IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セブン キング エナージー カンパニー リミテッドの特許一覧

特許7457805イオン伝導性セラミックおよびその製造方法{Ionic Conductive Ceramic and Its Synthesis Method}
<>
  • 特許-イオン伝導性セラミックおよびその製造方法{Ionic  Conductive  Ceramic  and  Its  Synthesis  Method} 図1
  • 特許-イオン伝導性セラミックおよびその製造方法{Ionic  Conductive  Ceramic  and  Its  Synthesis  Method} 図2
  • 特許-イオン伝導性セラミックおよびその製造方法{Ionic  Conductive  Ceramic  and  Its  Synthesis  Method} 図3
  • 特許-イオン伝導性セラミックおよびその製造方法{Ionic  Conductive  Ceramic  and  Its  Synthesis  Method} 図4
  • 特許-イオン伝導性セラミックおよびその製造方法{Ionic  Conductive  Ceramic  and  Its  Synthesis  Method} 図5
  • 特許-イオン伝導性セラミックおよびその製造方法{Ionic  Conductive  Ceramic  and  Its  Synthesis  Method} 図6
  • 特許-イオン伝導性セラミックおよびその製造方法{Ionic  Conductive  Ceramic  and  Its  Synthesis  Method} 図7
  • 特許-イオン伝導性セラミックおよびその製造方法{Ionic  Conductive  Ceramic  and  Its  Synthesis  Method} 図8
  • 特許-イオン伝導性セラミックおよびその製造方法{Ionic  Conductive  Ceramic  and  Its  Synthesis  Method} 図9
  • 特許-イオン伝導性セラミックおよびその製造方法{Ionic  Conductive  Ceramic  and  Its  Synthesis  Method} 図10
  • 特許-イオン伝導性セラミックおよびその製造方法{Ionic  Conductive  Ceramic  and  Its  Synthesis  Method} 図11
  • 特許-イオン伝導性セラミックおよびその製造方法{Ionic  Conductive  Ceramic  and  Its  Synthesis  Method} 図12
  • 特許-イオン伝導性セラミックおよびその製造方法{Ionic  Conductive  Ceramic  and  Its  Synthesis  Method} 図13
  • 特許-イオン伝導性セラミックおよびその製造方法{Ionic  Conductive  Ceramic  and  Its  Synthesis  Method} 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】イオン伝導性セラミックおよびその製造方法{Ionic Conductive Ceramic and Its Synthesis Method}
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/06 20060101AFI20240321BHJP
   H01B 1/08 20060101ALI20240321BHJP
   C01B 25/45 20060101ALI20240321BHJP
   C01B 33/26 20060101ALI20240321BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20240321BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALN20240321BHJP
   H01M 10/052 20100101ALN20240321BHJP
【FI】
H01B1/06 A
H01B1/08
C01B25/45 G
C01B25/45 T
