(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】手動工作機械を作動させる方法、及び、手動工作機械
(51)【国際特許分類】
B25F 5/00 20060101AFI20240321BHJP
B25B 21/02 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
B25F5/00 C
B25B21/02 Z
(21)【出願番号】P 2022520170
(86)(22)【出願日】2020-09-23
(86)【国際出願番号】 EP2020076496
(87)【国際公開番号】W WO2021069209
(87)【国際公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】102019215417.4
(32)【優先日】2019-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】エルベレ,ジモン
(72)【発明者】
【氏名】ヘルベルガー,ウォルフガング
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-527075(JP,A)
【文献】特開2019-130613(JP,A)
【文献】特開2004-243471(JP,A)
【文献】特開2012-200807(JP,A)
【文献】特表2019-506303(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F1/00-5/02
B25B21/00-23/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手動工作機械(100)を作動させる方法において、前記手動工作機械(100)は電気モータ(180)を含み、前記方法
は、
前記電気モータ(180)の動作量(200)の信号が
提供され
る第1の方法ステップ(S1)と、
前記動作量(200)の信号を少なくとも部分的に参照して適用類型が判定され
る第2の方法ステップ(S2)と、
比較情報が提供され
る方法ステップであって、
前記比較情報として、前記手動工作機械(100)の打撃動作での典型的な信号形状を表す少なくとも1つのモデル信号形状(240)が提供され
ることと、
前記比較情報として、前記動作量(200)の信号が前記モデル信号形状(240)と一致
しているか否かを判定するための閾値が提供され
ることと、
を含み、前記モデル信号形状(240)および/または前記閾値が、前記適用類型を少なくとも部分的に参照して提供される第3の方法ステップ(S3)と、
前記閾値を用いて、前記動作量(200)の信号が
前記モデル信号形状(240)と
一致しているか否かが判定され
る第4の方法ステップ(S4)と、
前記
第4の方法ステップ
(S4
)で
の判定結果を少なくとも部分的に参照して
前記打撃動作の有無が認識される
第5の方法ステップ(S5)と、
を含む、方法。
【請求項2】
更に、少なくとも2
つの適用事例を参照して機械学習段階が実行され
る追加方法ステップ(SM)を含み、
前記
第2の方法ステップ
(S2
)での
前記適用類型の判定、ならびに
、前記
第3の方法ステップ
(S3
)での
前記適用類型を少なくとも部分的に参照した前記モデル信号形状(240
)および/または
前記閾値の提供は、
前記機械学習段
階を少なくとも部分的に基礎としたうえで行われる、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記
追加方法ステップ
(SM
)は、
前記適用事例に割り当てられた
前記動作量(200’)の信号が少なくとも1つ
の前記適用類型
として保存されて分類されることをさらに含む、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記
追加方法ステップ
(SM
)は
、前記打撃動作が行われている時点での
前記動作量(200’)
の信号を少なくとも部分的に参照して、
前記適用事例に割り当てられる
前記モデル信号形状(240’)が判定され、保存され、分類される
ことをさらに含む、
請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記
追加方法ステップ
(SM
)は
、前記打撃動作が行われている時点での
前記動作量(200’)
の信号を少なくとも部分的に参照して、
前記適用事例に割り当てられる
前記閾値が判定され、保存され、分類される
ことをさらに含む、
請求項2から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記
追加方法ステップ
(SM
)は
、前記適用事例に割り当てられ
た前記モデル信号形状(240’)と
前記閾値とを参照して、
前記閾値が判定され
、前記適用類型に割り当てられて保存される
ことをさらに含む、
請求項2から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記手動工作機械(100
)で、および/または
、中央のコンピュータで、
前記動作量(200’)の信号がインターネット接続を通じて送信され
る、
請求項
4から
6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記適用事例
の提供は
、前記手動工作機械(100)の利用者によって実行され、および/または
、データバンクから読み込まれる、
請求項
2から
7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
更に、前記
第5の方法ステップ
(S5
)で認識された
前記打撃動作の有無を少なくとも部分的にベースとして、前記手動工作機械(100)の
動作が
制御される
第6の方法ステップ(S6)を含む、
請求項1から
8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
更に、前記
第6の方法ステップ
(S6
)で実行された
前記手動工作機械(100)の動作の制御に対する前記手動工作機械(100)の利用者の評価が取得され、前記評価を少なくとも部分的に参照して前記
手動工作機械(100)の動作の制御が最適化される
第7の方法ステップ(S7)を含む、
請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記
手動工作機械(100)の動作の制御は
、前記電気モータ(180)の停止を含むことを特徴とする、
請求項
9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記
手動工作機械(100)の動作の制御は、前記電気モータ(180)の回転数の変
更を含むことを特徴とする、
請求項
9から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記電気モータ(180)の回転数の変更は
、学習プロセスを少なくとも部分的に参照して決定される
ことを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記動作量
(200)は
、前記電気モータ(180)の回転数または回転数と相関関係にある動作量である
ことを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記
第1の方法ステップ
(S1
)で
、前記電気モータ(180)の動作量の測定値の時間的推移
が、または
、時間的推移と相関関係にあ
る量としての
前記電気モータ(180)の動作量の測定値
が、前記動作量(200)の信号として記録される
ことを特徴とする、請求項1から14までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記
第1の方法ステップ
(S1
)で
、前記電気モータ(180)の動作量の測定値の時間的推移
の、時間的推移と相関関係にあ
る量としての
前記電気モータ(180)の動作量の測定値の推移への
変換によって、前記動作量(200)の信号が提供される
ことを特徴とする、請求項1から
14までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記手動工作機械(100)は
、インパクトねじ締め
機である
ことを特徴とする、請求項1から16までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記電気モータ(180)と、前記電気モータ(180)の動作量の測定値記録器と、制御ユニット(370)と
、を含む手動工作機械(100)において、
前記制御ユニット(370)は
、請求項1から17までのいずれか1項に記載の方法を実施するためにセットアップされる
ことを特徴とする、手動工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手動工作機械を作動させる方法、およびこの方法を実施するためにセットアップされた手動工作機械に関する。特に本発明は、手動工作機械によってねじ手段のねじ込みまたはねじ外しをする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば特許文献1を参照すべき従来技術より、たとえばねじナットやねじなどのねじ部材を締め付けるための回転インパクトドライバーが公知である。このような型式の回転インパクトドライバーは、たとえば1つの回転方向の打撃力がハンマーの回転打撃力によってねじ部材に伝達される構造を含んでいる。このような構造を有する回転インパクトドライバーは、モータと、モータにより駆動されるべきハンマーと、ハンマーによって打撃されるアンビルと、工具とを含んでいる。さらに回転インパクトドライバーは、モータの位置を検出する位置センサと、位置センサとリンクされた制御部とを含んでいる。制御部は衝撃メカニズムの衝撃を検出し、衝撃によって引き起こされるアンビルの駆動角を、位置センサの出力に基づいて計算して、駆動角に基づいてブラシレス直流モータを制御する。
【0003】
特許文献2より、打撃メカニズムを有する電気駆動式の工具も公知であり、ハンマーがモータによって駆動される。この回転インパクトドライバーは、モータパラメータの記録と再生をするための手法をさらに含んでいる。
【0004】
回転インパクトドライバーの使用時には、特定の機械特性を切り換えるときに、たとえば打撃機構の始動や停止のときに、相応に対応をするために、たとえば電気モータをストップさせるために、および/または手動スイッチを通じて回転数の変更を行うために、作業進捗に対する高度の集中力が利用者の側で必要となる。利用者の側では作業進捗に対してしばしば十分に迅速に対応することができず、もしくは適切に対応することができないため、回転インパクトドライバーの使用時には、ねじ込みプロセスのときにたとえばねじの過回転が起こることがあり、ねじ外しプロセスのときには、ねじが高すぎる回転数で緩め回転された場合にねじの落下が起こることがある。
【0005】
したがって一般に、動作をほぼ自動化して顧客を補助し、完全に完結した作業進捗をいっそう簡易に実現し、高い信頼度で再現可能な高品質のねじ込みプロセスとねじ外しプロセスを保証することが望ましい。さらに、作業進捗を機械側でリリースする器具の適切な対応またはルーチンによって利用者がサポートされるのがよい。機械側でリリースされるそのような対応またはリリースの例は、モータのスイッチオフ、モータ回転数の変更、あるいは利用者へのメッセージの発出などを含む。
【0006】
このようなインテリジェントな工具機能の提供は、特に、そのときに生じている動作状態の識別によって行うことができる。そのような識別は従来技術では、作業進捗の決定や用途のステータスに関わりなく、たとえば回転数や電気的なモータ電流などの電気モータの動作量の監視によって行われる。その際に動作量は、特定の限界値および/または閾値に達したか否かという形で調べられる。相応の評価手法も、絶対的な閾値および/または信号勾配を用いて進められる。
