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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】バイオセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/327 20060101AFI20240321BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
G01N27/327 353B
G01N27/416 336H
G01N27/416 338
G01N27/327 353Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022521696
(86)(22)【出願日】2020-11-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-09
(86)【国際出願番号】 KR2020016362
(87)【国際公開番号】W WO2021075944
(87)【国際公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-04-11
(31)【優先権主張番号】10-2019-0127899
(32)【優先日】2019-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】503454506
【氏名又は名称】東友ファインケム株式会社
【氏名又は名称原語表記】DONGWOO FINE-CHEM CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】132, YAKCHON-RO, IKSAN-SI, JEOLLABUK-DO 54631, REPUBLIC OF KOREA
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】マ, ドン ヒ
(72)【発明者】
【氏名】リ, ドン ヨプ
【審査官】小澤 理
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-506910(JP,A)
【文献】特表2013-514807(JP,A)
【文献】国際公開第2019/017148(WO,A1)
【文献】特開2013-190212(JP,A)
【文献】特表2009-544407(JP,A)
【文献】米国特許第05658444(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/327
G01N 27/416
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の上面上に配置されたセンシング電極と、前記センシング電極の上面上に配置された酵素反応層と、前記酵素反応層の上面上に配置され、水溶性高分子および非水溶性高分子を含む透過制御層とを含む、前記基板上に配置された作業電極と、
前記基板上において前記作業電極と離隔して配置された基準電極とを含み、
前記水溶性高分子は、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol,PVA)、ヒドロキシエチルセルロース(hydroxyethyl cellulose,HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(hydroxypropyl cellulose,HPC)、カルボキシメチルセルロース(carboxy methyl cellulose,CMC)、セルロースアセテート(cellulose acetate)、およびポリビニルピロリドン(polyvinyl pyrrolidone,PVP)からなる群より選択される少なくとも1つを含み、
前記透過制御層は、溶媒、前記水溶性高分子および前記非水溶性高分子を含む組成物から形成され、前記組成物の全重量に対して前記水溶性高分子は1~10重量%含まれ、前記組成物の全重量に対して前記非水溶性高分子は0.5~5重量%含まれる、バイオセンサ。
【請求項2】
前記非水溶性高分子は、ポリウレタン(polyurethane、PU)、ポリカーボネート(polycarbonate,PC)、およびポリビニルクロライド(polyvinyl chloride,PVC)からなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載のバイオセンサ。
【請求項3】
前記透過制御層は、複層構造を含む、請求項1に記載のバイオセンサ。
【請求項4】
前記酵素反応層は、オキシダーゼまたはデヒドロゲナーゼを含む、請求項1に記載のバイオセンサ。
【請求項5】
前記オキシダーゼは、グルコースオキシダーゼ、コレステロールオキシダーゼ、乳酸オキシダーゼ、アスコルビン酸オキシダーゼおよびアルコールオキシダーゼからなる群より選択される少なくとも1つを含み、
前記デヒドロゲナーゼは、グルコースデヒドロゲナーゼ、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼおよびアルコールデヒドロゲナーゼからなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項に記載のバイオセンサ。
【請求項6】
