(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】圧縮ガス容器のための遮断弁、圧縮ガス容器
(51)【国際特許分類】
F17C 13/04 20060101AFI20240321BHJP
F16K 31/02 20060101ALI20240321BHJP
F16K 31/08 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
F17C13/04 301C
F16K31/02 A
F16K31/02 Z
F16K31/08
(21)【出願番号】P 2022571878
(86)(22)【出願日】2021-04-14
(86)【国際出願番号】 EP2021059664
(87)【国際公開番号】W WO2021239320
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2022-11-22
(31)【優先権主張番号】102020206678.7
(32)【優先日】2020-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】オールハーファー,オラフ
(72)【発明者】
【氏名】フロウディヒマン,ハンス-アルント
(72)【発明者】
【氏名】ストューク,ベルント
【審査官】篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第03020680(EP,A1)
【文献】特開2007-232151(JP,A)
【文献】特表2004-513315(JP,A)
【文献】国際公開第1999/061828(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 13/04
F16K 31/08
F16K 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮ガス容器のための遮断弁(1)であって、閉止ばね(3)のばね力によって弁座(4)に向かって初期応力をかけられるストローク運動可能な弁閉止体(2)を含み、それにより前記弁閉止体(2)が閉止位置にあるときに弁入口(5)と弁出口(6)との接続が遮断され、さらに前記弁閉止体(2)を開放するためのアクチュエータ装置(7)を含む、遮断弁において、前記アクチュエータ装置(7)は前記弁閉止体(2)に対して同軸に間隔をおいて配置されて前記アクチュエータ装置(7)によって前記弁閉止体(2)の方向へ可動である操作部材(8)と協同作用し、それにより前記弁閉止体(2)に前記操作部材(8)が突き当たることによって開放インパルスを生成可能であ
り、
前記弁閉止体(2)の開放ストロークがストッパ(13)によって制限され、前記ストッパ(13)の領域に前記弁閉止体(2)を開放位置で保持するための電磁石(14)が配置され、
前記アクチュエータ装置(7)への通電終了後に前記操作部材(8)が初期位置に戻ったときに、前記弁閉止体(2)は前記遮断弁(1)の最大の開放断面積を解放することを特徴とする、遮断弁。
【請求項2】
前記アクチュエータ装置(7)および/または前記操作部材(8)は復帰ばね(9)のばね力によって初期応力をかけられ、前記復帰ばね(9)のばね力は前記アクチュエータ装置(7)の力方向と反対向きに作用することを特徴とする、請求項1に記載の遮断弁(1)。
【請求項3】
前記アクチュエータ装置(7)は線形に作用するアクチュエータを含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の遮断弁(1)。
【請求項4】
前記アクチュエータは磁石、ピエゾアクチュエータ、または渦電流アクチュエータであることを特徴とする、請求項3に記載の遮断弁(1)。
【請求項5】
前記操作部材(8)はスラストロッドであり、および/または少なくとも領域ごとに、または部分的に、磁性材料から製作されることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の遮断弁(1)。
【請求項6】
前記アクチュエータ装置(7)は、
a)圧縮ガスを通す領域(11)に対して封止されて換気通路(12)を介して換気可能である、または、