C01B33/26
H01B13/00 Z
H01M10/0562
H01M10/052
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022528662
(86)(22)【出願日】2020-11-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-20
(86)【国際出願番号】 KR2020016669
(87)【国際公開番号】W WO2021107553
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-05-17
(31)【優先権主張番号】10-2019-0153627
(32)【優先日】2019-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518335975
【氏名又は名称】セブン キング エナージー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SEVEN KING ENERGY CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】(Cheongju university, Naedeok-dong)Miraechangjogwan 50-502ho, 298, Daeseong-ro Cheongwon-gu, Cheongju-si Chungcheongbuk-do 28503 REPUBLIC OF KOREA
(74)【代理人】
【識別番号】110002789
【氏名又は名称】弁理士法人IPX
(72)【発明者】
【氏名】キム・ジェグワン
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109659507(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110277586(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0116615(KR,A)
【文献】特開2015-153588(JP,A)
【文献】国際公開第2018/181674(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/098176(WO,A1)
【文献】特開2015-065021(JP,A)
【文献】特開2017-059536(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/06
H01B 1/08
C01B 25/45
C01B 33/26
H01B 13/00
H01M 10/0562
H01M 10/052
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1を有するナシコン構造の酸化物系伝導性セラミック。
[化学式1]
Li1+xAl2-x12
(XはYであり、0<x<2である)
【請求項2】
下記化学式2を有するナシコン構造の酸化物系伝導性セラミック。
[化学式2]
Li1+xZr3-x12
(X=SnまたはYであり、1.5≦x≦2.3である)
【請求項3】
セラミック固体電解質の原料物質を混合し、ボールミリング混合し、300℃~500℃で1次熱処理し、800℃~1200℃で2次熱処理を行い、下記化学式1又は2のナシコン構造の酸化物系伝導性セラミックを合成する方法。
[化学式1]
Li1+xAl2-x12
(XはYであり、0<x<2である)
[化学式2]
Li1+xZr3-x12
(X=SnまたはYであり、1.5≦x≦2.3である)
【請求項4】
セラミック固体電解質の原料物質を水に入れ、ボールミリング混合し、乾燥機でボールミリング混合物を乾燥し、300℃~500℃で1次熱処理し、800℃~1200℃で2次熱処理を行い、下記化学式1または2のナシコン構造の酸化物系伝導性セラミックを合成する方法。
[化学式1]
Li1+xAl2-x12
(XはYであり、0<x<2である)
[化学式2]
Li1+xZr3-x12
(X=SnまたはYであり、1.5≦x≦2.3である)
【請求項5】