【0007】
その場合の欠点は、固定的な限界値および/または閾値が、実際には1つの適用ケースについてしか完璧に設定され得ないということにある。適用ケースが変わるとただちに、これに帰属する電流値や回転数値もしくはその時間的推移も変化し、設定されている限界値および/もしくは閾値またはその時間的推移を参照しての打撃認識は機能しなくなる。
【0008】
たとえば打撃動作の認識に依拠する自動式のスイッチオフは、タッピンねじを使用するいくつかの適用ケースではさまざまな回転数領域で確実にスイッチオフを行うが、タッピンねじを使用する別の適用ケースではスイッチオフが行われないということが起こり得る。
【0009】
回転インパクトドライバーで動作モードを決定する別の方法では、そのときに生じている動作モードを工具の振動状態から推定するために、加速度センサなどの追加のセンサが利用される。
【0010】
このような方法の欠点はセンサのための追加のコスト経費であり、ならびに手動工作機械のロバスト性に関わる損失にある。組み込まれるコンポーネントや電気接続の個数が、そのようなセンサ装置のない手動工作機械と比較して上昇するからである。
【0011】
さらに、打撃機構が作動しているか否かというシンプルな情報は、作業進捗に関する適切な情報提供を得るためにはしばしば十分でない。たとえば、特定の木ねじのねじ込みのとき回転打撃機構がすでに非常に早期から開始され、その間にねじはまだ完全に材料にねじ込まれていないが、要求されるトルクは回転打撃機構のいわゆるリリーストルクをすでに上回っている。すなわち、純粋に回転打撃機構の動作状態(打撃動作または打撃動作なし)に基づく対応は、たとえばスイッチオフなどの工具の正確な自動式のシステム機能にとって十分ではない。
【0012】
基本的に、打撃穿孔機などの他の手動工作機械においても動作をほぼ自動化するという問題が存在しており、したがって、本発明は回転インパクトドライバーだけに限定されるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】欧州特許出願公開第3202537号明細書
【文献】米国特許第9744658号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の課題は、上に挙げた欠点を少なくとも部分的に取り除く、手動工作機械を作動させるための従来技術に比べて改良された方法を提供することにあり、または、従来技術に対する少なくとも1つの対案を提供することにある。さらに別の課題は、これに対応する手動工作機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この課題は、独立請求項のそれぞれの対象物によって解決される。本発明の好ましい実施形態は、それぞれ従属請求項の対象となっている。
【0016】
本発明によると、手動工作機械を作動させる方法が開示され、手動工作機械は電気モータを有する。この方法は次の各ステップを含む。
S1 電気モータの動作量の信号が判定され、
S2 動作量の信号を少なくとも部分的に参照して適用類型が判定され、
S3 適用類型を少なくとも部分的に参照して比較情報が提供され、これは次の各ステップを含み、
S3a 少なくとも1つのモデル信号形状が提供され、モデル信号形状を手動工作機械の規定された作業進捗に割当可能であり、
S3b 一致の閾値が提供され、
S4 動作量の信号がモデル信号形状と比較され、比較から一致評価が判定され、一致評価は一致の閾値を少なくとも部分的に参照して行われ、
S5 方法ステップS4で判定された一致評価を少なくとも部分的に参照して作業進捗が認識される。
【0017】
このとき動作量の信号の判定は、たとえば測定された信号の分類やクラスタリングなどの意味における、測定された信号の可能な信号処理も含む。
【0018】
本発明の方法により、再現可能な高品質の使用結果の実現にあたって手動工作機械の利用者が効果的にサポートを受け、本方法は、適用類型が判定されることで、従来の方法では普通であった特定の用途の事前選択を不要にする高い自動化度を有するという特徴がある。それにより、特定の機械プログラムを選択したときにあらゆる場面で発生する利用者のミスも回避される。
【0019】
適用類型という概念を、1つの例を参照して手短に具体化しておく。たとえば台所家具などの家具を組み立てる場合、さまざまなタイプの多数のねじを、それぞれ異なる支持材料にねじ止めしなければならない。たとえば一方では、小型の木ねじを用いてヒンジを取り付けなければならず、他方では、戸棚そのものをダボや大型のねじによって壁に取り付けなければならない。すなわち本発明では、発生するそれぞれのねじ回しケースについて、それらに割り当てられる動作量の信号を参照したうえで、「小型の木ねじ」および「大型のダボねじ」のいずれかの適用類型が判定されることになる。そして本発明による方法の枠内では、これを基礎としたうえでさらに作業進捗が認識され、さらにはこのような作業進捗が、手動工作機械の特定のルーチンまたは対応の自動化された実行のためのトリガとしての役目を果たすことができる。
【0020】
このように本発明により、可能な限り少ないコストで一定に保たれる作業品質が可能となる補助を利用者に与えることが可能である。
【0021】
モデル信号形状という構成要件は、作業プロセスの連続的な進捗の信号形状を含むことを当業者は認識する。1つの実施形態ではモデル信号形状は、手動工作機械の特定の作業進捗について状態典型的である、状態典型的なモデル信号形状である。そのような作業進捗の例には、取付基材の上にねじ頭が載ること、緩んだねじの空転、手動工作機械の回転打撃機構の始動や停止、手動工作機械によってねじ込まれるべき結合手段の特定のねじ込み深さへの到達、および/または打撃される部材ないし工具マウントのさらなる回転なしでの回転打撃機構の打撃が含まれる。
【0022】
たとえば電気モータの回転数など、工具内部での測定量における動作量を通じて作業進捗を認識するための取り組みは、このような手法によって作業進捗が特別に高い信頼度で、かつ工具の全般的な動作状態ないしその適用ケースにほぼ関わりなく行われるので、特別に好ましいことが判明している。
【0023】
このとき基本的に、工具内部の測定量を検出するための、たとえば加速度センサユニットなどの特に追加のセンサユニットが省略されるので、実質的に本発明による方法だけが作業進捗の認識のための役目を果たす。
【0024】
さらに本発明のいくつかの実施形態では、本方法は次の方法ステップを含む。
【0025】
SM 少なくとも2つまたはそれ以上の適用事例を参照して機械学習段階が実行され、適用事例は規定された作業進捗への到達を含み、
ステップS2での適用類型の判定、ならびにステップS3でのモデル信号形状の提供および一致の閾値の提供は、機械学習段階で生起される適用類型ならびに適用類型に割り当てられるモデル信号形状および/または一致の閾値を少なくとも部分的に基礎としたうえで行われる。
【0026】
機械学習段階という概念は、本発明の特定の実施形態では、インパクトドライバーがたとえばさらに後で説明する打撃品質評価を用いて、利用者の側で実行される適用ケースすなわち適用事例での動作量のさまざまな過程を保存することを含む。さらにインパクトドライバーは、どのような一致の閾値のもとで、利用者が個々の過程においてたとえば回転数の低減や機械のスイッチオフなどによって対応したかを自律的に保存する。そしてインパクトドライバーは十分に高いデータ的根拠をもって、データ分析の手法を援用したうえで、同種類の適用ケース過程と一致の閾値との間の関係を作成することができる。このようにインパクトドライバーは、適用過程を分類して固有の一致の閾値を類型に割り当てることが自律的にできる。
【0027】
すなわち台所家具の設置という上記の例では、利用者によって使用される本発明に基づくインパクトドライバーは、ねじ止めケース「木ねじ」または「ダボねじ」のいずれが生じているか、そしてそれぞれ所定の作業進捗にいつ到達するかを、時間を通じて十分に大きいデータ量のもとで学習する。
【0028】
別の実施形態では、手動工作機械と接続された、または手動工作機械に統合された記憶装置への、少なくとも1つの適用事例の読み込みが含まれる。ここでの関連において読み込みとは、1つまたは複数のねじ回しプロファイルの読み込みであり、すなわち、電気モータの動作量の例示的な信号の読み込みであると理解される。ねじ回しプロファイルは、たとえばインターネットへの接続を利用して読み込むことができる。
【0029】
さらに方法ステップSMは、適用事例に割り当てられた動作量の信号が少なくとも1つまたは複数の適用類型で保存されて分類されることをさらに含むことができる。ここで「分類されること」とは、動作量の例示としての信号が少なくとも1つまたは複数の適用類型に割り当てられることも意味するものとする。
【0030】
さらに本発明のいくつかの実施形態では、方法ステップSMは次の方法ステップを含む。
【0031】
SMa 規定された作業進捗に到達した時点での動作量のそれぞれの信号を少なくとも部分的に参照して、適用事例に割り当てられるモデル信号形状が判定され、保存され、分類される。
【0032】
さらに本発明のいくつかの実施形態では、方法ステップSMは次の方法ステップを含む。
【0033】
SMb 規定された作業進捗に到達した時点での動作量のそれぞれの信号を少なくとも部分的に参照して、適用事例に割り当てられる一致の閾値が判定され、保存され、分類される。
【0034】
さらに本発明のいくつかの実施形態では、方法ステップSMは次の方法ステップを含む。
【0035】
SMc 適用事例に割り当てられる保存されたモデル信号形状と一致の閾値とを参照して、適用類型に割り当てられる一致の閾値が判定されて保存される。
【0036】
さらに本発明のいくつかの実施形態では、本方法は次の方法ステップを含む。
【0037】
S6 方法ステップS5で認識された作業進捗を少なくとも部分的にベースとして、手動工作機械の第1のルーチンが実行される。
【0038】
このように、本発明に基づいて手動工作機械を異なる適用ケースに対応させることができる。こうした対応はたとえば回転数の即座の引き下げ、モータの即座の停止、回転数の時間オフセットされた引き下げ、および/またはモータの時間オフセットされた停止であり得る。さらに、さまざまに異なる対応の組合せも可能である。
【0039】
すなわち台所家具の設置という上記の例では、本発明に基づくインパクトドライバーはこの実施形態ではねじ込みの際に、小型の木ねじが現在ねじ込まれていることを認識して、利用者が学習させたルーチンまたは対応を正しい時点で自動的に実行し、たとえば回転数の低減を実行する。引き続いてダボねじ止めが行われるとき、この別のねじ回しケースを器具が同じく自動的に認識し、たとえば回転数の低減によって、正しい時点で自動的に対応する。
【0040】
このように、たとえば同じねじタイプのすべてのねじが再現可能に均一の深さでねじ込まれることを、本発明に基づいて保証することができ、このことは作業の簡易化となるばかりでなく、作業品質の向上ともなる。
【0041】
別案の実施形態では、第1のルーチンは、未知の適用ケースの場合、類似する特性ないし適用類型を有する既知の適用ケースを用いて推定されることが意図される。
【0042】
さらに本発明のいくつかの実施形態では、本方法は次の方法ステップを含む。
【0043】
S7 ステップS6で実行された第1のルーチンの品質に関して手動工作機械の利用者の評価が取得され、評価を少なくとも部分的に参照してルーチンが最適化される。
【0044】
さらに本発明による方法は、手動工作機械の制御ユニットで、および/または中央のコンピュータで、特にステップS1で判定される、適用事例に割り当てられた動作量の信号がインターネット接続を通じて送信されることによって、方法ステップSMa、SMb、およびSMcが実行されることを含むことができる。
【0045】
本発明の別の実施形態は、機械学習段階が、少なくとも2つの適用事例の、好ましくは多数の適用事例の実行または読み込みを含んでいることを含み、さらに、適用事例に割り当てられる2つまたはそれ以上の一致の閾値から一致の閾値の平均値が判定されることを含む。
