(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】ガスタービンの最大出力作成方法、ガスタービンの制御用出力作成方法、ガスタービンの制御方法、これらの方法を実行する装置、及びこれらの方法をコンピュータに実行させるプログラム
(51)【国際特許分類】
F01D 17/04 20060101AFI20240321BHJP
F02C 9/00 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
F01D17/04
F02C9/00 A
(21)【出願番号】P 2022558862
(86)(22)【出願日】2021-07-26
(86)【国際出願番号】 JP2021027545
(87)【国際公開番号】W WO2022091505
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2023-03-27
(31)【優先権主張番号】P 2020182923
(32)【優先日】2020-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】中田 直希
(72)【発明者】
【氏名】西村 英彦
【審査官】松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-077866(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0315979(US,A1)
【文献】特開2016-037883(JP,A)
【文献】特開2015-183619(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 17/04
F02C 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を圧縮して圧縮空気を生成できる圧縮機と、前記圧縮空気中で燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成できる燃焼器と、前記燃焼ガスにより駆動可能なタービンと、を備え、前記圧縮機は、自身が吸い込む空気の流量を調節する吸気量調節機を有する、ガスタービンの最大出力作成器において、
前記圧縮機が吸い込む空気の温度である吸気温度を受け付ける温度受付部と、
前記吸気量調節機における最大開度の変更内容を受け付ける変更受付部と、
前記温度受付部が受け付けた前記吸気温度に基づき、前記ガスタービンの基本最大出力を求める基本最大出力演算部と、
前記変更受付部が受け付けた前記最大開度の変更内容と前記温度受付部が受け付けた前記吸気温度とに基づき、前記基本最大出力を補正するための最大出力補正係数を作成する係数作成部と、
前記最大出力補正係数を用いて前記基本最大出力を補正し、補正された前記基本最大出力を制御用の最大出力として出力する最大出力補正部と、
を備えるガスタービンの最大出力作成器。
【請求項2】
請求項1に記載のガスタービンの最大出力作成器において、
前記変更受付部は、前記吸気量調節機における変更後最大開度と前記吸気温度との関係である変更後関係を受け付け、
前記係数作成部は、
前記吸気量調節機における基本最大開度と前記吸気温度との予め定められた関係である基本関係を用いて、前記温度受付部が受け付けた前記吸気温度に応じた前記基本最大開度を求める基本最大開度演算部と、
前記変更受付部が受け付けた前記変更後関係を用いて、前記温度受付部が受け付けた前記吸気温度に応じた前記変更後最大開度を求める変更後最大開度演算部と、
前記基本最大開度演算部が求めた前記基本最大開度と、前記変更後最大開度演算部が求めた前記変更後最大開度とを用いて、前記最大出力補正係数を求める係数演算部と、
を有する、
ガスタービンの最大出力作成器。
【請求項3】
請求項2に記載のガスタービンの最大出力作成器において、
前記係数演算部は、
前記基本最大開度演算部が求めた前記基本最大開度と、前記変更後最大開度演算部が求めた前記変更後最大開度との偏差を算出する偏差算出部と、
前記偏差と前記最大出力補正係数との予め定められた関係を用いて、前記偏差算出部が算出した前記偏差に応じた前記最大出力補正係数を算出する係数算出部と、
を有する、
ガスタービンの最大出力作成器。
【請求項4】
請求項2に記載のガスタービンの最大出力作成器において、
前記係数演算部は、
前記基本最大開度演算部が求めた前記基本最大開度に応じた前記ガスタービンの出力を算出する基本出力算出部と、
前記変更後最大開度演算部が求めた前記変更後最大開度に応じた前記ガスタービンの出力を算出する変更後出力算出部と、
前記基本出力算出部が算出した前記出力に対する、前記変更後出力算出部が算出した前記出力の割合を前記最大出力補正係数として出力する係数算出部と、
を有する、
ガスタービンの最大出力作成器。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のガスタービンの最大出力作成器と、
前記ガスタービンの制御用出力を修正する出力修正器と、
を備え、
前記出力修正器は、
前記制御用出力を補正する際に用いる補正係数を作成する補正係数作成部と、
前記補正係数を用いて前記制御用出力を補正して、補正後の制御用出力を修正制御用出力として出力する出力補正部と、
前記ガスタービンの出力を検知する出力計からの出力を少なくとも受け付ける出力受付部と、
前記出力受付部が受け付けた出力を記憶する出力記憶部と、
を備え、
前記補正係数作成部は、
第一係数要素を算出する第一係数要素算出部と、
第二係数要素を算出する第二係数要素算出部と、
前記第一係数要素と前記第二係数要素とを用いて前記補正係数を算出する補正係数算出部と、
を有し、
前記出力記憶部は、過去の基準時点で、前記ガスタービンが最高出力を出力できる条件下での出力である基準出力と、前記基準時点よりも現時点に近い直前時間帯で、前記ガスタービンが最高出力を出力できる条件下で前記出力受付部が受け付けた直前出力と、を記憶でき、
前記第一係数要素は、前記出力記憶部に記憶されている前記基準出力に対する、前記出力記憶部に記憶されている直前出力の割合であり、
前記第二係数要素は、前記出力記憶部に記憶されている前記直前出力に対する、前記直前時間帯から現時点までの間の現時間帯に、前記ガスタービンが最高出力を出力できる条件下で前記出力受付部が受け付けた現出力の割合であり、
前記出力修正器は、前記最大出力作成器から出力された前記制御用の最大出力を前記制御用出力の一つとして修正する、
ガスタービンの制御用出力作成器。
【請求項6】
請求項5に記載のガスタービンの制御用出力作成器において、
前記第一係数要素算出部は、リセット指示を受け付けたことを条件として、前記直前時間帯における前記直前出力の替わりに、前記現時間帯における前記現出力を用いて、前記第一係数要素を算出し、
前記補正係数作成部は、さらに、
前記第一係数要素算出部が算出した前記第一係数要素と、前記第二係数要素算出部が算出した前記第二係数要素とを記憶できる係数要素記憶部と、
前記リセット指示を受け付けると、前記係数要素記憶部に記憶されている第二係数要素を、前記補正係数算出部による前記補正係数の算出結果に影響を与えない値にリセットするリセット部と、
を有し、
前記補正係数算出部は、前記係数要素記憶部に記憶されている第二係数要素及び前記第一係数要素を用いて、前記補正係数を算出する、
ガスタービンの制御用出力作成器。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のガスタービンの制御用出力作成器において、
前記基準時点は、前記ガスタービンの設計時点であり、前記基準出力は、前記設計時点に、前記ガスタービンが最高出力を出力できる条件下での設計出力である、
ガスタービンの制御用出力作成器。
【請求項8】
請求項7に記載のガスタービンの制御用出力作成器において、
前記直前時間帯は、前記ガスタービンを建設した後に行う試運転中であって、前記ガスタービンを点検又は修理した後の試運転を除く建設試運転中の時間帯を含み、
前記直前
出力は、前記建設試運転中の前記時間帯に、前記ガスタービンが最高出力を出力できる条件下で前記出力受付部が受け付けた出力である建設出力を含み、
前記補正係数作成部は、さらに、第三係数要素を算出する第三係数要素算出部を有し、
前記補正係数算出部は、前記第一係数要素と前記第二係数要素と前記第三係数要素とを用いて前記補正係数を算出し、
前記第三係数要素は、前記出力記憶部に記憶されている前記基準出力に対する、前記出力記憶部に記憶されている前記建設出力の割合である、
ガスタービンの制御用出力作成器。
【請求項9】
請求項1から4のいずれか一項に記載のガスタービンの最大出力作成器と、
前記最大出力作成器から出力された前記制御用の最大出力を用いて、前記ガスタービンの制御対象に対する指令値を作成する指令値作成部と、
前記指令値を示す制御信号を前記制御対象に出力する制御信号出力部と、
を備えるガスタービンの制御装置。
【請求項10】
請求項5から8のいずれか一項に記載のガスタービンの制御用出力作成器と、
前記制御用出力作成器から出力された前記修正制御用出力を用いて、前記ガスタービンの制御対象に対する指令値を作成する指令値作成部と、
前記指令値を示す制御信号を前記制御対象に出力する制御信号出力部と、
を備えるガスタービンの制御装置。
【請求項11】
空気を圧縮して圧縮空気を生成できる圧縮機と、前記圧縮空気中で燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成できる燃焼器と、前記燃焼ガスにより駆動可能なタービンと、を備え、前記圧縮機は、自身が吸い込む空気の流量を調節する吸気量調節機を有する、ガスタービンの最大出力作成方法において、
前記圧縮機が吸い込む空気の温度である吸気温度を受け付ける温度受付工程と、
前記吸気量調節機における最大開度の変更内容を受け付ける変更受付工程と、
前記温度受付工程で受け付けた前記吸気温度に基づき、前記ガスタービンの基本最大出力を求める基本最大出力演算工程と、
前記変更受付工程で受け付けた前記最大開度の変更内容と前記温度受付工程で受け付けた前記吸気温度とに基づき、前記基本最大出力を補正するための最大出力補正係数を作成する係数作成工程と、
前記最大出力補正係数を用いて前記基本最大出力を補正し、補正された前記基本最大出力を制御用の最大出力として出力する最大出力補正工程と、
を実行するガスタービンの最大出力作成方法。
【請求項12】
請求項11に記載のガスタービンの最大出力作成方法において、
前記変更受付工程では、前記吸気量調節機における変更後最大開度と前記吸気温度との関係である変更後関係を受け付け、
前記係数作成工程は、
前記吸気量調節機における基本最大開度と前記吸気温度との予め定められた関係である基本関係を用いて、前記温度受付工程で受け付けた前記吸気温度に応じた前記基本最大開度を求める基本最大開度演算工程と、
前記変更受付工程で受け付けた前記変更後関係を用いて、前記温度受付工程で受け付けた前記吸気温度に応じた前記変更後最大開度を求める変更後最大開度演算工程と、
前記基本最大開度演算工程で求められた前記基本最大開度と、前記変更後最大開度演算工程で求められた前記変更後最大開度とを用いて、前記最大出力補正係数を求める係数演算工程と、
を含む、
ガスタービンの最大出力作成方法。
【請求項13】
請求項12に記載のガスタービンの最大出力作成方法において、
前記係数演算工程は、
前記基本最大開度演算工程で求められた前記基本最大開度と、前記変更後最大開度演算工程で求められた前記変更後最大開度との偏差を算出する偏差算出工程と、
前記偏差と前記最大出力補正係数との予め定められた関係を用いて、前記偏差算出工程で求められた前記偏差に応じた前記最大出力補正係数を算出する係数算出工程と、
を含む、
ガスタービンの最大出力作成方法。
【請求項14】
請求項12に記載のガスタービンの最大出力作成方法において、
前記係数演算工程は、
前記基本最大開度演算工程で求められた前記基本最大開度に応じた前記ガスタービンの出力を算出する基本出力算出工程と、
前記変更後最大開度演算工程で求められた前記変更後最大開度に応じた前記ガスタービンの出力を算出する変更後出力算出工程と、
前記基本出力算出工程で算出された前記出力に対する、前記変更後出力算出工程で算出された前記出力の割合を前記最大出力補正係数として出力する係数算出工程と、
を含む、
ガスタービンの最大出力作成方法。
【請求項15】
請求項11から14のいずれか一項に記載のガスタービンの最大出力作成方法を実行すると共に、
前記ガスタービンの制御用出力を修正する出力修正方法と、
を実行し、
前記出力修正方法では、
前記ガスタービンの制御用出力を補正する際に用いる補正係数を作成する補正係数作成工程と、
前記補正係数を用いて前記制御用出力を補正して、補正後の制御用出力を修正制御用出力として出力する出力補正工程と、
前記ガスタービンの出力を検知する出力計からの出力を少なくとも受け付ける出力受付工程と、
前記出力受付工程が受け付けた出力を記憶する出力記憶工程と、
を実行し、
前記補正係数作成工程は、
第一係数要素を算出する第一係数要素算出工程と、
第二係数要素を算出する第二係数要素算出工程と、
前記第一係数要素と前記第二係数要素とを用いて前記補正係数を算出する補正係数算出工程と、
を含み、
前記出力記憶工程では、過去の基準時点で、前記ガスタービンが最高出力を出力できる条件下での出力である基準出力と、前記基準時点よりも現時点に近い直前時間帯で、前記ガスタービンが最高出力を出力できる条件下で前記出力受付工程で受け付けた直前出力と、を記憶し、
前記第一係数要素は、前記出力記憶工程で記憶された前記基準出力に対する、前記出力記憶工程で記憶された直前出力の割合であり、
前記第二係数要素は、前記出力記憶工程で記憶された前記直前出力に対する、前記直前時間帯から現時点までの間の現時間帯に、前記ガスタービンが最高出力を出力できる条件下で前記出力受付工程で受け付けた現出力の割合である、
ガスタービンの制御用出力作成方法。
【請求項16】
請求項15に記載のガスタービンの制御用出力作成方法において、
前記第一係数要素算出工程では、リセット指示を受け付けたことを条件として、前記直前時間帯における前記直前出力の替わりに、前記現時間帯における前記現出力を用いて、前記第一係数要素を算出し、
前記補正係数作成工程は、さらに、
前記第一係数要素算出工程で算出された前記第一係数要素と、前記第二係数要素算出工程で算出された前記第二係数要素とを記憶する係数要素記憶工程と、
前記リセット指示を受け付けると、前記係数要素記憶工程で記憶された第二係数要素を、前記補正係数算出工程での前記補正係数の算出結果に影響を与えない値にリセットするリセット工程と、
を含み、
前記補正係数算出工程では、前記係数要素記憶工程で記憶された第二係数要素及び前記第一係数要素を用いて、前記補正係数を算出する、
ガスタービンの制御用出力作成方法。
【請求項17】
請求項15又は16に記載のガスタービンの制御用出力作成方法において、
前記基準時点は、前記ガスタービンの設計時点であり、前記基準出力は、前記設計時点に、前記ガスタービンが最高出力を出力できる条件下での設計出力である、
ガスタービンの制御用出力作成方法。
【請求項18】
請求項17に記載のガスタービンの制御用出力作成方法において、
前記直前時間帯は、前記ガスタービンを建設した後に行う試運
転中であって、前記ガスタービンを点検又は修理した後の試運転を除く建設試運転中の時間帯を含み、
前記直前
出力は、前記建設試運転中の前記時間帯に、前記ガスタービンが最高出力を出力できる条件下で前記出力受付工程で受け付けた出力である建設出力を含み、
前記補正係数作成工程は、さらに、第三係数要素を算出する第三係数要素算出工程を含み、
前記補正係数算出工程では、前記第一係数要素と前記第二係数要素と前記第三係数要素とを用いて前記補正係数を算出し、
前記第三係数要素は、前記出力記憶工程で記憶された前記基準出力に対する、前記出力記憶工程で記憶された前記建設出力の割合である、
ガスタービンの制御用出力作成方法。
【請求項19】
請求項11から14のいずれか一項に記載のガスタービンの最大出力作成方法を実行すると共に、
前記最大出力作成方法で求められた前記制御用の最大出力を用いて、前記ガスタービンの制御対象に対する指令値を作成する指令値作成工程と、
前記指令値を示す制御信号を前記制御対象に出力する制御信号出力工程と、
を実行するガスタービンの制御方法。
【請求項20】
請求項15から18のいずれか一項に記載のガスタービンの制御用出力作成方法を実行すると共に、
前記制御用出力作成方法で求められた前記修正制御用出力を用いて、前記ガスタービンの制御対象に対する指令値を作成する指令値作成工程と、
前記指令値を示す制御信号を前記制御対象に出力する制御信号出力工程と、
を実行するガスタービンの制御方法。
【請求項21】
空気を圧縮して圧縮空気を生成できる圧縮機と、前記圧縮空気中で燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成できる燃焼器と、前記燃焼ガスにより駆動可能なタービンと、を備え、前記圧縮機は、自身が吸い込む空気の流量を調節する吸気量調節機を有する、ガスタービンの最大出力作成プログラムにおいて、
前記圧縮機が吸い込む空気の温度である吸気温度を受け付ける温度受付工程と、
前記吸気量調節機における最大開度の変更内容を受け付ける変更受付工程と、
前記温度受付工程で受け付けた前記吸気温度に基づき、前記ガスタービンの基本最大
出力を求める基本最大出力演算工程と、
前記変更受付工程で受け付けた前記最大開度の変更内容と前記温度受付工程で受け付けた前記吸気温度とに基づき、前記基本最大出力を補正するための最大出力補正係数を作成する係数作成工程と、
前記最大出力補正係数を用いて前記基本最大出力を補正し、補正された前記基本最大出力を制御用の最大出力として出力する最大出力補正工程と、
をコンピュータに実行させるガスタービンの最大出力作成プログラム。
【請求項22】
請求項21に記載のガスタービンの最大出力作成プログラムにおいて、
前記変更受付工程では、前記吸気量調節機における変更後最大開度と前記吸気温度との関係である変更後関係を受け付け、
前記係数作成工程は、
前記吸気量調節機における基本最大開度と前記吸気温度との予め定められた関係である基本関係を用いて、前記温度受付工程で受け付けた前記吸気温度に応じた前記基本最大開度を求める基本最大開度演算工程と、
前記変更受付工程で受け付けた前記変更後関係を用いて、前記温度受付工程で受け付けた前記吸気温度に応じた前記変更後最大開度を求める変更後最大開度演算工程と、
前記基本最大開度演算工程で求められた前記基本最大開度と、前記変更後最大開度演算工程で求められた前記変更後最大開度とを用いて、前記最大出力補正係数を求める係数演算工程と、
を含む、
ガスタービンの最大出力作成プログラム。
【請求項23】
請求項22に記載のガスタービンの最大出力作成プログラムにおいて、
前記係数演算工程は、