前記酵素反応層は、0.1~10mMのKm(Michaelis constant)の値を有する酵素を含む、請求項1に記載のバイオセンサ。
【請求項7】
前記センシング電極は炭素電極層を含む、請求項1に記載のバイオセンサ。
【請求項8】
前記センシング電極は、前記基板と前記炭素電極層との間に配置された金属電極層をさらに含む、請求項に記載のバイオセンサ。
【請求項9】
前記透過制御層の上面上に配置された保護層をさらに含む、請求項1に記載のバイオセンサ。
【請求項10】
乳酸濃度の測定に使用される、請求項1に記載のバイオセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオセンサに関する。より詳細には、作業電極および基準電極を含むバイオセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
人間の平均寿命が延びていくにともない、ヘルスケア業界は急速に拡大している。特に、様々な生体信号をどこでも便利に測定することができる携帯可能な小型バイオセンサへの需要がますます増加している。
【0003】
例えば、バイオセンサは体液(汗、涙、血液など)に含まれる化学種と反応する酵素を使用することができる。前記酵素が前記化学種と反応して電流が発生すると、それを測定して当該化学種の濃度を測定することができる。
【0004】
しかしながら、前記酵素ベースのバイオセンサは、酵素の種類によって化学種の測定可能な濃度範囲が異なり得る。例えば、基質との親和性の低い酵素を使用する場合には、基質の濃度が相対的に高い場合にのみ反応が飽和するため、高濃度の基質を検知できるが、基質との親和性の高い酵素を使用する場合には、相対的に基質濃度の低い状態でも反応が飽和し、結果として、測定できる基質の濃度範囲が小さくなる。そのため、高濃度の基質を検知するには限界がある可能性がある。
【0005】
例えば、韓国特許第10-1624769号公報のように、短時間で精度良く測定可能な乳酸センサに関する特許が公開されている。しかし、乳酸オキシダーゼのように、基質との親和性が高くて測定可能な基質の濃度範囲に限界がある酵素を使用する場合において、その限界を克服できるバイオセンサ構造は開示していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、センシング性能が向上したバイオセンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1.基板と、前記基板の上面上に配置されたセンシング電極と、前記センシング電極の上面上に配置された酵素反応層と、前記酵素反応層の上面上に配置され、水溶性高分子および非水溶性高分子を含む透過制御層とを含む前記基板上に配置された作業電極と、前記基板上において前記作業電極と離隔して配置された基準電極とを含む、バイオセンサ。
【0008】
2.前記項目1において、前記水溶性高分子は、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol,PVA)、ヒドロキシエチルセルロース(hydroxyethyl cellulose,HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(hydroxypropyl cellulose,HPC)、カルボキシメチルセルロース(carboxy methyl cellulose,CMC)、セルロースアセテート(cellulose acetate)およびポリビニルピロリドン(polyvinyl pyrrolidone,PVP)からなる群より選択される少なくとも1つを含む、バイオセンサ。
【0009】
3.前記項目1において、前記非水溶性高分子は、ポリウレタン(polyurethane,PU)、ポリカーボネート(polycarbonate,PC)およびポリビニルクロライド(polyvinyl chloride,PVC)からなる群より選択される少なくとも1つを含む、バイオセンサ。
【0010】
4.前記項目1において、前記透過制御層は、溶媒、前記水溶性高分子および前記非水溶性高分子を含む組成物から形成される、バイオセンサ。
【0011】
5.前記項目4において、前記組成物の全重量に対して前記水溶性高分子は1~10重量%含まれる、バイオセンサ。
【0012】
6.前記項目4において、前記組成物の全重量に対して前記非水溶性高分子は0.5~5重量%含まれる、バイオセンサ。
【0013】
7.前記項目1において、前記透過制御層は複層構造を含む、バイオセンサ。
【0014】
8.前記項目1において、前記酵素反応層はオキシダーゼまたはデヒドロゲナーゼを含む、バイオセンサ。
【0015】
9.前記項目8において、前記オキシダーゼは、グルコースオキシダーゼ、コレステロールオキシダーゼ、乳酸オキシダーゼ、アスコルビン酸オキシダーゼおよびアルコールオキシダーゼからなる群より選択される少なくとも1つを含み、前記デヒドロゲナーゼは、グルコースデヒドロゲナーゼ、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼおよびアルコールデヒドロゲナーゼからなる群より選択される少なくとも1つを含む、バイオセンサ。
【0016】
10.前記項目1において、前記酵素反応層は、0.1~10mMのKm(Michaelis constant)の値を有する酵素を含む、バイオセンサ。
【0017】
11.前記項目1において、前記センシング電極は炭素電極層を含む、バイオセンサ。
