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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】プログラム、処理装置、基地局装置
(51)【国際特許分類】
   H04W 16/18 20090101AFI20240321BHJP
   H04W 16/28 20090101ALI20240321BHJP
   H04W 16/14 20090101ALI20240321BHJP
【FI】
H04W16/18
H04W16/28
H04W16/14
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022545604
(86)(22)【出願日】2021-08-04
(86)【国際出願番号】 JP2021029027
(87)【国際公開番号】W WO2022044751
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2022-10-24
(31)【優先権主張番号】P 2020142904
(32)【優先日】2020-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】319010088
【氏名又は名称】楽天モバイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】金 榮彬
【審査官】石原 由晴
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/026375(WO,A1)
【文献】KIM, Seungmo et al.,Coexistence of 5G With the Incumbents in the 28 and 70 GHz Bands,IEEE JOURNAL ON SELECTED AREAS IN COMMUNICATIONS, VOL. 35, NO. 6, JUNE 2017,2017年06月,pages 1254-1268
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24-7/26
H04W 4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一の周波数帯を使用し、かつ互いに異なった第1無線通信システムと第2無線通信システムのうち、前記第1無線通信システムに含まれる複数の基地局装置のそれぞれを設置するための条件を決定するプログラムであって、
前記複数の基地局装置のそれぞれから方位角を変えながら信号を送信した場合に、前記第2無線通信システムに含まれる対象局に受信される信号の干渉電力を、基地局装置と方位角の組合せ毎に取得するステップと、
しきい値以上の干渉電力が含まれる方位角の範囲を制限エリアとして特定するステップと、
前記複数の基地局装置のそれぞれのビームの中心を前記制限エリアに含めないように、前記複数の基地局装置のそれぞれのビームの中心の方向を決定するステップとを備え、
前記ビームの中心の方向を決定するステップは、前記複数の基地局装置のそれぞれを設置する位置も決定することをコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項2】
前記複数の基地局装置のそれぞれは複数のセクタアンテナを備え、
前記ビームの中心の方向を決定するステップは、前記制限エリアにビームの中心が向かないセクタアンテナを選択する請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記第1無線通信システムと前記第2無線通信システムと同一の周波数帯を使用する第3無線通信システムが存在し、
前記第2無線通信システムに含まれる対象局を第2対象局と呼び、前記第2無線通信システムに対する制限エリアを第2制限エリアと呼ぶ場合、前記第3無線通信システムに含まれる対象局は第3対象局と呼ばれ、前記第3無線通信システムに対する制限エリアは第3制限エリアと呼ばれ、
前記複数の基地局装置のそれぞれから方位角を変えながら信号を送信した場合に、前記第3対象局に受信される信号の干渉電力を、基地局装置と方位角の組合せ毎に取得するステップと、
前記第3対象局における干渉電力のうち、しきい値以上の干渉電力が含まれる方位角の範囲を前記第3制限エリアとして特定するステップと、
前記第2制限エリアと前記第3制限エリアとを組み合わせることによって、総合制限エリアを導出するステップとをさらに備え、
前記ビームの中心の方向を決定するステップは、前記複数の基地局装置のそれぞれのビームの中心を前記総合制限エリアに含めないようにする請求項1または2に記載のプログラム。
【請求項4】
同一の周波数帯を使用し、かつ互いに異なった第1無線通信システムと第2無線通信システムのうち、前記第1無線通信システムに含まれる複数の基地局装置のそれぞれを設置するための条件を決定する処理装置であって、
前記複数の基地局装置のそれぞれから方位角を変えながら信号を送信した場合に、前記第2無線通信システムに含まれる対象局に受信される信号の干渉電力を、基地局装置と方位角の組合せ毎に取得する取得部と、
しきい値以上の干渉電力が含まれる方位角の範囲を制限エリアとして特定する特定部と、