セラミック固体電解質の原料物質を水に入れ、ボールミリング混合し、回転式濃縮又はスプレー噴射でボールミリング混合物を一次乾燥し、乾燥機でボールミリング混合物を二次乾燥し、300℃~500℃で一次熱処理し、800℃~1200℃で二次熱処理を行い、下記化学式1または2のナシコン構造の酸化物系伝導性セラミックを合成する方法。
[化学式1]
Li1+xAl2-x12
(XはYであり、0<x<2である)
[化学式2]
Li1+xZr3-x12
(X=SnまたはYであり、1.5≦x≦2.3である)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン伝導性を有するナシコン構造の酸化物系セラミックに関する。本発明のリチウムイオン伝導性セラミックは、新しい化学構造の材料であり、優れたイオン伝導性を有している。本発明はまた、上記の新しいセラミックを合成する方法に関する。本発明の好ましい合成方法によれば、水を溶媒として使用して原料物質を混合し、回転式濃縮工程またはスプレー乾燥工程を経て上記の新しいセラミックを合成する。こうして作られたセラミックは、粒子が球状でありながら分布度が均一なセラミック固体電解質粒子である。本発明のセラミック粒子を電解質にして電池に適用すると、優れた電気化学特性を示す。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池市場は小型IT機器だけでなく、電気自動車、ESSシステムなどの中、大型化市場に拡大している。既存のリチウム二次電池は液体電解質を使用している。ところが、爆発性を持っている液体電解質を使用してパッケージ化、大型化するのは、いつ爆発するのか分からない火薬庫を作るのと同じである。また、液体電解質を使用するリチウム二次電池は、温度が上がると爆発する危険性があり、通気口(vent cap)やPTC(positive temperature coefficient)素子などの高価の安全装置を必要とする。このような安全装置の使用は、リチウム二次電池のエネルギー密度を下げ、電池の製造単価を高める原因となっている。したがって、高価の安全装置の使用は、二次電池のエネルギー密度と製造単価の面で携帯用電子機器に使用される小容量電池でも、電気自動車の電源などの大容量電池でも、いずれも欠点として作用している。
【0003】
これにより、より優れたリチウム二次電池を作るための研究開発が活発に行われており、既存のリチウム二次電池が持っている問題点を解決するための様々な技術が提示されている。そのうち多くの関心の対象となっているのが全固体電池である。全固体電池は、既存のリチウム二次電池に使用される液体電解質と高分子分離膜を使用せず、固体状態の電解質を使用して、この固体状態の電解質が既存の液体電解質と分離膜の機能を共にするようにするものである。
【0004】
固体状態の電解質を用いることにより、既存の液体電解質が持っていた発火、爆発の危険を排除することができ、電池内空間を減らして電池のエネルギー密度を増加させることができる。固体相の電解質は、高分子固体電解質とセラミック固体電解質とに分けられる。高分子固体電解質は製造や取り扱いが難しく、商用化に困難が多い。高分子固体電解質はイオン伝導度が低いという問題もある。低いイオン伝導度を改善するために液体電解質を添加したゲル高分子電解質も研究されている。しかし、ゲル高分子電解質は液体電解質を多く含むため、液体電解質の欠点を示すしかないという欠点がある。そのため最近セラミック固体電解質に対する関心が高まっている。
【0005】
リチウムイオン伝導性セラミック電解質は大きく硫化物系と酸化物系に分けることができる。硫化物系固体電解質は、酸化物系固体電解質に比べて合成が比較的容易で、延性を有しており、加工時に高い熱処理を必要とせず、高い伝導度を示す。例えば、thio-LISICONの一つであるLi3.25Ge0.250.75は、2.2mS/cmのイオン伝導度を示している。LGPS(Li10GeP12)は12mS/cmのイオン伝導度を示す。しかし、硫化物系固体電解質は臭いが強く、陰極部に副反応が現れ、空気や水に不安定な致命的な欠点を持っている。そのため、安定した酸化物系固体電解質に対する関心が高まっている。代表的な酸化物系固体電解質としてはLATP(Li1+xAlTi2-x(PO)(0<x<2)、LLZO(LiLaZr12)などがある。LATPとLLZOは、優れたイオン伝導性を有し、大気中で安定しているため、商業化が容易である。しかし、これらの酸化物系固体電解質は、陰極部で還元反応が起こるTiを有しているか、リチウムが7個もあり、空気に不安定あり、ガスを発生させる。また、これらはほとんど固相法により製造され、粒子が不均一であり、熱処理温度によって結晶性の差が多くなる。
