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特許7457769バインダーレスゼオライト吸着剤およびバインダーレスゼオライト吸着剤の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】バインダーレスゼオライト吸着剤およびバインダーレスゼオライト吸着剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 15/00 20060101AFI20240321BHJP
   B01J 20/18 20060101ALI20240321BHJP
   C07C 15/08 20060101ALI20240321BHJP
   C07C 7/13 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
B01D15/00 K
B01J20/18 C
C07C15/08
C07C7/13
【請求項の数】 7
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022162239
(22)【出願日】2022-10-07
(62)【分割の表示】P 2020169711の分割
【原出願日】2016-08-18
(65)【公開番号】P2023011609
(43)【公開日】2023-01-24
【審査請求日】2022-11-04
(31)【優先権主張番号】62/272,522
(32)【優先日】2015-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598055242
【氏名又は名称】ユーオーピー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】チェン,リンダ・エス
(72)【発明者】
【氏名】レシュ,デーヴィッド・エイ
【審査官】高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/028741(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02527296(EP,A2)
【文献】特表2011-506091(JP,A)
【文献】ロシア国特許出願公開第2456238(RU,A)
【文献】特表2014-516305(JP,A)
【文献】特開2007-45824(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 15/00 - 15/42
B01J 20/00 - 20/28
20/30 - 20/34
C07B 31/00 - 31/00
63/00 - 63/04
C07C 1/00 - 409/44
C01B 33/20 - 39/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合キシレンからメタキシレンを分離するための選択的吸着分離プロセスにおけるバインダーレスゼオライト吸着剤の使用であって、前記バインダーレスゼオライト吸着剤が、
3.0~6.0のシリカ対アルミナのモル比を有する第1のFAU型ゼオライト、
2.0~6.0のシリカ対アルミナのモル比を有し、かつバインダーレスゼオライト吸着剤のうちの5~50%であるバインダー転換FAU型ゼオライト、および
バインダーレスゼオライト吸着剤内の陽イオン交換可能な部位、
を含み、
前記バインダーレスゼオライト吸着剤が、
イオン交換可能な部位を有し、かつ3.0~6.0のシリカ対アルミナのモル比を有する第1のFAU型ゼオライトと、シリカ、アルミナまたはシリカとアルミナとの組み合わせを含む非ゼオライトバインダーと、成形助剤とから生成され、かつ50%を超える第1のFAU型ゼオライトから形成される凝集塊を生成すること、
凝集塊に625℃以上で熱処理を施して、バインダーを前処理し成形助剤を散逸させること、
熱処理した凝集塊を少なくとも1種の水酸化物源を含有する溶液と混合して得られる混合物に水熱処理を施して、非ゼオライトバインダーをバインダー転換FAU型ゼオライトに変換して、第1のFAU型ゼオライト及びバインダー転換FAU型ゼオライトを含むバインダーレスゼオライト吸着剤を形成すること、および
バインダーレスゼオライト吸着剤を乾燥すること、
を含む方法によって製造され、
前記溶液が、水熱処理した前記混合物における第1のFAU型ゼオライトを含まないゲル状モル酸化物比として、Al :(3.66~10.45)SiO :(3.0~4.5)Na O:500H Oを目標にして調製される
使用。
【請求項2】
前記溶液が、水熱処理した前記混合物における第1のFAU型ゼオライトを含まないゲル状モル酸化物比として、Al :10.45SiO :4.5Na O:500H Oを目標にして調製される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
第1のFAU型ゼオライトが、Y-54である、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
該バインダーレスゼオライト吸着剤のうちの少なくとも95%はFAU型ゼオライトである、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
該バインダーレスゼオライト吸着剤のうちの少なくとも98%はFAU型ゼオライトである、請求項1に記載の使用。
【請求項6】
該陽イオン交換可能な部位は、アルカリ金属陽イオンおよび/またはアルカリ土類金属陽イオンである、請求項1に記載の使用。
【請求項7】