前記複数の基地局装置のそれぞれのビームの中心を前記制限エリアに含めないように、前記複数の基地局装置のそれぞれのビームの中心の方向を決定する決定部とを備え、
前記決定部は、前記複数の基地局装置のそれぞれを設置する位置も決定する処理装置。
【請求項5】
前記決定部において決定したビームの中心の方向に関する情報を出力する出力部をさらに備える請求項4に記載の処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理技術に関し、特に基地局装置を設置する場合のパラメータを決定するプログラム、処理装置、基地局装置に関する。
【背景技術】
【0002】
移動通信事業者が5Gシステムのライセンスを取得するために、同一の周波数帯を使用する既存のシステムとの干渉調整が必須である。例えば、5Gシステムに使用される3.7GHz帯と28GHz帯には、衛星通信システムが既に割り当てられている。5Gシステムの基地局装置から既存の衛星通信システムの通信装置に与える干渉を低減するために、基地局装置の電気的なビームの方向が既存の通信装置に向かないような制限がなされる(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】S. Kim, E. Visotsky, P. Moorut, K. Bechta, A. Ghosh, and C. Dietrich、「Coexistence of 5G With the Incumbents in the 28 and 70 GHz Bands」、 IEEE JOURNAL ON SELECTED AREAS IN COMMUNICATIONS、 JUNE 2017、 VOL. 35、 No.6、 pp.1254-1268
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
既存のシステムに対する保護を保証し、かつ移動通信事業者が5Gシステムのライセンスを取得するために、各基地局装置からの干渉が積算される。例えば、干渉は、基地局装置の最大のアンテナパターンを使用して計算される。最大のアンテナパターンは、すべてのビームにおける各方向の最大のアンテナゲインを有する。非特許文献1のような処理によって、既存のシステムに与える干渉は低減される。しかしながら、このような処理では、基地局装置の電気的なビームの方向を制限することによって、制限される方向に存在する端末装置が基地局装置と通信できなくなるので、展開される基地局装置の数と容量の点において5Gシステムの性能は低下する。
【0005】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、既存システムへの与干渉を低減しながら、基地局装置の設置数の低減を抑制する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のプログラムは、同一の周波数帯を使用し、かつ互いに異なった第1無線通信システムと第2無線通信システムのうち、第1無線通信システムに含まれる複数の基地局装置のそれぞれを設置するための条件を決定するプログラムであって、複数の基地局装置のそれぞれから方位角を変えながら信号を送信した場合に、第2無線通信システムに含まれる対象局に受信される信号の干渉電力を、基地局装置と方位角の組合せ毎に取得するステップと、しきい値以上の干渉電力が含まれる方位角の範囲を制限エリアとして特定するステップと、複数の基地局装置のそれぞれのビームの中心を制限エリアに含めないように、複数の基地局装置のそれぞれのビームの中心の方向を決定するステップとをコンピュータに実行させる。ビームの中心の方向を決定するステップは、複数の基地局装置のそれぞれを設置する位置も決定する
【0007】
本発明の別の態様は、処理装置である。この装置は、同一の周波数帯を使用し、かつ互いに異なった第1無線通信システムと第2無線通信システムのうち、第1無線通信システムに含まれる複数の基地局装置のそれぞれを設置するための条件を決定する処理装置であって、複数の基地局装置のそれぞれから方位角を変えながら信号を送信した場合に、第2無線通信システムに含まれる対象局に受信される信号の干渉電力を、基地局装置と方位角の組合せ毎に取得する取得部と、干渉電力の大きさが第1しきい値より大きくなる割合が第2しきい値より大きくなる方位角の範囲を制限エリアとして特定する特定部と、複数の基地局装置のそれぞれのビームの中心を制限エリアに含めないように、複数の基地局装置のそれぞれのビームの中心の方向を決定する決定部と、を備える。決定部は、複数の基地局装置のそれぞれを設置する位置も決定する
【0008】
本発明のさらに別の態様は、基地局装置である。この装置は、情報を受信する受信部と、受信部において受信した情報をもとに、ビームの中心の方向を設定する設定部と、を備える。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、コンピュータプログラム、コンピュータプログラムを記録した記録媒体などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、既存システムへの与干渉を低減しながら、基地局装置の設置数の低減を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例に係る第1無線通信システムと第2無線通信システムの構成を示す図である。
