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▶ ノータ ラボラトリーズ,リミティド ライアビリティ カンパニーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】一酸化窒素発生システム
(51)【国際特許分類】
   A61M 15/00 20060101AFI20240321BHJP
   A61M 16/06 20060101ALI20240321BHJP
   A61M 16/10 20060101ALI20240321BHJP
   A61M 16/12 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
A61M15/00 Z
A61M16/06 A
A61M16/10 Z
A61M16/12
【請求項の数】 34
(21)【出願番号】P 2022512774
(86)(22)【出願日】2020-04-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-27
(86)【国際出願番号】 US2020027739
(87)【国際公開番号】W WO2021040813
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】62/891,129
(32)【優先日】2019-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522070503
【氏名又は名称】ノータ ラボラトリーズ,リミティド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100197169
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 潤二
(72)【発明者】
【氏名】グレン マーティン
(72)【発明者】
【氏名】オーロラ エル.フェルナンデス デカストロ
(72)【発明者】
【氏名】マーク イー.メイヤーホフ
【審査官】関本 達基
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-506419(JP,A)
【文献】特開2003-210553(JP,A)
【文献】特表2007-537267(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0112193(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0209663(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0207323(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 15/00
A61M 16/06
A61M 16/10
A61M 16/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一酸化窒素(NO)発生システムであって、以下:
NO発生製剤であり、
安定NO供与体/付加体、
親水性バインダー、及び
添加剤
を含み、ここで前記添加剤が、前記製剤が有効量の水、水蒸気、又は青色光又は紫外(UV)光に暴露された後の前記安定NO供与体/付加体からのNOの放出速度を制御するためのものである、NO発生製剤と;
前記NO発生製剤と動作可能に接触している、使用者の口又は鼻のうちの少なくとも一方に有効に近接してNO発生製剤を保持するためのハウジングを含むフェイスマスクを備える吸入デバイスと、
を含む、一酸化窒素(NO)発生システム。
【請求項2】
前記NO発生製剤がさらに潤滑剤を含む、請求項1に記載のNO発生システム。
【請求項3】
前記安定NO供与体/付加体が、前記NO発生製剤の3wt%~12wt%の量で存在するS-ニトロソチオール(RSNO)粉末であり、
前記親水性バインダーが前記NO発生製剤の15wt%~82wt%の量で存在し、
前記潤滑剤が前記NO発生製剤の1wt%~15wt%の量で存在し、そして、
前記添加剤が前記NO発生製剤の3wt%~60wt%の量で存在する、
請求項2に記載のNO発生システム。
【請求項4】
前記潤滑剤が、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸亜鉛、パルミチン酸ナトリウム、パルミチン酸亜鉛、パルミチン酸アスコルビル、及びこれらの組み合わせから成る群から選択された界面活性剤である、請求項2に記載のNO発生システム。
【請求項5】
前記NO発生製剤がさらに、塩化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、塩化カルシウム、微結晶セルロース、二酸化ケイ素、及びこれらの組み合わせから成る群から選択された不活性材料を含む、請求項1に記載のNO発生システム。
【請求項6】
前記不活性材料が前記NO発生製剤の0wt%超~50wt%の量で存在する、請求項5に記載のNO発生システム。
【請求項7】
前記安定NO供与体/付加体と添加剤との比(mol/mol)が1:0.5~1:10である、請求項1に記載のNO発生システム。
【請求項8】
前記NO発生製剤が単一固体を含む、請求項1に記載のNO発生システム。
【請求項9】
前記NO発生製剤が複数の前記単一固体を含む、請求項に記載のNO発生システム。
【請求項10】
前記ハウジングが選択的に開閉する、請求項1に記載のNO発生システム。
【請求項11】
前記ハウジングがさらに、
NO発生製剤と動作可能に接触している空気加湿器と、
前記空気加湿器と流体連通している空気ポンプと、
前記空気加湿器及び前記空気ポンプに動作可能に接続された電力源と
を含む、請求項1に記載のNO発生システム。
【請求項12】
前記ハウジングがリザーバを部分的に画定しており、そして前記システムはさらに、前記フェイスマスクの内部と前記リザーバの内部との間に位置決めされたリザーバ壁又はフィルタを含む、請求項1に記載のNO発生システム。
【請求項13】
前記リザーバ壁又は前記フィルタが水和液不透過性であり、且つNO透過性である、請求項12に記載のNO発生システム。
【請求項14】
前記リザーバが、前記NO発生製剤が溶解された所定の体積の水和液を受容するようになっている、請求項12に記載のNO発生システム。
【請求項15】
前記リザーバ内部に含有される吸収材料をさらに含む、請求項12に記載のNO発生システム。
【請求項16】
前記システムがさらに、前記フェイスマスクの内部と前記リザーバの内部との間に位置決めされた前記フィルタを含み、そして前記フィルタが、前記NO発生製剤によって放出された二酸化窒素(NO)をスカベンジするための吸収剤、発生したNOを変化させてNOに戻すための試薬、又はこれらの組み合わせを含む、請求項12に記載のNO発生システム。
【請求項17】
前記NO発生製剤がNO透過性容器内部に含有されており、そして
前記NO透過性容器が、前記フェイスマスクに貼り付けられることなしに前記フェイスマスク内に配置されるようになっている、
請求項に記載のNO発生システム。
【請求項18】
前記吸入デバイスがさらに、
前記フェイスマスクに動作可能に接続された空気ポンプと、
前記空気ポンプと流体連通している空気加湿器と、
NO発生製剤を保持するための容器であって、前記容器が前記空気加湿器及び前記フェイスマスクと流体連通している、容器と
を含む、請求項に記載のNO発生システム。
【請求項19】
前記吸入デバイスが、さらに
前記容器と流体連通しているガス混合器と、
前記ガス混合器に動作可能に接続された第2空気ポンプと、
前記ガス混合器と前記フェイスマスクとの間に動作可能に接続されたNOセンサと、
前記NOセンサ及び前記ガス混合器に動作可能に接続されたフィードバックコントローラと
を含む、請求項18に記載の湿分活性化型NO発生システム。
【請求項20】
前記安定NO供与体/付加体が青色光又は紫外(UV)光で活性化可能であり、そして前記システムがさらに前記NO発生製剤を照明するように位置決めされた青色光源又はUV光源を含む、請求項1に記載のNO発生システム。
【請求項21】
前記NO発生製剤及び前記青色光源又はUV光源が、前記吸入デバイス上又は吸入デバイス内に位置決めされている、請求項20に記載のNO発生システム。
【請求項22】
前記青色光源又はUV光源が発光ダイオードである、請求項20に記載のNO発生システム。
【請求項23】
前記青色光源又はUV光源が300nm~520nmの光波長を種々の強度で発光する、請求項20に記載のNO発生システム。
【請求項24】
さらに、
前記青色光源又はUV光源に動作可能に接続された制御電子素子と
前記制御電子素子に動作可能に接続されたバッテリーと
を含む、請求項20に記載のNO発生システム。
【請求項25】
さらにNOセンサ、二酸化窒素センサ、又はこれらの組み合わせを含む、請求項20に記載のNO発生システム。
【請求項26】
前記吸入デバイスが、
空気ポンプと、
前記空気ポンプと流体連通している空気加湿器と、
前記空気加湿器と流体連通している、NO発生製剤を保持する容器と、
前記容器と流体連通している鼻カニューレ又はベンチレータと
を含む吸入システムを含む、請求項1に記載のNO発生システム。
【請求項27】
NO発生製剤が単一固形物又は複数の単一固形物を含む、請求項26に記載のNO発生システム。
【請求項28】
前記吸入システムがさらに、
前記容器と流体連通しているガス混合器と、
前記ガス混合器に動作可能に接続された第2空気ポンプと、
前記ガス混合器と前記鼻カニューレ又はベンチレータとの間に動作可能に接続されたNOセンサと、
前記NOセンサ及び前記ガス混合器に動作可能に接続されたフィードバックコントローラと、
を含む、請求項26に記載のNO発生システム。
【請求項29】
前記添加剤は、還元グルタチオン、システイン、アスコルビン酸又はアスコルビン酸塩、パルミチン酸アスコルビル、銅イオン、亜鉛イオン、亜鉛酸化物粒子、有機セレン種、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項1に記載のNO発生システム。
【請求項30】
前記有機セレン種が、セレノシステイン及びエブセレンから成る群から選択される、請求項29に記載のNO発生システム。
【請求項31】
前記安定NO供与体/付加体が、S-ニトロソグルタチオン(GSNO)、S-ニトロソ-システイン、S-ニトロソ-N-アセチルペニシラミン、S-ニトロソ-ペニシラミン、及びS-ニトロソ-アルブミンから成る群から選択されたRSNO粉末である、請求項1に記載のNO発生システム。
【請求項32】
前記安定NO供与体/付加体がニトロプルシドである、請求項1に記載のNO発生システム。
【請求項33】
前記親水性バインダーが、ポリビニルアセテート(PVA)、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリアクリルアミド、アセテート、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチルアクリレート(PEA)、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン-ビニルアセテート(PVP-VA)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、微結晶セルロース、コーンスターチ、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項1に記載のNO発生システム。
【請求項34】
前記NO発生製剤が、リン酸ナトリウム緩衝液、リン酸カリウム緩衝液、及びこれらの組み合わせから成る群から選択されたpH制御材料をさらに含む、請求項1に記載のNO発生システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年8月23日付の米国仮出願第62/891,129号の優先権を主張する。これの内容は参照することにより全体として本明細書中に援用される。
【背景技術】
【0002】
人体において、一酸化窒素(NO)は、酵素一酸化窒素シンターゼ(NOS)のいくつかのイソフォームのうちのいずれかによって生成することができる。NOは哺乳類の免疫反応又は免疫防御の中核を成し、数多くの細菌種の中でL. major、M. bovis、及びM. tuberculosisを殺傷するためにマクロファージによって用いられるメカニズムにおける細胞毒性物質である。NOはまた効果的な抗ウイルス剤でもあり、これは風邪を引き起こすライノウィルスに抗する活性を有している。NOは免疫細胞(マクロファージ、好中球、リンパ球など)及び気道上皮細胞(例えば伝導性の呼吸上皮細胞)によって、主として誘導型一酸化窒素シンターゼ(iNOS)を介して、気道内(例えば上気道内)のL-アルギニンから生成される。NO生成の欠損は、免疫反応及び/又は微生物バイオフィルム形成を減少させることがある。鼻腔NOレベルの欠損は原発性繊毛運動障害及び慢性鼻副鼻腔炎(CRS)のような疾患と関連付けられ、そして潜在的には、風邪を引き起こすウイルス物質に対する戦闘能力欠如に関連付けられている。NOのいくつかの生理学的特性は、抗炎症剤、抗凝血剤、及び/又は抗菌剤としてのその使用を含む。
【0003】
吸入療法におけるNOの使用も研究されている。吸入された一酸化窒素は、肺不全を治療するために使用されており、また肺動脈血管拡張を促し、肺血管抵抗を低下させることが判っている。吸入式の一酸化窒素はまた、低酸素性呼吸不全の新生児を治療することが米国食品医薬品局(FDA)によって承認されている。酸素化を改善し、体外式膜型人工肺療法の必要を減らすことも判っている。
【発明の概要】
【0004】
一酸化窒素(NO)発生システムの一例は、当該NO発生製剤が安定NO供与体/付加体、親水性バインダー、及び添加剤を含み、前記添加剤が、製剤が有効量の水、水蒸気、又は青色光又は紫外(UV)光に暴露された後の前記NO供与体/付加体からのNOの放出速度を制御するようになっている、NO発生製剤と、前記NO発生製剤と動作可能に接触している吸入デバイスと、を含む。
【0005】
一酸化窒素(NO)発生システムの別の例は、当該NO発生製剤が、安定NO供与体/付加体、親水性バインダー、及び炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウムと重炭酸ナトリウムとの混合物、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、及びこれらの組み合わせから成る群から選択されたアルカリ性材料であって、前記アルカリ性材料が、前記NO発生製剤のpHを8.5以上にし、これにより前記製剤が有効量の水蒸気又は水和液に暴露された後にNOを解放するようにNO供与体/付加体を不安定化する、アルカリ性材料を含む、NO発生製剤と、NO発生製剤と動作可能に接触している吸入デバイスと、を含む。