【0006】
したがって、新しい化学構造のイオン伝導性セラミックが必要である。空気中でも安定した酸化物系セラミックが新しいセラミックで開発される必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ナシコン構造のLATP(Li1+xAlTi2-x(PO)またはガーネット(garnet)構造のLLZO(LiLaZr12)がイオン伝導度に優れるため、従来の酸化物系セラミック固体電解質として主に使用された。しかし、これらは化学構成成分のうちTiを有していて陰極部で還元反応が起こる問題点や、リチウム元素が7個もあって空気との反応性が大きく、大気で不安定であるという問題点がある。本発明は、イオン伝導度に優れ、空気中でも安定した新しい酸化物系伝導性セラミックを提供するためのものである。本発明はまた、従来のセラミック固体電解質の合成法を改善し、粒子の分布と形状が均一で、粒子の形状が球状で、結晶性に優れたセラミック固体電解質を製造するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従来のセラミック固体電解質が持っている問題を解決するために、構成成分中のTiを含まず、リチウム元素を1.3個から2.3個だけ含むながらもイオン伝導度に優れ、空気中で安定したナシコン構造の酸化物系伝導性セラミックとその製造方法を提供する。新しい構造のセラミックは、従来の固相法で製造することができる。水を溶媒として使用して原料物質を混合し、ボールミリング混合し、回転式濃縮法、またはスプレー噴射法を適用する新しい方法で酸化物系伝導性セラミック粒子を製造すると、セラミック粒子の形状を球状に均一にし、粒子分布が均一なセラミックを得ることができる。このように作製された酸化物系セラミック粒子を電解質で作って電池に適用すると優れた電気化学特性を示す。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電気化学反応に優れ、大気中で安定であり、イオン伝導度の高いナシコン構造の酸化物系伝導性セラミックを提供することができる。
【0010】
本発明によれば、粒子の形状と分布が均一な高性能のセラミック電解質を製造することができる。
【0011】
本発明によれば、球状粒子形態を有して分布の均一な高性能のセラミック粒子を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、一般的な固相法により合成されたナシコン構造の酸化物系伝導性セラミックLi1+xAlSi2-x12(x=0.3)のSEM図である。
図2図2は、一般的な固相法により合成されたナシコン構造の酸化物系伝導性セラミックLi1+xZrSi3-x12(x=2)のSEM図である。
図3図3は、ナシコン構造の酸化物系伝導性セラミックLi1+xAlSi2-x12(x=0.3)のXRDパターンである。
図4図4は、ナシコン構造の酸化物系伝導性セラミックLi1+xAlSi2-x12(x=0.3)粒子のSEM写真である。
図5図5は、ナシコン構造の酸化物系伝導性セラミックLi1+xAlSi2-x12(x=0.3)の温度によるイオン伝導度である。
図6図6は、ナシコン構造の酸化物系伝導性セラミックLi1+xAlSn2-x12(x=0.5)のXRDパターンである。
図7図7は、ナシコン構造の酸化物系伝導性セラミックLi1+xAlSn2-x12(x=0.5)粒子のSEM写真である。
図8図8は、ナシコン構造の酸化物系伝導性セラミックLi1+xAlSn2-x12(x=0.5)の温度によるイオン伝導度である。
図9図9は、ナシコン構造の酸化物系伝導性セラミックLi1+xZrSi3-x12(x=2)とLi1+xZrSn3-x12(x=2)のXRDパターンである。
図10図10は、ナシコン構造の酸化物系伝導性セラミックLi1+xZrSi3-x12(x=2)粒子のSEM写真である。
図11図11は、ナシコン構造の酸化物系伝導性セラミックLi1+xZrSi3-x12(x=2)の温度によるイオン伝導度である。
図12図12は、ナシコン構造の酸化物系伝導性セラミックLi1+xZrSn3-x12(x=2)粒子のSEM写真である。
図13図13は、回転式濃縮工程を経て製造したナシコン構造のセラミック固体電解質Li1.3Al0.3Si1.712の粒子写真である。