【0046】
このようにして、たとえば支持材料における変動、ねじ込み角度、利用者による力印加、およびその他の、あらゆる場面で発生するねじ止めプロセスの不規則性を統計的に平均化し、そのようにして学習プロセスのときにそれらの影響を弱めることができる。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態では、適用事例は手動工作機械の利用者によって実行され、および/またはデータバンクから読み込まれる。その際には、外部データバンクだけでなく内部データバンクも利用することができる。外部データバンクの利用は、たとえばインターネットを通じてのねじ回しプロファイルの読み込みであってよく、それに対して内部データバンクの利用は、手動工作機械での工場側からのデータバンクの提供であってよい。
【0048】
さまざまなルーチンによって、適用ケースをいっそう容易および/または迅速に完了させることができる、1つまたは複数のシステム機能性を利用者に提示することが可能である。本発明に基づいて意図される機械学習段階により、本方法は高度にアダプティブであり、そのようにして利用者の必要性に合わせて高度に適合化される。
【0049】
1つの実施形態では、第1のルーチンは、少なくとも1つの定義された、および/または設定可能な、特に手動工作機械の利用者によって設定可能なパラメータを考慮したうえでの電気モータの停止を含む。このようなパラメータの例は、時間幅、電気モータの回転の数、工具マウントの回転の数、電気モータの回転角、および手動工作機械の打撃機構の打撃の数を含む。
【0050】
別の実施形態では、第1のルーチンは、電気モータの回転数の変更、特に低減および/または上昇を含む。このような電気モータの回転数の変更は、たとえばモータ電流の変更、モータ電圧の変更、蓄電池電流の変更、または蓄電池電圧の変更によって実現することができ、あるいはこれらの方策の組合せによって実現することができる。
【0051】
手動工作機械の利用者によって電気モータの回転数の変更の振幅を定義可能であるのが好ましい。その代替または追加として、電気モータの回転数の変更を目標値によって設定することもできる。振幅という概念は、ここでの関連では一般に変更の大きさという意味でも理解されるものとし、周期的なプロセスとのみ関連づけられるのではない。
【0052】
1つの実施形態では電気モータの回転数の変更は複数回および/またはダイナミックに、特に時間的に段階づけられて、および/または回転数変更の特性曲線に沿って、および/または手動工作機械の作業進捗を参照して行われ、回転数の変更は適用事例をベースとする学習プロセスを少なくとも部分的に参照して決定される。
【0053】
原則として、適当な測定値発生器を通じて記録される動作量として、さまざまな動作量が考慮の対象となる。その際に、本発明ではこの点に関して追加のセンサが必要ないという特別な利点がある。たとえば回転数監視のための種々のセンサは、特にホールセンサなどは、すでに電気モータに組み込まれているからである。
【0054】
動作量は、電気モータの回転数または回転数と相関関係にある動作量であるのが好ましい。電気モータと打撃機構との固定的な伝達比によって、たとえば打撃周波数とモータ回転数との直接的な依存性が生じる。回転数と相関関係にあるさらに別の考えられる動作量はモータ電流である。電気モータの動作量として、モータ電圧、モータのホール信号、バッテリ電流またはバッテリ電圧なども考えられ、電気モータの加速度、工具マウントの加速度、または手動工作機械の打撃機構の音響信号も動作量として考えられる。
【0055】
いくつかの実施形態では、動作量の信号が方法ステップS1で動作量の測定値の時間的推移として記録され、または時間的推移と相関関係にある電気モータの量としての動作量の測定値として記録され、たとえば加速度、特に高次のジャーク、出力、エネルギー、電気モータの回転角、工具マウントの回転角、または周波数などが記録される。
【0056】
直前に挙げた実施形態では、調べられるべき信号の変わらずに保たれる周期性が、モータ回転数に関わりなく生じることを保証することができる。
【0057】
動作量の信号が方法ステップS1で動作量の測定値の時間的推移として記録される場合には、方法ステップS1に後続するステップS1aで、伝動装置の固定的な伝達比をベースとしたうえで、時間的推移と相関関係にある電気モータの量としての動作量の測定値の推移への、動作量の測定値の時間的推移の変換が行われる。このようにして、時間を通じての動作量の信号の直接的な記録の場合と同じ利点がここでももたらされる。
【0058】
手動工作機械の出力装置を利用して第1のルーチンの作業進捗が手動工作機械の利用者に出力されるのが好ましい。出力装置による出力とは、特に、作業進捗の表示またはドキュメンテーションであると理解することができる。このときドキュメンテーションは、作業進捗の評価および/または保存でもあり得る。このことは、たとえば複数回のねじ止めプロセスのメモリへの保存も含む。
【0059】
1つの実施形態では、第1のルーチンおよび/または第1のルーチンの特徴的なパラメータは、アプリケーションソフトウエア(「App」)またはユーザーインターフェース(「ヒューマン・マシン・インターフェース、「HMI」」)を通じて利用者により調整可能および/または表示可能である。
【0060】
さらに1つの実施形態では、HMIは機械そのものに配置されていてよく、それに対して別の実施形態ではHMIは外部の器具に、たとえばスマートフォン、タブレット、コンピュータなどに配置されていてよい。
【0061】
本発明の1つの実施形態では、第1のルーチンは利用者への光学式、音響式、および/または触覚式のフィードバックを含む。
【0062】
モデル信号形状は、振動推移、たとえば平均値を中心とする振動推移、特に実質的に三角法の振動推移であるのが好ましい。このときモデル信号形状は、たとえば打撃機構のアンビルに対するハンマーの理想的な打撃動作を表すことができ、理想的な打撃動作は、手動工作機械の工具スピンドルのさらなる回転なしでの打撃であるのが好ましい。
【0063】
本発明の1つの実施形態では、方法ステップS4で動作量の信号が、一致の少なくとも1つの所定の閾値が充足されるか否かに関して比較方法により比較される。
【0064】
比較方法は、少なくとも1つの周波数ベースの比較方法および/または比較による比較方法を含むのが好ましい。
【0065】
このとき少なくとも部分的に周波数ベースの比較方法によって、特に帯域通過フィルタリングおよび/または周波数分析によって、認識されるべき作業進捗が動作量の信号のなかに識別されたか否かの決定を下すことができる。
【0066】
1つの実施形態では、周波数ベースの比較方法は帯域通過フィルタリングおよび/または周波数分析を少なくとも含み、所定の閾値は所定の限界値の少なくとも90%、特に95%、きわめて特に98%である。
【0067】
帯域通過フィルタリングでは、たとえば記録された動作量の信号が、通過領域がモデル信号形状と一致する帯域通過フィルタを介してフィルタリングされる。結果的に生じる信号での相応の振幅が、認識されるべき主な作業進捗が存在する場合に予期される。したがって帯域通過フィルタリングの所定の閾値は、認識されるべき作業進捗における相応の振幅の少なくとも90%、特に95%、きわめて特に98%であり得る。このとき所定の限界値は、認識されるべき理想的な作業進捗の結果的に生じる信号における相応の振幅であり得る。
【0068】
周波数分析の周知の周波数ベースの比較方法により、事前に規定されたモデル信号形状を、たとえば認識されるべき作業進捗の周波数スペクトルを、動作量の記録された信号の中で探すことができる。動作量の記録された信号の中に、認識されるべき作業進捗の相応の振幅が予期される。周波数分析の所定の閾値は、認識されるべき作業進捗における相応の振幅の少なくとも90%、特に95%、きわめて特に98%であり得る。このとき所定の限界値は、認識されるべき理想的な作業進捗の記録された信号における相応の振幅であり得る。その際に、動作量の記録された信号の適切なセグメント化が必要になることがあり得る。
【0069】
1つの実施形態では、比較による比較方法は少なくとも1つのパラメータ推定および/または相互相関を含み、所定の閾値は、動作量の信号とモデル信号形状との一致の少なくとも40%である。
【0070】
動作量の測定された信号を、比較による比較方法によってモデル信号形状と比較することができる。動作量の測定された信号は、それがモデル信号形状と実質的に同一の有限の信号長さを有するように判定される。このとき動作量の測定された信号とモデル信号形状との比較を、特に離散的または連続的な、有限の長さの信号として出力することができる。比較の一致または相違の度合いに依存して、認識されるべき作業進捗が存在するか否かに関する結果を出力することができる。動作量の測定された信号がモデル信号形状と少なくとも40%だけ一致するときには、認識されるべき作業進捗が成立している。さらに、動作量の測定された信号がモデル信号形状と比較されることによる比較による方法が、相互の比較の度合いを比較の結果として出力できることが考えられる。このとき少なくとも60%の相互の比較が、認識されるべき作業進捗の成立についての基準となり得る。その際には、一致についての下限が40%であり、一致についての上限が90%であることが前提となる。それに応じて相違についての上限は60%であり、相違についての下限は10%となる。
【0071】
パラメータ推定では、事前に規定されたモデル信号形状と動作量の信号との間の比較を簡易な方式で行うことができる。そのために、モデル信号形状の推定されたパラメータを識別して、モデル信号形状を動作量の測定された信号と照合することができる。事前に規定されたモデル信号形状の推定されたパラメータと限界値との間の比較によって、認識されるべき作業進捗の成立に関する結果を判定することができる。引き続いて、所定の閾値に達していたか否かに関して、比較の結果のさらなる評価を行うことができる。このような評価は推定されたパラメータの品質決定であってよく、または、規定されたモデル信号形状と動作量の検出された信号との間の一致であってよい。
【0072】
別の実施形態では、方法ステップS4は、動作量の信号の中でのモデル振動形状の識別が品質決定されるステップS4aを含み、方法ステップS5で、品質決定を少なくとも部分的に参照して作業進捗の認識が行われる。品質決定の目安として、推定されたパラメータの適合度を判定することができる。
【0073】
方法ステップS5で、少なくとも部分的に品質決定によって、特に品質の目安によって、認識されるべき作業進捗が動作量の信号の中で識別されたか否かの決定を下すことができる。
【0074】
品質決定の追加または代替として、方法ステップS4aは、モデル信号形状の識別と動作量の信号との比較決定を含むことができる。モデル信号形状の推定されたパラメータと、動作量の測定された信号との比較はたとえば70%、特に60%、きわめて特に50%であり得る。方法ステップS5で、認識されるべき作業進捗が成立するか否かの決定が、少なくとも部分的に比較決定を参照して行われる。認識されるべき作業進捗の成立に関する決定は、動作量の測定された信号とモデル信号形状との一致の少なくとも40%の所定の閾値のもとで行うことができる。
【0075】
相互相関の場合には、事前に規定されたモデル信号形状と、動作量の測定された信号との間で比較を行うことができる。相互相関では、事前に規定されたモデル信号形状を、動作量の測定された信号と相関づけることができる。動作量の測定された信号とモデル信号形状との相関づけにあたって、これら両方の信号の一致の目安を判定することができる。一致の目安はたとえば40%、特に50%、きわめて特に60%であり得る。
【0076】
本発明による方法の方法ステップS5で、動作量の測定された信号とモデル信号形状との相互相関を少なくとも部分的に参照して作業進捗の認識を行うことができる。このとき認識は、動作量の測定された信号とモデル信号形状との一致の少なくとも40%の所定の閾値を少なくとも部分的に参照して行うことができる。
【0077】