【0006】
一酸化窒素(NO)発生システムのさらに別の例は、アタッチメント機構を含むNO透過性容器と、NO透過性パウチ内に含有されたNO発生製剤とを含む。前記NO発生製剤は、有効量の水蒸気、水和液、又は青色光又は紫外(UV)光に暴露されると活性化可能である安定NO供与体/付加体を含む。
【0007】
NO発生システムのさらに別の例は、フェイスマスクと、前記フェイスマスクに固定されたハウジングであって、前記ハウジングが、前記ハウジングと、前記フェイスマスクの内部との間に位置決めされたNO透過性壁を有するリザーバを含む、ハウジングと、前記リザーバ内に含有されている、又は前記リザーバ内へ導入されるようになっているNO発生製剤であって、前記NO発生製剤が有効量の酸性緩衝液に暴露されるとNOを発生させるようになっている亜硝酸塩を含むNO発生製剤と、を含む。
【0008】
以下の詳細な説明及び図面を参照することにより、本開示の実施態様の特徴が明らかになる。図面において、同様の符号は類似の、しかしおそらくは同一ではない構成部分に相応する。簡潔にするために、前に説明した機能を有する符号又は特徴は、これらが出現する他の図面と関連させて説明することもあれば説明しないこともある。図面のうちのいくつか(例えば図9~20)では、種々の製剤の圧縮されたペレットに対応する時間(X軸)の関数としての一酸化窒素(NO)放出プロフィール又は動態(例えばPPB又はPPBV、Y軸)のデータが示されている。これらの図面において、データは、ペレットの不均一な水和と関連する変動に基づき広域の値を示している。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A図1Aは、それぞれプラスチックシース内の2つの単一ペレットとして形成されたNO発生製剤例を示す写真である。
【0010】
図1B図1Bは、プラスチックシースなしの単一ペレットとして形成されたNO発生製剤例を示す写真である。
【0011】
図2A図2A及び2Bは、フェイスマスク吸入デバイス例を、NO発生製剤保持ハウジングが開位置(図2A)及び閉位置(図2B)にある状態で示す概略図である。
図2B図2A及び2Bは、フェイスマスク吸入デバイス例を、NO発生製剤保持ハウジングが開位置(図2A)及び閉位置(図2B)にある状態で示す概略図である。
【0012】
図2C図2Cは、図2Bのフェイスマスク吸入デバイスを、NO発生製剤が、使用者の鼻及び口が位置することになる領域に近接した場所にある状態で示す側面図である。
【0013】
図3A図3A及び3Bは、別のフェイスマスク吸入デバイス例を、NO発生製剤保持ハウジングが開位置(図3A)及び閉位置(図3B)にある状態で示す概略図である。
図3B図3A及び3Bは、別のフェイスマスク吸入デバイス例を、NO発生製剤保持ハウジングが開位置(図3A)及び閉位置(図3B)にある状態で示す概略図である。
【0014】
図3C図3Cは、図3Bのフェイスマスク吸入デバイスを、NO発生製剤が、使用者の鼻及び口が位置することになる領域に近接した場所にある状態で示す側面図である。
【0015】
図4A図4Aは、別のフェイスマスク吸入デバイス例を概略的に示す側面図である。
【0016】
図4B図4Bは、ハウジング内の複数のNO発生製剤ペレットを、図4Aの4B-4B線で示す断面図である。
【0017】
図5図5は、図2のフェイスマスク吸入デバイス例を概略的に示す側面図及び端面図である。
【0018】
図6図6は、さらに別のフェイスマスク吸入デバイス例を概略的に示す側面図である。
【0019】
図7図7は、さらに別のフェイスマスク吸入デバイス例を概略的に示す側面図である。
【0020】
図8図8は、鼻カニューレを含む吸入システム吸入デバイス例を示す逆略図である。
【0021】
図9図9は、時間に対するNO発生製剤例からの一酸化窒素(NO)放出プロフィールを示すグラフである。
【0022】
図10図10は、別のNO発生製剤例からのGSNOの一酸化窒素(NO)放出動態を示すグラフである。
【0023】
図11図11は、時間に対するさらに別のNO発生製剤例からの一酸化窒素(NO)放出プロフィールを示すグラフである。
【0024】
図12図12は、時間に対するさらに別のNO発生製剤例からの一酸化窒素(NO)放出プロフィールを示すグラフである。
【0025】
図13図13は、時間に対する図12のNO発生製剤例からの一酸化窒素(NO)放出プロフィールを示すグラフである。
【0026】
図14図14は、時間に対するさらに別のNO発生製剤例からの一酸化窒素(NO)放出プロフィールを示すグラフである。
【0027】
図15A図15Aは、時間に対するさらなるNO発生製剤例からの一酸化窒素(NO)放出プロフィールを示すグラフである。
【0028】
図15B図15Bは、種々の相対湿度条件における、図15AのGSNO製剤例の一酸化窒素(NO)放出動態を示すグラフである。
【0029】
図16図16は、時間に対するさらに別のNO発生製剤例からの一酸化窒素(NO)放出プロフィールを示すグラフである。
【0030】
図17図17は、時間に対するさらに別のNO発生製剤例からの一酸化窒素(NO)放出プロフィールを示すグラフである。
【0031】
図18図18は、時間に対するさらに別のNO発生製剤例からの一酸化窒素(NO)放出プロフィールを示すグラフである。
【0032】
図19図19は、時間に対するさらに別のNO発生製剤例からの一酸化窒素(NO)放出プロフィールを示すグラフである。
【0033】
図20図20は、時間に対するさらに別のNO発生製剤例からの一酸化窒素(NO)放出プロフィールを示すグラフである。
【0034】
図21図21は、容器と、ディスク、錠剤、又は他の形状に形成し得る接着剤と、剥離ライナーとを含むNO発生システムの一例を示す概略図である。
【0035】
図22図22は、吸入デバイスに貼り付けられた図21のNO発生システムを示す概略図である。
【0036】
図23図23は、吸入デバイスに貼り付けられた別のNO発生システム例を示す概略図である。
【0037】
図24A図24Aは、吸入デバイスに貼り付けられた光活性化型NO発生システム例を示す概略図である。
【0038】
図24B図24Bは、吸入デバイスに貼り付けられた別の光活性化型NO発生システム例を示す概略図である。
【0039】
図25A図25Aは、固形形状のNO発生製剤を含む鼻ベントプラグを示す斜視概略図である。
【0040】
図25B図25Bは、液体形状のNO発生製剤を受容するためのリザーバを含む鼻ベントプラグを示す斜視概略図である。
【0041】
図25C図25Cは、光活性化型NO発生システムを含む鼻ベントプラグを示す斜視概略図である。
【0042】
図26図26は、吸入デバイスに貼り付けられたさらに別のNO発生システム例を示す概略図である。
【0043】
図27図27は、時間(hours、X軸)に対するNOレベル(ppm、左Y軸)及びNOレベル(ppm、右Y軸)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0044】
一酸化窒素(NO)は潜在的な抗血栓剤、抗炎症剤、抗菌剤、及び抗ウイルス剤である。in vivoのNO欠損は遺伝性であるか又は多形性に関連することがあり、あるいはNO生成の上流調節を活用する病理又は病原体によって引き起こされ得る。NO生成の欠損は、粘膜繊毛機能を低下させ(粘膜繊毛機能は、気道上皮内の一次先天性免疫防衛メカニズムの1つであり、また繊毛運動周波数と直接に相関される)、微生物に感染しやすくし、且つ/又は抗生剤では効果がない細菌性バイオフィルムの持続性を促進する。
【0045】
NO吸入療法はNOを患者の肺内へ導入し、ひいては粘膜繊毛機能を高め、微生物に対する感染しやすさを低下させ、且つ/又は細菌性バイオフィルムの抵抗を促進する。NOはSARSコロナウイルスに対して有効であることが判っており、また他のウイルス、例えばCOVID-19又はSARS-CoV-2の治療に有効であり得る。吸入一酸化窒素の使用は、他の分野にも、例えば肺移植中、肺高血圧症の治療のため、吸入消毒剤として、そして虚血性脳梗塞、心臓発作、血栓症、及び外傷性脳損傷などを含む全身にわたる他の状態の治療のためにも有益であることを証明することができる。
【0046】
湿分(例えば水蒸気)活性化型、水和液活性化型、酸性緩衝液活性化型、又は光活性化型一酸化窒素ガス発生システム/デバイスの例が本明細書中に開示されている。このデバイス例において、一酸化窒素(NO)ガスは、湿分活性化型、水和液活性化型、酸性緩衝液活性化型、又は光活性化型のNO発生製剤(ここではNO放出製剤とも呼ばれる)例と接触している吸入デバイスから必要に応じて生成される。
【0047】
NO発生製剤の一例は、安定NO供与体/付加体(例えばS-ニトロソチオール(RSNO)粉末、又はニトロプルシド)を含む。安定NO供与体/付加体に加えて、NO発生製剤のいくつかの例はさらに親水性バインダーと添加剤を含む。添加剤は、製剤が有効量の水蒸気、水和液、又は青色光又は紫外(UV)光に暴露された後の安定NO供与体/付加体からのNOの放出速度を制御(促進)するようになっている。
【0048】
いくつかの例では、NO発生製剤は、安定NO供与体/付加体(例えばRSNO(GSNO))、添加剤(例えば反応促進剤)、及び親水性バインダーを含む固体(例えばペレット/タブレット/ディスク)の形態を成している。いくつかの例では、潤滑剤及び/又は不活性材料及び/又はpH制御材料が含まれてよい。いくつかの他の例では、NO発生製剤がアルカリ性(例えばpH8.5超)である場合に、添加剤/反応促進剤は含まれなくなる。
【0049】
他の例では、NO発生製剤は溶液又は分散体の形態を成している。これらの例のいくつかでは、安定NO供与体/付加体(例えばRSNO(GSNO))、及びいくつかの事例では、添加剤及び親水性バインダーを含む固形形態は、水和液と混合される。他の例では、NO発生製剤の液体形態は、亜硝酸塩と酸性緩衝液とを含む。この製剤はまた、本明細書に記載された添加剤及び/又は酸素スクラバーを含んでもよい。
【0050】
「一酸化窒素付加体」(NO付加体)及び「NO供与体」は、典型的な条件(例えば湿度、水和)下で、又は特定の波長の光に暴露されると、NOを供与且つ/又は放出し得る化合物及び官能基を意味する。このようなものとして、本明細書中に使用される「湿分活性化型NO放出製剤」という表現は、有効量の水蒸気及び/又は水和液(例えば水)に暴露されるとNOガス分子を放出することができるNO供与体/付加体を含む。一例において、適量の水蒸気は約40%相対湿度から100%という高い相対湿度までの範囲の条件において見出すことができる(例えば図15B参照)。同様に、「光活性化型NO放出製剤」は、所期量のNOを生成するための様々な強度で特定波長の光に暴露されると、NOガス分子を放出することができるNO供与体/付加体を含む。本明細書中に開示されたNO供与体/付加体のいくつかの例は、湿分、水和液、及び光のうちの2種又は3種以上によって活性化することができる。好適なNO付加体はまた大まかに言えば、プロセス調製安定性を呈する能力を示す付加体である。
【0051】
さらに、「酸性緩衝液活性化型NO放出製剤」という言い方は、製剤をpH4超~約7.5にもたらす酸性緩衝液に暴露されるとNOガス分子を生成する亜硝酸塩を含む。いくつかの例ではpHは約4.5~約7.0、約4.1~約6.9である。
【0052】
本明細書中に開示された例のいくつかにおいて、一酸化窒素発生製剤の一例は、具体的には、例えば、固形形態(例えば単一固形物又は圧力(例えば約25~50kn)を使用した単一高密度充填固形塊)、例えばペレット、タブレット、又はディスク)で製剤されている。固形形態は、加湿空気(例えば使用者の吸気/呼気から、空気加湿器から、など)に暴露されると、広い範囲にわたってガス状NOを生成する(約50ppbv~約50,000ppbv超)。この範囲は、吸入療法のために治療的に有効であると実証されている範囲をカバーする。本明細書中に使用される「高密度充填」とは、本質的に顆粒状ではなく、結晶性材料の密度に類似している。NO発生製剤は、使用者が湿分活性化型NO発生製剤を含む吸入デバイス例と接触している長い時間にわたってNOの自発的な送達を可能にする。
【0053】
本明細書中に開示される他の例では、一酸化窒素発生製剤は固形形態を成し、容器内部に含有されている。容器は吸入デバイスに貼り付けられるか、又はこれに導入される。いくつかの事例では、容器は加湿空気及びNOを通す。このタイプの容器は、加湿空気が酸化窒素発生製剤と接触するのを可能にし、そしてまた生成されたガス状NOが容器から放出されるのも可能にする。他の事例では、容器は可視青色及び/又はシアン光(約400nm~約490nm及び/又は約490nm~約520nmの波長)及び/又は紫外光(約10nm~約400nmの波長)に対して透明であり、そしてNO透過性である。このタイプの容器は、光が一酸化窒素発生製剤と接触するのを可能にし、そしてまた生成されたガス状NOが容器から放出されるのも可能にする。
【0054】
本明細書中に開示された他の例では、一酸化窒素発生製剤は、パッケージ内にシールされた固形形態又は粉末形態である。パッケージは、製剤が戻されリザーバ、例えば図25Bに示されたリザーバ内へ注ぎ込まれるまで、湿分が外側の湿気及び液体から一酸化窒素発生製剤に達するのを防止する。
【0055】
本明細書中に開示された他の例では、一酸化窒素発生製剤は被覆体又は粉末である。被覆体又は粉末は吸収性パッド(例えばPIG(登録商標)吸収性パッド)に付加され、図25Bにおいて記載されたようなデバイス内に入れられる。このデバイスは、湿気又は液体がデバイスに添加されるとNOを生成する。
【0056】
本明細書中に開示されたシステム/デバイスは比較的コンパクトであり、一酸化窒素タンク(すなわち、圧縮ガスシリンダ内のNO)の必要をなくする。このことは、システム/デバイスを単純化し、そしてシステム/デバイスのコストを低減する。
【0057】
吸入型一酸化窒素を形成するために、本明細書中に開示されたNO放出製剤例を使用することは、予防薬の使用、感染物質(例えばウイルス、バクテリア、菌)の減少、肺不全の治療、肺動脈血管拡張の向上、及び肺血管抵抗、及び炎症、凝固、及び感染を含むその他の状態の低減を含めて、病気と戦う上で効果があることが明らかである。上述のように、吸入型一酸化窒素は、低酸素性呼吸不全の新生児を治療するために使用することもでき、また酸素化を改善し、体外式膜型人工肺療法の必要を減らすことができる。吸入型一酸化窒素を生成するために本明細書中に開示されたNO放出製剤例を使用することはまた、他の分野にも、例えば肺移植中、肺高血圧症の治療のため、吸入消毒剤として、空気の消毒のためなどにも有益であることが明らかである。
【0058】
