(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】変性カーボンブラック及びその製造方法、樹脂組成物、銅張積層板
(51)【国際特許分類】
C09C 1/56 20060101AFI20240321BHJP
C09D 17/00 20060101ALI20240321BHJP
C08G 65/338 20060101ALI20240321BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20240321BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20240321BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240321BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
C09C1/56
C09D17/00
C08G65/338
C08L63/00 C
C08K3/04
C08K3/013
B32B15/08 J
(21)【出願番号】P 2022502505
(86)(22)【出願日】2020-04-30
(86)【国際出願番号】 CN2020088414
(87)【国際公開番号】W WO2021109442
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-01-14
(31)【優先権主張番号】201911226294.9
(32)【優先日】2019-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521550460
【氏名又は名称】グァンドン ヒンノ-テック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グオ ヨンジュン
(72)【発明者】
【氏名】ウェン ウェンヤン
(72)【発明者】
【氏名】チー シァオロン
(72)【発明者】
【氏名】ヂュ ヤンジェ
【審査官】水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-006981(JP,A)
【文献】特開2004-211100(JP,A)
【文献】特開2006-213922(JP,A)
【文献】特開2016-183244(JP,A)
【文献】特表2010-537006(JP,A)
【文献】特表2004-536945(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105461988(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09C 1/00-3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)液相法によりカーボンブラックに対して表面酸化変性を行った後、前記カーボンブラックの表面に塩化アシル基を形成するようにアシル化塩素化を行う工程と、
(2)表面に塩化アシル基が形成されたカーボンブラックと、
ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールから選択される変性ポリマーとを混合し、変性基を形成するようにグラフト化反応をさせる工程と、を含み、
工程(1)では、前記表面酸化変性は、酸化剤と前記カーボンブラックとを混合し、20~30℃で反応させた後、反応により得られた固体を水で洗浄し、乾燥させる工程を含み、
工程(1)では、前記アシル化塩素化の方法は、溶媒中において、前記表面酸化変性後のカーボンブラックを塩化チオニルと混合し、35~45℃で8~12時間反応させることである、ことを特徴とする変性カーボンブラックの製造方法。
【請求項2】
前記カーボンブラックの粒子径は、5~100nmである、ことを特徴とする請求項1に記載の変性カーボンブラックの製造方法。
【請求項3】
前記カーボンブラックの粒子径は、5~50nmである、ことを特徴とする請求項2に記載の変性カーボンブラックの製造方法。