図2】実施例に係る処理装置の構成を示す図である。
図3図2の取得部において取得される方位角に対する干渉電力の分布を示す図である。
図4図2の特定部において特定される制限エリアを示す図である。
図5図1の基地局装置におけるセクタアンテナの構成を示す図である。
図6図2の決定部において決定されるビームの中心方向を示す図である。
図7図2の決定部において決定される基地局装置の配置を示す図である。
図8図1の基地局装置の構成を示す図である。
図9図2の処理装置による決定手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施例を具体的に説明するために、本実施例の概要を説明する。移動通信事業者が5Gシステムのライセンスを取得するために、同一の周波数帯を使用する既存のシステムとの干渉調整が必須である。例えば、5Gシステムに使用される3.7GHz帯と28GHz帯には、既にいくつかの衛星通信システムが割り当てられている。既存のシステムである衛星通信システムは、上りリンクの通信のために28GHz帯を使用しているので、5Gシステムの基地局装置は、衛星通信システムの宇宙局を保護しなければならない。既存のシステムを保護するために、既存のシステムに与える干渉が、既存のシステムに許容される値より小さくなければならない。
【0013】
具体的に説明すると、基地局装置を展開する前に、基地局装置から既存のシステムへの干渉が、5Gシステムにとって最悪のケースとして評価される。基地局装置から既存のシステムへの干渉は、28GHzにおいて衛星通信システムの宇宙局への干渉に相当する。例えば、送信電力は最大の送信電力に設定され、アンテナパターンは最大のアンテナパターンに設定される。そのような条件下での評価結果をもとに、干渉の加算値が既存のシステムのしきい値よりも小さくなる範囲において、基地局装置の展開が可能になる。
【0014】
この制約により、5Gの大規模な展開は影響を受ける。非特許文献1では、電気的なビームの制限がなされる。そのため、1つの基地局装置における3つの無線ユニットは自由に配置されるが、ビームの使用が制限されるので、カバレッジと容量の低下が引き起こされる。本実施例では、ビームを制限する代わりに、複数の基地局装置のそれぞれの方向を共通して制限することによって、既存のシステムとの共存の制約を緩和させる。複数の基地局装置のそれぞれの方向を共通して制限するので、カバレッジと容量に関して5Gの性能を低下させる電気的なビームの制限が不要になる。そのため、干渉の制約のもとで展開する基地局装置の数が増加される。
【0015】
図1は、第1無線通信システム10と第2無線通信システム20の構成を示す。第1無線通信システム10は、基地局装置100と総称される第1基地局装置100a、第2基地局装置100b、端末装置150と総称される第1端末装置150a、第2端末装置150bを含み、第2無線通信システム20は、宇宙局200、地球局250を含む。第1無線通信システム10に含まれる基地局装置100、端末装置150の数は、「2」に限定されない。
【0016】
第1無線通信システム10は、例えば、5Gの通信システムであり、前述の5Gシステムに相当する。ここでは、28GHz帯を使用し、基地局装置100と端末装置150との間の通信が実行される。第2無線通信システム20は、例えば、衛星通信システムであり、前述の既存のシステムに相当する。ここでは、28GHz帯を使用し、地球局250から宇宙局200への通信が実行される。宇宙局200から地球局250への通信には28GHz帯以外の周波数帯が使用されればよい。このように、第1無線通信システム10と第2無線通信システム20は、同一の周波数帯を使用し、かつ互いに異なったシステムであるといえる。
【0017】
本実施例では、第2無線通信システム20における宇宙局200と地球局250との通信が実行されている状況下において、複数の基地局装置100を設置する際の処理を説明する。その際、宇宙局200が受ける基地局装置100からの干渉電力が、第2無線通信システム20において規定される許容値より小さくなければならない。宇宙局200は対象局と呼ばれることもある。
【0018】
図2は、処理装置300の構成を示す。処理装置300は、受付部310、処理部320、取得部330、特定部340、決定部350、出力部360を含む。処理装置300は、複数の基地局装置100のそれぞれを設置するための条件を決定するためのアプリケーションプログラムを実行するコンピュータである。
【0019】
受付部310は、ユーザに操作されるインターフェースを有し、インターフェースを介してユーザから、第1無線通信システム10に含まれる複数の基地局装置100のそれぞれの位置情報(以下、「第1位置情報」という)と、第2無線通信システム20に含まれる宇宙局200の位置情報(以下、「第2位置情報」という)とを受け付ける。移動通信事業者が日本国内に複数の基地局装置100を設置する予定である場合、設置予定の位置の情報が第1位置情報として受け付けられる。また、第2位置情報は静止衛星の位置情報を示す。受付部310は、複数の第1位置情報と、第2位置情報とを処理部320に出力する。
【0020】