図14図14は、スプレー噴射工程を経て製造したナシコン構造のセラミック固体電解質Li1.3Al0.3Si1.712の粒子写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の具体的な内容をさらに詳細に説明する。ただし、これは本発明の一実施形態を例示として提示するものである。以下の説明によって本発明が限定されるものではなく、本発明は後述する特許請求の範囲によってのみ定義される。
【0014】
本発明による新しいナシコン構造の酸化物系伝導性セラミックは、下記化学式1のような構造を有することができる。
[化学式1]
(X=Zr、Si、Sn、またはYであり、0<x<2である)
【0015】
本発明による新しいナシコン構造の酸化物系伝導性セラミックは、下記化学式2のような構造を有することができる。
[化学式2]
(XはSi、Sn、Ge、またはYであり、1.5≦x≦2.3である)
【0016】
本発明の一実施形態では、セラミック固体電解質の原料物質を混合し、十分にボールミリング混合し、一次熱処理と二次熱処理を経て化学式1の伝導性セラミックを合成する。一次熱処理はセラミック粒子をか焼し、二次熱処理はセラミック粒子を焼成するものである場合もある。
【0017】
本発明の一実施形態では、水を溶媒として使用してセラミック固体電解質の原料物質を混合し、溶液状態で十分にボールミリング混合し、乾燥機でボールミリング混合物を乾燥し、一次熱処理と二次熱処理を行って化学式1の伝導性セラミックを合成する。一次熱処理はセラミック粒子をか焼し、二次熱処理はセラミック粒子を焼成するものである場合もある。
【0018】
ボールミリング速度は、150~350rpmであり得り、200~350rpmであり得り、250~350rpmであり得り、250~300rpmであり得る。
【0019】
ボールミリング混合時間は、12時間から48時間であってもよく、12時間から36時間であってもよく、24時間から36時間であってもよい。
【0020】
乾燥機で乾燥する時間は12時間~36時間、好ましくは18時間~24時間であり得、乾燥温度は60℃~100℃、好ましくは70℃~80℃であり得る。
【0021】
一次熱処理温度は300℃~500℃とすることができ、350℃~450℃が好ましい。二次熱処理温度は800℃~1200℃とすることができ、850℃~1100℃が好ましく、900℃~1100℃がさらに好ましい。物質および条件に応じて、800℃~1000℃が好ましい場合があり、900℃~1000℃が好ましい場合がある。
【0022】
一次熱処理時間と二次熱処理時間は、2時間から12時間であり得、2時間から11時間であり得、2時間から10時間であり得、2時間から9時間であり得、2時間から8時間であり得、2時間から7時間であり得、2時間から6時間であり得、2時間から5時間であり得、2時間から4時間であり得、3時間から12時間であり得、3時間から11時間であり得、3時間から10時間であり得、3時間から9時間であり得、3時間から8時間であり得、3時間から7時間であり得、3時間から6時間であり得、3時間から5時間であり得、3時間から4時間であり得、4時間から12時間であり得、4時間から11時間であり得、4時間から10時間であり得、4時間から9時間であり得、4時間から8時間であり得、4時間から7時間であり得、4時間から6時間であり得、4時間から5時間であり得、5時間から12時間であり得、5時間から11時間であり得、5時間から10時間であり得、5時間から9時間であり得、5時間から8時間であり得、5時間から7時間であり得、5時間から6時間であり得、6時間から12時間であり得、6時間から11時間であり得、6時間から10時間であり得、6時間から9時間であり得、6時間から8時間であり得、6時間から7時間であり得る。
【0023】
本発明の一実施形態では、セラミック固体電解質の原料物質を混合し、十分にボールミリング混合し、一次熱処理と二次熱処理を経て化学式2の伝導性セラミックを合成する。一次熱処理はセラミック粒子をか焼し、二次熱処理はセラミック粒子を焼成するものである場合もある。
【0024】
本発明の一実施形態では、水を溶媒として使用してセラミック固体電解質の原料物質を混合し、溶液状態で十分にボールミリング混合し、乾燥機でボールミリング混合物を乾燥し、一次熱処理と二次熱処理を経て化学式2の伝導性セラミックを合成する。一次熱処理はセラミック粒子をか焼し、二次熱処理はセラミック粒子を焼成するものである場合もある。