前記混合キシレンが、エチルベンゼン、パラキシレン、メタキシレンおよびオルトキシレンを含むC芳香族異性体の混合物である、請求項1~のいずれかに記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
先行国内出願の優先権主張
本出願は、2015年12月29日に出願された米国特許出願番号第62/272,522号の優先権を主張する。
【0002】
技術分野
本発明は、全体として、バインダーレスゼオライト吸着剤、およびバインダーレス吸着剤の製造方法に関する。より詳細には、本発明は、FAU型バインダーレスゼオライト吸着剤、およびFAU型バインダーレス吸着剤の製造方法に関する。FAU型バインダーレス吸着剤は、バインダーレスゼオライト吸着剤を用いる選択的吸着分離プロセスでのキシレン分離および精製に使用することができる。
【背景技術】
【0003】
疑似移動床(SMB)式吸着プロセスは、複数の大規模な石油化学分離において商業的に使用され、混合キシレンから高純度パラキシレンおよびメタキシレンを回収する。本明細書で使用される「混合キシレン」は、エチルベンゼン、パラキシレン、メタキシレンおよびオルトキシレンを含むC芳香族異性体の混合物を指す。高純度のパラキシレンおよびメタキシレンは、ポリエステル繊維、樹脂およびフィルムの製造に使用される。
【0004】
疑似移動床式吸着分離プロセスの操業に用いられる汎用的な技術は、広く説明され実践されている。一般にこのプロセスでは、吸着剤上の液体原料の連続的な対向流により吸着剤の移動床を模倣している。原料および生成物は、ほぼ一定の組成で、吸着床に連続的に投入されそこから離脱する。分離は、メタキシレンと他のC芳香族異性体の間の吸着剤への親和性の差異を利用することによって達成される。
【0005】
疑似移動床式吸着プロセスで使用される典型的な吸着剤は、通常、結晶性アルミノケイ酸ゼオライトを含み、かつ天然アルミノケイ酸物および合成アルミノケイ酸物の両方を含むことができる。メタキシレンに選択的な吸着剤としての使用に適する結晶性アルミノケイ酸ゼオライトには、アルミナとシリカの四面体が開放した三次元結晶ネットワーク中に、互いに密接に結合するアルミノケイ酸ケージ構造を有するゼオライトが含まれる。四面体は、酸素原子の共有によって架橋され、四面体間の空隙は、ゼオライトを部分的または全体的に脱水する前は、水分子によって占有されている。脱水により、分子寸法を有するチャネルによって絡み合った結晶が得られる。水和形態では、結晶性アルミノケイ酸ゼオライトは、一般に、式:
2/nO:Al:wSiO:yH
により表され、式中、「M」は四面体の電価を平衡させる陽イオンであり、通常は交換可能な陽イオン部位と呼ばれ、「n」は陽イオンの価数を表し、「w」はSiOのモル数を表し、「y」は水のモル数を表す。吸着剤として使用するこの結晶性アルミノケイ酸ゼオライトは、相対的に明確な細孔構造を有する。正確なアルミノケイ酸ゼオライトの型は、特有のシリカ:アルミナのモル比およびケージ構造の細孔寸法によって、一般的に特定化される。
【0006】
ゼオライト吸着剤中の交換可能な陽イオン部位を占める陽イオン(M)は、結晶性アルミノケイ酸塩の分野の当業者に周知のイオン交換法によって、他の陽イオンと置換することができる。ゼオライト内の交換可能な陽イオン部位に陽イオンを有するゼオライトYなどの結晶性アルミノケイ酸塩は、少なくとも1種の他のC芳香族異性体を含む混合物中
でメタキシレンを選択的に吸着することが知られている。
【0007】
通常、分離プロセスで使用されるゼオライト吸着剤は、非晶質材料または無機マトリックス中に分散されたゼオライト結晶材料を含み、その結晶材料に液体の接近が可能となるチャネルおよび空洞をその内部に有する。シリカ、アルミナまたは特定の粘土およびその混合物は、「バインダー」として作用して、そのままでは微粉を含むであろうゼオライト結晶粒子を成型しまたは凝集する典型的な無機マトリックス材料である。このように、凝集したゼオライト吸着剤は、押出物、凝集塊、錠剤のような粒子、ビーズ、顆粒などのマクロ球体、またはその種の形態であってもよい。
【0008】
バインダーは典型的には不活性であり、いかなる選択的吸着にも寄与しない。ゼオライト吸着剤の強度およびマクロ多孔性を維持しながら、「ゼオライト化」と呼ばれる転換プロセスにおいてバインダーを選択的なゼオライトに転換することによって、吸着剤内の選択的な部分(ゼオライト容積)を拡大して吸着剤の生産効率を向上する努力がなされてきた。この変換プロセスにより、「バインダーレス」ゼオライト吸着剤が得られる。この変換プロセスにより吸着剤の生産効率が増大してきたものの、さらなる吸着分離プロセスでのプロセス性能の向上および操業コストの低減が求められている。
【0009】
従って、一定量の原料を処理するのに必要な吸着剤及び脱着剤の量を低減しうるバインダーレスゼオライト吸着剤を提供することが望ましい。またこのバインダーレス吸着剤の製造方法を提供することも望ましい。さらに、本発明の他の望ましい特性および特徴は、本発明の背景と関連して、本発明の以下の詳細な説明および添付の特許請求の範囲から明白になるであろう。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、バインダーレスゼオライト吸着剤、およびバインダーレスゼオライト吸着剤の製造方法を提供する。