【0018】
12.前記項目11において、前記センシング電極は、前記基板と前記炭素電極層との間に配置された金属電極層をさらに含む、バイオセンサ。
【0019】
13.前記項目1において、前記透過制御層の上面上に配置された保護層をさらに含む、バイオセンサ。
【0020】
14.前記項目1において、乳酸濃度の測定に使用される、バイオセンサ。
【発明の効果】
【0021】
本発明の例示的な実施形態によるバイオセンサは、酵素反応層の上面に水溶性高分子および非水溶性高分子を含む透過制御層が配置される。これにより、高濃度の試料を検知でき、検知対象物質の測定濃度範囲(感応範囲)を調整することができる。
【0022】
例示的な実施形態によれば、透過制御層は、水溶性高分子と非水溶性高分子を混合して形成することができる。これにより、酵素反応層の酵素を安定化させ、透過制御層の安定性を向上させることができる。
【0023】
いくつかの実施形態によれば、センシング電極をカーボンペースト単一層で形成し、作業電極およびバイオセンサを薄膜化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の例示的な実施形態によるバイオセンサを示す概略側面図である。
図2図2は、本発明のいくつかの例示的な実施形態によるバイオセンサを示す概略側面図である。
図3図3は、本発明の例示的な実施形態によるバイオセンサで乳酸感応最大濃度を測定したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施形態は、基板と、前記基板上に配置された作業電極と、前記基板上において作業電極と離隔して配置された基準電極とを含むバイオセンサを提供するものである。
【0026】
作業電極は、基板の上面上に配置されたセンシング電極と、前記センシング電極の上面上に配置された酵素反応層と、前記酵素反応層の上面上に配置され、水溶性高分子および非水溶性高分子を含む透過制御層とを含む。透過制御層は、水溶性高分子と非水溶性高分子を混合して形成され、例えば、検知対象物質に対するセンシング性能を向上させることができる。
【0027】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態をより具体的に説明する。ただし、本明細書に添付される図面は、本発明の好適な実施形態を例示するものであって、発明の詳細な説明とともに本発明の技術思想をさらに理解する一助となる役割を果たすものであるため、本発明は図面に記載された事項のみに限定されて解釈されるものではない。
【0028】
図1は、本発明の例示的な実施形態によるバイオセンサを示す概略図である。
【0029】
図1を参照すると、例示的な実施形態によるバイオセンサは、基板100と、作業電極200と、基準電極300とを含むことができる。作業電極200は、センシング電極210と、酵素反応層220と、透過制御層230とを含むことができる。いくつかの実施形態では、作業電極200は第1保護層240をさらに含むことができ、基準電極300は第2保護層310をさらに含むことができる。
【0030】
基板100は、例えば、作業電極200、基準電極300などが配置される基材層として提供され得る。
【0031】
前記基板100は、フレキシブル特性を有するフィルムであってもよい。例えば、前記フレキシブル特性を有するフィルムは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂;ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレートなどのアクリル系樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン共重合体などのスチレン系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系またはノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン-プロピレン共重合体などのポリオレフィン系樹脂;塩化ビニル系樹脂;ナイロン、芳香族ポリアミドなどのアミド系樹脂;イミド系樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂;スルホン系樹脂;ポリエーテルエーテルケトン系樹脂;硫化ポリフェニレン系樹脂;ビニルアルコール系樹脂;塩化ビニリデン系樹脂;ビニルブチラール系樹脂;アリレート系樹脂;ポリオキシメチレン系樹脂;エポキシ系樹脂などの熱可塑性樹脂、またはこれらの組み合わせからなるフィルムを含むことができる。また、(メタ)アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコン系などの熱硬化性樹脂または紫外線硬化型樹脂からなるフィルムを含むことができる。
【0032】
基板100の厚さは必要に応じて適宜決定することができるが、例えば、強度、取り扱い性、作業性、薄層性などを考慮して1~500μmであってもよい。好ましくは1~300μmであってもよく、より好ましくは5~200μmであってもよい。
【0033】
いくつかの実施形態では、基板100には添加剤を含むことができる。例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、潤滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、核剤、帯電防止剤、顔料、着色剤などを添加剤として含むことができる。
