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特許7457829空気入りタイヤの内腔の表面にシーリング剤を塗布するための方法及びシステム
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  • 特許-空気入りタイヤの内腔の表面にシーリング剤を塗布するための方法及びシステム 図1
  • 特許-空気入りタイヤの内腔の表面にシーリング剤を塗布するための方法及びシステム 図2
  • 特許-空気入りタイヤの内腔の表面にシーリング剤を塗布するための方法及びシステム 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】空気入りタイヤの内腔の表面にシーリング剤を塗布するための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/06 20060101AFI20240321BHJP
   B29C 73/16 20060101ALI20240321BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20240321BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20240321BHJP
   B05D 7/02 20060101ALI20240321BHJP
   B05D 7/22 20060101ALI20240321BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20240321BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
B29D30/06
B29C73/16
B05C5/00 101
B05C11/10
B05D7/02
B05D7/22 Z
B05D7/24 301N
B05D3/00 C
B05D3/00 D
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022559644
(86)(22)【出願日】2021-03-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-17
(86)【国際出願番号】 EP2021058027
(87)【国際公開番号】W WO2021198108
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-11-28
(31)【優先権主張番号】102020000006637
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】518333177
【氏名又は名称】ブリヂストン ヨーロッパ エヌブイ/エスエイ
【氏名又は名称原語表記】BRIDGESTONE EUROPE NV/SA
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100174023
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 怜愛
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト ポントーニ
(72)【発明者】
【氏名】パオロ ストラッフィ
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-140712(JP,A)
【文献】特開2016-078232(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0297281(US,A1)
【文献】国際公開第2017/094447(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0107743(US,A1)
【文献】特開2008-279605(JP,A)
【文献】特開2012-030396(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/06
B29C 73/16
B05C 5/00
B05C 11/10
B05D 7/02
B05D 7/22
B05D 7/24
B05D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気入りタイヤ(4)の内腔(3)の表面(2)にシーリング剤を塗布する方法であって;
