(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】仮排水溝の施工方法
(51)【国際特許分類】
E02B 11/00 20060101AFI20240321BHJP
【FI】
E02B11/00 Z
(21)【出願番号】P 2022182945
(22)【出願日】2022-11-15
【審査請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】593089046
【氏名又は名称】青木あすなろ建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100218062
【氏名又は名称】小野 悠樹
(74)【代理人】
【識別番号】100093230
【氏名又は名称】西澤 利夫
(72)【発明者】
【氏名】内田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】竹中 友彦
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-099720(JP,U)
【文献】特開平10-060901(JP,A)
【文献】特開平09-203046(JP,A)
【文献】特開平01-174733(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 1/00-11/00
E01C 1/00-17/00
E02B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面を掘削して溝部を延設し、前記溝部の表面をシート材で被覆し、固定部材によって前記シート材を地面に固定して、仮排水溝を形成する工程を含み、
前記シート材は、
不織布と、
前記不織布の表面に配設された網目状の補強ネットと
を備え、
前記不織布の目付量が30~60g/m
2であ
り、
前記シート材は、前記補強ネットが外側に露出するように配置される
ことを特徴とする仮排水溝の施工方法。
【請求項2】
前記不織布の目付量が40~50g/m
2である
ことを特徴とする請求項1の仮排水溝の施工方法。
【請求項3】
前記不織布の材料は、ポリエステルである
ことを特徴とする請求項1の仮排水溝の施工方法。
【請求項4】
前記仮排水溝を、工事用道路に沿って延設する
ことを特徴とする請求項1の仮排水溝の施工方法。
【請求項5】
前記仮排水溝を、勾配面に延設する
ことを特徴とする請求項1の仮排水溝の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮排水溝の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建設工事においては、工事用道路に沿って断面略V字状の溝を掘り、その溝の表面をコンクリートやアスファルト乳剤で固めることで、雨水などの排水のための仮排水溝を設けることが行われている。
【0003】
しかしながら、コンクリートを利用した仮排水溝の施工方法の場合、打設時のコンクリートの仕上げなどの作業の手間を要する。また、アスファルト乳剤を利用した仮排水溝の施工方法の場合、強雨などにより排水溝の底や法面が洗堀され、その都度、補修作業が必要になる。さらに、仮排水溝は、建設工事終了後は撤去される場合が多く、この場合、いずれの施工方法においてもコンクリートやアスファルトが産業廃棄物として発生する。
【0004】
一方、例えば、別の仮排水溝の施工方法として、排水溝の表面に防水ラミネート紙製形成材を配設することが提案されている(特許文献1)。この防水ラミネート紙製形成材は、建設工事期間終了後に風化、分散するため、撤去の必要がないとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の施工方法の場合、強雨の際に仮排水溝を流れる雨水の流速が早く、仮排水溝の底部や法面が削られて形状が変化したり、雨水が仮排水溝の法面を超えて溢れたりするという問題があった。また、特に、勾配面に設けられる仮排水溝の場合には、このような問題が顕著であった。
【0007】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、施工および撤去が容易であり、強雨の際にも仮排水溝を流れる雨水を安定して排水することができる仮排水溝の施工方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、以下の仮排水溝の施工方法が提供される。
[1]地面を掘削して溝部を延設し、前記溝部の表面をシート材で被覆し、固定部材によって前記シート材を地面に固定して、仮排水溝を形成する工程を含み、
前記シート材は、
不織布と、
前記不織布の表面に配設された網目状の補強ネットと
を備え、
前記不織布の目付量が30~60g/m2である
ことを特徴とする仮排水溝の施工方法。
[2]前記不織布の目付量が40~50g/m2である
ことを特徴とする前記[1]の仮排水溝の施工方法。
[3]前記不織布の材料は、ポリエステルである
ことを特徴とする前記[1]または[2]の仮排水溝の施工方法。
[4]前記仮排水溝を、工事用道路に沿って延設する
ことを特徴とする前記[1]から[3]の仮排水溝の施工方法。
[5]前記仮排水溝を、勾配面に延設する
ことを特徴とする前記[1]から[4]の仮排水溝の施工方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の仮排水溝の施工方法によれば、仮排水溝の施工および撤去が容易であり、強雨の際にも、仮排水溝を流れる雨水を安定して排水することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】シート材の一実施形態を例示した拡大図である。
【
図2】本発明の仮排水溝の施工方法(施工後)の一実施形態を例示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の仮排水溝の施工方法の一実施形態について、図面とともに説明する。
【0012】
本発明の仮排水溝の施工方法は、典型的には、工事用道路などに沿って設けられる仮排水溝の施工方法である。
【0013】
本発明の仮排水溝の施工方法は、地面を掘削して溝部を延設し、溝部の表面をシート材で被覆し、固定部材によってシート材を地面に固定する工程を含む。なお、本発明において、「溝部の表面」には、掘削して形成された溝(掘削領域)と、その溝の法面などと隣接する領域(非掘削領域)が含まれる。