【0034】
いくつかの実施形態では、基板100は、フィルムの片面または両面に機能層を含むことができる。前記機能層は、例えば、ハードコート層、反射防止層、ガスバリア層などを含むことができる。
【0035】
いくつかの実施形態では、基板100は表面処理することができる。例えば、前記表面処理は、プラズマ(plasma)処理、コロナ(corona)処理、プライマー(primer)処理などの乾式処理、ケン化処理を含むアルカリ処理などの化学処理を含むことができる。
【0036】
作業電極200では、検知対象物質の酸化還元反応が起こり得る。作業電極200は、例えば、酵素反応層220の酵素と検知対象物質との反応により発生した電気的信号を検知することができる。検知対象物質は、人体の汗、体液、血液などであってもよいが、これらに限定されるものではない。例えば、前記検知対象物質は、グルコースまたは乳酸(ラクテート)を含むことができる。
【0037】
例示的な実施形態では、作業電極200は、センシング電極210と、酵素反応層220と、透過制御層230とを含むことができ、第1保護層240をさらに含むことができる。
【0038】
センシング電極210は基板100上に配置できる。例えば、センシング電極210は基板100に接触することができる。センシング電極210は、例えば、検知対象物質の酸化還元反応で発生した電子または正孔が搬送される通路で提供できる。
【0039】
例示的な実施形態では、センシング電極210は、基板100上にカーボンペーストを印刷するか、またはAu、Ag、Cu、Pt、Ti、Ni、Sn、Mo、Co、Pd、およびこれらの合金の少なくとも1つを含む金属膜を形成した後、それをパターニング(patterning)して形成することができる。
【0040】
前記パターニングは、当該分野で通常使用されるパターニング技術を使用することができる。例えば、フォトリソグラフィ(photolithography)法を使用することができる。
【0041】
センシング電極210は、金属保護層をさらに含むことができる。この場合、金属層を先にパターニングした後に前記金属保護層を形成するか、または前記金属膜上にITO(Indium Tin Oxide)またはIZO(Indium Zinc Oxide)導電性酸化物膜を形成した後、前記金属膜と導電性酸化物膜を共にパターニングして金属層および金属保護層を共に形成することができる。
【0042】
例示的な実施形態では、センシング電極210はカーボンペースト単一層で形成することができる。この場合には、前記カーボンペースト層が電極で提供されることにより、追加の金属電極の形成を省略することができる。これにより、バイオセンサを薄膜化することができる。
【0043】
例示的な実施形態では、酵素反応層220はセンシング電極210上に配置できる。例えば、酵素反応層220は、センシング電極210の上面上に直接接触することができる。酵素反応層220は、例えば、検知対象物質の化学反応が起こる層で提供できる。
【0044】
例示的な実施形態では、酵素反応層220はオキシダーゼまたはデヒドロゲナーゼを含むことができる。オキシダーゼおよびデヒドロゲナーゼは、検知対象物質の種類によって選択できる。
【0045】
例示的な実施形態では、前記オキシダーゼは、グルコースオキシダーゼ(glucose oxidase)、コレステロールオキシダーゼ(cholesterol oxidase)、乳酸オキシダーゼ(lactate oxidase)、アスコルビン酸オキシダーゼ(ascorbic acid oxidase)、またはアルコールオキシダーゼ(alcohol oxidase)の少なくとも1つを含むことができる。
【0046】
例示的な実施形態では、前記デヒドロゲナーゼは、グルコースデヒドロゲナーゼ(glucose dehydrogenase)、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(glutamate dehydrogenase)、乳酸デヒドロゲナーゼ(lactate dehydronase)、またはアルコールデヒドロゲナーゼ(alcohol dehydrogenase)の少なくとも1つを含むことができる。
【0047】
これにより、前記酵素反応層220が含まれているバイオセンサは、乳酸、グルコース、コレステロール、アスコルビン酸、アルコール及び/又はグルタミン酸などの濃度を測定することができる。
【0048】
例えばバイオセンサが乳酸センサである場合、酵素反応層220は乳酸オキシダーゼ(lactate oxidase)または乳酸デヒドロゲナーゼ(lactate dehydronase)を含むことができる。
【0049】
いくつかの実施形態では、前記オキシダーゼまたは前記デヒドロゲナーゼは、バインダーによって固定することができる。前記バインダーは、当該分野で通常使用されるバインダーを含むことができ、例えば、ナフィオン、その誘導体またはキトサンの少なくとも1つを含むことができる。
【0050】
酵素反応層220は、例えば、オキシダーゼまたはデヒドロゲナーゼをバインダーと混合した組成物を塗布した後、乾燥して形成することができる。
【0051】
前記塗布には当該分野で通常使用される塗布法を使用することができ、例えば、ドロップキャスティング(drop casting)などの通常のプリンティング方法を使用することができる。
【0052】
