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特許7457817コア-シェル構造を有するプルシアンブルー類似体、その製造方法、および、それを含むナトリウムイオン二次電池
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】コア-シェル構造を有するプルシアンブルー類似体、その製造方法、および、それを含むナトリウムイオン二次電池
(51)【国際特許分類】
   C01C 3/11 20060101AFI20240321BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240321BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20240321BHJP
   H01M 10/054 20100101ALI20240321BHJP
【FI】
C01C3/11
H01M4/36 C
H01M4/58
H01M10/054
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2022544167
(86)(22)【出願日】2021-04-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-10
(86)【国際出願番号】 CN2021090979
(87)【国際公開番号】W WO2022226892
(87)【国際公開日】2022-11-03
【審査請求日】2022-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100159329
【弁理士】
【氏名又は名称】三縄 隆
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 欣欣
(72)【発明者】
【氏名】郭 永▲勝▼
(72)【発明者】
【氏名】欧▲陽▼ 楚英
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/081923(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第112259730(CN,A)
【文献】国際公開第2021/017810(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第112174167(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01C 3/11
H01M 4/36
H01M 4/58
H01M 10/054
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアと前記コアを被覆する被覆層を備えるコア-シェル構造を有するプルシアンブルー類似体であって、
前記コアの化学式は、下記の式1であり、
Na MnFe(CN)δ・zHO 式1
(式1において、0<δ≦1、かつ、0≦z≦10。)
前記被覆層の化学式は、下記の式2である、
MnFe(CN)α・wHO 式2
(式2において、前記Aは、ナトリウム以外のアルカリ金属元素であり、0<y≦2、0<α≦1、かつ、0≦w≦10。)
コア-シェル構造を有するプルシアンブルー類似体。
【請求項2】
前記Aは、Li、K、RbおよびCsから選ばれた少なくとも1種である、請求項1に記載のコア-シェル構造を有するプルシアンブルー類似体。
【請求項3】
式1において、0.7≦δ≦1、および/または、
式1および式2において、前記yは、それぞれ独立して0.5~2から選ばれる、請求項1又は2に記載のコア-シェル構造を有するプルシアンブルー類似体。
【請求項4】
前記被覆層は、厚さが100nm以下である、請求項1から3のいずれか1項に記載のコア-シェル構造を有するプルシアンブルー類似体。
【請求項5】
前記被覆層は、被覆量が10重量%以下である、請求項1から4のいずれか1項に記載のコア-シェル構造を有するプルシアンブルー類似体。
【請求項6】
前記プルシアンブルー類似体は、粒子径が100nm~50μmである、請求項1から5のいずれか1項に記載のコア-シェル構造を有するプルシアンブルー類似体。
【請求項7】
ステップ(1):化学式が下記の式1であるプルシアンブルー類似体粒子を溶媒1に加え、分散して懸濁液を得るステップ、
Na MnFe(CN)δ・zHO 式1
(式1において、0<δ≦1、かつ、0≦z≦10。)
ステップ(2):遷移金属元素Lを含有する可溶性塩を溶媒2に溶解して溶液cを調製するステップ、
ステップ(3):ナトリウム以外のアルカリ金属元素またはアルカリ土類金属元素Aを含有する可溶性塩、遷移金属元素Mを含有する可溶性遷移金属シアノ錯体を溶媒3に溶解して溶液dを調製するステップ、
ステップ(4):撹拌しながら、ステップ(1)で得られた懸濁液に溶液cおよび溶液dを滴下し、前記懸濁液を濾過して沈殿物を得るステップ、および、
ステップ(5):ステップ(4)で得られた沈殿物を洗浄し、乾燥してコア-シェル構造を有するプルシアンブルー類似体を得るステップであって、前記コア-シェル構造を有するプルシアンブルー類似体は、コアおよび前記コアを被覆する被覆層を備え、前記コアは前記プルシアンブルー類似体粒子であり、前記被覆層の化学式は、下記の式2であるステップ、
MnFe(CN)α・wHO 式2
(式2において、前記Aは、ナトリウム以外のアルカリ金属元素であり、0<y≦2、0<α≦1、かつ、0≦w≦10。)
を含むコア-シェル構造を有するプルシアンブルー類似体の製造方法。
【請求項8】
前記ステップ(1)におけるプルシアンブルー類似体粒子は、
ステップ():遷移金属元素であるPを含有する可溶性塩およびNa含有徐放剤を水に溶解して溶液aを調製するステップ、
ステップ(ii):遷移金属元素であるRを含有する可溶性遷移金属シアノ錯体を水に溶解して溶液bを調製するステップ、
ステップ(iii):攪拌しながら、溶液aを溶液bに滴下し、滴下が完了した後エージングし、濾過して沈殿物を得るステップ、および、
ステップ(iv):ステップ(iii)で得られた沈殿物を洗浄し、乾燥してプルシアンブルー類似体粒子を得るステップ、
を含む方法で製造される請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記ステップ(i)におけるNa含有徐放剤は、クエン酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、および、酢酸ナトリウムから選ばれた少なくとも1種である請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記ステップ(ii)における可溶性遷移金属シアノ錯体は、2価遷移金属シアン化ナトリウムである請求項または請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記ステップ(iii)において、溶液を20°C~120°Cの温度範囲内に維持する、請求項8から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記ステップ(1)、(2)および(3)において、それぞれの溶媒1、溶媒2および溶媒3は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立して脱イオン水および有機溶媒から選択された少なくとも1種であり、前記有機溶媒は、アルコール、ケトン、およびハロゲン化炭化水素から選ばれた少なくとも1種である、請求項7から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記ステップ(3)における可溶性遷移金属シアノ錯体は、2価遷移金属シアン化ナトリウムである、請求項7から12のいずれ1項に記載の方法。
【請求項14】
ステップ(4)において、前記溶液cおよび前記溶液dの滴下速率は、それぞれ独立して0.1ml/min~10ml/minの範囲内にあり、あるいは、
ステップ(4)において、反応系を20°C~120°Cの温度範囲内に維持する、請求項7から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記Aは、Li、K、Rb及びCsから選ばれた少なくとも1種である、請求項7から14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
請求項1から6のいずれか1項に記載のコア-シェル構造を有するプルシアンブルー類似体を含むナトリウムイオン二次電池。
【請求項17】
請求項16に記載のナトリウムイオン二次電池を含む電池モジュール。
【請求項18】
請求項17に記載の電池モジュールを含む電池パック。
【請求項19】
請求項16に記載のナトリウムイオン二次電池、請求項17に記載の電池モジュール、または、請求項18に記載の電池パックから選ばれた1種以上を含む、電気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、ナトリウムイオン二次電池分野に関し、特にコア-シェル構造を有するプルシアンブルー類似体、前記コア-シェル構造を有するプルシアンブルー類似体の製造方法、それを含むナトリウムイオン二次電池、電池モジュール、電池パックおよび電気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯型電子機器から高出力電気自動車、大規模エネルギー貯蔵発電所、スマートグリッドなどへのリチウムイオン電池の開発と適用が進むにつれて、リチウムイオン電池の需要量はますます増加しているが、リチウム資源が限られているため、リチウムイオン電池の持続可能な開発が制限されている。一方、リチウムと同じ主族であるナトリウムは、化学的性質がリチウムと類似し、豊富なリザーブを有するため、現在、リチウムイオン電池と類似する動作原理を持つナトリウムイオン電池は、開発されており、大規模なエネルギー貯蔵用途でリチウムイオン電池の重要な補完物としての役割が期待されている。
【0003】