【請求項4】
前記酸化剤は、硝酸、過酸化水素、過硫酸アンモニウムのいずれか1種である、ことを特徴とする請求項1に記載の変性カーボンブラックの製造方法。
【請求項5】
前記酸化剤が硝酸の場合、前記反応の時間は、1.5~2.5時間であり、
前記酸化剤が過酸化水素の場合、前記反応の時間は、95~97時間であり、
前記酸化剤が過硫酸アンモニウムの場合、前記反応の時間は、23~25時間である、ことを特徴とする請求項4に記載の変性カーボンブラックの製造方法。
【請求項6】
工程(1)では、前記アシル化塩素化の方法は、ジクロロエタン溶媒中において、前記表面酸化変性後のカーボンブラックを塩化チオニルと混合し、40℃で10時間反応させることである、ことを特徴とする請求項1に記載の変性カーボンブラックの製造方法。
【請求項7】
工程(2)では、前記グラフト化反応は、溶媒中において、前記表面に塩化アシル基が形成されたカーボンブラックを変性ポリマーと混合し、50~90℃で10~30時間反応させる工程を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の変性カーボンブラックの製造方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の製造方法によって製造された変性カーボンブラック。
【請求項9】
請求項8に記載の変性カーボンブラックを含む、ことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項10】
前記樹脂組成物は、重量パーセントに基づいて、
0.1%~10%の変性カーボンブラックと、
30%~70%の機能性樹脂と、
2%~30%の硬化剤と、
20%~60%の充填剤と、
0.1%~2%のカップリング剤と、
0.1%~2%の硬化促進剤と、を含む原料から調製される、ことを特徴とする請求項9に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
請求項9に記載の樹脂組成物をサイジング材料として使用する、ことを特徴とする銅張積層板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料の技術分野に関し、特に、変性カーボンブラック及びその製造方法、樹脂組成物、銅張積層板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LED(発光ダイオード、Light-Emitting Diode)の低消費電力と高効率という優れた特性により、電気製品の表示、HDLEDディスプレイ、LEDバックライト、景観照明、室内装飾などの分野に広く使用されている。LEDの急速な発展により、機能性銅張積層板の開発も推進されている。機能性銅張積層板と呼ばれる理由は、LEDに使用される銅張積層板は、通常の銅張積層板の絶縁などの特性を備えるほか、できるだけLED光源の光をボードの背面に通過させなく、外部からの自然光を吸収するように、優れた遮光機能を備える必要もあるからである。これにより、LEDディスプレイの透明度と解像度を向上させる。
【0003】
銅張積層板に遮光特性を付与するために、業界では、カーボンブラックを銅張積層板に添加して基板に黒色の機能を持たせることで、遮光の目的を果たすことが多い。しかしながら、カーボンブラック粒子は、粒子径が小さく、比表面積が大きく、凝集しやすいため、さまざまな媒体に安定して分散することが困難であるとともに、導電性を有して材料の絶縁性能に影響を与えやすくなる。カーボンブラックの性能は、これらの欠陥によって大幅に制限される。
【0004】
CN201010177757では、少量のカーボンブラック粉末を使用して樹脂組成物を黒くして遮光効果を発揮し、二酸化チタンを使用して遮光効果を高め、黒色の被覆フィルムを得た。しかし、カーボンブラック粉末を直接添加すると、材料の絶縁性能が低下する。
【0005】
CN201310425929では、グラフェンまたは酸化グラフェンでコーティングされた無機充填剤を添加することにより、製造した銅張積層板の絶縁性を低下させることなく、製造した銅張積層板の光透過率を大幅に低下させた。しかし、グラフェンは、価格が高くてコストが高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】中国特許第101851390号明細書