前記方法は、前記空気入りタイヤ(4)を前記空気入りタイヤ(4)の軸線(X)の周りで回転させる間に塗布装置(7)によって前記内腔(3)の前記表面(2)にシーリング剤のストリップを塗布するステップを含み;
前記方法は、以下のさらなるステップ、すなわち:
-前記表面(2)に前記シーリング剤を塗布する前に、前記空気入りタイヤ(4)の重量を測定する、ステップと;
-前記表面(2)に前記シーリング剤を塗布した後に、前記空気入りタイヤ(4)の重量を測定する、ステップと;
-前記表面(2)への前記シーリング剤の塗布後の前記空気入りタイヤ(4)の重量と前記表面(2)への前記シーリング剤の塗布前の前記空気入りタイヤ(4)の重量との差から、前記表面(2)に塗布されたシーリング剤の量を計算する、ステップと;
-前記表面(2)に塗布されるシーリング剤の量と、空気入りタイヤのタイプの関数として変化する、前記表面(2)に塗布されるシーリング剤の基準量との、差を計算する、ステップと;
-短期メモリバッファ(24)と前記短期メモリバッファ(24)よりも多くの数のセルを有する長期メモリバッファ(26)との内部に、前記差を格納する、ステップと;
-前記短期メモリバッファ(24)及び前記長期メモリバッファ(26)の両方の関数として、短期補償係数(KST)及び長期補償係数(KLT)を求める、ステップと;
-前記短期補償係数(KST)又は前記長期補償係数(KLT)を二者択一的に使用して、補正係数(KEA)を計算する、ステップと;
-シーリング剤の前記ストリップを前記表面(2)に塗布する後続のステップ中に前記塗布装置(7)を動作させるために、前記補正係数(KEA)を使用する、ステップと;
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記補正係数(KEA)が、前記短期補償係数(KST)又は前記長期補償係数(KLT)と、処理される前記空気入りタイヤ(4)の寸法、前記塗布装置(7)のノズル(13)のタイプ、及び押出速度を含むいくつかの製造データ(REP)との、関数として計算される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
-製造データを収集する履歴メモリバッファ(27)内に、前記差を格納する、ステップと;
-前記短期補償係数(KST)及び前記長期補償係数(KLT)を前記履歴メモリバッファ(27)の関数として求める、ステップと;
をさらに含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記短期メモリバッファ(24)は、80から120の間の数のセルを有する第1のベクトル(22)によって、定義される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記長期メモリバッファ(26)は、450から550の間の数のセルを有する第2のベクトル(25)によって、定義される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記短期補償係数(KST)及び前記長期補償係数(KLT)を、数学的モデルによって、とりわけ前記短期メモリバッファ(24)及び前記短期メモリバッファ(26)から得られる、複数の入力データ((a)~(g))と、前記入力データに与えられる複数の重み(k)との、関数として、求める、ステップを、含み、
前記重み(k)は、一定ではなく、計算される前記短期/長期補償係数(KST,KLT)の関数として変化する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記入力データ((a)~(g))が、
前記短期メモリバッファ(24)内及び前記長期メモリバッファ(26)内に格納されたシーリング剤の量の平均値と;
前記短期メモリバッファ(24)内及び前記長期メモリバッファ(26)内における、前記シーリング剤の前記基準量よりも多量又は少量のシーリング剤を塗布する傾向と;
を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記入力データ((a)~(g))が、履歴メモリバッファ(28)によって供給される製造データを含む、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記入力データ((a)~(g))が、前記塗布装置(7)が動作していない時間の長さを含む、請求項6~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記入力データ((a)~(g))が、シーリング剤に関する履歴データを含む、請求項6~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ(4)の内腔(3)の表面(2)にシーリング剤を塗布する方法を実施するためのシステム(1)。