処理部320は、伝搬経路のシミュレータであり、例えば、レイトレースシミュレーションを実行する。処理部320は、レイトレースシミュレーションにより、複数の基地局装置100のそれぞれが送信した信号が宇宙局200において受信されるときの受信電力を干渉電力として基地局装置100毎に導出する。その際、基地局装置100における送信電力等のシミュレーションパラメータは、5Gの通信システムに適合するように設定される。
【0021】
さらに、詳細に説明すると、各基地局装置100のアンテナに対する方位角が、真北を「0度」とし、真東を「90度」とし、真南「180度」とし、真西を「270度」とするように右回りに規定される。処理部320は、複数の基地局装置100のそれぞれの方位角を「0度」に合わせてから方位角の方向に信号を送信させた場合において、宇宙局200における干渉電力を基地局装置100毎に導出する。これに続いて、処理部320は、複数の基地局装置100のそれぞれの方位角を変えて、宇宙局200における干渉電力を基地局装置100毎に導出する。その際、各基地局装置100の方位角は同一の値にされている。つまり、処理部320は、複数の基地局装置100のそれぞれの方位角を同一の値で変えながら信号を送信した場合に、宇宙局200に受信される信号の干渉電力を、基地局装置100と方位角の組合せ毎に導出する。
【0022】
取得部330は、処理部320におけるレイトレースシミュレーションの結果を取得する。より、具体的には、取得部330は、基地局装置100と方位角の組合せ毎に導出された干渉電力を取得する。図3は、取得部330において取得される方位角に対する干渉電力の分布を示す。縦軸が方位角[度]を示す。図中における黒丸印は、-230dBm/MHz以下の干渉電力を示し、×印は、-180dBm/MHz以上の干渉電力を示す。図2に戻る。
【0023】
特定部340は、図3に示された分布を取得部330から受け付ける。図3に示されるように、静止軌道に乗っている宇宙局200に対する基地局装置100からの干渉は、-230dBm/MHz以下の干渉電力と-180dBm/MHz以上の干渉電力とによる2つのカテゴリに分類される。ここで、2つのカテゴリは、複数の基地局装置100のそれぞれの仰角を考慮していない。
【0024】
特定部340は、図3の分布より、-180dBm/MHz以上の干渉電力が含まれる方位角の範囲を特定する。ここでは、80度から258度の範囲が特定される。特定された範囲は「制限エリア」とされる。図4は、特定部340において特定される制限エリア400を示す。前述のごとく、方位角が右回りとなるように規定される。また、方位角の80度から258度の範囲が制限エリア400とされる。ここで、-180dBm/MHzは、複数の基地局装置100のそれぞれが同一方向に向かって信号を送信した場合、宇宙局200における干渉電力が許容値以上になりうる、あるいは比較的少ない基地局装置100の置局で宇宙局200における累積干渉電力が許容値以上になりうる値である。そのため、-180dBm/MHzはしきい値と呼ばれてもよい。また、しきい値は-180dBm/MHzに限定されない。その結果、方位角80度から258度の複数の基地局装置100は展開されない。
【0025】
決定部350は、特定部340において特定された制限エリア400をもとに、複数の基地局装置100の方位を決定する。ここで、各基地局装置100に備えられるアンテナは、複数のセクタアンテナであるとする。
【0026】
図5は、基地局装置100におけるセクタアンテナ140の構成を示す。図中における方位角はこれまでと同様に示される。アンテナは、セクタアンテナ140と総称される第1セクタアンテナ140a、第2セクタアンテナ140b、第3セクタアンテナ140cを含む。アンテナに含まれるセクタアンテナ140の数は「3」に限定されない。第1セクタアンテナ140aのビームの中心方向は方位角「0度」を向き、第2セクタアンテナ140bのビームの中心方向は方位角「120度」を向き、第3セクタアンテナ140cのビームの中心方向は方位角「180度」を向く。また、第1セクタアンテナ140aのビーム幅は方位角「300度から60度」であり、第2セクタアンテナ140bのビーム幅は方位角「60度から180度」であり、第3セクタアンテナ140cのビーム幅は「180度から300度」である。つまり、各セクタアンテナ140のビームの中心方向は互いに異なった方位角を有し、ビーム幅は、ビームの中心方向に対して「-60度」から「+60度」の幅である。図2に戻る。
【0027】
決定部350は、複数の基地局装置100のそれぞれのビームの中心を制限エリア400に含めないように、複数の基地局装置100のそれぞれのビームの中心の方向を決定する。図6は、決定部350において決定されるビームの中心方向を示す。制限エリア400は図4と同様に示される。ここでは、制限エリア400の80度から258度以外の方位角である「0度」を向く第1セクタアンテナ140aが選択される。つまり、決定部350は、制限エリア400にビームの中心が向かないセクタアンテナ140を選択する。
【0028】
このように、制限エリア400に含めないように複数の基地局装置100のそれぞれのビームの中心の方向を決定することによって、つまり、基地局装置100の方位角に制限を与えることによって、宇宙局200に与える干渉が小さくされる。しかしながら、基地局装置100のビームは、基地局装置100のセクタの中で制限なく使用可能である。それによって、展開できる基地局装置100の数が増加する。
【0029】