【文献】中国特許第103571156号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、銅張積層板に良好な遮光特性を付与するとともに、銅張積層板の絶縁性能に影響を与えず、良好な分散性及び低コストを有する変性カーボンブラックを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
当該変性カーボンブラックは、カーボンブラックと、変性基とを含み、前記カーボンブラックの表面には塩化アシル基が形成されており、前記変性基は、アルコールポリマーである変性ポリマーを前記塩化アシル基と反応させてグラフト化することによって形成される。
【0009】
一実施例において、前記カーボンブラックの粒子径は、5~100nmである。
【0010】
一実施例において、前記カーボンブラックの粒子径は、5~50nmである。
【0011】
本発明は、(1)液相法によりカーボンブラックに対して表面酸化変性を行った後、前記カーボンブラックの表面に塩化アシル基を形成するようにアシル化塩素化を行う工程と、(2)表面に塩化アシル基が形成されたカーボンブラックと、アルコールポリマーから選択される変性ポリマーとを混合し、変性基を形成するようにグラフト化反応をさせる工程と、を含む変性カーボンブラックの製造方法を提供する。
【0012】
一実施例において、前記カーボンブラックの粒子径は、5~100nmである。
【0013】
一実施例において、前記カーボンブラックの粒子径は、5~50nmである。
【0014】
一実施例において、工程(1)では、前記表面酸化変性は、酸化剤と前記カーボンブラックを混合し、20~30℃で反応させた後、反応により得られた固体を水で洗浄し、乾燥させる工程を含む。
【0015】
一実施例において、前記酸化剤は、硝酸、過酸化水素、及び過硫酸アンモニウムのいずれか1種である。
【0016】
一実施例において、前記酸化剤が硝酸の場合、前記反応の時間は、1.5~2.5時間であり、
【0017】
前記酸化剤が過酸化水素の場合、前記反応の時間は、95~97時間であり、
【0018】
前記酸化剤が過硫酸アンモニウムの場合、前記反応の時間は、23~25時間である。
【0019】
一実施例において、工程(1)では、前記アシル化塩素化の方法は、溶媒中において、前記表面酸化変性後のカーボンブラックを塩化チオニルと混合し、35~45℃で8~12時間反応させることである。
【0020】
一実施例において、工程(2)では、前記グラフト化反応は、溶媒中において、前記表面に塩化アシル基が形成されたカーボンブラックを変性ポリマーと混合し、50~90℃で10~30時間反応させる工程を含む。
【0021】
本発明は、さらに、上記の変性カーボンブラック又は上記の製造方法によって製造された変性カーボンブラックを含む樹脂組成物を提供する。
【0022】
一実施例において、前記樹脂組成物は、重量パーセントに基づいて、0.1%~10%の変性カーボンブラックと、30%~70%の機能性樹脂と、2%~30%の硬化剤と、20%~60%の充填剤と、0.1%~2%のカップリング剤と、0.1%~2%の硬化促進剤と、を含む原料から調製される。
【0023】
本発明は、さらに、上記の樹脂組成物をサイジング材料として使用する銅張積層板を提供する。
【発明の効果】
【0024】
従来技術と比較して、本発明は以下の有益な効果を有する。
【0025】
本発明の変性カーボンブラックによれば、変性カーボンブラックの表面に形成された塩化アシル基をアルコールポリマーである変性ポリマーとグラフト化して変性基を形成することにより、変性カーボンブラックは優れた絶縁性を有するとともに、粒子間のファンデルワールス力が小さくなり、媒体に安定して分散することができるため、この変性カーボンブラックを使用して作製した銅張積層板は、優れた絶縁性と遮光性の両方を有し、作製コストも低くなる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、具体的な実施例を参照して本発明をより詳細に説明する。本発明は、多くの異なる形態で実現されてもよく、本明細書に記載されている実施形態に限定されるものではない。その一方で、これらの実施形態を挙げる目的は、本発明の開示をさらに徹底的かつ完全に理解することである。