【請求項12】
前記塗布装置(7)に接続され、前記補正係数(KEA)の関数として前記塗布装置(7)を動作させるように構成された、制御ユニット(16)を、備える、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
-前記制御ユニット(16)に接続され、前記シーリング剤の塗布前の前記空気入りタイヤ(4)の重量を示す信号を送信するように構成された、計量ステーション(14、20)と、
-前記制御ユニット(16)に接続され、前記シーリング剤の塗布後の前記空気入りタイヤ(4)の重量を示す信号を送信するように構成された、計量ステーション(18、20)と、
を備えた、請求項11又は12に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤの内腔の表面にシーリング剤を塗布するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
知られているように、空気入りタイヤは、2つの環状ビードを有し、環状トレッドを支持する、トロイダル状のカーカスを備える。ケーシングとトレッドとの間には、いくつかのトレッドプライを備えたトレッドベルトが介在している。ボディプライ内には、インナーライナーが配置されており、インナーライナーは、気密性を有し、インナーライニングを構成し、空気入りタイヤ自体の空気圧を経時的に維持するために空気入りタイヤ内に空気を保持する機能を有している。
【0003】
近年、空気入りタイヤの開発は、パンクをシールすることが意図されたシーリング剤を用いて製造されたインナーライニングを備えた空気入りタイヤに向けられてきた。通常、シーリング剤は、パンクに対するシーリング作用と、空気入りタイヤの状態に関係なく内腔内でのその安定性との両方を確保するために、高い粘度を有する。
【0004】
シーリング剤は、加硫前の空気入りタイヤに塗布され、好ましくは、空気入りタイヤにおいて路面と接触する領域(又は空気入りタイヤにおいてパンクが発生する可能性のある領域)内のインナーライナーに塗布される。特に、シーリング剤は、トレッド及び少なくとも部分的にサイドウォールに塗布される。
【0005】
典型的には、シーリング剤を塗布するプロセスは、加硫前の空気入りタイヤをフレーム上に配置し、その後、加硫前の空気入りタイヤが、空気入りタイヤ自体の横方向の移動を防止するように、横方向のレールによってブロックされる。
【0006】
オペレータの命令に応答して、シーリング剤塗布プロセスは、シーリング剤塗布装置を空気入りタイヤの内腔内へ、内腔自体の表面に直接面する位置に、挿入することによって開始される。塗布装置は、ノズルの一端に設けられた可動アームによって便利に実装されており、空洞の内面に実質的に均一なシーリング剤の層を塗布することが意図されている。特に、塗布装置は、内腔の2つの横方向端部どうしの間の往復運動によって、シーリング剤の層を塗布することが意図されている;特に、アームは空気入りタイヤの赤道面に垂直な平面内で動く。空気入りタイヤは、電動ローラによるサポートによって回転する;空気入りタイヤの回転と組み合わされたアームの動き(連続的又は代わりに段階的)により、シーリング剤の塗布がもたらされる。これは、可能な限り均一でなければならない。実は、シーリング剤は、比重が大きく、空気入りタイヤの内面に塗布されるシーリング剤の量が少し変わるだけでも、空気入りタイヤの重量が大きく変化し、空気入りタイヤの総質量のインバランス(すなわち、偏心)に繋がるおそれがある。知られている及び現在使用されている塗布システムでは、内腔の表面に塗布されるシーリング剤の厚さに関して高い均一性を得ることができない。すなわち、内腔の表面に適用されるシーリング剤の厚さは、領域ごとにかなりの変動を示す可能性がある。
【発明の概要】
【0007】
したがって、本発明の目的は、空気入りタイヤの内腔の表面にシーリング剤を塗布するための方法であって、従来技術の欠点がなく、特に、実装が容易かつ安価であるような、方法を、提供することである。
【0008】