例えば、本明細書中に開示されたNO放出製剤例を使用すると、上皮細胞及び免疫細胞の外部及び内部のNOレベルが概ね高められる。これにより繊毛運動周波数の制御を助けることもできる。このようなものとして、本明細書中に記載された一酸化窒素発生製剤は、粘膜繊毛機能(上記のように繊毛運動周波数と直接に相関する)を修復/改善するのを助けることができる。修復/改善された粘膜繊毛機能は、慢性的に定着する病原体に対する防衛力を高め、そして疾患の永続化を軽減又は防止することができる。加えて、NO放出製剤から放出された一酸化窒素は、副鼻腔及び呼吸器系の他の部位に感染し得るほとんどのタイプの細菌、ウイルス、及び菌に対する直接的な殺菌、抗ウイルス、及び抗菌活性を有する。したがって、この一酸化窒素発生製剤例は、CRSのような上気道感染症を含む気道感染症を治療又は予防するのに有益であると言える。
【0059】
NO発生製剤
【0060】
NO発生製剤のいくつかの例は、安定NO供与体/付加体を含む。いくつかの事例では、これらのNO発生製剤例は、安定NO供与体/付加体と、親水性バインダーと、添加剤とを含む。
【0061】
湿分活性化型安定NO供与体/付加体例は、例えばS-ニトロソチオール(RSNO)粉末、又はニトロプルシドを含む。
【0062】
一酸化窒素発生製剤のために選択される湿分活性化型RSNOは、人体又は別の生命体内で自然発生する種であるか、又は人体内で自然発生する種に分解可能な種であるか、又は人間に使用するのに適した薬物(すなわち摂取、消費など)である。本明細書中に開示された例のいずれにおいても、湿分活性化型RSNO又はRSNO粉末は、S-ニトロソグルタチオン(GSNO、人体内で自然発生)、S-ニトロソ-システイン(CYSNO、人体内で自然発生)、S-ニトロソ-N-アセチル-ペニシラミン(SNAP、薬物ペニシラミンに分解)、S-ニトロソ-ペニシラミン、及びS-ニトロソ-アルブミン(脊椎動物内で自然発生)から選択される。
【0063】
S-ニトロソグルタチオン(GSNO)はNO放出S-ニトロソチオール(RSNO)分子の一例である。GSNOは、(上皮細胞、マクロファージ、洞上皮細胞などによって生成された)NOが酸素と反応することによりNを形成する結果として人体内に存在する。Nは、ニトロソニウムイオン(NO)を提供することにより、グルタチオンのチオール基と反応してGSNOを形成する。このようなものとして、本明細書中に開示された一酸化窒素発生製剤は、いかなる異物又は毒物も鼻腔/気道内へ導入しない。
【0064】
亜硝酸ナトリウム/GSHの混合物を塩酸で酸性化し、次いでGSNO種を(固体結晶として)単離することによって、グルタチオン(GSH)からGSNOを調製した。あるいは、GSNOは商業的に入手可能な試料であってよい。
【0065】
いくつかの例において、GSNO以外の湿分活性化型S-ニトロソチオール(RSNO)分子を、一酸化窒素発生製剤中に使用することができる。これら他のS-ニトロソチオールの例は、S-ニトロソ-システイン(CYSNO、人体内で自然発生)、S-ニトロソ-N-アセチル-ペニシラミン(SNAP、薬物ペニシラミンに分解)、S-ニトロソ-ペニシラミン、及びS-ニトロソ-アルブミン(人体内で自然発生)を含む。
【0066】
湿分活性化型製剤の一例において、RSNO粉末は、S-ニトロソグルタチオン(GSNO)、S-ニトロソ-システイン、S-ニトロソ-N-アセチル-ペニシラミン、S-ニトロソ-ペニシラミン、及びS-ニトロソ-アルブミンから成る群から選択される。
【0067】
湿分活性化型製剤のさらなる例において、安定NO供与体/付加体はニトロプルシドである。
【0068】
S-ニトロソチオールのいくつかの例はまた、光活性化型/感受性である。光活性化型/感受性S-ニトロソチオールの例は、S-ニトロソ-N-アセチル-ペニシラミン(SNAP)結晶、S-ニトロソグルタチオン(GSNO)結晶、及びこれらの組み合わせを含む。
【0069】
本開示のNO発生製剤例において、言うまでもなく、1種又は2種以上の親水性材料を親水性バインダーとして使用することができる。いくつかの例は、ポリビニルアセテート(PVA)、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリアクリルアミド、アセテート、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチルアクリレート(PEA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、及びこれらの変更形(例えばポリビニルピロリドン-ビニルアセテート(PVP-VA))を、例えば物理的なブレンド又は混和物として含む。各ポリマーはその固有の科学特性を維持する。種々の他の親水性ポリマー、例えばヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、微結晶セルロース、コーンスターチなど、及び/又はこれらの組み合わせを使用してもよい。種々のポリマー/コポリマー、又はポリマー/コポリマーの組み合わせ、又は他の親水性材料、のいずれかを使用して、所期特性の親水性バインダーをもたらすことも、本開示の範囲内で考えられる。
【0070】
一例において、使用される親水性ポリマーの重量平均分子量は、約5000Mw~約500,000Mw、又は約10,000Mw~約200,000Mwであってよい。
【0071】
一例において、親水性バインダーは、ポリビニルアセテート(PVA)、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリアクリルアミド、アセテート、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチルアクリレート(PEA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルピロリドン-ビニルアセテート(PVP-VA)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、微結晶セルロース、コーンスターチ、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される。
【0072】
選択された添加剤は、製剤が有効量の水蒸気、水和液、又は光に暴露された後のNO供与体/付加体からの一酸化窒素の放出速度を制御することができる。製剤中に添加剤を含むことにより、NO放出プロフィールを経時的に制御することができる。これにより、抗菌活性及び/又は治療的ベネフィットを高めることができる。いくつかの事例において、添加剤は酸化窒素の放出速度を加速する。一例において、NO供与体/付加体と添加剤との比(mol/mol)は、1:0.5~1:10である。
【0073】
言うまでもなく、添加剤は任意の適宜の還元剤である。NO発生製剤の一例において、添加剤は、還元グルタチオン、システイン、アスコルビン酸又はアスコルビン酸塩、パルミチン酸アスコルビル、銅イオン、亜鉛イオン、亜鉛酸化物粒子、有機セレン種、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される。一例において、有機セレン種は、セレノシステイン及びエブセレンから成る群から選択される。添加剤の組み合わせの一例は還元グルタチオン及びアスコルビン酸である。
【0074】
下記は、添加剤がRSNOからの、具体的にはGSNOからの一酸化窒素の放出速度をいかにして制御又は加速し得るかのいくつかの例である。グルタチオンは、初期N-ヒドロキシスルファンアミド種(例えばGS-N(OH)-SG)の形成を介して、GSNOからのNO放出速度を増大させることができる。初期N-ヒドロキシスルファンアミド種は次いでラジカルGSに変化する。ラジカルGSは別のGSNO分子と反応することにより、NOを放出し、そしてGSSGジスルフィド種を形成することができる。システインはGSNOでトランスニトロソ化することにより、CysNOを形成することができる。CysNOはNOをGSNOよりも著しく高速に放出する。アスコルビン酸又はアスコルビン酸塩は容易に酸化することにより、より小さなトレオース構造(3炭糖)を形成することができる。アスコルビン酸塩の自然酸化はGSNOの還元と連動することにより、NO及びGSHを放出することができる。さらに、アスコルビン酸塩の酸化生成物、すなわちより小さなトレオース構造は還元剤でもある。この還元剤は、電子をGSNOに提供することができ、ひいてはGSNOをNOに直接に還元することに貢献することもできる。一例において、アスコルビン酸又はアスコルビン酸塩は、最大5日間にわたって溶液中で酸化させ、乾燥させ、次いで一酸化窒素発生製剤中に取り込むことができる。GSNOからのNO発生を、有機セレン種が触媒することができる。GSH製剤中に存在する任意の微量の遊離チオールによって、銅又は亜鉛イオンをこれらの+1酸化状態に還元することができ、そしてCu(I)又はZn(I)イオンは次いでGSNOをNO及びGSHに還元することができる。
【0075】
一例において、NO発生製剤はさらに潤滑剤を含む。潤滑剤が含まれる場合、その一例は、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸亜鉛、パルミチン酸ナトリウム、パルミチン酸亜鉛、パルミチン酸アスコルビル、及びこれらの組み合わせから成る群から選択された界面活性剤である。言うまでもなく、潤滑剤はNOの発生のためには不要である。しかしながら、いくつかの例では、潤滑剤は、ペレットをより堅牢にし、またNO放出動態を改質する(低速にする)ことができる。しかしながら、固形物/ペレットは高い十分な圧力(例えば40kn超)で圧縮されると、潤滑油なしのペレットは団結したままになるはずである(とはいうものの、結果として生じるNO放出はいくつかの事例では、プレス圧力が高くなるのにともなって低速になり得る)。
【0076】
言うまでもなく、NO供与体/付加体を含むNO発生製剤の成分は、任意の所望の適宜の量で存在してよい。しかしながら、一例において、安定NO供与体/付加体(例えばS-ニトロソチオール(RSNO)粉末)は、NO発生製剤の約1wt%~約50wt%、又は約1wt%~約30wt%、又は約3wt%~約12wt%の量で存在し、親水性バインダーは、NO発生製剤の約15wt%~約90wt%、又は0wt%超~約82wt%、又は約15wt%~約82wt%、又は約25wt%~約82wt%の量で存在し、潤滑剤(製剤中に存在する場合)は、NO発生製剤の約0wt%超~約15wt%、又は約1wt%~約15wt%の量で存在し、そして添加剤は、NO発生製剤の約0.5wt%~約65wt%、又は約1wt%~約60wt%、又は約3wt%~約60wt%の量で存在し、酸化亜鉛粒子が添加剤として利用される場合には、これらは、NO発生製剤の約1wt%~約90wt%の量で存在してよい。
【0077】
別の例では、NO供与体/付加体を含むNO放出製剤は、アルカリ性材料を添加することによりアルカリ性にされる(例えばpH8.5超)。この例では、添加剤/促進剤が含まれることはない。pHが高い(約8.5超)ならばGSNOは不安定であり、そしてNOは添加剤/促進剤がなくても解放される。アルカリ性材料の例は、炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウムと重炭酸ナトリウムとの混合物、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される。
【0078】
一例において、(NO供与体/付加体を含む)NO発生製剤はさらに、塩化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、塩化カルシウム、微結晶セルロース、二酸化ケイ素、及びこれらの組み合わせから成る群から選択された不活性物質を含む。不活性材料が製剤中に含まれる場合には、これはNO発生製剤の約0wt%超~約50wt%、又は約5wt%~約25wt%の量で存在する。本明細書中に使用される「不活性材料」は、NO放出に大きな影響を及ぼさない材料(すなわち、NO放出速度を変化させる率が10%未満である材料)を意味する。本明細書に開示された例において、不活性材料は例えばアンチケーキング剤、増量剤、及び/又はバインダーとして作用し得る(とはいえ、言うまでもないことだが、不活性材料バインダーは、親水性バインダーのようには給水には関与しない)。
【0079】
一例において、NO発生製剤(NO供与体/付加体を含む)はさらにpH制御材料を含む。言うまでもなく、いかなる適宜のpH制御材料をも所望の通りに使用することができる。一例において、pH制御材料は、リン酸ナトリウム緩衝液、リン酸カリウム緩衝液、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される。他の適宜のpH制御材料は炭酸塩、他のリン酸塩、又は一酸化窒素と反応しない任意の他の干渉材料を含む。(NO供与体/付加体を含む)NO発生製剤のpHは9.5超である。
【0080】
(NO供与体/付加体を含む)NO発生製剤のいくつかの例はさらに、NO発生製剤によって放出された二酸化窒素(NO)をスカベンジするための吸収剤、発生したNOを変化させてNOに戻すための試薬、又はこれらの組み合わせを含む。OをNOと反応させることにより、NOを発生させることができ、NOは受容者又は患者に対して毒性であり得る。したがって、発生したいかなるNOをも除去し、発生したいかなるNOをも変化させてNOに戻し、あるいは使用者によって吸い込まれるNOを極めて低いレベルに維持することが望ましい。吸収剤として、ソーダ石灰スクラバーが含まれてよい。NO含量が最終気相中1~3ppm超であるならば、ソーダ石灰スクラバーを使用して、余剰のNOを除去することができる。発生したNOを変化させてNOに戻すことができる試薬又は触媒の一例はアスコルビン酸で含浸されたシリカ粒子である。
【0081】
別の例において、例えば潮解性塩(例えば塩化カルシウム)が使用される場合には、NO供与体/付加体を含むNO発生製剤は2成分システムであってよい。極めて高親水性の材料(例えば塩化カルシウムのような潮解性塩)を使用すると、NO生成量が増大する。それというのも、ペレットが少なくとも部分的に溶解し、ひいては溶液のように挙動するからである。
【0082】
NO供与体/付加体を含む湿分、水和液、又は光活性化型NO発生製剤は粉末の形態を成していてよい。
【0083】
NO供与体/付加体を含む湿分、水和液、又は光活性化型NO発生製剤は、NO発生を妨害しない接着剤を使用して、表面に被膜又はフィルムとして被着することもできる。
【0084】
