(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】結合剤及び固着体
(51)【国際特許分類】
C09J 133/14 20060101AFI20240321BHJP
C09J 129/06 20060101ALI20240321BHJP
C09J 129/02 20060101ALI20240321BHJP
C09J 133/02 20060101ALI20240321BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
C09J133/14
C09J129/06
C09J129/02
C09J133/02
C09J11/04
(21)【出願番号】P 2022505013
(86)(22)【出願日】2021-01-19
(86)【国際出願番号】 JP2021001633
(87)【国際公開番号】W WO2021176866
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2022-04-12
(31)【優先権主張番号】P 2020035947
(32)【優先日】2020-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100223424
【氏名又は名称】和田 雄二
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 智成
(72)【発明者】
【氏名】川田 雄一
【審査官】仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-312714(JP,A)
【文献】特開2005-060665(JP,A)
【文献】特表平10-509485(JP,A)
【文献】特開2016-044253(JP,A)
【文献】特開2017-052843(JP,A)
【文献】特開平01-203449(JP,A)
【文献】特開2016-098285(JP,A)
【文献】特開昭59-126000(JP,A)
【文献】特開2012-136412(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 133/14
C09J 129/06
C09J 129/02
C09J 133/02
C09J 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基を有する重合体を含む結合剤であって、
前記重合体は不飽和カルボン酸系単量体由来の構造単位、及び、2-ヒドロキシエチルアクリレート、アリルアルコール及びイソプレノールからなる群より選ばれる少なくとも1種の水酸基含有単量体由来の構造単位を含み、
前記水酸基含有単量体由来の構造単位の含有量は、前記重合体全量を基準として、5~50mol%であり、
前記重合体の重量平均分子量は
3000~4500であり、且つ
pHが6.5以下である結合剤。
【請求項2】
前記不飽和カルボン酸系単量体がアクリル酸である、請求項1に記載の結合剤。
【請求項3】
無機フィラーと、該無機フィラーを固着する請求項1又は2に記載の結合剤の硬化物と、を備える固着体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結合剤及び固着体に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス繊維等に結合剤を付着させ、マット状に成形した耐熱性成形体が、住居や倉庫、装置や機器等の断熱材等として広く使用されている。上記結合剤としては、フェノール-ホルムアルデヒド結合剤が広く使用されている。しかし、フェノール-ホルムアルデヒド結合剤は、未反応のホルムアルデヒドが成形体に残留し、住居等の施工後にホルムアルデヒドが放出されるという問題がある。よって、ホルムアルデヒドを放出することがない結合剤が検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、ホルムアルデヒドを放出することがないバインダーとして、有機酸(塩)基及び水酸基を有し、重量平均分子量が500~100000のビニル共重合体からなる鉱物繊維用バインダーが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、結合剤をガラス繊維等に付着させて得られる耐熱性成形体は、高い強度を有することが望ましい。また、耐熱性成形体中の強度のバラツキを減らすために、結合剤は、ガラス繊維等に対する高い含浸性を有することが望ましい。しかし、高強度及び高含浸性を両立させることは従来困難であった。
【0006】
そこで本発明は、十分に高い強度及び含浸性を両立させることが可能な結合剤、及びこれを用いた固着体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記事情に鑑み、本発明者等は鋭意検討を重ねた結果、以下の[1]~[3]に示す発明を完成させた。
[1] 水酸基を有する重合体を含む結合剤であって、