したがって、本発明の別の目的は、空気入りタイヤの内腔の表面にシーリング剤を塗布するためのシステムであって、従来技術の欠点がなく、特に、製造が容易かつ安価であるような、システムを、提供することである。
【0009】
本発明によれば、添付の特許請求の範囲内の規定に係る、空気入りタイヤの内腔の表面にシーリング剤を塗布するための方法及びシステムが、提供される。
【0010】
以下、添付の図面を参照しつつ本発明を説明する。これらの図面は、いくつかの非限定的な例示的実施形態を示している。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】空気入りタイヤの内腔の表面にシーリング剤を塗布するために実装されたシステムの、明確性のために部品を取り除いた、概略正面図である。
図2図2は、明確性のために部品を取り除いた、図1のシステムの概略図である。
図3】本発明に従って構成された空気入りタイヤの内腔の表面にシーリング剤を塗布する方法を実施する、図1のシステムの制御ユニットを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1を参照し、符号1は、空気入りタイヤ4の内腔3の表面2にシーリング剤を塗布するためのシステム1の全体を示す。「空気入りタイヤ4の内腔3のプロファイル」というフレーズは、空気入りタイヤ4の表面プロファイルを指すことを理解されたい。
【0013】
空気入りタイヤ4は、電動ローラ6によって、空気入りタイヤ4を支持し、その中心X軸線の周りで回転させるのに適した、フレーム5の上に配置される。フレーム5は、空気入りタイヤ4を、実質的に一定の速度で、好ましくは1~15m/分で、回転させるように設計されている。好ましくは、空気入りタイヤ4は、x軸線の周りの回転運動中に空気入りタイヤ4自体の横方向の移動を防止するように、フレーム5内に収容される。
【0014】
図1に示されるように、システム1は、シーリング剤塗布装置7を備える。シーリング剤塗布装置7は、移動可能であるとともに、表面2に実質的に均一なシーリング剤の層を塗布することが意図された、アーム8を備えたロボットによって、便利に実装される。
【0015】
塗布装置7は、内腔3の2つの横方向端部どうしの間の往復運動によって、シーリング剤の層を塗布することが意図されている;特に、アーム8は、空気入りタイヤ4の赤道面に実質的に直交する平面内を移動する。軸線Xを中心とするフレーム5の回転及びアーム8の移動により、らせん状に進行する塗布が行われる。より具体的には、塗布装置7は、空気入りタイヤ4において路面と接触する部分、すなわちトレッド、及び、少なくとも部分的にサイドウォールに、シーリング剤の層を塗布することが意図されている。
【0016】
塗布装置7は、シーリング剤供給回路9に接続されており、シーリング剤供給回路9は、好ましくは金属材料から製造されるとともに、シーリング剤を収容する、タンク10と、好ましくは加熱され、タンク10から延在し、塗布装置7と油圧式に接続された、導管11と、タンク10からシーリング剤を抽出し、加圧下で塗布装置7に供給する、ポンプ装置12と、を備える。
【0017】
好ましい変形例によれば、塗布装置7は、半流体状態でシーリング剤の非接触塗布を実行するために、ノズル13によって実装される;ノズル13は、好ましくは、可動アーム8の軸線方向の一端に配置される。
【0018】
塗布装置7は、ノズル13と表面2との間の距離を実質的に一定にするように実装される。ノズル13と表面2との間の距離を実質的に一定に保つことによって、層の厚さ及び幅に関して、並びに、シーリング剤塗布領域の精度に関して、より均一な塗布を実施することが可能であることを、強調しておくべきである。
【0019】
第1の実施形態によれば、フレーム5の上流には計量ステーション14が設けられ、計量ステーション14は、いくつかのロードセル15を含み、ロードセル15の各々は、制御ユニット16に接続された既知のタイプの測定装置を備え、制御ユニット16は、信号処理装置17を備える。信号処理装置17は、シーリング剤の塗布前に、空気入りタイヤ4の重量を示すロードセル15からの信号を受信するように構成される。
【0020】
フレーム5の上流には、別の計量ステーション18が設けられており、計量ステーション18は、いくつかのロードセル19を備え、ロードセル19の各々は、制御ユニット16に接続された既知のタイプの測定装置を備える。信号処理装置17は、シーリング剤の塗布後に、空気入りタイヤ4の重量を示すロードセル19からの信号を受信するように構成される。