ナトリウムイオン二次電池の正極材料として、プルシアンブルー類似体(以下、PBAと呼ぶこともある。)は、特別なオープンフレーム結晶構造を有するため、比容量とイオン輸送のいずれにおいても明らかなメリットがある。PBAの化学式は、通常、NaPR(CN)(P、Rは、Fe、Co、Ni、Mnなどの遷移金属元素である。)と書く。遷移金属イオンP、Rと-C≡N-とは、P-C≡N-Rに従って配列されて3次元の立方体フレーム構造が形成されており、遷移金属原子P、Rは面心立方体構造の頂点に位置し、エッジに配置された-C≡N-によって接続されている。その理論比容量は170mAh/gに近く、電圧プラットフォームは3~3.5Vの間であり、また、立方体のボイドのサイズは大きく(直径≒4.6Å)、[100]方向チャネルは幅が広く(≒3.2Å)、大きなイオン半径を持つアルカリ金属イオンの急速なマイグレーションに非常に役立つ。
【0004】
しかし、既存のPBA材料は、長期間貯蔵中に電気化学的性能の経時劣化が生じやすい。したがって、PBA材料は、高容量、高電圧プラットフォーム、迅速なナトリウムイオン輸送チャネル、及び低コスト、製造の容易さなどの商業的に利用可能な一連の利点を有するが、長期間貯蔵が困難であるため、産業上の利用にとって不利である。長期間貯蔵でのPBA材料の電気化学的性能劣化を抑えることができれば、その電気化学的性能と安定性が大幅に向上することが期待され、ナトリウムイオン二次電池へのPBAの応用が大幅に促進される。
【0005】
したがって、長期間貯蔵に安定したプルシアンブルー類似体を提供することは、ナトリウムイオン二次電池の分野において重要な意義を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願は、上記課題に鑑みてなされたものであり、長期間貯蔵した後も劣化しにくく、優れたサイクル性能等の電気化学性能を維持でき、工業的なナトリウムイオン二次電池への適用に好適なナトリウムイオン二次電池の正極材料としてのプルシアンブルー類似体を提供することを目的とする。
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、PBA材料の電気化学的性能の劣化がPBA材料の吸水に関している可能性があることを発見した。従来、PBA材料を真空加熱により脱水する技術があり、たとえば、15mTorrの高真空度でMnFe-PBAを100°C、30hの真空乾燥脱水することにより、MnFe-PBAの水分含有量を0.5wt%(0.08HO/f.u.)まで低下させることができる(Journal of the American Chemical Society,2015,137(7):2658-2664)。しかし、このような脱水プロセスは、時間がかかり、かつ、コストが高い。また、PBA材料は、吸水し易く、高温真空で水分子を取り除いても、脱水されたPBA材料は、空気中に保存された状態で容易に再吸水して、電気化学的性能、特にサイクル性能が急速に低下し、充放電サイクル中にナトリウムの析出が起こる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本願の第1の態様は、コアおよびコアを被覆する被覆層を有するコア‐シェル構造を有するプルシアンブルー類似体であって、
前記コアの化学式は、下記の式1であり、
NaP[R(CN)δ・zHO 式1
(式1において、前記P、Rは、それぞれ独立して遷移金属元素から選択された少なくとも1種であり、0<x≦2、0<δ≦1、かつ、0≦z≦10。)
前記被覆層の化学式は、下記の式2である、
L[M(CN)α・wHO 式2
(式2において、前記Aは、ナトリウム以外のアルカリ金属元素またはアルカリ土類金属元素であり、前記L、Mは、それぞれ独立して遷移金属元素から選択された少なくとも1種であり、0<y≦2、0<α≦1、かつ、0≦w≦10。)
コア‐シェル構造を有するプルシアンブルー類似体を提供する。
【0009】
化学組成のAL[M(CN)αを有するプルシアンブルー類似体でシェルとしてナトリウム含有プルシアンブルー類似体の表面を被覆することにより、当該シェルは、特に効果的に水分子がコア-シェル構造内に進入することを妨げ、PBA材料が水を吸収しにくく、従って、PBA材料の常温常圧での貯蔵安定性が大幅に改善され、後続のバッテリーセルレベルの製作コストを大幅に低減するとともに、PBA材料の構造安定性を向上させ、ナトリウムイオン二次電池の要求を満たすことができる。また、当該コア‐シェル構造のPBA材料は、製造コストが低い。
【0010】
いずれの実施形態において、前記P、R、L、Mは、それぞれ独立してFe、Mn、Ni、Co、CuおよびZnから選ばれた少なくとも1種である。これによって、上記の遷移金属イオンを使用することにより、PBA材料の構造完全性を確保するとともに、PBA材料に電気化学的容量を維持するなどの優れた電気化学的性能を有させることができる。
【0011】
いずれの実施形態において、前記Aは、Li、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、SrおよびBaから選ばれた少なくとも1種であり、任意にK、Rb、Cs、MgおよびCaのうちの少なくとも1種、例えば、K、RbおよびCsのうちの少なくとも1種である。これによって、上記のイオンをAイオンとして選択することにより、水分子の輸送に対して優れた妨害効果を発揮することができる。
【0012】
いずれの実施形態において、式1において、0.7≦δ≦1、および/または、式1および式2において、前記xおよび前記yは、それぞれ独立して0.5~2であり、任意にxおよびyは、それぞれ独立して1.5~2である。高いδ、および/または、xおよび/またはy値を選択することにより、材料の電気化学的容量を向上することができる。
【0013】
いずれの実施形態において、前記被覆層は、厚さが100nm以下、任意に60nm以下、さらに任意に50nm以下、任意に5nm~40nmの範囲内、さらに任意に10nm~20nmの範囲内である。被覆層の厚さが前記数値の範囲内であれば、水への妨害効果は十分であり、材料の電気化学的容量が容易に低下せず、同時にナトリウムイオンの迅速な輸送に有利である。
【0014】
いずれの実施形態において、前記被覆層は、被覆量が10重量%以下であり、任意に1重量%~5重量%である。被覆層の被覆量が前記範囲内であれば、水への妨害効果は十分であり、材料の電気化学的容量が容易に低下せず、同時にナトリウムイオンの迅速な輸送に有利である。
【0015】
いずれの実施形態において、前記プルシアンブルー類似体は、粒子径が100nm~50μmである。前記粒子径範囲を選択することにより、材料のイオンおよび電子輸送特性を良好に維持することに役立つ。
【0016】
本願の第2の態様は、
ステップ(1):化学式が下記の式1であるプルシアンブルー類似体粒子を溶媒1に加え、分散して懸濁液を得るステップ、
NaP[R(CN)δ・zHO 式1
(式1において、前記P、Rは、それぞれ独立して遷移金属元素から選択された少なくとも1種であり、0<x≦2、0<δ≦1、かつ、0≦z≦10。)
ステップ(2):遷移金属元素Lを含有する可溶性塩を溶媒2に溶解して溶液cを調製するステップ、
ステップ(3):ナトリウム以外のアルカリ金属元素またはアルカリ土類金属元素Aを含有する可溶性塩、遷移金属元素Mを含有する可溶性遷移金属シアノ錯体を溶媒3に溶解して溶液dを調製するステップ、
ステップ(4):撹拌しながら、ステップ(1)で得られた懸濁液に溶液cおよび溶液dを滴下し、前記懸濁液を濾過して沈殿物を得るステップ、および、
ステップ(5):ステップ(4)で得られた沈殿物を洗浄し、乾燥してコア-シェル構造を有するプルシアンブルー類似体を得るステップであって、前記コア-シェル構造を有するプルシアンブルー類似体は、コアおよび前記コアを被覆する被覆層を備え、前記コアは前記プルシアンブルー類似体粒子であり、前記被覆層の化学式は、下記の式2であるステップ、
L[M(CN)α・wHO 式2
(式2において、前記Aは、ナトリウム以外のアルカリ金属元素またはアルカリ土類金属元素であり、前記L、Mは、それぞれ独立して遷移金属元素から選択された少なくとも1種であり、0<y≦2、0<α≦1、かつ、0≦w≦10。)
を含むコア-シェル構造を有するプルシアンブルー類似体の製造方法を提供する。
【0017】
前述した製造方法でナトリウム含有プルシアンブルー類似体粒子表面に化学組成のAL[M(CN)αを有するプルシアンブルー類似体をシェルとして形成し、前記方法で得られたシェルは、均一でナトリウム含有プルシアンブルー類似体粒子を完全に被覆することができるため、コア-シェル構造内への水分子の進入を特に効果的に妨げ、PBA材料が吸水しにくくなり、PBA材料の常温常圧下での貯蔵安定性を大きく改善するとともに、材料構造安定性を向上することができる。また、この方法は、コストが低い。
【0018】
いずれの実施形態において、前記ステップ(1)において、プルシアンブルー類似体粒子は、
ステップ(i):遷移金属元素であるPを含有する可溶性塩およびNa含有徐放剤を水に溶解して溶液aを調製するステップ、
ステップ(ii):遷移金属元素であるRを含有する可溶性遷移金属シアノ錯体を水に溶解して溶液bを調製するステップ、
ステップ(iii):攪拌しながら、溶液aを溶液bに滴下し、滴下が完了した後エージングし、濾過して沈殿物を得るステップ、および、
ステップ(iv):ステップ(iii)で得られた沈殿物を洗浄し、乾燥してプルシアンブルー類似体粒子を得るステップ、
を含む方法で製造する。
【0019】
前述した方法では、構造的に安定したプルシアンブルー類似体粒子の製造に寄与する。
【0020】
いずれの実施形態において、前記ステップ(i)において、Na含有徐放剤は、クエン酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウムおよび酢酸ナトリウムから選ばれた少なくとも1種である。前記徐放剤を選択することにより、より均一な被覆層を得ることに寄与する。
【0021】
いずれの実施形態において、前記ステップ(ii)において、可溶性遷移金属シアノ錯体は、2価遷移金属シアン化ナトリウムである。
【0022】