1つの実施形態では、一致の閾値は手動工作機械の利用者によって規定可能であり、および/または工場側で事前定義される。
【0078】
別の実施形態では、手動工作機械はインパクトねじ締め機、特に回転インパクトねじ締め機であり、作業進捗は打撃動作の、特に回転打撃動作の始動または停止である。
【0079】
1つの実施形態では、上に説明したステップSM、SMa、SMb、SMcのうちの1つまたは複数が、利用者によって選択可能な手動工作機械の動作モードとしてその制御部に保存される。ステップSMa、SMb、...は、特に適用事例の判定、保存、および分類を含む。このとき原則として利用者により、たとえば低減、上昇、あるいはスイッチオフによる回転数コントロールなどのその他の対応も選択可能である。これと並行して手動工作機械は、工場側で事前定義された手動工作機械の適用ケースの予備選択に基づいて一致の閾値を利用者によって選択可能である動作モードを有することができる。このことは、たとえばHMI(Human Machine Interface)、モバイル機器、特にスマートフォンおよび/またはタブレットなどのユーザーインターフェースを通じて行うことができる。
【0080】
特に方法ステップS3aで、特に利用者によってモデル信号形状を可変に規定することができる。その場合、認識されるべき作業進捗にモデル信号形状が割り当てられ、それにより利用者が認識されるべき作業進捗を設定することができる。
【0081】
モデル信号形状が方法ステップS3aで事前定義され、特に工場側で規定されるのが好ましい。原則として、モデル信号形状が器具内部に格納または保存されることが考えられ、その代替および/または追加として手動工作機械に提供され、特に外部のデータ機器から提供される。
【0082】
本発明による方法は、電気モータの少なくとも1つの目標回転数、電気モータの少なくとも1つの始動特性、および/または手動工作機械のエネルギー供給部の、特に蓄電池の少なくとも1つの充電状態に関わりなく、作業進捗の認識を可能にすることを当業者は認識する。
【0083】
動作量の信号は、ここでは測定値の時間的なシーケンスとして把握されるべきものである。その代替および/または追加として、動作量の信号が周波数スペクトルであってもよい。その代替および/または追加として動作量の信号を後処理することもでき、たとえば平滑化、フィルタリング、フィッティングなどをすることができる。
【0084】
別の実施形態では、動作量の信号は測定値の連続として、特に手動工作機械の記憶装置に、好ましくはリングバッファに保存される。
【0085】
1つの方法ステップで、手動工作機械の打撃機構の10回よりも少ない打撃を参照して、特に電気モータの10回よりも少ない打撃振動周期を参照して、好ましくは手動工作機械の打撃機構の6回よりも少ない打撃を参照して、特に電気モータの6回よりも少ない打撃振動周期を参照して、きわめて好ましくは打撃機構の4回よりも少ない打撃を参照して、特に電気モータの4回よりも少ない打撃振動周期を参照して、認識されるべき作業進捗が識別される。このとき打撃機構の打撃として、軸方向、径方向、接線方向、および/または円周方向を向く打撃機構打撃部の、特にハンマーの、打撃機構体に対する、特にアンビルに対する打撃が意味されるものとする。電気モータの打撃振動周期は、電気モータの動作量と相関関係にある。電気モータの打撃振動周期は、動作量の信号における動作量変動を参照して判定することができる。
【0086】
本発明のさらに別の対象物を形成するのは、電気モータと、電気モータの動作量の測定値記録器と、制御ユニットとを有する手動工作機械であり、好ましくは手動工作機械はインパクトねじ締め機、特に回転インパクトねじ締め機であり、手動工作機械は上に説明した方法を実施するためにセットアップされる。
【0087】
手動工作機械の電気モータが入力スピンドルを回転させ、出力スピンドルが工具マウントと結合されている。アンビルが出力スピンドルと回転不能に結合され、ハンマーが入力スピンドルと結合されていて、入力スピンドルの回転運動の結果として、入力スピンドルの軸方向への間欠的な運動と、入力スピンドルを中心とする間欠的な回転運動とを行うようになっており、ハンマーはこのような方式でアンビルに対して間欠的に打撃を行い、そのようにしてアンビルおよびこれに伴って出力スピンドルに打撃インパルスと回転インパルスを出力する。第1のセンサが、たとえばモータ回転角を判定するための第1の信号を制御ユニットへ伝送する。さらに第2のセンサが、モータ速度を判定するための第2の信号を制御ユニットへ伝送する。
【0088】
手動工作機械は、種々の値を保存することができる記憶ユニットを有するのが好ましい。
【0089】
別の実施形態では、手動工作機械は蓄電池動作式の手動工作機械であり、特に蓄電池動作式の回転インパクトドライバーである。このようにして、フレキシブルで電源非依存的な手動工作機械の利用が保証される。
【0090】
手動工作機械はインパクトねじ締め機、特に回転インパクトねじ締め機であり、認識されるべき作業進捗は、取付基材の上にねじ頭が載ること、緩んだねじの自由回転、手動工作機械の打撃機構の開始または停止、および/または打撃される部材もしくは工具マウントのさらなる回転のない回転打撃機構の打撃であるのが好ましい。
【0091】
手動工作機械の打撃機構の打撃の識別、特に電気モータの打撃振動周期は、たとえばファスト・フィッティング・アルゴリズムが適用されることによって実現することができ、これにより100msよりも短い、特に60msよりも短い、きわめて特に40msよりも短い間での打撃認識の評価を可能にすることができる。このとき上述した発明的な方法は、実質的に上に挙げた一切の適用ケースについて、および取付担体の緩んでいる取付部材だけでなく固定された取付部材のねじ締めについても、作業進捗の認識を可能にする。
【0092】
本発明により、たとえばフィルタ、信号ループバック、システムモデル(スタティックならびにアダプティブ)、信号トラッキングなど、高いコストのかかる信号処理の手法の大幅な省略が可能である。
【0093】
それに加えて、これらの手法は打撃動作ないし作業進捗のいっそう迅速な識別を可能にし、それに伴っていっそう迅速な工具の対応を惹起することができる。このことが特に該当するのは、打撃機構の開始から識別までに経過した打撃の回数についてであり、たとえば駆動モータの始動段階などの特別な動作状況においても該当する。その際に、たとえば最大駆動回転数の低下など、工具の機能性の制約を講じる必要もない。さらに、アルゴリズムの機能がたとえば目標回転数や蓄電池状態などの他の影響量に左右されることがない。
【0094】
原則として追加のセンサ装置(たとえば加速度センサ)は必要ないが、それにもかかわらず、このような評価手法を他のセンサ装置の信号に適用することもできる。さらに、たとえば回転数検出がなされない別のモータコンセプトでも、このような手法を他の信号のもとで適用することもできる。
【0095】
1つの好ましい実施形態では、手動工作機械は蓄電池ドライバー、穿孔機、打撃穿孔機、または穿孔ハンマーであり、工具としてドリル、ドリルビット、またはさまざまなビットアタッチメントを使用することができる。本発明による手動工作機械は特にインパクトねじ締め工具として構成され、モータエネルギーの衝撃的な解放によって、ねじやねじナットのねじ込みまたはねじ外しのためのいっそう高いピークトルクが生成される。電気エネルギーの伝達とは、ここでの関連では特に、手動工作機械が蓄電池および/または電気ケーブル接続を介して本体にエネルギーを転送することを意味するものとする。
【0096】
さらに、選択される実施形態に依存して、ねじ締め工具が回転方向に関してフレキシブルに構成されていてよい。このようにして、ねじやねじナットのねじ込みにもねじ外しにも、提案される方法を適用することができる。
【0097】
本発明の枠内において「判定する」とは、特に測定または記録することを含むものとし、「記録する」は測定および保存するという意味で把握されるものとし、さらに「判定する」は、測定された信号の可能な信号処理も含むものとする。それはたとえば分類やクラスタリングなどによる信号の判定である。
【0098】
さらに、「決定する」は認識または検知することとしても理解されるものとし、一義的な割当が実現されるものとする。「識別する」として理解されるのは、たとえばパターンに合わせた信号のフィッティング、フーリエ分析などによって可能にすることができるパターンとの部分的な一致の認識と理解されるものとする。「部分的な」一致とは、所定の閾値よりも低い、特に30%よりも低い、きわめて特に20%よりも低い誤差をフィッティングが有することとして理解されるものとする。
【0099】
本発明のその他の構成要件、適用可能性、および利点は、図面に示されている本発明の実施例についての以下の説明から明らかとなる。ここで留意すべきは、図面に記載または図示されている構成要件はそれ自体として、または任意の組合せとして、特許請求の範囲でのその関連づけや引用に関わりなく本発明の対象物を構成し、ならびに、明細書ないし図面でそれがどのように表現ないし図示されているかに関わりなく説明としての性格だけを有し、何らかの形で本発明を限定するために想定されてはいないことである。
【0100】
次に、好ましい実施例を参照しながら本発明について詳しく説明する。図面は模式的なものであり、次のものを示す。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【
図2】
図2(a):適用事例の作業進捗ならびにこれに対応する動作量の信号である。
図2(b):
図2(a)に示す動作量の信号とモデル信号との一致である。
【
図3】適用事例の作業進捗、ならびに動作量の2つの割り当てられた信号を示す模式図である。
【
図4】本発明の2つの実施形態に基づく1つの動作量の信号の推移である。
【
図5】本発明の2つの実施形態に基づく1つの動作量の信号の推移である。
【
図6】適用事例の作業進捗、ならびに動作量の2つの割り当てられた信号を示す模式図である。
【
図7】本発明の2つの実施形態に基づく2つの動作量の信号の推移である。
【
図8】本発明の2つの実施形態に基づく2つの動作量の信号の推移である。
【
図9(a)】動作量の信号の2つの異なる記録を示す模式図である。
【
図9(b)】動作量の信号の2つの異なる記録を示す模式図である。
【
図10(b)】
図10(a)の信号に含まれる第1の周波数の振幅関数である。
【
図10(c)】
図10(a)の信号に含まれる第2の周波数の振幅関数である。
【
図11(a)】モデル信号をベースとする、動作量の信号と帯域通過フィルタリングの出力信号との共通の図である。
【
図11(b)】モデル信号をベースとする、動作量の信号と帯域通過フィルタリングの出力信号との共通の図である。
【
図12(a)】モデル信号をベースとする、動作量の信号と周波数分析の出力との共通の図である。
【
図12(b)】モデル信号をベースとする、動作量の信号と周波数分析の出力との共通の図である。
【
図12(c)】モデル信号をベースとする、動作量の信号と周波数分析の出力との共通の図である。
【
図12(d)】モデル信号をベースとする、動作量の信号と周波数分析の出力との共通の図である。
【
図13(a)】動作量の信号とパラメータ推定のためのモデル信号との共通の図である。
【
図13(b)】動作量の信号とパラメータ推定のためのモデル信号との共通の図である。
【
図14(a)】動作量の信号と相互相関のためのモデル信号との共通の図である。
【
図14(b)】動作量の信号と相互相関のためのモデル信号との共通の図である。
【
図14(c)】動作量の信号と相互相関のためのモデル信号との共通の図である。
【
図14(d)】動作量の信号と相互相関のためのモデル信号との共通の図である。
【
図14(e)】動作量の信号と相互相関のためのモデル信号との共通の図である。
【
図14(f)】動作量の信号と相互相関のためのモデル信号との共通の図である。
【発明を実施するための形態】
【0102】