さらに他の例において、湿分、水和液、又は光活性化型NO発生製剤は、モールディング/成形/プレスなどによって、任意の適宜の形状又はサイズの固形物、例えばペレット、タブレット、ディスクなどにすることができる。いくつかの例では、成形済み固形物は最大約50mm直径 x 約25mm厚であってよい。一例では、成形済み固形物は約5mm直径 x 約25mm長であってよい。50mm x 25mmのサイズを超えると、いくつかの事例では望ましくない場合がある。それというのも、表面積対体積比が、給水傾向と併せて考慮すべき基準であるからである。整形済み固形物の重量は約0.1グラム~約5.0グラム、又は約0.2グラム~約0.5グラムであってよい。
【0085】
一例において、NO発生製剤10,10’は単一成形固形物(すなわち湿分活性化型製剤の成分(例えばRSNO、バインダー、添加剤のそれぞれ)が二成分システムとは異なり単一ペレット内に存在する)を含む。図1Aに示されたNO発生製剤10の一例は、成形済みの2つの単一ペレットの形態を成しており、これらのペレットのそれぞれはプラスチックシースを含む(プラスチックシースは、ペレット脆弱性を低減するための機械剛性のために所望の場合に付加されてよい)。図1Bに示されたNO発生製剤10の別の例は、プラスチックシースなしの成形済みの単一ペレットの形態を成している。一例において、プラスチックシースはポリエチレンである。シース製造方法の一例は、整形済みペレットをポリエチレン中に挿入し、次いでシースを針で破裂させることによりペレットを所定の場所に固定することである。シースは所望に応じたいかなる適宜の厚さ、約150μm厚であってもよい。
【0086】
言うまでもなく、容器及び/又は吸入デバイスと一緒に、1つ又は複数の単一ペレットを使用して、所期量のガス状NOを提供することができる。
【0087】
NO供与体/付加体を含むNO発生製剤の固形形状及び粉末形状を、水和液、例えば脱イオン水又は精製水中で戻すことにより、NO発生製剤の液状形態の一例を発生させる。
【0088】
本明細書中に記載されたNO供与体/付加体の代わりに、NO発生製剤の他の例は、酸性緩衝液及びpH4.1~7.5に暴露されるとNO分子を発生させる亜硝酸塩を含む。亜硝酸塩は、NOを発生させることが望ましくなるまで固形形態(例えば粉末で維持することができ、あるいは、NOを発生させることが望ましくなるまで水溶液(例えば水中に溶解)の形で維持することができる。
【0089】
このNO発生製剤例の粉末形態は、亜硝酸塩を単独又は添加剤及び/又は酸素スクラバーとの組み合わせで含んでよい。
【0090】
亜硝酸塩はいかなる水溶性の無機亜硝酸塩であってもよい。いくつかの水溶性無機亜硝酸塩はアルカリ金属及びアルカリ土類金属亜硝酸塩を含む。具体例は、Li(リチウム)、Na(ナトリウム)、K(カリウム)、Rb(ルビジウム)、Ca(カルシウム)、及びMg(マグネシウム)の亜硝酸塩を含む。ほとんどの他の金属塩はまた水中に可溶性であり、例えばAl(アルミニウム)塩及びFe(鉄)塩である。亜硝酸塩の1つの具体例はNaNOである。
【0091】
亜硝酸塩は最大75wt%の量で粉末製剤中に存在してよい。溶解に際しては、最大亜硝酸塩濃度は塩の溶解度に依存する。例えば亜硝酸ナトリウムの溶解限度は25℃において12mol/Lであり、そして亜硝酸カリウムの溶解限度は25℃において36.7mol/Lである。溶解範囲の下限は10μmol/Lであってよい。いくつかの例において、戻し済み溶液は8mol/LのNaNO及び13mol/LのKNOを含む。
【0092】
還元剤であるいかなる添加剤例が含まれてもよい。一例において、添加剤はアスコルビン酸塩又はアスコルビン酸である。この製剤において、添加剤はNO発生を低減することができる。
【0093】
酸素を除去することができ(NOと反応することによりNOを発生させることができる)、ひいてはNO生成量を低減することができる酸素スカベンジャーを使用してよい。適宜の酸素スクラバーの一例はメタ重亜硫酸ナトリウム、ヒドラジン、カルボヒドラジド、タンニン、ジエチルヒドロキシアミン(DEHA)である。酸素スクラバーは、約10wt%以下の量で含まれてよい。
【0094】
この例では、NO発生製剤NOの液体形態を生成するために酸性緩衝液で粉末を戻すことが望ましくなるまで、単独で又は添加剤及び/又は酸素スクラバーとの組み合わせで使用される亜硝酸塩を粉末形態で維持することができる。NO発生製剤NOの液体形態のpHは4超~7.5である。酸性緩衝液は、NOを発生させるために亜硝酸塩を酸性化し得る中度の酸であってよい。一例において、酸性緩衝液は一塩基性及び/又は二塩基性リン酸塩である。他の酸性緩衝液例は、モノクエン酸、二塩基性クエン酸、酢酸、ビス-トリス(2-[ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ]-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-1,3-ジオール)、MOPSO(β-ヒドロキシ-4-モルホリンプロパンスルホン酸)、PIPES(1,4-ピペラジンジエタンスルホン酸)、BES緩衝食塩水、MOPS(3-(N-モノホリノ)プロパンスルホン酸)、TES(2-[[1,3-ジヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-2-イル]アミノ]エタンスルホン酸)、HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-エタンスルホン酸)、DIPSO(3-(N,N-ビス[2-ヒドロキシエチル]アミノ)-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)、TRIZMA(登録商標)(2-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール)、マレイン酸塩、又はカコジル酸塩である。
【0095】
別の例において、NO発生製剤(亜硝酸塩を含む)の液体形態を生成するためにキットを使用する。キットの一例は、水中に亜硝酸塩を含む第1溶液を含み、そしてまた酸性緩衝液及び添加剤を含む第2溶液を含む。第1溶液中に、任意の亜硝酸塩例を使用することができる。第2溶液中に、任意の酸性緩衝液例を及び添加剤例を使用することができる。
【0096】
この例では、NOを生成するのが望ましくなるまで、第1溶液と第2溶液とを別々に維持することができる。合体させると、第1溶液と第2溶液とはNO発生製剤NOの液体形態を形成する。NO発生製剤NOのこの液体形態例のpHも4超~7.5である。
【0097】
他のキット例は、粉末製剤と戻し溶液とを含む。NOを生成するのが望ましくなるまで、粉末製剤と戻し溶液とを別々に維持することができる。合体させるときには、粉末製剤と戻し溶液とを混合することにより、NO発生製剤NOの液体形態を形成する。一例において、粉末製剤はNO供与体/付加体(及びいくつかの事例では親水性バインダー)を含み、そして戻し溶液は水和液と添加剤とを含む。別の例では、粉末製剤は亜硝酸塩(及びいくつかの事例では酸素スクラバー)を含み、そして戻し溶液は酸性緩衝液及び還元剤添加剤を含む。
【0098】
NO発生製剤のいずれにおいても、固形物(例えばペレット/タブレット/ディスクなど)、又は戻し済み液体(例えば、水和液中のペレット、タブレット、又は粉末、あるいは亜硝酸塩及び酸性緩衝液を含む液体形態)を所定の時間にわたってシステム内で使用することができる(例えば「y」時間にわたって「x」ppmのNOが生成されることになると使用者に告知することができる)。その後、ペレットを交換するか又は新鮮液体を導入するように使用者に指示することができる。さらなる例では、NO検出器を使用して、NO発生製剤が所期量のNOをもはや生成しなくなるとそれを示すことができる。さらなる例では、NO発生製剤が所期量のNOをもはや生成しなくなると、固形物を溶解するように製剤することができる。
【0099】
容器
【0100】
いくつかの種々異なる容器がここでは考えられる。いくつかの容器例は外側パッケージとして機能する。外側パッケージはNO発生製剤を時期尚早の水蒸気及び/又は光暴露から、且つ/又は時期尚早の水和から保護し、そしてこれは使用前に取り除くことができる。他の容器例は、使用中にNO発生製剤を含有するように機能する(ひいてはNO透過性であり得る)。本明細書中に開示された例のいくつかにおいて、NO発生製剤を有する容器が、使用前に外側パッケージ容器内部に保持される。いくつかの異なる容器について以下に説明する。
【0101】
本明細書中に開示されたいかなるNO発生製剤例も外側パッケージ、例えばフォイル、プラスチックパウチ(例えば二軸延伸ポリエチレンテレフタレート、例えば商業的に利用可能なMYLAR(登録商標))内に含有されてよい。このタイプの外側パッケージは、NO発生材料を湿気及び光から気密にシールするように役立つ。このことは、NO放出製剤の効果及び時間放出特性、並びにその有効寿命に影響を与えることができる。いくつかの例では、外側パッケージはNO発生製剤の固形形態を気密にシールする。これらの例では、ユーザーはペレット、ディスク、又はタブレットの形態を成す固形NO発生製剤を、使用前に外側パッケージから取り出すことになる。いくつかの例では、外側パッケージは、NO発生製剤を含有するパウチ又は他のホルダを気密にシールする。これらの例では、NO透過性パウチ又はホルダを、使用前に外側パッケージから取り出すことになる。いくつかの例において、外側パッケージはNO発生製剤の粉末を機密にシールする。これらの例において、外側パッケージが開かれると、粉末は場合によっては外側パッケージ自体の内部で水和又は酸性緩衝液暴露の用意ができる。さらに別の例では、外側パッケージは2つのチャンバを有する単一の容器であってよい。これらのチャンバの一方は、NO発生製剤のために、そして第2のチャンバは水和液又は酸性緩衝液のためにある。2つのチャンバの成分は、機械的に強制的に互いにブレンドすることができる。このような容器は、混合後にNOが逃れるための穴又はメンブレンを有することもできる。さらに別の例では、外側パッケージは、NO発生製剤で被覆されるか又はこれを含む吸収パッドを気密にシールする。これらの例において、吸収パッドは、湿気及び/又は液体活性化のために、機密にシールされた外側容器から取り出される。さらに別のアプローチは、予め混合されたアンプル内にNO発生製剤を供給することである。アンプルは開いて図26に示されているようなデバイス内に注ぐことができる。
【0102】
他の容器例は、使用中にNO発生製剤を含有するように機能する(ひいてはNO透過性であり得る)。適宜の容器例はパウチである。
【0103】
NO透過性容器は織布又は不織布材料(e...,クロス、ファブリックなど)であってよい。いくつかの例では、NO透過性容器は、プラスチック、金属、又はNO発生を妨害せず且つ生成されたNOを吸収/吸着しない別の材料から成る硬質シェルである。一例において、NO透過性容器は、織布材料、不織布材料、プラスチック材料、及び金属材料から成る群から選択される。
【0104】
NO透過性容器は多孔質であってもよい。孔はナノ細孔であってよい(例えば直径約1nm~1000nm未満)、又はマイクロ細孔(例えば直径約1μm~1000μm未満)であってよい。
【0105】
NO発生製剤が水蒸気に対して感受性である場合、容器は加湿空気透過性且つNO透過性であってよい。このタイプの容器は、加湿空気が酸化窒素発生製剤と接触するのを可能にし、そして生成されたガス状NOが容器から放出されるのを可能にする。空気・NO透過性容器に適した材料例は、ポリエチレン、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリプロピレン、ポリビニリデンジフルオリドなどを含む。
【0106】
NO発生製剤が光感受性である場合、容器は青色及び/又はUV光に対して透明であってよく、そしてNO透過性である。容器のためのNO透過性であり且つ光透明性材料は、ポリカーボネート、例えばポリカーボネート・トラックエッチングメンブレンを含む。商業的に入手可能なNO透過性であり且つ光透明性材料は、WHATMAN(登録商標)NUCLEPORE(登録商標)Track-Etched Membranes (GE Healthcare)及びTRAKETCH(登録商標)(Sabeu)を含む。これらのメンブレンは、ナノ細孔性(例えば直径約1nm~1000nm未満)、又はマイクロ細孔性(例えば直径約1μm~1000μm未満)であってよい。
【0107】
いくつかのNO透過性容器例はアタッチメント機構を含む。アタッチメント機構は、NO透過性容器(及び容器内のNO発生製剤)を吸入デバイス又は別のハウジングの内側又は外側に固定するように使用することができる。いくつかのアタッチメント機構例は図21~23に示されている。
【0108】
図21において、容器32はパウチであり、アタッチメント機構は、剥離接着ライナー44によって覆われた接着剤42を含む。接着剤42は容器32の1つの表面上に位置決めされており、そして剥離接着ライナー44はこれが使用者によって取り外されるまで接着剤42を覆う。接着剤の一例は感圧接着剤又は両面接着剤である。剥離接着ライナー44が取り外されると、接着剤42は容器32を図22に示されているような吸入デバイス、例えばフェイスマスク12の内側に固定することができる。
【0109】
別のアタッチメント機構例はクリップである。クリップ46は図23に概略的に示されている。クリップ46の一部が容器32(例えばパウチ)に取り付けられており、クリップ46の別の部分が吸入デバイス、例えばフェイスマスク12に取り付けられている。クリップ46が示されてはいるものの、言うまでもなく、他の機械的アタッチメント機構をクリップの代わりに使用することができる。その例はフック、クランプ、ピン、又は同様のものを含む。
【0110】
モールディング法、3D印刷法などを含む任意の好適の方法を用いて、容器32を調製することができる。
【0111】
いくつかの容器32例はさらに、容器32の表面上に位置する、又は容器32の外側に位置決めされたフィルタを含む。フィルタは、NO発生製剤によって放出された二酸化窒素(NO)をスカベンジするための吸収剤、発生したNOを変化させてNOに戻すための試薬、又はこれらの組み合わせを含む。いくつかの例において、フィルタは二酸化窒素(NO)フィルタである。NOフィルタは、出力ガスNOをこれが患者によって吸入される前に受容するように位置決めされていてよい。いくつかの例では、NOフィルタは、使用者の口及び/又は鼻に面することになる表面上で、容器32の外側に位置決めされていてよい。いくつかのNOフィルタ例は、NOガスから二酸化窒素の少なくともいくらかを除去する。例としては、シリカゲルフィルタ(事前にコンディショニングされたシリカ粒子を有する)又はソーダ石灰スクラバーをNOフィルタとして使用することができる。これらのフィルタは、生理学的に関連性のないレベルまでNOを低減することができる。他のNOフィルタ例は、二酸化窒素を変化させて一酸化窒素へ戻す。この変化は、NOペイロードがスカベンジ(吸収)されたNOの形態で失われることはなく、還元によりNOに戻されるという理由から望ましい。このタイプのNOフィルタの一例は、アスコルビン酸で含浸されたシリカ粒子である。