決定部350は、複数の基地局装置100のそれぞれを設置する位置を決定してもよい。図7は、決定部350において決定される基地局装置100の配置を示す。ここでは、一例として、第1基地局装置100aから第6基地局装置100fが示される。各基地局装置100において第1セクタアンテナ140aが選択される。第1セクタアンテナ140aが選択されることによって、第1基地局装置100aは第1通信可能エリア142aを形成し、第2基地局装置100bは第2通信可能エリア142bを形成し、・・・、第6基地局装置100fは第6通信可能エリア142fを形成する。第1通信可能エリア142aから第6通信可能エリア142fは通信可能エリア142と総称される。通信可能エリア142は基地局装置100と通信可能な領域であり、それは基地局装置100のビームによってカバーされる領域である。例えば、第2通信可能エリア142bは第2基地局装置100bから方位角「0度」の方向に形成される。第2通信可能エリア142bは、第2基地局装置100bから方位角「90度」、「180度」、「270度」の方向をカバーしない。
【0030】
第2通信可能エリア142bによってカバーされない第2基地局装置100bから方位角「180度」の方向をカバーするために、第2基地局装置100bから方位角「180度」の方向に第5基地局装置100eが配置される。第5基地局装置100eは、第2基地局装置100bと同じ方位角を向くので、第2基地局装置100bから方位角「180度」の方向は第5通信可能エリア142eによってカバーされる。
【0031】
第2通信可能エリア142bによってカバーされない第2基地局装置100bから方位角「270度」の方向をカバーするために、第2基地局装置100bから方位角「270度」の方向に第1基地局装置100aが配置され、第5基地局装置100eから方位角「270度」の方向に第4基地局装置100dが配置される。第1基地局装置100aと第4基地局装置100dの相対的な位置関係は、第2基地局装置100bと第5基地局装置100eの相対的な位置関係と同一である。第1基地局装置100aと第4基地局装置100dは、第2基地局装置100bと同じ方位角を向くので、第2基地局装置100bから方位角「270度」の方向は第1通信可能エリア142aと第4通信可能エリア142dによってカバーされる。
【0032】
第2通信可能エリア142bによってカバーされない第2基地局装置100bから方位角「90度」の方向をカバーするために、第2基地局装置100bから方位角「90度」の方向に第3基地局装置100cが配置され、第5基地局装置100eから方位角「90度」の方向に第6基地局装置100fが配置される。第3基地局装置100cと第6基地局装置100fの相対的な位置関係は、第2基地局装置100bと第5基地局装置100eの相対的な位置関係と同一である。第3基地局装置100cと第6基地局装置100fは、第2基地局装置100bと同じ方位角を向くので、第2基地局装置100bから方位角「90度」の方向は第3通信可能エリア142cと第6通信可能エリア142fによってカバーされる。つまり、1つの基地局装置100によってカバーされない領域が、他の基地局装置100によって形成される通信可能エリア142によってカバーされるように、他の基地局装置100が配置される。
【0033】
出力部360は、決定部350において決定したビームの中心の方向に関する情報、基地局装置100の配置に関する情報を出力する。出力は、モニタに表示されたり、電子データとして送信されたりする。また、出力部360がネットワーク(図示せず)を介して各基地局装置100に接続されている場合、出力部360は、決定部350において決定したビームの中心の方向に関する情報を各基地局装置100に送信してもよい。
【0034】
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU(Central Processing Unit)、メモリ、その他のLSI(Large Scale Integration)で実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ハードウエアとソフトウエアの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0035】
図8は、基地局装置100の構成を示す。基地局装置100は、有線通信部110、設定部120、無線通信部130、セクタアンテナ140を含む。有線通信部110は、ネットワーク(図示せず)に接続され、ネットワークを介して、ルータやサーバで構成するコア・ネットワークとの通信を実行し、あるいは他の基地局装置100との通信を実行する。有線通信部110の受信部112は、処理装置300からの情報を受信する。
【0036】
設定部120は、受信部112において受信した情報をもとに、セクタアンテナ140におけるビームの中心の方向を設定する。無線通信部130は、設定部120によってビームの中心の方向が設定されたセクタアンテナ140を使用して、図1の端末装置150との通信を実行する。有線通信部110、無線通信部130には公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。
【0037】