いくつかの実施形態では、酵素反応層220は、0.1~10mMのKm(Michaelis constant)の値を有する酵素を含むことができる。これにより、酵素のKmの値によって決定される測定可能試料の濃度範囲をより効果的に調整できる。
【0053】
例示的な実施形態では、透過制御層230は酵素反応層220上に配置できる。例えば、透過制御層230は、酵素反応層220の上面上に直接接触することができる。透過制御層230は、水溶性高分子および非水溶性高分子を含む。
【0054】
透過制御層230は、例えば、前記水溶性高分子および前記非水溶性高分子を含む透過制御層形成用組成物を酵素反応層220上に塗布し、乾燥して形成することができる。これにより、透過制御層230によって酵素反応層220を外部の物理力から保護することができ、酵素反応層220のオキシダーゼまたはデヒドロゲナーゼが外部環境にさらされることを防止することができる。
【0055】
前記塗布には、当該分野で通常使用される塗布法を使用することができ、例えば、ドロップキャスティングなどの通常のプリンティング方法を使用することができる。この場合、前記透過制御層形成用組成物はキャスティング(casting)され、適切な強度のフィルムを形成することができる。
【0056】
酵素反応層220は、例えば、様々なKm(ミカエリス・メンテン定数:Michaelis-Menten Constant)の値を有する酵素を含むことができる。
【0057】
本発明で使用される用語「Km」とは、基質に対する酵素の親和性を意味する。例えば、低いKmは、基質-酵素の親和性が高いことを意味し、この場合には酵素-基質複合体の状態が安定であり得る。例えば、高いKmは、基質-酵素の親和性が低いことを意味し、この場合には生成物の生成が促進され得る。
【0058】
下記数式1は、基質の濃度による酵素の初期反応速度を示すミカエリス・メンテン式である。
【0059】
[数式1]
【0060】
(数式1中、[S]は基質の濃度、KMはミカエリス・メンテン定数(Km)、vは反応速度、Vmaxはミカエリス・メンテン式における最大反応速度を意味する。)
【0061】
数式1によれば、相対的に低いKm値を有する酵素を使用すると、測定できる基質の濃度が小さくなることがある。例えば、Km値の低い乳酸オキシダーゼなどを使用すると、10mM以上の高濃度基質の検知が困難になることがある。
【0062】
透過制御層230は、例えば、前記基質の拡散速度を調整してバイオセンサの感応範囲を調整することができる。例えば、透過制御層230は、基質を高濃度に含む試料が酵素反応層220に流入する速度を遅くして、バイオセンサの感応最大濃度を増加させることができる。
【0063】
例示的な実施形態では、前記水溶性高分子は、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol,PVA)、ヒドロキシエチルセルロース(hydroxyethyl cellulose,HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(hydroxypropyl cellulose,HPC)、カルボキシメチルセルロース(carboxy methyl cellulose,CMC)、セルロースアセテート(cellulose acetate)、およびポリビニルピロリドン(polyvinyl pyrrolidone,PVP)の少なくとも1つを含むことができる。
【0064】
これにより、透過制御層230は、酵素反応層220のオキシダーゼまたはデヒドロゲナーゼを安定化させることができる。また、透過制御層230に高分子膜が形成され、検知対象物質を含む試料の基質がセンシング電極210内に拡散する速度を調節することができる。
【0065】
例示的な実施形態では、前記非水溶性高分子は、ポリウレタン(polyurethane、PU)、ポリカーボネート(polycarbonate,PC)、およびポリビニルクロライド(polyvinyl chloride,PVC)の少なくとも1つを含むことができる。
【0066】
これにより、非水溶性高分子が前記水溶性高分子と混合され、透過制御層230の安定性をより向上させることができる。
【0067】
透過制御層230は、例えば、透過制御層形成用組成物を塗布し、乾燥して形成することができる。例えば、ドロップキャスティング工程により、簡単な工程のみで透過制御層230を形成することができる。
【0068】
例えば、前記透過制御層形成用組成物は、前記水溶性高分子および前記非水溶性高分子を含むことができる。また、前記透過制御層形成用組成物は、溶媒をさらに含むことができる。
【0069】
相対的に低いKm値を有する酵素を使用する場合には、ミカエリス・メンテン式によれば、高濃度の基質の検知性能が低下することがある。例えば、乳酸オキシダーゼ(Lactate oxidase)は、約1mMの相対的に低いKm値を有するので、10mM以上の高濃度の基質を検知するには限界がある。
【0070】
例示的な実施形態によれば、酵素反応層220は、約0.1~10mMの範囲のKm値を有する酵素を含むことができる。いくつかの実施形態では、酵素反応層220は、約0.1~5mMの範囲のKm値を有する酵素を含むことができる。一実施形態では、酵素反応層220は、約0.5~3mMの範囲のKm値を有する酵素を含むことができる。
【0071】