本発明の第1の態様は、3.0~6.0のシリカ対アルミナのモル比を有する第1のFAU型ゼオライト、2.0~6.0のシリカ対アルミナのモル比を有するバインダー転換FAU型ゼオライト、およびバインダーレスゼオライト吸着剤内の陽イオン交換可能な部位を含み、バインダー転換FAU型ゼオライトはバインダーレスゼオライト吸着剤のうちの5~50%であり得る、バインダーレスゼオライト吸着剤である。この段落中の第1の態様に至るまでのこの段落中の前述の態様のうちの1つ、いずれか、またはすべてである本発明の態様において、バインダーレスゼオライト吸着剤のうちの少なくとも95%は、FAU型ゼオライトである。この段落中の第1の態様に至るまでのこの段落中の前述の態様のうちの1つ、いずれか、またはすべてである本発明の態様において、バインダーレスゼオライト吸着剤のうちの少なくとも98%は、FAU型ゼオライトである。この段落中の第1の態様に至るまでのこの段落中の前述の態様のうちの1つ、いずれか、またはすべてである本発明の態様において、バインダー転換FAU型ゼオライトは、バインダーレスゼオライト吸着剤のうちの10~20%であってもよい。この段落中の第1の態様に至るまでのこの段落中の前述の態様のうちの1つ、いずれか、またはすべてである本発明の態様において、陽イオン交換可能な部位は、アルカリ金属陽イオン/アルカリ土類金属陽イオンであってもよい。この段落中の第1の態様に至るまでのこの段落中の前述の態様のうちの1つ、いずれか、またはすべてである本発明の態様において、陽イオン交換可能な部位は、バリウム、カリウム、ナトリウム、またはバリウム、カリウムまたはナトリウムのうちの任意の組合せであってもよい。この段落中の第1の態様に至るまでのこの段落中の前述の態様のうちの1つ、いずれか、またはすべてである本発明の態様において、凝集塊のイオン交換可能な部位は、凝集したFAU型ゼオライト吸着剤内の陽イオン交換可能な部位に、陽イオン交換可能な部位のうちの少なくとも95%までNaを含む。この段落中の第1の態様に至るまでのこの段落中の前述の態様のうちの1つ、いずれか、またはすべ
てである本発明の態様において、非ゼオライトバインダーは、シリカ、アルミナ、またはシリカとアルミナの組合せを含む。この段落中の第1の態様に至るまでのこの段落中の前述の態様のうちの1つ、いずれか、またはすべてである本発明の態様において、バインダー転換FAU型ゼオライトは、3.0~6.0のシリカ対アルミナのモル比を有する。この段落中の第1の態様に至るまでのこの段落中の前述の態様のうちの1つ、いずれか、またはすべてである本発明の態様において、バインダーレスゼオライト吸着剤は、1%~7%の水を含む。
【0011】
本発明の第2の態様は、バインダーレスゼオライト吸着剤を製造する方法である。この方法は、イオン交換可能な部位を有する凝集塊を形成することを含み、この凝集塊は、3.0~6.0のシリカ対アルミナのモル比を有するFAU型ゼオライトと、シリカ、アルミナ、またはシリカとアルミナの組合せを含む非ゼオライトバインダーと、成形助剤とから形成され、凝集塊は、50%を超えるFAU型ゼオライトから形成され、この方法はさらに、熱処理を施してバインダーを前処理しかつ成形助剤を散逸させ、少なくとも1種の水酸化物源を含む溶液で水熱処理を施して非ゼオライト材料をFAU型ゼオライト材料に転換し、バインダーレスゼオライト吸着剤を乾燥することを含む。この段落中の第2の態様に至るまでのこの段落中の前述の態様のうちの1つ、いずれか、またはすべてである本発明の態様において、バインダーレスゼオライト吸着剤のうちの少なくとも95%は、FAU型ゼオライトである。この段落中の第2の態様に至るまでのこの段落中の前述の態様のうちの1つ、いずれか、またはすべてである本発明の態様において、バインダーレスゼオライト吸着剤のうちの少なくとも98%は、FAU型のゼオライトである。この段落中の第2の態様に至るまでのこの段落中の前述の態様のうちの1つ、いずれか、またはすべてである本発明の態様において、水酸化物を含む溶液は、さらに、ケイ素、アルミニウム、またはケイ素とアルミニウムの両方の混合物を含む。この段落中の第2の態様に至るまでのこの段落中の前述の態様のうちの1つ、いずれか、またはすべてである本発明の態様は、さらにイオン交換可能な部位を交換することを含む。この段落中の第2の態様に至るまでのこの段落中の前述の態様のうちの1つ、いずれか、またはすべてである本発明の態様において、バインダーレスゼオライト吸着剤を乾燥することにより、バインダーレスゼオライト吸着剤が1%~7%の水を含有することが確実になる。この段落中の第2の態様に至るまでのこの段落中の前述の態様のうちの1つ、いずれか、またはすべてである本発明の態様において、凝集塊を形成することは、さらに0.3mm~0.8mmの範囲の粒径を有する凝集塊を含む。この段落中の第2の態様に至るまでのこの段落中の前述の態様のうちの1つ、いずれか、またはすべてである本発明の態様において、凝集塊を形成する工程は、凝集したバインダーレスFAU型ゼオライト吸着剤のそれぞれ80~90重量%および10~20重量%のFAU型ゼオライトおよびカオリン粘土バインダーを結合し、かつバインダー転換FAU型ゼオライト及びFAU型ゼオライトの合計重量百分率の5重量%までの量のコーンスターチと混合することを含む。この段落中の第2の態様に至るまでのこの段落中の前述の態様のうちの1つ、いずれか、またはすべてである本発明の態様において、凝集塊を形成する工程は、4.0~6.0のシリカ対アルミナのモル比を有するFAU型ゼオライトにより凝集塊を形成することを含む。この段落中の第2の態様に至るまでのこの段落中の前述の態様のうちの1つ、いずれか、またはすべてである本発明の態様において、凝集塊のイオン交換可能な部位を交換する工程は、凝集したFAU型ゼオライト吸着剤内の陽イオン交換可能な部位に、陽イオン交換可能な部位のうちの少なくとも95%までNaを含む。この段落中の第2の態様に至るまでのこの段落中の前述の態様のうちの1つ、いずれか、またはすべてである本発明の態様において、凝集塊を活性化する工程は、凝集塊を少なくとも625℃まで加熱することを含み、メタカオリン粘土バインダーをバインダー転換ゼオライトに転換する工程は、メタカオリン粘土バインダーをアルカリ金属水酸化物水溶液により苛性温浸することを含む。