いずれの実施形態において、前記ステップ(iii)において、溶液を20°C~120°Cの温度範囲内、任意に70°C~90°Cの温度範囲内に維持し、任意に80°Cに維持する。溶液の温度を前記範囲内に制御することにより、より良好な被覆層形態を得ることができる。
【0023】
いずれの実施形態において、前記ステップ(1)、(2)および(3)において、各ステップの溶媒1、2と3は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立して脱イオン水および有机溶媒から選ばれた少なくとも1種であり、任意に前記有机溶媒は、アルコール、ケトン、およびハロゲン化炭化水素から選ばれた少なくとも1種であり、任意にメタノール、グリセリン、アセトンおよびエタノールから選ばれた少なくとも1種である。前記溶媒を選択することにより、均一な被覆層を容易に得、かつ、PBA材料の電気化学的容量を確保することができる。
【0024】
いずれの実施形態において、前記ステップ(3)において、可溶性遷移金属シアノ錯体は、2価遷移金属シアン化ナトリウムである。
【0025】
いずれの実施形態において、ステップ(4)において、前記溶液cおよび溶液dの滴下速率は、それぞれ独立して0.1ml/min~10ml/minの範囲内であり、任意に0.1ml/min~5ml/minの範囲内であり、例えば、0.1ml/min~2ml/minの範囲内であり、あるいは、ステップ(4)において、反応系を20°C~120°Cの温度範囲内、任意に70°C~90°Cの温度範囲内に維持し、任意に80°Cに維持する。滴下速率または温度を前述した範囲内に制御することにより、より良い被覆層形態を得ることができる。
【0026】
本願の第3の態様は、本願の第1の態様のコア-シェル構造を有するプルシアンブルー類似体、または本願の第2の態様の方法で得られたコア-シェル構造を有するプルシアンブルー類似体を含むナトリウムイオン二次電池を提供する。
【0027】
本願の第4の態様は、本願第3の態様のナトリウムイオン二次電池を含む電池モジュールを提供する。
【0028】
本願の第5の態様は、本願の第4の態様の電池モジュールを含む電池パックを提供する。
【0029】
本願の第6の態様は、本願の第3の態様のナトリウムイオン二次電池、本願の第4の態様の電池モジュール、または、本願の第5の態様の電池パックから選ばれた1種以上を含む電気装置を提供する。
【0030】
本願の構成をより明確に説明するために、以下に本願の実施例に使用される必要の図面を簡単に紹介し、下記に説明する図面は、本願の一部の実施形態にすぎず、当業者にとって創造的な作業は必要なくこれらの図面に従って他の図面を得られることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本願実施例1~4および比較例1にて製造されたPBA材料のXRDパターンである。
図2】本願実施例1にて製造されたPBA材料のSEMおよびEDSスペクトルである。
図3】本願実施例1および比較例1にて製造されたPBA材料の水分含有量の熱重量分析チャートである。
図4】本願実施例1および比較例1にて製造されたPBA材料の水分含有量の湿り空気中の経時変化チャートである。
図5】本願実施例および比較例にて製造された各PBA材料をそれぞれナトリウムイオン二次電池において正極活性材料として使用する場合、電流密度150mA/gでナトリウムイオン二次電池を充放電して得られた長期サイクル性能のグラフである。
図6】本願実施例1および比較例1にて製造された各PBA材料をそれぞれナトリウムイオン二次電池において正極活性材料として使用する場合、ナトリウムイオン二次電池をさまざまな電流密度で充電し、0.33Cの速率で放電して得られた電池のレート曲線である。
図7】透過型電子顕微鏡(TEM)およびエネルギー分散型分光計による実施例1のPBA材料の断面の元素分析によって得られたK元素分布マップである。
図8】比較例1および実施例1にて得られたPBA材料から製造された正極シートの400回の充放電サイクル後の写真である。
図9】本願の1つの実施形態の二次電池の概略図である。
図10図9に示す本願の1つの実施形態の二次電池の分解図である。
図11】本願の1つの実施形態の電池モジュールの概略図である。
図12】本願の1つの実施形態の電池パックの概略図である。
図13図12に示す本願の1つの実施形態の電池パックの分解図である。
図14】本願の1つの実施形態の二次電池を用いる電気装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
簡潔にするために、本願は、いくつかの数値範囲を具体的に開示している。ただし、任意の下限を任意の上限と組み合わせて明示的に記載されていない範囲を形成することができ、任意の下限を他の任意の下限と組み合わせて明示的に記載されていない範囲を形成することができ、同様に任意の上限を他の任意の上限と組み合わせて明示的に記載されていない範囲を形成することができる。さらに、個別に開示された各点または単一の値は、それ自体が下限または上限として、他の点または単一の値と組み合わせて、または他の下限または上限と組み合わせて明示的に記載されていない範囲を形成し得る。
【0033】
コア-シェル構造を有するプルシアンブルー類似体
本願に係るコア-シェル構造を有するプルシアンブルー類似体は、コアおよび前記コアを被覆する被覆層を備え、
前記コアの化学式は、下記の式1であり、
NaP[R(CN)δ・zHO 式1
(式1において、前記P、Rは、それぞれ独立して遷移金属元素から選択された少なくとも1種であり、0<x≦2、0<δ≦1、かつ、0≦z≦10。)
前記被覆層の化学式は、下記の式2である。
L[M(CN)α・wHO 式2
(式2において、前記Aは、ナトリウム以外のアルカリ金属元素またはアルカリ土類金属元素であり、前記L、Mは、それぞれ独立して遷移金属元素から選択された少なくとも1種であり、0<y≦2、0<α≦1、かつ、0≦w≦10。)
いかなる理論に縛られることを望まずに、イオン半径の大きいアルカリ金属またはアルカリ土類金属イオンを使用してPBAの表面を修飾することにより、半径の大きいイオンが、元々結晶水が存在する可能性のある位置を占め、格子構造内の結晶水を減らすため、得られたコア‐シェル構造であるプルシアンブルー類似体は、構造上の欠陥が少なく、結晶化が完全であるため、可逆的比容量やサイクル性能などの電気化学的性能を向上させることができると考えられる。かつ、シェルとしての化学組成のAL[M(CN)αを有するプルシアンブルー類似体で、コアとしての化学組成のNaP[R(CN)δを有するプルシアンブルー類似体の表面を被覆することにより、均一なコア‐シェル構造を得ることに有利であり、シェルとしての化学組成のAL[M(CN)αを有するプルシアンブルー類似体が前記コアの表面全体を覆い、水分子の進入を妨げる優れた効果があり、よって、材料に水を吸収しにくい性質を有させ、貯蔵安定性が大幅に改善される。
【0034】
いくつの実施形態において、前記遷移金属元素P、R、LおよびMは、それぞれ独立してFe、Mn、Ni、Co、CuおよびZnから選ばれたものである。例えば、前記遷移金属元素P、R、LおよびMは、それぞれ独立してFe及びMnから選ばれたものである。これらの遷移金属イオンを選択することにより、構造完全性を確保するとともに、材料が必要な電気化学的性能と電気化学的容量を備えることができる。
【0035】
いくつの実施形態において、前記アルカリ金属またはアルカリ土類金属元素Aは、Li、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、SrおよびBaから選ばれた少なくとも1種である。例えば、Aは、K、Rb、Cs、MgおよびCaから選ばれた少なくとも1種である。いくつの実施形態において、Aは、K、RbおよびCsから選ばれた少なくとも1種である。アルカリ金属またはアルカリ土類金属元素Aを適切に選択することにより、水分子の輸送に優れた妨害効果を果たすことができ、プルシアンブルー類似体の水吸収をより良く低減する効果を達成することに有利である。
【0036】
いくつの実施形態において、式1において、δは、0.7≦δ≦1を満たす。δの数値範囲を選択することにより、前記プルシアンブルー類似体をナトリウムイオン二次電池の正極材料として使用する場合、大きな容量とより安定した構造を持つことができる。
【0037】
いくつの実施形態において、式1および式2において、前記xおよびyは、それぞれ独立して、例えば0.5~2の範囲内であり、例えば、1.5~2の範囲内である。xとyの数値範囲を適切に選択することにより、前記プルシアンブルー類似体をナトリウムイオン二次電池の正極材料として使用する場合、大きな容量を持つことができる。
【0038】
いくつの実施形態において、前記被覆層は、厚さが100nm以下、例えば60nm以下または50nm以下である。例えば、前記被覆層は、厚さが5nm~40nmであってもよく、例えば、10nm~20nmであってもよい。発明者らは、研究により、被覆層の厚さが所定の範囲内である場合、PBA材料の吸水防止性能および電気化学的性能を改善すると共に、PBA材料を正極活性材料として使用する場合高い容量を備えることを確保することができることを発見した。
【0039】
いくつの実施形態において、前記被覆層は、被覆量が10重量%以下、例えば、1重量%~5重量%である。前記被覆量は、コア‐シェル構造の粒子全体の総質量に対する被覆層の質量の比率として定義される。被覆層の被覆量が所定の範囲内である場合、PBA材料の吸水防止性能と電気化学的性能を改善するとともに、PBAを正極活性材料として使用する場合高い容量を備えることを確保することができる。
【0040】
本願において、被覆層の厚さは、本分野で知られている装置および方法を使用して測定することができる。例として、集束イオンビーム技術(FIB)+透過型電子顕微鏡(TEM)を使用して厚さと均一性を測定することができる。
【0041】
本願において、被覆層の被覆量は、本分野で知られている装置および方法を使用して測定することができる。例として、誘導結合プラズマ発光分析計(ICP)で測定することができる。
【0042】