図1は、ハンドグリップ115を備えたハウジング105を有する、本発明による手動工作機械100を示している。図示した実施形態では、手動工作機械100は電源非依存的な電流供給のために、蓄電池パック190と機械的および電気的に結合可能である。
図1では、手動工作機械100は例示として蓄電池式回転インパクトドライバーとして構成されている。しかしながら指摘しておくと、本発明は蓄電池式回転インパクトドライバーだけに限定されるものではなく、原則として、打撃穿孔機などのように作業進捗の認識が必要とされる手動工作機械100で適用することができる。
【0103】
ハウジング105の中に、蓄電池パック190から電流を供給可能である電気式の電気モータ180と伝動装置170とが配置されている。電気モータ180は、伝動装置170を介して入力スピンドルと結合されている。さらにハウジング105の内部には蓄電池パック190の領域に、たとえば調整されるモータ回転数n、選択される角運動量、所望の伝動装置段xなどによって電気モータ180と伝動装置170を制御および/またはコントロールするために、これらに対して作用する制御ユニット370が配置されている。
【0104】
電気モータ180はたとえば手動スイッチ195を通じて操作可能であり、すなわちオン・オフ可能であり、任意のモータ型式、たとえば電子整流型モータや直流モータであってよい。原則として電気モータ180は、反転動作だけでなく所望のモータ回転数nや所望の角運動量に関わる設定も具体化可能であるように、電子式に制御可能ないしコントロール可能である。適当な電気モータの機能形態と構造は従来技術から十分に知られているので、ここでは説明を簡略にする目的から詳細な説明は省略する。
【0105】
入力スピンドルと出力スピンドルを通じて、工具マウント140が回転可能なようにハウジング105で支承されている。工具マウント140は工具を受容する役目を果たし、出力スピンドルに直接的に一体成形されていてよく、またはアタッチメント形式でこれと結合可能であってよい。
【0106】
制御ユニット370は電流源と接続されており、電気モータ180をさまざまな電流信号によって電子式に制御可能ないしコントロール可能に励起することができるように構成される。さまざまな電流信号は電気モータ180の異なる角運動量のために作用し、電流信号は制御回線を介して電気モータ180へと送られる。電流源はたとえばバッテリとして、または図示している実施例のように蓄電池パック190として、あるいは電源接続部として構成されていてよい。
【0107】
さらに、さまざまな動作モードおよび/または電気モータ180の回転方向を調整するために、詳しくは図示しない操作部材が設けられていてよい。
【0108】
本発明の1つの態様では、手動工作機械100を作動させる方法が提供され、この方法により、たとえば
図1に示す手動工作機械100の作業進捗を適用時に、たとえばねじ込みプロセスやねじ外しプロセスのときに、判断することができる。
【0109】
作業進捗が判断される帰結として、本発明の実施形態では機械側で相応の対応またはルーチンがリリースされる。それにより、高い信頼度で再現可能な高品質のねじ込みプロセスやねじ外しプロセスを実現することができる。この方法の各態様は、特に、信号形状を調べることと、たとえば手動工作機械100により駆動されるねじ等の部材のさらなる回転の評価に相当し得る、当該信号形状の一致の度合いを決定することに依拠する。
【0110】
図2にはこの点に関して、回転インパクトドライバーの所定の使用時にこのような形で、またはこれに類似する形で現れる、回転インパクトドライバーの電気モータ180の動作量200の例示の信号が示されている。以下の説明は回転インパクトドライバーを対象としているが、本発明の枠内において、たとえば打撃穿孔機などの別の手動工作機械100にも内容に即して当てはまる。
【0111】
横軸xには、
図2の本例では基準量としての時間がプロットされている。しかしながら別案の実施形態では、たとえば工具マウント140の回転角、電気モータ180の回転角、加速度、特に高次のジャーク、出力、エネルギーなど、時間と相関関係にある量が基準量としてプロットされる。縦軸f(x)には、この図面では各時点で印加されるモータ回転数nがプロットされている。モータ回転数に代えて、モータ回転数と相関関係にある別の動作量を選択することもできる。本発明の別案の実施形態では、f(x)はたとえばモータ電流の信号を表す。
【0112】
モータ回転数やモータ電流は、手動工作機械100では通常かつ付加コストなしに、制御ユニット370により検出される動作量である。電気モータ180の動作量200の信号が提供されることは、本件の開示の枠内では方法ステップS1と称している。「提供される」とは、ここでの関連においては、手動工作機械100の内部または外部の記憶装置に相応の指標が伝えられることであると理解される。
【0113】
本発明の好ましい実施形態では、手動工作機械100の利用者は、どのような動作量をベースとして本発明の方法が実施されるべきかを選択することができる。
【0114】
図2(a)には、たとえば木の板などの取付担体902への、たとえばねじ900などの緩んだ取付部材の適用ケースが示されている。
図2(a)に見られるとおり、信号は、モータ回転数の単調増加によって特徴づけられるとともにプラトーとも呼ぶことができる比較的一定のモータ回転数の領域によって特徴づけられる第1の領域310を含んでいる。
図2(a)の横軸xと縦軸f(x)の交点は、ねじ回しプロセスにおける回転インパクトドライバーの始動に相当する。
【0115】
第1の領域310では、ねじ900は取付担体902で比較的低い抵抗を受け、ねじ込みのために必要なトルクは回転打撃機構のリリーストルクを下回る。すなわち第1の領域310でのモータ回転数の推移は、打撃なしでのねじ回しの動作状態に相当する。
【0116】
図2(a)に見て取ることができるように、領域322ではねじ900の頭が取付担体902の上に載っておらず、このことは、回転インパクトドライバーによって駆動されるねじ900が打撃ごとにさらに回転することを意味する。このような追加の回転角が、作業プロセスが進捗していくときに減っていくことがあり、このことは、図面では短くなっていく周期時間で反映されている。さらに、平均して減少していく回転数によっても、さらなるねじ込みが示されている。
【0117】
引き続いてねじ900の頭が基材902に到達すると、さらなるねじ込みのためにいっそう高いトルク、およびこれに伴ってさらに多くの打撃エネルギーが必要となる。しかし、手動工作機械100がさらに多くの打撃エネルギーを供給することはないので、ねじ900はさらに回転をしなくなり、もしくは有意に小さい回転角だけしかさらに回転しなくなる。
【0118】
第2の領域322と第3の領域324で行われる回転打撃動作は、動作量200の信号の振動性の推移によって特徴づけられ、振動の形状はたとえば三角法またはその他の形に基づいて振動性であり得る。本例ではこの振動は、変形三角関数と呼ぶことができる推移を有している。インパクトねじ回し動作におけるこのように特徴的な動作量200の信号の形状は、打撃機構打撃部の引き上げと惰性運動、および打撃機構と電気モータ180との間にある特に伝動装置170のシステム連鎖によって生じる。
【0119】
異なるねじ回しケースがそれぞれ動作量の信号の特徴的な形状を有するという事情を利用したうえで、本発明による方法のステップS2で、動作量200の信号を基礎として適用類型が判定される。ここでのねじ回しプロセスのケースでは、適用類型という概念は特に、ねじサイズ、ねじ型式、ねじ回し方向(ねじ込みもしくはねじ外し)、ねじ回し抵抗、ねじ回し速度、ねじ回し基材の素材、および/または利用者の側で遂行される用途の手動工作機械の動作モードなどの態様のうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0120】
さらに上記から読み取ることができるように、たとえば打撃動作の開始に割り当てられる信号形状などの個々の作業進捗も、原則として、回転インパクトドライバーの固有の特性によって少なくとも部分的に設定される特定の特徴的な指標によって特徴づけられる。本発明による方法では、こうした知見を踏まえてステップS3で、ステップS2で判定された適用類型を少なくとも部分的に参照して比較情報が提供され、ステップS3aで少なくとも1つのモデル信号形状240が提供される。このときモデル信号形状240は、たとえば取付担体902の上にねじ900の頭が載ることへの到達などの作業進捗に割当可能であり、本発明のいくつかの実施形態との関連では、モデル信号形状240が状態典型的なモデル信号形状とも呼ばれる。換言すると、モデル信号形状240は、振動推移の存在、振動周波数ないし振動振幅、連続的な、準連続的な、または離散した形状の個々の信号シーケンスなど、作業進捗について典型的な指標を含んでいる。
【0121】
別の用途では、検知されるべき作業進捗は、関数f(x)における不連続性や増加率など、振動とは別の信号形状によって特徴づけられていてよい。このようなケースでは、状態典型的なモデル信号形状が、振動の代わりにこれらのパラメータによって特徴づけられる。
【0122】
方法ステップS3bでさらに別の比較情報が提供され、すなわち、あとでさらに詳細に説明する一致の閾値が提供される。
【0123】
本発明による方法の好ましい実施形態では、方法ステップS3で、状態典型的なモデル信号形状240を利用者によって規定することができる。状態典型的なモデル信号形状240が同じく器具内部に格納または保存されていてよく、または外部のデータ機器から提供することができる。
【0124】
本発明による方法の方法ステップS4で、電気モータ180の動作量200の信号が、状態典型的なモデル信号形状240と比較される。「比較する」という構成要件は、本発明のコンテキストでは信号分析の意味で広く解釈されるべきものであり、したがって比較の結果は、モデル信号形状240と電気モータ180の動作量200の信号との特に部分的または漸次的な一致であってもよく、両方の信号の一致の度合いを、あとの個所でまた挙げるさまざまな数学的方法によって判定することができる。
【0125】
ステップS4では、比較からさらに状態典型的なモデル信号形状240と電気モータ180の動作量200の信号との一致評価が判定され、そのようにして、両方の信号の一致に関する情報提供がなされる。このとき一致評価は上に挙げた一致の閾値を少なくとも部分的に参照して行われ、したがってこの閾値はモデル信号形状240と動作量200の信号との一致の最小限度として理解することもでき、以下において詳しく説明する。
【0126】
図2(b)は、電気モータ180の動作量200の信号と状態典型的なモデル信号形状240との間の一致の値を横軸xの各々の個所で表す、
図2(a)の動作量200の信号と対応する一致評価201の関数q(x)の推移を示している。
【0127】
ねじ900のねじ込みの本例では、このような評価は、打撃のときのさらなる回転の目安を決定するために援用される。ステップS3aで提供されるモデル信号形状240は、この例ではさらなる回転のない理想的な打撃に相当し、すなわち
図2(a)の領域324に示すように、ねじ900の頭が取付担体902の表面に載る状態に相当する。それに応じて領域324では両方の信号の高い一致が生じ、このことは、一致評価201の関数q(x)の変わらない高い値によって反映される。それに対して、各々の打撃がねじ900の大きい回転角を伴う領域310では、低い一致値しか得られていない。ねじ900が打撃でさらに回転することが少なくなるほど、この一致は高くなっていき、このことは、打撃ごとにねじ込み抵抗が増すためにねじ200の回転角が継続して小さくなっていく領域322での打撃機構の開始時に、すでに一致評価201の関数q(x)が連続的に増加する一致値を反映している様子を見れば明らかである。
【0128】
図2の例で明らかなように、程度の差こそあれ飛躍的な特徴に基づく打撃区別のための信号の一致評価201がそのために良く適しており、このような飛躍的な変化は、例示としての作業プロセスの完了時におけるねじ900のさらなる回転角の、同じく程度の差こそあれ飛躍的な変化に起因する。本発明によると作業進捗の認識は、