前記基本最大開度演算工程で求められた前記基本最大開度と、前記変更後最大開度演算工程で求められた前記変更後最大開度との偏差を算出する偏差算出工程と、
前記偏差と前記最大出力補正係数との予め定められた関係を用いて、前記偏差算出工程で求められた前記偏差に応じた前記最大出力補正係数を算出する係数算出工程と、
を含む、
ガスタービンの最大出力作成プログラム。
【請求項24】
請求項22に記載のガスタービンの最大出力作成プログラムにおいて、
前記係数演算工程は、
前記基本最大開度演算工程で求められた前記基本最大開度に応じた前記ガスタービンの出力を算出する基本出力算出工程と、
前記変更後最大開度演算工程で求められた前記変更後最大開度に応じた前記ガスタービンの出力を算出する変更後出力算出工程と、
前記基本出力算出工程で算出された前記出力に対する、前記変更後出力算出工程で算出された前記出力の割合を前記最大出力補正係数として出力する係数算出工程と、
を含む、
ガスタービンの最大出力作成プログラム。
【請求項25】
請求項21から24のいずれか一項に記載のガスタービンの最大出力作成プログラムと、
前記ガスタービンの制御用出力を修正する出力修正プログラムと、
を有し、
前記出力修正プログラムは、
前記ガスタービンの制御用出力を補正する際に用いる補正係数を作成する補正係数作成工程と、
前記補正係数を用いて前記制御用出力を補正して、補正後の制御用出力を修正制御用出力として出力する出力補正工程と、
前記ガスタービンの出力を検知する出力計からの出力を少なくとも受け付ける出力受付工程と、
前記出力受付工程が受け付けた出力を記憶する出力記憶工程と、
を前記コンピュータに実行させ、
前記補正係数作成工程は、
第一係数要素を算出する第一係数要素算出工程と、
第二係数要素を算出する第二係数要素算出工程と、
前記第一係数要素と前記第二係数要素とを用いて前記補正係数を算出する補正係数算出工程と、
を含み、
前記出力記憶工程では、過去の基準時点で、前記ガスタービンが最高出力を出力できる条件下での出力である基準出力と、前記基準時点よりも現時点に近い直前時間帯で、前記ガスタービンが最高出力を出力できる条件下で前記出力受付工程で受け付けた直前出力と、を記憶し、
前記第一係数要素は、前記出力記憶工程で記憶された前記基準出力に対する、前記出力記憶工程で記憶された直前出力の割合であり、
前記第二係数要素は、前記出力記憶工程で記憶された前記直前出力に対する、前記直前時間帯から現時点までの間の現時間帯に、前記ガスタービンが最高出力を出力できる条件下で前記出力受付工程で受け付けた現出力の割合である、
ガスタービンの制御用出力作成プログラム。
【請求項26】
請求項21から24のいずれか一項に記載のガスタービンの最大出力作成プログラムを有すると共に、
前記最大出力作成プログラムの実行で求められた前記制御用の最大出力を用いて、前記ガスタービンの制御対象に対する指令値を作成する指令値作成工程と、
前記指令値を示す制御信号を前記制御対象に出力する制御信号出力工程と、
を前記コンピュータに実行させるガスタービンの制御プログラム。
【請求項27】
請求項25に記載のガスタービンの制御用出力作成プログラムを有すると共に、
前記制御用出力作成プログラムの実行で求められた前記修正制御用出力を用いて、前記ガスタービンの制御対象に対する指令値を作成する指令値作成工程と、
前記指令値を示す制御信号を前記制御対象に出力する制御信号出力工程と、
を前記コンピュータに実行させるガスタービンの制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガスタービンの最大出力作成方法、ガスタービンの制御用出力作成方法、ガスタービンの制御方法、これらの方法を実行する装置、及びこれらの方法をコンピュータに実行させるプログラムに関する。
本願は、2020年10月30日に、日本国に出願された特願2020-182923号に基づき優先権を主張し、この内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンは、空気を圧縮する圧縮機と、圧縮機で圧縮された空気中で燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成する燃焼器と、燃焼ガスにより駆動するタービンと、を備えている。圧縮機は、圧縮機ロータと、この圧縮機ロータを覆う圧縮機ケーシングと、吸気量調節機(以下、IGV(inlet guide vane)とする)と、を有する。このIGVは、この圧縮機ケーシングの吸込み口に設けられ、圧縮機ケーシング内に吸い込まれる空気の流量を調節する。圧縮機ロータには、発電機のロータが接続されている。
【0003】
以下の特許文献1には、圧縮機が吸い込む空気の温度やガスタービン出力(=発電機出力)に応じて、IGV開度を定める技術が開示されている。このIGV開度は、予め定められた制御用のIGV最大開度を超えないよう、制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガスタービンの設置現場では、試運転等の結果により、制御用のIGV最大開度の設定変更を希望することがある。また、寒暖差が大きい地域がガスタービンの設置現場である場合、寒期におけるIGV最大開度の設定と暖期におけるIGV最大開度の設定との変更を希望することもある。
【0006】
IGV最大開度の設定が変われば、タービン内を通過するガス流量や燃焼器に供給する燃料流量等が変わることになる。このため、仮に、IGV最大開度の設定を変えても、ガスタービンの制御用の最大出力の設定を変えない場合、タービンのガス入口における燃焼ガスの温度が上限値を超える場合や、この燃焼ガスの温度が上限値よりも遥かに低くなる場合がある。よって、単に、IGV最大開度の設定を変更すると、ガスタービンの制御不具合が生じて、ガスタービンの寿命低下や出力低下を招く恐れがある。
【0007】
そこで、本開示は、IGV最大開度の設定を変更した場合でも、ガスタービンの制御不具合を抑えることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するための一態様としてのガスタービンの最大出力作成器は、
空気を圧縮して圧縮空気を生成できる圧縮機と、前記圧縮空気中で燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成できる燃焼器と、前記燃焼ガスにより駆動可能なタービンと、を備え、前記圧縮機は、自身が吸い込む空気の流量を調節する吸気量調節機を有する、ガスタービンの最大出力作成器である。最大出力作成器は、前記圧縮機が吸い込む空気の温度である吸気温度を受け付ける温度受付部と、前記吸気量調節機における最大開度の変更内容を受け付ける変更受付部と、前記温度受付部が受け付けた前記吸気温度に基づき、前記ガスタービンの基本最大出力を求める基本最大出力演算部と、前記変更受付部が受け付けた前記最大開度の変更内容と前記温度受付部が受け付けた前記吸気温度とに基づき、前記基本最大出力を補正するための最大出力補正係数を作成する係数作成部と、前記最大出力補正係数を用いて前記基本最大出力を補正し、補正された前記基本最大出力を制御用の最大出力として出力する最大出力補正部と、を備える。
【0009】
本態様では、吸気量調節機における最大開度の変更内容を受け付けることができる。さらに、本態様では、この変更内容と吸気温度とに基づいて、ガスタービンの制御用の最大出力を補正する。このため、本態様では、制御用の最大開度の設定を変更した場合でも、ガスタービンの寿命低下や出力低下を招かず、ガスタービンの制御不具合を抑えることができる。
【0010】
前記目的を達成するための一態様としてのガスタービンの制御用出力作成器は、
前記一態様におけるガスタービンの最大出力作成器と、前記ガスタービンの制御用出力を修正する出力修正器と、を備える。前記出力修正器は、前記制御用出力を補正する際に用いる補正係数を作成する補正係数作成部と、前記補正係数を用いて前記制御用出力を補正して、補正後の制御用出力を修正制御用出力として出力する出力補正部と、前記ガスタービンの出力を検知する出力計からの出力を少なくとも受け付ける出力受付部と、前記出力受付部が受け付けた出力を記憶する出力記憶部と、を備える。前記補正係数作成部は、第一係数要素を算出する第一係数要素算出部と、第二係数要素を算出する第二係数要素算出部と、前記第一係数要素と前記第二係数要素とを用いて前記補正係数を算出する補正係数算出部と、を有する。前記出力記憶部は、過去の基準時点で、前記ガスタービンが最高出力を出力できる条件下での出力である基準出力と、前記基準時点よりも現時点に近い直前時間帯で、前記ガスタービンが最高出力を出力できる条件下で前記出力受付部が受け付けた直前出力と、を記憶できる。前記第一係数要素は、前記出力記憶部に記憶されている前記基準出力に対する、前記出力記憶部に記憶されている直前出力の割合である。前記第二係数要素は、前記出力記憶部に記憶されている前記直前出力に対する、前記直前時間帯から現時点までの間の現時間帯に、前記ガスタービンが最高出力を出力できる条件下で前記出力受付部が受け付けた現出力の割合である。前記出力修正器は、前記最大出力作成器から出力された前記制御用の最大出力を前記制御用出力の一つとして修正する。
【0011】
本態様では、第一係数要素と第二係数要素とを用いて、補正係数が求められる。この補正係数は、ガスタービン性能劣化に伴う出力の劣化度を示す値である。また、第一係数要素及び第二係数要素も、ガスタービン性能劣化に伴う出力の劣化度を示す値である。しかしながら、第一係数要素と第二係数要素とは、互に異なる時間帯での出力の劣化度を示す。具体的に、第一係数要素は、基準時点から直前時間帯にかけての出力の劣化を示し、第二係数要素は、直前時間帯から現時間帯にかけての出力の劣化を示す。このように、本態様では、互に異なる複数の係数要素を用いて、補正係数を求め、この補正係数で制御用出力を補正する。
【0012】
従って、本態様では、出力の劣化度を適正に反映した修正制御用出力を得ることができる。
【0013】
前記目的を達成するための一態様としてのガスタービンの制御装置は、
前記一態様におけるガスタービンの最大出力作成器と、前記最大出力作成器から出力された前記制御用の最大出力を用いて、前記ガスタービンの制御対象に対する指令値を作成する指令値作成部と、前記指令値を示す制御信号を前記制御対象に出力する制御信号出力部と、を備える。
【0014】
本態様の最大出力作成器は、前述したように、吸気量調節機における最大開度の変更内容を受け付け、この変更内容と吸気温度とに基づいて、ガスタービンの制御用の最大出力を補正する。本態様では、吸気量調節機における最大開度の変更内容に応じた制御用の最大出力を用いて、制御対象に対する指令値を作成し、この指令値を示す制御信号を制御対象に出力する。このため、本態様では、制御用の最大開度の設定を変更した場合でも、制御対象の制御不具合を抑えることができる。
【0015】
前記目的を達成するための他の態様としてのガスタービンの制御装置は、
前記一態様におけるガスタービンの制御用出力作成器と、前記制御用出力作成器から出力された前記修正制御用出力を用いて、前記ガスタービンの制御対象に対する指令値を作成する指令値作成部と、前記指令値を示す制御信号を前記制御対象に出力する制御信号出力部と、を備える。
【0016】
本態様の制御用出力作成器における最大出力作成器は、前述したように、吸気量調節機における最大開度の変更内容を受け付け、この変更内容と吸気温度とに基づいて、ガスタービン10の制御用の最大出力を補正する。また、この制御用出力作成器における出力修正器は、前述したように、出力の劣化度を適正に反映した修正制御用出力としての最大出力を得ることができる。本態様では、この修正制御用出力を用いて、制御対象に対する指令値を作成し、この指令値を示す制御信号を制御対象に出力する。このため、本態様では、制御用の最大開度の設定を変更した場合でも、この変更に起因した制御対象の制御不具合、さらに、ガスタービン性能劣化に起因した制御対象の制御不具合を抑えることができる。
【0017】
前記目的を達成するための一態様としてのガスタービンの最大出力作成方法は、
空気を圧縮して圧縮空気を生成できる圧縮機と、前記圧縮空気中で燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成できる燃焼器と、前記燃焼ガスにより駆動可能なタービンと、を備え、前記圧縮機は、自身が吸い込む空気の流量を調節する吸気量調節機を有する、ガスタービンの最大出力作成方法である。
この最大出力作成方法では、前記圧縮機が吸い込む空気の温度である吸気温度を受け付ける温度受付工程と、前記吸気量調節機における最大開度の変更内容を受け付ける変更受付工程と、前記温度受付工程で受け付けた前記吸気温度に基づき、前記ガスタービンの基本最大出力を求める基本最大出力演算工程と、前記変更受付工程で受け付けた前記最大開度の変更内容と前記温度受付工程で受け付けた前記吸気温度とに基づき、前記基本最大出力を補正するための最大出力補正係数を作成する係数作成工程と、前記最大出力補正係数を用いて前記基本最大出力を補正し、補正された前記基本最大出力を制御用の最大出力として出力する最大出力補正工程と、を実行する。
【0018】
前記目的を達成するための一態様としてのガスタービンの制御用出力作成方法は、
前記一態様におけるガスタービンの最大出力作成方法を実行すると共に、前記ガスタービンの制御用出力を修正する出力修正方法と、を実行する。前記出力修正方法では、前記ガスタービンの制御用出力を補正する際に用いる補正係数を作成する補正係数作成工程と、前記補正係数を用いて前記制御用出力を補正して、補正後の制御用出力を修正制御用出力として出力する出力補正工程と、前記ガスタービンの出力を検知する出力計からの出力を少なくとも受け付ける出力受付工程と、前記出力受付工程が受け付けた出力を記憶する出力記憶工程と、を実行する。前記補正係数作成工程は、第一係数要素を算出する第一係数要素算出工程と、第二係数要素を算出する第二係数要素算出工程と、前記第一係数要素と前記第二係数要素とを用いて前記補正係数を算出する補正係数算出工程と、を含む。前記出力記憶工程では、過去の基準時点で、前記ガスタービンが最高出力を出力できる条件下での出力である基準出力と、前記基準時点よりも現時点に近い直前時間帯で、前記ガスタービンが最高出力を出力できる条件下で前記出力受付工程で受け付けた直前出力と、を記憶する。前記第一係数要素は、前記出力記憶工程で記憶された前記基準出力に対する、前記出力記憶工程で記憶された直前出力の割合である。前記第二係数要素は、前記出力記憶工程で記憶された前記直前出力に対する、前記直前時間帯から現時点までの間の現時間帯に、前記ガスタービンが最高出力を出力できる条件下で前記出力受付工程で受け付けた現出力の割合である。
【0019】
前記目的を達成するための一態様としてのガスタービンの制御方法は、
前記一態様におけるガスタービンの最大出力作成方法を実行すると共に、前記最大出力作成方法で求められた前記制御用の最大出力を用いて、前記ガスタービンの制御対象に対する指令値を作成する指令値作成工程と、前記指令値を示す制御信号を前記制御対象に出力する制御信号出力工程と、を実行する。
【0020】
前記目的を達成するための他の態様としてのガスタービンの制御方法は、
前記一態様におけるガスタービンの制御用出力作成方法を実行すると共に、前記制御用出力作成方法で求められた前記修正制御用出力を用いて、前記ガスタービンの制御対象に対する指令値を作成する指令値作成工程と、前記指令値を示す制御信号を前記制御対象に出力する制御信号出力工程と、を実行する。
【0021】
前記目的を達成するための一態様としてのガスタービンの最大出力作成プログラムは、
空気を圧縮して圧縮空気を生成できる圧縮機と、前記圧縮空気中で燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成できる燃焼器と、前記燃焼ガスにより駆動可能なタービンと、を備え、前記圧縮機は、自身が吸い込む空気の流量を調節する吸気量調節機を有する、ガスタービンの最大出力作成プログラムである。
この最大出力作成プログラムは、前記圧縮機が吸い込む空気の温度である吸気温度を受け付ける温度受付工程と、前記吸気量調節機における最大開度の変更内容を受け付ける変更受付工程と、前記温度受付工程で受け付けた前記吸気温度に基づき、前記ガスタービンの基本最大出力を求める基本最大出力演算工程と、前記変更受付工程で受け付けた前記最大開度の変更内容と前記温度受付工程で受け付けた前記吸気温度とに基づき、前記基本最大出力を補正するための最大出力補正係数を作成する係数作成工程と、前記最大出力補正係数を用いて前記基本最大出力を補正し、補正された前記基本最大出力を制御用の最大出力として出力する最大出力補正工程と、をコンピュータに実行させる。
【0022】
前記目的を達成するための一態様としてのガスタービンの制御用出力作成プログラムは、
前記一態様のガスタービンの最大出力作成プログラムと、前記ガスタービンの制御用出力を修正する出力修正プログラムと、を有する。前記出力修正プログラムは、前記ガスタービンの制御用出力を補正する際に用いる補正係数を作成する補正係数作成工程と、前記補正係数を用いて前記制御用出力を補正して、補正後の制御用出力を修正制御用出力として出力する出力補正工程と、前記ガスタービンの出力を検知する出力計からの出力を少なくとも受け付ける出力受付工程と、前記出力受付工程が受け付けた出力を記憶する出力記憶工程と、を前記コンピュータに実行させる。前記補正係数作成工程は、第一係数要素を算出する第一係数要素算出工程と、第二係数要素を算出する第二係数要素算出工程と、前記第一係数要素と前記第二係数要素とを用いて前記補正係数を算出する補正係数算出工程と、を含む。前記出力記憶工程では、過去の基準時点で、前記ガスタービンが最高出力を出力できる条件下での出力である基準出力と、前記基準時点よりも現時点に近い直前時間帯で、前記ガスタービンが最高出力を出力できる条件下で前記出力受付工程で受け付けた直前出力と、を記憶する。前記第一係数要素は、前記出力記憶工程で記憶された前記基準出力に対する、前記出力記憶工程で記憶された直前出力の割合である。前記第二係数要素は、前記出力記憶工程で記憶された前記直前出力に対する、前記直前時間帯から現時点までの間の現時間帯に、前記ガスタービンが最高出力を出力できる条件下で前記出力受付工程で受け付けた現出力の割合である。
【0023】
前記目的を達成するための一態様としてのガスタービンの制御プログラムは、
前記一態様におけるガスタービンの最大出力作成プログラムを有すると共に、前記最大出力作成プログラムの実行で求められた前記制御用の最大出力を用いて、前記ガスタービンの制御対象に対する指令値を作成する指令値作成工程と、前記指令値を示す制御信号を前記制御対象に出力する制御信号出力工程と、を前記コンピュータに実行させる。
【0024】
前記目的を達成するための一態様としてのガスタービンの制御プログラムは、