b)圧縮ガスを通す領域(11)に接続される、アクチュエータ室(10)を含むことを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の遮断弁(1)。
【請求項7】
前記弁閉止体(2)および/または前記弁座(4)は少なくとも区域的にテーパ状に製作されることを特徴とする、請求項1から
6までのいずれか1項に記載の遮断弁(1)。
【請求項8】
前記弁閉止体(2)は前記閉止ばね(3)および/または案内保持器を介して案内されることを特徴とする、請求項1から
7までのいずれか1項に記載の遮断弁(1)。
【請求項9】
前記弁入口(5)は前記圧縮ガス容器と接続され、または接続可能であり、それにより前記弁入口(5)で高圧が生じることを特徴とする、請求項1から
8までのいずれか1項に記載の遮断弁(1)。
【請求項10】
請求項1から
9までのいずれか1項に記載の遮断弁(1)を有する、圧縮ガス容器。
【請求項11】
請求項1から
9までのいずれか1項に記載の遮断弁(1)を有する、水素を貯蔵するための圧縮ガス容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプレアンブルの構成要件を有する圧縮ガス容器のための遮断弁に関する。これに加えて本発明は、このような種類の遮断弁を有する圧縮ガス容器に関する。圧縮ガス容器は、特に、好ましくは移動用の用途で、たとえば燃料電池車両で、水素の貯蔵に利用できるようにするためのものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池車両は、燃料電池を作動させるために水素と酸素を必要とする。酸素は周囲空気から取り込むことができるのに対して、水素は、通常、車両の車内で圧縮ガス容器の中に携行される。このような容器内の圧力は通常500バールを超え、以下においては高圧と呼ぶ。
【0003】
圧縮ガス容器からの水素の取出しは、通常、圧縮ガス容器の電気制御可能な遮断弁を介して行われる。これが圧縮ガス容器内の高圧に抗して開放される。必要な流量のためには比較的広い断面積が開放されなければならないため、高い初期開放力が必要となる。直接的に切換が行われる電磁操作式の遮断弁の場合、それが意味するのは、高い磁力が印加されなくてはならないことである。その代替として、たとえばパイロット弁を介して切り換えられる、間接的に切換が行われる遮断弁を利用することができる。当初は狭い断面積が開放されることによって圧力補償を惹起することができ、それにより、引き続いての遮断弁の完全な開放のために低い力しか必要ない。しかし間接的に切り換えられる弁は、直接的に切り換えられる弁と比べて明らかに複雑な構造を有し、そのことが部品数の多さとなって現れる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上に述べた従来技術を前提としたうえで、本発明の課題は、初期開放のための高い調節力を可能にすると同時に簡素に構成される、圧縮ガス容器のための遮断弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
課題を解決するために、請求項1の構成要件を有する遮断弁が提案される。本発明の好ましい発展例は、従属請求項から読み取ることができる。これに加えて、このような種類の遮断弁を有する圧縮ガス容器が記載される。
【0006】
圧縮ガス容器のための提案される遮断弁は、閉止ばねのばね力によって弁座に向かって初期応力をかけられるストローク運動可能な弁閉止体を含み、それにより弁閉止体が閉止位置にあるときに弁入口と弁出口との接続が遮断される。遮断弁は、弁閉止体を開放するためのアクチュエータ装置をさらに含む。本発明によるとアクチュエータ装置が、弁閉止体に対して同軸に間隔をおいて配置されてアクチュエータ装置によって弁閉止体の方向へ可動である操作部材と協同作用し、それにより、弁閉止体に操作部材が突き当たることによって開放インパルスを生成可能である。
【0007】
それに応じて提案される遮断弁は、アクチュエータ装置と操作部材とによって直接的に切り換えられる。直接的に切り換えられる弁における高い初期の開放力は、提案される遮断弁では、操作部材の運動の結果として生じるインパルスによって惹起される。というのも操作部材の運動エネルギーが、弁閉止体に衝突したときに力へと変換され、この力が弁閉止体を高圧に抗して弁座から持ち上げるからである。初期開放の後に圧力補償が生じるので、引き続き、明らかに低い力によって完全な開放を惹起することができる。