例示的な実施形態では、酵素反応層220のKm値が小さくなっても、透過制御層230によって基質の導入速度が遅延またはラギング(lagging)され、基質-酵素の過度の吸着または安定化を防止することができる。これにより、小さいKm値を有する酵素を採用しても、広い感応範囲を有するバイオセンサを実現することができる。
【0072】
前記溶媒は水または有機溶媒を含むことができ、前記有機溶媒はエタノールなどのアルコールを含むことができる。また、前記溶媒は塩をさらに含むバッファーであってもよい。これにより、前記水溶性高分子および前記非水溶性高分子を効果的に分散できる。
【0073】
前記水溶性高分子は、例えば、前記透過制御層形成用組成物の全重量に対して1~10重量%含むことができる。前記水溶性高分子が1重量%未満の量で含まれると、高分子膜が形成されないことがある。前記水溶性高分子が10重量%を超える量で含まれると、基質の拡散速度が減少しすぎて、バイオセンサの感度および分解能が低下することがある。
【0074】
前記非水溶性高分子は、例えば、前記透過制御層形成用組成物の全重量に対して0.5~5重量%の量で含むことができる。前記非水溶性高分子が0.5重量%未満の量で含まれると、透過制御層230の安定化効果が低下することがある。前記非水溶性高分子が5重量%を超える量で含まれると、非水溶性高分子の溶解に使用される有機溶媒の量が増加し、作業電極200の損傷が発生することがある。
【0075】
第1保護層240は、透過制御層230上に配置できる。例えば、第1保護層240は、透過制御層230の上面上に直接接触することができる。いくつかの実施形態では、第1保護層240は省略することができる。
【0076】
例えば、第1保護層240は、作業電極200を外部の衝撃や前記検査対象物質を除く化学物質から保護することができる。また、第1保護層240は、例えば検知対象物質のみを通過させることができる。これにより、酵素反応層220が測定対象成分以外の他の物質によって変性、損傷することを防止することができる。
【0077】
第1保護層240の材料は、検知対象物質を通過させるものであれば特に制限なく使用することができる。例えば、当該分野で通常使用されるイオン交換膜を使用することができ、ナフィオン(nafion)またはその誘導体を含むことができる。
【0078】
例示的な実施形態では、基準電極300は基板100上に配置できる。例えば、基準電極300は、基板100の作業電極200が配置された面と同じ面に配置できる。例えば、基準電極300は作業電極200と離隔して配置できる。例えば、基準電極300と作業電極200は電気的に切断することができる。
【0079】
例えば、基準電極300は、測定時の作業電極200で測定される電流値または電位値の基準値を提供することができる。例えば、基準電極300の電位値を基準値として、作業電極200で起こる検知対象物質の酸化還元反応を特定することができる。
【0080】
また、前記電流値の基準値と作業電極200で測定される電流値とを比較して、純粋に測定対象成分(例えば、検知対象物質)によって変化した電流量を算出することができる。前記電流量から測定対象成分の濃度を導出することができる。
【0081】
基準電極300は、例えば、Ag/AgCl電極層を含むことができる。前記Ag/AgCl電極層は、例えば、Ag/AgClペースト(paste)から形成することができる。
【0082】
一実施形態では、基準電極300の上面上に第2保護層310を配置できる。第2保護層310は、例えば、基準電極300を外部衝撃や環境から保護することができる。例えば、第2保護層310は、作業電極200の酵素反応層220上に形成される第1保護層240と実質的に同一の材料および方法で形成することができる。
【0083】
いくつかの実施形態では、作業電極200および基準電極300のそれぞれに配線を接続することができる。作業電極200に接続された配線と基準電極300に接続された配線とは、互いに電気的に離隔することができる。前記配線は駆動集積回路(IC)チップにそれぞれ接続することができる。
【0084】
例えば、前記配線は、作業電極200のセンシング電極210と実質的に同一の材料で形成することができ、基準電極300と実質的に同一の材料で形成することができる。
【0085】
いくつかの実施形態では、配線は、作業電極200および基準電極300と一体的に形成することができる。例えば、基板100上にカーボンペースト膜及び/又は金属膜を形成し、それをパターニングすることによって配線を一体的に形成することができる。あるいは、スクリーン印刷法により、センシング電極210、基準電極300および配線を一体的に形成することができる。
【0086】
例えば、作業電極200および基準電極300から測定された電気信号を、配線を介して駆動ICチップに伝えることができ、駆動ICチップは測定対象成分の濃度を算出することができる。
【0087】
図2は、本発明のいくつかの例示的な実施形態によるバイオセンサを示す概略図である。
【0088】
図2を参照すると、センシング電極210は金属電極層205と炭素電極層215とを含むことができる。
【0089】
いくつかの実施形態では、金属電極層205は炭素電極層215の底面上に配置できる。例えば、金属電極層205は基板100と接触することができる。例えば、炭素電極層215は酵素反応層220と接触することができる。
【0090】
いくつかの実施形態では、金属電極層205は、金属層と、前記金属層の上面上に配置された金属保護層とをさらに含むことができる。一実施形態では、前記金属層および前記金属保護層は、基板100と炭素電極層215との間に介在することができる。