前記一態様におけるガスタービンの制御用出力作成プログラムを有すると共に、前記制御用出力作成プログラムの実行で求められた前記修正制御用出力を用いて、前記ガスタービンの制御対象に対する指令値を作成する指令値作成工程と、前記指令値を示す制御信号を前記制御対象に出力する制御信号出力工程と、を前記コンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0025】
本開示の一態様では、吸気量調節機における最大開度の変更内容を受け付けることができる。さらに、本態様では、この最大開度の設定を変更した場合でも、ガスタービンの制御不具合を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本開示に係る一実施形態におけるガスタービン設備の模式的構成図である。
【
図2】本開示に係る一実施形態における燃焼器の断面図である。
【
図3】本開示に係る一実施形態における燃焼器の要部断面図である。
【
図4】本開示に係る一実施形態における制御装置の機能ブロック図である。
【
図5】本開示に係る一実施形態における燃焼負荷指令発生器の機能ブロック図である。
【
図6】本開示に係る一実施形態における燃料流量指令発生器の機能ブロック図である。
【
図7】本開示に係る一実施形態における負荷率演算器の機能ブロック図である。
【
図8】本開示に係る一実施形態における流量比算出器の機能ブロック図である。
【
図9】本開示に係る一実施形態における弁指令値作成器の機能ブロック図である。
【
図10】本開示に係る一実施形態における最大出力作成器の機能ブロック図である。
【
図11】本開示に係る一実施形態における出力修正器の機能ブロック図である。
【
図12】本開示に係る一実施形態における関数F1を説明するためのグラフである。
【
図13】本開示に係る一実施形態における関数F2を説明するためのグラフである。
【
図14】本開示に係る一実施形態における関数G1を説明するためのグラフである。
【
図15】本開示に係る一実施形態における関数G2を説明するためのグラフである。
【
図16】本開示に係る一実施形態における関数F3を説明するためのグラフである。
【
図17】本開示に係る一実施形態における関数F4を説明するためのグラフである。
【
図18】本開示に係る一実施形態における関数F5及び関数F6を説明するためのグラフである。
【
図19】本開示に係る一実施形態における関数F7を説明するためのグラフである。
【
図20】本開示に係る一実施形態における関数F8を説明するためのグラフである。
【
図21】本開示に係る一実施形態における制御装置のハードウェア構成を示す説明図である。
【
図22】本開示に係る一実施形態における最大出力作成器の動作を示すフローチャートである。
【
図23】本開示に係る一実施形態における出力修正器が実行
する出力受付ルーチンを示すフローチャートである。
【
図24】本開示に係る一実施形態における出力修正器が実行
する補正ルーチンを示すフローチャートである。
【
図25】本開示に係る一実施形態における、各係数要素、各補正係数、各修正制御用出力の時間経過に伴う変化を説明する説明図である。
【
図26】本開示に係る一実施形態における制御装置の動作を示すフローチャートである。
【
図27】本開示に係る一実施形態の第一変形例における最大出力作成器の機能ブロック図である。
【
図28】本開示に係る一実施形態の第一実施形態における最大出力作成器の動作を示すフローチャートである。
【
図29】本開示に係る一実施形態におけるコンバインドサイクルプラントの系統図である。
【
図30】本開示に係る一実施形態の第二変形例における最大出力作成器の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る最大出力作成器、これを含む制御用出力作成器、さらにこれを含む制御装置、この制御装置を備えるガスタービン設備の一実施形態について、図面を用いて説明する。
【0028】
本実施形態のガスタービン設備は、
図1に示すように、ガスタービン10と、ガスタービン10の駆動で発電する発電機29と、ガスタービン10中の制御対象を制御する制御装置100と、を備える。
【0029】
ガスタービン10は、空気Aを圧縮する圧縮機11と、圧縮機11で圧縮された空気中で燃料Fを燃焼させて燃焼ガスを生成する燃焼器31と、高温高圧の燃焼ガスにより駆動するタービン21と、を備える。
【0030】
圧縮機11は、軸線Arを中心として回転する圧縮機ロータ13と、この圧縮機ロータ13を回転可能に覆う圧縮機ケーシング12と、この圧縮機ケーシング12の吸込み口に設けられている吸気量調節機(以下、IGV(inlet guide vane)とする)14と、を有する。IGV14は、複数のガイドベーン15と、複数のガイドベーン15を駆動する駆動器16とを有する。このIGV14は、圧縮機ケーシング12内に吸い込まれる空気の流量を調節する。
【0031】
タービン21は、燃焼器31からの燃焼ガスにより、軸線Arを中心として回転するタービンロータ23と、このタービンロータ23を回転可能に覆うタービンケーシング22と、を有する。タービンロータ23と圧縮機ロータ13とは、同一の軸線Arを中心として回転可能に相互に連結されて、ガスタービンロータ28を成している。このガスタービンロータ28には、発電機29のロータが接続されている。
【0032】
ガスタービン10は、さらに、中間ケーシング24と、排気ケーシング25と、を備える。中間ケーシング24は、軸線Arが延びている方向で、圧縮機ケーシング12とタービンケーシング22との間に配置され、圧縮機ケーシング12とタービンケーシング22とを連結する。この中間ケーシング24内には、圧縮機11から吐出された圧縮空気Acが流入する。排気ケーシング25は、タービンケーシング22を基準にして、中間ケーシング24が配置されている側とは反対側に配置されている。この排気ケーシング25内には、タービン21から排気された燃焼ガスである排気ガスが流れる。
【0033】
燃焼器31は、中間ケーシング24に固定されている。この燃焼器31は、
図2に示すように、中間ケーシング24に固定されている外筒32と、中間ケーシング24内に配置され、燃焼ガスをタービン21の燃焼ガス流路中に送る燃焼筒(又は尾筒)33と、この燃焼筒33内に燃料及び空気を噴射する燃料噴射器41と、を備える。
【0034】
燃料噴射器41は、
図2及び
図3に示すように、内筒42と、内筒42の中心軸線Ak上に配置されているパイロットバーナ43と、このパイロットバーナ43を中心として周方向に等間隔で配置されている複数のメインバーナ53と、外筒32の内周側で内筒42の外周側に配置されているトップハットノズル51と、を有する。なお、以下では、内筒42の中心軸線Akが延びる方向で、燃焼筒33内で燃焼ガスGが流れていく側を下流側とし、その反対側を上流側とする。
【0035】
パイロットバーナ43は、内筒42の中心軸線Ak上に配置されているパイロットノズル44と、このパイロットノズル44の外周を囲む筒状のパイロット空気用筒45と、を有する。パイロット空気用筒45の下流側は、下流側に向かうに連れて次第に拡径されたパイロットコーン46を成している。パイロット空気用筒45の内周側には、圧縮機11からの圧縮空気Acがパイロット空気Apとして流れるパイロット空気流路48を成している。パイロットノズル44から噴射されたパイロット燃料Fpは、このパイロット空気流路48から噴出したパイロット空気Ap中で燃焼(拡散燃焼)して、拡散火炎49を形成する。
【0036】
メインバーナ53は、パイロット空気用筒45の外周を囲む筒状のメイン空気用内筒55と、メイン空気用内筒55の外周を囲む筒状のメイン空気用外筒56と、メイン空気用内筒55の外周側とメイン空気用外筒56の内周側との間の環状の空間を周方向に複数に分割する仕切板57と、複数の仕切板57の相互間に配置されているメインノズル54と、を有する。メイン空気用内筒55とメイン空気用外筒56と複数の仕切板57で画定される複数の空間は、圧縮機11からの圧縮空気Acがメイン空気Amとして流れるメイン空気流路58を成している。このメイン空気流路58を流れるメイン空気Amには、このメイン空気流路58内に配置されているメインノズル54からメイン燃料Fmが噴射される。このため、メイン空気流路58内でメインノズル54の先端(下流端)よりも下流側には、メイン空気Amとメイン燃料Fmとが混ざり合った予混合気体が流れる。この予混合気体は、メイン空気流路58から流出すると燃焼(予混合燃焼)して、予混合火炎59を形成する。前述の拡散火炎49は、この予混合火炎59を保炎する役目を担っている。
【0037】
外筒32の内周側と内筒42の外周側との空間は、圧縮機11からの圧縮空気Acを内筒42内に導く圧縮空気流路52を成している。トップハットノズル51は、この圧縮空気流路52にトップハット燃料Ftを噴射する。このため、トップハット燃料Ftが圧縮空気流路52に噴射されると、メイン空気Am及びパイロット空気Ap中にトップハット燃料Ftが混入することになる。
【0038】
本実施形態のガスタービン設備は、さらに、
図1及び
図2に示すように、パイロットノズル44にパイロット燃料Fpを送るパイロット燃料ライン61と、メインノズル54にメイン燃料Fmを送るメイン燃料ライン62と、トップハットノズル51にトップハット燃料Ftを送るトップハット燃料ライン63と、パイロット燃料Fpの流量を調節するパイロット燃料弁65と、メイン燃料Fmの流量を調節するメイン燃料弁66と、トップハット燃料Ftの流量を調節するトップハット燃料弁67と、を備える。
【0039】
パイロット燃料ライン61、メイン燃料ライン62及びトップハット燃料ライン63は、いずれも燃料ライン60から分岐したラインである。パイロット燃料弁65は、パイロット燃料ライン61に設けられ、メイン燃料弁66は、メイン燃料ライン62に設けられ、トップハット燃料弁67は、トップハット燃料ライン63に設けられている。
【0040】
本実施形態におけるガスタービン10の制御対象は、パイロット燃料弁65、メイン燃料弁66、トップハット燃料弁67、及びIGV14である。
【0041】
本実施形態のガスタービン設備は、さらに、
図1に示すように、ガスタービンロータ28の回転数Nを検知する回転数計71と、発電機29の出力PWを検知する出力計72と、圧縮機11が吸い込む空気Aの温度である吸気温度Tiを検知する吸気温度計73と、圧縮機11が吸い込む空気の圧力である吸気圧(大気圧)Piを検知する吸気圧計74と、タービン21の最終段直後の燃焼ガスの温度であるブレードパス温度Tbを検知するブレードパス温度計75と、タービン21の最終段よりも下流側の排気ケーシング25内の排気ガスの温度Teを検知する排気ガス温度計76と、を備える。
【0042】
制御装置100は、
図4に示すように、ガスタービン10の制御対象に対する指令値を作成する指令値作成部110と、ガスタービン10の制御用出力を作成する制御用出力作成器170と、指令値を示す制御信号を制御対象に出力する制御信号出力部190と、を備える。制御用出力作成器170は、制御用の最大出力を作成する最大出力作成器171と、ガスタービン10の制御用出力を修正する出力修正器180と、を有する。
【0043】
指令値作成部110は、燃焼負荷指令値CLCSOを発生する燃焼負荷指令発生器120と、燃料流量指令値CSOを発生する燃料流量指令発生器130と、ガスタービン10の負荷率(%Load)を求める負荷率演算器140と、燃料の流量比(PLr,THr)を算出する流量比算出器150と、各燃料弁65,66,67に対する弁指令値を作成する弁指令値作成器155と、IGVの開度を示すIGV指令値を作成するIGV指令値作成器160と、を有する。
【0044】
燃焼負荷指令値CLCSOは、タービン21の入口における燃焼ガスの温度(以下、入口温度とする)を無次元化したパラメータで、この入口温度と正の相関性を持つパラメータである。燃焼負荷指令値CLCSOは、入口温度が下限値のときに0%、入口温度が上限値のときに100%となるように設定される。例えば、入口温度の下限値を700℃、入口温度の上限値を1500℃としたとき、燃焼負荷指令値CLCSOは以下の式で表される。
【0045】
CLCSO(%)={(ガスタービン出力の実測値-700℃MW)
/(1500℃MW-700℃MW)}×100
なお、700℃MWは、入口温度が下限値である700℃のときにおけるガスタービン出力であり、1500℃MWは、入口温度が上限値である1500℃のときにおけるガスタービン出力である。ここでのガスタービン出力とは、発電機出力のことである。
【0046】
燃焼負荷指令発生器120は、
図5に示すように、700℃MW演算器121aと、1500℃MW演算器121bと、標準大気圧発生器122と、第一除算器123と、第一乗算器124aと、第二乗算器124bと、第一減算器125aと、第二減算器125bと、第二除算器126と、制限器127と、を有する。
【0047】
700℃MW演算器121aは、吸気温度TiとIGV指令値IGVcとを変動パラメータとし、関数H1を用いて、入口温度が700℃のときのガスタービン出力700℃MWを求める。また、1500℃MW演算器121bは、吸気温度TiとIGV指令値IGVcとを変動パラメータとし、関数H2を用いて、入口温度が1500℃のときのガスタービン出力1500℃MWを求める。ここで、IGV指令値IGVcは、制御装置100がIGV14の駆動器16に与える指令値である。これらMW演算器121a,121bは、吸気温度及びIGV指令値IGVcが基準値である場合における700℃MW、1500℃MWの既知の値を、実際の吸気温度Ti及びIGV指令値IGVcに対応する値に変更して、変更後の値を700℃MW、1500℃MWとして出力する。
【0048】
これらの700℃MW及び1500℃MWは、いずれも、ガスタービン10の制御用出力の一種である。700℃MWは、出力修正器180で、修正700℃MWmに修正される。また、1500℃MWは、出力修正器180で、修正1500℃MWmに修正される。これら修正700℃MWm及び修正1500℃MWmは、いずれも、ガスタービン10の修正制御用出力の一種である。
【0049】
出力修正器180からの修正700℃MWm及び修正1500℃MWmは、吸気圧(大気圧)の実測値Piに基づき補正処理される。具体的に、第一除算器123は、標準大気圧発生器122からの標準吸気圧(標準大気圧)Psに対する、吸気圧計74で検知された吸気圧(大気圧)Piの割合である吸気圧比Prを求める。第一乗算器124aは、出力修正器180からの修正700℃MWmに吸気圧比Prを掛けて、修正700℃MWmを吸気圧比Prに対応する値に補正する。第二乗算器124bは、出力修正器180からの修正1500℃MWmに吸気圧比Prを掛けて、修正1500℃MWmを吸気圧比Prに対応する値に補正する。すなわち、以上では、吸気温度及びIGV指令値IGVcが基準値である場合における700℃MW、1500℃MWの既知の値を、実測吸気温度Ti、IGV指令値IGVc、及び実測吸気圧比Prに対応する値に補正する。
【0050】
第一減算器125aは、出力計72で検知されたガスタービン10の実測出力PWから、吸気圧比Prで補正された修正700℃MWmを減算する。すなわち、第一減算器125aは、上記式の分子の値を求める。第二減算器125bは、吸気圧比Prで補正された修正1500℃MWmから、吸気圧比Prで補正された修正700℃MWmを減算する。
すなわち、第二減算器125bは、上記式の分母の値を求める。
【0051】
第二除算器126は、第一減算器125aで求められた上記式の分子の値を、第二減算器125bで求められた上記式の分母の値で割り、この値を燃焼負荷指令値として出力する。制限器127は、第二除算器126からの燃焼負荷指令値の単位時間当たりの変化量である増減レートが予め定められた値以下になるよう、この燃焼負荷指令値の増減レートを制限する。
【0052】
なお、以上では、タービン21における燃焼ガスの入口温度の下限値を700℃、その上限値を1500℃にしたが、燃焼器31の型式等によっては、タービン21における燃焼ガスの入口温度の下限値及び上限値を以上の例と異なる値にしてもよい。
【0053】
燃焼負荷指令発生器120からは、制限器127で増減レートが制限された燃焼負荷指令値CLCSOが出力される。
【0054】
燃料流量指令値CSOは、燃焼器31に供給する燃料の全流量(以下、全燃料流量とする)を示す値である。したがって、燃料流量指令発生器130は、全燃料流量を求める。この燃料流量指令発生器130は、
図6に示すように、ガバナ制御器131と、負荷制御器132と、ブレードパス温度制御器133と、排ガス温度制御器134と、低値選択器135と、制限器136と、を有する。
【0055】
ガバナ制御器131は、回転数計71からガスタービンロータ28の回転数Nを受け取る。そして、このガバナ制御器131は、このガスタービンロータ28の回転数Nが目標回転数と一致するように全燃料流量を制御するための指令値GVCSOを出力する。具体的に、ガバナ制御器131は、ガスタービンロータ28の実測回転数Nと予め設定されているGV設定値とを比較し、比例制御信号を指令値GVCSOとして出力する。
【0056】
負荷制御器132は、出力計72からのガスタービン10の実測出力PWと、上位制御装置からのガスタービン10に対する要求出力PWrと、出力修正器180からの修正最大出力PWxmと、を受け取る。この負荷制御器132は、低値選択器132aと、比例積分演算器132bと、を有する。低値選択器132aは、要求出力PWrと修正最大出力PWxmとのうち、小さい方を要求出力PWraとして出力する。なお、出力修正器180は、後述するように、修正最大出力PWxmを、順次更新するため、低値選択器132aは、最新の修正最大出力PWxmを用いる。比例積分演算器132bは、実測出力PWと要求出力PWraとを比較し、比例積分演算を行い、この結果を指令値LDCSOとして出力する。
【0057】
ブレードパス温度制御器133は、ブレードパス温度計75からブレードパス温度Tbを受け取る。そして、このブレードパス温度制御器133は、ブレードパス温度Tbが上限値を超えないように全燃料流量を制御するための指令値BPCSOを出力する。具体的には、ブレードパス温度制御器133は、実測ブレードパス温度Tbとその上限値とを比較し、比例積分演算を行い、この結果を指令値BPCSOとして出力する。
【0058】
排ガス温度制御器134は、排気ガス温度計76から排気ガス温度Teを受け取る。そして、この排ガス温度制御器134は、この排ガス温度Teが上限値を超えないように全燃料流量を制御するための指令値EXCSOを出力する。具体的に、排ガス温度制御器134は、実測排ガス温度Teとその上限値とを比較し、比例積分演算を行い、この結果を指令値EXCSOとして出力する。
【0059】
低値選択器135は、各制御器131~134からの指令値のうちで最少の指令値を選択し、この指令値を出力する。制限器136は、低値選択器135からの指令の増減レートを制限し、これを燃料流量指令値(全燃料流量指令値)CSOとして出力する。
【0060】