【0012】
実施例のさらなる目的、利点および新規な特徴は、以下の説明に部分的に記載され、部
分的には、以下の説明を検討することで当業者に明白になるか、あるいは実施例での生産や操業を通して習得される場合もある。これらの趣旨の目的および利点は、添付の特許請求の範囲に特に指摘された方法論、手段および組合せによって実現かつ達成され得る。
【0013】
定義
本明細書で使用される「流れ」という用語は、直鎖状、分枝状または環状のアルカン、アルケン、アルカジエン、およびアルキンなどの様々な炭化水素分子、ならびに任意に、水素などの気体、金属などの不純物、および硫黄化合物および窒素化合物などの他の物質を含む。この流れはまた、芳香族炭化水素および非芳香族炭化水素を含むことができる。さらに、炭化水素分子は、C、C、C...Cと略記することができ、ここで、「n」は、1種以上の炭化水素分子中の炭素原子の数を表す。さらに、上付き文字「+」または「-」は、略記された1種以上の炭化水素を含めて、C またはC などの略記された1種以上の炭化水素の表記とともに使用してもよい。例として、略語「C 」は、3個および/またはそれ以上の炭素原子の1種以上の炭化水素分子を意味する。
【0014】
本明細書で使用される「区域」という用語は、1つ以上の設備備品および/または1つ以上の副区域を含む領域を指すことができる。設備備品は、1つ以上の反応器または反応容器、ヒーター、交換器、パイプ、ポンプ、圧縮機、および制御装置を含むことができる。さらに、反応器、乾燥機、または容器などの設備備品は、さらに1つ以上の区域または副区域を含むことができる。
【0015】
本明細書で使用される「重量%」という用語は、「wt%」と略記してもよい。
本明細書で使用する「原子比」という用語は、「モル比」と互換的に使用してもよい。
本明細書で使用する「FAU型」という用語は、ゼオライトXおよびゼオライトYなどのフォージャサイト型ゼオライトを指すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の以下の詳細な説明は、事実上例示的なものであり、本発明または本発明の用途および使用を限定する意図はない。また本発明の前述の背景、あるいは以下の本発明の詳細な説明の中に提示するいかなる理論によっても拘束されることを意図しない。
【0017】
本発明の第1の態様は、3.0~6.0のシリカ対アルミナのモル比を有する第1のFAU型ゼオライト、2.0~6.0のシリカ対アルミナのモル比を有するバインダー転換FAU型ゼオライト、およびバインダーレスゼオライト吸着剤内の陽イオン交換可能な部位を含み、バインダー転換FAU型ゼオライトはバインダーレスゼオライト吸着剤のうちの5~50%であり得る、バインダーレスゼオライト吸着剤である。この段落中の第1の態様に至るまでのこの段落中の前述の態様のうちの1つ、いずれか、またはすべてである本発明の態様において、バインダーレスゼオライト吸着剤のうちの少なくとも95%はFAU型ゼオライトである。この段落中の第1の態様に至るまでのこの段落中の前述の態様のうちの1つ、いずれか、またはすべてである本発明の態様において、バインダーレスゼオライト吸着剤のうちの少なくとも98%はFAU型ゼオライトである。この段落中の第1の態様に至るまでのこの段落中の前述の態様のうちの1つ、いずれか、またはすべてである本発明の態様において、バインダー転換FAU型ゼオライトはバインダーレスゼオライト吸着剤のうちの10~20%であってもよい。この段落中の第1の態様に至るまでのこの段落中の前述の態様のうちの1つ、いずれか、またはすべてである本発明の態様において、陽イオン交換可能な部位は、アルカリ金属陽イオン/アルカリ土類金属陽イオンであってもよい。この段落中の第1の態様に至るまでのこの段落中の前述の態様のうちの1つ、いずれか、またはすべてである本発明の態様において、陽イオン交換可能な部位は、バリウム、カリウム、ナトリウム、またはバリウム、カリウムまたはナトリウムのうちの任意の組合せであってもよい。この段落中の第1の態様に至るまでのこの段落中の前述の
態様のうちの1つ、いずれか、またはすべてである本発明の態様において、凝集塊のイオン交換可能な部位は、凝集したFAU型ゼオライト吸着剤内の陽イオン交換可能な部位に、陽イオン交換可能な部位のうちの少なくとも95%までNaを含む。この段落中の第1の態様に至るまでのこの段落中の前述の態様のうちの1つ、いずれか、またはすべてである本発明の態様において、非ゼオライトバインダーはシリカ、アルミナ、またはシリカとアルミナの組合せを含む。この段落中の第1の態様に至るまでのこの段落中の前述の態様のうちの1つ、いずれか、またはすべてである本発明の態様において、バインダー転換FAU型ゼオライトは3.0~6.0のシリカ対アルミナのモル比を有する。この段落中の第1の態様に至るまでのこの段落中の前述の態様のうちの1つ、いずれか、またはすべてである本発明の態様において、バインダーレスゼオライト吸着剤は1%~7%の水を含む。
【0018】