図2(b)に破線202で表示されている、ステップS3bで提供される一致の閾値を用いた一致評価201の比較を少なくとも部分的に参照して行うことができる。
図2(b)の本例では、一致評価201の関数q(x)と線202との交点SPが、取付担体902の表面にねじ900の頭が載るという作業進捗に割り当てられる。
【0129】
そして本発明による方法の方法ステップS5で、方法ステップS4で判定された一致評価201を少なくとも部分的に参照して作業進捗が認識される。ここで付言しておくと、この機能はねじ込みの用途だけに限定されるものではなく、ねじ外しの用途での適用も含んでいる。
【0130】
ステップS3での比較情報の提供は、本発明によると、少なくとも部分的に機械学習段階をベースとして行うことができる。機械学習段階は、本発明の実施形態では、手動工作機械100の少なくとも2つまたはそれ以上の適用事例の実行または読み込みを含み、少なくとも1つの適用事例は、手動工作機械100の規定された作業進捗への到達を含み、たとえば
図2(a)の領域324に示すように、取付担体902の表面にねじ900の頭が載る状態への到達を含む。それに応じて、規定された作業進捗という概念は、ここでは作業進捗が利用者によって規定されなければならないと理解されるべきものではない。むしろ本発明の好ましい実施形態では、手動工作機械がデータ分析の手法を利用して適用事例を参照したうえで、たとえばモデル信号形状200’の特定の推移のもとでの(たとえば取付担体902の上にねじ900の頭が載ることに相当)手動工作機械100の回転数の低下やスイッチオフが行われることを手がかりとして、規定された作業進捗を自動的に認識することが意図される。
【0131】
したがって本発明による方法は、この実施形態では、少なくとも2つまたはそれ以上の適用事例を参照して機械学習段階が実行されるステップSMを含み、適用事例は規定された作業進捗への到達を含む。この実施形態では、ステップS2での適用類型の判定、ならびにステップS3でのモデル信号形状240および/または一致の閾値の提供は、機械学習段階で生起される適用類型ならびに適用類型に割り当てられるモデル信号形状240’および/または一致の閾値を少なくとも部分的に基礎として行われる。
【0132】
このように手動工作機械は、さまざまな適用に際して一致評価の推移に対する対応がいつの時点で望ましいかを、利用者の相応の指図を要することなく自律的に、または部分的に自律的に学習する。
このとき本発明の特定の実施形態では、方法ステップSMは、適用事例に割り当てられた動作量200’の信号が、少なくとも1つまたは複数の適用類型で保存されて分類されることを含むのが好ましい。
【0133】
本発明による方法の具体的な実施形態は、この目的のために、次の各方法ステップのうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0134】
SMa 規定された作業進捗に到達した時点での動作量200’のそれぞれの信号を少なくとも部分的に参照して、適用事例に割り当てられるモデル信号形状240’が判定され、保存され、分類される。
【0135】
SMb 規定された作業進捗に到達した時点での動作量200’のそれぞれの信号を少なくとも部分的に参照して、適用事例に割り当てられる一致の閾値が判定され、保存され、分類される。
【0136】
SMc 適用事例に割り当てられる保存されたモデル信号形状240’と一致の閾値とを参照して、適用類型に割り当てられる一致の閾値が判定されて保存される。
【0137】
このとき各ステップSMa、SMb、およびSMcはそれ自体として周知のさまざまなデータ分析の手法を含み、それはたとえば平均値形成や探索的統計の高等演算であり、これは通常、適用事例のセットが大規模になるほどいっそう妥当な結果をもたらす。この関連で言及しておくと、方法ステップSMa、SMb、およびSMcを選択的に手動工作機械100の制御ユニットおよび/または中央のコンピュータで行うことができ、特に、ステップS1で判定されて適用事例に割り当てられる動作量200’の信号が、インターネット接続を介して送信されることによって行われる。このようなケースでは、本発明による方法の特定のステップを、たとえば規定された作業進捗や一致の閾値を判断するための上に述べたデータ分析を、手動工作機械100によってではなく中央のコンピュータノードによって実行することが可能であり、および、さまざまな利用者から受信されて保存される適用事例を総合することで、基礎となる適用事例のセットを最大化することが可能である。
【0138】
逆に言うとこのような方式は、適用事例が必ずしも手動工作機械100の利用者によって実行されなくてよいことを可能にする。むしろ、データバンクから適用事例を直接読み込むことができる。このときデータバンクは外部の、たとえばインターネットを介して接続されたデータバンクであってよく、あるいは、たとえば工場側から手動工作機械自体に提供されるデータバンクの形態の、内部のデータバンクであってもよい。外部のデータバンクから読み込まれる適用事例ないし当該適用事例を特徴づけるデータのことを、本発明との関連では「ねじ回しプロファイル」とも呼ぶ。
【0139】
すなわちこの実施形態の基礎となるのは、手動工作機械100自体によって実行される、またはデータセットの形態で手動工作機械100に伝送される、適用事例による手動工作機械100の「豊富な経験」の蓄積である。
【0140】
簡略化して言えば、第1の態様では利用者がたとえば多数回のねじ込みプロセスを行い、反復されるルーチンを利用者が実行したときに、たとえば手動工作機械100を停止させたときや回転数を低減させたときに、用途の分類と整理をするため、およびモデル信号形状200’と一致の閾値とを判定するため、手動工作機械100がデータ分析を自律的かつ累積的に実行する。ここで留意すべきは、このような反復されるルーチンそのものを、用途の分類と整理のために同じく援用できることである。そして、同じくこのような方法論に従って評価される後続する使用時に、手動工作機械100が適用類型を自動的に判定し、当該適用類型に割り当てられる比較情報を提供し、すなわち少なくともモデル信号形状240と一致の閾値とを提供し、動作量200の現在印加されている信号とモデル信号240とが相応に一致評価されたときに、それぞれの適用類型で利用者によって実行されたルーチンを自動的に実行し、たとえば電気モータ180の回転数の低減を実行し、これについては後の個所でまた詳しく説明する。
【0141】
このように本発明では、それぞれの信号形状が区別ないし比較されることで、回転インパクトドライバーにより駆動される部材の作業進捗の評価を行うことができ、ならびに、作業進捗に後続するルーチンの開始を行うことができ、その際に、利用される特定の信号形状すなわちモデル信号形状240が、ならびに、比較される信号形状の一致についての評価基準の一部すなわち一致の閾値が、機械学習段階によって少なくとも部分的に提供される。
【0142】
本発明の1つの実施形態では、ステップSMでの機械学習段階は、画像による手動工作機械の学習を「ディープラーニング」の意味で含むことが意図される。このとき適当な画像撮影デバイスおよび/または使用過程の既存の画像が利用される。このとき画像撮影デバイスは画像センサまたはカメラを含むことができ、これらによって適用事例が光学的に検出され、画像処理の既知のツールにより分析され、引き続いてカテゴライズされる。これと同様の方式でステップS2でも、画像撮影デバイスによる光学式の検出と、これに後続する画像分析とによって適用類型の判定を行うことができる。このとき画像撮影デバイスとして内部の、すなわち手動工作機械に組み込まれている、または外部の、画像センサまたはカメラが考えられ、たとえばスマートフォンのカメラなどが考えられる。
【0143】
上記の説明の意味において学習された作業進捗の判断が別の方法ステップS6によって補足されるのが好ましく、この方法ステップで、以下に記述するように、方法ステップS5で認識された作業進捗を少なくとも部分的にベースとして手動工作機械100の第1のルーチンが実行される。その際には、その帰結として手動工作機械が上に挙げた第1のルーチンを方法ステップS6で実行する認識されるべき作業進捗が、機械学習段階により上で説明したようにモデル信号形状240および/または一致の閾値というパラメータによって定義されていることがそのつど想定される。しかしながら別案の実施形態では、未知の適用ケースの場合に、類似の特性を有する既知の適用ケースを用いて第1のルーチンが推定されることが同様に意図される。
【0144】
打撃動作への動作状態の転換時に生じる回転数の減少にもかかわらず、たとえば小さな木ねじの場合やタッピンねじの場合、ねじ頭が材料に食い込むのを阻むのはきわめて困難にしか可能でない。その理由は、打撃機構の打撃によって、トルクが増大しているときにも高いスピンドル回転数が生じることにある。
【0145】
このような挙動が
図3に示されている。
図2と同じく、横軸xには一例として時間がプロットされており、それに対して縦軸f(x)にはモータ回転数、縦軸g(x)にはトルクg(x)がプロットされている。したがってグラフfおよびgは、モータ回転数fとトルクgの推移を時間に対して表す。
図3の下側領域には、同じく
図2のグラフの表示に類似して、取付担体902への木ねじ900,900’,および900’’のねじ込みプロセスにおけるさまざまな状態が模式的に示されている。
【0146】
図面では符号310によって示されている動作状態「打撃なし」のとき、ねじは高い回転数fと低いトルクgで回転する。符号320で表示されている動作状態「打撃」のときにはトルクgが急に上昇し、それに対して回転数fは、上ですでに述べたとおりわずかにしか減少しない。
図3の領域310’は、その内部で
図2との関連で説明した打撃認識が行われる領域を表す。
【0147】
たとえばねじ900のねじ頭が取付担体902に食い込むのを防ぐために、本発明によると方法ステップS6で、用途関連の適切な工具のルーチンまたは対応が、方法ステップS5で認識された作業進捗を少なくとも部分的にベースとして実行され、たとえば機械のスイッチオフ、電気モータ180の回転数の変更、ならびに/または手動工作機械100の利用者への光学式、音響式、および/もしくは触覚式のフィードバックが実行される。
【0148】
本発明の1つの実施形態では、第1のルーチンは、少なくとも1つの定義された、および/または設定可能な、特に手動工作機械の利用者により設定可能な、パラメータを考慮したうえでの電気モータ180の停止を含む。
【0149】
その例として
図4には打撃認識310’の後の即座の器具の停止が模式的に示されており、それにより利用者が、取付担体902へのねじ頭の食い込みを回避することについてサポートされる。図面では、このことは領域310’の後で急激に減少するグラフfの分枝f’によって示されている。
【0150】
定義された、および/または設定可能な、特に手動工作機械100の利用者によって設定可能なパラメータの1つの例は、利用者によって定義される器具が停止されるまでの時間であり、このことは
図4では時間帯T
Stoppによって、ならびにグラフfの付属の分枝f’’によって示されている。理想的な場合、ねじ頭がねじ載置面と同一平面上にあるときにちょうど手動工作機械100が停止する。ただし、この状況が発生するまでの時間は適用ケースごとにまちまちであるため、時間帯T
Stoppを利用者によって定義可能であると好ましい。
【0151】
その代替または追加として、本発明の1つの実施形態では、第1のルーチンは打撃認識の後の電気モータ180の回転数の、特に目標回転数の、およびこれに伴ってスピンドル回転数の変更、特に低減および/または増大を含むことが意図される。回転数の低減が実行される実施形態が
図5に示されている。同じく手動工作機械100がまず動作状態「打撃なし」310で作動し、これはグラフfで表されたモータ回転数の推移によって表示されている。領域310’で打撃認識が行われた後、モータ回転数がこの例では特定の振幅だけ低減され、このことはグラフf’ないしf’’によって示されている。
【0152】
図5のグラフfの分枝f’’についてΔ