【0021】
第2の実施形態によれば、フレーム5の位置に対応して、計量ステーション20が設けられ、計量ステーション20は、いくつかのロードセル21を備え、ロードセル21の各々は、制御ユニット16に接続された既知のタイプの測定装置を備える。信号処理装置17は、ロードセル21から、シーラントの塗布前の空気入りタイヤ4の重と、シーリング剤の塗布後のタイヤ4の重量との、両方を示す信号を受信するように構成される。
【0022】
したがって、両方の実施形態において、信号処理装置17は、シーリング剤の塗布後の空気入りタイヤ4の重量とシーリング剤塗布前の空気入りタイヤ4の重量との差から、塗布されたシーリング剤の量を計算するように実装される。
【0023】
各空気入りタイヤ4に塗布されたシーリング剤の量に関するデータ(シーリング剤の塗布後の各空気入りタイヤ4の重量と、シーリング剤の塗布前の同じ空気入りタイヤ4の重量との差から計算される)は、制御ユニット16内のメモリバッファ23内の一次元配列22又は短期ベクトル内に格納される。短期ベクトル22は、短期メモリバッファ24を定義する。
【0024】
塗布されるシーリング剤の量は、空気入りタイヤ4 の基準特徴の関数として (特に寸法/サイズの関数として) 可変であることを強調することが重要である。第1の変形例によれば、複数の短期ベクトル22が短期メモリバッファ24内に格納され、各短期ベクトル22は、システム1によって処理されるシーリング剤の層が塗布され得る、異なるタイプの空気入りタイヤ4に対応する。
【0025】
第2の好ましい変形例によれば、システム1によって処理されるシーリング剤の層が塗布され得る、全ての異なるタイプの空気入りタイヤ4に関するデータは、短期メモリバッファ24内の単一の短期ベクトル22内に格納される。システム1によって処理される異なるタイプの空気入りタイヤ4のそれぞれに塗布されるシーリング剤の基準量は、制御ユニット16内に記憶される。異なるタイプの空気入りタイヤ4のそれぞれに塗布されるシーリング剤の基準量は、好ましくは、システム1の実験的な微調整ステップ中に、異なるタイプの空気入りタイヤ4のそれぞれの基準特性の関数として(特に、寸法/サイズの関数として)求められる。好ましくは、システム1によって処理される異なるタイプの空気入りタイヤ4のそれぞれに塗布されるシーリング剤の基準量は、固定されており、システム1の動作中に変更されない。
【0026】
処理されることとなる空気入りタイヤ4のタイプが選択されると、制御ユニット16は、各空気入りタイヤ4に塗布されるシーリング剤の量をそれぞれの基準量と比較するように、構成される。特に、制御ユニット16は、各空気入りタイヤ4に塗布されるシーリング剤の量とそれぞれの基準量との差を計算するように構成される。各空気入りタイヤ4に塗布されるシーリング剤の量とそれぞれの基準量との差は、短期ベクトル22内に格納される。このように、短期ベクトル22内に含まれるデータが空気入りタイヤ4の基準特性(特に寸法/サイズの関数として)とは無関係であり、異なるタイプの空気入りタイヤ4に関するデータが収納され得ることは、明らかである。したがって、制御ユニット16は、塗布されるシーリング剤の基準量に対する偏差の方向/向き(すなわち、塗布されるシーリング剤の基準量と比較したときに、傾向は、より多量又はより少量のシーリング剤を塗布することである)と、塗布されるシーリング剤の基準量に対する偏差の絶対値(すなわち、塗布されるシーリング剤の量が塗布されるシーリング剤の基準量からどれだけ逸脱するかによる)との、両方を、評価することができる。
【0027】
短期ベクトル22は、80から120の間の、好ましくは95から105の間の、特に100に等しい数のセルを備える。短期ベクトル22は、好ましくは、FIFOロジック(先入れ先出し)を用いて扱われる。
【0028】
同様に、各空気入りタイヤ4に塗布されるシーリング剤の量に関するデータ(シーリング剤の塗布後の各空気入りタイヤ4の重量とシーリング剤の塗布前の同じ空気入りタイヤ4の重量との差から計算される)は、メモリバッファ23内の一次元アレイ25又は長期ベクトル内に格納される。長期ベクトル25は、長期メモリバッファ26を定義する。
【0029】
第1の変形例によれば、複数の長期ベクトル25は長期メモリバッファ26内に格納され、各長期ベクトル22は、システム1によって処理されるシーリング剤の層が塗布され得る、異なるタイプの空気入りタイヤ4に対応する。
【0030】