【0027】
他に定義されない限り、本明細書中で使用された全ての専門用語及び科学技術用語は、本発明に属する分野の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本発明の明細書で使用された用語は具体的な実施例の説明のみを目的をとし、本発明を限定することを意図していない。
【0028】
本発明の実施例は、カーボンブラックと、変性基とを含む変性カーボンブラックを提供する。
【0029】
前記カーボンブラックの表面には塩化アシル基が形成されており、前記変性基は、アルコールポリマーである変性ポリマーを前記塩化アシル基と反応させてグラフト化することによって形成される。
【0030】
特定の実施例において、前記アルコールポリマーは、ポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコールである。
【0031】
特定の実施例において、前記カーボンブラックの粒子径は、5~100nmである。好ましくは、前記カーボンブラックの粒子径は、5~50nmである。この粒子径範囲のカーボンブラックを使用することにより、より優れた遮光性能を提供できる。
【0032】
本発明の実施例は、(1)液相法によりカーボンブラックに対して表面酸化変性を行った後、前記カーボンブラックの表面に塩化アシル基を形成するようにアシル化塩素化を行う工程と、(2)表面に塩化アシル基が形成されたカーボンブラックと、アルコールポリマーである変性ポリマーとを混合し、変性基を形成するようにグラフト化反応をさせる工程と、を含む上記の変性カーボンブラックの製造方法をさらに提供する。
【0033】
塩化アシル基はアルコールポリマーと反応する場合、アルコールと反応してエステルと塩化水素を形成することが理解できる。
【0034】
特定の実施例において、工程(1)では、前記表面酸化変性は、酸化剤と前記カーボンブラックを混合し、20~30℃で反応させた後、反応により得られた固体を水で洗浄し、乾燥させる工程を含む。
【0035】
特定の実施例において、前記酸化剤は、硝酸、過酸化水素、及び過硫酸アンモニウムのいずれか1種である。具体的には、前記過酸化水素は、質量濃度が0.3%~1.0%の過酸化水素水溶液であり、前記過硫酸アンモニウムは、飽和過硫酸アンモニウム溶液であってもよい。
【0036】
特定の実施例において、前記酸化剤が硝酸の場合、前記反応の時間は、1.5~2.5時間であり、前記酸化剤が過酸化水素の場合、前記反応の時間は、95~97時間である。前記酸化剤が過硫酸アンモニウムの場合、前記反応の時間は、23~25時間である。酸化時間を合理的に制御することにより、カーボンブラックは酸化剤と完全に反応することができ、変性されたカーボンブラックの表面における酸素含有基の含有量が大幅に増加し、変性されたカーボンブラックに他の物質が残らなくなる。
【0037】
特定の実施例において、前記乾燥の方法は、温度110~130℃及び圧力0.2~0.4kPaの真空条件下で乾燥することである。
【0038】
特定の実施例において、工程(1)では、前記アシル化塩素化の方法は、溶媒中において、前記表面酸化変性後のカーボンブラックを塩化チオニルと混合し、35~45℃で8~12時間反応させることである。
【0039】
特定の実施例において、前記溶媒は、ジクロロエタンである。
【0040】
特定の実施例において、反応が完了した後、まず、溶媒を減圧下で蒸留して除去し、次に温度を50℃まで上げ、残った塩化チオニルを除去するように真空引きを行う後処理が行われる。
【0041】
特定の実施例において、工程(2)では、前記グラフト化反応は、溶媒中において、前記表面に塩化アシル基が形成されたカーボンブラックを変性ポリマーと混合し、50~90℃で10~30時間反応させる工程を含む。