Dで表示されている電気モータ180の回転数の変更の振幅すなわち大きさは、本発明の1つの実施形態では利用者によって調整することができる。回転数が低減されることで、ねじ頭が取付担体902の表面に近づいたときに、利用者が対応のためにいっそう長い時間を有する。ねじ頭が載置面に対して十分に同一平面上にあると利用者が考えたとき、ただちにスイッチを用いて手動工作機械100を停止することができる。打撃認識後の手動工作機械100の停止と比較して、モータ回転数の変更は、
図5の例では低減は、利用者が決めるスイッチオフによってこのルーチンが適用ケースにほぼ左右されないという利点を有する。
【0153】
本発明の1つの実施形態では、電気モータ180の回転数の変更の振幅ΔDは、および/または電気モータ180の回転数の目標値は、手動工作機械100の利用者によって定義可能であり、このことはこのルーチンのフレキシビリティを、多種多様な適用ケースについての適用可能性という意味でいっそう向上させる。
【0154】
電気モータ180の回転数の変更は、本発明の実施形態では複数回および/またはダイナミックに行われる。特に、電気モータ180の回転数の変更が時間的に段階づけられて、および/または回転数変更の特性曲線に沿って行われ、および/または手動工作機械100の作業進捗に依存して行われることが意図されていてよい。
【0155】
これについての例は、特に回転数低減と回転数増大の組合せを含む。さらに、さまざまなルーチンないしその組合せを、打撃認識に対して時間的にオフセットして実行することができる。さらに本発明は、2つまたはそれ以上のルーチンの間での時間的なオフセットが意図される実施形態も含む。たとえば打撃認識の直後にモータ回転数が低減されたとき、特定の時間値の後にモータ回転数を再び増やすことができる。さらに、さまざまなルーチンそのものだけでなく、各ルーチンの間の時間オフセットも特性曲線によって設定される実施形態が意図される。
【0156】
冒頭で述べたとおり、本発明は、領域320の動作状態「打撃」から領域310の動作状態「打撃なし」への転換によって作業進捗が特徴づけられる実施形態を含み、このことは
図6に明示されている。
【0157】
手動工作機械100の動作状態のこのような移行は、たとえばねじ900が取付担体902から外れる作業進捗のとき、すなわちねじ外しプロセスのときに与えられ、このことは
図6の下側領域に模式的に示されている。
図3と同じく、
図6でもグラフfは電気モータ180の回転数を表し、グラフgはトルクを表している。
【0158】
すでに本発明の他の実施形態との関連でも説明したとおり、ここでも特徴的な信号形状の発見を利用して手動工作機械の動作状態が検出され、本例では打撃機構の動作状態が検出される。
【0159】
動作状態「打撃」のとき、すなわち
図6では領域320のとき、ねじ900は回転せず、高いトルクgが印加される。換言すると、スピンドル回転数がこの状態ではゼロに等しい。動作状態「打撃なし」のとき、すなわち
図6では領域310のとき、トルクgが急速に低下していき、このことはひいてはスピンドル・モータ回転数fが同じく急速に上昇するように作用する。取付担体902からねじ900が外れた時点以降のトルクgの低下によって惹起される、このようなモータ回転数fの急激な上昇により、外れたねじ900やねじナットを受け止めて落下を妨げることが利用者にとってしばしば困難になる。
【0160】
本発明による方法は、ねじ900やナットであってよいねじ手段が取付担体902から外れた後に、それが落下するほど急速にねじ抜きされるのを防止するために適用することができる。これに関しては
図7を援用する。
図7は、図示している軸とグラフに関しては実質的に
図6に相当し、対応する符号は対応する構成要件を表している。
【0161】
1つの実施形態では、ルーチンは、認識されるべき作業進捗すなわち本例では動作モード「打撃なし」を手動工作機械100が認識したことが判断されると即座に、ステップS6で手動工作機械100が停止されることを含んでおり、このことは
図7では、領域310で急傾斜で降下していくモータ回転数のグラフfの分枝f’によって示されている。別案の実施形態では、器具が停止されるまでの時間T
Stoppを利用者によって定義することができる。図面では、このことはモータ回転数のグラフfの分枝f’’によって示されている。
図6にも示すように、領域320(動作状態「打撃」)から領域310(動作状態「打撃なし」)への移行後に、モータ回転数がまず急速に上昇し、時間帯T
Stoppの経過後に急勾配で低下していくことは当業者に明らかである。
【0162】
時間帯TStoppが適切に選択されていれば、ねじ900やナットがちょうどねじ穴に収まっているときに、モータ回転数をちょうど「ゼロ」まで下げることが可能である。このケースでは利用者は、ねじ900やナットを少数回だけねじ回しすることによって取り出すことができ、またはその代替として、たとえば留め具を開くためにねじ穴の中に残しておくことができる。
【0163】
次に、本発明の別の実施形態について
図8を参照しながら説明する。このケースでは、領域320(動作状態「打撃」)から領域310(動作状態「打撃なし」)への移行後に、モータ回転数の低減が行われる。この低減の振幅すなわち大きさは、図面では、領域320におけるモータ回転数の平均値f’’と、低下したモータ回転数f’との間の度合いとしてのΔ
Dで表されている。この低下は特定の実施形態では利用者により調整することができ、特に、
図8では分枝f’のレベルに位置する、手動工作機械100の回転数の目標値の指定によって調整することができる。
【0164】
モータ回転数およびこれに伴うスピンドル回転数の低下によって、ねじ900の頭がねじ載置面から外れたときに、利用者が対応をするためにいっそう長い時間を有する。ねじ頭やナットが十分な程度までねじ回しされたと利用者が考えたとき、ただちにスイッチを用いて手動工作機械100を停止することができる。
【0165】
領域320(動作状態「打撃」)から領域310(動作状態「打撃なし」)への移行の直後に、または遅延をもって、手動工作機械100が停止される
図7との関連で説明した実施形態と比較したとき、回転数低減は、適用ケースへのいっそう高い非依存性という利点を有する。手動工作機械が回転数低減の後にいつスイッチオフされるかを、利用者が最終的に決めるからである。このことは、たとえば長いねじ付きロッドの場合に有益であり得る。その場合、ねじ付きロッドを緩めた後に、かつこれに伴う打撃機構の停止後に、程度の差こそあれ長いねじ外しプロセスをさらに行わなくてはならない適用ケースが存在する。すなわちこうしたケースでは、打撃機構の停止後に手動工作機械100がスイッチオ
フされるのは目的に適っていない。
【0166】
付言しておくと、本発明のいくつかの実施形態では、上で説明したように、たとえば回転数減少または回転数上昇の推移や振幅などの、方法ステップS6で利用される第1のルーチンのパラメータも、適用事例および/またはねじ回しプロファイルを参照しての機械学習段階によって定義できることが意図される。
【0167】
さらに、ステップS6で実行される第1のルーチンに関わる手動工作機械100の利用者の品質評価が取得される別の方法ステップS7によって、この評価を少なくとも部分的に参照してルーチンの最適化が行われる。
【0168】
本発明のいくつかの実施形態では、手動工作機械の出力装置を利用して作業進捗が手動工作機械の利用者に出力される。
【0169】
次に、方法ステップS1~S5の実施に関わるいくつかの技術的な関連性と実施形態について説明する。
【0170】
実際の用途においては、実行されている用途の作業進捗を監視するために、方法ステップS1~S4のうちの1つまたは複数が手動工作機械100の動作中に反復して実行されることが意図されていてよい。この目的のために方法ステップS1で、動作量200の判定された信号のセグメント化を行うことができ、それにより方法ステップS2およびS4が、好ましくは常に同じ規定された長さの信号セグメントに関して実行される。
【0171】
この目的のために、動作量200の信号を測定値のシーケンスとして記憶装置に、好ましくはリングバッファに、保存しておくことができる。この実施形態では手動工作機械100は記憶装置、好ましくはリングバッファを含む。
【0172】
図2との関連ですでに述べたとおり、本発明の好ましい実施形態では方法ステップS1で、動作量200の信号が動作量の測定値の時間的推移として判定され、または、時間的推移と相関関係にある電気モータ180の量としての、動作量の測定値として判定される。このとき測定値は離散的、準連続的、または連続的であってよい。
【0173】
このとき1つの実施形態は、動作量200の信号が方法ステップS1で動作量の測定値の時間的推移として記録され、方法ステップS1に後続する方法ステップS1aで、たとえば工具マウント140の回転角、モータ回転角、加速度、特に高次のジャーク、出力、エネルギーなど、時間的推移と相関関係にある電気モータ180の量としての動作量の測定値の推移への、動作量の測定値の時間的推移の変換が行われることを意図する。
【0174】
次に、このような実施形態の利点について、
図9を参照しながら説明する。
図2と同様に、
図9aは動作量200の信号f(x)を横軸xに対して、本例では時間tに対して示している。
図2と同じく、動作量はモータ回転数またはモータ回転数と相関関係にあるパラメータであってよい。
【0175】
この図面は、それぞれ1つの作業進捗に、すなわちたとえば回転インパクトドライバーのケースでは回転インパクトねじ回しモードに、割り当てられていてよい動作量200の2つの信号推移を含んでいる。両方のケースにおいて信号は、理想化して正弦波形と想定される振動推移の波長を含んでおり、短いほうの波長T1を有する信号は打撃周波数が高い推移を有し、長いほうの波長T2を有する信号は打撃周波数が低い推移を有する。
【0176】
これら両方の信号は同一の手動工作機械100によって異なるモータ速度のもとで生成することができ、特に、利用者が操作スイッチを通じてどのような回転速度を手動工作機械100に要求するかに依存する。
【0177】
すなわち、たとえばパラメータ「波長」を状態典型的なモデル信号形状240の定義のために援用しようとすれば、本例では少なくとも2つの異なる波長T1およびT2が、状態典型的なモデル信号形状の考えられる部分として保存されなければならないことになり、それは両方のケースで、状態典型的なモデル信号形状240と動作量200の信号との比較を結果「一致」につなげるためである。モータ回転数は時間に対して一般に広い範囲で変化し得るので、このことは、探索される波長も変化し、それによってこうした打撃周波数の認識のための手法もそれに応じてアダプティブに調整されなければならないことにつながる。
【0178】
可能性のある波長が多数ある場合、方法およびプログラミングのコストがすぐに相応に上昇することになる。
【0179】
したがって好ましい実施形態では、横軸の時間値が、たとえば加速度、高次のジャーク値、出力値、エネルギー値、周波数値、工具マウント140の回転角値、電気モータ180の回転角値など、時間値と相関関係にある値へと変換される。それが可能である理由は、電気モータ180から打撃機構への、および工具マウント140への固定的な伝達比によって、モータ回転数と打撃周波数との直接的な既知の依存性が生じるからである。このような標準化によって、モータ回転数に依存しない、変わらずに保たれる周期性の振動信号が実現され、このことは図9bに、T1およびT2に対応する信号の変換から生じる両方の信号によって図示されており、ここでは両方の信号は等しい波長P1=P2を有している。
【0180】
それに応じて本発明のこの実施形態では、たとえば工具マウント140の回転角、モータ回転角、加速度、特に高次のジャーク、出力、エネルギーなどの時間と相関関係にある量を通じて、状態典型的なモデル信号形状240を波長のただ1つのパラメータによってあらゆる回転数について有効に規定することができる。
【0181】