【0014】
溝部の形状は適宜設計することができるが、例えば、断面が略V字状、半円形状などであってよい。また、溝部の長さ、深さおよび幅などは、工事用道路などの施工環境に応じて適宜設計することができる。
【0015】
図1は、シート材の一実施形態を例示した拡大図である。
【0016】
シート材1は、不織布2と補強ネット3とを備えている。
【0017】
不織布2の材料は特に限定されないが、例えば、ポリエステル、レーヨン、ナイロン、ビニロン、オレフィンなどの樹脂からなる繊維のうちの1種または2種以上を例示することができ、なかでも、ポリエステルを含むことが好ましい。
【0018】
不織布2の厚さは特に限定されないが、例えば、5mm~15mm程度の範囲を例示することができる。また、不織布2の長さ、幅も特に限定されないが、溝部の幅方向に亘って十分に被覆できる幅を有することが好ましい。
【0019】
不織布2の目付量は、30~60g/m2であり、40~50g/m2であることが好ましい。不織布2の目付量がこの範囲であると、適度な透水性と摩擦を有するため、強雨の際にも溝の底部や法面の土壌が削られることが抑制され、仮排水溝を流れる雨水の量や流速を安定させることができる。
【0020】
補強ネット3は、網目状(格子状)の部材であり、不織布2の表面全体に亘って配設(積層)されている。不織布2と補強ネット3とは、一体であってもよいし、別体であってもよい。また、シート材1に含まれる補強ネット3の数は、1または複数であってよい。
【0021】
補強ネット3の材料は、特に限定されないが、ポリエチレンなどの樹脂、金属(例えば亀甲金網など)などを例示することができる。また、補強ネット3の網目のピッチ(縦網目、横網目)は特に限定されないが、例えば、2~8cm、好ましくは3~5cmの範囲を例示することができる。さらに、網目を構成する線幅も特に限定されず、例えば、1mm~30mm程度の範囲で適宜調整することができる。
【0022】
不織布2の表面に補強ネット3が配設されていることで、シート材1の強度が良好になるとともに、不織布2の傷みや脱離が抑制される。また、補強ネット3上を流れる水の流速が比較的早く、不織布中を流れる水の流速が比較的遅いため、強雨の際にも溝の底部や法面の土壌が削られることが抑制され、雨水を安定して排水することができる。
【0023】
シート材1は、別の用途として市販されている製品を使用することもできる。具体的には、上述した特徴を有するものとして、例えば、切土の法面などに設置される浸食防止シート、植生導入シート、土壌流出防止シートなどが挙げられる。より具体的には、例えば、多機能フィルター株式会社製 製品名:SP-30、SP-45、日本植生株式会社製 製品名:ドレーンシート(登録商標)30、ドレーンシート(登録商標)45、前田工繊株式会社製 製品名:ガードレイン(タイプMT、タイプR、タイプSG)などが挙げられる。
【0024】
図2は、本発明の仮排水溝の施工方法(施工後)の一実施形態を例示した断面図である。
【0025】
図2に例示した形態では、断面略V字状の溝部Mが形成されている。本発明の仮排水溝の施工方法では、溝部Mの表面を上記のシート材1で被覆する。
【0026】
具体的には、補強ネット3が外側に露出するように、溝部Mおよびその周辺の表面をシート材1で被覆し、固定部材4によって地面に固定する。シート材1は、溝部Mの形状に合わせて、溝部Mの底部や法面と当接するように配設することが望ましい。
【0027】
また、例えば、ロール状に巻回しているシート材1を、溝部Mに沿って、巻回を解除するように転がすことで、容易に溝部Mの表面にシート材1を配設することができる。さらに、シート材1同士の継ぎ目では、例えば、シート材1端部同士を重ね合わせ、シート材1の剥離などが生じないように、固定部材で固定することができる。
【0028】
固定部材4は、特に限定されず、例えば、アンカーピンなどを例示することができる。固定部材4によってシート材1を貫通させて地面に打ち込むことができる。この実施形態では、溝部Mに隣接する非掘削領域(平坦部)を被覆しているシート材1の幅方向端部付近において、固定部材4が下方に向かって打ち込まれ、シート材1が固定されている。
【0029】
溝部Mの長さ方向に隣接する固定部材同士の距離は、例えば、0.3~1.5m程度、好ましくは、0.4~0.6m程度である。固定部材同士の距離がこの範囲であると、溝部Mからシート材1が剥離することが抑制され、雨水を安定して排水することができる。
【0030】
上述したように、本発明の仮排水溝の施工方法は、シート材1は、不織布2と、不織布2の表面に配設された網目状の補強ネット3とを備え、不織布2の目付量が30~60g/m2であるため、適度な透水性と摩擦を有し、仮排水溝を流れる雨水の量や流速を安定させることができる。このため、流れる雨水によって溝部Mの底部や法面が削られることが抑制され、これによって、土壌を含む濁り水の発生(土壌の流出)を抑制することができる。したがって、溝部Mの形状の変化などが抑制され、長期に亘って、仮排水溝を通じて雨水を安定に排水することができる。特に、勾配面に仮排水溝を設けた場合も、雨水を安定に排水することができる。
【0031】
また、本発明の仮排水溝の施工方法は、溝部Mの上に所定のシート材1を敷設するだけでよいため施工が容易であり、作業負担が軽減され、工期も短縮することができる。さらに、建設工事終了後は、シート材1を除去するだけでよいため、撤去が容易であるとともに、産業廃棄物もほとんど発生しない。
【0032】
本発明の仮排水溝の施工方法は、以上の実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0033】
1 シート材
2 不織布
3 補強ネット
4 固定部材
【要約】
【課題】施工および撤去が容易であり、強雨の際にも仮排水溝を流れる雨水を安定して排水することができる仮排水溝の施工方法を提供すること。
【解決手段】仮排水溝の施工方法であって、地面を掘削して溝部を形成し、前記溝部の表面をシート材で被覆し、固定部材によって前記シート材を地面に固定して、仮排水溝を形成する工程を含み、前記シート材は、不織布と、前記不織布の表面に配設された網目状の補強ネットとを備え、前記不織布の目付量が30~60g/m
2である。
【選択図】
図2