーン、パラフィン、フルオロポリマーおよびポリエチレンからなる群で選択される材料により行われている、請求項1~のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記非粘着性保護層が、片面シリコーン紙である、請求項1~のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シーラント層をタイヤ製造ライン外で適用することを可能にするシーラント
層アセンブリに関する。このやり方では、シーラント層を、タイヤディーラーの敷地で、
また、顧客が要求するあらゆるタイプのタイヤに適用することができるため、製造制限に
リンクされない。
【背景技術】
【0002】
タイヤ製造業では、タイヤの内部空洞に一般的に配置された粘性のシーラント層の使用
が、古くから知られている。特に、シーラント層は、トレッドバンドの領域において、イ
ンナーライナー層に接触して配置される。
【0003】
シーラント層の機能は、トレッドを貫通した物体の周りに一種の瞬間的な「シール」を
創り出して、タイヤから空気が流出するのを防ぐことである。更に、上記物体が出てきた
場合に、シーラント層の材料は、物体が残した穴を埋め、それをシールする機能を有する
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シーラント層の粘度は、上述したタスクを効果的に実行できるようにする最も重要なパ
ラメータの一つである。実際、シーラント層の粘度は、上述したようなトレッドを貫通し
た物体とその物体自体が残した穴の両方に非常に短時間で発揮されるシール作用、及び、
タイヤの回転フェーズ又は直立フェーズでの該タイヤの内部空洞の寸法安定性の両方を保
証するようなものでなければならない。その機能のせいで、シーラント層は、特に粘着性
があり、粘度が低く、そのため、タイヤから分離する際に取り扱い難い。このことが理由
で、一般的にシーラント層は、通常はタイヤ製造ラインにて、インナーライナーの表面に
直接貼り付けられる。以上のことから、シーラント層を適用した限定的なラインナップが
、エンドユーザー向けに市場に出回っている。更に、シーラント層とインナーライナーと
の間に形成される接着は、当該シーラント層自体の寿命の終期におけるタイヤからのシー
ラント層の除去を困難にする。
【0005】
従って、選択されるブランド及びモデルに関係なく、タイヤディーラー又はエンドユー
ザーもシーラント層をタイヤに適用させることができる解決法を見出す必要性が感じられ
た。
【0006】
そうすることで、エンドユーザーは、製造者の選択に制限されることなく、自身が選択
したタイヤにシーラント層を確実に使用できるようになる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の主題は、シーラント層をタイヤ製造工場の外部におけるタイヤの内部空洞上に
適用することを可能にするシーラント層アセンブリであって、該アセンブリは、
(i)タイヤの内部空洞に面するインナーライナー層の表面上に、その第1表面で貼り
付けられるシーラント層であって、トレッドを貫通した物体の周囲に又は該物体が残した
穴を塞ぐ、瞬間的な「シール」を創り出すような粘度を有するゴム層でできた、該シーラ
ント層と、
(ii)前記シーラント層の前記第1表面上に配置され、使用中、前記シーラント層とタ
イヤの内部空洞に面する前記インナーライナー層の表面との間に挿入される、ネット層と

(iii)前記ネット層上に配置された1つの非粘着性保護層と、を備え、
前記ネット層が、そのそれぞれが0.25mmから25mmの範囲の面積のメッシュ
を有する、アセンブリである。
【0008】
この範囲のメッシュ面積は、シーラント層の効果的なシーリング作用と、ネット層を引
き離すことによるシーラント層の効果的な除去作用との両方を可能にすることが、実験的
に証明された。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、シーラント層とは、内部空洞に面するインナーライナーの表面に配置され、トレ
ッドを貫通した物体の周囲に瞬間的な「シール」を創り出して、空気の流出を防止する又
は当該物体が残した穴を塞ぐような粘度のゴム層を意味する。
【0010】