1つの好ましい実施形態では、方法ステップS4での動作量200の信号の比較は比較方法によって行われ、比較方法は少なくとも1つの周波数ベースの比較方法および/または比較による比較方法を含む。比較方法は、少なくとも一致の閾値が充足されるか否か、動作量200の信号を状態典型的なモデル信号形状240と比較する。比較方法は、動作量200の測定された信号を、一致の閾値と比較する。周波数ベースの比較方法は、帯域通過フィルタリングおよび/または周波数分析を少なくとも含む。比較による比較方法は、パラメータ推定および/または相互相関を少なくとも含む。周波数ベースの比較方法と比較による比較方法について、以下に詳細に説明する。
【0182】
帯域通過フィルタリングを含む実施形態では、場合により上述したように時間と相関関係にある量へと変換された入力信号が、1つまたは複数の状態典型的なモデル信号形状と通過領域が一致する1つまたは複数の帯域通過フィルタを介してフィルタリングされる。通過領域は、状態典型的なモデル信号形状240から得られる。通過領域が、状態典型的なモデル信号形状240との関連で規定された周波数と一致することも考えられる。認識されるべき作業進捗への到達時に該当するように、このような周波数の振幅が事前に規定された限界値を上回っているケースでは、方法ステップS4での比較は、動作量200の信号が状態典型的なモデル信号形状240に等しく、したがって認識されるべき作業進捗に達しているという結果につながる。振幅限界値の規定は、この実施形態では、動作量200の信号と状態典型的なモデル信号形状240との一致評価の判定として把握され、これを基礎として方法ステップS5で、認識されるべき作業進捗が成立しているか否かが決定される。
【0183】
図10を参照して、周波数ベースの比較方法として周波数分析が適用される実施形態について説明する。このケースでは、
図10(a)に示す、例示として時間に対する電気モータ180の回転数の推移に相当する動作量200の信号が、たとえば高速フーリエ変換(Fast Fourier Transformation,FFT)などの周波数分析を基礎として、時間領域から、相応の周波数の重みづけを含む周波数領域へと変換される。ここで上記の説明における「時間領域」という概念は、「時間にわたっての動作量の推移」としてだけでなく、「時間と相関関係にある量としての動作量の推移」としても理解される。
【0184】
この態様における周波数分析は信号分析の数学的なツールとして数多くの工学の分野で十分に知られており、特に、測定された信号を、重みづけされた周期的な調和関数の級数展開として、さまざまに異なる波長に近似させるために適用されている。たとえば
図10(b)および10(c)では、時間にわたっての関数推移203および204としての重みづけ係数κ
1(x)およびκ
2(x)は、ここでは図面の見やすさのために表示していない対応する周波数ないし周波数帯域が調べられた信号すなわち動作量200の推移のなかに存在するか否か、どれだけの強さで存在するかを表している。
【0185】
すなわち本発明による方法に関しては周波数分析を用いて、状態典型的なモデル信号形状240に付属する周波数が動作量200の信号のなかに存在するか否か、どのような振幅で存在するかを判断することができる。ただしこれに加えてその非存在が、認識されるべき作業進捗の存在を表す目安となる周波数を定義することもできる。帯域通過フィルタリングとの関連で述べたように、状態典型的なモデル信号形状240と動作量200の信号との一致の度合いの目安となる振幅の限界値を規定することができる。
【0186】
たとえば
図10(b)の例では時点t
2(点SP
2)のとき、動作量200の信号において状態典型的なモデル信号形状240には典型的には見い出されることがない第1の周波数の振幅κ
1(x)が、付属の限界値203(a)よりも下降しており、このことは本例では、認識されるべき作業進捗の存在について必要ではあるが十分ではない基準である。時点t
3(点SP
3)のとき、動作量200の信号において状態典型的なモデル信号形状240に典型的に見い出される第2の周波数の振幅κ
2(x)が、付属の限界値204(a)を上回る。本発明の対応する実施形態では、振幅関数κ
1(x)ないしκ
2(x)による限界値203(a),204(a)の下回りないし上回りの共通の存在が、状態典型的なモデル信号形状240と動作量200の信号との一致評価についての主要な基準となる。それに応じてこのケースでは方法ステップS5で、認識されるべき作業進捗に達していると判断される。
【0187】
本発明の別案の実施形態ではこれらの基準のうち1つだけが利用され、あるいは、一方または両方の基準と、たとえば電気モータ180の目標回転数への到達などの別の基準との組合せが利用される。
【0188】
比較による比較方法が利用される実施形態では、動作量200の信号が状態典型的なモデル信号形状240と比較され、それにより、動作量200の測定された信号が状態典型的なモデル信号形状240と少なくとも50%の一致を有しているか否か、それに伴って所定の閾値に達しているか否かを見い出す。両方の信号の相互の一致を判定するために、動作量200の信号が状態典型的なモデル信号形状240と比較されることも考えられる。
【0189】
比較による比較方法としてパラメータ推定が利用される本発明の方法の実施形態では、動作量200の測定された信号が状態典型的なモデル信号形状240と比較され、このとき、状態典型的なモデル信号形状240について推定されたパラメータが識別される。推定されたパラメータを用いて、認識されるべき作業進捗に到達しているか否かに関して、状態典型的なモデル信号形状240と動作量200の測定された信号との一致の目安を判定することができる。このときパラメータ推定は、当業者には周知である数学的な最適化手法である補正計算をベースとする。この数学的な最適化手法は、推定されたパラメータを用いて、状態典型的なモデル信号形状240を動作量200の信号の一連の測定データに合わせて調整することを可能にする。推定されたパラメータによってパラメータ化された状態典型的なモデル信号形状240と限界値との一致の目安に依存して、認識されるべき作業進捗に達しているか否かの決定を下すことができる。
【0190】
パラメータ推定の比較による方法の補正計算を用いて、動作量200の測定された信号に対する、状態典型的なモデル信号形状240の推定されたパラメータの一致の目安も判定することができる。
【0191】
本発明による方法の1つの実施形態では、比較による比較方法として方法ステップS4で相互相関の方法が利用される。上記で説明した数学的な方法と同じく、相互相関の方法も当業者にはそれ自体として周知である。相互相関の方法では、状態典型的なモデル信号形状240が動作量200の測定された信号と相関づけられる。
【0192】
少し前に記述したパラメータ推定の方法と比較したとき、相互相関の結果は、やはり動作量200の信号の長さと状態典型的なモデル信号形状240の長さからなる加算された信号長さを有する信号シーケンスであり、時間をずらした入力信号の類似性を表す。このとき、この出力シーケンスの最大値が両方の信号の、すなわち動作量200の信号と状態典型的なモデル信号形状240の信号との最大の一致の時点を表し、それに伴って相関そのものを表す目安ともなり、これが本実施形態では方法ステップS5で、認識されるべき作業進捗への到達についての決定基準として利用される。本発明による方法での具体化においてパラメータ推定との主要な相違点は、相互相関については任意の状態典型的なモデル信号形状を使うことができるのに対して、パラメータ推定では状態典型的なモデル信号形状240をパラメータ化可能な数学関数によって表現できなければならないことにある。
【0193】
図11は、動作量200の測定された信号を、周波数ベースの比較方法として帯域通過フィルタリングが利用されるケースについて示している。ここでは横軸xとして時間、または時間と相関関係にある量がプロットされている。
図11aは、動作量の測定された信号を帯域通過フィルタリングの入力信号として示しており、第1の領域310では手動工作機械100がねじ回し動作で作動する。第2の領域320では、手動工作機械100が回転打撃動作で作動する。
図11bは、帯域通過フィルタが入力信号をフィルタリングした後の出力信号を示している。
【0194】
図12は、動作量200の測定された信号を、周波数ベースの比較方法として周波数分析が利用されるケースについて示している。
図12aおよびbには、手動工作機械100がねじ回し動作にある第1の領域310が示されている。図
12aの横軸xには、時間t、または時間と相関関係にある量がプロットされている。
図12bには動作量200の信号が変換されて示されており、たとえば高速フーリエ変換によって時間領域から周波数領域への変換を行うことができる。
図12bの横軸x’には例示として周波数fがプロットされており、それにより動作量200の信号の振幅が表されている。
図12cおよびdには、手動工作機械100が回転打撃動作にある第2の領域320が示されている。
図12cは動作量200の測定された信号を、回転打撃動作の時間にわたってプロットして示している。
図12dは動作量200の変換された信号を示しており、動作量200の信号が横軸x’としての周波数fに対してプロットされている。
図12dは、回転打撃動作について特徴的な振幅を示している。
【0195】
図13aは、
図2で説明した第1の領域310における、動作量200の信号と状態典型的なモデル信号形状240との間のパラメータ推定の比較による比較方法の比較の典型的なケースを示している。状態典型的なモデル信号形状240は実質的に三角法の推移を有するのに対して、動作量200の信号はこれと著しく相違する推移を有している。上に説明した比較方法のうちの1つの選択に関わりなく、このケースでは方法ステップS4で実行される状態典型的なモデル信号形状240と動作量200の信号との間の比較は、両方の信号の一致の度合いが、認識されるべき作業進捗が方法ステップS5で認識されない程度に低いという結果となる。
【0196】
図13bには、認識されるべき作業進捗が成立しており、したがって、個々の測定点では差異を判断可能であるとしても、状態典型的なモデル信号形状240と動作量200の信号とが全体として高い度合の一致を有するケースが示されている。このように、パラメータ推定の比較による比較方法で、認識されるべき作業進捗に達しているか否かの決定を下すことができる。
【0197】
図14は、
図14aおよび14dを参照すべき動作量200の測定された信号と、
図14bおよび14eを参照すべき状態典型的なモデル信号形状240との比較を、比較による比較方法として相互相関が利用されるケースについて示している。
図14a~fでは、横軸xに時間、または時間と相関関係にある量がプロットされている。
図14a~cには、ねじ回し動作に相当する第1の領域310が示されている。
図14d~fには、認識されるべき作業進捗に対応する第
2の領域32
0が示されている。少し前に説明したとおり、
図14aおよび
図14dの動作量の測定された信号が、
図14bおよび14eの状態典型的なモデル信号形状と相関づけられる。
図14cおよび14fには、相関づけのそれぞれの結果が示されている。
図14cには第1の領域310の中での相関づけの結果が示されており、両方の信号の低い一致が存在することが明らかである。したがって
図14cの例では方法ステップS5で、認識されるべき作業進捗に達していないことが決定される。
図14fには、第
2の領域32
0の中での相関づけの結果が示されている。
図14fに明らかなとおり高い一致が存在しており、それにより方法ステップS5で、認識されるべき作業進捗に達していることが決定される。
【0198】
本発明は、説明および図示した実施例だけに限定されるものではなく、むしろ、特許請求の範囲によって定義される発明の枠内での当業者による一切の発展形を含む。
【0199】
説明および図示した実施形態に加えて、さらなる改変ならびに構成要件の組合せを含むことができる他の実施形態も考えられる。
【符号の説明】
【0200】
100 手動工作機械
180 電気モータ
200 動作量
240 モデル信号形状
370 制御ユニット