重合体は不飽和カルボン酸系単量体由来の構造単位、及び、2-ヒドロキシエチルアクリレート、アリルアルコール及びイソプレノールからなる群より選ばれる少なくとも1種の水酸基含有単量体由来の構造単位を含み、
水酸基含有単量体由来の構造単位の含有量は、重合体全量を基準として、5~50mol%であり、
重合体の重量平均分子量は1000~5000であり、且つ
pHが6.5以下である結合剤。
[2] 不飽和カルボン酸系単量体がアクリル酸である、[1]に記載の結合剤。
[3] 無機フィラーと、該無機フィラーを固着する[1]又は[2]に記載の結合剤の硬化物と、を備える固着体。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、十分に高い強度及び含浸性を両立させることが可能な結合剤、及びこれを用いた固着体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、本明細書中、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」又は「メタクリレート」を意味する。「(メタ)アクリル酸」等の他の類似表現においても同様である。
【0010】
<結合剤>
本実施形態の結合剤は、水酸基を有する重合体を含む。当該重合体は、不飽和カルボン酸系単量体由来の構造単位、及び、水酸基含有単量体由来の構造単位を含む。以下、詳細に説明する。
【0011】
本実施形態の不飽和カルボン酸系単量体は、炭素-炭素二重結合及びカルボン酸部位を有するものであればよいが、例えば、下記一般式(1)で表される不飽和カルボン酸系単量体が挙げられる。
【0012】
【化1】
[一般式(1)中、R
1、R
2、及びR
3は、同一又は異なって、水素原子、メチル基、又は-(CH
2)
zCOOM
1基を表し、-(CH
2)
zCOOM
1基は-COOX基又は他の-(CH
2)
zCOOM
1基と無水物を形成していてもよく、zは0~2の整数であり、M
1は、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、又は有機アミン基を表し、Xは、水素原子、メチル基、エチル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、又は有機アミン基を表す。]
【0013】
一般式(1)で表される不飽和カルボン酸系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸系単量体又はこれらの塩;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等のジカルボン酸系単量体又はこれらの塩;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等のジカルボン酸系単量体の無水物又はこれらの塩;等が挙げられる。ここでいう塩としては、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、有機アンモニウム塩、有機アミン塩等が挙げられる。アルカリ金属塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。アルカリ土類金属塩としては、例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩等が挙げられる。有機アンモニウム塩としては、例えば、メチルアンモニウム塩、エチルアンモニウム塩、ジメチルアンモニウム塩、ジエチルアンモニウム塩、トリメチルアンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩等が挙げられる。有機アミン塩としては、例えば、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等のアルカノールアミン塩等が挙げられる。
【0014】
一般式(1)で表される不飽和カルボン酸系単量体としては、本発明の効果を一層発現させ得る点で、好ましくは、(メタ)アクリル酸又はこの塩、マレイン酸又はこの塩、無水マレイン酸であり、より好ましくは、アクリル酸又はこの塩、マレイン酸又はこの塩であり、更に好ましくは、アクリル酸である。
【0015】
不飽和カルボン酸系単量体は、1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
【0016】
本実施形態の水酸基含有単量体は、2-ヒドロキシエチルアクリレート、アリルアルコール及びイソプレノールからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、2-ヒドロキシエチルアクリレートであると好ましい。
【0017】
本実施形態の重合体における水酸基含有単量体由来の構造単位の含有量は、5~50mol%であり、10~45mol%であると好ましく、20~40mol%であるとより好ましい。
【0018】