本発明の第2の態様は、バインダーレスゼオライト吸着剤を製造する方法である。この方法は、イオン交換可能な部位を有する凝集塊を形成することを含み、この凝集塊は、3.0~6.0のシリカ対アルミナのモル比を有するFAU型ゼオライトと、シリカ、アルミナ、またはシリカとアルミナの組合せを含む非ゼオライトバインダーと、成形助剤とから形成され、凝集塊は50%を超えるFAU型ゼオライトから形成され、この方法はさらに、熱処理を施してバインダーを前処理しかつ成形助剤を散逸させ、少なくとも1種の水酸化物源を含む溶液で水熱処理を施して非ゼオライト材料をFAU型ゼオライト材料に転換し、バインダーレスゼオライト吸着剤を乾燥することを含む。この段落中の第2の態様に至るまでのこの段落中の前述の態様のうちの1つ、いずれか、またはすべてである本発明の態様において、バインダーレスゼオライト吸着剤のうちの少なくとも95%はFAU型ゼオライトである。この段落中の第2の態様に至るまでのこの段落中の前述の態様のうちの1つ、いずれか、またはすべてである本発明の態様において、バインダーレスゼオライト吸着剤のうちの少なくとも98%は、FAU型のゼオライトである。この段落中の第2の態様に至るまでのこの段落中の前述の態様のうちの1つ、いずれか、またはすべてである本発明の態様において、水酸化物を含む溶液は、さらに、ケイ素、アルミニウム、またはケイ素とアルミニウムの両方の混合物を含む。この段落中の第2の態様に至るまでのこの段落中の前述の態様のうちの1つ、いずれか、またはすべてである本発明の態様は、さらにイオン交換可能な部位を交換することを含む。この段落中の第2の態様に至るまでのこの段落中の前述の態様のうちの1つ、いずれか、またはすべてである本発明の態様において、バインダーレスゼオライト吸着剤を乾燥することにより、バインダーレスゼオライト吸着剤が1%~7%の水を含有することが確実になる。この段落中の第2の態様に至るまでのこの段落中の前述の態様のうちの1つ、いずれか、またはすべてである本発明の態様において、凝集塊を形成することは、さらに0.3mm~0.8mmの範囲の粒径を有する凝集塊を含む。この段落中の第2の態様に至るまでのこの段落中の前述の態様のうちの1つ、いずれか、またはすべてである本発明の態様において、凝集塊を形成する工程は、凝集したバインダーレスFAU型ゼオライト吸着剤のそれぞれ80~90重量%および10~20重量%のFAU型ゼオライトおよびカオリン粘土バインダーを結合し、かつバインダー転換FAU型ゼオライト及びFAU型ゼオライトの合計重量百分率の5重量%までの量のコーンスターチと混合することを含む。この段落中の第2の態様に至るまでのこの段落中の前述の態様のうちの1つ、いずれか、またはすべてである本発明の態様において、凝集塊を形成する工程は、4.0~6.0のシリカ対アルミナのモル比を有するFAU型ゼオライトにより凝集塊を形成することを含む。この段落中の第2の態様に至るまでのこの段落中の前述の態様のうちの1つ、いずれか、またはすべてである本発明の態様において、凝集塊のイオン交換可能な部位を交換する工程は、凝集したFAU型ゼオライト吸着剤内の陽イオン交換可能な部位に、陽イオン交換可能な部位のうちの少なくとも95%までNaを含む。この段落中の第2の態様に至るまでのこの段落中の前述の態様のうちの1つ、いずれか、またはすべてである本発明の態様において、凝集塊を活性化する工程は、凝集塊を少なくとも625℃まで加熱することを含み、メタカオリン粘土バインダーをバインダー転換ゼオライトに転換する工程は、メタカオリン粘土バインダーをアルカリ金属水酸化物水溶液により苛性温浸することを含む。
【0019】
本発明の好ましいゼオライトの種類は合成のX型およびY型の両方を含むフォージャサイトである。最も好ましいのは、一般的には、米国特許第3,130,007号内に記載され、本明細書内に参照により組み込まれるY型である。ゼオライトYの結晶は、基本的に、酸素原子の共有によって架橋されたSiOおよびAlO四面体の三次元骨格である。アルミニウムを含有する各四面体の電価は、アルカリ金属イオンなどの陽イオンがアルミノケイ酸塩骨格中に存在することによって平衡する。骨格内の空隙は水分子によって占有されている。
【0020】
一態様において、FAU型ゼオライトを調製する方法は、ゼオライトYと不活性バインダーからなる吸着剤凝集塊の形成から始まる。ゼオライトYは、周囲温度で水と混合することによって、不活性バインダーを用いて吸着ビーズに凝集される。好ましい態様において、不活性バインダーは、2.0~2.2の範囲の、好ましくは2.0のシリカ:アルミナのモル比を有するカオリン粘土を含む。カオリン粘土は、例えば、U.S. Silica Co., Berkeley Springs, WVから入手可能である。ビーズは、(揮発性分のない基準で)80~
90wt%のゼオライトY、および10~20wt%のカオリン粘土バインダーを含んでもよい。カオリン粘土バインダーは、出発ゼオライト粉末を相互に固定して、0.3mm~0.8mmの範囲の粒径を有し、かつ後述するような水流磨耗試験によって示される機械的強度が増加した吸着剤ビーズを生成する。ビーズの形態の凝集塊が述べられているが、本発明はそれに限定はされない。ゼオライトYは、押出物、凝集塊、錠剤のような粒子、マクロ球体、顆粒、またはその種の他の形態に凝集されてもよい。
【0021】
代表的な態様において、コーンスターチのような添加剤をまた、凝集塊の形成工程中に、ゼオライトYおよび不活性バインダーに混合してもよい。コーンスターチは、後述の目的のために、バインダー転換ゼオライト部分と出発ゼオライトYとの総合計重量の(揮発性分のない基準で)0~5.0wt%の量で添加してもよい。他の添加剤として、ポリマーおよび繊維を含んでもよい。
【0022】
カオリン粘土バインダーをバインダー転換ゼオライトに転換するために、凝集塊を625℃以上で活性化して、カオリン粘土バインダーをメタカオリン粘土バインダーに変換する。カオリン粘土バインダーは、吸熱性の脱ヒドロキシル化反応を受け、不規則なメタカオリン相に転換する。あらかじめコーンスターチを添加した場合には、コーンスターチはこの工程中に焼失する。