負荷率演算器140は、前述したように、ガスタービン10の負荷率(%Load)を求める。負荷率(%Load)は、制御用最大出力に対する実測出力PWの割合である。負荷率演算器140は、
図7に示すように、出力計72からの実測出力PWと、吸気温度計73からの吸気温度Tiと、出力修正器180からの修正最大出力PWxmを受け取る。負荷率演算器140は、最大出力発生器141と、切替器142と、除算器143と、を有する。最大出力発生器141は、ガスタービン10の制御用最大出力PWxと吸気温度Tiとの関係を示す関数F4を持っている。この関数F4は、
図17に示すように、吸気温度Tiが高くなるに連れて、次第に制御用最大出力PWxが小さくなる関数である。最大出力発生器141は、この関数F4を用いて、吸気温度Tiに応じた制御用最大出力PWxを求める。切替器142は、最大出力発生器141からの最大出力PWxと出力修正器180か
らの修正最大出力PWxmとのうち、一方のみを最大出力PWxaとして出力する。切替器142は、出力修正器180から修正最大出力PWxmが入力すると、この修正最大出力PWxmを最大出力PWxaとして出力する。なお、出力修正器180は、後述するように、修正最大出力PWxmを、順次更新するため、切替器142は、最新の修正最大出力PWxmを最大出力P
Wxaとして出力する。除算器143は、出力計72からの実測出力PWを切替器142からの最大出力PWxaで割って、負荷率(%Load)を求める。
【0061】
流量比算出器150は、
図8に示すように、パイロット比PLrを求めるパイロット比算出器150pと、トップハット比THrを求めるトップハット比算出器150tと、を有する。パイロット比PLrは、全燃料流量に対するパイロット燃料流量Fpfの比である。トップハット比THrは、全燃料流量に対するトップハット燃料流量Ftfの比である。
【0062】
パイロット比算出器150pは、PLor演算器151pと、補正値演算器152pと、補正器153pと、を有する。
【0063】
PLor演算器151pは、タービン21における燃焼ガスの入口温度と正の相関性を持つ燃焼負荷指令値CLCSOとパイロット比PLorとの関係を規定する関数F1を持っている。関数F1は、
図12に示すように、燃焼負荷指令値CLCSOの増加に伴って、つまり燃焼ガスの入口温度の上昇に伴って、次第にパイロット比PLorが小さくなる関数である。PLor演算器151pは、燃焼負荷指令発生器120からの燃焼負荷指令値CLCSOを受け付け、関数F1を用いて、この燃焼負荷指令値CLCSOに対応したパイロット比PLorを求める。なお、ここでは、燃焼負荷指令値CLCSOとパイロット比PLorとの関係を関数F1で規定しているが、この関係をマップで規定してもよい。
【0064】
補正値演算器152pは、負荷率%Loadと補正値Cpとの関係を規定する関数G1(
図14参照)を持っている。補正値演算器152pは、負荷率演算器140から負荷率%Loadを受け付け、関数G1を用いて、現在の負荷率%Loadに応じた補正値Cpを求める。なお、ここでは、負荷率%Loadと補正値Cpとの関係を関数G1で規定しているが、この関係をマップで規定してもよい。
【0065】
関数G1は、以下のように定められる。
まず、燃焼負荷指令値CLCSOを一定にして、負荷率%Loadを変化させた場合に、燃焼状態が不安定になる領域(パイロット比PLorと負荷率%Loadとで定まる領域)を試験等で予め定める。次に、燃焼負荷指令値CLCSOが一定のときに、燃焼状態が不安定になる領域を避け得るパイロット比PLorと負荷率%Loadとの関係を定める。関数G1は、この関係を示す。
【0066】
補正器153pは、PLor演算器151pからのパイロット比PLorに、補正値演算器152pからの補正値Cpを加えて、これをパイロット比PLrとして出力する。よって、この補正器153pは、加算器である。
【0067】
トップハット比算出器150tは、THor演算器151tと、補正値演算器152tと、補正器153tと、を有する。
【0068】
THor演算器151tは、タービン21における燃焼ガスの入口温度と正の相関性を持つ燃焼負荷指令値CLCSOとトップハット比THorとの関係を規定する関数F2を持っている。関数F2は、
図13に示すように、燃焼負荷指令値CLCSOの増加に伴って、つまり燃焼ガスの入口温度の上昇に伴って、次第にトップハット比THorが小さくなる関数である。THor演算器151tは、燃焼負荷指令発生器120からの燃焼負荷指令値CLCSOを受け付け、関数F2を用いて、この燃焼負荷指令値CLCSOに対応したトップハット比THorを求める。なお、ここでは、燃焼負荷指令値CLCSOとトップハット比THorとの関係を関数F2で規定しているが、この関係をマップで規定してもよい。
【0069】
補正値演算器152tは、負荷率%Loadと補正値Ctとの関係を規定する関数G2(
図15参照)を持っている。補正値演算器152tは、負荷率演算器140から負荷率%Loadを受け付け、関数G2を用いて、現在の負荷率%Loadに応じた補正値Ctを求める。なお、ここでは、負荷率%Loadと補正値Ctとの関係を関数G2で規定しているが、この関係をマップで規定してもよい。
【0070】
関数G2も、関数G1と同様、以下のように定められる。
まず、燃焼負荷指令値CLCSOを一定にして、負荷率%Loadを変化させた場合に、燃焼状態が不安定になる領域(トップハット比THorと負荷率%Loadとで定まる領域)を試験等で予め定める。次に、燃焼負荷指令値CLCSOが一定のときに、燃焼状態が不安定になる領域を避け得るトップハット比THorと負荷率%Loadとの関係を定める。関数G2は、この関係を示す。
【0071】
補正器153tは、THor演算器151tからのトップハット比THorに、補正値演算器152tからの補正値Ctを加えて、これをトップハット比THrとして出力する。よって、この補正器153tは、加算器である。
【0072】
弁指令値作成器155は、
図9に示すように、第一乗算器156pと、第二乗算器156tと、第一減算器156maと、第二減算器156mbと、PL弁指令値演算器157pと、M弁指令値演算器157mと、TH弁指令値演算器157tと、を有する。
【0073】
第一乗算器156pは、全燃料流量を示す燃料流量指令値CSOにパイロット比PLrを掛けて、パイロット燃料流量Fpfを求める。PL弁指令値演算器157pは、パイロットノズル44から噴射されるパイロット燃料Fpの流量がパイロット燃料流量Fpfになるよう、パイロット燃料弁65に対する指令値を求める。
【0074】
第二乗算器156tは、全燃料流量を示す燃料流量指令値CSOにトップハット比THrを掛けて、トップハット燃料流量Ftfを求める。TH弁指令値演算器157tは、トップハットノズル51から噴射されるトップハット燃料Ftの流量がトップハット燃料流量Ftfになるよう、トップハット燃料弁67に対する指令値を求める。
【0075】
第一減算器156maは、全燃料流量を示す燃料流量指令値CSOからトップハット燃料流量Ftfを減算する。第二減算器156mbは、第一減算器156maの減算結果からさらにパイロット燃料流量Fpfを減算し、この減算結果をメイン燃料流量Fmfとして、M弁指令値演算器157mに出力する。M弁指令値演算器157mは、複数のメインノズル54から噴出されるメイン燃料Fmの総流量がメイン燃料流量Fmfになるよう、メイン燃料弁66に対する指令値を求める。
【0076】
制御信号出力部190は、PL弁指令値演算器157pが求めた指令値を含む制御信号をパイロット燃料弁65に出力する。制御信号出力部190は、TH弁指令値演算器157tが求めた指令値を含む制御信号をトップハット燃料弁67に出力する。制御信号出力部190は、M弁指令値演算器157mが求めた指令値を含む制御信号をメイン燃料弁66に出力する。
【0077】
制御用出力作成器170の最大出力作成器171は、
図10に示すように、温度受付部172と、変更受付部173と、基本最大出力演算部174と、係数作成部176と、最大出力補正部175と、を有する。
【0078】
温度受付部172は、吸気温度計73から吸気温度Tiを受け付ける。変更受付部173は、例えば、キーボード等の入力装置104から、IGV14における制御用の最大開度の変更内容を受け付ける。この変更内容は、IGV14における変更後最大開度と吸気温度Tiとの関係である変更後関係である。
【0079】
基本最大出力演算部174は、吸気温度Tiとガスタービンの制御用最大出力Pwxとの関係を規定する関数F4を持っている。この関数F4は、
図17を用いて前述したように、吸気温度Tiが高くなるに連れて、次第に制御用最大出力PWxが小さくなる関数である。基本最大出力演算部174は、この関数F4を用いて、吸気温度Tiに応じた基本最大出力PWxbを求める。
【0080】
係数作成部176は、前述の変更後関係と吸気温度Tiとに基づき、基本最大出力PWxbを補正するための最大出力補正係数Kxを作成する。この係数作成部176は、基本最大開度演算部176bと、変更後最大開度演算部176cと、係数演算部177と、を有する。
【0081】
基本最大開度演算部176bは、吸気温度TiとIGV14における制御用の基本最大開度θbとの関係を規定する関数F5(
図18参照)を持っている。基本最大開度演算部176bは、この関数F5を用いて、吸気温度Tiに応じた制御用の基本最大開度θbを求める。
【0082】
変更後最大開度演算部176cは、吸気温度TiとIGV14における制御用の変更後最大開度θcとの関係を規定する関数F6(
図18参照)を持っている。この関数F6は、前述の変更後関係を規定する関数である。よって、この関数F6は、変更受付部173が受け付けた関数である。変更後最大開度演算部176cは、この関数F6を用いて、吸気温度Tiに応じた制御用の変更後最大開度θcを求める。なお、
図18に示す例では、前述の関数F5は、吸気温度Tiの変化に対して、基本最大開度θbが変化しない関数である。一方、関数F6は、吸気温度Tiの変化に対して、基本最大開度θbが変化する関数である。
【0083】
係数演算部177は、基本最大開度θbと変更後最大開度θcとを用いて、基本最大出力PWxbを補正するための補正係数Kxを求める。この係数演算部177は、偏差算出部177sと、係数算出部177tと、を有する。偏差算出部177sは、基本最大開度θbと変更後最大開度θcとの偏差を算出する。よって、この偏差算出部177sは減算器である。係数算出部177tは、この偏差と補正係数Kxとの関係を規定する関数F7を持っている。この関数F7は、
図19に示すように、例えば、偏差が大きくなるに連れて、次第に補正係数Kxが大きくなる関数である。さらに、偏差が0のときには補正係数Kxが1になり、偏差が負の値のときには補正係数Kxが1未満になり、偏差が正の値のときには補正係数Kxが1より大きくなる、関数である。係数算出部177tは、この関数F7を用いて、偏差算出部177sが求めた偏差に応じた補正係数Kxを算出する。
【0084】
最大出力補正部175は、補正係数Kxを用いて基本最大出力PWxbを補正し、補正された基本最大出力PWxbを制御用の最大出力PWxとして出力する。具体的に、最大出力補正部175は、基本最大出力PWxbに補正係数Kxを掛けて、基本最大出力PWxbを補正する。よって、この最大出力補正部175は、乗算器である。
【0085】
なお、以上の関数F4、関数F5、関数F6、関数F7で示される各関係は、マップで規定されてもよい。
【0086】
以上で説明した最大出力作成器171が作成した最大出力PWxは、前述したように、ガスタービン10の制御用出力の一種である。最大出力PWxは、出力修正器180で、修正最大出力PWxmに修正される。修正最大出力PWxmは、ガスタービン10の修正制御用出力の一種である。
【0087】
制御用出力作成器170の出力修正器180は、
図4に示すように、出力計72からのガスタービン10の実測出力PWを修正して、これを修正出力PWmとして出力する。なお、実測出力PWは、ガスタービン10の制御用出力の一種である。また、修正出力PWmは、ガスタービン10の修正制御用出力の一種である。
【0088】
IGV指令値作成器160には、吸気温度計73からの吸気温度Ti及び出力修正器180からの修正出力PWmが入力する。IGV指令値作成器160は、ガスタービン10の出力とIGV開度との関係を規定する関数F3を持っている。この関数F3は、
図16に示すように、ガスタービン10の出力の増加に伴って、次第にIGV開度が大きくなる関数である。IGV指令値作成器160は、まず、修正出力PWmを吸気温度Tiで補正する。IGV指令値作成器160は、次に、関数F3を用いて、吸気温度Tiで補正された修正出力PWmに対するIGV開度を求める。なお、ここでは、ガスタービン10の出力とIGV開度との関係を関数F3で規定しているが、この関係をマップで規定してもよい。IGV指令値作成器160は、このIGV開度を示すIGV指令値IGVcを燃焼負荷指令発生器120及び制御信号出力部190に出力する。燃焼負荷指令発生器120は、前述したように、このIGV指令値IGVcを用いて、燃焼負荷指令値CLCSOを作成する。また、制御信号出力部190は、IGV指令値作成器160が出力したIGV指令値IGVcを含む制御信号をIGV14に出力する。
【0089】
関数F3は、基本的に、この制御装置100の初期設定時に、この制御装置100に組み込まれる。この初期設定時に組み込まれる関数F3は、ガスタービン10の設計時に定めた関数である。ガスタービン10の建設後には、このガスタービン10の試運転が行われる。初期設定時に組み込まれる関数F3は、この試運転中の結果に応じて、例えば、
図16の破線で示すように変更されることが多い。
【0090】
出力修正器180は、
図11に示すように、制御用出力を修正して、これを修正制御用出力として出力する。本実施形態では、前述したように、制御用出力として、ガスタービン出力700℃MW、ガスタービン出力1500℃MW、実測出力PW、及び最大出力PWxがある。このため、本実施形態では、修正制御用出力として、修正700℃MWm、修正1500℃MWm、修正出力PWm、修正最大出力PWxmがある。
【0091】
出力修正器180は、出力受付部181と、出力記憶部182と、補正係数作成部183と、出力補正部188と、を有する。
【0092】
出力受付部181は、基準出力PWb、直前出力PW1、及び現出力PW2を受け付ける。基準出力PWbは、過去の基準時点で、ガスタービン10が最高出力を出力できる条件下での出力である。この基準時点は、例えば、ガスタービン10の設計時点である。基準出力PWbがガスタービン10の設計時点である場合、出力受付部181は、例えば、キーボード等の入力装置104から基準出力PWbを受け付ける。直前出力PW1は、基準時点(設計時点)よりも現時点に近い直前時間帯に、ガスタービン10が最高出力を出力できる条件下で、出力計72から出力受付部181が受け付けた実測出力である。直前時間帯は、ガスタービン10を試運転している試運転中の時間帯、及び試運転後に本運転している本運転中の時間帯を含む。このため、直前時間帯は、ガスタービン10を建設した後に行う試運転中であって、ガスタービン10を点検又は修理した後の試運転を除く建設試運転中の時間帯を含む。よって、直前出力は、建設試運転中の時間帯に、ガスタービン10が最高出力を出力できる条件下で、出力計72から出力受付部181が受け付けた出力である建設出力PWcを含む。現出力PW2は、直前時間帯から現時点までの間の現時間帯に、ガスタービン10が最高出力を出力できる条件下で、出力計72から出力受付部181が受け付けた実測出力である。現時間帯も、ガスタービン10を試運転している試運転中の時間帯、及び試運転後に本運転している本運転中の時間帯を含む。
【0093】
出力受付部181は、以上で説明した各時間帯で、出力計72から実測出力を受け付けただけでは、この実測出力が、直前出力PW1、現出力PW2、建設出力PWcであるかを認識できない。このため、出力受付部181は、キーボード等の入力装置104から、出力計72から実測出力と共に、この実測出力がいかなる時間帯の実測出力であるかを受け付ける。
【0094】
出力記憶部182は、出力受付部181が受け付けた基準出力PWb、直前出力PW1、現出力PW2、及び建設出力PWcを記憶する。
【0095】
補正係数作成部183は、第一係数要素算出部184aと、第二係数要素算出部184bと、第三係数要素算出部184cと、係数要素記憶部185と、リセット部186と、補正係数算出部187と、を有する。
【0096】
第一係数要素算出部184aは、第一係数要素e1を求める。この第一係数要素e1は、出力記憶部182に記憶されている直前出力PW1を、出力記憶部182に記憶されている基準出力PWbで割った値、つまり、基準出力PWbに対する直前出力PW1の割合(PW1/PWb)である。よって、この第一係数要素e1は、基準時点から直前時間帯までの間の出力の劣化度を表す。
【0097】
第一係数要素算出部184aは、キーボード等の入力装置104等からリセット指示を受け付けると、出力記憶部182に記憶されている現出力PW2を、出力記憶部182に記憶されている基準出力PWbで割った値、つまり、基準出力PWbに対する現出力PW2の割合(PW2/PWb)を第一係数要素e1とする。リセット指示は、ガスタービン10が完全に停止している状態から試運転が開始される直前までに、第一係数要素算出部184aに送られる。
【0098】
第二係数要素算出部184bは、第二係数要素e2を求める。この第二係数要素e2は、出力記憶部182に記憶されている現出力PW2を、出力記憶部182に記憶されている直前出力PW1で割った値、つまり、直前出力PW1に対する現出力PW2の割合(PW2/PW1)である。よって、この第二係数要素e2は、直前時間帯から現時間帯までの間の出力の劣化度を表す。
【0099】
第三係数要素算出部184cは、第三係数要素e3を求める。この第三係数要素e3は、出力記憶部182に記憶されている建設出力PWcを、出力記憶部182に記憶されている基準出力PWbで割った値、つまり、基準出力PWbに対する建設出力PWcの割合(PWc/PWb)である。よって、この第三係数要素e3は、基準時点から建設試運転中の時間帯までの間の出力の劣化度を表す。
【0100】
係数要素記憶部185は、第一係数要素e1を記憶する第一係数要素記憶部185aと、第二係数要素e2を記憶する第二係数要素記憶部185bと、第三係数要素e3を記憶する第三係数要素記憶部185cと、を有する。
【0101】
リセット部186には、ガスタービン10が完全に停止している状態から試運転が開始される直前までの間に、キーボード等の入力装置104から、前述のリセット指示が入力する。リセット部186は、このリセット指示を受けて、第二係数要素記憶部185bに記憶されている第二係数要素e2を、補正係数算出部187による補正係数の算出結果に影響を与えない値、ここでは「1」にリセットする。
【0102】