本実施形態の重合体の重量平均分子量は、1000~5000であり、2000~5000であると好ましく、3000~4500であるとより好ましい。重量平均分子量は、例えば、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0019】
本実施形態の重合体は、上述の不飽和カルボン酸系単量体及び水酸基含有単量体を、従来公知の方法で重合させることにより得ることができる。例えば、上述の不飽和カルボン酸系単量体及び水酸基含有単量体を、水中、重合開始剤及び連鎖移動剤の存在下で、加熱還流条件で重合させる溶液重合法等により製造された重合体を用いることが好ましい。重合開始剤としては、過硫酸ナトリウムが好ましい。連鎖移動剤としては、次亜リン酸ナトリウム又は重硫酸ナトリウムが好ましい。
【0020】
本実施形態の結合剤は、上述の水酸基を有する重合体を含む水溶液とすることができる。当該水溶液のpHは6.5以下であり、1以上5未満であると好ましく、1.5以上4.5以下であるとより好ましく、2以上4未満であると更に好ましい。
【0021】
本実施形態の結合剤における水酸基含有単量体の含有量は、例えば10~90質量%、好ましくは15~80質量%、より好ましくは20~70質量%とすることができる。
【0022】
本実施形態の結合剤は、上述の重合体以外のその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、防錆剤、硬化促進剤、架橋剤等が挙げられる。
【0023】
防錆剤としては、例えば、アゾール系防錆剤、ベンゾトリアゾール系防錆剤、テトラゾール系防錆剤、イミダゾール系防錆剤、ベンゾイミダゾール系防錆剤、ナフトイミダゾール系防錆剤、チアゾール系防錆剤、チオカルバミン酸系防錆剤等が挙げられる。これらは1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
【0024】
硬化促進剤としては、例えば、リン含有化合物、プロトン酸(硫酸、カルボン酸、炭酸等)、及びその塩(金属(アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、2B族、4A族、4B族、5B族等)塩、アンモニウム塩等)、金属(上記のもの)の、酸化物、塩化物、水酸化物、アルコキシド等が挙げられる。リン含有化合物としては、例えば、次亜リン酸(塩)、亜リン酸(塩)、リン酸(塩)、ピロリン酸(塩)、ポリリン酸(塩)、有機リン酸(塩)等の酸基含有化合物(なお、これらの水和物も含まれる);トリメチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィンオキシド等の有機リン化合物等が挙げられる。これらは1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
【0025】
架橋剤としては、一分子中に、水酸基及び/又はアミノ基を2以上有する化合物等を用いることができる。好ましい架橋剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ブチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等のアルカンジオール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール等の(ポリ)オキシアルキレングリコール;グリセリン、ポリグリセリン、エリトリトール、キシリトール、ソルビトール等の三価以上のアルコール;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等のポリアミン;該ポリアミンにアルキレンオキシドが付加したポリオール等が挙げられる。これらは1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
【0026】
上述の結合剤は、無機フィラー又は有機フィラーの固着に好適に用いることができる。また、上述の結合剤は、断熱材用結合剤として好適に用いることができる。
【0027】
無機フィラーとしては、例えば、ガラス繊維、ロックウール、カーボン繊維等の無機繊維;粉末ガラス、ガラス粒子(ガラスビーズ)、鉱物粒子等の無機粒子(無機粉体)等が挙げられる。これらの中で、固着体が断熱材等として広く適用可能である点から、ガラス繊維又は粉末ガラスであることが好ましい。
【0028】
有機フィラーとしては、例えば、羊毛、セルロース、麻、ナイロン、ポリエステル等の有機物の繊維;ナイロン微粒子、ポリエステル微粒子等の有機物の粒子(有機物の粉体)等が挙げられる。
【0029】
<固着体>
本実施形態の固着体は、無機フィラーと、該無機フィラーを固着する上述の結合剤の硬化物とを備える。無機フィラーとしては、上述のものを用いることができる。固着体は、例えば、後述する固着体の製造方法により製造することができる。
【0030】
<固着体の製造方法>
本実施形態の固着体の製造方法は、結合剤及び無機フィラーを接触させて中間体を得る接触工程と、当該中間体を加熱する加熱工程とを備える。結合剤及び無機フィラーとしては、それぞれ上述のものを用いることができる。