【0042】
特定の実施例において、前記溶媒は、ジクロロエタンである。
【0043】
特定の実施例において、反応が完了した後、得られた固体を水で洗浄し、100~120℃で22~25時間乾燥させる後処理が行われる。
【0044】
本発明の実施例は、さらに、上記の変性カーボンブラック又は上記の製造方法によって製造された変性カーボンブラックを含む樹脂組成物を提供する。
【0045】
一実施例において、前記樹脂組成物は、重量パーセントに基づいて、0.1%~10%の変性カーボンブラックと、30%~70%の機能性樹脂と、2%~30%の硬化剤と、20%~60%の充填剤と、0.1%~2%のカップリング剤と、0.1%~2%の硬化促進剤と、を含む原料から調製される。
【0046】
具体的には、前記機能性樹脂は、脂環式エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、O-クレゾールノボラックエポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、フェノールノボラックエポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂等を含むがこれらに限定されないエポキシ樹脂、ジフェニルメタンビスマレイミド、N’-m-フェニレンビスマレイミド、ポリアミノビスマレイミド等を含むがこれらに限定されないビスマレイミド、又はビスフェノールA型ベンゾオキサジン、MDA型ベンゾオキサジン、フェノール型ベンゾオキサジン、DCPDベンゾオキサジン等を含むがこれらに限定されないベンゾオキサジンである。
【0047】
具体的には、前記硬化剤には、シアン酸エステル硬化剤、脂肪族ポリアミン硬化剤、脂環式ポリアミン硬化剤、芳香族アミン硬化剤、ポリアミド硬化剤、潜在性硬化剤、ルイス酸アミン錯体型硬化剤、酸無水物型硬化剤、フェノール型硬化剤等を含むが、これらに限定されない。
【0048】
具体的には、前記充填剤は、二酸化チタン、二酸化ケイ素、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、タルク、雲母粉末、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化モリブデン、硫酸バリウム等を含むが、これらに限定されない。
【0049】
具体的には、前記カップリング剤は、シランカップリング剤、チタン酸塩カップリング剤、アルミン酸塩カップリング剤、有機クロム錯体カップリング剤等を含むが、これらに限定されない。
【0050】
具体的には、前記硬化促進剤は、イミダゾール促進剤、過酸化物促進剤、アゾ促進剤、第三級アミン促進剤、フェノール促進剤、有機金属塩促進剤、及び無機金属塩促進剤等を含むが、これらに限定されない。
【0051】
本発明は、さらに、上記の樹脂組成物をサイジング材料として使用する銅張積層板を提供する。
【実施例】
【0052】
以下は具体例であり、特に説明しない限り、使用する原料はすべて市販品である。
【0053】
実施例で使用されたカーボンブラックの粒子径は5~50nmである。
【0054】
変性カーボンブラック1の調製:
(1)100mLの硝酸と10gのカーボンブラックを混合し、25℃で2時間反応させた。反応が完了した後、反応液をろ過し、洗浄液のpH値が一定になるまでカーボンブラックを脱イオン水で洗浄した。次に、カーボンブラックを温度120℃と圧力0.3kPaの真空オーブンで一定の質量になるまで焼いた後、密封し、乾燥下で保管して表面酸化カーボンブラックを得た。
【0055】
(2)上記の表面酸化カーボンブラック10g、塩化チオニル6mL、ジクロロエタン200mLを三口フラスコに入れ、40℃まで加熱して10時間撹拌して反応させた。反応終了後、ジクロロエタン溶媒を減圧下で蒸留して除去した。50℃まで加熱し、残った塩化チオニルを除去するように真空引きを行って、表面がアシル化塩素化された活性化カーボンブラックを得た。
【0056】