補正係数算出部187は、第一補正係数K1を算出する第一補正係数算出部187aと、第二補正係数K2を算出する第二補正係数算出部187bと、を有する。第一補正係数K1は、制御用出力の一種である最大出力PWx、さらに、制御用出力の一種である1500℃MW及び700℃MWを補正するための補正係数である。第二補正係数K2は、制御用出力の一種である実測出力PWを補正するための補正係数である。
【0103】
第一補正係数算出部187aは、乗算器187tを有する。乗算器187tは、第一係数要素記憶部185aに記憶されている第一係数要素e1に第二係数要素記憶部185bに記憶されている第二係数要素e2を掛けて、この乗算結果の値を第一補正係数K1として出力する。
【0104】
第二補正係数算出部187bは、除算器187sと、乗算器187tと、補正係数調整器187uと、を有する。除算器187sは、第一係数要素記憶部185aに記憶されている第一係数要素e1を第三係数要素記憶部185cに記憶されている第三係数要素e3で割る。乗算器187tは、除算器187sによる除算結果の値に、第二係数要素記憶部185bに記憶されている第二係数要素e2を掛ける。この乗算器187tによる乗算結果の値が調整前の第二補正係数K2oとなる。補正係数調整器187uは、調整前の第二補正係数K2oと調整後の第二補正係数K2との関係を規定する関数F8を持っている。この関数F8は、
図20に示すように、調整前の第二補正係数K2oの増加に伴って、調整後の第二補正係数K2が大きくなる関数である。補正係数調整器187uは、この関数F8を用いて、調整前の第二補正係数K2oに対応した調整後の第二補正係数K2を求める。なお、ここでは、調整前の第二補正係数K2oと調整後の第二補正係数K2との関係を関数F5で規定しているが、この関係をマップで規定してもよい。
【0105】
第二補正係数算出部187bは、調整前の第二補正係数K2oを以下の式で示される演算で求める。
K2o=e1÷e3×e2
=(PW1/PWb)÷(PWc/PWb)×(PW2/PW1)
【0106】
以上の式での演算では、第一係数要素e1の演算に用いられる基準出力PWbと、第三係数要素e3の演算に用いられる基準出力PWbとが相殺される。このため、第二補正係数K2o,K2は、設計時点の基準出力PWbの要素がなくなり、建設試運転中の実測出力である建設出力PWcを基準にして、現時間帯までの出力の劣化度を示すことになる。
【0107】
前述したように、第二補正係数K2は、実測出力PWを補正して、修正出力PWmを得るために用いられる。また、IGV指令値作成器160は、関数F3を用いて、この修正出力PWmに応じたIGV開度を求める。この関数F3は、
図16を用いて説明したように、建設試運転中に変更されることが多い。このため、IGV開度を得るために用いる第二補正係数K2を、建設試運転中の実測出力である建設出力PWcを基準にして、現時間帯までの出力の劣化度を示す値にしている。
【0108】
制御用出力は、出力補正部188のみならず、補正係数算出部187にも入力する。補正係数算出部187は、この制御用出力に応じて、第一補正係数K1と第二補正係数K2とのうち、この制御用出力に応じた補正係数を出力補正部188に出力する。
【0109】
出力補正部188は、第一補正係数K1を用いて最大出力PWxを補正する第一出力補正部188aと、第一補正係数K1を用いて1500℃MW及び700℃MWを補正する第二出力補正部188bと、第二補正係数K2を用いて実測出力PWを補正する第三出力補正部188cと、を有する。
【0110】
第一出力補正部188aは、乗算器188tと、加算器188uと、低値選択器188vと、発電機29に電気的に接続されている系統における周波数の振れ幅分の出力である振れ幅分出力FFが記憶されている第一記憶部188xと、発電機29の許容最大出力PWpmaxが記憶されている第二記憶部188yと、を有する。乗算器188tは、制御用出力の一種である最大出力PWxに第一補正係数K1を掛け合わせる。加算器188uは、乗算器188tによる乗算結果の値に、第一記憶部188xに記憶されている振れ幅分出力FFを加える。低値選択器188vは、加算器188uによる加算結果の値と、第二記憶部188yに記憶されている許容最大出力PWpmaxとのうち、小さい方を修正最大出力PWxmとして出力する。なお、許容最大出力PWpmaxは、
図17に示すように、吸気温度Tiが変化しても、変化しない値である。また、この許容最大出力PWpmaxは、吸気温度Tiが低い温度域では、この低い温度域での制御用の最大出力PWxより小さい値であるが、他の温度域では、この他の温度域での制御用の最大出力PWxより大きい値である。
【0111】
第二出力補正部188bは、乗算器188tを有する。この乗算器188tは、制御用出力の一種である1500℃MW、700℃MWのそれぞれに、第一補正係数K1を掛けて、1500℃MW及び700℃MWを補正して、この補正結果を修正1500℃MWm、修正700℃MWmとして出力する。
【0112】
第三出力補正部188cは、除算器188sを有する。除算器188sは、制御用出力の一種である実測出力PWを第二補正係数K2で割って、実測出力PWを補正して、この補正結果を修正出力PWmとして出力する。
【0113】
以上で説明した制御装置100は、コンピュータである。この制御装置100は、ハードウェア的には、
図21に示すように、各種演算を行うCPU(Central Processing Unit)101と、CPU101のワークエリアになるメモリ等の主記憶装置102と、ハードディスクドライブ装置等の補助記憶装置103と、キーボードやマウス等の入力装置104と、表示装置105と、入力装置104及び表示装置105の入出力インタフェース106と、装置インタフェース107と、ネットワークNを介して外部と通信するための通信インタフェース108と、ディスク型記憶媒体Dに対してデータの記憶処理や再生処理を行う記憶・再生装置109と、を備えている。
【0114】
装置インタフェース107には、先に説明した各検知器71~76と、各燃料弁65~67と、IGV14とが信号線等を介して接続されている。
【0115】
補助記憶装置103には、制御プログラム103p等が予め格納されている。この制御プログラム103pには、制御用出力作成プログラム103paが組み込まれている。制御用出力作成プログラム103paは、最大出力作成プログラム103paaと出力修正プログラム103pabとを有する。制御プログラム103pは、例えば、記憶・再生装置109を介して、ディスク型記憶媒体Dから補助記憶装置103に取り込まれる。なお、制御プログラム103pは、通信インタフェース108を介して外部の装置から補助記憶装置103に取り込まれてもよい。
【0116】
図4~
図11を用いて説明した制御装置100の各機能要素は、いずれも、CPU101が補助記憶装置103に格納されている制御プログラム103pを実行することで機能する。特に、制御装置100の機能要素のうち、制御用出力作成器170は、CPU101が補助記憶装置103に格納されている制御プログラム103p中の制御用出力作成プログラム103paを実行することで機能する。また、制御装置100の機能要素のうち、最大出力作成器171は、CPU101が制御用出力作成プログラム103pa中の最大出力作成プログラム103paaを実行することで機能する。また、制御装置100の機能要素のうち、出力修正器180は、CPU101が制御用出力作成プログラム103pa中の出力修正プログラム103pabを実行することで機能する。
【0117】
次に、以上で説明した最大出力作成器171の動作順序について、
図22に示すフローチャートに従って説明する。
【0118】
最大出力作成器171の温度受付部172は、吸気温度計73から吸気温度Tiを受け付ける(温度受付工程S1)。また、最大出力作成器171の変更受付部173は、キーボード等の入力装置104から、IGV14における制御用の最大開度の変更内容である関数F6を受け付ける(変更受付工程S2)。
【0119】
最大出力作成器171の基本最大出力演算部174は、
図18に示す関数F5を用いて、吸気温度Tiに応じた制御用の基本最大開度θbを求める(基本最大出力演算工程S3)。
【0120】
最大出力作成器171の係数作成部176は、吸気温度Tiを用いて、基本最大出力PWxbを補正するための最大出力補正係数Kxを作成する(係数作成工程S4)。この係数作成工程S4では、基本最大開度演算工程S5と、変更後最大開度演算工程S6と、係数演算工程S7とが実行される。
【0121】
基本最大開度演算工程S5では、基本最大開度演算部176bが、関数F5(
図18参照)を用いて、吸気温度Tiに応じた制御用の基本最大開度θbを求める。変更後最大開度演算工程S6では、変更後最大開度演算部176cが、変更内容を示す関数F6(
図18参照)を用いて、吸気温度Tiに応じた制御用の変更後最大開度θcを求める。
【0122】
係数演算工程S7では、基本最大出力PWxbを補正するための補正係数Kxが求められる。この係数演算工程S7では、偏差算出工程S7sと、係数算出工程S7tとが実行される。偏差算出工程S7sでは、偏差算出部177sが、基本最大開度θbと変更後最大開度θcとの偏差を算出する。係数算出工程S7tでは、係数算出部177tが、
図19に示す関数F7を用いて、偏差算出部177sが求めた偏差に応じた補正係数Kxを算出する。
【0123】
最大出力作成器171の最大出力補正部175は、補正係数Kxを用いて基本最大出力PWxbを補正し、補正された基本最大出力PWxbを制御用の最大出力PWxとして出力する(最大出力補正工程S8)。
【0124】
以上で、最大出力作成器171による最大出力PWxの作成が完了する。なお、以上の動作は、変更受付部173が最大開度の変更内容を受け付ける毎に実行される。
【0125】
次に、以上で説明した出力修正器180の動作順序について、
図23及び
図24に示すフローチャートに従って説明する。
【0126】
図23に示すフローチャートは、出力修正器180が実行する出力受付ルーチンのフローチャートである。出力受付ルーチンでは、出力受付部181が、キーボード等の入力装置104や出力計72から出力を受け付ける(出力受付工程S11)。出力記憶部182は、この出力を記憶する(出力記憶工程S12)。出力受付ルーチンでは、この出力受付工程S11及び出力記憶工程S12が繰り返し実行されることで、出力記憶部182に、基準出力PWb、建設出力PWc、直前出力PW1(建設出力PWcを除く)、現出力PW2が、記憶される。基準出力PWb及び建設出力PWcは、一旦、出力記憶部182に記憶されると、以降、更新されない。一方、直前出力PW1(建設出力PWcを除く)及び現出力PW2は、一旦、出力記憶部182に記憶されても、順次、更新される。
【0127】
図24に示すフローチャートは、出力修正器180が実行する補正ルーチンのフローチャートである。この補正ルーチンでは、補正係数作成工程S20と、出力補正工程S25とが繰り返し実行される。
【0128】
補正係数作成工程S20は、第一係数要素算出工程S21aと、第二係数要素算出工程S21bと、第三係数要素算出工程S21cと、係数要素記憶工程S22と、リセット工程S23と、補正係数算出工程S24と、を含む。
【0129】
第一係数要素算出工程S21aでは、第一係数要素算出部184aが、出力記憶部182に記憶されている直前出力PW1を、出力記憶部182に記憶されている基準出力PWbで割って、第一係数要素e1(=PW1/PWb)を求める。但し、第一係数要素算出部184aは、キーボード等の入力装置104等からリセット指示を受け付けると、出力記憶部182に記憶されている現出力PW2を、出力記憶部182に記憶されている基準出力PWbで割って、第一係数要素e1(=PW2/PWb)を求める。
【0130】
第二係数要素算出工程S21bでは、第二係数要素算出部184bが、出力記憶部182に記憶されている現出力PW2を、出力記憶部182に記憶されている直前出力PW1で割って、第二係数要素e2(=PW2/PW1)を求める。
【0131】
第三係数要素算出工程S21cでは、第三係数要素算出部184cが、出力記憶部182に記憶されている建設出力PWcを、出力記憶部182に記憶されている基準出力PWbで割って、第三係数要素e3(=PWc/PWb)を求める。
【0132】
なお、各係数要素算出工程S21a,S21b,S21cは、基本的に、互いに同じタイミングで実行されない。各係数要素算出工程S21a,S21b、S21cは、各係数要素算出工程S21a,S21b,S21cで用いる出力が出力記憶部182に記憶される毎に実行される。
【0133】
係数要素記憶工程S22は、第一係数要素記憶工程S22aと、第二係数要素記憶工程S22bと、第三係数要素記憶工程S22cと、を含む。
【0134】
第一係数要素記憶工程S22aでは、第一係数要素記憶部185aが第一係数要素算出工程S21aで算出された第一係数要素e1を記憶する。
【0135】
第二係数要素記憶工程S22bでは、第二係数要素記憶部185bが第二係数要素算出工程S21bで算出された第二係数要素e2を記憶する。
【0136】
第三係数要素記憶工程S22cでは、第三係数要素記憶部185cが第三係数要素算出工程S21cで算出された第三係数要素e3を記憶する。
【0137】
リセット工程S23は、受付判断工程S23aと、リセット実行工程S23bと、を含む。受付判断工程S23aでは、リセット部186がキーボード等の入力装置104からリセット指示を受け付けたか否かを判断する。リセット部186がリセット指示を受け付けたと判断すると、リセット実行工程S23bが実行される。リセット実行工程S23bでは、リセット部186が第二係数要素記憶部185bに記憶されている第二係数要素e2を、補正係数算出部187による補正係数の算出結果に影響を与えない値、ここでは「1」にリセットする。なお、第一係数要素算出部184aは、このリセット部186がリセット指示を受け付けたタイミングで、このリセット指示を受け付ける。この結果、第一係数要素算出部184aは、前述したように、現出力PW2を基準出力PWbで割った値を第一係数要素e1(=PW2/PWb)とする。この第一係数要素e1は、第一係数要素記憶部185aに記憶される。
【0138】
補正係数算出工程S24は、第一補正係数算出工程S24aと、第二補正係数算出工程S24bと、を含む。
【0139】
第一補正係数算出工程S24aでは、第一補正係数算出部187aが第一補正係数K1を算出する。第二補正係数算出工程S24bでは、第二補正係数算出部187bが第二補正係数K2を算出する。
【0140】
出力補正工程S25では、出力補正部188が、補正係数を用いて制御用出力を補正し、この補正結果を修正制御用出力として出力する。この際、出力補正部188は、補正係数算出部187が求めた複数の補正係数のうち、補正対象の制御用出力に応じた補正係数で、この制御用出力を補正する。具体的に、出力補正工程S25では、出力補正部188の第一出力補正部188aが、前述したように、第一補正係数K1と、第一記憶部188xに記憶されている振れ幅分出力FFと、第二記憶部188yに記憶されている許容最大出力PWpmaxとを用いて、最大出力PWxを補正し、この補正結果を修正最大出力PWxmとして出力する。また、出力補正工程S25では、出力補正部188の第二出力補正部188bが、前述したように、第一補正係数K1を用いて、1500℃MW、700℃MWのそれぞれを補正して、この補正結果を修正1500℃MWm、修正700℃MWmとして出力する。また、出力補正工程S25では、出力補正部188の第三出力補正部188cが、第二補正係数K2を用いて、実測出力PWを補正して、この補正結果を修正出力PWmとして出力する。
【0141】
次に、
図25を参照して、各係数要素、各補正係数、各修正制御用出力の時間経過に伴う変化について説明する。
【0142】
ここで、仮に、
基準時点(計画時点)での基準出力PWbを100MWとする。
建設試運転中に、ガスタービン10が最高出力を出力できる条件下で出力計72から出力受付部181が受け付けた実測出力である建設出力PWcを90MWとする。
その後の第一本運転中に、ガスタービン10が最高出力を出力できる条件下で出力計72から出力受付部181が受け付けた実測出力を80MWとする。
その後の第二本運転中に、ガスタービン10が最高出力を出力できる条件下で出力計72から出力受付部181が受け付けた実測出力を70MWとする。
この第二本運転後に、ガスタービン10は、定期点検されたとする。
この定期点検後の試運転中に、ガスタービン10が最高出力を出力できる条件下で出力計72から出力受付部181が受け付けた実測出力を80MWとする。よって、ここでは、定期点検の結果、実測出力(80MW)が定期点検前の第二本運転中の実測出力(70MW)よりも大きくなっている。
その後の第一本運転中に、ガスタービン10が最高出力を出力できる条件下で出力計72から出力受付部181が受け付けた実測出力を70MWとする。
その後の第二本運転中に、ガスタービン10が最高出力を出力できる条件下で出力計72から出力受付部181が受け付けた実測出力を65MWとする。
【0143】
建設試運転の開始前、補正係数作成部183はリセット指示を受け付ける。このため、建設試運転中、第一係数要素算出部184aは、現出力PW2を基準出力PWbで割った値を第一係数要素e1(=PW2/PWb)とする。このため、第一係数要素e1は、9/10(=90/100)になり、この第一係数要素e1が第一係数要素記憶部185aに記憶される。また、建設試運転中、第二係数要素記憶部185bには、リセット部186の動作により、第二係数要素e2として「1」が記憶される。また、建設試運転中、第三係数要素算出部184cは、建設出力PWcを基準出力PWbで割った値を第三係数要素e3(=PWc/PWb)とする。このため、第三係数要素e3は、9/10(=90/100)になり、この第三係数要素e3が第三係数要素記憶部185cに記憶される。第三係数要素記憶部185cに記憶された第三係数要素e3は、以降、更新されない。
【0144】
以上のように、建設試運転中の各係数要素が定まった結果、建設試運転中の各補正係数が求められるようになる。建設試運転中、例えば、第一補正係数K1(e1×e2)は、0.9(=9/10×1)になる。また、第二補正係数K2(e1×e2÷e3)は、1.0(=9/10×1÷9/10)になる。なお、この第二補正係数K2及び以下で説明する第二補正係数K2の値は、簡便化のため、補正係数調整器187uによる係数の調整が行われていない値にする。
【0145】
このため、建設試運転中、制御用出力の一種である1500℃MWが100MWの場合、第一補正係数K1を用いて求められる修正1500℃MWmは、90MW(=100×0.9)になる。また、制御用出力の一種である実測出力PWが90MWの場合、第二補正係数K2を用いて求められる修正出力PWmは、90MW(90÷1.0)になる。
【0146】