第2の好ましい変形例によれば、システム1によって処理されるシーリング剤の層が塗布され得る、全ての異なるタイプの空気入りタイヤ4に関するデータは、長期メモリバッファ26内の単一の長期ベクトル25を用いて記憶される。システム1によって処理される、異なるタイプの空気入りタイヤ4のそれぞれに塗布されるシーリング剤の基準量は、制御ユニット16内に記憶される。異なるタイプの空気入りタイヤ4のそれぞれに塗布されるシーリング剤の基準量は、好ましくは、システム1の実験的な微調整ステップ中に、空気入りタイヤ4の異なるタイプのそれぞれの基準特性の関数として(特に、寸法/サイズの関数として)求められる。好ましくは、システム1によって処理される、異なるタイプの空気入りタイヤ4のそれぞれに塗布されるシーリング剤の基準量は、固定されており、システム1の動作中に変更されない。
【0031】
処理されることとなる空気入りタイヤ4のタイプが選択されると、制御ユニット16は、各空気入りタイヤ4に塗布されるシーリング剤の量をそれぞれの基準量と比較するように、構成される。特に、制御ユニット16は、各空気入りタイヤ4に塗布されるシーリング剤の量とそれぞれの基準量との差を計算するように構成される。各空気入りタイヤ4に塗布されたシーリング剤の量とそれぞれの基準量との差は、長期ベクトル25内に格納される。このようにして、長期ベクトル25内に含まれるデータが空気入りタイヤ4の基準特性(特に寸法/サイズの関数として)とは無関係であり、異なるタイプの空気入りタイヤに関するデータが収納され得ることは、明らかである。したがって、制御ユニット16は、塗布されるシーリング剤の基準量に対する偏差の方向/向き(すなわち、塗布されるシーリング剤の基準量と比較したときに、傾向は、より多量又はより少量のシーリング剤を塗布することである)と、塗布されるシーリング剤の基準量に対する偏差の絶対値(すなわち、塗布されるシーリング剤の量が塗布されるシーリング剤の基準量からどれだけ逸脱するかによる)との、両方を、評価することができる。
【0032】
長期ベクトル25は、450から500の間の、好ましくは480から520の間の、特に500に等しい数のセルを備える。長期ベクトル25は、好ましくは、FIFOロジック(先入れ先出し)を用いて扱われる。
【0033】
最後に、各空気入りタイヤ4に塗布されるシーリング剤の量に関するデータ(シーリング剤の塗布後の各空気入りタイヤ4の重量とシーリング剤の塗布前の同じ空気入りタイヤ4の重量との差から計算される)は、メモリバッファ23内の1次元アレイ27又は履歴メモリベクトル内に格納される。履歴メモリベクトル27は、履歴メモリバッファ28を定義する。履歴メモリバッファ28は、約500,000個の空気入りタイヤの製造データを収集する。塗布されるシーリング剤の量に関するデータに加えて、各空気入りタイヤ 4 について、履歴メモリバッファ28 内には、例えば、空気入りタイヤ4の製造が行われた時期、空気入りタイヤ4の製造に使用されたノズル13のタイプ等の、追加の製造データも格納される。
【0034】
図3に示されるように、予測アルゴリズム29は、制御ユニット16内に格納され、入力において、とりわけ、短期メモリバッファ24によって、長期メモリバッファ26によって、及び履歴メモリバッファ28によって、提供されるデータを、受け取る。
【0035】
特に、予測アルゴリズム29は、以下の入力データを受信する:
(a)短期メモリバッファ24内に格納されたシーリング剤の量の平均値;
(b)短期メモリバッファ24内に格納されたシーリング剤の量の方向/向き(すなわち、塗布されるシーリング剤の基準量と比較したときに、傾向は、より多量又はより少量のシーリング剤を塗布することである);
(c)長期メモリバッファ26内に格納されたシーリング剤の量の平均値;
(d)長期メモリバッファ26内に格納されたシーリング剤の量の方向/向き(すなわち、塗布されるシーリング剤の基準量と比較したときに、傾向は、より多量又はより少量のシーリング剤を塗布することである);
(e)履歴メモリバッファ28によって供給される製造データ;
(f)塗布装置7が動作していない時間の量(すなわち、塗布装置7が静止したままであった時間の量;供給回路9内のシーリング剤の静止性が、シーリング剤の特性に、特に密度に、悪影響を与えることが、実験的に確認されている);
(g)シーリング剤に関する履歴データ(シーリング剤は、塗布される1~3か月前であっても製造され得るバレル内に保管される;明らかに、製造から空気入りタイヤ4への塗布までに経過する時間の量は、シーリング剤の特性に、特に密度に、悪影響を与える)。