(3)活性化カーボンブラック5g、ポリエチレングリコール3g、ジクロロエタン200mLを三口フラスコに入れて撹拌し、50℃で30時間反応させた。反応終了後、ジクロロエタン溶媒を減圧下で蒸留して除去した。その後、グラフト化されたカーボンブラックを脱イオン水で繰り返し洗浄した後、110℃で24時間乾燥させた。
【0057】
変性カーボンブラック2の調製:
(1)100mLの飽和過硫酸アンモニウム溶液と10gのカーボンブラックを混合し、25℃で24時間反応させた。反応が完了した後、反応液をろ過し、洗浄液のpH値が一定になるまでカーボンブラックを脱イオン水で洗浄した。次に、カーボンブラックを温度120℃と圧力0.3kPaの真空オーブンで一定の質量になるまで焼いた後、密封し、乾燥下で保管して表面酸化カーボンブラックを得た。
【0058】
(2)上記の表面酸化カーボンブラック10g、塩化チオニル6mL、ジクロロエタン200mLを三口フラスコに入れ、40℃まで加熱して10時間撹拌して反応させた。反応終了後、ジクロロエタン溶媒を減圧下で蒸留して除去した。50℃まで加熱し、残った塩化チオニルを除去するように真空引きを行って、表面がアシル化塩素化された活性化カーボンブラックを得た。
【0059】
(3)活性化カーボンブラック5g、ポリエチレングリコール3g、ジクロロエタン溶液200mLを三口フラスコに入れて撹拌し、90℃で10時間反応させた。反応終了後、ジクロロエタン溶媒を減圧下で蒸留して除去した。その後、グラフト化されたカーボンブラックを脱イオン水で繰り返し洗浄した後、110℃で24時間乾燥させた。
【0060】
変性カーボンブラック3の調製:
(1)100mLの過酸化水素溶液と10gのカーボンブラックを混合し、25℃で96時間反応させた。反応が完了した後、反応液をろ過し、洗浄液のpH値が一定になるまでカーボンブラックを脱イオン水で洗浄した。次に、カーボンブラックを温度120℃と圧力0.3kPaの真空オーブンで一定の質量になるまで焼いた後、密封し、乾燥下で保管して表面酸化カーボンブラックを得た。
【0061】
(2)上記の表面酸化カーボンブラック10g、塩化チオニル6mL、ジクロロエタン200mLを三口フラスコに入れ、40℃まで加熱して10時間撹拌して反応させた。反応終了後、ジクロロエタン溶媒を減圧下で蒸留して除去した。50℃まで加熱し、残った塩化チオニルを除去するように真空引きを行って、表面がアシル化塩素化された活性化カーボンブラックを得た。
【0062】
(3)活性化カーボンブラック5g、ポリエチレングリコール3g、ジクロロエタン溶液200mLを三口フラスコに入れて撹拌し、70℃で20時間反応させた。反応終了後、ジクロロエタン溶媒を減圧下で蒸留して除去した。その後、グラフト化されたカーボンブラックを脱イオン水で繰り返し洗浄した後、110℃で24時間乾燥させた。
【0063】
実施例1:
5部の変性カーボンブラック1、70部のビスフェノールA型エポキシ樹脂、及び30部のフェノール型硬化剤を、質量比1:1:1で混合されたメチルエチルケトン、トルエン、及びプロピレングリコールメチルエーテルの混合溶媒に順次溶解した後、撹拌条件下で、25部の酸化アルミニウム、35部の二酸化ケイ素、2部のシランカップリング剤、及び2部の2-メチルイミダゾールを加え、均一に撹拌してサイジング溶液を調製した。
【0064】
2116グラスファイバークロス(基本重量105g/m2)をこのサイジング溶液で含浸させ、熱風循環オーブンで、180℃で3分間焼いた後、樹脂含有量が55%のプリプレグを得た。4つのプリプレグを積層し、この積層体の上面と下面のそれぞれを厚さ12μmの電解銅箔で覆った後、温度・圧力のプログラム制御が可能な真空プレス機に入れた。製品を、真空状態下で、圧力25kgf/cm2及び温度200℃の条件下で100分間硬化させた後、厚さ0.4mmの銅張積層板を作製した。
【0065】
実施例2:
5部の変性カーボンブラック1、30部のベンゾオキサジン樹脂、及び2部のフェノール型硬化剤を、質量比1:1:1で混合されたメチルエチルケトン、トルエン、及びプロピレングリコールメチルエーテルの混合溶媒に順次溶解した後、撹拌条件下で、10部の酸化アルミニウム、10部の二酸化ケイ素、0.1部のシランカップリング剤、及び0.1部の2-メチルイミダゾールを加え、均一に撹拌してサイジング溶液を調製した。