【0112】
吸入デバイス
【0113】
いくつかの例において、一酸化窒素(NO)発生システムはさらに、NO発生製剤と動作可能に接触している吸入デバイスを含む。吸入デバイス例は、フェイスマスク、鼻カニューレ、ノーズピロー(「鼻ベントプラグ」とも呼ばれる)、及びベンチレータを含む。
【0114】
NO発生システムの一例では、吸入デバイスはフェイスマスク12を含む。図2~7は適宜のフェイスマスク形態の種々の例を示している。図22~24はまた適宜のフェイスマスク形態の種々の例を示している。図22~24に示された例はまた、種々異なる容器32例を含む。フェイスマスク12例のいくつかにおいて、NO発生製剤10,10’は別個に製造され、次いでフェイスマスク12内へ導入される。他のフェイスマスク例において、NO発生製剤10,10’は、フェイスマスクの部分として製造することができる。
【0115】
フェイスマスク12(濾過呼吸器としても知られる)を使用して、粒子又は化学物質から呼吸器系を保護することができる。フェイスマスク12は、伝染病の伝染を最小化し、又は呼吸器系を周囲雰囲気中の毒性物質又はアレルゲンから保護するように構成することができる。加えて、フェイスマスク12は、大気中に存在し得る工業的な又は都市の粉塵又は塵埃、化学物質、アレルゲン、などの吸入から保護するために使用することができる。フェイスマスク12を使用して、人が他人に近接しているとき、又は望ましくない大気物質が存在する場合に、呼吸オリフィスの周りに閉じられた空間を維持することができる。加えて、感染者がフェイスマスク12を着用することにより、病原体の近くにいる他人を保護することができる。言うまでもなく、本明細書中に開示されたフェイスマスクは、人という文脈において説明されるが、任意の呼吸器官の解剖学的特徴に対する適合も考えられ、本明細書中に開示される。例えば、フェイスマスクは犬、猫、及び馬に適合させることができる。
【0116】
一例では、NO発生製剤10,10’は(例えば固形ディスク、ペレットなどの形で)、フェイスマスク内部に固定されるか又は貼り付けられることなしに配置することができる。この例において、NO発生製剤10,10’はフェイスマスク12内にルーズな状態で残される。いくつかの実施態様では、NO発生製剤10,10’はNO透過性容器32内部に含有され、NO透過性容器32はフェイスマスク12内に固定されるか又は貼り付けられることなしに配置することができる。
【0117】
別の例において、フェイスマスク12は、使用者の口又は鼻のうちの少なくとも一方に有効に近接してNO発生製剤10,10’を保持するためのハウジング14(図2A~2C及び3A~3C)を含む。図2C及び3Cは、使用者の顔の所定の位置に位置するフェイスマスク12を示し、そしてまた、使用者の口又は鼻のうちの少なくとも一方に有効に近接するNO発生製剤10,10’(図2A~2C及び3A~3C)を示す。
【0118】
図2A~2C及び3A~3Cに示された例において、ハウジング14は選択的に開閉する。図2A及び3Aはハウジングのドアを開位置(例えばNO発生製剤10,10’をフェイスマスク12内へ導入するために用いる)で示し、そして図2B及び3Bは、ハウジング14のドアを閉位置(例えばNOガスを使用者に導入することが望ましいときに用いる)で示している。
【0119】
図2A及び図3Aに示された開形態は、ハウジング14のドア内に設けられた4つの単一固形ペレット/タブレットを示している。それぞれの個々の単一固形ペレット/タブレットは、NO発生製剤10,10’の一例である。このようなものとして、NO発生製剤10,10’は単一固形物を含む。言うまでもなく、所与の時点で所期レベルのNOガスを生成する任意の数の単一ペレット/タブレットをNO発生製剤10,10’として使用することができる。このようなものとして、多数の単一固形ペレット/タブレットを一緒に使用する場合には、複数の単一固形物をまとめてNO発生製剤10,10’と呼ぶことがある。この場合いくつかの例において、NO発生製剤10,10’は複数の単一固形物を含む。
【0120】
図2A及び3Aに示された例では、それぞれの単一ペレット/タブレット(例えばNO発生製剤10,10’)はハウジング14のドアの所定の場所にスナップ留めされてよい。他の例では、それぞれの単一ペレット/タブレット(例えばNO発生製剤10,10’)は、ハウジング14のドア内に画定された各レセプタクル内へ滑り込ませることができる。他の適宜の機構を使用して、NO発生製剤10,10’の単一固形形態をハウジング14内に保持することもできる。
【0121】
ドアが現存のヒンジを中心として開旋回し得るものとして示されているものの、言うまでもなく、ハウジングのドアは、任意の適宜のタイプの動作、例えば旋回、スライド、フリップなどによって選択的に開閉し得るように形成/設計されていてよい。言うまでもなく、図2A~2C及び図3A~3Cに示されたハウジング14は一例であり、いかなる適宜のアタッチメント構造又はデバイスもハウジング14として使用することができる。例えば、フェイスマスク12のハウジングは(内部又は外部)にフラップ又はパウチを含んでよい。フラップ又はパウチは、NO発生製剤10,10’を受容し保持することができる。
【0122】
図3Aに示されたフェイスマスク吸入デバイス(フェイスマスク12)の例において、ハウジング14はさらに、NO発生製剤10,10’(RSNOタブレット/ペレット)と動作可能に接触している空気加湿器22と、空気加湿器22と流体連通している空気ポンプ20と、空気加湿器22及び空気ポンプ20に動作可能に接続された電力源(図にはバッテリー24として示されている)とを含む。図3Aに示されているように、ハウジング14は、これを貫通して画定された空気入口18を有している。空気ポンプ20は、空気加湿器22によって生成された任意の水蒸気を空気入口18を通して、ひいてはNO発生製剤10,10’の近くに輸送するように、空気入口に接続されていてよい。言うまでもなく、「流体連通」は広義に解釈されるべきであり、例えば液体及び気体を含む。
【0123】
図3Bに示されているように、空気加湿器22及び空気ポンプ20は、ハウジング14上又はハウジング14内に取り付けるのに十分に小さい。バッテリー24の電力は、空気加湿器22及び空気ポンプ20の両方を操作するのに十分であってよく、あるいは別々のバッテリー24が空気加湿器22及び空気ポンプ20に動作可能に接続されてよい。空気加湿器22は、使用者の呼気から来る湿分の有無に関わらず湿分(例えば水蒸気)を生成するように本明細書中に開示された例のいずれかに使用することができる。空気ポンプ20は、NO発生製剤10,10’の近くに生成済み水蒸気を輸送するために使用することができ、そしてまた生成されたNOガスを使用者に輸送することもできる。
【0124】
フェイスマスク吸入デバイスのさらなる例は示されていないが、しかし図8に示されたシステム例と同様である。この例において、フェイスマスク吸入デバイスは、前記フェイスマスク12に動作可能に接続された空気ポンプ20と、前記空気ポンプ20と流体連通している空気加湿器22と、NO発生製剤10,10’を保持するための容器32であって、容器32が空気加湿器22及びフェイスマスク12と流体連通している、容器32とを含む。さらに別の例では、吸入デバイスが、容器と流体連通しているガス混合器と、ガス混合器に動作可能に接続された第2空気ポンプと、ガス混合器と前記フェイスマスクとの間に動作可能に接続されたNOセンサと、NOセンサ及び前記ガス混合器に動作可能に接続されたフィードバックコントローラとを含む。この例は、鼻カニューレ34(図8)をフェイスマスク12と置き換えることを除けば、図8に示されたシステムと同様である。この例では、フェイスマスク12はハウジング14を有していなくてよく、容器32にも流体連通しているコンジット(例えばチューブ)を取り付けるためのアダプタを有することができる。
【0125】
さらに他の例では、フェイスマスク12のハウジング14は、NOガスを生成する液体を受容し含有するように形成されていてよい。いくつかの例では、ハウジング14は少なくとも部分的にリザーバを画定している。リザーバは、NO発生製剤10,10’が溶解(又は分散)された所定の体積の水和液を受容するようになっている。これらの例において、固形NO発生製剤10,10’は規定/所定の体積の水と混合することができ、次いで戻し済み溶液をハウジング14内へ注ぐことができる。別の例では、ハウジング14は少なくとも部分的にリザーバを画定している。リザーバは、亜硝酸塩が酸性緩衝液中に溶解された所定の体積の液体形態のNO発生製剤を受容するようになっている。これらの例のいくつかにおいて、亜硝酸塩を含む粉末は規定/所定の体積の酸性緩衝液と混合することができ、次いで戻し済み溶液をハウジング14内へ注ぎ込むことができる。これらの例のうちの他のものにおいて、亜硝酸塩の水溶液を酸性緩衝液と混合することができ、次いで混合溶液をハウジング14内へ注ぐことができる。さらに他の例において、ハウジングは吸収剤を含有してよい。吸収剤はNO発生製剤で被覆されるか、NO発生製剤の液体形態を保持することができる。
【0126】
これらの例のうちの1つが図26に示されている。この例では、ハウジング14は部分的にリザーバ60を画定し、そして前記フェイスマスク12の内部と前記リザーバ60の内部との間に位置決めされたリザーバ壁62又はフィルタ64を含む。リザーバ壁62又はフィルタ64は無孔質のNO透過性材料、例えばポリウレタン、ポリ(テトラフルオロエチレン)などから成っていてよい。このタイプの材料から成るリザーバ壁62又はフィルタ64は、NOガスがこれを貫通する(例えばフェイスマスク12内へ浸透する)のを可能にするが、しかしまた、固形NO発生製剤10,10’を含有する水和液、又はNO発生製剤の液体形態の他の例の酸性緩衝液の漏れに対して抵抗することにもなる。換言すれば、リザーバ壁62又はフィルタ64は水和液又は酸性緩衝液に対して不透過性であり、そしてNO透過性である。このようなものとして、リザーバ壁62又はフィルタ64は、リザーバ60内部で生成されたNOガスが、液体が逃げるのを許すことなしに、使用者によって吸入されるのを可能にする。フィルタ64がフェイスマスク12の内部とリザーバ60の内部との間に位置決めされている場合、フィルタ64は、NO発生製剤によって放出された二酸化窒素(NO)をスカベンジするための吸収剤、発生したNOを変化させてNOに戻すための試薬、又はこれらの組み合わせを含んでよい。
【0127】
これらの例では、ハウジング14は、(例えば図2A及び2Bに示されているように)開位置と閉位置との間で運動可能ではなく、シール可能な入力ポート66を含んでよい。入力ポートでは、液体をリザーバ60内へ導入することができる。取外し可能なキャップ68を使用して、シール可能な入力ポート66をシールすることができる。
【0128】
図26には示されていないが、この例はさらに、リザーバ60内に吸収性材料を含んでよい。吸収性材料は液体(例えば酸性緩衝液の水和液)を吸収するが、しかしNOガスが材料から出てリザーバ壁62又はフィルタ64を貫通するのを可能にする。リザーバ60内に含み得る吸収性材料の例は綿球又は圧縮綿、又はNOの製造に影響を及ぼさない同様の材料を含む。これらの例では、シール可能な入力ポート66は、吸収パッド及びNO発生製剤の液体形態例を導入するための、あるいはNO発生製剤及び活性化用液体(例えば水又は酸性緩衝液)を導入するためのより大きな開口又はドアとして形成されてよい。
【0129】
図26のリザーバ60は、固形NO発生製剤10,10’を含有する容器32を受容することもできる。
【0130】
図26に示されていない別の形態は、NO発生製剤によって生成されたNOをリザーバから、そして吸入デバイスの使用者へ向かって吹き付けるためのファンを使用することである。
【0131】
やはり図26には示されていないが、言うまでもなくこのデバイス例は付加的なフィルタを含んでいてよい。付加的なフィルタは任意のNOをNOに変化させるための試薬又は触媒を含有する。このフィルタはリザーバ壁62又はフィルタ64とフェイスマスク12の内部との間に位置決めすることにより、NOが使用者に達するのを防止する。
【0132】
図26に示された例は、ダイバーター弁(図示せず)を含んでもよい。ダイバーター弁は、NO発生製剤を含有するリザーバ60と相互作用することなしに、デバイス(例えばフェイスマスク12)からの呼気をチャネリングする。この弁の構成は、吸気がNO発生システムを通過して使用者の口及び鼻内に入るのを可能にする。
【0133】
図26に示された例はチャンバ(リザーバ60に流体接続されている)を含んでもよい。チャンバにおいて、呼吸休止中及び呼気時間中にダイバーター弁を通して放出NOを蓄積することができる。次いで吸気中にパルス状集結物(pulsed concentration)として、保存されたNOが利用可能になる。
【0134】
戻し済み溶液又は分散体(例えばNO発生製剤10,10’を含む水和液)を受容し得るフェイスマスク12の例のいずれかにおいて、又はNO発生製剤の液体形態の別の例において、言うまでもなく、ハウジング14(ひいてはリザーバ60)はフェイスマスク12と一緒に一体的に形成されてよく、あるいはフェイスマスク12に取り付けられた別個のハウジング14であってもよい。
【0135】
図4図7に示された例は、NO発生製剤10,10’をフェイスマスク12内へ組み込むためのいくつかの付加的な形態を示している。図4A及び4Bは、NO発生製剤10の複数の単一ペレット/錠剤をいかにしてハウジング14内に配置するかの別の例を示している。この例において、ハウジング14は、NO発生製剤10の単一ペレット/錠剤のための個々のレセプタクルを含んでよい。あるいは、NO発生製剤10の単一ペレット/錠剤は、ハウジング14内に装入し得るキャップリングに固定してもよい。
【0136】
図5~7の形態はまた逆止弁、例えば吸気逆止弁16(図2A~2C及び図5)、呼気逆止弁16’(図6)、又は吸気逆止弁16及び呼気逆止弁16’の両方(図7)を含む。逆止弁16,16’は、呼気がNO発生製剤10,10’中へ戻るのを防止するのを助けることができる。それというのも呼気はNOガスをシステムから不所望に駆出し得るからである。
【0137】
図5及び7に示された例はまたフィルタ26を示している。このフィルタは、一方向逆止弁16に隣接してフェイスマスク12の外側に位置決めされている。このフィルタ26はN95又はN99フィルタであってよい。
【0138】