【0091】
前記金属保護層は、電気伝導性を有し、金属層の上面を全体的に覆うことができる。例えば、前記金属保護層は前記金属層と直接接触することができる。例えば、前記金属保護層は、作業電極200の酸化還元反応によって前記金属層が酸化還元されることを防止することができる。
【0092】
例示的な実施形態では、前記金属層はAu、Ag、Cu、Pt、Ti、Ni、Sn、Mo、Co、Pd、およびこれらの合金の少なくとも1つを含むことができる。例えば、APC合金(Ag-Pd-Cu alloy)を使用することができる。
【0093】
いくつかの実施形態では、前記金属層はAu、Ag、APC合金(Ag-Pd-Cu alloy)およびPtの少なくとも1つのみで形成してもよい。
【0094】
例えば、前記Au、Ag、APC合金(Ag-Pd-Cu alloy)およびPtは、センシング電極210の電気伝導性を向上させるとともに抵抗を低減することができる。これにより、バイオセンサ10の検出性能を向上させることができる。
【0095】
例示的な実施形態では、前記金属保護層はITO(Indium Tin Oxide)またはIZO(Indium Zinc Oxide)を含むことができる。例えば、前記金属保護層は、ITO(Indium Tin Oxide)またはIZO(Indium Zinc Oxide)のみで形成することができる。前記ITOおよびIZOは、例えば、優れた電気伝導性を有しながらも化学的に安定し、前記金属層を酸化還元反応から効果的に保護できる。
【0096】
例えば、前記金属保護層は、前記金属層が大気と直接接触することを防ぐことにより、前記金属層を構成する金属成分の酸化を防止することができる。これにより、前記金属層によって検知される電気的信号の信頼性を向上させることができる。
【0097】
いくつかの実施形態では、炭素電極層215は、金属電極層205の上面上に配置できる。例えば、炭素電極層215は、金属電極層205の上面と接触することができる。例えば、炭素電極層215は、炭素系物質を含むことができ、電子輸送物質および高分子電解質をさらに含むことができる。例えば、炭素電極層215はカーボンペーストを含むことができる。これにより、酵素反応層220で発生した電子及び/又は正孔を迅速にセンシング電極210に輸送し、酵素反応層220の検知対象物質に対するセンシング性能を向上させることができる。
【0098】
いくつかの実施形態では、前記電子輸送物質は、酵素反応層220で起こる検知対象物質の酸化還元反応で発生した電子/正孔を受容して酸化または還元される物質を含むことができる。これにより、前記酸化または還元によって電子/正孔をセンシング電極210に伝達することができる。
【0099】
例えば、前記電子輸送物質は鉄(Fe)のシアン化錯体を含むことができる。前記鉄のシアン化錯体は容易に酸化または還元され得る。
【0100】
検知対象物質は、例えば、酵素反応層220の酵素と反応して過酸化水素(H)を形成することができる。バイオセンサは、例えば、過酸化水素を分解して発生する電流を測定することができる。前記鉄のシアン化錯体を用いると、過酸化水素の酸化還元電位を減少させることができる。これにより、より低い電位で過酸化水素を選択的に分解することができ、バイオセンサの選択性を向上させることができる。
【0101】
前記鉄のシアン化錯体を使用しない場合には、例えば高電位で過酸化水素を分解しなければならないので、過酸化水素以外の他の物質が共に分解されて電流を発生させることがある。
【0102】
いくつかの例示的な実施形態では、前記電子輸送物質は、プルシアンブルー(Prussian blue,Fe4[Fe(CN)63)、カリウムフェリシアニド(Potassium ferricyanide,K3[Fe(CN)6])またはカリウム鉄フェロシアニド(Potassium iron ferrocyanide, KFeIII[FeII(CN)6]・xH2O)の少なくとも1つを含むことができる。例えば、プルシアンブルーは青色顔料であり、高い酸化性を有することができる。電子輸送物質としてプルシアンブルーを用いると、例えば作業電極200の電気的感度を向上させることができる。
【0103】
例えば、前記高分子電解質はナフィオン(Nafion)またはその誘導体を含むことができる。前記高分子電解質は、例えば、前記電子輸送物質を分散させて固定することができる。これにより、前記電子輸送物質と酵素反応層220との接触面積が増加し、酵素反応層220の検知濃度の上限を向上させることができる。また、前記高分子電解質を用いると、前記電子輸送物質を均一に分散させ、凝集することを防止することができる。これにより、バイオセンサのセンシング速度、感度およびセンシング範囲を向上させることができる。
【0104】
図2を参照すると、いくつかの実施形態では、透過制御層230は複層構造を含むことができる。例えば、前記複層構造は、複数の透過制御層230が互いに接して積層されたものであってもよい。これにより、試料の基質が酵素反応層220に流入する拡散速度を細かく調整することができる。
【0105】
例えば、透過制御層230は、2層構造~5層構造を有することができる。5層構造を超えると、乾燥工程によるバイオセンサの製造時の乾燥時間が長くなることがあり、基質の拡散速度が遅くなりすぎて、センサの感度および分解能が低下することがある。
【0106】