【0023】
次に、メタカオリン粘土バインダーを、ケイ酸ナトリウムおよび水酸化ナトリウムを含有する溶液によって88℃の温度で苛性温浸して、メタカオリンバインダーを2.0~6.0の範囲のシリカ:アルミナのモル比を有するバインダー転換ゼオライトに転換する。この転換は、液体O温度でのマックベイン法によるO容量測定により決定される選択的細孔容積の増加をもたらす。その測定は、ZEOLITE MOLECULAR SIEVES: STRUCTURE, CHEMISTRY AND USE by Donald W. Breck, John Wiley & Sons, 1974中に記載されている。従って、吸着剤ビーズは、無視できる程度の不活性バインダーを有する実質的に100%のゼオライトを含み、「バインダーレス」ゼオライト吸着剤ビーズを生成する。吸着剤ビーズは、3.0~6.0の範囲のシリカ:アルミナのモル比を有する(出発ゼオライトY由来の)ゼオライトY部分と、2.0~6.0の範囲のシリカ:アルミナのモル比を有するバインダー転換ゼオライト部分とを含む。カオリン粘土バインダーからバインダー転換ゼオライトへの転換が述べられているが、本発明はそれに限定はされない。例えば、他の粘土バインダーを、バインダー転換ゼオライトに転換してもよい。非限定的な例として、ハロイサイト族に属する粘土が挙げられる。さらに、水酸化ナトリウム溶液の使用が、バインダー転換のための苛性溶液として記載されているが、本発明はそれに限定はされない。水酸化ナトリウムに加えて、他のアルカリ金属水酸化物水溶液を転換に使用してもよい。非限定的な例として、水酸化カリウム溶液、または水酸化ナトリウムと水酸化カリウムの混合溶液が挙げられる。
【0024】
次に、FAU型バインダーレスゼオライト吸着剤を乾燥して、その水分含量を固定化する。その際に、FAU型のバインダーレスゼオライト吸着剤を、ビーズを洗浄し、1~7%の強熱減量(900℃でのLOI)まで乾燥することによって活性化する。乾燥は、通常、好ましくは175℃~250℃の温度での熱活性化によって実施する。吸着剤の含水量は、900℃での承認されたLOI試験により本明細書中に表示されている。LOI試験は、UOP試験方法番号UOP954-03(ASTM International, 100 Barr Harbor Drive, PO Box C700, West Conshohocken, PA, 19428-2959 USAから入手可能)に記載されている。
【0025】
上記のように、ビーズ形成段階中に、コーンスターチをゼオライトYおよび粘土バインダーの混合物に添加してもよい。コーンスターチの添加は、より詳細に以下に説明するように、吸着剤ビーズのメソ多孔性およびマクロ多孔性を増大する。本明細書中で使用されるように、また通常は、「マクロ細孔」は、50nmより大きい孔直径を有する細孔として定義され、「メソ細孔」は、2~50nmの孔直径を有する細孔として定義される。マクロ多孔性およびメソ多孔性は、水酸化ナトリウム転換溶液がバインダー全体にわたって流動することを可能にすることによって、バインダーの転換を促進する。マクロ細孔およびメソ細孔はまた、FAU型バインダーレスゼオライト吸着剤の物質移動速度を改善することにも役立つ。
【0026】
バインダーレス吸着剤は、バインダーレスゼオライト吸着剤を用いる高純度パラキシレンまたはメタキシレンの精製などの選択的吸着分離プロセスにおけるキシレン分離および精製に使用することができる。非限定的な例には、バッチ操作モード及び連続操作モード、液相操作および気相操作、固定床操作、移動床操作および疑似移動床操作、対向流および並流が含まれる。代表的な態様において、バインダーレスゼオライト吸着剤は、混合キシレンからメタキシレンを回収するための対向流で液相の疑似移動床吸着分離プロセスで使用される。吸着剤は、メタキシレンに対して選択的である。SMBプロセスに使用される脱着剤には、パラジエチルベンゼン、トルエン、ベンゼン、またはインダンを含んでもよい。
【0027】
実施例
以下の実施例は、対象の吸着剤をさらに説明することを意図している。本開示の態様のこの説明は、本開示の特許請求の範囲をこれらの実施例の特定の詳細に限定することを意味しない。これらの例は、工学計算と類似のプロセスによる実際の操業実績に基づいている。次の表は、試験された5つの異なる組成を示す。
【0028】
【表1】
【0029】
85wt%のY-54粉末および15wt%のカオリン粘土を、押出助剤として3wt%のCMCを用いて1/16インチの円柱としてまず押出した。押出物をオーブン中で100℃で一晩乾燥させた。次に押出物を、2℃/分の勾配で300℃にして2時間保持し、それに続いて5℃/分の勾配で675℃にして3時間保持し、最後に10℃/分で100℃まで冷却するステップを用いて活性化した。押出物を室温まで冷却した後に、それらを粉砕し、20/40メッシュのサイズにした。次いで、10gのメッシュを通した押出
物を、(Y-54粉末を除いたバインダー組成物を含む)ゲル状モル酸化物比としてAl:10.45SiO:4.5NaO:500HOを目標にして調製した溶液により処理した。この溶液は、11.82gのケイ酸ナトリウム、2.09gの50%NaOH溶液、および52.13gのHOからなり、その溶液をガラスフラスコに添加し蓋をして、湯水浴中で88℃の温浸温度に仕込んだ。溶液がその温度になったら、メッシュを通した押出物をフラスコに加え、そのフラスコに再び蓋をして水浴中に戻した。最後に水浴を覆って、シェーカー部品を始動し、20時間その温度に維持するように設定し、自動的に停止するようにプログラムした。室温まで冷却したら、フラスコの母液をデカントし、転換した固体を、洗浄水のpHが11未満になるまで周囲温度で脱イオン水により洗浄した。試料を室温で一晩風乾した。