【0066】
2116グラスファイバークロス(基本重量105g/m2)をこのサイジング溶液で含浸させ、熱風循環オーブンで、180℃で3分間焼いた後、樹脂含有量が45%のプリプレグを得た。4つのプリプレグを積層し、この積層体の上面と下面のそれぞれを厚さ12μmの電解銅箔で覆った後、温度・圧力のプログラム制御が可能な真空プレス機に入れた。製品を、真空状態下で、圧力25kgf/cm2及び温度200℃の条件下で100分間硬化させた後、厚さ0.4mmの銅張積層板を作製した。
【0067】
実施例3:
0.1部の変性カーボンブラック1、50部のビスフェノールA型エポキシ樹脂、及び15部のフェノール型硬化剤を、質量比1:1:1で混合されたメチルエチルケトン、トルエン、及びプロピレングリコールメチルエーテルの混合溶媒に順次溶解した後、撹拌条件下で、25部の酸化アルミニウム、15部の二酸化ケイ素、1部のシランカップリング剤、及び1部の2-メチルイミダゾールを加え、均一に撹拌してサイジング溶液を調製した。
【0068】
2116グラスファイバークロス(基本重量105g/m2)をこのサイジング溶液で含浸させ、熱風循環オーブンで、180℃で3分間焼いた後、樹脂含有量が50%のプリプレグを得た。4つのプリプレグを積層し、この積層体の上面と下面のそれぞれを厚さ12μmの電解銅箔で覆った後、温度・圧力のプログラム制御が可能な真空プレス機に入れた。製品を、真空状態下で、圧力25kgf/cm2及び温度200℃の条件下で100分間硬化させた後、厚さ0.4mmの銅張積層板を作製した。
【0069】
実施例4:
10部の変性カーボンブラック1、70部のビスフェノールA型エポキシ樹脂、及び30部のフェノール型硬化剤を、質量比1:1:1で混合されたメチルエチルケトン、トルエン、及びプロピレングリコールメチルエーテルの混合溶媒に順次溶解した後、撹拌条件下で、25部の酸化アルミニウム、35部の二酸化ケイ素、2部のシランカップリング剤、及び2部の2-メチルイミダゾールを加え、均一に撹拌してサイジング溶液を調製した。
【0070】
2116グラスファイバークロス(基本重量105g/m2)をこのサイジング溶液で含浸させ、熱風循環オーブンで、180℃で3分間焼いた後、樹脂含有量が55%のプリプレグを得た。4つのプリプレグを積層し、この積層体の上面と下面のそれぞれを厚さ12μmの電解銅箔で覆った後、温度・圧力のプログラム制御が可能な真空プレス機に入れた。製品を、真空状態下で、圧力25kgf/cm2及び温度200℃の条件下で100分間硬化させた後、厚さ0.4mmの銅張積層板を作製した。
【0071】
実施例5:
5部の変性カーボンブラック2、70部のビスフェノールA型エポキシ樹脂、及び30部のフェノール型硬化剤を、質量比1:1:1で混合されたメチルエチルケトン、トルエン、及びプロピレングリコールメチルエーテルの混合溶媒に順次溶解した後、撹拌条件下で、25部の酸化アルミニウム、35部の二酸化ケイ素、2部のシランカップリング剤、及び2部の2-メチルイミダゾールを加え、均一に撹拌してサイジング溶液を調製した。
【0072】
2116グラスファイバークロス(基本重量105g/m2)をこのサイジング溶液で含浸させ、熱風循環オーブンで、180℃で3分間焼いた後、樹脂含有量が55%のプリプレグを得た。4つのプリプレグを積層し、この積層体の上面と下面のそれぞれを厚さ12μmの電解銅箔で覆った後、温度・圧力のプログラム制御が可能な真空プレス機に入れた。製品を、真空状態下で、圧力25kgf/cm2及び温度200℃の条件下で100分間硬化させた後、厚さ0.4mmの銅張積層板を作製した。
【0073】
実施例6:
5部の変性カーボンブラック3、70部のビスフェノールA型エポキシ樹脂、及び30部のフェノール型硬化剤を、質量比1:1:1で混合されたメチルエチルケトン、トルエン、及びプロピレングリコールメチルエーテルの混合溶媒に順次溶解した後、撹拌条件下で、25部の酸化アルミニウム、35部の二酸化ケイ素、2部のシランカップリング剤、及び2部の2-メチルイミダゾールを加え、均一に撹拌してサイジング溶液を調製した。
【0074】