例示的な実施形態によるバイオセンサは、ラクテート(乳酸)の測定に使用することができる。例えば、運動中の運動強度および時間が増加するにつれて、体内の乳酸レベルは増加し得る。前記乳酸は汗を通じて体外に排出され、この場合、バイオセンサにより、排出された乳酸の濃度を測定することができる。
【0107】
例えば、運動中には乳酸の濃度が数十mMまで増加し得る。例示的な実施形態によるバイオセンサは、透過制御層230を含むので、乳酸の濃度が高い場合でも、相対的に低いKm値を有する乳酸オキシダーゼを用いて、正確かつ迅速に測定することができる。
【0108】
以下、本発明の理解を助けるために好適な実施例を提示するが、これらの実施例は本発明を例示するものに過ぎず、添付の特許請求の範囲を制限するものではない。これらの実施例に対し、本発明の範疇および技術思想の範囲内で種々の変更および修正を加えることが可能であることは当業者にとって明らかであり、これらの変形および修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然のことである。
【0109】
実施例1:乳酸センサの製造
絶縁性基板として、厚さ180μmのPET製基板を用意した。
【0110】
基板の上にカーボンペースト100重量部を基準にプルシアンブルー3重量部が含まれたペースト(DS-7406CF,DAEJOO ELECTRONIC MATERIALS Co., Ltd.)をスクリーン印刷してセンシング電極を形成した。
【0111】
センシング電極から一定の距離を置いてAg/AgClをスクリーン印刷して基準電極を形成した。
【0112】
前記センシング電極上に乳酸オキシダーゼ試薬層を形成した。乳酸オキシダーゼ試薬層は以下のようにして製造した。
【0113】
乳酸オキシダーゼ40μl(TOYOBO社製、10U/1μlストック溶液(stock solution)製造)にPBS緩衝溶液40μlおよび1-メトキシ-5-メチルフェナジニウムメチルスルフェート(1-methoxy-5-methylphenazinium methyl sulfate,Sigma Aldrich社製、50mMストック溶液)20μlを添加して均一に混合し、酵素反応層形成用組成物を調製した。前記酵素反応層形成用組成物2.0μlをセンシング電極上に滴下した後、約30分間常温乾燥して酵素反応層を形成した。
【0114】
前記酵素反応層上に厚さ9.2μmの透過制御層を形成した。前記透過制御層は、ポリビニルピロリドン(polyvinyl pyrrolidone,PVP)10重量%、ポリウレタン(polyurethane,PU)2重量%および水を含む透過制御層形成用組成物を塗布および乾燥して形成した。
【0115】
実施例2
実施例1と同様の方法でセンサを製作する一方、透過制御層を3つの層が互いに接触するように形成した。
【0116】
実施例3
実施例1と同様の方法でセンサを製作する一方、透過制御層を5つの層が互いに接触するように形成した。
【0117】
比較例
絶縁性基板として、厚さ180μmのPET製基板を用意した。
【0118】
基板の上にカーボンペースト100重量部を基準にプルシアンブルーが3重量部含まれたペースト(DS-7406CF,DAEJOO ELECTRONIC MATERIALS Co., Ltd.)をスクリーン印刷してセンシング電極を形成した。
【0119】
作業電極から一定の距離を置いてAg/AgClをスクリーン印刷して基準電極を形成した。
【0120】
前記センシング電極上に乳酸オキシダーゼ試薬層を形成した。乳酸オキシダーゼ試薬層は以下のようにして製造した。
【0121】
乳酸オキシダーゼ40μl(TOYOBO社製、10U/1μlストック溶液製造)にPBS緩衝溶液40μlおよび1-メトキシ-5-メチルフェナジニウムメチルスルフェート(1-methoxy-5-methylphenazinium methyl sulfate, Sigma Aldrich社製、50mMストック溶液)20μlを添加して均一に混合し、酵素反応層形成用組成物を調製した。前記酵素反応層形成用組成物2.0μlをセンシング電極上に滴下した後、約30分間常温乾燥して酵素反応層を形成した。
【0122】
実験例
乳酸感応最大濃度の測定
実施例および比較例のバイオセンサを用いて、乳酸標準溶液の電流を測定した。ここで、前記乳酸標準溶液としては、L-乳酸ナトリウム(Sodium L-Lactate,Sigma-aldrich)を用いた。各々の乳酸標準溶液(1、3、5、10、15、20、25、30、35、40及び50mmol/L)を作業電極と基準電極に均一に滴下した後、0.2Vの電圧を印加し、20秒後の電流値を測定して、バイオセンサが感応できる試料の乳酸の最大濃度を測定し、図3のグラフを得た。
【0123】
図3を参照すると、実施例1のバイオセンサは5mMの乳酸を含む試料まで検知でき、実施例2及び実施例3のバイオセンサはそれぞれ25mM及び40mMの乳酸を含む試料まで検知することができた。比較例のバイオセンサは、乳酸濃度が5mMを超えた場合、乳酸の濃度が増加したにもかかわらず電流値が減少した。すなわち、乳酸の濃度が5mMを超えると、乳酸濃度の検知に失敗した。
【0124】
実施例1のバイオセンサは、透過制御層が単一層で形成されたものにすぎないが、比較例よりも広い感応範囲を示した。実施例2及び3のバイオセンサは、透過制御層が複層構造を有する場合、比較例に比べて乳酸のセンシング性能(感応範囲)が顕著に向上したことが確認された。
図1
図2
図3