例において、フェイスマスク12は濾過用フェイスマスクを含む。本明細書中では、濾過用フェイスマスクは、着用者の少なくとも鼻及び口を覆い、そしてフィルタエレメント19を通る空気からの汚染物質及び/又は粒子を除去するためのフィルタエレメント19を含むマスクを意味する。図4Aに示されているように、マスク本体13は、着用者の顔の輪郭にフィットするようにモールディングされたフィルタエレメント19である。空気流方向矢印15によって示されているように、フィルタエレメント19は二方向フィルタであり、二方向フィルタは吸気中及び呼気中の空気を濾過するようになっている。図4Aに示されているように、ハウジング14はマスク本体13を貫通して載置され、これに取り付けられている。図4A及び4Bに示されているように、NO発生製剤10は、ハウジング14の内壁21に画定されたアパーチャ17の周りに分配されている。図4Aに示されている例において、ハウジング14の外壁23が、上記無孔質のNO透過性材料から成っていてよい。別の例において、ハウジング14の外壁23は無孔質のNO不透過性材料から成っていてよい。図5に示されているように、吸入逆止弁16が開くことにより、空気がハウジング14の外壁23を吸入方向に通流するのを可能にするようになっている。吸入逆止弁16は閉じることにより、吸入方向とは反対方向の呼気方向に空気がハウジング14の外壁23を通過するのを遮断する。図5に示されているように、空気が吸入逆止弁16を通過する前に、空気を濾過するように、ハウジング14にフィルタ26が接続されていてよい。このフィルタ26は任意の望ましい濾過特性を有していてよい。例えば、フィルタ26はN95フィルタ又はN99フィルタであってよい。フィルタ26がフィルタエレメント19と並列に動作することが認識される。したがって、フィルタ26及びフィルタエレメント19の流れ特性は相互依存性である。例えば、フィルタ26と比較してフィルタエレメント19を通して空気を引き抜くことが極めて容易であるならば、空気のほとんどはフィルタエレメント19を通る最小抵抗経路を取る。
【0139】
図6に示された例は、呼気逆止弁16’がマスク本体13上に取り付けられた図4Bに示された例と同様である。呼気逆止弁16’は開くことにより、空気がマスク本体13を通って呼気方向26に通流するのを可能にするようになっている。呼気逆止弁16’は閉じることにより、呼気方向27とは反対方向の吸入方向に空気が逆止弁16’を通過するのを遮断する。こうして、呼気逆止弁16’は、呼気の少なくとも一部がフィルタエレメント19を迂回するのを可能にし、これにより例えば、フェイスマスク12及び着用者の顔31(例えば図3C参照)によって仕切られた内部空間20内に蓄積するおそれのある湿気を低減することができる。図7に示されているように、本開示例は、図5に示されたフィルタ26を有する吸入逆止弁16と、図6に示された呼気逆止弁16’との組み合わせを含んでよい。
【0140】
ここで図8を参照すると、別の吸入デバイス例が、空気ポンプ20と、空気ポンプ22と流体連通している空気加湿器30(ヒドレーター)と、NO発生製剤10(キャニスタ内部のいくつかのRSNOペレット/タブレットとして示されている)を保持するための容器32であって、容器32が空気加湿器2230と流体連通している、容器32(例えばキャニスタ)と、容器32と流体連通している鼻カニューレ34(又はベンチレータ(図示せず))とを含む吸入システムを含む。この例は、図8の上側に示された、しかしガス混合器36又はNOセンサ38のない形態を含む。しかしながら言うまでもなく、所望の場合にはNOセンサ38をこの形態で使用することもできる。
【0141】
別の例において、吸入システムはさらに、容器32と流体連通しているガス混合器36と、ガス混合器36に動作可能に接続された第2空気ポンプ20’(図8の下側に示されている)と、ガス混合器36と鼻カニューレ34(又はベンチレータ)との間に動作可能に接続されたNOセンサと、NOセンサ38及び前記ガス混合器36に動作可能に接続されたフィードバックコントローラ40とを含む。
【0142】
第2空気ポンプ20’は酸素含有ガスをガス混合器に導入する。ここでは酸素含有ガスをNOガスと混合することにより、吸入デバイス(例えば鼻カニューレ34、又は他の例では、フェイスマスク12又はベンチレータ)に輸送される出力ガスを形成する。酸素含有ガスは少なくとも実質的に純粋な酸素ガスO、又は空気、又は酸素を含む低酸素ガスであってよい。空気ポンプ20’が図8に示されてはいるものの、酸素含有ガスは、任意の適宜のガス源(例えば圧縮ガスシリンダー(図示せず))から送達されてよい。このガス源は酸素含有ガス流量を制御することができ、あるいはガス混合器内への酸素含有ガス流入量を制御するように、流量コントローラに接続することもできる。任意の適宜のガス流量を用いることができる。一例としては、酸素含有ガスの流量は約50mL/min~約5L/minであってよい。別の例では、酸素含有ガスの流量は、出力ガス流が約20%の酸素~約99.99%の酸素を含有するように制御されてよい。一例において、酸素含有ガスとして100%空気飽和を用いることができる。これは出力ガス流中約10mg/L(ppm)のOに相当する。
【0143】
言うまでもなく、NOセンサ38を使用して、容器32からの(又はシステム内に存在するならばガス混合器36からの)出力ガス流中のNOレベルをモニタリングすることができる。NO(二酸化窒素。これはOがNOと反応することから発生することがあり、レシピエント/患者にとって望ましくないことがある)の形成を回避するためにNOレベルをモニタリングすることが望ましい。あらゆる適宜のNOセンサ38を使用してよい。
【0144】
一例において、NOセンサ38はShibukiスタイルセンサ(図示せず)である。このセンサは、ガス透過性メンブレンの後ろの内側白金(Pt)電極位置におけるNOから硝酸塩(NO )への酸化に基づく。
【0145】
NOセンサ38の別の例は、比較的急速な応答時間を示すアンペロメトリックNOセンサであり、そして作業電極の大きい表面積はShibuki形態よりも大きい電流を産出する。
【0146】
いくつかの例はまたNOセンサを含む。NOセンサを使用して、容器32からの(又はシステム内に存在するならばガス混合器36からの)出力ガス流中のNOレベルをモニタリングすることができる。
【0147】
例えばフィードバックコントローラ40によってNOセンサデータ(すなわち出力ガス流中のNO濃度及び/又は出力ガス流中のNO濃度)を使用して、送達末端に少なくとも実質的に一定のNO濃度を得るようにシステムを制御することができる。
【0148】
目標NOレベルは、NOが使用される所与の用途に基づいてよい。目標レベルは、患者及び用途に応じて極めて低いか又は極めて高くてよい。一例として、吸入療法を受ける新生児のための目標NOレベルは約10ppm~約70ppmであってよく、そしてバイパス手術中の血小板及び他の細胞の活性化を防止するために生成されるべき目標NOレベルは約190ppm~約210ppmであってよい。さらに、例えば肺感染症のための抗菌用途では、吸入療法に際してより低いNOレベル、例えば約500ppb~約10ppmのレベルが有用であり得る。
【0149】
上述のように、センサデータを使用して、望ましくないNO量が出力ガス流中に存在するか否かを見極めることもできる。望ましくないNO量が存在する場合には、システムの警報を作動させることができる。さらに、出力ガス流が鼻カニューレ34、フェイスマスク12、鼻ベントプラグ(図25A~25C参照)、又はベンチレータ(図示せず)を介して患者に送達される直前に、吸入デバイス内にソーダ石灰スクラバー又は他のNOスカベンジャーを含むことができる。含有率が最終気相内の1ppm~3ppmを上回る場合、ソーダ石灰スクラバーは余剰のNOを除去することができる。
【0150】
図8と同様の他の例において、空気加湿器22の代わりに水和液(例えば水)のリザーバを設けることもできる。リザーバは、規定/所定の体積の水和液を容器32内へ導入し、ひいてはこれに含有されるNO発生製剤10,10’と接触させるように形成することができる。容器32内部では、水和液はNOガス発生を活性化する。いくつかの例において、NO発生製剤10,10’は、これが規定の水和液と混合されると規定の体積のNOガスを放出するように構成されている。NOガスは次いでガス混合器36に輸送することができる。ガス混合器において、NOガスは酸素含有ガスと混合され、患者へ送達される。これらの例では、リザーバは充填可能なので、新鮮な水和液を導入し得る。加えて、容器32は充填可能なので、使用済み液を除去することができ、そしてNOガス発生サイクルが実施された後、NO発生製剤10,10’の新鮮な固形ペレット/タブレットを導入することができる。
【0151】
図8と同様のさらに他の例において、空気加湿器22の代わりに(添加剤及び/又は酸素スクラバーを含む又は含まない)酸性緩衝液のリザーバを設けることもできる。リザーバは、規定/所定の体積の酸性緩衝液を容器32内へ導入し、ひいてはこれに含有される亜硝酸塩(粉末又は水溶液形態)と接触させるように形成することができる。容器32内部で、酸性緩衝液は亜硝酸塩を酸性化し、そしてNOガス発生を活性化する。いくつかの例において、酸性化された亜硝酸塩は、例えば約1ppm~約250ppmの規定の体積のNOガスを放出するように構成されている。次いでNOガスをガス混合器36に輸送することができる。ガス混合器において、NOガスは酸素含有ガスと混合され、患者へ送達される。これらの例では、リザーバは充填可能なので、新鮮な酸性緩衝液を導入し得る。加えて、容器32は充填可能なので、使用済み液を除去することができ、そしてNOガス発生サイクルが実施された後、新鮮な亜硝酸塩(粉末形態又は水溶液形態)を導入することができる。
【0152】
フェイスマスク12及び鼻カニューレ34が吸入デバイスの例として示されてはいるものの、言うまでもなく、本開示の例に従って、ベンチレータ、又は出力ガス流を使用者/患者の気道に送達するのに適した任意の他の装置を使用することもできる。
【0153】
いくつかの例において、NO発生製剤10,10’は容器32の一例内に含有され、容器32は吸入デバイスに導入される。いくつかの例では、容器32は吸入デバイス内部に単に配置されるだけでよい。図21及び22に示されているような他の例において、NO透過性容器32はアタッチメント機構を介して吸入デバイスに貼り付けられている。これらの例のそれぞれにおいて、吸入デバイスはフェイスマスク12である。
【0154】
図22に示された例において、フェイスマスク12の内面が(ライナー44が取り外された後)接着剤42と接触し、そしてフェイスマスク12の内側に容器32を保持する。容器32、ひいてはNO発生製剤(この例では湿分で活性化される)は、使用者の口又は鼻のうちの少なくとも一方に有効に近接して保持される。
【0155】
図23に示された例において、フェイスマスク12の内面は受容部分を含む。受容部分はクリップ46、ひいては容器32をフェイスマスク12に固定することができる。クリップ46を介して、容器32、ひいてはNO発生製剤10,10’(この例では湿分で活性化される)は、使用者の口又は鼻のうちの少なくとも一方に有効に近接して保持される。
【0156】
図22及び23に示された例において、使用者の息は、通常の呼吸時に鼻及び口内に引き込まれるガス状NOを放出するのに十分な湿気を送達する。しかしながら、これらの例は空気加湿器22及び空気ポンプ20を含むこともできる。
【0157】
他の例では、安定NO供与体/付加体は、青色光又は紫外(UV)光で活性化可能であり、そしてNO発生システムはさらにNO発生製剤10,10’を照明するように位置決めされた青色光源又はUV光源50を含む。いくつかの例では、NO発生製剤10,10’及び青色光源又はUV光源50は、酸化窒素を生成するためにNO発生製剤10,10’を効果的に照明する形で吸入デバイス上又は吸入デバイス内に位置決めされている。
【0158】
図24Aは、吸入デバイス(例えばフェイスマスク12)の内側の光活性化型NO発生システム47の一例を示している。いくつかの例において、光活性化型NO発生システム47は、パウチ(又は他の容器32)内部に含有されたNO発生製剤10,10’を含む。パウチはNO透過性であり、且つ青色光及び/又はUV光に対して透明である。他の例において、NO発生製剤10,10’はハウジング48(容器32なし)の内壁に化学的又は物理的に付着されていてよい。
【0159】
図24Aに示されたシステム47の例はまた、NO透過性容器32が取り付けられたハウジング48と、NO容器32を照明するためにハウジング48内部に位置決めされた青色光源又はUV光源50と、青色光源又はUV光源50に動作可能に接続されたバッテリー24とを含む。
【0160】
光活性化型NO発生システム47のハウジング48は、種々の構成部分を保持することができ、且つ生成されたNOガス分子が使用者/患者による吸入のためにフェイスマスク12の内部へ放出されるのを可能にする。図24Aに示された例はNO透過性容器(NO発生製剤10,10’を含有する)のためのハウジング48を含んでいるものの、言うまでもなく、NO発生製剤10,10’はその代わりに吸入デバイスの表面上のフィルムとして被覆されてもよい。これらの例において、NO発生製剤10,10’の被膜/フィルムは吸入デバイスの内面に被着されることになり、そして青色光源又はUV光源50は、被膜/フィルムを照明するために吸入デバイス内部に位置決めされることになる。
【0161】
固形の光感受性NO供与体/付加体の光分解を開始する光を発することができるものであれば、いずれの青色光源又はUV光源50も使用することができる。換言すれば、NO供与体/付加体から一酸化窒素を放出させる特定の波長の光を発することができるものであれば、いずれの光源50も使用することができる。このようなものとして、光源50は使用されるNO供与体、及び所期のNO放出速度に依存することができる。例としては、光源50は高強度発光ダイオード(LED)、レーザーダイオード、ランプなどであってよい。一例において、青色光源又はUV光源50は発光ダイオードである。好適なLEDは、例えば約340nm~約520nm、例えば340nm、又は385nm、又は470nm、又は500nmの公称波長を有するLEDであってよい。一例において、青色光源又はUV光源50は、約300nm~約520nmの光波長を種々の強度で発光する。
【0162】
1つ又は2つ以上の光源50を使用して、NO供与体/付加体からNOを放出することができる。複数の光源50を使用すると、NO放出量をさらに制御することができる。例えば、より高いNOレベルが望ましい場合には、容器32に面する光源50の全て(又はNO供与製剤の被膜/フィルム)を活性化することにより、NO供与体/付加体に向かって発光することができ、そしてより低いNOレベルが望ましい場合には、光源50の全てよりも少ない数の光源を活性化してよい。いくつかの例では、NO発生製剤10,10’は、約300nm~約520nmの光波長に種々の強度で暴露されると、規定の体積のNOガスを放出するように構成されている。
【0163】