【0031】
結合剤を無機フィラーに接触させる方法としては、例えば、無機フィラーを結合剤に含浸させる方法、無機フィラーに結合剤を散布する方法等が挙げられる。これらの中で、結合剤の付着量を調節しやすい点から、無機フィラーに結合剤を散布する方法が好ましい。なお、結合剤の付着量とは、接触工程後に実際に無機フィラーに付着した結合剤の量をいう。
【0032】
結合剤の付着量は、無機フィラー100質量部に対して、固形分換算で1~40質量部であることが好ましく、1~30質量部であることがより好ましく、1~15質量部であることが更に好ましい。結合剤の付着量が上記範囲であると、製造される固着体の機械強度が向上する傾向にある。
【0033】
加熱工程においては、中間体を加熱することにより、少なくとも中間体中のカルボキシル基含有重合体を硬化させて、全体として中間体を硬化させる。加熱工程における加熱温度及び加熱時間は、例えば100~300℃及び1~120分とすることができるが、操作性の観点から、低温短時間で行うことが好ましい。例えば、加熱温度は、120~250℃であることが好ましく、140~230℃であることがより好ましく、150~200℃であることが更に好ましい。また、加熱時間は、1~60分であることが好ましく、及び1~45分であることがより好ましく、1~30分であることが更に好ましい。
【実施例】
【0034】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0035】
実施例及び比較例で得られた重合体水溶液(結合剤)は、以下の方法で評価した。その結果を表1に示す。
【0036】
<重量平均分子量、数平均分子量、分散度の測定条件>
重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分散度(Mw/Mn)は、下記条件にて測定した。
装置:東ソー製 HLC-8320GPC
検出器:RI
カラム:東ソー製 TSK-GEL G3000PWXL
カラム温度:35℃
流速:0.5ml/min
検量線:創和科学社製 POLY SODIUM ACRYLATE STANDARD
溶離液:リン酸二水素ナトリウム12水和物/リン酸水素二ナトリウム2水和物(34.5g/46.2g)の混合物を純水にて5000gに希釈した溶液。
【0037】
<重合完結後の重合体水溶液の固形分測定方法>
130℃に加熱したオーブンで重合体水溶液を60分間放置して乾燥処理した。乾燥前後の重量変化から、重合完結後の重合体水溶液の固形分(%)を算出した。
【0038】
<試験片の作製>
機械強度測定用の試験片は以下のようにして作製した。
(i)重合体水溶液に純水を添加し、重合体成分が35%となるように調整した。
(ii)粒径0.50~0.150mmのガラスビーズに、(i)で得られた結合剤を、重合体成分がガラスビーズ重量の5.0%となるように添加し、十分に混合した。
(iii)離型処理した120mm×20mm×5mmの型枠に(ii)で得られた混合物を押し入れて成型し、210℃のオーブンで30分間乾燥後、室温下で30分冷却することで試験片を得た。
【0039】
<試験片の機械強度>
上記試験片について、JISK7171に準じ、2mm/minの試験速度で曲げ強さを測定した。試験片3枚の曲げ強さを測定し、平均値を算出した。また、その時の値の標準偏差を算出し、値のバラツキの確認を行った。
曲げ強度は、15MPa以上であると好ましく、17.5MPa以上であるとより好ましく、20MPa以上であると更に好ましい。
標準偏差は、1.5以下であると好ましく、1.0以下であるとより好ましく、0.5以下であると更に好ましい。
【0040】
<ガラスビーズに対する含浸性評価方法>
直径120mmのシャーレーに粒径0.50~0.150mmのガラスビーズ30gを高さが均一になるようにし、そこに重合体成分35%に調整した重合体水溶液3gをシャーレーの中心部にゆっくり滴下した。滴下完了後、経過時間10秒後のガラスビーズ上の重合体水溶液の広がり面積を算出した。以下の基準で、面積を分類し、含浸性を評価した。
◎:25cm2以上
○:20cm2以上25cm2未満
△:15cm2以上20cm2未満
×:15cm2未満
【0041】
<pH測定方法>
重合体水溶液に純水を添加して固形分35%に調整した水溶液(25℃調整)について、pHメータ(HORIBA D-51)を用いてpH値を測定した。
【0042】
<実施例1>