いくつの実施形態において、前記プルシアンブルー類似体は、粒子径が100nm~50μmであり、例えば、200nm~30μmである。プルシアンブルー類似体の粒子径を上記範囲内に制御することにより、均一な被覆層と薄い被覆層の厚さを得ることに有利であり、材料が良好なイオンおよび電子輸送特性を維持することができる。
【0043】
本願において、プルシアンブルー類似体の粒子径は、本分野で知られている装置および方法を使用して測定することができる。例えば、走査型電子顕微鏡(例えば、ZEISS Sigma 300)を用いて、JY/T010-1996を参照してプルシアンブルー類似体の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を得って、測定領域内の粒子のサイズ(つまり、粒子の最も遠い2つのポイント間の距離)を読み取る。
【0044】
いくつの実施形態において、前記プルシアンブルー類似体は、比表面積が1~20m/gであり、例えば、5~18m/gである。
【0045】
本願において、プルシアンブルー類似体の比表面積は、本分野で知られている装置および方法を使用して測定することができる。例えば、中国国家標準GB/T 19587-2004に従って一定の低温でさまざまな相対圧力下で固体表面へのガスの吸着量を測定した後、Brown Noel-Et-Taylor(BET)の多層吸着理論およびその計算式に基づいてサンプル単分子層の吸着量を求め、それによって固体の比表面積を算出する。
【0046】
コア-シェル構造を有するプルシアンブルー類似体の製造方法
本願は、さらに、
ステップ(1):化学式が下記の式1であるプルシアンブルー類似体粒子を溶媒1に加え、分散して懸濁液を得るステップ
NaP[R(CN)δ・zHO 式1
(式1において、前記P、Rは、それぞれ独立して遷移金属元素から選択された少なくとも1種であり、0<x≦2、0<δ≦1、かつ、0≦z≦10。)
ステップ(2):遷移金属元素Lを含有する可溶性塩を溶媒2に溶解して溶液cを調製するステップ、
ステップ(3):ナトリウム以外のアルカリ金属元素またはアルカリ土類金属元素Aを含有する可溶性塩、遷移金属元素Mを含有する可溶性遷移金属シアノ錯体を溶媒3に溶解して溶液dを調製するステップ、
ステップ(4):撹拌しながら、ステップ(1)で得られた懸濁液に溶液cおよび溶液dを滴下し、前記懸濁液を濾過して沈殿物を得るステップ、および、
ステップ(5):ステップ(4)で得られた沈殿物を洗浄し、乾燥してコア-シェル構造を有するプルシアンブルー類似体を得るステップであって、前記コア-シェル構造を有するプルシアンブルー類似体が、コアおよび前記コアを被覆する被覆層を備え、前記コアが前記プルシアンブルー類似体粒子であり、前記被覆層の化学式が下記の式2であるステップ、
L[M(CN) α・wHO 式2
(式2において、前記Aは、ナトリウム以外のアルカリ金属元素またはアルカリ土類金属元素であり、前記L、Mは、それぞれ独立して遷移金属元素から選択された少なくとも1種であり、0<y≦2、0<α≦1、かつ、0≦w≦10。)
を含むコア-シェル構造を有するプルシアンブルー類似体の製造方法を提供する。
【0047】
上記の「コア-シェル構造を有するプルシアンブルー類似体」というセクションにおけるP、R、A、L、M、x、y、δ、α、z、および、wに対する説明と限定は、本願に係る方法にも適用される。
【0048】
ステップ(1)、(2)及び(3)の溶媒は、同じであっても異なっていてもよく、本分野で一般的に使用される溶媒であってもよく、当業者によって実際の必要に応じて選択され得る。いくつの実施形態において、ステップ(1)、(2)及び(3)の溶媒は、それぞれ独立して脱イオン水および有機溶媒から選択される少なくとも1種であり、例えば、脱イオン水、アルコール、ケトン、および、ハロゲン化炭化水素から選択される少なくとも1種である。いくつの実施形態において、ステップ(1)、(2)及び(3)の溶媒は、それぞれ独立して脱イオン水、メタノール、グリセロール、アセトンおよびエタノールから選ばれた少なくとも1種である。溶媒が脱イオン水、メタノール、グリセリン、アセトン、エタノールから選択される場合、被覆層の厚さ<20nm、被覆量<5重量%であるとしても、均一な被覆層を容易に得、材料の低い吸水量を確保しながら被覆層のないPBA材料に匹敵する可逆的比容量を得ることができる。
【0049】
ステップ(1)において、分散は、当業者が適切な方法を選択して実施することができる。いくつの実施形態において、ステップ(1)では、超音波と攪拌によって分散を促進する。
【0050】
いくつの実施形態において、ステップ(2)において、溶液cを調製するときに徐放剤を加えることもできる。徐放剤を加える場合、例えば、遷移金属元素Lと徐放剤とのモル比は1:0.1~10である。いくつの実施形態において、遷移金属元素Lと徐放剤とのモル比は1:1~7であり、例えば、1:1~5であり、例えば、1:3である。適量な徐放剤を加えることによって、被覆層の均一性を制御してより均一な被覆層を得ることができる。
【0051】
本願において、徐放剤は、遷移金属イオンを溶液中に単独で存在させないように陰イオンを遷移金属イオンと錯化させる効果を有するキレート剤であり、または、溶液にナトリウムイオンを容易に解離するナトリウム含有化合物である。
【0052】
いくつの実施形態において、ステップ(2)において、徐放剤は、クエン酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、および、酢酸ナトリウムから選ばれた少なくとも1種である。前記の徐放剤を選択することにより、反応速率を制御してより均一な被覆層を得ることができる。前記徐放剤は、溶液中の濃度が例えば、0.01mol/L~10mol/Lの範囲内である。
【0053】
ステップ(2)において、遷移金属元素Lを含有する可溶性塩の陰イオンは、当該塩が可溶性塩である限り、特に限定されない。いくつの実施形態において、ステップ(2)において、遷移金属元素Lを含有する可溶性塩は、2価硫酸塩、硝酸塩、塩化物、またはシュウ酸塩などの弱酸の塩である。その溶液中の濃度は、例えば、0.01mol/L~1mol/Lの範囲内である。
【0054】
ステップ(3)において、ナトリウム以外のアルカリ金属またはアルカリ土類金属元素Aを含有する可溶性塩の陰イオンは、当該塩が可溶性塩である限り、特に限定されない。いくつの実施形態において、ステップ(3)において、ナトリウム以外のアルカリ金属またはアルカリ土類金属元素Aを含有する可溶性塩は、硫酸塩、硝酸塩、塩化物、または弱酸の塩である。その溶液中の濃度は例えば、0.001mol/L~1mol/Lの範囲内である。
【0055】
いくつの実施形態において、ステップ(3)において、可溶性遷移金属シアノ錯体は、2価遷移金属シアン化ナトリウムである。その溶液中の濃度は、例えば、0.01mol/L~1mol/Lの範囲内である。
【0056】
いくつの実施形態において、ステップ(4)において、溶液cおよびdをすべて滴下した後反応系を0.01h~48h、例えば、12h引き続き攪拌する。
【0057】
いくつの実施形態において、ステップ(4)において、反応系を20°C~120°Cの温度範囲内、例えば70°C~90°C、例えば80°Cに維持する。反応系の温度を前記範囲内にコントロールすることにより、被覆層の均一性を制御してより良い被覆層の形態を得ることができる。
【0058】
いくつの実施形態において、ステップ(4)において、各溶液の滴下速率は、それぞれ独立して0.1ml/min~10ml/minの範囲内であり、任意に0.1ml/min~5ml/minの範囲内であり、例えば、0.1ml/min~2ml/minの範囲内である。溶液の滴下速率を前記範囲内に制御することにより、被覆層の均一性を制御してより良い被覆層の形態を得ることができる。
【0059】
いくつの実施形態において、ステップ(4)において、攪拌速率は、200rpm~1200rpmの範囲内である。
【0060】
ステップ(5)において、乾燥は、当業者が適当な乾燥方式を選択して行うことができる。いくつの実施形態において、ステップ(5)において、乾燥は、真空干燥で行い、例えば、0~300°Cの範囲内の温度、例えば150°Cで行い、真空度は、10-15mTorrである。
【0061】
いくつの実施形態において、前記ステップ(1)において、プルシアンブルー類似体粒子は、
ステップ(i):遷移金属元素であるPを含有する可溶性塩およびNa含有徐放剤を水に溶解して溶液aを調製するステップ、
ステップ(ii):遷移金属元素であるRを含有する可溶性遷移金属シアノ錯体を水に溶解して溶液bを調製するステップ、
ステップ(iii):攪拌しながら、溶液aを溶液bに滴下し、滴下が完了した後エージングし、濾過して沈殿物を得るステップ、および、
ステップ(iv):ステップ(iii)で得られた沈殿物を洗浄し、乾燥してプルシアンブルー類似体粒子を得るステップ、
を含む方法で製造する。
【0062】
当該方法で製造されたPBA材料は、欠陥が少なく、ナトリウム含有量が高く、構造的に安定した材料を得ることに寄与する。
【0063】
いくつの実施形態において、ステップ(i)において、遷移金属元素Pと徐放剤とのモル比は、1:0.1~10である。いくつの実施形態において、遷移金属元素Pと徐放剤とのモル比は、1:1~5、例えば1:3.2である。モル比を前記範囲内にコントロールすることにより、被覆層の均一性を制御してより良い被覆層形態を得ることができる。
【0064】
ステップ(i)において、遷移金属元素Pを含有する可溶性塩の陰イオンは、当該塩が可溶性塩である限り、特に制限されない。いくつの実施形態において、ステップ(i)において、遷移金属元素Pを含有する可溶性塩は、2価硫酸塩、硝酸塩、塩化物、またはシュウ酸塩などの弱酸の塩である。その溶液中の濃度は、例えば、0.01mol/L~1mol/Lの範囲内である。
【0065】
いくつの実施形態において、ステップ(i)において、Na含有徐放剤は、クエン酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、および、酢酸ナトリウムから選ばれた少なくとも1種である。前記の徐放剤を選択することにより、反応速率を制御してより均一な被覆層を得ることができる。前記徐放剤は、溶液中の濃度が例えば、0.01mol/L~10mol/Lの範囲内である。