いくつかの例において、システム47はさらに、青色光源又はUV光源50に動作可能に接続された制御電子素子52と、制御電子素子52に動作可能に接続されたバッテリー24とを含む。バッテリー24はコインバッテリー、又は光源50及び制御電子素子52に適した他の電源であってよい。
【0164】
システム47のいくつかの例はさらに、NOセンサ38、二酸化窒素(NO)センサ、又はこれらの組み合わせを含む。
【0165】
図24Aに示された例は、ハウジング48内に位置決めされたNOセンサ38と、ハウジング48内に位置決めされた制御電子素子52とを含む。光源50がオン及びオフにされるとオン・サイクルの時間、強度、出力面密度などを制御するように、光源50に電子回路(例えば制御電子素子52)を動作可能に接続することができる。一例において、制御電子素子52は、規定の体積のNOガスを生成するために、光源50の出力を制御する。
【0166】
制御電子素子52は、検知・フィードバックシステムの部分であってもよい。検知・フィードバックシステムは、NOセンサ38とフィードバックコントローラ40(図24Aには示されていない)とを含む。検知・フィードバックシステムはNOセンサ(図24Aには示されていない)を含んでもよい。NOセンサ38及びNOセンサからのフィードバックを用いて、光源50の1つ又は2つ以上のパラメータをサーボ制御することによって、送達末端に少なくとも実質的に一定のNO濃度を得ることができる。
【0167】
図24Aの光活性化型NO発生システム47は、フェイスマスク12内部に取り付けられた状態で示されてはいるものの言うまでもなく、図24Aの光活性化型NO発生システムは、他の吸入デバイス内へ組み込まれてもよい。一例において、図24Aに示された光活性化型NO発生システム47は、吸入デバイスとは別個のものであり、そしてこれと流体連通している。これらの例において、図24Aに示された光活性化型NO発生システム47は、ハウジング48に流体接続された第1端部を含むチューブと、第1端部に対して遠位側にあるチューブの第2端部に設けられたアダプタであって、アダプタがフェイスマスク12、鼻カニューレ34、又は呼吸チューブ(又はベンチレータ)に取り付けられるようになっている、アダプタとを含む。この例において、NOガス分子は、青色及び/又はUV光に暴露されるとハウジング48内部で生成され、次いでNOガス分子はチューブを通して吸入デバイスへ輸送され、次いで使用者/患者に送達される。これらの例は、ハウジング47からアダプタへNOを輸送するためのファン又は吸引デバイスを含んでもよい。1つの具体例において、図8に示された吸入デバイスは、光活性化型NO発生システム47を含むように改変されてよい。この具体例において、図8に示された容器34及び空気加湿器22の代わりに、図24Aに示された光活性化型NO発生システム47を使用することができる。
【0168】
チューブ及びアダプタについては光活性化型NO発生システム47とともに説明しているが、言うまでもなく、これらの構成部分は本明細書中に開示された湿分活性化型システムとともに同様に使用することもできる。これらの例のうちのいくつかでは、有効量の水蒸気をハウジングに導入するために、空気加湿器22、空気ポンプ20、及び電力源を含むことになる。ハウジングは容器32とNO発生製剤10,10’とを含有する。
【0169】
NO供与体/付加体が光及び湿分で活性化可能である場合、言うまでもなく、湿気及び/又は水和液及び/又はUV又は青色光50を使用して、NO発生製剤10中のNO供与体/付加体を活性化することができる。このハイブリッドシステム70の一例が図24Bに示されている。この例において、光活性化型NO発生システム47(図24A)は、容器32(NO発生製剤10,10’を含有する)を取り囲む付加的なチャンバ72を含むことができる。このチャンバ72は液体不透過性なので、導入されたいかなる液体又は湿分も、光活性化型NO発生システム47の構成部分に干渉することはない。このチャンバ72は、発せられたUV又は青色光に対して透明な1つの壁(光源50に面する)と、NO透過性の別の壁(吸入デバイスの内部に面する)とを含む。チャンバ72は水和液を受容することができる。水和液はNO供与体/付加体を活性化することができ、あるいは空気加湿器22に動作可能に接続されてよい。空気加湿器はNO供与体/付加体を活性化するのに十分な湿分を導入することができる。
【0170】
NO発生システムのさらに他の例が図25A図25B、及び図25Cに示されている。これらのシステム例は鼻ベントプラグ又はノーズピローを含む。鼻ベントプラグのそれぞれが、部分的に閉じられた内部部分57を画定する一体的に形成された壁55A,55B,55Cを有する一酸化窒素(NO)不透過性ハウジング54と、一体的に形成された壁のうちの1つの壁55Aから延びて部分的に閉じられた内部部分57と流体連通している2つの鼻突起58と、部分的に閉じられた内部部分57内へ空気流を導入するために一体的に形成された壁のうちの別の壁55C内に画定された空気ベント56と、部分的に閉じられた内部部分57内のレセプタクル59であって、レセプタクル59がNO発生製剤を含有し、NO発生製剤を受容するようになっている、レセプタクル59とを含む。
【0171】
一酸化窒素(NO)不透過性ハウジング54は、任意のNO不透過性材料から形成することができる。ハウジング54を製造するために使用される材料は、シリコーン、又はNOと相互作用(例えば吸収)することで知られている他の材料を含むべきではない。
【0172】
ハウジング54の一体的に形成された壁55A,55B,55Cと、鼻突起58とは、モールディング、3D印刷などによって形成された1つの連続した材料片であってよい。
【0173】
鼻ベントプラグハウジング54は導入ベント56を含む。ベント56は、空気がNO発生製剤を介して鼻突起58の一方に引き込まれるように戦略的に配置されてよい。ベント56は、ハウジング54の上面とは異なり、ハウジング54の側方(壁55C)又は側方の近くに配置されることが望ましい。この配置は、NOがベント56を通って逃げるのを防止することができる。この配置は、閉じられた内部部分57内にヘッドスペースを形成するのを助けることもできる。ヘッドスペースでは、呼気中及び使用者の自然呼吸サイクルにおける休止時間中に、NO濃度を形成することができる。保存されたNOは次いで吸気中にパルス状集結物として利用可能である(さらに下で説明する)。
【0174】
それぞれのベント56はフィン(図示せず)と動作連携してもよい。フィンは、ベント56を通して、閉じられた内部部分57内へ流入するべく空気を案内するのを助けるように位置決めされている。
【0175】
鼻突起58は、使用者の鼻孔内に挿入し得るように成形されてよく、あるいは使用者の鼻孔の外側に、しかし鼻孔の近くに配置し得るように成形されてもよい。例えば、鼻突起58は、使用者の鼻孔のすぐ下にぴたりとフィットしてよい。後者の例では、ハウジング54は、鼻突起58を使用者の顔上の所望の位置に保持するように、ヘッドストラップ74(図25B)を含んでよい。このようなものとして、NO発生システムのいくつかの例はさらに、ハウジング54に固定されたヘッドストラップ74を含む。ハウジング54は、ヘッドストラップ74を固定するために付加的な穴又は別のアタッチメント機構(例えばフック及びループファスナ)を含んでよい。ヘッドストラップ74は調節可能であってもよい。言うまでもなく、鼻突起58は壁55Aと面一であってよく(したがって真の突起ではない)、そしてヘッドストラップ74は、使用者の鼻孔に隣接して鼻ベントプラグを保持するために使用することができる。
【0176】
鼻ベントプラグはさらに、閉じられた内部部分57内部にレセプタクル59を含む。レセプタクル59の種々異なる例が図25A~25Cに示されている。レセプタクル59は、空気ベント56及び鼻突起58に有効に近接して(粉末形態、液体形態、固形形態などの)NO発生製剤を保持している。
【0177】
具体的に図25Aを参照すると、レセプタクル59は、NO発生製剤10,10’の固形形態を有する容器32を受容するようになっている。一例において、NO発生製剤10,10’は、容器32内に単一固形物又は複数の単一固形物を含む。容器32は導入ベント56と吸入開口58との間に位置決めされてよい。この位置決めは、ベント56からの、そしていくつかの事例では使用者の呼気からの湿分及び/又は空気が容器32に入り、容器内に含有されたNO発生製剤10,10’を活性化するのを可能にする。この位置も、生成されたNOガス分子が、鼻貫通部58を通して使用者によって吸入されるのを可能にする。
【0178】
使用中、使用者は鼻貫通部58を通して息を吸い吐く。吸気中の湿分は、NO発生製剤10,10’を活性化するのに十分であってよい。他の例において、鼻ベントプラグハウジング54は、ハウジング54に固定された空気加湿器22を含んでもよく、そして空気加湿器は湿分を生成する。図25Aに示されているように、システムはハウジング54に固定されたファン(例えば空気ポンプ20)を含んでもよい。ファンは(ベント56又は空気加湿器20からの)湿分をNO発生製剤10,10’へ向かって押す。
【0179】
図25Aに示された例において、NO発生製剤10,10’は、有効量の水蒸気に暴露されると活性化し得る安定NO供与体/付加体を含み、NO発生製剤10,10’はNO透過性容器32内部に含まれており、そしてレセプタクル59は、NO透過性容器32を貼り付けるための壁、又はNO透過性容器32を保持するためのスロットのうちの一方を含む。レセプタクル壁はハウジング54の中心に突入し、例えば(図22に示された例と同様の)接着剤42を受容し、又は(図23に示された例と同様の)クリップ46にスナップ留めすることができる。(図25Aに示される)スペクトルのスロットは容器32を所定の場所に固定することができる。
【0180】
一例において、容器32はレセプタクル59によって永久に貼り付けられ、そして別の例では、容器32はレセプタクル59によって取り外し可能に貼り付けられる。容器32(ひいてはNO発生製剤10,10’)が(例えば接着剤42又はスロットを介して)ハウジング54内部に永久に固定される場合、鼻ベントプラグ全体は(例えばその有用寿命がきた後)使い捨てであってよい。容器32(ひいてはNO発生製剤10,10’)が(例えばスロットを介して)ハウジング54内部に取り外し可能に固定される場合、鼻ベントプラグは再使用可能である。これらの例では、新しい容器32(及び新しいNO発生製剤10,10’)をハウジング54内へ導入し、そしてレセプタクル59によって固定することができる。
【0181】
鼻ベントプラグが再利用可能な場合、ハウジング54は、一体的に形成された壁55Cのうちの1つの壁内に画定されたドア69を(鼻ベントプラグの上部に)さらに含んでよい。ドア69は閉位置と、レセプタクル59へのアクセスを可能にする開位置との間で動かすことができる。ドア69の一例が図25Bに示されている。
【0182】
ここで具体的に図25Bを参照すると、レセプタクル59のいくつかの例は、NO発生製剤の液体形態73を受容するためのリザーバ60を含む。
【0183】
これらの例のうちの1つにおいて、システムはNO発生製剤10,10’の固形形態を含んでよい。この固形形態は、液体形態73がリザーバ60内に導入される前に液体形態73を生成するために水和液中で戻すことができる。この例において、NO発生製剤10,10’の固形形態は、安定NO供与体/付加体と、親水性バインダーと、製剤が有効量の水和液(例えば水)に暴露された後のNO供与体/付加体からのNO放出速度を制御するための添加剤とを含む。水和液を固形形態に添加することにより、液体形態73を生成することができる。液体形態は次いでドア69を通してリザーバ60内へ導入される。
【0184】
これらの例のうちの別の例において、システムはNO発生製剤10,10’の固形形態を含んでよい。この固形形態は、液体形態73がリザーバ60内に導入される前に液体形態73を生成するために酸性緩衝液中で戻すことができる。この例において、NO発生製剤の固形形態は、有効量の酸性緩衝液に暴露されるとNOを生成するための亜硝酸塩と、製剤が有効量の酸性緩衝液に暴露された後の亜硝酸塩からのNO放出速度を制御するための添加剤とを含む。この例において、NO発生製剤の固形形態は酸素スクラバーをさらに含む。NO発生製剤のこのような固形形態は、酸性緩衝液で戻すことができる粉末である。酸性緩衝液は固形形態に添加することにより、液体形態73を生成することができる。液体形態は次いでドア69を通してリザーバ60内に導入される。
【0185】
これらの例のうちのさらなる別の例において、システムは、NO発生製剤の液体形態73を生成するためのキットを含むことができる。キットは、水中に亜硝酸塩を含む第1溶液を含み、そしてまた酸性緩衝液と、製剤が有効量の酸性緩衝液に暴露された後の亜硝酸塩からのNO放出速度を制御するための添加剤とを含む第2溶液を含む。この例において、第1溶液と第2溶液とを互いに混合し、そして次いでドア69を通してリザーバ60/レセプタクル59に添加することができる。
【0186】
レセプタクル59の他の例はリザーバ60を含むが、しかしさらに吸収パッド71(例えば綿、圧縮綿など)を含む。吸収パッドは、リザーバ60内に含まれ且つNO発生製剤の液体形態で湿潤されるようになっているもの、又はNO発生製剤の液体形態で湿潤され且つ次いでリザーバ60内へ導入されるようになっているもののうちの一方である。いくつかの例では、吸収パッド71はリザーバ60内へ組み込まれ、そして液体形態73のいずれかの例が次いでリザーバ60内へ組み込まれる。他の例では、吸収パッド71は鼻ベントプラグの外側で液体形態73のいずれかの例で湿潤され、次いでリザーバ60内へ組み込まれる。さらに他の例において、吸収パッド71はNO発生製剤の固形形態を含有する。この固形形態は水和液又は酸性緩衝液中で戻すことができる。この例では、NO発生製剤の固形形態はS-ニトロソチオール(RSNO)粉末又はニトロプルシド、又は亜硝酸塩を含む。例えば、吸収パッド71は、NO発生製剤の粉末形態の被膜を含んでよく、そしてこの被膜付き吸収パッド71はリザーバ60内に組み込まれる。いくつかの例では、固形物又は粉末は吸収パッド71上へ注がれるか、又は吸収パッド71の前に(ひいては吸収パッド71の下に)リザーバ60内へ入れられる。
【0187】
(被膜内のNO発生製剤の化学特性に応じて)水和液又は酸性緩衝液を次いでリザーバ60内へ導入することにより、NO供与体/付加体又は亜硝酸塩を活性化する。
【0188】
これらの例のいずれにおいても、吸収パッド71はNO発生製剤の液体形態73を安定化することができる。
【0189】
リザーバ60であるレセプタクル59は、水和液又は酸性緩衝液に対して不透過性であり且つNO透過性である壁を含んでよい。
【0190】