2116グラスファイバークロス(基本重量105g/m2)をこのサイジング溶液で含浸させ、熱風循環オーブンで、180℃で3分間焼いた後、樹脂含有量が55%のプリプレグを得た。4つのプリプレグを積層し、この積層体の上面と下面のそれぞれを厚さ12μmの電解銅箔で覆った後、温度・圧力のプログラム制御が可能な真空プレス機に入れた。製品を、真空状態下で、圧力25kgf/cm2及び温度200℃の条件下で100分間硬化させた後、厚さ0.4mmの銅張積層板を作製した。
【0075】
比較例1:
5部の未変性カーボンブラック、70部のビスフェノールA型エポキシ樹脂、及び30部のフェノール型硬化剤を、質量比1:1:1で混合されたメチルエチルケトン、トルエン、及びプロピレングリコールメチルエーテルの混合溶媒に順次溶解した後、撹拌条件下で、25部の酸化アルミニウム、35部の二酸化ケイ素、2部のシランカップリング剤、及び2部の2-メチルイミダゾールを加え、均一に撹拌してサイジング溶液を調製した。
【0076】
2116グラスファイバークロス(基本重量105g/m2)をこのサイジング溶液で含浸させ、熱風循環オーブンで、180℃で3分間焼いた後、樹脂含有量が55%のプリプレグを得た。4つのプリプレグを積層し、この積層体の上面と下面のそれぞれを厚さ12μmの電解銅箔で覆った後、温度・圧力のプログラム制御が可能な真空プレス機に入れた。製品を、真空状態下で、圧力25kgf/cm2及び温度200℃の条件下で100分間硬化させた後、厚さ0.4mmの銅張積層板を作製した。
【0077】
比較例2:
5部の比較変性カーボンブラック(原料及び調製方法は、ポリアクリル酸が変性ポリマーとして使用されることを除いて、実施例1と同様である。)、70部のビスフェノールA型エポキシ樹脂、及び30部のフェノール型硬化剤を、質量比1:1:1で混合されたメチルエチルケトン、トルエン、及びプロピレングリコールメチルエーテルの混合溶媒に順次溶解した後、撹拌条件下で、25部の酸化アルミニウム、35部の二酸化ケイ素、2部のシランカップリング剤、及び2部の2-メチルイミダゾールを加え、均一に撹拌してサイジング溶液を調製した。
【0078】
2116グラスファイバークロス(基本重量105g/m2)をこのサイジング溶液で含浸させ、熱風循環オーブンで、180℃で3分間焼いた後、樹脂含有量が55%のプリプレグを得た。4つのプリプレグを積層し、この積層体の上面と下面のそれぞれを厚さ12μmの電解銅箔で覆った後、温度・圧力のプログラム制御が可能な真空プレス機に入れた。製品を、真空状態下で、圧力25kgf/cm2及び温度200℃の条件下で100分間硬化させた後、厚さ0.4mmの銅張積層板を作製した。
【0079】
実施例1~6及び比較例1~2で製造された銅張積層板に対して性能試験を行った。
【0080】
(1)試験方法は次のとおりである。
色:目視検査。
ガラス転移温度(TG):IPC-TM6502.4.25に従って測定した。
光透過率:光透過率測定器を使用して測定した。
体積抵抗と表面抵抗:IPC-TM6502.5.17.1に従って測定した。
分散性:変性カーボンブラックと未変性カーボンブラックの水溶液を、遠心分離機で60分間遠心分離する前後の光透過率を測定した。遠心分離前後の光透過率の差が大きいほど、分散が不均一になり、即ち、分散性が悪くなる。
【0081】
(2)試験結果は、以下の表1に示される。
【0082】
【0083】
上述した実施例の各技術的特徴は任意に組み合わせることができる。記述の簡潔化のために、上述した実施例における各技術的特徴のあらゆる組合せについて説明していないが、これらの技術的特徴の組合せは矛盾しない限り、本明細書に記述されている範囲内であると考えられるべきである。
【0084】
上述した実施例は、本発明のいくつかの実施形態を示したものにすぎず、その記述が具体的且つ詳細であるが、特許請求の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。なお、当業者にとって、本発明の趣旨から逸脱しない限り、若干の変形及び改良を行うことができ、これらもすべて本発明の保護範囲内に含まれる。したがって、本発明の保護範囲は、特許請求の範囲に準ずるべきである。