建設試運転後の第一本運転中、第一係数要素算出部184aは、建設試運転中と異なり、直前出力PW1を基準出力PWbで割った値を第一係数要素e1(=PW2/PWb)とする。このため、第一係数要素e1は、9/10(=90/100)になり、この第一係数要素e1が第一係数要素記憶部185aに記憶される。この第一本運転中、第二係数要素算出部184bは、現出力PW2を直前出力PW1で割った値を第二係数要素e2(=PW2/PW1)とする。このため、第二係数要素e2は、8/9(=80/90)になり、この第二係数要素e2が第二係数要素記憶部185bに記憶される。なお、第三係数要素記憶部185cに記憶された第三係数要素e3は、前述したように、建設試運転から第一本運転になっても変わらない。
【0147】
以上のように、第一本運転中の各係数要素が定まった結果、第一本運転中の各補正係数が求められるようになる。第一本運転中、第一補正係数K1(e1×e2)は、0.8(=9/10×8/9)になる。また、第二補正係数K2(e1×e2÷e3)は、0.89(=9/10×8/9÷9/10)になる。
【0148】
このため、第一本運転中、制御用出力の一種である1500℃MWが100MWの場合、第一補正係数K1を用いて求められる修正1500℃MWmは、80MW(=100×0.8)になる。また、制御用出力の一種である実測出力PWが80MWの場合、第二補正係数K2を用いて求められる修正出力PWmは、90MW(80÷0.89)になる。
【0149】
この第一本運転後の第二本運転中、第一係数要素算出部184a及び第二係数要素算出部184bは、第一本運転中と同様に、係数要素を求める。このため、第一係数要素e1(=PW2/PWb)は、8/10(=80/100)になり、この第一係数要素e1が第一係数要素記憶部185aに記憶される。また、第二係数要素e2(=PW2/PW1)は、7/8(=70/80)になり、この第二係数要素e2が第二係数要素記憶部185bに記憶される。
【0150】
以上のように、第二本運転中の各係数要素が定まった結果、第二本運転中の各補正係数が求められるようになる。第二本運転中、第一補正係数K1(e1×e2)は、0.7(=8/10×7/8)になる。また、第二補正係数K2(e1×e2÷e3)は、0.78(=8/10×7/8÷9/10)になる。
【0151】
このため、第二本運転中、制御用出力の一種である1500℃MWが100MWの場合、第一補正係数K1を用いて求められる修正1500℃MWmは、70MW(=100×0.7)になる。また、制御用出力の一種である実測出力PWが70MWの場合、第二補正係数K2を用いて求められる修正出力PWmは、90MW(70÷0.78)になる。
【0152】
第二本運転が終了すると、前述したように、定期点検が実行される。
【0153】
定期点検後の試運転の開始前、補正係数作成部183はリセット指示を受け付ける。このため、定期点検後の試運転中、第一係数要素算出部184aは、現出力PW2を基準出力PWbで割った値を第一係数要素e1(=PW2/PWb)とする。このため、第一係数要素e1は、8/10(=80/100)になり、この第一係数要素e1が第一係数要素記憶部185aに記憶される。また、この試運転中、第二係数要素記憶部185bには、リセット部186の動作により、第二係数要素e2として「1」が記憶される。
【0154】
以上のように、この試運転中の各係数要素が定まった結果、この試運転中の各補正係数が求められるようになる。試運転中、第一補正係数K1(e1×e2)は、0.8(=80/10×1)になる。また、第二補正係数K2(e1×e2÷e3)は、0.89(=8/10×1÷9/10)になる。
【0155】
このため、試運転中、制御用出力の一種である1500℃MWが100MWの場合、第一補正係数K1を用いて求められる修正1500℃MWmは、80MW(=100×0.8)になる。また、制御用出力の一種である実測出力PWが70MWの場合、第二補正係数K2を用いて求められる修正出力PWmは、79MW(70÷0.89)になる。
【0156】
先の試運転後の第一本運転中、第一係数要素算出部184aは、先の試運転中と異なり、直前出力PW1を基準出力PWbで割った値を第一係数要素e1(=PW2/PWb)とする。このため、第一係数要素e1は、8/10(=80/100)になり、この第一係数要素e1が第一係数要素記憶部185aに記憶される。この第一本運転中、第二係数要素算出部184bは、現出力PW2を直前出力PW1で割った値を第二係数要素e2(=PW2/PW1)とする。このため、第二係数要素e2は、7/8(=70/80)になり、この第二係数要素e2が第二係数要素記憶部185bに記憶される。
【0157】
以上のように、第一本運転中の各係数要素が定まった結果、第一本運転中の各補正係数が求められるようになる。第一本運転中、第一補正係数K1(e1×e2)は、0.7(=8/10×7/8)になる。また、第二補正係数K2(e1×e2÷e3)は、0.78(=8/10×7/8÷9/10)になる。
【0158】
このため、第一本運転中、制御用出力の一種である1500℃MWが100MWの場合、第一補正係数K1を用いて求められる修正1500℃MWmは、70MW(=100×0.7)になる。また、制御用出力の一種である実測出力PWが70MWの場合、第二補正係数K2を用いて求められる修正出力PWmは、90MW(70÷0.78)になる。
【0159】
この第一本運転後の第二本運転中、第一係数要素算出部184a及び第二係数要素算出部184bは、第一本運転中と同様に、係数要素を求める。このため、第一係数要素e1(=PW2/PWb)は、7/10(=70/100)になる。また、第二係数要素e2(=PW2/PW1)は、6.5/7(=65/70)になる。
【0160】
第二本運転中、第一補正係数K1(e1×e2)は、0.65(=7/10×65/70)になる。また、第二補正係数K2(e1×e2÷e3)は、0.72(=7/10×65/70÷9/10)になる。また、制御用出力の一種である1500℃MWが100MWの場合、第一補正係数K1を用いて求められる修正1500℃MWmは、65MW(=100×0.65)になる。また、制御用出力の一種である実測出力PWが65MWの場合、第二補正係数K2を用いて求められる修正出力PWmは、90MW(65÷0.72)になる。
【0161】
以上のように、制御装置100の出力修正器180は、ガスタービン性能の劣化に伴う出力の劣化度に基づいて、制御用出力を修正する。
【0162】
本実施形態における第一係数要素算出部184aは、ガスタービン10が完全停止している状態から試運転が開始されるまでの間にリセット指示を受け付けると、以上で説明したように、試運転中、直前時間帯の直前出力PW1を用いずに、現時間帯の現出力PW2を用いて、第一係数要素e1を算出する。また、本実施形態におけるリセット部186は、ガスタービン10が完全停止している状態から試運転が開始されるまでの間にリセット指示を受け付けると、係数要素記憶部185に記憶されている第二係数要素e2を、補正係数算出部187による補正係数の算出結果に影響を与えない値、具体的には「1」にリセットする。
【0163】
仮に、試運転前に定期点検を行い、定期点検によりガスタービン性能が向上した場合、試運転前の直前時間帯の直前出力PW1を用いて、第一係数要素e1及び第二係数要素e2を算出しても、これら第一係数要素e1及び第二係数要素e2は、出力の劣化度を適正に表していない。このため、本実施形態における第一係数要素算出部184aは、前述したように、リセット指示を受け付けると、現時間帯の現出力PW2を用いて、第一係数要素e1を算出する。さらに、本実施形態におけるリセット部186は、リセット指示を受け付けると、係数要素記憶部185に記憶されている第二係数要素e2を、補正係数算出部187による補正係数の算出結果に影響を与えない値にリセットする。
【0164】
従って、本実施形態では、ガスタービン10が完全停止している状態から試運転が開始された場合でも、出力の劣化度を適正に反映した修正制御用出力を得ることができる。
【0165】
次に、
図26に示すフローチャートに従って、制御装置100の全体動作について説明する。
【0166】
制御装置100の制御用出力作成器170は、以上で説明したように、制御用出力を作成する(制御用出力作成工程S30)。この制御用出力作成工程S30では、最大出力作成工程S31と、出力修正工程S32とが実行される。
【0167】
最大出力作成工程S31では、最大出力作成器171が、以上で説明したように、IGV14における制御用の最大開度の変更内容を受け付けると、この変更内容に応じた制御用の最大出力PWxを作成する。
【0168】
出力修正工程S32では、出力修正器180が、以上で説明したように、ガスタービン性能の劣化に伴う出力の劣化度に基づいて、制御用出力を修正する。この結果、本実施形態において、修正制御用出力として、修正出力PWm、修正1500℃MWm、修正700℃MWm、修正最大出力PWxmが得られる。
【0169】
制御装置100の指令値作成部110は、出力修正工程S32の実行で得られた修正制御用出力を用いて、ガスタービン10の制御対象に対する指令値を作成する(指令値作成工程S33)。
【0170】
具体的に、燃焼負荷指令発生器120は、修正1500℃MWm及び修正700℃MWmを用いて、燃焼負荷指令値CLCSOを作成する。燃料流量指令発生器130は、修正最大出力PWxm等を用いて、燃料流量指令値(全燃料流量指令値)CSOを発生する。負荷率演算器140は、修正最大出力PWxmと実測出力PWとを用いて、負荷率(%Load)を求める。流量比算出器150は、燃焼負荷指令値CLCSOと負荷率(%Load)とを用いて、パイロット比PLr及びトップハット比THrを求める。弁指令値作成器155は、流量比算出器150からのパイロット比PLr及びトップハット比THrと、燃料流量指令発生器130からのCSOが示す燃料の全流量と、を用いて、各燃料弁65,66,67に対する指令値を作成する。IGV指令値作成器160は、修正出力PWmを用いて、IGV指令値IGVcを作成する。
【0171】
制御装置100の制御信号出力部190は、指令値を示す制御信号を制御対象に出力する(制御信号出力工程S34)。制御信号出力部190は、弁指令値作成器155が作成した複数の燃料弁65,66,67毎の指令値に基づき、複数の燃料弁65,66,67毎の制御信号を作成し、各制御信号をいずれかの燃料弁65,66,67に出力する。また、制御信号出力部190は、IGV指令値作成器160が作成したIGV指令値IGVcに基づき制御信号を作成し、この制御信号をIGV14に出力する。
【0172】
以上のように、本実施形態では、IGV14における最大開度の変更内容を受け付けることができる。さらに、本実施形態では、この変更内容と吸気温度とに基づいて、ガスタービンの制御用の最大出力を補正する。このため、本実施形態では、最大開度の設定を変更した場合でも、ガスタービンの寿命低下や出力低下を招かず、ガスタービンの制御不具合を抑えることができる。
【0173】
また、本実施形態では、ガスタービン性能劣化に伴う出力の劣化度に応じて、制御用出力を補正する。このため、本実施形態では、ガスタービン性能が劣化しても、制御不具合を抑えることができる。
【0174】
特に、本実施形態では、複数の係数要素e1,e2,e3を用いて、補正係数が求められる。この補正係数は、ガスタービン性能劣化に伴う出力の劣化度を示す値である。また、複数の係数要素e1,e2,e3のそれぞれも、ガスタービン性能劣化に伴う出力の劣化度を示す値である。しかしながら、複数の係数要素e1,e2,e3は、互に異なる時間帯での出力の劣化度を示す。本実施形態では、互に異なる複数の係数要素e1,e2,e3を用いて、補正係数を求め、この補正係数で制御用出力を補正する。従って、本実施形態では、出力の劣化度を適正に反映した修正制御用出力を得ることができる。
【0175】
「変形例」
以上の実施形態における最大出力作成器171の係数演算部177は、
図10を用いて説明したように、基本最大開度θbと変更後最大開度θcとの偏差を算出する偏差算出部177sと、偏差算出部177sが求めた偏差に応じた補正係数Kxを算出する係数算出部177tと、を有する。しかしながら、この係数演算部は、他の形態で、補正係数Kxを求めてもよい。
【0176】
具体的に、
図27に示すように、最大出力作成器171aの係数演算部177aは、基本出力算出部177uと、変更後出力算出部177vと、係数算出部177wと、を有してもよい。この係数演算部177aは、
図28に示すフローチャート中の係数演算工程S7aを実行する。基本出力算出部177uは、
図16に示す関数F3を持っており、この関数F3を用いて、基本最大開度演算部176bが求めた基本最大開度θbに応じた出力を算出する(基本出力算出工程S7u)。変更後出力算出部177vも、
図16に示す関数F3を持っており、この関数F3を用いて、変更後最大開度演算部176cが求めた変更後最大開度θcに応じた出力を算出する(変更後出力算出工程S7v)。係数算出部177w
は、変更後出力算出部177vが算出した出力の割合を補正係数Kxとして出力する。つまり、係数算出部177wは、基本出力算出部177uが算出した出力に対する、変更後出力算出部177vが算出した出力を基本出力算出部177uが算出した出力で割って、この除算結果を補正係数Kxとして出力する(係数算出工程S7w)。
【0177】
以上で説明したガスタービン設備は、コンバインドサイクルプラントに組み込まれる場合がある。このコンバインドサイクルプラントは、
図29に示すように、ガスタービン設備1の他、煙道2と、切替ダンパ3と、排熱回収ボイラー4と、蒸気タービン5と、蒸気タービン発電機6と、復水器7と、ポンプ8と、第一煙突9aと、第二煙突9bと、を備える。
【0178】
ガスタービン設備1は、以上で説明したように、ガスタービン10と、ガスタービン10の駆動で発電するガスタービン発電機29と、ガスタービン10中の制御対象を制御する制御装置100と、を備える。煙道2は、ガスタービン10から排気された排気ガスEGが流れる主煙道2mと、主煙道2mから分岐している第一煙道2a及び第二煙道2bと、を有する。切替ダンパ3は、主煙道2mから第一煙道2a及び第二煙道2bが分岐している位置に設けられている。この切替ダンパ3は、主煙道2mを流れてきた排気ガスEGを、第一煙道2aと第二煙道2bとのうち、いずれか一方の煙道に導く。排熱回収ボイラー4は、第一煙道2aに接続されている。この排熱回収ボイラー4は、主煙道2m及び第一煙道2aを経てきた排気ガスEGの熱を利用して、蒸気を発生する。蒸気タービン5は、この排熱回収ボイラー4からの蒸気で駆動する。蒸気タービン発電機6は、蒸気タービン5の駆動で発電する。復水器7は、蒸気タービン5から排気された蒸気を水に戻す。ポンプ8は、復水器7からの水を排熱回収ボイラー4に送る。第一煙突9aは、排熱回収ボイラー4に接続されている。第二煙突9bは、第二煙道2bに接続されている。
【0179】
このコンバインドサイクルプラントは、二つの運転モードで運転される。二つの運転モードのうち、一方がコンバインドサイクルモードで、他方がシンプルサイクルモードである。コンバインドサイクルモードでは、ガスタービン10を駆動させて、ガスタービン発電機29による発電を実行させる。さらに、このコンバインドサイクルモードでは、主煙道2m及び第一煙道2aを介して、ガスタービン10からの排気ガスEGを排熱回収ボイラー4に導き、排熱回収ボイラー4からの蒸気で蒸気タービン5を駆動させて、蒸気タービン発電機6による発電を実行させる。つまり、コンバインドサイクルモードは、ガスタービン発電機29による発電と蒸気タービン発電機6による発電とを実行するモードである。シンプルサイクルモードでは、ガスタービン10を駆動させて、ガスタービン発電機29による発電を実行させる。しかしながら、このシンプルサイクルモードでは、ガスタービン10からの排気ガスEGを排熱回収ボイラー4に導かず、主煙道2m及び第二煙道2bを経て、第二煙突9bから排気する。つまり、シンプルサイクルモードは、蒸気タービン発電機6による発電を実行せず、ガスタービン発電機29による発電のみを実行するモードである。
【0180】
コンバインドサイクルモード実行時における排気ガスEGの圧力損出とシンプルサイクルモード実行時における排気ガスEGの圧力損出とは、異なる。シンプルサイクルモード実行時には、ガスタービン10から排気された排気ガスEGが、主煙道2m、第二煙道2bを経て、第二煙突9bから排気される。コンバインドサイクルモード実行時には、ガスタービン10から排気された排気ガスEGが、主煙道2m、第一煙道2a、排熱回収ボイラー4を経て、第一煙突9aから排気される。このため、コンバインドサイクルモード実行時には、ガスタービン10から排気された排気ガスEGが第一煙突9aから排気されるまでの間に、この排気ガスEGが受ける抵抗が、シンプルサイクルモード実行時よりも大きくなる。よって、コンバインドサイクルモード実行時における排気ガスEGの圧力損失は、シンプルサイクルモード実行時における排気ガスEGの圧力損失より大きくなる。言い換えると、シンプルサイクルモード実行時における排気ガスEGの圧力損失は、コンバインドサイクルモード実行時における排気ガスEGの圧力損失より小さくなる。
【0181】
仮に、二つのモードのそれぞれの実行における吸気圧が同じ場合、ガスタービン出口における排気ガスEGの圧力が低いモードの方が、ガスタービン10内での圧力落差が大きくなるため、ガスタービン出力が高くなる。以上で説明したように、シンプルサイクルモード実行時における排気ガスEGの圧力損失は、コンバインドサイクルモード実行時における排気ガスEGの圧力損失より小さくなるため、ガスタービン出口における排気ガスEGの圧力は、コンバインドサイクルモード実行時よりも、シンプルサイクルモード実行時の方が低くなる。よって、コンバインドサイクルモード実行時におけるガスタービン出力より、シンプルサイクルモード実行時におけるガスタービン出力の方が高くなる。
【0182】
以上のように、コンバインドサイクルモード実行時におけるガスタービン出力とシンプルサイクルモード実行時におけるガスタービン出力とが異なることから、モードを切り替えた際には、制御用の最大出力を変更した方が好ましい。
【0183】
そこで、このコンバインドサイクルプラントの制御装置100における最大出
力作成器171bには、
図30に示すように、
図10に示す最大出力作成器171又は
図27に示す最大出力作成器171aに、モード対応係数発生部178と、モード対応補正部179と、を追加することが好ましい。
【0184】
モード対応係数発生部178は、コンバインドサイクルモード実行時の係数と、シンプルサイクルモード実行時の係数とを持っている。仮に、基本最大出力演算部174が持っている関数F4が、コンバインドサイクルモード実行時における、吸気温度Tiとガスタービンの制御用最大出力Pwxとの関係を規定している場合、例えば、コンバインドサイクルモード実行時の係数を1.0にし、シンプルサイクルモード実行時の係数を1.1にする。モード対応係数発生部178は、キーボード等の入力装置104から、コンバインドサイクルモードとシンプルサイクルモードとのうち、一方のモードの実行が指示されると、指示されたモードに対応した係数を出力する。