【0066】
いくつの実施形態において、ステップ(ii)において、遷移金属元素の酸化を防ぐために、溶液bが置かれている容器に保護ガスを導入する。保護ガスは、当業者により選択された適切な不活性ガスである。いくつの実施形態において、ステップ(ii)において、保護ガスは、N、ArおよびHeの少なくとも1種である。
【0067】
いくつの実施形態において、ステップ(ii)において、溶液bを調製するときに可溶性ナトリウム塩を加えてもよい。前記可溶性ナトリウム塩は、例えば、クエン酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、および、酢酸ナトリウムから選ばれた少なくとも1種である。可溶性ナトリウム塩を加える場合、例えば、遷移金属元素Rを含有する可溶性遷移金属シアノ錯体と可溶性ナトリウム塩とのモル比は1:0.1~100である。可溶性ナトリウム塩の溶液中の濃度は、例えば0.01mol/L~10mol/Lの範囲内である。可溶性ナトリウム塩を加えることにより、ナトリウム源を補足し、かつコア粒子の形態を調整することができる。
【0068】
いくつの実施形態において、ステップ(ii)において、可溶性遷移金属シアノ錯体は、2価遷移金属シアン化ナトリウムである。その溶液中の濃度は、例えば0.01mol/L~1mol/Lの範囲内である。
【0069】
いくつの実施形態において、ステップ(iii)において、攪拌速率は、200rpm~1200rpmの範囲内である。
【0070】
いくつの実施形態において、ステップ(iii)において、溶液を20°C~120°Cの温度範囲内、例えば70°C~90°C、例えば80°Cに維持する。溶液の温度を前記範囲内にコントロールすることにより、被覆層の均一性を制御してよりよい被覆層形態を得ることができる。
【0071】
いくつの実施形態において、ステップ(iii)において、溶液aを0.1ml/min~10ml/minの速度で滴下し、例えば、1ml/minの速度で滴下する。溶液の滴下速率を上述範囲内にコントロールすることにより、被覆層の均一性を制御してよりよい被覆層形態を得ることができる。
【0072】
いくつの実施形態において、ステップ(iii)において、0.01h~48h、例えば、12hエージングし、例えば、攪拌しながらエージングすることができる。
【0073】
ステップ(iv)において、洗浄は、当業者によって適当な溶媒を選択して行うことができる。いくつの実施形態において、ステップ(iv)において、洗浄は、脱イオン水とエタノールとの混合液、エタノール、または、アセトンなどで行い、かつ、1回または複数回行ってもよい。
【0074】
ステップ(iv)において、乾燥は、当業者が選択した適当な乾燥方式で行うことができる。いくつの実施形態において、ステップ(iv)において、乾燥は、真空乾燥で行い、例えば、0~300°Cの範囲内の温度、例えば、150°Cで行い、真空度は、例えば、10~15mTorrである。
【0075】
正極シート
本願は、さらに、正極集電体と、前記集電体に設けられている本願の第1の態様のコア-シェル構造を有するプルシアンブルー類似体または本願の第2の態様の方法で製造されたコア-シェル構造を有するプルシアンブルー類似体とを含むナトリウムイオン二次電池用正極シートを提供する。
【0076】
前記正極集電体は、少なくとも1つの表面に正極膜層が設けられており、前記正極膜層は、本願の第1態様のコア-シェル構造を有するプルシアンブルー類似体を含む。
【0077】
例として、正極集電体は、それ自体の厚さ方向に対向する2つの表面を有し、正極膜層は、正極集電体の2つの対向する表面のいずれか一方または両方に配置されている。
【0078】
いくつの実施形態において、前記正極集電体は、従来の金属箔シートまたは複合集電体を使用できる。例えば、金属箔シートとしてアルミ箔を用いてもよい。複合集電体は、高分子材料ベース層および高分子材料ベース層の少なくとも1つの表面上に形成されている金属層を含んでもよい。複合集電体は、金属材料(例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀および銀合金等)を高分子材料基材(例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などの基材)上に形成してなってもよい。例として、正極集電体は、アルミ箔を用いてもよく、例えば、5~30μmのカーボン塗りアルミ箔であってもよい。
【0079】
正極膜層は、さらに任意に導電剤を含んでもよい。しかしながら、導電剤の種類は具体的に限定されず、当業者は実際の必要に応じて選択することができる。例として、正極膜層に用いられる導電剤は、超電導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン、および、カーボンナノファイバーから選ばれた1種以上であってもよい。
【0080】
本願において、正極シートは、本分野で知られている方法に従って製造することができる。例として、本願に係る正極活性材料、導電剤および接着剤を、溶媒(例えば、N-メチルピロリドン(NMP))に分散させて均一な正極スラリーを形成し、正極スラリーを正極集電体上に塗り、乾燥、冷間圧延などのプロセスを経って正極シートを得ることができる。
【0081】
いくつの実施形態において、前記正極シートには、集電体の上にコア-シェル構造を有するプルシアンブルー類似体70~90重量部、導電剤1~20重量部、および、接着剤1~10重量部が塗らされている。
【0082】
ナトリウムイオン二次電池
本願は、さらに前記の正極シートを含むナトリウムイオン二次電池を提供する。
【0083】
一般的に、ナトリウムイオン二次電池は、正極シート、負極シート、電解質およびセパレーターを含む。電池の充放電プロセス中に、活性イオンは、正極シートと負極シートの間で繰り返して挿入・脱離する。電解質は、正極シートと負極シートの間でイオンを伝導する役割を果たす。セパレーターは、正極シートと負極シートの間に配置され、主に正極と負極の短絡を防ぐ役割を果たすと共に、イオンの通過を可能にする。
【0084】
[負極シート]
負極シートは、負極集電体と負極集電体の少なくとも1つの表面に設けられる負極活性材料を含有する負極膜層とを含む。
【0085】
例として、負極集電体は、それ自体の厚さ方向に対向する2つの表面を有し、負極膜層は、負極集電体の2つの対向する表面のいずれか一方または両方に配置されている。
【0086】
いくつの実施形態において、前記負極集電体は、従来の金属箔または複合集電体を使用できる。例えば、金属箔シートとしてアルミ箔シートを用いてもよい。複合集電体は、高分子材料ベース層および高分子材料基材の少なくとも1つの表面上に形成されている金属層を含んでもよい。複合集電体は、金属材料(例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀および銀合金等)を高分子材料基材(例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などの基材)上に形成してなってもよい。
【0087】
本願に係る二次電池において、前記負極膜層は、通常、負極活性材料および任意の接着剤、任意の導電剤および他の任意の補助剤を含み、通常、負極スラリーを塗り、乾燥することによって形成される。負極スラリーは、通常、負極活性材料および任意の導電剤および接着剤などを溶媒中に分散させ、均一に攪拌することによって形成される。溶媒は、N-メチルピロリドン(NMP)または脱イオン水であってもよい。
【0088】
例として、導電剤は、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン、および、カーボンナノファイバーから選ばれた1種以上であってもよい。
【0089】
例として、接着剤は、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリル酸ナトリウム(PAAS)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸ナトリウム(SA)、ポリメタクリル酸(PMAA)、およびカルボン酸メチルキトサン(CMCS)から選ばれた1種以上であってもよい。
【0090】
他の任意の補助剤は、例えば、増粘剤(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na))などである。
【0091】
例として、前記負極活性材料は、炭素材料、合金材料、遷移金属酸化物および硫化物、リン基材料、チタン酸塩材料から選ばれた1種または複数種であってもよい。例えば、前記負極活性材料として、ソフトカーボン、ハードカーボン、シリコン系材料、スズ系材料などが挙げられる。前記シリコン系材料として、シリコン単体、シリコン酸化物、シリコン-炭素複合体、シリコン-窒素複合体、シリコン合金から選ばれた1種以上であってもよい。前記スズ系材料は、スズ単体、スズ酸化物およびスズ合金から選ばれた1種以上であってもよい。
【0092】
いくつの実施形態において、前記負極シートは、直接にナトリウム金属シートまたはナトリウム金属合金シートを用いてもよい。
【0093】
[電解質]
電解質は、正極シートと負極シートの間でイオンを伝導する役割を果たす。本願では、電解液の種類は、具体的な制限がなく、必要に応じて選択できる。例えば、電解質は、固体電解質および液体電解質(すなわち、電解液)から選ばれた少なくとも1種であってもよい。
【0094】
いくつの実施形態において、前記電解質として、電解液を採用する。前記電解液は、電解質塩および溶媒を含む。
【0095】