【0030】
前述より、バインダーをゼオライトに変換することによって吸着剤の重量能力が増大し、所定質量の吸着剤でより多くの原料を処理することができることが分かる。さらに、シリカ含量が低いバインダー、例えばカオリン粘土またはアルミナを比較的高いシリカ含量を有するゼオライトに転換することにより、容積能力の大幅な増加を実現することができる。これは、一定容積の生成した吸着剤本体を維持しながら、シリカと電荷平衡陽イオンの質量を加算した結果である。この容積能力の増加により、より多くの原料を同一容積の吸着剤により処理することが顕著に可能となる。
【0031】
【表2】
【0032】
実験室で調製した試料のパルス/動的試験結果を表2に示す。このデータは、転換された押出物が、未転換試料に対して37%という驚異的な能力の増加を示している。これにより、既存のMXSorbex製品と比較して、能力と生産効率が大幅に向上する。
【0033】
少なくとも1つの代表的な態様が本発明の前述の詳細な説明中に提示されているが、当然のことながら、膨大な数の変形が存在する。また当然のことながら、代表的な態様は、単なる例であり、かつ決して本発明の範囲、適用可能性、または構成の限定を意図するものではない。むしろ、前述の詳細な説明は、本発明の代表的な態様を実施するための便利なロードマップを当業者に提供することになり、当然ながら、様々な変形は、添付の特許請求の範囲およびそれらの法的な同等物に記載される本発明の範囲から逸脱することなく、代表的な態様に記載された要素の機能および構成内で実施される。
【0034】
特定の態様
以下は特定の態様に関連して説明するが、当然ながら、この説明は例示を意図するものであり、前述の説明および添付の特許請求の範囲を限定するものではない。
【0035】
本発明の第1の態様は、3.0~6.0のシリカ対アルミナのモル比を有する第1の
FAU型ゼオライト、2.0~6.0のシリカ対アルミナのモル比を有するバインダー転換FAU型ゼオライト、およびバインダーレスゼオライト吸着剤内の陽イオン交換可能な
部位を含み、バインダー転換FAU型ゼオライトはバインダーレスゼオライト吸着剤のうちの5~50%であり得る、バインダーレスゼオライト吸着剤である。この段落中の第1の態様に至るまでのこの段落中の前述の態様のうちの1つ、いずれか、またはすべてである本発明の態様において、バインダーレスゼオライト吸着剤のうちの少なくとも95%はFAU型ゼオライトである。この段落中の第1の態様に至るまでのこの段落中の前述の態様のうちの1つ、いずれか、またはすべてである本発明の態様において、バインダーレスゼオライト吸着剤のうちの少なくとも98%はFAU型ゼオライトである。この段落中の第1の態様に至るまでのこの段落中の前述の態様のうちの1つ、いずれか、またはすべてである本発明の態様において、バインダー転換FAU型ゼオライトはバインダーレスゼオライト吸着剤のうちの10~20%であってもよい。この段落中の第1の態様に至るまでのこの段落中の前述の態様のうちの1つ、いずれか、またはすべてである本発明の態様において、陽イオン交換可能な部位はアルカリ金属陽イオン/アルカリ土類金属陽イオンであってもよい。この段落中の第1の態様に至るまでのこの段落中の前述の態様のうちの1つ、いずれか、またはすべてである本発明の態様において、陽イオン交換可能な部位は、バリウム、カリウム、ナトリウム、またはバリウム、カリウムまたはナトリウムのうちの任意の組合せであってもよい。この段落中の第1の態様に至るまでのこの段落中の前述の態様のうちの1つ、いずれか、またはすべてである本発明の態様において、凝集塊のイオン交換可能な部位は、凝集したFAU型ゼオライト吸着剤内の陽イオン交換可能な部位に、陽イオン交換可能な部位のうちの少なくとも95%までNaを含む。この段落中の第1の態様に至るまでのこの段落中の前述の態様のうちの1つ、いずれか、またはすべてである本発明の態様において、非ゼオライトバインダーは、シリカ、アルミナ、またはシリカとアルミナの組合せを含む。この段落中の第1の態様に至るまでのこの段落中の前述の態様のうちの1つ、いずれか、またはすべてである本発明の態様において、バインダー転換FAU型ゼオライトは、3.0~6.0のシリカ対アルミナのモル比を有する。この段落中の第1の態様に至るまでのこの段落中の前述の態様のうちの1つ、いずれか、またはすべてである本発明の態様において、バインダーレスゼオライト吸着剤は、1%~7%の水を含む。
【0036】
本発明の第2の態様は、バインダーレスゼオライト吸着剤を製造する方法である。この方法は、イオン交換可能な部位を有する凝集塊を形成することを含み、この凝集塊は、3.0~6.0のシリカ対アルミナのモル比を有するFAU型ゼオライトと、シリカ、アルミナ、またはシリカとアルミナの組合せを含む非ゼオライトバインダーと、成形助剤とから形成され、凝集塊は、50%を超えるFAU型ゼオライトから形成され、この方法はさらに、熱処理を施してバインダーを前処理しかつ成形助剤を散逸させ、少なくとも1種の水酸化物源を含む溶液で水熱処理を施して非ゼオライト材料をFAU型ゼオライト材料に転換し、バインダーレスゼオライト吸着剤を乾燥することを含む。この段落中の第2の態様に至るまでのこの段落中の前述の態様のうちの1つ、いずれか、またはすべてである本発明の態様において、バインダーレスゼオライト吸着剤のうちの少なくとも95%は、FAU型ゼオライトである。この段落中の第2の態様に至るまでのこの段落中の前述の態様のうちの1つ、いずれか、またはすべてである本発明の態様において、バインダーレスゼオライト吸着剤のうちの少なくとも98%は、FAU型のゼオライトである。