【0025】
ボールミリング混合時間は、8時間から48時間であり得、8時間から36時間であり得、8時間から24時間であり得、10時間から24時間であり得、10時間から18時間であり得る。
【0026】
乾燥機で乾燥する時間は12時間~36時間、好ましくは18時間~24時間であり得、乾燥温度は60℃~100℃、好ましくは70℃~80℃であり得る。
【0027】
一次熱処理温度は300℃~500℃とすることができ、350℃~450℃が好ましい。二次熱処理温度は800℃~1200℃とすることができ、850℃~1100℃が好ましく、900℃~1100℃がさらに好ましい。物質および条件に応じて、800℃~1000℃が好ましく、900℃~1000℃が好ましい場合がある。
【0028】
一次熱処理時間と二次熱処理時間は、2時間から13時間であり得、2時間から12時間であり得、2時間から11時間であり得、2時間から10時間であり得、2時間から9時間であり得、2時間から8時間であり得、2時間から7時間であり得、2時間から6時間であり得、2時間から5時間であり得、2時間から4時間であり得、3時間から13時間であり得、3時間から12時間であり得、3時間から11時間であり得、3時間から10時間であり得、3時間から9時間であり得、3時間から8時間であり得、3時間から7時間であり得、3時間から6時間であり得、3時間から5時間であり得、3時間から4時間であり得、4時間から13時間であり得、4時間から12時間であり得、4時間から11時間であり得、4時間から10時間であり得、4時間から9時間であり得、4時間から8時間であり得、4時間から7時間であり得、4時間から6時間であり得、4時間から5時間であり得、5時間から13時間であり得、5時間から12時間であり得、5時間から11時間であり得、5時間から10時間であり得、5時間から9時間であり得、5時間から8時間であり得、5時間から7時間であり得、5時間から6時間であり得、6時間から13時間であり得、6時間から12時間であり得、6時間から11時間であり得、6時間から10時間であり得、6時間から9時間であり得、6時間から8時間であり得、6時間から7時間であり得、5時間から13時間であり得、5時間から12時間であり得、5時間から11時間であり得、5時間から10時間であり得、5時間から9時間であり得、5時間から8時間であり得、5時間から7時間であり得、5時間から6時間であり得、6時間から13時間であり得、6時間から12時間であり得、6時間から11時間であり得、6時間から10時間であり得、6時間から9時間であり得、6時間から8時間であり得、6時間から7時間であり得る。
【0029】
本発明の一実施形態では、前記ボールミリング混合後、回転式濃縮またはスプレー噴射ドライ工程を追加して一次乾燥させ、60℃~100℃、好ましくは60℃~80℃、さらに好ましくは70℃~80℃で二次乾燥させた後、前記一次熱処理を行い、前記二次熱処理を行って化学式1または化学式2の酸化物系伝導性セラミックを製造することができる。回転式濃縮工程の温度は60℃~100℃であり得、70℃~80℃が好ましい。スプレー噴射ドライ工程の温度は80℃~300℃であり得、100℃~200℃が好ましい。
【発明の実施のための形態】
【0030】
(実施例1)
Li1+xAlSi2-x12(x=0.3)化学成分のナシコン構造の酸化物系伝導性セラミックの合成
LiCl、Al(NO・9HO、NHPO、C20Siを化学当量に従って計算した後、1.3:0.3:3:1.7モルずつ混合した。その後、ジルコニアボール径5mm、10mmを2:1の比率で準備した後、混合された試料とジルコニアボールの体積比が1:1となるように準備した500ml容器に入れた。ボールミルの回転速度は200~300RPMであり、24時間ボールミルを行った。24時間ボールミル混合した後、ジルコニアボールを除去した。その後400℃で3時間一次熱処理を行った。熱処理されたパウダーを乳鉢内で擦って割ってから900℃で4時間二次熱処理を行い、Li1+xAlSi2-x12(x=0.3)化学成分のナシコン構造の酸化物系伝導性セラミックを合成した。実施例1で合成した伝導性セラミック粒子のSEM写真を図1に示す。
【0031】
(実施例2)