前記電解液は、電解質塩および溶媒を含んでもよい。例として、前記溶媒は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、ブチレンカーボネート(BC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、メチルホルメート(MF)、酢酸メチル(MA)、酢酸エチル(EA)、酢酸プロピル(PA)、プロピオン酸メチル(MP)、プロピオン酸エチル(EP)、プロピオン酸プロピル(PP)、酪酸メチル(MB)、酪酸エチル(EB)、1,4-ブチロラクトン(GBL)、スルホラン(SF)、ジメチルスルホン(MSM)、メチルエチルスルホン(EMS)、ジエチルスルホン(ESE)から選ばれた1種以上であってもよい。例として、電解質塩は、NaClO、NaPFまたはNaFSI(ビスフルオロスルホニルイミドナトリウム)等であってもよい。
【0096】
いくつの実施形態において、前記電解液は、任意にさらに添加剤を含んでもよい。例えば、添加剤は、負極皮膜形成添加剤を含んでもよく、正極皮膜形成添加剤を含んでもよく、さらに電池の過充電性能を改良する添加剤、電池の高温性能を改良する添加剤、および、電池の低温性能を改良する添加剤など、電池の性能を改良する添加剤を含んでもよい。
【0097】
[セパレーター]
電解液を用いる二次電池および一部の固体電解質を用いる二次電池は、さらにセパレーターを含む。セパレーターは、正極シートと負極シートとの間に設けられ、隔離の役割を果たす。本願で、セパレーターの種類は特に限定されず、公知の化学的および機械的安定性に優れた多孔質構造のセパレーターを任意に選択して用いることができる。いくつの実施形態において、セパレーターの材質は、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリフッ化ビニリデンから選ばれた1種以上であってもよい。セパレーターは、単層フィルムであってもよく、多層複合フィルムであってもよく、特に限定されない。セパレーターが多層複合フィルムである場合、各層の材料は同じであっても異なっていてもよく、特に限定されない。
【0098】
いくつの実施形態において、正極シート、負極シートおよびセパレーターは、巻き取りプロセスまたは積層プロセスによって電極アセンブリに作製することができる。
【0099】
いくつの実施形態において、二次電池は、外装を含んでもよい。当該外装は、前記電極アセンブリ及び電解質を封止するために用いられる。
【0100】
いくつの実施形態において、二次電池の外装は、硬質プラスチックケース、アルミニウムケース、スチールケースなどの硬質のケースであってもよい。二次電池の外装は、パウチ型ソフトバッグなどのソフトバッグであってもよい。ソフトバッグの材質は、プラスチックであってもよく、プラスチックとして、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)およびポリブチレンサクシネート(PBS)等が挙げられる。
【0101】
本願では、二次電池の形状は、特別な制限がなく、円筒形、方形または他の任意の形であってもよい。
【0102】
いくつの実施形態において、図10を参照すると、外装は、ケース51と蓋板53とを含む。そのうち、ケース51は、底板と、底板に接続されている側板とを備え、底板と側板は、囲まれて収容キャビティを形成している。ケース51は、収容キャビティに連通している開口を有し、蓋板53は、当該収容キャビティを閉じられるように前記開口を覆設することができる。正極シート、負極シートおよびセパレーターは、巻取りプロセスまたは積層プロセスによって電極アセンブリ52に形成することができる。電極アセンブリ52は、前述の収容キャビティ内に封止されている。電解液は、電極アセンブリ52に含浸されている。二次電池5に含まれる電極アセンブリ52の数は、1つまたは複数であってもよく、当業者は、具体的な実際のニーズに応じて選択することができる。
【0103】
いくつの実施形態において、二次電池は、電池モジュールに組み立てもよく、電池モジュールに含まれる二次電池の数は、1つまたは複数であってもよく、具体的な数は、当業者が電池モジュールの用途および容量に応じて選択してもよい。
【0104】
図11は、電池モジュール4の1つの例である。図11を参照すると、電池モジュール4において、複数の二次電池5は、電池ジュール4の長手方向に沿って順に並べて設けられてもよい。もちろん、他の任意の方式で配置されてもよい。さらに、当該複数の二次電池5は、留め具によって固定されてもよい。
【0105】
任意に、電池モジュール4は、複数の二次電池5を収容する収容空間を有するハウジングを備えていてもよい。
【0106】
いくつの実施形態において、前記電池モジュールは、電池パックに組み立てもよく、電池パックに含まれる電池モジュールの数は、当業者が電池パックの用途および容量に応じて選択することができる。
【0107】
図12および図13は、電池パック1の1つの例である。図12および図13を参照すると、電池パック1は電池筐体、および、電池筐体に設ける複数の電池モジュール4を含んでもよい。電池筐体は、上筐体2と下筐体3を含み、上筐体2は、下筐体3に覆設され、かつ、電池モジュール4を収容するための密閉空間を形成してもよい。複数の電池モジュール4は、電池筐体内に任意の方式で配置してもよい。
【0108】
また、本願は、さらに、本願が提供される二次電池、電池モジュールまたは電池パックの1種以上を含む電気装置を提供する。前記二次電池、電池モジュール、または、電池パックは、前記電気装置の電源として用いられてよく、前記電気装置のエネルギー貯蔵ユニットとして用いられてもよい。前記電気装置は、モバイル機器(例えば、携帯電話、ノートパソコンなど)、電動車両(例えば、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクーター、電動ゴルフカート、電動トラックなど)、電車、船舶および衛星、エネルギー貯蔵システムなどであってもよいが、これらに限定されない。
【0109】
前記電気装置として、その使用のニーズに応じて二次電池、電池モジュールまたは電池パックを選択できる。
【0110】
図14は、電気装置の1つの例である。当該電気装置は、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、または、プラグインハイブリッド電気自動車などである。当該電気装置の高出力および高エネルギー密度の要求を満たすために、電池パックまたは電池モジュールを使用することができる。
【0111】
電気装置のもう1つの例として、携帯電話、タブレット、ノートパソコン等であってもよい。当該電気装置は、通常、薄型化が要求され、電源として二次電池を使用できる。
【実施例
【0112】
実施例
以下、本願の実施例について説明する。下記に説明する実施例は例示的なものであり、本願を説明するためにのみ使用され、本願の限定として解釈されるべきではない。実施例に特定の技術または条件が示されていない場合、本分野の文献に記載されている技術または条件に従ってまたは製品の取り扱い説明書に従って行う。用いられる試薬または機器は、メーカーが明示されていない場合、いずれも市販から入手できる従来の製品である。以下、実施例を組み合わせて本願の有益な効果をさらに説明する。
【0113】
性能試験方法
1.吸水性能試験
(1)試験方法1
各実施例および比較例にて製造されたPBA材料1gを、相対湿度70%の湿り空気の雰囲気に置き、それぞれ15min、30min、60min、180min保存した後、および、180min保存した後の3時間ことに量り取った。量り取った質量をmとすると、吸水量=(m-1)/1100%であった。量り取った吸水量を時間に対してプロットし、実施例1および比較例1で調製されたコア‐シェル構造を有するPBA材料の各吸水量の経時的なチャートを図面4に示す。
【0114】
(2)試験方法2
各実施例および比較例で調製されたPBA材料1gをそれぞれ相対湿度70%の湿り空気の雰囲気に置き、48h保存した後、保存された後のサンプルを純度99.99%のN雰囲気で熱重量分析測定を行い、昇温速率10°C/min、温度範囲0~300°Cで材料の水分含有量を定量的に測定した。材料における水分含有量の定量的な測定は、下記の方法で行った。すなわち、熱重量分析により初期重量と300°Cでの重量を測定し、かつ、抽出し、両者の差を初期重量で割って水分含有量を求めた。各実施例及び比較例のPBA材料の水分含有量の測定結果を下記の表1~10にリストした。かつ、熱重量分析によって測定した実施例1及び比較例1で調製されたPBA材料の温度による水分含有量の変化を図3に示す。
【0115】
2.電池性能試験
(1)正極シートおよび負極シートの製造
下記の方法で正極シートを製造した。すなわち、各実施例および比較例で製造されたPBA材料(正極活性材料)、導電剤であるケッチェンブラック(KB)、接着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)をN-メチルピロリドン(NMP)に加え、ローターで1~3h攪拌してスラリーを作製した。スラリーを、塗布厚さ200~300μmになるように集電体Al箔に塗った。90~110°Cで、真空乾燥オーブンで10~15h乾燥させた後、自然に室温まで冷却して正極シートを得た。用いられた物質の質量比として、正極活性材料:導電剤であるケッチェンブラック:接着剤であるポリフッ化ビニリデン=7:2:1、NMP20~40gごとに対して28g活性材料を添加した。
【0116】
下記の方法で負極シートを製造した。すなわち、日本のクラレから購入したタイプI/II/IIIの工業用ハードカーボン負極材料(負極活性材料)、導電剤であるカーボンブラック(CB)、接着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)をN-メチルピロリドン(NMP)に加え、ローターで1-3h攪拌してスラリーを作製した。スラリーを、集電体Al箔に塗り、塗布量は、正極絶対容量により決定され、負極絶対容量:正極絶対容量=1.16(そのうち、絶対容量(mAh)=初回放電可逆的比容量(mAh/g)×活性材料総重量(g)、可逆的比容量の測定方法は、後文に記載する。)であった。90~110°Cで、真空乾燥オーブンで10~15h乾燥させた後、自然に室温まで冷却して正極シートを得た。用いられた物質の質量比として、負極活性材料:導電剤であるカーボンブラックCB:接着剤であるポリフッ化ビニリデン=9:0.4:0.6、NMP20-40gごとに対して28g活性材料を添加した。