【0008】
開放インパルスを生成するのに必要な操作部材の運動は、比較的低い調節力によって惹起することができ、それにより、アクチュエータ装置を相応に小型にすることができる。それと同時に部品数も減る。提案される遮断弁が直接的に切り換えられるからである。
【0009】
本発明の発展例では、アクチュエータ装置および/または操作部材が復帰ばねのばね力によって初期応力をかけられることが提案される。復帰ばねのばね力は、アクチュエータ装置の力方向と反対向きに作用する。このように復帰ばねを用いて、必要な復帰を惹起することができる。というのも、操作部材をアクチュエータ装置によって運動させ、操作部材が十分に運動エネルギーを吸収できるようにするためには、遮断弁が閉止位置にあるとき、弁閉止体と操作部材との間で所定の間隔が遵守されなければならないからである。
【0010】
アクチュエータ装置と操作部材が連結されるか、または少なくとも連結可能であるのが好ましく、それにより、一方のコンポーネントの初期応力によってそれぞれ他方のコンポーネントも同じく初期応力がかけられ、ないしは復帰ばねを介して復帰可能である。
【0011】
アクチュエータ装置は、線形に作用するアクチュエータ、たとえば磁石、ピエゾアクチュエータ、または渦電流アクチュエータを含むのが好ましい。このようにしてアクチュエータの力方向を、操作部材の運動方向に合わせて最善にアライメントすることができる。アクチュエータの種類に関わりなく、アクチュエータは「反発」作用または「吸引」作用を操作部材に対して有することができる。さらに、アクチュエータが操作部材の前に配置されるか後に配置されるかも、作用方式に依存する。たとえばアクチュエータは反発作用を有することができる。このケースではアクチュエータは操作部材の後に配置され、すなわち、弁閉止体と反対を向くほうの操作部材の側に配置される。
【0012】
操作部材は、特に、少なくとも区域的に長尺状の本体を有するタペットのような形式であってよい。アクチュエータが反発作用を有するケースについては、操作部材がスラストロッドであることが提案される。
【0013】
その代替または補足として、操作部材が少なくとも領域ごとに、または部分的に、磁性材料から製作されることが提案される。このことは磁気アクチュエータの使用を可能にする。磁気アクチュエータにより、操作部材に対して反発作用または吸引作用を選択的に及ぼすことができる。操作部材はたとえば永久磁石であってよく、または永久磁石を含むことができる。
【0014】
アクチュエータ装置は、アクチュエータを収容するためのアクチュエータ室を含むのが好ましい。さらに、アクチュエータ室の中に復帰ばねが配置されていてよい。アクチュエータと圧縮ガスの接触を回避するために、アクチュエータ室は遮断弁の圧縮ガスを通す領域に対して封止され、換気通路を介して換気可能であってよい。この封止は、特に、操作部材の案内部の領域で具体化することができる。換気通路を介して、操作部材の運動のために必要な容積補償ないし圧力補償を惹起することができる。さらに換気通路を介して、漏れの過程でアクチュエータ室に入った圧縮ガスを排出することができる。あるいはその代替として、遮断弁の圧縮ガスを通す領域にアクチュエータ室が接続されていてもよい。このようなケースでは封止措置は不要である。
【0015】
弁閉止体の開放ストロークはストッパによって制限されるのが好ましい。ストッパは、弁閉止体の最終位置を定義する。この最終位置にあるとき、遮断弁の開放断面積が最大になるのが好ましい。さらにストッパの領域に電磁石が配置されるのが好ましく、これによって弁閉止体を開放位置で保持することができる。このように電磁石の磁力によって、弁座の方向へ弁閉止体に対して初期応力をかける閉止ばねのばね力を克服することができる。必要な保持力は比較的低いので、相応に小型の電磁石を使用することができる。
【0016】
本発明の好ましい実施形態では、弁閉止体および/または弁座は少なくとも区域的にテーパ状に製作される。このようにして、閉止のときに弁座に対する弁閉止体のセルフセンタリングが惹起され、それにより遮断弁が密閉式に閉止される。
【0017】