Li1+xZrSi3-x12(x=2)化学成分のナシコン構造の酸化物系伝導性セラミックの合成
LiPO、SiO、ZrOを化学当量に従って計算した後、1:2:2モルずつ混合した。その後、ジルコニアボール径5mm、10mmを2:1の比率で準備した後、混合された試料とジルコニアボールの体積比が1:1となるように準備した500ml容器に入れた。ボールミルの回転速度は200~300RPMであり、10時間ボールミルを行った。10時間ボールミル混合した後、ジルコニアボールを除去した。その後400℃で5時間一次熱処理を行った。熱処理されたパウダーを乳鉢内で擦って割ってから1100℃で12時間二次熱処理を行い、Li1+xZrSi3-x12(x=2)化学成分のナシコン構造の酸化物系伝導性セラミックを合成した。実施例2で合成した伝導性セラミック粒子のSEM写真を図2に示す。
【0032】
(実施例3)
Li1+xAlSi2-x12(x=0.3)化学成分のナシコン構造の酸化物系伝導性セラミックの合成
LiCl、Al(NO・9HO、NHPO、C20Siを化学当量に従って計算した後、1.3:0.3:3:1.7モルずつ蒸留水500mlに入れた。その後、ジルコニアボール径5mm、10mmを2:1の比率で準備した後、混合された試料とジルコニアボールの体積比が1:1となるように準備した500ml容器に入れた。ボールミルの回転速度は200~300RPMであり、24時間ボールミルを行った。24時間ボールミル混合した後、ジルコニアボールを除去し、80℃で12時間乾燥した。その後400℃で3時間一次熱処理を行った。熱処理されたパウダーを乳鉢内で擦って割ってから900℃で4時間二次熱処理を行い、Li1+xAlSi2-x12(x=0.3)化学成分のナシコン構造の酸化物系伝導性セラミックを合成した。
【0033】
このように合成した伝導性セラミックのXRDパターンを図3に示す。実施例3で合成した伝導性セラミック粒子のSEM写真を図4に示す。実施例3で合成した伝導性セラミックの温度によるイオン伝導度を図5に示す。
【0034】
Li1+xAlSi2-x12(x=0.3)伝導性セラミックは30℃で1.08x10-4S/cmのイオン伝導度を有し、平均粒径は4μmであった。
【0035】
(実施例4)
Li1+xAlSn2-x12(x=0.5)化学成分のナシコン構造の酸化物系伝導性セラミックの合成
LiCl、Al(NO・9HO、NHPO、SnOを化学当量に従って計算した後、1.5:0.5:3:1.5モルずつ蒸留水500mlに入れた。その後、ジルコニアボール径5mm及び10mmを2:1の比率で準備した後、混合された試料とジルコニアボールの体積比が1:1となるように準備された500ml容器に入れた。ボールミルの回転速度は200~300RPMであり、24時間ボールミルを行った。24時間ボールミル混合した後、ジルコニアボールを除去し、80℃で12時間乾燥した。その後400℃で3時間一次熱処理を行った。熱処理されたパウダーを乳鉢内で擦って割ってから900℃で4時間二次熱処理を行い、Li1+xAlSn2-x12(x=0.5)化学成分のナシコン構造の酸化物系伝導性セラミックを合成した。
【0036】
このように合成した伝導性セラミックのXRDパターンを図6に示す。実施例4で合成した伝導性セラミック粒子のSEM写真を図7に示す。実施例4で合成した伝導性セラミックの温度によるイオン伝導度を図8に示す。
【0037】
Li1+xAlSn2-x12(x=0.5)伝導性セラミックは30℃で6.07x10-4S/cmのイオン伝導度を有し、平均粒径は3μmであった。
【0038】
(実施例5)
Li1+xZrSi3-x12(x=2)化学成分のナシコン構造の酸化物系伝導性セラミックの合成
LiPO、SiO、ZrOを化学当量に従って算出した後、1:2:2モルずつ蒸留水500mlに入れた。その後、ジルコニアボール径5mm、10mmを2:1の比率で準備した後、混合された試料とジルコニアボールの体積比が1:1となるように準備した500ml容器に入れた。ボールミルの回転速度は200~300RPMであり、10時間ボールミルを行った。10時間ボールミリング混合した後、ジルコニアボールを除去し、80℃で12時間乾燥した。その後400℃で5時間一次熱処理を行った。熱処理されたパウダーを乳鉢内で擦って割ってから1100℃で12時間二次熱処理を行い、Li1+xZrSi3-x12(x=2)化学成分のナシコン構造の酸化物系伝導性セラミックを合成した。
【0039】