【0117】
(2)ナトリウムイオン二次電池の製造
下記の方法でナトリウムイオンボタン半電池を製造した。すなわち、前記方法で製造された正極シートを、スライサーで直径14~16mmのシートに切断し、ガラス繊維(glass fiber)セパレーターを用い、金属ナトリウムを負極とし、電解液を添加し、アルゴン雰囲気で満たされたグローブボックスにCR2032ボタン電池に組み立てた。前記の電解液は、NaClOおよびFEC(フルオロエチレンカーボネート)を含有する溶液であり、そのうち、溶媒は、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)との体積比1:1の混合液であり、NaClOの濃度は1Mであり、FECの質量は、溶液の質量の2%であった。
【0118】
ナトリウムイオンボタン全電池は、下記の方法で製造した。すなわち、前記の方法(1)で製造された正極シート、負極シートをそれぞれスライサーで直径14mmおよび16mmのシートに切断し、ガラス繊維(glass fiber)セパレーターを用い、電解液を添加し、アルゴン雰囲気で満たされたグローブボックスにCR2032ボタン電池に組み立てた。前記の電解液は、NaClOおよびFEC(フルオロエチレンカーボネート)を含有する溶液であり、そのうち、溶媒は、エチレンカーボネート(EC)及びジエチルカーボネート(DEC)の体積比1:1の混合液であり、NaClOの濃度は1Mであり、FECの質量は、溶液の質量の2%であった。
【0119】
(3)電池性能測定
[可逆的比容量]
2.5~4.0Vの範囲で25°Cの室温の条件で、20mA/gの電流密度でナトリウムイオンボタン全電池を充放電し、充放電プロセス中の電池容量を記録し、容量を正極活性材料質量で割った値を可逆的比容量として求めた。各実施例および比較例のPBA材料で作製した二次電池の初回放電可逆的比容量の測定結果を以下の表1~10に示す。
【0120】
[長期サイクル性能]
製造されたナトリウムイオンボタン半電池を、45°Cの条件で150mA/gの電流密度で充放電し、毎回の充放電の容量値を記録した。初回充放電容量値を100%とし、その後の毎回の充放電の容量値が初期容量値に占める百分率を計算した。当該百分率をサイクル回数に対してプロットし、図5に示す。
【0121】
[短期充電レート]
製造されたナトリウムイオンボタン全電池を異なる電流密度で充電し、かつ、0.33Cの速率で放電し、毎回の放電容量値を記録し、容量維持率を計算した。電流密度および容量維持率をプロットして電池のレート曲線を得た。実施例1および比較例1のPBA材料を用いて製造された電池のレート曲線を図6に示す。
【0122】
3.被覆層厚さの量り
集束イオンビーム(FIB)を利用して、PBA材料のサンプルをイオンビームせん断して材料の断面を露出させ、断面が露出されたサンプルを透過型電子顕微鏡(TEM)試験装置に真空移送し、K元素分布の位置と均一性を確定するように、エネルギー分光計で当該断面に対して元素分析を行った。前記方法で得られた実施例1のPBA材料のTEM写真を図面7に示す。前記方法で測定された実施例1~7のPBA材料の被覆層厚さを表1~2に示す。
【0123】
実施例1:
フェロシアン化ナトリウム十水和物19.3624g、クエン酸ナトリウム一水和物35.292gおよび塩化マンガン四水和物7.9164gを量り取った。前記フェロシアン化ナトリウム十水和物を脱イオン水100mlに加え、30min攪拌して溶液bを形成した。塩化マンガン四水和物およびクエン酸ナトリウム一水和物を脱イオン水100mlに加え、30min攪拌して溶液aを形成し、均一に攪拌した後、滴下速率1ml/minで1滴ずつ前記溶液bに滴下し、滴下が完了した後、攪拌速率400rpmで24h攪拌し、温度が80°Cであり、懸濁液を形成した。
【0124】
ブフナー漏斗で前記懸濁液における固形材をろ過し、脱イオン水で生成物に残存のナトリウム塩と遷移金属イオンが残っていないまで3回洗浄した。得られた材料を120°Cで24h真空干燥し、相対真空度<-0.1Mpa、プルシアンブルー類似体粒子NaMnFe(CN) 10gを得た。
【0125】
得られたプルシアンブルー類似体粒子を脱イオン水100mlに加え、超音波で10min分散させて懸濁液を形成した。フェロシアン化ナトリウム十水和物0.9681g、塩化カリウム0.745g、塩化マンガン四水和物0.3958gを量り取った。前記フェロシアン化ナトリウム十水和物および塩化カリウムを脱イオン水10mlに加え、30min攪拌して溶液dを形成し、塩化マンガン四水和物を脱イオン水10mlに加え、30min攪拌して溶液cを形成した。均一に攪拌した後、cおよびdを、滴下速率0.2ml/minで1滴ずつに前記懸濁液に滴下し、滴下が完了した後、引き続き攪拌しながら12hエージングした。攪拌速率は400rpmであり、温度は80°Cであった。
【0126】
ブフナー漏斗で懸濁液における固形材をろ過し、脱イオン水で生成物に残存のナトリウム塩やカリウム塩と遷移金属イオンが残っていないまで3回洗浄した。得られた材料を120°Cで24h真空干燥して、相対真空度<-0.1Mpa、コア-シェル構造を有するプルシアンブルー類似体粒子を得た。シェルがKMnFe(CN)であり、コアがNaMnFe(CN)であった。当該プルシアンブルー類似体は、粒子径が500~1000nmであり、角張った小さな立方体の形態を持っており、ミクロ形態のSEMと元素分布EDSを図2に示す。
【0127】
実施例2:
溶液dの調製において、塩化カリウム0.745gの代わりに塩化ルビジウム1.21gを使用したことを除き、実施例1と同じ方法でコア-シェル構造を有するプルシアンブルー類似体を調製した。コア-シェル構造を有するプルシアンブルー類似体を得た。シェルがRbMnFe(CN)であり、コアがNaMnFe(CN)であった。
【0128】
実施例3:
溶液dの調製において、塩化カリウム0.745gの代わりに塩化セシウム1.68gを使用したことを除き、実施例1と同じ方法でコア-シェル構造を有するプルシアンブルー類似体を調製した。コア-シェル構造を有するプルシアンブルー類似体を得た。シェルがCsMnFe(CN)であり、コアがNaMnFe(CN)であった。
【0129】
実施例4:
溶液dの調製において、塩化カリウム0.745gの代わりに塩化リチウム0.43gを使用したことを除き、実施例1と同じ方法でコア-シェル構造を有するプルシアンブルー類似体を調製した。コア-シェル構造を有するプルシアンブルー類似体を得た。シェルがLiMnFe(CN)であり、コアがNaMnFe(CN)であった。
【0130】
【表1】
【0131】
実施例5:
フェロシアン化ナトリウム十水和物1.9362g、塩化カリウム1.49gおよび脱イオン水20mlを用いて溶液dを調製し、かつ、塩化マンガン四水和物0.7916gおよび脱イオン水20mlを用いて溶液cを調製したことを除き、実施例1と同じ方法でコア-シェル構造を有するプルシアンブルー類似体を調製した。コア-シェル構造を有するプルシアンブルー類似体を得た。シェルがKMnFe(CN)であり、コアがNaMnFe(CN)であった。
【0132】
実施例6:
フェロシアン化ナトリウム十水和物0.3973g、塩化カリウム0.30gおよび脱イオン水4mlを用いて溶液dを調製し、かつ塩化マンガン四水和物0.1583gおよび脱イオン水4mlを用いて溶液cを調製したことを除き、実施例1と同じ方法でコア-シェル構造を有するプルシアンブルー類似体を調製した。コア-シェル構造を有するプルシアンブルー類似体を得た。シェルがKMnFe(CN)であり、コアがNaMnFe(CN)であった。
【0133】
実施例7:
フェロシアン化ナトリウム十水和物0.19362g、塩化カリウム0.15gおよび脱イオン水1mlを用いて溶液dを調製し、かつ塩化マンガン四水和物0.07916gおよび脱イオン水1mlを用いて溶液cを調製したことを除き、実施例1と同じ方法でコア-シェル構造を有するプルシアンブルー類似体を調製した。コア-シェル構造を有するプルシアンブルー類似体を得た。シェルがKMnFe(CN)であり、コアがNaMnFe(CN)であった。
【0134】
【表2】
【0135】
実施例8:
Journal of The Electrochemical Society,163(9)A2117-A2123(2016)という文献における方法に従って製造された生成物としてのプルシアンブルー類似体粒子NaMnFe(CN)10gを脱イオン水100mlに加え、超音波で10min分散して懸濁液を形成した。フェロシアン化ナトリウム十水和物1.9362g、塩化カリウム1.49g、塩化マンガン四水和物0.7916gを量り取り、前記フェロシアン化ナトリウム十水和物および塩化カリウムを脱イオン水20mlに加え、30min攪拌して溶液dを形成し、前記塩化マンガン四水和物を脱イオン水20mlに加え、30min攪拌して溶液cを形成した。均一に攪拌した後、cおよびdを、滴下速率0.2ml/minで1滴ずつ前記懸濁液に滴下し、滴下が完了した後、滴下が完了した後、引き続き攪拌速率400rpmで攪拌しながら12hエージングし、温度は80°Cであった。
【0136】
ブフナー漏斗で懸濁液における固形材をろ過し、脱イオン水で生成物に残存のカリウム塩やカリウム塩と遷移金属イオンが残っていないまで3回洗浄した。得られた材料を120°Cで24h真空干燥し、相対真空度<-0.1Mpa、コア-シェル構造を有するプルシアンブルー類似体を得た。シェルがKMnFe(CN)であり、コアがNaMnFe(CN)であった。
【0137】
【表3】
【0138】
実施例9:
脱イオン水100mlの代わりに脱イオン水とエタノールとの混合液(脱イオン水とエタノールとの体積比:7:3)100mlを用いて溶液b、溶液aよびプルシアンブルー類似体粒子の懸濁液をそれぞれ調製し,脱イオン水20mlの代わりに脱イオン水とエタノールの混合液(脱イオン水とエタノールとの体積比:7:3)20mlを用いて溶液dを調製し,かつ、脱イオン水20mlの代わりにエタノール20mlを用いて溶液cを調製したことを除き、実施例5と同じ方法でコア-シェル構造を有するプルシアンブルー類似体を調製した。コア-シェル構造を有するプルシアンブルー類似体を得た。シェルがKMnFe(CN)であり、コアがNaMnFe(CN)であった。