【0185】
モード対応補正部179は、基本最大出力演算部174からの基本最大出力PWxbに、モード対応係数発生部178からの係数を掛けて、この基本最大出力PWxbを補正し、これを基本最大出力PWxbaとして出力する。最大出力補正部175は、補正係数Kxを用いて、この基本最大出力PWxbaを補正する。
【0186】
以上のように、コンバインドサイクルプラントにおけるモード変更に伴って、基本最大出力PWbを補正することで、モード変更による制御不具合を抑えることができる。
【0187】
以上の実施形態では、修正対象としての制御用出力の例として、実測出力PW、1500℃MW、700℃MW、最大出力PWxを例示している。しかしながら、他の制御用出力を修正対象としての制御用出力にしてもよい。
【0188】
以上の実施形態では、第二補正係数K2を用いて補正される制御用出力の例として、実測出力PWを例示している。しかしながら、制御用出力の補正結果である修正制御用出力と指令値との関係が、建設試運転中に変わる場合には、実測出力PW以外の制御用出力を第二補正係数K2で補正して、修正制御用出力を求めてもよい。
【0189】
「付記」
以上の実施形態におけるガスタービン10の最大出力作成器171は、例えば、以下のように把握される。
【0190】
(1)第1態様におけるガスタービン10の最大出力作成器は、
空気を圧縮して圧縮空気を生成できる圧縮機11と、前記圧縮空気中で燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成できる燃焼器31と、前記燃焼ガスにより駆動可能なタービン21と、を備え、前記圧縮機11は、自身が吸い込む空気の流量を調節する吸気量調節機14を有する、ガスタービン10の最大出力作成器171である。
最大出力作成器171は、前記圧縮機11が吸い込む空気の温度である吸気温度を受け付ける温度受付部172と、前記吸気量調節機14における最大開度の変更内容を受け付ける変更受付部173と、前記温度受付部172が受け付けた前記吸気温度に基づき、前記ガスタービン10の基本最大出力PWxbを求める基本最大出力演算部174と、前記変更受付部173が受け付けた前記最大開度の変更内容と前記温度受付部172が受け付けた前記吸気温度とに基づき、前記基本最大出力PWxbを補正するための最大出力補正係数Kxを作成する係数作成部176,176aと、前記最大出力補正係数Kxを用いて前記基本最大出力PWxbを補正し、補正された前記基本最大出力PWxbを制御用の最大出力PWxとして出力する最大出力補正部175と、を備える。
【0191】
本態様では、吸気量調節機14における最大開度の変更内容を受け付けることができる。さらに、本態様では、この変更内容と吸気温度とに基づいて、ガスタービン10の制御用の最大出力を補正する。このため、本態様では、制御用の最大開度の設定を変更した場合でも、ガスタービン10の寿命低下や出力低下を招かず、ガスタービン10の制御不具合を抑えることができる。
【0192】
(2)第2態様におけるガスタービン10の最大出力作成器は、
前記第1態様におけるガスタービン10の最大出力作成器171において、前記変更受付部173は、前記吸気量調節機14における変更後最大開度と前記吸気温度との関係である変更後関係F6を受け付ける。前記係数作成部176は、前記吸気量調節機14における基本最大開度と前記吸気温度との予め定められた関係である基本関係F5を用いて、前記温度受付部172が受け付けた前記吸気温度に応じた前記基本最大開度を求める基本最大開度演算部176bと、前記変更受付部173が受け付けた前記変更後関係F6を用いて、前記温度受付部172が受け付けた前記吸気温度に応じた前記変更後最大開度を求める変更後最大開度演算部176cと、前記基本最大開度演算部176bが求めた前記基本最大開度と、前記変更後最大開度演算部176cが求めた前記変更後最大開度とを用いて、前記最大出力補正係数Kxを求める係数演算部177,177aと、を有する。
【0193】
(3)第3態様におけるガスタービン10の最大出力作成器は、
前記第2態様におけるガスタービン10の最大出力作成器171において、前記係数演算部177は、前記基本最大開度演算部176bが求めた前記基本最大開度と、前記変更後最大開度演算部176cが求めた前記変更後最大開度との偏差を算出する偏差算出部177sと、前記偏差と前記最大出力補正係数との予め定められた関係を用いて、前記偏差算出部177sが算出した前記偏差に応じた前記最大出力補正係数Kxを算出する係数算出部177tと、を有する。
【0194】
(4)第4態様におけるガスタービン10の最大出力作成器は、
前記第2態様におけるガスタービン10の最大出力作成器171において、前記係数演算部177aは、前記基本最大開度演算部176bが求めた前記基本最大開度に応じた前記ガスタービン10の出力を算出する基本出力算出部177uと、前記変更後最大開度演算部176cが求めた前記変更後最大開度に応じた前記ガスタービン10の出力を算出する変更後出力算出部177vと、前記基本出力算出部177uが算出した前記出力に対する、前記変更後出力算出部177vが算出した前記出力の割合を前記最大出力補正係数Kxとして出力する係数算出部177wと、を有する。
【0195】
以上の実施形態におけるガスタービン10の制御用出力作成器170は、例えば、以下のように把握される。
【0196】
(5)第5態様におけるガスタービン10の制御用出力作成器は、
前記第1態様から前記第4態様のうちのいずれか一態様におけるガスタービン10の最大出力作成器171と、前記ガスタービン10の制御用出力を修正する出力修正器180と、を備える。前記出力修正器180は、前記制御用出力を補正する際に用いる補正係数を作成する補正係数作成部183と、前記補正係数を用いて前記制御用出力を補正して、補正後の制御用出力を修正制御用出力として出力する出力補正部188と、前記ガスタービン10の出力を検知する出力計72からの出力を少なくとも受け付ける出力受付部181と、前記出力受付部181が受け付けた出力を記憶する出力記憶部182と、を備える。前記補正係数作成部183は、第一係数要素e1を算出する第一係数要素算出部184aと、第二係数要素e2を算出する第二係数要素算出部184bと、前記第一係数要素e1と前記第二係数要素e2とを用いて前記補正係数を算出する補正係数算出部187と、を有する。前記出力記憶部182は、過去の基準時点で、前記ガスタービン10が最高出力を出力できる条件下での出力である基準出力PWbと、前記基準時点よりも現時点に近い直前時間帯で、前記ガスタービン10が最高出力を出力できる条件下で前記出力受付部181が受け付けた直前出力PW1と、を記憶できる。前記第一係数要素e1は、前記出力記憶部182に記憶されている前記基準出力PWbに対する、前記出力記憶部182に記憶されている直前出力PW1の割合である。前記第二係数要素e2は、前記出力記憶部182に記憶されている前記直前出力PW1に対する、前記直前時間帯から現時点までの間の現時間帯に、前記ガスタービン10が最高出力を出力できる条件下で前記出力受付部181が受け付けた現出力PW2の割合である。前記出力修正器180は、前記最大出力作成器171から出力された前記制御用の最大出力PWxを前記制御用出力の一つとして修正する。
【0197】
本態様では、第一係数要素e1と第二係数要素e2とを用いて、補正係数が求められる。この補正係数は、ガスタービン性能劣化に伴う出力の劣化度を示す値である。また、第一係数要素e1及び第二係数要素e2も、ガスタービン性能劣化に伴う出力の劣化度を示す値である。しかしながら、第一係数要素e1と第二係数要素e2とは、互に異なる時間帯での出力の劣化度を示す。具体的に、第一係数要素e1は、基準時点から直前時間帯にかけての出力の劣化を示し、第二係数要素e2は、直前時間帯から現時間帯にかけての出力の劣化を示す。このように、本態様では、互に異なる複数の係数要素を用いて、補正係数を求め、この補正係数で制御用出力を補正する。
【0198】
従って、本態様では、出力の劣化度を適正に反映した修正制御用出力を得ることができる。
【0199】
(6)第6態様におけるガスタービン10の制御用出力作成器は、
前記第5態様におけるガスタービン10の制御用出力作成器170において、前記第一係数要素算出部184aは、リセット指示を受け付けたことを条件として、前記直前時間帯における前記直前出力PW1の替わりに、前記現時間帯における前記現出力PW2を用いて、前記第一係数要素e1を算出する。前記補正係数作成部183は、さらに、前記第一係数要素算出部184aが算出した前記第一係数要素e1と、前記第二係数要素算出部184bが算出した前記第二係数要素e2とを記憶できる係数要素記憶部185と、前記リセット指示を受け付けると、前記係数要素記憶部185に記憶されている第二係数要素e2を、前記補正係数算出部187による前記補正係数の算出結果に影響を与えない値にリセットするリセット部186と、を有する。前記補正係数算出部187は、前記係数要素記憶部185に記憶されている第二係数要素e2及び前記第一係数要素e1を用いて、前記補正係数を算出する。
【0200】
本態様における第一係数要素算出部184a及びリセット部186は、ガスタービン10が完全停止している状態から試運転が開始されるまでの間にリセット指示を受け付ける。第一係数要素算出部184aは、このリセット指示を受け付けると、試運転中、直前時間帯の直前出力PW1を用いずに、現時間帯の現出力PW2を用いて、第一係数要素e1を算出する。また、リセット部186は、係数要素記憶部185に記憶されている第二係数要素e2を、補正係数算出部187による補正係数の算出結果に影響を与えない値にリセットする。
【0201】
仮に、試運転前に定期点検を行い、定期点検によりガスタービン性能が向上した場合、試運転前の直前時間帯の直前出力PW1を用いて、第一係数要素e1及び第二係数要素e2を算出しても、これら第一係数要素e1及び第二係数要素e2は、出力の劣化度を適正に表していない。このため、本態様における第一係数要素算出部184aは、リセット指示を受け付けると、現時間帯の現出力PW2を用いて、第一係数要素e1を算出する。さらに、本態様におけるリセット部186は、リセット指示を受け付けると、係数要素記憶部185に記憶されている第二係数要素e2を、補正係数算出部187による補正係数の算出結果に影響を与えない値にリセットする。
【0202】
従って、本態様では、ガスタービン10が完全停止している状態から試運転が開始された場合でも、出力の劣化度を適正に反映した修正制御用出力を得ることができる。
【0203】
(7)第7態様におけるガスタービン10の制御用出力作成器は、
前記第5態様又は前記第6態様におけるガスタービン10の制御用出力作成器170において、前記基準時点は、前記ガスタービン10の設計時点であり、前記基準出力PWbは、前記設計時点に、前記ガスタービン10が最高出力を出力できる条件下での設計出力である。
【0204】
(8)第8態様におけるガスタービン10の制御用出力作成器は、
前記第7態様におけるガスタービン10の制御用出力作成器170において、前記直前時間帯は、前記ガスタービン10を建設した後に行う試運転中であって、前記ガスタービン10を点検又は修理した後の試運転を除く建設試運転中の時間帯を含む。前記直前出力PW1は、前記建設試運転中の前記時間帯に、前記ガスタービン10が最高出力を出力できる条件下で前記出力受付部181が受け付けた出力である建設出力PWcを含む。前記補正係数作成部183は、さらに、第三係数要素e3を算出する第三係数要素算出部184cを有する。前記補正係数算出部187は、前記第一係数要素e1と前記第二係数要素e2と前記第三係数要素e3とを用いて前記補正係数を算出する。前記第三係数要素e3は、前記出力記憶部182に記憶されている前記基準出力PWbに対する、前記出力記憶部182に記憶されている前記建設出力PWcの割合である。
【0205】
制御用出力の補正結果である修正制御用出力と指令値との関係が、建設試運転中に、この建設試運転中の結果に応じて変更される場合がある。本態様では、補正係数を算出する過程で、第一係数要素e1の演算に用いられる基準出力PWbと、第三係数要素e3の演算に用いられる基準出力PWbとを相殺させることが可能である。このため、補正係数は、設計時点の基準出力PWbの要素がなくなり、建設試運転中の実測出力である建設出力PWcを基準にして、現時間帯までの出力の劣化度を示すことができる。
【0206】
以上の実施形態におけるガスタービン10の制御装置100は、例えば、以下のように把握される。
【0207】
(9)第9態様におけるガスタービン10の制御装置は、
前記第1態様から前記第4態様のうちのいずれか一態様におけるガスタービン10の最大出力作成器171と、前記最大出力作成器171から出力された前記制御用の最大出力を用いて、前記ガスタービン10の制御対象に対する指令値を作成する指令値作成部110と、前記指令値を示す制御信号を前記制御対象に出力する制御信号出力部190と、を備える。
【0208】
本態様の最大出力作成器171は、前述したように、吸気量調節機14における最大開度の変更内容を受け付け、この変更内容と吸気温度とに基づいて、ガスタービン10の制御用の最大出力を補正する。本態様では、吸気量調節機14における最大開度の変更内容に応じた制御用の最大出力PWxを用いて、制御対象に対する指令値を作成し、この指令値を示す制御信号を制御対象に出力する。このため、本態様では、制御用の最大開度の設定を変更した場合でも、制御対象の制御不具合を抑えることができる。
【0209】
(10)第10態様におけるガスタービン10の制御装置は、
前記第5態様から前記第8態様のうちのいずれか一態様におけるガスタービン10の制御用出力作成器170と、前記制御用出力作成器170から出力された前記修正制御用出力を用いて、前記ガスタービン10の制御対象に対する指令値を作成する指令値作成部110と、前記指令値を示す制御信号を前記制御対象に出力する制御信号出力部190と、を備える。
【0210】
本態様の制御用出力作成器170における最大出力作成器171は、前述したように、吸気量調節機14における最大開度の変更内容を受け付け、この変更内容と吸気温度とに基づいて、ガスタービン10の制御用の最大出力を補正する。また、この制御用出力作成器170における出力修正器180は、前述したように、出力の劣化度を適正に反映した修正制御用出力としての最大出力PWxmを得ることができる。本態様では、この修正制御用出力を用いて、制御対象に対する指令値を作成し、この指令値を示す制御信号を制御対象に出力する。このため、本態様では、制御用の最大開度の設定を変更した場合でも、この変更に起因した制御対象の制御不具合、さらに、ガスタービン性能劣化に起因した制御対象の制御不具合を抑えることができる。
【0211】
以上の実施形態におけるガスタービン10の最大出力作成方法は、例えば、以下のように把握される。
【0212】
(11)第11態様におけるガスタービン10の最大出力作成方法は、
空気を圧縮して圧縮空気を生成できる圧縮機11と、前記圧縮空気中で燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成できる燃焼器31と、前記燃焼ガスにより駆動可能なタービン21と、を備え、前記圧縮機11は、自身が吸い込む空気の流量を調節する吸気量調節機14を有する、ガスタービン10の最大出力作成方法である。
この最大出力作成方法では、前記圧縮機11が吸い込む空気の温度である吸気温度を受け付ける温度受付工程S1と、前記吸気量調節機14における最大開度の変更内容を受け付ける変更受付工程S2と、前記温度受付工程S1で受け付けた前記吸気温度に基づき、前記ガスタービン10の基本最大出力PWxbを求める基本最大出力演算工程S3と、前記変更受付工程S2で受け付けた前記最大開度の変更内容と前記温度受付工程S1で受け付けた前記吸気温度とに基づき、前記基本最大出力PWxbを補正するための最大出力補正係数Kxを作成する係数作成工程S4,S4aと、前記最大出力補正係数Kxを用いて前記基本最大出力PWxbを補正し、補正された前記基本最大出力PWxbを制御用の最大出力PWxとして出力する最大出力補正工程S8と、を実行する。
【0213】
本態様では、第1態様における最大出力作成器171と同様に、制御用の最大開度の設定を変更した場合でも、ガスタービン10の寿命低下や出力低下を招かず、ガスタービン10の制御不具合を抑えることができる。
【0214】
(12)第12態様におけるガスタービン10の最大出力作成方法は、
前記第11態様における最大出力作成方法において、前記変更受付工程S2では、前記吸気量調節機14における変更後最大開度と前記吸気温度との関係である変更後関係F6を受け付ける。前記係数作成工程S4は、前記吸気量調節機14における基本最大開度と前記吸気温度との予め定められた関係である基本関係F5を用いて、前記温度受付工程S1で受け付けた前記吸気温度に応じた前記基本最大開度を求める基本最大開度演算工程S5と、前記変更受付工程S2で受け付けた前記変更後関係F6を用いて、前記温度受付工程S1で受け付けた前記吸気温度に応じた前記変更後最大開度を求める変更後最大開度演算工程S6と、前記基本最大開度演算工程S5で求められた前記基本最大開度と、前記変更後最大開度演算工程S6で求められた前記変更後最大開度とを用いて、前記最大出力補正係数Kxを求める係数演算工程S7,S7aと、を含む。
【0215】
(13)第13態様におけるガスタービン10の最大出力作成方法は、
第12態様におけるガスタービン10の最大出力作成方法において、前記係数演算工程S7は、前記基本最大開度演算工程S5で求められた前記基本最大開度と、前記変更後最大開度演算工程S6で求められた前記変更後最大開度との偏差を算出する偏差算出工程S7sと、前記偏差と前記最大出力補正係数との予め定められた関係F7を用いて、前記偏差算出工程S7sで求められた前記偏差に応じた前記最大出力補正係数を算出する係数算出工程S7tと、を含む。
【0216】
(14)第14態様におけるガスタービン10の最大出力作成方法は、
第12態様におけるガスタービン10の最大出力作成方法において、前記係数演算工程S7aは、前記基本最大開度演算工程S5で求められた前記基本最大開度に応じた前記ガスタービン10の出力を算出する基本出力算出工程S7uと、前記変更後最大開度演算工程S6で求められた前記変更後最大開度に応じた前記ガスタービン10の出力を算出する変更後出力算出工程S7vと、前記基本出力算出工程S7uで算出された前記出力に対する、前記変更後出力算出工程S7vで算出された前記出力の割合を前記最大出力補正係数として出力する係数算出工程S7wと、を含む。
【0217】
以上の実施形態におけるガスタービン10の制御用出力作成方法は、例えば、以下のように把握される。
【0218】