【0036】
受信した全ての入力データに基づいて、予測アルゴリズム29は、短期補償係数KST及び長期補償係数KLTを生成する。
【0037】
予測アルゴリズム29は、異なる事前に処理された入力データが短期補償係数KST及び長期補償係数KLTを計算するために使用される、数学的モデルからなる。
【0038】
短期補償係数KSTと長期補償係数KLTは、次のように求められる。
ST,LT = k*(a) + k*(b) + ... + k*(g)
ここで、(a)~(g)は、異なる入力データ入力を表し、k(i=1,2,...7)は、各入力データに起因する重みを表す。
【0039】
重みkは、一定ではなく、計算される補償係数に依存し、短期補償係数KSTと長期補償係数KLTとを区別する。短期補償係数KSTが計算されている場合、短期メモリバッファ24から得られたデータ(a)及び(b)より大きな重みが与えられる;一方、対照的に、長期補償係数KLTが計算されている場合、長期メモリバッファ26から得られたデータ(c)及び(d)より大きな重みが与えられる。
【0040】
最後に、制御ユニット16は、入力において予測アルゴリズム29から受信する補償パラメータ、短期補償係数KSTと長期補償係数KLTとの両方、を、例えば、処理される空気入りタイヤ4の寸法、ノズル13のタイプ、押出速度等のさらなる製造データ(一般的にREP、「レシピ押出パラメータ」(recipe extrusion parameters)と表記される)とともに、計算するための、モジュール30を備えている。
【0041】
予測アルゴリズム29によって提供される短期補償係数KST又は長期補償係数KLT、及び、REP製造データに基づいて、計算モジュール30は、押出プロセス補正係数KEAを生成する。
【0042】
計算モジュール30は、補正係数KEAを計算するための数学的モデルからなる。特に、補正係数KEAは次のように求められる:
EA = p*KST/KLT + p*REP
ここで、KST/KLT及びREPは、以前に説明した意味を持ち、p(i=1,2)は、それぞれ短期補償係数KST又は長期補償係数KLTとREP製造データとにそれぞれ与えられる重みを表す。重みpは一定であることが好ましい。
【0043】
予測アルゴリズム29からの短期補償係数KST及び長期補償係数KLTは、補正係数KEAを求めるための式内において、同時に使用されるのではなく排他的に使用される。
【0044】
通常の製造プロセスでは、補正係数KEAを求めるために、式内において、短期補償係数KSTが使用される。対照的に、長期補償係数KLTは、システム1が例えば製造停止期間後に再起動される場合に、補正係数KEAを求めるために、式内で使用される。
【0045】
以下に、システム1の動作方法を説明する。この方法は、以下のステップを連続して含む:
-オペレータ又は自動マニピュレータが、空気入りタイヤ4を支持体5上に配置し、空気入りタイヤ4自体のいかなる横方向移動をも防止するように、サイドレールによって空気入りタイヤ4をブロックする;
-計量ステーション18において、シーリング剤を塗布する前に空気入りタイヤ4の重量が測定される;
-塗布装置7が内腔3内に挿入される;
-シール剤の塗布を開始するために、ノズル13が初期位置に配置される;
-ノズル13がシーリング剤の塗布を開始する間、空気入りタイヤ4がフレームによってX軸線の周りで回転させられる;
-軸線Xの周りでの空気入りタイヤ4の回転中、ノズル13は、表面2へのより均一な塗布を実施するために、ノズル13と表面2との間の距離を実質的に一定に保つように、移動する;
-シーリング剤を表面2に塗布するステップの最後に、計量ステーション20において、空気入りタイヤ4の重量が、シーリング剤の塗布の最後に測定される;
-フレーム5が停止され、それにより、塗布装置7が内腔3から引き出されることができるようになるとともに、空気入りタイヤ4がフレーム5から引き抜かれることができるようになる;
-計量ステーション18、20で記録されたデータは、上記で説明された方法に従って補正係数KEAを求めるために、制御ユニット16に送信される。
【0046】
上記で説明したシステム1の利点は明らかである。
【0047】
特に、補正係数KEAを求めることにより、押出プロセスによって、及び、供給回路9内のシーリング剤の流れの振動によって、生成される変動を、考慮に入れることを可能にする限り、表面2上でシーリング剤の非常に均一で一定の塗布を実施することが可能になる。
図1
図2
図3