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU(Central Processing Unit)、メモリ、その他のLSI(Large Scale Integration)で実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ハードウエアとソフトウエアの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0038】
以上の構成による処理装置300の動作を説明する。図9は、処理装置300による決定手順を示すフローチャートである。取得部330は、方位角を変えた干渉電力の分布を取得する(S10)。特定部340は、干渉電力の分布をもとに制限エリア400を特定する(S12)。決定部350は、ビームの中心の方向を決定する(S14)。
【0039】
本実施例によれば、しきい値以上の干渉電力が含まれる方位角の範囲を制限エリアとして特定して、複数の基地局装置のそれぞれのビームの中心を制限エリアに含めないように、複数の基地局装置のそれぞれのビームの中心の方向を決定するので、宇宙局への干渉を低減できる。また、宇宙局への干渉が低減されるので、基地局装置の設置数の低減を抑制できる。また、基地局装置の設置数の低減が抑制されるので、基地局装置の設置を展開できる。また、ビームを制限しないので、カバレッジと容量の低下を抑制できる。
【0040】
また、制限エリアにビームの中心が向かないセクタアンテナを選択するので、処理を簡易にできる。また、複数の基地局装置のそれぞれを設置する位置も決定するので、複数の基地局装置によってカバーされる領域の減少を抑制できる。また、決定したビームの中心の方向に関する情報を出力するので、決定したビームの中心の方向に関する情報を利用できる。また、処理装置から受信した情報をもとに、ビームの中心の方向を設定するので、宇宙局への干渉が少なくなる方向にビームの中心を向けることができる。
【0041】
以上、本開示を実施例をもとに説明した。実施例は例示であり、それらの各構成要素または各処理プロセスの組合せに、いろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0042】
本実施例における基地局装置100は、複数のセクタアンテナ140を含む。しかしながらこれに限らず例えば、基地局装置100は、方位角を変更可能なように水平面で回転可能な1つのセクタアンテナ140を含んでもよい。決定部350において決定された方向にセクタアンテナ140が向けられる。本変形例によれば構成の自由度を向上できる。
【0043】
本実施例において、衛星通信システムが第2無線通信システム20として既に配置されている場合を想定する。しかしながらこれに限らず例えば、第2無線通信システム20とは異なった別の衛星通信システムが第3無線通信システムとして既に配置されていてもよい。第3無線通信システムは、第1無線通信システム10と第2無線通信システム20と同一の周波数帯を使用する。ここでは、第2無線通信システム20に含まれる宇宙局200を「第2宇宙局(第2対象局)」と呼び、第2無線通信システム20に対する制限エリア400を「第2制限エリア」と呼ぶ。また、第3無線通信システムに含まれる宇宙局は「第3宇宙局(第3対象局)」と呼ばれ、第3無線通信システムに対する制限エリアは「第3制限エリア」と呼ばれる。
【0044】
処理部320、取得部330、特定部340は、第3無線通信システムの第3宇宙局に対してもこれまでと同様の処理を実行することによって、第3宇宙局における干渉電力のうち、しきい値以上の干渉電力が含まれる方位角の範囲が第3制限エリアとして特定される。特定部340は、第2制限エリアと第3制限エリアとを組み合わせることによって、総合制限エリアを導出する。例えば、第2制限エリアにおける方位角の範囲と第3制御エリアにおける方位角の範囲を加算することによって、総合制限エリアが導出される。第2制限エリアが80度から258度の範囲であり、第3制限エリアが10度から230度の範囲である場合、総合制限エリアは10度から258度の範囲とされる。
【0045】
また、第2制限エリアにおける方位角の範囲と第3制御エリアにおける方位角の範囲との重複部分をもとに、総合制限エリアが導出されてもよい。第2制限エリアが80度から258度の範囲であり、第3制限エリアが10度から230度の範囲である場合、総合制限エリアは80度から230度の範囲とされる。決定部350は、複数の基地局装置100のそれぞれのビームの中心を総合制限エリアに含めないように決定する。本変形例によれば、構成の自由度を向上できる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明によると、既存システムへの与干渉を低減しながら、基地局装置の設置数の低減を抑制できる。
【符号の説明】
【0047】
10 第1無線通信システム、 20 第2無線通信システム、 100 基地局装置、 110 有線通信部、 112 受信部、 120 設定部、 130 無線通信部、 140 セクタアンテナ、 142 通信可能エリア、 150 端末装置、 200 宇宙局、 250 地球局、 300 処理装置、 310 受付部、 320 処理部、 330 取得部、 340 特定部、 350 決定部、 360 出力部。
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