(15)第15態様におけるガスタービン10の制御用出力作成方法は、
前記第11態様から前記第14態様のうちのいずれか一態様におけるガスタービン10の最大出力作成方法を実行すると共に、前記ガスタービン10の制御用出力を修正する出力修正方法と、を実行する。前記出力修正方法では、前記ガスタービン10の制御用出力を補正する際に用いる補正係数を作成する補正係数作成工程S20と、前記補正係数を用いて前記制御用出力を補正して、補正後の制御用出力を修正制御用出力として出力する出力補正工程S25と、前記ガスタービン10の出力を検知する出力計72からの出力を少なくとも受け付ける出力受付工程S11と、前記出力受付工程S11が受け付けた出力を記憶する出力記憶工程S12と、を実行する。前記補正係数作成工程S20は、第一係数要素e1を算出する第一係数要素算出工程S21aと、第二係数要素e2を算出する第二係数要素算出工程S21bと、前記第一係数要素e1と前記第二係数要素e2とを用いて前記補正係数を算出する補正係数算出工程S24と、を含む。前記出力記憶工程S12では、過去の基準時点で、前記ガスタービン10が最高出力を出力できる条件下での出力である基準出力PWbと、前記基準時点よりも現時点に近い直前時間帯で、前記ガスタービン10が最高出力を出力できる条件下で前記出力受付工程S11で受け付けた直前出力PW1と、を記憶する。前記第一係数要素e1は、前記出力記憶工程S12で記憶された前記基準出力PWbに対する、前記出力記憶工程S12で記憶された直前出力PW1の割合である。前記第二係数要素e2は、前記出力記憶工程S12で記憶された前記直前出力PW1に対する、前記直前時間帯から現時点までの間の現時間帯に、前記ガスタービン10が最高出力を出力できる条件下で前記出力受付工程S11で受け付けた現出力PW2の割合である。
【0219】
本態様では、第5態様における制御用出力作成器170と同様に、出力の劣化度を適正に反映した修正制御用出力を得ることができる。
【0220】
(16)第16態様におけるガスタービン10の制御用出力作成方法は、
第15態様における制御用出力作成方法において、前記第一係数要素算出工程S21aでは、リセット指示を受け付けたことを条件として、前記直前時間帯における前記直前出力PW1の替わりに、前記現時間帯における前記現出力PW2を用いて、前記第一係数要素e1を算出する。前記補正係数作成工程S20は、さらに、前記第一係数要素算出工程S21aで算出された前記第一係数要素e1と、前記第二係数要素算出工程S21bで算出された前記第二係数要素e2とを記憶する係数要素記憶工程S22と、前記リセット指示を受け付けると、前記係数要素記憶工程S22で記憶された第二係数要素e2を、前記補正係数算出工程S24での前記補正係数の算出結果に影響を与えない値にリセットするリセット工程S23と、を含む。前記補正係数算出工程S24では、前記係数要素記憶工程S22で記憶された第二係数要素e2及び前記第一係数要素e1を用いて、前記補正係数を算出する。
【0221】
本態様では、第6態様における制御用出力作成器170と同様に、ガスタービン10が完全停止している状態から試運転が開始された場合でも、出力の劣化度を適正に反映した修正制御用出力を得ることができる。
【0222】
(17)第17態様におけるガスタービン10の制御用出力作成方法は、
前記第15態様又は前記第16態様におけるガスタービン10の制御用出力作成方法において、前記基準時点は、前記ガスタービン10の設計時点であり、前記基準出力PWbは、前記設計時点に、前記ガスタービン10が最高出力を出力できる条件下での設計出力である。
【0223】
(18)第18態様におけるガスタービン10の制御用出力作成方法は、
前記第17態様におけるガスタービン10の制御用出力作成方法において、前記直前時間帯は、前記ガスタービン10を建設した後に行う試運転中であって、前記ガスタービン10を点検又は修理した後の試運転を除く建設試運転中の時間帯を含む。前記直前出力PW1は、前記建設試運転中の前記時間帯に、前記ガスタービン10が最高出力を出力できる条件下で前記出力受付工程S11で受け付けた出力である建設出力PWcを含む。前記補正係数作成工程S20は、さらに、第三係数要素e3を算出する第三係数要素算出工程S21cを含む。前記補正係数算出工程S24では、前記第一係数要素e1と前記第二係数要素e2と前記第三係数要素e3とを用いて前記補正係数を算出する。前記第三係数要素e3は、前記出力記憶工程S12で記憶された前記基準出力PWbに対する、前記出力記憶工程S12で記憶された前記建設出力PWcの割合である。
【0224】
本態様では、第8態様における制御用出力作成器170と同様に、建設試運転中の実測出力である建設出力PWcを基準にして、現時間帯までの出力の劣化度を示すことができる。
【0225】
以上の実施形態におけるガスタービン10の制御方法は、例えば、以下のように把握される。
【0226】
(19)第19態様におけるガスタービン10の制御方法は、
前記第11態様から前記第14態様のうちのいずれか一態様におけるガスタービン10の最大出力作成方法を実行すると共に、前記最大出力作成方法で求められた前記制御用の最大出力を用いて、前記ガスタービン10の制御対象に対する指令値を作成する指令値作成工程S33と、前記指令値を示す制御信号を前記制御対象に出力する制御信号出力工程S34と、を実行する。
【0227】
本態様では、第9態様における制御装置100と同様に、制御用の最大開度の設定を変更した場合でも、制御対象の制御不具合を抑えることができる。
【0228】
(20)第20態様におけるガスタービン10の制御方法は、
前記第15態様から前記第18態様のうちのいずれか一態様におけるガスタービン10の制御用出力作成方法を実行すると共に、前記制御用出力作成方法で求められた前記修正制御用出力を用いて、前記ガスタービン10の制御対象に対する指令値を作成する指令値作成工程S33と、前記指令値を示す制御信号を前記制御対象に出力する制御信号出力工程S34と、を実行する。
【0229】
本態様では、第10態様における制御装置100と同様に、制御用の最大開度の設定を変更した場合でも、この変更に起因した制御対象の制御不具合、さらに、ガスタービン性能劣化に起因した制御対象の制御不具合を抑えることができる。
【0230】
以上の実施形態におけるガスタービン10の最大出力作成プログラム103paaは、例えば、以下のように把握される。
【0231】
(21)第21態様におけるガスタービン10の最大出力作成プログラムは、
空気を圧縮して圧縮空気を生成できる圧縮機11と、前記圧縮空気中で燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成できる燃焼器31と、前記燃焼ガスにより駆動可能なタービン21と、を備え、前記圧縮機11は、自身が吸い込む空気の流量を調節する吸気量調節機14を有する、ガスタービン10の最大出力作成プログラム103paaである。
この最大出力作成プログラム103paaは、前記圧縮機11が吸い込む空気の温度である吸気温度を受け付ける温度受付工程S1と、前記吸気量調節機14における最大開度の変更内容を受け付ける変更受付工程S2と、前記温度受付工程S1で受け付けた前記吸気温度に基づき、前記ガスタービン10の基本最大出力PWxbを求める基本最大出力演算工程S3と、前記変更受付工程S2で受け付けた前記最大開度の変更内容と前記温度受付工程S1で受け付けた前記吸気温度とに基づき、前記基本最大出力PWxbを補正するための最大出力補正係数Kxを作成する係数作成工程S4,S4aと、前記最大出力補正係数Kxを用いて前記基本最大出力PWxbを補正し、補正された前記基本最大出力PWxbを制御用の最大出力PWxとして出力する最大出力補正工程S8と、をコンピュータに実行させる。
【0232】
本態様では、第1態様における最大出力作成器171と同様に、制御用の最大開度の設定を変更した場合でも、ガスタービン10の寿命低下や出力低下を招かず、ガスタービン10の制御不具合を抑えることができる。
【0233】
(22)第22態様におけるガスタービン10の最大出力作成プログラムは、
第21態様におけるガスタービン10の最大出力作成プログラム103paaにおいて、前記変更受付工程S2では、前記吸気量調節機14における変更後最大開度と前記吸気温度との関係である変更後関係F6を受け付ける。前記係数作成工程S4は、前記吸気量調節機14における基本最大開度と前記吸気温度との予め定められた関係である基本関係F5を用いて、前記温度受付工程S1で受け付けた前記吸気温度に応じた前記基本最大開度を求める基本最大開度演算工程S5と、前記変更受付工程S2で受け付けた前記変更後関係F6を用いて、前記温度受付工程S1で受け付けた前記吸気温度に応じた前記変更後最大開度を求める変更後最大開度演算工程S6と、前記基本最大開度演算工程S5で求められた前記基本最大開度と、前記変更後最大開度演算工程S6で求められた前記変更後最大開度とを用いて、前記最大出力補正係数Kxを求める係数演算工程S7,S7aと、を含む。
【0234】
(23)第23態様におけるガスタービン10の最大出力作成プログラムは、
第22態様におけるガスタービン10の最大出力作成プログラム103paaにおいて、前記係数演算工程S7は、前記基本最大開度演算工程S5で求められた前記基本最大開度と、前記変更後最大開度演算工程S6で求められた前記変更後最大開度との偏差を算出する偏差算出工程S7sと、前記偏差と前記最大出力補正係数との予め定められた関係を用いて、前記偏差算出工程S7sで求められた前記偏差に応じた前記最大出力補正係数を算出する係数算出工程S7tと、を含む。
【0235】
(24)第24態様におけるガスタービン10の最大出力作成プログラムは、
第22態様におけるガスタービン10の最大出力作成プログラム103paaにおいて、前記係数演算工程S7aは、前記基本最大開度演算工程S5で求められた前記基本最大開度に応じた前記ガスタービン10の出力を算出する基本出力算出工程S7uと、前記変更後最大開度演算工程S6で求められた前記変更後最大開度に応じた前記ガスタービン10の出力を算出する変更後出力算出工程S7vと、前記基本出力算出工程S7uで算出された前記出力に対する、前記変更後出力算出工程S7vで算出された前記出力の割合を前記最大出力補正係数として出力する係数算出工程S7wと、を含む。
【0236】
以上の実施形態におけるガスタービン10の制御用出力作成プログラム103paは、例えば、以下のように把握される。
【0237】
(25)第25態様におけるガスタービン10の制御用出力作成プログラムは、
前記第21態様から前記第24態様のうちのいずれか一態様のガスタービン10の最大出力作成プログラム103paaと、前記ガスタービン10の制御用出力を修正する出力修正プログラム103pabと、を有する。前記出力修正プログラム103pabは、前記ガスタービン10の制御用出力を補正する際に用いる補正係数を作成する補正係数作成工程S20と、前記補正係数を用いて前記制御用出力を補正して、補正後の制御用出力を修正制御用出力として出力する出力補正工程S25と、前記ガスタービン10の出力を検知する出力計72からの出力を少なくとも受け付ける出力受付工程S11と、前記出力受付工程S11が受け付けた出力を記憶する出力記憶工程S12と、を前記コンピュータに実行させる。前記補正係数作成工程S20は、第一係数要素e1を算出する第一係数要素算出工程S21aと、第二係数要素e2を算出する第二係数要素算出工程S21bと、前記第一係数要素e1と前記第二係数要素e2とを用いて前記補正係数を算出する補正係数算出工程S24と、を含む。前記出力記憶工程S12では、過去の基準時点で、前記ガスタービン10が最高出力を出力できる条件下での出力である基準出力PWbと、前記基準時点よりも現時点に近い直前時間帯で、前記ガスタービン10が最高出力を出力できる条件下で前記出力受付工程S11で受け付けた直前出力PW1と、を記憶する。前記第一係数要素e1は、前記出力記憶工程S12で記憶された前記基準出力PWbに対する、前記出力記憶工程S12で記憶された直前出力PW1の割合である。前記第二係数要素e2は、前記出力記憶工程S12で記憶された前記直前出力PW1に対する、前記直前時間帯から現時点までの間の現時間帯に、前記ガスタービン10が最高出力を出力できる条件下で前記出力受付工程S11で受け付けた現出力PW2の割合である。
【0238】
本態様では、第5態様における制御用出力作成器170と同様に、出力の劣化度を適正に反映した修正制御用出力を得ることができる。
【0239】
以上の実施形態におけるガスタービン10の制御プログラム103pは、例えば、以下のように把握される。
【0240】
(26)第26態様におけるガスタービン10の制御プログラムは、
前記第21態様から前記第24態様のうちのいずれか一態様におけるガスタービン10の最大出力作成プログラム103paaを有すると共に、前記最大出力作成プログラム103paaの実行で求められた前記制御用の最大出力を用いて、前記ガスタービン10の制御対象に対する指令値を作成する指令値作成工程S33と、前記指令値を示す制御信号を前記制御対象に出力する制御信号出力工程S34と、を前記コンピュータに実行させる。
【0241】
本態様では、第9態様における制御装置100と同様に、制御用の最大開度の設定を変更した場合でも、制御対象の制御不具合を抑えることができる。
【0242】
(27)第27態様におけるガスタービン10の制御プログラムは、
前記第25態様におけるガスタービン10の制御用出力作成プログラム103paを有すると共に、前記制御用出力作成プログラム103paの実行で求められた前記修正制御用出力を用いて、前記ガスタービン10の制御対象に対する指令値を作成する指令値作成工程S33と、前記指令値を示す制御信号を前記制御対象に出力する制御信号出力工程S34と、を前記コンピュータに実行させる。
【0243】
本態様では、第10態様における制御装置100と同様に、制御用の最大開度の設定を変更した場合でも、この変更に起因した制御対象の制御不具合、さらに、ガスタービン性能劣化に起因した制御対象の制御不具合を抑えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0244】
本開示の一態様では、吸気量調節機における最大開度の変更内容を受け付けることができる。さらに、本態様では、この最大開度の設定を変更した場合でも、ガスタービンの制御不具合を抑えることができる。
【符号の説明】
【0245】
1:ガスタービン設備
2:煙道
2m:主煙道
2a:第一煙道
2b:第二煙道
3:切替ダンパ
4:排熱回収ボイラー
5:蒸気タービン
6:蒸気タービン発電機
7:復水器
8:ポンプ
9a:第一煙突
9b:第二煙突
10:ガスタービン
11:圧縮機
12:圧縮機ケーシング
13:圧縮機ロータ
14:IGV(吸気量調節機)
15:ガイドベーン
16:駆動器
21:タービン
22:タービンケーシング
23:タービンロータ
28:ガスタービンロータ
24:中間ケーシング
25:排気ケーシング
29:発電機(ガスタービン発電機)
31:燃焼器
32:外筒
33:燃焼筒(又は尾筒)
41:燃料噴射器
42:内筒
43:パイロットバーナ
44:パイロットノズル
45:パイロット空気用筒
48:パイロット空気流路
49:拡散火炎
51:トップハットノズル
52:圧縮空気流路
53:メインバーナ
54:メインノズル
55:メイン空気用内筒
56:メイン空気用外筒
57:仕切板
58:メイン空気流路
59:予混合火炎
60:燃料ライン
61:パイロット燃料ライン
62:メイン燃料ライン
63:トップハット燃料ライン
65:パイロット燃料弁
66:メイン燃料弁
67:トップハット燃料弁
71:回転数計
72:出力計
73:吸気温度計
74:吸気圧計
75:ブレードパス温度計
76:排気ガス温度計
100:制御装置
101:CPU
102:主記憶装置
103:補助記憶装置
103p:制御プログラム
103pa:制御用出力作成プログラム
103paa:最大出力作成プログラム
103pab:出力修正プログラム
104:入力装置
105:表示装置
106:入出力インタフェース
107:装置インタフェース
108:通信インタフェース
109:記憶・再生装置
110:指令値作成部
120:燃焼負荷指令発生器
121a:700℃MW演算器
121b:1500℃MW演算器
122:標準大気圧発生器
123:第一除算器
124a:第一乗算器
124b:第二乗算器
125a:第一減算器
125b:第二減算器
126:第二除算器
127:制限器
130:燃料流量指令発生器
131:ガバナ制御器
132:負荷制御器
132a:低値選択器
132b:比例積分演算器
133:ブレードパス温度制御器
134:排ガス温度制御器
135:低値選択器
136:制限器
140:負荷率演算器
141:最大出力発生器
142:切替器
143:除算器
150:流量比算出器
150p:パイロット比算出器
151p:PLor演算器
152p:補正値演算器
153p:補正器
150t:トップハット比算出器
151t:THor演算器
152t:補正値演算器
153t:補正器
155:弁指令値作成器
156p:第一乗算器
156t:第二乗算器
156ma:第一減算器
156mb:第二減算器
157p:PL弁指令値演算器
157m:M弁指令値演算器
157t:TH弁指令値演算器
160:IGV指令値作成器
170:制御用出力作成器
171,171a,171b:最大出力作成器
172:温度受付部
173:変更受付部
174:基本最大出力演算部
175:最大出力補正部
176:係数作成部
176b:基本最大開度演算部
176c:変更後最大開度演算部
177,177a:係数演算部
177s:偏差算出部
177t,177w:係数算出部
177u:基本出力算出部
177v:変更後出力算出部
178:モード対応係数発生部
179:モード対応補正部
180:出力修正器
181:出力受付部
182:出力記憶部
183:補正係数作成部
184a:第一係数要素算出部
184b:第二係数要素算出部
184c:第三係数要素算出部
185:係数要素記憶部
185a:第一係数要素記憶部
185b:第二係数要素記憶部
185c:第三係数要素記憶部
186:リセット部
187:補正係数算出部
187a:第一補正係数算出部
187b:第二補正係数算出部
187s:除算器
187t:乗算器
187u:補正係数調整器
188:出力補正部
188a:第一出力補正部
188b:第二出力補正部
188c:第三出力補正部
188s:除算器
188t:乗算器
188u:加算器
188v:低値選択器
188x:第一記憶部
188y:第二記憶部
190:制御信号出力部
IGVc:IGV指令値
e1:第一係数要素
e2:第二係数要素
e3:第三係数要素
K1:第一補正係数
K2:第二補正係数
Kx:補正係数
PW:出力(又は実測出力)
PWr:要求出力
PWb:基準出力
PWc:建設出力
PW1:直前出力
PW2:現出力
PWr:要求出力
PWx:最大出力
PWxb:基本最大出力
PWxm:修正最大出力