好ましくは、上記アセンブリが、シーラント層の第2表面上に配置された、第2の非粘
着性保護層を備える。
【0011】
好ましくは、上記ネット層が、合成又は天然のポリマー材料でできている。
【0012】
好ましくは、上記ネット層が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタ
レート、ナイロン、ケブラー(登録商標)、及びレーヨンからなる群に含まれる材料でで
きている。
【0013】
好ましくは、上記シーラント層が、2~5mmの範囲の厚みを有する。
【0014】
好ましくは、上記非粘着性保護層が、片面シリコーン紙である。
【0015】
好ましくは、上記保護層が、表面処理がなされた紙、金属フィルム及びプラスチックフ
ィルムからなる群で選択される材料でできており;該表面処理は、シリコン、パラフィン
、フルオロポリマー、ポリエチレンからなる群で選択された材料により行われる。
【実施例
【0016】
以下は、いくつかの説明的で非限定的な例である。
【0017】
シーラント層を製造するため、コンパウンドを調製した。そのphr組成を、表1に示
す。
【0018】
【表1】
【0019】
上記ハロブチルゴムは、ブロモブチルゴムである。
【0020】
使用したカーボンブラックのタイプは、N550と特定される。
【0021】
使用した可塑剤は、ナフテン油である。
【0022】
使用した促進剤は、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)である。
【0023】
表1に示される成分を互いに混合し、100℃の温度で10分間撹拌した。
【0024】
製造手順:
非限定的な実施形態によれば、アセンブリ製造手順は、ネット層と非粘着保護紙とを互いに結合する第1結合ステップと、続いて、シーラント層を、既に上記非粘着保護紙に結合されたネット層に貼り付ける第2結合ステップとを含んだ。このプロセスは、85℃の温度で行った。好ましくは、このプロセスは、60~110℃の範囲の温度で行わなければならない。
【0025】
シーラント材料の層の形状の変化(弾性収縮又は粘性流動現象)を回避するため、温度
を-5℃まで急速に下げた。好ましくは、このステップの間には、温度を、シーラント材
料のTgに近づくように、10℃未満、より好ましくは0℃未満に下げる。
【0026】
本明細書に記載の例において、使用したネット層は、ポリプロピレンでできており、そ
のメッシュは、面積9mmのひし形の形状を有する。
【0027】
本明細書に記載の例において、非粘着性保護層は、「Rossella s.r.l.」により製造さ
れた135gの基本重量を有する片面シリコーン紙である。
【0028】
上記のように製造された後、アセンブリを、ロールを形成するように巻き、次いで保管
した。
【0029】
製造業者が所定の長さを有する既に包装されたストリップの形状でアセンブリを製造及び保管したい場合には、シーラント層のメッシュ層が適用された面の反対側の表面に、更なる非粘着保護層を適用する必要がある。
【0030】
適用手順:
本発明によるアセンブリは、次いで、以下に記載される手順に従ってタイヤに適用され
る:
【0031】
低温で保存されたアセンブリから、適切な寸法のストリップを切り出す。ストリップを
、40℃から80℃の範囲の温度(好ましくは50℃)に達するまで加熱する。好ましく
は、加熱は、単に表面的な加熱を得るために、IR放射(1mの距離に配置し、20分間
、1000W)により、又は50℃で10分間のオーブンにより、得る。
【0032】
材料を加熱した後、ネット層の下の非粘着保護層を除去し、材料ストリップをインナーライナーの所望の位置に適用し(ネット層がインナーライナーに接触して配置される)、圧力をかけて接着を確実にする。このとき、存在する場合には、シーラント層に配置された保護層も除去する。シーラント層の適用手順の終期に、タイヤをリムに取り付け、操作圧力まで膨らませる。
【0033】
ネット層は、インナーライナーに接着しない、又はシーラント層に比べてインナーライ
ナーへの接着の程度が小さいため、より容易に除去することができ、また、インナーライ
ナーから引き離すことにより、シーラント層の容易な除去を確実にする。従って、タイヤ
を廃棄する際には、ネット層が露出するようにシーラント層に切り込みを入れ、シーラン
ト層とともにそれを除去することで十分である。