還流冷却機、攪拌機、温度計を備えた容量0.5リットルのガラス製セパラブルフラスコに、純水132.2gを仕込み(初期仕込)、攪拌下、沸点まで昇温した。次いで、攪拌下、沸点還流状態の重合反応系中に、80質量%アクリル酸水溶液(以下「80%AA」と称する)138.6g(1.54mol)を180分間、100質量%ヒドロキシエチルアクリレート(以下「100%HEA」と称する)74.1g(0.64mol)を180分間、5質量%過硫酸ナトリウム水溶液(以下「5%NaPS」と称する)33.8gを195分間、15質量%次亜リン酸ナトリウム水溶液(以下「15%SHP」と称する)13.8gを18分間とさらに続いて55.4.gを162分間と2段階の供給速度で、それぞれ別々の供給経路を通じて先端ノズルより滴下した。それぞれの成分の滴下は、15%SHP以外は一定の滴下速度で連続的に行った。80%AAの滴下終了後、さらに30分間に渡って反応溶液を沸点還流状態に保持(熟成)した。得られた重合体水溶液の固形分は44.8%、重量平均分子量(Mw)は4300、重合体中の残存モノマー量は5ppm以下であることをLCにより確認した。
【0043】
<実施例2>
還流冷却機、攪拌機、温度計を備えた容量0.5リットルのガラス製セパラブルフラスコに、純水162.7gを仕込み(初期仕込)、攪拌下、沸点まで昇温した。次いで、攪拌下、沸点還流状態の重合反応系中に、80%AA138.6g(1.54mol)を180分間、100%HEA69.0g(0.59mol)を180分間、5%NaPS33.1gを195分間、15%SHP16.2gを18分間とさらに続いて64.5gを162分間と2段階の供給速度で、それぞれ別々の供給経路を通じて先端ノズルより滴下した。それぞれの成分の滴下は、15%SHP以外は一定の滴下速度で連続的に行った。80%AAの滴下終了後、さらに30分間に渡って反応溶液を沸点還流状態に保持(熟成)した。得られた重合体水溶液の固形分は39.7%、重量平均分子量(Mw)は3500、重合体中の残存モノマー量は5ppm以下であることをLCにより確認した。
【0044】
<実施例3>
還流冷却機、攪拌機、温度計を備えた容量0.5リットルのガラス製セパラブルフラスコに、純水135.2gを仕込み(初期仕込)、攪拌下、沸点まで昇温した。次いで、攪拌下、沸点還流状態の重合反応系中に、80%AA138.6g(1.54mol)を180分間、100%HEA74.1g(0.64mol)を180分間、5%NaPS33.8gを195分間、15質量%次亜リン酸ナトリウム水溶液(以下「15%SHP」と称する)12.9gを18分間とさらに続いて51.7gを162分間と2段階の供給速度で、それぞれ別々の供給経路を通じて先端ノズルより滴下した。それぞれの成分の滴下は、15%SHP以外は一定の滴下速度で連続的に行った。80%AAの滴下終了後、さらに30分間に渡って反応溶液を沸点還流状態に保持(熟成)した。得られた重合体水溶液の固形分は44.9%、重量平均分子量(Mw)は4800、重合体中の残存モノマー量は5ppm以下であることをLCにより確認した。
【0045】
<実施例4>
還流冷却機、攪拌機、温度計を備えた容量0.5リットルのガラス製セパラブルフラスコに、純水200.3gを仕込み(初期仕込)、攪拌下、沸点まで昇温した。次いで、攪拌下、沸点還流状態の重合反応系中に、80%AA118.9g(1.32mol)を180分間、100%HEA102.1g(0.88mol)を180分間、5%NaPS34.1gを195分間、15%SHP13.0gを18分間とさらに続いて52.0gを162分間と2段階の供給速度で、それぞれ別々の供給経路を通じて先端ノズルより滴下した。それぞれの成分の滴下は、15%SHP以外は一定の滴下速度で連続的に行った。80%AAの滴下終了後、さらに30分間に渡って反応溶液を沸点還流状態に保持(熟成)した。得られた重合体水溶液の固形分は40.9%、重量平均分子量(Mw)は4900、重合体中の残存モノマー量は5ppm以下であることをLCにより確認した。
【0046】
<実施例5>
還流冷却機、攪拌機、温度計を備えた容量0.5リットルのガラス製セパラブルフラスコに、純水149.5gを仕込み(初期仕込)、攪拌下、沸点まで昇温した。次いで、攪拌下、沸点還流状態の重合反応系中に、80%AA149.9g(1.66mol)を180分間、100%HEA49.5g(0.43mol)を180分間、5%NaPS33.1gを195分間、15%SHP15.2gを18分間とさらに続いて60.6gを162分間と2段階の供給速度で、それぞれ別々の供給経路を通じて先端ノズルより滴下した。それぞれの成分の滴下は、15%SHP以外は一定の滴下速度で連続的に行った。80%AAの滴下終了後、さらに30分間に渡って反応溶液を沸点還流状態に保持(熟成)した。得られた重合体水溶液の固形分は40.5%、重量平均分子量(Mw)は3800、重合体中の残存モノマー量は5ppm以下であることをLCにより確認した。
【0047】
<実施例6>
還流冷却機、攪拌機、温度計を備えた容量0.5リットルのガラス製セパラブルフラスコに、純水93.8gを仕込み(初期仕込)、攪拌下、85℃まで昇温した。次いで、攪拌下、85℃保持状態の重合反応系中に、80%AA111.2g(1.23mol)を120分間、100%HEA88.8g(0.77mol)を120分間、5%NaPS29.2gを180分間、48質量%水酸化ナトリウム水溶液(以下「48%NaOH」と称する)5.8gを120分間、20質量%重硫酸ナトリウム水溶液(以下「20%SBS」と称する)75.8gを110分間の供給速度で、それぞれ別々の供給経路を通じて先端ノズルより滴下した。それぞれの成分の滴下は全て一定の滴下速度で連続的に行った。80%AAの滴下終了後、さらに90分間に渡って反応溶液を沸点還流状態に保持(熟成)した。得られた重合体水溶液の固形分は47.6%、重量平均分子量(Mw)は4600、重合体中の残存モノマー量は5ppm以下であることをLCにより確認した。