レセプタクル59/リザーバ60は、閉じられた内部部分57内にヘッドスペースが形成されるように寸法設定することができる。ヘッドスペース内には、放出されたNOが、(例えば使用者の呼吸休止中及び呼気にかかる時間中)呼気逆止弁(すなわち空気ダイバーター弁)を通して集中することができる。呼気逆止弁は、空気流を閉じられた内部部分57の周りで変向させ、これにより、より高い濃度のNOがヘッドスペースに集まるのを可能にする。次いで吸気中にパルス状集結物として、保存されたNOが利用可能になる(下でさらに説明する)。
【0191】
ここで具体的には図25Cを参照すると、レセプタクル59のいくつかの例がカートリッジ、例えば図24A又は24Bにおいて記載された光活性化型NO発生システム47,70を受容することができる。この例において、NO発生製剤は青色又はUV光によって活性化可能であり、そしてNO発生システムはさらに、レセプタクル59内に挿入されているか又は挿入されるようになっているカートリッジ(例えばシステム47又は70)であって、NO発生製剤を含有するカートリッジと、NO発生製剤を照明するように位置決めされた青色光源又はUV光源50と、青色光源又はUV光源50に動作可能に接続されたバッテリー24とを含む。カートリッジは、図24Aにおいて示され記載されたシステム47、及び図24Bにおいて示され記載されたシステム70と同様に動作する。手短に言えば、活性化された青色又はUV光源は、NO発生製剤を照明することにより、NO分子を生成する。NO分子は鼻突起58を通して使用者に送達される。
【0192】
図25Cに示された例は、カートリッジ内に位置決めされたNOセンサ38と、カートリッジ内に位置決めされた制御電子素子52とを含むことができる。この例は、ハウジング54の外部に配置されたオン・オフスイッチ75を含むことができる。オン・オフスイッチは青色又はUV光源50をオン又はオフにする。鼻ベントプラグのこの例は使い捨てであっても再使用可能であってもよい。
【0193】
鼻ベントプラグ(図25A、26B、及び25Cに示されたものを含む)のいずれの例も、ハウジング54からの呼気をチャネリングするための空気ダイバーター弁(呼気逆止弁16’)を含むこともできる。この弁は、呼気をNO発生製剤から遠ざけておくことができるので、使用者へのNO導入量は最大化される。空気ダイバーター弁は制御電子素子52(例えば電子コントローラ)によって制御することができる。電子制御装置はセンサフィードバックループ及びNOセンサ38に接続されている。センサ38からのデータを使用して、空気をハウジング54から変向させるか、あるいは使用者が適宜のレベルのNOを受容するようにハウジング54内に留まるようにすることができる。弁は閉位置へ制御することもできるので、閉じられた内部部分57のヘッドスペース内に、呼気中及び使用者の自然呼吸サイクルにおける休止時間中に、NOを形成することができる。制御電子素子52はファン又は他のメカニズムを作動させることにより、使用者の吸気中にパルス状集結を強制することもできる。
【0194】
本明細書中に開示された吸入デバイスのいずれの例も、二酸化窒素(NO)フィルタを含んでよい。NOフィルタは、例えば鼻カニューレ又はベンチレータのチューブ、又はフェイスマスク内部、又は鼻ベントプラグの鼻突起58内に位置決めすることにより、出力ガスをこれが患者によって吸入される前に受容することができる。本明細書中に記載されたいずれのNOフィルタ例も使用することができる。一例としては、図25A~25Cに示された鼻ベントプラグのいずれも、レセプタクル59と鼻突起58との間に位置決めされたフィルタを含んでよい。フィルタは、NO発生製剤によって放出された二酸化窒素(NO)をスカベンジするための吸収剤、生成されたNOを変化させてNOに戻すための試薬、又はこれらの組み合わせを含む。
【0195】
さらに、NO発生製剤の液体形態のいずれかを利用する本明細書中に開示された例のいずれにおいても、リザーバ60上に付加的なNO透過性メンブレンを位置決めすることができる。いくつかの事例では、エアロゾル液滴がNOガスとともに生成されることがある。エアロゾル液敵は、種々の医療用途にとっては望ましくない。言うまでもなく、NO透過性メンブレンはエアロゾル液滴が生成されること、及び/又はNOガスと一緒にリザーバ60から出ることを防止する。エアロゾル液滴の形成を防止するNO透過性メンブレンのタイプ例は、多孔質のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリビニリデンジフルオリドなどを含む。エアロゾル液滴が去るのを防止するNO透過性メンブレンのタイプ例は、ポリカーボネート、例えばポリカーボネート・トラックエッチングメンブレンを含む。
【0196】
エアロゾル液滴がNOガス流と一緒に輸送されるのを防止する他のメカニズムは、高多孔質液滴キャッチャー(例えばガーゼ)を位置決めすることを含む。
【0197】
これらの例のいずれにおいても、このタイプのNO透過性メンブレンは、リザーバ60の開口に、又は具体的には鼻ベントプラグ内に、リザーバ60の開口と鼻突起58との間に、又は鼻突起58内に位置決めすることができる。
【0198】
本明細書中に開示された例は、吸入を介して使用者/患者に送達するために有効な量のNOを生成することができる。生成されるNOレベルが高められると治療的となり、そして細菌及びウイルスを殺傷し、細菌バイオフルム形成を中断させ、微生物バイオフィルム形成を消散又は防止し(例えば耐抗生物質性バイオフィルムを消散させ)、血小板凝集及び血栓形成を低減し、炎症を低減し、そして繊毛運動周波数を増大させ、ひいては粘膜繊毛クリアランスを改善するのに十分になる。本開示の例によるNO生産量の増大を、ほぼ即座にそして長時間(例えば約4~96時間)にわたって観察することができる。
【0199】
本明細書に開示された例のうちのいくつかにおいて、湿分活性化型NO発生製剤から生成されたガス状一酸化窒素を吸入した結果としての鼻腔/気道内部の気相NOのレベルは、10億当たり50部の体積(ppbv)~約7500ppbvレベルであってよい。本明細書中に開示された例のうちの他の例において、パウチ又は他の容器32内に含有されたNO発生製剤はNOの所期体積、例えば平均して10ppm、20ppm、又は30ppmを放出するとともに、所望の場合には設計範囲は0.5~3時間以上の時間範囲にわたって1ppm~250ppmである。ノーズピロー(鼻ベントプラグ)の例において、戻されたNO発生製剤(例えば液体形態73)のいずれかの例のNO発生能力は、5ppm~50ppmの範囲で形成することができるとともに、必要に応じて設計範囲は1ppm~250ppmである。
【0200】
本開示をさらに説明するために、実施例を本明細書中に示す。言うまでもなく、これらの実施例は例示を目的として提供されるものであり、本開示の範囲を限定するものとして解釈するべきではない。
【0201】
言うまでもなく、下記の、そして図9(以下参照)に関するNO放出データは、プラスチックシースなしのペレットから生成した。
【実施例
【0202】
実施例1
【0203】
製剤
【0204】
湿分活性化型NO発生製剤を全て同様に調製した。混合物が均質に見えるまで、成分を十分に互いに混合した。次いで混合物を円形手動ピルプレス、例えば直径5mmの手動ピル剤用プレス内に入れた。混合物を圧縮することにより、固形ペレットを形成した。次いで、ボトムストップを取り除いた後ペレットを付加的に押すことにより、ペレットを取り出した。これにより、約10mm長及び直径5mmのペレットを製造した。このペレットのサイズは、この設計の目標ガス生成能力に応じて変化した。
【0205】
NO放出速度
【0206】
50mL/minの加湿窒素(約80%相対湿度(RH))でガラスピペットを通してパージしながら、電気化学的な一酸化窒素アナライザー(NOA)によってアンバーNOAセルにおいて室温で、製剤のNO放出速度を測定した。
【0207】
安定性測定
【0208】
UV/Vis分析を介して、且つ/又は電気化学的NOAを介して、製剤の安定性を試験した。
【0209】
GSNO結果
【0210】
図9~20は、種々の被験製剤のNO放出動態を示している。
【0211】
製剤A、図9は、GSNO、促進剤としてアスコルビン酸(3.5wt%)、及び親水性バインダーとしてコーンスターチ(71wt%)を、不活性塩(塩化ナトリウムと重炭酸ナトリウムとの混合物)(21.5wt%)と一緒に使用した。この混合物のペレットは容易に崩壊した。
【0212】
製剤B、図10は、GSNO(6.4wt%)、促進剤としてアスコルビン酸(13.8wt%)を使用し、そして親水性バインダー(79.8wt%)のために、商業的な賦形剤混合物(FIRMAPRESS(登録商標)賦形剤)を使用した。この賦形剤混合物は、摂取のためのピル剤を製造するために使用される一般的な混合物の代表である。このことはピル剤の団結を改善した。
【0213】
製剤C、図11は、GSNO(10.6wt%)、促進剤としてアスコルビン酸(22.9wt%)、及び親水性バインダーとしてヒプロメロース(71wt%)を使用した。ヒプロメロースは、商業的な賦形製剤のための、接種可能なピル剤を製造する上で一般的な別の成分である。この製剤は前の製剤Bほどには機械的に堅牢ではなかった。
【0214】
製剤D、図12は、GSNO(8.1wt%)、促進剤としてパルミチン酸アスコルビル(41.1wt%)(パルミチン酸塩が潤滑剤として作用する)、及び親水性バインダーとしてヒプロメロース(50.8wt%)を使用した。製剤Cと比較して、これはピル剤加圧特性を改善した。それというのもこれはプレスを潤滑するからである。このことはまた、潤滑剤の添加がNO放出速度を低下させることを示す。
【0215】
図13は製剤Dの別のバッチを示している。これはNO放出動態がバッチ間で同様であることを示している。
【0216】
促進剤としてアスコルビン酸(約10wt%)、及び約90%の親水性バインダーとともに、製剤中1%のGSNOしか含まない製剤E、図14は約50ppbvのNOを生成した。
【0217】
製剤Fは、GSNO(40wt%)、促進剤としてシステイン(25wt%)、及び親水性バインダーとしてヒプロメロース(35wt%)を使用した。製剤F(高パーセンテージのGSNO及びシステイン)によるNO放出が図15Aに示されている。
【0218】
製剤F、図15Bは、パーセント相対湿度(%RH)に対するNO生成の依存を示している。ゼロ湿度において、NO生成速度は200ppbv未満と比較的低く、このことはシステム内の少量の残留湿分に起因すると考えられる。中度の湿度、約44%RHでは速度は著しく高くなり、極めて高い湿度、約80%RHでは、速度は44%RHのものの3倍である。
【0219】
製剤G、図16は、極めて高いパーセンテージの促進剤、60%パルミチン酸アスコルビルが効果的なNOレベルを生成し得ることを示している。製剤Gはまた12wt%のGSNOと、親水性バインダーとして25wt%のFIRMAPRESS(登録商標)賦形剤とを含んだ。
【0220】
製剤H、図17は、極めて低いパーセンテージの促進剤、0.8%の硫酸銅が効果的なNOレベルを生成し得ることを示している。製剤Hがまた8wt%のGSNOと、親水性バインダーとして91wt%のヒプロメロースとを含んだ。
【0221】
製剤I、図18は、親水性化合物、塩化カルシウム(潮解性塩)(62wt%)が、促進剤としてのグルタチオン(30wt%)と相俟って、NOを発生させる上で極めて効果的であることを示す。製剤Iも8wt%のGSNOを含んだ。
【0222】
製剤J、図19は、高レベルの塩、リン酸水素二ナトリウム(46wt%)によるNO生成を示している。製剤Jはまた7wt%のGSNO、促進剤としての15wt%のアスコルビン酸、及び親水性バインダーとしての32wt%のヒプロメロース(24wt%)とFIRMAPRESS(登録商標)賦形剤(8wt%)との混合物を含んだ。
【0223】
製剤Kは、8wt%のGSNOと、50wt%のリン酸水素二ナトリウムと、42wt%のFIRMAPRESS(登録商標)賦形剤とを含んだ。製剤K、図20は、溶解されるとアルカリ性pHをもたらす塩基、リン酸水素二ナトリウム(50wt%)が、促進剤として効果的であることを示す(RSNOはアルカリ性条件において比較的不安定である)。GSNO不安定性、ひいてはNO生成量は増大し始めてpH8.5を上回る。pHが8.5を上回って増大するのに伴って不安定性は増大する。
【0224】
実施例2
【0225】
図25Bに示されたものと同様の鼻ベントプラグ(又は鼻ピロー)を調製した。
【0226】
硝酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、及びリン酸水素二ナトリウムを含むNO供与体製剤を調製した。1.5mLの脱イオン(DI)水も添加した。表1は、NO供与体製剤の成分を示している。
【表1】
【0227】
NO発生製剤を鼻ベントプラグのリザーバ内へ導入した。流量7.5L/minでベントを通して定常空気流を導いた。NO及びNOレベルを鼻突起で測定した。結果を図27に示す。これらの結果はNOが所望のレベルで生成されることを示す。酸素スクラバー及び/又はフィルタを組み込むことにより、NOレベルをさらに低下させることができる。
【0228】
本明細書全体を通しての「一例」、「別の例」、「例」などの言及は、その例と関連して記載された特定のエレメント(例えばフィーチャ、構造、及び/又は特徴)が、本明細書中に記載された少なくとも1つの例に含まれ、他の例には存在してもしなくてもよいことを意味する。加えて、文脈が他に明示しない限りは、いずれかの例に関して記載されたエレメントは任意の適宜の形で、種々の例において組み合わせることができる。
【0229】
言うまでもなく、本明細書に提供された範囲は、言及された範囲と、言及された範囲内の任意の値又は部分範囲を含む。例えば、約3wt%~約12wt%の範囲は、約3wt%~約12wt%の明示された限界だけではなく、個々の値、例えば5wt%、6.2wt%、9.85wt%など、及び部分範囲、例えば約4wt%~約10wt%などをも含むものと解釈するべきである。さらに、「約」はこれが値を記述するために用いられるときには、言及された値からの僅かな変動(最大+/-10%)を含むものとする。
【0230】
本明細書中に開示された例を説明し主張する際に、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が他に明示しない限り複数形を含む。
【0231】
いくつかの例が詳述されているが、言うまでもなく、開示された例は改変されてよい。したがって上述の説明は非限定的と考えるべきである。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4A-4B】
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図16
図17
図18
図19
図20
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図22
図23
図24A
図24B
図25A
図25B
図25C
図26
図27