その代替または補足として、弁閉止体が閉止ばねおよび/または案内保持器を介して案内されていてよい。弁閉止体の案内は、弁座に対する弁閉止体の最善のアライメントおよびこれに伴って遮断弁の密閉式の閉止を保証する。
【0018】
圧縮ガス容器の遮断弁としての好ましい利用法では、提案される遮断弁は、弁入口が圧縮ガス容器と接続され、または接続可能であるように配置される。したがって遮断弁の弁入口で高圧が生じる。すなわち、遮断弁が高圧に抗して開放される。この実施形態では、本発明の利点が最善に発揮される。
【0019】
これに加えて、本発明による遮断弁を有する圧縮ガス容器が提案される。遮断弁の利点が圧縮ガス容器にも当てはまる。圧縮ガス容器は、たとえば水素を貯蔵するために利用することができ、それにより圧縮ガス容器を用いて、ないしは圧縮ガス容器の遮断弁を用いて、冒頭に説明した問題を解決することができる。
【0020】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の好ましい実施形態について詳しく説明する。図面は次のものを示す。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】閉止位置にある本発明の遮断弁を示す模式的な縦断面図である。
【
図2】アクチュエータが作動化したときの
図1の遮断弁を示す模式的な縦断面図である。
【
図3】開放位置にある
図1の遮断弁を示す模式的な縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1から3に示す遮断弁1は、弁座4とストッパ13との間で往復運動可能である弁閉止体2を有している。閉止ばね3のばね力により、弁閉止体2は弁座4に向かって初期応力をかけられている。弁閉止体2が開放位置にあるとき、弁出口6と弁入口5との接続が成立する。弁入口5は高圧接続部15との接続部を有していて、これを介して遮断弁1が圧縮ガス容器(図示せず)と接続され、ないしは接続可能である。
【0023】
これに加えて、図示した遮断弁1は操作部材8と協同作用するアクチュエータ装置7を有している。この操作部材は、遮断弁1が閉止位置にあるとき、およびアクチュエータ装置7が通電されていないとき、弁閉止体2に対して同軸に間隔をおいて配置される(
図1参照)。アクチュエータ装置7は操作部材8の後ろに配置されている。アクチュエータ装置7の1つのアクチュエータが通電されると、アクチュエータの力が操作部材8を弁閉止体2の方向に動かす(
図2参照)。このときに操作部材8が運動エネルギーを受け、このエネルギーが弁閉止体2への衝突時に開放インパルスへと変換され、この開放インパルスは、弁閉止体2が閉止ばね3のばね力に抗して、および高圧に抗して、弁座4から持ち上げられることに帰結する。このとき、弁座4の下流側の圧力が上流側の圧力に合わせて平衡化されることにつながる第1の開放断面積が解放される。インパルスを通じて弁閉止体2へ導入される残りの運動エネルギーにより、弁閉止体はさらにストッパ13の方向へと動く。ストッパ13に達するとともに、ストッパ13を構成する電磁石14が通電され、その磁力が弁閉止体2をこの最終位置で保つ(
図3参照)。弁閉止体2は、このときに遮断弁1の最大の開放断面積を解放する。操作部材8はこの時点ですでに再び初期位置をとっている。アクチュエータへの通電が終了しており、それにより、復帰ばね9が操作部材8を引き戻すことができるからである。
【0024】
遮断弁1を閉止するために、電磁石14への通電が終了し、それにより閉止ばね3が弁閉止体2を弁座4の中へと復帰させる。そのとき遮断弁1は、再び
図1に示す状態にある。
【0025】
図1から3に示す実施例では、アクチュエータ装置7のアクチュエータと復帰ばね9は、圧縮ガスを通す領域11に対して封止されたアクチュエータ室10の中に配置されている。すなわち、アクチュエータが圧縮ガスと接触することはない。この封止は、操作部材8の案内部16を通じて惹起される。アクチュエータ室10を換気するために、換気通路12が設けられている。
【符号の説明】
【0026】
1 遮断弁
2 弁閉止体
3 閉止ばね
4 弁座
5 弁入口
6 弁出口
7 アクチュエータ装置
8 操作部材
9 復帰ばね
10 アクチュエータ室
11 圧縮ガスを通す領域
12 換気通路
13 ストッパ
14 電磁石