このように合成した伝導性セラミックのXRDパターンを図9に示す。実施例5で合成した伝導性セラミック粒子のSEM写真を図10に示す。実施例5で合成した伝導性セラミックの温度によるイオン伝導度を図11に示す。
【0040】
Li1+xZrSi3-x12(x=2)伝導性セラミックは30℃で7.6x10-4S/cmのイオン伝導度を有し、平均粒径は4μmであった。
【0041】
(実施例6)
Li1+xZrSn3-x12(x=2)化学成分のナシコン構造の酸化物系伝導性セラミックの合成
LiPO、SnO、ZrOを化学当量に従って計算した後、1:2:2モルずつ蒸留水500mlに入れた。その後、ジルコニアボール径5mm、10mmを2:1の比率で準備した後、混合された試料とジルコニアボールの体積比が1:1となるように準備した500ml容器に入れた。ボールミルの回転速度は200~300RPMであり、10時間ボールミルを行った。10時間ボールミリング混合した後、ジルコニアボールを除去し、80℃で12時間乾燥した。その後400℃で5時間一次熱処理を行った。熱処理されたパウダーを乳鉢内で擦って割ってから1100℃で12時間二次熱処理を行い、Li1+xZrSn3-x12(x=2)化学成分のナシコン構造の酸化物系伝導性セラミックを合成した。
【0042】
このように合成した伝導性セラミックのXRDパターンを図9に示す。
【0043】
Li1+xZrSn3-x12(x=2)伝導性セラミックは30℃で4.8x10-4S/cmのイオン伝導度を有し、平均粒径は5μmであった。
【0044】
(実施例7)
Li1.3Al0.3Si1.712化学成分のナシコン構造の酸化物系伝導性セラミックの合成
LiCl、Al(NO・9HO、NHPO、SiOを化学当量に従って計算した後、1.3:0.3:3:1.7モルずつ蒸留水500mlに入れた。その後、ジルコニアボール径5mm、10mmを2:1の割合で準備した後、混合された試料とジルコニアボールの体積比が1:1となるように準備した500ml容器に入れた。ボールミルの回転速度は200~300RPMであり、24時間ボールミルを行った。ボールミリングを終えた試料はジルコニアボールを除去した後、80℃で6時間回転式濃縮で一次乾燥し、蒸発皿に入れた後、80℃で24時間十分に二次乾燥させた後、乾燥した試料を乳鉢に摩って粉末形に作り、熱処理を施行した。一次熱処理は試料をか焼するために常温から400℃まで上昇させた後、4時間熱処理し、100℃以下になるまで自然冷却した。二次熱処理は、試料を焼成するために1000℃で4時間熱処理した。その後粉砕してLi1.3Al0.3Si1.712化学成分のナシコン構造の酸化物系伝導性セラミックを得た。
【0045】
このように合成した伝導性セラミックの粒子写真を図13に示す。図13に示すように、回転式濃縮工程を追加して合成したセラミックは粒子が丸く分布も非常に均一である。平均粒径は2μmであった。
【0046】
(実施例8)
Li1.3Al0.3Si1.712化学成分のナシコン構造の酸化物系伝導性セラミックの合成
LiCl、Al(NO・9HO、NHPO、SiOを化学当量に従って計算した後、1.3:0.3:3:1.7モルずつ蒸留水500mlに入れた。その後、ジルコニアボール径5mm、10mmを2:1の割合で準備した後、混合された試料とジルコニアボールの体積比が1:1となるように準備した500ml容器に入れた。ボールミルの回転速度は200~300RPMであり、24時間ボールミルを行った。ボールミリングが終わった試料はジルコニアボールを除去した後、170℃で24時間スプレー噴射法で1次乾燥し、蒸発皿に入れた後、80℃で24時間十分に2次乾燥させた後、乾燥した試料を乳鉢に摩って粉末形に作り、熱処理を施した。一次熱処理は試料をか焼するために常温から400℃まで上昇させた後、4時間熱処理し、100℃以下になるまで自然冷却した。二次熱処理は、試料を焼成するために1000℃で4時間熱処理した。その後粉砕してLi1.3Al0.3Si1.712化学成分のナシコン構造の酸化物系伝導性セラミックを得た。
【0047】
このように合成した伝導性セラミックの粒子写真を図12に示す。図14に示すように、スプレー噴射ドライ工程を追加して合成したセラミックは粒子が丸く分布も非常に均一である。平均粒径は3μmであった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14