【0139】
【表4】
【0140】
実施例10:
溶液cの調製においてさらにクエン酸ナトリウム一水和物3.529gを添加したことを除いて、実施例1と同じ方法でコア-シェル構造を有するプルシアンブルー類似体を調製した。コア-シェル構造を有するプルシアンブルー類似体を得た。シェルがKMnFe(CN)であり、コアがNaMnFe(CN)であった。当該プルシアンブルー類似体は、粒子径が500~1000nmであり、角張った小さな立方体の形態を持っていた。
【0141】
【表5】
【0142】
実施例11:
塩化マンガン四水和物7.9164gの代わりに塩化マンガン四水和物7.125gを用いて溶液aを調製したことを除き、実施例1と同じ方法でコア-シェル構造を有するプルシアンブルー類似体を調製して、コア-シェル構造を有するプルシアンブルー類似体を得た。シェルがKMnFe(CN)であり、コアがNaMnFe(CN)であった。当該プルシアンブルー類似体は、粒子径が500~1000nmであり、角張った小さな立方体の形態を持っていた。
【0143】
実施例12:
クエン酸ナトリウム一水和物35.292gの代わりにクエン酸ナトリウム一水和物70.584gを用いて溶液aを調製したことを除いて、実施例1と同じ方法でコア-シェル構造を有するプルシアンブルー類似体を調製した。コア-シェル構造を有するプルシアンブルー類似体を得た。シェルがKMnFe(CN)であり、コアがNaMnFe(CN)であった。当該プルシアンブルー類似体は、粒子径が500~1000nmであり、角張った小さな立方体の形態を持っていた。
【0144】
実施例13:
クエン酸ナトリウム一水和物35.292gの代わりにエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム42.161gを用い、かつ塩化マンガン四水和物7.9164gの代わりに塩化マンガン四水和物7.125gを用いて溶液aを調製したことを除いて、実施例1と同じ方法でコア-シェル構造を有するプルシアンブルー類似体を調製した。コア-シェル構造を有するプルシアンブルー類似体を得た。シェルがKMnFe(CN)であり、コアがNaMnFe(CN)であった。当該プルシアンブルー類似体は、粒子径が500~1000nmであり、角張った小さな立方体の形態を持っていた。
【0145】
【表6】
【0146】
実施例14:
溶液bの調製においてさらに塩化ナトリウム35gを添加したことを除いて、実施例11と同じ方法でコア-シェル構造を有するプルシアンブルー類似体を調製した。コア-シェル構造を有するプルシアンブルー類似体を得た。シェルがKMnFe(CN)であり、コアがNaMnFe(CN)であった。当該プルシアンブルー類似体は、粒子径が500~1000nmであり、球形形態を持っていた。
【0147】
実施例15:
溶液bの調製においてさらに塩化ナトリウム35gを添加し、かつ、溶液aの滴下速率を10ml/minとしたことを除き、実施例11と同じ方法でコア-シェル構造を有するプルシアンブルー類似体を調製した。コア-シェル構造を有するプルシアンブルー類似体を得た。シェルがKMnFe(CN)であり、コアがNaMnFe(CN)であった。当該プルシアンブルー類似体は、粒子径が500~1000nmであり、角張った小さな立方体の形態を持っていた。
【0148】
【表7】
【0149】
実施例16:
溶液cおよびdの滴下が完了した後、引き続き攪拌しながらエージングしたときの温度を40°Cとしたことを除き、実施例1と同じ方法でコア-シェル構造を有するプルシアンブルー類似体を調製した。コア-シェル構造を有するプルシアンブルー類似体を得た。シェルがKMnFe(CN)であり、コアがNaMnFe(CN)であった。当該プルシアンブルー類似体は、粒子径が500~1000nmであり、角張った小さな立方体の形態を持っていた。
【0150】
実施例17:
溶液cおよびdの滴下が完了した後引き続き攪拌しながらエージングしたときの温度を110°Cとしたことを除き、実施例1と同じ方法でコア-シェル構造を有するプルシアンブルー類似体を調製した。コア-シェル構造を有するプルシアンブルー類似体を得た。シェルがKMnFe(CN)であり、コアがNaMnFe(CN)であった。当該プルシアンブルー類似体は、粒子径が500~1000nmであり、角張った小さな立方体の形態を持っていた。
【0151】
【表8】
【0152】
実施例18:
溶液cおよびdの各滴下速率を2ml/minとしたことを除いて、実施例1と同じ方法でコア-シェル構造を有するプルシアンブルー類似体を調製した。コア-シェル構造を有するプルシアンブルー類似体を得た。シェルがKMnFe(CN)であり、コアがNaMnFe(CN)であった。当該プルシアンブルー類似体は、粒子径が500~1000nmであり、角張った小さな立方体の形態を持っていた。
【0153】
実施例19:
溶液cおよびdの各滴下速率を5ml/minとしたことを除いて、実施例1と同じ方法でコア-シェル構造を有するプルシアンブルー類似体を調製した。コア-シェル構造を有するプルシアンブルー類似体を得た。シェルがKMnFe(CN)であり、コアがNaMnFe(CN)であった。当該プルシアンブルー類似体は、粒子径が500~1000nmであり、角張った小さな立方体の形態を持っていた。
【0154】
実施例20:
溶液cおよびdの各滴下速率を8ml/minとしたことを除いて、実施例1と同じ方法でコア-シェル構造を有するプルシアンブルー類似体を調製した。コア-シェル構造を有するプルシアンブルー類似体を得た。シェルがKMnFe(CN)であり、コアがNaMnFe(CN)であった。当該プルシアンブルー類似体は、粒子径が500~1000nmであり、角張った小さな立方体の形態を持っていた。
【0155】
【表9】
【0156】
比較例1:
実施例1と同じ方法でフェロシアン化ナトリウム十水和物19.3624g、クエン酸ナトリウム一水和物35.292gおよび塩化マンガン四水和物7.9164gを用いてプルシアンブルー類似体粒子を調製したが、溶液cおよびdを用いてシェル層の被覆するステップを行わなかった。粒子径が500-1000nmであり、角張った小さな立方体の形態を持つプルシアンブルー類似体粒子NaMnFe(CN)10gを得た。
【0157】
比較例2:
実施例1と同じ方法でフェロシアン化ナトリウム十水和物19.3624g、クエン酸ナトリウム一水和物35.292gおよび塩化マンガン四水和物7.9164gを用いて、粒子径が500~1000nmであり、角張った小さな立方体の形態を持つ、シェル層が被覆されていないプルシアンブルー類似体粒子NaMnFe(CN)10gを調製した。
【0158】
ビーカーにドーパミン塩酸塩0.5molを入れ、脱イオン水4Lおよび濃塩酸210mlを添加して溶解し、5Lのメスフラスコを使用してドーパミン溶液をモル濃度0.1mol/Lとした。製造されたNaMnFe(CN)サンプル10gを容器に入れ、脱イオン水100mlを添加し、超音波で分散して懸濁液を得た。ドーパミン溶液20mlとアルギン酸ナトリウム0.25gを容器に入れ、脱イオン水100mlを添加して溶解させ、それをNaMnFe(CN)懸濁液と均一に混合して、室温で24h静置した。そして、水で3回洗浄し、アルコールで3回洗浄し、乾燥処理してポリドーパミン被覆NaMnFe(CN)材料を得た。
【0159】
【表10】
【0160】
表1~表10から分かるように、実施例1~20のコア-シェル構造を有するPBA材料は、吸水速率が比較例1および2よりも著しく低かった。かつ、実施例1~20の材料の可逆的比容量は、比較例1および2の可逆的比容量に近かった。例えば、実施例1のPBA材料を用いて製造された二次電池は、初回充電/放電の可逆的比容量が155.2mAh/g、150.9mAh/gであった。すなわち、材料の可逆的比容量に与えるシェルの被覆の影響は、許容範囲内であった。
【0161】
また、各実施例および比較例のPBA材料について、長期サイクルと短期充電レートの性能を表現した結果、各実施例の被覆を行って製造された材料は、レートおよびサイクル性能の面、特に45°Cでの高温サイクルの面に明らかに優れた性能を示した。実施例1のPBA材料を用いて製造された二次電池は、150mA/gの電流密度で500回サイクルした後でも85%以上の容量維持率を維持することができた。図面5からわかるように、実施例1~20のPBA材料は、長期サイクル性能がいずれも比較例1より優れていた。図面6からわかるように、実施例1のPBA材料は、短期充電レートも比較例1より明らかに優れていた。
【0162】
図面7から分かるように、実施例1で調製されたPBA材料には、K原子がPBA粒子のコア表面に均一に分布されており、被覆層厚さが15~20nmの間で約19nmであった。
【0163】
図8に示された比較例1と実施例1のPBA材料を用いて製造された正極シートを400回充放電サイクルした後の写真からわかるように、比較例1のPBA材料にはナトリウム析出による白い斑点が見られ、ナトリウム析出は、PBA材料の電気化学的性能の劣化につながる。一方、実施例1のPBA材料には白い斑点がなかった。
【0164】
実施例を参照して本願を説明したが、本願の範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができ、かつ、その部品を均等物に置き換えることができる。特に、構造上の矛盾がない限り、各実施例で言及される各技術的特徴は、任意の方法で組み合わせることができる。本願は、本明細書に開示される特定の実施例に限定されず、特許請求の範囲に含まれるすべての構成を含む。
【符号の説明】
【0165】
1 電池パック
2 上筐体
3 下筐体
4 電池モジュール
5 二次電池
51 ケース
52 電極アセンブリ
53 蓋板
図1-1】
図1-2】
図2
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図5-4】
図5-5】
図5-6】
図5-7】
図5-8】
図5-9】
図5-10】
図5-11】
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14