この段落中の第2の態様に至るまでのこの段落中の前述の態様のうちの1つ、いずれか、またはすべてである本発明の態様において、水酸化物を含む溶液は、さらに、ケイ素、アルミニウム、またはケイ素とアルミニウムの両方の混合物を含む。この段落中の第2の態様に至るまでのこの段落中の前述の態様のうちの1つ、いずれか、またはすべてである本発明の態様は、さらにイオン交換可能な部位を交換することを含む。この段落中の第2の態様に至るまでのこの段落中の前述の態様のうちの1つ、いずれか、またはすべてである本発明の態様において、バインダーレスゼオライト吸着剤を乾燥することにより、バインダーレスゼオライト吸着剤が1%~7%の水を含有することが確実になる。この段落中の第2の態様に至るまでのこの段落中の前述の態様のうちの1つ、いずれか、またはすべてである本発明の態様において、凝集塊を形成することは、さらに0.3mm~0.8mmの範囲の粒径を有する凝集塊を含む。この段落中の第2の態様に至るまでのこの段落中の前述の態様のうちの1つ、いずれか、またはすべてである本発明の態様において、凝集塊を形成する工程は、凝集したバインダーレスFAU型ゼオライト吸着剤のそれぞれ80~90重量%および10~20重量%のFAU型ゼオライトおよびカオリン粘土バインダーを結合し、かつバインダー転換FAU型ゼオライト及びFAU型ゼオライトの合計重量百分率の5重量%までの量のコーンスターチと混合することを含む。この段落中の第2の態様に至るまでのこの段落中の前述の態様のうちの1つ、いずれか、またはすべてである本発明の態様において、凝集塊を形成する工程は、4.0~6.0のシリカ対アルミナのモル比を有するFAU型ゼオライトにより凝集塊を形成することを含む。この段落中の第2の態様に至るまでのこの段落中の前述の態様のうちの1つ、いずれか、またはすべてである本発明の態様において、凝集塊のイオン交換可能な部位を交換する工程は、凝集したFAU型ゼオライト吸着剤内の陽イオン交換可能な部位に、陽イオン交換可能な部位のうちの少なくとも95%までNaを含む。この段落中の第2の態様に至るまでのこの段落中の前述の態様のうちの1つ、いずれか、またはすべてである本発明の態様において、凝集塊を活性化する工程は、凝集塊を少なくとも625℃まで加熱することを含み、メタカオリン粘土バインダーをバインダー転換ゼオライトに転換する工程は、メタカオリン粘土バインダーをアルカリ金属水酸化物水溶液により苛性温浸することを含む。
【0037】
さらなる詳述はせずに、前述の説明を利用して、当業者は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本発明を最大限に利用し、また本発明の本質的な特徴を容易に理解して、本発明の様々な変更および修正を行い、かつ様々な用途および条件にそれを適合させることができるもとのと考えられる。 したがって、前述の好ましい特定の態様は、単
なる例示として解釈され、決して本開示の残りの部分を限定するものではなく、添付の特許請求の範囲内に含まれる様々な改変および等価な構成を包含することを意図している。
【0038】
上記において、すべての温度は摂氏で示され、全ての部数および百分率は、他に指示がない限り、重量によるものである。
本明細書は以下の発明の開示を包含する。
[1]
バインダーレスゼオライト吸着剤であって、
3.0~6.0のシリカ対アルミナのモル比を有する第1のFAU型ゼオライト、
2.0~6.0のシリカ対アルミナのモル比を有し、かつバインダーレスゼオライト吸着剤のうちの5~50%であり得るバインダー転換FAU型ゼオライト、および
バインダーレスゼオライト吸着剤内の陽イオン交換可能な部位、
を含む、バインダーレスゼオライト吸着剤。
[2]
該バインダーレスゼオライト吸着剤のうちの少なくとも95%は、FAU型ゼオライトである、[1]に記載のバインダーレスゼオライト吸着剤。
[3]
該バインダーレスゼオライト吸着剤のうちの少なくとも98%は、FAU型ゼオライトである、[1]に記載のバインダーレスゼオライト吸着剤。
[4]
該バインダー転換FAU型ゼオライトは、該バインダーレスゼオライト吸着剤のうちの10~34%であってもよい、[1]に記載のバインダーレスゼオライト吸着剤。
[5]
該陽イオン交換可能な部位は、アルカリ金属陽イオン/アルカリ土類金属陽イオンであってもよい、[1]に記載のバインダーレスゼオライト吸着剤。
[6]
バインダーレスゼオライト吸着剤を製造する方法であって、
イオン交換可能な部位を有し、かつ3.0~6.0のシリカ対アルミナのモル比を有するFAU型ゼオライトと、シリカ、アルミナまたはシリカとアルミナとの組み合わせを含む非ゼオライトバインダーと、成形助剤とから生成され、かつ50%を超えるFAU型ゼオライトから形成される凝集塊を生成すること、
熱処理を施して、バインダーを前処理し成形助剤を散逸させること、
少なくとも1種の水酸化物源を含有する溶液で水熱処理を施して、非ゼオライト材料をFAU型ゼオライト材料に変換すること、および
バインダーレスゼオライト吸着剤を乾燥すること、を含む方法。
[7]
該バインダーレスゼオライト吸着剤のうちの少なくとも95%は、FAU型ゼオライトである、[6]に記載の方法。
[8]
該バインダーレスゼオライト吸着剤のうちの少なくとも98%は、FAU型ゼオライトである、[6]に記載の方法。
[9]
該水酸化物を含有する溶液はさらに、ケイ素、アルミニウム、またはケイ素とアルミニウムの両方の混合物を含む、[6]に記載の方法。
[10]
さらに該イオン交換可能な部位を交換することを含む、[6]に記載の方法。