【0048】
<実施例7>
還流冷却機、攪拌機、温度計を備えた容量0.5リットルのガラス製セパラブルフラスコに、純水112.0gを仕込み(初期仕込)、攪拌下、沸点まで昇温した。次いで、攪拌下、沸点還流状態の重合反応系中に、80%AA160.0g(1.78mol)を180分間、100%イソプレノール38.2g(0.44mol)を180分間、5%NaPS73.9gを195分間、15%SHP12.6gを18分間とさらに続いて50.2gを162分間と2段階の供給速度で、それぞれ別々の供給経路を通じて先端ノズルより滴下した。それぞれの成分の滴下は、15%SHP以外は一定の滴下速度で連続的に行った。80%AAの滴下終了後、さらに30分間に渡って反応溶液を沸点還流状態に保持(熟成)した。得られた重合体水溶液の固形分は40.2%、重量平均分子量(Mw)は4300、重合体中の残存モノマー量は5ppm以下であることをLCにより確認した。
【0049】
<実施例8>
還流冷却機、攪拌機、温度計を備えた容量0.5リットルのガラス製セパラブルフラスコに、純水115.5gを仕込み(初期仕込)、攪拌下、沸点まで昇温した。次いで、攪拌下、沸点還流状態の重合反応系中に、80%AA165.0g(1.83mol)を180分間、100%アリルアルコール45.6g(0.79mol)を180分間、5%NaPS62.3gを195分間、15%SHP14.8gを18分間とさらに続いて59.2gを162分間と2段階の供給速度で、それぞれ別々の供給経路を通じて先端ノズルより滴下した。それぞれの成分の滴下は、15%SHP以外は一定の滴下速度で連続的に行った。80%AAの滴下終了後、さらに30分間に渡って反応溶液を沸点還流状態に保持(熟成)した。得られた重合体水溶液の固形分は41.5%、重量平均分子量(Mw)は4900、重合体中の残存モノマー量は5ppm以下であることをLCにより確認した。
【0050】
<比較例1>
還流冷却機、攪拌機、温度計を備えた容量0.5リットルのガラス製セパラブルフラスコに、純水185.3gを仕込み(初期仕込)、攪拌下、沸点まで昇温した。次いで、攪拌下、沸点還流状態の重合反応系中に、80%AA138.6g(1.54mol)を180分間、100%HEA69.0g(0.59mol)を180分間、5%NaPS33.1gを195分間、15%SHP8.9gを18分間とさらに続いて35.5gを162分間と2段階の供給速度で、それぞれ別々の供給経路を通じて先端ノズルより滴下した。それぞれの成分の滴下は、15%SHP以外は一定の滴下速度で連続的に行った。80%AAの滴下終了後、さらに30分間に渡って反応溶液を沸点還流状態に保持(熟成)した。得られた重合体水溶液の固形分は41.0%、重量平均分子量(Mw)は9500、重合体中の残存モノマー量は5ppm以下であることをLCにより確認した。
【0051】
<比較例2>
還流冷却機、攪拌機、温度計を備えた容量0.5リットルのガラス製セパラブルフラスコに、純水272.4gを仕込み(初期仕込)、攪拌下、沸点まで昇温した。次いで、攪拌下、沸点還流状態の重合反応系中に、80%AA79.3g(0.88mol)を180分間、100%HEA153.1g(1.32mol)を180分間、5%NaPS34.1gを195分間、15%SHP11.0gを18分間とさらに続いて44.0gを162分間と2段階の供給速度で、それぞれ別々の供給経路を通じて先端ノズルより滴下した。それぞれの成分の滴下は、15%SHP以外は一定の滴下速度で連続的に行った。80%AAの滴下終了後、さらに30分間に渡って反応溶液を沸点還流状態に保持(熟成)した。得られた重合体水溶液の固形分は37.8%、重量平均分子量(Mw)は5600、重合体中の残存モノマー量は5ppm以下であることをLCにより確認した。
【0052】
<比較例3>
還流冷却機、攪拌機、温度計を備えた容量0.5リットルのガラス製セパラブルフラスコに、純水114.1gを仕込み(初期仕込)、攪拌下、沸点まで昇温した。次いで、攪拌下、沸点還流状態の重合反応系中に、80%AA126.0g(1.40mol)を180分間、100%HEMA70.2g(0.54mol)を180分間、5%NaPS30.1gを195分間、15%SHP15.7gを18分間とさらに続いて62.7gを162分間と2段階の供給速度で、それぞれ別々の供給経路を通じて先端ノズルより滴下した。それぞれの成分の滴下は、15%SHP以外は一定の滴下速度で連続的に行った。80%AAの滴下終了後、さらに30分間に渡って反応溶液を沸点還流状態に保持(熟成)した。得られた重合体水溶液の固形分は45.6%、重量平均分子量(Mw)は4800、重合体中の残存モノマー量は5ppm以下であることをLCにより確認した。
【表1】